説明

導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置

【課題】電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の位置ずれ及び隙間の発生を防止して、感光体と導電性部材との間に安定した空隙を維持することにより、感光体の表面をいっそう均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させることができる導電性部材を提供する。
【解決手段】導電性支持体1と、該導電性支持体1上に形成された電気抵抗調整層2と、該電気抵抗調整層2の両端に設けられた空隙保持部材3と、を有する導電性部材10において、該導電性部材1が、該電気抵抗調整層2及び/又は該空隙保持部材3に面する該導電性支持体1の外表面に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝1aと、該固定溝1aに入り込ませるように該電気抵抗調整層2及び/又は該空隙保持部材3の内表面に周方向に設けられた連続又は不連続の凸条2bと、を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において用いられる導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体(感光体)に対して帯電処理を行う帯電部材、及び、感光体上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、導電性部材が用いられている。図10は、従来の帯電部材を有する電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【0003】
図10において、120は、従来の電子写真方式の画像形成装置である。従来の電子写真方式の画像形成装置120は、静電潜像が形成される感光体101、感光体101に接触して帯電処理を行う帯電ローラ102、レーザ光等の露光手段103、感光体101の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ104、帯電ローラ102にDC電圧を印加するためのパワーパック105、感光体101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ローラ106、転写処理後の感光体101をクリーニングするためのクリーニング装置108、及び、感光体101の表面電位を測定する表面電位計109から構成されている。
【0004】
また、従来の電子写真方式の画像形成装置120は、プロセスカートリッジ着脱方式の装置となっている。即ち、従来の電子写真方式の画像形成装置120は、感光体101、帯電ローラ102、現像ローラ104、及び、クリーニング装置108を含むプロセス機器を一括して画像形成装置本体に対して着脱自在のプロセスカートリッジ110としている。このプロセスカートリッジ110は、少なくとも、感光体101及び帯電ローラ102を備えていればよい。このプロセスカートリッジ110は、画像形成装置に対して所定の箇所に装着されることにより、画像形成装置本体側の駆動系及び電気系と接続状態となる。なお、図10では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、本明細書において必要としないので、省略してある。
【0005】
次に、従来の電子写真方式の画像形成装置120の基本的な作像動作について説明する。
【0006】
感光体101に接触された帯電ローラ102に対してDC電圧をパワーパック105から給電すると、感光体101の表面は、一様に高電位に帯電する。その直後に、画像光が感光体101の表面に露光手段103により照射されると、感光体101の照射された部分は、その電位が低下する。このような帯電ローラ102による感光体101の表面への帯電メカニズムは、帯電ローラ102と感光体101との間の微少空間におけるパッシェンの法則に従った放電であることが知られている。
【0007】
画像光は、画像の白/黒に応じた光量の分布であるので、かかる画像光が照射されると、画像光の照射によって感光体101の面に記録画像に対応する電位分布、即ち、静電潜像が形成される。このように静電潜像が形成された感光体101の部分が現像ローラ104を通過すると、その電位の高低に応じてトナーが付着し、静電画像を可視像化したトナー像が形成される。かかるトナー像が形成された感光体101の部分に、記録紙107が所定のタイミングでレジストローラ(図示せず)により搬送され、前記トナー像に重なる。そして、このトナー像が転写ローラ106によって記録紙に転写された後、該記録紙107は、感光体101から分離される。分離された記録紙107は、搬送経路を通って搬送され、定着ユニット(図示せず)によって、加熱定着された後、機外へ排出される。このようにして転写が終了すると、感光体101は、その表面がクリーニング装置108によりクリーニング処理され、さらに、クエンチングランプ(図示せず)により、残留電荷が除去されて、次回の作像処理に備えられる。
【0008】
従来の帯電ローラを用いた帯電方式には、感光体に帯電ローラを接触させる接触帯電方式のもの(特許文献1〜3を参照。)があるが、このような従来の接触帯電方式には、
(1)帯電ローラを構成している物質が帯電ローラから染み出し、これが被帯電体の表面に付着移行して帯電ローラ跡を残すこと、
(2)帯電ローラに交流電圧を印加したときに、被帯電体に接触している帯電ローラが振動するので、帯電音が発生すること、
(3)感光体上のトナーが帯電ローラに付着する(特に、上述の染み出しによって、よりトナー付着がおこりやすくなる。)ので、帯電ローラの帯電性能が低下すること、
(4)帯電ローラを構成している物質が感光体へ付着すること、及び、
(5)感光体を長期停止したときに、帯電ローラが永久変形すること、
といった問題があった。
【0009】
このような問題を解決する技術として、帯電ローラを感光体に近接させるようにした近接帯電方式による帯電装置(特許文献4〜6を参照。)が提案されている。特許文献4,5には、帯電ローラと感光体との空隙を保持する手段として、ローラ両端部にスペーサリング層を設けることが開示されている。特許文献6には、帯電ローラに用いられているような弾性ゴムで構成される所定の厚みを持ったテープ状の空隙保持手段を設けることが開示されている。これらの近接帯電方式による帯電装置は、帯電ローラと感光体との最近接距離(空隙)が50〜200μmになるように対向させて、帯電ローラに電圧を印加することにより、感光体の帯電を行うようにしたものである。
【0010】
これらの近接帯電方式による帯電装置では、ローラと感光体とが接触していないので、従来の接触帯電方式による帯電装置において問題となっていた、帯電ローラを構成している物質が感光体へ付着すること、及び、感光体が長期停止したときに永久変形すること、といった問題はない。また、これらの近接帯電方式による帯電装置では、帯電ローラに付着するトナーが少なくなるので、感光体上のトナー等が帯電ローラに付着することが少ない。したがって、近接帯電方式による帯電装置は、優れた帯電装置といえる。
【0011】
しかしながら、特許文献4,5に記載された近接帯電方式による帯電装置では、帯電ローラと感光体との最近接距離(空隙)を精密に設定する具体的手段が設けられていないので、帯電ローラ及びスペーサリングの寸法精度がばらつき、そのために、空隙が変動してしまう、という問題があった。そして、特許文献6に記載された近接帯電方式による帯電装置では、弾性ゴムのへたりが経時で発生しやすいので、長期間の使用において、感光体と帯電ローラとの間の空隙を維持できなくなる、という問題があった。また、特許文献6に記載された近接帯電方式による帯電装置では、テープ状部材の磨耗、帯電ローラとテープ状部材との間へのトナーの進入又は固着等により、長期間の使用において、感光体と帯電ローラと間の空隙を維持できなくなる、という問題があった。
【0012】
また、特許文献4〜6に記載された近接帯電方式による帯電装置においては、帯電ローラ及び空隙保持部材を設置した後、加熱工程が生じる場合には、帯電ローラ及び空隙保持部材の熱膨張により、帯電ローラ及び空隙保持部材が互いに対抗し合うので、その対抗力で帯電ローラ及び空隙保持部材のうち保持力の小さい方の位置がずれてしまい、また、帯電ローラ及び空隙保持部材を冷却した後に、帯電ローラと空隙保持部材との隣接部分に隙間が生じ、それらのために、帯電ローラと感光層との間の空隙精度が低下しまう、という問題があった。さらに、発生した隙間への異物(トナー凝集)の混入による部材の磨耗劣化などの不具合の発生により耐久性が低下する、という問題があった。
【0013】
また、空隙を保持する部材として金属性リングを使用する方法も考えられるが、この場合、感光体の磨耗が著しいので、感光体の基層である金属との間でショート電流が発生してしまい、電圧印加電源の破壊等の不具合を招いてしまう。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報
【特許文献2】特開平1−267667号公報
【特許文献3】特開平1−267667号公報
【特許文献4】特開平3−240076号公報
【特許文献5】特開平4−358175号公報
【特許文献6】特開平5−107871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0015】
即ち、本発明は、電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の位置ずれ及び隙間の発生を防止して、感光体と導電性部材との間に安定した空隙を維持することにより、感光体の表面をいっそう均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させることができる導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端に設けられた空隙保持部材と、を有する導電性部材であって、該導電性部材が、該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材に面する該導電性支持体の外表面に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝と、該固定溝に入り込ませるように該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材の内表面に周方向に設けられた連続又は不連続の凸条と、を有することを特徴とする導電性部材である。
【0017】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記固定溝が、前記電気抵抗調整層及び前記空隙保持部材のうちの体積の大きい方又は熱変形量の大きい方に面する前記導電性支持体に設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記固定溝が、前記電気抵抗調整層の両端部近傍に面する前記導電性支持体に設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載された発明において、前記固定溝が、矩形状の溝、丸状の溝、楔形状の溝、円弧形状の溝、又は、ショットブラストで加工された不定形の溝であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項5に記載された発明は、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端に設けられた空隙保持部材と、を有する導電性部材であって、該導電性部材が、該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材に面する該導電性支持体の外表面に周方向に設けられた連続又は不連続の凸条と、該凸条を入り込ませるように該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材の内表面に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝と、を有することを特徴とする導電性部材である。
【0021】
請求項6に記載された発明は、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端に設けられた空隙保持部材と、を有する導電性部材であって、該導電性部材が、該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材に面する該導電性支持体の外表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の固定穴と、該固定穴に入り込ませるように該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材の内表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の突起と、を有することを特徴とする導電性部材である。
【0022】
請求項7に記載された発明は、請求項6に記載された発明において、前記固定穴が、前記電気抵抗調整層及び前記空隙保持部材のうちの体積の大きい方又は熱変形量の大きい方に前記導電性支持体に設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
請求項8に記載された発明は、請求項6又は7に記載された発明において、前記固定穴が、前記電気抵抗調整層の両端部近傍に面する前記導電性支持体に設けられていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項9に記載された発明は、請求項6〜8のいずれか1項に記載された発明において、前記2個以上の固定穴が、等間隔に設けられていることを特徴とするものである。
【0025】
請求項10に記載された発明は、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端に設けられた空隙保持部材と、を有する導電性部材であって、該導電性部材が、該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材に面する該導電性支持体の外表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の突起と、該突起を入り込ませるように該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材の内表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の固定穴と、を有することを特徴とする導電性部材である。
【0026】
請求項11に記載された発明は、請求項6〜10のいずれか1項に記載された発明において、前記空隙保持部材の一部が、前記電気抵抗調整層と高低差を有するように設けられていることを特徴とするものである。
【0027】
請求項12に記載された発明は、請求項6〜11のいずれか1項に記載された発明において、前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層と隣接する部分が、該電気抵抗調整層の高さと同一、又は、低く設けられていることを特徴とするものである。
【0028】
請求項13に記載された発明は、請求項6〜12のいずれか1項に記載された発明において、前記電気抵抗調整層と前記空隙保持部材とが、導電性部材の機能に支障を及ぼさない程度のわずかな隙間を有して、隣接されていることを特徴とするものである。
【0029】
請求項14に記載された発明は、請求項1〜13のいずれか1項に記載された発明において、前記導電性部材が、近接帯電方式用の帯電部材とされることを特徴とするものである。
【0030】
請求項15に記載された発明は、請求項14に記載の帯電部材を有することを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0031】
請求項16に記載された発明は、請求項15に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0032】
請求項1,4に記載された発明によれば、導電性部材が、電気抵抗調整層及び/又は空隙保持部材に面する導電性支持体の外表面に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝と、該固定溝に入り込ませるように電気抵抗調整層及び/又は空隙保持部材の内表面に周方向に設けられた連続又は不連続の凸条と、を有しているので、電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の位置ずれ及び隙間の発生を防止して、感光体と導電性部材との間に安定した空隙を維持することにより、感光体の表面をいっそう均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させることができる導電性部材を提供することができる。また、導電性支持体の外表面に設けられた固定溝とこれに入り込ませる電気抵抗調整層及び/又は空隙保持部材の内表面に設けられた凸条が、不連続に設けられている場合には、固定溝の切れ目でも耐トルクの機能が電気抵抗調整層に作用するので、ねじり剛性向上の効果がある。
【0033】
請求項2に記載された発明によれば、固定溝が電気抵抗調整層及び空隙保持部材のうちの体積の大きい方又は熱変形量の大きい方に面する前記導電性支持体に設けられているので、電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の位置ずれ及び隙間の発生をいっそう効果的に防止することができる。
【0034】
請求項3に記載された発明によれば、固定溝が電気抵抗調整層の両端部近傍に面する導電性支持体に設けられているので、電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の位置ずれ及び隙間の発生をいっそう効果的に防止することができる。
【0035】
請求項5に記載された発明によれば、導電性部材が、電気抵抗調整層及び/又は空隙保持部材に面する該導電性支持体の外表面に周方向に設けられた連続又は不連続の凸条と、該凸条を入り込ませるように電気抵抗調整層及び/又は空隙保持部材の内表面に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝と、を有しているので、電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の位置ずれ及び隙間の発生を防止して、感光体と導電性部材との間に安定した空隙を維持することにより、感光体の表面をいっそう均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させることができる導電性部材を提供することができる。また、凸条とこれを入りこませる電気抵抗調整層及び/又は空隙保持部材の内表面に設けられた固定溝が、不連続に設けられている場合には、固定溝の切れ目でも耐トルクの機能が導電性支持体に作用するので、ねじり剛性向上の効果がある。
【0036】
請求項6に記載された発明によれば、電気抵抗調整層及び/又は空隙保持部材に面する導電性支持体の外表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の固定穴と、該固定穴に入り込ませるように電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材の内表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の突起と、を有しているので、電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の位置ずれ及び隙間の発生を防止して、感光体と導電性部材との間に安定した空隙を維持することにより、感光体の表面をいっそう均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させることができる導電性部材を提供することができる。また、導電性支持体の外表面に設けられた固定穴の切れ目でも耐トルクの機能が電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材に作用するので、ねじり剛性向上の効果がある。
【0037】
請求項7に記載された発明によれば、固定穴が電気抵抗調整層及び空隙保持部材のうちの体積の大きい方又は熱変形量の大きい方に前記導電性支持体に設けられているので、電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の位置ずれ及び隙間の発生をいっそう効果的に防止することができる。
【0038】
請求項8に記載された発明によれば、固定穴が電気抵抗調整層の両端部近傍に面する導電性支持体に設けられているので、電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の位置ずれ及び隙間の発生をいっそう効果的に防止することができる。
【0039】
請求項9に記載された発明によれば、固定穴が等間隔に設けられているので、ねじり剛性向上の効果がいっそう向上する。
【0040】
請求項10に記載された発明によれば、導電性部材が、電気抵抗調整層及び/又は空隙保持部材に面する導電性支持体の外表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の突起と、該突起を入り込ませるように電気抵抗調整層及び/又は空隙保持部材の内表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の固定穴と、を有しているので、電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の位置ずれ及び隙間の発生を防止して、感光体と導電性部材との間に安定した空隙を維持することにより、感光体の表面をいっそう均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させることができる導電性部材を提供することができる。また、電気抵抗調整層及び/又は空隙保持部材の内表面に設けられた固定穴の切れ目でも耐トルクの機能が導電性支持体に作用するので、ねじり剛性向上の効果がある。
【0041】
請求項11に記載された発明によれば、空隙保持部材の一部が電気抵抗調整層と高低差を有するように設けられているので、導電性部材と感光体との空隙を所定の値に保つことができる。
【0042】
請求項12に記載された発明によれば、空隙保持部材の電気抵抗調整層と隣接する部分が、該電気抵抗調整層の高さと同一、又は、低く設けられているので、空隙保持部材と感光体との接触幅が低減されると共に、導電性部材と感光体との空隙が高精度に保たれる。
【0043】
請求項13に記載された発明によれば、電気抵抗調整層と空隙保持部材とが、導電性部材の機能に支障を及ぼさない程度のわずかな隙間を有して隣接されているので、電気抵抗調整層と空隙保持部材とが、加熱時に互い膨張した場合でも、予め設けてあったわずかな隙間量分については、互いに押し合わないで無負荷状態となり、そのために、電気抵抗調整層と空隙保持部材との位置ずれが生じにくくなる。また、両者が押し合った場合でも、初期で当接している場合に比べて、熱膨張で無負荷で変形している分だけ、圧接力が小さくなるので、位置ずれが生じにくくなる。
【0044】
請求項14に記載された発明によれば、導電性部材が近接帯電方式用の帯電部材とされるので、長期間にわたって優れた画像品質が得られる近接帯電方式用のプロセスカートリッジとすることができる。
【0045】
請求項15に記載された発明によれば、請求項15に記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置とするので、長期間にわたって優れた画像品質が得られる近接帯電方式用の画像形成装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0047】
図1は、本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)であって、(a)は、その縦断面図であり、(b)は、その一部拡大縦断面図であり、そして、(c)は、その一部拡大横断面図である。図2は、本発明の他の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大縦断面図である。図3は、本発明の他の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大縦断面図である。図4は、本発明の他の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大縦断面図である。図5は、本発明の他の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)であって、(a)は、その一部拡大縦断面図であり、そして、(b)は、その一部拡大横断面図である。図6は、本発明の他の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大縦断面図である。図7は、導電性部材(帯電ローラ)を感光体上に配置した状態を示す模式図である。図8は、本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)における導電性部材の除去加工を示す説明図であって、(a)は、除去加工前及び除去加工後の状態を示し、そして、(b)は、導電性部材の除去加工後の導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大断面図である。図9は、本発明の他の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)における導電性部材の除去加工を示す説明図であって、(a)は、除去加工前及び除去加工後の状態を示し、そして、(b)は、導電性部材の除去加工後の導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大断面図である。
【0048】
図1において、10は、導電性部材(導電性ローラ)である。導電性部材10は、導電性支持体1と、該導電性支持体1上に形成された電気抵抗調整層2と、該電気抵抗調整層2の両端に設けられた空隙保持部材3とを有している。そして、該導電性部材10は、該電気抵抗調整層2及び/又は該空隙保持部材3に面する該導電性支持体1の外表面に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝1aと、該固定溝1aに入り込ませるように該電気抵抗調整層2及び/又は該空隙保持部材3の内表面に周方向に設けられた連続又は不連続の凸条2bと、を有している。
【0049】
このように、該導電性部材10が、該電気抵抗調整層2及び/又は該空隙保持部材3に面する該導電性支持体1の外表面に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝1aと、該固定溝1aに入り込ませるように該電気抵抗調整層2及び/又は該空隙保持部材3の内表面に周方向に設けられた連続又は不連続の凸条2bと、を有していると、電気抵抗調整層2と空隙保持部材3との間の位置ずれ及び隙間の発生を防止して、図7に示すように、感光体4と導電性部材10との間に安定した空隙Gを維持することにより、感光体4の表面をいっそう均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させることができる導電性部材10を提供することができる。また、導電性支持体(図1における1を参照。)の外表面に設けられた固定溝(図1における1aを参照。)とこれに入り込ませる電気抵抗調整層(図1における2を参照。)及び/又は空隙保持部材(図1における3を参照。)の内表面に設けられた凸条(図1における2bを参照。)が、不連続に設けられている場合には(図示せず)、固定溝の切れ目でも耐トルクの機能が電気抵抗調整層に作用するので、ねじり剛性向上の効果がある。
【0050】
図7に示すように、本発明の導電性部材(導電性ローラ)10は、感光体4に任意の圧力で当接されて配置される。空隙保持部材3は、画像形成領域を外した非画像形成領域に形成されている。この状態で導電性部材10を帯電部材として使用する場合には、導電性部材10に電圧を印加することにより、感光体4の帯電を行うことができる。導電性部材10を現像部材又は転写部材として使用する場合にも、同様の形態で行うことができる。また、その際には、電気抵抗調整層2の幅が感光体4における感光層の幅より狭いことが好ましい。導電性部材10と感光体4との間の空隙Gは、所定の値に保つ必要があり、好ましくは、100μm以下である。空隙Gが大きくなると、感光体4の電気的劣化や異常放電が発生しやすくなるので、導電性部材10への電圧印加条件を高くする必要がある。
【0051】
本発明においては、固定溝1aは、好ましくは、電気抵抗調整層2及び空隙保持部材3のうちの体積の大きい方又は熱変形量の大きい方に面する導電性支持体1に設けられている。このように、固定溝1aが電気抵抗調整層2及び空隙保持部材3のうちの体積の大きい方又は熱変形量の大きい方に面する前記導電性支持体に設けられていると、電気抵抗調整層2と空隙保持部材3との間の位置ずれ及び隙間の発生をいっそう効果的に防止することができる。
【0052】
本発明においては、固定溝1aは、好ましくは、電気抵抗調整層2の両端部近傍に面する導電性支持体1に設けられている。このように、固定溝1aが電気抵抗調整層2の両端部近傍に面する導電性支持体1に設けられていると、電気抵抗調整層2と空隙保持部材3との間の位置ずれ及び隙間の発生をいっそう効果的に防止することができる。
【0053】
前記固定溝1aは、例えば、矩形状の溝(図1に1aを参照)、丸状の溝、楔形状の溝(図2における1aを参照)、円弧形状の溝(図3における1aを参照)、又は、ショットブラストで加工された不定形の溝である。
【0054】
本発明の導電性部材は、図4に示すように、導電性支持体1と、該導電性支持体1上に形成された電気抵抗調整層2と、該電気抵抗調整層2の両端に設けられた空隙保持部材3とを有している。そして、該導電性部材10は、該電気抵抗調整層2及び/又は該空隙保持部材3に面する該導電性支持体1の外表面に周方向に設けられた連続又は不連続の凸条1bと、該凸条1bを入り込ませるように該電気抵抗調整層2及び/又は該空隙保持部材3の内表面に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝2aと、を有している。
【0055】
このように、導電性部材が、該電気抵抗調整層2及び/又は該空隙保持部材3に面する該導電性支持体1の外表面に周方向に設けられた連続又は不連続の凸条1bと、該凸条1bを入り込ませるように該電気抵抗調整層2及び/又は該空隙保持部材3の内表面に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝2aと、を有していると、電気抵抗調整層2と空隙保持部材3との間の位置ずれ及び隙間の発生を防止して、図7に示すように、感光体4と導電性部材1との間に安定した空隙Gを維持することにより、感光体4の表面をいっそう均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させることができる導電性部材を提供することができる。また、凸条(図4における1bを参照。)とこれを入りこませる電気抵抗調整層(図4における2を参照。)及び/又は空隙保持部材(図4における3を参照。)の内表面に設けられた固定溝(図4における2aを参照。)が、不連続に設けられている場合には(図示せず)、固定溝の切れ目でも耐トルクの機能が導電性支持体に作用するので、ねじり剛性向上の効果がある。
【0056】
図5において、20は、導電性部材(導電性ローラ)である。導電性部材20は、導電性支持体11と、該導電性支持体11上に形成された電気抵抗調整層12と、該電気抵抗調整層12の両端に設けられた空隙保持部材13と、を有している。そして、該導電性部材20は、該電気抵抗調整層12及び/又は該空隙保持部材13に面する該導電性支持体11の外表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の固定穴11aと、該固定穴11aに入り込ませるように該電気抵抗調整層12及び/又は該空隙保持部材13の内表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の突起12bと、を有している。
【0057】
このように、該導電性部材20が、該電気抵抗調整層12及び/又は該空隙保持部材13に面する該導電性支持体11の外表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の固定穴11aと、該固定穴11aに入り込ませるように該電気抵抗調整層12及び/又は該空隙保持部材13の内表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の突起12bと、を有していると、電気抵抗調整層12と空隙保持部材13との間の位置ずれ及び隙間の発生を防止して、感光体(図7における4を参照。)と導電性部材20(図7における10を参照。)との間に安定した空隙(図7におけるGを参照。)を維持することにより、感光体の表面をいっそう均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させることができる導電性部材20を提供することができる。また、導電性支持体11の外表面に設けられた固定穴11aの切れ目でも耐トルクの機能が電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材に作用するので、ねじり剛性向上の効果がある。
【0058】
本発明においては、固定穴11aは、好ましくは、電気抵抗調整層12及び空隙保持部材13のうちの体積の大きい方又は熱変形量の大きい方の導電性支持体11に設けられている。このように、固定穴11aが電気抵抗調整層12及び空隙保持部材13のうちの体積の大きい方又は熱変形量の大きい方に設けられていると、電気抵抗調整層12と空隙保持部材13との間の位置ずれ及び隙間の発生をいっそう効果的に防止することができる。
【0059】
本発明においては、固定穴11aは、好ましくは、電気抵抗調整層12の両端部近傍に面する導電性支持体11に設けられている。このように、固定穴11aが電気抵抗調整層12の両端部近傍に面する導電性支持体11に設けられていると、電気抵抗調整層12と空隙保持部材13との間の位置ずれ及び隙間の発生をいっそう効果的に防止することができる。
【0060】
本発明においては、固定穴11aは、好ましくは、2個以上が等間隔に設けられている。このように、2個以上の固定穴11aが等間隔に設けられていると、ねじり剛性向上の効果がいっそう向上する。
【0061】
本発明の導電性部材は、図6に示すように、導電性支持体11と、該導電性支持体11上に形成された電気抵抗調整層12と、該電気抵抗調整層12の両端に設けられた空隙保持部材13と、を有している。そして、導電性部材は、電気抵抗調整層12及び/又は空隙保持部材13に面する導電性支持体11の外表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の突起11bと、該突起11bを入り込ませるように電気抵抗調整層12及び/又は空隙保持部材13の内表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の固定穴12aと、を有している。
【0062】
このように、導電性部材が、電気抵抗調整層12及び/又は空隙保持部材13に面する導電性支持体11の外表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の突起11bと、該突起11bを入り込ませるように電気抵抗調整層12及び/又は空隙保持部材13の内表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の固定穴12aと、を有していると、電気抵抗調整層12と空隙保持部材13との間の位置ずれ及び隙間の発生を防止して、感光体(図7における4を参照。)と導電性部材(図7における10を参照。)との間に安定した空隙(図7におけるGを参照。)を維持することにより、感光体の表面をいっそう均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させることができる導電性部材を提供することができる。また、電気抵抗調整層11及び/又は空隙保持部材13の内表面に設けられた固定穴12aの切れ目でも耐トルクの機能が導電性支持体11に作用するので、ねじり剛性向上の効果がある。
【0063】
本発明においては、空隙保持部材3,13の一部が電気抵抗調整層2,12と高低差を有するように設けられている。このように、空隙保持部材3,13の一部が電気抵抗調整層2,12と高低差を有するように設けられていると、導電性部材10,20と感光体との空隙を所定の値に保つことができる。
【0064】
本発明においては、図7に示すように、導電性部材10と感光体4との空隙Gを所定の値に保つことが好ましいのであるが、感光体4の画像領域と空隙保持部材3の当接面が同一高さである場合には、空隙保持部材3の一部の高さが電気抵抗調整層2の高さよりも高いことが必要であり、その高低差は、好ましくは、100μ以下である。
【0065】
本発明においては、空隙保持部材3,13の電気抵抗調整層2,12と隣接する部分は、該電気抵抗調整層2,12の高さと同一、又は、低く設けられている。このように、空隙保持部材3,13の電気抵抗調整層2,12と隣接する部分が、該電気抵抗調整層2,12の高さと同一、又は、低く設けられていると、空隙保持部材3,13と感光体との接触幅が低減されると共に、導電性部材10,20と感光体(図7における4を参照。)との空隙(図7におけるGを参照。)が高精度に保たれる。
【0066】
本発明においては、電気抵抗調整層2,12と空隙保持部材3,13とは、好ましくは、導電性部材10,20の機能に支障を及ぼさない程度のわずかな隙間を有して隣接されている。このように、電気抵抗調整層2,12と空隙保持部材3,13とが、導電性部材10,20の機能に支障を及ぼさない程度のわずかな隙間を有して隣接されていると、電気抵抗調整層2,12と空隙保持部材3,13とが、加熱時に互い膨張した場合でも、予め設けてあったわずかな隙間量分については、互いに押し合わないで無負荷状態となり、そのために、電気抵抗調整層2,12と空隙保持部材3,12との位置ずれが生じにくくなる。また、両者が押し合った場合でも、初期で当接している場合に比べて、熱膨張で無負荷で変形している分だけ、圧接力が小さくなるので、位置ずれが生じにくくなる。
【0067】
図8,9に示すように、本発明の導電性部材においては、切削加工等の除去加工を空隙保持部材23、続いて、電気抵抗調整層22と連続して行うことによって、電気抵抗調整層22と空隙保持部材23との高低差が形成される。その結果、電気抵抗調整層22と空隙保持部材23との高低差のばらつきを±10μ以下の高精度にすることができる。この際、空隙保持部材23の電気抵抗調整層22と隣接する部分の高さを、電気抵抗調整層22の高さと同一又は低く形成すること(いわゆる加工ニゲを形成すること)により、電気抵抗調整層22の高さが均一にされるので、感光体(図7における4を参照。)との間の空隙(図7におけるGを参照。)をより高精度にすることができる。前記加工ニゲの形状は、例えば、図8(b),図9(b)に示されるが、本発明の目的に反しないかぎり、これら以外の形状であってもかまわない。また、図8,9において、30は、切削工具である。
【0068】
空隙保持部材3,13を構成する材料は、好ましくは、体積固有抵抗が1013Ω・cm以上の絶縁性材料である。このように、空隙保持部材3,13を構成する材料が体積固有抵抗が1013Ω・cm以上の絶縁性材料であると、感光体4の基層(図示せず)とのショート電流の発生を防止することができる。
【0069】
空隙保持部材3,13を構成する材料は、絶縁性材料である他は特に限定するものではないが、好ましくは、感光体を傷つけない程度に軟らかく、また、成形加工が容易である樹脂材料である。かかる樹脂材料は、例えば、高密度ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン共重合体(AS、ABS)等の樹脂、或いは、PC、ポリウレタン、フッ素樹脂等の樹脂である。本発明における空隙保持部材3,13は、このような樹脂を射出成形、押出成形等の成形手段によりリング状に成形される。
【0070】
電気抵抗調整層2,12は、高分子型イオン導電材料が分散された熱可塑性樹脂組成物により形成されている。電気抵抗調整層2,12の体積固有抵抗は、好ましくは、106 〜109 Ωcmである。電気抵抗調整層2,12の体積固有抵抗が109 Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、また、106 Ωcmよりも体積固有抵抗が低いと、感光体全体への電圧集中によるリークが生じてしまう。
【0071】
電気抵抗調整層2,12を構成する材料は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン共重合体(AS、ABS)等の樹脂、或いは、PC、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂があげられる。これらの樹脂は、加工性が良いので好ましい。かかる樹脂に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミドを含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドは、イオン導電性の高分子材料であるので、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。したがって、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う電気抵抗値のばらつきが生じない。また、ポリエーテルエステルアミドは、高分子材料であるので、ブリードアウトが生じ難い。電気抵抗値を所望の値にするためには、それらの配合量は、好ましくは、熱可塑性樹脂30〜70重量%、及び、高分子型イオン導電剤70〜30重量%である。
【0072】
前記電気抵抗調整層2,12を構成する樹脂組成物は、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に調整できる。前記電気抵抗調整層2,12を導電性支持体1,11の上に形成するには、前記半導電性樹脂組成物を導電性支持体1の上に押出成形、射出成形等の手段により被覆することによって行う。また、任意の段階で、表面に切削加工、又は、研削加工を施して、必要とされる表面精度を得ることができる。
【0073】
導電性支持体1,11上に電気抵抗調整層2,12のみを形成して導電性ローラ10,20を構成すると、電気抵抗調整層2,12にトナー等が固着して性能低下する場合がある。このような不具合は、電気抵抗調整層2,12に表面層(図示せず)を形成することで、無くすことができる。本発明においては、表面層の体積固有抵抗は、好ましくは、電気抵抗調整層2,12の体積固有抵抗より大きくされている。このように、表面層の体積固有抵抗が電気抵抗調整層2,12の体積固有抵抗より大きくされていると、感光体欠陥部への電圧集中及び異常放電の発生を防止することができる。ただし、表面層の電気抵抗値を高くしすぎると帯電能力や転写能力が不足してしまうので、表面層と電気抵抗調整層2,12との電気抵抗値の差を103 以下にすることが好ましい。表面層を形成する材料は、好ましくは、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル等の樹脂である。これらの樹脂は、非粘着性に優れているので、トナーの固着防止の面で好ましい。また、かかる樹脂は、電気的に絶縁性であるので、樹脂に対して各種導電材料を分散することによって表面層の電気抵抗を調整することができる。表面層の電気抵抗調整層2,12上への形成は、上記表面層を構成する樹脂材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、この塗料をスプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の手段によって行う。表面層の膜厚は、好ましくは、10〜30μmである。
【0074】
本発明の導電性部材10,20は、好ましくは、近接帯電方式用の帯電部材とされる。このように、導電性部材10,20が近接帯電方式用の帯電部材とされると、長期間にわたって優れた画像品質が得られる近接帯電方式用のプロセスカートリッジ(図10における110を参照。)とすることができる。
【0075】
本発明においては、前記プロセスカートリッジは、これを有する画像形成装置とされる。このように、前記プロセスカートリッジを有する画像形成装置とすると、長期間にわたって優れた画像品質が得られる近接帯電方式用の画像形成装置とすることができる。
【0076】
本実施の形態においては、導電性部材10,20を具体化した帯電ローラについて主として説明したが、本発明における導電性部材10,20は、本発明の目的に反しない限り、ブレードのような回転しないものであってもかまわない。また、本発明における導電性部材10,20は、現像部材又は転写部材としてもかまわない。
【0077】
(実施例1)
ABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%を配合して樹脂組成物(体積固有抵抗:2×108 Ωcm)とし、この樹脂組成物を、外表面の周方向に設けられた長さ:1mm、深さ1mmの断面矩形状の連続した固定溝を有するステンレスからなる外径8mmの導電性支持体(芯軸)の外表面に、射出成形により被覆して、電気抵抗調整層を形成した。そして、この電気抵抗調整層の両端部に高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックPP HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材を挿入締結し、120℃設定の炉で1時間加熱を実施した後、切削によって前記空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mmとすると共に、前記電気抵抗調整層の外径を12.00mmとした。次いで、この電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、カーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる樹脂組成物により膜厚約10μmの表面層を形成して導電性部材を得た。[図1を参照。]
【0078】
(実施例2)
ABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%を配合して樹脂組成物(体積固有抵抗:2×108 Ωcm)とし、この樹脂組成物を、外表面の周方向に設けられた外表面の周方向に180°の間隔をあけて設けられた直径:2mm、深さ1mmの2個の固定穴を有するステンレスからなる外径8mmの導電性支持体(芯軸)の外表面に、射出成形により被覆して、電気抵抗調整層を形成した。そして、この電気抵抗調整層の両端部に高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックPP HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材を挿入締結し、120℃設定の炉で1時間加熱を実施した後、切削によって前記空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mmとすると共に、前記電気抵抗調整層の外径を12.00mmとした。次いで抵抗調整層の表面に、アクリルシリコン樹脂(3000VH−P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤、及び、カーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる樹脂組成物(表面抵抗:2×109 Ω)を、膜厚約10μの膜厚に塗布し、これを80℃で1時間加熱して表面層を形成することにより、導電性部材を得た。[図5を参照。]
【0079】
(実施例3)
ABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%を配合して樹脂組成物(体積固有抵抗:2×108 Ωcm)とし、この樹脂組成物を、外表面の周方向に設けられた長さ:1mm、深さ1mmの断面楔形状の連続した固定溝を有するステンレスからなる外径8mmの導電性支持体(芯軸)外表面に、射出成形により被覆して、電気抵抗調整層を形成した。そして、この電気抵抗調整層の両端部に高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックPP HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材を挿入締結し、120℃設定の炉で1時間加熱を実施した後、切削によって前記空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mmとすると共に、前記電気抵抗調整層の外径を12.00mmとした。次いで、この電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、カーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる樹脂組成物により膜厚約10μmの表面層を形成して導電性部材を得た。この際、電気抵抗調整層と空隙保持部材とに予め両端とも0.2mmの隙間を設けた。[図2を参照。]
【0080】
(比較例1)
ABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%を配合して樹脂組成物(体積固有抵抗:2×108 Ωcm)とし、この樹脂組成物をステンレスからなる外径8mmの導電性支持体(芯軸)の外表面に射出成形により被覆して、電気抵抗調整層を形成した。そして、この電気抵抗調整層の表面に、フッ素樹脂(ルミフロンLF−600、旭硝子社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる樹脂組成物(表面抵抗:2×1010Ω)により膜厚約10μの表面層を形成した。次いで、この両端部に、ポリアミド樹脂(ノバミッド1010C2、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)からなる外径12.12mmのリング状の空隙保持部材を挿入接着して導電性部材を得た。
【0081】
以上、実施例1〜3及び比較例1で得た導電性部材を100℃において1時間放置して、電気抵抗調整層と空隙保持部材との間の隙間を光学顕微鏡で測定した。そして、実施例1〜3及び比較例1で得た導電性部材を、帯電部材として、画像形成装置(図10を参照。)に搭載して、空隙保持部材の形状及び位置の安定性について目視によって評価すると共に、画像についても評価を行った。前記「空隙保持部材の形状及び位置の安定性」の評価基準は、○:空隙保持部材の形状及び位置に変化がないもの、及び、×:空隙保持部材の形状及び位置に変化があるもの、とした。評価結果は、次の表1に示される。
【0082】
【表1】

【0083】
表1から次のことがわかる。即ち、導電性部材を100℃において1時間放置したところ、実施例1、2で得た導電性部材では、電気抵抗調整層と空隙保持部材との隙間の発生が確認できなかったが、比較例1で得た導電性部材では、0.3mm/0.2mmの隙間の発生が確認された。かかる隙間は、電気抵抗調整層の熱膨張による空隙保持部材との接合面に作用する面圧により、空隙保持部材の圧入位置が保持されずにずれてしまい、冷却後の熱膨張の戻り分が隙間となったためと考えられる。通紙テストにおいては、実施例1〜3で得た導電性部材では、空隙保持部材の形状に変化がないと共に、その位置も定位置に保持されており、そして、画像に異常が認められなかったが、比較例1で得た導電性部材では、約85,000枚で空隙保持部材の片方が空回りして芯金上に保持されなくなった。かかる空隙保持部材の片方が導電性支持体(芯金)上に保持されなくなった原因は、加熱時に空隙保持部材の位置がずれたために、空隙保持部材の耐トルクが減少し、経時的に強度劣化(疲労)したことによるものと考えられる。
【0084】
また、実施例1で得た導電性部材における電気抵抗調整層のトルクを測定したところ、そのトルク値は6Nmであったが、そして、実施例2で得た導電性部材における電気抵抗調整層のトルク値は11Nmであった。これらのことから、実施例2で得た導電性部材においては、電気抵抗調整層のトルクが実施例1より増加していることが確認された。実施例2で得た導電性部材における電気抵抗調整層のトルク値が11Nmとなった原因は、導電性支持体の表面に180°対向して設けられた2つの固定穴にそれぞれ入り込んだ電気抵抗調整層の内表面に設けられた2つ突起がアンカーとなったので、強度向上につながったものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)であって、(a)は、その縦断面図であり、(b)は、その一部拡大縦断面図であり、そして、(c)は、その一部拡大横断面図である。
【図2】本発明の他の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大縦断面図である。
【図3】本発明の他の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大縦断面図である。
【図4】本発明の他の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大縦断面図である。
【図5】本発明の他の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)であって、(a)は、その一部拡大縦断面図であり、そして、(b)は、その一部拡大横断面図である。
【図6】本発明の他の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大縦断面図である。
【図7】導電性部材(帯電ローラ)を感光体上に配置した状態を示す模式図である。
【図8】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)における導電性部材の除去加工を示す説明図であって、(a)は、除去加工前及び除去加工後の状態を示し、そして、(b)は、導電性部材の除去加工後の導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大断面図である。
【図9】本発明の他の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)における導電性部材の除去加工を示す説明図であって、(a)は、除去加工前及び除去加工後の状態を示し、そして、(b)は、導電性部材の除去加工後の導電性部材(帯電ローラ)の一部拡大断面図である。
【図10】従来の帯電ローラを用いた画像形成装置の説明図である。
【符号の説明】
【0086】
1,11,21 導電性支持体
1a,2a 固定溝
1b,2b 凸条
2,12,22 電気抵抗調整層
3,13,23 空隙保持部
4 感光体
10 導電性部材(帯電ローラ)
11a,12a 固定穴
11b,12b 突起
21a 固定溝
22b 凸条
G 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端に設けられた空隙保持部材と、を有する導電性部材であって、該導電性部材が、該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材に面する該導電性支持体の外表面に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝と、該固定溝に入り込ませるように該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材の内表面に周方向に設けられた連続又は不連続の凸条と、を有することを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記固定溝が、前記電気抵抗調整層及び前記空隙保持部材のうちの体積の大きい方又は熱変形量の大きい方に面する前記導電性支持体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記固定溝が、前記電気抵抗調整層の両端部近傍に面する前記導電性支持体に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記固定溝が、矩形状の溝、丸状の溝、楔形状の溝、円弧形状の溝、又は、ショットブラストで加工された不定形の溝であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項5】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端に設けられた空隙保持部材と、を有する導電性部材であって、該導電性部材が、該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材に面する該導電性支持体の外表面に周方向に設けられた連続又は不連続の凸条と、該凸条を入り込ませるように該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材の内表面に周方向に設けられた連続又は不連続の固定溝と、を有することを特徴とする導電性部材。
【請求項6】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端に設けられた空隙保持部材と、を有する導電性部材であって、該導電性部材が、該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材に面する該導電性支持体の外表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の固定穴と、該固定穴に入り込ませるように該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材の内表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の突起と、を有することを特徴とする導電性部材。
【請求項7】
前記固定穴が、前記電気抵抗調整層及び前記空隙保持部材のうちの体積の大きい方又は熱変形量の大きい方に前記導電性支持体に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記固定穴が、前記電気抵抗調整層の両端部近傍に面する前記導電性支持体に設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の導電性部材。
【請求項9】
前記2個以上の固定穴が、等間隔に設けられていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項10】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端に設けられた空隙保持部材と、を有する導電性部材であって、該導電性部材が、該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材に面する該導電性支持体の外表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の突起と、該突起を入り込ませるように該電気抵抗調整層及び/又は該空隙保持部材の内表面に周方向に設けられた1個又は2個以上の固定穴と、を有することを特徴とする導電性部材。
【請求項11】
前記空隙保持部材の一部が、前記電気抵抗調整層と高低差を有するように設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項12】
前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層と隣接する部分が、該電気抵抗調整層の高さと同一、又は、低く設けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項13】
前記電気抵抗調整層と前記空隙保持部材とが、導電性部材の機能に支障を及ぼさない程度のわずかな隙間を有して、隣接されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項14】
前記導電性部材が、近接帯電方式用の帯電部材とされることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項15】
請求項14に記載の帯電部材を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項16】
請求項15に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−78967(P2006−78967A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265504(P2004−265504)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】