導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置
【課題】小型で衝撃に強く、軽量化、静音化、省電力化が実現できる導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する
【解決手段】導電性高分子膜1の外側面に複数の変位機構を設けて、導電性高分子膜1に電位を与えることにより、酸化還元反応により収縮させることにより、変位機構が導電性高分子膜1の膜厚方向に、伸張するように構成している。その結果、間隙を有して相対的に駆動する固体面の間に挿入して使用し、膜厚方向に伸長することによって、駆動する固体面にブレーキとして作用させる。
【解決手段】導電性高分子膜1の外側面に複数の変位機構を設けて、導電性高分子膜1に電位を与えることにより、酸化還元反応により収縮させることにより、変位機構が導電性高分子膜1の膜厚方向に、伸張するように構成している。その結果、間隙を有して相対的に駆動する固体面の間に挿入して使用し、膜厚方向に伸長することによって、駆動する固体面にブレーキとして作用させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報化社会において、モバイル機器は進歩してきており、特に携帯電話などのカメラ機能を有するモバイル機器は、数多く普及してきている。モバイル機器は、小型、軽量、及び、静音であることを筆頭に、省電力駆動が必要条件であり、落下衝撃等の耐久性にも高い性能が求められている。なお、カメラ機能の実現には、光学部品としてレンズが欠かせない。オートフォーカス、あるいはズーム機能を有するカメラは、複数のレンズからなる光学系全体と、フォーカス用レンズ単体(又はレンズ群)フォルダ、あるいはズーム用レンズ単体(又はレンズ群)フォルダとを光軸方向に移動する。カメラは、前記レンズフォルダを保持及び駆動するための装置が設けられている。
【0003】
しかしながら、前記レンズは落下衝撃に対して非常に弱い材料であり、また合焦のために高精度の位置決めが求められる。このため、モバイル機器の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置は、耐衝撃吸収性を有する精密駆動性能が求められる。また、小型、軽量、静音、省電力であることが導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置に求められる。
【0004】
図13に、従来のレンズフォルダの駆動装置の一例を示す。従来の駆動装置は、ステッピングモータ5013により、ウォームギア5014を回転させて、ウォームギア5014に係合した係合部材5015を介してレンズ5006の駆動と停止をさせ、ステッピングモータ5013により、モータ自身にレンズ5006のホールド機能を持たせている。あるいは、従来の別の駆動装置としては、伝達系としてバックラッシュが防止できかつ非通電時に動かないウォームギア5014を用いて、高精度の位置決めを実現している(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、図14に示すようにボイスコイル5104を用いてレンズ鏡筒5103を駆動し、高速の駆動が可能なものがある(例えば特許文献2参照)。
【0006】
また、図15に示すように、ドラム5219に、電気活性ポリマー5230により駆動するアクチュエータ5223によって、摩擦材5221が設けられたブレーキシュー5220が、ドラム5219に押圧されてブレーキ機能が実行されるものがある(例えば特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−045068号公報
【特許文献2】特開2004−280031号公報
【特許文献3】特許第4068013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した構成の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置にも課題がある。
【0009】
特許文献1は、ウォームギア5014を用いたレンズ駆動であるが、ウォームギア5014が大きいので装置が大型化し、軽量化も困難であるという問題があった。
【0010】
特許文献2は、ボイスコイル5104を用いたレンズ駆動によって、レンズ鏡筒5103をバネ部材を用いて支持する構造であるので、小型、静音が図れるが、その姿勢差によりレンズの移動距離が変化してしまい、制御が困難となる。また、レンズの保持には、ボイスコイル5104に連続通電が必要で、消費電力が高いという問題があった。レンズ駆動装置としては、小型化、静音化、駆動速度の点においてボイスコイルが注目されている。レンズ駆動装置の保持装置は、高速駆動の障害にならず、外力による衝撃を吸収でき、小型化が可能な、例えば自転車のシューブレーキのような構成が望まれるが、シューを駆動させるメカニズムが別途必要である課題は、上述の特許文献1と同様の大型化の課題を有する。
【0011】
特許文献3は、電気活性ポリマー5230により、摩擦材52221が設けられたブレーキシュー5220を駆動して、ブレーキ機能を働かせるものである。このため、静音化が図られるが、ブレーキシュー5220を移動させるには、電気活性ポリマー5230には大きな体積変化が必要条件となる。また、そのためには、電気活性ポリマー5230の長手方向に十分な大きさが必要であり、ドラム5219内に納めるには寸法的に限界があり、逆に、電気活性ポリマー5230に大きな体積変化を起こさせるために数kV以上の高電圧を掛けることが必要となり、家電機器としての小型化又は安全性確保には不適切である。
【0012】
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、小型で衝撃に強く、軽量化、静音化、省電力化が実現できる導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであり、以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、第1導電性高分子膜と第2導電性高分子膜とが第1電解質托体層を介して接続されるように面対向させ、前記第1導電性高分子膜の外側面に、第1ブレーキ固体面に対向しかつ前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮駆動可能な第1変位機構を設けて、
前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えて前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮させることにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記第1ブレーキ固体面に接離し、ブレーキ動作又はブレーキ動作解除を行なうことを特徴とする導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
よって、本発明によれば、例えば間隙を有して相対的に駆動する第1ブレーキ固体面と第2ブレーキ固体面との間に挿入して使用し、電荷を加えて導電性高分子膜の膜厚方向に前記第1変位機構が収縮及び伸張することによって、駆動するブレーキ固体面にブレーキとして作用させる導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置に関するもので、導電性高分子膜が薄いことから、小型で衝撃に強く、軽量化、静音化、省電力化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細を説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
【0016】
本発明の第1態様によれば、第1導電性高分子膜と第2導電性高分子膜とが第1電解質托体層を介して接続されるように面対向させ、前記第1導電性高分子膜の外側面に、第1ブレーキ固体面に対向しかつ前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮駆動可能な第1変位機構を設けて、
前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えて前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮させることにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記第1ブレーキ固体面に接離し、ブレーキ動作又はブレーキ動作解除を行なうことを特徴とする導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
【0017】
本発明の第2態様によれば、前記第1変位機構は、一端が前記第1導電性高分子膜の溝部に嵌め込まれた第1アーム部と、前記第1アーム部に対して屈曲して連結された第2アーム部とを有する板状のアーム部材と、前記第1導電性高分子膜の前記外側面に摺動可能に載置され、一端部に前記アーム部材の前記第1アーム部が常時接触し、接触部分が支点となって前記アーム部材が支点回りに回動して、前記第2アーム部の先端が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に進退して、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の前記膜厚方向に伸縮する、第1の態様に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
このような構成によれば、第1導電性高分子膜の収縮方向及び膨張方向の双方向において第1変位機構が収縮及び伸張する構成により、小型で衝撃に強く、軽量化、静音化が可能な導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を得ることができる。
【0018】
本発明の第3態様によれば、前記第2導電性高分子膜において、前記第1導電性高分子膜とは反対側に第2電解質托体層を介して接続される第3導電性高分子膜を有し、前記第3導電性高分子膜の外側面に、第2ブレーキ固体面に対向しかつ前記第3導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮駆動可能な第2変位機構を設けて、
前記第3導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第3導電性高分子膜が膨張或いは収縮することにより、前記第2変位機構が前記第3導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記第2ブレーキ固体面に接離し、ブレーキ動作又はブレーキ動作解除を行なう、第1又は2の態様に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
このような構成によれば、第1及び第3導電性高分子膜の収縮方向及び膨張方向の双方向において変位機構が収縮及び伸張する構成により、大きな変位量で駆動が可能な導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を得ることができる。
【0019】
本発明の第4態様によれば、前記第1変位機構と前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の外側に設けられて、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜と前記第1電解質托体層と前記第1変位機構とを包含する、帯状ケーシングを備える、第1又は2の態様に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
【0020】
本発明の第5態様によれば、前記第1変位機構と前記第1導電性高分子膜と前記第2変位機構と前記第3導電性高分子膜の外側に設けられて、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜と前記第3導電性高分子膜と前記第1電解質托体層と前記第2電解質托体層と前記第1変位機構と前記第2変位機構とを包含する、帯状ケーシングを備える、第3の態様に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
このような構成によれば、帯状ケーシングによる構成により、高いブレーキ性能が実現可能な導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を得ることができる。
【0021】
本発明の第6態様によれば、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第1導電性高分子膜が膨張することにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の前記膜厚方向に収縮する、第1,2,及び4の態様のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
【0022】
本発明の第7態様によれば、前記第3導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第3導電性高分子膜が膨張することにより、前記第2変位機構が前記第3導電性高分子膜の前記膜厚方向に収縮する、第3又は5の態様に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
【0023】
本発明の第8態様によれば、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差が無い状態で前記帯状ケーシングを介して前記第1変位機構は前記第1ブレーキ固体面に接触してブレーキ動作を行なう一方、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮することにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に収縮して前記第1ブレーキ固体面から離れてブレーキ動作解除を行なう、第1,2,4,及び6の態様のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
このような構成によれば、ブレーキが機能している際に電位差を与える必要がない構成により、省電力な導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を得ることができる。
【0024】
本発明の第9態様によれば、前記変位機構を複数個、環状に配置されて、前記酸化還元反応により前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮することにより、前記全ての変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記ブレーキ固体面に接離する、第1〜8の態様のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
このような構成によれば、複数の前記変位機構の全てが、前記ブレーキ固体面にほぼ同時にかつほぼ均一に接触押圧することが可能となるブレーキ機能が実現できる構成により、効果的な導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を得ることができる。
【0025】
本発明の第10態様によれば、前記第1導電性高分子膜及び前記第2導電性高分子膜の両端部に張力を付与して前記第1導電性高分子膜及び前記第2導電性高分子膜を展張状態に保持するバネをさらに備える、第1〜9の態様のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
【0026】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1A〜図3Cは、本発明における第1実施形態の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置における変位機構6の図である。図1Aは、第1実施形態の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を構成する変位機構6が3個配置された状態の斜視図である。図1Bは、図1Aの3個の変位機構6のうちの1個の変位機構6などを分解した状態を示す斜視図である。
【0028】
図1Aにおいて、第1及び第2導電性高分子膜1,2は、それぞれ、酸化還元反応に伴って膨張収縮変形する導電性高分子より構成している。各導電性高分子の形状は、矩形、例えば長方形の伸縮体である。第1及び第2導電性高分子膜1,2を構成する導電性高分子は、ポリピロール、又は、ポリアニリン等が利用可能であるが、ポリピロールは変位量が大きい点で望ましい。ポリピロールの導電性高分子は、1.5V〜5.0Vの比較的低電圧で筋肉に匹敵するような応力を発生することから、人工筋肉としての実用化が期待されている。
【0029】
第1及び第2導電性高分子膜1,2の厚みは、それぞれ5μmから30μm程度であるのが望ましい。材質にも大きく依存するが、5μmより薄いと強度的に弱く、30μmより厚いと内部までイオンの出入りが困難となり、発生変位量が小さくなり、同時に動作速度も低下する。
【0030】
そして、第1導電性高分子膜1と第2導電性高分子膜2とが、ゲル状のイオン液体である電解質托体層(第1電解質托体層)3を介して接続されるように、面対向して配置されて、導電性高分子アクチュエータ20を構成している。なお、液体若しくはゲル状の電解質托体層3としては、室温で溶融している塩として定義されるイオン液体が使用される。イオン液体は、新たな機能性液体として注目されているが、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム又はビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが知られており、陽イオンと陰イオンとの電荷が非局在化することで、両者間のクーロン力が小さく、室温において液体状態となり得る。イオン液体は、蒸気圧が低く蒸発損失がほとんど無く、難燃性であり、熱・酸化安定性に優れるものが多く、潤滑性能も高い。このイオン液体を絶縁シートに塗布して、電解質托体層3として使用する、或いは、イオン液体自身をゲル化することによって、電解質托体層3を形成させる。電解質托体層3の厚みは、5μmから50μm程度が望ましい。電解質托体層3の厚みが50μmより厚いと導電性高分子膜1と2が離れて、導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置全体が必要以上に、厚くなる。逆に、電解質托体層3の厚みが5μmより薄過ぎると、電解質托体層3中に含まれるイオンが少なくなり、駆動力あるいは変位量が低下する。ここで、電解質托体層3はゲル状であるので、接する導電性高分子膜1,2とは接合しておらず、互いに摺動することが可能となっている。
【0031】
本第1実施形態の実施例としては、厚さ15μmの第1及び第2導電性高分子膜1,2を使用した。ここで、第1及び第2導電性高分子膜1,2の他の寸法は、共に長さは37mm、幅は5mmのものを一例として使用した。また、厚さ30μmの電解質托体層3を使用した。
【0032】
複数の(例えば図1Aでは3個の)変位機構6が、第1導電性高分子膜1の外側面1aに設けて、全ての変位機構6,…,6が一斉にほぼ同時に駆動可能としている。変位機構6は、アーム部材の一例としての、一対の変位アーム部材4と、ベース部材の一例としての変位ベース部材5とで構成している。変位アーム部材4と変位ベース部材5とは、互いに接触しても弾性変形又は塑性変形せず、駆動力を確実に発生させる程度に剛性を有するものである。変位アーム部材4及び変位ベース部材5の材質としては、耐腐食性が条件である。そこで、これらの材質としては、電解質托体層3を構成するイオン液体はアクリル系を溶融するので、軽量なアクリル樹脂は使用できない。また、金属も耐腐食性の観点から好ましくない。そこで、変位アーム部材4及び変位ベース部材5の材質としては、一例として、腐食性も考慮し、また軽量で加工し易い材質として、チーク材がある。摩擦係数が低いことも望ましいので、テフロン(登録商標)も使用できるが、この場合には、簡単な形状である、変位アーム部材4又は変位ベース部材5を選定することが好ましい。なお、加工性やコストの観点で、やむを得ず金属を使用する場合には、変位アーム部材4は板金加工が有望で、図1Dなどの形状が適している。
【0033】
変位アーム部材4は、大略90度に屈曲したL字形状の板部材をしており、根元側の短い板状の第1アーム部4aと先端側の長い板状の第2アーム部4bとを有する。
【0034】
ここでは、変位ベース部材5の両端に、変位アーム部材4,4を設けたものを一例として使用している。各変位アーム部材4は前記したようにL字形状をしており、根元側の短い第1アーム部4aと先端側の長い第2アーム部4bとを有する、所謂、テコの原理で根元側の第1アーム部4aの変位量を先端側の第2アーム部4bでの大きな変位量に拡大可能なものである。
【0035】
変位ベース部材5は、長手方向の両端部5a,5bを、上下に傾斜面を有して中央部が湾曲して突出した凸部で構成している板部材である。
【0036】
図1A及び図1Bに示すように、第1アーム部4aの先端が、第1導電性高分子膜1に接合されている。ここでは、導電性高分子膜1にその幅方向沿いに溝部1cを設け、溝部1cにアーム部4aの先端(下端)の一部が埋め込まれた(例えば、嵌め込まれた)構成としているが、さらに、柔軟な接着材料で接合することも可能である。柔軟な接着剤とは、例えばエポキシ樹脂系の接着剤が使用できる。
【0037】
ここで、各変位アーム部材4は、先端側の長い第2アーム部4bが浮いた状態で第1導電性高分子膜1に接合しているが、根元側の短い第1アーム部4aを接合する第1導電性高分子膜1上の溝部1cが第1導電性高分子膜1の外側面1aに対して斜めに設けることで、前記した接合を実現可能としている。
【0038】
また、一対のアーム部材4,4が嵌め込まれる導電性高分子膜1の溝部1c,1cの位置は、変位ベース部材5の両端部5a,5bの凸部先端の下方で、凸部先端よりもやや内向き(変位ベース部材5の中心部5c側)に入り込んだ位置となっている。よって、溝部1c,1cに一対の第1アーム部4a,4aの下端がそれぞれ嵌め込まれると、図1A及び図1Bに示すように、第2アーム部4b,4bが、それぞれの先端から第1アーム部4a,4aとの連結部に向けて第1導電性高分子膜1側に傾斜した傾斜面をそれぞれ形成するようになる。
【0039】
変位ベース部材5は、第1導電性高分子膜1上に載置され、接合はしていない。そして、一対の変位アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端の近傍部分が、変位ベース部材5の両端部5a,5bで接している。変位ベース5部材は、例えば摩擦抵抗の少なく、耐腐食性の高い材料として、テフロン(登録商標)を使用することが望ましい。
【0040】
このように構成しているため、第1導電性高分子膜1が収縮する場合(図1Aの矢印100の方向に移動する場合)には、第1導電性高分子膜1と変位ベース部材5との接触面は互いに摺動するが、各変位アーム部材4のアーム部4aの先端は、第1導電性高分子膜1の溝部1cに嵌め込まれているため、第1導電性高分子膜1により移動する。すなわち、第1導電性高分子膜1の収縮(図1Aの矢印100の方向の移動)に伴い、溝部1cと溝部1cとの間隔が、変位ベース部材5の両端部5a、5b間の間隔よりも小さくなる。すると、変位アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端近傍の部分と、変位ベース部材5の両端部5a、5bとの接触部分が支点となり、この支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端が互いに近づく方向に回動する。言い換えれば、支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4,4の第2アーム部4b,4bの対向する先端が互いに遠ざかる方向(図1Aの矢印101の方向)に回動する。逆に、第1導電性高分子膜1の伸張(図1Aの矢印100の方向とは逆方向の移動)に伴い、溝部1cと溝部1cとの間隔が、収縮していた場合の間隔よりも大きくなる。すると、変位アーム部材4,4のアーム部4a,4aの先端近傍の部分と、変位ベース部材5の両端部5a、5bとの接触部分が支点となり、この支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端が互いに遠ざかる方向に回動する。言い換えれば、支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4,4の第2アーム部4b,4bの対向する先端が互いに近づく方向(図1Aの矢印101とは逆方向)に回動する。
【0041】
(導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変形例)
図1Cは、前記第1実施形態の変形例として、第1及び第2導電性高分子膜1,2の長手方向の両端部に、テンション用支持面40,40に一端が接続されたテンション用バネ41,41の他端を連結し、テンション用バネ41,41で第1及び第2導電性高分子膜1,2の両端部をテンション用支持面40,40に向けて引っ張ることにより、第1及び第2導電性高分子膜1,2を展張状態に保持するようにしたものである。
【0042】
なお、各テンション用支持面40は、実際には、前記導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置を搭載する機器のケースであってもよい。或いは、第1及び第2導電性高分子膜1,2を環状に配置した場合には、テンション用支持面40,40が同一の部材の表裏面で構成したり、又は、テンション用支持面40を配置することなく、1つ又は複数のテンション用バネ41の一端を第1及び第2導電性高分子膜1,2の一方の端部に連結し、前記1つ又は複数のテンション用バネ41の他端を第1及び第2導電性高分子膜1,2の他方の端部に連結するようにしてもよい。テンション用バネ41により導電性高分子膜1,2を引っ張ることにより、変位機構6を確実に動作させることが可能である。テンション用バネが無い場合には、導電性高分子膜1,2がたるんだ状況になる場合があり、導電性高分子膜1,2への電圧印加によって生じる収縮分が、導電性高分子膜1,2のたるんだ分に吸収されてしまい、変位機構6を動作させることができないことがある。テンション用バネ41には、そのような状態を防止して変位機構6を確実に動作させることができるといった大きな効果がある。
【0043】
(変位機構の変形例)
前記変位機構6は、前記した構成に限定されるものではなく、下記のように、種々の態様で実施できる。
【0044】
例えば、図1Dに示すように、各変位アーム部材4は、大略90度に屈曲したL字形状の板部材に限定されるものではなく、屈曲部分が湾曲した変位アーム部材4Dでもよい。この変形例では、変位ベース部材5の両端部5a,5bの凸部の曲率が所定の値に形成し難い場合に、変位アーム部材4Dを湾曲した形状とすることで、スムーズな駆動を発揮させることができる。
【0045】
また、図1Eに示すように、各変位アーム部材4の第1アーム部4aと第2アーム部4bとの屈曲角度は90度に限らず、鋭角でもよい。この変形例では、図1Cと異なり、変位アーム部材4の屈曲部が、直角に近い角度ではなく、鋭角になっており、変位ベース部材5の端部5a,5bと第1導電性高分子膜1の外側面1aとの間に、変位アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端が第1導電性高分子膜1の外側面1aに対して鋭角に挿入されて溝部1c,1c内に嵌め込まれるので、変位アーム部材4,4が第1導電性高分子膜1により確実に保持される。
【0046】
また、図1Fに示すように、変位アーム部材4F,4Fの第1アーム部4a,4aに対する第2アーム部4b,4bの屈曲方向は、第2アーム部4b,4bの先端同士が互いに対向する方向ではなく、第2アーム部4b,4bの先端同士が相反する方向に向けられ、かつ、第1アーム部4a,4aに対して第2アーム部4b,4bが鈍角に屈曲していてもよい。この場合、第1アーム部4a,4a同士の間隔を小さくするため、変位ベース部材5を図1Aの場合よりも短くしている。この例では、第1導電性高分子膜1が収縮する場合ではなく、第1導電性高分子膜1が伸張する場合(図1Fの矢印102の方向に移動する場合)に、溝部1cと溝部1cとの間隔が、変位ベース部材5の両端部5a、5b間の間隔よりも大きくなる。すると、変位アーム部材4F,4Fの第1アーム部4a,4aの先端付近の部分と、変位ベース部材5Fの両端部5a、5bとの接触部分を支点となり、この支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4F,4Fの第1アーム部4a,4aの先端が互いに遠ざかる方向(図1Fの矢印103の方向)に回動する。逆に、第1導電性高分子膜1が収縮する場合(図1Fの矢印102の方向とは逆方向に移動する場合)には、溝部1cと溝部1cとの間隔が、伸張していた場合の間隔よりも小さくなる。すると、変位アーム部材4F,4Fの第1アーム部4a,4aの先端付近の部分と、変位ベース部材5Fの両端部5a、5bとの接触部分を支点となり、この支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4F,4Fの第1アーム部4a,4aの先端が互いに近づく方向(図1Fの矢印103の方向とは逆方向)に回動する。
【0047】
この図1Fの変形例では、図1Eの変形例とは逆に、各変位アーム部材4Fの屈曲が鈍角になっており、変位ベース部材5の、第1導電性高分子膜1の長手方向と同方向の長さを短くすることができる。また、第1導電性高分子膜1の伸縮と各変位アーム部材4Fの上下の動きに関して、他の変位アーム部材4とは逆方向の動作を行わせることができる。
【0048】
また、図1Gに示すように、変位機構6は、2本の変位アーム部材4,4で構成するものに限らず、1本の変位アーム部材4Gで構成するようにしてもよい。この場合、変位ベース部材5Gの一方の端部5bは前記変位ベース部材5と同じであるが、他方の端部の下面には、第1導電性高分子膜1の外側面1aの係止溝1dに係止する係止突起5dを有して、変位ベース部材5Gが第1導電性高分子膜1の外側面1aに係止されている。これにより、第1導電性高分子膜1が収縮する場合(図1Gの矢印100の方向に移動する場合)に、溝部1cと係止溝1dとの間隔が、変位ベース部材5Gの一端部5bと係止突起5dと間の間隔よりも小さくなる。すると、変位アーム部材4Gの第1アーム部4aの先端付近の部分と、変位ベース部材5Gの一端部5bとの接触部分を支点となり、この支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4Gの第1アーム部4aの先端が係止突起5d側に向く方向(図1Fの矢印101の方向)に時計回りに回動する。逆に、第1導電性高分子膜1が伸張する場合(図1Gの矢印100の方向とは逆方向に移動する場合)に、溝部1cと係止溝1dとの間隔が、収縮していた場合の間隔よりも大きくなる。すると、変位アーム部材4Gの第1アーム部4aの先端付近の部分と、変位ベース部材5Gの一端部5bとの接触部分を支点となり、この支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4Gの第1アーム部4aの先端が係止突起5d側から離れる方向(図1Fの矢印101の方向とは逆方向)に反時計回りに回動する。
【0049】
この図1Gの変形例では、変位アーム部材4Gが、片側だけの場合であり、変位ベース部材5Gを第1導電性高分子膜1に係止突起5dと係止溝部1dとで固定する必要があるが、変位アーム部材4Gは1個のみで駆動することができて、構造が簡単なものとなる。また、変位アーム部材4Gの第2アーム部4bの長さを他のアーム部材4の第2アーム部4bの長さよりも長くすることができて、駆動変位を長くすることも可能である。
【0050】
また、図1Hに示すように、てこの支点として機能する、アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端付近の部分と、変位ベース部材5の両端部5a、5bとの接触部分は、図1Aに示すように凸部と平面とが単に接触するものに限らず、係合構造としてもよい。すなわち、各アーム部材4Hの第1アーム部4a,4aの先端付近に係合突起4h,4hを形成し、変位ベース部材5Hの両端部5a、5bには、係合突起4h,4hが回動自在に係合する係合凹部5h,5hを備えるようにしてもよい。この変形例では、変位アーム部材4Hと変位ベース部材5Hとの接触部分を強化することができ、支点が容易に外れないため、変位アーム部材4Hの動作をより確実に行うことができる。
【0051】
また、図1Iに示すように、てこの支点として機能する、アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端付近の部分と、変位ベース部材5の両端部5a、5bとの接触部分を、別の係合構造としてもよい。すなわち、各アーム部材4Iの第1アーム部4a,4aの先端付近に係合凹部4i,4iを形成し、変位ベース部材5Iの両端部5a、5bには、係合凹部4i,4iが回動自在に係合する係合突起5i,5iを備えるようにしてもよい。この変形例では、変位アーム部材4Iと変位ベース部材5Iとの接触部分を強化することができ、支点が容易に外れないため、変位アーム部材4Iの動作をより確実に行うことができる。
【0052】
(導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作)
図2の(A)、(B)、及び(C)は、図1A及び図1Bの第1実施形態の導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置へ可変直流電源42から電圧を印加したりしなかったりするときの動作の一例を示す、図1AのA−A線の断面図である。図2の(A)は、可変直流電源42から正電圧(例えば、+1V)を第1導電性高分子膜1に印加した状態、図2の(B)は、可変直流電源42から電圧を第1及び第2導電性高分子膜1,2に印加する前の状態(電圧を第1及び第2導電性高分子膜1,2に印加していない状態)、及び、図2の(C)は、可変直流電源42から負電圧(例えば、−1V)を第1導電性高分子膜1に印加した状態をそれぞれ示している。
【0053】
図2の(A)及び図2の(C)に示すように、第1導電性高分子膜1と第2導電性高分子膜2との間に電位差を与え、酸化還元反応を発生させることにより、第1導電性高分子膜1が膨張或いは収縮し、第2導電性高分子膜2が収縮或いは膨張する。すると、各変位アーム部材4は、第1導電性高分子膜1の膜厚方向(Z方向)に、収縮或いは伸張する(ここでは、各変位アーム部材4自体が収縮或いは伸張するのではなく、第1導電性高分子膜1の膜厚方向(Z方向)に対して、突出する量が減少或いは増加することを、「収縮或いは伸張する」と称している。)。
【0054】
まず、図2の(B)と(C)では、各部の寸法を示している。図2の(B)は、変位ベース部材5の両端部5a、5bに設けられた変位アーム部材4の第1アーム部4aの先端の外側縁部4cを基点に寸法を示している。すなわち、外側縁部4cから変位ベース部材5の中心部5cまでを長さLとし、外側縁部4cから、対向する変位ベース部材4の両端部の屈曲部分の外側端面までを2Lとする。図2の(C)は、変位アーム部材4のアームの長さを示しているが、短い方の第1アーム部4aが変位ベース部材5に接する部分(支点部分)から第1導電性高分子膜1の外側面1aまでの長さをm、長い方の第2アーム部2bの長さをnとし、その比をX=n/mと表現して、拡大率と呼ぶ。
【0055】
図2の(B)は、第1及び第2導電性高分子膜1と2との間に電位差が無い場合を示している。電位差が無い場合、変位アーム部材4の第2アーム部4bは、少し上昇している。この上昇分については図2の(C)を用いて説明する。
【0056】
図2の(C)において、電位差としては−1Vを第1導電性高分子膜1に印加している。この電位差では、第1導電性高分子膜1側に−1Vの負電圧、第2導電性高分子膜2側を0Vとして印加しており、この状態で、変位アーム部材4の第2アーム部4bが、変位ベース部材5に接するように、第2アーム部4bが最も縮んでいる(実際には、第2アーム部4b自体が縮むのではなく、第2アーム部4bが変位ベース部材5の上面沿いに配置された状態となっている)。
【0057】
これに対して、図2の(B)では、第1及び第2導電性高分子膜1と2の間には電位差は無いが、図2の(C)と比し、1V増加することになる。この1V増加分により第1導電性高分子膜1が収縮した変位量δ分だけ、各変位アーム部材4が、拡大率×変位量=X・δだけ、変位ベース部材5の膜厚方向に変位ベース部材5から突出している。
【0058】
さらに、図2の(A)では、図2の(B)と比して+1Vの正電圧が第1導電性高分子膜1に印加されており、図2の(C)とは逆電位で、第1導電性高分子膜1は、さらにδだけ収縮する。つまり、図2の(C)と比して、変位アーム部材4はX・2δだけ、変位ベース部材5の厚さ方向に変位ベース部材5から突出する。
【0059】
本実施形態では、これらの変位アーム部材4の突出を適宜活用して、ブレーキとして機能させることを考えるものである。
【0060】
(導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置)
次に、前述した変位機構6の変位アーム部材4の突出動作を活用する導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12を説明する。図3A、図3B、及び図3Cは、第1実施形態の導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12を示し、図2と同様に、図1Aに示したA−A線の断面図である。図1Aに示す変位機構6,6,6に対して、変位機構6,6,6と第2導電性高分子膜2の外側から、絶縁性の柔軟な帯状ケーシング7によって、変位機構6,6,6と第1導電性高分子膜1と電解質托体層3と第2導電性高分子膜2とを包含するように覆い、かつ帯状ケーシング7の外面側は摩擦係数を高くしている。帯状ケーシング7の外面側の摩擦係数を高くするため、例えば、アルミナコーティングを行なっている。よりコストダウンするためには、帯状ケーシング7の表面を一気にプラズマ処理する方法もある。別の例としては、帯状ケーシング7の表面を、サンドペーパ等で表面粗さを高くする機械的な処理方法で仕上げることもできる。また、帯状ケーシング7の具体的な一例としては、テフロン(登録商標)の薄膜が適している。テフロン(登録商標)の薄膜であれば、耐腐食性も高く、厚さ50μm程度以下になれば、フレキシブルなシートとして使用できて、好ましい。
【0061】
前記帯状ケーシング7で覆われた3個の変位機構6,6,6は、一定の間隙を有して相対的に駆動する一対の対向する第1及び第2ブレーキ固体面8a,8bの間に挿入して、導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12として使用する。すなわち、第1及び第2導電性高分子膜1,2に可変直流電源42から電荷を加えて、第1導電性高分子膜1の伸張及び収縮に伴い、各変位アーム部材4の第2アーム部4bの先端を第1導電性高分子膜1の膜厚方向に進退させる(各変位機構6を収縮及び伸張させる)ことによって、駆動する第1ブレーキ固体面8aに帯状ケーシング7を接触させ、ブレーキとして作用させる。ここでは、一方のブレーキ固体面(第2ブレーキ固体面)8bに変位機構6,6,6が支持されており、変位機構6,6,6の変位により、他方のブレーキ固体面(第1ブレーキ固体面)8aに帯状ケーシング7を介して接触させてブレーキ動作させるか、又は、ブレーキ固体面8aから帯状ケーシング7を離してブレーキ動作を解除させるようにするものである。電圧の印加に関しては、図2の(A)、(B)、(C)と、図3A、図3B、図3Cが対応している。つまり、図3Bは第1及び第2導電性高分子膜1と2に電位差が無く、図3Cが各変位アーム部材4が最も縮んだ状態である。逆に、図2の(A)と大きく異なるのが、図3Aである。図2の(A)では各変位アーム部材4は、第1導電性高分子膜1の収縮する変位量2δに応じて、X・2δだけ突出している。しかしながら、図3Aにおいては、ブレーキ固体面8aがブレーキ固体面8bから一定の間隙を有して存在するため、各変位アーム部材4の第2アーム部4bの先端が帯状ケーシング7を介してブレーキ固体面8aに接する時点から、各変位アーム部材4の第2アーム部4bの先端の突出量がブレーキ固体面8aで規制されて各変位アーム部材4の変位は一定となる。このとき、各変位アーム部材4の変位が一定となり、各変位アーム部材4が移動できずに規制される結果、第1導電性高分子膜1の収縮も停止されてしまい、第1導電性高分子膜1内の歪が増加することになる。図2の(A)に対して、変位量α分だけ、第1導電性高分子膜1の変位は小さくなり、印加電圧がゼロ時点からの変位量はX・2δではなく、X・(2δ−α)と少し小さくなる。そして、後述するように、変位量αに相当する歪が第1導電性高分子膜1に生じて、弾性係数から算出される応力が生じることになる。
【0062】
(レンズフォルダへの応用例)
具体的な動作について、第1実施形態の導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12をレンズフォルダへ応用した一例について、図4A〜図4F、図5、図6を用いて示す。
【0063】
図4A及び図4Bは、ボイスコイルモータ駆動形式の小型レンズフォルダ駆動装置の断面図である。固定された円筒状のマグネット9に対面して円筒状のコイル10が設置され、コイル10は円筒状のレンズフォルダ11と接続されている。コイル10への通電により生じる電場とマグネット9の作用で、レンズフォルダ11は、図4Aの矢印で示す上下に移動する。マグネット9とコイル10との間隙に、第1実施形態の導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12を設ける。アクチュエータ20は、図4Cに示すように、大略C字状を形成している。ここで、図4Cは、導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12の断面図であり、前記変位機構6を円周上に12個等間隔に並べて配置し、12個の変位機構6,…,6と第1導電性高分子膜1と電解質托体層3と第2導電性高分子膜2とを帯状ケーシング7で包むように覆い、全体として、大略C字状を形成している。ここでは、各変位機構6を半径方向に拡大して図示している。
【0064】
なお、9aはヨークである。すなわち、例えば、図3A〜図3Cでの一方のブレーキ固体面8bがマグネット9に、他方のブレーキ固体面8aがコイル10に対応すると考える。
【0065】
この構成により、例えばレンズフォルダ11の移動時にレンズフォルダ11を停止させたい位置で早期にレンズフォルダ11を固定したい場合、又はレンズフォルダ11を移動した後に所定の位置でレンズフォルダ11の停止を維持する場合、又は、コイル10への通電をオフにしてもレンズフォルダ11を所定の位置に固定したい場合には、第1及び第2導電性高分子膜1と2に通電することで各変位アーム部材4を突出させて、マグネット9とコイル10との間隙を帯状ケーシング7を介して埋める。このように動作することにより、レンズフォルダ11にブレーキを掛けることができる。逆に、第1及び第2導電性高分子膜1と2に対する通電をオフにすることで各変位アーム部材4での突出を無くし、マグネット9とコイル10との間隙をあけて、レンズフォルダ11に対するブレーキを解除して、レンズフォルダ11を移動可能な状態とする。図4Aは、第1及び第2導電性高分子膜1と2への通電前の様子であり、図4Bは第1及び第2導電性高分子膜1と2への通電後の様子である。ここで、例えば、コイル10の外径は12mmである。
【0066】
図4Dにおいて、帯状ケーシング7の両端を、テンション用接続バネ41で結合している。図1Cでも両端部をテンション用バネ41で引っ張る構成を示しているが、図4Dでは、円環状をした帯状ケーシング7において初めて実現できる構成である。なお、円環状とは、完全に円ではなくても、楕円、或いは、摩擦係数の低い多角形の周囲に帯状ケーシング7を巻き付けたような場合にも有効である。ここで、摩擦係数の低いとは、例えば、0.2以下が望ましい。多角形の場合には、角部の曲率が大きく影響するため、摩擦係数を低くするのが好ましい。
【0067】
さらに、図4Eでは、同じく円環状において、帯状ケーシング7の両端部を接続用部材43で完全に結合している。テンション用接続バネ41と異なり、接続用部材43には弾性は無いが、第1及び第2導電性高分子膜1,2自体が弾性体であるので、接続する際にテンションがあれば、十分に同様な効果が得られる。
【0068】
なお、図4D及び図4Eの両方において、帯状ケーシング7の両端部を接合する際には、単に表面を覆っている帯状ケーシング7のみの接着ではなく、第1及び第2導電性高分子膜1,2が確実に結合するように接続することが必要となる。
【0069】
また、図4Fはボイスコイルモータ駆動形式の小型レンズフォルダ全体の斜視図であり、図4Bに示したB−B線の断面図である。レンズフォルダ11はほぼ円筒形状をしており、レンズフォルダ11の中心軸と同心状に、帯状ケーシング7と、マグネット9と、そしてコイル10とが環状に配置されている。この図4Dでは、マグネット9の磁力線を集中させるためのヨーク9aは省略して図示している。なお、図4Dでは、マグネット9とコイル10とは円筒状をしたものを使用しているが、円周方向に複数に分割されているものでも同様な効果がある。
【0070】
以下、実施例について説明する。
【0071】
(実施例1)
第1及び第2導電性高分子膜1,2の材料は、ポリピロールであり、寸法は、共に長さは37mm、幅は5mm、厚さ15μmのものを使用した。
【0072】
電解質托体層3の材料は、イオン液体として前述した1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム又はビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドであり、このイオン液体をゲル化したものを使用し、寸法は、長さは37mm、幅は5mm、厚さ30μmの使用した。
【0073】
第1導電性高分子膜1は、前述したように長さ37mm、幅は5mmのものを使用した。つまり、コイル10の外径が12mmであり、この外径12mmから算出される周囲長さが約37.7mmであるため、帯状ケーシング7含めて、端部が離れた構成であることが分かる。
【0074】
一方、マグネット9とコイル10の間隙は、500μmである。ここで、厚さ15μmの第1及び第2導電性高分子膜1,2を使用し、厚さ30μmの電解質托体層3を使用するように設計しており、変位アーム部材4及び変位ベース部材5の厚さを各々100μmとした場合、図4Cの状態での変位アーム部材4の高さは200μm、帯状ケーシング7の厚さを20μmとすると、帯状ケーシング7を含む変位機構6の幅は300μmとなる。よって、ブレーキ機能における設計上の余裕を200μmとすると、マグネット9とコイル10の間隙は、500μmとなる。
【0075】
図4Aと図4Bでの導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12の変位量について述べる。第1導電性高分子膜1は、ポリピロールの場合で、±1Vの電圧の印加により約1%の変位が可能である。つまり、長さ37mmを使用しており、±1Vの電圧の印加により370μm伸縮する。図4Cに示したように12個の変位機構6をほぼ均等に配置しており、1個の変位機構6当たりの図2の(B)での長さLをL=1.2mmとした。また、変位アーム部材4の拡大率Xは、X=20とした。図2の(C)でのn=1.2mm、m=60μmである。つまり、電圧印加により、L=1.2mmが1%変位することで、図2の(A)での2δ=12μm、つまりX・2δ=240μmとなり、変位アーム部材4は240μmだけ突出することが可能ある。従って、図4Cに示した導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12におけるマグネット9とコイル10の間隙(言い換えれば、マグネット9に導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12が支持されている場合、導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12とコイル10との間隙)を、設計上の余裕も考慮して200μmとしているが、その間隙を、変位アーム部材4が240μm、つまり40μmを残して突出することで埋めることが可能となる。
【0076】
次に、図5と図6を用いて、上述の40μmの変位量に相当する応力に関して説明する。図5は、横軸に変位量、縦軸に応力を示している。横軸で変位量がゼロの位置から、変位アーム部材4の突出を開始して、200μmに到達する。200μmに到達すると、変位アーム部材4は、帯状ケーシング7を介して、コイル10の固体面(ブレーキ固体面8aに相当)に衝突しているため、コイル10の固体面に衝突した以降は、変位アーム部材4は変位できない(変位アーム部材4は200μmの間隙以上に変位できない)。一方、第1導電性高分子膜1は電圧印加によって継続して240μm相当まで収縮しようと変形する。その結果、第1導電性高分子膜1には、40μm相当分の変位量だけ伸張するのに必要な応力が働くことになる。具体的には、各々の変位アーム部材4は拡大率がX=20であり、40μm突出するための第1導電性高分子膜1上での変位量は、40/20=2μmである。図3Aではα=2μmとなる。L=1.2mmに対して2μmは、0.17%歪に相当する。
【0077】
一方、図6は、横軸に歪率を、縦軸は応力である。図6は、所謂、引張試験により弾性係数を求める特性であり、この場合はポリピロールを使用して、第1導電性高分子膜1の特性グラフの一例として示している。ここで、上述の0.17%歪に相当する値は、応力で2.0MPaに相当する値であり(図5に示したように、変位アーム部材4上では、拡大率の逆数から、2.0/20=0.1MPaに相当し)、単位換算して、204gr/mm2である。そして、第1導電性高分子膜1の膜断面積が15μm×5mmから、15grの力が発生できる。したがって、図5に示したように、200μmまで突出した変位アーム部材4が、帯状ケーシング7を介して、固体面(ブレーキ固体面8aに相当)に衝突した後は、残り40μmの歪に相当する反力が15gr、つまり拡大率X=20から、15/20=0.75grの力が、各変位アーム部材4の第1アーム部の先端から固体壁(ブレーキ固体面8bに相当)に加えられることになる。
【0078】
以上のように、図4Aに示した第1実施形態の導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12をレンズフォルダ駆動装置のブレーキ装置へ応用した場合、マグネット9とコイル10の500μmの間隙に挿入された300μm厚さの導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12の第1導電性高分子膜1に電圧を印加することで、−1Vから+1Vに応じて、導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12とコイル10との間の200μmの隙間を埋めた上に、さらに0.75grの力でブレーキ機能を実現することが可能である。なお、導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12では、変位アーム部材4は計24個有するので、0.75gr×24=18grのブレーキ力が働く。なお、帯状ケーシング7の外側表面は摩擦係数が高く、一例として摩擦係数μ=0.7の材料を使用した場合には、マグネット9、或いはコイル10の移動方向に対して18gr×0.7=約13grのブレーキ力が達成できる。なお、レンズフォルダ11とコイル10の総重量は通常、5gr以下であり、十分なブレーキ力が得られる。
【0079】
なお、図3A或いは図3Bに示したように、固体面(ブレーキ固体面8aに相当)からの衝撃が発生した際にも、各変位アーム部材4を介して、第1導電性高分子膜1に衝撃が伝播する。第1導電性高分子膜1は、例えば固有振動数が40〜60Hz程度の特性を有することが多く、緩衝材としての優れた機能を保有している。その結果、急激なブレーキ機能又はブレーキ時の固体面(ブレーキ固体面8aに相当)の振動、さらにブレーキする以前の固体面(ブレーキ固体面8aに相当)の大きな動きによる衝撃も想定されるが、それらの衝撃を第1導電性高分子膜1で吸収することが可能である点も、重要な特徴である。
【0080】
導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12では、マグネット9とコイル10との両側のどちらのブレーキ固体面(ブレーキ固体面8a及びブレーキ固体面8bに相当)からの衝撃にも対応できる。特に、図4Aのように複数のレンズを有するレンズフォルダ11等の光学部品は従来、落下等の衝撃に弱かった。ところが、第1実施形態の導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12の構成によって、小型で衝撃に強いブレーキ機能を実現できる。
【0081】
以上のように、第1実施形態によれば、第1導電性高分子膜1の収縮方向及び膨張(伸張)方向の双方向において各変位機構6が収縮及び伸張する(各変位アーム部材4の第2アーム部4bの先端が第1導電性高分子膜1の膜厚方向に進退する)構成により、小型で衝撃に強く、軽量化、静音化が可能な導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12を得ることができる。
【0082】
また、柔軟な帯状ケーシング7による摩擦係数が高い構成として、例えばアルミナ、シリカ、又は、ジルコンサンドなどのモース硬度3以上の固い無機研磨剤等を使用することにより、高いブレーキ性能が実現可能な導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12を得ることができる。
【0083】
(第2実施形態)
図7A〜図9は、本発明にかかる第2実施形態の導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aの一例を示す図である。なお、前述した第1実施形態と同様な機能を果たす部分には、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0084】
第2実施形態の実施例でも、第1実施形態と同じく第1及び第2導電性高分子膜1,2は、厚さ15μm、幅は5mmのもの、電解質托体層3は厚さ30μmの寸法のものを一例として使用した。
【0085】
図7Aに示したように、第1導電性高分子膜1と第2導電性高分子膜2とが電解質托体層3を介して接続されるように面対向しているが、第2導電性高分子膜2を対称面に、第2導電性高分子膜2の両面に、第3導電性高分子膜の一例として機能する第1導電性高分子膜1と電解質托体層(第2電解質托体層)3を設けて導電性高分子アクチュエータ20Aを構成しており、さらに両方の第1導電性高分子膜1,1の外側面において、複数の変位機構6,…,6を設けてある点が、図1Aの第1実施形態と異なる点である。各変位機構6は、一対の変位アーム部材4,4と変位ベース部材5とで構成している点は同じである。なお、説明の都合上、第1実施形態と同じ位置に配置された第1導電性高分子膜(図7Aの上側の第1導電性高分子膜)1に配置された変位機構6を第1変位機構6と呼び、第1実施形態には無かった第3導電性高分子膜の一例として機能する第1導電性高分子膜(図7Aの下側の第1導電性高分子膜)1に配置された変位機構6を第2変位機構6と呼ぶこともある。
【0086】
図7Bは、図7Aに示した第1及び第2導電性高分子膜1と2、及び電解質托体層3を分解して示した図である。各変位アーム部材4は、両側の第1導電性高分子膜1,1にそれぞれ接合されている点、及び、2枚の第1導電性高分子膜1,1及び第2導電性高分子膜2とに電圧をそれぞれ印加するための可変直流電源42を2個配置している点(図8A及び図8B参照)以外は、第1実施形態と同じである。
【0087】
次に、導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aとしての機能を説明する。図8A及び図8Bには、第2実施形態の導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aを示しており、図7Aに示したA−A線沿いの断面図である。図8Aの上下両側の変位機構6,6,6と第1導電性高分子膜1,1と電解質托体層3,3と第2導電性高分子膜2とを柔軟な帯状ケーシング7で包含するように覆っている。電圧の印加に関しては、第1実施形態での図3A及び図3Bに対して、図8A及び図8Bが対応している。つまり、図8Bは、第1及び第2導電性高分子膜1と2に電位差が無く、図3Cに相当する変位アーム部材4が最も縮んだ状態は使用していない。したがって、第1実施形態と異なる点は、両側の第1導電性高分子膜1,1に電圧印加しており、変位アーム部材4,…,4のそれぞれは、両側の第1導電性高分子膜1,1のそれぞれ収縮する変位量δに応じて、X・δだけ突出するが、両側に変位アーム部材4,…,4が配置されているので、ブレーキ固体面8aと導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aとの間隙に対して、2・X・δだけ変位できる。つまり、図3Cに相当する逆電位の−1Vを第1導電性高分子膜1に印加せずとも、十分な変位量が実現できることになる。
【0088】
次に、図8Aと図8Bにて、変位について説明する。βは変位アーム部材4,…,4がブレーキ固体面8aに衝突した後の仮想的な変位量で、第1実施形態でのαに相当するが、値は異なるので記号を区別して使用する。その衝突の結果、ブレーキ固体面8aへの変位アーム部材4,…,4の衝突までに、片側の第1導電性高分子膜1の収縮する変位量(2δ−β)に対して、片側の変位アーム部材4では、拡大率を考慮したX・(2δ−β)−X・δ=X・(δ−β)だけ変位する。両端では、2・X・(δ−β)だけ変位する。
【0089】
因みに、第1実施形態では、−1V電位から+1V電位までで、X・(2δ−α)の変位量であった。
【0090】
これらの定式化から、第2実施形態では、第1実施形態と比して、ブレーキ固体面8aまでの間隙が同じ寸法Gと仮定した場合には、第2実施形態では、G=2・X・(δ−β)、第1実施形態ではG=X・(2δ−α)となる。つまり、Gが同じ値の下では、β=α/2となり、第2実施形態の方が、第1実施形態と比して、衝突後の変位量が1/2に減少し、その分だけ、ブレーキ固体面8aへの力も1/2に減少することが予測できる。
【0091】
具体的には、第1実施形態で示した図4A、図4B、及び図4Cと同じボイスコイルモータ駆動形式の小型レンズフォルダを使用して説明する。図9には、図4Cに相当するが、第2実施形態での断面を示している。図9は、導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aの断面図であるが、変位機構6を半径方向に拡大図示している。第1導電性高分子膜1としては、一例として、前述したように長さ37mm、幅は5mmのものを使用している。また、マグネット9とコイル10の間隙は、300μmである。ここで、厚さ15μmの第1及び第2導電性高分子膜1,2を使用し、厚さ30μmの電解質托体層3とで設計しており、変位アーム部材4、及び変位ベース部材5の厚さを各々100μmとした場合、図4C状態での変位アーム部材4の高さは200μm、帯状ケーシング7の厚さを20μmとすると、帯状ケーシング7を含む変位機構6の幅は545μmとなる。よって、ブレーキ機能における間隙を設計上の余裕も考慮して200μmとすると、マグネット9とコイル10の間隙は、745μmとなる。なお、導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aの両側に間隙を有する場合は、間隙は各々100μmである。
【0092】
第1導電性高分子膜1は、ポリピロールの場合で、±1Vの電圧印加により約1%変位が可能であるが、第2実施形態では0V〜1Vのみの印加であるから、約.0.5%の変位となる。つまり、長さ37mmの第1導電性高分子膜1を使用しており、+1Vの電圧印加により、第1導電性高分子膜1は185μm伸縮する。図4Cと同様に、図9に示したように12個の小型の変位機構6,…,6をほぼ均等に円周状に配置しており、1個の変位機構6当たりの図2の(B)での長さLはL=1.2mmであり、変位アーム部材4の拡大率XもX=20と同じとした。つまり、電圧印加により、L=1.2mmが0.5%変位することで、δ=6μm、つまりX・δ=120μmとなり、片側の変位アーム部材4は120μmだけ突出することになる。したがって、図9に示したブレーキ機構におけるマグネット9とコイル10の間隙を、設計上の余裕も考慮して200μmとしているが、その間隙を片側の変位アーム部材4が120μm、つまり20μmを残して突出することで埋めることが可能となる。
【0093】
次に、前述の図6を用いて、上述の20μmの変位量に相当する応力に関して説明する。第1実施形態と同様に考えると、第1導電性高分子膜1には20μm相当分の変位量だけ伸張するのに必要な応力が働くことになる。具体的には、各々の変位アーム部材4は拡大率がX=20であり、20μmの突出するための第1導電性高分子膜1上での変位量は、20/20=1μmである。図8Aでのα=1μmとなる。L=1.2mmに対して1μmは、0.083%歪に相当する。一方、図6は、横軸に歪率を、縦軸に応力をとっており、0.083%歪相当は、応力で1.0MPa相当であり、単位換算して、102gr/mm2である。そして、第1導電性高分子膜1の膜断面積が15μm×5mmから、7.7grの力が発生できる。したがって、100μmまで突出した変位アーム部材4がブレーキ固体面8aに衝突した後は、残り20μmの歪に相当する反力として7.7grの力が、つまり拡大率X=20から、7.7/20=0.39grの力が、変位アーム部材4の各先端から固体壁(ブレーキ固体面8aに相当)に加えられることを意味する。さらに、変位アーム部材4は計24個有するので、0.39gr×24=9.4grのブレーキ力が働く。そして、帯状ケーシング7の外側表面の摩擦係数μ=0.7の材料を使用した場合に、マグネット9、或いはコイル10の移動方向に対して9.4gr×0.7=約6.6grのブレーキ力が達成できる。なお、レンズフォルダ11とコイル10の総重量は通常、5gr以下であり、ブレーキ機能は実現できる。
【0094】
以上のように、第1実施形態と異なり、第2実施形態ではブレーキ機能を発現していない際に非ブレーキ時に通電が不要である。ブレーキ固体面8aと導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aとの間隙が設計上の余裕から決定されることが大きい中、小型の変位機構6,…,6を導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aの両面に配置することで、片側の第1導電性高分子膜1の変位量が少なくても、ブレーキに至るに必要な変位量を実現することができ、かつ非ブレーキ時での省エネ効果がある点が、特徴的である。
【0095】
なお、ブレーキ力が不足する場合には、第1導電性高分子膜1の変位量を増加させることが望ましく、そのために印加電圧を上昇させる必要がある。第1及び第2導電性高分子膜1と2の耐久性の範囲での制御が要求される。
【0096】
最後に、逆説的な説明になるが、図8A及び図8Bにおいて、ブレーキ機能を発現している際に+1Vの印加電圧を掛けているが、これに限らず、逆に、図12A及び図12Bに示すように、導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aとブレーキ固体面8a,8b(コイル10とマグネット9とに相当。)との間隙を無くすように配置してブレーキ機能時には印加電圧をゼロにする(図12A参照)。一方、図8Bに相当する非ブレーキ時には、−1Vを印加して導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aとブレーキ固体面8a,8b(コイル10とマグネット9とに相当。)との間に間隙を形成する(図12B参照)制御方法もある。具体的には、ブレーキ固体面8aのみ、又は、ブレーキ固体面8a及びブレーキ固体面8bの両方に導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aの変位機構6が帯状ケーシング7を介して接触している際に、印加電圧がゼロとなるように変位量を設計している。このとき、導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aは、ブレーキ固体面8aに対向するブレーキ固体面8bに支持されるか、又は、ブレーキ固体面8a及び8b以外の他の支持部材により、ブレーキ固体面8a及びブレーキ固体面8bとの間に支持されるようにする。
【0097】
この構成においては、同じ第2実施形態であっても印加電圧の制御方法を変更するだけで、非ブレーキ時にのみ電圧印加が必要で、ブレーキ時に電圧ゼロが実現できる。つまり、レンズフォルダ11等の保持には、駆動時と同様にコイル10に非常に多くの電流が必要であり、また装置全体の電源オフ後の搬送時にもレンズフォルダ11が衝撃に強い第1導電性高分子膜1に保持されていることが望ましく、かつ、それらの時間帯が非常に長時間を占有することが多い。したがって、このようなケースでは、省エネ効果がさらに大きいことが予測できる。このように、変位機構6を導電性高分子アクチュエータ20Aの両面に配置して、かつ非ブレーキ時に電圧印加する方法により、ブレーキ時あるいは搬送時に、電源オフできるブレーキ機能が実現できる。すなわち、レンズなどの光学部品を駆動しない状態が長時間継続するケースでは有効であり、例えば、商品として輸送したり保管する際は勿論、ユーザが使用する際の多くの場合、例えば撮影時の合焦時、又は、タイマー撮影時など、レンズなどの光学部品の位置を固定する場合には、消費電力が発生しない方が省エネとなるためである。
【0098】
以上のように、第2実施形態によれば、2枚の第1導電性高分子膜1,1のそれぞれの収縮方向或いは膨張方向において各変位機構6の変位アーム部材4の第2アーム部4bの先端が各第1導電性高分子膜1の膜厚方向に対して進退する(各変位機構6を収縮及び伸張する)構成により、小型で衝撃に強く、軽量化、静音化が可能なことに加えて、大きな変位量で駆動が可能な導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aを得ることができる。
【0099】
また、柔軟な帯状ケーシング7による摩擦係数が高い構成により、大きな変位量で駆動する際にも、高いブレーキ性能が実現可能な導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aを得ることができる。
【0100】
また、ブレーキ固体面8aのみ、又は、ブレーキ固体面8a及びブレーキ固体面8bの両方に導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aの各変位機構6が帯状ケーシング7を介して接触してブレーキが機能している際に電位差を与える必要がない構成により、大きな変位量で駆動する際にも省電力である導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aを得ることができる。なお、第2実施形態で実現した、ブレーキが機能している際に電位差を与える必要がない構成に関して、第1導電性高分子膜1への印加電圧と変位量、或いは変位機構6の設置間隔又は拡大率を適切に設けることで、第1実施形態でも実現可能である。
【0101】
なお、図10A及び図10Bには、本発明の前記第1実施形態或いは前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータ20,20Aを用いたブレーキ装置12,12Aをレンズフォルダ11へ応用した際の、レンズフォルダ11を搭載した携帯電話12及びデジタルカメラ13を示す図である。
【0102】
なお、本発明は、円筒状のブレーキ構成でなくとも、例えば図11に示したような直線状の帯状ケーシング7で覆われた前記第1又は第2実施形態の導電性高分子アクチュエータ20,20Aを用いたブレーキ装置12,12Aを1個又は複数個使用する方法もある。レンズフォルダ11は光学部品の性質上、円筒であることが多く、マグネット9及びコイル10も円筒となるが、帯状ケーシング7で覆われた前記第1又は第2実施形態の導電性高分子アクチュエータ20,20Aを用いたブレーキ装置12,12Aは、平板型で直線状でも、前記した環状のものとまったく同様に機能する。
【0103】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【0104】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に係る導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置は、間隙を有して相対的に駆動する固体面の間に挿入して使用し、電荷を加えて膜厚方向に収縮及び伸張することによって、駆動する固体面にブレーキとして作用させるもので、導電性高分子膜の弾性により衝撃吸収が可能で、導電性高分子膜が薄く、軽く、静かに伸縮することから、小型で衝撃に強く、軽量化、静音化、省電力化が実現できるものであり、レンズフォルダの駆動部(駆動装置)のブレーキ装置として好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1A】本発明の第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の部分的な外観を示す斜視図である。
【図1B】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の一部を分解した状態を示す斜視図である。
【図1C】本発明の前記第1実施形態の変形例における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の部分的な外観を示す斜視図である。
【図1D】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変位機構の変形例を示す断面図である。
【図1E】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変位機構の変形例を示す断面図である。
【図1F】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変位機構の変形例を示す断面図である。
【図1G】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変位機構の変形例を示す断面図である。
【図1H】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変位機構の変形例を示す断面図である。
【図1I】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変位機構の変形例を示す断面図である。
【図2】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す図1AのA−A線の断面図であり、(A)は、可変直流電源から正電圧を第1導電性高分子膜に印加した状態、(B)は、可変直流電源から電圧を第1及び第2導電性高分子膜に印加する前の状態、及び、(C)は、可変直流電源から負電圧を第1導電性高分子膜に印加した状態をそれぞれ示す図である。
【図3A】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図3B】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図3C】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図4A】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す部分断面図である。
【図4B】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す部分断面図である。
【図4C】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す断面図である。
【図4D】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す断面図である。
【図4E】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す一部断面図である。
【図4F】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す斜視図である。
【図5】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置における変位アーム部材の変位動作の一例であって、横軸に変位量、縦軸に応力を示すグラフである。
【図6】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置における導電性高分子膜の特性の一例であって、横軸に歪率を、縦軸は応力を示すグラフである。
【図7A】本発明の第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の部分的な外観を示す斜視図である。
【図7B】本発明の前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の一部分解した外観を示す斜視図である。
【図8A】本発明の前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図8B】本発明の前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図9】本発明の前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す部分断面図である。
【図10A】本発明の前記第1実施形態或いは前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへ応用した際の、レンズフォルダを搭載した携帯電話を示す斜視図である。
【図10B】本発明の前記第1実施形態或いは前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへ応用した際の、レンズフォルダを搭載したデジタルカメラを示す斜視図である。
【図11】本発明の前記第1実施形態或いは前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへ応用した際の、平板型で直線状の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を示す斜視図である。
【図12A】本発明の前記第2実施形態の変形例における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図12B】本発明の前記第2実施形態の前記変形例における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図13】特許文献1の従来のレンズフォルダの駆動装置の一例を示す斜視図である。
【図14】特許文献2の従来のレンズフォルダの駆動装置の別の例を示す斜視図である。
【図15】特許文献3の従来のレンズフォルダの駆動装置のさらに別の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0107】
1 第1導電性高分子膜
1a 外側面
1c 溝部
1d 係止溝
2 第2導電性高分子膜
3 電解質托体層
4,4D,4F,4G,4H,4I 変位アーム部材
4a 第1アーム部
4b 第2アーム部
4c 第1アーム部の先端の外側縁部
4h 係合突起
4i 係合凹部
5,5F,5G,5H,5I 変位ベース部材
5a,5b 端部
5c 中心部
5d 係止突起
5h 係合凹部
5i 係合突起
6 変位機構
7 帯状ケーシング
8a,8b ブレーキ固体面
9 マグネット
9a ヨーク
10 コイル
11 レンズフォルダ
12,12A 導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置
20,20A 導電性高分子アクチュエータ
40 テンション用支持面
41 テンション用バネ
42 可変直流電源
43 接続用部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報化社会において、モバイル機器は進歩してきており、特に携帯電話などのカメラ機能を有するモバイル機器は、数多く普及してきている。モバイル機器は、小型、軽量、及び、静音であることを筆頭に、省電力駆動が必要条件であり、落下衝撃等の耐久性にも高い性能が求められている。なお、カメラ機能の実現には、光学部品としてレンズが欠かせない。オートフォーカス、あるいはズーム機能を有するカメラは、複数のレンズからなる光学系全体と、フォーカス用レンズ単体(又はレンズ群)フォルダ、あるいはズーム用レンズ単体(又はレンズ群)フォルダとを光軸方向に移動する。カメラは、前記レンズフォルダを保持及び駆動するための装置が設けられている。
【0003】
しかしながら、前記レンズは落下衝撃に対して非常に弱い材料であり、また合焦のために高精度の位置決めが求められる。このため、モバイル機器の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置は、耐衝撃吸収性を有する精密駆動性能が求められる。また、小型、軽量、静音、省電力であることが導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置に求められる。
【0004】
図13に、従来のレンズフォルダの駆動装置の一例を示す。従来の駆動装置は、ステッピングモータ5013により、ウォームギア5014を回転させて、ウォームギア5014に係合した係合部材5015を介してレンズ5006の駆動と停止をさせ、ステッピングモータ5013により、モータ自身にレンズ5006のホールド機能を持たせている。あるいは、従来の別の駆動装置としては、伝達系としてバックラッシュが防止できかつ非通電時に動かないウォームギア5014を用いて、高精度の位置決めを実現している(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、図14に示すようにボイスコイル5104を用いてレンズ鏡筒5103を駆動し、高速の駆動が可能なものがある(例えば特許文献2参照)。
【0006】
また、図15に示すように、ドラム5219に、電気活性ポリマー5230により駆動するアクチュエータ5223によって、摩擦材5221が設けられたブレーキシュー5220が、ドラム5219に押圧されてブレーキ機能が実行されるものがある(例えば特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−045068号公報
【特許文献2】特開2004−280031号公報
【特許文献3】特許第4068013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した構成の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置にも課題がある。
【0009】
特許文献1は、ウォームギア5014を用いたレンズ駆動であるが、ウォームギア5014が大きいので装置が大型化し、軽量化も困難であるという問題があった。
【0010】
特許文献2は、ボイスコイル5104を用いたレンズ駆動によって、レンズ鏡筒5103をバネ部材を用いて支持する構造であるので、小型、静音が図れるが、その姿勢差によりレンズの移動距離が変化してしまい、制御が困難となる。また、レンズの保持には、ボイスコイル5104に連続通電が必要で、消費電力が高いという問題があった。レンズ駆動装置としては、小型化、静音化、駆動速度の点においてボイスコイルが注目されている。レンズ駆動装置の保持装置は、高速駆動の障害にならず、外力による衝撃を吸収でき、小型化が可能な、例えば自転車のシューブレーキのような構成が望まれるが、シューを駆動させるメカニズムが別途必要である課題は、上述の特許文献1と同様の大型化の課題を有する。
【0011】
特許文献3は、電気活性ポリマー5230により、摩擦材52221が設けられたブレーキシュー5220を駆動して、ブレーキ機能を働かせるものである。このため、静音化が図られるが、ブレーキシュー5220を移動させるには、電気活性ポリマー5230には大きな体積変化が必要条件となる。また、そのためには、電気活性ポリマー5230の長手方向に十分な大きさが必要であり、ドラム5219内に納めるには寸法的に限界があり、逆に、電気活性ポリマー5230に大きな体積変化を起こさせるために数kV以上の高電圧を掛けることが必要となり、家電機器としての小型化又は安全性確保には不適切である。
【0012】
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、小型で衝撃に強く、軽量化、静音化、省電力化が実現できる導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであり、以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、第1導電性高分子膜と第2導電性高分子膜とが第1電解質托体層を介して接続されるように面対向させ、前記第1導電性高分子膜の外側面に、第1ブレーキ固体面に対向しかつ前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮駆動可能な第1変位機構を設けて、
前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えて前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮させることにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記第1ブレーキ固体面に接離し、ブレーキ動作又はブレーキ動作解除を行なうことを特徴とする導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
よって、本発明によれば、例えば間隙を有して相対的に駆動する第1ブレーキ固体面と第2ブレーキ固体面との間に挿入して使用し、電荷を加えて導電性高分子膜の膜厚方向に前記第1変位機構が収縮及び伸張することによって、駆動するブレーキ固体面にブレーキとして作用させる導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置に関するもので、導電性高分子膜が薄いことから、小型で衝撃に強く、軽量化、静音化、省電力化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細を説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
【0016】
本発明の第1態様によれば、第1導電性高分子膜と第2導電性高分子膜とが第1電解質托体層を介して接続されるように面対向させ、前記第1導電性高分子膜の外側面に、第1ブレーキ固体面に対向しかつ前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮駆動可能な第1変位機構を設けて、
前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えて前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮させることにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記第1ブレーキ固体面に接離し、ブレーキ動作又はブレーキ動作解除を行なうことを特徴とする導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
【0017】
本発明の第2態様によれば、前記第1変位機構は、一端が前記第1導電性高分子膜の溝部に嵌め込まれた第1アーム部と、前記第1アーム部に対して屈曲して連結された第2アーム部とを有する板状のアーム部材と、前記第1導電性高分子膜の前記外側面に摺動可能に載置され、一端部に前記アーム部材の前記第1アーム部が常時接触し、接触部分が支点となって前記アーム部材が支点回りに回動して、前記第2アーム部の先端が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に進退して、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の前記膜厚方向に伸縮する、第1の態様に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
このような構成によれば、第1導電性高分子膜の収縮方向及び膨張方向の双方向において第1変位機構が収縮及び伸張する構成により、小型で衝撃に強く、軽量化、静音化が可能な導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を得ることができる。
【0018】
本発明の第3態様によれば、前記第2導電性高分子膜において、前記第1導電性高分子膜とは反対側に第2電解質托体層を介して接続される第3導電性高分子膜を有し、前記第3導電性高分子膜の外側面に、第2ブレーキ固体面に対向しかつ前記第3導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮駆動可能な第2変位機構を設けて、
前記第3導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第3導電性高分子膜が膨張或いは収縮することにより、前記第2変位機構が前記第3導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記第2ブレーキ固体面に接離し、ブレーキ動作又はブレーキ動作解除を行なう、第1又は2の態様に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
このような構成によれば、第1及び第3導電性高分子膜の収縮方向及び膨張方向の双方向において変位機構が収縮及び伸張する構成により、大きな変位量で駆動が可能な導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を得ることができる。
【0019】
本発明の第4態様によれば、前記第1変位機構と前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の外側に設けられて、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜と前記第1電解質托体層と前記第1変位機構とを包含する、帯状ケーシングを備える、第1又は2の態様に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
【0020】
本発明の第5態様によれば、前記第1変位機構と前記第1導電性高分子膜と前記第2変位機構と前記第3導電性高分子膜の外側に設けられて、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜と前記第3導電性高分子膜と前記第1電解質托体層と前記第2電解質托体層と前記第1変位機構と前記第2変位機構とを包含する、帯状ケーシングを備える、第3の態様に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
このような構成によれば、帯状ケーシングによる構成により、高いブレーキ性能が実現可能な導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を得ることができる。
【0021】
本発明の第6態様によれば、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第1導電性高分子膜が膨張することにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の前記膜厚方向に収縮する、第1,2,及び4の態様のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
【0022】
本発明の第7態様によれば、前記第3導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第3導電性高分子膜が膨張することにより、前記第2変位機構が前記第3導電性高分子膜の前記膜厚方向に収縮する、第3又は5の態様に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
【0023】
本発明の第8態様によれば、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差が無い状態で前記帯状ケーシングを介して前記第1変位機構は前記第1ブレーキ固体面に接触してブレーキ動作を行なう一方、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮することにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に収縮して前記第1ブレーキ固体面から離れてブレーキ動作解除を行なう、第1,2,4,及び6の態様のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
このような構成によれば、ブレーキが機能している際に電位差を与える必要がない構成により、省電力な導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を得ることができる。
【0024】
本発明の第9態様によれば、前記変位機構を複数個、環状に配置されて、前記酸化還元反応により前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮することにより、前記全ての変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記ブレーキ固体面に接離する、第1〜8の態様のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
このような構成によれば、複数の前記変位機構の全てが、前記ブレーキ固体面にほぼ同時にかつほぼ均一に接触押圧することが可能となるブレーキ機能が実現できる構成により、効果的な導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を得ることができる。
【0025】
本発明の第10態様によれば、前記第1導電性高分子膜及び前記第2導電性高分子膜の両端部に張力を付与して前記第1導電性高分子膜及び前記第2導電性高分子膜を展張状態に保持するバネをさらに備える、第1〜9の態様のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を提供する。
【0026】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1A〜図3Cは、本発明における第1実施形態の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置における変位機構6の図である。図1Aは、第1実施形態の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を構成する変位機構6が3個配置された状態の斜視図である。図1Bは、図1Aの3個の変位機構6のうちの1個の変位機構6などを分解した状態を示す斜視図である。
【0028】
図1Aにおいて、第1及び第2導電性高分子膜1,2は、それぞれ、酸化還元反応に伴って膨張収縮変形する導電性高分子より構成している。各導電性高分子の形状は、矩形、例えば長方形の伸縮体である。第1及び第2導電性高分子膜1,2を構成する導電性高分子は、ポリピロール、又は、ポリアニリン等が利用可能であるが、ポリピロールは変位量が大きい点で望ましい。ポリピロールの導電性高分子は、1.5V〜5.0Vの比較的低電圧で筋肉に匹敵するような応力を発生することから、人工筋肉としての実用化が期待されている。
【0029】
第1及び第2導電性高分子膜1,2の厚みは、それぞれ5μmから30μm程度であるのが望ましい。材質にも大きく依存するが、5μmより薄いと強度的に弱く、30μmより厚いと内部までイオンの出入りが困難となり、発生変位量が小さくなり、同時に動作速度も低下する。
【0030】
そして、第1導電性高分子膜1と第2導電性高分子膜2とが、ゲル状のイオン液体である電解質托体層(第1電解質托体層)3を介して接続されるように、面対向して配置されて、導電性高分子アクチュエータ20を構成している。なお、液体若しくはゲル状の電解質托体層3としては、室温で溶融している塩として定義されるイオン液体が使用される。イオン液体は、新たな機能性液体として注目されているが、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム又はビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが知られており、陽イオンと陰イオンとの電荷が非局在化することで、両者間のクーロン力が小さく、室温において液体状態となり得る。イオン液体は、蒸気圧が低く蒸発損失がほとんど無く、難燃性であり、熱・酸化安定性に優れるものが多く、潤滑性能も高い。このイオン液体を絶縁シートに塗布して、電解質托体層3として使用する、或いは、イオン液体自身をゲル化することによって、電解質托体層3を形成させる。電解質托体層3の厚みは、5μmから50μm程度が望ましい。電解質托体層3の厚みが50μmより厚いと導電性高分子膜1と2が離れて、導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置全体が必要以上に、厚くなる。逆に、電解質托体層3の厚みが5μmより薄過ぎると、電解質托体層3中に含まれるイオンが少なくなり、駆動力あるいは変位量が低下する。ここで、電解質托体層3はゲル状であるので、接する導電性高分子膜1,2とは接合しておらず、互いに摺動することが可能となっている。
【0031】
本第1実施形態の実施例としては、厚さ15μmの第1及び第2導電性高分子膜1,2を使用した。ここで、第1及び第2導電性高分子膜1,2の他の寸法は、共に長さは37mm、幅は5mmのものを一例として使用した。また、厚さ30μmの電解質托体層3を使用した。
【0032】
複数の(例えば図1Aでは3個の)変位機構6が、第1導電性高分子膜1の外側面1aに設けて、全ての変位機構6,…,6が一斉にほぼ同時に駆動可能としている。変位機構6は、アーム部材の一例としての、一対の変位アーム部材4と、ベース部材の一例としての変位ベース部材5とで構成している。変位アーム部材4と変位ベース部材5とは、互いに接触しても弾性変形又は塑性変形せず、駆動力を確実に発生させる程度に剛性を有するものである。変位アーム部材4及び変位ベース部材5の材質としては、耐腐食性が条件である。そこで、これらの材質としては、電解質托体層3を構成するイオン液体はアクリル系を溶融するので、軽量なアクリル樹脂は使用できない。また、金属も耐腐食性の観点から好ましくない。そこで、変位アーム部材4及び変位ベース部材5の材質としては、一例として、腐食性も考慮し、また軽量で加工し易い材質として、チーク材がある。摩擦係数が低いことも望ましいので、テフロン(登録商標)も使用できるが、この場合には、簡単な形状である、変位アーム部材4又は変位ベース部材5を選定することが好ましい。なお、加工性やコストの観点で、やむを得ず金属を使用する場合には、変位アーム部材4は板金加工が有望で、図1Dなどの形状が適している。
【0033】
変位アーム部材4は、大略90度に屈曲したL字形状の板部材をしており、根元側の短い板状の第1アーム部4aと先端側の長い板状の第2アーム部4bとを有する。
【0034】
ここでは、変位ベース部材5の両端に、変位アーム部材4,4を設けたものを一例として使用している。各変位アーム部材4は前記したようにL字形状をしており、根元側の短い第1アーム部4aと先端側の長い第2アーム部4bとを有する、所謂、テコの原理で根元側の第1アーム部4aの変位量を先端側の第2アーム部4bでの大きな変位量に拡大可能なものである。
【0035】
変位ベース部材5は、長手方向の両端部5a,5bを、上下に傾斜面を有して中央部が湾曲して突出した凸部で構成している板部材である。
【0036】
図1A及び図1Bに示すように、第1アーム部4aの先端が、第1導電性高分子膜1に接合されている。ここでは、導電性高分子膜1にその幅方向沿いに溝部1cを設け、溝部1cにアーム部4aの先端(下端)の一部が埋め込まれた(例えば、嵌め込まれた)構成としているが、さらに、柔軟な接着材料で接合することも可能である。柔軟な接着剤とは、例えばエポキシ樹脂系の接着剤が使用できる。
【0037】
ここで、各変位アーム部材4は、先端側の長い第2アーム部4bが浮いた状態で第1導電性高分子膜1に接合しているが、根元側の短い第1アーム部4aを接合する第1導電性高分子膜1上の溝部1cが第1導電性高分子膜1の外側面1aに対して斜めに設けることで、前記した接合を実現可能としている。
【0038】
また、一対のアーム部材4,4が嵌め込まれる導電性高分子膜1の溝部1c,1cの位置は、変位ベース部材5の両端部5a,5bの凸部先端の下方で、凸部先端よりもやや内向き(変位ベース部材5の中心部5c側)に入り込んだ位置となっている。よって、溝部1c,1cに一対の第1アーム部4a,4aの下端がそれぞれ嵌め込まれると、図1A及び図1Bに示すように、第2アーム部4b,4bが、それぞれの先端から第1アーム部4a,4aとの連結部に向けて第1導電性高分子膜1側に傾斜した傾斜面をそれぞれ形成するようになる。
【0039】
変位ベース部材5は、第1導電性高分子膜1上に載置され、接合はしていない。そして、一対の変位アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端の近傍部分が、変位ベース部材5の両端部5a,5bで接している。変位ベース5部材は、例えば摩擦抵抗の少なく、耐腐食性の高い材料として、テフロン(登録商標)を使用することが望ましい。
【0040】
このように構成しているため、第1導電性高分子膜1が収縮する場合(図1Aの矢印100の方向に移動する場合)には、第1導電性高分子膜1と変位ベース部材5との接触面は互いに摺動するが、各変位アーム部材4のアーム部4aの先端は、第1導電性高分子膜1の溝部1cに嵌め込まれているため、第1導電性高分子膜1により移動する。すなわち、第1導電性高分子膜1の収縮(図1Aの矢印100の方向の移動)に伴い、溝部1cと溝部1cとの間隔が、変位ベース部材5の両端部5a、5b間の間隔よりも小さくなる。すると、変位アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端近傍の部分と、変位ベース部材5の両端部5a、5bとの接触部分が支点となり、この支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端が互いに近づく方向に回動する。言い換えれば、支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4,4の第2アーム部4b,4bの対向する先端が互いに遠ざかる方向(図1Aの矢印101の方向)に回動する。逆に、第1導電性高分子膜1の伸張(図1Aの矢印100の方向とは逆方向の移動)に伴い、溝部1cと溝部1cとの間隔が、収縮していた場合の間隔よりも大きくなる。すると、変位アーム部材4,4のアーム部4a,4aの先端近傍の部分と、変位ベース部材5の両端部5a、5bとの接触部分が支点となり、この支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端が互いに遠ざかる方向に回動する。言い換えれば、支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4,4の第2アーム部4b,4bの対向する先端が互いに近づく方向(図1Aの矢印101とは逆方向)に回動する。
【0041】
(導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変形例)
図1Cは、前記第1実施形態の変形例として、第1及び第2導電性高分子膜1,2の長手方向の両端部に、テンション用支持面40,40に一端が接続されたテンション用バネ41,41の他端を連結し、テンション用バネ41,41で第1及び第2導電性高分子膜1,2の両端部をテンション用支持面40,40に向けて引っ張ることにより、第1及び第2導電性高分子膜1,2を展張状態に保持するようにしたものである。
【0042】
なお、各テンション用支持面40は、実際には、前記導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置を搭載する機器のケースであってもよい。或いは、第1及び第2導電性高分子膜1,2を環状に配置した場合には、テンション用支持面40,40が同一の部材の表裏面で構成したり、又は、テンション用支持面40を配置することなく、1つ又は複数のテンション用バネ41の一端を第1及び第2導電性高分子膜1,2の一方の端部に連結し、前記1つ又は複数のテンション用バネ41の他端を第1及び第2導電性高分子膜1,2の他方の端部に連結するようにしてもよい。テンション用バネ41により導電性高分子膜1,2を引っ張ることにより、変位機構6を確実に動作させることが可能である。テンション用バネが無い場合には、導電性高分子膜1,2がたるんだ状況になる場合があり、導電性高分子膜1,2への電圧印加によって生じる収縮分が、導電性高分子膜1,2のたるんだ分に吸収されてしまい、変位機構6を動作させることができないことがある。テンション用バネ41には、そのような状態を防止して変位機構6を確実に動作させることができるといった大きな効果がある。
【0043】
(変位機構の変形例)
前記変位機構6は、前記した構成に限定されるものではなく、下記のように、種々の態様で実施できる。
【0044】
例えば、図1Dに示すように、各変位アーム部材4は、大略90度に屈曲したL字形状の板部材に限定されるものではなく、屈曲部分が湾曲した変位アーム部材4Dでもよい。この変形例では、変位ベース部材5の両端部5a,5bの凸部の曲率が所定の値に形成し難い場合に、変位アーム部材4Dを湾曲した形状とすることで、スムーズな駆動を発揮させることができる。
【0045】
また、図1Eに示すように、各変位アーム部材4の第1アーム部4aと第2アーム部4bとの屈曲角度は90度に限らず、鋭角でもよい。この変形例では、図1Cと異なり、変位アーム部材4の屈曲部が、直角に近い角度ではなく、鋭角になっており、変位ベース部材5の端部5a,5bと第1導電性高分子膜1の外側面1aとの間に、変位アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端が第1導電性高分子膜1の外側面1aに対して鋭角に挿入されて溝部1c,1c内に嵌め込まれるので、変位アーム部材4,4が第1導電性高分子膜1により確実に保持される。
【0046】
また、図1Fに示すように、変位アーム部材4F,4Fの第1アーム部4a,4aに対する第2アーム部4b,4bの屈曲方向は、第2アーム部4b,4bの先端同士が互いに対向する方向ではなく、第2アーム部4b,4bの先端同士が相反する方向に向けられ、かつ、第1アーム部4a,4aに対して第2アーム部4b,4bが鈍角に屈曲していてもよい。この場合、第1アーム部4a,4a同士の間隔を小さくするため、変位ベース部材5を図1Aの場合よりも短くしている。この例では、第1導電性高分子膜1が収縮する場合ではなく、第1導電性高分子膜1が伸張する場合(図1Fの矢印102の方向に移動する場合)に、溝部1cと溝部1cとの間隔が、変位ベース部材5の両端部5a、5b間の間隔よりも大きくなる。すると、変位アーム部材4F,4Fの第1アーム部4a,4aの先端付近の部分と、変位ベース部材5Fの両端部5a、5bとの接触部分を支点となり、この支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4F,4Fの第1アーム部4a,4aの先端が互いに遠ざかる方向(図1Fの矢印103の方向)に回動する。逆に、第1導電性高分子膜1が収縮する場合(図1Fの矢印102の方向とは逆方向に移動する場合)には、溝部1cと溝部1cとの間隔が、伸張していた場合の間隔よりも小さくなる。すると、変位アーム部材4F,4Fの第1アーム部4a,4aの先端付近の部分と、変位ベース部材5Fの両端部5a、5bとの接触部分を支点となり、この支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4F,4Fの第1アーム部4a,4aの先端が互いに近づく方向(図1Fの矢印103の方向とは逆方向)に回動する。
【0047】
この図1Fの変形例では、図1Eの変形例とは逆に、各変位アーム部材4Fの屈曲が鈍角になっており、変位ベース部材5の、第1導電性高分子膜1の長手方向と同方向の長さを短くすることができる。また、第1導電性高分子膜1の伸縮と各変位アーム部材4Fの上下の動きに関して、他の変位アーム部材4とは逆方向の動作を行わせることができる。
【0048】
また、図1Gに示すように、変位機構6は、2本の変位アーム部材4,4で構成するものに限らず、1本の変位アーム部材4Gで構成するようにしてもよい。この場合、変位ベース部材5Gの一方の端部5bは前記変位ベース部材5と同じであるが、他方の端部の下面には、第1導電性高分子膜1の外側面1aの係止溝1dに係止する係止突起5dを有して、変位ベース部材5Gが第1導電性高分子膜1の外側面1aに係止されている。これにより、第1導電性高分子膜1が収縮する場合(図1Gの矢印100の方向に移動する場合)に、溝部1cと係止溝1dとの間隔が、変位ベース部材5Gの一端部5bと係止突起5dと間の間隔よりも小さくなる。すると、変位アーム部材4Gの第1アーム部4aの先端付近の部分と、変位ベース部材5Gの一端部5bとの接触部分を支点となり、この支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4Gの第1アーム部4aの先端が係止突起5d側に向く方向(図1Fの矢印101の方向)に時計回りに回動する。逆に、第1導電性高分子膜1が伸張する場合(図1Gの矢印100の方向とは逆方向に移動する場合)に、溝部1cと係止溝1dとの間隔が、収縮していた場合の間隔よりも大きくなる。すると、変位アーム部材4Gの第1アーム部4aの先端付近の部分と、変位ベース部材5Gの一端部5bとの接触部分を支点となり、この支点回りに、てこの原理により、変位アーム部材4Gの第1アーム部4aの先端が係止突起5d側から離れる方向(図1Fの矢印101の方向とは逆方向)に反時計回りに回動する。
【0049】
この図1Gの変形例では、変位アーム部材4Gが、片側だけの場合であり、変位ベース部材5Gを第1導電性高分子膜1に係止突起5dと係止溝部1dとで固定する必要があるが、変位アーム部材4Gは1個のみで駆動することができて、構造が簡単なものとなる。また、変位アーム部材4Gの第2アーム部4bの長さを他のアーム部材4の第2アーム部4bの長さよりも長くすることができて、駆動変位を長くすることも可能である。
【0050】
また、図1Hに示すように、てこの支点として機能する、アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端付近の部分と、変位ベース部材5の両端部5a、5bとの接触部分は、図1Aに示すように凸部と平面とが単に接触するものに限らず、係合構造としてもよい。すなわち、各アーム部材4Hの第1アーム部4a,4aの先端付近に係合突起4h,4hを形成し、変位ベース部材5Hの両端部5a、5bには、係合突起4h,4hが回動自在に係合する係合凹部5h,5hを備えるようにしてもよい。この変形例では、変位アーム部材4Hと変位ベース部材5Hとの接触部分を強化することができ、支点が容易に外れないため、変位アーム部材4Hの動作をより確実に行うことができる。
【0051】
また、図1Iに示すように、てこの支点として機能する、アーム部材4,4の第1アーム部4a,4aの先端付近の部分と、変位ベース部材5の両端部5a、5bとの接触部分を、別の係合構造としてもよい。すなわち、各アーム部材4Iの第1アーム部4a,4aの先端付近に係合凹部4i,4iを形成し、変位ベース部材5Iの両端部5a、5bには、係合凹部4i,4iが回動自在に係合する係合突起5i,5iを備えるようにしてもよい。この変形例では、変位アーム部材4Iと変位ベース部材5Iとの接触部分を強化することができ、支点が容易に外れないため、変位アーム部材4Iの動作をより確実に行うことができる。
【0052】
(導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作)
図2の(A)、(B)、及び(C)は、図1A及び図1Bの第1実施形態の導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置へ可変直流電源42から電圧を印加したりしなかったりするときの動作の一例を示す、図1AのA−A線の断面図である。図2の(A)は、可変直流電源42から正電圧(例えば、+1V)を第1導電性高分子膜1に印加した状態、図2の(B)は、可変直流電源42から電圧を第1及び第2導電性高分子膜1,2に印加する前の状態(電圧を第1及び第2導電性高分子膜1,2に印加していない状態)、及び、図2の(C)は、可変直流電源42から負電圧(例えば、−1V)を第1導電性高分子膜1に印加した状態をそれぞれ示している。
【0053】
図2の(A)及び図2の(C)に示すように、第1導電性高分子膜1と第2導電性高分子膜2との間に電位差を与え、酸化還元反応を発生させることにより、第1導電性高分子膜1が膨張或いは収縮し、第2導電性高分子膜2が収縮或いは膨張する。すると、各変位アーム部材4は、第1導電性高分子膜1の膜厚方向(Z方向)に、収縮或いは伸張する(ここでは、各変位アーム部材4自体が収縮或いは伸張するのではなく、第1導電性高分子膜1の膜厚方向(Z方向)に対して、突出する量が減少或いは増加することを、「収縮或いは伸張する」と称している。)。
【0054】
まず、図2の(B)と(C)では、各部の寸法を示している。図2の(B)は、変位ベース部材5の両端部5a、5bに設けられた変位アーム部材4の第1アーム部4aの先端の外側縁部4cを基点に寸法を示している。すなわち、外側縁部4cから変位ベース部材5の中心部5cまでを長さLとし、外側縁部4cから、対向する変位ベース部材4の両端部の屈曲部分の外側端面までを2Lとする。図2の(C)は、変位アーム部材4のアームの長さを示しているが、短い方の第1アーム部4aが変位ベース部材5に接する部分(支点部分)から第1導電性高分子膜1の外側面1aまでの長さをm、長い方の第2アーム部2bの長さをnとし、その比をX=n/mと表現して、拡大率と呼ぶ。
【0055】
図2の(B)は、第1及び第2導電性高分子膜1と2との間に電位差が無い場合を示している。電位差が無い場合、変位アーム部材4の第2アーム部4bは、少し上昇している。この上昇分については図2の(C)を用いて説明する。
【0056】
図2の(C)において、電位差としては−1Vを第1導電性高分子膜1に印加している。この電位差では、第1導電性高分子膜1側に−1Vの負電圧、第2導電性高分子膜2側を0Vとして印加しており、この状態で、変位アーム部材4の第2アーム部4bが、変位ベース部材5に接するように、第2アーム部4bが最も縮んでいる(実際には、第2アーム部4b自体が縮むのではなく、第2アーム部4bが変位ベース部材5の上面沿いに配置された状態となっている)。
【0057】
これに対して、図2の(B)では、第1及び第2導電性高分子膜1と2の間には電位差は無いが、図2の(C)と比し、1V増加することになる。この1V増加分により第1導電性高分子膜1が収縮した変位量δ分だけ、各変位アーム部材4が、拡大率×変位量=X・δだけ、変位ベース部材5の膜厚方向に変位ベース部材5から突出している。
【0058】
さらに、図2の(A)では、図2の(B)と比して+1Vの正電圧が第1導電性高分子膜1に印加されており、図2の(C)とは逆電位で、第1導電性高分子膜1は、さらにδだけ収縮する。つまり、図2の(C)と比して、変位アーム部材4はX・2δだけ、変位ベース部材5の厚さ方向に変位ベース部材5から突出する。
【0059】
本実施形態では、これらの変位アーム部材4の突出を適宜活用して、ブレーキとして機能させることを考えるものである。
【0060】
(導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置)
次に、前述した変位機構6の変位アーム部材4の突出動作を活用する導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12を説明する。図3A、図3B、及び図3Cは、第1実施形態の導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12を示し、図2と同様に、図1Aに示したA−A線の断面図である。図1Aに示す変位機構6,6,6に対して、変位機構6,6,6と第2導電性高分子膜2の外側から、絶縁性の柔軟な帯状ケーシング7によって、変位機構6,6,6と第1導電性高分子膜1と電解質托体層3と第2導電性高分子膜2とを包含するように覆い、かつ帯状ケーシング7の外面側は摩擦係数を高くしている。帯状ケーシング7の外面側の摩擦係数を高くするため、例えば、アルミナコーティングを行なっている。よりコストダウンするためには、帯状ケーシング7の表面を一気にプラズマ処理する方法もある。別の例としては、帯状ケーシング7の表面を、サンドペーパ等で表面粗さを高くする機械的な処理方法で仕上げることもできる。また、帯状ケーシング7の具体的な一例としては、テフロン(登録商標)の薄膜が適している。テフロン(登録商標)の薄膜であれば、耐腐食性も高く、厚さ50μm程度以下になれば、フレキシブルなシートとして使用できて、好ましい。
【0061】
前記帯状ケーシング7で覆われた3個の変位機構6,6,6は、一定の間隙を有して相対的に駆動する一対の対向する第1及び第2ブレーキ固体面8a,8bの間に挿入して、導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12として使用する。すなわち、第1及び第2導電性高分子膜1,2に可変直流電源42から電荷を加えて、第1導電性高分子膜1の伸張及び収縮に伴い、各変位アーム部材4の第2アーム部4bの先端を第1導電性高分子膜1の膜厚方向に進退させる(各変位機構6を収縮及び伸張させる)ことによって、駆動する第1ブレーキ固体面8aに帯状ケーシング7を接触させ、ブレーキとして作用させる。ここでは、一方のブレーキ固体面(第2ブレーキ固体面)8bに変位機構6,6,6が支持されており、変位機構6,6,6の変位により、他方のブレーキ固体面(第1ブレーキ固体面)8aに帯状ケーシング7を介して接触させてブレーキ動作させるか、又は、ブレーキ固体面8aから帯状ケーシング7を離してブレーキ動作を解除させるようにするものである。電圧の印加に関しては、図2の(A)、(B)、(C)と、図3A、図3B、図3Cが対応している。つまり、図3Bは第1及び第2導電性高分子膜1と2に電位差が無く、図3Cが各変位アーム部材4が最も縮んだ状態である。逆に、図2の(A)と大きく異なるのが、図3Aである。図2の(A)では各変位アーム部材4は、第1導電性高分子膜1の収縮する変位量2δに応じて、X・2δだけ突出している。しかしながら、図3Aにおいては、ブレーキ固体面8aがブレーキ固体面8bから一定の間隙を有して存在するため、各変位アーム部材4の第2アーム部4bの先端が帯状ケーシング7を介してブレーキ固体面8aに接する時点から、各変位アーム部材4の第2アーム部4bの先端の突出量がブレーキ固体面8aで規制されて各変位アーム部材4の変位は一定となる。このとき、各変位アーム部材4の変位が一定となり、各変位アーム部材4が移動できずに規制される結果、第1導電性高分子膜1の収縮も停止されてしまい、第1導電性高分子膜1内の歪が増加することになる。図2の(A)に対して、変位量α分だけ、第1導電性高分子膜1の変位は小さくなり、印加電圧がゼロ時点からの変位量はX・2δではなく、X・(2δ−α)と少し小さくなる。そして、後述するように、変位量αに相当する歪が第1導電性高分子膜1に生じて、弾性係数から算出される応力が生じることになる。
【0062】
(レンズフォルダへの応用例)
具体的な動作について、第1実施形態の導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12をレンズフォルダへ応用した一例について、図4A〜図4F、図5、図6を用いて示す。
【0063】
図4A及び図4Bは、ボイスコイルモータ駆動形式の小型レンズフォルダ駆動装置の断面図である。固定された円筒状のマグネット9に対面して円筒状のコイル10が設置され、コイル10は円筒状のレンズフォルダ11と接続されている。コイル10への通電により生じる電場とマグネット9の作用で、レンズフォルダ11は、図4Aの矢印で示す上下に移動する。マグネット9とコイル10との間隙に、第1実施形態の導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12を設ける。アクチュエータ20は、図4Cに示すように、大略C字状を形成している。ここで、図4Cは、導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12の断面図であり、前記変位機構6を円周上に12個等間隔に並べて配置し、12個の変位機構6,…,6と第1導電性高分子膜1と電解質托体層3と第2導電性高分子膜2とを帯状ケーシング7で包むように覆い、全体として、大略C字状を形成している。ここでは、各変位機構6を半径方向に拡大して図示している。
【0064】
なお、9aはヨークである。すなわち、例えば、図3A〜図3Cでの一方のブレーキ固体面8bがマグネット9に、他方のブレーキ固体面8aがコイル10に対応すると考える。
【0065】
この構成により、例えばレンズフォルダ11の移動時にレンズフォルダ11を停止させたい位置で早期にレンズフォルダ11を固定したい場合、又はレンズフォルダ11を移動した後に所定の位置でレンズフォルダ11の停止を維持する場合、又は、コイル10への通電をオフにしてもレンズフォルダ11を所定の位置に固定したい場合には、第1及び第2導電性高分子膜1と2に通電することで各変位アーム部材4を突出させて、マグネット9とコイル10との間隙を帯状ケーシング7を介して埋める。このように動作することにより、レンズフォルダ11にブレーキを掛けることができる。逆に、第1及び第2導電性高分子膜1と2に対する通電をオフにすることで各変位アーム部材4での突出を無くし、マグネット9とコイル10との間隙をあけて、レンズフォルダ11に対するブレーキを解除して、レンズフォルダ11を移動可能な状態とする。図4Aは、第1及び第2導電性高分子膜1と2への通電前の様子であり、図4Bは第1及び第2導電性高分子膜1と2への通電後の様子である。ここで、例えば、コイル10の外径は12mmである。
【0066】
図4Dにおいて、帯状ケーシング7の両端を、テンション用接続バネ41で結合している。図1Cでも両端部をテンション用バネ41で引っ張る構成を示しているが、図4Dでは、円環状をした帯状ケーシング7において初めて実現できる構成である。なお、円環状とは、完全に円ではなくても、楕円、或いは、摩擦係数の低い多角形の周囲に帯状ケーシング7を巻き付けたような場合にも有効である。ここで、摩擦係数の低いとは、例えば、0.2以下が望ましい。多角形の場合には、角部の曲率が大きく影響するため、摩擦係数を低くするのが好ましい。
【0067】
さらに、図4Eでは、同じく円環状において、帯状ケーシング7の両端部を接続用部材43で完全に結合している。テンション用接続バネ41と異なり、接続用部材43には弾性は無いが、第1及び第2導電性高分子膜1,2自体が弾性体であるので、接続する際にテンションがあれば、十分に同様な効果が得られる。
【0068】
なお、図4D及び図4Eの両方において、帯状ケーシング7の両端部を接合する際には、単に表面を覆っている帯状ケーシング7のみの接着ではなく、第1及び第2導電性高分子膜1,2が確実に結合するように接続することが必要となる。
【0069】
また、図4Fはボイスコイルモータ駆動形式の小型レンズフォルダ全体の斜視図であり、図4Bに示したB−B線の断面図である。レンズフォルダ11はほぼ円筒形状をしており、レンズフォルダ11の中心軸と同心状に、帯状ケーシング7と、マグネット9と、そしてコイル10とが環状に配置されている。この図4Dでは、マグネット9の磁力線を集中させるためのヨーク9aは省略して図示している。なお、図4Dでは、マグネット9とコイル10とは円筒状をしたものを使用しているが、円周方向に複数に分割されているものでも同様な効果がある。
【0070】
以下、実施例について説明する。
【0071】
(実施例1)
第1及び第2導電性高分子膜1,2の材料は、ポリピロールであり、寸法は、共に長さは37mm、幅は5mm、厚さ15μmのものを使用した。
【0072】
電解質托体層3の材料は、イオン液体として前述した1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム又はビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドであり、このイオン液体をゲル化したものを使用し、寸法は、長さは37mm、幅は5mm、厚さ30μmの使用した。
【0073】
第1導電性高分子膜1は、前述したように長さ37mm、幅は5mmのものを使用した。つまり、コイル10の外径が12mmであり、この外径12mmから算出される周囲長さが約37.7mmであるため、帯状ケーシング7含めて、端部が離れた構成であることが分かる。
【0074】
一方、マグネット9とコイル10の間隙は、500μmである。ここで、厚さ15μmの第1及び第2導電性高分子膜1,2を使用し、厚さ30μmの電解質托体層3を使用するように設計しており、変位アーム部材4及び変位ベース部材5の厚さを各々100μmとした場合、図4Cの状態での変位アーム部材4の高さは200μm、帯状ケーシング7の厚さを20μmとすると、帯状ケーシング7を含む変位機構6の幅は300μmとなる。よって、ブレーキ機能における設計上の余裕を200μmとすると、マグネット9とコイル10の間隙は、500μmとなる。
【0075】
図4Aと図4Bでの導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12の変位量について述べる。第1導電性高分子膜1は、ポリピロールの場合で、±1Vの電圧の印加により約1%の変位が可能である。つまり、長さ37mmを使用しており、±1Vの電圧の印加により370μm伸縮する。図4Cに示したように12個の変位機構6をほぼ均等に配置しており、1個の変位機構6当たりの図2の(B)での長さLをL=1.2mmとした。また、変位アーム部材4の拡大率Xは、X=20とした。図2の(C)でのn=1.2mm、m=60μmである。つまり、電圧印加により、L=1.2mmが1%変位することで、図2の(A)での2δ=12μm、つまりX・2δ=240μmとなり、変位アーム部材4は240μmだけ突出することが可能ある。従って、図4Cに示した導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12におけるマグネット9とコイル10の間隙(言い換えれば、マグネット9に導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12が支持されている場合、導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12とコイル10との間隙)を、設計上の余裕も考慮して200μmとしているが、その間隙を、変位アーム部材4が240μm、つまり40μmを残して突出することで埋めることが可能となる。
【0076】
次に、図5と図6を用いて、上述の40μmの変位量に相当する応力に関して説明する。図5は、横軸に変位量、縦軸に応力を示している。横軸で変位量がゼロの位置から、変位アーム部材4の突出を開始して、200μmに到達する。200μmに到達すると、変位アーム部材4は、帯状ケーシング7を介して、コイル10の固体面(ブレーキ固体面8aに相当)に衝突しているため、コイル10の固体面に衝突した以降は、変位アーム部材4は変位できない(変位アーム部材4は200μmの間隙以上に変位できない)。一方、第1導電性高分子膜1は電圧印加によって継続して240μm相当まで収縮しようと変形する。その結果、第1導電性高分子膜1には、40μm相当分の変位量だけ伸張するのに必要な応力が働くことになる。具体的には、各々の変位アーム部材4は拡大率がX=20であり、40μm突出するための第1導電性高分子膜1上での変位量は、40/20=2μmである。図3Aではα=2μmとなる。L=1.2mmに対して2μmは、0.17%歪に相当する。
【0077】
一方、図6は、横軸に歪率を、縦軸は応力である。図6は、所謂、引張試験により弾性係数を求める特性であり、この場合はポリピロールを使用して、第1導電性高分子膜1の特性グラフの一例として示している。ここで、上述の0.17%歪に相当する値は、応力で2.0MPaに相当する値であり(図5に示したように、変位アーム部材4上では、拡大率の逆数から、2.0/20=0.1MPaに相当し)、単位換算して、204gr/mm2である。そして、第1導電性高分子膜1の膜断面積が15μm×5mmから、15grの力が発生できる。したがって、図5に示したように、200μmまで突出した変位アーム部材4が、帯状ケーシング7を介して、固体面(ブレーキ固体面8aに相当)に衝突した後は、残り40μmの歪に相当する反力が15gr、つまり拡大率X=20から、15/20=0.75grの力が、各変位アーム部材4の第1アーム部の先端から固体壁(ブレーキ固体面8bに相当)に加えられることになる。
【0078】
以上のように、図4Aに示した第1実施形態の導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12をレンズフォルダ駆動装置のブレーキ装置へ応用した場合、マグネット9とコイル10の500μmの間隙に挿入された300μm厚さの導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12の第1導電性高分子膜1に電圧を印加することで、−1Vから+1Vに応じて、導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12とコイル10との間の200μmの隙間を埋めた上に、さらに0.75grの力でブレーキ機能を実現することが可能である。なお、導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12では、変位アーム部材4は計24個有するので、0.75gr×24=18grのブレーキ力が働く。なお、帯状ケーシング7の外側表面は摩擦係数が高く、一例として摩擦係数μ=0.7の材料を使用した場合には、マグネット9、或いはコイル10の移動方向に対して18gr×0.7=約13grのブレーキ力が達成できる。なお、レンズフォルダ11とコイル10の総重量は通常、5gr以下であり、十分なブレーキ力が得られる。
【0079】
なお、図3A或いは図3Bに示したように、固体面(ブレーキ固体面8aに相当)からの衝撃が発生した際にも、各変位アーム部材4を介して、第1導電性高分子膜1に衝撃が伝播する。第1導電性高分子膜1は、例えば固有振動数が40〜60Hz程度の特性を有することが多く、緩衝材としての優れた機能を保有している。その結果、急激なブレーキ機能又はブレーキ時の固体面(ブレーキ固体面8aに相当)の振動、さらにブレーキする以前の固体面(ブレーキ固体面8aに相当)の大きな動きによる衝撃も想定されるが、それらの衝撃を第1導電性高分子膜1で吸収することが可能である点も、重要な特徴である。
【0080】
導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12では、マグネット9とコイル10との両側のどちらのブレーキ固体面(ブレーキ固体面8a及びブレーキ固体面8bに相当)からの衝撃にも対応できる。特に、図4Aのように複数のレンズを有するレンズフォルダ11等の光学部品は従来、落下等の衝撃に弱かった。ところが、第1実施形態の導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12の構成によって、小型で衝撃に強いブレーキ機能を実現できる。
【0081】
以上のように、第1実施形態によれば、第1導電性高分子膜1の収縮方向及び膨張(伸張)方向の双方向において各変位機構6が収縮及び伸張する(各変位アーム部材4の第2アーム部4bの先端が第1導電性高分子膜1の膜厚方向に進退する)構成により、小型で衝撃に強く、軽量化、静音化が可能な導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12を得ることができる。
【0082】
また、柔軟な帯状ケーシング7による摩擦係数が高い構成として、例えばアルミナ、シリカ、又は、ジルコンサンドなどのモース硬度3以上の固い無機研磨剤等を使用することにより、高いブレーキ性能が実現可能な導電性高分子アクチュエータ20を用いたブレーキ装置12を得ることができる。
【0083】
(第2実施形態)
図7A〜図9は、本発明にかかる第2実施形態の導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aの一例を示す図である。なお、前述した第1実施形態と同様な機能を果たす部分には、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0084】
第2実施形態の実施例でも、第1実施形態と同じく第1及び第2導電性高分子膜1,2は、厚さ15μm、幅は5mmのもの、電解質托体層3は厚さ30μmの寸法のものを一例として使用した。
【0085】
図7Aに示したように、第1導電性高分子膜1と第2導電性高分子膜2とが電解質托体層3を介して接続されるように面対向しているが、第2導電性高分子膜2を対称面に、第2導電性高分子膜2の両面に、第3導電性高分子膜の一例として機能する第1導電性高分子膜1と電解質托体層(第2電解質托体層)3を設けて導電性高分子アクチュエータ20Aを構成しており、さらに両方の第1導電性高分子膜1,1の外側面において、複数の変位機構6,…,6を設けてある点が、図1Aの第1実施形態と異なる点である。各変位機構6は、一対の変位アーム部材4,4と変位ベース部材5とで構成している点は同じである。なお、説明の都合上、第1実施形態と同じ位置に配置された第1導電性高分子膜(図7Aの上側の第1導電性高分子膜)1に配置された変位機構6を第1変位機構6と呼び、第1実施形態には無かった第3導電性高分子膜の一例として機能する第1導電性高分子膜(図7Aの下側の第1導電性高分子膜)1に配置された変位機構6を第2変位機構6と呼ぶこともある。
【0086】
図7Bは、図7Aに示した第1及び第2導電性高分子膜1と2、及び電解質托体層3を分解して示した図である。各変位アーム部材4は、両側の第1導電性高分子膜1,1にそれぞれ接合されている点、及び、2枚の第1導電性高分子膜1,1及び第2導電性高分子膜2とに電圧をそれぞれ印加するための可変直流電源42を2個配置している点(図8A及び図8B参照)以外は、第1実施形態と同じである。
【0087】
次に、導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aとしての機能を説明する。図8A及び図8Bには、第2実施形態の導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aを示しており、図7Aに示したA−A線沿いの断面図である。図8Aの上下両側の変位機構6,6,6と第1導電性高分子膜1,1と電解質托体層3,3と第2導電性高分子膜2とを柔軟な帯状ケーシング7で包含するように覆っている。電圧の印加に関しては、第1実施形態での図3A及び図3Bに対して、図8A及び図8Bが対応している。つまり、図8Bは、第1及び第2導電性高分子膜1と2に電位差が無く、図3Cに相当する変位アーム部材4が最も縮んだ状態は使用していない。したがって、第1実施形態と異なる点は、両側の第1導電性高分子膜1,1に電圧印加しており、変位アーム部材4,…,4のそれぞれは、両側の第1導電性高分子膜1,1のそれぞれ収縮する変位量δに応じて、X・δだけ突出するが、両側に変位アーム部材4,…,4が配置されているので、ブレーキ固体面8aと導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aとの間隙に対して、2・X・δだけ変位できる。つまり、図3Cに相当する逆電位の−1Vを第1導電性高分子膜1に印加せずとも、十分な変位量が実現できることになる。
【0088】
次に、図8Aと図8Bにて、変位について説明する。βは変位アーム部材4,…,4がブレーキ固体面8aに衝突した後の仮想的な変位量で、第1実施形態でのαに相当するが、値は異なるので記号を区別して使用する。その衝突の結果、ブレーキ固体面8aへの変位アーム部材4,…,4の衝突までに、片側の第1導電性高分子膜1の収縮する変位量(2δ−β)に対して、片側の変位アーム部材4では、拡大率を考慮したX・(2δ−β)−X・δ=X・(δ−β)だけ変位する。両端では、2・X・(δ−β)だけ変位する。
【0089】
因みに、第1実施形態では、−1V電位から+1V電位までで、X・(2δ−α)の変位量であった。
【0090】
これらの定式化から、第2実施形態では、第1実施形態と比して、ブレーキ固体面8aまでの間隙が同じ寸法Gと仮定した場合には、第2実施形態では、G=2・X・(δ−β)、第1実施形態ではG=X・(2δ−α)となる。つまり、Gが同じ値の下では、β=α/2となり、第2実施形態の方が、第1実施形態と比して、衝突後の変位量が1/2に減少し、その分だけ、ブレーキ固体面8aへの力も1/2に減少することが予測できる。
【0091】
具体的には、第1実施形態で示した図4A、図4B、及び図4Cと同じボイスコイルモータ駆動形式の小型レンズフォルダを使用して説明する。図9には、図4Cに相当するが、第2実施形態での断面を示している。図9は、導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aの断面図であるが、変位機構6を半径方向に拡大図示している。第1導電性高分子膜1としては、一例として、前述したように長さ37mm、幅は5mmのものを使用している。また、マグネット9とコイル10の間隙は、300μmである。ここで、厚さ15μmの第1及び第2導電性高分子膜1,2を使用し、厚さ30μmの電解質托体層3とで設計しており、変位アーム部材4、及び変位ベース部材5の厚さを各々100μmとした場合、図4C状態での変位アーム部材4の高さは200μm、帯状ケーシング7の厚さを20μmとすると、帯状ケーシング7を含む変位機構6の幅は545μmとなる。よって、ブレーキ機能における間隙を設計上の余裕も考慮して200μmとすると、マグネット9とコイル10の間隙は、745μmとなる。なお、導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aの両側に間隙を有する場合は、間隙は各々100μmである。
【0092】
第1導電性高分子膜1は、ポリピロールの場合で、±1Vの電圧印加により約1%変位が可能であるが、第2実施形態では0V〜1Vのみの印加であるから、約.0.5%の変位となる。つまり、長さ37mmの第1導電性高分子膜1を使用しており、+1Vの電圧印加により、第1導電性高分子膜1は185μm伸縮する。図4Cと同様に、図9に示したように12個の小型の変位機構6,…,6をほぼ均等に円周状に配置しており、1個の変位機構6当たりの図2の(B)での長さLはL=1.2mmであり、変位アーム部材4の拡大率XもX=20と同じとした。つまり、電圧印加により、L=1.2mmが0.5%変位することで、δ=6μm、つまりX・δ=120μmとなり、片側の変位アーム部材4は120μmだけ突出することになる。したがって、図9に示したブレーキ機構におけるマグネット9とコイル10の間隙を、設計上の余裕も考慮して200μmとしているが、その間隙を片側の変位アーム部材4が120μm、つまり20μmを残して突出することで埋めることが可能となる。
【0093】
次に、前述の図6を用いて、上述の20μmの変位量に相当する応力に関して説明する。第1実施形態と同様に考えると、第1導電性高分子膜1には20μm相当分の変位量だけ伸張するのに必要な応力が働くことになる。具体的には、各々の変位アーム部材4は拡大率がX=20であり、20μmの突出するための第1導電性高分子膜1上での変位量は、20/20=1μmである。図8Aでのα=1μmとなる。L=1.2mmに対して1μmは、0.083%歪に相当する。一方、図6は、横軸に歪率を、縦軸に応力をとっており、0.083%歪相当は、応力で1.0MPa相当であり、単位換算して、102gr/mm2である。そして、第1導電性高分子膜1の膜断面積が15μm×5mmから、7.7grの力が発生できる。したがって、100μmまで突出した変位アーム部材4がブレーキ固体面8aに衝突した後は、残り20μmの歪に相当する反力として7.7grの力が、つまり拡大率X=20から、7.7/20=0.39grの力が、変位アーム部材4の各先端から固体壁(ブレーキ固体面8aに相当)に加えられることを意味する。さらに、変位アーム部材4は計24個有するので、0.39gr×24=9.4grのブレーキ力が働く。そして、帯状ケーシング7の外側表面の摩擦係数μ=0.7の材料を使用した場合に、マグネット9、或いはコイル10の移動方向に対して9.4gr×0.7=約6.6grのブレーキ力が達成できる。なお、レンズフォルダ11とコイル10の総重量は通常、5gr以下であり、ブレーキ機能は実現できる。
【0094】
以上のように、第1実施形態と異なり、第2実施形態ではブレーキ機能を発現していない際に非ブレーキ時に通電が不要である。ブレーキ固体面8aと導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aとの間隙が設計上の余裕から決定されることが大きい中、小型の変位機構6,…,6を導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aの両面に配置することで、片側の第1導電性高分子膜1の変位量が少なくても、ブレーキに至るに必要な変位量を実現することができ、かつ非ブレーキ時での省エネ効果がある点が、特徴的である。
【0095】
なお、ブレーキ力が不足する場合には、第1導電性高分子膜1の変位量を増加させることが望ましく、そのために印加電圧を上昇させる必要がある。第1及び第2導電性高分子膜1と2の耐久性の範囲での制御が要求される。
【0096】
最後に、逆説的な説明になるが、図8A及び図8Bにおいて、ブレーキ機能を発現している際に+1Vの印加電圧を掛けているが、これに限らず、逆に、図12A及び図12Bに示すように、導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aとブレーキ固体面8a,8b(コイル10とマグネット9とに相当。)との間隙を無くすように配置してブレーキ機能時には印加電圧をゼロにする(図12A参照)。一方、図8Bに相当する非ブレーキ時には、−1Vを印加して導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aとブレーキ固体面8a,8b(コイル10とマグネット9とに相当。)との間に間隙を形成する(図12B参照)制御方法もある。具体的には、ブレーキ固体面8aのみ、又は、ブレーキ固体面8a及びブレーキ固体面8bの両方に導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aの変位機構6が帯状ケーシング7を介して接触している際に、印加電圧がゼロとなるように変位量を設計している。このとき、導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aは、ブレーキ固体面8aに対向するブレーキ固体面8bに支持されるか、又は、ブレーキ固体面8a及び8b以外の他の支持部材により、ブレーキ固体面8a及びブレーキ固体面8bとの間に支持されるようにする。
【0097】
この構成においては、同じ第2実施形態であっても印加電圧の制御方法を変更するだけで、非ブレーキ時にのみ電圧印加が必要で、ブレーキ時に電圧ゼロが実現できる。つまり、レンズフォルダ11等の保持には、駆動時と同様にコイル10に非常に多くの電流が必要であり、また装置全体の電源オフ後の搬送時にもレンズフォルダ11が衝撃に強い第1導電性高分子膜1に保持されていることが望ましく、かつ、それらの時間帯が非常に長時間を占有することが多い。したがって、このようなケースでは、省エネ効果がさらに大きいことが予測できる。このように、変位機構6を導電性高分子アクチュエータ20Aの両面に配置して、かつ非ブレーキ時に電圧印加する方法により、ブレーキ時あるいは搬送時に、電源オフできるブレーキ機能が実現できる。すなわち、レンズなどの光学部品を駆動しない状態が長時間継続するケースでは有効であり、例えば、商品として輸送したり保管する際は勿論、ユーザが使用する際の多くの場合、例えば撮影時の合焦時、又は、タイマー撮影時など、レンズなどの光学部品の位置を固定する場合には、消費電力が発生しない方が省エネとなるためである。
【0098】
以上のように、第2実施形態によれば、2枚の第1導電性高分子膜1,1のそれぞれの収縮方向或いは膨張方向において各変位機構6の変位アーム部材4の第2アーム部4bの先端が各第1導電性高分子膜1の膜厚方向に対して進退する(各変位機構6を収縮及び伸張する)構成により、小型で衝撃に強く、軽量化、静音化が可能なことに加えて、大きな変位量で駆動が可能な導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aを得ることができる。
【0099】
また、柔軟な帯状ケーシング7による摩擦係数が高い構成により、大きな変位量で駆動する際にも、高いブレーキ性能が実現可能な導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aを得ることができる。
【0100】
また、ブレーキ固体面8aのみ、又は、ブレーキ固体面8a及びブレーキ固体面8bの両方に導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aの各変位機構6が帯状ケーシング7を介して接触してブレーキが機能している際に電位差を与える必要がない構成により、大きな変位量で駆動する際にも省電力である導電性高分子アクチュエータ20Aを用いたブレーキ装置12Aを得ることができる。なお、第2実施形態で実現した、ブレーキが機能している際に電位差を与える必要がない構成に関して、第1導電性高分子膜1への印加電圧と変位量、或いは変位機構6の設置間隔又は拡大率を適切に設けることで、第1実施形態でも実現可能である。
【0101】
なお、図10A及び図10Bには、本発明の前記第1実施形態或いは前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータ20,20Aを用いたブレーキ装置12,12Aをレンズフォルダ11へ応用した際の、レンズフォルダ11を搭載した携帯電話12及びデジタルカメラ13を示す図である。
【0102】
なお、本発明は、円筒状のブレーキ構成でなくとも、例えば図11に示したような直線状の帯状ケーシング7で覆われた前記第1又は第2実施形態の導電性高分子アクチュエータ20,20Aを用いたブレーキ装置12,12Aを1個又は複数個使用する方法もある。レンズフォルダ11は光学部品の性質上、円筒であることが多く、マグネット9及びコイル10も円筒となるが、帯状ケーシング7で覆われた前記第1又は第2実施形態の導電性高分子アクチュエータ20,20Aを用いたブレーキ装置12,12Aは、平板型で直線状でも、前記した環状のものとまったく同様に機能する。
【0103】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【0104】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に係る導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置は、間隙を有して相対的に駆動する固体面の間に挿入して使用し、電荷を加えて膜厚方向に収縮及び伸張することによって、駆動する固体面にブレーキとして作用させるもので、導電性高分子膜の弾性により衝撃吸収が可能で、導電性高分子膜が薄く、軽く、静かに伸縮することから、小型で衝撃に強く、軽量化、静音化、省電力化が実現できるものであり、レンズフォルダの駆動部(駆動装置)のブレーキ装置として好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1A】本発明の第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の部分的な外観を示す斜視図である。
【図1B】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の一部を分解した状態を示す斜視図である。
【図1C】本発明の前記第1実施形態の変形例における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の部分的な外観を示す斜視図である。
【図1D】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変位機構の変形例を示す断面図である。
【図1E】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変位機構の変形例を示す断面図である。
【図1F】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変位機構の変形例を示す断面図である。
【図1G】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変位機構の変形例を示す断面図である。
【図1H】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変位機構の変形例を示す断面図である。
【図1I】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の変位機構の変形例を示す断面図である。
【図2】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す図1AのA−A線の断面図であり、(A)は、可変直流電源から正電圧を第1導電性高分子膜に印加した状態、(B)は、可変直流電源から電圧を第1及び第2導電性高分子膜に印加する前の状態、及び、(C)は、可変直流電源から負電圧を第1導電性高分子膜に印加した状態をそれぞれ示す図である。
【図3A】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図3B】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図3C】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図4A】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す部分断面図である。
【図4B】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す部分断面図である。
【図4C】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す断面図である。
【図4D】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す断面図である。
【図4E】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す一部断面図である。
【図4F】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す斜視図である。
【図5】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置における変位アーム部材の変位動作の一例であって、横軸に変位量、縦軸に応力を示すグラフである。
【図6】本発明の前記第1実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置における導電性高分子膜の特性の一例であって、横軸に歪率を、縦軸は応力を示すグラフである。
【図7A】本発明の第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の部分的な外観を示す斜視図である。
【図7B】本発明の前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の一部分解した外観を示す斜視図である。
【図8A】本発明の前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図8B】本発明の前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図9】本発明の前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへの応用を示す部分断面図である。
【図10A】本発明の前記第1実施形態或いは前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへ応用した際の、レンズフォルダを搭載した携帯電話を示す斜視図である。
【図10B】本発明の前記第1実施形態或いは前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへ応用した際の、レンズフォルダを搭載したデジタルカメラを示す斜視図である。
【図11】本発明の前記第1実施形態或いは前記第2実施形態における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置のレンズフォルダへ応用した際の、平板型で直線状の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置を示す斜視図である。
【図12A】本発明の前記第2実施形態の変形例における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図12B】本発明の前記第2実施形態の前記変形例における導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置の動作を示す断面図である。
【図13】特許文献1の従来のレンズフォルダの駆動装置の一例を示す斜視図である。
【図14】特許文献2の従来のレンズフォルダの駆動装置の別の例を示す斜視図である。
【図15】特許文献3の従来のレンズフォルダの駆動装置のさらに別の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0107】
1 第1導電性高分子膜
1a 外側面
1c 溝部
1d 係止溝
2 第2導電性高分子膜
3 電解質托体層
4,4D,4F,4G,4H,4I 変位アーム部材
4a 第1アーム部
4b 第2アーム部
4c 第1アーム部の先端の外側縁部
4h 係合突起
4i 係合凹部
5,5F,5G,5H,5I 変位ベース部材
5a,5b 端部
5c 中心部
5d 係止突起
5h 係合凹部
5i 係合突起
6 変位機構
7 帯状ケーシング
8a,8b ブレーキ固体面
9 マグネット
9a ヨーク
10 コイル
11 レンズフォルダ
12,12A 導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置
20,20A 導電性高分子アクチュエータ
40 テンション用支持面
41 テンション用バネ
42 可変直流電源
43 接続用部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電性高分子膜と第2導電性高分子膜とが第1電解質托体層を介して接続されるように面対向させ、前記第1導電性高分子膜の外側面に、第1ブレーキ固体面に対向しかつ前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮駆動可能な第1変位機構を設けて、
前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えて前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮させることにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記第1ブレーキ固体面に接離し、ブレーキ動作又はブレーキ動作解除を行なうことを特徴とする導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項2】
前記第1変位機構は、一端が前記第1導電性高分子膜の溝部に嵌め込まれた第1アーム部と、前記第1アーム部に対して屈曲して連結された第2アーム部とを有する板状のアーム部材と、前記第1導電性高分子膜の前記外側面に摺動可能に載置され、一端部に前記アーム部材の前記第1アーム部が常時接触し、接触部分が支点となって前記アーム部材が支点回りに回動して、前記第2アーム部の先端が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に進退して、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の前記膜厚方向に伸縮する、請求項1に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項3】
前記第2導電性高分子膜において、前記第1導電性高分子膜とは反対側に第2電解質托体層を介して接続される第3導電性高分子膜を有し、前記第3導電性高分子膜の外側面に、第2ブレーキ固体面に対向しかつ前記第3導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮駆動可能な第2変位機構を設けて、
前記第3導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第3導電性高分子膜が膨張或いは収縮することにより、前記第2変位機構が前記第3導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記第2ブレーキ固体面に接離し、ブレーキ動作又はブレーキ動作解除を行なう、請求項1又は2に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項4】
前記第1変位機構と前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の外側に設けられて、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜と前記第1電解質托体層と前記第1変位機構とを包含する、帯状ケーシングを備える、請求項1又は2に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項5】
前記第1変位機構と前記第1導電性高分子膜と前記第2変位機構と前記第3導電性高分子膜の外側に設けられて、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜と前記第3導電性高分子膜と前記第1電解質托体層と前記第2電解質托体層と前記第1変位機構と前記第2変位機構とを包含する、帯状ケーシングを備える、請求項3に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項6】
前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第1導電性高分子膜が膨張することにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の前記膜厚方向に収縮する、請求項1,2,及び4のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項7】
前記第3導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第3導電性高分子膜が膨張することにより、前記第2変位機構が前記第3導電性高分子膜の前記膜厚方向に収縮する、請求項3又は5に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項8】
前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差が無い状態で前記帯状ケーシングを介して前記第1変位機構は前記第1ブレーキ固体面に接触してブレーキ動作を行なう一方、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮することにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に収縮して前記第1ブレーキ固体面から離れてブレーキ動作解除を行なう、請求項1,2,4,及び6のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項9】
前記変位機構を複数個、環状に配置されて、前記酸化還元反応により前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮することにより、前記全ての変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記ブレーキ固体面に接離する、請求項1〜8のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項10】
前記第1導電性高分子膜及び前記第2導電性高分子膜の両端部に張力を付与して前記第1導電性高分子膜及び前記第2導電性高分子膜を展張状態に保持するバネをさらに備える、請求項1〜9のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項1】
第1導電性高分子膜と第2導電性高分子膜とが第1電解質托体層を介して接続されるように面対向させ、前記第1導電性高分子膜の外側面に、第1ブレーキ固体面に対向しかつ前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮駆動可能な第1変位機構を設けて、
前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えて前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮させることにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記第1ブレーキ固体面に接離し、ブレーキ動作又はブレーキ動作解除を行なうことを特徴とする導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項2】
前記第1変位機構は、一端が前記第1導電性高分子膜の溝部に嵌め込まれた第1アーム部と、前記第1アーム部に対して屈曲して連結された第2アーム部とを有する板状のアーム部材と、前記第1導電性高分子膜の前記外側面に摺動可能に載置され、一端部に前記アーム部材の前記第1アーム部が常時接触し、接触部分が支点となって前記アーム部材が支点回りに回動して、前記第2アーム部の先端が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に進退して、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の前記膜厚方向に伸縮する、請求項1に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項3】
前記第2導電性高分子膜において、前記第1導電性高分子膜とは反対側に第2電解質托体層を介して接続される第3導電性高分子膜を有し、前記第3導電性高分子膜の外側面に、第2ブレーキ固体面に対向しかつ前記第3導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮駆動可能な第2変位機構を設けて、
前記第3導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第3導電性高分子膜が膨張或いは収縮することにより、前記第2変位機構が前記第3導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記第2ブレーキ固体面に接離し、ブレーキ動作又はブレーキ動作解除を行なう、請求項1又は2に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項4】
前記第1変位機構と前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の外側に設けられて、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜と前記第1電解質托体層と前記第1変位機構とを包含する、帯状ケーシングを備える、請求項1又は2に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項5】
前記第1変位機構と前記第1導電性高分子膜と前記第2変位機構と前記第3導電性高分子膜の外側に設けられて、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜と前記第3導電性高分子膜と前記第1電解質托体層と前記第2電解質托体層と前記第1変位機構と前記第2変位機構とを包含する、帯状ケーシングを備える、請求項3に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項6】
前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第1導電性高分子膜が膨張することにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の前記膜厚方向に収縮する、請求項1,2,及び4のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項7】
前記第3導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第3導電性高分子膜が膨張することにより、前記第2変位機構が前記第3導電性高分子膜の前記膜厚方向に収縮する、請求項3又は5に記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項8】
前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差が無い状態で前記帯状ケーシングを介して前記第1変位機構は前記第1ブレーキ固体面に接触してブレーキ動作を行なう一方、前記第1導電性高分子膜と前記第2導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮することにより、前記第1変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に収縮して前記第1ブレーキ固体面から離れてブレーキ動作解除を行なう、請求項1,2,4,及び6のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項9】
前記変位機構を複数個、環状に配置されて、前記酸化還元反応により前記第1導電性高分子膜が膨張或いは収縮することにより、前記全ての変位機構が前記第1導電性高分子膜の膜厚方向に伸縮して前記ブレーキ固体面に接離する、請求項1〜8のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【請求項10】
前記第1導電性高分子膜及び前記第2導電性高分子膜の両端部に張力を付与して前記第1導電性高分子膜及び前記第2導電性高分子膜を展張状態に保持するバネをさらに備える、請求項1〜9のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータを用いたブレーキ装置。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図12A】
【図12B】
【図4F】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図12A】
【図12B】
【図4F】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−159780(P2010−159780A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−804(P2009−804)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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