説明

導電性紙キャリアテープとその製造方法

【課題】カバーテープの剥離時の静電気による組立実装工程での影響を緩和する。
【解決手段】巻取りキャリア台紙1の両面または片面に導電性インキの印刷層2を形成することにより、微細化、小型化する電子部品等の取り出しを正確、且つ容易に行ううことが可能となり、このことで品質、性能に優れた紙製キャリアテ−プの製造方法を得ることが出来る。これにより静電気の影響が緩和された静電気対策のなされた導電性紙キャリアテープとすることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体や電子部品に使用されるマイクロチップなどのチップ状電子部品を輸送、保管し、組立て時に搬送できるようにしているキャリアテープに関するものであって、さらに詳しくは導電性の紙キャリアテープと、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体や電子部品のマイクロチップの輸送、保管、そして実装基板への組立工程での搬送用としてキャリアテープが用いられている。このキャリアテープには、微細なマイクロチップを一個一個埋め込み等によって配設し、プラスチックのカバーテープを被覆した後に組立工程においてマウンターに搬送している。組立工程ではカバーテープを剥離した後にマウンターが個々のマイクロチップを識別してノズル吸引等により取出して実装組立するようにしている。
【0003】
従来、このようなキャリアテープとしては、その材質として紙を使用したものや、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂などの化成品を用いたエンボスキャリアテープが知られている。
【0004】
なかでも、操作性、安定性、コスト等の点からは紙を用いたキャリアテープがより一般的なものとされている。
【0005】
だが、近年では、キャリアテープに配設する電子部品、マイクロチップがより微細化、小型化していることから、静電気の発生、特に組立工程においてカバーテープを剥がす時に発生する剥離帯電が大きな問題となっている。カバーテープを剥離する時に剥離帯電が発生するため、電子部品、マイクロチップが静電気によって踊ってしまい、マウンターが正確にこれらを識別してノズルで吸引する等により取出すことが難しくなり、実際的にプリント配線基板への実装組立が困難になるという問題が生じるからである。
【0006】
また、これ以外にもカバーテープの剥離帯電によりカバーテープへ直接チップ部品の付着という問題も生じており、カバーテープの剥離帯電による静電気の影響を低減するための方策としては、カーボン繊維を漉き込んだ紙をキャリアテープとすることが検討されてきているが、このような対策によっては、電子部品、マイクロチップの微細化、小型化の動向に対応して剥離帯電の影響を緩和するには十分ではない。しかも更なる問題点も生じてしまう。
【0007】
紙を用いたキャリアテープの場合、まず、基板上にカーボン粒子、カーボン繊維が脱落落下するという問題の他、その表層の紙の発塵が問題となる。すなわち電子部品、マイクロチップの微細化、小型化に対応して微細化しているこれらの取出し用のノズル内に、発塵による紙粉が詰らせてしまい、マウンターの運転を難しくするからである。また、紙に導電性のカーボンを複合化した場合、その製造コストの負担は大きく、キャリアテープとしての品質、性能の安定性、操作性等の点で改善の余地がある。また、キャリアテープが黒色になることから、センサーが電子部品、マイクロチップを識別しにくくなってマウンターの作動エラーが生じやすくなるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のとおりの背景から、従来の問題点を解消して、カバーテープの剥離時の剥離帯電による静電気の影響を効果的に緩和し、微細化、小型化する電子部品、マイクロチップの識別、取り出しを正確に、そして容易に行うことで所定の組立実装工程を円滑に行うことを可能とする、品質、性能の均質性、安定性が良好であって、製造コストの負担も過大でない、改善された新しい紙キャリアテープとその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
<1>キャリア台紙の両面または片面に導電性インキの印刷層を有し、静電気の発生が緩和されている導電性紙キャリアテープ。
<2>導電性インキの印刷層の厚みが0.1μm〜5μmの範囲内であって、表面抵抗率が10Ω/sq.〜1010Ω/sq.の範囲内である前記の導電性紙キャリアテープ。
<3>導電性インキの印刷層には導電性金属酸化物並びに導電性ポリマーのうちの少なくとも1種が含まれている前記1または2の導電性紙キャリアテープ。
<4>キャリア台紙の両面または片面に導電性インキを印刷した原紙を用いた導電性紙キャリアテープの製造方法。
<5>導電性インキの印刷層の厚みを0.1μm〜5μmの範囲内とし、表面抵抗率を10Ω/sq.〜1010Ω/sq.の範囲内とする前記4の導電性紙キャリアテープの製造方法。
<6>導電性インキは、導電性金属酸化物並びに導電性ポリマーのうちの少なくとも1種を含む前記4または5の導電性紙キャリアテープの製造方法。
<7>導電性インキは、酸化チタン粉末を10〜50質量%の範囲内で含む前記6の導電性紙キャリアテープの製造方法。
<8>導電性インキの粘度を100〜1000 mPa・sの範囲内とする前記4から7のうちのいずれかの導電性紙キャリアテープの製造方法。
<9>キャリア台紙は、抄造時密度が0.8〜1.0g/cmであり、含水率が、7%〜12%の範囲内である前記4から8のうちのいずれかの導電性紙キャリア台紙の製造方法。
<10>キャリア台紙をロール原反より送り出して導電性インキを印刷する前記4から9のうちのいずれかの導電性紙キャリア台紙の製造方法。
<11>ロール原反より送り出したキャリア台紙に搬送速度20〜80m/分において導電性インキを印刷し、50〜150℃の乾燥温度で製造する前記10の導電性紙キャリア台紙の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
前記第1の本発明の導電性紙キャリアテープによれば、キャリア台紙の表面または表裏面に導電性インキの印刷層を設ける導電加工によって、導電性のカーボンを内部複合化した紙の場合に比べて、輸送運搬時に部品との摩擦により発生する静電気は緩和され、はるかに効果的にカバーテープ剥離時の剥離帯電を防止することができる。しかも、導電性インキの印刷による導電加工であることから、製造は容易で、品質、性能の均質化、安定化が容易に図られ、製造コスト負担も過大なものとならない。これによって、微細化、小型化する電子部品、マイクロチップであってもその識別取出しを正確に、容易に行うことを可能とする。また、原紙の表層、表裏層を導電性インキの印刷層で封止しているので、従来の紙テープのように、表層の紙の発塵によるマウンター吸引(着)ノズルの詰りの発生という問題も生じにくく、ノズルの掃除の回数を減らすことができる。しかも導電性インキとして白色系のものを用いる場合には、マウンターセンターによる電子部品、マイクロチップの識別もより確実に行われることになる。
【0011】
第2、第3の発明によれば、以上のとおりの優れた効果は、より確実に安定して実現されることになる。
第4の発明の製造方法によれば、前記の優れた効果を有するキャリアテープが簡便な印刷加工の方法によって容易に製造される。品質、性能の制御も、導電性カーボンの複合化に比べてもはるかに容易に、かつ、確実に安定して実現される。
【0012】
第5から第11の発明によれば、このような効果がより顕著に実現される。また、白色の酸化チタンを用いる第7の発明によれば、白色の印刷層が確実に得られることになる。そして、第10、第11の発明によれば、目的とする導電性紙キャリアテープに用いる印刷物を効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】表裏両面に導電性インキの印刷層を設けた導電性紙キャリアテープの概要を示した斜視図である。
【図2】片面に導電性インキの印刷層を設けた導電性紙キャリアテープの概要を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の導電性紙キャリアテープは、たとえば、サイズ0603、0402、0201など(単位 mm/mm)のマイクロチップを輸送、保管し、組立て時に搬送できるようにするもので、図1および図2に例示したように、キャリア台紙(1)の表裏の両面もしくは表裏のいずれかの片面に導電性インキの印刷層(2)を設けて構成されている。
【0015】
ここで、キャリア台紙(1)は、所要の長さ(L)と幅(W)並びに厚み(T)を有し、長さ(L)は、ロール状に巻取り可能な長尺であってもよいし、あるいは適宜な長さに切断されていてもよい。寸法としてはT<W<Lである。たとえば導電性インキの印刷を施す場合としては、厚み(T)が0.1mm〜1mm、幅(W)が40mm〜1000mm、100m〜3000m巻きの長尺とすることができる。
【0016】
キャリア台紙(1)に用いる原紙は、従来より紙キャリアテープに用いられている各種の紙素材であってよい。その素材の組成構成は、印刷のための導電性インキとの親和性、密着性等を考慮して選択することができるが、原紙の含水率をコントロールしておくことが好ましい。通常、この含水率は7%〜12%の範囲である。
【0017】
このようなキャリア台紙(1)に印刷する導電性インキとしては、一般的に密着性の良好な紙を基材原紙としていることから、公知のものをはじめとして各種のものであってよいが、印刷性、密着性とともに、カバーテープの剥離時の剥離帯電による静電気の影響を緩和するとの効果の点からは、導電性金属酸化物並びに導電性ポリマーのうちの少なくとも1種類が含まれているものが好ましい。このうちの金属酸化物としては酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等の粒子や粉末が挙げられる。また、導電性ポリマーとしては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン等が挙げられる。なかでも、酸化チタンは、白色の印刷層を形成可能とすることから好適なものとして考慮される。
【0018】
導電性インキの組成としては、前記のとおりの導電性成分とともに、バインダー樹脂、溶剤等により構成することができ、公知の組成であってもよい。もちろん、導電性インキは市販品であってもよい。ただ、印刷性、そして密着性を考慮すると、導電性インキの粘度は、100〜1000 mPa・sの範囲内とすることが好ましい。また、酸化チタン粉末を導電性主成分として含むインキにおいては、これを10〜50質量%の範囲内とすることが好ましい。10質量%未満では、導電性の発現が難しくなり、50質量%を超える場合には印刷性が悪くなりやすい。
【0019】
酸化チタン含有の白色導電性インキとしての組成は、たとえば表1のものとして例示することができる。ここで、合成樹脂はバインダー成分として用いられるもので、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が代表的なものとして挙げられる。また、導電剤には金属酸化物である酸化チタンを用いた。
【0020】
【表1】

【0021】
上記の導電性インキの印刷に際しては、キャリアテープとしての品質、性能、つまり剥離帯電、摩擦帯電による静電気の影響の排除もしくは抑制と、テープとしての強度、柔軟性、耐久性等の観点から、印刷後の乾燥(硬化)された印刷層の厚みが0.1μm〜5μmの範囲内になるようにし、表面抵抗率が10Ω/sq.〜1010Ω/sq.の範囲内になるようにするのが好ましい。表面抵抗率が1011Ω/sq.を超える場合では、静電気の緩和作用が必ずしも十分でなく、10Ω/sq.未満では、効果に対してのコストパフォーマンスが必要以上となりやすい。
【0022】
以上のキャリア台紙に導電性インキを印刷した印刷物を、部品の大きさ、マウンターに合うようにスリット、パンチング、エンボス加工することによって導電性紙キャリアテープを作成することができる。
【実施例】
【0023】
本発明の実施例としては、厚みが約0.3mm、640mm幅、2,000m巻のロール原反の原紙を用いて、表1の組成の導電性インキを印刷機で印刷し、原紙の両面に、厚み1μmの印刷層を設けた。
【0024】
印刷に際しては、あらかじめ、搬送速度70m/分で送り出して、80℃の温度で加熱乾燥した。これにより原紙の含水率は7%〜12%にコントロールした。導電性インキの粘度は200〜250 mPa・Sとした。
【0025】
この導電性紙シートの表面抵抗率は2.13×10Ω/sq.であり、得られた導電性紙キャリアテープはマウンターにおいて0.2mm×0.4mmの電子部品の実装に用いたが、カバーテープの剥離帯電による静電気の影響は見られなかった。しかるに、導電性インキの粘度、印刷速度、乾燥温度の組み合わせにより、表面抵抗率を10Ω/sq.〜1010Ω/sq.の範囲に自由にコントロールできる特性をもった導電紙である事が証明された。
【符号の説明】
【0026】
1 キャリア台紙
2 導電性インキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア台紙の両面または片面に導電性インキの印刷層を有し、静電気の発生が緩和されていることを特徴とする導電性紙キャリアテープ。
【請求項2】
導電性インキの印刷層の厚みが0.1μm〜5μmの範囲内であって、表面抵抗率が10Ω/sq.〜1010Ω/sq.の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の導電性紙キャリアテープ。
【請求項3】
導電性インキの印刷層には導電性金属酸化物並びに導電性ポリマーのうちの少なくとも1種が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性紙キャリアテープ。
【請求項4】
キャリア台紙の両面または片面に導電性インキを印刷することを特徴とする導電性紙キャリアテープの製造方法。
【請求項5】
導電性インキの印刷層の厚みを0.1μm〜5μmの範囲内とし、表面抵抗率を10Ω/sq.〜1010Ω/sq.の範囲内とすることを特徴とする請求項4に記載の導電性紙キャリアテープの製造方法。
【請求項6】
導電性インキは、導電性金属酸化物並びに導電性ポリマーのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の導電性紙キャリアテープの製造方法。
【請求項7】
導電性インキは、酸化チタン粉末を10〜50質量%の範囲内で含むことを特徴とする請求項6に記載の導電性紙キャリアテープの製造方法。
【請求項8】
導電性インキの粘度を100〜1000Pa・sの範囲内とすることを特徴とする請求項4から7のうちのいずれか一項に記載の導電性紙キャリアテープの製造方法。
【請求項9】
キャリア台紙は、抄造時密度が、0.8〜1.0g/cmであり、含水率が、7%〜12%の範囲内であることを特徴とする請求項4から8のうちのいずれかの導電性紙キャリアテープの製造方法。
【請求項10】
キャリア台紙をロール原反より送り出して導電性インキを印刷することを特徴とする請求項4から9のうちのいずれか一項に記載の導電性紙キャリアテープの製造方法。
【請求項11】
ロール原反より送り出したキャリア台紙に、搬送速度60〜80m/分において導電性インキを印刷し、50〜150℃の乾燥温度で乾燥させたことを特徴とする請求項10に記載の導電性紙キャリアテープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−222030(P2010−222030A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70785(P2009−70785)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(393000881)株式会社マルアイ (10)
【出願人】(596112790)三徳商事株式会社 (2)
【出願人】(509082042)ジャパン エアロ ケミカ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】