説明

導電性組成物、その製造方法、上記導電性組成物の分散液および上記導電性組成物の応用物

【課題】 導電性が高く、透明性が高く、かつ耐熱性が優れた導電性高分子を提供し、それを用いて導電性が高く、透明性が高い帯電防止膜を提供し、また、それを用いて高温条件下における信頼性が高い固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】 数平均分子量1万〜30万のポリスチレンスルホン酸塩と芳香族スルホン酸塩とからなる有機スルホン酸塩であって、上記ポリスチレンスルホン酸塩のポリスチレンスルホン酸に対して芳香族スルホン酸塩の芳香族スルホン酸が質量基準で20〜50%である有機スルホン酸塩と、過硫酸塩とを用いてピロールまたはその誘導体を酸化重合して合成された導電性高分子を含み、濃度1質量%の分散液にしたときのpHが1.5〜4.5である導電性組成物を提供し、それを導電体として用いた帯電防止膜を構成し、また、それを固体電解質として用いて固体電解コンデンサを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、その製造方法、上記導電性組成物の分散液および上記導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜、帯電防止シートなどの帯電防止材、上記導電性組成物を固体電解質として用いた固体電解コンデンサなどの導電性組成物の応用物に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子は、その高い導電性により、タンタル固体電解コンデンサ、ニオブ固体電解コンデンサ、アルミニウム固体電解コンデンサなどの固体電解コンデンサの固体電解質や帯電防止材の導電体として用いられている。
【0003】
そして、この用途における導電性高分子としては、例えば、ピロールまたはその誘導体、チオフェンまたはその誘導体などを化学酸化重合または電解酸化重合することによって合成したものが用いられている。それらの酸化重合法のうち、電解酸化重合には高価な装置を必要とすることから、工業的には、そのような高価な装置を要しない化学酸化重合が向いていると言われていて、工業化は一般に化学酸化重合によって行われている。
【0004】
上記ピロールまたはその誘導体、チオフェンまたはその誘導体などの化学酸化重合を行う際のドーパントとしては、主として有機スルホン酸が用いられ、その中でも、芳香族スルホン酸が適しているといわれており、酸化剤としては遷移金属が用いられ、その中でも、第二鉄が適しているといわれていて、通常、芳香族スルホン酸の第二鉄塩がピロールまたはその誘導体やチオフェンまたはその誘導体などの化学酸化重合にあたっての酸化剤兼ドーパント剤として用いられている。
【0005】
そして、その芳香族スルホン酸の第二鉄塩の中でも、トルエンスルホン酸第二鉄塩やメトキシベンゼンスルホン酸第二鉄塩などが特に有用であるとされていて、それらを用いた導電性高分子の合成は、それらの酸化剤兼ドーパントをピロールまたはその誘導体、チオフェンまたはその誘導体と混合することにより行うことができ、簡単で、工業化に向いていると報告されている(特許文献1、特許文献2)。
【0006】
しかしながら、トルエンスルホン酸第二鉄塩を酸化剤兼ドーパントとして用いて得られた導電性高分子は、初期抵抗値や耐熱性において、必ずしも充分な特性を有さず、また、メトキシベンゼンスルホン酸第二鉄塩を酸化剤兼ドーパントとして用いて得られた導電性高分子は、トルエンスルホン酸第二鉄塩を用いた導電性高分子に比べて、初期抵抗値が低く、耐熱性にも優れているが、それでも、充分に満足できるほどの特性は得られなかった。
【0007】
また、化学酸化重合法で得られた導電性高分子を、固体電解コンデンサの固体電解質として用いる場合、化学酸化重合法で合成した導電性高分子は、通常、溶剤に対する溶解性がないため、タンタル、ニオブ、アルミニウムなどの弁金属の多孔体からなる陽極と、前記弁金属の酸化皮膜からなる誘電体層とを有する素子の上に直接導電性高分子を形成する必要がある。
【0008】
しかしながら、このように素子上に直接導電性高分子を形成することは、条件的に非常に難しい作業を強いられることになり、再現性が乏しく、工程管理が非常に難しくなるという問題があった。
【0009】
このような状況をふまえ、可溶化導電性高分子が積極的に検討されている(特許文献3)。この特許文献3によれば、ピロールを、ポリカルボン酸の存在下、過硫酸塩を用いて化学酸化重合した反応液を、アルカリ性にした後、水溶性アルコールを添加して生じた沈殿物を水性媒体に再分散することによって、ポリピロール系導電性高分子の分散体が得られると報告されている。
【0010】
しかしながら、これによって得られるポリピロールは、導電性が充分でなく、固体電解コンデンサの固体電解質として使用するには充分な特性を有さず、また、帯電防止材の導電体としても、さらなる低抵抗化、高透明性化が要望されている。
【0011】
【特許文献1】特開2003−160647号公報
【特許文献2】特開2004−265927号公報
【特許文献3】特許第3515799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のようなポリピロール系導電性高分子に関する従来技術の問題点を解決し、ピロールまたはその誘導体を化学酸化重合させて合成することにより、導電性が高く、透明性が高く、かつ耐熱性が優れた導電性高分子を提供し、それを導電体として用いて導電性が高く、透明性が高い帯電防止膜や帯電防止シートなどの帯電防止材を提供し、また、それを固体電解質として用いて高温条件下における信頼性が高い固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ピロールまたはその誘導体を特定のポリスルホン酸塩と芳香族スルホン酸塩とを特定の比率で併用した有機スルホン酸塩と、過硫酸塩とを用いて酸化重合させて導電性高分子を合成し、その導電性高分子を含み、濃度1質量%の分散液にしたときのpHを1.5〜4.5に調整するときは、導電性が高く、透明性が高く、耐熱性が優れた導電性組成物が得られることを見出し、それに基づいて本発明を完成するにいたった。
【0014】
すなわち、本発明は、数平均分子量1万〜30万のポリスチレンスルホン酸塩と芳香族スルホン酸塩とからなる有機スルホン酸塩であって、上記ポリスチレンスルホン酸塩のポリスチレンスルホン酸部分に対して芳香族スルホン酸塩の芳香族スルホン酸部分が質量基準で20〜50%(すなわち、ポリスチレンスルホン酸部分100質量部に対して芳香族スルホン酸部分が20〜50質量部)である有機スルホン酸塩と、過硫酸塩とを用いてピロールまたはその誘導体を酸化重合して合成された導電性高分子を含み、濃度1質量%の分散液にしたときのpHが1.5〜4.5である導電性組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、上記導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜、帯電防止シートに関し、さらに、本発明は、上記導電性組成物を固体電解質として固体電解コンデンサに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導電性が高く、透明性が高く、かつ耐熱性が優れた導電性組成物を提供することができる。従って、上記導電性高分子を導電体として用いることにより、導電性が高く、透明性が高い帯電防止膜や帯電防止シートなどの帯電防止材を提供することができる。
【0017】
また、上記導電性組成物を固体電解質として用いることにより、高温条件下においても信頼性が高い固体電解コンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、上記のように特定の有機スルホン酸塩と過硫酸塩を用いて、ピロールまたはその誘導体を酸化重合させるが、そのピロールまたはその誘導体としては、ピロールそのものはもとより、例えば、1−メチルピロール、1−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−メトキシピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジメトキシピロール、3,4−エチレンジオキシピロールなどのピロールの誘導体が用いられる。
【0019】
本発明において、ポリスチレンスルホン酸塩と芳香族スルホン酸塩とからなる有機スルホン酸塩は、導電性高分子の合成にあたって、主として、分散剤兼ドーパント剤として機能するが、そのうち、ポリスチレンスルホン酸塩は主としてピロールまたはその誘導体の酸化重合にあたって分散剤としての役割を果すとともに、ドーパントとしての役割も果し、芳香族スルホン酸塩はピロールまたはその誘導体の重合体に導電性を付与するドーパント剤としての役割を果す。
【0020】
そして、そのポリスチレンスルホン酸塩におけるポリスチレンスルホン酸としては数平均分子量が1万〜30万のものを用いるが、このポリスチレンスルホン酸塩の数平均分子量が1万より小さい場合は充分な分散性が得られず、また、ポリスチレンスルホン酸塩の数平均分子量が30万より大きくなると、理由は定かではないが、充分な導電性が得られなくなる。ポリスチレンスルホン酸塩としては数平均分子量が2万〜10万のものが特に好ましい。
【0021】
芳香族スルホン酸塩における芳香族スルホン酸としては、ベンゼン環、ナフタレン環、テトラリン環またはアントラキノン環を有するスルホン酸であり、その具体例としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、テトラリンスルホン酸、フェノールスルホン酸、アントラキノンスルホン酸などが挙げられるが、特に、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、テトラリンスルホン酸、フェノールスルホン酸は高い導電性が得られるので好ましい。
【0022】
これらポリスチレンスルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩における塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などが挙げられる。
【0023】
そして、本発明においては、この数平均分子量1万〜30万のポリスチレンスルホン酸塩のポリスチレンスルホン酸部分に対して芳香族スルホン酸塩の芳香族スルホン酸部分が質量基準で20〜50%であることを必要としているが、これは次の理由に基づいている。すなわち、ポリスチレンスルホン酸部分に対して芳香族スルホン酸部分が質量基準で20%より少ない場合は、ドーパントとして高分子(ポリマー)中に取り込まれる芳香族スルホン酸の量が少ないため、充分な導電性が得られず、また、ポリスチレンスルホン酸部分に対して芳香族スルホン酸部分が質量基準で50%より多い場合は、粒子化してしまい、分散体として使用できなくなってしまうからである。このポリスチレンスルホン酸部分に対する芳香族スルホン酸部分の量として特に好ましいのは、芳香族スルホン酸部分がポリスチレンスルホン酸部分に対して質量基準で25〜45%である。
【0024】
本発明において、過硫酸塩は、酸化剤としての役割を果すが、この過硫酸塩としては、特に限定されることはなく、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどを用いることができる。特に過硫酸アンモニウムはナトリウム、カリウムなどの金属元素を含まないので好ましい。
【0025】
上記有機スルホン酸塩、過硫酸塩を用いてのピロールまたはその誘導体の酸化重合は、水の存在下、0〜50℃で行うのが好ましい。0℃より低い温度では、析出が生じて重合が進行せず、50℃より高温になると、反応が劇的に進むため、副反応が起きることにより、得られる導電性高分子の導電性が悪くなるおそれがある。
【0026】
上記のようなピロールまたはその誘導体の酸化重合により得られた導電性高分子を含む水分散液は、強酸であり、1質量%濃度の時のpHは1以下である。そして、このような導電性高分子の水分散液を乾燥して得られる導電性高分子は導電率が低く、充分な導電性を有しない。
【0027】
そこで、本発明では、上記のような酸化重合後の導電性高分子の水分散液から陽イオンや過硫酸塩などの低分子成分を取り除いた後、アンモニアやアミン類、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンや、イミダゾール類、例えば、2−メチルイミダゾールなどを任意の量添加することにより、1質量%濃度に調整したときの分散液のpHが1.5〜4.5になるように調整し、それを乾燥することによって、導電性が高い導電性組成物を得るようにしている。なお、ピロールまたはその誘導体の酸化重合により得られるものはピロール系の導電性高分子であるが、本発明では、上記のように、アンモニア、アミン類、イミダゾール類などの添加により、pH調整しているので、導電性高分子以外に、上記のようなpH向上剤に由来するものを含んでいるので、導電性組成物と呼んでいる。
【0028】
本発明において、上記導電性組成物の1質量%分散液のpHを1.5〜4.5にしているのは、pHを1.5以上にすることで、乾燥することより得られる導電性組成物の導電率が向上する。しかし、pHを4.5より高くすると、脱ドープ状態になり、乾燥することにより得られる導電性組成物の導電率は悪くなる。そして、上記1質量%分散液のpHは上記範囲内で2以上にすることが好ましく、また、4以下にすることが好ましい。アルミコンデンサの固体電解質や帯電防止材の導電体として用いる場合も、強酸であれば扱いにくいが、pH1.5〜4.5であれば、充分に使用可能である。
【0029】
上記のようにして得られる本発明の導電性組成物は、最終的な使用形態では固形分になるが、その使用にあたっては、水に分散して分散液の状態にしておくことが取り扱いやすく、その際の濃度としては1〜40質量%が好ましい。これは、導電性組成物の分散液の濃度が1質量%より低い場合は、乾燥したときに導電性の高い導電性組成物が得られにくくなり、40質量%より高い場合は、粘度が高くなりすぎて、取扱いにくくなるからである。そして、この導電性組成物の分散液の濃度は、上記範囲内で、4質量%以上がより好ましく、また、10質量%以下がより好ましい。
【0030】
本発明の導電性組成物の分散液には、水溶性溶剤を混合できることから、バインダ樹脂の選択範囲が広がる。もとより、水溶性でない樹脂も配合可能である。このようなバインダ樹脂の選択範囲の広がりにより、導電性組成物の分散液をシートや布に塗布して、シートや布の帯電防止加工をする際の取扱性や密着性を向上させることができる。
【0031】
なお、上記導電性組成物の分散液は、全固形分(固形分:105℃で2時間乾燥したときの残留物)を濃度1質量%にしたときに、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Ce、Ag、Zn、Cd、Alなどの金属元素の総含量が100ppm以下であることが好ましい。このように導電性組成物中の金属元素の上記条件下での総含量を100ppm以下にしておくことによって、導電性組成物の耐熱性を向上できる。
【0032】
本発明で用いるポリスチレンスルホン酸塩は、例えば、次のようにして得ることができる。
【0033】
スチレンスルホン酸ナトリウムを例えば純水に溶解し、過酸化水素、過硫酸塩、遷移金属のような酸化剤と共存させた状態で重合させることにより得ることができ、上記のような酸化剤の添加量を調整することにより特定の分子量に調整することができる。
【0034】
そして、上記のようにして得られたポリスチレンスルホン酸塩の水溶液に芳香族スルホン酸塩を特定量添加して溶解した後、酸化剤としての過硫酸塩、さらには必要に応じて少量の遷移金属塩を添加・混在させた中に、モノマーのピロールまたはその誘導体を添加していくことによって、酸化重合反応が進行する。このとき発熱が起きるため、水冷、もしくは氷冷し、反応温度を前記のように0〜50℃に保つ必要がある。このようにして導電性組成物の粗分散液が得られる。次に、この段階で直ちに陽イオン交換樹脂で陽イオンを取り除いても良いが、超音波ホモジナイザーや遊星ボールミルなどの分散機で分散させた後、陽イオン交換樹脂で陽イオンを除去する方が残留する金属元素量などが少なくなるので好ましい。その後、エタノール沈殿法や限外濾過法により、過硫酸塩などの低分子成分をとり除いた後、前記のように、アンモニア、アミン類、イミダゾール類などを添加して、pHを前記のように特定条件下で1.5〜4.5になるように調整することにより本発明の導電性組成物が水分散液の状態で得られる。
【0035】
上記のような水分散液から水を除去して得られる本発明の導電性組成物は、導電性が高く、透明性が高く、かつ耐熱性が優れていることから、帯電防止材の導電体として使用でき、前記のような帯電防止材に応用することができるし、また、導電性が高く、耐熱性が優れていることから、タンタル固体電解コンデンサ、ニオブ固体電解コンデンサ、アルミニウム固体電解コンデンサなどの固体電解コンデンサの固体電解質として好適に用いられ、高温条件下における信頼性が高い固体電解コンデンサを提供することができる。
【0036】
そして、本発明の導電性組成物を上記のような用途に応用する場合、上記のようにして得られる導電性組成物の分散液を用いるのが好ましい。
【0037】
例えば、帯電防止材に応用する場合、上記導電性組成物の分散液をそのままシート(フィルムも含む)や布などに塗布して帯電防止加工をすることもできるが、バインダ樹脂を添加した方がシートや布などの基材への密着性が向上するので好ましい。そのようなバインダ樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリロニトリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック樹脂などが挙げられるが、特にポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂などが好ましい。
【0038】
また、本発明の導電性組成物をタンタル固体電解コンデンサ、ニオブ固体電解コンデンサ、アルミニウム積層型固体電解コンデンサなどの固体電解質として応用する場合、タンタル、ニオブ、アルミニウムなどの弁金属からなる陽極と、その陽極上に形成した上記弁金属の酸化皮膜からなる誘電体層とで構成したコンデンサ素子を導電性組成物の分散液中へ浸漬し、引き上げて乾燥する操作を繰り返して、導電性組成物からなる固体電解質層を形成した後、カーボンペースト、銀ペーストを付けた後、外装してタンタル固体電解コンデンサ、ニオブ固体電解コンデンサ、アルミニウム積層型固体電解コンデンサなどを作製することができる。
【0039】
あるいは、予め酸化剤、例えば有機スルホン酸第二鉄アルコール溶液とモノマーのアルコール溶液、例えば3,4−エチレンジオキシチオフェンのアルコール溶液とを混合した溶液に、予め作製しておいた前記のような誘電体層を有するコンデンサ素子を浸漬し、引き上げた後、室温で酸化重合を行い、純水に浸漬し、引き上げ、洗浄した後、乾燥することで導電性高分子を合成した後、本発明の導電性組成物の分散液に浸漬し、引き上げて乾燥する工程を繰り返して導電性組成物からなる固体電解質層を形成しても良く、またその逆の形態をとってもよい。このようにして導電性組成物で覆われた素子をカーボンペースト、銀ペーストで覆った後、外装してタンタル固体電解コンデンサ、ニオブ固体電解コンデンサ、アルミニウム積層型固体電解コンデンサなどを作製することができる。
【0040】
本発明の導電性組成物をアルミニウム巻回型固体電解コンデンサの固体電解質として用いる場合は、陽極を構成することになるアルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、化成処理を行ってアルミニウムの酸化皮膜からなる誘電体層を形成して構成したコンデンサ素子の陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して作製したコンデンサ素子を本発明の導電性組成物の分散液に浸漬し、引き上げ、乾燥した後、上記エッチングによりアルミニウム箔に形成された細孔に入っていない導電性組成物部分を取り除くため、純水に含浸し、引き上げた後、乾燥する。この操作を何回も繰り返し、導電性組成物からなる所望の固体電解質層を形成した後、外装材で外装して、アルミニウム巻回型固体電解コンデンサを作製することができる。
【0041】
なお、本発明の導電性組成物は、導電性が高く、耐熱性が優れているので、それらの特性を利用して、上記の固体電解コンデンサの固体電解質や帯電防止材の導電体以外にも、バッテリーの正極活物質、耐腐食用塗料の基材樹脂などとしても好適に用いることができる。
【実施例】
【0042】
つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例などにおいて濃度を示す%は質量%である。
【0043】
実施例1
数平均分子量が6万のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー社製、商品名:PS−5)の20%水溶液200gを2Lのビーカーに入れ、過硫酸アンモニウム30gを添加した後、スターラーで攪拌して溶解した。その後、ナフタレンスルホン酸ナトリウムを15g添加し、純水で1,000gに調整した後、スターラーで攪拌して、溶解した。上記ビーカーの周囲を氷で冷やし、スターラーで攪拌しながら、ピロールの100%溶液18mlをゆっくり滴下し、10〜30℃の温度を保ちながら3時間反応(酸化重合)を行った。
【0044】
反応終了後、陽イオン交換樹脂アンバーライト120B(商品名、オルガノ社製)を100g添加し、1時間スターラーで攪拌した後、濾過する操作を3回繰り返し、陽イオンをすべて除去した。その後、この溶液に純水9Lを添加し、限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で800mlまで濃縮する操作を4回繰り返して、低分子成分を除去した。その後、2−メチルイミダゾールを10g添加し、溶解した後、純水で固形分(105℃で2時間乾燥したときの残存量)濃度が6%になるように調整を行って、導電性組成物の分散液を得た。この実施例1におけるポリスチレンスルホン酸ナトリウムのポリスチレンスルホン酸部分に対するナフタレンスルホン酸ナトリウムのナフタレンスルホン酸部分は質量基準で38%であった。
【0045】
この導電性組成物を濃度1%になるように純水で希釈してICP発光分光分析装置(リガク社製)により、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Ce、Ag、Zn、Cd、Alの含有量を測定したところ、それらの金属元素の総含量は12ppmであり、また、上記導電性組成物の1%分散液のpHは2.2であった。
【0046】
実施例2
数平均分子量が2万のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー社製、商品名:PS−1)の水溶液200gを容器に入れ、その中に過硫酸アンモニウムを30g添加した後、スターラーで攪拌して溶解した。次いで、ナフタレンスルホン酸ナトリウムを12g添加し、水で1,000gに調整した後、スターラーで攪拌して、溶解した。上記反応容器の周囲を氷で冷やして、スターラーで攪拌しながら、ピロールの100%溶液18mlをゆっくり滴下し、10〜30℃の温度を保ちながら3時間反応(酸化重合)を行った。
【0047】
反応終了後、陽イオン交換樹脂アンバーライト120B(商品名、オルガノ社製)を100g添加し、1時間スターラーで攪拌した後、濾過する操作を3回繰り返し、陽イオンをすべて除去した。その後、その濾液に水9Lを添加し、限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で800mlまで濃縮する操作を4回繰り返して、低分子成分を除去した。その後、2−メチルイミダゾールを10g添加し、溶解した後、水を加えて固形分濃度が6%になるよう調整して、導電性組成物の分散液を得た。この実施例2におけるポリスチレンスルホン酸ナトリウムのポリスチレンスルホン酸部分に対するナフタレンスルホン酸ナトリウムのナフタレンスルホン酸部分は質量基準で30%であった。
【0048】
上記導電性組成物の分散液に水を加えて固形分濃度が1%になるように希釈し、実施例1と同様に金属元素量を測定したところ、金属元素の総含量は10ppmであり、また、pHは2.1であった。
【0049】
実施例3
ナフタレンスルホン酸ナトリウム15gに代えてテトラリンスルホン酸ナトリウム12gを用いた以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の分散液を得た。この実施例3におけるポリスチレンスルホン酸ナトリウムのポリスチレンスルホン酸部分に対するテトラリンスルホン酸ナトリウムのテトラリンスルホン酸部分は質量基準で30%であった。
【0050】
上記導電性組成物の分散液に水を加えて固形分濃度が1%になるように希釈し、実施例1と同様に金属元素量を測定したところ、金属元素の総含量は13ppmであり、また、pHは2.0であった。
【0051】
実施例4
ナフタレンスルホン酸ナトリウム15gに代えてナフタレンジスルホン酸ジナトリウム15gを用いた以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の分散液を得た。この実施例4におけるポリスチレンスルホン酸ナトリウムのポリスチレンスルホン酸部分に対するナフタレンジスルホン酸ジナトリウムのナフタレンジスルホン酸部分は質量基準で36%であった。
【0052】
上記導電性組成物の分散液に水を加えて固形分濃度が1%になるように希釈し、実施例1と同様に金属元素量を測定したところ、金属元素の総含量は9ppmであり、また、pHは2.1であった。
【0053】
実施例5
ナフタレンスルホン酸ナトリウム15gに代えてナフタレントリスルホン酸トリナトリウム17gを用いた以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の分散液を得た。この実施例5におけるポリスチレンスルホン酸ナトリウムのポリスチレンスルホン酸部分に対するナフタレントリスルホン酸トリナトリウムのナフタレントリスルホン酸部分は質量基準で40%であった。
【0054】
上記導電性組成物の分散液に水を加えて固形分濃度が1%になるように希釈し、実施例1と同様に金属元素量を測定したところ、金属元素の総含量は9ppmであり、また、pHは2.2であった。
【0055】
実施例6
ナフタレンスルホン酸ナトリウム15gに代えてフェノールスルホン酸ナトリウム12gを用いた以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の分散液を得た。この実施例6におけるポリスチレンスルホン酸ナトリウムのポリスチレンスルホン酸部分に対するフェノールスルホン酸ナトリウムのフェノールスルホン酸部分は質量基準で30%であった。
【0056】
上記導電性組成物の分散液に水を加えて固形分濃度が1%になるように希釈し、実施例1と同様に金属元素量を測定したところ、金属元素の総含量は11ppmであり、また、pHは2.0であった。
【0057】
実施例7
水9Lを添加し、限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で800mlまで濃縮する操作を4回繰り返し行った後、最後に200mlまで濃縮を行い、エタノールを600ml添加した以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の分散液を得た。この実施例7における有機スルホン酸塩の構成は実施例1と同様であることから、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムのポリスチレンスルホン酸部分に対するナフタレンスルホン酸ナトリウムのナフタレンスルホン酸部分は、実施例1と同様に質量基準で38%である。
【0058】
上記導電性組成物の分散液に水を加えて固形分濃度が1%になるように希釈し、実施例1と同様に金属元素量を測定したところ、金属元素の総含量は13ppmであり、また、pHは2.2であった。
【0059】
実施例8
前記条件下でのpHが3.0になるまで、2−メチルイミダゾールを添加した以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の分散液を得た。この実施例8における有機スルホン酸塩の構成は実施例1と同様であることから、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムのポリスチレンスルホン酸部分に対するナフタレンスルホン酸ナトリウムのナフタレンスルホン酸部分は実施例1と同様に質量基準で38%であった。
【0060】
上記導電性組成物の分散液に水を加えて固形分濃度が1%になるように希釈し、実施例1と同様に金属元素量を測定したところ、金属元素の総含量は10ppmであり、また、pHは上記のように3.0であった。
【0061】
比較例1
前記条件下でのpHが5.3になるまで、2−メチルイミダゾールを添加した以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の分散液を得た。
【0062】
上記導電性組成物の分散液に水を加えて固形分濃度が1%になるように希釈し、実施例1と同様に金属元素量を測定したところ、金属元素の総含量は12ppmであり、また、pHは上記のように5.3であって、本発明で規定するpH1.5〜4.5の範囲から外れていた。
【0063】
比較例2
数平均分子量6万のポリスチレンスルホン酸ナトリウムの20%水溶液200gに代えて数平均分子量2,000のポリスチレンスルホン酸ナトリウムの20%水溶液200gを用いて、限外濾過装置を使用するところまで実施例1と同じ操作を行った。しかし、反応物が粒子化しており、限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5,000〕で脱塩を行うのは無理であった。
【0064】
比較例3
数平均分子量6万のポリスチレンスルホン酸ナトリウムの20%水溶液200gに代えて数平均分子量80万のポリスチレンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液800gを用いた以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の分散液を得た。
【0065】
上記導電性組成物の分散液に水を加えて固形分濃度が1%になるように希釈し、実施例1と同様に金属元素量を測定したところ、金属元素の総含量は11ppmであり、また、pHは2.0であった。
【0066】
比較例4
2−メチルイミダゾール10gを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の分散液を得た。
【0067】
上記導電性組成物の分散液に水を加えて固形分濃度が1%になるように希釈し、実施例1と同様に金属元素量を測定したところ、金属元素の総含量は9ppmであり、また、pHは1.0であって、本発明で規定するpH1.5〜4.5の範囲から外れていた。
【0068】
比較例5
数平均分子量6万のポリスチレンスルホン酸ナトリウムの20%水溶液200gに代えて数平均分子量10万のアラビアガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)40gを用い、2−メチルイミダゾールを3g添加した以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の分散液を得た。
【0069】
上記導電性組成物の分散液に水を加えて固形分濃度が1%になるように希釈し、実施例1と同様に金属元素量を測定したところ、金属元素の総含量は12ppmであり、また、pHは2.3であった。
【0070】
比較例6
ナフタレンスルホン酸ナトリウムの添加量を15gから4gに変えた以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の分散液を得た。
【0071】
この比較例6におけるポリスチレンスルホン酸ナトリウムのポリスチレンスルホン酸部分に対するナフタレンスルホン酸ナトリウムのナフタレンスルホン酸部分は質量基準で10%であり、本発明で規定する20〜50%の範囲から外れていた。
【0072】
比較例7
ナフタレンスルホン酸ナトリウムの添加量を15gから40gに変え、限外濾過装置を使用する工程までは実施例1と同じ操作を行った。しかし、反応物がゲル化しており、限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で脱塩を行うことができなかった。
【0073】
なお、この比較例7におけるポリスチレンスルホン酸ナトリウムのポリスチレンスルホン酸部分に対するナフタレンスルホン酸ナトリウムのナフタレンスルホン酸部分は質量基準で100%であり、本発明で規定する20〜50%の範囲から外れていた。
【0074】
つぎに、上記実施例1〜8および比較例1、3〜6のように、導電性組成物が得られたものについて、その導電率を調べた。その結果を表1に示す。なお、その測定方法は以下の通りである。
【0075】
導電率の測定方法:
実施例1〜8および比較例1、3〜6の各導電性組成物の分散液それぞれ100gに対し、ポリビニルアルコールを1.5g添加し、スターラーで攪拌することにより完全に溶解した。その後、日本精機製作所株式会社製US−T300型超音波装置により2分間分散処理を行い、東洋濾紙社製のNo.131の濾紙で濾過した。その濾液を2.8cm×4.8cmのガラスプレートの上に50μl滴下し、No.8のバーコーターで均一にした後、60℃の乾燥機で30分間乾燥した。この操作をもう一度繰り返した後、導電率を室温(約25℃)下でJIS K 7194に準じて4探針方式の電導度測定器〔三菱化学製MCP−T600(商品名)〕により測定した。なお、測定は、各試料とも、5点ずつについて行い、表1に示す数値はその5点の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものであり、以下においても同様である。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示すように、実施例1〜8の導電性組成物は、比較例1、3〜6の導電性組成物に比べて、導電率が高く、導電性が優れていた。
【0078】
つぎに、上記導電率測定後の実施例1〜8および比較例1、3〜6の試料(ポリピロール系導電性組成物膜)をそのセラミックプレートと共に150℃の恒温槽中に静置し、24時間貯蔵後に上記プレートを取り出し、その導電性組成物膜の導電率を前記と同様に測定し、その測定結果に基づき貯蔵後の導電率の保持率を調べた。その結果を表2に示す。
【0079】
導電率の保持率は初期導電率(表1に記載の導電率)で割り、パーセント(%)で示したものである。その導電率の保持率を算出するための式は次の通りである。
【0080】
【化1】

【0081】
【表2】

【0082】
表2に示すように、実施例1〜8は、比較例1、3〜6に比べて、高温(150℃)での貯蔵後の導電率の保持率が高く、耐熱性が優れていた。
【0083】
[固体電解コンデンサとしての評価]
つぎに、本発明の導電性組成物を固体電解コンデンサの固体電解質として用いた場合の評価を以下の実施例9〜16で示す。
【0084】
実施例9
タンタル焼結体を、濃度が0.1%のリン酸水溶液に浸漬した状態で、20Vの電圧を印加することによって化成処理を行い、タンタル焼結体の表面にタンタルの酸化皮膜からなる誘電体層を形成した。
【0085】
次に、濃度が35%の3,4−エチレンジオキシチオフェン溶液(エタノール溶液)に上記タンタル焼結体を浸漬し、1分後に取り出し、5分間放置した後、あらかじめ用意しておいた濃度が50%のフェノールスルホン酸ブチルアミン水溶液(pH5)と濃度が30%の過硫酸アンモニウム水溶液とを混合した混合物からなる酸化剤兼ドーパント溶液中に浸漬し、30秒間後に取り出し、室温で30分間放置した後、50℃で10分間加熱して、酸化重合を行った。その後、純水中に上記タンタル焼結体を浸漬し、30分間放置した後、取り出して70℃で30分間乾燥した。この操作を10回繰り返した後、上記タンタル焼結体を実施例1の導電性組成物の分散液に浸漬し、30秒後に取り出し、70℃で30分間乾燥した。この操作を2回繰り返した後、150℃で30分間放置した後、カーボンペースト、銀ペーストで導電性組成物層を覆ってタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0086】
実施例10
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例2の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例9と同様にタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0087】
実施例11
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例3の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例9と同様にタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0088】
実施例12
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例4の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例9と同様にタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0089】
実施例13
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例5の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例9と同様にタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0090】
実施例14
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例6の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例9と同様にタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0091】
実施例15
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例7の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例9と同様にタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0092】
実施例16
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例8の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例9と同様にタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0093】
比較例8
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、比較例1の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0094】
比較例9
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、比較例3の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0095】
比較例10
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、比較例4の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0096】
比較例11
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、比較例5の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0097】
比較例12
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、比較例6の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例1と同様にタンタル固体電解コンデンサを作製した。
【0098】
上記実施例9〜16および比較例8〜12のタンタル固体電解コンデンサについて、ESRおよび静電容量を測定した。その結果を表3に示す。なお、ESRおよび静電容量の測定方法は次の通りである。
【0099】
ESR:
Hewlett−Packard社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃、
100kHzでESRを測定した。
静電容量:
Hewlett−Packard社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃、
120kHzで静電容量を測定した。
なお、測定は、各試料とも、20個ずつについて行い、ESRおよび静電容量に関して表3に示す数値は、その20個の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものである。
【0100】
【表3】

【0101】
表3に示すように、実施例9〜16のタンタル固体電解コンデンサは、比較例8〜12のタンタル固体電解コンデンサに比べて、ESRが小さく、また、静電容量も大きく、タンタル固体電解コンデンサとして優れていた。
【0102】
つぎに、上記実施例9〜16および比較例8〜12のタンタル固体電解コンデンサから、それぞれ無作為に選んだ20個ずつのタンタル固体電解コンデンサを125℃で200時間貯蔵した後、前記と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を表4に示す。なお、表4に示す数値は、それぞれ20個の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものである。
【0103】
【表4】

【0104】
表4に示すように、実施例9〜16のタンタル固体電解コンデンサは、125℃で200時間という高温長時間での貯蔵をした場合でも、ESRの増加が少なく、かつ静電容量の低下が少なく、耐熱性が優れていた。
【0105】
[帯電防止膜としての評価]
以下の実施例17〜23では帯電防止膜(帯電防止フィルム)としての評価を示す。
【0106】
実施例17
実施例1の導電性組成物の分散液100gに対し、ポリビニルアルコール0.5gと水溶性ポリエチレン樹脂〔互応化学工業社製プラスコートZ−561(商品名)〕12gを添加した後、純水300gを添加し、スターラーで攪拌することにより完全に溶解した。その後、日本精機株式会社製T−300型超音波装置により2分間分散処理を行い、東洋濾紙社製のNo.131の濾紙で濾過した。その濾液を2.8cm×4.8cmのポリエチレンシートの上に50μl滴下し、No.2のバーコーターで均一にしたのち、50℃で10分間乾燥し、さらに、120℃で1分間乾燥して、導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜を形成した。
【0107】
実施例18
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例2の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例17と同様にして、導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜を形成した。
【0108】
実施例19
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例3の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例17と同様にして、導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜を形成した。
【0109】
実施例20
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例4の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例17と同様にして、導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜を形成した。
【0110】
実施例21
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例5の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例17と同様にして、導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜を形成した。
【0111】
実施例22
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例6の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例17と同様にして、導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜を形成した。
【0112】
実施例23
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、実施例7の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例17と同様にして、導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜を形成した。
【0113】
比較例13
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、比較例1の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例17と同様にして、導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜を形成した。
【0114】
比較例14
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、比較例3の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例17と同様にして、導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜を形成した。
【0115】
比較例15
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、比較例4の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例17と同様にして、導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜を形成した。
【0116】
比較例16
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、比較例5の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例17と同様にして、導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜を形成した。
【0117】
比較例17
実施例1の導電性組成物の分散液に代えて、比較例6の導電性組成物の分散液を用いた以外は、実施例17と同様にして、導電性組成物を導電体として用いた帯電防止膜を形成した。
【0118】
上記のようにして形成された実施例17〜23および比較例13〜17の帯電防止膜の表面抵抗を室温(約25℃)下でJIS K 7194に準じて4探針方式の電導度測定器〔三菱化学社製MCP−T600(商品名)〕により測定した。また、上記帯電防止膜の可視光透過率(400nm〜700nmの平均値)を島津社製UV3100を用いて測定した。それらの結果を表5に示す。なお、測定は、各試料とも、5点ずつについて行い、表5に示す数値はその5点の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものである。
【0119】
【表5】

【0120】
表5に示すように、実施例17〜23の帯電防止膜は、比較例13〜17の帯電防止膜に比べて、表面抵抗が小さく、また、可視光透過率も同等またはそれ以上であって、帯電防止膜として優れていた。これは、それら実施例17〜23の帯電防止膜に導電体として用いた導電性組成物が導電性が高く、かつ透明性が高いことによるものであると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が1万〜30万のポリスチレンスルホン酸塩と芳香族スルホン酸塩とからなる有機スルホン酸塩であって、上記ポリスチレンスルホン酸塩のポリスチレンスルホン酸部分に対して芳香族スルホン酸塩の芳香族スルホン酸部分が質量基準で20〜50%である有機スルホン酸塩と、過硫酸塩とを用いてピロールまたはその誘導体を酸化重合して合成された導電性高分子を含み、濃度1質量%の分散液にしたときのpHが1.5〜4.5であることを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
芳香族スルホン酸塩が、ナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンジスルホン酸塩、ナフタレントリスルホン酸塩、テトラリンスルホン酸塩およびフェノールスルホン酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の導電性組成物。
【請求項3】
数平均分子量が1万〜30万のポリスチレンスルホン酸塩と芳香族スルホン酸塩とからなる有機スルホン酸塩であって、上記ポリスチレンスルホン酸塩のポリスチレンスルホン酸部分に対する芳香族スルホン酸塩の芳香族スルホン酸部分が質量基準で20〜50%である有機スルホン酸塩と、過硫酸塩とを用いて、水の存在下、ピロールまたはその誘導体を0〜50℃で酸化重合して導電性高分子を合成し、有機カチオンで中和する工程を経由して、上記導電性高分子を含み、濃度1%の分散液にしたときのpHが1.5〜4.5の導電性組成物を製造することを特徴とする導電性組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の導電性高分子を水に1〜40質量%の濃度で分散したことを特徴とする導電性組成物の分散液。
【請求項5】
アルコールを含有する請求項4記載の導電性組成物の分散液。
【請求項6】
バインダ樹脂を含有する請求項4または5記載の導電性組成物の分散液。
【請求項7】
請求項1または2記載の導電性組成物を導電体として用いたことを特徴とする帯電防止膜。
【請求項8】
シート基材の少なくとも一方の面に請求項8記載の帯電防止膜を形成したことを特徴とする帯電防止シート。
【請求項9】
請求項1または2記載の導電性組成物を固体電解質として用いたことを特徴とする固体電解コンデンサ。


【公開番号】特開2009−1625(P2009−1625A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162034(P2007−162034)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【Fターム(参考)】