説明

導電性微粒子分散ペースト

【課題】太陽電池の裏面電極形成に好適に用いることができ、かつ、貯蔵安定性に優れた導電性微粒子分散ペーストを提供する。
【解決手段】太陽電池の裏面電極を形成するために用いられる導電性微粒子分散ペーストであって、エチルセルロース、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、有機溶剤と、常温固体の有機化合物と、導電性微粒子とを含有し、前記常温固体の有機化合物は、常温で固体であり、水酸基を2つ以上有し、かつ、(炭素数/水酸基数)が5未満の有機化合物である導電性微粒子分散ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性に優れ、電気抵抗値を低くできることから、太陽電池の裏面電極形成に好適に用いることのできる導電性微粒子分散ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料に代わるクリーンエネルギーとして太陽光発電が注目され、太陽電池の開発が進んでいる。太陽電池としては、シリコン半導体基板の上に、電極が形成された装置が知られている。図1は、一般的な太陽電池の構造を模式的に示す断面図である。
【0003】
図1に示すように、太陽電池の素子は、厚みが200〜300μmのp型シリコン半導体基板1の受光面側に、厚みが0.3〜0.6μmのn型不純物層2が形成されており、更にn型不純物層2の上に反射防止膜3とグリッド電極4とが形成されている。また、p型シリコン半導体基板1の裏面側には、裏面電極層5が形成されている。
【0004】
裏面電極層5は、通常、アルミニウム粉末、ガラスフリット及び有機質ビヒクルを含有するペーストをスクリーン印刷等によって塗布し、乾燥した後、660℃(アルミニウムの融点)以上の温度で焼成することにより形成される。この焼成工程において、アルミニウムがp型シリコン半導体基板1の内部に拡散することにより、裏面電極層5とp型シリコン半導体基板1との間にAl−Si合金層6が形成されると同時に、アルミニウム原子の拡散による不純物層としてp層7が形成される。このp層7の存在により、電子の再結合を防止し、生成キャリアの収集効率を向上させるBSF(Back Surface Field)効果が得られる。
【0005】
近年、太陽電池はコストダウンの要求が高まり、その方法として、シリコン半導体基板を薄くすることが検討されている。しかし、シリコンとアルミニウムとは熱膨張係数が大きく異なるため、シリコン半導体基板が薄くなれば、熱膨張係数の差に起因して内部応力が発生し、ペーストの焼成後に裏面電極層が形成された裏面側が凹状になるようにシリコン半導体基板が変形し、反り又は割れが発生するという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するため、特許文献1には、半導体基板の裏面全体にアルミニウム含有ペーストを薄く塗布し、その上から厚くしたい部分に再度アルミニウム含有ペーストを塗布した後、焼成することにより、半導体基板の裏面に2種以上の層からなる裏面電極層を形成する方法が開示されている。また、特許文献2には、半導体基板の裏面に裏面電極を格子状に形成する方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、アルミニウム粉末、ガラスフリット、有機質ビヒクル及びアルミニウム含有有機化合物を用いる方法が開示されており、特許文献4には、熱膨張率がアルミニウムよりも小さく、かつ、溶融温度、軟化温度及び分解温度のいずれかがアルミニウムの融点よりも高い無機化合物、アルミニウム粉末及び有機質ビヒクルを含むペースト組成物を用いる方法が開示されている。更に、特許文献5には、従来のペースト組成物に有機化合物粒子及び炭素粒子のうち少なくとも1種を添加して、焼成時のアルミニウム電極の収縮を抑止することにより、シリコン半導体基板の反りを低減する方法が開示されている。
【0008】
以上の文献に示した、従来のペースト組成物は、アルミ電極の抵抗値を下げたり、焼成後の基板の反りを低減したりするために、ペースト中のアルミニウム微粒子の組成比が高くなる傾向がある。特に、ペースト中のアルミニウム微粒子が70%以上の組成においては、少量のバインダー樹脂にて分散状態を維持することは困難であり、作成後1〜2週間程度でアルミニウム粉末が沈降するという不具合があった。また、貯蔵安定性を確保するために、ペースト中のバインダー樹脂の含有量を増やし、粘度を高くすることが考えられるが、樹脂を増やすことにより、短時間の焼成プロセスでは有機物質がさらに多く残り、電気抵抗値が高くなってしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−217435号公報
【特許文献2】特開2002−141533号公報
【特許文献3】特開2000−90734号公報
【特許文献4】特開2003−223813号公報
【特許文献5】特開2004−134775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、貯蔵安定性に優れ、電気抵抗値を低くできることから、太陽電池の裏面電極形成に好適に用いることのできる導電性微粒子分散ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、太陽電池の裏面電極を形成するために用いられる導電性微粒子分散ペーストであって、エチルセルロース、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、有機溶剤と、常温固体の有機化合物と、導電性微粒子とを含有し、前記常温固体の有機化合物は、常温で固体であり、水酸基を2つ以上有し、かつ、(炭素数/水酸基数)が5未満の有機化合物である導電性微粒子分散ペーストである。
以下、本発明を詳述する。
【0012】
本発明者らは、鋭意検討の結果、エチルセルロース、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、有機溶剤と導電性微粒子とに加え、さらに常温で固体であり、水酸基を2つ以上有し、かつ、(炭素数/水酸基数)が5未満の有機化合物を含有する導電性微粒子分散ペーストは、驚くべきことに、有機化合物を含有しない場合と比較して、ペーストの貯蔵安定性が改善することを見出した。また、有機化合物を含有しない場合と比較して、樹脂の含有量を減らすことができるため、電気抵抗値を低減できることをも見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明において、ペーストの貯蔵安定性が改善する理由については、明確ではないが、上記エチルセルロース、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂中の親水性官能基、および上記有機溶剤の水酸基の効果に加え、常温固体の有機化合物の水酸基の効果により、導電性微粒子を分散安定化できるためであると考えられる。また、樹脂の含有量を少なく抑えることができる理由についても、明確ではないが、上記エチルセルロース、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂中の親水性官能基、上記有機溶剤の水酸基、および、常温固体の有機化合物の水酸基が、水素結合等で強く相互作用しているためであり、その結果、電気抵抗値を低くできるものと考えられる。
【0014】
本発明の導電性微粒子分散ペーストは、エチルセルロース、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
上記エチルセルロースは特に限定されないが、スクリーン印刷を行う場合には、STD4、STD10、STD45、STD100等のグレードのエチルセルロースが好ましい。
【0015】
上記(メタ)アクリル樹脂としては、350〜400℃程度の低温で分解するものであれば特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート及びポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種からなる重合体が好ましい。ここで、例えば(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
なかでも、少ない樹脂の量で高い粘度が得られることから、ガラス転移温度(Tg)の高いポリメチルメタクリレート(メタクリレートの重合体、Tg105℃)が好ましい。ポリメタクリレートはまた、低温脱脂性にも優れる。更に、本発明の導電性微粒子分散ペーストは後述する有機化合物を含有することから、ブチルメタクリレート又はイソブチルメタクリレート又はシクロヘキシルメタクリレートに由来する成分を有する重合体が好ましい。
【0016】
更には、導電性微粒子はアミノ基をはじめとする窒素官能基、水酸基等との相互作用性が高いことから、分子側鎖又は分子末端に親水性官能基を有していることが好ましい。
分子側鎖又は分子末端に、親水性官能基である、アミノ基をはじめとする窒素官能基、水酸基等を有する(メタ)アクリル樹脂を用いた場合には、該(メタ)アクリル樹脂の一方の分子末端が導電性微粒子表面に吸着し、他方は有機溶剤側へ伸びた形態となり、導電性微粒子の再凝集を防ぎ、分散安定性を向上させることができるので、貯蔵安定性が向上する。
【0017】
上記分子側鎖に親水性官能基を有する(メタ)アクリル樹脂の製造方法は、特に限定されず、親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を共重合する方法等が挙げられる。
【0018】
上記親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、2−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上述した各官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のなかでも、脱脂後に分解残渣分の残留が特に少ないことから、水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好適である。
【0019】
上記親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来するセグメントを有する場合、上記親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来するセグメントの含有量は30重量%以下であることが好ましい。上記セグメントの含有量が30重量%を超えると、低温での熱分解性が損なわれたり、導電性微粒子に付着する煤が多くなり、焼結体の残留炭素が多くなったりすることがある。より好ましくは20重量%以下である。
【0020】
上記分子末端に親水性官能基を有する(メタ)アクリル樹脂の製造方法は特に限定されず、例えば、親水性官能基を有する連鎖移動剤の存在下、(メタ)アクリルモノマーを、フリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等の従来公知の方法で重合又は共重合する方法、及び、親水性官能基を有する重合開始剤の存在下、(メタ)アクリルモノマーを、フリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等の従来公知の方法で重合又は共重合する方法が挙げられる。これらの方法は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
また、親水性官能基を有するアゾ系重合開始剤を用いて、上記分子末端に親水性官能基を有する(メタ)アクリル樹脂を製造してもよい。
上記アゾ系重合開始剤としては、特に限定されず、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェイトジハイドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシド)等が挙げられる。
【0022】
上記親水性官能基を有する連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、水酸基を有するメルカプトプロパンジオール、カルボキシル基を有するチオグリセロール、メルカプトコハク酸、メルカプト酢酸、アミノ基を有するアミノエタンチオール等、リン酸基を有するチオリン酸等が挙げられる。
【0023】
上記親水性官能基を有する重合開始剤としては特に限定されず、例えば、P−メンタンヒドロペルオキシド(P−Menthane hydroperoxide)(日油社製:パーメンタH)、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド(Diisopropylbenzene hydroperoxide)(日油社製:パークミルP)、1,2,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド(1,2,3,3−Tetramethylbutyl hydroperoxide)(日油社製:パーオクタH)、クメンヒドロペルオキシド(Cumene hydroperoxide)(日油社製:パークミルH−80)、t−ブチルヒドロペルオキシド(t−Buthyl hydroperoxide)(日油社製:パーブチルH−69)、過酸化シクロヘキサノン(Cyclohexanone peroxide)(日油社製:パーヘキサH)、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−アミルハイドロパーオキサイド、Disuccinic acid peroxide(パーロイルSA)等が挙げられる。また、窒素官能基を有する各種アゾ開始剤を用いても良い。
【0024】
上記(メタ)アクリル樹脂の分子末端に親水性官能基が存在していることは、例えば、上記(メタ)アクリル樹脂を抽出したポリマーを13C−NMR測定することにより、確認することができる。即ち、炭素−硫黄間の結合が確認された場合には、分子末端に親水性官能基が導入されたと判断することができる。
【0025】
上記(メタ)アクリル樹脂のポリスチレン換算による重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は5000、好ましい上限は500000である。上記重量平均分子量が5000未満であると、得られる導電性微粒子分散ペーストは、充分な粘度が確保されず、結果として、スクリーン脱枠後の基板へのパターン形成能が低下する。また、上記重量平均分子量が500000を超えると、得られる導電性微粒子分散ペーストの粘着力が高くなりすぎ、延糸が発生することがあり、スクリーン印刷性が悪くなることがある。上記重量平均分子量の好ましい上限は100000であり、より好ましい上限は50000である。なお、ポリスチレン換算による重量平均分子量は、カラムとして例えばカラムLF−804(SHOKO社製)を用いてGPC測定を行うことで得ることができる。
なお、本明細書における重量平均分子量とは、例えば、カラムとしてSHOKO社製のLF−804を用い、室温にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析により得られる結果を基に、ポリスチレン換算値で求められるものをいう。
【0026】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、後述する有機溶剤との相溶性に優れるものであれば特に限定されないが、ケン化度が80モル%以上のポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することで得られるものであって、重合度が1000〜4000、アセタール化度が60〜80モル%であることが好ましい。
【0027】
上記ポリビニルアルコールのケン化度は、80モル%以上であることが好ましい。上記ケン化度が80モル%未満であると、ポリビニルアルコールの水への溶解性が悪くなるためアセタール化反応が困難になり、また、水酸基量が少ないとアセタール化反応自体が困難になることがある。
【0028】
上記ポリビニルアルコールの重合度は、1000〜4000であることが好ましい。
上記重合度が1000未満であると、塗工膜の強度が不充分となることがある。上記重合度が4000を超えると、水への溶解性が低下したり、水溶液の粘度が高くなりすぎたりしてアセタール化が困難となることがある。また、溶液粘度が高くなりすぎて塗工性が低下する。
なお、上記ポリビニルアセタールの重合度は、合成する際の原料であるポリビニルアルコールの重合度を用いる。また、2種以上のポリビニルアルコールを混合する場合には、これらの重合度の平均を用いる。
【0029】
上記ポリビニルアルコールは、ビニルエステルの重合体をケン化することにより得られる。
上記ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、酢酸ビニルが経済的にみて好ましい。
また、上記ポリビニルアルコールは、主鎖にα−オレフィンを含有していることが好ましい。
上記α−オレフィンによってポリビニルアセタール樹脂の水素結合力が弱められるため、粘度の経時安定性を向上させることができたり、スクリーン印刷性を向上させたりすることができる。
【0030】
上記α−オレフィンとしては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、へキシレン、シクロヘキシレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘキシルプロピレン等が挙げられ、特にエチレンが好ましい。
上記α−オレフィンの含有量としては、1〜20モル%であることが望ましい。
上記α−オレフィンの含有量が1モル%未満であると、得られるポリビニルアセタール樹脂の特性が未変性のポリビニルアセタール樹脂と何ら変わりなくなり、20モル%を超えると、ポリビニルアルコールの水への溶解性が低下するため、アセタール化反応が困難になったり、できあがったポリビニルアセタール樹脂の疎水性が強くなりすぎて有機溶剤への溶解性が低下したりすることがある。
【0031】
上記ポリビニルアルコールとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のエチレン性不飽和単量体を共重合したものを用いてもよい。
このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、アクリロニトリルメタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物の存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とエチレンを共重合し、それをケン化することによって得られる末端変性ポリビニルアルコールも用いることができる。
【0032】
上記反応に用いられるアルデヒドは特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアルデヒド、m−ヒドロキシアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。
これらのアルデヒドは単独で用いても2種以上併用しても良く、アセトアルデヒド及び/又はブチルアルデヒドが好適に用いられる。
【0033】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールを温水で溶解した後、酸触媒の存在下で所定のアセタール化度となるようにアルデヒドを添加し、反応させた後、水洗、中和、乾燥することで得ることができる。
上記酸触媒としては特に規定されず、有機酸、無機酸いずれも用いることができるが、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。
また、中和に用いられるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0034】
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は60〜80モル%であることが好ましい。上記アセタール化度が60モル%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂の水素結合性が強くなりすぎて充分なスクリーン印刷性が得られないことがある。一方、上記アセタール化度が80モル%を超えるポリビニルアセタール樹脂は一般に工業的には製造が困難である。(P.J.Floryの理論計算によると、最大のアセタール化度は81.6モル%であることが好ましい。J.Am.Chem.Soc.,61,1518(1939))
【0035】
本発明の導電性微粒子分散ペーストにおける、上記エチルセルロース、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の含有量は特に限定されないが、導電性微粒子分散ペースト全体に対して好ましい下限は0.2重量%、好ましい上限は10重量%である。上記エチルセルロース、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の含有量が0.2重量%未満であると、得られる導電性微粒子分散ペースト中の粘度が低すぎてスクリーン脱枠後の基板へのパターン形成能が低下することがある。また、上記含有量が10重量%を超えると、得られる導電性微粒子分散ペーストの粘着力が高すぎて、スクリーン脱枠時に糸曳き等が発生することがある。より好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は5重量%である。
【0036】
本発明の導電性微粒子分散ペーストは、常温で固体であり、水酸基を2つ以上有し、かつ、(炭素数/水酸基数)が5未満の有機化合物を含有する。
【0037】
上記有機化合物は、常温で固体である。上記有機化合物が常温で固体であることにより、得られる導電性微粒子分散ペーストを、高粘度とすることができ、ペーストの貯蔵安定性を改善することができる。
なお、上記有機化合物は常温で固体であるが、後述する有機溶剤に溶解することにより、ペースト状の導電性微粒子分散ペーストを得ることができる。
なお、上記有機化合物は、後述する有機溶剤とは異なるものである。
【0038】
上記有機化合物は少なくとも水酸基を2つ以上有する。水酸基を2つ以上有することで、導電性微粒子との相互作用が強くなり、分散安定性を向上させることができるため、ペーストの貯蔵安定性を向上させることができる。
上記水酸基が1つ以下であると、導電性微粒子との相互作用を充分に発揮できないため、導電性微粒子分散ペーストの貯蔵安定性を向上させる効果が期待できなくなることがある。
また、上記有機化合物は水酸基を2つ以上含有することが好ましい。
【0039】
上記有機化合物は、(炭素数/水酸基数)が5未満である。上記(炭素数/水酸基数)が5以上であると、水酸基の寄与が小さくなるため、導電性微粒子との相互作用を期待できなくなることがある。好ましくは4.5未満である。また、上記(炭素数/水酸基数)の好ましい下限は1である。
【0040】
上記有機化合物は、常温で固体であり、水酸基を2つ以上有し、かつ、(炭素数/水酸基数)が5未満であれば特に限定されないが、炭素数が5以上20未満の脂肪鎖からなるジオール又はトリオール等の多価アルコール系有機化合物が好ましい。
上記多価アルコール系有機化合物は特に限定されず、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
中でも、炭素数に対する水酸基の割合の高い、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパンを好適に用いることができる。
【0041】
本発明の導電微粒子分散ペーストにおける上記有機化合物の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は25重量%である。上記有機化合物の含有量が1重量%未満であると、導電微粒子を分散安定化する効果が低く、得られる導電性微粒子分散ペーストの貯蔵安定性改善効果が不充分であることがある。また、上記有機化合物の含有量が25重量%を超えると、有機化合物がペーストに溶解しなくなることがある。
【0042】
本発明の導電性微粒子分散ペーストは、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤は特に限定されず、例えば、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール、テルピネオール、ターピネアセテート、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3-メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン等が挙げられる。なかでも、分子中に水酸基を少なくとも一つ有するテルペン系溶剤、又は、(炭素数/水酸基数)が5未満の多価アルコール系溶剤を含有することが好ましい。このような有機溶剤と、上記エチルセルロース、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種、および上記有機化合物とを組み合わせて用いることで、上記(メタ)アクリル樹脂の分子末端に存在する親水性官能基と有機溶剤および有機化合物中の水酸基との相互作用により、得られる導電性微粒子分散ペーストの貯蔵安定性をさらに改善することができる。このような有機溶剤としては、テルピネオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールが好適に用いられる。
なお、これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明の導電性微粒子分散ペーストは、導電性微粒子を含有する。
上記導電性微粒子としては、アルミニウム粉末、金粉末、銀粉末、銅粉末、ニッケル粉末、プラチナ粉末、パラジウム粉末等の金属粉、アルミナ、酸化亜鉛、フェライト等の金属酸化物粉末等が挙げられる。これらの中では、アルミニウム粉末が好ましい。
【0044】
上記アルミニウム粉末は、平均粒子径が0.5〜20μmであり、かつ、形状が略球状であることが好ましい。上記平均粒子径が0.5μm未満であると、アルミニウム粉末の比表面積が大きくなり、20μmを超えると、導電性微粒子分散ペーストとしたときに、分散安定性が低下することがあり、また、例えば、シリコンウエハに塗布する場合、シリコンウエハとアルミニウム粉末との接点が少なくなり、焼成後に均一なアルミニウム−シリコン合金層が得られないことがある。より好ましくは、1〜10μmである。なお、上記略球状とは、真球形状のほか、球形に近い形状の粒子も包含する。
【0045】
また、上記アルミニウム粉末としては、平均粒子径0.5〜5μmのアルミニウム粒子と、平均粒子径5〜20μmのアルミニウム粒子とを任意の割合で組み合わせたものを用いることが好ましい。これにより、焼結後に得られる膜中のアルミニウム粒子の充填がより密なものとなる。
【0046】
本発明の導電性微粒子分散ペーストにおける上記導電性微粒子の含有量は特に限定されないが、導電性微粒子分散ペースト全体に対する好ましい下限は60重量%、好ましい上限は85重量%である。上記導電性微粒子の含有量が60重量%未満であると、得られる導電性微粒子分散ペーストの粘度が低すぎてスクリーン印刷に適した粘度とすることができなくなったり、焼結後のアルミニウム膜の抵抗が高くなり、太陽電池のエネルギー変換効率の低下を招いたりすることがある。また、上記導電性微粒子の含有量が85重量%を超えると、スクリーン印刷時の導電性微粒子分散ペーストの塗布性が低下することがある。より好ましい下限は65重量%、より好ましい上限は80重量%である。
【0047】
本発明の導電性微粒子分散ペーストは、更に、ガラスフリットを含有することが好ましい。上記ガラスフリットは、例えば、シリコン基板に塗布する場合、アルミニウムの電極層と、シリコン基板との結合をさらに強化する働きをすると考えられる。上記ガラスフリットの含有量は5重量%以下であることが好ましい。上記ガラスフリットの含有量が5重量%を超えると、ガラスの偏析を生じる恐れがある。上記ガラスフリットとしては、環境に悪影響を与えない非鉛のガラスを用いることが最も好ましいが、鉛含有ガラスを用いてもよい。上記ガラスフリットの粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、20μm以下であることが好ましい。
【0048】
本発明の導電性微粒子分散ペーストは、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて他の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0049】
本発明の導電性微粒子分散ペーストの作製方法としては特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル樹脂、有機溶剤、導電性微粒子及び必要に応じて添加する添加剤を、3本ロール等の従来公知の撹拌機を用いて所定時間混合する方法等により製造することができる。
上記混合する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて混合する方法が挙げられる。
【0050】
本発明の導電性微粒子分散ペーストは、適度な粘度特性を有することからスクリーン印刷性に優れ、太陽電池の裏面電極の製造に好適に使用することができる。また、ペースト中の樹脂の含有量を多くしなくても貯蔵安定性に優れたペーストとすることができることから、長期にわたって安定に保存することが可能で、かつ電気特性的にも優れたペーストとすることができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、導電性微粒子分散ペーストを長期にわたって安定に保存することが可能となり、貯蔵安定性が改善することができる。また、電気抵抗値を低減できることから、電気特性的にも優れた導電性微粒子分散ペーストとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一般的な太陽電池の構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0054】
(重合例1)
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴、及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、イソブチルメタクリレート(IBMA)100重量部、連鎖移動剤としてメルカプトプロパンジオール0.4重量部、有機溶剤としてテルピネオール100重量部を加えてモノマー混合液を得た。
【0055】
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながら湯浴が沸騰するまで昇温した。重合開始剤として有機化酸化物重合触媒(パーロイル355、日油社製)を0.1重量部添加し、重合中に重合開始剤を数回添加し、合計でモノマー100重量部に対して合計1.5重量部の重合開始剤を添加した。
重合開始から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、末端に水酸基を有するイソブチルメタクリレートの重合体(Poly(IBMA))のテルピネオール溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてカラムLF−804(昭和電工社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は4万であった。
【0056】
(重合例2)
モノマーとして、メチルメタクリレート(MMA)50重量部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)50重量部、連鎖移動剤としてメルカプトプロパンジオール0.8重量部、有機溶剤として2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール100重量部を用いたこと以外は、重合例1と同様にして、分子末端に水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/CHMA))の2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてカラムLF−804(昭和電工社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は2万であった。
【0057】
(重合例3)
攪拌機、冷却器、温度計、油浴及び窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、イソブチルメタクリレート(IBMA)90重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)10重量部、有機溶剤としてテルピネオール100重量部を混合し、モノマー混合液を得た。
【0058】
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながら油槽が130℃に達するまで昇温した。重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]をテルピネオールで分散させた溶液を加えた。また、重合中に重合開始剤を含むテルピネオール溶液を数回添加した。
【0059】
重合開始から7時間後、反応液を室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、分子末端にアミド基を有する(メタ)アクリル樹脂(Poly(IBMA/HEMA))のテルピネオール溶液を得た。
得られた重合体について、カラムとしてカラムLF−804(昭和電工社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は3.5万であった。
【0060】
(重合例4)
モノマーとして、メチルメタクリレート(MMA)80重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)20重量部、有機溶剤として2−エチル−1,3−ヘキサンジオール100重量部を用いた以外は、重合例3と同様にして、分子末端にアミド基を有する(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/HEMA))の2−エチル−1,3−ヘキサンジオール溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてカラムLF−804(昭和電工社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は3万であった。
【0061】
(重合例5)
モノマーとして、メチルメタクリレート(MMA)40重量部、イソブチルメタクリレート(IBMA)50重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)10重量部、連鎖移動剤としてメルカプトプロパンジオール0.5重量部、有機溶剤としてテルピネオール100重量部を用いたこと以外は、重合例1と同様にして、分子末端に水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/IBMA/HEMA))のテルピネオール溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてカラムLF−804(昭和電工社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は3.5万であった。
【0062】
(重合例6)
モノマーとして、メチルメタクリレート(MMA)40重量部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)40重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)20重量部、有機溶剤としてテルピネオール100重量部を用いた以外は、重合例3と同様にして、分子末端にアミド基を有する(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/CHMA/HEMA))のテルピネオール溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてカラムLF−804(昭和電工社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は4万であった。
【0063】
(重合例7)
モノマーとして、メチルメタクリレート(MMA)50重量部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)50重量部、連鎖移動剤としてメルカプトプロパンジオール0.8重量部、有機溶剤としてブチルカルビトールアセテート(BCA)100重量部を用いたこと以外は、重合例1と同様にして、分子末端に水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/CHMA))のBCA溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてカラムLF−804(昭和電工社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は3万であった。
【0064】
(重合例8)
モノマーとして、メチルメタクリレート(MMA)40重量部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)40重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)20重量部、有機溶剤としてブチルカルビトールアセテート(BCA)100重量部を用いた以外は、重合例3と同様にして、分子末端にアミド基を有する(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/CHMA/HEMA))のBCA溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてカラムLF−804(昭和電工社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は4万であった。
【0065】
(重合例9)
モノマーとして、イソブチルメタクリレート(IBMA)60重量部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)40重量部、連鎖移動剤としてメルカプトプロパンジオール0.6重量部、有機溶剤としてテルピネオール100重量部を用いたこと以外は、重合例1と同様にして、分子末端に水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂(Poly(IBMA/CHMA))のテルピネオール溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてカラムLF−804(昭和電工社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は4万であった。
【0066】
(重合例10)
モノマーとして、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)100重量部、有機溶剤としてブチルカルビトールアセテート(BCA)100重量部を用いた以外は、重合例3と同様にして、分子末端にアミド基を有する(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA))のBCA溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてカラムLF−804(昭和電工社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は4万であった。
【0067】
(実施例1)
エチルセルロースSTD4をテルピネオールに溶解させた。このテルピネオール溶液に対し、表1に示した組成比となるように有機化合物として2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを添加し、高速撹拌装置で分散させ、ビヒクル組成物を得た。
【0068】
得られたビヒクル組成物に対して、導電性微粒子としてアルミニウム微粒子(平均粒子径5μm)、ガラスフリット(平均粒子径1μm)を表1に記載した組成比になるように添加し、高速撹拌装置を用いて充分混練した後、アルミニウム微粒子が扁平につぶれないように留意しながら3本ロールミルにて処理を行い、導電性微粒子分散ペーストを調製した。
【0069】
(実施例2)
エチルセルロースSTD4のテルピネオール溶液の代わりにエチルセルロースSTD45の3−メチル−1,3−ブタンジオール溶液を用い、有機化合物として2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールの代わりにトリメチロールプロパンを用い、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0070】
(実施例3)
エチルセルロースSTD4のテルピネオール溶液の代わりに重合例1で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(IBMA))のテルピネオール溶液を用い、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0071】
(実施例4)
エチルセルロースSTD4のテルピネオール溶液の代わりに重合例2で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/CHMA))の2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール溶液を用い、有機化合物として2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールの代わりにトリメチロールプロパンを用い、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0072】
(実施例5)
エチルセルロースSTD4のテルピネオール溶液の代わりに重合例3で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(IBMA/HEMA))のテルピネオール溶液を用い、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0073】
(実施例6)
エチルセルロースSTD4のテルピネオール溶液の代わりに重合例4で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/HEMA))の2−エチル−1,3−ヘキサンジオール溶液を用い、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0074】
(実施例7)
エチルセルロースSTD4のテルピネオール溶液の代わりに重合例5で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/IBMA/HEMA))のテルピネオール溶液を用い、有機化合物として2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールの代わりにトリメチロールプロパンを用い、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0075】
(実施例8)
エチルセルロースSTD4のテルピネオール溶液の代わりに重合例6で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/CHMA/HEMA))のテルピネオール溶液を用い、有機化合物として2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールの代わりにトリメチロールプロパンを用い、追加溶剤としてテルピネオール及び3−メチル−1,3−ブタンジオールを用い、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0076】
(実施例9)
エチルセルロースSTD4をテルピネオールに溶解させた溶液と、重合例3で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(IBMA/HEMA))のテルピネオール溶液を用い、表1に記載した組成比になるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0077】
(実施例10)
エチルセルロースSTD7をテルピネオールに溶解させた溶液と、重合例6で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/CHMA/HEMA))のテルピネオール溶液を用い、追加溶剤としてテルピネオール及び3−メチル−1,3−ブタンジオールを用い、表1に記載した組成比になるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0078】
(実施例11)
(ポリビニルアセタール樹脂の合成)
重合度1700、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール193gを純水2900gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸20gとn−ブチルアルデヒド145gを添加し、液温を15℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は78モル%であった。
【0079】
得られたポリビニルブチラール樹脂2重量部を、テルピネオール11重量部に加え、攪拌溶解し、更に、可塑剤としてジブチルフタレート1重量部、有機化合物としてトリメチロールプロパンを表1に記載した組成比になるように加え、高速撹拌装置で攪拌溶解した。得られたビヒクル組成物に対して、導電性微粒子としてアルミニウム微粒子(平均粒子径5μm)、ガラスフリット(平均粒子径1μm)を表1に記載した組成比になるように添加し、高速撹拌装置を用いて充分混練した後、アルミニウム微粒子が扁平につぶれないように留意しながら3本ロールミルにて処理を行い、導電性微粒子分散ペーストを調製した。
【0080】
(比較例1)
エチルセルロースSTD4の代わりにエチルセルロースSTD10を用い、有機化合物としての2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを用いず、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0081】
(比較例2)
エチルセルロースSTD4のテルピネオール溶液の代わりに重合例1で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(IBMA))のテルピネオール溶液を用い、有機化合物としての2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを用いず、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0082】
(比較例3)
エチルセルロースSTD4のテルピネオール溶液の代わりに重合例7で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/CHMA))のBCA溶液を用い、有機化合物としての2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを用いず、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0083】
(比較例4)
エチルセルロースSTD4のテルピネオール溶液の代わりに重合例8で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(MMA/CHMA/HEMA))のBCA溶液を用い、有機化合物としての2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを用いず、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0084】
(比較例5)
有機化合物としてのトリメチロールプロパンを用いず、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例11と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0085】
(比較例6)
エチルセルロースSTD4のテルピネオール溶液の代わりに重合例9で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(IBMA/CHMA))のテルピネオール溶液を用い、有機化合物として2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールの代わりに、2−メチル−1,3−プロパンジオールを用い、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0086】
(比較例7)
エチルセルロースSTD4のテルピネオール溶液の代わりに重合例10で得られた(メタ)アクリル樹脂(Poly(CHMA))のBCA溶液を用い、有機化合物として2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールの代わりに、ミリスチルアルコールを用い、表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子分散ペーストを作製した。
【0087】
(評価)
実施例及び比較例で得られた導電性微粒子分散ペーストについて、以下の方法により評価を行った。結果を表2に示した。
【0088】
(1)スクリーン印刷性
得られた導電性微粒子分散ペーストを、スクリーン印刷機(マイクロテック社製「MT−320TV」)、スクリーン製版(東京プロセスサービス社製「ST200」乳剤12μ、スクリーン枠:320mm×320mm)、印刷ガラス基板(ソーダーガラス:150mm×150mm、厚み:1.5mm)を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下にて印刷を行った。
ガラス基板上にスクリーン製版の跡が残らず、きれいな印刷面が得られたものを○、ガラス基板がスクリーン製版に張り付き、きれいな印刷面が得られなかったり、スクリーン製版の上に導電性微粒子分散ペーストが大量に残り、印刷できなかったりしたものを×とした。
【0089】
(2)焼結性
「(1)スクリーン印刷性」と同様の印刷条件でスクリーン印刷にてシリコンウエハ(厚み:300μm)に導電性微粒子分散ペーストを印刷した基板を、730〜750℃のオーブンで2分保持することにより焼成した。シリコンウエハ又は導電性微粒子分散ペーストにゆがみ、反り、ひび割れなどが生じたり、焼結膜の強度が弱く剥がれ落ちたりした場合を×、問題なく焼成できた場合を○とした。
【0090】
(3)電気抵抗値
焼成後のシリコンウエハ上に形成された焼結膜に、デジタルテスタ(カスタム社製、CDM−6000)の左右の端子を約1cm離して当て、電気抵抗値を測定した。
【0091】
(4)貯蔵安定性
得られた導電性微粒子分散ペーストを、23℃、湿度50%の恒温恒湿下にて貯蔵した。1ヶ月後に確認し、ペーストの分離沈降等ないものを○、分離沈降しているものを×とした。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、電気抵抗値を低くできることから、太陽電池の裏面電極形成に好適に用いることのできる導電性微粒子分散ペーストを提供することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 p型シリコン半導体基板
2 n型不純物層
3 反射防止膜
4 グリッド電極
5 裏面電極層
6 Al−Si合金層
7 p

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池の裏面電極を形成するために用いられる導電性微粒子分散ペーストであって、
エチルセルロース、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、有機溶剤と、常温固体の有機化合物と、導電性微粒子とを含有し、
前記常温固体の有機化合物は、常温で固体であり、水酸基を2つ以上有し、かつ、(炭素数/水酸基数)が5未満の有機化合物である
ことを特徴とする導電性微粒子分散ペースト。
【請求項2】
常温固体の有機化合物が、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール及びトリメチロールプロパンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の導電性微粒子分散ペースト。
【請求項3】
有機溶剤が、分子中に水酸基を少なくとも1つ有するテルペン系溶剤、又は、(炭素数/水酸基数)が5未満の多価アルコール系溶剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の導電微粒子分散ペースト。
【請求項4】
導電性微粒子は、平均粒子径が0.5〜20μmであり、かつ、形状が略球状のアルミニウム粉末であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の導電性微粒子分散ペースト。
【請求項5】
アルミニウム粉末の含有量が60〜85重量%であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の導電性微粒子分散ペースト。
【請求項6】
更に、ガラスフリットを含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の導電性微粒子分散ペースト。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の導電性微粒子分散ペーストを用いて製造したことを特徴とする太陽電池セル。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の導電性微粒子分散ペーストを用いて製造したことを特徴とする太陽電池パネル。

【図1】
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【公開番号】特開2012−38625(P2012−38625A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178812(P2010−178812)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】