説明

小動物忌避組成物

【課題】 材料自体が忌避効果を有する組成物を用いることで、忌避物質の雨による流脱又は太陽光による分解をなくし、動物忌避効果を長時間持続させることができる小動物忌避組成物を提供する。
【解決手段】 材料がハロゲン原子を含有するゴム組成物を加硫して得られる小動物忌避組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小動物に対して優れた忌避効果を有する動物忌避組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、公園等の砂場に小動物が放つ、尿、糞による悪臭が問題となっている。又、小動物がゴミや残飯等が入っているポリ袋を破り、中身を路上に散乱させるため、周囲に悪臭を放つ、路面が不衛生になるという問題も多発している。そのため、動物が嫌う臭いを発する忌避物質を散布する方法が採られている。このような動物忌避物質としては、レモングラス油、シトラール、シンナムアルデヒドなどが挙げられる。
【0003】
上記の動物忌避物質は、揮発し易い物質である為、効果が短時間しか持続しなかった。そのためシリカゲル、パーライト、ゼオライトなどの無機系吸着物質に吸着させたものを使用することで効果を長時間持続させるという工夫がなされていた。しかしこの場合は、動物忌避物質が雨により流脱する、又は太陽光線により分解されることで効果が低下するという問題があった。これを解決するものとして、次に挙げる特許文献に記載のものが開発された。
【0004】
ところが、特許文献1に記載の犬猫用忌避組成物担持樹脂から忌避物質が放出されることから、半永久的には使用できない。又、特許文献2に記載の犬猫用忌避剤は、犬猫の行動領域に散布又は噴霧することにより、犬猫を忌避するものであり、その効果は天候に左右されるものであった。特許文献3に記載の犬猫用忌避剤も粒剤、粉剤、乳剤、エアゾール剤などで使用されるが、特許文献2に記載の犬猫用忌避剤と同様、天候に左右されるものであった。
【0005】
特許文献4に記載の小動物忌避剤は、ハロゲン原子を含有するものであるが、不活性の液状の担体、固体状の担体、又はガス状の担体に保持させたものに使用するが、やはり忌避物質の放出により半永久的には使用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−286803
【特許文献2】特開2001−31505
【特許文献3】特開2006−96681
【特許文献4】特開2006−96686
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、材料自体が忌避効果を有する組成物を用いることで、忌避物質の雨による流脱又は太陽光による分解をなくし、動物忌避効果を長時間持続させることができる小動物忌避組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ハロゲン原子を含有するゴム組成物を加硫して得られる小動物忌避組成物にある。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記ハロゲン原子が塩素である請求項1に記載の小動物忌避組成物である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記ゴム組成物がクロロプレンゴムである請求項1又は2に記載の小動物忌避組成物である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記ゴム組成物を加硫した後粉砕し、さらに熱融着又は接着剤にて接着した請求項1から3のいずれかに記載の小動物忌避組成物にある。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記ゴム組成物がゴム廃材である請求項1から4のいずれかに記載の小動物忌避組成物にある。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によると、小動物忌避組成物がハロゲン原子を含有するゴム組成物を加硫して得られる小動物忌避組成物であることから、小動物忌避剤が液体でも、忌避剤を担持した固体でもないことから、雨により忌避物質が流脱したり、太陽光線で分解が促進されるということは無い。
【0014】
請求項2に記載の発明によると、前記ハロゲン原子が塩素である請求項1に記載の小動物忌避組成物であることから、小動物忌避効果がより強くなる。
【0015】
請求項3に記載の発明によると、前記ゴム組成物がクロロプレンゴムである請求項1又は2に記載の小動物忌避組成物であることから、汎用ゴムを使用することができ、材料コストの負担が小さくなるという効果がある。
【0016】
請求項4に記載の発明によると、前記ゴム組成物を加硫した後粉砕しさらに熱融着又は接着剤にて接着した請求項1から3のいずれかに記載の小動物忌避組成物であることから、粉砕することによりゴム組成物の比表面積が大きくなり、動物忌避効果が向上する。又、粉砕したものを熱融着又は接着剤にて接着することによって、強度及び耐久性を高める効果がある。
【0017】
請求項5に記載の発明によると、前記ゴム組成物がゴム廃材である請求項1から4のいずれかに記載の小動物忌避組成物であることから、ゴムベルトやタイヤに使用されたゴムを再利用することができ、産業廃棄物を低減できるという環境対策に効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0019】
本発明に係る小動物忌避組成物は、ハロゲン原子を含有するゴム組成物である。又、ハロゲン原子は塩素が好ましい。
【0020】
又、本発明に係る小動物忌避組成物は、クロロプレンゴムであることが好ましい。
【0021】
ここで、小動物とは、ある領域に侵入し、その領域に存する食品、食品包装紙機器等をかじる等して損害を生じさせる動物であり、例えば、ねずみ、犬、猫、ウサギ、イノシシ、モグラ、イタチ等の獣類、カラス、スズメ、ハト、ムクドリ等の鳥類等が挙げられる。
【0022】
前記ゴム組成物は、小動物に対する忌避効果が高く、又材料自身が忌避効果を有するので、忌避効果の持続時間が長く、忌避物質の雨による流脱、又は、太陽光による分解が無く、さらに毒性が低い。従って、このようなゴム組成物を小動物忌避剤の有効成分として用いることにより、忌避効果と、人体に対する安全性との双方に優れた小動物忌避剤を得ることができる。
【0023】
又、前記ゴム組成物は、加硫した後粉砕し、さらに熱融着又は接着剤にて接着した方が好ましい。粉砕することにより、ゴム組成物の比表面積が大きくなり、動物忌避効果が向上し、成形体として作製することにより、強度及び耐久性を高めることができる。粉砕は、平均粒子径で、0.3〜10mmの大きさに粉砕することが好ましい。
【0024】
次に、具体的な製造方法を説明する。
クロロプレンゴムに加硫剤等を混練したものを所定の容量を有する金型内にて、加硫を行う。その加硫後のクロロプレンゴムを直径で0.3〜10mmの大きさに粉砕する。該加硫後のクロロプレンゴムは、ベルトを加硫成形した後のゴム廃材でも良いし、タイヤを加硫成形した後のゴム廃材であっても良い。前記廃材は、帆布や補強材としての繊維を含んだままの状態であっても良い。
【0025】
前記粉砕したゴム組成物をチップ状のままで、小動物忌避材として使用することもできるし、加工して使用することもできる。
加工して使用する場合は、粉砕したゴム組成物を所定の大きさの金型に充填し、該金型に所定の温度で所定時間加熱し、熱融着させることもできる。加熱温度としては、150
°C〜180°Cの範囲が好ましく、加熱時間としては、10分〜30分が好ましい。
【0026】
前記のように熱融着して成形体とする場合に、より強固に接着した成形体を得る場合に、前記ゴム組成物に接着剤を均一に混合し、所定温度で所定の時間加熱することもできる。加熱温度としては、150°C〜180°C、加熱時間としては、10分〜30分が好ましい。接着剤としては、ウレタン系、合成ゴム系、酢酸ビニル系等の材料を使用することができる。
【実施例】
【0027】
本発明を図に示した実施例に基づき詳細に説明する。
実施例1
ベルトの製造工程で発生するクロロプレンゴム廃材約400gを犬や猫が多く糞をする公園の砂場に置き、1週間後に砂場にある糞の数量を計測した。その結果を表2に示す。また、クロロプレンゴムの配合は、表1に示すものを使用した。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例2
実施例1で用いたゴム廃材の代わりにこれを平均粒子径6mmに粉砕したもの200gを用いて、実施例1と同様にして計測した。その結果を表2に示す。
【0030】
実施例3
実施例1で用いたゴム廃材の代わりにこれを平均粒子径6mmで粉砕したもの200gを縦100mm、横100mm、厚さ50mmの型に充填し、160°Cで20分間10MPaで圧縮することにより作製した、縦100mm、横100mm、厚さ20mmの成形体を用いて、実施例1と同様にして計測した。その結果を表2に示す。
【0031】
実施例4
実施例2で用いた平均粒子径6mmのゴム廃材粉砕物200gにウレタンバインダー(
三井化学ポリウレタン株式会社製タケネートF)50gを均一に混ぜ、縦100mm、横100mm、厚さ50mmの型枠に充填し、170°Cで10分間圧縮せずに熱処理することにより作製した縦100mm、横100mm、厚さ50mmの成形体を用いて、実施例1と同様にして計測した。その結果を表2に示す。
【0032】
従来例
砂場の糞を除去し、小動物忌避材は何も設置せずに1週間後砂場にある糞の数量を計測した。その結果を表2に示す。
【0033】
比較例
実施例1で用いたゴム廃材の代わりに表1に示す配合の天然ゴムとスチレンブタジエンゴムとをブレンドしたタイヤ廃材を平均粒子径6mmに粉砕したもの200gを用いて、実施例1と同様にして計測した。その結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
表2の結果から、小動物忌避材を何も置かなかったときの従来例が、1週間後の糞の数が12個であったのに対して実施例は半減以下の結果となった。又、天然ゴムとスチレンブタジエンゴムとのブレンドゴムからなるタイヤ廃材と比較しても半減する結果となった。
【0036】
実施例2の結果からもわかるように、粉砕平均粒子径が6mmのチップ状とした場合も効果が大きいことがわかるので、狭い場所で設置して例えばねずみを近づけさせないようにすることもできる。
【0037】
又、実施例4で用いた成形体を一般家庭の庭の猫がよく糞をする一角に置き、糞の状況を確認した。ゴム成形体を置いた翌日から庭に糞が無くなり、3日後から猫を見かけなくなった。10日後にゴム成形体を取り除いたところ、66日目に猫の姿及び糞が確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン原子を含有するゴム組成物を加硫して得られることを特徴とする小動物忌避組成物。
【請求項2】
前記ハロゲン原子が塩素である請求項1に記載の小動物忌避組成物。
【請求項3】
前記ゴム組成物がクロロプレンゴムである請求項1又は2に記載の小動物忌避組成物。
【請求項4】
前記ゴム組成物を加硫した後粉砕しさらに熱融着又は接着剤にて接着した請求項1から3のいずれかに記載の小動物忌避組成物。
【請求項5】
前記ゴム組成物がゴム廃材である請求項1から4のいずれかに記載の小動物忌避組成物。

【公開番号】特開2010−173961(P2010−173961A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17659(P2009−17659)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】