小型旗形レンチ、小型旗形レンチ用レンチ部材及び小型旗形レンチ用つまみ部材
【課題】レンチ部材とつまみ部材とが着脱可能な分割構造を有し、つまみ部材が破損することなく締結具を確実に締め付けることができる小型旗形レンチを提供すること。
【解決手段】小型旗形レンチ10は、レンチ部材11とつまみ部材12とを備える。レンチ部材11は、係合部14が形成された主軸15と、主軸15の基端を直角に折り曲げてなる短軸16と、短軸16の先端に形成され短軸16の直径よりも主軸方向に長い応力分散部17とを備える。つまみ部材12は、合成樹脂製のつまみ本体21を備え、その下面にレンチ部材固定穴24が開口形成されている。つまみ本体21のレンチ部材固定穴24に対し、レンチ部材11における曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定される。
【解決手段】小型旗形レンチ10は、レンチ部材11とつまみ部材12とを備える。レンチ部材11は、係合部14が形成された主軸15と、主軸15の基端を直角に折り曲げてなる短軸16と、短軸16の先端に形成され短軸16の直径よりも主軸方向に長い応力分散部17とを備える。つまみ部材12は、合成樹脂製のつまみ本体21を備え、その下面にレンチ部材固定穴24が開口形成されている。つまみ本体21のレンチ部材固定穴24に対し、レンチ部材11における曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトやネジなどの締結具を着脱するための小型旗形レンチ、小型旗形レンチ用レンチ部材及び小型旗形レンチ用つまみ部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機械加工用の切削工具を着脱するために金属製のレンチが用いられている。この種のレンチとしては、環境対応として、樹脂を使用しない金属のみを使用したものが実用化されている。図13には、その一例を示している。図13に示されるように、レンチ41は、ループ状に形成された簡易つまみ42を有する。このレンチ41では、材料費等を低減する必要があり、簡易つまみ42を大きくすることができない。そのため、操作者がこのレンチ41を使用してボルト等を手締めする場合、簡易つまみ42が小さく、締め付けトルクが不足することがあった。締め付けトルクが不足する場合、ペンチ等の工具を使って強く締め付ける必要があるが、この場合には、適度なトルクで締め付けることが難しく、さらに、過度の締め付けによって、レンチ41が折損してしまうといった問題がある。また、このレンチ41では、何らかの滑り止め処理を施す必要があることに加え、ループ状の簡易つまみ42を形成する際に、先端側と基端側とで芯ズレが生じる。よって、芯ズレを調整するための曲げ加工も必要となり、製造コストが増大するといった問題も生じていた。
【0003】
この対策として、大型のつまみ部材43を樹脂で形成したレンチ44(図14参照)が実用化されている。このタイプのレンチ44では、剛性を確保することを目的として、樹脂製のつまみ部材43と金属製のレンチ部材45とが一体型に形成されており、つまみ部材43を着脱することができなかった。また、つまみ部材43は、使用感を向上させるために硬質の樹脂を使用することが通常であった。この硬質の樹脂からなるつまみ部材43は締め付け時に破損する場合があるため、締め付けトルクを増すことが困難であった。さらに、樹脂製のつまみ部材43が破損してしまった場合には、部品毎にリユース(再利用)できないといった問題もあった。
【0004】
本出願人は、樹脂製のつまみ部材をレンチ部材に対して着脱可能に構成した分割構造のレンチを提案している(特許文献1参照)。図15に示されるように、レンチ46において、レンチ部材47はL字形状をなし、比較的に長い主軸48とその主軸48から直角に折り曲げてなる短軸49とを有する。そして、そのレンチ部材47の短軸側がつまみ部材51の固定穴52に着脱可能に嵌着固定されている。また、特許文献2,3等においても同様に、L字形状のレンチ部材とつまみ部材とが着脱可能に構成された分割構造のレンチが提案されている。
【特許文献1】特開2003−285275号公報(図1等)
【特許文献2】実用新案第3054487号公報(図1等)
【特許文献3】実開平6−5867号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記分割構造のレンチ46のように、つまみ部材51を硬質樹脂で形成し、レンチ部材47がL字形状である場合、樹脂製のつまみ部材51が破損することが多く、樹脂製のつまみ部材51の再利用が困難な状況となっていた。具体的にいうと、レンチ46を用いてボルトを締結する際には、つまみ部材51に嵌着されている短軸49の先端に応力が集中し、つまみ部材51が破損してしまう。このように、従来の分割構造のレンチ46では、構造上、締め付けトルクを増すことが困難であった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、レンチ部材とつまみ部材とが着脱可能な分割構造を有し、つまみ部材が破損することなく締結具を確実に締め付けることができる小型旗形レンチを提供することにある。また、本発明の別の目的は、小型旗形レンチに使用するのに好適なレンチ部材及びつまみ部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、締結具に係合しうる係合部が形成された主軸と、前記主軸の基端を直角に折り曲げてなる短軸と、前記短軸の先端に形成され前記短軸の直径よりも前記主軸方向に長い応力分散部とを備える棒状かつ金属製のレンチ部材を備えるとともに、側面、上面及び下面を有し、操作者が指でつまんで保持可能な大きさのチップ状であり、前記下面にレンチ部材固定穴が開口形成された合成樹脂製のつまみ本体と、前記つまみ本体の上面にて突出するように一体形成されたつまみ突起とを備えるつまみ部材を備え、前記レンチ部材固定穴に対し、前記レンチ部材における曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されたことを特徴とする小型旗形レンチがある。
【0008】
従って、手段1の小型旗形レンチを用いる場合、操作者がつまみ部材のつまみ本体を指でつまんで小型旗形レンチを保持し、レンチ部材の主軸の係合部を締結具に係合させる。そして、つまみ部材のつまみ突起を回すことにより、締結具が迅速に仮締めされる。その後、つまみ本体を回すことにより、所定のトルクで締結具が確実に締め付けられる。この小型旗形レンチにおいて、つまみ本体のレンチ部材固定穴に嵌着固定されるレンチ部材の基端側には、主軸の基端を直角に折り曲げてなる短軸と、その短軸の先端に形成された応力分散部とが設けられている。応力分散部は、短軸の直径よりも主軸方向に長く形成されているので、締結具を締め付ける際に短軸の先端に加わる応力をその応力分散部で確実に分散させることができる。その結果、合成樹脂製のつまみ本体の破損を回避することができ、締結具を確実に締め付けることができる。また、小型旗形レンチは、棒状かつ金属製のレンチ部材と合成樹脂製のつまみ部材とが着脱可能な分割構造となっているので、複数回の使用によっていずれか一方の部材が破損した場合、その破損した部材を交換すればレンチの再利用が可能となる。よって、レンチ全体を交換する従来のレンチと比較して、部品コストを低減することができる。
【0009】
なお、本発明において「直角に折り曲げてなる」とは、厳密に90°の角度で折り曲げる場合に限定するものではなく、ほぼ直角に折り曲げてなる状態を意味し、より具体的にはレンチ部材としての機能を奏しうる範囲内でほぼ直角に折り曲げることを意味し、例えば90±30°の角度で折り曲げる場合を含むこととする。
【0010】
また、上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、小型旗形レンチ用つまみ部材のレンチ部材固定穴に対し、曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されうる棒状かつ金属製のレンチ部材であって、締結具に係合しうる係合部が形成された主軸と、前記主軸の基端を直角に折り曲げてなる短軸と、前記短軸の先端に形成され前記短軸の直径よりも前記主軸方向に長い応力分散部とを備えることを特徴とする小型旗形レンチ用レンチ部材がある。
【0011】
従って、手段2の小型旗形レンチ用レンチ部材によると、その基端側には、主軸の基端を直角に折り曲げてなる短軸と、その短軸の先端に形成された応力分散部とが設けられている。この応力分散部は、短軸の直径よりも主軸方向に長く形成されているので、締結具を締め付ける際に短軸の先端に加わる応力を応力分散部で確実に分散させることができる。その結果、小型旗形レンチ用つまみ部材の破損を回避することができ、締結具を確実に締め付けることができる。
【0012】
前記応力分散部は前記短軸の先端を前記主軸の先端方向と同じ方向を向くように折り曲げてなり、前記レンチ部材の基端側が略コ字状を呈していることが好ましい。この場合、応力分散部を簡単に形成することができ、小型旗形レンチ用レンチ部材の製造コストを低減することができる。また、レンチ部材の基端側が略コ字状になるので、レンチ部材固定穴に対してそのレンチ部材の基端を確実に固定することができる。
【0013】
前記応力分散部は、先端側にいくほど前記主軸から遠ざかるように形成されていることが好ましい。この場合、レンチ部材固定穴に対してレンチ部材の基端側を嵌着させたとき、応力分散部の先端側がレンチ部材固定穴の内壁面に対して押し付けられ、これによりガタツキなく確実にレンチ部材を固定することができる。
【0014】
さらに、上記課題を解決するための別の手段(手段3)としては、金属製の小型旗形レンチ用レンチ部材における曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されうるつまみ部材であって、側面、上面及び下面を有し、操作者が指でつまんで保持可能な大きさのチップ状であり、前記下面にレンチ部材固定穴が開口形成された合成樹脂製のつまみ本体と、前記つまみ本体の上面にて突出するように一体形成されたつまみ突起とを備え、前記下面に占める前記レンチ部材固定穴の開口面積が13%以上50%以下であり、前記つまみ本体の上下方向寸法に対する前記レンチ部材固定穴の深さが40%以上90%以下であり、前記つまみ本体の体積に対する前記レンチ部材固定穴の体積が10%以上40%以下であり、前記つまみ本体を構成する合成樹脂のロックウェル硬度がHスケールで80以上であることを特徴とする小型旗形レンチ用つまみ部材がある。
【0015】
従って、手段3の小型旗形レンチ用つまみ部材によると、合成樹脂製のつまみ本体の下面にレンチ部材固定穴が開口形成されており、そのレンチ部材固定穴に金属製の小型旗形レンチ用レンチ部材の基端側が嵌着固定される。そして、小型旗形レンチの使用時には、つまみ本体の上面に一体形成されたつまみ突起を操作者が回すことにより、締結具が迅速に仮締めされる。その後、操作者がつまみ本体をつまんで回すことにより、所定のトルクで締結具が確実に締め付けられる。本発明の小型旗形レンチ用つまみ部材は、前記下面に占める前記レンチ部材固定穴の開口面積が13%以上50%以下であり、前記つまみ本体の上下方向寸法に対する前記レンチ部材固定穴の深さが40%以上90%以下であり、前記つまみ本体の体積に対する前記レンチ部材固定穴の体積が10%以上40%以下であるので、この固定穴を設けることで内部空間がかなり大きくなり、つまみ本体の強度が低下する。そのため、ロックウェル硬度がHスケールで80以上の硬い合成樹脂を用いてつまみ本体を形成することにより、その強度を十分に確保することができ、使用時のつまみ本体の破損を回避することができる。
前記つまみ本体の下面に占めるレンチ部材固定穴は、着脱可能にレンチ部材を固定でき、つまみ本体の強度も考慮すると、開口面積、深さ及び体積の三項目についての好適範囲を同時に満たすことが必要である。開口面積が13%未満ではレンチ部材の着脱が困難となる一方、50%を越えるとつまみ本体が薄肉となりレンチ部材の強度が低下する。また、深さが40%未満であると、つまみ部材からレンチ部材が外れやすくなり、十分に力を加えてレンチ締め付けを行うことが困難になる。深さが90%を越えると、つまみ部材が薄肉となり、レンチ締め付け時につまみ部材が破損しやすくなる。さらに、体積が10%未満であると、レンチ部材固定穴の開口形状によってはレンチ部材の着脱が困難になる。また、つまみ部材からレンチ部材が外れやすくなり、十分に力を加えてレンチ締め付けを行うことが困難になる。体積が40%を越えると、つまみ部材が薄肉となり、レンチ締め付け時につまみ部材が破損しやすくなる。また、前記レンチ部材固定穴は、つまみ本体の下面において中心部を含み、左右、上下対象の形状となるよう形成することが好ましい。さらに、使用時のつまみ本体の破損をいっそう確実に回避できる点で、ロックウェル硬度がHスケールで90以上100以下の硬い樹脂の使用が好ましいが、その材料費や加工性等を考慮して適切な硬度の樹脂が用途に応じて選定されるべきである。
【0016】
前記つまみ本体を構成する合成樹脂は、酢酸セルロース系の樹脂であることが好ましい。その理由として、酢酸セルロース系の樹脂は、強靭でクラックが発生し難く、耐衝撃性に優れているといった特徴や、耐油性に優れ、手でつまんだ感触が良好であるといった特徴を有しているからである。また、酢酸セルロース系の樹脂は、自由に着色することができる。このため、レンチ部材のサイズに応じてつまみ本体を異なる色で着色してもよい。この場合、つまみ本体の色によってレンチのサイズを認識することができ、実用上好ましいものとなる。
【0017】
前記つまみ本体は、つまみ部材の上下方向に沿って延びる複数のリブを前記側面に有することが好ましい。この場合、つまみ本体を操作者が手でつまんで回す際に、複数のリブが滑り止めとして機能し、小型旗形レンチを確実に回すことができ、作業性を高めることができる。
【0018】
前記つまみ本体は、前記側面の中央部に窪みを有することが好ましい。このように、側面の中央部に窪みがあれば、つまみ本体をつまみ易くなるため、小型旗形レンチを確実に回すことができ、作業性を高めることができる。
【0019】
前記つまみ本体は、前記側面全体が湾曲した凹面状に形成されていることが好ましい。このように、つまみ本体の側面全体を湾曲した凹面状に形成すれば、つまみ本体をつまみ易くなるため、小型旗形レンチを確実に回すことができ、作業性を高めることができる。
【0020】
前記つまみ本体には、前記上面と前記レンチ部材固定穴とを連通させる抜き孔が形成されていることが好ましい。この場合、抜き孔に棒を差し込んでレンチ部材をレンチ部材固定穴から押出すことにより、小型旗形レンチ用つまみ部材からレンチ部材を容易に取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を小型旗形レンチに具体化した一実施の形態を図1〜図5に基づき詳細に説明する。図1は、小型旗形レンチの概略構成を示す斜視図であり、図2は、その小型旗形レンチの断面図である。
【0022】
図1及び図2に示されるように、小型旗形レンチ10は、金属製のレンチ部材11(小型旗形レンチ用レンチ部材)と、そのレンチ部材11の基端側にキャップ方式で装着する合成樹脂製のつまみ部材12(小型旗形レンチ用つまみ部材)とを備える。小型旗形レンチ10は、切削工具1のホルダー2にスローアウェイチップ3をボルト締めにて固定するために用いられる。
【0023】
図1の切削工具1において、ホルダー2の先端部にはチップ座4が設けられており、このチップ座4にスローアウェイチップ3がボルト5(締結具)によって固定される。このボルト5は、スローアウェイチップ3を固定するために用いられる一般的なボルトであって、そのヘッド部6に設けられているレンチ用凹部7は、平面視で「*」状の形状を有する。
【0024】
レンチ部材11は、棒状の部材であって、先端に係合部14を有する主軸15と、主軸15の基端を直角に折り曲げてなる短軸16と、その短軸16の先端を主軸15の先端方向と同じ方向を向くように折り曲げてなる応力分散部17とを備え、基端側が略コ字状を呈している。主軸15先端の係合部14は、ボルト5に係合しうる形状、すなわち、「*」状(6枚刃のギヤ状)の形状を有する。また、応力分散部17は、短軸16の直径よりも主軸方向に長くなっており、先端側にいくほど主軸15から遠ざかるように形成されている(図2の二点鎖線を参照)。
【0025】
図1〜図5に示されるように、つまみ部材12は、側面、上面及び下面を有する合成樹脂製のつまみ本体21と、つまみ本体21の上面にて突出するように一体形成されたつまみ突起22とを備える。つまみ本体21は、操作者が指でつまんで保持可能な大きさ(例えば、縦横の幅が20mm、厚さが6mmのサイズ)のチップ状に形成されている。具体的には、つまみ部材12は、酢酸セルロース樹脂を用いて射出成形されている。本実施の形態では、その酢酸セルロース樹脂として、ロックウェル硬度がHスケールで100のグレードのものを使用している。
【0026】
また、つまみ本体21の下面にはレンチ部材固定穴24が開口形成されており、このレンチ部材固定穴24に対し、レンチ部材11における曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されている。レンチ部材固定穴24は、レンチ部材11の短軸16の直径や長さに合わせたサイズを有し、つまみ本体21の下面に占めるレンチ部材固定穴24の開口面積が13%以上50%以下であり、つまみ本体21の上下方向寸法に対するレンチ部材固定穴24の深さが40%以上90%以下であり、つまみ本体21の体積に対するレンチ部材固定穴24の体積が10%以上40%以下となるよう形成されている(図5の斜線部を参照)。
また、レンチ部材固定穴24は、つまみ突起22の同軸上の位置を含んで構成されており、レンチ部材固定穴24にレンチ部材11の基端側を装着した場合、そのつまみ突起22とレンチ部材11の主軸15とが同軸上に配置される。
【0027】
さらに、つまみ本体21には、上面におけるつまみ突起22の近傍に、上面とレンチ部材固定穴24とを連通させる抜き孔25が形成されている。そして、つまみ部材12からレンチ部材11を取り外す場合、細長い棒をこの抜き孔25に差し込んでレンチ部材11の基端側がレンチ部材固定穴24の外部に押出される。
【0028】
また、つまみ本体21の側面には、つまみ部材12の上下方向に沿って延びる複数のリブ26が設けられている。この複数のリブ26は、つまみ本体21を操作者が手でつまんで回す際に滑り止めとして機能する。なお、本実施の形態では、側面における上側の領域R1にリブ26は形成されておらず、この領域R1には、製品名称や社名などの文字が記入される。また、つまみ本体21の側面においてその中央部に窪み28が形成されている。この窪み28は、操作者の指先に合わせたサイズであり、この窪み28を設けることにより、つまみ本体21がつまみ易くなる。
【0029】
さらに、つまみ突起22にも、つまみ部材12の上下方向に沿って延びる複数のリブ29が設けられている。この複数のリブ29も、つまみ突起22をつまんで回す際の滑り止めとして機能する。
【0030】
次に、本実施の形態の小型旗形レンチ10の使用方法について説明する。
【0031】
まず、操作者は、レンチ部材11とつまみ部材12とを準備し、つまみ部材12のレンチ部材固定穴24にレンチ部材11の基端側を嵌着固定することにより、小型旗形レンチ10を構成する。ここで、レンチ部材11の応力分散部17は、先端側にいくほど主軸15から遠ざかるように形成されており、レンチ部材11の固定時には、その先端側がレンチ部材固定穴24の壁面に当接した状態でその固定穴24内に収納される。従って、応力分散部17がバネの役割を果たすことにより、レンチ部材11がレンチ部材固定穴24から脱落しないように確実に固定される。
【0032】
次に、操作者は、つまみ部材12のつまみ本体21を指でつまんで小型旗形レンチ10を保持し、レンチ部材11の主軸15の係合部14をボルト5のレンチ用凹部7に係合させる。またこのとき、ホルダー2のチップ座4にスローアウェイチップ3を配置し、ボルト5の先端をスローアウェイチップ3の貫通孔8を通してチップ座4のボルト穴9に挿入する(図1参照)。そして、つまみ部材12のつまみ突起22を回すことにより、ボルト5を仮締めする。ここで、ボルト5の仮締めは強い力は必要なく、つまみ突起22は直径が小さいため、つまみ突起22を素早く回して仮締めを行うことができる。また、小型旗形レンチ10において、つまみ突起22は、主軸15の同軸上に配置されるため、軸ぶれなく迅速にボルト5が仮締めされる。
【0033】
その後、操作者は、つまみ本体21における側面中央部の窪み28を指でつまみ、そのつまみ本体21を回すことにより、所定のトルクでボルト5が本締めされる。このとき、つまみ本体21において、レンチ部材固定穴24に収納されているレンチ部材11の基端側、特に、短軸16の先端に設けられている応力分散部17に応力が加わる。応力分散部17は、短軸16の直径よりも主軸方向に長く形成されており十分な面積を有するので、応力が集中することなく分散される。その結果、つまみ本体21が破損することなく、十分な締め付けトルクが確保され、ボルト5が確実に本締めされる。
【0034】
また、小型旗形レンチ10を用いて複数回(例えば、20回程度)のボルト締めを行うと、レンチ部材11の係合部14に加わる繰り返し応力によってその係合部14が変形し、ボルト締めを確実に行うことができなくなる。この場合、使用不能となったレンチ部材11を新しいレンチ部材11に交換する必要がある。この交換時には、つまみ本体21の上面に形成されている抜き孔25に細長い棒(例えば、金属製のピン)を差し込んで、レンチ部材11をレンチ部材固定穴24から押出すことにより、つまみ部材12からレンチ部材11が取り外される。その後、新しいレンチ部材11の基端側をレンチ部材固定穴24に嵌着しそのレンチ部材11をつまみ部材12に固定することで、レンチ部材11の交換作業が完了する。
【0035】
また、レンチ部材11ではなく、つまみ部材12が破損した場合には、同様に、つまみ本体21の抜き孔25に細長い棒を差し込んでつまみ部材12からレンチ部材11を取り外す。その後、新しいつまみ部材12のレンチ部材固定穴24にレンチ部材11の基端側を嵌着しレンチ部材11をつまみ部材12に固定することで、つまみ部材12の交換作業が完了する。
【0036】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0037】
(1)本実施の形態の小型旗形レンチ10において、レンチ部材11の基端側には、主軸15の基端を直角に折り曲げてなる短軸16と、その短軸16の先端に形成された応力分散部17とが設けられている。この応力分散部17は、短軸16の直径よりも主軸方向に長く形成されているので、ボルト5を締め付ける際に短軸16の先端に加わる応力を確実に分散させることができる。その結果、合成樹脂製のつまみ本体21の破損を回避することができ、ボルト5を確実に締め付けることができる。
【0038】
(2)本実施の形態の小型旗形レンチ10では、金属製のレンチ部材11と合成樹脂製のつまみ部材12とが着脱可能な分割構造となっているので、複数回の使用によっていずれか一方の部材が破損した場合、その破損した部材を交換すれば小型旗形レンチ10の再利用が可能となる。よって、図14のようにレンチ部材45とつまみ部材43とが一体的に構成される従来のレンチ44と比較して、部品コストを抑えることができる。
【0039】
(3)本実施の形態の小型旗形レンチ10では、応力分散部17は短軸16の先端を主軸15の先端方向と同じ方向を向くように折り曲げてなり、レンチ部材11の基端側が略コ字状を呈している。この場合、従来技術のようなL字状のレンチ部材47と比較して、つまみ部材12にレンチ部材11を確実に固定することができる。特に、応力分散部17は、先端側にいくほど主軸15から遠ざかるように形成されているので、レンチ部材固定穴24に対してレンチ部材11の基端側を嵌着させたとき、応力分散部の先端側がレンチ部材固定穴の内壁面に対して押し付けられ、これによりガタツキなく確実にレンチ部材11を固定することができる。
【0040】
(4)本実施の形態のつまみ部材12においては、下面に占めるレンチ部材固定穴24の開口面積が40%、つまみ本体24の上下方向寸法に対するレンチ部材固定穴24の深さが60%、つまみ本体24の体積に対するレンチ部材固定穴24の体積が40%となっている(ちなみに図15に示した従来品では、開口面積が約17%、深さが約40%、体積が約5%)。よって、応力集中を緩和するためにレンチ部材11の短軸16を長くした場合でも、レンチ部材固定穴24にその短軸16を確実に収納することができる。また、このレンチ部材固定穴24を設けることでつまみ本体21の強度が低下するが、ロックウェル硬度がHスケールで100の酢酸セルロース樹脂を用いてつまみ本体21を形成している。ゆえに、つまみ本体21の強度を十分に確保することができる(ちなみに図14、図15に示した従来品では、ロックウェル硬度がHスケールでせいぜい75〜85程度)。さらに、酢酸セルロース樹脂は、耐衝撃性に優れていることに加え、耐油性に優れている。このため、旋盤加工機などの調整時に手に油が付着した場合でも、その油の付着を気にすることなく、小型旗形レンチ10を使用することができる。
【0041】
(5)本実施の形態のつまみ部材12では、つまみ本体21の側面に上下方向に沿って延びる複数のリブ26を有するので、つまみ本体21を操作者が手でつまんで回す際に、各リブ26が滑り止めとして機能する。これにより、小型旗形レンチ10を確実に回すことができ、作業性を高めることができる。
【0042】
(6)本実施の形態のつまみ部材12では、つまみ本体21の側面の中央部に窪み28を有するので、つまみ本体21を容易につまむことができ、作業性を高めることができる。
【0043】
(7)本実施の形態のつまみ部材12では、つまみ本体21における上面とレンチ部材固定穴24とを連通させる抜き孔25が形成されている。この抜き孔25に細長い棒を差し込んでレンチ部材11をレンチ部材固定穴24から押出すことにより、つまみ部材12からレンチ部材11を容易に取り外すことができる。
【0044】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0045】
・上記実施の形態のつまみ部材12は、側面に複数のリブ26が形成されるものであったが、このリブ26は省略してもよい。また、図6に示すつまみ部材31のように、つまみ本体21の側面全体を湾曲した凹面状に形成してもよい。このようにつまみ部材31を形成しても、つまみ本体21がつまみ易くなるため、小型旗形レンチ10を確実に回すことができる。
【0046】
・上記実施の形態の小型旗形レンチ10は、主軸15に対して片側につまみ部材12を装着した片旗タイプのレンチであるが、これ以外に主軸15の両側につまみ部材を装着した両旗タイプのレンチに具体化してもよい。
【0047】
・上記実施の形態のレンチ部材11において、主軸15の基端側の曲がり形状は、略コ字状であったが、これ以外の形状、例えばZ字状に変更してもよい。また、短軸16の先端を折り曲げて応力分散部17を形成したが、これ以外に短軸16の先端を押し潰して応力分散部17を形成してもよい。図7〜図9には、主軸15の基端側の曲がり形状を変更したレンチ部材11A,11B,11Cの具体例を示している。
【0048】
図7のレンチ部材11Aでは、主軸15の基端側の曲がり形状がクランク状に形成されている。すなわち、レンチ部材11Aにおいて、短軸16は、主軸15の基端を直角に折り曲げることで形成され、応力分散部17は、その短軸16の先端を主軸15の先端方向と逆方向(180°の方向)を向くように折り曲げることで形成されている。また、図8のレンチ部材11Bでは、主軸15の基端側の曲がり形状がZ字状に形成されている。すなわち、レンチ部材11Bにおいて、短軸16は、主軸15の基端をほぼ直角(具体的には、主軸15に対して70°の角度)に折り曲げることで形成され、応力分散部17は、その短軸16の先端を主軸15の先端方向と逆方向(180°の方向)を向くように折り曲げることで形成されている。さらに、図9のレンチ部材11Cにおいて、短軸16は、主軸15の基端を直角に折り曲げることで形成され、応力分散部17は、その短軸16の先端を押し潰して基端の2倍程度に太くする(短軸16の直径よりも主軸方向に長くする)ことで形成されている。これらレンチ部材11A,11B,11Cのように応力分散部17を形成することにより、レンチ部材固定穴24内においてつまみ本体21との接触面積が大きくなるため、短軸16の先端に加わる応力を確実に分散させることができる。ただし、上記実施の形態のレンチ部材11のようにその基端側を略コ字状に形成した方が、つまみ本体21との接触面積がより大きくなるため、レンチ部材11を確実に固定することができ、実用上好ましいものとなる。
【0049】
・上記実施の形態では、つまみ本体21に上面とレンチ部材固定穴24とを連通させる抜き孔25を形成したが、これを省略してもよい。
【0050】
・図10に示すレンチ部材11Dのように、主軸15の基端側を略矩形ループ状に形成してもよい。また、図11に示すレンチ部材11Eのように、主軸15の基端側を略三角形ループ状に形成してもよい。あるいは、図12に示すレンチ部材11Fのように、主軸15の基端側を略円形ループ状に形成してもよい。これらのような形状であっても、上記実施形態のつまみ部材12と組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施の形態の小型旗形レンチを示す斜視図。
【図2】本実施の形態の小型旗形レンチを示す断面図。
【図3】本実施の形態のつまみ部材を示す側面図。
【図4】図3のA−A線における断面図。
【図5】つまみ本体の下面におけるレンチ部材固定穴を示す説明図。
【図6】別の実施の形態のつまみ部材を示す斜視図。
【図7】別の実施の形態のレンチ部材を示す断面図。
【図8】別の実施の形態のレンチ部材を示す断面図。
【図9】別の実施の形態のレンチ部材を示す断面図。
【図10】別の実施の形態のレンチ部材を示す断面図。
【図11】別の実施の形態のレンチ部材を示す断面図。
【図12】別の実施の形態のレンチ部材を示す断面図。
【図13】従来のレンチを示す斜視図。
【図14】従来のレンチを示す斜視図。
【図15】従来のレンチを示す斜視図。
【符号の説明】
【0052】
5…締結具としてのボルト
10…小型旗形レンチ
11,11A,11B,11C…小型旗形レンチ用レンチ部材としてのレンチ部材
12…小型旗形レンチ用つまみ部材としてのつまみ部材
14…係合部
15…主軸
16…短軸
17…応力分散部
21…つまみ本体
22…つまみ突起
24…レンチ部材固定穴
25…抜き孔
26…リブ
28…窪み
31…つまみ部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトやネジなどの締結具を着脱するための小型旗形レンチ、小型旗形レンチ用レンチ部材及び小型旗形レンチ用つまみ部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機械加工用の切削工具を着脱するために金属製のレンチが用いられている。この種のレンチとしては、環境対応として、樹脂を使用しない金属のみを使用したものが実用化されている。図13には、その一例を示している。図13に示されるように、レンチ41は、ループ状に形成された簡易つまみ42を有する。このレンチ41では、材料費等を低減する必要があり、簡易つまみ42を大きくすることができない。そのため、操作者がこのレンチ41を使用してボルト等を手締めする場合、簡易つまみ42が小さく、締め付けトルクが不足することがあった。締め付けトルクが不足する場合、ペンチ等の工具を使って強く締め付ける必要があるが、この場合には、適度なトルクで締め付けることが難しく、さらに、過度の締め付けによって、レンチ41が折損してしまうといった問題がある。また、このレンチ41では、何らかの滑り止め処理を施す必要があることに加え、ループ状の簡易つまみ42を形成する際に、先端側と基端側とで芯ズレが生じる。よって、芯ズレを調整するための曲げ加工も必要となり、製造コストが増大するといった問題も生じていた。
【0003】
この対策として、大型のつまみ部材43を樹脂で形成したレンチ44(図14参照)が実用化されている。このタイプのレンチ44では、剛性を確保することを目的として、樹脂製のつまみ部材43と金属製のレンチ部材45とが一体型に形成されており、つまみ部材43を着脱することができなかった。また、つまみ部材43は、使用感を向上させるために硬質の樹脂を使用することが通常であった。この硬質の樹脂からなるつまみ部材43は締め付け時に破損する場合があるため、締め付けトルクを増すことが困難であった。さらに、樹脂製のつまみ部材43が破損してしまった場合には、部品毎にリユース(再利用)できないといった問題もあった。
【0004】
本出願人は、樹脂製のつまみ部材をレンチ部材に対して着脱可能に構成した分割構造のレンチを提案している(特許文献1参照)。図15に示されるように、レンチ46において、レンチ部材47はL字形状をなし、比較的に長い主軸48とその主軸48から直角に折り曲げてなる短軸49とを有する。そして、そのレンチ部材47の短軸側がつまみ部材51の固定穴52に着脱可能に嵌着固定されている。また、特許文献2,3等においても同様に、L字形状のレンチ部材とつまみ部材とが着脱可能に構成された分割構造のレンチが提案されている。
【特許文献1】特開2003−285275号公報(図1等)
【特許文献2】実用新案第3054487号公報(図1等)
【特許文献3】実開平6−5867号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記分割構造のレンチ46のように、つまみ部材51を硬質樹脂で形成し、レンチ部材47がL字形状である場合、樹脂製のつまみ部材51が破損することが多く、樹脂製のつまみ部材51の再利用が困難な状況となっていた。具体的にいうと、レンチ46を用いてボルトを締結する際には、つまみ部材51に嵌着されている短軸49の先端に応力が集中し、つまみ部材51が破損してしまう。このように、従来の分割構造のレンチ46では、構造上、締め付けトルクを増すことが困難であった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、レンチ部材とつまみ部材とが着脱可能な分割構造を有し、つまみ部材が破損することなく締結具を確実に締め付けることができる小型旗形レンチを提供することにある。また、本発明の別の目的は、小型旗形レンチに使用するのに好適なレンチ部材及びつまみ部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、締結具に係合しうる係合部が形成された主軸と、前記主軸の基端を直角に折り曲げてなる短軸と、前記短軸の先端に形成され前記短軸の直径よりも前記主軸方向に長い応力分散部とを備える棒状かつ金属製のレンチ部材を備えるとともに、側面、上面及び下面を有し、操作者が指でつまんで保持可能な大きさのチップ状であり、前記下面にレンチ部材固定穴が開口形成された合成樹脂製のつまみ本体と、前記つまみ本体の上面にて突出するように一体形成されたつまみ突起とを備えるつまみ部材を備え、前記レンチ部材固定穴に対し、前記レンチ部材における曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されたことを特徴とする小型旗形レンチがある。
【0008】
従って、手段1の小型旗形レンチを用いる場合、操作者がつまみ部材のつまみ本体を指でつまんで小型旗形レンチを保持し、レンチ部材の主軸の係合部を締結具に係合させる。そして、つまみ部材のつまみ突起を回すことにより、締結具が迅速に仮締めされる。その後、つまみ本体を回すことにより、所定のトルクで締結具が確実に締め付けられる。この小型旗形レンチにおいて、つまみ本体のレンチ部材固定穴に嵌着固定されるレンチ部材の基端側には、主軸の基端を直角に折り曲げてなる短軸と、その短軸の先端に形成された応力分散部とが設けられている。応力分散部は、短軸の直径よりも主軸方向に長く形成されているので、締結具を締め付ける際に短軸の先端に加わる応力をその応力分散部で確実に分散させることができる。その結果、合成樹脂製のつまみ本体の破損を回避することができ、締結具を確実に締め付けることができる。また、小型旗形レンチは、棒状かつ金属製のレンチ部材と合成樹脂製のつまみ部材とが着脱可能な分割構造となっているので、複数回の使用によっていずれか一方の部材が破損した場合、その破損した部材を交換すればレンチの再利用が可能となる。よって、レンチ全体を交換する従来のレンチと比較して、部品コストを低減することができる。
【0009】
なお、本発明において「直角に折り曲げてなる」とは、厳密に90°の角度で折り曲げる場合に限定するものではなく、ほぼ直角に折り曲げてなる状態を意味し、より具体的にはレンチ部材としての機能を奏しうる範囲内でほぼ直角に折り曲げることを意味し、例えば90±30°の角度で折り曲げる場合を含むこととする。
【0010】
また、上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、小型旗形レンチ用つまみ部材のレンチ部材固定穴に対し、曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されうる棒状かつ金属製のレンチ部材であって、締結具に係合しうる係合部が形成された主軸と、前記主軸の基端を直角に折り曲げてなる短軸と、前記短軸の先端に形成され前記短軸の直径よりも前記主軸方向に長い応力分散部とを備えることを特徴とする小型旗形レンチ用レンチ部材がある。
【0011】
従って、手段2の小型旗形レンチ用レンチ部材によると、その基端側には、主軸の基端を直角に折り曲げてなる短軸と、その短軸の先端に形成された応力分散部とが設けられている。この応力分散部は、短軸の直径よりも主軸方向に長く形成されているので、締結具を締め付ける際に短軸の先端に加わる応力を応力分散部で確実に分散させることができる。その結果、小型旗形レンチ用つまみ部材の破損を回避することができ、締結具を確実に締め付けることができる。
【0012】
前記応力分散部は前記短軸の先端を前記主軸の先端方向と同じ方向を向くように折り曲げてなり、前記レンチ部材の基端側が略コ字状を呈していることが好ましい。この場合、応力分散部を簡単に形成することができ、小型旗形レンチ用レンチ部材の製造コストを低減することができる。また、レンチ部材の基端側が略コ字状になるので、レンチ部材固定穴に対してそのレンチ部材の基端を確実に固定することができる。
【0013】
前記応力分散部は、先端側にいくほど前記主軸から遠ざかるように形成されていることが好ましい。この場合、レンチ部材固定穴に対してレンチ部材の基端側を嵌着させたとき、応力分散部の先端側がレンチ部材固定穴の内壁面に対して押し付けられ、これによりガタツキなく確実にレンチ部材を固定することができる。
【0014】
さらに、上記課題を解決するための別の手段(手段3)としては、金属製の小型旗形レンチ用レンチ部材における曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されうるつまみ部材であって、側面、上面及び下面を有し、操作者が指でつまんで保持可能な大きさのチップ状であり、前記下面にレンチ部材固定穴が開口形成された合成樹脂製のつまみ本体と、前記つまみ本体の上面にて突出するように一体形成されたつまみ突起とを備え、前記下面に占める前記レンチ部材固定穴の開口面積が13%以上50%以下であり、前記つまみ本体の上下方向寸法に対する前記レンチ部材固定穴の深さが40%以上90%以下であり、前記つまみ本体の体積に対する前記レンチ部材固定穴の体積が10%以上40%以下であり、前記つまみ本体を構成する合成樹脂のロックウェル硬度がHスケールで80以上であることを特徴とする小型旗形レンチ用つまみ部材がある。
【0015】
従って、手段3の小型旗形レンチ用つまみ部材によると、合成樹脂製のつまみ本体の下面にレンチ部材固定穴が開口形成されており、そのレンチ部材固定穴に金属製の小型旗形レンチ用レンチ部材の基端側が嵌着固定される。そして、小型旗形レンチの使用時には、つまみ本体の上面に一体形成されたつまみ突起を操作者が回すことにより、締結具が迅速に仮締めされる。その後、操作者がつまみ本体をつまんで回すことにより、所定のトルクで締結具が確実に締め付けられる。本発明の小型旗形レンチ用つまみ部材は、前記下面に占める前記レンチ部材固定穴の開口面積が13%以上50%以下であり、前記つまみ本体の上下方向寸法に対する前記レンチ部材固定穴の深さが40%以上90%以下であり、前記つまみ本体の体積に対する前記レンチ部材固定穴の体積が10%以上40%以下であるので、この固定穴を設けることで内部空間がかなり大きくなり、つまみ本体の強度が低下する。そのため、ロックウェル硬度がHスケールで80以上の硬い合成樹脂を用いてつまみ本体を形成することにより、その強度を十分に確保することができ、使用時のつまみ本体の破損を回避することができる。
前記つまみ本体の下面に占めるレンチ部材固定穴は、着脱可能にレンチ部材を固定でき、つまみ本体の強度も考慮すると、開口面積、深さ及び体積の三項目についての好適範囲を同時に満たすことが必要である。開口面積が13%未満ではレンチ部材の着脱が困難となる一方、50%を越えるとつまみ本体が薄肉となりレンチ部材の強度が低下する。また、深さが40%未満であると、つまみ部材からレンチ部材が外れやすくなり、十分に力を加えてレンチ締め付けを行うことが困難になる。深さが90%を越えると、つまみ部材が薄肉となり、レンチ締め付け時につまみ部材が破損しやすくなる。さらに、体積が10%未満であると、レンチ部材固定穴の開口形状によってはレンチ部材の着脱が困難になる。また、つまみ部材からレンチ部材が外れやすくなり、十分に力を加えてレンチ締め付けを行うことが困難になる。体積が40%を越えると、つまみ部材が薄肉となり、レンチ締め付け時につまみ部材が破損しやすくなる。また、前記レンチ部材固定穴は、つまみ本体の下面において中心部を含み、左右、上下対象の形状となるよう形成することが好ましい。さらに、使用時のつまみ本体の破損をいっそう確実に回避できる点で、ロックウェル硬度がHスケールで90以上100以下の硬い樹脂の使用が好ましいが、その材料費や加工性等を考慮して適切な硬度の樹脂が用途に応じて選定されるべきである。
【0016】
前記つまみ本体を構成する合成樹脂は、酢酸セルロース系の樹脂であることが好ましい。その理由として、酢酸セルロース系の樹脂は、強靭でクラックが発生し難く、耐衝撃性に優れているといった特徴や、耐油性に優れ、手でつまんだ感触が良好であるといった特徴を有しているからである。また、酢酸セルロース系の樹脂は、自由に着色することができる。このため、レンチ部材のサイズに応じてつまみ本体を異なる色で着色してもよい。この場合、つまみ本体の色によってレンチのサイズを認識することができ、実用上好ましいものとなる。
【0017】
前記つまみ本体は、つまみ部材の上下方向に沿って延びる複数のリブを前記側面に有することが好ましい。この場合、つまみ本体を操作者が手でつまんで回す際に、複数のリブが滑り止めとして機能し、小型旗形レンチを確実に回すことができ、作業性を高めることができる。
【0018】
前記つまみ本体は、前記側面の中央部に窪みを有することが好ましい。このように、側面の中央部に窪みがあれば、つまみ本体をつまみ易くなるため、小型旗形レンチを確実に回すことができ、作業性を高めることができる。
【0019】
前記つまみ本体は、前記側面全体が湾曲した凹面状に形成されていることが好ましい。このように、つまみ本体の側面全体を湾曲した凹面状に形成すれば、つまみ本体をつまみ易くなるため、小型旗形レンチを確実に回すことができ、作業性を高めることができる。
【0020】
前記つまみ本体には、前記上面と前記レンチ部材固定穴とを連通させる抜き孔が形成されていることが好ましい。この場合、抜き孔に棒を差し込んでレンチ部材をレンチ部材固定穴から押出すことにより、小型旗形レンチ用つまみ部材からレンチ部材を容易に取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を小型旗形レンチに具体化した一実施の形態を図1〜図5に基づき詳細に説明する。図1は、小型旗形レンチの概略構成を示す斜視図であり、図2は、その小型旗形レンチの断面図である。
【0022】
図1及び図2に示されるように、小型旗形レンチ10は、金属製のレンチ部材11(小型旗形レンチ用レンチ部材)と、そのレンチ部材11の基端側にキャップ方式で装着する合成樹脂製のつまみ部材12(小型旗形レンチ用つまみ部材)とを備える。小型旗形レンチ10は、切削工具1のホルダー2にスローアウェイチップ3をボルト締めにて固定するために用いられる。
【0023】
図1の切削工具1において、ホルダー2の先端部にはチップ座4が設けられており、このチップ座4にスローアウェイチップ3がボルト5(締結具)によって固定される。このボルト5は、スローアウェイチップ3を固定するために用いられる一般的なボルトであって、そのヘッド部6に設けられているレンチ用凹部7は、平面視で「*」状の形状を有する。
【0024】
レンチ部材11は、棒状の部材であって、先端に係合部14を有する主軸15と、主軸15の基端を直角に折り曲げてなる短軸16と、その短軸16の先端を主軸15の先端方向と同じ方向を向くように折り曲げてなる応力分散部17とを備え、基端側が略コ字状を呈している。主軸15先端の係合部14は、ボルト5に係合しうる形状、すなわち、「*」状(6枚刃のギヤ状)の形状を有する。また、応力分散部17は、短軸16の直径よりも主軸方向に長くなっており、先端側にいくほど主軸15から遠ざかるように形成されている(図2の二点鎖線を参照)。
【0025】
図1〜図5に示されるように、つまみ部材12は、側面、上面及び下面を有する合成樹脂製のつまみ本体21と、つまみ本体21の上面にて突出するように一体形成されたつまみ突起22とを備える。つまみ本体21は、操作者が指でつまんで保持可能な大きさ(例えば、縦横の幅が20mm、厚さが6mmのサイズ)のチップ状に形成されている。具体的には、つまみ部材12は、酢酸セルロース樹脂を用いて射出成形されている。本実施の形態では、その酢酸セルロース樹脂として、ロックウェル硬度がHスケールで100のグレードのものを使用している。
【0026】
また、つまみ本体21の下面にはレンチ部材固定穴24が開口形成されており、このレンチ部材固定穴24に対し、レンチ部材11における曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されている。レンチ部材固定穴24は、レンチ部材11の短軸16の直径や長さに合わせたサイズを有し、つまみ本体21の下面に占めるレンチ部材固定穴24の開口面積が13%以上50%以下であり、つまみ本体21の上下方向寸法に対するレンチ部材固定穴24の深さが40%以上90%以下であり、つまみ本体21の体積に対するレンチ部材固定穴24の体積が10%以上40%以下となるよう形成されている(図5の斜線部を参照)。
また、レンチ部材固定穴24は、つまみ突起22の同軸上の位置を含んで構成されており、レンチ部材固定穴24にレンチ部材11の基端側を装着した場合、そのつまみ突起22とレンチ部材11の主軸15とが同軸上に配置される。
【0027】
さらに、つまみ本体21には、上面におけるつまみ突起22の近傍に、上面とレンチ部材固定穴24とを連通させる抜き孔25が形成されている。そして、つまみ部材12からレンチ部材11を取り外す場合、細長い棒をこの抜き孔25に差し込んでレンチ部材11の基端側がレンチ部材固定穴24の外部に押出される。
【0028】
また、つまみ本体21の側面には、つまみ部材12の上下方向に沿って延びる複数のリブ26が設けられている。この複数のリブ26は、つまみ本体21を操作者が手でつまんで回す際に滑り止めとして機能する。なお、本実施の形態では、側面における上側の領域R1にリブ26は形成されておらず、この領域R1には、製品名称や社名などの文字が記入される。また、つまみ本体21の側面においてその中央部に窪み28が形成されている。この窪み28は、操作者の指先に合わせたサイズであり、この窪み28を設けることにより、つまみ本体21がつまみ易くなる。
【0029】
さらに、つまみ突起22にも、つまみ部材12の上下方向に沿って延びる複数のリブ29が設けられている。この複数のリブ29も、つまみ突起22をつまんで回す際の滑り止めとして機能する。
【0030】
次に、本実施の形態の小型旗形レンチ10の使用方法について説明する。
【0031】
まず、操作者は、レンチ部材11とつまみ部材12とを準備し、つまみ部材12のレンチ部材固定穴24にレンチ部材11の基端側を嵌着固定することにより、小型旗形レンチ10を構成する。ここで、レンチ部材11の応力分散部17は、先端側にいくほど主軸15から遠ざかるように形成されており、レンチ部材11の固定時には、その先端側がレンチ部材固定穴24の壁面に当接した状態でその固定穴24内に収納される。従って、応力分散部17がバネの役割を果たすことにより、レンチ部材11がレンチ部材固定穴24から脱落しないように確実に固定される。
【0032】
次に、操作者は、つまみ部材12のつまみ本体21を指でつまんで小型旗形レンチ10を保持し、レンチ部材11の主軸15の係合部14をボルト5のレンチ用凹部7に係合させる。またこのとき、ホルダー2のチップ座4にスローアウェイチップ3を配置し、ボルト5の先端をスローアウェイチップ3の貫通孔8を通してチップ座4のボルト穴9に挿入する(図1参照)。そして、つまみ部材12のつまみ突起22を回すことにより、ボルト5を仮締めする。ここで、ボルト5の仮締めは強い力は必要なく、つまみ突起22は直径が小さいため、つまみ突起22を素早く回して仮締めを行うことができる。また、小型旗形レンチ10において、つまみ突起22は、主軸15の同軸上に配置されるため、軸ぶれなく迅速にボルト5が仮締めされる。
【0033】
その後、操作者は、つまみ本体21における側面中央部の窪み28を指でつまみ、そのつまみ本体21を回すことにより、所定のトルクでボルト5が本締めされる。このとき、つまみ本体21において、レンチ部材固定穴24に収納されているレンチ部材11の基端側、特に、短軸16の先端に設けられている応力分散部17に応力が加わる。応力分散部17は、短軸16の直径よりも主軸方向に長く形成されており十分な面積を有するので、応力が集中することなく分散される。その結果、つまみ本体21が破損することなく、十分な締め付けトルクが確保され、ボルト5が確実に本締めされる。
【0034】
また、小型旗形レンチ10を用いて複数回(例えば、20回程度)のボルト締めを行うと、レンチ部材11の係合部14に加わる繰り返し応力によってその係合部14が変形し、ボルト締めを確実に行うことができなくなる。この場合、使用不能となったレンチ部材11を新しいレンチ部材11に交換する必要がある。この交換時には、つまみ本体21の上面に形成されている抜き孔25に細長い棒(例えば、金属製のピン)を差し込んで、レンチ部材11をレンチ部材固定穴24から押出すことにより、つまみ部材12からレンチ部材11が取り外される。その後、新しいレンチ部材11の基端側をレンチ部材固定穴24に嵌着しそのレンチ部材11をつまみ部材12に固定することで、レンチ部材11の交換作業が完了する。
【0035】
また、レンチ部材11ではなく、つまみ部材12が破損した場合には、同様に、つまみ本体21の抜き孔25に細長い棒を差し込んでつまみ部材12からレンチ部材11を取り外す。その後、新しいつまみ部材12のレンチ部材固定穴24にレンチ部材11の基端側を嵌着しレンチ部材11をつまみ部材12に固定することで、つまみ部材12の交換作業が完了する。
【0036】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0037】
(1)本実施の形態の小型旗形レンチ10において、レンチ部材11の基端側には、主軸15の基端を直角に折り曲げてなる短軸16と、その短軸16の先端に形成された応力分散部17とが設けられている。この応力分散部17は、短軸16の直径よりも主軸方向に長く形成されているので、ボルト5を締め付ける際に短軸16の先端に加わる応力を確実に分散させることができる。その結果、合成樹脂製のつまみ本体21の破損を回避することができ、ボルト5を確実に締め付けることができる。
【0038】
(2)本実施の形態の小型旗形レンチ10では、金属製のレンチ部材11と合成樹脂製のつまみ部材12とが着脱可能な分割構造となっているので、複数回の使用によっていずれか一方の部材が破損した場合、その破損した部材を交換すれば小型旗形レンチ10の再利用が可能となる。よって、図14のようにレンチ部材45とつまみ部材43とが一体的に構成される従来のレンチ44と比較して、部品コストを抑えることができる。
【0039】
(3)本実施の形態の小型旗形レンチ10では、応力分散部17は短軸16の先端を主軸15の先端方向と同じ方向を向くように折り曲げてなり、レンチ部材11の基端側が略コ字状を呈している。この場合、従来技術のようなL字状のレンチ部材47と比較して、つまみ部材12にレンチ部材11を確実に固定することができる。特に、応力分散部17は、先端側にいくほど主軸15から遠ざかるように形成されているので、レンチ部材固定穴24に対してレンチ部材11の基端側を嵌着させたとき、応力分散部の先端側がレンチ部材固定穴の内壁面に対して押し付けられ、これによりガタツキなく確実にレンチ部材11を固定することができる。
【0040】
(4)本実施の形態のつまみ部材12においては、下面に占めるレンチ部材固定穴24の開口面積が40%、つまみ本体24の上下方向寸法に対するレンチ部材固定穴24の深さが60%、つまみ本体24の体積に対するレンチ部材固定穴24の体積が40%となっている(ちなみに図15に示した従来品では、開口面積が約17%、深さが約40%、体積が約5%)。よって、応力集中を緩和するためにレンチ部材11の短軸16を長くした場合でも、レンチ部材固定穴24にその短軸16を確実に収納することができる。また、このレンチ部材固定穴24を設けることでつまみ本体21の強度が低下するが、ロックウェル硬度がHスケールで100の酢酸セルロース樹脂を用いてつまみ本体21を形成している。ゆえに、つまみ本体21の強度を十分に確保することができる(ちなみに図14、図15に示した従来品では、ロックウェル硬度がHスケールでせいぜい75〜85程度)。さらに、酢酸セルロース樹脂は、耐衝撃性に優れていることに加え、耐油性に優れている。このため、旋盤加工機などの調整時に手に油が付着した場合でも、その油の付着を気にすることなく、小型旗形レンチ10を使用することができる。
【0041】
(5)本実施の形態のつまみ部材12では、つまみ本体21の側面に上下方向に沿って延びる複数のリブ26を有するので、つまみ本体21を操作者が手でつまんで回す際に、各リブ26が滑り止めとして機能する。これにより、小型旗形レンチ10を確実に回すことができ、作業性を高めることができる。
【0042】
(6)本実施の形態のつまみ部材12では、つまみ本体21の側面の中央部に窪み28を有するので、つまみ本体21を容易につまむことができ、作業性を高めることができる。
【0043】
(7)本実施の形態のつまみ部材12では、つまみ本体21における上面とレンチ部材固定穴24とを連通させる抜き孔25が形成されている。この抜き孔25に細長い棒を差し込んでレンチ部材11をレンチ部材固定穴24から押出すことにより、つまみ部材12からレンチ部材11を容易に取り外すことができる。
【0044】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0045】
・上記実施の形態のつまみ部材12は、側面に複数のリブ26が形成されるものであったが、このリブ26は省略してもよい。また、図6に示すつまみ部材31のように、つまみ本体21の側面全体を湾曲した凹面状に形成してもよい。このようにつまみ部材31を形成しても、つまみ本体21がつまみ易くなるため、小型旗形レンチ10を確実に回すことができる。
【0046】
・上記実施の形態の小型旗形レンチ10は、主軸15に対して片側につまみ部材12を装着した片旗タイプのレンチであるが、これ以外に主軸15の両側につまみ部材を装着した両旗タイプのレンチに具体化してもよい。
【0047】
・上記実施の形態のレンチ部材11において、主軸15の基端側の曲がり形状は、略コ字状であったが、これ以外の形状、例えばZ字状に変更してもよい。また、短軸16の先端を折り曲げて応力分散部17を形成したが、これ以外に短軸16の先端を押し潰して応力分散部17を形成してもよい。図7〜図9には、主軸15の基端側の曲がり形状を変更したレンチ部材11A,11B,11Cの具体例を示している。
【0048】
図7のレンチ部材11Aでは、主軸15の基端側の曲がり形状がクランク状に形成されている。すなわち、レンチ部材11Aにおいて、短軸16は、主軸15の基端を直角に折り曲げることで形成され、応力分散部17は、その短軸16の先端を主軸15の先端方向と逆方向(180°の方向)を向くように折り曲げることで形成されている。また、図8のレンチ部材11Bでは、主軸15の基端側の曲がり形状がZ字状に形成されている。すなわち、レンチ部材11Bにおいて、短軸16は、主軸15の基端をほぼ直角(具体的には、主軸15に対して70°の角度)に折り曲げることで形成され、応力分散部17は、その短軸16の先端を主軸15の先端方向と逆方向(180°の方向)を向くように折り曲げることで形成されている。さらに、図9のレンチ部材11Cにおいて、短軸16は、主軸15の基端を直角に折り曲げることで形成され、応力分散部17は、その短軸16の先端を押し潰して基端の2倍程度に太くする(短軸16の直径よりも主軸方向に長くする)ことで形成されている。これらレンチ部材11A,11B,11Cのように応力分散部17を形成することにより、レンチ部材固定穴24内においてつまみ本体21との接触面積が大きくなるため、短軸16の先端に加わる応力を確実に分散させることができる。ただし、上記実施の形態のレンチ部材11のようにその基端側を略コ字状に形成した方が、つまみ本体21との接触面積がより大きくなるため、レンチ部材11を確実に固定することができ、実用上好ましいものとなる。
【0049】
・上記実施の形態では、つまみ本体21に上面とレンチ部材固定穴24とを連通させる抜き孔25を形成したが、これを省略してもよい。
【0050】
・図10に示すレンチ部材11Dのように、主軸15の基端側を略矩形ループ状に形成してもよい。また、図11に示すレンチ部材11Eのように、主軸15の基端側を略三角形ループ状に形成してもよい。あるいは、図12に示すレンチ部材11Fのように、主軸15の基端側を略円形ループ状に形成してもよい。これらのような形状であっても、上記実施形態のつまみ部材12と組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施の形態の小型旗形レンチを示す斜視図。
【図2】本実施の形態の小型旗形レンチを示す断面図。
【図3】本実施の形態のつまみ部材を示す側面図。
【図4】図3のA−A線における断面図。
【図5】つまみ本体の下面におけるレンチ部材固定穴を示す説明図。
【図6】別の実施の形態のつまみ部材を示す斜視図。
【図7】別の実施の形態のレンチ部材を示す断面図。
【図8】別の実施の形態のレンチ部材を示す断面図。
【図9】別の実施の形態のレンチ部材を示す断面図。
【図10】別の実施の形態のレンチ部材を示す断面図。
【図11】別の実施の形態のレンチ部材を示す断面図。
【図12】別の実施の形態のレンチ部材を示す断面図。
【図13】従来のレンチを示す斜視図。
【図14】従来のレンチを示す斜視図。
【図15】従来のレンチを示す斜視図。
【符号の説明】
【0052】
5…締結具としてのボルト
10…小型旗形レンチ
11,11A,11B,11C…小型旗形レンチ用レンチ部材としてのレンチ部材
12…小型旗形レンチ用つまみ部材としてのつまみ部材
14…係合部
15…主軸
16…短軸
17…応力分散部
21…つまみ本体
22…つまみ突起
24…レンチ部材固定穴
25…抜き孔
26…リブ
28…窪み
31…つまみ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結具に係合しうる係合部が形成された主軸と、前記主軸の基端を直角に折り曲げてなる短軸と、前記短軸の先端に形成され前記短軸の直径よりも前記主軸方向に長い応力分散部とを備える棒状かつ金属製のレンチ部材を備えるとともに、
側面、上面及び下面を有し、操作者が指でつまんで保持可能な大きさのチップ状であり、前記下面にレンチ部材固定穴が開口形成された合成樹脂製のつまみ本体と、前記つまみ本体の上面にて突出するように一体形成されたつまみ突起とを備えるつまみ部材を備え、
前記レンチ部材固定穴に対し、前記レンチ部材における曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されたことを特徴とする小型旗形レンチ。
【請求項2】
小型旗形レンチ用つまみ部材のレンチ部材固定穴に対し、曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されうる棒状かつ金属製のレンチ部材であって、
締結具に係合しうる係合部が形成された主軸と、前記主軸の基端を直角に折り曲げてなる短軸と、前記短軸の先端に形成され前記短軸の直径よりも前記主軸方向に長い応力分散部とを備えることを特徴とする小型旗形レンチ用レンチ部材。
【請求項3】
前記応力分散部は前記短軸の先端を前記主軸の先端方向と同じ方向を向くように折り曲げてなり、前記レンチ部材の基端側が略コ字状を呈していることを特徴とする請求項2に記載の小型旗形レンチ用レンチ部材。
【請求項4】
前記応力分散部は、先端側にいくほど前記主軸から遠ざかるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の小型旗形レンチ用レンチ部材。
【請求項5】
金属製の小型旗形レンチ用レンチ部材における曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されうるつまみ部材であって、
側面、上面及び下面を有し、操作者が指でつまんで保持可能な大きさのチップ状であり、前記下面にレンチ部材固定穴が開口形成された合成樹脂製のつまみ本体と、
前記つまみ本体の上面にて突出するように一体形成されたつまみ突起と
を備え、前記下面に占める前記レンチ部材固定穴の開口面積が13%以上50%以下であり、前記つまみ本体の上下方向寸法に対する前記レンチ部材固定穴の深さが40%以上90%以下であり、前記つまみ本体の体積に対する前記レンチ部材固定穴の体積が10%以上40%以下であり、前記つまみ本体を構成する合成樹脂のロックウェル硬度がHスケールで80以上であることを特徴とする小型旗形レンチ用つまみ部材。
【請求項6】
前記つまみ本体を構成する合成樹脂は、酢酸セルロース系の樹脂であることを特徴とすることを特徴とする請求項5に記載の小型旗形レンチ用つまみ部材。
【請求項7】
前記つまみ本体は、つまみ部材の上下方向に沿って延びる複数のリブを前記側面に有することを特徴とする請求項5または6に記載の小型旗形レンチ用つまみ部材。
【請求項8】
前記つまみ本体は、前記側面の中央部に窪みを有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の小型旗形レンチ用つまみ部材。
【請求項9】
前記つまみ本体は、前記側面全体が湾曲した凹面状に形成されていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の小型旗形レンチ用つまみ部材。
【請求項10】
前記つまみ本体には、前記上面と前記レンチ部材固定穴とを連通させる抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項に記載の小型旗形レンチ用つまみ部材。
【請求項1】
締結具に係合しうる係合部が形成された主軸と、前記主軸の基端を直角に折り曲げてなる短軸と、前記短軸の先端に形成され前記短軸の直径よりも前記主軸方向に長い応力分散部とを備える棒状かつ金属製のレンチ部材を備えるとともに、
側面、上面及び下面を有し、操作者が指でつまんで保持可能な大きさのチップ状であり、前記下面にレンチ部材固定穴が開口形成された合成樹脂製のつまみ本体と、前記つまみ本体の上面にて突出するように一体形成されたつまみ突起とを備えるつまみ部材を備え、
前記レンチ部材固定穴に対し、前記レンチ部材における曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されたことを特徴とする小型旗形レンチ。
【請求項2】
小型旗形レンチ用つまみ部材のレンチ部材固定穴に対し、曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されうる棒状かつ金属製のレンチ部材であって、
締結具に係合しうる係合部が形成された主軸と、前記主軸の基端を直角に折り曲げてなる短軸と、前記短軸の先端に形成され前記短軸の直径よりも前記主軸方向に長い応力分散部とを備えることを特徴とする小型旗形レンチ用レンチ部材。
【請求項3】
前記応力分散部は前記短軸の先端を前記主軸の先端方向と同じ方向を向くように折り曲げてなり、前記レンチ部材の基端側が略コ字状を呈していることを特徴とする請求項2に記載の小型旗形レンチ用レンチ部材。
【請求項4】
前記応力分散部は、先端側にいくほど前記主軸から遠ざかるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の小型旗形レンチ用レンチ部材。
【請求項5】
金属製の小型旗形レンチ用レンチ部材における曲がり形状の基端側が着脱可能に嵌着固定されうるつまみ部材であって、
側面、上面及び下面を有し、操作者が指でつまんで保持可能な大きさのチップ状であり、前記下面にレンチ部材固定穴が開口形成された合成樹脂製のつまみ本体と、
前記つまみ本体の上面にて突出するように一体形成されたつまみ突起と
を備え、前記下面に占める前記レンチ部材固定穴の開口面積が13%以上50%以下であり、前記つまみ本体の上下方向寸法に対する前記レンチ部材固定穴の深さが40%以上90%以下であり、前記つまみ本体の体積に対する前記レンチ部材固定穴の体積が10%以上40%以下であり、前記つまみ本体を構成する合成樹脂のロックウェル硬度がHスケールで80以上であることを特徴とする小型旗形レンチ用つまみ部材。
【請求項6】
前記つまみ本体を構成する合成樹脂は、酢酸セルロース系の樹脂であることを特徴とすることを特徴とする請求項5に記載の小型旗形レンチ用つまみ部材。
【請求項7】
前記つまみ本体は、つまみ部材の上下方向に沿って延びる複数のリブを前記側面に有することを特徴とする請求項5または6に記載の小型旗形レンチ用つまみ部材。
【請求項8】
前記つまみ本体は、前記側面の中央部に窪みを有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の小型旗形レンチ用つまみ部材。
【請求項9】
前記つまみ本体は、前記側面全体が湾曲した凹面状に形成されていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の小型旗形レンチ用つまみ部材。
【請求項10】
前記つまみ本体には、前記上面と前記レンチ部材固定穴とを連通させる抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項に記載の小型旗形レンチ用つまみ部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−107057(P2009−107057A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281222(P2007−281222)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【出願人】(506306628)株式会社青山製作所 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【出願人】(506306628)株式会社青山製作所 (1)
【Fターム(参考)】
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