説明

導電性組成物

【課題】製膜後に加熱しなくても、高導電性を維持できる導電性膜を提供する。
【解決手段】溶剤に可溶である、ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子と、下記式(1)で表わされ、互いに隣接しない2以上の水酸基を有する化合物と、を含み、前記化合物と前記π共役系導電性高分子の重量比(化合物[kg]/π共役系導電性高分子[kg])が、0.01〜5.0である導電性組成物。


(式中、Rは炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン原子、カルボン酸基、アミノ基、SH基、スルホン酸基、又は水酸基であり、複数のRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。nは0〜6の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子として、ポリアニリン等は周知の材料である。ポリアニリンは、その電気的特性に加え、導電性を示す状態で酸素等に対して優れた安定性を示すという特性を有する。
ポリアニリンは、安価なアニリンから比較的容易に合成できる。例えば、特許文献1は簡便かつ高電導のポリアニリン組成物の製造方法を開示している。特許文献1のポリアニリン組成物は、有機溶剤に溶解しているポリアニリンとプロトン酸の複合体に、少量のフェノール性水酸基を有する化合物を添加したものである。しかし、当該方法で得られるポリアニリンは、空気中での耐久性は必ずしも高いとはいえなかった。例えば、特許文献1の方法で得られたポリアニリンからなる膜厚50nm程度のフィルムを空気中に放置すると、フィルムの抵抗値が1日で約10倍上昇することがあった。
【0003】
かかる課題に対し、本発明者は鋭意研究を重ね、上述した特許文献1のポリアニリン複合体と、所定の化合物又は所定の化合物の混合物を用いた場合、導電性が高く、かつ空気中での劣化が抑制できるポリアニリン成形体が得られることを見出している(特許文献2参照。)。
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、性能発現のため導電膜の製膜後に80℃で加熱する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2005/052058号パンフレット
【特許文献2】特開2009−84554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、製膜後に加熱しなくても、高導電性を維持できる導電性膜を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の導電性組成物等が提供される。
1.溶剤に可溶である、ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子と、下記式(1)で表わされ、互いに隣接しない2以上の水酸基を有する化合物と、を含み、前記化合物と前記π共役系導電性高分子の重量比(化合物[kg]/π共役系導電性高分子[kg])が、0.01〜5.0である導電性組成物。
【化1】

(式中、Rは炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン原子、カルボン酸基、アミノ基、SH基、スルホン酸基、又は水酸基であり、複数のRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。nは0〜6の整数である。)
2.少なくとも下記(a)及び(b)を原料として用い、下記化合物(b)と下記π共役系導電性高分子(a)の重量比(化合物[kg]/前記π共役系導電性高分子[kg])が0.01〜5.0である導電性組成物。
(a)溶剤に可溶である、ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子
(b)下記式(1)で表わされ、互いに隣接しない2以上の水酸基を有する化合物
【化2】

(式中、Rは炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン原子、カルボン酸基、アミノ基、SH基、スルホン酸基、又は水酸基であり、複数のRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。nは0〜6の整数である。)
3.溶剤に可溶である、ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子を含み、下記式(A)及び式(B)を満たす導電性組成物。
0.01≦S・・・(A)
1.0≦R/R≦3.0・・・(B)
(Sは、下記で得られた成形体の、4端子法により測定された導電度[S/cm]である。
は、下記で得られた成形体の、4端子法により測定された抵抗値である。
Rは、下記で得られた成形体を、25℃、相対湿度60%の空気中で3日間経過させた時の、4端子法により測定された抵抗値である。
前記成形体は、パターニングされたインジウム錫酸化物電極を形成したガラス基板上に、前記導電性組成物1mlを、25℃、相対湿度60%の空気中で、3000rpmで1分間、スピンコート法により塗布し、25℃、相対湿度60%の空気中で5分間放置して得られたものである。)
4.前記ドープされたπ共役系導電性高分子が、プロトネーションされた置換もしくは非置換ポリアニリン、プロトネーションされた置換もしくは非置換ポリピロール、又はプロトネーションされた置換もしくは非置換ポリチオフェンのいずれかである1〜3のいずれかに記載の導電性組成物。
5.前記π共役系導電性高分子が、有機スルホン酸でドープされている1〜4のいずれかに記載の導電性組成物。
6.π共役系導電性高分子と、下記式(1)で表わされ、互いに隣接しない2以上の水酸基を有する化合物と、を含み、前記化合物と前記π共役系導電性高分子の重量比(化合物/π共役系導電性高分子)が、0.01〜5.0であり、
前記π共役系導電性高分子が、プロトネーションされた置換もしくは非置換ポリアニリンであり、前記π共役系導電性高分子が、有機スルホン酸でドープされている、導電性組成物。
【化3】

(式中、Rは炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン原子、カルボン酸基、アミノ基、SH基、スルホン酸基、又は水酸基であり、複数のRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。nは0〜6の整数である。)
7.さらに溶剤を含む1〜6のいずれかに記載の導電性組成物。
8.前記化合物と前記溶剤の重量比(化合物[kg]/溶媒[kg])が、0.0004以上0.4以下である7に記載の導電性組成物。
9.基材と、前記基材上に積層されている1〜6のいずれかに記載の導電性組成物と、を含む、導電性積層体。
10.基材と、前記基材上に積層されている1〜6のいずれかに記載の導電性組成物から製造された導電層と、を含む、導電性積層体。
11.前記基材が樹脂フィルムである9又は10に記載の導電性積層体。
12.上記9〜11のいずれかに記載の導電性積層体を成形して得られる導電性物品。
13.上記1〜6のいずれかに記載の導電性組成物を含むコンデンサ。
14.上記1〜8のいずれかに記載の導電性組成物を成形してなる導電性フィルム。
15.上記1〜8のいずれかに記載の導電性組成物と基材を混合してなる導電性物品。
16.上記1〜6のいずれかに記載の導電性組成物を含む導電性膜。
17.上記1〜8のいずれかに記載の導電性組成物を成形してなる導電性膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、製膜後に加熱しなくても、高導電性を維持できる導電性膜を得ることができる。
また、本発明は、製膜後に加熱しなくても、高導電性を維持できる導電性膜を得ることができる導電性組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】インジウム錫酸化物(ITO)電極が表面に形成されたガラス基板の上面を示す図である。
【図2】π共役高分子薄膜を削り、ITO電極の端子を表面に露出させたガラス基板の上面を示す図である。
【図3】導電性組成物薄膜を削り、ITO電極の端子を表面に露出させたガラス基板の上面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願の第一の導電性組成物は、溶剤に可溶である、ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子と、下記式(1)で表わされ、互いに隣接しない2以上の水酸基を有する化合物と、を含む。そして、前記化合物と前記π共役系導電性高分子の重量比(化合物[kg]/π共役系導電性高分子[kg])が、0.01〜5.0である。
【化4】

(式中、Rは炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン原子、カルボン酸基、アミノ基、SH基、スルホン酸基、又は水酸基であり、複数のRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。nは0〜6の整数である。)
【0010】
また、本願の第二の導電性組成物は、少なくとも下記(a)及び(b)を原料として用い、下記化合物(b)と下記π共役系導電性高分子(a)の重量比(化合物[kg]/前記π共役系導電性高分子[kg])が0.01〜5.0である。
(a)溶剤に可溶である、ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子
(b)上記式(1)で表わされ、互いに隣接しない2以上の水酸基を有する化合物
【0011】
尚、上記第二の導電性組成物においては、上記(a)及び(b)を組成物の原料として用いるが、これは製膜工程や成形工程等において上記化合物(b)が反応し、別の形態に変化する場合もあるため、このような場合も本発明の組成物であることを明確にするものである。
【0012】
本願の組成物において、互いに隣接しない2以上の水酸基を有する化合物(以下、ナフタレン化合物ということがある。)は、π共役系導電性高分子を安定化する効果がある。π共役系導電性高分子の安定化効果発現のためには、フェノール性水酸基と導電性高分子の相互作用が必須である。これについて、ナフタレン環上の水酸基が隣接している場合、分子内水素結合の影響で導電性高分子との相互作用効果が弱まる。
一方、本発明ではナフタレン環上に互いに隣接していない水酸基を有するナフタレン化合物を使用するため、π共役系導電性高分子を安定化する効果が高い。その結果、組成物を製膜した後に加熱しなくても、高導電性を維持できる。
【0013】
ここで、ナフタレン環上の水酸基が隣接している場合とは、ナフタレン環の隣接する炭素原子に水酸基が置換されていることを意味する。例えば、1,2ナフタレンジオール、又は2,3ナフタレンジオールは、ナフタレン環上の水酸基が隣接している。尚、1,8ナフタレンジオールは水酸基が隣接していない。
上記の条件を満たす限り、ナフタレン化合物の種類は特に制約はない。工業的入手性の観点から、1,6ナフタレンジオール、2,6ナフタレンジオール、2,7ナフタレンジオールが好ましい。
【0014】
式(1)において、Rは炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン原子、カルボン酸基、アミノ基、SH基、スルホン酸基、又は水酸基である。炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。複数のRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。
より具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャルブチル等の炭素数1〜20のアルキル基、これらアルキル基の分子内に不飽和結合を有するアルケニル基、シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルキル基、フェニル、ナフチル等のアリール基、上述したアルキル基とアリール基を組み合わせて得られるアルキルアリール基及びアリールアルキル基、メチルチオ、エチルチオ等のアルキルチオ基等が挙げられる。
nは置換基数を示し、0〜6の整数である。
【0015】
本発明で使用する、ドープされたπ共役系導電性高分子は、溶剤に可溶である。ここで溶剤に可溶であるとは、π共役系導電性高分子が分子単位で均一に溶剤に溶けることを意味する。これにより、導電性組成物を乾燥した際に、粒界がない、均一なπ共役導電性高分子の被膜が得られる。
上記第一又は第二の導電性組成物が含むπ共役系導電性高分子は、好ましくは重量平均分子量が1,000以上であり、より好ましくは1,000〜1,000,000である。
上記π共役系導電性高分子の具体例としては、置換又は無置換の、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0016】
π共役系導電性高分子は、ブレンステッド酸、ルイス酸等の電子受容性物質であるドーパントによってドープされている。
ここで、ドープの度合いについてドープ率がある。ドープ率とは、一般に(導電性高分子にドープしているドーパント分子のモル数)/(導電性高分子のモノマーユニット)で定義される。ドープされたπ共役系導電性高分子がポリアニリン複合体である場合に、ドーパントのドープ率aが、0.5であることは、窒素2分子に対して1分子のドーパントがドープすることを意味し、好ましくはこの値及びその近傍において、導電率が最も高くなる。
また、π共役系導電性高分子がポリピロールの場合では、最適ドープ率は0.3近傍となる。
ここで、π共役系導電性高分子が窒素原子を含み、ドーパントがスルホン酸である場合には、本発明の組成物が式(C)を満たすことが好ましい。
0.2≦S/N≦0.7…(C)
(Sは組成物に含まれる前記ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子の硫黄原子のモル数の合計であり、Nは組成物に含まれる前記ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子の窒素原子のモル数の合計である。)
【0017】
また、ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子の成形体の導電度が0.01S/cm以上となることが好ましい。導電度は4端子法により測定する。
ここで、測定用の成形体は、以下のようにして得られる。「ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子500mg」をトルエン10gに溶解し、導電度測定用溶液を作成する。図1に示すガラス基板1の上面に、導電度測定用溶液1mlを塗布する。具体的には、スピンコート法により塗布する。ここでスピンコート法による塗布は、窒素雰囲気下で行う。また、スピンコート法の、ガラス基板に導電度測定用溶液を滴下した後のガラス基板回転時間は、15秒間である。また、スピンコート法のガラス基板回転速度は、500rpmである。その後、ガラス基板を乾燥してπ共役高分子薄膜を形成する。ここで乾燥は、窒素雰囲気下で行う。また、乾燥時間は、5分間である。また、乾燥温度は、80℃である。
ここでの成形体とは、ガラス基板上に形成されたπ共役高分子の成形体自体をいう。尚、導電率は、例えば、以下のようにして得られる。
π共役高分子薄膜を乾燥後、図2に示すようにπ共役高分子薄膜3のITO電極の端子を覆っている部分を、窒素雰囲気下で削り取り、ITO電極の端子を表面に露出させる。表面に露出したITO電極の端子を用いて、三菱化学社製の抵抗率計を用いて4端子法で導電度を測定する。
【0018】
本発明において、ドープされたπ共役系導電性高分子は、プロトネーションされた置換もしくは非置換ポリアニリン、プロトネーションされた置換もしくは非置換ポリピロール、又はプロトネーションされた置換もしくは非置換ポリチオフェンのいずれかであることが好ましく、特に、プロトネーションされた置換もしくは非置換ポリアニリン、又はプロトネーションされた置換もしくは非置換ポリピロールが好ましい。
【0019】
π共役系導電性高分子がポリアニリンである場合、ポリアニリンの重量平均分子量は、好ましくは20,000以上であり、より好ましくは50,000以上である。ポリアニリンの重量分子量が20,000未満であると、組成物から得られる導電性物品の強度や延伸性が低下するおそれがある。
また、分子量分布は、例えば1.5〜10.0以下である。導電率の観点から、分子量分布は小さい方が好ましいが、溶剤への溶解性及び成形性の観点では、分子量分布が広い方が好ましい場合もある。
上記分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定できる。
【0020】
置換ポリアニリンの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐の炭化水素基;メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基;アリーロキシ基;CF基等の含ハロゲン炭化水素基等が挙げられる。
【0021】
π共役系導電性高分子が置換又は非置換ポリピロールである場合、ポリピロール系重合体は、ピロール及びその誘導体(ピロール系単量体と省略することがある。)を酸化重合することで得ることができる。ピロール系単量体としては、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロール等が挙げられ、特にピロールが好ましい。
【0022】
酸化重合としては、化学的酸化重合法や電解重合法が挙げられ、特に酸化剤を用いた化学的酸化重合法が好ましい。酸化剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム及び過酸化水素のような過酸化物、二クロム酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、硫酸カリウム鉄(III)三塩化鉄(III)、二酸化マンガン、ヨウ素酸、過マンガン酸カリウム、あるいはパラトルエンスルホン酸鉄等が使用できる。これらは単独で使用しても、二種以上を併用してもよい。本発明においては、特に、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩を用いることが好ましい。
【0023】
酸化剤の量は、ピロール系単量体1molに対して0.05〜0.8molが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.2molである。上記範囲であることで、十分な重合度が得られるため重合体の分液回収が容易であり、また重合体の溶解性が低下することもない。重合温度は通常−5〜25℃で、好ましくは−5〜20℃である。上記範囲であることで、副反応を回避することができる。
【0024】
π共役系導電性高分子が、置換又は非置換のポリチオフェンである場合、具体的には、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルチオフェン)、ポリ(3,4エチレンジオキシチオフェン)等が挙げられる。特に、ポリ(3,4エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。
【0025】
本発明で好適に使用されるドーパントは有機スルホン酸であり、π共役系導電性高分子にキャリアを発生させるに十分な酸性を有していれば、特に化学構造上の制限なく使用できる。一例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸類、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、イソプロピルナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、コハクスルホン酸類等、ポリスチレンスルホン酸類が挙げられる。これら酸の塩(ナトリウム塩等)でもよい。
これらドーパントはその構造を変えることにより、π共役系導電性高分子の導電性や、溶剤への溶解性をコントロールできることが知られている(特許第3384566号)。本発明においては、用途毎の要求特性によって最適なドーパントを選択できる。
π共役系導電性高分子は、下記(2)で表されるコハクスルホン酸類でドープされていることが好ましい。
M(OSCH(CHCOOR12)COOR13 (2)
(式(2)において、
Mは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基であり、
mはMの価数であり、
12及びR13は、それぞれ独立して炭化水素基又は−(R14O)−R15で表される基であり、R14は炭化水素基又はシリレン基であり、R15は水素原子、炭化水素基又はR16Si−で表される基であり、R16は炭化水素基であり、3つのR16は同一又は異なっていてもよく、rは1以上の整数である。)
【0026】
本発明の導電性組成物では、π共役系導電性高分子が、プロトネーションされた置換もしくは非置換ポリアニリンであり、かつ、有機スルホン酸でドープされているものが特に好ましい。即ち、π共役系導電性高分子と、上記式(1)で表わされ、互いに隣接しない2以上の水酸基を有する化合物と、を含み、化合物とπ共役系導電性高分子の重量比(化合物/π共役系導電性高分子)が、0.01〜5.0であり、π共役系導電性高分子が、プロトネーションされた置換もしくは非置換ポリアニリンであり、π共役系導電性高分子が、有機スルホン酸でドープされている、導電性組成物が好ましい。
【0027】
本発明の導電性組成物において、上述したナフタレン化合物と、π共役系導電性高分子との組成比(化合物/π共役系導電性高分子)は、0.01〜5.0であり、好ましくは0.1〜0.5である。0.01未満の場合、化合物を添加することで得られる効果が十分に発現せず、用途によっては要求特性を満足しない場合がある。また、5.0を越えると組成物から得られる膜の強度が低下し、用途によっては要求特性を満足しない場合がある。
【0028】
本発明の組成物は、上述したナフタレン化合物及びπ共役系導電性高分子の他に、溶剤を含んでいてもよい。溶剤は、無機溶剤であっても有機溶剤であってもよく、有機溶剤であることが好ましい。有機溶剤を含有させることにより、例えば、導電膜成膜用の塗料等とすることができる。
有機溶剤としては、実質的に水に混和しない有機溶剤(水不混和性有機溶剤)でも、水溶性有機溶剤でもよい。
【0029】
水不混和性有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素系溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等の含ハロゲン系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。これらの中では、ドープされたポリアニリンの溶解性に優れる点でトルエン、キシレン、クロロホルム、トリクロロエタン及び酢酸エチルが好ましい。
【0030】
水溶性有機溶剤としては、アルコール類;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の極性エーテル類;Nメチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。
【0031】
有機溶剤には、水不混和性有機溶剤と水溶性有機溶剤との混合有機溶剤を99〜50:1〜50の質量比で用いることが好ましい。これにより、本発明の組成物を保存する際に、ゲル等の発生を防止できる場合がある。
混合有機溶剤の水不混和性有機溶剤としては、低極性有機溶剤が使用できる。例えば、トルエンやクロロホルムが好ましい。また、混合有機溶剤の水溶性有機溶剤としては、高極性有機溶剤が使用できる。例えば、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,2−メトキシエタノール,2−エトキシエタノール,アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルが好ましい。
【0032】
溶剤中のπ共役系導電性高分子の割合は、溶剤の種類によるが、通常、900g/L以下であり、好ましくは0.01〜300g/L以下の範囲である。π共役系導電性高分子の含有量が多すぎると、溶液状態が保持できなくなり、成形体を成形する際の取り扱いが困難になり、成形体の均一性が損なわれ、ひいては成形体の電気特性や機械的強度、透明性の低下を生じる。一方、π共役系導電性高分子の含有量が少なすぎると、後述する方法により成膜したとき、非常に薄い膜しか製造できず、均一な導電性膜の製造が難しくなるおそれがある。
ナフタレン化合物と溶剤の重量比(化合物[kg]/溶媒[kg])が、0.0004以上0.4以下であることが好ましい。0.001以上0.3以下であることがより好ましい。
【0033】
本発明の組成物は、上述したπ共役系導電性高分子及びナフタレン化合物、又は、これらと溶剤から、実質的になってもよく、また、これら成分のみからなってもよい。
これら成分の他に、本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂、無機材料、硬化剤、可塑剤等を含んでもよい。
【0034】
他の樹脂は、例えば、バインダー基材や可塑剤、マトリックス基材等として添加され、その具体例としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
また樹脂の代わりに、また樹脂と共に、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を形成し得る前駆体を用いてもよい。
【0035】
無機材料は、例えば、強度、表面硬度、寸法安定性その他の機械的物性の向上等の目的で添加され、その具体例としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、チタニア(酸化チタン)、アルミナ(酸化アルミニウム)等が挙げられる。
【0036】
硬化剤は、例えば、強度、表面硬度、寸法安定性その他の機械的物性の向上等の目的で添加され、その具体例としては、例えば、フェノール樹脂等の熱硬化剤、アクリレート系モノマーと光重合性開始剤による光硬化剤等が挙げられる。
【0037】
可塑剤は、例えば、引張強度や曲げ強度等の機械的特性の向上等の目的で添加され、その具体例としては、例えば、フタル酸エステル類やリン酸エステル類等が挙げられる。
【0038】
本発明の組成物は、公知の方法で調製することができ、例えばWO05/052058に開示の方法により調製することができる。
【0039】
続いて、本願の第三の導電性組成物について説明する。
本願の第三の導電性組成物は、溶剤に可溶である、ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子を含み、式(A)及び式(B)を満たす。
0.01≦S・・・(A)
1.0≦R/R≦3.0・・・(B)
【0040】
上記式(A)のSは、下記の条件で得られた成形体の、4端子法により測定された導電度[S/cm]である。
上記式(B)のRは、下記で得られた成形体の4端子法により測定された抵抗値であり、具体的にはパターニングされたインジウム錫酸化物電極を形成したガラス基板上に導電性組成物1mlを、25℃、相対湿度60%の空気中で、3000rpmで1分間、スピンコート法により塗布し、25℃、相対湿度60%の空気中で5分間放置した後の抵抗値である。またRは、上記で得られた成形体を、25℃、相対湿度60%の空気中で3日間経過させた時の、4端子法により測定された抵抗値である。
【0041】
より具体的には、図1に示す、パターニングによりインジウム錫酸化物(ITO)電極2が表面に形成されたガラス基板1の上面に、導電性組成物1mlを塗布する。具体的には、スピンコート法により塗布する。スピンコート法の、ガラス基板に導電性組成物を滴下した後のガラス基板回転時間は、1分間である。また、スピンコート法のガラス基板回転速度は、3000rpmである。その後、ガラス基板を乾燥して導電性組成物薄膜を形成する。
ここで成形体とは、ガラス基板上に形成された導電性組成物薄膜自体をいう。尚、導電率は、例えば、以下のようにして得られる。
導電性組成物薄膜を乾燥後、図3に示すように導電性組成物薄膜4のITO電極の端子を覆っている部分を削り取り、ITO電極の端子を表面に露出させる。表面に露出したITO電極の端子を用いて、三菱化学社製の抵抗率計を用いて4端子法で導電度を測定する。
【0042】
本願の第三の導電性組成物において、溶剤に可溶である、ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子は、上述した第一又は第二の導電性組成物と同様な高分子が使用できる。
その他、溶剤や添加剤、調製方法等についても、第一又は第二の導電性組成物と同様である。
【0043】
上述した第一乃至第三の導電性組成物から導電性成形体が得られる。例えば、本発明の組成物を、所望の形状を有するガラスや樹脂フィルム、シート、不織布等の基材に塗布し、有機溶剤を除去することによって導電性膜を有する導電性積層体(表面導電性物品)を製造できる。
また、本発明の導電性積層体を真空成型や圧空成形等、公知の方法により所望の形状に加工することにより、導電性物品が得られる。成形の観点からは、基材は樹脂フィルム又はシートが好ましい。
【0044】
組成物を基材に塗布する方法としては、キャスト法、スプレー法、ディップコート法、ドクターブレード法、バーコード法、スピンコート法、エレクトロスピニング法、スクリーン印刷、グラビア印刷法等、公知の一般的な方法を用いることができる。
【0045】
本発明の組成物では塗布製膜後に加熱しなくても、高導電性を維持できる導電性膜等が得られる。即ち、溶剤を常温下で乾燥させるだけで、抵抗値の経時変化の小さい導電膜が得られる。
一般に、性能発現のために、ある特定の温度での加熱工程が不要であるということは、工業的な見地から有利である。例えばポリアニリンをある基材に塗布して使用する場合、加熱に耐えられない基材であっても用いることができる。また、加熱が不要であるので、生産速度を高めることができる。
尚、溶剤の種類によっては、塗布膜を加熱してもよい。例えば、空気気流下250℃以下、好ましくは50〜200℃の温度で加熱し、さらに、必要に応じて、減圧下に加熱する。加熱温度及び加熱時間は、特に制限されず、用いる材料に応じて適宜選択すればよい。
【0046】
また、例えば、本発明の組成物から溶剤を除去することによって導電性フィルムを製造できる。本発明の成形体が膜又はフィルムである場合、これらの厚さは、通常1mm以下、好ましくは10nm〜50μmの範囲である。この範囲の厚みの膜は、成膜時にひび割れが生じにくく、電気特性が均一である等の利点を有する。
【0047】
また、本発明の組成物は、基材と混合して導電性物品としてもよい。基材としてポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール等の熱可塑性樹脂、又はエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0048】
さらに、本発明の組成物は、基材を有しない自己支持型成形体とすることもできる。自己支持型成形体とする場合には、好ましくは、組成物が上述した他の樹脂を含むようにすると、所望の機械的強度を有する成形体を得ることができる。
【実施例】
【0049】
製造例1
[ポリアニリン複合体1の製造]
AOT(ジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム)1.8gをトルエン50mLに溶解し、窒素気流下においた500mLのセパラブルフラスコに溶液を入れ、さらにこの溶液に、1.8mLのアニリンを加えた。その後、1N塩酸150mLを溶液に添加し、溶液温度を5℃に冷却した。
溶液内温が5℃に到達した時点で、3.6gの過硫酸アンモニウムを1N塩酸50mLに溶解した溶液を、滴下ロートを用いて2時間かけて滴下した。滴下開始から18時間、溶液内温を5℃に保ったまま反応を実施した。その後、トルエン125mLを追加し、反応温度を25℃まで上昇させ4時間、反応を継続した。
その後、静置により二相に分離した水相側を分液し、トルエン相側をイオン交換水50mLで2回、1N塩酸50mLで1回洗浄を行うことでポリアニリン複合体(プロトネーションされたポリアニリン)トルエン溶液を得た。
この複合体溶液に含まれる若干の不溶物を#5Cの濾紙により除去し、ポリアニリン複合体のトルエン溶液を回収した。この溶液をエバポレーターに移し、60℃の湯浴で加温し、減圧することにより、揮発分を蒸発留去し、1.25gのポリアニリン複合体を得た。
【0050】
製造例2
[ポリアニリン複合体2の製造]
(1)3,4−ビス[(2−エチルヘキシル)オキシカルボニル]シクロヘキサンスルホン酸ナトリウムの合成
アルゴンガス気流下、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル(東京化成社製)80gとイソプロピルアルコール900mLを仕込み、亜硫酸水素ナトリウム(和光純薬製)42.3gの水660mL溶液を添加した。この溶液を還流の温度まで加熱し、80〜83℃で16時間攪拌した。
この間、還流開始から、1〜5時間後までの1時間毎、その後、9時間後、10時間後に2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬製)1.66gをそれぞれ添加した。反応液を室温まで冷却したのち、減圧下に濃縮を行った。濃縮残渣を酢酸エチル/ヘキサン混合溶液に1Lに溶解し、シリカゲル250gを加えて攪拌し、溶液を濾別した。
さらに、シリカゲルから1Lの酢酸エチル/ヘキサン溶液で2回抽出を行い、濾液を合せて減圧下に濃縮した。この濃縮液をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル1500g、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、精製物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧留去することで、3,4−ビス[(2−エチルヘキシル)オキシカルボニル]シクロヘキサンスルホン酸ナトリウム(下記式に示す化合物AのNa塩)52.4gを得た。
【0051】
【化5】

【0052】
(2)ポリアニリン複合体の製造
製造例1にてAOT1.8gの代わりに、上記(1)で合成した3,4−ビス[(2−エチルヘキシル)オキシカルボニル]シクロヘキサンスルホン酸ナトリウム2.0gを用いた他は、製造例1と同様の操作、手順にてポリアニリン複合体を1.32g得た。
【0053】
製造例3
[ポリピロール複合体の合成]
撹拌機をセットした容量500mlのセパラブルフラスコに、トルエン125ml、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩5.67g(12.5mmmol)、純水33.8ml、及び過硫酸アンモニウム0.285g(1.25mmol)を添加し、25℃にて撹拌して乳化液を調整した。次に、乳化液にピロール3.46ml(50mmol)をゆっくり添加した。その後、重合反応を6時間行った。
反応終了後、遠心分離機により反応液から有機相を分離し、蒸留乾固してポリピロール複合体0.7gを得た。
【0054】
実施例1
製造例1で得られたポリアニリン複合体0.1gをトルエンに再溶解し、5重量%の溶液を調整した。ここに1,6ナフタレンジオールを0.03g添加し、室温で30分間、攪拌混合した。得られた導電性ポリアニリン組成物約1mLを、ITOでパターニングされた30mm×30mm角のガラス基板上に展開し、25℃、相対湿度60%の空気中で3,000rpmで1分間スピンコートした。これを加熱することなく、25℃、相対湿度60%の空気気流下で5分間放置し、ガラス基板上に透明で均質な薄膜を形成した。
【0055】
[導電性膜の経時劣化試験]
得られた5分間放置後の導電性組成物の薄膜について、25℃、相対湿度60%の空気中でロレスターGP(三菱化学社製;四端子法による抵抗率計)を用いて抵抗を測定し、その値を初期値(R)とした。
その後、ガラス基板のまま、25℃、相対湿度60%の空気中に一定時間放置した後に初期値(R)と同様にして抵抗を測定した。所定時間経過後の抵抗値(R)と初期値との比(R/R)を算出し、薄膜の経時劣化(抵抗の上昇率)を評価した。
【0056】
実施例1、及び後述する実施例又は比較例で使用した化合物の組成を表1に示す。また、導電性膜の経時劣化試験の結果を表2に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
実施例2
実施例1で、1,6ナフタレンジオールの添加量を0.01gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、導電膜の経時劣化を評価した。
【0060】
実施例3
実施例1で、1,6ナフタレンジオールの添加量を0.001gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、導電膜の経時劣化を評価した。
【0061】
実施例4
実施例1で、1,6ナフタレンジオールの添加量を0.5gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、導電膜の経時劣化を評価した。
【0062】
実施例5
実施例1で、1,6ナフタレンジオールのかわりに、2,6ナフタレンジオールを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、導電膜の経時劣化を評価した。
【0063】
実施例6
実施例1で、1,6ナフタレンジオールのかわりに、2,7ナフタレンジオールを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、導電膜の経時劣化を評価した。
【0064】
実施例7
実施例1で、1,6ナフタレンジオールのかわりに、1,7ナフタレンジオールを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、導電膜の経時劣化を評価した。
【0065】
実施例8
実施例1で、製造例2で得られたポリアニリン複合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、導電膜の経時劣化を評価した。
【0066】
実施例9
実施例1で、製造例3で得られたポリピロール複合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、導電膜の経時劣化を評価した。
【0067】
比較例1
実施例1で、1,6ナフタレンジオールのかわりに、2,3ナフタレンジオールを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、導電膜の経時劣化を評価した。
【0068】
比較例2
実施例1で1,6ナフタレンジオールのかわりに2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、導電膜の経時劣化を評価した。
【0069】
比較例3
実施例7で、ナフタレンジオールを添加しなかったこと以外は実施例7と同様の操作を行い、導電膜の経時劣化を評価した。
【0070】
比較例4
実施例1で、1,6ナフタレンジオールの添加量を1.0gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ったが、著しく脆い膜しか得られず、測定不可能であった。
【0071】
実施例10
製造例1で得たポリアニリン複合体290mgをトルエン5.5gに再度溶解し、MIBK3g、1,6−ナフタレンジオール120mg、HE505(日本製紙ケミカル製)1gを配合後、30℃で撹拌した。得られた導電性ポリアニリン組成物1mLを、樹脂基材上に展開し、25℃、相対湿度60%の空気中で3000rpmで1分間スピンコートした。これを25℃、相対湿度60%の空気中で5分間放置し、樹脂基材上に透明で均質な薄膜を形成した。
得られた5分間放置後の導電性組成物の薄膜について、25℃、相対湿度60%の空気中でハイレスタ(三菱アナリテック社製)を用いて抵抗を測定し、その値を初期値(R)とした。その後、樹脂基材のまま、25℃、相対湿度60%の空気中に一定時間放置した後に初期値(R)と同様にして抵抗を測定した。所定時間経過後の抵抗(R)と初期値との比(R/R)を算出し、薄膜の経時劣化(表面抵抗の上昇率)を評価した。
実施例10、及び後述する実施例11、比較例5で作製した導電性膜の経時劣化試験の結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
実施例11
1,6−ナフタレンジオールの代わりに2,7−ナフタレンジオールを用いた以外は実施例10と同様にしてスピンコート後製膜し同様にして評価した。
【0074】
比較例5
ナフタレンジオールを用いなかったこと以外は、実施例10と同様にしてスピンコート製膜作成後、同様にして評価を行った。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の導電性組成物は、パワーエレクトロニクス、オプトエレクトロニクス分野において、静電及び帯電防止材料、透明電極及び導電性フィルム材料、エレクトロルミネッセンス素子の材料、回路材料、電磁波遮蔽材料、コンデンサの誘電体及び電解質、太陽電池及び二次電池の極材料、燃料電池セパレータ材料等に、又はメッキ下地、防錆剤等に利用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 ガラス基板
2 ITO電極
3 π共役高分子薄膜
4 導電性組成物薄膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤に可溶である、ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子と、
下記式(1)で表わされ、互いに隣接しない2以上の水酸基を有する化合物と、を含み、
前記化合物と前記π共役系導電性高分子の重量比(化合物[kg]/π共役系導電性高分子[kg])が、0.01〜5.0である導電性組成物。
【化6】

(式中、Rは炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン原子、カルボン酸基、アミノ基、SH基、スルホン酸基、又は水酸基であり、複数のRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。nは0〜6の整数である。)
【請求項2】
少なくとも下記(a)及び(b)を原料として用い、
下記化合物(b)と下記π共役系導電性高分子(a)の重量比(化合物[kg]/前記π共役系導電性高分子[kg])が0.01〜5.0である導電性組成物。
(a)溶剤に可溶である、ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子
(b)下記式(1)で表わされ、互いに隣接しない2以上の水酸基を有する化合物
【化7】

(式中、Rは炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン原子、カルボン酸基、アミノ基、SH基、スルホン酸基、又は水酸基であり、複数のRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。nは0〜6の整数である。)
【請求項3】
溶剤に可溶である、ドーパントによりドープされたπ共役系導電性高分子を含み、
下記式(A)及び式(B)を満たす導電性組成物。
0.01≦S・・・(A)
1.0≦R/R≦3.0・・・(B)
(Sは、下記で得られた成形体の、4端子法により測定された導電度[S/cm]である。
は、下記で得られた成形体の、4端子法により測定された抵抗値である。
Rは、下記で得られた成形体を、25℃、相対湿度60%の空気中で3日間経過させた時の、4端子法により測定された抵抗値である。
前記成形体は、パターニングされたインジウム錫酸化物電極を形成したガラス基板上に、前記導電性組成物1mlを、25℃、相対湿度60%の空気中で、3000rpmで1分間、スピンコート法により塗布し、25℃、相対湿度60%の空気中で5分間放置して得られたものである。)
【請求項4】
前記ドープされたπ共役系導電性高分子が、プロトネーションされた置換もしくは非置換ポリアニリン、プロトネーションされた置換もしくは非置換ポリピロール、又はプロトネーションされた置換もしくは非置換ポリチオフェンのいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記π共役系導電性高分子が、有機スルホン酸でドープされている請求項1〜4のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項6】
π共役系導電性高分子と、
下記式(1)で表わされ、互いに隣接しない2以上の水酸基を有する化合物と、を含み、
前記化合物と前記π共役系導電性高分子の重量比(化合物/π共役系導電性高分子)が、0.01〜5.0であり、
前記π共役系導電性高分子が、プロトネーションされた置換もしくは非置換ポリアニリンであり、
前記π共役系導電性高分子が、有機スルホン酸でドープされている、
導電性組成物。
【化8】

(式中、Rは炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン原子、カルボン酸基、アミノ基、SH基、スルホン酸基、又は水酸基であり、複数のRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。nは0〜6の整数である。)
【請求項7】
さらに溶剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項8】
前記化合物と前記溶剤の重量比(化合物[kg]/溶媒[kg])が、0.0004以上0.4以下である請求項7に記載の導電性組成物。
【請求項9】
基材と、
前記基材上に積層されている請求項1〜6のいずれかに記載の導電性組成物と、
を含む、導電性積層体。
【請求項10】
基材と、
前記基材上に積層されている請求項1〜6のいずれかに記載の導電性組成物から製造された導電層と、
を含む、導電性積層体。
【請求項11】
前記基材が樹脂フィルムである請求項9又は10に記載の導電性積層体。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載の導電性積層体を成形して得られる導電性物品。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性組成物を含むコンデンサ。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれかに記載の導電性組成物を成形してなる導電性フィルム。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれかに記載の導電性組成物と基材を混合してなる導電性物品。
【請求項16】
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性組成物を含む導電性膜。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれかに記載の導電性組成物を成形してなる導電性膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−26590(P2011−26590A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151377(P2010−151377)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】