説明

導電性高分子単体の合成方法

【課題】高純度3,4−エチレンジオキシチオフェンを制作する導電性高分子単体の合成方法を提供する。
【解決手段】導電性高分子単体の合成方法はチオジグリコール酸を初期物とし、順番に進行させる。はじめにエステル化反応、次いで環化反応、閉環反応、酸化反応と脱炭酸反応を行い、前記閉環反応はハロゲン反応物を使用せずに、高純度の3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)を備える導電性高分子単体産物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性高分子単体の合成方法に関する。特に高純度3,4-エチレンジオキシチオフェン(3,4- ethylenedioxythiophene,EDT)を製作する導電性高分子単体の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1958年、Nattaはアルミニウム及びチタンを含む有機物を触媒、いわゆるチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒として利用し、アセチレンガスを重合しポリアセチレン(polyacetylene,PA)を合成した。当時、彼はこの共役高分子が導電性を備えることを、既に発見していたが、研究を継続しなかった。
1970年代初期、東京工業大学白川英樹(Hideki Shirakawa)博士が指導する韓国人学生が、触媒量を1000倍に誤って増やして、銀白色のcis-ポリアセチレン(cis-PA)薄膜が合成された。この薄膜を真空或いは不活性ガス中で加熱すると、cis-ポリアセチレンは金黄色のトランス-ポリアセチレン(trans-PA)となる。当時彼は、この膜を導電体とできることに気づいていなかった。
2000年、白川英樹、米国人化学者Alan G. MacDiarmid及び物理学者Alan J. Heegerはポリアセチレン(PA)をヨード蒸気中で酸化反応処理すると、ポリアセチレン(PA)の導電度が大幅に上昇し十億(109)倍近くになることを発見し、ノーベル化学賞を受賞した。この3人の科学者は導電性高分子の発見及び発展において革命的な貢献を果たし、工業における実用化の道を開いた。彼らの研究は、一般人の高分子(樹脂)に対する絶縁体としての印象を変え、導電性高分子は半導体及び導体の特性を同時に持つことを示した。これ以降、導電性高分子に対する研究は国際的に急速に進み、多くの重要な応用がなされるようになった。
【0003】
近年、導電性高分子材料の高速発展によって、一般の金属材料を利用する電子製品、情報製品はさらにコンパクトで薄く、軽量になって来ている。導電性高分子は特殊な光電特性を備えるため、その応用領域は極めて広くにわたる。例えば(1)発光ダイオード(Light-emitting diode,LED)、(2)電界効果トランジスター(Field effect transistor,FET)、(3)エレクトロクロミック(Electrochromic)、(4)充電式電池、(5)ソーラー電池、(6)バイオメディカルセンサー、(7)固体キャパシター(Solid capacitor)、(8) 電磁波シールド(EMI shielding)等がある。
過去30年間において、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロリドン(polypyrrolidone)及びポリチオフェン(polythiophene)等役に立つ導電性高分子のいくつかは既に開発されている。前述の高分子中に、チオフェン(thiophene)はポリチオフェンの単体で、比較的早くから用いられているが、その欠点は溶解度が低く、かつ色が深暗であるため、加工と応用に不利な点である。
【0004】
1980年代後期、ドイツのバイエル会社(Bayer)は一つ新しいポリチオフェン派生物の開発に成功した。それがポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene),PEDT)である。ここで、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDT)はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の単体である。
当初、PEDTは不溶水の高分子重合物であることを発見したが、非常に高い電導率(300 S/cm)及び薄膜の透明度を備え、しかも酸化されにくい等の独特の特性を表現した。PEDT及びその派生物は良好な導電特性を備えるため、固体電解キャパシター、プラスチック帯電防止コーティング及び写真フィルムコーティング等領域において広く応用されている。
【0005】
キャパシターの領域においては、従来のアルミニウム電解キャパシターは液態電解液の特性を受け、様々の欠点が存在していた。例えば(1)電量が使用時に周囲温度及び湿度の影響を受け変化し易いため、安定性が不良、(2)キャパシターは使用時間によって退化し、使用寿命の限界があり、(3)キャパシター中には抵抗損失(resistance loss)と誘電損失(dielectric loss)現象が存在し、電力を消費し熱を生じ、温度が上昇するため、キャパシターの劣化を加速し、(4)高周波特性が悪くインダクタンス性を呈するため、このタイプのキャパシターの高周波回路上での使用には制限がある。
よって、次世代のアルミニウム電解キャパシターは、高導電度及び優れた熱安定性を備える導電性高分子材料を固態電解質として採用し始め、伝統的なアルミニウム電解キャパシター内の電解液に置換し、これにより従来の液態アルミニウム電解キャパシターの欠点を大幅に改善し、極めて優れた電器特性と信頼性を示している。
例えば、導電性高分子固態アルミニウム電解キャパシターのリップル電流受止め力は同規格の従来の液態アルミニウム電解キャパシターの約10倍で、且つ温度の影響を受けない。キャパシターの高周波抵抗は従来のキャパシターの半分に達せず、同時に極めて優れた使用寿命を備える。よって、導電性高分子アルミニウム固体電解キャパシターは既に次世代固体電解キャパシターの開発の主流となっており、導電性高分子固体キャパシターは尖端かつ先進のキャパシターの代名詞である。
【0006】
2003年、バイエル会社(Bayer)が取得した米国公告第6,528,662号特許は3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸派生物(3,4-alkylenedioxythiophene -2,5-dicarboxylic acid derivatives)の製作方法を掲示している。
ここで、3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸派生物は、チオジアセチック酸ジエステル(thiodiacetic acid diesters)とオクサリック酸ジエステル(oxalic acid diesters)を経由し、3,4-ジハイドロキシチオフェン-2,5-ジカルボキシ酸エステル (3,4-dihydroxythiophene-2,5-dicarboxylic acid esters)を形成し、さらにジハロアルカン(dihaloalkanes,ジクロロエサンdichloroethane等)を利用し、3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸エステル(3,4-alkylenedioxythiophene-2,5-dicarboxylic acid esters)を得る。最後に、酸化反応を経て3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸を得る。
【0007】
なお、2002年、バイエル会社が取得した米国公告第6,369,239号特許は、ジアルキルチオフェン(dialkylthiophenes)及びアルキレンジオキシチオフェン(alkylenedioxythiophenes)の製作方法を掲示している。ここで、3,4-ジアルコキシチオフェン或いは3,4-アルキレンジオキシチオフェンは3,4-ジアルコキシ-2,5-チオフェンジカルボキシル酸(3,4-dialkoxy-2,5-thiophenedicarboxylic acid)或いは3,4-アルキルエネジオキシ-2,5-チオフェンジカルボキシル酸(3,4-alkylenedioxy-2,5-thiophenedicarboxylic acid)を利用し、高沸点溶剤中において、脱炭酸反応を経て合成する。この高沸点溶剤の沸点は、脱炭酸反応後の産物(3,4-ジアルコキシチオフェン或いは3,4-アルキレンジオキシチオフェン)より高くて、かつアロマチックアミン類(aromatic amine)化合物ではない。
【0008】
前記のように、前述第6,528,662号及び第6,369,239号特許の製造工程を結合し、3,4-エチレンジオキシチオフェンを製作することができる。
しかし、第6,528,662号特許の製造工程中においては、ジハロアルカン(例えばジクロロエサン)を使用し中間産物(3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸エステル)を製作しなければならない。そのため、その最終産物(3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸)或いはその後続産物(ジアルキルチオフェン)はハロゲン反応物が残留している可能性があり、よって日増しに厳格となっている環境保護法規の有毒物質含量規定を満たすことができない。
また、前記ジハロアルカンを使用し中間産物を製作するステップは、80〜125℃の温度下で反応を行う必要があるため、エネルギー消費が大きく、さらには大爆発を起す危険性さえ潜む。
導電性高分子単体(3,4-エチレンジオキシチオフェン,EDT)は広い材料応用性を備えるため、その合成方法を改良し、その生産率と純度を確保し、その実験条件及び原料を改善する必要がある。
【特許文献1】米国公告第6,528,662号特許
【特許文献2】米国公告第6,369,239号特許
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする主要な目的は、3,4-エチレンジオキシチオフェン(3,4- ethylenedioxythiophene,EDT)製作の閉環反応ステップにおいて一切のハロゲン反応物を使用せず、製造工程全体は最後の脱炭酸反応ステップにおいて蒸留純化するだけで産物を得ることができ、こうして製品純度を向上させることができる。
本発明が解決しようとするもう一つの目的は、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDT)製作の閉環反応ステップにおいて、比較的低い温度下で反応を行うだけで良く、こうして製造工程における電力消費を低下させ、操作の安全性を向上させることができる導電性高分子単体の合成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は下記の導電性高分子単体の合成方法を提供する。
導電性高分子単体の合成方法は、
チオジグリコール酸(thiodiglycolic acid)を初期物とし、
順番にエステル化反応(esterification)、環化反応(cyclization)、閉環反応(ring closure reaction)、酸化反応(acidization)と脱炭酸反応(decarboxylation)を行い、
前記閉環反応はハロゲン反応物を使用せずに、高純度の3,4-エチレンジオキシチオフェン(3,4-ethylenedioxythiophene,EDT)を備える導電性高分子単体産物を得ることができる。
【0011】
本発明の最適実施例中では、該導電性高分子単体の合成方法は以下のステップを含み、
ステップ1:チオジグリコール酸(thiodiglycolic acid,式 I)を初期物とし、アルコール類とエステル化反応(esterification)を行い、チオジグリコール酸エステル(thiodiglycolic acid ester,式 II)を得て、
ステップ2:チオジグリコール酸エステル(式 II)とエステル類を環化反応(cyclization)させ、ジアルキル3,4-ジハイドロキチオフェン-2,5-ジカルボキレート(dialkyl 3,4-dihydroxythiophene-2,5- dicarboxylate,式 III)を得て、
ステップ3:ジアルキル3,4-ジハイドロキチオフェン-2,5-ジカルボキレート(式 III)をジイソプロピラゾジカルボキシレート(diisopropylazodicarboxylate,DIAD)、エチレングリコール(ethylene glycol)、トリフェニルホスフィン(triphenyl phosphine,Pph3)を利用し、閉環反応(ring closure reaction)を行い、3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 IV)を得て、
ステップ4:3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 IV)に対して酸化反応(acidization)を行い、3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 V)を得て、
ステップ5:3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 V)に対して脱炭酸反応(decarboxylation)を行い、3,4-エチレンジオキシチオフェン(式 VI)を得る。
【化1】

ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等のアルキル基から選択する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明最適実施例に図を合わせ、詳細に説明する。
本発明の導電性高分子単体の合成方法において、チオジグリコール酸(thiodiglycolic acid)を初期物とし、順番にエステル化反応(esterification)、環化反応(cyclization)、閉環反応(ring closure reaction)、酸化反応(acidization)、脱炭酸反応(decarboxylation)を行い、3,4-エチレンジオキシチオフェン(3,4-ethylenedioxythiophene,EDT)の導電性高分子単体産物を得る。
【0013】
さらに具体的に言えば、本発明最適実施例中の導電性高分子単体の合成方法は以下のステップを含む。
ステップ1:チオジグリコール酸(thiodiglycolic acid,式 I)を初期物とし、アルコール類とエステル化反応(esterification)を行い、チオジグリコール酸エステル(thiodiglycolic acid ester,式 II)を得る。
【化2】

..................................(式I)


..................................(式II)
ステップ2:チオジグリコール酸エステル(式 II)とエステル類を環化反応(cyclization)させ、ジアルキル3,4-ジハイドロキチオフェン-2,5-ジカルボキレート(dialkyl 3,4-dihydroxythiophene-2,5- dicarboxylate,式 III)を得る。
【化3】

..................................(式III)
ステップ3:ジアルキル3,4-ジハイドロキチオフェン-2,5-ジカルボキレート(式 III)をジイソプロピラゾジカルボキシレート(diisopropylazodicarboxylate,DIAD)、エチレングリコール(ethylene glycol)、トリフェニルホスフィン(triphenyl phosphine,Pph3)を利用し、閉環反応(ring closure reaction)を行い、3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 IV)を得る。
【化4】

..................................(式IV)
ステップ4:3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 IV)に対して酸化反応(acidization)を行い、,3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 V)を得る。
【化5】

..................................(式V)
ステップ5:3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 V)に対して脱炭酸反応(decarboxylation)を行い、3,4-エチレンジオキシチオフェン(式 VI)を得る。
【化6】

..................................(式VI)
ここで、R1及びR2はメチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等のアルキル基から選択する。
【0014】
前記ステップ1のアルコール類はメタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、プロパノール(propyl alcohol)或いはブタノール等のC1-C4のアルコール類からの選択が好ましい。なお、プロパノールはn-プロパノール(n-propyl alcohol)或いはイソプロパノール(isopropanol)から選択し、及びブタノールは直鎖或いは分岐のn-ブタノール(n-butanol)、イソブタノール(isobutanol)或いはtert-ブタノール(tert-butanol)等各類のブタノールから選択する。
【0015】
上記ステップ2のエステル類はジメチルオクサレート(dimethyl oxalate)、ジエチルオクサレート(diethyl oxalate)或いはジブチルオクサレート(dibutyl oxalate)等C1-C4のエステル類からの選択が好ましい。
上記ステップ3は25〜65℃の温度下で、ジイソプロピラゾジカルボキシレート(DIAD)、エチレングリコールとトリフェニルホスフィン(Pph3)を利用し閉環反応(ring closure reaction)を行うのが好ましい。
【0016】
前記ステップ4は先ずアルカリ土類金属の水酸化物により処理し、次に塩酸(HCl)により酸化反応(acidization)を行い、アルカリ土類金属の水酸化物は水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)或いは水酸化リチウム(LiOH)等からの選択が好ましい。アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化ナトリウム等)の水溶液濃度は約5〜90wt%の間が好ましくて、塩酸の水溶液濃度は約5〜37wt%の間が好ましい。
【0017】
上記ステップ5は重金属化合物、重金属粉末とジメチルホルムアミド(dimethylformamide,DMF)により脱炭酸反応(decarboxylation)を行うのが好ましい。ここで、前記重金属化合物は酸化銅、炭酸銅、硫酸銅或いは水酸化銅等からの選択が好ましくて、前記重金属粉末は銅粉からの選択が好ましい。
【0018】
本発明の導電性高分子単体の合成方法は以下の第一〜第五実施例において、順番にステップ1〜5の具体的実施内容について説明する。本発明を限定するものではなく、本発明はその他実施方式の実施ステップ1〜5を含むことができる。
【化7】

【実施例1】
【0019】
ステップ1はチオジグリコール酸エステル(式 II)の合成反応である。
窒素システム下において、75gのチオジグリコール酸(式 I)、82.5gのブタノール(BuOH)と60mLのトルエン(toluene)を三ツ口フラスコ中に入れ、コンデンサー、油水分離器及び温度制御器を三ツ口フラスコに接続し、撹拌を開始する。120℃まで加熱し、18時間回流させ、生じる水を除去する。次に100℃まで冷却し、溶剤が完全に蒸出するまで溶剤を減圧蒸留方式により分離する。ろ過後乾燥させ、133gチオジグリコール酸エステル(式 II)を得る。
【実施例2】
【0020】
ステップ2はジアルキル3,4-ジハイドロキチオフェン-2,5-ジカルボキレート(式 III)の合成反応である。
窒素システム下において、483mLのメタノール(CH3OH)を三ツ口フラスコ中に入れ、10℃まで冷却し、44gのナトリウム金属を加え、室温下で1時間撹拌する。コンデンサー、温度制御器及び加料管を三ツ口フラスコに設置し、200gのチオジグリコール酸エステル(式 II)と123gのジエチルオクサレート(EtO2C-CO2Et)を加料管にセットし、ゆっくりと三ツ口フラスコ中に加える。80℃まで加熱し、4時間回流させる。35℃まで冷却し、1.5Lのイオン除去水を加え、30分間撹拌する。継続し三ツ口フラスコの温度を10℃まで下げる。次に158mLの37%塩酸(HCl)を加料管内に入れ、ゆっくり三ツ口フラスコに滴入する。10分間撹拌して、リトマス試験紙でpH値が酸性であるかどうかを測定する。次にろ過して固体産物を得る。前記産物を500mLイオン除去水中に入れ、30分間撹拌後、ろ過を行う。次に乾燥し151gジアルキル3,4-ジハイドロキチオフェン-2,5-ジカルボキレート(式 III)を得る。
【実施例3】
【0021】
ステップ3は3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 IV)の合成反応である。
窒素システム下において、193gのジアルキル3,4-ジハイドロキチオフェン-2,5-ジカルボキレート(式 III)、480gのトリフェニルホスフィン(Pph3)

、52gのエチレングリコール(ethylene glycol)

と333mLのテトラハイドロフラン(tetrahydrofuran,THF)

を三ツ口フラスコ中に入れ、コンデンサー、温度制御器及び加料管を設置し、撹拌を開始する。363mLのジイソプロピラゾジカルボキシレート(diisopropylazodicarboxylate,DIAD)

を加料管に入れ、ゆっくり三ツ口フラスコ中に加える。次に40℃に加熱し、撹拌反応を24時間で継続させる。次に、室温に戻し、n-ヘキサン(n-hexane)を加え、30分間に撹拌する。ろ過後、乾燥して、644gの白色固体産物(式 IV)を得る。
【実施例4】
【0022】
ステップ4は3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 V)の合成反応である。
窒素システム下において、215gの白色固体産物と618mLの10%水酸化ナトリウム(NaOH)溶液をフラスコ中に入れ、コンデンサー及び温度制御器を設置し、撹拌を開始し、且つ100℃に加熱し、24時間に回流させる。室温に戻し、ゆっくり618mLの37%濃塩酸を加え、pH値が4以下になるまで固体を析出する。固体をろ過後、イオン除去水で洗浄し、乾燥して、160gの白色固体産物(V)を得る。
【実施例5】
【0023】
ステップ5は3,4-エチレンジオキシチオフェン(式 VI)の合成反応である。
窒素システム下において、192gの白色固体産物、3.3gの酸化銅(CuO)、2.7gの銅粉(Cu)と417mLのジメチルホルムアミド(dimethylformamide,DMF)

を三ツ口フラスコ中に入れ、コンデンサー及び温度制御器を設置し、撹拌を開始する。155℃まで加熱し、24時間に回流させる。室温に戻し、コンデンサー及び温度制御器を外すと、減圧蒸留設備を三ツ口フラスコに設置し、純化し、透明無色液体3,4-エチレンジオキシチオフェン(式 VI)を得る。その生産率約は53%で、ガスクロマトグラフィー(gas chromatography,GC)測定の純度は約99.67%、含水率は約0.0763%である。
【0024】
前述のように、第6,528,662号特許の周知プロセスは、ジハロアルカンを使用し中間産物(3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸エステル)を製作するため、産物は残留ハロゲン反応物を含有する可能性があり、安全に対するリスクを高める等の欠点がある。
それに比べて本発明は、3,4-エチレンジオキシチオフェン調整の閉環反応ステップ中において、ジイソプロピラゾジカルボキシレート(DIAD)、エチレングリコールとトリフェニルホスフィン(Pph3)を利用しハロゲン反応物の代わりとし、製造工程全体は最後の脱炭酸反応ステップにおいて蒸留純化するだけで産物を得ることができ、こうして製品純度を向上させることができ、さらには日増しに厳格となっている環境保護法規の有毒物質含量規定を満たすことができる。また、本発明の閉環反応ステップは比較的低い温度下で反応を行うだけで良く、そのプロセスにおける電力消費を低下させ、操作の安全性を向上させることができる。
上記に最適実施例を掲示したが、本実施例は本発明を限定するものではない。当該技術の習熟者は本発明の精神と範囲を離脱せずに、各種変更と修飾を行うことが可能であり、よって、それらの保護範囲は特許請求範囲を基準とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子単体の合成方法であって、
チオジグリコール酸(式 I)を初期物とし、アルコール類とエステル化反応させ、チオジグリコール酸エステル(式 II)を得る段階と、
【化1】

............................(式I)

............................(式II)
チオジグリコール酸エステル(式 II)とエステル類を環化反応させ、ジアルキル3,4-ジハイドロキチオフェン-2,5-ジカルボキレート(式 III)を得る段階と、
【化2】

............................(式III)
ジアルキル3,4-ジハイドロキチオフェン-2,5-ジカルボキレート(式 III)をジイソプロピラゾジカルボキシレート、エチレングリコール、トリフェニルホスフィンを利用し、閉環反応させ、3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 IV)を得る段階と、
【化3】

............................(式IV)
3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 IV)に対して酸化反応させ、3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 V)を得る段階と、
【化4】

............................(式V)
3,4-アルキレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボキシル酸(式 V)に対して脱炭酸反応させ、3,4-エチレンジオキシチオフェン(式 VI)を得る段階と、
【化5】

............................(式VI)
前述R1及び前述R2はメチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等のアルキル基から選択することを特徴とする導電性高分子単体の合成方法。
【請求項2】
前記エステル化反応のアルコール類はメタノール、エタノール、プロパノール或いはブタノールから選択することを特徴とする請求項1記載の導電性高分子単体の合成方法。
【請求項3】
前記プロパノールはn-プロパノール或いはイソプロパノールから選択し、及びブタノールは直鎖或いは分岐のブタノールから選択し、前述直鎖或いは分岐のブタノールはn-ブタノールと、イソブタノールと及びtert-ブタノールとを含むことを特徴とする請求項2記載の導電性高分子単体の合成方法。
【請求項4】
前記環化反応のエステル類はC1-C4のエステル類から選択することを特徴とする請求項1記載の導電性高分子単体の合成方法。
【請求項5】
前記C1-C4のエステル類はジメチルオクサレートと、ジエチルオクサレートと及びジブチルオクサレートとを含むことを特徴とする請求項4記載の導電性高分子単体の合成方法。
【請求項6】
前記閉環反応は25〜65℃の温度以下で進行することを特徴とする請求項1記載の導電性高分子単体の合成方法。
【請求項7】
前記酸化反応は先ずアルカリ土類金属の水酸化物により処理し、次に塩酸により反応を行うことを特徴とする請求項1記載の導電性高分子単体の合成方法。
【請求項8】
前記アルカリ土類金属の水酸化物は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム或いは水酸化リチウムから選択することを特徴とする請求項7記載の導電性高分子単体の合成方法。
【請求項9】
前記アルカリ土類金属の水酸化物の水溶液濃度は約5〜90%の間であることを特徴とする請求項7記載の導電性高分子単体の合成方法。
【請求項10】
前記塩酸の水溶液濃度は約5〜37%の間であることを特徴とする請求項7記載の導電性高分子単体の合成方法。
【請求項11】
前記脱炭酸反応は重金属化合物、重金属粉末、ジメチルホルムアミドにより反応を行うことを特徴とする請求項1記載の導電性高分子単体の合成方法。
【請求項12】
前記重金属化合物は酸化銅、炭酸銅、硫酸銅或いは水酸化銅から選択し、及び前記重金属粉末は銅粉であることを特徴とする請求項11記載の導電性高分子単体の合成方法。

【公開番号】特開2009−269905(P2009−269905A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325245(P2008−325245)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(508375790)▲豊▼笙科技股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】