導電性膜の製造方法、製造装置及び導電性膜
【課題】PETフィルム等の汎用高分子基板を用いた場合でも、基板上に優れた導電性と光透過性とを有する導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができる、導電性膜の製造方法、及び、導電性膜を提供する。
【解決手段】導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗工してパターンを有する導電性膜を製造する方法であって、該製造方法は、有機溶媒分散体を基板に塗工した後、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、該パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を含むことを特徴とする導電性膜の製造方法。
【解決手段】導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗工してパターンを有する導電性膜を製造する方法であって、該製造方法は、有機溶媒分散体を基板に塗工した後、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、該パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を含むことを特徴とする導電性膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性膜の製造方法、製造装置、及び、導電性膜に関する。より詳しくは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等の薄型ディスプレイ、タッチパネルに好適に用いることができる導電性膜の製造方法、製造装置、及び、導電性膜に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性膜は、種々の電気機器へ適用されており、特に近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等の薄型ディスプレイの需要が拡大しており、このような用途に適用される導電性膜としては、特に光透過性、導電性に優れるものが求められており活発に研究開発が行われている。
光透過性を有する導電性膜としては、現在では、酸化インジウム錫(ITO)が用いられることが一般的である。酸化インジウム錫により作成された導電性膜は、光透過性、導電性のバランスに優れており、通常の液晶ディスプレイ等だけではなく、例えば、タッチパネル用途等にも使用されている。しかしながら、インジウムのような希金属は高価であり、また、資源枯渇のおそれがあるため、より安価で、資源枯渇のおそれが少ない材料を用いた光透過性を有する導電性膜が求められているところであった。また、ITOの成膜には通常、スパッタリング法等が用いられているため、生産性が低い点でも改善の余地があった。
【0003】
光透過性を有する導電性膜の形態としては、酸化インジウム錫のように、光透過性と導電性を有する材料を用いた導電性膜の形態や、メッシュ状の導電性膜の形態、網目状の導電
性膜の形態等が挙げられる。網目状の導電性膜、及び、その製造方法としては、例えば、
導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗布して、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させて網目状の導電性膜を製造する方法や(例えば、特許文献1参照。)、金属微粒子層を有機溶媒で処理する工程、次いで酸で処理する工程を行い、基板の少なくとも片面に、網目状に金属微粒子層が積層させた導電性基板を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、導電性膜の製造方法として、基板上の、被覆された金属ナノ粒子と分散溶媒とを含む金属ナノ粒子ペーストに、極性溶媒または溶解補助剤を含む極性溶媒溶液を作用させる工程、及び、その基板を乾燥させる工程により金属ナノ粒子を焼結させて導電性膜を形成することができることが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−34039号公報(第1、2頁)
【特許文献2】再公表特許WO2007/114076号公報(第23頁)
【特許文献3】特開2008−72052号公報(第1、2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、安価に光透過性を有する導電性膜を製造する方法について様々な方法が検討されている。光透過性を有する導電性膜においては、メッシュや網目の微細なパターンを有する導電性膜とすることで、光透過性と導電性とを高いレベルで両立することが可能となるが、特許文献2、3に記載の方法は、微細なパターンを得るには充分ではなく、微細なパターンを有する導電性膜とするための工夫の余地があった。
また、特許文献1に記載の導電性膜の製造方法によると、微細な網目状のパターンを有する導電性膜を製造することが可能である。しかしながら、特許文献1の方法では、高温での焼成工程を行う必要があるため、基板としてPETフィルム等の汎用高分子フィルムを用いた導電性膜の製造に適用することが難しいものである。このため、PETフィルム等の汎用性の高い高分子フィルム基板上にも低コストで簡易に光透過性を有する導電性膜を形成する方法とするための更なる工夫の余地があった。
これらのことから、より簡易かつ安価に、高温での処理を必要とせず、光透過性と導電性とを高いレベルで両立することのできる導電性膜を形成するための方法が求められていた。このような課題を解決することができれば、基板の材質を選ばず、PETフィルム等の汎用性の高い高分子フィルム基板上にも低コストで簡易に光透過性と導電性とに優れた導電性膜を形成することが可能となるため、その技術的意義は大きいものである。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、PETフィルム等の汎用高分子基板を用いた場合でも、基板上に優れた導電性と光透過性とを有する導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができる、導電性膜の製造方法、及び、導電性膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、汎用高分子基板を用いることができ、優れた導電性と光透過性とを有する導電性膜を製造する方法について種々検討したところ、有機溶媒分散体を基板に塗工した後に、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、上記パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行うと、線幅が狭く、網目の細かい導電性物質の網目状線部と、空孔部とを有するために、導電性と光透過性とを高いレベルで両立した導電性膜を形成することができることを見出した。この方法によると、高温での焼成を行うことなく、導電性膜を形成することができるために、PETフィルム等の耐熱性の高くない汎用高分子基板上にも優れた導電性と光透過性とを有する導電性膜を簡易かつ安価に形成することができることになることから、上記課題を見事に解決できることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗工してパターンを有する導電性膜を製造する方法であって、上記製造方法は、有機溶媒分散体を基板に塗工した後、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、上記パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を含む導電性膜の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の導電性膜の製造方法は、導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗工してパターンを有する導電性膜を製造する方法である。このような方法では、例えば、スパッタリング法や、メッキを行う方法等と比較して、簡易、かつ低コストで製膜を行うことができ、製造コストの削減、生産性の向上等を図ることができる。以下、基板上に塗工された有機溶媒分散体の膜を「塗膜」ともいう。
【0010】
本発明の導電性膜の製造方法は、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程(自己組織化工程)を含むものである。このような工程を含むことにより、線幅が狭く、網目の細かい網目状のパターンを有する導電性膜を形成することが可能となり、製造される導電性膜を導電性だけでなく、光透過性にも優れたものとすることが可能となる。
なお、上記自己組織化工程の詳細については、後述する。
【0011】
本発明の導電性膜の製造方法は、上記自己組織化工程によって形成されるパターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を含むものである。
後述するように、有機溶媒分散体中での導電性微粒子等の微粒子の分散性を向上させるために、必要に応じて、有機溶媒分散体に微粒子分散剤を含有させることとなる。その場合には、導電性微粒子は微粒子分散剤に被覆されて存在することとなるが、上記パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させることによって、微粒子分散剤と導電性微粒子との間に有機溶媒を含む溶媒溶液が入り、微粒子分散剤が洗い流され、導電性微粒子が露出するため、その結果、導電性微粒子間の融着が生じ導電性を発現する層が形成されることとなるものと推察される。このようにして導電性を発現する層が形成されることとなるものと思われるが、その際に、有機溶媒を含む溶媒溶液は、微粒子分散剤だけでなく、融着せずに孤立した余分な導電性微粒子も同時に洗い流すことができる。これによって、製造される導電性膜のヘイズが抑えられ、透過率が向上することとなる。
なお、上記自己組織化工程によって形成されるパターンは非常に微細であるために、空孔部1つ1つが非常に小さく、導電性に関与しない微粒子分散剤や余分な導電性微粒子を洗い流さないと、空孔部が埋まってしまいやすい。そのため、導電性に関与しない微粒子分散剤や余分な導電性微粒子を洗い流すことによって、大きなヘイズ抑制効果及び透過率向上効果が発揮されることとなる。
【0012】
また、上記自己組織化工程においては、後述するように、塗膜に取り込む水滴の形状を好適な形態で保持するため、有機溶媒分散体に両親媒性化合物を含有させることが好ましい。しかしながら、両親媒性化合物を多量に含有させてしまうと、導電性に悪影響が出るおそれがある。この点について、本発明の製造方法によれば、自己組織化工程によってパターンを形成した後に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行うために、自己組織化工程において用いられた両親媒性化合物も有機溶媒により洗い流されることとなる。これにより、本発明の製造方法の場合には、自己組織化工程において両親媒性化合物を多量に用いても導電性膜に両親媒性化合物の残存を少なくすることができることから、導電性膜の導電性を良好なものに保ちながら、塗膜に取り込む水滴の形状を充分に安定化させ、導電性膜の網目をより容易に作成することが可能となり、空孔部の孔径が大きいものから小さいものまでより様々なパターンを有する導電性膜を製造することができることとなる。更には、自己組織化工程において用いられた両親媒性化合物が有機溶媒によって洗い流されることにより、形成されるパターンを有する膜の線幅をより狭いものとすることが可能となる。線幅のより狭いパターンを有する膜が形成されることによって、得られる導電性膜の透過率がより向上し、光の散乱もより抑えられるため、ヘイズもより低いものとなる。
その他、上記自己組織化工程においては、結露により生じた水滴を塗膜中に取り込み、その後有機溶媒を蒸発させ、更に取り込まれた水滴を乾燥させることで、取り込まれた水滴に対応する空孔部を形成するものであるが、取り込まれた水滴を乾燥させる必要があるために、自己組織化工程を行うと、導電性膜の製造には時間がかかってしまうものであった。この点について、本発明の製造方法によれば、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行うため、メタノール等の沸点の低い有機溶媒を用いた場合に、乾燥のための時間を短くすることが可能となる。更には、水滴を充分乾燥させる前に有機溶媒を作用させる工程を行うことも可能であるため、水滴及び有機溶媒を乾燥させるための合計の時間をも短くすることが可能となる。これらのことから、導電性膜の生産性が向上することとなる。
上述した理由から、上記自己組織化工程によってパターンを形成し、パターンの非常に微細なものを用いる場合には、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる方法が特に好ましい方法であるといえる。
なお、上記自己組織化工程によって形成されるパターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させることに顕著な効果が得られることは、本発明において初めて見いだされ、実証されたものである。
また、本発明の導電性膜の製造方法においては、焼成する工程を行うことなく、導電性膜を製造することが可能であるために、ガラスと比較して耐熱性の低いPETフィルム等の汎用の高分子フィルムを基板として用いることができることになる。
【0013】
上述したように、本発明の導電性膜の製造方法は、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を含むものであるが、これらの工程は、一部同時並行して行われる形態であってもよいし、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程を行った後に、上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行ってもよい。中でも、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程を行った後に、上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行うことが、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、本発明の導電性膜の製造方法は、有機溶媒分散体を基板に塗工した後に、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を含むものである限り、その他の工程を含んでいてもよい。
【0014】
上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程において、作用させるとは、パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液が作用することとなる限り、その方法は特に制限されないが、例えば、有機溶媒を含む溶媒溶液中に、パターンを有する膜を一部又は全部漬ける方法、パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を塗布する方法、パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒を含む溶媒溶液中に、パターンを有する膜を一部又は全部漬ける方法により作用させることとすると、本発明の効果を充分に発揮することが可能となり好ましい。
【0015】
上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程は、低温、室温、高温のいずれで行われてもよいが、例えば−20℃〜150℃の範囲の温度で行われることが好ましく、0℃〜100℃の範囲の温度がより好ましい。更に好ましくは10℃〜50℃の範囲の温度で行われることである。
また、上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程は、超音波を作用させながら行ってもよい。
【0016】
上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程は、有機溶媒を含む溶媒溶液が、融着せずに孤立した余分な導電性微粒子や、必要に応じて用いられる微粒子分散剤を除去するのに必要な時間行えばよいが、例えば、0.1秒〜1日行うことが好ましく、10秒〜2時間行うことがより好ましい。更に好ましくは1分〜30分行うことである。特に好ましくは、3分〜20分である。
【0017】
上記有機溶媒を含む溶媒溶液の有機溶媒としては、無極性溶媒、極性溶媒、溶解補助剤等が挙げられるが、これらの中でも、有機溶媒を含む溶媒溶液は、極性溶媒及び/又は溶解補助剤を含む極性溶媒溶液であることが好ましい。上記有機溶媒としては、1種を用いてもよく、2種以上を併用して混合溶媒としてもよい。
上記無極性溶媒としては、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等のアルカン類;エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、クロロホルム、キシレン等が挙げられる。これらの中でも、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が好ましい。
【0018】
上記極性溶媒としては、双極性非プロトン溶媒;複素環;アルキル置換された複素環;水;−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素、アルキル置換された芳香族炭化水素、複素環、アルキル置換された複素環;下記一般式(1);
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、R1及びR2は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキル置換されたアリール基、ヘテロアリール基、又は、アルキル置換されたヘテロアリール基を表す。Yは、−CONH−、−C(=O)−又は−SO−で表される基を表す。)で表される化合物;等が挙げられる。
上記双極性非プロトン溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド等が挙げられる。
【0021】
上記複素環としては、例えば、酸素、硫黄、窒素等を有する複素環が挙げられ、具体的には、チオフェン、フラン、ピラン、キサンテン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン等が挙げられる。
上記アルキル置換された複素環とは、上記複素環の1以上の水素原子がアルキル基で置換されたものを意味している。
上記アルキル基としては、例えば、炭素数1〜100のものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。特に好ましくはメチル基である。
そのようなアルキル置換された複素環としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基で置換された複素環が挙げられる。具体的には、メチルチオフェン、ヘキシルフラン、メチルピラン、ブチルキサンテン、メチルピロール、ペンチルイミダゾール、オクチルピラゾール、ヘキシルチアゾール、ペンチルイソオキサゾール、ブチルピリジン、メチルピラジン、メチルピリミジン等が挙げられる。
【0022】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカンとは、アルカンの1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味している。
上記アルカンとしては、例えば、炭素数1〜100のものが挙げられ、鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。それらの中でも、好ましくは炭素数1〜20のアルカンであり、より好ましくは炭素数5〜15のアルカンであり、更に好ましくは炭素数8〜15のアルカンである。特に好ましくは2,2,2,4−トリメチルペンタン、テトラデカンである。
そのような−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカンとしては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸等、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、メタンスルホン酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコサニルアミン、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオール、ノナデカンチオール、イコサンチオール等が挙げられる。これらの中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ドデシルアミン、ドデカンチオール等が好ましい。
【0023】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカンのうち、特に、−COOHで置換されたアルカンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルカンの1〜10の水素原子が−COOHで1〜10置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−COOHで置換された炭素数1〜20のアルカンであり、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸等、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が挙げられる。より好ましくは−COOHで置換された炭素数10〜20のアルカンであり、更に好ましくは−COOHで置換された炭素数12〜18のアルカンである。
【0024】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカンのうち、特に、−SHで置換されたアルカンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルカンの1〜10の水素原子が−SHで1〜10置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−SHで置換された炭素数1〜20のアルカンであり、例えば、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオール、ノナデカンチオール、イコサンチオールが挙げられる。より好ましくは−SHで置換された炭素数3〜17のアルカンであり、更に好ましくは−SHで置換された炭素数5〜15のアルカンである。特に好ましくはドデカンチオールである。
【0025】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカンのうち、特に、−NH2で置換されたアルカンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルカンの1〜10の水素原子が−NH2で1〜10置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−NH2で置換された炭素数1〜20のアルカンであり、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコサニルアミンが挙げられる。より好ましくは−NH2で置換された炭素数3〜17のアルカンであり、更に好ましくは−NH2で置換された炭素数5〜15のアルカンである。特に好ましくはドデシルアミンである。
【0026】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカンのうち、特に、−OHで置換されたアルカンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルカンの1〜10の水素原子が−OHで1〜10置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−OHで置換された炭素数1〜20のアルカンであり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオールが挙げられる。より好ましくは−OHで置換された炭素数1〜10のアルカンである。
【0027】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルケンとは、アルケンの1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味している。
上記アルケンとしては、例えば、炭素数2〜100のものが挙げられ、鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。それらの中でも、好ましくは炭素数2〜20のアルケンであり、より好ましくは炭素数3〜10のアルケンであり、更に好ましくは炭素数3〜5のアルケンである。
そのような−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルケンとしては、例えば、アリルアルコール、ビニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、ペンテニルアミン、ヘキセニルアミン、ヘプテニルアミン、オクテニルアミン、ノネニルアミン、デセニルアミン、ウンデセニルアミン、ドデセニルアミン、トリデセニルアミン、テトラデセニルアミン、ペンタデセニルアミン、ヘキサデセニルアミン、ヘプタデセニルアミン、オクタデセニルアミン、ノナデセニルアミン、オレイルアミン、イコセニルアミン、ノナコセニルアミン、エテンチオール、プロペンチオール(アリルメルカプタン)、ブテンチオール、ペンテンチオール、ヘキセンチオール、ヘプテンチオール、オクテンチオール、ノネンチオール、デセンチオール、ウンデセンチオール、ドデセンチオール、トリデセンチオール、テトラデセンチオール、ペンタデセンチオール、ヘキサデセンチオール、ヘプタデセンチオール、オクタデセンチオール、ノナデセンチオール、イコセンチオール、ノナコセンチオール、アクリル酸(プロペン酸)、メタクリル酸(2−メチルプロペン酸)、クロトン酸(trans−ブタ−2−エン酸)、イソクロトン酸(cis−ブタ−2−エン酸)、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オレイン酸(cis−オクタデカ−9−エン酸)、エライジン酸(trans−オクタデカ−9−エン酸)、マレイン酸(cis−ブテン二酸)、フマル酸(trans−ブテン二酸)等が挙げられる。これらの中でも、オレイルアミン、アリルメルカプタン、オレイン酸等が好ましい。
【0028】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルケンのうち、特に、−COOHで置換されたアルケンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルケンの1〜10の水素原子が−COOHで置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−COOHで置換された炭素数2〜30のアルケンであり、例えば、アクリル酸(プロペン酸)、メタクリル酸(2−メチルプロペン酸)、クロトン酸(trans−ブタ−2−エン酸)、イソクロトン酸(cis−ブタ−2−エン酸)、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オレイン酸(cis−オクタデカ−9−エン酸)、エライジン酸(trans−オクタデカ−9−エン酸)、マレイン酸(cis−ブテン二酸)、フマル酸(trans−ブテン二酸)が挙げられる。より好ましくは−COOHで置換された炭素数10〜20のアルケンであり、更に好ましくは−COOHで置換された炭素数15〜20のアルケンである。特に好ましくはオレイン酸である。
【0029】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルケンのうち、特に、−SHで置換されたアルケンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルケンの1〜10の水素原子が−SHで置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−SHで置換された炭素数2〜30のアルケンであり、例えば、エテンチオール、プロペンチオール(アリルメルカプタン)、ブテンチオール、ペンテンチオール、ヘキセンチオール、ヘプテンチオール、オクテンチオール、ノネンチオール、デセンチオール、ウンデセンチオール、ドデセンチオール、トリデセンチオール、テトラデセンチオール、ペンタデセンチオール、ヘキサデセンチオール、ヘプタデセンチオール、オクタデセンチオール、ノナデセンチオール、イコセンチオール、ノナコセンチオールが挙げられる。より好ましくは−SHで置換された炭素数2〜20のアルケンであり、更に好ましくは−SHで置換された炭素数3〜15のアルケンである。特に好ましくはアリルメルカプタンである。
【0030】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルケンのうち、特に、−NH2で置換されたアルケンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルケンの1〜10の水素原子が−NH2で置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−NH2で置換された炭素数2〜30のアルケンであり、例えば、ビニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、ペンテニルアミン、ヘキセニルアミン、ヘプテニルアミン、オクテニルアミン、ノネニルアミン、デセニルアミン、ウンデセニルアミン、ドデセニルアミン、トリデセニルアミン、テトラデセニルアミン、ペンタデセニルアミン、ヘキサデセニルアミン、ヘプタデセニルアミン、オクタデセニルアミン、ノナデセニルアミン、オレイルアミン、イコセニルアミン、ノナコセニルアミンが挙げられる。より好ましくは−NH2で置換された炭素数5〜25のアルケンであり、更に好ましくは−NH2で置換された炭素数10〜20のアルケンである。特に好ましくはオレイルアミンである。
【0031】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルキンとは、アルキンの1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味している。
上記アルキンとしては、例えば、炭素数2〜100のものが挙げられ、鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。それらの中でも、好ましくは炭素数2〜20のアルキンであり、より好ましくは炭素数3〜10のアルキンであり、更に好ましくは炭素数3〜5のアルキンである。
そのような−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルキンとしては、例えば、エチンチオール、プロピンイルアミン等が挙げられる。
【0032】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換された芳香族炭化水素とは、芳香族炭化水素の1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味している。
上記芳香族炭化水素としては、例えば、炭素数6〜30のものが挙げられる。それらの中でも、ベンゼン、ペンタレン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン等が好ましい。
そのような−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換された芳香族炭化水素としては、例えば、安息香酸、ベンゼンチオール、アニリン等が挙げられる。
【0033】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルキル置換された芳香族炭化水素とは、アルキル置換された芳香族炭化水素の1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味している。
上記アルキル置換された芳香族炭化水素とは、上記芳香族炭化水素の1以上の水素原子がアルキル基で置換されたものを意味しており、該アルキル基は、上記アルキル基と同様のものとすることができる。
そのようなアルキル置換された芳香族炭化水素としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基で置換された炭素数6〜30の芳香族炭化水素が挙げられる。具体的には、メチルベンゼン(トルエン)、プロピルペンタレン、ヘキシルナフタレン、メチルフェナレン、エチルフェナントレン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基で置換された芳香族炭化水素であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基で置換された芳香族炭化水素である。更に好ましくはトルエンである。
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルキル置換された芳香族炭化水素としては、例えば、ベンジルアルコール、フェニル酢酸、ジベンジルケトン、アニリン等が挙げられる。
【0034】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換された複素環とは、上記複素環の1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味し、例えば、カルボキシルピリジン、ヒドロキシピラゾール等が挙げられる。
【0035】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルキル置換された複素環とは、上記アルキル置換された複素環の1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味し、カルボキシルピリジン、ヒドロキシピラゾール等が挙げられる。
【0036】
上記極性溶媒は、下記一般式(1);
【0037】
【化2】
【0038】
(式中、R1およびR2は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキル置換されたアリール基、ヘテロアリール基、又は、アルキル置換されたヘテロアリール基を表す。また、R1およびR2が直接結合し、環構造を形成してもよい。Yは、−CONH−、−C(=O)−又は−SO−で表される基を表す。)で表される化合物であることも好ましい。
【0039】
上記アルキル基としては、上述したアルキル基と同様のものとすることができる。
上記アルケニル基としては、例えば、炭素数2〜100のものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基であり、より好ましくは炭素数3〜7のアルケニル基であり、更に好ましくは炭素数4〜6のアルケニル基である。
上記アルキニル基としては、例えば、炭素数2〜100のものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、より好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基であり、更に好ましくは炭素数2〜5のアルキニル基である。
【0040】
上記アリール基としては、例えば、炭素数6〜30のものが挙げられる。それらの中でも、フェニル基、ペンタレニル基、ナフタレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基等が好ましい。
上記アルキル置換されたアリール基とは、上記アリール基の1以上の水素原子がアルキル基で置換されたものを意味しており、該アルキル基は、上記アルキル基と同様のものとすることができる。そのようなアルキル置換されたアリール基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基で置換された炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。具体的には、メチルフェニル基、プロピルペンタニル基、ヘキシルナフタレニル基、メチルフェナレニル基、エチルフェナントレニル基等が好ましい。
【0041】
上記ヘテロアリール基としては、例えば、酸素、硫黄、窒素等を含むヘテロアリール基が挙げられ、それらの中でも、チオフェニル基、フラニル基、ピラニル基、キサンテニル基、ピロリニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリニル基、チアゾリニル基、イソオキサゾリニル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基等が好ましい。
上記アルキル置換されたヘテロアリール基とは、上記ヘテロアリール基の1以上の水素原子がアルキル基で置換されたものを意味しており、該アルキル基は、上記アルキル基と同様のものとすることができる。そのようなアルキル置換されたヘテロアリール基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基で置換された酸素、硫黄、窒素等を含むヘテロアリール基が挙げられる。それらの中でも、メチルチオフニル基、ヘキシルフラニル基、メチルピラニル基、ブチルキサンテニル基、メチルピロリニル基、ペンチルイミダゾリニル基、オクチルピラゾリニル基、ヘキシルチアゾリニル基、ペンチルイソオキサゾリニル基、ブチルピリジニル基、メチルピラジニル基、メチルピリミジニル基等が好ましい。
【0042】
また、上記一般式(1)における、R1およびR2が直接結合し、環構造が形成されている形態としては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が挙げられる。
【0043】
上記極性溶媒としては、上述したものの中でも、−OHで置換されたアルカン、下記一般式(2);
【0044】
【化3】
【0045】
(式中、R1´及びR2´は、同一又は異なって、アルキル基を表す。)で表されるケトン、―COOHで1以上置換されたアルカンおよび水からなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。より好ましくは、−OHで置換された炭素数1〜6のアルカン、上記一般式(2)で表されるもののうち、式中のR1´及びR2´が、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を表すケトン、―COOHで1以上置換された炭素数1〜6のアルカンおよび水からなる群より選択される少なくとも一つであることであり、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メチル−2−プロパノール、アセトン、酢酸、酢酸と水との混合物が更に好ましい。特に好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メチル−2−プロパノールであり、最も好ましくは、メタノール、エタノールである。
【0046】
上記溶解補助剤としては、上記極性溶媒の極性を強める働きや、上記微粒子分散剤の溶解を補助する働きのあるもの等であれば特に制限されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アンモニア等が挙げられ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アンモニアが好ましい。
【0047】
本発明において用いられる有機溶媒を含む溶媒溶液が、極性溶媒及び溶解補助剤を含む極性溶媒溶液である場合の形態としては、例えば、ポリビニルピロリドンの水溶液、ポリビニルアルコールの水溶液、ポリビニルピロリドンのメタノール溶液、ポリビニルピロリドンのエタノール溶液、ポリビニルピロリドンのイソプロパノール溶液、ポリビニルピロリドンの2−メチル−2−プロパノール溶液、ポリビニルピロリドンのアセトン溶液、アンモニア水等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルピロリドンの水溶液、ポリビニルアルコールの水溶液、ポリビニルピロリドンのメタノール溶液、ポリビニルピロリドンのエタノール溶液、アンモニア水が好ましい形態である。
【0048】
本発明の導電性膜の製造方法においては、上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行った後、次いでパターンを有する膜に酸を作用させる工程を行ってもよい。このように、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行った後に、続いて酸を作用させることにより、酸を作用させなかった場合と比べて、製造される導電性膜の導電性はやや低下するが、よりヘイズが抑制され、透過率の向上した導電性膜を得ることができる。
【0049】
上記パターンを有する膜に、酸を作用させる工程において、作用させるとは、パターンを有する膜に、酸が作用することとなる限り、その方法は特に制限されないが、例えば、酸の溶液中に、パターンを有する膜を一部又は全部漬ける方法、パターンを有する膜に、酸の溶液を塗布する方法、パターンを有する膜に、酸の溶液を吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、酸の溶液中に、パターンを有する膜を一部又は全部漬ける方法により作用させることとすると、酸を作用させる工程による効果が充分に得られることとなるため好ましい。
【0050】
上記パターンを有する膜に、酸を作用させる工程は、低温、室温、高温のいずれで行われてもよいが、高すぎる温度条件下で行うと、酸の蒸気が発生して周辺にある金属装置等の劣化に繋がったり、基板として熱可塑性の樹脂フィルム等を用いた場合には、基板を白化させ、透明性が損なわれたりするおそれがあるため、高すぎる温度条件下で行うことは好ましくない。好ましい処理温度は40℃以下であり、より好ましくは30℃以下であり、更に好ましくは25℃以下である。
【0051】
上記パターンを有する膜に、酸を作用させる工程は、酸を作用させる工程による効果が充分に得られる程度の時間行えばよいが、処理時間が長すぎても更なる効果の向上が見込まれない場合や逆に効果が得られにくくなる場合がある。酸を作用させる処理時間としては、例えば、15秒〜60分であることが好ましく、より好ましくは15秒〜30分であり、更に好ましくは15秒〜2分である。特に好ましくは、15秒〜1分である。
【0052】
上記パターンを有する膜に、酸を作用させる工程において用いられる酸としては、特に制限されず、種々の有機酸、無機酸から適宜選択することができ、強酸であってもよいし、弱酸であってもよい。上記有機酸としては、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、乳酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられる。上記無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。これらの中でも上記酸としては、酢酸、塩酸、硫酸、又は、それらの水溶液が好ましく、塩酸、硫酸、又は、それらの水溶液がより好ましい。
【0053】
上記パターンを有する膜に、酸を作用させる工程において用いられる酸として酸の水溶液を用いる場合には、酸の濃度は、高すぎると、作業性が低下し生産性を悪化させたり、基板として熱可塑性の樹脂フィルム等を用いた場合には、基板を白化させ、透明性が損なわれたりするおそれがある。一方、低すぎると、酸を作用させる効果が得られないおそれがある。よって、0.05〜10mol/Lであることが好ましく、0.05〜5mol/Lであることがより好ましい。更に好ましくは、0.1〜1mol/Lである。
【0054】
本発明において用いられる導電性微粒子は、一般的に平均粒子径が100μm以下の導電性粒子を意味するものであり、導電性微粒子の粒子径は特に限定されるものではないが、平均粒子径が1μm以下であることが好ましい。1μm以下の平均粒子径とすることで、導電性を有する網目状線部の線幅を狭くすることができ、導電性膜の透過部を広くすることができ、開口率が向上することとなる。これにより、導電性膜の透過率が向上する。導電性微粒子の平均粒子径としてより好ましくは、500nm以下であり、更に好ましくは、100nm以下であり、特に好ましくは、50nm以下であり、最も好ましくは、10nm以下である。特に、10nm以下の平均粒子径とすることにより、形成された導電性を有する網目状線部の導電率を高めることができる。また、粒子径分布としては、変動係数が30%以内であることが好ましく、より好ましくは、20%以内であり、更に好ましくは、15%以内である。
【0055】
上記導電性微粒子の平均粒子径は、TEM像(透過型電子顕微鏡観察像)、又は、SEM像(走査型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径;粉末X線回折測定法により得られる結晶子径;X線小角散乱法等により得られる慣性半径とその散乱強度から求められる平均粒子径等を用いることができる。中でも、SEM像(走査型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径であることが好ましい。
上記導電性微粒子の形状は、球状に限られず、例えば、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状(例えば、六角板状)等の薄片状、紐状等の形状でも好適に用いることができる。
【0056】
上記導電性微粒子は、導電性を有する物質を含有する微粒子であれば特に限定されないが、例えば、金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等の微粒子が挙げられる。金属としては、種々の金属を用いることができ、単体金属、合金、固溶体等のいずれの形態であってもよい。金属元素としては特に限定されず、例えば、白金、金、銀、銅、アルミ、クロム、コバルト、タングステン等の種々の金属元素を用いることができるが、導電性が高い金属であることが好ましい。導電性が高い金属としては、白金、金、銀及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有するものであることが好ましい。また、金属としては、化学的安定性が高い金属であることが好ましい。例えば、上述した導電性膜の製造方法を用いる場合、有機溶媒に導電性微粒子を分散させて有機溶媒を乾燥させる等の工程を経ることとなる。このような工程に対して、酸化、腐食等が生じないことが好ましい。化学的安定性が高い観点からは、上記金属は、白金、金及び銀からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有してなることが好ましい。この中でも、低コスト化の観点からは、銀を含有することが好ましい形態である。導電性を有する無機酸化物としては、酸化インジウム錫等のインジウム系酸化物、酸化亜鉛系酸化物等の透明導電性物質、導電性を有する非透明性の無機酸化物等が挙げられる。炭素系材料としては、カーボンブラック等が挙げられる。炭化物系材料としては、シリコンカーバイド、クロムカーバイド、チタンカーバイド等が挙げられる。また、用いることが可能な導電性微粒子としては、非導電性微粒子を上記導電性微粒子を形成する導電性物質(金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等)で取り囲んだ微粒子(例えば、コア「非導電性物質」、シェル「導電性物質」のコア−シェル構造を持つ微粒子)も好ましい。非導電性微粒子としては、特に限定されるものではなく、種々の物質で形成された非導電性微粒子を用いることができる。上記導電性微粒子としては、これらを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
更に、用いることができる導電性微粒子としては、酸化銀、酸化銅等の酸化物微粒子を有機溶媒に分散させて塗工した後、塗膜を還元雰囲気に置くことで、銀、銅等の金属に還元して用いることも可能である。すなわち、上記導電性膜の製造方法は、酸化物微粒子を有機溶媒に分散させて塗工した後、還元雰囲気に置くことで、酸化物微粒子を還元する工程を含むことも好ましい形態の一つである。
【0057】
上記導電性微粒子の含有量は、有機溶媒分散体100質量%に対して、0.05〜10質量%であることが好ましい。このような範囲とすることによって、充分な導電性を有する導電性膜を得ることができる。導電性微粒子の含有量としてより好ましくは、0.1〜10質量%であり、更に好ましくは、0.2〜10質量%である。
【0058】
本発明において用いられる有機溶媒分散体は、有機溶媒に導電性微粒子が分散された分散体であり、有機溶媒、及び、導電性微粒子以外の物質を含んでいてもよい。有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、種々の有機溶媒を用いることができる。
上記有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタン等のベンゼン系炭化水素等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−デカン等のパラフィン系炭化水素、アイソパー(Isopar、エクソン化学社製)等のイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセン等のオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリン等のナフテン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油や石炭由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルム等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノール、メチルセロソルブ等のアルコール類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系溶剤;二硫化炭素等が好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0059】
上記有機溶媒としては、疎水性の有機溶媒が好ましい。疎水性の有機溶媒を用いることによって、後述する自己組織化工程において加湿雰囲気下に置いた場合に、より安定した形態で有機溶媒分散体中に水滴を取り込むことができる。また、有機溶媒としては、非極性の有機溶媒であることが好ましい。非極性であることにより、極性分子である水に溶けにくいものとなるため、塗膜に取り込まれた水滴の形態をより好適に保持することができる。非極性の有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数6〜10程度の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;脂肪族炭化水素系溶媒等を好ましく用いることができる。有機溶媒の蒸発速度、水の溶解度の点から、すなわち、比較的蒸発速度が速く、水滴が結露しやすく、かつ水と混じりにくい点からは、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等がより好ましい。上記有機溶媒としては、極性溶媒と非極性溶媒との混合溶媒であってもよい。例えば、芳香族炭化水素溶媒とケトン系溶媒との混合溶媒、芳香族炭化水素とアミド系溶媒との混合溶媒等であってもよい。
【0060】
上記有機溶媒の比重は、水の比重以下であることが好ましい。有機溶媒の比重が水の比重よりも大きい場合、後述する自己組織化工程を行う際に、塗膜表面で結露した水滴が有機溶媒分散体中に取り込まれないおそれがある。有機溶媒の比重として具体的には、室温(20℃)での比重が1.00以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更に好ましい。
【0061】
上記有機溶媒の粘度としては、室温(20℃)において2mPa・s以下であることが好ましい。塗工された有機溶媒分散体中に水を取り込む場合、有機溶媒の粘度が高すぎると、充分に水滴を取り込むことができないおそれがある。
【0062】
上記有機溶媒分散体は、導電性微粒子等の微粒子が有機溶媒中に分散するのを促進する微粒子分散剤を含有することが好ましい。微粒子分散剤を含有することによって、微粒子が有機溶媒中で凝集してしまうことを防止することができ、有機溶媒分散体をより均一なものとすることが可能となる。
上記微粒子分散剤としては、導電性微粒子等の微粒子を有機溶媒中に分散させることができれば、特に制限されるものではないが、例えば、オクチルアミン、ヘキシルアミン、オレイルアミン等のアミン化合物;ドデカンチオール等の硫黄化合物;オレイン酸等のカルボン酸化合物;等が挙げられる。これらの中でも、アミン化合物であると、上述したパターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程において洗い流され易くなり、該工程による効果がより顕著に発揮されることが期待されるために好ましい。
上記微粒子分散剤としては、これらを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0063】
上記微粒子分散剤の含有量は、有機溶媒分散体100質量%に対して、0.001〜5質量%であることが好ましい。このような範囲よりも少ないと、有機溶媒分散体中の微粒子の凝集を充分に防止することができないおそれがある一方、多いと、形成される導電性膜の導電性が発現しなくなるおそれがある。微粒子分散剤の含有量としてより好ましくは、0.01〜3質量%である。
【0064】
上記有機溶媒分散体は、水及び有機溶媒に対する両親媒性化合物を含有することが好ましい。両親媒性化合物を含有することによって、後述する自己組織化工程を行う際に、その界面活性機能によって、塗膜中に取り込む水滴の形状を好適な形態で保持することが容易となるため、例えば、水滴同士の凝集を制御することができ、導電性膜の網目を形成することが容易となる。両親媒性化合物としては、両親媒性低分子化合物でもよいし、両親媒性高分子化合物でもよく、特に限定されるものではない。界面活性機能をより発揮できる形態としては、両親媒性高分子化合物であることが好ましい。また、有機溶媒分散体中で塗膜中に取り込んだ水滴の形態を好適に保持するには、界面活性機能を有する化合物を用いることが好ましい。すなわち、上記有機溶媒分散体が、界面活性機能を有する化合物を含有することも本発明の好ましい形態の一つである。
【0065】
上記両親媒性化合物の含有量としては、有機溶媒分散体100質量%に対して、両親媒性化合物の含有量が0.001〜25質量%であることが好ましい。このような範囲の含有量とすることによって、パターンを有する膜を形成する際に行われる自己組織化工程において、塗工された有機溶媒分散体中に取り込まれる水滴の形態をより安定して保持することが可能となる。0.001質量%未満である場合には、塗膜表面における水滴の成長や輸送が困難になり、開口率が低くなるおそれがある。25質量%を超えると、塗膜表面で水滴が凝集し、空孔部が充分に形成されないおそれがある。また、導電性が発現しにくくなるおそれがある。両親媒性化合物の含有量としてより好ましくは、0.001〜15質量%であり、更に好ましくは、0.001〜5質量%であり、特に好ましくは、0.01〜1質量%である。
【0066】
上記両親媒性化合物としては、親水性基と疎水性基との両方を有する化合物であることが好ましい。両親媒性化合物には、後述する自己組織化工程において、基板上に塗工された有機溶媒分散体に付着した水滴が互いに融合することを防止する効果が期待される。両親媒性化合物としては、水及び有機溶媒の両方に対して親和する部分を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、疎水性基としては、例えば、炭素数5〜20の炭化水素基、フェニル基、フェニレン基等の非極性基が挙げられる。また、親水性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、スルホ基、エステル基、アミド基、エーテル基、ピリジン基等が挙げられる。
【0067】
上記両親媒性化合物としては、アルキル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、アルキルアンモニウムクロライド等のカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、オクチルアミン、ドデシルアミン等のアルキルアミン、両親媒性高分子等が挙げられる。有機溶媒及び水への溶解性の観点からノニオン系界面活性剤、両親媒性高分子が好ましい。これらの両親媒性化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
上記両親媒性高分子としては、ポリアクリルアミドを主鎖骨格として、側鎖に親水性基と疎水性基とを持つ高分子、疎水性(メタ)アクリレートと親水性(メタ)アクリレートとの共重合体、スチレンと親水性(メタ)アクリレートとの共重合体、スチレンと2−ビニルピリジンとの共重合体、オクタデシルイソシアネート変性ポリエチレンイミン(エポミンRP−20、日本触媒社製)のように主鎖に親水性基を持ち、側鎖に疎水性基を持つ高分子、疎水性基と親水性基とを有するポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロック共重合体、又は、ジクロルジフェニルスルホンとビスフェノールAのナトリウム塩との重縮合により得られ、主鎖骨格中に疎水性基であるジフェニレンジメチルメチレン基と親水性基であるジフェニレンスルホン基とを有するポリスルホン等が挙げられる。
【0069】
上記両親媒性高分子としては、重量平均分子量5000以上500,000以下のものが好ましい。重量平均分子量5000以上500,000以下の両親媒性高分子であると、後述する自己組織化工程によりパターンを有する膜を形成する際に、溶媒蒸発時にパターン構造が崩れにくくなる。より好ましくは、重量平均分子量10,000以上300,000以下のものであり、更に好ましくは、50,000以上200,000以下であり、特に好ましくは、90,000以上100,000以下である。
また、上記両親媒性高分子の数平均分子量は3000以上500,000以下であることが好ましい。数平均分子量が3000以上500,000以下の両親媒性高分子であると、後述する自己組織化工程によりパターンを有する膜を形成する際に、溶媒蒸発時にパターン構造が崩れにくくなる。両親媒性高分子の数平均分子量としては、5000以上300,000以下であることがより好ましく、10,000以上200,000以下であることが更に好ましく、20,000以上100,000以下であることが特に好ましい。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、測定装置として、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)HLC−8120(東ソー社製)を使用し、カラムにTSK−GEL GMHXL−L(東ソー社製)を用いて、ポリスチレン換算の分子量として測定することができる。
【0070】
上記ポリアクリルアミドを主鎖骨格として、側鎖に親水性基と疎水性基とを持つ高分子としては、例えば、下記一般式(3):
【0071】
【化4】
【0072】
(式中、n及びmは、同一又は異なって、構成単位の繰り返し数を表す。)で表される(ドデシルアクリルアミド)n−(ω−カルボキシヘキシルアクリルアミド)m−ランダム共重合体(以下、「CAP」ともいう。)が好ましい。
式中、mに対するnの比率(n/m)としては、1〜15が好ましく、より好ましくは、2〜12であり、更に好ましくは、3〜10である。
【0073】
上記疎水性(メタ)アクリレートとしては、ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
上記親水性(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0075】
また、上記疎水性(メタ)アクリレートの代わりに、疎水性(メタ)アクリルアミド、スチレン等の疎水性ラジカル重合性モノマーを、上記親水性(メタ)アクリレートの代わりに、親水性(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン等の親水性ラジカル重合性モノマーを用いてもよい。
疎水性(メタ)アクリレート及び親水性(メタ)アクリレートはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、異なる成分を含んでいてもよい。
【0076】
上記有機溶媒分散体は、バインダーを含むものであることが好ましい。バインダーを含むものであると、基板との密着性が向上することになる。バインダーとしては、有機溶媒に溶解する高分子であれば特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール系ポリマー、ポリスチレン等が挙げられる。
これらのバインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
上記バインダーとしては、重量平均分子量5000以上500,000以下のものが好ましい。バインダーの重量平均分子量がこのような範囲であると、塗工された有機溶媒分散体と基板との密着性を充分なものとすることができる。より好ましくは、重量平均分子量10,000以上300,000以下のものであり、更に好ましくは、50,000以上200,000以下であり、特に好ましくは、90,000以上100,000以下である。
なお、バインダーの重量平均分子量は、例えば、上述した両親媒性高分子の重量平均分子量と同様にして測定することができる。
【0078】
上記バインダーの含有量としては、有機溶媒分散体100質量%に対して、0.001〜50質量%であることが好ましい。このような範囲の含有量とすることによって、塗工された有機溶媒分散体と基板との密着性を充分なものとすることができる。また、上述したように、バインダーとして両親媒性高分子を用いる場合には、このような範囲の含有量とすることによって、自己組織化工程を行う際に、塗工された有機溶媒分散体中に取り込まれる水滴の形態をより安定して保持することができる。0.001質量%未満である場合には、後述する自己組織化工程を行う際に、塗膜表面における水滴の成長や輸送が困難になり、開口率が低くなるおそれがある。50質量%を超えると、塗工性が悪くなったり、水滴の成長が充分生じずに開口率が低くなったりするおそれがある。
バインダーの含有量としてより好ましくは、0.001〜25質量%であり、更に好ましくは、0.005〜25質量%である。
【0079】
上記有機溶媒分散体は、塗工前の水分含有量が10質量%以下であることが好ましい。塗工前の有機溶媒分散体中に水分が多く含有されている場合、有機溶媒分散体中の水分が表面張力により大きな水滴となり、後述する自己組織化工程によりパターンを有する膜を形成する際に、網目を細かくすることができないおそれがある。塗工前の水分含有量としてより好ましくは、5質量%以下である。
【0080】
上記有機溶媒分散体は、基板に塗工されるものである。上記基板は、特に限定されるものではなく、有機溶媒分散体を表面に塗工することができるものであればよい。上記基板としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、単結晶基板、半導体基板、金属基板等の種々の基板を用いることができる。電子ペーパー(デジタルペーパー)等のディスプレイに用いる場合には、ガラス基板、透明性を有するプラスチック基板等の透明基板を基板として用いることが好適である。透明基板とは、可視光の透過率が高い基板のことであり、例えば、波長400〜700nmの可視光の透過率が50%以上であることが好ましい。より好ましくは、上記透過率が70%以上であり、更に好ましくは、80%以上である。また、ガラス基板、プラスチック基板を用いることは、低コスト化の観点からも好適である。また、電子ペーパー等の表示装置として用いる場合には、可とう性を有する基板を用いることも好ましい形態である。プラスチック基板としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエステル系;アクリル系;シクロオレフィン系;オレフィン系;ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート等の樹脂系のフィルムが挙げられる。
【0081】
上記有機溶媒分散体を塗工する基板は、表面が親水性である基板を用いることが好ましい。上記基板の表面が親水性であることによって、水滴と基板とを接触しやすくし、空孔の貫通率を高め、空孔底面に余分な高分子・粒子膜の形成を防ぐことができるため、後述する自己組織化工程によりパターンを有する膜を形成する際に、空孔部の形状を開口率が高い導電性膜の形態とすることができる。表面が親水性である基板としては、水に対する接触角が90°以下であることが好ましい。90°以下であることによって、有機溶媒分散体中に取り込まれた水滴の形状を調整し、空孔部の形状を開口率が高い形態にすることができる。水に対する接触角の上限としてより好ましくは、60°以下であり、更に好ましくは、30°以下である。
【0082】
上記有機溶媒分散体を塗工する基板は、基板表面に親水化処理を行われたものであることが好ましい。これによれば、有機溶媒分散体中に取り込まれた水滴を好適な形状で保持することができる。また、基板表面の親水性を制御することによって、導電性膜の形状を更に制御することができる。親水化処理の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ性溶液に浸漬させる方法が好ましい。アルカリ性溶液としては、特に限定されるものではないが、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液等を好ましく用いることができる。具体的には、飽和水酸化カリウムエタノール溶液等を好ましく用いることができる。また、親水化処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、UV−オゾン処理を行う方法等が挙げられる。このような方法は、基板の種類、有機溶媒分散体の種類等によって適宜好ましい方法を選択することが好ましい。また、親水化による基板の接触角は、上述した好ましい接触角の値を用いることができる。
【0083】
本発明の導電性膜の製造方法において行われる、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程(自己組織化工程)について説明する。
上記自己組織化工程によれば、有機溶媒を蒸発させながら、結露により生じた水滴を塗膜中に取り込むことができる。そして、有機溶媒が蒸発し、更に取り込まれた水滴を乾燥させることにより、取り込まれた水滴に対応する空孔部を形成することができる。これにより、導電性微粒子から形成された網目状線部と、空孔部とが形成される。このように、自己組織化工程により網目状のパターンを有する導電性膜を製造することができ、簡易かつ低コストに、導電性と光透過性とに優れた網目状の導電性膜を製造することが可能となる。すなわち、本発明の導電性膜の製造方法により形成された導電性膜は、網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜であることが好ましい。
【0084】
上記塗工された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程において、塗膜表面で結露させることは、塗膜表面付近の湿度や、塗膜表面付近の雰囲気と塗膜表面との温度差を調整することによって行うことができる。すなわち、塗膜表面で結露する条件とすればよい。本発明においては、自己組織化工程により塗膜表面に網目状の導電性部と空孔部とが形成されることになることから、これは、図1−1に示したような機構によって、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させることによって生じたものであることが技術的に見て明らかである。
上記のことから、上記自己組織化法は、塗工された有機溶媒を、塗膜表面で結露が生じる条件で蒸発させる工程ということもできる。塗膜表面で結露が生じる条件とは、例えば、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の露点を、塗膜表面の温度よりも高いものとする条件である。結露を生じさせる方法としては特に限定されるものではないが、例えば、塗膜表面の温度を、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の露点以下に冷却する方法、上記有機溶媒を蒸発させる雰囲気を加湿雰囲気として、該雰囲気の露点を塗膜表面の温度より高くする方法等が好適である。これらの方法は、一つの方法で用いてもよいし、複数の方法を組み合わせて用いてもよい。複数の方法を組み合わせて行うことによって、有機溶媒を蒸発させる条件をより精密に制御することができ、導電性膜の網目状パターンの形態を調整することができる。
【0085】
上記塗膜表面の温度を、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の露点以下に冷却する方法としては特に限定されるものではないが、冷却素子等を用いて塗膜を強制的に冷却する方法、有機溶媒の蒸発潜熱により塗膜表面温度を低くする方法等が挙げられる。また、冷却素子等を用いて塗膜を強制的に冷却する方法としては、有機溶媒分散体を塗工した基板を冷却することで、塗膜表面の温度を冷却することも好ましい。このような方法で冷却することにより、塗膜表面の温度と、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の温度との差が大きくなるため、より簡易に結露を生じさせることができる。すなわち、塗膜表面の温度を有機溶媒を蒸発させる雰囲気の温度よりも低くすることが好ましい。例えば、ペルチェ素子等の冷却機器を用いることによって、有機溶媒分散体を塗工した基板を冷却する方法が好ましい方法の一つとして挙げられる。この方法であると、塗膜表面の温度制御と、有機溶媒を蒸発させる塗膜周囲の雰囲気の制御とを独立して行うことができるため、より精密な条件設定を行うことができる。条件をより調整することにより、製造される導電性膜の形状、透過率、導電率等を制御することができるため、種々の用途に応じて好適な形態の導電性膜を形成することが可能となる。
【0086】
上記有機溶媒を蒸発させるときに塗膜表面で結露が生じるようにするためには、加湿雰囲気とすることが好ましい。すなわち、上記有機溶媒の蒸発を行う工程は、加湿雰囲気下で有機溶媒を蒸発させる工程であることが好ましい。加湿雰囲気とすることによって、有機溶媒分散体の表面で結露が生じやすくなる。上記有機溶媒を蒸発させる際の雰囲気を加湿雰囲気として、該露点を塗膜表面の温度より高くする方法としては、有機溶媒の蒸発を行う周囲全体を加湿する方法、加湿気体を塗膜表面に吹きつける方法等が好適である。加湿雰囲気とすることによって、塗膜表面で結露が生じやすくなる。加湿気体を塗膜表面に吹きつける際には、吹きつける速度等によって、塗膜の中に取り込まれる水滴の形状、量等が変化するため、吹きつける速度を調整することによって、有機溶媒を蒸発させる条件を調整することができる。これにより、導電性膜の形状を制御することができ、その特性(光透過率、導電性等)を向上させることができる。なお、上記加湿雰囲気は、加湿されるのと同様な条件、すなわち有機溶媒分散体の塗膜表面で結露が生じるのに充分な湿度となる雰囲気であればよく、加湿されていてもよいし、湿度の高い環境下で、有機溶媒を蒸発させる工程を行ってもよい。
【0087】
上記加湿雰囲気は、相対湿度が50%以上であることが好ましい。相対湿度が50%以上と高いことによって、上記塗膜表面で結露が生じやすくなり、効率的に導電性膜の製造を行うことができる。相対湿度としては、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
【0088】
上記加湿気体を吹きつける風速の上限としては、流速として5m/s(300m/min)以下であることが好ましい。5m/sを超える流速で加湿気体を吹きつける場合、塗工された有機溶媒分散体の形状が、加湿気体を吹きつけることにより変化し、有機溶媒を乾燥させた後の膜形状を目的の形状に保持することができないおそれがある。加湿気体を吹きつける風速の上限としてより好ましい流速としては、3m/s(180m/min)以下であり、更に好ましくは、1m/s(60m/min)以下である。また、上記風速の下限としては、0.02m/min以上であることが好ましい。風速が0.02m/min以下である場合には、塗工された有機溶媒分散体中に、水滴が充分に取り込まれないおそれがある。風速の下限としてより好ましい流速としては、0.1m/minであり、更に好ましくは、0.2m/min以上であり、特に好ましくは、0.4m/min以上である。加湿気体を吹きつける時間の上限としては、生産性の観点からは、1時間以内であることが好ましい。より好ましくは、40分以内であり、更に好ましくは、30分以内である。加湿気体を吹きつける時間の下限としては、1分以上であることが好ましい。1分未満であると、有機溶媒の蒸発が充分に行うことができないおそれがあり、また、有機溶媒分散体中へ水滴が充分に取り込まれないおそれがある。より好ましくは、5分以上であり、更に好ましくは、10分以上である。例えば、20分程度(15〜25分)が好適な時間である。吹きつける加湿気体の相対湿度についても、上述と同様に、相対湿度が50%以上であることが好ましく、更に好ましくは、55%以上であり、特に好ましくは、60%以上である。
【0089】
ここで、上記自己組織化工程により網目状のパターンを有する膜を製造する方法について図1−2を用いて説明する。図1−2は、塗工された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を示すフロー図である。図1−2(a)で示すように、基板11に塗工された有機溶媒分散体(以下、「塗膜」ともいう。)は、塗膜12を形成した基板11を冷却する方法や加湿気体を吹きつける方法により塗膜表面で結露が生じる条件とすることで、図1−2(b)に示すように、塗膜の表面で結露が生じることとなる。結露により生じた水滴13は、図1−2(c)及び図1−2(d)に示すように塗膜12中に取り込まれる。また、塗工された有機溶媒分散体は、時間が経過するとともに、有機溶媒が蒸発し、薄くなっていく。そして、有機溶媒と、加湿雰囲気によって取り込まれた水滴とが蒸発することによって、図1−2(e)に示すように、有機溶媒が蒸発した膜は空孔部14及び網目状線部15が形成されたものとなる。このようにして、網目状のパターンが形成されることとなる。また、図2は、有機溶媒が蒸発した後の膜の形態を示す平面模式図であるが、形成された空孔部14の周りに金属を含んでなる網目状線部15が形成されたものとなり、網目状パターンを有する膜が形成される。
また、図3に示すように、ペルチェ素子20を用いて、基板21及び塗膜22の冷却を行い、更に加湿気体を塗工された有機溶媒分散体に吹きつけることにより有機溶媒を蒸発させる方法は、本発明の導電性膜の製造方法の好適な形態の一つである。すなわち、上記製造方法は、基板及び塗膜の冷却を行い、かつ加湿気体を塗膜に吹きつけ、該塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含む製造方法であることが好ましい。
【0090】
上記導電性膜の製造方法は、塗工された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程の後に、更に、無電解めっきを行う工程を含むことが好ましい。このように、無電解めっきを行うことによって、得られる導電性膜の導電性を更に向上させることができる。
【0091】
本発明はまた、上記製造方法により製造される導電性膜でもある。上記製造方法により製造されたものであることにより、上記導電性膜は、導電性物質の網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜となり、導電性と光透過性とに優れた透明導電性膜とすることができる。
なお、網目状のパターンを有する導電性膜における網目状線部と空孔部との配置形態としては、ランダム状であってもよいし、規則的に並んでいる状態であってもよい。また、大きめの網目や小さめの網目が混在し、いくつか網目が切れているところがあってもよいが、全体的に見れば、ミクロな技術分野において網目状の構造が認められると評価されるものであることが望ましい。すなわち、マイクロスコープで観察して、網目状の構造が確認できればよい。網目状の構造は、導電性膜全面に形成されていることが好ましいが、導電性膜が用いられる用途に応じて適宜設定されればよく、導電性膜としての機能が発揮され得る限り部分的であってもよい。その他の網目状の好ましい形態については後述する。ここで、ランダム状とは、網目状線部と空孔部とが一定の規則に基づいて配置されていない状態であることをいう。
以降においては、本発明の導電性膜の中でも、特に優れた導電性と光透過性とを有することになる、網目状のパターンを有する導電性膜の形態について説明する。なお、上記製造方法により製造される導電性膜のより好ましい形態としては、以下に説明する網目状の導電性膜の好ましい形態と同様である。
【0092】
上記網目状の導電性膜の形態としては、空孔部の平均面積が400μm2以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下であることが好ましい。空孔部の平均面積が小さく、網目状線部の線幅が狭いことによって、光の透過性が高く、均一性の高い網目状の導電性膜を形成することができる。空孔部の平均面積としてより好ましくは、300μm2以下であり、更に好ましくは、200μm2以下であり、特に好ましくは、100μm2以下である。また、上記空孔部は、平均最大フェレ径が20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。空孔部による開口率としては、60%以上であることが好ましく、これにより光透過率を高めた導電性膜とすることができる。空孔部による開口率は65%以上であることがより好ましく、更に好ましくは、70%以上であり、特に好ましくは、80%以上であり、最も好ましくは、90%以上である。上記網目状線部の線幅としてより好ましくは、2μm以下であり、更に好ましくは、1μm以下である。なお、最大フェレ径とは、各空孔部の輪郭に接するように引いた2本の平行線間の最大のものを最大フェレ径といい、平均最大フェレ径とは、計測した各空孔部の最大フェレ径の平均をとったものを平均最大フェレ径という。
【0093】
本発明は更に、導電性物質の網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜であって、該導電性膜は、空孔部の平均面積が400μm2以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下である導電性膜でもある。空孔部の平均面積が小さく、網目状線部の線幅が狭いことによって、光の透過性が高く、かつ均一性の高い網目状の透明導電性膜を形成することができる。例えば、電子ペーパー等に用いる場合には、表示を行うマイクロカプセルに対して均一に電圧を印加することができる。網目が広い(空孔部の面積が大きい)場合、導電性膜により電圧を印加してマイクロカプセルの色を変化させるような電子ペーパー等のディスプレイに用いる場合、網目が細かいものでないとその空孔部の中にマイクロカプセルの全体が納まることとなり、そのようなカプセルには電圧が印加されないこととなる。また、網目が細かいことによって、導電性がより均一となる。これによれば、例えば、タッチパネルに用いられた場合、位置の認識の精度が高くなる。このような網目状の導電性膜は、上記導電性膜の製造方法を用いて形成することが可能である。上記導電性膜における網目状線部と空孔部との配置形態としては、ランダム状であってもよいし、規則的に並んでいる状態であってもよい。例えば、網目状の導電性膜を形成する際に、より網目の細かいものとするためには、ランダム状であった方が製造がより容易になるため、ランダム状であることも好ましい形態の一つである。
【0094】
上記導電性膜は、空孔部の平均面積が400μm2以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下であることによって、導電性膜の網目が細かいということができる。網目が細かいことによって、導電性膜の面内で均一な導電性を有するものとすることができる。空孔部の平均面積が400μm2を超える場合、導電性膜の面内の均一性が充分とならず、例えば、光の透過性、導電性にばらつきが生じるおそれがある。また、上述したように、電子ペーパー等のディスプレイに対して用いる場合、電圧が印加されない部分が生じることにより、導電性膜としての機能が充分でなくなるおそれがある。空孔部の平均面積として、より好ましくは、300μm2以下であり、更に好ましくは、200μm2以下であり、特に好ましくは、100μm2以下である。また、上記空孔部は、平均最大フェレ径が20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。上記網目状線部の線幅は、5μm以下であり、線幅が狭いことによって、例えば、ディスプレイ等において生じるおそれのあるモアレを抑制することができる。網目状線部の線幅が5μmを越える場合、開口率が小さくなり、光透過性が充分でなくなるおそれがある。網目状線部の線幅として、より好ましくは、2μm以下であり、更に好ましくは、1μm以下である。上記のように、空孔部の平均面積、網目状線部の線幅を制御することによって、導電性膜の導電性と光透過性とをより好ましい値へと制御することができる。
【0095】
上記導電性膜は、空孔部による開口率が60%以上であることが好ましい。開口率を高めることによって、光の透過性を向上させることができるため、電子ペーパー等のディスプレイに用いる場合に好適に用いることができる。60%未満であると、充分な光透過率を得ることができず、透過性を有する導電性膜として充分な特性を発揮することができないおそれがある。空孔部による開口率は、65%以上であることがより好ましく、更に好ましくは、70%以上であり、特に好ましくは、80%以上であり、最も好ましくは、90%以上である。
開口率、線幅、空孔部の平均面積及び平均最大フェレ径については、以下の方法により求めることができる。
【0096】
<開口率、線幅、空孔部の平均面積、平均最大フェレ径の求め方>
導電性膜の表面を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)にて倍率1000倍で観察し、観察した画像を画像処理ソフト(Image−Pro Plus ver.4.0、米国Media Cybernetics社製)を用いて、以下の方法で処理し、導電膜の開口率、線幅、空孔部の平均面積、フェレ径を求める。
【0097】
顕微鏡観察した画像(これを「原画像」とする。)を、上述の画像処理ソフトを用いて導電部が黒、その他の部分(網目の開口部)が白となるように白黒に二値化する。この時、二値化の閾値は、色調のヒストグラムより白と黒のピーク値を求め、その中間値とする。次に、二値化画像の白黒反転処理を行う(この画像を「二値化画像」とする。)。この時の、全体の面積に対する黒部の面積比を求め、開口率とする。
【0098】
また、二値化画像の白部の面積を求め、これを導電部の面積(S)とする。次に、二値化画像の細線化処理を行う(この画像を「細線化処理画像」とする。)。細線化処理画像の白部の面積を求め、これを導電部の長さ(L)とする。上記で求めたSとLの値を用い、下記式(1)により導電部の線幅を求める。
導電部の線幅=S/L (1)
【0099】
続いて、二値化画像の黒部を抽出する(この画像を「抽出画像」とする。)。抽出の際、境界上の空孔部については除外する。また、1μm2以下の面積の空孔部についても除外する。このときの、各要素の面積、及び、最大フェレ径を計測し、平均化したものを、それぞれ、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径とする。
【0100】
上記網目状線部の厚みは、200nm以上であることが好ましい。200nm以上であることによって、線幅が狭くなったとしても充分な導電率を得ることができる。導電性膜の膜厚が200nm未満である場合には、導電性が低くなり、導電性膜としての特性を充分に発揮することができないおそれがある。網目状線部の厚みとしてより好ましくは、1μm以上である。なお、網目状線部の厚みは、最大膜厚を測定することによって求められ、例えば、レーザー顕微鏡を用いることによって測定することができる。測定方法としては、レーザー顕微鏡(VK−9700、キーエンス社製)で倍率50倍で塗膜を観測し、観察した画像から塗膜の最大の段差を10箇所で計測し、平均した値を導電性膜の最大膜厚とする。
【0101】
本発明の導電性膜は、可視光(波長が400〜700nm)の光透過率が20%以上であることが好ましい。光透過率を高くすることで、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。光透過率としてより好ましくは、40%以上であり、更に好ましくは、60%以上であり、特に好ましくは、80%以上である。上記光透過率は、分光光度計(商品名「V−530」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について測定することができる。
【0102】
本発明の導電性膜はまた、全光線透過率が20%以上であることが好ましい。全光線透過率が20%以上である場合、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。全光線透過率としてより好ましくは、40%以上であり、更に好ましくは、50%以上であり、特に好ましくは、60%以上である。最も好ましくは、75%以上である。
なお、上記全光線透過率は、ヘイズメーター NDH5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
【0103】
本発明の導電性膜は、表面抵抗率が1012Ω/□以下であることが好ましい。このような表面抵抗率であると、充分な導電性を有しているため、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。より好ましくは、108Ω/□以下であり、更に好ましくは、107Ω/□以下であり、特に好ましくは、106Ω/□以下である。最も好ましくは、105Ω/□以下である。
また、上記網目状のパターンを有する導電性膜においては、特に、空孔部による開口率が高い場合、網目状線部の面積が小さくなると、開口率が低い同じ膜厚の導電性膜と比較すると、導電性膜の抵抗率が増加することとなる。そのため、網目状線部の面積は、充分な導電性を確保することができる面積であることが好ましい。好ましい網目状線部の面積は、導電性膜の膜厚、面積、導電性膜を構成する金属材料等によって異なるが、例えば、導電性膜の面内の表面抵抗率が1012Ω/□以下であるように網目状線部の面積を設定することが好ましい。これによれば、導電性膜の表面抵抗率としてより好ましくは、108Ω/□以下であり、更に好ましくは、107Ω/□以下であり、特に好ましくは、106Ω/□以下である。最も好ましくは、105Ω/□以下である。
なお、上記表面抵抗率は、抵抗率計 ロレスター−GP(三菱化学アナリテック社製、プローブ:ASPプローブ)を用いて、四端子四探針法により測定することができる。
【0104】
本発明の導電性膜は、ヘイズが40%以下であることが好ましい。ヘイズを低く抑えることで、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して用いた場合、画像鮮明性を向上させることができる。ヘイズとしてより好ましくは、30%以下であり、更に好ましくは、25%以下であり、特に好ましくは、20%以下である。
なお、上記ヘイズは、ヘイズメーター NDH5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
【0105】
上記導電性膜の用途としては、特に限定されるものではなく、導電性を必要とする用途であればどのような用途にも用いることができる。例えば、プラズマディスプレイ等に用いられる電磁波遮蔽フィルム(EMIシールドフィルム)等として用いることができるし、電子ペーパー(デジタルペーパー)、液晶表示装置の表示装置に用いられる電極として用いることもできる。また、タッチパネル等にも用いることができる。
このように、本発明はまた、デジタルペーパーに用いられる導電性膜でもある。
【0106】
本発明はまた、上記製造方法により導電性膜を製造するための導電性膜の製造装置でもある。すなわち、導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗工してパターンを有する導電性膜を製造する装置であって、上記製造装置は、有機溶媒分散体を基板に塗工した後、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する手段と、上記パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる手段とを有する導電性膜の製造装置もまた、本発明の1つである。
【0107】
本発明の製造装置は、有機溶媒分散体を基板に塗工する工程を行う部分、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程を行う部分、及び、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行う部分を含むものであるが、これらの工程を行う部分を含む限り、その他の工程を行う部分を含んでいてもよい。特に、有機溶媒分散体が塗工される前にろ過されるよう、ろ過装置を設けて有機溶媒分散体溶液に含まれる不純物、ゲル状異物、凝集異物を取り除くことが高品質の導電性膜を製造するために好ましい。
【0108】
上記有機溶媒分散体を基板に塗工する工程を行う部分において、有機溶媒分散体を基板に塗工する方法としては、スライド法、エクストリュージョン法、バー法、グラビア法のいずれかの方法が好ましい。また、長さの長い導電性膜を製造するために、基板としては長さの長いものが好ましく、連続製造のためには、ウェブ状の基板を用いることが好ましい。また、ウェブ状の基板はロール状の形態のものが運搬・取扱い上より好ましく、導電性膜が形成されたウェブ状基板も、巻き取りローラーなどでロール状の形態にすることで、運搬・取扱いが容易になり好ましい。
【0109】
上記塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程を行う部分は、基板上に有機溶媒分散体を塗工して形成された膜の表面温度よりも膜近傍の気体の露点が高くなるように調整された雰囲気下で、有機溶媒分散体の塗膜の表面に気体の風を送り、有機溶媒を蒸発させるとともに該気体を結露させて塗膜表面に液滴を形成する工程(結露工程)を行う部分と、表面に液滴を有する膜を該膜の表面温度よりも塗膜近傍の気体の露点が低くなるように調整された雰囲気下におくことで該液滴を蒸発させる工程(液滴蒸発工程)を行う部分とを含むことが好ましい。また、該塗膜に吹きつける気体としては空気が好ましい。
【0110】
上記結露工程においては、塗膜表面に液滴を形成することができる限り、塗膜の表面温度と塗膜近傍の気体の露点との差は、特に制限されないが、90℃以下であることが好ましい。より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは70℃以下である。結露工程直前の塗膜の表面温度、及び、結露工程の露点のばらつきは、±5%以下が好ましい。より好ましくは、±3%以下であり、更に好ましくは、±2%以下である。
移動するウェブ状の基板を用いて製造する場合、ウェブ状の基板の移動速度は、0.1m/min〜100m/minが好ましい。より好ましくは、0.1m/min〜80m/minであり、更に好ましくは、0.1m/min〜60m/minである。また、ウェブ状の基板の移動速度に対する送風される気体の相対速度は、0.05m/s以上が好ましく、0.lm/s以上がより好ましい。また、30m/s以下が好ましく、より好ましくは、20m/s以下である。また、相対速度のばらつきは、±30%以下が好ましい。より好ましくは、±20%以下であり、更に好ましくは、±10%以下である。これにより、有機溶媒を充分に蒸発させるとともに塗膜表面に液滴を充分に形成するとともに、品質の安定した膜を形成することができる。
また、上記結露工程において送風口から送られる風は、塗膜に対して、ばらつきが±20°以内となるような角度で一方向から供給されることが好ましく、更にウェブ状の基板の移動方向に向けて吹く平行な風であることがより好ましい。風を塗膜に対して向かい風として送風すると、風と塗膜との相対速度が低い条件で製造する場合に、風の速度制御が難しく、塗膜表面が乱れて塗膜の平滑性が失われるおそれがある。
【0111】
上記液滴蒸発工程においては、塗膜表面の液滴を蒸発させることができる限り、塗膜の表面温度と塗膜近傍の気体の露点との差は、特に制限されないが、0.5℃以上が好ましい。より好ましくは、1℃以上であり、更に好ましくは、2℃以上である。また、90℃以下であることが好ましい。より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは70℃以下である。また、液滴蒸発工程直前の塗膜の表面温度、及び、液滴蒸発工程の露点のばらつきは、±5%以下が好ましい。より好ましくは、±3%以下であり、更に好ましくは、±2%以下である。
液滴蒸発工程においては、塗膜に乾燥風を送ることで液滴の蒸発を促すことが好ましい。その場合、乾燥風は、塗膜に対して、±20°以内となるような角度で一方向から供給されることが好ましく、更に塗膜の移動方向に向けて平行に吹く風であることがより好ましい。
なお、上記結露工程、液滴蒸発工程において、膜の表面温度を制御する方法としては、移動するウェブ状の基板を用いる場合、当該ウェブ状基板に接する回転式のローラーに温度調節機を設け、基板の温度を制御することで膜の表面温度を制御する方法を用いることができる。その場合、例えば、伝熱媒体が流れる液流路をローラーの内部に設け、温度調節された伝熱媒体を送液する方法等を用いることができる。
【0112】
上記パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行う部分は、有機溶媒を含む溶媒溶液が入った容器内に、上記液滴蒸発工程を経てパターンが形成された膜を通過させる構造となった部分であることが好ましい。パターンを有する膜を有機溶媒を含む溶媒溶液が入った容器内に通過させる方法は特に制限されない。
【0113】
本発明の製造装置の一例の概略図を図7に示す。
図7の導電性膜製造設備100においては、導電性微粒子を含む有機溶媒分散体101が入ったタンク102が設置されている。タンク102には撹拌翼を有する撹拌機103が設置されており、撹拌翼が回転することで有機溶媒分散体101中の導電性微粒子の分散状態を保っている。有機溶媒分散体101は、ポンプ104により有機溶媒分散体を基板上に塗工する流延ダイ105に送られる。流延ダイ105は、ウェブ状の基板106の上方に備えられており、ウェブ状基板106は、送出ローラー108から出され、回転ローラー109〜111を経て、巻き取りローラー112によって巻き取られる。送出ローラー108及び回転ローラー109は、温度調節機107により温度を調整されており、これによって、送出ローラー108と回転ローラー109との間のウェブ状基板106の温度が制御される。流延ダイ105から有機溶媒分散体が塗工されたウェブ状基板は、上記結露工程を行う領域121、上記液滴蒸発工程を行う領域131、及び、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させるための有機溶媒を含む溶媒溶液が入った槽141を通過した後、ウェブ状基板上に形成された導電性膜152と共に巻き取りローラー112に巻き取られる。
【0114】
上記送出ローラー108と回転ローラー109との間のウェブ状の基板106の傾きは、水平方向に対して±10°以内であることが好ましい。流延ダイ105によって有機溶媒分散体101が基板106上に塗工されてから、結露工程に至るまでの間は、塗工された有機溶媒分散体が流動する状態にあるため、基板106の傾きが大きいと、有機溶媒分散体が傾斜の低いほうに寄ってしまい、均一な厚みの塗膜が形成されないおそれがある。有機溶媒分散体が基板上に塗工されてから、結露工程に至るまでの間の傾斜を±10°以内とすることで塗膜の厚みのばらつきを抑制することができる。より好ましくは、結露工程が終わるまでの間、傾斜を±10°以内とすることである。
送出ローラー108と回転ローラー109との間のウェブ状の基板106の傾きを水平方向に対して±10°以内とすることで、有機溶媒分散体が基板上に塗工されてから、結露工程が終わるまで間、基板106の傾きを水平方向に対して±10°以内とすることができる。
【0115】
有機溶媒分散体を基板に塗工する工程においては、送出ローラー108から出されたウェブ状の基板106上へ流延ダイ105から導電性微粒子を含む有機溶媒分散体101が塗工され塗膜が形成される。
結露工程を行う領域121においては、基板上の塗膜151に風を送るための送風機122から、温度が制御された塗膜に風が当てられ、塗膜上に液滴が形成される。送風機122は、送風口とともに、送風した風を吸引する吸引口を有するものであることが好ましく、送風口、吸引口を複数有するものであってもよい。送風機122は、独立に風の温度、湿度、風量及び吸引力を制御することができる複数の送風機から構成されるものであることが好ましい。これにより、結露によって発生する水滴の形状や量等に応じて送風や吸引を行う条件を制御することが可能となる。複数の送風機は、基板の移動方向に平行に複数設置されていてもよく、基板の移動方向に垂直に複数設置されていてもよい。基板の移動方向に垂直に複数設置すると、基板の移動方向に垂直な塗膜の幅方向についても結露条件を制御することができる。更に、風に塵や埃が混じって風の清浄度が低下するのを防ぐために、送風口、吸引口はフィルタを備えていることが好ましい。
【0116】
上記液滴蒸発工程を行う領域131には、乾燥機132が設置されており、この乾燥機132は、塗膜151に乾燥風を送ることで、塗膜上に形成された液滴を乾燥させ、パターンを形成する。乾燥機132は、塗膜151に乾燥風を送るとともに、送風機122から送られた風を吸引する吸引口を有することが好ましい。乾燥機132も送風機122と同様に風の温度と露点とを制御することで、塗膜151の乾燥条件を容易に調整することが可能となる。乾燥機132も送風機122と同様に、独立に風の温度、湿度、風量及び吸引力を制御することができる複数の乾燥機から構成されるものであることが好ましく、その場合、複数の乾燥機は、基板の移動方向に平行に複数設置されていてもよく、基板の移動方向に垂直に複数設置されていてもよい。基板の移動方向に垂直に複数設置されている場合、基板の移動方向に垂直な塗膜の幅方向についても乾燥条件を制御することができる。また、風に塵や埃が混じって風の清浄度が低下するのを防ぐために、乾燥機の送風口、吸引口はフィルタを備えていることが好ましい。
なお、図7においては、結露工程を行う領域121、液滴蒸発工程を行う領域131は、離れているが、これら2つの領域が接触していてもよい。すなわち、送風機122と乾燥機132とが一体となった形態の送風、乾燥機を用いてもよい。
【0117】
上記液滴蒸発工程を行う領域131を経て、パターンを有する膜を形成した後、有機溶媒を含む溶媒溶液142が入った槽141を通過する。これにより、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液142を作用させることができる。図7の装置においては、槽141中で溶媒溶液142の中にある回転ローラーは110の1つだけであるが、図13に示すように、有機溶媒を含む溶媒溶液742の中に回転ローラー702、703の2つを有する槽を用いてもよく、このような槽を用いた場合、溶媒溶液742の中に存在する2つの回転ローラーの間隔を調整することで、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間の長さを調整することができる。また、槽の中の溶媒溶液の液量を調整することによっても、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間の長さを調整することができる。なお、図7の回転ローラー109、図13の回転ローラー701とパターンを有する膜を挟んで対向する位置に弾性ローラーを設置してもよい。その場合、回転ローラー109、701と弾性ローラーの回転軸が水平になる位置に弾性ローラーを設置することが好ましい。
【0118】
上記流延ダイ105によって有機溶媒分散体101が基板106上に塗工されてから、液滴蒸発工程までの工程を行う部分としては、上記導電性膜製造設備100に示されたものの他、図8に示すように、2つの回転ローラー207、208によってウェブ状基板206が移動し、当該ウェブ状基板の上下に分けて結露工程を行う領域221、液滴蒸発工程を行う領域231を設けた形態のものとしてもよい。なお、図8において、201〜205は、それぞれ101〜105と同じであり、222、232も122、132と同様、それぞれ送風機、乾燥機である。
更に別の形態として、図9のように移動するベルト301上に設置された複数の基板302上に有機溶媒分散体を塗工し、基板上の塗膜311に対して結露工程、液滴蒸発工程を行う形態のものとしてもよい。図9において、305は流延ダイ、321は結露工程を行う領域、331は液滴蒸発工程を行う領域、322、332はそれぞれ送風機、乾燥機である。
なお、図8、9においては、導電性膜製造装置全体のうち、塗工されてから、液滴蒸発工程までの部分を示している。
【0119】
更に、有機溶媒分散体を基板に塗工する方法として、流延ダイによる方法に代えて、図10に示すように、スライドコーター402を用いることができる。図10に示す形態では、バックアップローラー404に対向してスライドコーター402が設置されており、また、スライドコーター402には減圧チャンバー403が設置されている。スライドコーターは、基板の移動方向における均一塗工性、生産性に優れ、また、基板405に接触することなく塗工することができるので、基板405の表面を傷つけることなく、均一な塗膜を形成することができる。更には、基板がバックアップローラー404に巻き掛けられている際に平滑化されるので、均一な塗膜を形成することができる。
また、上記図10におけるスライドコーター402に代えて、多層式スライドコーターやエクストリュージョンコーターを用いることもできる。
なお、図10においては、導電性膜製造装置全体のうち、有機溶媒分散体を基板に塗工する工程の部分を示している。
【0120】
その他の方法として、図11に示すように、ワイヤーバー塗工機501を用いて、有機溶媒分散体502を基板504に塗工する方法を用いることもできる。この方法では、ワイヤーバー503の回転によって引き上げられた有機溶媒分散体502が基板504に接触して塗膜が形成される。
更に図12に示すように、表面に凹部を有する版胴603と圧胴602とが対向して設置され、版胴603が回転することで版胴603の凹部604に入った有機溶媒分散体605が圧胴602上を移動している基板601上に塗工される形態の塗工方法を用いることもできる。図12において、606は過剰な有機溶媒分散体605を掻き落とすドクターブレードである。
なお、図11、12においても、導電性膜製造装置全体のうち、有機溶媒分散体を基板に塗工する工程の部分を示している。
図7〜13に示した装置、及び、装置の部分は、いずれも本発明の導電性膜の製造装置の好ましい形態であり、これらを種々組み合わせてできる製造装置もまた、本発明の導電性膜の製造装置の好ましい形態である。
【発明の効果】
【0121】
本発明の導電性膜の製造方法によって、優れた導電性と光透過性とを有する導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができる。また、製造工程において焼成するような高温での処理工程を必要としないために、基板としてPETフィルム等の汎用高分子基板を用いることができる方法である。そして、このようにして得られる導電性膜は、優れた導電性と光透過性とを有しているため、電子ペーパー等のディスプレイ等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1−1】図1−1は、塗工された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程の一例を示す、時間の経過による塗膜断面の概念図である。
【図1−2】図1−2(a)〜(e)は、塗工された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を示す概念図である。
【図2】図2は、空孔部と網目状線部が形成された網目状の導電性膜の平面模式図である。
【図3】図3は、ペルチェ素子を用いて、基板及び塗膜を冷却し、更に加湿気体を塗膜に吹きつけながら蒸発させる方法を示す断面模式図である。
【図4】図4は、実施例1〜13について、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間と、表面抵抗率との関係を示したグラフである。
【図5】図5は、実施例1〜13について、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間と、全光線透過率との関係を示したグラフである。
【図6】図6は、実施例1〜13について、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間と、ヘイズとの関係を示したグラフである。
【図7】図7は、本発明の導電性膜の製造装置の一例である導電性膜製造設備100の概略図である。
【図8】図8は、本発明の導電性膜の製造装置の一例として、導電性膜の製造装置全体のうち、有機溶媒分散体が基板上に塗工されてから、液滴蒸発工程までの部分を示した概略図である。
【図9】図9は、本発明の導電性膜の製造装置の一例として、導電性膜の製造装置全体のうち、有機溶媒分散体が基板上に塗工されてから、液滴蒸発工程までの部分を示した概略図である。
【図10】図10は、本発明の導電性膜の製造装置の一例として、導電性膜の製造装置全体のうち、有機溶媒分散体を基板上に塗工する工程の部分を示した概略図である。
【図11】図11は、本発明の導電性膜の製造装置の一例として、導電性膜の製造装置全体のうち、有機溶媒分散体を基板上に塗工する工程の部分を示した概略図である。
【図12】図12は、本発明の導電性膜の製造装置の一例として、導電性膜の製造装置全体のうち、有機溶媒分散体を基板上に塗工する工程の部分を示した概略図である。
【図13】図13は、本発明の導電性膜の製造装置の一例として、導電性膜の製造装置全体のうち、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程の部分を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0123】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0124】
下記実施例及び比較例においては、次のようにして導電性膜の物性を測定した。
<表面抵抗率>
導電性膜の表面抵抗率は、抵抗率計 ロレスター−GP(三菱化学アナリテック社製、プローブ:ASPプローブ)を用いて、四端子四探針法により測定した。
<全光線透過率、ヘイズ>
導電性膜の全光線透過率、ヘイズは、ヘイズメーター NDH5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定した。
【0125】
<導電性微粒子分散溶液の調整方法>
オクチルアミン(和光純薬工業株式会社製)148.1gをいれた1Lビーカーを40℃の恒温槽に入れる。次に酢酸銀(和光純薬工業株式会社製)18.6gを添加し20分間充分に攪拌混合し、均一な混合溶液を調整する。続いて、20wt%水素化ホウ素ナトリウム水溶液20gを徐々に添加することにより還元処理を実施した。
還元処理後、アセトンを200g添加し、しばらく放置後、ろ過により銀及び有機物からなる沈殿物を分離回収する。回収物にトルエンを添加し、再溶解後、10℃以下まで冷却させた後、再度ろ過し、不純物を低減させたトルエン分散溶液を調整した。次に、エバボレーターによりトルエンを留去し、銀微粒子を20wt%含有する導電性微粒子分散溶液を調整した。この溶液は、銀微粒子の他にオクチルアミン9wt%、トルエン71wt%を含有する溶液であった。この溶液をFE−SEMで観察したところ、平均粒子径4nm、変動係数が14%の粒子径分布をもつナノ粒子分散体であることが確認された。
【0126】
(参考例1)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液を用いて、銀の重量濃度として0.93mg/ml(シクロヘキサン溶液100質量%に対して、0.120質量%に相当。)、NIKKOL Decaglyn 7−OV(ヘプタオレイン酸ポリグリセリル−10、日光ケミカルズ社製)0.028mg/ml(シクロヘキサン溶液100質量%に対して、0.0036質量%に相当。)のシクロヘキサン溶液を調整した。23℃、相対湿度70%の雰囲気下で、1.6mlの上記溶液を5cm角のPETフィルム(ルミラーU34、両面易接着処理PET、東レ社製)基板上に塗布し、加湿空気(相対湿度70%)を1.6m/minの流速で、10分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、150℃で30分焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。
このときの導電性膜の表面抵抗率は、1.7×102Ω/□、全光線透過率は、43.7%、ヘイズは、34.5%であった。また、導電性膜の最大膜厚、開口率、線幅、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径を求めた結果、表1の通りであった。
【0127】
(実施例1)
焼成工程の代わりに、乾燥を行った後の膜を有機溶媒を含む溶媒溶液であるメタノールに3分間浸漬させた後、室温、常圧下で乾燥(風乾)した以外は、参考例1と同様にして、導電性膜を得た。
このとき得られた導電性膜の表面抵抗率は、1.3×106Ω/□、全光線透過率は、44.8%、ヘイズは、34.0%であった。また、導電性膜の最大膜厚、開口率、線幅、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径を求めた結果、表1の通りであった。
【0128】
(実施例2〜11)
有機溶媒を含む溶媒溶液の種類、及び、浸漬時間を表1に記載した通りに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性膜を得た。それらの物性を評価した結果、表1の通りであった。
【0129】
(実施例12)
焼成工程の代わりに、乾燥を行った後の膜を有機溶媒を含む溶媒溶液であるメタノールに10分間浸漬させた後、室温、常圧下で乾燥(風乾)し、更に、その膜を1mol/L塩酸に1分間浸漬させた後、水洗し、室温、常圧下で乾燥(風乾)した以外は、参考例1と同様にして、導電性膜を得た。得られた導電性膜の物性を評価した結果、表1の通りであった。
【0130】
(実施例13)
有機溶媒を含む溶媒溶液としてアセトンを用いた以外は、実施例12と同様にして導電性膜を得た。得られた導電性膜の物性を評価した結果、表1の通りであった。
【0131】
【表1】
【0132】
実施例及び比較例の結果から、以下のことが分かった。
有機溶媒分散体を基板に塗工した後、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、該パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行って導電性膜を製造することによって、導電性と光透過性とを高いレベルで両立した導電性膜を形成することが可能であることが分かった(実施例1〜13)。
更に、150℃という高温での焼成工程を行わなくとも、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行うことによって、同程度の導電性を有する導電性膜が得られた。更にその得られた導電性膜は、焼成工程を行って得られた導電性膜に比べて、全光線透過率がより高く、かつ、ヘイズがより抑制されていた。すなわち、導電性膜の光透過性の観点からは、焼成工程よりも本発明において行われるパターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程の方がアドバンテージを有していることが分かった(例えば、参考例1と実施例5)。
また、実施例1〜13の結果について、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間と、表面抵抗率、全光線透過率又はヘイズとの関係を示したグラフがそれぞれ図4〜図6である。図4〜図6から、有機溶媒を含む溶媒溶液の種類によらず、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間を延ばすことにより、得られる効果が高くなっていくことが分かる。
これらの結果から、本発明の導電性膜の製造方法により、高温での焼成を行うことなく、導電性膜を形成することができるために、PETフィルム等の耐熱性の高くない汎用高分子基板上にも優れた導電性と光透過性とを有する導電性膜を簡易かつ安価に形成することができることが実証された。
なお、上記実施例においては、導電性物質として銀が、微粒子分散剤としてオクチルアミンが、界面活性剤として特定のノニオン性界面活性剤が、有機溶媒を含む溶媒溶液として特定のものが用いられているが、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させることによって、微粒子分散剤、界面活性剤及び融着せずに孤立した余分な導電性微粒子が洗い流される、という機構は、導電性微粒子を用い、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行った場合には、全て同様である。従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
【符号の説明】
【0133】
11、21:基板
12、22:塗膜(塗工された有機溶媒分散体)
13:水滴
14:空孔部
15:網目状線部
20:ペルチェ素子
101、201、401、502、605:導電性微粒子を含む有機溶媒分散体
102、202:タンク
103、203:攪拌機
104、204:ポンプ
105、205、305:流延ダイ
106、206、302、405、504、601:基板
107:温度調節機
108、406:送出ローラー
109〜111、207、208、701〜704:回転ローラー
112:巻き取りローラー
121、221、321:結露工程を行う領域
122、222、322:送風機
131、231、331:液滴蒸発工程を行う領域
132、232、332:乾燥機
141:有機溶媒を含む溶媒溶液が入った槽
142、742:有機溶媒を含む溶媒溶液
151、311:塗膜
152:導電性膜
301:ベルト
402:スライドコーター
403:減圧チャンバー
404:バックアップローラー
501:ワイヤーバー塗工機
503:ワイヤーバー
602:圧胴
603:版胴
604:版胴603の凹部
606:ドクターブレード
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性膜の製造方法、製造装置、及び、導電性膜に関する。より詳しくは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等の薄型ディスプレイ、タッチパネルに好適に用いることができる導電性膜の製造方法、製造装置、及び、導電性膜に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性膜は、種々の電気機器へ適用されており、特に近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等の薄型ディスプレイの需要が拡大しており、このような用途に適用される導電性膜としては、特に光透過性、導電性に優れるものが求められており活発に研究開発が行われている。
光透過性を有する導電性膜としては、現在では、酸化インジウム錫(ITO)が用いられることが一般的である。酸化インジウム錫により作成された導電性膜は、光透過性、導電性のバランスに優れており、通常の液晶ディスプレイ等だけではなく、例えば、タッチパネル用途等にも使用されている。しかしながら、インジウムのような希金属は高価であり、また、資源枯渇のおそれがあるため、より安価で、資源枯渇のおそれが少ない材料を用いた光透過性を有する導電性膜が求められているところであった。また、ITOの成膜には通常、スパッタリング法等が用いられているため、生産性が低い点でも改善の余地があった。
【0003】
光透過性を有する導電性膜の形態としては、酸化インジウム錫のように、光透過性と導電性を有する材料を用いた導電性膜の形態や、メッシュ状の導電性膜の形態、網目状の導電
性膜の形態等が挙げられる。網目状の導電性膜、及び、その製造方法としては、例えば、
導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗布して、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させて網目状の導電性膜を製造する方法や(例えば、特許文献1参照。)、金属微粒子層を有機溶媒で処理する工程、次いで酸で処理する工程を行い、基板の少なくとも片面に、網目状に金属微粒子層が積層させた導電性基板を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、導電性膜の製造方法として、基板上の、被覆された金属ナノ粒子と分散溶媒とを含む金属ナノ粒子ペーストに、極性溶媒または溶解補助剤を含む極性溶媒溶液を作用させる工程、及び、その基板を乾燥させる工程により金属ナノ粒子を焼結させて導電性膜を形成することができることが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−34039号公報(第1、2頁)
【特許文献2】再公表特許WO2007/114076号公報(第23頁)
【特許文献3】特開2008−72052号公報(第1、2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、安価に光透過性を有する導電性膜を製造する方法について様々な方法が検討されている。光透過性を有する導電性膜においては、メッシュや網目の微細なパターンを有する導電性膜とすることで、光透過性と導電性とを高いレベルで両立することが可能となるが、特許文献2、3に記載の方法は、微細なパターンを得るには充分ではなく、微細なパターンを有する導電性膜とするための工夫の余地があった。
また、特許文献1に記載の導電性膜の製造方法によると、微細な網目状のパターンを有する導電性膜を製造することが可能である。しかしながら、特許文献1の方法では、高温での焼成工程を行う必要があるため、基板としてPETフィルム等の汎用高分子フィルムを用いた導電性膜の製造に適用することが難しいものである。このため、PETフィルム等の汎用性の高い高分子フィルム基板上にも低コストで簡易に光透過性を有する導電性膜を形成する方法とするための更なる工夫の余地があった。
これらのことから、より簡易かつ安価に、高温での処理を必要とせず、光透過性と導電性とを高いレベルで両立することのできる導電性膜を形成するための方法が求められていた。このような課題を解決することができれば、基板の材質を選ばず、PETフィルム等の汎用性の高い高分子フィルム基板上にも低コストで簡易に光透過性と導電性とに優れた導電性膜を形成することが可能となるため、その技術的意義は大きいものである。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、PETフィルム等の汎用高分子基板を用いた場合でも、基板上に優れた導電性と光透過性とを有する導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができる、導電性膜の製造方法、及び、導電性膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、汎用高分子基板を用いることができ、優れた導電性と光透過性とを有する導電性膜を製造する方法について種々検討したところ、有機溶媒分散体を基板に塗工した後に、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、上記パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行うと、線幅が狭く、網目の細かい導電性物質の網目状線部と、空孔部とを有するために、導電性と光透過性とを高いレベルで両立した導電性膜を形成することができることを見出した。この方法によると、高温での焼成を行うことなく、導電性膜を形成することができるために、PETフィルム等の耐熱性の高くない汎用高分子基板上にも優れた導電性と光透過性とを有する導電性膜を簡易かつ安価に形成することができることになることから、上記課題を見事に解決できることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗工してパターンを有する導電性膜を製造する方法であって、上記製造方法は、有機溶媒分散体を基板に塗工した後、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、上記パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を含む導電性膜の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の導電性膜の製造方法は、導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗工してパターンを有する導電性膜を製造する方法である。このような方法では、例えば、スパッタリング法や、メッキを行う方法等と比較して、簡易、かつ低コストで製膜を行うことができ、製造コストの削減、生産性の向上等を図ることができる。以下、基板上に塗工された有機溶媒分散体の膜を「塗膜」ともいう。
【0010】
本発明の導電性膜の製造方法は、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程(自己組織化工程)を含むものである。このような工程を含むことにより、線幅が狭く、網目の細かい網目状のパターンを有する導電性膜を形成することが可能となり、製造される導電性膜を導電性だけでなく、光透過性にも優れたものとすることが可能となる。
なお、上記自己組織化工程の詳細については、後述する。
【0011】
本発明の導電性膜の製造方法は、上記自己組織化工程によって形成されるパターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を含むものである。
後述するように、有機溶媒分散体中での導電性微粒子等の微粒子の分散性を向上させるために、必要に応じて、有機溶媒分散体に微粒子分散剤を含有させることとなる。その場合には、導電性微粒子は微粒子分散剤に被覆されて存在することとなるが、上記パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させることによって、微粒子分散剤と導電性微粒子との間に有機溶媒を含む溶媒溶液が入り、微粒子分散剤が洗い流され、導電性微粒子が露出するため、その結果、導電性微粒子間の融着が生じ導電性を発現する層が形成されることとなるものと推察される。このようにして導電性を発現する層が形成されることとなるものと思われるが、その際に、有機溶媒を含む溶媒溶液は、微粒子分散剤だけでなく、融着せずに孤立した余分な導電性微粒子も同時に洗い流すことができる。これによって、製造される導電性膜のヘイズが抑えられ、透過率が向上することとなる。
なお、上記自己組織化工程によって形成されるパターンは非常に微細であるために、空孔部1つ1つが非常に小さく、導電性に関与しない微粒子分散剤や余分な導電性微粒子を洗い流さないと、空孔部が埋まってしまいやすい。そのため、導電性に関与しない微粒子分散剤や余分な導電性微粒子を洗い流すことによって、大きなヘイズ抑制効果及び透過率向上効果が発揮されることとなる。
【0012】
また、上記自己組織化工程においては、後述するように、塗膜に取り込む水滴の形状を好適な形態で保持するため、有機溶媒分散体に両親媒性化合物を含有させることが好ましい。しかしながら、両親媒性化合物を多量に含有させてしまうと、導電性に悪影響が出るおそれがある。この点について、本発明の製造方法によれば、自己組織化工程によってパターンを形成した後に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行うために、自己組織化工程において用いられた両親媒性化合物も有機溶媒により洗い流されることとなる。これにより、本発明の製造方法の場合には、自己組織化工程において両親媒性化合物を多量に用いても導電性膜に両親媒性化合物の残存を少なくすることができることから、導電性膜の導電性を良好なものに保ちながら、塗膜に取り込む水滴の形状を充分に安定化させ、導電性膜の網目をより容易に作成することが可能となり、空孔部の孔径が大きいものから小さいものまでより様々なパターンを有する導電性膜を製造することができることとなる。更には、自己組織化工程において用いられた両親媒性化合物が有機溶媒によって洗い流されることにより、形成されるパターンを有する膜の線幅をより狭いものとすることが可能となる。線幅のより狭いパターンを有する膜が形成されることによって、得られる導電性膜の透過率がより向上し、光の散乱もより抑えられるため、ヘイズもより低いものとなる。
その他、上記自己組織化工程においては、結露により生じた水滴を塗膜中に取り込み、その後有機溶媒を蒸発させ、更に取り込まれた水滴を乾燥させることで、取り込まれた水滴に対応する空孔部を形成するものであるが、取り込まれた水滴を乾燥させる必要があるために、自己組織化工程を行うと、導電性膜の製造には時間がかかってしまうものであった。この点について、本発明の製造方法によれば、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行うため、メタノール等の沸点の低い有機溶媒を用いた場合に、乾燥のための時間を短くすることが可能となる。更には、水滴を充分乾燥させる前に有機溶媒を作用させる工程を行うことも可能であるため、水滴及び有機溶媒を乾燥させるための合計の時間をも短くすることが可能となる。これらのことから、導電性膜の生産性が向上することとなる。
上述した理由から、上記自己組織化工程によってパターンを形成し、パターンの非常に微細なものを用いる場合には、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる方法が特に好ましい方法であるといえる。
なお、上記自己組織化工程によって形成されるパターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させることに顕著な効果が得られることは、本発明において初めて見いだされ、実証されたものである。
また、本発明の導電性膜の製造方法においては、焼成する工程を行うことなく、導電性膜を製造することが可能であるために、ガラスと比較して耐熱性の低いPETフィルム等の汎用の高分子フィルムを基板として用いることができることになる。
【0013】
上述したように、本発明の導電性膜の製造方法は、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を含むものであるが、これらの工程は、一部同時並行して行われる形態であってもよいし、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程を行った後に、上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行ってもよい。中でも、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程を行った後に、上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行うことが、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、本発明の導電性膜の製造方法は、有機溶媒分散体を基板に塗工した後に、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を含むものである限り、その他の工程を含んでいてもよい。
【0014】
上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程において、作用させるとは、パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液が作用することとなる限り、その方法は特に制限されないが、例えば、有機溶媒を含む溶媒溶液中に、パターンを有する膜を一部又は全部漬ける方法、パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を塗布する方法、パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒を含む溶媒溶液中に、パターンを有する膜を一部又は全部漬ける方法により作用させることとすると、本発明の効果を充分に発揮することが可能となり好ましい。
【0015】
上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程は、低温、室温、高温のいずれで行われてもよいが、例えば−20℃〜150℃の範囲の温度で行われることが好ましく、0℃〜100℃の範囲の温度がより好ましい。更に好ましくは10℃〜50℃の範囲の温度で行われることである。
また、上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程は、超音波を作用させながら行ってもよい。
【0016】
上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程は、有機溶媒を含む溶媒溶液が、融着せずに孤立した余分な導電性微粒子や、必要に応じて用いられる微粒子分散剤を除去するのに必要な時間行えばよいが、例えば、0.1秒〜1日行うことが好ましく、10秒〜2時間行うことがより好ましい。更に好ましくは1分〜30分行うことである。特に好ましくは、3分〜20分である。
【0017】
上記有機溶媒を含む溶媒溶液の有機溶媒としては、無極性溶媒、極性溶媒、溶解補助剤等が挙げられるが、これらの中でも、有機溶媒を含む溶媒溶液は、極性溶媒及び/又は溶解補助剤を含む極性溶媒溶液であることが好ましい。上記有機溶媒としては、1種を用いてもよく、2種以上を併用して混合溶媒としてもよい。
上記無極性溶媒としては、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等のアルカン類;エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、クロロホルム、キシレン等が挙げられる。これらの中でも、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が好ましい。
【0018】
上記極性溶媒としては、双極性非プロトン溶媒;複素環;アルキル置換された複素環;水;−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素、アルキル置換された芳香族炭化水素、複素環、アルキル置換された複素環;下記一般式(1);
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、R1及びR2は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキル置換されたアリール基、ヘテロアリール基、又は、アルキル置換されたヘテロアリール基を表す。Yは、−CONH−、−C(=O)−又は−SO−で表される基を表す。)で表される化合物;等が挙げられる。
上記双極性非プロトン溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド等が挙げられる。
【0021】
上記複素環としては、例えば、酸素、硫黄、窒素等を有する複素環が挙げられ、具体的には、チオフェン、フラン、ピラン、キサンテン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン等が挙げられる。
上記アルキル置換された複素環とは、上記複素環の1以上の水素原子がアルキル基で置換されたものを意味している。
上記アルキル基としては、例えば、炭素数1〜100のものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。特に好ましくはメチル基である。
そのようなアルキル置換された複素環としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基で置換された複素環が挙げられる。具体的には、メチルチオフェン、ヘキシルフラン、メチルピラン、ブチルキサンテン、メチルピロール、ペンチルイミダゾール、オクチルピラゾール、ヘキシルチアゾール、ペンチルイソオキサゾール、ブチルピリジン、メチルピラジン、メチルピリミジン等が挙げられる。
【0022】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカンとは、アルカンの1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味している。
上記アルカンとしては、例えば、炭素数1〜100のものが挙げられ、鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。それらの中でも、好ましくは炭素数1〜20のアルカンであり、より好ましくは炭素数5〜15のアルカンであり、更に好ましくは炭素数8〜15のアルカンである。特に好ましくは2,2,2,4−トリメチルペンタン、テトラデカンである。
そのような−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカンとしては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸等、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、メタンスルホン酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコサニルアミン、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオール、ノナデカンチオール、イコサンチオール等が挙げられる。これらの中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ドデシルアミン、ドデカンチオール等が好ましい。
【0023】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカンのうち、特に、−COOHで置換されたアルカンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルカンの1〜10の水素原子が−COOHで1〜10置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−COOHで置換された炭素数1〜20のアルカンであり、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸等、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が挙げられる。より好ましくは−COOHで置換された炭素数10〜20のアルカンであり、更に好ましくは−COOHで置換された炭素数12〜18のアルカンである。
【0024】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカンのうち、特に、−SHで置換されたアルカンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルカンの1〜10の水素原子が−SHで1〜10置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−SHで置換された炭素数1〜20のアルカンであり、例えば、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオール、ノナデカンチオール、イコサンチオールが挙げられる。より好ましくは−SHで置換された炭素数3〜17のアルカンであり、更に好ましくは−SHで置換された炭素数5〜15のアルカンである。特に好ましくはドデカンチオールである。
【0025】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカンのうち、特に、−NH2で置換されたアルカンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルカンの1〜10の水素原子が−NH2で1〜10置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−NH2で置換された炭素数1〜20のアルカンであり、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコサニルアミンが挙げられる。より好ましくは−NH2で置換された炭素数3〜17のアルカンであり、更に好ましくは−NH2で置換された炭素数5〜15のアルカンである。特に好ましくはドデシルアミンである。
【0026】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルカンのうち、特に、−OHで置換されたアルカンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルカンの1〜10の水素原子が−OHで1〜10置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−OHで置換された炭素数1〜20のアルカンであり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオールが挙げられる。より好ましくは−OHで置換された炭素数1〜10のアルカンである。
【0027】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルケンとは、アルケンの1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味している。
上記アルケンとしては、例えば、炭素数2〜100のものが挙げられ、鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。それらの中でも、好ましくは炭素数2〜20のアルケンであり、より好ましくは炭素数3〜10のアルケンであり、更に好ましくは炭素数3〜5のアルケンである。
そのような−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルケンとしては、例えば、アリルアルコール、ビニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、ペンテニルアミン、ヘキセニルアミン、ヘプテニルアミン、オクテニルアミン、ノネニルアミン、デセニルアミン、ウンデセニルアミン、ドデセニルアミン、トリデセニルアミン、テトラデセニルアミン、ペンタデセニルアミン、ヘキサデセニルアミン、ヘプタデセニルアミン、オクタデセニルアミン、ノナデセニルアミン、オレイルアミン、イコセニルアミン、ノナコセニルアミン、エテンチオール、プロペンチオール(アリルメルカプタン)、ブテンチオール、ペンテンチオール、ヘキセンチオール、ヘプテンチオール、オクテンチオール、ノネンチオール、デセンチオール、ウンデセンチオール、ドデセンチオール、トリデセンチオール、テトラデセンチオール、ペンタデセンチオール、ヘキサデセンチオール、ヘプタデセンチオール、オクタデセンチオール、ノナデセンチオール、イコセンチオール、ノナコセンチオール、アクリル酸(プロペン酸)、メタクリル酸(2−メチルプロペン酸)、クロトン酸(trans−ブタ−2−エン酸)、イソクロトン酸(cis−ブタ−2−エン酸)、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オレイン酸(cis−オクタデカ−9−エン酸)、エライジン酸(trans−オクタデカ−9−エン酸)、マレイン酸(cis−ブテン二酸)、フマル酸(trans−ブテン二酸)等が挙げられる。これらの中でも、オレイルアミン、アリルメルカプタン、オレイン酸等が好ましい。
【0028】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルケンのうち、特に、−COOHで置換されたアルケンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルケンの1〜10の水素原子が−COOHで置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−COOHで置換された炭素数2〜30のアルケンであり、例えば、アクリル酸(プロペン酸)、メタクリル酸(2−メチルプロペン酸)、クロトン酸(trans−ブタ−2−エン酸)、イソクロトン酸(cis−ブタ−2−エン酸)、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オレイン酸(cis−オクタデカ−9−エン酸)、エライジン酸(trans−オクタデカ−9−エン酸)、マレイン酸(cis−ブテン二酸)、フマル酸(trans−ブテン二酸)が挙げられる。より好ましくは−COOHで置換された炭素数10〜20のアルケンであり、更に好ましくは−COOHで置換された炭素数15〜20のアルケンである。特に好ましくはオレイン酸である。
【0029】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルケンのうち、特に、−SHで置換されたアルケンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルケンの1〜10の水素原子が−SHで置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−SHで置換された炭素数2〜30のアルケンであり、例えば、エテンチオール、プロペンチオール(アリルメルカプタン)、ブテンチオール、ペンテンチオール、ヘキセンチオール、ヘプテンチオール、オクテンチオール、ノネンチオール、デセンチオール、ウンデセンチオール、ドデセンチオール、トリデセンチオール、テトラデセンチオール、ペンタデセンチオール、ヘキサデセンチオール、ヘプタデセンチオール、オクタデセンチオール、ノナデセンチオール、イコセンチオール、ノナコセンチオールが挙げられる。より好ましくは−SHで置換された炭素数2〜20のアルケンであり、更に好ましくは−SHで置換された炭素数3〜15のアルケンである。特に好ましくはアリルメルカプタンである。
【0030】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルケンのうち、特に、−NH2で置換されたアルケンとしては、例えば、炭素数1〜50のアルケンの1〜10の水素原子が−NH2で置換されたものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは−NH2で置換された炭素数2〜30のアルケンであり、例えば、ビニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、ペンテニルアミン、ヘキセニルアミン、ヘプテニルアミン、オクテニルアミン、ノネニルアミン、デセニルアミン、ウンデセニルアミン、ドデセニルアミン、トリデセニルアミン、テトラデセニルアミン、ペンタデセニルアミン、ヘキサデセニルアミン、ヘプタデセニルアミン、オクタデセニルアミン、ノナデセニルアミン、オレイルアミン、イコセニルアミン、ノナコセニルアミンが挙げられる。より好ましくは−NH2で置換された炭素数5〜25のアルケンであり、更に好ましくは−NH2で置換された炭素数10〜20のアルケンである。特に好ましくはオレイルアミンである。
【0031】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルキンとは、アルキンの1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味している。
上記アルキンとしては、例えば、炭素数2〜100のものが挙げられ、鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。それらの中でも、好ましくは炭素数2〜20のアルキンであり、より好ましくは炭素数3〜10のアルキンであり、更に好ましくは炭素数3〜5のアルキンである。
そのような−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルキンとしては、例えば、エチンチオール、プロピンイルアミン等が挙げられる。
【0032】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換された芳香族炭化水素とは、芳香族炭化水素の1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味している。
上記芳香族炭化水素としては、例えば、炭素数6〜30のものが挙げられる。それらの中でも、ベンゼン、ペンタレン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン等が好ましい。
そのような−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換された芳香族炭化水素としては、例えば、安息香酸、ベンゼンチオール、アニリン等が挙げられる。
【0033】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルキル置換された芳香族炭化水素とは、アルキル置換された芳香族炭化水素の1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味している。
上記アルキル置換された芳香族炭化水素とは、上記芳香族炭化水素の1以上の水素原子がアルキル基で置換されたものを意味しており、該アルキル基は、上記アルキル基と同様のものとすることができる。
そのようなアルキル置換された芳香族炭化水素としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基で置換された炭素数6〜30の芳香族炭化水素が挙げられる。具体的には、メチルベンゼン(トルエン)、プロピルペンタレン、ヘキシルナフタレン、メチルフェナレン、エチルフェナントレン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基で置換された芳香族炭化水素であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基で置換された芳香族炭化水素である。更に好ましくはトルエンである。
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルキル置換された芳香族炭化水素としては、例えば、ベンジルアルコール、フェニル酢酸、ジベンジルケトン、アニリン等が挙げられる。
【0034】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換された複素環とは、上記複素環の1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味し、例えば、カルボキシルピリジン、ヒドロキシピラゾール等が挙げられる。
【0035】
上記−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2及び―OHからなる群より選択される少なくとも一つの基により置換されたアルキル置換された複素環とは、上記アルキル置換された複素環の1以上の水素原子が前記置換基で1以上置換されたものを意味し、カルボキシルピリジン、ヒドロキシピラゾール等が挙げられる。
【0036】
上記極性溶媒は、下記一般式(1);
【0037】
【化2】
【0038】
(式中、R1およびR2は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキル置換されたアリール基、ヘテロアリール基、又は、アルキル置換されたヘテロアリール基を表す。また、R1およびR2が直接結合し、環構造を形成してもよい。Yは、−CONH−、−C(=O)−又は−SO−で表される基を表す。)で表される化合物であることも好ましい。
【0039】
上記アルキル基としては、上述したアルキル基と同様のものとすることができる。
上記アルケニル基としては、例えば、炭素数2〜100のものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基であり、より好ましくは炭素数3〜7のアルケニル基であり、更に好ましくは炭素数4〜6のアルケニル基である。
上記アルキニル基としては、例えば、炭素数2〜100のものが挙げられる。それらの中でも、好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、より好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基であり、更に好ましくは炭素数2〜5のアルキニル基である。
【0040】
上記アリール基としては、例えば、炭素数6〜30のものが挙げられる。それらの中でも、フェニル基、ペンタレニル基、ナフタレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基等が好ましい。
上記アルキル置換されたアリール基とは、上記アリール基の1以上の水素原子がアルキル基で置換されたものを意味しており、該アルキル基は、上記アルキル基と同様のものとすることができる。そのようなアルキル置換されたアリール基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基で置換された炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。具体的には、メチルフェニル基、プロピルペンタニル基、ヘキシルナフタレニル基、メチルフェナレニル基、エチルフェナントレニル基等が好ましい。
【0041】
上記ヘテロアリール基としては、例えば、酸素、硫黄、窒素等を含むヘテロアリール基が挙げられ、それらの中でも、チオフェニル基、フラニル基、ピラニル基、キサンテニル基、ピロリニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリニル基、チアゾリニル基、イソオキサゾリニル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基等が好ましい。
上記アルキル置換されたヘテロアリール基とは、上記ヘテロアリール基の1以上の水素原子がアルキル基で置換されたものを意味しており、該アルキル基は、上記アルキル基と同様のものとすることができる。そのようなアルキル置換されたヘテロアリール基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基で置換された酸素、硫黄、窒素等を含むヘテロアリール基が挙げられる。それらの中でも、メチルチオフニル基、ヘキシルフラニル基、メチルピラニル基、ブチルキサンテニル基、メチルピロリニル基、ペンチルイミダゾリニル基、オクチルピラゾリニル基、ヘキシルチアゾリニル基、ペンチルイソオキサゾリニル基、ブチルピリジニル基、メチルピラジニル基、メチルピリミジニル基等が好ましい。
【0042】
また、上記一般式(1)における、R1およびR2が直接結合し、環構造が形成されている形態としては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が挙げられる。
【0043】
上記極性溶媒としては、上述したものの中でも、−OHで置換されたアルカン、下記一般式(2);
【0044】
【化3】
【0045】
(式中、R1´及びR2´は、同一又は異なって、アルキル基を表す。)で表されるケトン、―COOHで1以上置換されたアルカンおよび水からなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。より好ましくは、−OHで置換された炭素数1〜6のアルカン、上記一般式(2)で表されるもののうち、式中のR1´及びR2´が、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を表すケトン、―COOHで1以上置換された炭素数1〜6のアルカンおよび水からなる群より選択される少なくとも一つであることであり、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メチル−2−プロパノール、アセトン、酢酸、酢酸と水との混合物が更に好ましい。特に好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メチル−2−プロパノールであり、最も好ましくは、メタノール、エタノールである。
【0046】
上記溶解補助剤としては、上記極性溶媒の極性を強める働きや、上記微粒子分散剤の溶解を補助する働きのあるもの等であれば特に制限されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アンモニア等が挙げられ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アンモニアが好ましい。
【0047】
本発明において用いられる有機溶媒を含む溶媒溶液が、極性溶媒及び溶解補助剤を含む極性溶媒溶液である場合の形態としては、例えば、ポリビニルピロリドンの水溶液、ポリビニルアルコールの水溶液、ポリビニルピロリドンのメタノール溶液、ポリビニルピロリドンのエタノール溶液、ポリビニルピロリドンのイソプロパノール溶液、ポリビニルピロリドンの2−メチル−2−プロパノール溶液、ポリビニルピロリドンのアセトン溶液、アンモニア水等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルピロリドンの水溶液、ポリビニルアルコールの水溶液、ポリビニルピロリドンのメタノール溶液、ポリビニルピロリドンのエタノール溶液、アンモニア水が好ましい形態である。
【0048】
本発明の導電性膜の製造方法においては、上記パターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行った後、次いでパターンを有する膜に酸を作用させる工程を行ってもよい。このように、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行った後に、続いて酸を作用させることにより、酸を作用させなかった場合と比べて、製造される導電性膜の導電性はやや低下するが、よりヘイズが抑制され、透過率の向上した導電性膜を得ることができる。
【0049】
上記パターンを有する膜に、酸を作用させる工程において、作用させるとは、パターンを有する膜に、酸が作用することとなる限り、その方法は特に制限されないが、例えば、酸の溶液中に、パターンを有する膜を一部又は全部漬ける方法、パターンを有する膜に、酸の溶液を塗布する方法、パターンを有する膜に、酸の溶液を吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、酸の溶液中に、パターンを有する膜を一部又は全部漬ける方法により作用させることとすると、酸を作用させる工程による効果が充分に得られることとなるため好ましい。
【0050】
上記パターンを有する膜に、酸を作用させる工程は、低温、室温、高温のいずれで行われてもよいが、高すぎる温度条件下で行うと、酸の蒸気が発生して周辺にある金属装置等の劣化に繋がったり、基板として熱可塑性の樹脂フィルム等を用いた場合には、基板を白化させ、透明性が損なわれたりするおそれがあるため、高すぎる温度条件下で行うことは好ましくない。好ましい処理温度は40℃以下であり、より好ましくは30℃以下であり、更に好ましくは25℃以下である。
【0051】
上記パターンを有する膜に、酸を作用させる工程は、酸を作用させる工程による効果が充分に得られる程度の時間行えばよいが、処理時間が長すぎても更なる効果の向上が見込まれない場合や逆に効果が得られにくくなる場合がある。酸を作用させる処理時間としては、例えば、15秒〜60分であることが好ましく、より好ましくは15秒〜30分であり、更に好ましくは15秒〜2分である。特に好ましくは、15秒〜1分である。
【0052】
上記パターンを有する膜に、酸を作用させる工程において用いられる酸としては、特に制限されず、種々の有機酸、無機酸から適宜選択することができ、強酸であってもよいし、弱酸であってもよい。上記有機酸としては、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、乳酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられる。上記無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。これらの中でも上記酸としては、酢酸、塩酸、硫酸、又は、それらの水溶液が好ましく、塩酸、硫酸、又は、それらの水溶液がより好ましい。
【0053】
上記パターンを有する膜に、酸を作用させる工程において用いられる酸として酸の水溶液を用いる場合には、酸の濃度は、高すぎると、作業性が低下し生産性を悪化させたり、基板として熱可塑性の樹脂フィルム等を用いた場合には、基板を白化させ、透明性が損なわれたりするおそれがある。一方、低すぎると、酸を作用させる効果が得られないおそれがある。よって、0.05〜10mol/Lであることが好ましく、0.05〜5mol/Lであることがより好ましい。更に好ましくは、0.1〜1mol/Lである。
【0054】
本発明において用いられる導電性微粒子は、一般的に平均粒子径が100μm以下の導電性粒子を意味するものであり、導電性微粒子の粒子径は特に限定されるものではないが、平均粒子径が1μm以下であることが好ましい。1μm以下の平均粒子径とすることで、導電性を有する網目状線部の線幅を狭くすることができ、導電性膜の透過部を広くすることができ、開口率が向上することとなる。これにより、導電性膜の透過率が向上する。導電性微粒子の平均粒子径としてより好ましくは、500nm以下であり、更に好ましくは、100nm以下であり、特に好ましくは、50nm以下であり、最も好ましくは、10nm以下である。特に、10nm以下の平均粒子径とすることにより、形成された導電性を有する網目状線部の導電率を高めることができる。また、粒子径分布としては、変動係数が30%以内であることが好ましく、より好ましくは、20%以内であり、更に好ましくは、15%以内である。
【0055】
上記導電性微粒子の平均粒子径は、TEM像(透過型電子顕微鏡観察像)、又は、SEM像(走査型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径;粉末X線回折測定法により得られる結晶子径;X線小角散乱法等により得られる慣性半径とその散乱強度から求められる平均粒子径等を用いることができる。中でも、SEM像(走査型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径であることが好ましい。
上記導電性微粒子の形状は、球状に限られず、例えば、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状(例えば、六角板状)等の薄片状、紐状等の形状でも好適に用いることができる。
【0056】
上記導電性微粒子は、導電性を有する物質を含有する微粒子であれば特に限定されないが、例えば、金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等の微粒子が挙げられる。金属としては、種々の金属を用いることができ、単体金属、合金、固溶体等のいずれの形態であってもよい。金属元素としては特に限定されず、例えば、白金、金、銀、銅、アルミ、クロム、コバルト、タングステン等の種々の金属元素を用いることができるが、導電性が高い金属であることが好ましい。導電性が高い金属としては、白金、金、銀及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有するものであることが好ましい。また、金属としては、化学的安定性が高い金属であることが好ましい。例えば、上述した導電性膜の製造方法を用いる場合、有機溶媒に導電性微粒子を分散させて有機溶媒を乾燥させる等の工程を経ることとなる。このような工程に対して、酸化、腐食等が生じないことが好ましい。化学的安定性が高い観点からは、上記金属は、白金、金及び銀からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有してなることが好ましい。この中でも、低コスト化の観点からは、銀を含有することが好ましい形態である。導電性を有する無機酸化物としては、酸化インジウム錫等のインジウム系酸化物、酸化亜鉛系酸化物等の透明導電性物質、導電性を有する非透明性の無機酸化物等が挙げられる。炭素系材料としては、カーボンブラック等が挙げられる。炭化物系材料としては、シリコンカーバイド、クロムカーバイド、チタンカーバイド等が挙げられる。また、用いることが可能な導電性微粒子としては、非導電性微粒子を上記導電性微粒子を形成する導電性物質(金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等)で取り囲んだ微粒子(例えば、コア「非導電性物質」、シェル「導電性物質」のコア−シェル構造を持つ微粒子)も好ましい。非導電性微粒子としては、特に限定されるものではなく、種々の物質で形成された非導電性微粒子を用いることができる。上記導電性微粒子としては、これらを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
更に、用いることができる導電性微粒子としては、酸化銀、酸化銅等の酸化物微粒子を有機溶媒に分散させて塗工した後、塗膜を還元雰囲気に置くことで、銀、銅等の金属に還元して用いることも可能である。すなわち、上記導電性膜の製造方法は、酸化物微粒子を有機溶媒に分散させて塗工した後、還元雰囲気に置くことで、酸化物微粒子を還元する工程を含むことも好ましい形態の一つである。
【0057】
上記導電性微粒子の含有量は、有機溶媒分散体100質量%に対して、0.05〜10質量%であることが好ましい。このような範囲とすることによって、充分な導電性を有する導電性膜を得ることができる。導電性微粒子の含有量としてより好ましくは、0.1〜10質量%であり、更に好ましくは、0.2〜10質量%である。
【0058】
本発明において用いられる有機溶媒分散体は、有機溶媒に導電性微粒子が分散された分散体であり、有機溶媒、及び、導電性微粒子以外の物質を含んでいてもよい。有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、種々の有機溶媒を用いることができる。
上記有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタン等のベンゼン系炭化水素等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−デカン等のパラフィン系炭化水素、アイソパー(Isopar、エクソン化学社製)等のイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセン等のオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリン等のナフテン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油や石炭由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルム等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノール、メチルセロソルブ等のアルコール類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系溶剤;二硫化炭素等が好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0059】
上記有機溶媒としては、疎水性の有機溶媒が好ましい。疎水性の有機溶媒を用いることによって、後述する自己組織化工程において加湿雰囲気下に置いた場合に、より安定した形態で有機溶媒分散体中に水滴を取り込むことができる。また、有機溶媒としては、非極性の有機溶媒であることが好ましい。非極性であることにより、極性分子である水に溶けにくいものとなるため、塗膜に取り込まれた水滴の形態をより好適に保持することができる。非極性の有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数6〜10程度の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;脂肪族炭化水素系溶媒等を好ましく用いることができる。有機溶媒の蒸発速度、水の溶解度の点から、すなわち、比較的蒸発速度が速く、水滴が結露しやすく、かつ水と混じりにくい点からは、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等がより好ましい。上記有機溶媒としては、極性溶媒と非極性溶媒との混合溶媒であってもよい。例えば、芳香族炭化水素溶媒とケトン系溶媒との混合溶媒、芳香族炭化水素とアミド系溶媒との混合溶媒等であってもよい。
【0060】
上記有機溶媒の比重は、水の比重以下であることが好ましい。有機溶媒の比重が水の比重よりも大きい場合、後述する自己組織化工程を行う際に、塗膜表面で結露した水滴が有機溶媒分散体中に取り込まれないおそれがある。有機溶媒の比重として具体的には、室温(20℃)での比重が1.00以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更に好ましい。
【0061】
上記有機溶媒の粘度としては、室温(20℃)において2mPa・s以下であることが好ましい。塗工された有機溶媒分散体中に水を取り込む場合、有機溶媒の粘度が高すぎると、充分に水滴を取り込むことができないおそれがある。
【0062】
上記有機溶媒分散体は、導電性微粒子等の微粒子が有機溶媒中に分散するのを促進する微粒子分散剤を含有することが好ましい。微粒子分散剤を含有することによって、微粒子が有機溶媒中で凝集してしまうことを防止することができ、有機溶媒分散体をより均一なものとすることが可能となる。
上記微粒子分散剤としては、導電性微粒子等の微粒子を有機溶媒中に分散させることができれば、特に制限されるものではないが、例えば、オクチルアミン、ヘキシルアミン、オレイルアミン等のアミン化合物;ドデカンチオール等の硫黄化合物;オレイン酸等のカルボン酸化合物;等が挙げられる。これらの中でも、アミン化合物であると、上述したパターンを有する膜に、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程において洗い流され易くなり、該工程による効果がより顕著に発揮されることが期待されるために好ましい。
上記微粒子分散剤としては、これらを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0063】
上記微粒子分散剤の含有量は、有機溶媒分散体100質量%に対して、0.001〜5質量%であることが好ましい。このような範囲よりも少ないと、有機溶媒分散体中の微粒子の凝集を充分に防止することができないおそれがある一方、多いと、形成される導電性膜の導電性が発現しなくなるおそれがある。微粒子分散剤の含有量としてより好ましくは、0.01〜3質量%である。
【0064】
上記有機溶媒分散体は、水及び有機溶媒に対する両親媒性化合物を含有することが好ましい。両親媒性化合物を含有することによって、後述する自己組織化工程を行う際に、その界面活性機能によって、塗膜中に取り込む水滴の形状を好適な形態で保持することが容易となるため、例えば、水滴同士の凝集を制御することができ、導電性膜の網目を形成することが容易となる。両親媒性化合物としては、両親媒性低分子化合物でもよいし、両親媒性高分子化合物でもよく、特に限定されるものではない。界面活性機能をより発揮できる形態としては、両親媒性高分子化合物であることが好ましい。また、有機溶媒分散体中で塗膜中に取り込んだ水滴の形態を好適に保持するには、界面活性機能を有する化合物を用いることが好ましい。すなわち、上記有機溶媒分散体が、界面活性機能を有する化合物を含有することも本発明の好ましい形態の一つである。
【0065】
上記両親媒性化合物の含有量としては、有機溶媒分散体100質量%に対して、両親媒性化合物の含有量が0.001〜25質量%であることが好ましい。このような範囲の含有量とすることによって、パターンを有する膜を形成する際に行われる自己組織化工程において、塗工された有機溶媒分散体中に取り込まれる水滴の形態をより安定して保持することが可能となる。0.001質量%未満である場合には、塗膜表面における水滴の成長や輸送が困難になり、開口率が低くなるおそれがある。25質量%を超えると、塗膜表面で水滴が凝集し、空孔部が充分に形成されないおそれがある。また、導電性が発現しにくくなるおそれがある。両親媒性化合物の含有量としてより好ましくは、0.001〜15質量%であり、更に好ましくは、0.001〜5質量%であり、特に好ましくは、0.01〜1質量%である。
【0066】
上記両親媒性化合物としては、親水性基と疎水性基との両方を有する化合物であることが好ましい。両親媒性化合物には、後述する自己組織化工程において、基板上に塗工された有機溶媒分散体に付着した水滴が互いに融合することを防止する効果が期待される。両親媒性化合物としては、水及び有機溶媒の両方に対して親和する部分を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、疎水性基としては、例えば、炭素数5〜20の炭化水素基、フェニル基、フェニレン基等の非極性基が挙げられる。また、親水性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、スルホ基、エステル基、アミド基、エーテル基、ピリジン基等が挙げられる。
【0067】
上記両親媒性化合物としては、アルキル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、アルキルアンモニウムクロライド等のカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、オクチルアミン、ドデシルアミン等のアルキルアミン、両親媒性高分子等が挙げられる。有機溶媒及び水への溶解性の観点からノニオン系界面活性剤、両親媒性高分子が好ましい。これらの両親媒性化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
上記両親媒性高分子としては、ポリアクリルアミドを主鎖骨格として、側鎖に親水性基と疎水性基とを持つ高分子、疎水性(メタ)アクリレートと親水性(メタ)アクリレートとの共重合体、スチレンと親水性(メタ)アクリレートとの共重合体、スチレンと2−ビニルピリジンとの共重合体、オクタデシルイソシアネート変性ポリエチレンイミン(エポミンRP−20、日本触媒社製)のように主鎖に親水性基を持ち、側鎖に疎水性基を持つ高分子、疎水性基と親水性基とを有するポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロック共重合体、又は、ジクロルジフェニルスルホンとビスフェノールAのナトリウム塩との重縮合により得られ、主鎖骨格中に疎水性基であるジフェニレンジメチルメチレン基と親水性基であるジフェニレンスルホン基とを有するポリスルホン等が挙げられる。
【0069】
上記両親媒性高分子としては、重量平均分子量5000以上500,000以下のものが好ましい。重量平均分子量5000以上500,000以下の両親媒性高分子であると、後述する自己組織化工程によりパターンを有する膜を形成する際に、溶媒蒸発時にパターン構造が崩れにくくなる。より好ましくは、重量平均分子量10,000以上300,000以下のものであり、更に好ましくは、50,000以上200,000以下であり、特に好ましくは、90,000以上100,000以下である。
また、上記両親媒性高分子の数平均分子量は3000以上500,000以下であることが好ましい。数平均分子量が3000以上500,000以下の両親媒性高分子であると、後述する自己組織化工程によりパターンを有する膜を形成する際に、溶媒蒸発時にパターン構造が崩れにくくなる。両親媒性高分子の数平均分子量としては、5000以上300,000以下であることがより好ましく、10,000以上200,000以下であることが更に好ましく、20,000以上100,000以下であることが特に好ましい。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、測定装置として、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)HLC−8120(東ソー社製)を使用し、カラムにTSK−GEL GMHXL−L(東ソー社製)を用いて、ポリスチレン換算の分子量として測定することができる。
【0070】
上記ポリアクリルアミドを主鎖骨格として、側鎖に親水性基と疎水性基とを持つ高分子としては、例えば、下記一般式(3):
【0071】
【化4】
【0072】
(式中、n及びmは、同一又は異なって、構成単位の繰り返し数を表す。)で表される(ドデシルアクリルアミド)n−(ω−カルボキシヘキシルアクリルアミド)m−ランダム共重合体(以下、「CAP」ともいう。)が好ましい。
式中、mに対するnの比率(n/m)としては、1〜15が好ましく、より好ましくは、2〜12であり、更に好ましくは、3〜10である。
【0073】
上記疎水性(メタ)アクリレートとしては、ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
上記親水性(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0075】
また、上記疎水性(メタ)アクリレートの代わりに、疎水性(メタ)アクリルアミド、スチレン等の疎水性ラジカル重合性モノマーを、上記親水性(メタ)アクリレートの代わりに、親水性(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン等の親水性ラジカル重合性モノマーを用いてもよい。
疎水性(メタ)アクリレート及び親水性(メタ)アクリレートはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、異なる成分を含んでいてもよい。
【0076】
上記有機溶媒分散体は、バインダーを含むものであることが好ましい。バインダーを含むものであると、基板との密着性が向上することになる。バインダーとしては、有機溶媒に溶解する高分子であれば特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール系ポリマー、ポリスチレン等が挙げられる。
これらのバインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
上記バインダーとしては、重量平均分子量5000以上500,000以下のものが好ましい。バインダーの重量平均分子量がこのような範囲であると、塗工された有機溶媒分散体と基板との密着性を充分なものとすることができる。より好ましくは、重量平均分子量10,000以上300,000以下のものであり、更に好ましくは、50,000以上200,000以下であり、特に好ましくは、90,000以上100,000以下である。
なお、バインダーの重量平均分子量は、例えば、上述した両親媒性高分子の重量平均分子量と同様にして測定することができる。
【0078】
上記バインダーの含有量としては、有機溶媒分散体100質量%に対して、0.001〜50質量%であることが好ましい。このような範囲の含有量とすることによって、塗工された有機溶媒分散体と基板との密着性を充分なものとすることができる。また、上述したように、バインダーとして両親媒性高分子を用いる場合には、このような範囲の含有量とすることによって、自己組織化工程を行う際に、塗工された有機溶媒分散体中に取り込まれる水滴の形態をより安定して保持することができる。0.001質量%未満である場合には、後述する自己組織化工程を行う際に、塗膜表面における水滴の成長や輸送が困難になり、開口率が低くなるおそれがある。50質量%を超えると、塗工性が悪くなったり、水滴の成長が充分生じずに開口率が低くなったりするおそれがある。
バインダーの含有量としてより好ましくは、0.001〜25質量%であり、更に好ましくは、0.005〜25質量%である。
【0079】
上記有機溶媒分散体は、塗工前の水分含有量が10質量%以下であることが好ましい。塗工前の有機溶媒分散体中に水分が多く含有されている場合、有機溶媒分散体中の水分が表面張力により大きな水滴となり、後述する自己組織化工程によりパターンを有する膜を形成する際に、網目を細かくすることができないおそれがある。塗工前の水分含有量としてより好ましくは、5質量%以下である。
【0080】
上記有機溶媒分散体は、基板に塗工されるものである。上記基板は、特に限定されるものではなく、有機溶媒分散体を表面に塗工することができるものであればよい。上記基板としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、単結晶基板、半導体基板、金属基板等の種々の基板を用いることができる。電子ペーパー(デジタルペーパー)等のディスプレイに用いる場合には、ガラス基板、透明性を有するプラスチック基板等の透明基板を基板として用いることが好適である。透明基板とは、可視光の透過率が高い基板のことであり、例えば、波長400〜700nmの可視光の透過率が50%以上であることが好ましい。より好ましくは、上記透過率が70%以上であり、更に好ましくは、80%以上である。また、ガラス基板、プラスチック基板を用いることは、低コスト化の観点からも好適である。また、電子ペーパー等の表示装置として用いる場合には、可とう性を有する基板を用いることも好ましい形態である。プラスチック基板としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエステル系;アクリル系;シクロオレフィン系;オレフィン系;ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート等の樹脂系のフィルムが挙げられる。
【0081】
上記有機溶媒分散体を塗工する基板は、表面が親水性である基板を用いることが好ましい。上記基板の表面が親水性であることによって、水滴と基板とを接触しやすくし、空孔の貫通率を高め、空孔底面に余分な高分子・粒子膜の形成を防ぐことができるため、後述する自己組織化工程によりパターンを有する膜を形成する際に、空孔部の形状を開口率が高い導電性膜の形態とすることができる。表面が親水性である基板としては、水に対する接触角が90°以下であることが好ましい。90°以下であることによって、有機溶媒分散体中に取り込まれた水滴の形状を調整し、空孔部の形状を開口率が高い形態にすることができる。水に対する接触角の上限としてより好ましくは、60°以下であり、更に好ましくは、30°以下である。
【0082】
上記有機溶媒分散体を塗工する基板は、基板表面に親水化処理を行われたものであることが好ましい。これによれば、有機溶媒分散体中に取り込まれた水滴を好適な形状で保持することができる。また、基板表面の親水性を制御することによって、導電性膜の形状を更に制御することができる。親水化処理の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ性溶液に浸漬させる方法が好ましい。アルカリ性溶液としては、特に限定されるものではないが、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液等を好ましく用いることができる。具体的には、飽和水酸化カリウムエタノール溶液等を好ましく用いることができる。また、親水化処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、UV−オゾン処理を行う方法等が挙げられる。このような方法は、基板の種類、有機溶媒分散体の種類等によって適宜好ましい方法を選択することが好ましい。また、親水化による基板の接触角は、上述した好ましい接触角の値を用いることができる。
【0083】
本発明の導電性膜の製造方法において行われる、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程(自己組織化工程)について説明する。
上記自己組織化工程によれば、有機溶媒を蒸発させながら、結露により生じた水滴を塗膜中に取り込むことができる。そして、有機溶媒が蒸発し、更に取り込まれた水滴を乾燥させることにより、取り込まれた水滴に対応する空孔部を形成することができる。これにより、導電性微粒子から形成された網目状線部と、空孔部とが形成される。このように、自己組織化工程により網目状のパターンを有する導電性膜を製造することができ、簡易かつ低コストに、導電性と光透過性とに優れた網目状の導電性膜を製造することが可能となる。すなわち、本発明の導電性膜の製造方法により形成された導電性膜は、網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜であることが好ましい。
【0084】
上記塗工された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程において、塗膜表面で結露させることは、塗膜表面付近の湿度や、塗膜表面付近の雰囲気と塗膜表面との温度差を調整することによって行うことができる。すなわち、塗膜表面で結露する条件とすればよい。本発明においては、自己組織化工程により塗膜表面に網目状の導電性部と空孔部とが形成されることになることから、これは、図1−1に示したような機構によって、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させることによって生じたものであることが技術的に見て明らかである。
上記のことから、上記自己組織化法は、塗工された有機溶媒を、塗膜表面で結露が生じる条件で蒸発させる工程ということもできる。塗膜表面で結露が生じる条件とは、例えば、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の露点を、塗膜表面の温度よりも高いものとする条件である。結露を生じさせる方法としては特に限定されるものではないが、例えば、塗膜表面の温度を、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の露点以下に冷却する方法、上記有機溶媒を蒸発させる雰囲気を加湿雰囲気として、該雰囲気の露点を塗膜表面の温度より高くする方法等が好適である。これらの方法は、一つの方法で用いてもよいし、複数の方法を組み合わせて用いてもよい。複数の方法を組み合わせて行うことによって、有機溶媒を蒸発させる条件をより精密に制御することができ、導電性膜の網目状パターンの形態を調整することができる。
【0085】
上記塗膜表面の温度を、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の露点以下に冷却する方法としては特に限定されるものではないが、冷却素子等を用いて塗膜を強制的に冷却する方法、有機溶媒の蒸発潜熱により塗膜表面温度を低くする方法等が挙げられる。また、冷却素子等を用いて塗膜を強制的に冷却する方法としては、有機溶媒分散体を塗工した基板を冷却することで、塗膜表面の温度を冷却することも好ましい。このような方法で冷却することにより、塗膜表面の温度と、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の温度との差が大きくなるため、より簡易に結露を生じさせることができる。すなわち、塗膜表面の温度を有機溶媒を蒸発させる雰囲気の温度よりも低くすることが好ましい。例えば、ペルチェ素子等の冷却機器を用いることによって、有機溶媒分散体を塗工した基板を冷却する方法が好ましい方法の一つとして挙げられる。この方法であると、塗膜表面の温度制御と、有機溶媒を蒸発させる塗膜周囲の雰囲気の制御とを独立して行うことができるため、より精密な条件設定を行うことができる。条件をより調整することにより、製造される導電性膜の形状、透過率、導電率等を制御することができるため、種々の用途に応じて好適な形態の導電性膜を形成することが可能となる。
【0086】
上記有機溶媒を蒸発させるときに塗膜表面で結露が生じるようにするためには、加湿雰囲気とすることが好ましい。すなわち、上記有機溶媒の蒸発を行う工程は、加湿雰囲気下で有機溶媒を蒸発させる工程であることが好ましい。加湿雰囲気とすることによって、有機溶媒分散体の表面で結露が生じやすくなる。上記有機溶媒を蒸発させる際の雰囲気を加湿雰囲気として、該露点を塗膜表面の温度より高くする方法としては、有機溶媒の蒸発を行う周囲全体を加湿する方法、加湿気体を塗膜表面に吹きつける方法等が好適である。加湿雰囲気とすることによって、塗膜表面で結露が生じやすくなる。加湿気体を塗膜表面に吹きつける際には、吹きつける速度等によって、塗膜の中に取り込まれる水滴の形状、量等が変化するため、吹きつける速度を調整することによって、有機溶媒を蒸発させる条件を調整することができる。これにより、導電性膜の形状を制御することができ、その特性(光透過率、導電性等)を向上させることができる。なお、上記加湿雰囲気は、加湿されるのと同様な条件、すなわち有機溶媒分散体の塗膜表面で結露が生じるのに充分な湿度となる雰囲気であればよく、加湿されていてもよいし、湿度の高い環境下で、有機溶媒を蒸発させる工程を行ってもよい。
【0087】
上記加湿雰囲気は、相対湿度が50%以上であることが好ましい。相対湿度が50%以上と高いことによって、上記塗膜表面で結露が生じやすくなり、効率的に導電性膜の製造を行うことができる。相対湿度としては、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
【0088】
上記加湿気体を吹きつける風速の上限としては、流速として5m/s(300m/min)以下であることが好ましい。5m/sを超える流速で加湿気体を吹きつける場合、塗工された有機溶媒分散体の形状が、加湿気体を吹きつけることにより変化し、有機溶媒を乾燥させた後の膜形状を目的の形状に保持することができないおそれがある。加湿気体を吹きつける風速の上限としてより好ましい流速としては、3m/s(180m/min)以下であり、更に好ましくは、1m/s(60m/min)以下である。また、上記風速の下限としては、0.02m/min以上であることが好ましい。風速が0.02m/min以下である場合には、塗工された有機溶媒分散体中に、水滴が充分に取り込まれないおそれがある。風速の下限としてより好ましい流速としては、0.1m/minであり、更に好ましくは、0.2m/min以上であり、特に好ましくは、0.4m/min以上である。加湿気体を吹きつける時間の上限としては、生産性の観点からは、1時間以内であることが好ましい。より好ましくは、40分以内であり、更に好ましくは、30分以内である。加湿気体を吹きつける時間の下限としては、1分以上であることが好ましい。1分未満であると、有機溶媒の蒸発が充分に行うことができないおそれがあり、また、有機溶媒分散体中へ水滴が充分に取り込まれないおそれがある。より好ましくは、5分以上であり、更に好ましくは、10分以上である。例えば、20分程度(15〜25分)が好適な時間である。吹きつける加湿気体の相対湿度についても、上述と同様に、相対湿度が50%以上であることが好ましく、更に好ましくは、55%以上であり、特に好ましくは、60%以上である。
【0089】
ここで、上記自己組織化工程により網目状のパターンを有する膜を製造する方法について図1−2を用いて説明する。図1−2は、塗工された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を示すフロー図である。図1−2(a)で示すように、基板11に塗工された有機溶媒分散体(以下、「塗膜」ともいう。)は、塗膜12を形成した基板11を冷却する方法や加湿気体を吹きつける方法により塗膜表面で結露が生じる条件とすることで、図1−2(b)に示すように、塗膜の表面で結露が生じることとなる。結露により生じた水滴13は、図1−2(c)及び図1−2(d)に示すように塗膜12中に取り込まれる。また、塗工された有機溶媒分散体は、時間が経過するとともに、有機溶媒が蒸発し、薄くなっていく。そして、有機溶媒と、加湿雰囲気によって取り込まれた水滴とが蒸発することによって、図1−2(e)に示すように、有機溶媒が蒸発した膜は空孔部14及び網目状線部15が形成されたものとなる。このようにして、網目状のパターンが形成されることとなる。また、図2は、有機溶媒が蒸発した後の膜の形態を示す平面模式図であるが、形成された空孔部14の周りに金属を含んでなる網目状線部15が形成されたものとなり、網目状パターンを有する膜が形成される。
また、図3に示すように、ペルチェ素子20を用いて、基板21及び塗膜22の冷却を行い、更に加湿気体を塗工された有機溶媒分散体に吹きつけることにより有機溶媒を蒸発させる方法は、本発明の導電性膜の製造方法の好適な形態の一つである。すなわち、上記製造方法は、基板及び塗膜の冷却を行い、かつ加湿気体を塗膜に吹きつけ、該塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含む製造方法であることが好ましい。
【0090】
上記導電性膜の製造方法は、塗工された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程の後に、更に、無電解めっきを行う工程を含むことが好ましい。このように、無電解めっきを行うことによって、得られる導電性膜の導電性を更に向上させることができる。
【0091】
本発明はまた、上記製造方法により製造される導電性膜でもある。上記製造方法により製造されたものであることにより、上記導電性膜は、導電性物質の網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜となり、導電性と光透過性とに優れた透明導電性膜とすることができる。
なお、網目状のパターンを有する導電性膜における網目状線部と空孔部との配置形態としては、ランダム状であってもよいし、規則的に並んでいる状態であってもよい。また、大きめの網目や小さめの網目が混在し、いくつか網目が切れているところがあってもよいが、全体的に見れば、ミクロな技術分野において網目状の構造が認められると評価されるものであることが望ましい。すなわち、マイクロスコープで観察して、網目状の構造が確認できればよい。網目状の構造は、導電性膜全面に形成されていることが好ましいが、導電性膜が用いられる用途に応じて適宜設定されればよく、導電性膜としての機能が発揮され得る限り部分的であってもよい。その他の網目状の好ましい形態については後述する。ここで、ランダム状とは、網目状線部と空孔部とが一定の規則に基づいて配置されていない状態であることをいう。
以降においては、本発明の導電性膜の中でも、特に優れた導電性と光透過性とを有することになる、網目状のパターンを有する導電性膜の形態について説明する。なお、上記製造方法により製造される導電性膜のより好ましい形態としては、以下に説明する網目状の導電性膜の好ましい形態と同様である。
【0092】
上記網目状の導電性膜の形態としては、空孔部の平均面積が400μm2以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下であることが好ましい。空孔部の平均面積が小さく、網目状線部の線幅が狭いことによって、光の透過性が高く、均一性の高い網目状の導電性膜を形成することができる。空孔部の平均面積としてより好ましくは、300μm2以下であり、更に好ましくは、200μm2以下であり、特に好ましくは、100μm2以下である。また、上記空孔部は、平均最大フェレ径が20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。空孔部による開口率としては、60%以上であることが好ましく、これにより光透過率を高めた導電性膜とすることができる。空孔部による開口率は65%以上であることがより好ましく、更に好ましくは、70%以上であり、特に好ましくは、80%以上であり、最も好ましくは、90%以上である。上記網目状線部の線幅としてより好ましくは、2μm以下であり、更に好ましくは、1μm以下である。なお、最大フェレ径とは、各空孔部の輪郭に接するように引いた2本の平行線間の最大のものを最大フェレ径といい、平均最大フェレ径とは、計測した各空孔部の最大フェレ径の平均をとったものを平均最大フェレ径という。
【0093】
本発明は更に、導電性物質の網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜であって、該導電性膜は、空孔部の平均面積が400μm2以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下である導電性膜でもある。空孔部の平均面積が小さく、網目状線部の線幅が狭いことによって、光の透過性が高く、かつ均一性の高い網目状の透明導電性膜を形成することができる。例えば、電子ペーパー等に用いる場合には、表示を行うマイクロカプセルに対して均一に電圧を印加することができる。網目が広い(空孔部の面積が大きい)場合、導電性膜により電圧を印加してマイクロカプセルの色を変化させるような電子ペーパー等のディスプレイに用いる場合、網目が細かいものでないとその空孔部の中にマイクロカプセルの全体が納まることとなり、そのようなカプセルには電圧が印加されないこととなる。また、網目が細かいことによって、導電性がより均一となる。これによれば、例えば、タッチパネルに用いられた場合、位置の認識の精度が高くなる。このような網目状の導電性膜は、上記導電性膜の製造方法を用いて形成することが可能である。上記導電性膜における網目状線部と空孔部との配置形態としては、ランダム状であってもよいし、規則的に並んでいる状態であってもよい。例えば、網目状の導電性膜を形成する際に、より網目の細かいものとするためには、ランダム状であった方が製造がより容易になるため、ランダム状であることも好ましい形態の一つである。
【0094】
上記導電性膜は、空孔部の平均面積が400μm2以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下であることによって、導電性膜の網目が細かいということができる。網目が細かいことによって、導電性膜の面内で均一な導電性を有するものとすることができる。空孔部の平均面積が400μm2を超える場合、導電性膜の面内の均一性が充分とならず、例えば、光の透過性、導電性にばらつきが生じるおそれがある。また、上述したように、電子ペーパー等のディスプレイに対して用いる場合、電圧が印加されない部分が生じることにより、導電性膜としての機能が充分でなくなるおそれがある。空孔部の平均面積として、より好ましくは、300μm2以下であり、更に好ましくは、200μm2以下であり、特に好ましくは、100μm2以下である。また、上記空孔部は、平均最大フェレ径が20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。上記網目状線部の線幅は、5μm以下であり、線幅が狭いことによって、例えば、ディスプレイ等において生じるおそれのあるモアレを抑制することができる。網目状線部の線幅が5μmを越える場合、開口率が小さくなり、光透過性が充分でなくなるおそれがある。網目状線部の線幅として、より好ましくは、2μm以下であり、更に好ましくは、1μm以下である。上記のように、空孔部の平均面積、網目状線部の線幅を制御することによって、導電性膜の導電性と光透過性とをより好ましい値へと制御することができる。
【0095】
上記導電性膜は、空孔部による開口率が60%以上であることが好ましい。開口率を高めることによって、光の透過性を向上させることができるため、電子ペーパー等のディスプレイに用いる場合に好適に用いることができる。60%未満であると、充分な光透過率を得ることができず、透過性を有する導電性膜として充分な特性を発揮することができないおそれがある。空孔部による開口率は、65%以上であることがより好ましく、更に好ましくは、70%以上であり、特に好ましくは、80%以上であり、最も好ましくは、90%以上である。
開口率、線幅、空孔部の平均面積及び平均最大フェレ径については、以下の方法により求めることができる。
【0096】
<開口率、線幅、空孔部の平均面積、平均最大フェレ径の求め方>
導電性膜の表面を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)にて倍率1000倍で観察し、観察した画像を画像処理ソフト(Image−Pro Plus ver.4.0、米国Media Cybernetics社製)を用いて、以下の方法で処理し、導電膜の開口率、線幅、空孔部の平均面積、フェレ径を求める。
【0097】
顕微鏡観察した画像(これを「原画像」とする。)を、上述の画像処理ソフトを用いて導電部が黒、その他の部分(網目の開口部)が白となるように白黒に二値化する。この時、二値化の閾値は、色調のヒストグラムより白と黒のピーク値を求め、その中間値とする。次に、二値化画像の白黒反転処理を行う(この画像を「二値化画像」とする。)。この時の、全体の面積に対する黒部の面積比を求め、開口率とする。
【0098】
また、二値化画像の白部の面積を求め、これを導電部の面積(S)とする。次に、二値化画像の細線化処理を行う(この画像を「細線化処理画像」とする。)。細線化処理画像の白部の面積を求め、これを導電部の長さ(L)とする。上記で求めたSとLの値を用い、下記式(1)により導電部の線幅を求める。
導電部の線幅=S/L (1)
【0099】
続いて、二値化画像の黒部を抽出する(この画像を「抽出画像」とする。)。抽出の際、境界上の空孔部については除外する。また、1μm2以下の面積の空孔部についても除外する。このときの、各要素の面積、及び、最大フェレ径を計測し、平均化したものを、それぞれ、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径とする。
【0100】
上記網目状線部の厚みは、200nm以上であることが好ましい。200nm以上であることによって、線幅が狭くなったとしても充分な導電率を得ることができる。導電性膜の膜厚が200nm未満である場合には、導電性が低くなり、導電性膜としての特性を充分に発揮することができないおそれがある。網目状線部の厚みとしてより好ましくは、1μm以上である。なお、網目状線部の厚みは、最大膜厚を測定することによって求められ、例えば、レーザー顕微鏡を用いることによって測定することができる。測定方法としては、レーザー顕微鏡(VK−9700、キーエンス社製)で倍率50倍で塗膜を観測し、観察した画像から塗膜の最大の段差を10箇所で計測し、平均した値を導電性膜の最大膜厚とする。
【0101】
本発明の導電性膜は、可視光(波長が400〜700nm)の光透過率が20%以上であることが好ましい。光透過率を高くすることで、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。光透過率としてより好ましくは、40%以上であり、更に好ましくは、60%以上であり、特に好ましくは、80%以上である。上記光透過率は、分光光度計(商品名「V−530」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について測定することができる。
【0102】
本発明の導電性膜はまた、全光線透過率が20%以上であることが好ましい。全光線透過率が20%以上である場合、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。全光線透過率としてより好ましくは、40%以上であり、更に好ましくは、50%以上であり、特に好ましくは、60%以上である。最も好ましくは、75%以上である。
なお、上記全光線透過率は、ヘイズメーター NDH5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
【0103】
本発明の導電性膜は、表面抵抗率が1012Ω/□以下であることが好ましい。このような表面抵抗率であると、充分な導電性を有しているため、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。より好ましくは、108Ω/□以下であり、更に好ましくは、107Ω/□以下であり、特に好ましくは、106Ω/□以下である。最も好ましくは、105Ω/□以下である。
また、上記網目状のパターンを有する導電性膜においては、特に、空孔部による開口率が高い場合、網目状線部の面積が小さくなると、開口率が低い同じ膜厚の導電性膜と比較すると、導電性膜の抵抗率が増加することとなる。そのため、網目状線部の面積は、充分な導電性を確保することができる面積であることが好ましい。好ましい網目状線部の面積は、導電性膜の膜厚、面積、導電性膜を構成する金属材料等によって異なるが、例えば、導電性膜の面内の表面抵抗率が1012Ω/□以下であるように網目状線部の面積を設定することが好ましい。これによれば、導電性膜の表面抵抗率としてより好ましくは、108Ω/□以下であり、更に好ましくは、107Ω/□以下であり、特に好ましくは、106Ω/□以下である。最も好ましくは、105Ω/□以下である。
なお、上記表面抵抗率は、抵抗率計 ロレスター−GP(三菱化学アナリテック社製、プローブ:ASPプローブ)を用いて、四端子四探針法により測定することができる。
【0104】
本発明の導電性膜は、ヘイズが40%以下であることが好ましい。ヘイズを低く抑えることで、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して用いた場合、画像鮮明性を向上させることができる。ヘイズとしてより好ましくは、30%以下であり、更に好ましくは、25%以下であり、特に好ましくは、20%以下である。
なお、上記ヘイズは、ヘイズメーター NDH5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
【0105】
上記導電性膜の用途としては、特に限定されるものではなく、導電性を必要とする用途であればどのような用途にも用いることができる。例えば、プラズマディスプレイ等に用いられる電磁波遮蔽フィルム(EMIシールドフィルム)等として用いることができるし、電子ペーパー(デジタルペーパー)、液晶表示装置の表示装置に用いられる電極として用いることもできる。また、タッチパネル等にも用いることができる。
このように、本発明はまた、デジタルペーパーに用いられる導電性膜でもある。
【0106】
本発明はまた、上記製造方法により導電性膜を製造するための導電性膜の製造装置でもある。すなわち、導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗工してパターンを有する導電性膜を製造する装置であって、上記製造装置は、有機溶媒分散体を基板に塗工した後、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する手段と、上記パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる手段とを有する導電性膜の製造装置もまた、本発明の1つである。
【0107】
本発明の製造装置は、有機溶媒分散体を基板に塗工する工程を行う部分、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程を行う部分、及び、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行う部分を含むものであるが、これらの工程を行う部分を含む限り、その他の工程を行う部分を含んでいてもよい。特に、有機溶媒分散体が塗工される前にろ過されるよう、ろ過装置を設けて有機溶媒分散体溶液に含まれる不純物、ゲル状異物、凝集異物を取り除くことが高品質の導電性膜を製造するために好ましい。
【0108】
上記有機溶媒分散体を基板に塗工する工程を行う部分において、有機溶媒分散体を基板に塗工する方法としては、スライド法、エクストリュージョン法、バー法、グラビア法のいずれかの方法が好ましい。また、長さの長い導電性膜を製造するために、基板としては長さの長いものが好ましく、連続製造のためには、ウェブ状の基板を用いることが好ましい。また、ウェブ状の基板はロール状の形態のものが運搬・取扱い上より好ましく、導電性膜が形成されたウェブ状基板も、巻き取りローラーなどでロール状の形態にすることで、運搬・取扱いが容易になり好ましい。
【0109】
上記塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程を行う部分は、基板上に有機溶媒分散体を塗工して形成された膜の表面温度よりも膜近傍の気体の露点が高くなるように調整された雰囲気下で、有機溶媒分散体の塗膜の表面に気体の風を送り、有機溶媒を蒸発させるとともに該気体を結露させて塗膜表面に液滴を形成する工程(結露工程)を行う部分と、表面に液滴を有する膜を該膜の表面温度よりも塗膜近傍の気体の露点が低くなるように調整された雰囲気下におくことで該液滴を蒸発させる工程(液滴蒸発工程)を行う部分とを含むことが好ましい。また、該塗膜に吹きつける気体としては空気が好ましい。
【0110】
上記結露工程においては、塗膜表面に液滴を形成することができる限り、塗膜の表面温度と塗膜近傍の気体の露点との差は、特に制限されないが、90℃以下であることが好ましい。より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは70℃以下である。結露工程直前の塗膜の表面温度、及び、結露工程の露点のばらつきは、±5%以下が好ましい。より好ましくは、±3%以下であり、更に好ましくは、±2%以下である。
移動するウェブ状の基板を用いて製造する場合、ウェブ状の基板の移動速度は、0.1m/min〜100m/minが好ましい。より好ましくは、0.1m/min〜80m/minであり、更に好ましくは、0.1m/min〜60m/minである。また、ウェブ状の基板の移動速度に対する送風される気体の相対速度は、0.05m/s以上が好ましく、0.lm/s以上がより好ましい。また、30m/s以下が好ましく、より好ましくは、20m/s以下である。また、相対速度のばらつきは、±30%以下が好ましい。より好ましくは、±20%以下であり、更に好ましくは、±10%以下である。これにより、有機溶媒を充分に蒸発させるとともに塗膜表面に液滴を充分に形成するとともに、品質の安定した膜を形成することができる。
また、上記結露工程において送風口から送られる風は、塗膜に対して、ばらつきが±20°以内となるような角度で一方向から供給されることが好ましく、更にウェブ状の基板の移動方向に向けて吹く平行な風であることがより好ましい。風を塗膜に対して向かい風として送風すると、風と塗膜との相対速度が低い条件で製造する場合に、風の速度制御が難しく、塗膜表面が乱れて塗膜の平滑性が失われるおそれがある。
【0111】
上記液滴蒸発工程においては、塗膜表面の液滴を蒸発させることができる限り、塗膜の表面温度と塗膜近傍の気体の露点との差は、特に制限されないが、0.5℃以上が好ましい。より好ましくは、1℃以上であり、更に好ましくは、2℃以上である。また、90℃以下であることが好ましい。より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは70℃以下である。また、液滴蒸発工程直前の塗膜の表面温度、及び、液滴蒸発工程の露点のばらつきは、±5%以下が好ましい。より好ましくは、±3%以下であり、更に好ましくは、±2%以下である。
液滴蒸発工程においては、塗膜に乾燥風を送ることで液滴の蒸発を促すことが好ましい。その場合、乾燥風は、塗膜に対して、±20°以内となるような角度で一方向から供給されることが好ましく、更に塗膜の移動方向に向けて平行に吹く風であることがより好ましい。
なお、上記結露工程、液滴蒸発工程において、膜の表面温度を制御する方法としては、移動するウェブ状の基板を用いる場合、当該ウェブ状基板に接する回転式のローラーに温度調節機を設け、基板の温度を制御することで膜の表面温度を制御する方法を用いることができる。その場合、例えば、伝熱媒体が流れる液流路をローラーの内部に設け、温度調節された伝熱媒体を送液する方法等を用いることができる。
【0112】
上記パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行う部分は、有機溶媒を含む溶媒溶液が入った容器内に、上記液滴蒸発工程を経てパターンが形成された膜を通過させる構造となった部分であることが好ましい。パターンを有する膜を有機溶媒を含む溶媒溶液が入った容器内に通過させる方法は特に制限されない。
【0113】
本発明の製造装置の一例の概略図を図7に示す。
図7の導電性膜製造設備100においては、導電性微粒子を含む有機溶媒分散体101が入ったタンク102が設置されている。タンク102には撹拌翼を有する撹拌機103が設置されており、撹拌翼が回転することで有機溶媒分散体101中の導電性微粒子の分散状態を保っている。有機溶媒分散体101は、ポンプ104により有機溶媒分散体を基板上に塗工する流延ダイ105に送られる。流延ダイ105は、ウェブ状の基板106の上方に備えられており、ウェブ状基板106は、送出ローラー108から出され、回転ローラー109〜111を経て、巻き取りローラー112によって巻き取られる。送出ローラー108及び回転ローラー109は、温度調節機107により温度を調整されており、これによって、送出ローラー108と回転ローラー109との間のウェブ状基板106の温度が制御される。流延ダイ105から有機溶媒分散体が塗工されたウェブ状基板は、上記結露工程を行う領域121、上記液滴蒸発工程を行う領域131、及び、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させるための有機溶媒を含む溶媒溶液が入った槽141を通過した後、ウェブ状基板上に形成された導電性膜152と共に巻き取りローラー112に巻き取られる。
【0114】
上記送出ローラー108と回転ローラー109との間のウェブ状の基板106の傾きは、水平方向に対して±10°以内であることが好ましい。流延ダイ105によって有機溶媒分散体101が基板106上に塗工されてから、結露工程に至るまでの間は、塗工された有機溶媒分散体が流動する状態にあるため、基板106の傾きが大きいと、有機溶媒分散体が傾斜の低いほうに寄ってしまい、均一な厚みの塗膜が形成されないおそれがある。有機溶媒分散体が基板上に塗工されてから、結露工程に至るまでの間の傾斜を±10°以内とすることで塗膜の厚みのばらつきを抑制することができる。より好ましくは、結露工程が終わるまでの間、傾斜を±10°以内とすることである。
送出ローラー108と回転ローラー109との間のウェブ状の基板106の傾きを水平方向に対して±10°以内とすることで、有機溶媒分散体が基板上に塗工されてから、結露工程が終わるまで間、基板106の傾きを水平方向に対して±10°以内とすることができる。
【0115】
有機溶媒分散体を基板に塗工する工程においては、送出ローラー108から出されたウェブ状の基板106上へ流延ダイ105から導電性微粒子を含む有機溶媒分散体101が塗工され塗膜が形成される。
結露工程を行う領域121においては、基板上の塗膜151に風を送るための送風機122から、温度が制御された塗膜に風が当てられ、塗膜上に液滴が形成される。送風機122は、送風口とともに、送風した風を吸引する吸引口を有するものであることが好ましく、送風口、吸引口を複数有するものであってもよい。送風機122は、独立に風の温度、湿度、風量及び吸引力を制御することができる複数の送風機から構成されるものであることが好ましい。これにより、結露によって発生する水滴の形状や量等に応じて送風や吸引を行う条件を制御することが可能となる。複数の送風機は、基板の移動方向に平行に複数設置されていてもよく、基板の移動方向に垂直に複数設置されていてもよい。基板の移動方向に垂直に複数設置すると、基板の移動方向に垂直な塗膜の幅方向についても結露条件を制御することができる。更に、風に塵や埃が混じって風の清浄度が低下するのを防ぐために、送風口、吸引口はフィルタを備えていることが好ましい。
【0116】
上記液滴蒸発工程を行う領域131には、乾燥機132が設置されており、この乾燥機132は、塗膜151に乾燥風を送ることで、塗膜上に形成された液滴を乾燥させ、パターンを形成する。乾燥機132は、塗膜151に乾燥風を送るとともに、送風機122から送られた風を吸引する吸引口を有することが好ましい。乾燥機132も送風機122と同様に風の温度と露点とを制御することで、塗膜151の乾燥条件を容易に調整することが可能となる。乾燥機132も送風機122と同様に、独立に風の温度、湿度、風量及び吸引力を制御することができる複数の乾燥機から構成されるものであることが好ましく、その場合、複数の乾燥機は、基板の移動方向に平行に複数設置されていてもよく、基板の移動方向に垂直に複数設置されていてもよい。基板の移動方向に垂直に複数設置されている場合、基板の移動方向に垂直な塗膜の幅方向についても乾燥条件を制御することができる。また、風に塵や埃が混じって風の清浄度が低下するのを防ぐために、乾燥機の送風口、吸引口はフィルタを備えていることが好ましい。
なお、図7においては、結露工程を行う領域121、液滴蒸発工程を行う領域131は、離れているが、これら2つの領域が接触していてもよい。すなわち、送風機122と乾燥機132とが一体となった形態の送風、乾燥機を用いてもよい。
【0117】
上記液滴蒸発工程を行う領域131を経て、パターンを有する膜を形成した後、有機溶媒を含む溶媒溶液142が入った槽141を通過する。これにより、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液142を作用させることができる。図7の装置においては、槽141中で溶媒溶液142の中にある回転ローラーは110の1つだけであるが、図13に示すように、有機溶媒を含む溶媒溶液742の中に回転ローラー702、703の2つを有する槽を用いてもよく、このような槽を用いた場合、溶媒溶液742の中に存在する2つの回転ローラーの間隔を調整することで、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間の長さを調整することができる。また、槽の中の溶媒溶液の液量を調整することによっても、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間の長さを調整することができる。なお、図7の回転ローラー109、図13の回転ローラー701とパターンを有する膜を挟んで対向する位置に弾性ローラーを設置してもよい。その場合、回転ローラー109、701と弾性ローラーの回転軸が水平になる位置に弾性ローラーを設置することが好ましい。
【0118】
上記流延ダイ105によって有機溶媒分散体101が基板106上に塗工されてから、液滴蒸発工程までの工程を行う部分としては、上記導電性膜製造設備100に示されたものの他、図8に示すように、2つの回転ローラー207、208によってウェブ状基板206が移動し、当該ウェブ状基板の上下に分けて結露工程を行う領域221、液滴蒸発工程を行う領域231を設けた形態のものとしてもよい。なお、図8において、201〜205は、それぞれ101〜105と同じであり、222、232も122、132と同様、それぞれ送風機、乾燥機である。
更に別の形態として、図9のように移動するベルト301上に設置された複数の基板302上に有機溶媒分散体を塗工し、基板上の塗膜311に対して結露工程、液滴蒸発工程を行う形態のものとしてもよい。図9において、305は流延ダイ、321は結露工程を行う領域、331は液滴蒸発工程を行う領域、322、332はそれぞれ送風機、乾燥機である。
なお、図8、9においては、導電性膜製造装置全体のうち、塗工されてから、液滴蒸発工程までの部分を示している。
【0119】
更に、有機溶媒分散体を基板に塗工する方法として、流延ダイによる方法に代えて、図10に示すように、スライドコーター402を用いることができる。図10に示す形態では、バックアップローラー404に対向してスライドコーター402が設置されており、また、スライドコーター402には減圧チャンバー403が設置されている。スライドコーターは、基板の移動方向における均一塗工性、生産性に優れ、また、基板405に接触することなく塗工することができるので、基板405の表面を傷つけることなく、均一な塗膜を形成することができる。更には、基板がバックアップローラー404に巻き掛けられている際に平滑化されるので、均一な塗膜を形成することができる。
また、上記図10におけるスライドコーター402に代えて、多層式スライドコーターやエクストリュージョンコーターを用いることもできる。
なお、図10においては、導電性膜製造装置全体のうち、有機溶媒分散体を基板に塗工する工程の部分を示している。
【0120】
その他の方法として、図11に示すように、ワイヤーバー塗工機501を用いて、有機溶媒分散体502を基板504に塗工する方法を用いることもできる。この方法では、ワイヤーバー503の回転によって引き上げられた有機溶媒分散体502が基板504に接触して塗膜が形成される。
更に図12に示すように、表面に凹部を有する版胴603と圧胴602とが対向して設置され、版胴603が回転することで版胴603の凹部604に入った有機溶媒分散体605が圧胴602上を移動している基板601上に塗工される形態の塗工方法を用いることもできる。図12において、606は過剰な有機溶媒分散体605を掻き落とすドクターブレードである。
なお、図11、12においても、導電性膜製造装置全体のうち、有機溶媒分散体を基板に塗工する工程の部分を示している。
図7〜13に示した装置、及び、装置の部分は、いずれも本発明の導電性膜の製造装置の好ましい形態であり、これらを種々組み合わせてできる製造装置もまた、本発明の導電性膜の製造装置の好ましい形態である。
【発明の効果】
【0121】
本発明の導電性膜の製造方法によって、優れた導電性と光透過性とを有する導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができる。また、製造工程において焼成するような高温での処理工程を必要としないために、基板としてPETフィルム等の汎用高分子基板を用いることができる方法である。そして、このようにして得られる導電性膜は、優れた導電性と光透過性とを有しているため、電子ペーパー等のディスプレイ等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1−1】図1−1は、塗工された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程の一例を示す、時間の経過による塗膜断面の概念図である。
【図1−2】図1−2(a)〜(e)は、塗工された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を示す概念図である。
【図2】図2は、空孔部と網目状線部が形成された網目状の導電性膜の平面模式図である。
【図3】図3は、ペルチェ素子を用いて、基板及び塗膜を冷却し、更に加湿気体を塗膜に吹きつけながら蒸発させる方法を示す断面模式図である。
【図4】図4は、実施例1〜13について、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間と、表面抵抗率との関係を示したグラフである。
【図5】図5は、実施例1〜13について、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間と、全光線透過率との関係を示したグラフである。
【図6】図6は、実施例1〜13について、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間と、ヘイズとの関係を示したグラフである。
【図7】図7は、本発明の導電性膜の製造装置の一例である導電性膜製造設備100の概略図である。
【図8】図8は、本発明の導電性膜の製造装置の一例として、導電性膜の製造装置全体のうち、有機溶媒分散体が基板上に塗工されてから、液滴蒸発工程までの部分を示した概略図である。
【図9】図9は、本発明の導電性膜の製造装置の一例として、導電性膜の製造装置全体のうち、有機溶媒分散体が基板上に塗工されてから、液滴蒸発工程までの部分を示した概略図である。
【図10】図10は、本発明の導電性膜の製造装置の一例として、導電性膜の製造装置全体のうち、有機溶媒分散体を基板上に塗工する工程の部分を示した概略図である。
【図11】図11は、本発明の導電性膜の製造装置の一例として、導電性膜の製造装置全体のうち、有機溶媒分散体を基板上に塗工する工程の部分を示した概略図である。
【図12】図12は、本発明の導電性膜の製造装置の一例として、導電性膜の製造装置全体のうち、有機溶媒分散体を基板上に塗工する工程の部分を示した概略図である。
【図13】図13は、本発明の導電性膜の製造装置の一例として、導電性膜の製造装置全体のうち、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程の部分を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0123】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0124】
下記実施例及び比較例においては、次のようにして導電性膜の物性を測定した。
<表面抵抗率>
導電性膜の表面抵抗率は、抵抗率計 ロレスター−GP(三菱化学アナリテック社製、プローブ:ASPプローブ)を用いて、四端子四探針法により測定した。
<全光線透過率、ヘイズ>
導電性膜の全光線透過率、ヘイズは、ヘイズメーター NDH5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定した。
【0125】
<導電性微粒子分散溶液の調整方法>
オクチルアミン(和光純薬工業株式会社製)148.1gをいれた1Lビーカーを40℃の恒温槽に入れる。次に酢酸銀(和光純薬工業株式会社製)18.6gを添加し20分間充分に攪拌混合し、均一な混合溶液を調整する。続いて、20wt%水素化ホウ素ナトリウム水溶液20gを徐々に添加することにより還元処理を実施した。
還元処理後、アセトンを200g添加し、しばらく放置後、ろ過により銀及び有機物からなる沈殿物を分離回収する。回収物にトルエンを添加し、再溶解後、10℃以下まで冷却させた後、再度ろ過し、不純物を低減させたトルエン分散溶液を調整した。次に、エバボレーターによりトルエンを留去し、銀微粒子を20wt%含有する導電性微粒子分散溶液を調整した。この溶液は、銀微粒子の他にオクチルアミン9wt%、トルエン71wt%を含有する溶液であった。この溶液をFE−SEMで観察したところ、平均粒子径4nm、変動係数が14%の粒子径分布をもつナノ粒子分散体であることが確認された。
【0126】
(参考例1)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液を用いて、銀の重量濃度として0.93mg/ml(シクロヘキサン溶液100質量%に対して、0.120質量%に相当。)、NIKKOL Decaglyn 7−OV(ヘプタオレイン酸ポリグリセリル−10、日光ケミカルズ社製)0.028mg/ml(シクロヘキサン溶液100質量%に対して、0.0036質量%に相当。)のシクロヘキサン溶液を調整した。23℃、相対湿度70%の雰囲気下で、1.6mlの上記溶液を5cm角のPETフィルム(ルミラーU34、両面易接着処理PET、東レ社製)基板上に塗布し、加湿空気(相対湿度70%)を1.6m/minの流速で、10分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、150℃で30分焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。
このときの導電性膜の表面抵抗率は、1.7×102Ω/□、全光線透過率は、43.7%、ヘイズは、34.5%であった。また、導電性膜の最大膜厚、開口率、線幅、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径を求めた結果、表1の通りであった。
【0127】
(実施例1)
焼成工程の代わりに、乾燥を行った後の膜を有機溶媒を含む溶媒溶液であるメタノールに3分間浸漬させた後、室温、常圧下で乾燥(風乾)した以外は、参考例1と同様にして、導電性膜を得た。
このとき得られた導電性膜の表面抵抗率は、1.3×106Ω/□、全光線透過率は、44.8%、ヘイズは、34.0%であった。また、導電性膜の最大膜厚、開口率、線幅、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径を求めた結果、表1の通りであった。
【0128】
(実施例2〜11)
有機溶媒を含む溶媒溶液の種類、及び、浸漬時間を表1に記載した通りに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性膜を得た。それらの物性を評価した結果、表1の通りであった。
【0129】
(実施例12)
焼成工程の代わりに、乾燥を行った後の膜を有機溶媒を含む溶媒溶液であるメタノールに10分間浸漬させた後、室温、常圧下で乾燥(風乾)し、更に、その膜を1mol/L塩酸に1分間浸漬させた後、水洗し、室温、常圧下で乾燥(風乾)した以外は、参考例1と同様にして、導電性膜を得た。得られた導電性膜の物性を評価した結果、表1の通りであった。
【0130】
(実施例13)
有機溶媒を含む溶媒溶液としてアセトンを用いた以外は、実施例12と同様にして導電性膜を得た。得られた導電性膜の物性を評価した結果、表1の通りであった。
【0131】
【表1】
【0132】
実施例及び比較例の結果から、以下のことが分かった。
有機溶媒分散体を基板に塗工した後、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、該パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行って導電性膜を製造することによって、導電性と光透過性とを高いレベルで両立した導電性膜を形成することが可能であることが分かった(実施例1〜13)。
更に、150℃という高温での焼成工程を行わなくとも、パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行うことによって、同程度の導電性を有する導電性膜が得られた。更にその得られた導電性膜は、焼成工程を行って得られた導電性膜に比べて、全光線透過率がより高く、かつ、ヘイズがより抑制されていた。すなわち、導電性膜の光透過性の観点からは、焼成工程よりも本発明において行われるパターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程の方がアドバンテージを有していることが分かった(例えば、参考例1と実施例5)。
また、実施例1〜13の結果について、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間と、表面抵抗率、全光線透過率又はヘイズとの関係を示したグラフがそれぞれ図4〜図6である。図4〜図6から、有機溶媒を含む溶媒溶液の種類によらず、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる時間を延ばすことにより、得られる効果が高くなっていくことが分かる。
これらの結果から、本発明の導電性膜の製造方法により、高温での焼成を行うことなく、導電性膜を形成することができるために、PETフィルム等の耐熱性の高くない汎用高分子基板上にも優れた導電性と光透過性とを有する導電性膜を簡易かつ安価に形成することができることが実証された。
なお、上記実施例においては、導電性物質として銀が、微粒子分散剤としてオクチルアミンが、界面活性剤として特定のノニオン性界面活性剤が、有機溶媒を含む溶媒溶液として特定のものが用いられているが、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させることによって、微粒子分散剤、界面活性剤及び融着せずに孤立した余分な導電性微粒子が洗い流される、という機構は、導電性微粒子を用い、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を行った場合には、全て同様である。従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
【符号の説明】
【0133】
11、21:基板
12、22:塗膜(塗工された有機溶媒分散体)
13:水滴
14:空孔部
15:網目状線部
20:ペルチェ素子
101、201、401、502、605:導電性微粒子を含む有機溶媒分散体
102、202:タンク
103、203:攪拌機
104、204:ポンプ
105、205、305:流延ダイ
106、206、302、405、504、601:基板
107:温度調節機
108、406:送出ローラー
109〜111、207、208、701〜704:回転ローラー
112:巻き取りローラー
121、221、321:結露工程を行う領域
122、222、322:送風機
131、231、331:液滴蒸発工程を行う領域
132、232、332:乾燥機
141:有機溶媒を含む溶媒溶液が入った槽
142、742:有機溶媒を含む溶媒溶液
151、311:塗膜
152:導電性膜
301:ベルト
402:スライドコーター
403:減圧チャンバー
404:バックアップローラー
501:ワイヤーバー塗工機
503:ワイヤーバー
602:圧胴
603:版胴
604:版胴603の凹部
606:ドクターブレード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗工してパターンを有する導電性膜を製造する方法であって、
該製造方法は、有機溶媒分散体を基板に塗工した後、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、該パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を含むことを特徴とする導電性膜の製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒を含む溶媒溶液は、極性溶媒及び/又は溶解補助剤を含む極性溶媒溶液であることを特徴とする請求項1に記載の導電性膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により製造されることを特徴とする導電性膜。
【請求項4】
デジタルペーパーに用いられることを特徴とする請求項3に記載の導電性膜。
【請求項5】
導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗工してパターンを有する導電性膜を製造する装置であって、
該製造装置は、有機溶媒分散体を基板に塗工した後、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する手段と、該パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる手段とを有することを特徴とする導電性膜の製造装置。
【請求項1】
導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗工してパターンを有する導電性膜を製造する方法であって、
該製造方法は、有機溶媒分散体を基板に塗工した後、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する工程、及び、該パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる工程を含むことを特徴とする導電性膜の製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒を含む溶媒溶液は、極性溶媒及び/又は溶解補助剤を含む極性溶媒溶液であることを特徴とする請求項1に記載の導電性膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により製造されることを特徴とする導電性膜。
【請求項4】
デジタルペーパーに用いられることを特徴とする請求項3に記載の導電性膜。
【請求項5】
導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗工してパターンを有する導電性膜を製造する装置であって、
該製造装置は、有機溶媒分散体を基板に塗工した後、塗工された有機溶媒分散体を塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させてパターンを有する膜を形成する手段と、該パターンを有する膜に有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させる手段とを有することを特徴とする導電性膜の製造装置。
【図1−1】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−74206(P2012−74206A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217338(P2010−217338)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
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