説明

導電膜パターンの形成方法、無電解めっき装置

【課題】開口部を有する基板に導電膜パターンを無電解めっきする際に良好なめっきを形成する方法及び装置を提供する。
【解決手段】めっき液Q1を液建てするめっき槽50と、めっき槽50の外側に配置された外槽60と、外層60とめっき槽50との間に所定の温度とした熱媒体を流通させてめっき槽50の温度を制御する温度制御手段70とを備え、めっき槽50のめっき液Q1と接する接液部が、凹凸部を有してなるフィン形状となっている無電解めっき装置100を用いてめっき処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜パターンの形成方法、無電解めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷やデバイス製造等に用いられる液滴吐出ヘッドにおいて封止基板表面には、アクチュエータを駆動する駆動回路と接続するための金属配線が設けられている(特許文献1〜3参照)。金属配線を形成するには、まず基板全面にスパッタリング法を用いてNi−Cr合金を成膜したのち、この上にスパッタリング法を用いてAuを成膜する。次いで、Ni−Cr膜及びAu膜をフォトリソグラフィ技術やエッチング技術を用いてパターニングし、配線パターン(導電膜パターン)を形成する。
【0003】
このようにして得られた配線パターンは、成膜時の熱によりNi−CrがAu膜中へ熱拡散して、配線抵抗が高くなってしまうことがあった。また、形成時に加熱されたNi−Cr膜及びAu膜、あるいは基板が常温になると、熱応力等の残留応力が生じて基板(ウエハ)に反りを生じることもあった。そこで、スパッタリング法によりAu膜を最小限度の厚さに成膜してこれを下地とし、このAu膜を低温プロセスであるめっき法で厚膜化する方法が考えられている。これにより、プロセスの低温化が図られ、配線パターンの高抵抗化やウエハの反り等が防止される。
【特許文献1】特開2000−127379号公報
【特許文献2】特開2000−135790号公報
【特許文献3】特開2000−296616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、先述したような従来技術には、以下のような不都合がある。
Auめっき等の析出速度が遅いめっき処理では、通常はめっき液を50℃程度に加熱することによって析出速度を高めている。ところが、めっき液を加熱すると、めっき液内に温度分布すなわち密度勾配が生じめっき液内に熱対流が生じてしまう。めっき液中に流れ(熱対流)があると、流速が速い部分ではめっき用金属の析出が抑制されてしまい、形成されためっきに膜厚ムラを生じてしまう。
【0005】
このような膜厚ムラは、例えば液滴吐出ヘッドの封止基板作製用ウエハ等のように、開口部(貫通孔)を有する基板にめっき処理を行った場合に顕著となる。詳しくは、封止基板作製用ウエハは、めっき槽に浸漬されることでめっき液を仕切るように配置される。すると、仕切られた領域間でめっき液が熱対流する際に、封止基板作製用ウエハの開口部がノズルのように機能してしまい、開口部付近に流速が速い流れを生じてしまう。流速が速い流れ部分では、前記のようにめっきが薄く形成され、これを配線パターン等の導電膜パターンに用いると電気抵抗が高くなってしまう。最低膜厚を確保しようとすると他の位置に過剰に厚いめっきが形成され、後工程での不具合の発生や、めっき材料の使用量増加、プロセス時間の増加によるコストアップ等の不都合が生じる。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、均一な膜厚の導電膜パターンを形成する方法を提供することを目的の一つとする。また、めっき液の流れを抑制した無電解めっき装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の導電膜パターンの形成方法は、めっき液を液建するめっき槽と、該めっき槽の外側に配置された外槽と、該外層と前記めっき槽との間に所定の温度とした熱媒体を流通させて前記めっき槽の温度を制御する温度制御手段と、を備え、前記めっき槽のめっき液と接する接液部が、凹凸部を有してなるフィン形状となっている無電解めっき装置を用いて、開口部を有する基板にめっき処理を行ってめっきを形成し、該めっきを含んだ導電膜パターンを形成することを特徴とする。
【0008】
めっき槽の接液部が凹凸部を有してなるフィン形状となっていれば、平滑面からなっている場合よりも接液部の表面積が大きくなり、接液部側からめっき液へ供給される熱量が大きくなる。このような無電解めっき装置を用いることにより、めっき液の液面等から放熱される熱量を供給される熱量よりも相対的に小さくすることができ、放熱によるめっき液の温度変化を小さくすることができる。よって、めっき液の温度が均一となりめっき液の熱対流が抑制され、熱対流によるめっき用金属の析出ばらつきを低減することができる。このようにして、均一な膜厚にめっきを形成することができ、めっきの最低膜厚を確保する等の目的で過剰にめっき処理を行う必要がなくなる。これにより、めっきの最大膜厚が増加してしまうことを防止できるので、過剰な厚さに形成されためっきが短絡を生じることや、めっき材料の使用量が増加すること、プロセス時間が増加すること等を防止することができ、信頼性が高い導電膜パターンを低コストで形成することができる。
【0009】
また、前記基板の基板面が前記めっき槽の深さ方向に並行となるように、該基板を前記めっき槽内に配置して前記めっき処理を行うことが好ましい。
前記のように開口部をめっき液が通ると、開口部がノズルとして機能して開口部付近に速い流れを生じて、この部分でめっき用金属の析出が抑制される。熱対流によるめっき液流れには、主として、上昇流及び下降流の鉛直方向の流れと、液面付近における水平方向の流れとがある。
基板面がめっき槽の深さ方向に平行となるようにすれば、鉛直方向の流れが、基板に沿うようになり基板の開口部を直接通らないようになる。また、基板の設置位置を深くすることにより、液面付近における水平方向の流れが、基板の開口部を通らないようにすることができる。このようにして、開口部をめっき液が通らないようにすることができるので、めっき液の流速によるめっき用金属の析出ばらつきが低減され、良好にめっきを形成することが可能となる。
【0010】
また、前記めっき処理を行う前に前記基板上に、第1金属薄膜と第2金属薄膜とが積層された下地パターンを形成し、次いで該下地パターン上に前記めっき処理によりめっきを形成し、下地パターンとめっきとからなる導電膜パターンを形成することが好ましい。この場合には、前記第1金属薄膜をNi、Cr、Cu、Au、Ni含有合金、Cr含有合金、TiW合金の少なくとも一つを用いて形成することが好ましく、前記第2金属薄膜をNi、Cu、Auのうちの少なくとも一つを用いて形成することが好ましい。
このようにすれば、第1金属薄膜により第2金属薄膜と基板側との密着性を高めることができるとともに、第1金属薄膜と第2金属薄膜との密着性を高めることができる。また、例えば置換めっき法を用いることにより、めっき用金属を良好に析出させることができ、第2金属薄膜とめっきとの密着性を高めることもできる。また、この場合には、前記の材料を適宜選択して第1金属薄膜や第2金属薄膜を形成することにより、前記の密着性を高める効果を確実に得ることができる。
【0011】
また、前記導電膜パターンは、液滴吐出ヘッドの配線パターンであってもよい。
一般に、液滴吐出ヘッドを構成する封止基板等には、ワイヤ配線を通すための開口部や、吐出する液体の流路となる開口部が設けられている。本発明の方法によれば、前記のように信頼性が高い導電膜パターンを低コストで形成することができるので、液滴吐出ヘッドの配線パターンを良好に形成することができ、安定に吐出動作を行うことができる良好な液滴吐出ヘッドとすることができる。
【0012】
本発明の無電解めっき装置は、開口部を有する基板にめっき処理を行う無電解めっき装置であって、めっき液を液建するめっき槽と、該めっき槽の外側に配置された外槽と、該外層と前記めっき槽との間に所定の温度とした熱媒体を流通させて前記めっき槽の温度を制御する温度制御手段と、を備え、前記めっき槽のめっき液と接する接液部が、凹凸部を有してなるフィン形状となっていることを特徴とする。
【0013】
このように、めっき槽の接液部が凹凸部を有してなるフィン形状となっていれば、接液部が平滑面からなっている場合よりも接液部からめっき液へ供給される熱量が大きくなり、めっき液の液面等から放熱される熱量が相対的に小さくなる。したがって、放熱によるめっき液の温度変化が小さくなり、めっき液の熱対流が抑制される。よって、熱対流によるめっき用金属の析出ばらつきが低減され、均一な膜厚のめっきを形成可能な無電解めっき装置となる。
【0014】
また、前記接液部におけるフィン形状の凹凸部が、前記めっき液の液面側に向うにつれて密に配置されている構成とすることもできる。
めっき液は、その液面において熱を奪われるため、液面側の温度がめっき槽の底面側よりも低くなる。フィン形状の凹凸部が、液面側に向うにつれて密に配置されていれば、凹凸部が密な部分ほど表面積が大きくなりめっき液に供給される熱量が大きくなるので、底面側と液面側との温度差を小さくすることができる。よって、熱対流をより抑制することができ、良好なめっきを形成可能な無電解めっき装置となる。
【0015】
また、前記めっき槽の内面形状が、該めっき槽の深さ方向に直交する断面において略長方形となっていることが好ましい。
開口部を有する基板にめっき処理を行う場合には、前記のように基板面がめっき槽の深さ方向に平行となるようにすることが好ましい。この場合に、前記めっき槽の内面形状が、該めっき槽の深さ方向に直交する断面において略長方形となっていれば、めっき槽内にめっき処理を行う基板を多数配置することができ、効率良くめっき処理を行うことが可能な無電解めっき装置となる。
【0016】
また、前記めっき槽に液建てされためっき液の成分を調整するガスを前記めっき液に供給する複数の配管を有し、該配管は前記めっき槽の中央側を挟んで対称的に設けられていることが好ましい。
めっき液の成分を調整するガス、例えば酸素ガス等をめっき液に供給することにより、めっき処理中においてめっき液の品質を管理することができる。ここで、ガスを供給する配管がめっき槽の中央側を挟んで対称的に設けられていれば、気泡(ガス)の上昇に誘起されるめっき液の上昇流は、めっき槽の中央側を挟んで対称的になり互いに打ち消しあうようになる。したがって、めっき液の流れを抑制することができ、良好にめっき処理を行うことが可能な無電解めっき装置となる。
【0017】
また、前記めっき液が非シアン系めっき液であることが好ましい。
非シアン系Auめっき液はシアン系めっき液よりも毒性が極めて低いので、めっき液の取り扱いが容易化される。また、機能性が低下しためっき液や、めっき後の基板を洗浄した洗浄液、めっき槽を洗浄した洗浄液等の廃液等を処理するコストを低減することもできる。また、非シアン系めっき液は、不安定すなわちめっき用金属を析出しやすいめっき液であるので、めっき処理時間を短縮することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の一実施形態を説明するが、本発明の技術範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以降の説明では図面を用いて各種の構造を例示するが、構造の特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造はその寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせて示す場合がある。以下、本発明に係る導電膜パターンの形成方法によって得られた導電膜パターンの構成を説明した後、無電解めっき装置の構成を説明する。次いで、この無電解めっき装置を用いた導電膜パターンの形成方法を説明する。
【0019】
図1(a)は、配線パターン(導電膜パターン)21及び開口部25が形成されたウエハ(基板)10を概略して示す平面模式図である。図1(a)に示すように、ウエハ10は、複数のチップ形成部20を有しており、チップ形成部20の外周15は、ミシン目状になっている。
【0020】
図1(b)は、外周15のミシン目を拡大して示す平面図、図1(c)は、図1(b)のIc―Ic線矢視断面図、図1(d)は、図1(b)のId―Id線矢視断面図である。本例では、このミシン目は、ウエハ10の両面から溝状の切欠を形成して線状の薄肉部16を形成した後に、この薄肉部に多数の開口部18を形成したものであり、このミシン目に沿ってウエハ10を割ることによって、チップ形成部20を容易に個片化してチップを形成することができるようになっている。このように、チップ形成部20の外周15には、ミシン目の開口部18が多数形成されている。
【0021】
図2(a)は、配線パターン21が形成されたチップ形成部20を示す平面模式図である。図2(a)に示すように、チップ形成部20には、先述したチップ形成部外周15の開口部(図示せず)とは別の開口部25、及び配線パターン21が形成されている。開口部25は、形成後のチップやこれを用いたデバイス等を機能させるための構造である。例えば、液滴吐出ヘッドの封止基板となるチップである場合、開口部25は、ワイヤ配線を通す構造や吐出する液の流路となる構造等である。
【0022】
図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線矢視断面図である。図2(b)に示すように、配線パターン21は、ウエハ10上に形成された下地パターン21aと、下地パターン21aを覆って形成されためっき21bと、から構成されており、下地パターン21aは、ウエハ10上に順に形成された第1金属薄膜211及び第2金属薄膜212からなっている。
【0023】
図3(a)は、本実施形態の無電解めっき装置の構成を示す斜視図である。図3(a)に示すように、本実施形態の無電解めっき装置100は、めっき液を液建するめっき槽50と、めっき槽50の外側に配置されてめっき槽50を内包する外槽60と、外槽60の外側に配置された温度制御手段70と、めっき槽50内にガスを供給する配管81、82と、を備えて構成されている。
【0024】
図3(b)は、図3(a)におけるIIIb−IIIb線矢視断面図である。なお、図3(b)では、めっき槽50にめっき液Q1を液建てするとともに、めっき槽50と外槽60との間に熱媒体Q2を貯留し、めっき液Q1中に複数のウエハ10を浸漬した状態を模式的に示している。
【0025】
本実施形態のめっき槽50は、外槽60の内側に断熱部材(図示略)で固定されたもので、例えば強化ガラス等からなる板部材を組み立ててその接続部を接着した箱状のものである。めっき槽50は、その深さ方向に直交する断面形状が長方形となっており、その短辺の中央付近には、それぞれの短辺と対応して配管81、82が設けられている。配管81、82は、それぞれがめっき槽50の外側においてガス供給手段(図示略)に接続されるとともに、めっき槽50の深さ方向に延びている。配管81,82は、めっき槽50の底面付近が開口されており、ここから酸素ガスや空気等のガスGをめっき液Q1に供給して、めっき処理中にめっき液Q1の品質を管理することができるようになっている。
【0026】
めっき槽50の内側には、図示略の支持部材によりウエハ10を配置することができるようになっている。本実施形態では、前記のようにめっき槽50の断面形状が長方形となっており、例えばその短辺を含んだめっき槽50内側の側壁と平行に配置して多数のウエハ10をめっき液Q1に浸漬することができるようになっている。めっき槽50の上面側は、図示略の蓋により開閉可能となっており、めっき処理中にはめっき槽50上面を閉塞することでめっき槽50内の温度変化を小さくすることができるようになっている。
【0027】
また、めっき槽50内側においてめっき液Q1と接する接液部は、凹凸部を有してなるフィン形状となっている。フィン形状の接液部としては、板部材に凸部(突起)を設けて凸部の間を凹部としたもの、板部材に例えば切削加工を選択的に行って凹部を形成し凹部の間を凸部としたもの、あるいはこれらの組み合わせ等を採用することができる。また、平面からなる階段状のもの、湾曲面からなる波面状のもの、あるいは階段状と波面状との組み合わせたもの、のいずれを採用してもよい。
【0028】
具体的には、凸部としては、円柱、角柱、錐体等の島状の突起や、ライン状のもの、これを縦横に組み合わせた格子状のもの等が挙げられる。また、凹部としては、円柱、角柱、錐体等の窪みや、溝(ライン)状のもの、これを縦横に組み合わせた格子状のもの等が挙げられる。また、凸部や凹部は、均一に配置されていてもよいし、疎密を有して配置されていてもよい。
【0029】
さらに、めっき槽の外側において熱媒体と接する部分もフィン形状となっているめっき槽を採用することもできる。この場合には、めっき槽の内側が凸部である部分では、外側が外側に向かって凹となる凹部となっており、内側が凹部である部分では外側が凸部となっていることが好ましい。例えば、波板状の板部材を組み立ててめっき槽とすればよい。
【0030】
本実施形態では、箱状のめっき槽50の内側おける4つの側面それぞれ全面に、めっき槽50の深さ方向に直交し互いに平行な複数の溝部(凹部)が等間隔で形成されており、溝部の間が凸部となっている。また、箱状のめっき槽50の底面においても、全面に溝部が等間隔で形成されており、溝部の間が凸部となっている。
【0031】
外槽60は、例えば断熱性の板部材からなる箱状のものであり、めっき槽50との間にお湯等の熱媒体Q2を貯留可能になっている。また、外槽60の側壁にはこれを貫通して外槽60の内側に通じるパイプ状の液配管71、72が設けられており、液配管71、72は外槽60外側の温度制御手段70に接続されている。温度制御手段70は、例えばヒーター等により熱媒体Q2を所定の温度に加熱する加熱槽74と、温度制御手段70の内部及び外槽60の内側において熱媒体Q2を循環(流通)させるポンプ73と、を備えて構成されている。ポンプ73は、液配管71、72のうち一方から熱媒体Q2を吸込んで加熱槽74に送るとともに、加熱槽74により所定の温度とされた熱媒体Q2を他方から排出するようになっている。
【0032】
以上のような構成の無電解めっき装置100は、温度制御手段70により所定の温度の熱媒体Q2を外槽60内に流通させて、熱媒体Q2によりめっき槽50を所定の温度とし、その内側のめっき液Q1を所定の温度にすることができるようになっている。そして、めっき液Q1に浸漬されたウエハ10に、所定の温度でめっき処理を行うことが可能な無電解めっき装置100となっている。
【0033】
次に、本実施形態の導電膜パターンの形成方法を説明する。本実施形態では、前記無電解めっき装置100によるめっき処理を用いて、図2に示した導電膜パターン(配線パターン)21を形成する。
【0034】
導電膜パターンの形成に先立ち、予めシリコンからなるウエハ(基板)10の表面を熱酸化処理等で絶縁化させ、安定化させておく。また、ウエハ10の所定位置にミシン目状の開口部18(図1参照)を形成して、ミシン目を外周15とするチップ形成部20に区画しておく。また、チップ形成部20の所定位置に開口部25を形成しておく。この開口部25は、形成されたチップやこれを用いたデバイス等を機能させるために必要となるものである。
【0035】
図4(a)〜(d)、図5は、本実施形態の導電膜パターンの形成方法を示す側断面工程図である。まず、図4(a)に示すように、本実施形態では、ウエハ10上に第1金属薄膜211aと第2金属薄膜212aとを順次形成する。第1金属薄膜211aの材料としては、Ni、Cr、Cu、Au、Ni含有合金、Cr含有合金、TiW合金のうちのいずれか1種、又は2種以上を組み合わせたものを好適に用いることができる。また、これらの形成方法としては、スパッタリング法や真空蒸着法等の気相法を用いることができる。第1金属薄膜211aの膜厚としては0.03〜0.2μm程度が好ましく、第2金属薄膜212aの膜厚としては0.1〜0.3μm程度が好ましい。
【0036】
本実施形態では、スパッタリング法でCr含有率20%のNi−Cr合金を0.1μm程度の厚さに成膜して第1金属薄膜211aを形成した後、スパッタリング法でAuを0.2μm程度の厚さに成膜して第2金属薄膜212aを形成する。このようにすれば、第1金属薄膜211aをAuで形成した場合よりも材料コストを低減することができる。
【0037】
次に、図3(b)に示すように、第2金属薄膜212a上にレジストを成膜し、この膜をフォトリソグラフィ法等によりパターニングすることでレジストパターンRを形成する。そして、図3(c)に示すように、レジストパターンRをマスクとして第1金属薄膜211a及び第2金属薄膜212aをウェットエッチング法等でエッチングする。ウェットエッチング法による場合には、例えばI(ヨウ素)とKI(ヨウ化カリウム)とを基剤としたエッチャントを用いて第2金属薄膜212aをエッチングし、その後にHNO(硝酸)とCe(NH(NO(硝酸第二セリウムアンモニウム)とを基剤としたエッチャントを用いて、第1金属薄膜211aをエッチングする。そして、図3(d)に示すように、例えばOプラズマアッシング等のプラズマ処理によりレジストパターンRを除去して第2金属薄膜212aを露出させるとともに、パターニングされた第1金属薄膜211a及び第2金属薄膜212aからなる下地パターン21aを形成する。
【0038】
次に、後述するめっき処理を行う前処理として、下地パターン21aの第2金属薄膜212a表面に活性化処理を行う。例えば酸素プラズマ等の乾式方式や硫酸過水等の湿式方法を採用することで、第2金属薄膜212a表面に付着している有機物を除去することができ、また希硫酸等の湿式法を採用することで、第2金属薄膜212a表面に形成された酸化物等の不活性部分を除去することができる。これにより、後のめっき処理において、めっきと下地パターン21aとの間の密着性を高めることができる。なお、前記活性化処理は、基板10上の全面に行ってもよい。
【0039】
次に、配線下地パターン21aが形成されたウエハ10にめっき処理を行い、下地パターン21a上にめっきを形成する。
まず、図3(b)に示したように前記無電解めっき装置100のめっき槽50にめっき液Q1を液建し、このめっき液Q1中にウエハ10を浸漬する。一般にめっき処理においては、複数(例えば4〜16枚)のウエハが同時に処理される。本実施形態でも複数のウエハ10をめっき槽50内に配置して一括してめっき処理を行う。本実施形態では、ウエハ10の面方向がめっき槽50の深さ方向に沿うように、前記面方向がめっき槽50の側壁に平行になるように、ウエハ10を配置する。なお、図5では、複数のウエハのうち2枚のみを示している。
【0040】
めっき液Q1としては、Ni、Cu、Auのうちの少なくとも一つを含有するものが好適に用いられ、本実施形態では、亜硫酸金(I)ナトリウム(Na[Au(SO])を金源として、この溶液に錯化剤として亜硫酸塩を添加した非シアン系の無電解Auめっき液を用いる。このように、めっき用金属(Au)と、第2金属薄膜212aの材料(Au)とを同じにすれば、第2金属薄膜212a上に良好にめっき用金属を析出させることができる。また、非シアン系のめっき液を用いることで、シアン系のめっき液より取り扱いが容易化され、洗浄液等の処理コストが低減される。
【0041】
そして、めっき槽50と外槽60との間にお湯等の熱媒体Q2を貯留させ、温度制御手段70により熱媒体Q2を所定の温度、例えば45〜60°程度とする。所定の温度とされた熱媒体Q2は、外槽60の内側を流通してめっき槽50を外側から加熱し、めっき槽50はその内側のめっき液Q1を所定の温度に加熱する。
【0042】
ここで、めっき液Q1には、めっき槽50の内壁付近ではめっき液Q1が加熱されることにより上昇流が生じており、めっき液Q1の液面付近ではめっき液Q1が冷却されて下降流が生じる。また、前記のように複数のウエハ10に一括してめっき処理を行っているので、ウエハ10はめっき液Q1を仕切るように配置されている。
【0043】
通常、ウエハによって仕切られた領域間には、領域間の圧力差等に起因してめっき液の流動を生じる。この流動は主として開口部を通して行われるため開口部がノズルのように機能してしまい、開口部付近に速いめっき液の流れを生じる。めっき液の流速が速い部分では、めっき用金属の析出が抑制されるためめっきの膜厚が薄くなり、めっきの膜厚ばらつきを生じる。
【0044】
ところが、本発明の方法では、めっき槽50の接液部が凹凸部を有するフィン形状とされた無電解めっき装置100を用いているので、上昇流45や下降流46等の熱対流が抑制され、開口部18、25付近に速い流れを生じることが格段に抑制される。
すなわち、伝熱量は、温度勾配及び伝熱面積により定まることが知られており、ここではめっき槽50とめっき液Q1との間の温度差が前記温度勾配に相当し、めっき槽50とめっき液Q1とが接する接液部の面積が前記伝熱面積に相当する。接液部が凹凸部を有するフィン形状となっていれば、これが平滑面からなる場合よりも伝熱面積が大きくなるので、伝熱量が大きくなる。したがって、めっき液Q1の液面からの放熱量は、めっき液Q1に供給される伝熱量より相対的に小さくなり、放熱によるめっき液Q1の温度変化は小さくなる。よって、めっき液Q1の温度勾配が小さくなり、熱対流が抑制される。
【0045】
また、ウエハ10の面方向がめっき槽50の深さ方向に沿うようにウエハ10を配置しているので、上昇流や下降流等の熱対流が開口部18、25を直接通ることが無いので、さらに、めっき液Q1の流れの影響を受けることなくめっき用金属を析出させることができる。また、めっき槽50の中心側を挟んで対称的に配置された配管81、82からガスGを供給しているので、気泡(ガス)Gの上昇に伴う上昇流も対称的に生じるようになっている。したがって、配管81からの気泡に起因する上昇流と、配管82からの気泡に起因する上昇流とが、液面付近で打ち消しあうことにより、めっき液Q1の流れがより抑制される。
【0046】
以上のように、下地パターン21a近傍におけるめっき液Q1の流速ばらつきを低減した状態で1〜5時間程度のめっき処理を行って、下地パターン21a上にめっき21bを形成することにより、図2(b)に示したような下地パターン21aとめっき21bとからなる配線パターン21が得られる。
【0047】
以上のような本発明の配線パターン(導電膜パターン)21の形成方法によれば、めっき液Q1の流れを抑制しているので、配線パターン21のめっき(第2の金属薄膜)21bを均一な厚さで形成することができる。これにより、例えばめっき21bが局所的に薄く形成されることを防止するために過剰にめっき処理を行う必要がなくなる。したがって、過剰にめっき処理を行うことによる不都合、すなわちめっきが局所的に厚くなってしまい短絡が起こってしまうことや、めっき材料の使用量が増加すること、形成プロセス時間が増加すること等が防止される。よって、配線パターン21が形成されたチップの信頼性や歩留まりが低下することや、配線パターン21を形成するコストが増加すること等を防止することができ、信頼性が高い配線パターン21を低コストで形成することができる。
【0048】
また、配線パターンの大部分を低温成膜プロセスであるめっき処理によって形成すれば、形成時の熱による配線パターンの抵抗値上昇やウエハ(基板)の反りを生じることがないので、良質な配線パターンを歩留りよく形成することができる。
【0049】
なお、前記実施形態では、線状の配線からなる配線パターン21を形成したが、例えば点状のレジストパターンを形成することにより、パッドとして用いられる導電膜パターンを形成してもよい。
【0050】
また、下地パターン21aを構成する金属薄膜としては、前記実施形態で用いたNi−Cr合金やAuの他、Cu(銅)やNi、Cr、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、W(タングステン)、またはこれらにAuを含めた少なくとも2種以上で構成された合金など、他の金属材料であってもよい。また、2層の金属薄膜からなる下地パターン21aを形成しているが、単層の金属薄膜であってもよい。単層の金属膜で構成する場合には、めっき処理を行う前に、60〜80℃に加温した無電解置換Auめっき液中にウエハ(基板)を5〜20分浸漬し、金属薄膜上に下地用のめっきを形成しておく。ここで、下地用のめっきの層厚は、例えば0.05〜0.2μmとする。このとき、下地用のめっきが形成されにくい場合は、事前にPd触媒を付与し、無電解Niめっき等を用いて無電解置換Auめっきが形成しやすい下地を形成してもよい。
【0051】
また、本実施形態では、めっき処理においてAuからなるめっき21bを形成しているが、NiやCu、Ag(銀)、Co(コバルト)、Pd(パラジウム)など、他の金属材料からなるめっきとしてもよい。このとき、めっきの金属材料に合わせて、下地パターン21aの金属材料を適宜変更してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、めっき槽50の内側のみがフィン形状となっているが、外側において熱媒体と接する部分もフィン形状となっているめっき槽を採用することもできる。このようにすれば、熱媒体とめっき槽との接面積が大きくなり、熱媒体からめっき槽への伝熱が良好に行われるようになるので、めっき液の温度管理を高精度に行うことが可能となる。また、この場合には、めっき槽の内側が凸部である部分では、めっき槽の外側が凹部となり、内側が凹部である部分では外側が凸部となっていることが好ましい。例えば、めっき槽の側壁や底壁が波板状となっていればこのような構成となり、前記のように温度管理の高精度化が図られるとともに、波板状の部分は板厚が均一であるので、これを介した熱媒体からめっき液への伝熱を均一化することができる。
【0053】
(液滴吐出ヘッド)
次に、本発明の導電膜パターンの形成方法を適用して配線パターンを形成したデバイスの例を説明する。本例のデバイスは、インク(機能液)を液滴状にしてノズルから吐出する液滴吐出ヘッドであり、封止基板の配線パターンに本発明の方法を適用した例である。
【0054】
図6は、液滴吐出ヘッドHの断面構成図である。図6に示すように、液滴吐出ヘッドHは、液滴が吐出されるノズル開口550を備えたノズル基板500と、ノズル基板500の上面(+Z側)に接続されてインク流路を形成する流路形成基板600と、流路形成基板600の上面に接続されて圧電素子(駆動素子)700の駆動によって変位する振動板750と、振動板750の上面に接続されてリザーバ850を形成する封止基板800と、封止基板800上に設けられて圧電素子700を駆動するための駆動回路部(ドライバIC)900と、を備えて構成されている。
【0055】
液滴吐出ヘッドHの動作は、各駆動回路部900に接続された図示しない外部コントローラによって制御される。流路形成基板600には、複数の平面視略櫛歯状の開口領域が区画形成されており、これらの開口領域は、ノズル基板500と振動板750とにより囲まれて圧力発生室650を形成する。また、上記平面視略櫛歯状の開口領域のうち、封止基板800と流路形成基板600とにより囲まれた部分がリザーバ850を形成している。
【0056】
流路形成基板600の図示下面側(−Z側)は開口しており、その開口を覆うようにノズル基板500が流路形成基板600の下面に接続されている。流路形成基板600の下面とノズル基板500とは、例えば接着剤や熱溶着フィルム等を介して固定されている。ノズル基板500には、液滴を吐出する複数のノズル開口550が設けられている。具体的には、ノズル基板500に設けられた複数(例えば720個程度)のノズル開口550はY軸方向(紙面と直交する方向)に配列されている。
【0057】
圧力発生室650とノズル開口550とは、各々対応して設けられている。すなわち、圧力発生室650は、複数のノズル開口550に対応するように、Y軸方向に複数並んで設けられている。圧力発生室650は、X軸方向に関して互いに対向するように配置されており、それらの間には隔壁670が形成されている。
【0058】
複数の圧力発生室650の基板中央部側の端部は上述した隔壁670によって閉塞されているが、基板外縁部側の端部は互いに接続するように集合され、リザーバ850と接続されている。リザーバ850は、図示しない機能液導入口と圧力発生室650との間で機能液を一時的に保持するものであって、封止基板800にY軸方向に延びる平面視矩形状に形成されたリザーバ部855と、流路形成基板600に形成された連通部630とから構成されている。そして、連通部630において各圧力発生室650と接続され、複数の圧力発生室650の共通の機能液保持室(インク室)を形成している。図6に示す機能液の経路をみると、ヘッド外端上面に開口する機能液導入口より導入された機能液が、リザーバ850に流れ込み、供給路640を経て、複数の圧力発生室650のそれぞれに供給されるようになっている。なお、封止基板800のリザーバ部855は、前記実施形態において基板10の開口部25として形成されたものである(図2(a)参照)。
【0059】
流路形成基板600と封止基板800との間に配置された振動板750は、流路形成基板600側から順に弾性膜755と下電極膜730とを積層した構造を備えている。流路形成基板600側に配される弾性膜755は、例えば1〜2μm程度の厚さの酸化シリコン膜からなるものであり、弾性膜755上に形成される下電極膜730は、例えば0.2μm程度の厚さの金属膜からなるものである。本例において、下電極膜730は、流路形成基板600と封止基板800との間に配される複数の圧電素子700の共通電極としても機能するようになっている。
【0060】
振動板750を変形させるための圧電素子700は、下電極膜730側から順に圧電体膜710と、上電極膜720とを積層した構造を備えている。圧電体膜710の厚さは例えば1μm程度、上電極膜720の厚さは例えば0.1μm程度である。
なお、圧電素子700の概念としては、圧電体膜710及び上電極膜720に加えて、下電極膜730を含むものであってもよい。下電極膜730は圧電素子700として機能する一方、振動板750としても機能するからである。本例では、弾性膜755及び下電極膜730が振動板750として機能する構成を採用しているが、弾性膜755を省略して下電極膜730が弾性膜755を兼ねる構成とすることもできる。
【0061】
圧電素子700(圧電体膜710及び上電極膜720)は、複数のノズル開口550及び圧力発生室650のそれぞれに対応するように複数設けられている。
圧電素子700を含む振動板750上の領域を覆って、封止基板800が設けられており、封止基板800の上面(流路形成基板600と反対側面)には、封止膜951と固定板952とを積層した構造のコンプライアンス基板950が接合されている。このコンプライアンス基板950において、内側に配される封止膜951は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さ6μm程度のポリフェニレンスルフィドフィルム)からなり、この封止膜951によってリザーバ部855の上部が封止されている。他方、外側に配される固定板952は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さ30μm程度のステンレス鋼)からなる板状部材である。
この固定板952には、リザーバ850に対応する平面領域を切り欠いてなる開口部953が形成されており、この構成によりリザーバ850の上部は、可撓性を有する封止膜951のみで封止され、内部圧力の変化によって変形可能な可撓部860となっている。
【0062】
通常、機能液導入口からリザーバ850に機能液が供給されると、例えば、圧電素子700の駆動時の機能液の流れ、あるいは、周囲の熱などによってリザーバ850内に圧力変化が生じる。しかしながら、上述のように、リザーバ850の上部が封止膜951のみよって封止された可撓部860を有しているので、この可撓部860が撓み変形してその圧力変化を吸収する。したがって、リザーバ850内は常に一定の圧力に保持される。なお、その他の部分は固定板952によって十分な強度に保持されている。
【0063】
封止基板800は、流路形成基板600とともに液滴吐出ヘッドHの基体を成す部材であるから剛体とすることが好ましく、封止基板800を形成する材料として流路形成基板600と略同一の熱膨張率を有する材料を用いることがより好ましい。本例の場合、流路形成基板600がシリコンからなるものであるから、それと同一材料のシリコン単結晶基板が好適である。シリコン単結晶基板を用いた場合、異方性エッチングにより容易に高精度の加工を施すことが可能であるため、圧電素子保持部870や溝部880を容易に形成できるという利点が得られる。その他、流路形成基板600と同様、ガラス、セラミック材料等を用いて封止基板800を作製することもできる。
【0064】
封止基板800上には駆動回路部900が配設されている。駆動回路部900は、例えば回路基板あるいは駆動回路を含む半導体集積回路(IC)を含んで構成されている。各駆動回路部900は、複数の接続端子(図示せず)を備えており、一部の接続端子が封止基板800上の配線基板100に形成された配線パターン対してワイヤW1により接続されている。駆動回路部900の他の一部の接続端子は、封止基板800の溝部880内に配置された上電極膜720に対してワイヤW2により接続されている。なお、封止基板800の溝部880は、前記実施形態の基板10において開口部25として形成されたものである(図2(a)参照)。
【0065】
封止基板800のうち、X軸方向に関して中央部には、Y軸方向に延びる溝部880が形成されており、封止基板800は溝部880によってX軸方向に区画されている。また、この溝部880の底面には上電極膜720や下電極膜730が露出しており、先述のようにこれら電極膜から駆動回路部900へ電力の供給ができるようになっている。
【0066】
回路駆動部900と接続される複数の圧電素子700を封止している封止部890には、圧電素子700に対向する領域に、圧電素子700の運動を阻害しない程度の空間を確保するとともに、その空間を密封する圧電素子保持部870が設けられている。圧電素子700のうち、少なくとも圧電体膜710は、この圧電素子保持部870内に密封されている。
【0067】
封止部890の圧電素子保持部870によって封止されている圧電素子700のうち、上電極膜720の−X側の端部は、封止部890の外側まで延びて、溝部880の底面部に露出している。溝部880における流路形成基板600上に下電極膜730の一部が配置されている場合においては、上電極膜720と下電極膜730との短絡を防止するための絶縁膜が、上電極膜720と下電極膜730との間に介挿されている。
【0068】
上述した構成を有する液滴吐出ヘッドHにより機能液の液滴を吐出するには、当該液滴吐出ヘッドHに接続された外部コントローラ(図示せず)によって機能液導入口に接続された外部機能液供給装置(図示せず)を駆動する。外部機能液供給装置から送出された機能液は、機能液導入口を介してリザーバ850に供給された後、ノズル開口550に至るまでの液滴吐出ヘッドHの内部流路を満たす。
【0069】
また外部コントローラは、封止基板800上に実装された駆動回路部900に例えば配線基板100を介して駆動電力や指令信号を送信する。指令信号等を受信した駆動回路部900は、外部コントローラからの指令に基づく駆動信号を、各圧電素子700に送信する。
すると、圧力発生室650に対応するそれぞれの下電極膜730と上電極膜720との間に電圧が印加される結果、弾性膜755、下電極膜730及び圧電体膜710に変位が生じ、この変位によって各圧力発生室650の容積が変化して内部圧力が高まり、ノズル開口550より液滴が吐出される。
【0070】
本例では、本発明の導電膜パターンの形成方法を適用して封止基板800の配線パターンを形成し、液滴吐出ヘッドHを構成している。そのため、本例の液滴吐出ヘッドHは、歩留りよく製造することができ、かつ短絡等が防止された高信頼性の液滴吐出ヘッドHとなっている。
【0071】
(液滴吐出装置)
次に、前記液滴吐出ヘッドHを備えたインクジェット式記録装置の一例について図7を参照しながら説明する。
【0072】
図7は、インクジェット式記録装置の一例を示す斜視構成図である。本例では、インクカートリッジ等と連通するインク流路を備えた記録ヘッドユニットが、その一部を前記液滴吐出ヘッドH(図6参照)で構成され、インクジェット式記録装置に搭載されている。図7に示すように、液滴吐出ヘッドを有する記録ヘッドユニット61A及び61Bには、インク供給手段を構成するカートリッジ62A及び62Bが着脱可能に設けられており、この記録ヘッドユニット61A及び61Bを搭載したキャリッジ63が、装置本体64に取り付けられたキャリッジ軸65に軸方向移動自在に取り付けられている。
【0073】
記録ヘッドユニット61A及び61Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動モータ66の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト67を介してキャリッジ63に伝達されることで、記録ヘッドユニット61A及び61Bを搭載したキャリッジ63がキャリッジ軸65に沿って移動するようになっている。一方、装置本体64にはキャリッジ軸65に沿ってプラテン68が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン68上に搬送されるようになっている。このような構成を備えた液滴吐出装置(インクジェット式記録装置)は、前述の液滴吐出ヘッドHを備えているので、高信頼性のものとなっている。
【0074】
なお、図7では、プリンタ単体としてのインクジェット式記録装置を示したが、本発明に係る液滴吐出ヘッドを組み込むことによって実現されるプリンタユニットに適用することも可能である。このようなプリンタユニットは、例えば、テレビ等の表示デバイスやホワイトボード等の入力デバイスに装着され、該表示デバイス又は入力デバイスによって表示若しくは入力された画像を印刷するために使用される。
【0075】
また上記液滴吐出ヘッドは、液相法により各種デバイスを形成するための液滴吐出装置にも適用することができる。この形態においては、液滴吐出ヘッドより吐出される機能液として、液晶表示デバイスを形成するための液晶表示デバイス形成用材料、有機EL表示デバイスを形成するための有機EL形成用材料、電子回路の配線パターンを形成するための配線パターン形成用材料などを含むものが用いられる。これらの機能液を液滴吐出装置により基体上に選択配置する製造プロセスによれば、フォトリソグラフィ工程を経ることなく機能材料のパターン配置が可能であるため、液晶表示装置や有機EL装置、回路基板等を低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】(a)〜(d)は、開口部が形成された基板を示す平面模式図である。
【図2】(a)は導電膜パターンが形成された基板の平面図、(b)は断面図である。
【図3】(a)は無電解めっき装置の斜視図、(b)は断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、導電膜パターンの形成方法を示す断面工程図である。
【図5】めっき処理の方法を示す断面図である。
【図6】本発明を適用した液滴吐出ヘッドの例である。
【図7】本発明を適用した液滴吐出装置の例である。
【符号の説明】
【0077】
10・・・基板、18、25・・・開口部、21・・・配線パターン(導電膜パターン)、21a・・・下地パターン、22b・・・めっき、211、211a・・・第1金属薄膜、212、212a・・・第2金属薄膜、50・・・めっき槽、60・・・外槽、70・・・温度制御手段、81、82・・・配管、100・・・無電解めっき装置、Q1・・・めっき液、Q2・・・熱媒体、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を液建するめっき槽と、該めっき槽の外側に配置された外槽と、該外層と前記めっき槽との間に所定の温度とした熱媒体を流通させて前記めっき槽の温度を制御する温度制御手段と、を備え、前記めっき槽のめっき液と接する接液部が、凹凸部を有してなるフィン形状となっている無電解めっき装置を用いて、開口部を有する基板にめっき処理を行ってめっきを形成し、該めっきを含んだ導電膜パターンを形成することを特徴とする導電膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記基板の基板面が前記めっき槽の深さ方向に平行となるように、該基板を前記めっき槽内に配置して前記めっき処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の導電膜パターンの形成方法。
【請求項3】
前記めっき処理を行う前に前記基板上に、第1金属薄膜と第2金属薄膜とが積層された下地パターンを形成し、次いで該下地パターン上に前記めっき処理によりめっきを形成し、下地パターンとめっきとからなる導電膜パターンを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の導電膜パターンの形成方法。
【請求項4】
前記第1金属薄膜をNi、Cr、Cu、Au、Ni含有合金、Cr含有合金、TiW合金の少なくとも一つを用いて形成することを特徴とする請求項3に記載の導電膜パターンの形成方法。
【請求項5】
前記第2金属薄膜をNi、Cu、Auのうちの少なくとも一つを用いて形成することを特徴とする請求項3又は4に記載の導電膜パターンの形成方法。
【請求項6】
前記導電膜パターンは、液滴吐出ヘッドの配線パターンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の導電膜パターンの形成方法。
【請求項7】
開口部を有する基板にめっき処理を行う無電解めっき装置であって、
めっき液を液建するめっき槽と、該めっき槽の外側に配置された外槽と、該外層と前記めっき槽との間に所定の温度とした熱媒体を流通させて前記めっき槽の温度を制御する温度制御手段と、を備え、前記めっき槽のめっき液と接する接液部が、凹凸部を有してなるフィン形状となっていることを特徴とする無電解めっき装置。
【請求項8】
前記接液部におけるフィン形状の凹凸部が、前記めっき液の液面側に向うにつれて密に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の無電解めっき装置。
【請求項9】
前記めっき槽の内面形状が、該めっき槽の深さ方向に直交する断面において略長方形となっていることを特徴とする請求項7又は8に記載の無電解めっき装置。
【請求項10】
前記めっき槽に液建てされためっき液の成分を調整するガスを前記めっき液に供給する複数の配管を有し、該配管は前記めっき槽の中央側を挟んで対称的に設けられていることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の無電解めっき装置。
【請求項11】
前記めっき液が非シアン系めっき液であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の無電解めっき装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−102693(P2009−102693A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275567(P2007−275567)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】