説明

小型車両のクラッチ操作装置

【課題】クラッチレバーにクラッチ操作力伝達手段が連接される小型車両のクラッチ操作装置において、初期位置調整手段によるクラッチレバーの初期位置を調整した場合でも、操作量検出手段の検出値を補正することなく、実際のクラッチレバーの操作量を正確に検出し得るようにする。
【解決手段】クラッチ操作力伝達手段9の一部を構成してクラッチレバー8側に最も近接して配置されるとともにクラッチレバー8の回動に従動して作動する従動部材18と、クラッチレバー8との間に、非操作状態にあるクラッチレバー8の操向ハンドル5に対する位置を調整可能とした初期位置調整手段20が設けられ、クラッチレバー8の操作量を検出する操作量検出手段22が、クラッチ操作力伝達手段9の従動部材18を含む構成部材の1つの作動量を検出するようにして固定位置に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バー状の操向ハンドルに支持部材が取付けられ、該支持部材に回動可能に支承されるクラッチレバーに、該クラッチレバーの操作に応じて作動するようにしてクラッチ操作力伝達手段が連接される小型車両のクラッチ操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クラッチレバーの初期操作をオン・オフスイッチで検出してクラッチアシスト機構の作動を開始するようにしたものが、特許文献1で知られている。
【特許文献1】特開平6−117450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、乗員の好みに合わせてクラッチレバーの初期位置を調整するための初期位置調整手段を備えるクラッチ操作装置もよく知られており、このようなもので、クラッチレバーの初期操作を検出するのであれば、上記特許文献1で開示されるオン・オフスイッチを用いることも可能であるが、クラッチレバーの操作量に合わせてクラッチアクチュエータやエンジン制御等を行おうとする場合、クラッチレバーの近傍の固定位置に配設される操作量検出手段でクラッチレバーの回動量を直接検出するように構成すると、上記初期位置調整手段でクラッチレバーの初期位置を調整したときには、操作量検出手段による検出操作量と実際の操作量との間にずれが生じることがあり、その場合、操作量検出手段による検出操作量の補正を行う必要があり、複雑な制御が必要になることが考えられる。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、初期位置調整手段によるクラッチレバーの初期位置を調整した場合でも、操作量検出手段の検出値を補正しなくても、実際のクラッチレバーの操作量を正確に検出し得るようにしたクラッチ操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、バー状の操向ハンドルに支持部材が取付けられ、該支持部材に回動可能に支承されるクラッチレバーに、該クラッチレバーの操作に応じて作動するようにしてクラッチ操作力伝達手段が連接される小型車両のクラッチ操作装置において、前記クラッチ操作力伝達手段は、該クラッチ操作力伝達手段の一部を構成して前記クラッチレバー側に最も近接して配置されるとともに前記クラッチレバーの回動に従動して作動する従動部材の前記操向ハンドルに対する相対位置が前記クラッチレバーの非操作状態では一定となるように構成され、前記クラッチレバーおよび前記従動部材間に、非操作状態にある前記クラッチレバーの前記操向ハンドルに対する位置を調整可能とした初期位置調整手段が設けられ、前記クラッチレバーの操作量を検出する操作量検出手段が、前記クラッチ操作力伝達手段の前記従動部材を含む構成部材の1つの作動量を検出するようにして固定位置に配設されることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記従動部材が、前記クラッチレバーの回動軸線と同軸の軸線まわりに回動するリンクであり、前記操作量検出手段が、前記リンクの回動角を検出する回動角センサであることを特徴とする。
【0007】
さらに請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明の構成に加えて、前記操作量検出手段が、前記クラッチレバーの下方に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、初期位置調整手段でクラッチレバーの初期位置を調整しても、クラッチ操作力伝達手段の一部を構成してクラッチレバー側に最も近接して配置される従動部材の操向ハンドルに対する相対位置はクラッチレバーの非操作状態では一定であるので、クラッチレバーの非操作状態ではクラッチ操作力伝達手段の構成部材の位置は一定であり、構成部材の1つの作動量を操作量検出手段で検出するようにしているので、初期位置調整手段によるクラッチレバーの初期位置を調整した場合でも、操作量検出手段の検出値を補正することなく、実際の操作量を正確に検出することができる。
【0009】
また請求項2記載の発明によれば、クラッチレバーの操作に応じて回動するリンクの回動角を回動角センサで検出するので、前記リンクの回動軸線まわりの任意の位置に回動角センサを配置することを可能として回動角センサの配置上の自由度を高めることができ、しかも回動角センサによるリンクの回動角検出点を該リンクの回動軸線を通る直線上で変化させることで、回動角センサによる検出幅を任意に設定することができる。
【0010】
さらに請求項3記載の発明によれば、回動量検出手段がクラッチレバーの下方に配置されることにより、雨水等による回動量検出手段への影響を極力少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0012】
図1〜図4は本発明の一実施例を示すものであり、図1は自動二輪車の操向ハンドルの左端部を前方から見た図、図2は図1の2矢視図、図3は自動二輪車の操向ハンドルの左端部を前方斜め上方から見た斜視図、図4は自動二輪車の操向ハンドルの左端部を後方斜め下方から見た斜視図である。
【0013】
図1〜図4を併せて参照して、小型車両である自動二輪車はバー状の操向ハンドル5を備えており、この操向ハンドル5の左端部には、グリップ6が装着されるとともに、該グリップ6の内端に隣接するようにしてスイッチボックス7が取付けられる。
【0014】
前記操向ハンドル5の左側には前記グリップ6を握った左手で回動操作可能なクラッチレバー8が、グリップ6の前方に位置するように配設されており、このクラッチレバー8の操作力を図示しないクラッチに伝達するクラッチ操作力伝達手段9が前記クラッチレバー8に連接される。
【0015】
前記スイッチボックス7に内方側で隣接する位置で前記操向ハンドル5には、前記クラッチ操作力伝達手段9の一部を構成するクラッチマスタシリンダ10が備える支持部材としてのシリンダボディ11が取付けられる。すなわちシリンダボディ11には、前記操向ハンドル5側に延びる取付け腕部11aが一体に形成されており、この取付け腕部11aに操向ハンドル5の前側半部を嵌合せしめる凹部12が設けられ、前記操向ハンドル5の後側半部を嵌合せしめる取付け部材13の両端部がボルト14,14によって前記取付け腕部11aに締結されることにより、前記シリンダボディ11が操向ハンドル5に取付けられる。
【0016】
前記シリンダボディ11には、操向ハンドル5の前方に配置される上ブラケット15と、上ブラケット15の下方に配置される下ブラケット16とが一体に形成されており、前記クラッチレバー8の基部は、上および下ブラケット15,16間に配置されるとともに支軸17で前記両ブラケット15,16に回動可能に支承される。
【0017】
前記クラッチ操作力伝達手段9は、前記クラッチレバー8側に最も近接して配置されるとともに前記クラッチレバー8の回動に従動して作動する従動部材としてのリンク18と、前記クラッチレバー8から前記リンク18を介して機械的に伝達される操作力を液圧力に変化して出力すべく前記リンク18に連動、連結される前記クラッチマスタシリンダ10と、該クラッチマスタシリンダ10の出力液圧を図示しないクラッチ側に導く管路(図示せず)とを備える。
【0018】
前記リンク18は、前記クラッチレバー8の基部とともに前記上下両ブラケット15,16間に配置されて前記クラッチレバー8の基部とともに前記支軸17で回動可能に支承される回動支持部18aと、前記クラッチマスタシリンダ10が備えるピストンロッド19の端部に連結軸25を介して連結されるマスタシリンダ側連結部18bと、前記クラッチレバー8に連接されるクラッチレバー連接部18cとを一体に有して略V字形に形成されるものであり、前記クラッチレバー連接部18cは、前記支軸17の近傍で前記クラッチレバー8に対向するように配置される。
【0019】
前記クラッチマスタシリンダ10のシリンダボディ11には、前記ピストンロッド19を突出させる側に付勢する付勢手段(図示せず)が内蔵されるものであり、クラッチ操作力伝達手段9の一部を構成して前記クラッチレバー8側に最も近接して配置されるリンク18の操向ハンドル5に対する相対位置は、クラッチレバー8の非操作状態では、前記ピストンロッド19が最大限突出したときの位置に一定に維持される。
【0020】
前記リンク18のクラッチレバー連接部18cおよびクラッチレバー8の当接面間には、非操作状態にある前記クラッチレバー8の操向ハンドル5に対する位置を調整可能とした初期位置調整手段である調整ねじ20が介設されるものであり、この調節ねじ20は、前記クラッチレバー8に進退位置を調整可能として螺合され、前記クラッチレバー連接部18cに前記調整ねじ20が当接される。しかも前記調整ねじ20を前記クラッチレバー連接部18cに常時当接させるために、前記上ブラケット15およびクラッチレバー8間には、調整ねじ20をリンク18のクラッチレバー連接部18cに当接させる側にクラッチレバー8を付勢するばね21が設けられており、このばね21のばね荷重は、前記クラッチマスタシリンダ10においてピストンロッド19を突出する方向に付勢する前記付勢手段の付勢力よりも小さく設定される。
【0021】
前記クラッチレバー8の操作量は、固定位置に配設される操作量検出手段である回動角センサ22で検出されるのであるが、この回動角センサ22は、リンク18の回動角を検出するようにして前記リンク18に連結される。すなわち前記下ブラケット16には下方に延びる一対の支持脚23,23が一体に設けられており、前記操向ハンドル5およびクラッチレバー8の下方に位置する前記回動角センサ22が、前記支持脚23…にそれぞれボルト24,24で締結される。
【0022】
一方、前記リンク18の回動軸線すなわち支軸17の軸線からオフセットした位置で前記リンク18には、前記回動軸線と平行にして下方に延びる被検出軸26が設けられており、この実施例では、リンク18の前記クラッチレバー連接部18cに前記被検出軸26が設けられる。一方、前記回動角センサ22は、前記リンク18の回動軸線と同軸の軸線まわりに回動するレバー27を有しており、このレバーが前記被検出軸26に連結される。
【0023】
次にこの実施例の作用について説明すると、クラッチ操作力伝達手段9は、該クラッチ操作力伝達手段9の一部を構成してクラッチレバー8側に最も近接して配置されるとともに前記クラッチレバー8に連動して作動するリンク18の操向ハンドル5に対する相対位置がクラッチレバー8の非操作状態では一定となるように構成され、クラッチレバー8および前記リンク18間には、非操作状態にあるクラッチレバー8の操向ハンドル5に対する位置を調整可能とした調整ねじ20が設けられ、クラッチレバー8の操作量を検出する回動角センサ22が、クラッチ操作力伝達手段9の前記リンク18を含む構成部材の1つ、この実施例ではリンク18の作動量を検出するようにして、固定位置に配設されている。
【0024】
したがって調整ねじ20でクラッチレバー8の初期位置を調整してもクラッチ操作力伝達手段9の位置は一定であり、クラッチ操作力伝達手段9の構成部材の1つであるリンク18の作動量を回動角センサ22で検出するようにしているので、調整ねじ20でクラッチレバー8の初期位置を調整した場合でも、回動角センサ22の検出値を補正することなく、実際の操作量を正確に検出することができる。
【0025】
また回動角センサ22がリンク18の回動角を検出するようにしてリンク18に連結されるので、リンク18の回動軸線まわりの任意の位置に回動角センサ22を配置することを可能として回動角センサ22の配置上の自由度を高めることができ、しかも回動角センサ22によるリンク18の回動角検出点すなわち被検出軸26が設けられる位置を、前記リンク18の回動軸線を通る直線上で変化させることで、回動角センサ22による検出幅を任意に設定することができる。
【0026】
さらに前記回動角センサ22が、操向ハンドル5およびクラッチレバー8の下方に配置されるので、雨水等による回動角センサ22への影響を極力少なくすることができる。
【0027】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0028】
たとえば上記実施例ではクラッチレバー8の回動操作力をクラッチマスタシリンダ10で液圧力に変換してクラッチ側に伝達するようにした場合について説明したが、本発明は、クラッチレバー8の開度操作力をワイヤーの牽引力等に変換してクラッチ側に機械的に伝達するようにしたものにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】自動二輪車の操向ハンドルの左端部を前方から見た図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】自動二輪車の操向ハンドルの左端部を前方斜め上方から見た斜視図である。
【図4】自動二輪車の操向ハンドルの左端部を後方斜め下方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
5・・・操向ハンドル
8・・・クラッチレバー
9・・・操作力伝達手段
11・・・支持部材であるシリンダボディ
18・・・従動部材であるリンク
20・・・初期位置調整手段である調整ねじ
22・・・操作量検出手段である回動角センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バー状の操向ハンドル(5)に支持部材(11)が取付けられ、該支持部材(11)に回動可能に支承されるクラッチレバー(8)に、該クラッチレバー(8)の操作に応じて作動するようにしてクラッチ操作力伝達手段(9)が連接される小型車両のクラッチ操作装置において、前記クラッチ操作力伝達手段(9)は、該クラッチ操作力伝達手段(9)の一部を構成して前記クラッチレバー(8)側に最も近接して配置されるとともに前記クラッチレバー(8)の回動に従動して作動する従動部材(18)の前記操向ハンドル(5)に対する相対位置が前記クラッチレバー(8)の非操作状態では一定となるように構成され、前記クラッチレバー(8)および前記従動部材(18)間に、非操作状態にある前記クラッチレバー(8)の前記操向ハンドル(5)に対する位置を調整可能とした初期位置調整手段(20)が設けられ、前記クラッチレバー(8)の操作量を検出する操作量検出手段(22)が、前記クラッチ操作力伝達手段(9)の前記従動部材(18)を含む構成部材の1つの作動量を検出するようにして固定位置に配設されることを特徴とする小型車両のクラッチ操作装置。
【請求項2】
前記従動部材(18)が、前記クラッチレバー(8)の回動軸線と同軸の軸線まわりに回動するリンクであり、前記操作量検出手段(22)が、前記リンクの回動角を検出する回動角センサであることを特徴とする請求項1記載の小型車両のクラッチ操作装置。
【請求項3】
前記操作量検出手段(22)が、前記クラッチレバー(8)の下方に配置されることを特徴とする請求項1または2記載の小型車両のクラッチ操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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