説明

小型飛行装置

【課題】左右一対の羽ばたき翼により突風中でも高度な飛行性能を達成できるようにする。
【解決手段】胴体26の左右位置に翼駆動用モータ30を設け、それぞれの出力軸30aに、羽ばたき翼27a,27bを取り付ける。胴体26の所要位置に、錘29の移動により機体重心の位置を胴体26の前後左右方向へ変位させる重心移動装置28を設ける。重心移動装置28による機体重心の前後方向への変位により胴体26と一緒に各羽ばたき翼27a,27bの迎角を調整し、各翼駆動用モータ30による各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を制御してそれぞれ発生させる揚力と推進力を制御して、飛行速度や飛行高度を自在に変更させる。左右方向への旋回時に各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右位置へ大きさの異なる揚力が作用する場合は、重心移動装置28にて機体重心を左右方向へ適宜変位させて胴体26の左右方向を水平に保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所要の目標位置まで飛行させて該目標位置の情報収集や、上記目標位置への小型機器の搬送等を行わせるために用いる小型飛行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内外の高所位置や災害発生現場等の人が容易に近づくことが困難な場所、あるいは、化学物質、微生物、放射性物質等での汚染が想定されるような場所の現場状況を調べる場合等に、大きさが数十センチメートル以下というような非常に小型の飛行装置(Micro Air Vehicle:MAV)に、カメラ、マイク、雰囲気ガス中の化学物質、微生物、放
射性物質等の有無を検出するための所要の分析装置等の機器を搭載して、該小型飛行装置を目標となる位置まで飛行させ、該小型飛行装置に搭載された機器により検出される現場の計測結果を基に、遠隔地より上記目標位置の情報収集を実施できるようにすることが考えられてきている。
【0003】
ここで、飛行体とその周囲の流体との相互作用を、流体の慣性力と粘性力の比であるレイノルズ数との相関で整理すると、飛行体のサイズとレイノルズ数の大小はほぼ対応しており、従来一般に実用化されているメートルサイズの飛行体では、たとえば、通常の航空機のレイノルズ数が10〜10のオーダーを示すように、レイノルズ数が高くて(Re>10)慣性力が支配的となっているのに対し、上記のようなサイズが小さい小型飛行装置では、レイノルズ数が10〜10程度と低い値となり、周囲の気体(流体)との相互作用では、慣性力と共に粘性力の影響が大となる。又、上記小型飛行装置は、サイズが小さくて機体重量が軽いことから、気流等の影響を容易に受け易く、常に突風の中を飛行するような状態となる。更に、屋内での飛行や、屋外での気流中を飛行させるためには、垂直離着陸、急旋回、空中停止飛行(ホバリング)等の非常に高度な飛行性能が要求されることから、航空機やヘリコプター等の従来の飛行体とは非常に異なる設計が必要とされている。
【0004】
ところで、トンボは、垂直離着陸、急速旋回、空中停止等の非常に高度な飛行性能を有していることで知られており、このような高度の飛行性能を人工物で実現することの価値は大きい。トンボは4枚の羽を自在に動かすことにより、理想的な飛行能力を得ている。
しかし、自然界には、左右一対の2枚の羽だけでもトンボには及ばないが、高い飛行能力を発揮する鳥や昆虫がいる。
【0005】
このような自然界の生物は、羽の複雑な動きだけで高度の飛行能力を実現しているが、このような羽の複雑な動きを人工的に実現することは難しい。そこで、羽の運動を補うものとして、人工物で実現し易い重心移動を用いることが考えられる。この場合、トンボのような自在な空中停止飛行が可能となるか、あるいは、空中停止飛行は難しいとしても、低速飛行が可能となるだけで、そのメリットは大きいと考えられる。
【0006】
図24は従来提案されている左右一対の羽ばたき翼を備えた小型の飛行装置の一例を示すもので、胴体部1の左右位置に、それぞれ前後一組の振動型アクチュエータ2aと2bを、前側の振動型アクチュエータ2aの方が後側の振動型アクチュエータ2bよりも上方に位置し、且つ該前後の各振動型アクチュエータ2a,2bの振動軸(回転軸)が共に、胴体の前後方向に対して所要角度傾斜した状態となるように設けて、羽前縁をなす羽軸(前羽軸)4aと羽後縁をなす羽軸(後羽軸)4bとの間に膜5を張設して形成してなる羽3の上記前羽軸4aと後羽軸4bを、上記前後の各振動型アクチュエータ2a,2bにそれぞれ接続した構成とし、更に、胴体部1の所要位置に重心制御部6を備えてなる構成としてある。
【0007】
かかる構成の小型飛行装置では、上記前後の各振動型アクチュエータ2aと2bを、前側の振動型アクチュエータ2aの方が、後側の振動型アクチュエータ2bよりも所要位相差で先行するようにそれぞれ上下方向に羽ばたき(往復)作動させるようにしてある。そのため、羽3の打下ろし作動時には、高所位置にある前側の振動型アクチュエータ2aによる前羽軸4aの打下ろし作動を、低所位置にある後側の振動型アクチュエータ2bによる後羽軸4bの打下ろし作動よりも先行して開始させることにより、上記前後の羽軸4a,4bがほぼ水平方向に並ぶようにして、羽3がなるべく水平面と平行な姿勢となるようにし、これにより、打下ろし時に羽3の膜5が移動する空間の体積が最大になるようにしてある。一方、羽3の打上げ作動時には、該羽3の膜5ができるだけ水平面に対して直角に近い角度となるようにして、打上げ時に羽3の膜5が移動する空間の体積を最小にするようにしてあることから、羽3の打下ろし動作において該羽3に作用する鉛直上向きの流体力が、羽3の打上げ動作において該羽3に作用する鉛直下向きの流体力よりも大となるようにして機体の浮上力(揚力)を得ることができるようにしてある。更に、上記前後の振動型アクチュエータ2aと2bの位相差を調整して、羽3の打上げ及び打下げ時の姿勢(角度)を変化させることにより、前後方向への推進力を得ることができるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
又、上記と同様に、羽の打下ろし時に羽の膜が移動する空間の体積を、羽の打上げ時に羽の膜が移動する空間の体積よりも大きくなるようにして、羽の打下ろし動作において該羽に作用する鉛直上向きの流体力が、羽の打上げ動作において羽に作用する鉛直下向きの流体力よりも大となるようにすることにより、機体の浮上力を得るようにする考えに基づいた別の形式の小型飛行装置としては、図25に示すものが提案されている。この小型飛行装置は、胴体部7の左右位置に、3自由度を持つアクチュエータ8をそれぞれ設け、該各アクチュエータ8に、左右一対の羽9にそれぞれ長手方向に沿って設けてある主軸10の基端部を取り付けて、上記左右の各アクチュエータ8にて、主軸10と共に羽9を上下方向に往復作動させることに加えて、羽9の主軸10を中心とする回転動作と、主軸10と羽9を一緒に前後方向へ作動させることが可能となるようにした構成としてある。
【0009】
かかる構成の小型飛行装置では、羽9の打下ろし作動時は、該羽9がなるべく水平面と平行な姿勢となるようにし、一方、羽9の打上げ時は、羽9を上下方向の姿勢となるように一旦回転させた後、該羽9の有する湾曲形状に沿う軌道で引き上げられるように、羽9を主軸10を中心に回転させると同時に前後方向に動かしながら打上げ作動させるようにしてある。これにより、羽9の打上げ動作において該羽9に作用する鉛直下向きの流体力をより小さくできるようにして、羽9の打下ろし動作において該羽9に作用する鉛直上向きの流体力との差をより大きくすることで、機体の浮上力をより効率よく得ることができるようにしてある(たとえば、特許文献2参照)。
【0010】
更に、従来の羽ばたき飛行する他の形式の小型飛行装置としては、図26に示す如く、胴体部(支持構造)11の左右位置に、アクチュエータ13とピニオンギア14とラックギア15を具備して羽16の長手方向に沿って設けてある軸17の前後水平方向の往復作動と、該羽16の軸17の回転作動を行なうことができるようにしてある駆動装置12をそれぞれ設けて、該左右の各駆動装置12に、左右一対の対応する羽16の軸17をそれぞれ取り付けてなる構成としたものが従来提案されている。すなわち、上記駆動装置12により左右の羽16を前後方向に羽ばたき作動させると同時に、羽16を前方及び後方へ打つときには、該羽16の上縁側が下縁側に対して先行するように羽16の軸17を回転させるようにして、各羽16により下向きの気流を発生させるようにし、この下向きの気流の反作用によって浮上力(揚力)を得るようにしたもの、更に、この際、左右の羽16の前後方向の振幅の中心位置を、それぞれ独立して前側又は後側へずらすことで、該各羽16の羽ばたき作動時に該羽16の基端側から先端方向に向かうよう発生している流れの前後方向のバランスを変化させて、前進、後進、あるいは、左右方向の旋回を行わせるようにすることができるようにしたものが提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【0011】
なお、従来、別の飛行方式を採用した小型飛行装置としては、図27に示す如く、機体上部に二重反転式の回転翼18を備えてなる形式の飛行体(浮揚体)も提案されている。
更に、かかる回転翼18を備えた形式の飛行体において、重心の移動により飛行体の姿勢を変更させる、すなわち、上記回転翼18の回転中心線(軸)を鉛直線(重力の方向)に対して所定方向に所定角度傾斜させる(傾きを調節する)ために、上記回転翼18の回転中心線に直角な平面(xy平面)内で互いに直交する2基のリニアアクチュエータ20と21を具備して、該各アクチュエータ20と21により、錘要素22を、上記回転翼18の回転中心線を中心に前後左右方向へ移動(変位)させることができるようにしてなる構成の姿勢変更手段19を設けることが提案されている。
【0012】
上記姿勢変更手段19の各リニアアクチュエータ20と21は、いずれも、直線状のフレーム23と、該フレーム23に長手方向に沿って移動(変位)可能に取り付けたスライダ(移動部材)24と、該スライダ24を上記フレームの長手方向の任意の位置へ移動させるための図示しない超音波振動体や電磁モータ等を備えた駆動機構とからなる構成としてあり、上記二重反転式の回転翼18を備えた形式の飛行体の下部に、十字型の基板25を、上記回転翼18の回転中心線に直角な平面内にてx軸方向及びy軸方向に沿って配置されるよう設け、該基板25の下面に、y軸方向のリニアアクチュエータ21のフレーム23を固定すると共に、該y軸方向アクチュエータ21のスライダ24に、x軸方向のリニアアクチュエータ20のフレーム23の長手方向中間部を取り付け、更に、該x軸方向アクチュエータ20のスライダ24に錘要素22を取り付けてなる構成としてある。これにより、x軸方向アクチュエータ20にて、上記錘要素22をx軸方向に沿って移動させると共に、上記y軸方向アクチュエータ21にて、錘要素22を、上記x軸方向アクチュエータ20と一緒にy軸方向に沿って移動させることに伴い、上記二重反転式の回転翼18を備えた形式の飛行体の重心位置を、前後左右方向へ自在に変位されるようにしてある(たとえば、特許文献4参照)。
【0013】
【特許文献1】特開2003−135866号公報
【特許文献2】特開2002−326599号公報
【特許文献3】特開2004−90909号公報
【特許文献4】特開2004−249005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、上記図24に示した形式の羽ばたき飛行方式の小型飛行装置、及び、図25に示した形式の羽ばたき飛行方式の小型飛行装置では、垂直離着陸時や空中停止飛行時の如き、羽3,9の湾曲形状による揚力の発生が期待できないときには、機体の浮上力(揚力)を、羽3,9を水平面とほぼ平行な姿勢で打下ろすときに該羽3,9の面に作用する鉛直上向きの流体力と、羽3,9を所要の姿勢で打上げるときに該羽3,9に作用する鉛直下向きの流体力との差のみで得る必要がある。しかし、この場合、左右の各羽3,9の一回の羽ばたき作動で得られる揚力は、最大でも羽3,9の面によって下方に、すなわち、該羽3,9の面とほぼ直角方向に押される空気からの反力でしかなく、したがって、得られる浮上力が非常に小さいと考えられる。このために、機体重量を、1グラム未満とする等、極めて軽量としなければならず、駆動装置や電源も非常に軽量としなければならないことから飛行能力にも制限が生じることが懸念される。更に、上記したように機体重量が極めて軽いことから、環境に存在する気流によって飛行状態に大きな影響を受ける虞もある。
【0015】
なお、図24に示した従来の小型飛行装置では、胴体部1に重心制御部6を設ける考えは採られているが、図24に示されるものには、該重心制御部6の具体的な構成並びに機能については全く記載されていない。
【0016】
又、図26に示した羽ばたき飛行方式の小型飛行装置では、各羽16の羽ばたき作動により下向きの気流を発生させて、この下向きの気流の反作用によって浮上力(揚力)を得るようにしてあり、又、前後方向の推進力は、上記左右の羽16の前後方向の振幅の中心位置を、進行方向前方又は進行方向後方にずらして、各羽16の羽ばたき作動時に該羽16の基端側から先端方向に向かうよう発生している流れの前後方向のバランスを変化させることで得るようにしてある。そのため、浮上力は効率よく得ることができるとしても、前後方向の推進力は比較的弱く、飛行速度に制限を受けることから、行動範囲が制限される虞が懸念される。
【0017】
更に、図27には、回転翼を用いた飛行形式の飛行装置において、直交するよう配置した2本のリニアアクチュエータ20,21と、錘要素22とを備えて、飛行体の重心位置を変位させることができるようにしてある姿勢変更手段19が示されているが、該姿勢変更手段19は、錘要素22を、回転翼18の回転中心線を中心に前後左右方向へ移動させて、飛行体の重心位置を、上記回転翼18の回転中心線の下方位置から前後左右方向へ変位させてずらすことにより、回転翼18の回転軸を鉛直線に対して所定方向に所定角度傾斜させるようにして、飛行体の姿勢を変更させるためのものであって、羽ばたき飛行する飛行形式の飛行装置にそのまま適用できるものではない。
【0018】
そこで、本発明者は、小型飛行装置に高度な飛行性能を付与するための工夫、研究を重ねた結果、左右一対の羽ばたき翼により発生させる推力の方向の制御と、該左右一対の羽ばたき翼の羽ばたき作動を制御することによる上記推力の大きさ(強さ)の制御と、機体重心位置の前後左右方向への変位の制御とを組み合わせることにより、高い飛行性能を達成できることを見出して本発明をなした。
【0019】
したがって、本発明の目的とするところは、左右一対の羽ばたき翼と、機体重心の位置を変位させる重心移動装置とを組み合わせて作動させることにより高度な飛行性能を達成できて、屋内での飛行や、屋外での気流中にて常に突風の中を飛行するような状態であっても飛行できるようにし、更には、羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときの慣性力をキャンセルすることによりアクチュエータの負荷を軽減して、羽ばたき翼を高い周波数で羽ばたき作動させる場合に有利なものとすることができる小型飛行装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決するために、胴体の左右位置に、羽ばたき翼をそれぞれ設けて、該各羽ばたき翼を独立に駆動して羽ばたき作動がそれぞれ制御できるようにし、且つ上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変位させることができるようにしてある重心移動装置を設けてなり、上記左右の各羽ばたき翼より胴体へ作用する揚力作用位置に対する機体重心の相対的な位置を制御することにより、上記胴体と共に左右の各羽ばたき翼の迎角を所要角度に保持しながらそれぞれ羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなる構成とする。
【0021】
具体的には、胴体の左右位置に、羽ばたき翼を羽ばたき作動させるためのアクチュエータをそれぞれ別々に設け、該各アクチュエータの出力軸に、左右一対の羽ばたき翼を個別に取り付けて、上記各アクチュエータにより上記左右の羽ばたき翼の羽ばたき作動を独立に制御できるようにし、且つ上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変位させて胴体の姿勢を制御できるようにしてある重心移動装置を設けてなる構成とする。
【0022】
更に具体的には、胴体の左右位置に設ける別々のアクチュエータを、出力軸を胴体の略前後方向に向けて配置した翼駆動用モータ、又は、出力軸を胴体の略上下方向に向けて配置した線形アクチュエータとし、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けて、該各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータごとに、上記駆動ロッドを介した各羽ばたき翼の胴体の上下方向への羽ばたき作動を独立に制御できるようにした構成とする。
【0023】
更に、上記構成における翼駆動用モータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにしてなる共振型の翼駆動用モータとしたり、線形アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該各共振型の翼駆動用モータ又は共振型の線形アクチュエータにより、所定周波数での各羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅を独立に制御できるようにした構成とする。
【0024】
更に又、上記構成において、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータによる左右の各羽ばたき翼の羽ばたき作動の独立した制御と、重心移動装置による機体重心位置の制御による胴体の姿勢制御を行うコントローラを備えた構成とする。
【0025】
又、胴体の左右位置に、羽ばたき翼を上下方向に角度調整可能に設けて、該各羽ばたき翼を独立に駆動して羽ばたき作動が制御できるようにし、且つ上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変位できるようにしてある重心移動装置を設けてなり、上記左右の羽ばたき翼より胴体に対して作用する揚力作用位置に対する機体重心の相対的な位置を制御して上記胴体の姿勢を制御し、更に、上記各羽ばたき翼を所要の迎角に保持しながらそれぞれ羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなる構成とする。
【0026】
具体的には、胴体の左右位置に、羽ばたき翼を羽ばたき作動させるためのアクチュエータを、出力軸が前後方向又は上下方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を一体に保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付け、且つ上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変位させて胴体の姿勢を制御できるようにしてある重心移動装置を設けた構成とする。
【0027】
更に具体的には、胴体の左右位置に角度変更可能に設けるアクチュエータを、翼駆動用モータ又は線形アクチュエータとし、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けて、該各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の独立した制御と、翼駆動用モータにおいては出力軸の交互の正、逆転駆動、又、線形アクチュエータにおいては出力軸の軸心方向の振動のそれぞれ独立した制御により、上記各羽ばたき翼ごとに迎角と、羽ばたき作動を独立に制御できるようにした構成とする。
【0028】
更に、上記構成における胴体の左右位置に角度変更可能に設ける翼駆動用モータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにしてなる共振型の翼駆動用モータとしたり、線形アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該各共振型の翼駆動用モータ又は共振型の線形アクチュエータにより、所定周波数での各羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅を独立に制御できるようにした構成とする。
【0029】
更に又、上記構成において、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御と、各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータによる左右の各羽ばたき翼の羽ばたき作動の独立した制御と、重心移動装置による機体重心位置の制御による胴体の姿勢制御を行うコントローラを備えた構成とする。
【0030】
又、上述した各構成において、重心移動装置は、直線状に延びるガイド部材の任意の位置へスライダを移動させることができるようにしてある2つの重心移動アクチュエータを、胴体の前後方向と左右幅方向に沿うよう配置すると共に、一方の重心移動アクチュエータのスライダに、他方の重心移動アクチュエータのガイド部材を取り付け、且つ該他方の重心移動アクチュエータのスライダに、錘を取り付けてなる構成として、上記各重心移動アクチュエータにより、錘を、胴体の前後方向及び左右方向へ移動させることにより、機体重心の位置を胴体の前後左右方向に変位できるものとした構成とする。
【0031】
更に、上記重心移動装置を、左右の各羽ばたき翼より胴体に対して揚力が作用する位置の下方にて機体重心の位置を胴体の前後左右方向へ変位できるものとした構成とする。
【0032】
更に又、上記における重心移動装置は、左右の各羽ばたき翼にて垂直方向上向きの推力を発生させるときに、機体重心の位置を、上記各羽ばたき翼より胴体に対し作用する上記推力の作用点の真下の位置に保持できるものとした構成とする。
【0033】
上述した各構成における羽ばたき翼を、駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる構成として、上記駆動ロッドと翼本体の前縁部との間に、上記駆動ロッドと直角方向に延びる柔軟性を備えた連結ロッドを介在させてなるものとした構成とする。
【0034】
又、上記各構成における羽ばたき翼を、駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる構成として、上記翼本体を、前縁部と直角方向に柔軟性を備えてなるものとした構成とする。
【0035】
更に、上記各構成における羽ばたき翼を、駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる構成として、上記翼本体を低アスペクト比とした構成とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明の小型飛行装置によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)胴体の左右位置に、羽ばたき翼を設けて、該各羽ばたき翼を独立して駆動して羽ばたき作動がそれぞれ独立して制御できるようにし、且つ上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変位させることができるようにしてある重心移動装置を設けてなり、上記左右の各羽ばたき翼より胴体へ揚力が作用する位置に対する機体重心の相対的な位置を制御することにより、上記胴体と共に左右の各羽ばたき翼の迎角を所要角度に保持しながらそれぞれ羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなる構成としてあるので、上記重心移動装置にて機体重心の位置を胴体の前後方向へ変位させることにより、上記胴体の前後方向角度姿勢と一緒に左右の各羽ばたき翼の迎角を変更することができる。このため、上記胴体の前後方向角度姿勢と一緒の各羽ばたき翼の迎角の制御と、各羽ばたき翼の羽ばたき作動の均等な制御を行うことにより、上記各羽ばたき翼にて発生させる推力の方向及び大きさを変更できることから、該各羽ばたき翼より胴体へ作用させる揚力と推進力の大きさをそれぞれ自在に設定できて、前進飛行時の速度を低速から高速まで自在に変更できると共に、上昇、下降を自在に行なうことができる。又、胴体の前後方向角度姿勢と一緒に所要の迎角とさせた各羽ばたき翼の羽ばたき作動を左右で相違させて、発生させる推力の大きさに差を生じさせると、該各羽ばたき翼より胴体の左右位置へ作用させる推進力の大きさを変更できる。このとき同時に発生する胴体の左右位置へ作用する揚力の大きさの差を、重心移動装置にて機体重心位置を左右幅方向へ変位させて左右の重量バランスを変更することで打ち消すようにすると、胴体の左右方向を水平状態に保持したまま左右方向へ旋回させることができる。したがって、飛行速度、飛行高度を自在に変更できると共に、左右方向への旋回飛行を自在に行うことができて、高度な飛行性能を達成することができ、屋内での飛行や、屋外での気流中にて常に突風の中を飛行するような状態であっても飛行可能とすることができる。
(2)具体的には、胴体の左右位置に、羽ばたき翼を羽ばたき作動させるためのアクチュエータをそれぞれ設け、該各アクチュエータの出力軸に、左右一対の羽ばたき翼を個別に取り付けて、上記各アクチュエータにより上記左右の羽ばたき翼の羽ばたき作動を独立に制御できるようにした構成とし、更に具体的には、上記各アクチュエータを、出力軸を胴体の略前後方向に向けて配置した翼駆動用モータ、又は、出力軸を胴体の略上下方向に向けて配置した線形アクチュエータとし、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けて、該各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータごとに、上記駆動ロッドを介した各羽ばたき翼の胴体の上下方向への羽ばたき作動を独立に制御できるようにした構成とすることにより、各アクチュエータとしての翼駆動用モータの出力軸を正、逆転駆動させるときの速度や角度範囲の制御、又は、線形アクチュエータの出力軸を軸心方向に振動させるときの速度や振幅の制御により、各羽ばたき翼の羽ばたき速度や羽ばたき作動時の振幅を制御できて、該各羽ばたき翼の羽ばたき作動を制御して、各羽ばたき翼にて発生させる推力の大きさを自在に制御できる。
(3)上記構成における翼駆動用モータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにしてなる共振型の翼駆動用モータとしたり、線形アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該各共振型の翼駆動用モータ又は共振型の線形アクチュエータにより、所定周波数での各羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅を独立に制御できるようにした構成とすることにより、各羽ばたき翼を、上記翼駆動用モータ又は線形アクチュエータの可動部と、羽ばたき翼と、該羽ばたき翼の羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気の慣性力と、アクチュエータより羽ばたき翼へ作用させる復元力とにより形成される振動系の共振周波数と等しい周波数となるように、上記翼駆動用モータ又は線形アクチュエータにて羽ばたき翼を羽ばたき作動させることにより、羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときに上記慣性力をキャンセルすることができる。このために、上記翼駆動用モータや線形アクチュエータの負荷を軽減させることができて、十分なペイロードを積んで長距離を長時間飛行させる場合に求められるように、羽ばたき翼を高い周波数で羽ばたき作動させる場合に有利なものとすることができる。
(4)上記構成において、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータによる左右の各羽ばたき翼の羽ばたき作動の独立した制御と、重心移動装置による機体重心位置の制御による胴体の姿勢制御を行うコントローラを備えた構成とすることにより、上記(1)、(2)又は(3)に示した効果に加えて、本発明の小型飛行装置の姿勢が崩れて所要方向に傾斜した場合には、重心移動装置により上記傾斜した側とは反対側へ機体重心の位置を変位させることにより姿勢を修正して、飛行姿勢を安定に保持することが可能となる。
(5)胴体の左右位置に、羽ばたき翼を上下方向に角度調整可能に設けて、該各羽ばたき翼を羽ばたき作動が独立に制御できるようにし、且つ上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変位できるようにしてある重心移動装置を設けてなり、上記左右の羽ばたき翼より胴体に対して揚力が作用する位置に対する機体重心の相対的な位置を制御することにより上記胴体の姿勢を制御すると共に、上記各羽ばたき翼を所要の迎角に保持しながらそれぞれ羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなる構成とすることにより、胴体の前後方向角度姿勢とは独立して、上記左右の羽ばたき翼ごとに迎角と羽ばたき作動を制御することができる。これにより、該各羽ばたき翼で発生させる推力の大きさと方向を独立に制御できるため、各羽ばたき翼より胴体の左右位置に作用させる揚力と推進力の大きさをそれぞれ独立に制御できる。このため、上記左右の羽ばたき翼より胴体の左右位置へ作用させる揚力及び推進力を、それぞれ左右で均等に大きさを制御したり、胴体の左右位置に作用させる揚力及び推進力の大きさを相違させるよう制御することにより、飛行速度や飛行高度の変更や左右方向への旋回を自在に行わせることができて、高度の飛行性能を達成できることから、(1)に示したと同様の効果を得ることができる。更に、上記飛行時には、重心移動装置により機体重心の位置を適宜制御することにより、胴体の前後方向角度姿勢を常に水平姿勢に保持することができる。
(6)具体的には、胴体の左右位置に、羽ばたき翼を羽ばたき作動させるためのアクチュエータを、出力軸が前後方向又は上下方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を一体に保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付け、且つ上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変位させて胴体の姿勢を制御できるようにしてある重心移動装置を設けた構成とし、更に具体的には、上記胴体の左右位置に角度変更可能に設ける各アクチュエータを、翼駆動用モータ又は線形アクチュエータとし、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けて、該各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の独立した制御と、翼駆動用モータにおいては出力軸の交互の正、逆転駆動、又、線形アクチュエータにおいては出力軸の軸心方向の振動のそれぞれ独立した制御により、上記各羽ばたき翼ごとに迎角と、羽ばたき作動を独立に制御できるようにした構成とすることにより、各アクチュエータとしての翼駆動用モータや線形アクチュエータの出力軸の方向の回転を介して各羽ばたき翼の迎角を制御を行うと共に、上記翼駆動用モータや線形アクチュエータにより各羽ばたき翼の羽ばたき作動を制御することにより、各羽ばたき翼ごとに発生させる推力の方向及び大きさを個別に且つ自在に制御できる。
(7)上記構成における翼駆動用モータや線形アクチュエータを、上記(3)と同様に、共振型の翼駆動用モータや共振型の線形アクチュエータとし、該各共振型の翼駆動用モータ又は共振型の線形アクチュエータにより、所定周波数での各羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅を独立に制御できるようにした構成とすることにより、各羽ばたき翼を、上記翼駆動用モータ又は線形アクチュエータの可動部と、羽ばたき翼と、該羽ばたき翼の羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気の慣性力と、アクチュエータより羽ばたき翼へ作用させる復元力とにより形成される振動系の共振周波数と等しい周波数となるように、上記翼駆動用モータ又は線形アクチュエータにて羽ばたき翼を羽ばたき作動させることにより、左右の各羽ばたき翼をそれぞれいかなる迎角に配置した状態であっても、羽ばたき作動させるときに上記慣性力をキャンセルすることができる。このために、上記(3)と同様の効果を得ることができる。
(8)上記構成において、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御と、各翼駆動用モータ又は線形アクチュエータによる左右の各羽ばたき翼の羽ばたき作動の独立した制御と、重心移動装置による機体重心位置の制御を介した胴体の姿勢制御を行うコントローラを備えた構成とすることにより、上記(5)、(6)又は(7)に示した効果に加えて、本発明の小型飛行装置の姿勢が崩れて所要方向に傾斜した場合には、重心移動装置により上記傾斜した側とは反対側へ機体重心の位置を変位させることにより姿勢を修正して、飛行姿勢を安定に保持することが可能となる。
(9)重心移動装置は、直線状のガイド部材と、任意の位置へ移動可能なスライダを備えてなる2つの重心移動アクチュエータを、胴体の前後方向と左右幅方向に沿うよう配置すると共に、一方の重心移動アクチュエータのスライダに、他方の重心移動アクチュエータのガイド部材を取り付け、且つ該他方の重心移動アクチュエータのスライダに、錘を取り付けてなる構成として、上記各重心移動アクチュエータにより、錘を、胴体の前後方向及び左右方向へ移動させることにより、機体重心の位置を胴体の前後左右方向に変位できるものとした構成とすることにより、上記錘の胴体の前後左右方向への移動によって、機体重心位置の胴体の前後左右方向への変位を容易に行わせることができる。
(10)重心移動装置を、左右の各羽ばたき翼より胴体に対して揚力が作用する位置の下方にて機体重心の位置を胴体の前後左右方向へ変位できるものとした構成とすることにより、上記機体重心の位置を胴体の前後左右方向へ変位させても、胴体の姿勢を、上記変位される重心位置が、左右の各羽ばたき翼より胴体へ揚力が作用する位置の真下に位置するようになる姿勢まで回旋させた後、容易に安定させることができる。
(11)重心移動装置は、左右の各羽ばたき翼にて垂直方向上向きの推力を発生させるときに、機体重心の位置を、上記各羽ばたき翼より胴体に対し作用する上記推力の作用点の真下の位置に保持できるものとした構成とすることにより、各羽ばたき翼にて垂直方向上向きの推力を発生させて、胴体に、水平方向の推進力を作用させることなく揚力のみを作用させるようにした状態で、胴体の姿勢を安定させることができる。このため、上記胴体へ作用させる揚力と、機体重量とのバランスを調整することにより、垂直上昇、垂直下降、ホバリングを行なわせることができて、飛行性能を更に向上させることが可能となる。
(12)羽ばたき翼を、駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる構成として、上記駆動ロッドと翼本体の前縁部との間に、上記駆動ロッドと直角方向に延びる柔軟性を備えた連結ロッドを介在させてなるものとした構成とすることにより、羽ばたき翼の羽ばたき作動時に翼本体に作用する空気の反力により上記連結ロッドを撓ませて、翼本体にフェザリングをパッシブに生じさせることができる。
(13)羽ばたき翼を、駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる構成として、上記翼本体を、前縁部と直角方向に柔軟性を備えてなるものとすることによっても、羽ばたき翼の羽ばたき作動時に、翼本体にフェザリングをパッシブに生じさせることができる。
(14)羽ばたき翼を、駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる構成として、上記翼本体を低アスペクト比とした構成とすることにより、低レイノルズ数にて支配される領域での翼形状をより有利なものとすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0038】
図1(イ)(ロ)乃至図5は本発明の小型飛行装置の実施の一形態を示すもので、前後方向の長さ寸法を、たとえば、十数センチメートル程度としてある胴体26における、たとえば、前後方向中間部付近の左右両側部に、羽ばたき速度の独立した制御により、発生させるスリップストリーム(後流)の強度を独立して制御できて、該後流の反力として得られる推力の大きさを独立に制御できるようにしてある羽ばたき翼27a,27bを胴体26の前方へ向けてそれぞれ設ける。又、上記胴体26の所要位置に、錘29を胴体26の前後左右方向に移動させることにより機体重心Gの位置を胴体26の前後左右方向へ変位させることができるようにしてある重心移動装置28を設ける。更に、上記左右一対の羽ばたき翼27a,27bにて発生させる推力を独立して制御すると同時に、上記重心移動装置28により機体重心Gの位置を胴体26の前後左右方向へ適宜変位させるようにして本発明の小型飛行装置の姿勢を制御することにより、飛行できるようにする。
【0039】
以下、詳述する。
【0040】
上記胴体26の前後方向中間部の左右位置には、図1(イ)(ロ)に示す如く、回転型アクチュエータとしての翼駆動用モータ30を、図示しない固定部上に、出力軸30aが胴体26の前後方向に沿う配置となるよう取り付ける。なお、上記翼駆動用モータ30は電磁モータ又は超音波モータのいずれであってもよい。
【0041】
上記各羽ばたき翼27a,27bは、上記各翼駆動用モータ30の出力軸30aに、左右方向に延びて胴体26の外方へ所要寸法突出するよう配置してある駆動ロッド31の一端部(胴体26側端部)をそれぞれ直角方向に連結して固定し、出力軸30aを交互に正、逆転駆動することにより上記駆動ロッド31の自由端側が胴体26の上下方向に振られるようにする。なお、上記駆動ロッド31は、多少の柔軟性(撓性)を備えた素材製のものとしてもよい。更に、上記各駆動ロッド31の自由端側となる胴体26の外方へ突出した他端部には、翼駆動用モータ30の出力軸30aと平行な面内に配置してある、すなわち、胴体26の前後方向に対し平行に配置してある矩形状の翼本体32の前縁部を、該翼本体32の幅方向に所要間隔で配した複数本(図では3本)の連結ロッド33を介して取り付ける。これにより、上記翼駆動用モータ30の出力軸30aを、所要の角度範囲で交互に正、逆転駆動させることにより、該出力軸30aに連結してある駆動ロッド31が出力軸30aへの連結点を中心に上下方向に往復作動させられて、該駆動ロッド31と連結ロッド33と翼本体32とからなる各羽ばたき翼27a,27bを、上記所要の角度範囲で羽ばたき作動させることができるようにしてある。更に、上記各翼駆動用モータ30の出力軸30aを正、逆転駆動する速度を独立に制御して、それぞれ対応する羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動速度(羽ばたき速度)を独立に制御したり、又、上記出力軸30aを正、逆転駆動する角度範囲を独立に制御して、それぞれ対応する羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動の振幅を独立に制御することによって、上記各羽ばたき翼27a,27bごとに羽ばたき作動を独立に制御できるようにしてある。
【0042】
更に、上記各連結ロッド33は、柔軟性(撓性)を備えた素材製として、上記羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動の際に翼本体32に空気の反力が作用すると、その荷重を受けて上記各連結ロッド33が所要量撓むようにしてある。これにより、上記各翼駆動用モータ30にて羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させるときには、上記各連結ロッド33が撓むことによって、各駆動ロッド31の往復移動に対し、上記各連結ロッド33を介してそれぞれ接続してある各翼本体32の往復移動が所要位相遅れると共に、該各翼本体32の前縁(駆動ロッド31側の縁)の往復移動に対し、後縁(反駆動ロッド31側の縁)が所要位相遅れて追従するようになることから、各翼本体32に、所謂フェザリングをパッシブに行わせることができるようにしてある。
【0043】
上記各翼本体32は、たとえば、低アスペクト比となる矩形状としてあり、たとえば、該各翼本体32の前縁部に沿って配置した左右方向に延びる横骨部材34と、該横骨部材34の長手方向の複数個所(図では5個所)に一端部を取り付けると共に、他端部が翼本体32の後縁に達するよう配置した複数本の縦骨部材35とからなる骨組み構造に、薄いプラスチックフィルムのようなフィルム36を張ってなる構成としてある。更に、上記各縦骨部材35は、柔軟性(撓性)を備えてなる素材製として、各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動の際、上記翼本体32のフィルム36の受ける空気の反力により上記各縦骨部材35がそれぞれ所要量撓むようにし、このことによっても、各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動時にそれぞれの翼本体32にフェザリングをパッシブに行わせることができるようにしてある。
【0044】
上記において各翼本体32の形状を低アスペクト比となる形状としたのは、本発明の小型飛行装置はサイズが小さく、このため流体との相互作用は10〜10程度と低いレイノルズ数で支配されるようになるため、通常のレイノルズ数が10よりも大となるようなメーターサイズの飛行体とは異なり、翼弦長が翼幅に比して小さい高アスペクト比の翼形状よりも低アスペクト比の翼形状の方がより有利となるためである。
【0045】
羽ばたき翼27a,27bを上記構成としてあるので、上記各翼駆動用モータ30の出力軸30aを交互に正、逆転駆動させて駆動ロッド31を胴体26の上下方向へ振ることにより羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させると、それぞれ対応する翼本体32の後縁側の外方領域には後流が発生し、このため、上記左右の羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右のそれぞれ対応する位置に対し、上記後流の反力がそれぞれ推力Ta,Tbとして作用するようになる。よって、胴体26の左右位置に対しては、上記左右一対の羽ばたき翼27a,27bにてそれぞれ発生させる推力Ta,Tbの水平方向前向きの成分(水平分力)が、水平方向に前進させるための推進力Fa,Fbとしてそれぞれ作用するようになる。又、上記左右の羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動によりそれぞれ発生させる推力Ta,Tbの垂直方向上向きの成分(垂直分力)と、本発明の小型飛行装置が前進飛行するときに、各羽ばたき翼27a,27bが、胴体26の前後方向角度姿勢と同様の平均迎角(羽ばたき作動時のフェザリングによる角度変化を考慮しない水平面に対する前後方向の角度姿勢、以下、単に迎角という)に保持された状態で大気中を前進することに起因して、各羽ばたき翼27a,27bの迎角に応じ且つ前進速度の二乗に比例して該各羽ばたき翼27a,27bに作用することとなる垂直方向上向きの力(通常揚力又は非羽ばたき揚力)との和が、それぞれ揚力(浮上力)La,Lbとして各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右位置へ作用するようになる。これにより、本発明の小型飛行装置全体では、上記左右の各羽ばたき翼27aと27bより胴体26の左右位置に個別に作用させる推力TaとTbの合力が、機体全体の推力(以下、全体推力という)Tとして作用するようになり、同様に、左右の各羽ばたき翼27aと27bより、胴体26の左右位置に個別に作用させる推進力Fa,Fbの合力が、機体全体の推進力(以下、全体推進力という)Fとして、又、胴体26の左右位置に個別に作用させる揚力LaとLbの合力が、機体全体の揚力(以下、全体揚力という)Lとしてそれぞれ作用するようになる。したがって、上記胴体26の前後方向の角度姿勢を調整し、該胴体26に前向きに取り付けてある左右の各翼駆動用モータ30と一緒に、左右の各羽ばたき翼27a,27bの迎角(角度姿勢)を調整して、上記各羽ばたき翼27a,27bにて発生させる推力Ta,Tbの方向を変化させると共に、各翼駆動用モータ30によりそれぞれ対応する羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を独立して調整して、上記各羽ばたき翼27a,27bごとに発生させる推力Ta,Tbの大きさ(強さ)を変化させることにより、胴体26の左右位置に各羽ばたき翼27a,27bよりそれぞれ作用させる推進力Fa,Fbの大きさと左右のバランスを自在に変更できるようにしてある。又、上記各羽ばたき翼27a,27bにて発生させる推力Ta,Tbの方向及び大きさの調整により、該各推力Ta,Tbの垂直分力の大きさを増減させると同時に、上記各推力Ta,Tbの水平分力である推進力Fa,Fbを各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用させて本発明の小型飛行装置を前進飛行させるときの飛行速度に応じて、各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用する通常揚力又は非羽ばたき揚力の大きさを制御することにより、胴体26の左右位置に対して各羽ばたき翼27a,27bよりそれぞれ作用させる揚力La,Lbの大きさ(強さ)と左右のバランスを自在に変更できるようにしてある。
【0046】
次に、上記構成としてある本発明の小型飛行装置では、左右の各羽ばたき翼27a,27bの迎角は、胴体26の前後方向角度姿勢と一緒に変化させられるようにしてあるために、該各羽ばたき翼27a,27bの迎角を所要の角度に設定して保持するためには、胴体26の前後方向角度姿勢を一定の角度に保持する必要がある。このように胴体26の前後方向角度姿勢を所要の角度姿勢で一定に保持できるようにするためには、その角度姿勢となるときに、本発明の小型飛行装置全体の重心(以下、機体重心という)Gと、左右の各羽ばたき翼27a,27bより胴体26に対して全体揚力Lが作用する点(以下、揚力作用点という)Pとの相対的な位置関係が、胴体26側方より見て、図2(イ)(ロ)及び図3(イ)(ロ)(ハ)に示す如く、上下方向に並んで、上記機体重心Gと揚力作用点Pが前後方向に揃うようにすることが必要とされる(上記揚力作用点Pは、左右の各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動の中心となる左右の翼駆動用モータ30の出力軸30a付近に存在している)。すなわち、たとえば、胴体26側方より見て、機体重心Gの位置が揚力作用点Pに対し前後方向にずれると、胴体26に対しては、回転モーメント(回旋力)が作用するようになり、このために、上記胴体26は、機体重心Gの位置が、揚力作用点Pと上下方向に並ぶ配置になるまで前後方向角度姿勢が上下方向に回転させられ、その後、回転後の新たな角度姿勢にて前後方向角度姿勢が安定されることとなる。なお、上記のように機体重心Gの位置を、胴体26側方から見て揚力作用点Pと上下方向に並ぶような配置とさせて、胴体26の前後方向角度姿勢を所要の角度姿勢とさせる場合は、一般に、機体重心Gの位置が、揚力作用点Pよりも下方にある方がより安定させ易い。そのために、本発明の小型飛行装置では、機体重心Gの位置を、上記揚力作用点Pよりも下方位置にて胴体26の前後方向及び左右方向へ変位させて、胴体26の前後方向角度姿勢を制御できるようにするための以下のような重心移動装置28を設けるようにしてある。
【0047】
上記重心移動装置28は、図1(イ)(ロ)に示す如く、直線状に延びるガイド部材38と、該ガイド部材38上に長手方向にスライド可能に取り付けたスライダ39と、該スライダ39を上記ガイド部材38の長手方向の任意の位置へ移動させることができるようにしてある超音波モータや電磁モータ等の図示しない駆動装置とからなる構成を有する左右方向重心移動アクチュエータ37を備え、上記ガイド部材38を、上記胴体26の所要位置、たとえば、胴体26のやや後部寄り位置に、左右幅方向に延びるよう配置して取り付けることにより胴体26に設置するようにしてある。更に、上記左右方向重心移動アクチュエータ27と同様に、直線状に延びるガイド部材41と、該ガイド部材41上にスライド可能に取り付けたスライダ42と、該スライダ42を上記ガイド部材41の長手方向の任意の位置へ移動させるための超音波モータや電磁モータ等の図示しない駆動装置とからなる構成としてある前後方向重心移動アクチュエータ40を備えて、上記ガイド部材41を、胴体26の前後方向に沿う方向に配置すると共に、該ガイド部材41の長手方向中間部の下面を、上記左右方向重心移動アクチュエータ37のスライダ39の上側に取り付けるようにする。更に、上記前後方向重心移動アクチュエータ40のスライダ42の上側に、所要重量を備えた錘29を載置して取り付けた構成としてある。なお、上記錘29としては、本発明の小型飛行装置に常時搭載すべきバッテリー(図示せず)等、胴体26上にて前後左右方向へ移動させてもその機能に影響のない部材の重量を適宜利用するようにすればよい。又、上記において、胴体26の所要個所に、上記左右方向重心移動アクチュエータ37のスライダ39を移動させて該スライダ39上の前後方向重心移動アクチュエータ40を左右方向へ移動させるときに、該前後方向重心移動アクチュエータ40のガイド部材41の前後方向の両端部を、左右方向にスライド自在に受けてガイドするための図示しないガイド機構を設けるようにしてもよい。
【0048】
上記構成としてある重心移動装置28は、前後方向重心移動アクチュエータ40にて、スライダ42をガイド部材41の前後方向へ動かして、該スライダ42と一緒に錘29を前後方向へ移動させることにより、機体重心Gの位置を前後方向へ変位させることができるようになる。たとえば、図2(イ)に示す如く、上記前後方向重心移動アクチュエータ40にて、スライダ42を錘29と一緒にガイド部材41の前端部付近へ移動させることにより、前方へ変位させられる機体重心Gの位置を、胴体26の前後方向角度姿勢を前方やや上向きの角度姿勢とするときに、胴体26側方から見て揚力作用点Pと上下方向に揃う配置とさせることができるようにしてある。一方、図2(ロ)に示す如く、上記前後方向重心移動アクチュエータ40にて、スライダ42を錘29と一緒にガイド部材41の後端部まで移動させることにより、機体重心Gの位置を胴体26の後方側へ変位させ、この胴体26の後方側へ変位される機体重心Gが胴体26側方から見て揚力作用点Pと上下方向に並ぶ配置となるように胴体26が回転させられるようにすることにより、該胴体26の前後方向角度姿勢を、機首が大きく上を向く前方斜め上向きの角度姿勢とさせることができるようにしてある。なお、図2(イ)(ロ)における符号rは、上記前後方向重心移動アクチュエータ40により錘29を胴体26の前後方向へ移動させるときに機体重心Gが前後方向へ変位する重心移動領域を示す。
【0049】
更に、上記左右方向重心移動アクチュエータ37にて、スライダ39を左右方向へ動かして、該スライダ39と一緒に、上記前後方向重心移動アクチュエータ40及び錘29を左右方向へ移動させることにより、機体重心Gの位置を、胴体26の左右方向へ変位させて、本発明の小型飛行装置全体の重量(以下、機体重量という)Wの胴体26の左右両側位置での重量バランスを変化させることができるようにしてある。したがって、本発明の小型飛行装置を飛行させる際、左右の羽ばたき翼27aと27bより胴体26の左右位置にそれぞれ作用させる揚力LaとLbによって支持させるべき重量の割合を左右で自在に変化させることができるようにしてある。
【0050】
上記構成としてあるので、本発明の小型飛行装置を所要の飛行高度を高速で前進飛行させる場合は、予め、重心移動装置28の左右方向重心移動アクチュエータ37にて、スライダ39を、ガイド部材38の長手方向中間部に位置させることにより、前後方向重心移動アクチュエータ40及び錘29を胴体26の幅方向の中心線に沿うように配置させ、これにより、機体重心Gを胴体26の左右方向の中央部に位置させて、機体重量Wが左右方向で均等になる状態としておく。この状態にて、図2(イ)に示す如く(なお、図2(イ)(ロ)では羽ばたき翼27a,27bの記載は省略してある)、前後方向重心移動アクチュエータ40によりスライダ42と一緒に錘29をガイド部材41の前端部付近へ移動させて、機体重心Gを、重心移動領域rの前側寄りに位置させて、胴体26側方から見て該機体重心Gが揚力作用点Pの真下に位置するようにして、胴体26の前後方向角度姿勢を、進行方向前方に対しやや上向きの角度姿勢となるようにし、左右の各羽ばたき翼27a,27bが、上記胴体26と同様に進行方向前方に対しやや上向きとなる迎角で配置されるようにする。更に、各翼駆動用モータ30により、左右の羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させて、該左右の羽ばたき翼27a,27bにより、該各羽ばたき翼27a,27bの迎角に沿う進行方向前方に対しやや上向きの均等な大きさの推力Ta及びTbをそれぞれ発生させ、この各羽ばたき翼27a,27bで発生させる推力Ta,Tbの合力である全体推力Tの大きさを適宜制御することにより、各羽ばたき翼27a,27bより胴体26に作用させる揚力La,Lbの合力である全体揚力Lが、機体重量Wと釣合う大きさとなるようにする。これにより、本発明の小型飛行装置全体では、全体揚力Lと機体重量Wが釣合って互いに相殺されるため、胴体26を動かす力としては、各羽ばたき翼27a,27bにて発生させる全体推力Tの水平分力として得られる全体推進力Fのみが、進行方向前方に向けて大きく作用するようになる。このことから、本発明の小型飛行装置は、飛行高度を保持しながら、上記全体推進力Fの大きさに応じた速い飛行速度で前進飛行できるようになる。なお、本発明の小型飛行装置の飛行速度は、前進飛行するときに各羽ばたき翼27a,27bの平均迎角に起因して生じる抵抗成分(抗力)と、各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用させる推進力Fa,Fbとの釣合いで決定される。
【0051】
上記のように、一定の飛行高度で前進飛行している本発明の小型飛行装置の飛行速度を低下させる場合には、左右の羽ばたき翼27a,27bにより発生させる全体推力Tの水平分力として得られる全体推進力Fを小さくすればよい。このように全体推進力Fを小さくするにあたり、全体推力Tの発生方向を変えることなく単に大きさを減少させるだけでは、全体推力Tの減少に伴って、該全体推力Tの垂直分力が減少するため、左右の各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用させている全体揚力Lも減少することとなり、このため該全体揚力Lが不足して機体重量Wを支えきれなくなって飛行高度が下降してしまうことになる。このために、本発明の小型飛行装置を、一定の飛行高度を保持して飛行させながら飛行速度を低下させるためには、左右の羽ばたき翼27a,27bより上記揚力作用点Pに作用させる全体揚力Lを、機体重量Wと釣合う大きさのまま保持する必要がある。そこで、本発明の小型飛行装置では、飛行速度を遅くする場合には、図2(イ)に示す如き飛行姿勢から、機首を上方に向けて、胴体26の前後方向角度姿勢を進行方向前方より上方へ傾斜させた飛行姿勢とさせることにより、各羽ばたき翼27a,27bの迎角を大きくして、発生させる全体推力Tの方向を変えることで、上記全体揚力Lの不足を補うようにしてある。
【0052】
したがって、低速飛行する場合は、図2(ロ)に示す如く、重心移動装置28の前後方向重心移動アクチュエータ40により、スライダ42と一緒に錘29をガイド部材41の後端部へ移動させて、機体重心Gを、重心移動領域rの後端部側へ変位させ、この胴体26の後方側へ変位された機体重心Gが、胴体26側方から見て揚力作用点Pと上下方向に並ぶ配置をとろうとすることで生じる回転モーメント(回旋力)により、胴体26の前後方向角度姿勢を、進行方向前方に対して上向きに大きく傾斜させて、左右の羽ばたき翼27a,27bを、上記胴体26と一緒に進行方向前方に対して上向きの大きな迎角で配置させる。同時に、各翼駆動用モータ30による左右の羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を均等に減じて、該各羽ばたき翼27a,27bにより発生させる全体推力Tを、左右の各羽ばたき翼27a,27bより胴体26に対し作用される全体揚力Lが、機体重量Wと釣合う状態となるように減少させる。このようにすることにより、上記全体揚力Lを、機体重量Wと釣合う状態に維持したまま全体推力Tの水平分力として得られる全体推進力Fを減少させることができるため、飛行高度に変化を生じさせることなく、本発明の小型飛行装置の前進飛行速度を、上記減少された推進力Fに対応する速度に低下させることができる。このため、本発明の小型飛行装置は、低速で前進飛行されるようになる。
【0053】
上記前後方向重心移動アクチュエータ40により、スライダ42と一緒に錘29の位置を、ガイド部材41に沿って胴体26の前後方向に移動させて、機体重心Gの位置を、重心移動領域rの中間部の所要位置に配置させて、胴体26の前後方向角度姿勢を、図2(イ)に示した如き高速飛行状態とするときの角度姿勢と、図2(ロ)に示した如き低速飛行状態とするときの角度姿勢の間の任意の角度姿勢とさせると共に、該胴体26の前後方向角度姿勢と同様の迎角とされる各羽ばたき翼27a,27bを、翼駆動用モータ30により羽ばたき作動させて、得られる全体揚力Lが機体重量Wと釣合う大きさとなるように全体推力Tを制御して発生させるようにすれば、本発明の小型飛行装置を、飛行高度を保持しながら上記高速飛行と低速飛行の間の任意の飛行速度で前進飛行させることができるようになる。
【0054】
上記のように本発明の小型飛行装置を、所定の飛行速度で前進飛行させているときに、該飛行速度を一定に保持した状態にて、飛行高度を変化させる場合には、以下のようにする。すなわち、たとえば、図3(イ)に示す如く(図3(イ)(ロ)(ハ)では羽ばたき翼27a,27bの記載は省略してある)、前後方向重心移動アクチュエータ40によりスライダ42上の錘29を、ガイド部材41の長手方向中間部に位置させることにより、機体重心Gを、重心移動領域rの前後方向中間部に位置させ、これにより、胴体26の前後方向角度姿勢を、上記機体重心Gが、胴体26側方から見て揚力作用点Pと上下方向に並ぶような所要の角度姿勢とした状態にて、左右の各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させて、所要の全体推力Tを発生させることにより、本発明の小型飛行装置を、上記全体推力Tの水平分力として得られる所要の全体推進力Fに応じて前進飛行させ、且つ上記各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用される全体揚力Lが機体重量Wと釣合うようにして、飛行高度が一定に保たれる状態を初期状態とする。この初期状態から、飛行速度を変化させることなく飛行高度を上昇させる場合には、図3(ロ)に示す如く、前後方向重心移動アクチュエータ40によりスライダ42と一緒に錘29を後方へ所要量移動させて、機体重心Gの位置を、図3(イ)に示した如き初期状態よりも胴体26の後方側へ変位させることにより、胴体26の前後方向角度姿勢の進行方向前方からの傾きを大きくして、左右の羽ばたき翼27a,27bの迎角を増大させ、この迎角が増大された各羽ばたき翼27a,27bにて発生させる全体推力Tの水平分力である全体推進力Fが、迎角の増大に伴って各羽ばたき翼27a,27bが大気中を前進するときに生じる抗力が増加しても、図3(イ)に示した如き初期状態のときと同様の前進飛行速度を維持できるような大きさ、すなわち、全体推進力Fが図3(イ)に示した如き初期状態の全体推進力Fよりもやや大きくなるように、全体推力Tの大きさを増加させる。これにより、上記全体推力Tの垂直分力が増加されると共に、初期状態のときと同様の前進飛行速度が維持される本発明の小型飛行装置にて、各羽ばたき翼27a,27bの迎角が増大されることに伴って、該各羽ばたき翼27a,27bに対して作用する通常揚力又は非羽ばたき揚力が増加されるようになるため、左右の各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用する全体揚力Lは、図3(イ)に示した初期状態より増加させられて、機体重量Wを上回るようになる。よって、本発明の小型飛行装置は、飛行速度が一定に保持されたまま飛行高度が上昇させられるようになる。
【0055】
一方、上記図3(イ)に示す如き初期状態より、飛行速度を維持したまま飛行高度を下げる場合は、図3(ハ)に示す如く、前後方向重心移動アクチュエータ40によりスライダ42と一緒に錘29を前方へ所要量移動させて、機体重心Gの位置を、図3(イ)に示した如き初期状態よりも胴体26の前方側へ変位させることにより、胴体26の前後方向角度姿勢の進行方向前方からの傾きを小さくして、左右の羽ばたき翼27a,27bの迎角を減少させ、この迎角が減少された各羽ばたき翼26a,27bにて発生させる全体推力Tの水平分力である全体推進力Fが、迎角の減少に伴って各羽ばたき翼27a,27bが大気中を前進するときに生じる抗力が減少するときにも、図3(イ)に示した如き初期状態のときと同様の前進飛行速度を維持できるような大きさ、すなわち、全体推進力Fが図3(イ)に示した如き初期状態の全体推進力Fよりもやや小さくなるように、全体推力Tの大きさを減少させる。これにより、上記全体推力Tの垂直分力が減少されると共に、初期状態のときと同様の前進飛行速度が維持される本発明の小型飛行装置にて、各羽ばたき翼27a,27bの迎角が減少されることに伴って、該各羽ばたき翼27a,27bに対して作用する通常揚力又は非羽ばたき揚力が減少されるようになるため、左右の各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用する全体揚力Lは、図3(イ)に示した初期状態より減少させられて、機体重量Wよりも小さくなる。よって、本発明の小型飛行装置は、飛行速度が一定に保持されたまま飛行高度が下降させられるようになる。
【0056】
更に、上記のように本発明の小型飛行装置を、胴体26の前後方向角度姿勢をある一定の角度姿勢に保持して飛行高度を一定に保持した状態で前方へ飛行させる際、左右の各翼駆動用モータ30による胴体26左側の羽ばたき翼27aの羽ばたき作動と、胴体26右側の羽ばたき翼27bの羽ばたき作動とを相違させて、たとえば、図4(イ)に示す如く(図4(イ)(ロ)では羽ばたき翼27a,27bの記載は省略してある)、羽ばたき翼27aより胴体26の左側に作用する推力Taの方が、羽ばたき翼27bより胴体26の右側に作用する推力Tbよりも大きくなるようにすると、上記推力Taの水平分力として胴体26の左側に作用する推進力Faの方が、上記推力Tbの水平分力として胴体26の右側に作用する推進力Fbよりも大きくなる。これにより、本発明の小型飛行装置全体に対しては、飛行中の進行方向を、より推進力の小さい右側へ偏らせるような力が作用することとなる。
【0057】
なお、上記のように左右の羽ばたき翼27aと27bでそれぞれ発生させる推力TaとTbの大きさを相違させると、胴体26の左側に作用する上記推力Taの垂直分力の方が、胴体26の右側に作用する上記推力Tbの垂直分力に比して大きくなり、このために、胴体26の左側に作用する揚力Laの方が、胴体26の右側に作用する揚力Lbよりも大きくなるため、胴体26を揚力がより小さい右側へ傾けようとする力が発生することとなる。このため、本発明の小型飛行装置では、左右方向重心移動アクチュエータ37により、錘29と前後方向重心移動アクチュエータ40とを一緒に、より大きな揚力Laが作用するようになる胴体26の左方向へ所要量移動させて、機体重心Gの位置を、図4(イ)に二点鎖線で示す如き胴体26の左右幅方向の中央部としてある初期状態より、図4(イ)に実線で示す如く、胴体26左側寄り位置に変位させるようにする。これにより、上記胴体26の左側と右側に作用する揚力LaとLbの大きさの差に応じて、上記胴体26の左側と右側の重量バランスを、左側の方が右側よりも重くなるように変化させて、上記左右の羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右位置にそれぞれ作用される揚力LaとLbに差が生じていても、胴体26が左右方向へ傾くことを防止するようにしてある。
【0058】
したがって、本発明の小型飛行装置は、胴体26の左右方向を水平状態に保ったまま、静かな気流中においては、図4(イ)に矢印sで示す如く、右方向へ旋回飛行することができるようになる。又、飛行している小型飛行装置を左へ旋回させようとする乱れた気流中においては、小型飛行装置の進行方向を保持して該小型飛行装置が所定の飛行コースから左方向へ外れるのを防止する効果を得ることができるようになる。
【0059】
一方、上記とは逆に、左右の各翼駆動用モータ30による左右の各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を相違させて、図4(ロ)に示す如く、右側の羽ばたき翼27bで発生させる推力Tbの方が、左側の羽ばたき翼27aで発生させる推力Taよりも大きくなるようにして、胴体26の右側に作用する推進力Fbの方が胴体26の左側に作用する推進力Faよりも大きくなるようにすると共に、この際生じる胴体26の右側に作用する揚力Laと胴体26の左側に作用する揚力Lbとの差に対応させて、左右方向重心移動アクチュエータ37により、錘29と前後方向重心移動アクチュエータ40を、より大きな揚力Lbが作用している胴体26の右方向へ所要量移動させて、機体重心Gの位置を、図4(ロ)に二点鎖線で示す如き胴体26の左右幅方向の中央部としてある初期状態より、図4(ロ)に実線で示す如く、胴体26の右側寄りの位置へ変位させて、上記胴体26の右側の方が左側よりも重くなるように左右の重量バランスを調整することにより、本発明の小型飛行装置を、静かな気流中では、胴体26の左右方向を水平状態を保持したまま、図4(ロ)に矢印tで示す如く、左方向へ旋回飛行させることができ、又、飛行している小型飛行装置を右へ旋回させようとする乱れた気流中では、小型飛行装置の進行方向を保持して該小型飛行装置が所定の飛行コースから右方向へ外れるのを防止する効果を得ることができるようになる。
【0060】
なお、上記のように左右方向への旋回飛行を行わせたり、乱れた気流中にて飛行コースから外れるの防止するために、左右の各羽ばたき翼27a,27bにてそれぞれ発生させる推力Ta,Tbの大きさを相違させるようにする際、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右位置にそれぞれ作用させる揚力LaとLbの和、すなわち、全体揚力Lが、機体重量Wと釣合うようにしておけば、本発明の小型飛行装置の飛行高度は変化しない。又、上記において、全体揚力Lが機体重量Wを上回るようにすれば、左右方向へ旋回させながら飛行高度を上昇させることができ、一方、全体揚力Lが機体重量Wよりも小さくなるようにすれば、左右方向へ旋回させながら飛行高度を低下させることが可能となる。
【0061】
したがって、上記重心移動装置28の前後方向重心移動アクチュエータ40による錘29の前後方向への移動の制御により、機体重心G位置を前後方向へ変位させて、胴体26の前後方向角度姿勢と一緒に各羽ばたき翼27a,27bの迎角を制御して、該各羽ばたき翼27a,27bによる推力発生方向の制御を行うこと、左右の翼駆動用モータ30により各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を個別に制御することにより、該各羽ばたき翼27a,27bにてそれぞれ発生させる推力TaとTbの大きさを個別に制御すること、及び、上記重心移動装置28の左右方向重心移動アクチュエータ37による錘29と前後方向重心移動アクチュエータ40の左右方向への移動の制御により、機体重心G位置を左右方向へ変位させて機体重量Wの左右のバランスを制御すること、とを組み合わせれば、本発明の小型飛行装置は、前進飛行速度を低速から高速まで自在に変化させることができると共に、左右方向へ自在に旋回でき、更に、飛行高度を自在に変更できて、高度な飛行性能を達成できる。
【0062】
このように、本発明の小型飛行装置は、重心移動装置28における前後方向重心移動アクチュエータ40により、機体重心Gの胴体26前後方向位置を変位させて胴体26の前後方向角度姿勢と一緒に決定される左右の各羽ばたき翼27a,27bの迎角の制御と、左右方向重心移動アクチュエータ37による機体重心G位置の胴体26左右方向位置の変位による胴体26の左右方向の角度姿勢の制御と、各翼駆動用モータ30による各羽ばたき翼27a,27bの独立した羽ばたき作動の制御により、上述した如き飛行速度、飛行高度の変更や、左右への旋回等の高度な飛行性能を達成できるものであるが、更に、本発明では、前述したように、サイズが小型としてあるために、実際の環境下を飛行する場合には、環境に存在する気流の影響を受けて常に乱流の中を飛行するような状態になることから、自律制御を行う制御機構を備えている。すなわち、上記乱流の中を飛行するような状態になると、小型の飛行体では、容易に姿勢が乱される虞があると共に、乱流の中を飛行することに伴い、所望する飛行コースから容易に逸脱する虞も懸念され、一方、このような姿勢の乱れの修正や所望する飛行コースからの逸脱の修正を、作業者が無線制御等によってその都度行うことは困難であることから、本発明の小型飛行装置では以下のような制御機構を備えて、飛行の自律制御を行わせることができるようにしてある。
【0063】
図5は、その制御機構を示すもので、胴体26の所要位置に、GPSや磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ等の位置センサ43、ジャイロ等の姿勢センサ44、障害物の検出を行うための衝突防止センサ45を設け、該各センサ43,44,45からの信号を基に、上記重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37に個別に制御指令を与えると共に、胴体26の左右位置の各羽ばたき翼27a,27bごとに対応する各翼駆動用モータ30にそれぞれ独立した制御指令を与えるコントローラ46を備える。
【0064】
更に、胴体26の所要位置には、外部の図示しない制御装置より無線で発せられる本発明の小型飛行装置の使用目的に応じた飛行指令を受信して、上記コントローラ46に入力するための無線受信器47及び指令設定器48を設けるようにしてある。更に、上記コントローラ46より出力される本発明の小型飛行装置の現在位置や飛行状況等を、上記外部の制御装置へ無線で送信するための状態監視器49並びに無線送信器50を設けるようにしてある。
【0065】
上記コントローラ46について詳述すると、その機能の一つとしては、先ず、飛行制御機能がある。これは、本発明の小型飛行装置を所定の目標位置まで飛行させ、その後、所望の作業の終了後に初期位置又は所定の場所まで戻らせるためのものである。したがって、GPSや、GPS電波の届かないところでは磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ等の位置センサ43より入力される信号に基づいて本発明の小型飛行装置自体の位置(たとえば、三次元座標)を検出することができるようにしてある。又、外部の制御装置より無線受信器47、指令設定器48を介して飛行指令、たとえば、目標位置がGPS座標等により設定されると、上記検出された自己の初期位置(離陸位置)から目標位置に至るための方向、距離等を求めて、飛行コースを、たとえば、先ず、なるべく垂直に近い角度姿勢で所要高さ位置まで垂直上昇した後、目標位置に向けて所要方位へ前進飛行するというような飛行コースを自動的に判断して設定できるようにしてある。更に、該設定された飛行コースに沿って飛行するために要求される飛行速度の変化、飛行高度の変化、左右方向への旋回等を行わせるために、上記重心移動装置28の前後方向重心移動アクチュエータ40に指令を与えて、錘29の前後方向への移動による機体重心G位置を前後方向へ変位させ、胴体26の前後方向角度姿勢と一緒に各羽ばたき翼27a,27bの迎角を制御して、該各羽ばたき翼27a,27bによる推力発生方向の制御を行うこと、左右の翼駆動用モータ30に個別に指令を与えて、各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を個別に制御して、該各羽ばたき翼27a,27bにてそれぞれ発生させる推力TaとTbの大きさを個別に制御すること、上記重心移動装置28の左右方向重心移動アクチュエータ37に指令を与えて、錘29と前後方向重心移動アクチュエータ40の左右方向への移動による機体重心G位置を左右方向へ変位させて、機体重量Wの左右のバランスを制御することを、適宜組み合わせることにより、小型飛行装置全体に作用させるべき全体揚力L及び全体推進力Fを変化させたり、胴体26の左右位置に作用させるべき推進力Fa,Fbを個別に変化させたり、この胴体26の左右位置に作用させる推進力Fa,Fbを個別に変化させることに伴って胴体26の左右位置に作用する揚力La,Lbに差が生じても、胴体26が左右方向へ傾かないように機体重心Gの位置を左右方向へ変位させることができるようにしてある。これにより、本発明の小型飛行装置は、上記設定された飛行コースに沿って上記目標位置まで飛行することができるようにしてある。
【0066】
又、本発明の小型飛行装置は上記したように乱流によって飛行コースを容易に乱され易いことから、上記コントローラ46の飛行制御機能としては、本発明の小型飛行装置を上記のように所定の飛行コースに沿って飛行させる際に、GPS座標等の上記位置センサ43からの信号に基づいて本発明の小型飛行装置の現在の飛行位置を常時監視し、現在の飛行位置が、上記所定の飛行コースからずれていることが検出された場合には、このずれを修正するための飛行速度の変化、飛行高度の変化、及び、左右方向への旋回を行わせることができるように、上記と同様にして、重心移動装置28の前後方向重心移動アクチュエータ40、左右方向重心移動アクチュエータ37及び左右の翼駆動用モータ30への個別の指令を適宜与えて、左右方向へ旋回させたり、上昇あるいは下降を行わせることができるようにし、これにより、飛行コースが乱されても随時修正しながら本発明の小型飛行装置を目標位置まで飛行させることができる機能も有するようにしてある。
【0067】
更に、上記コントローラ46の飛行制御機能としては、目標位置における所定の目的が達成された後に、本発明の小型飛行装置を初期位置(離陸位置)あるいは予め設定された所定の位置まで戻るように帰還用の飛行コースを設定すると共に、該帰還用飛行コースに沿って上記したと同様の制御を行うことで飛行させることもできるようにしてあるものとする。
【0068】
上記コントローラ46の別の機能としては、姿勢制御機能がある。これは、上述したように本発明の小型飛行装置は、飛行中に乱流によって容易に姿勢が乱される虞があることから、上記コントローラ46は、搭載してある姿勢センサ44より入力される信号に基づいて、飛行しているときの胴体26の前後方向及び左右方向の角度姿勢を常時監視し、胴体26の前後方向角度姿勢の検出値が、そのときの飛行速度で前進飛行させるときに必要とされる羽ばたき翼27a,27bの迎角と同様に設定されているべき胴体26の前後方向の角度姿勢からずれている場合には、前後方向重心移動アクチュエータ40へ適宜指令を与えて、錘29の位置を胴体26の前後方向に所要量移動させることにより、機体重心G位置を前後方向へ変位させて、胴体26の前後方向角度姿勢を、上記飛行速度で前進飛行させる場合に要求される角度姿勢と一致するように修正することができるようにしてある。又、胴体26の左右方向が、水平状態より傾いている場合には、左右方向重心移動アクチュエータ37へ適宜指令を与えて、錘29と前後方向重心移動アクチュエータ40の位置を左右方向へ所要量移動させることにより、機体重心Gの位置を、そのとき行っている前進飛行あるいは左右方向への旋回飛行のときに設定されているべき位置より、左右の傾斜した方向とは逆の方向へ変位させて、左右の重量バランスを変化させることで、胴体26の左右方向の傾きを水平状態に修正して、飛行中は、該胴体26の左右方向を水平状態に保持することができるようにしてある。
【0069】
上記コントローラ46の更に別の機能としては、飛行コース上に存在する障害物を自動的に回避する障害物回避機能も備えているものとする。これは、衝突防止センサ45より入力される信号に基づいてコントローラ46が進行方向前方を常に監視し、飛行コースの前方に障害物の存在が検出されると、各羽ばたき翼27a,27bの翼駆動用モータ30、及び、重心移動装置28の前後方向重心移動アクチュエータ40及び左右方向重心移動アクチュエータ37へ適宜指令を与えることにより、飛行方向を上下左右方向へ適宜変更して上記障害物を迂回させるようにしてある。このようにして障害物を避けた後は、コントローラ46の有する上記飛行制御機能に基づいて、目標位置に至る飛行コースあるいは帰還用飛行コースに戻させるようにすればよい。
【0070】
上記衝突防止センサ45としては、たとえば、光フロー(Optic Flow)センサを採用すればよい。これは、ある移動体が移動しているときに該移動体より外部を視覚的に観測すると、得られる外部の像は、進行方向前方の一点より放射状に拡大し、移動体の上下左右位置では後方へ該移動体の速度と対応する速さで最も速く流れた後、進行方向後方の一点に集約されるように変化する。この際、上記移動体の進行方向の前方に位置している物体は、視界上における相対位置が変化せず、進行方向の前方からずれた位置に存在している物体は、その進行方向からの上下左右へのずれ方向に応じて、視界上では上下左右方向にその相対位置が変化すること、又、これらの進行方向前方からずれた位置に存在する物体は、進行方向からのずれが小さいほど、視界上における相対位置の変化率が大きくなる、という原理を利用して進行方向前方の障害物を検出できるようにしてある。
【0071】
更に又、胴体26の図示しない所定位置には、本発明の小型飛行装置の使用目的に応じたペイロード51として、たとえば、遠隔地の情報収集を目的とする場合には、画像撮影用のCCDセンサ51aや、雰囲気ガス中に存在する物質を検出するための化学センサ51b、バイオセンサ51c等の各種センサや、搬送対象物の離脱操作や把持操作等を行わせるための把持装置(図示せず)のようなペイロード51を搭載できるようにしてある。
該ペイロード51が、各種センサである場合には、図5に示す如く、該センサによる計測結果を、上記状態監視器49へ送り、上記コントローラ46より入力される本発明の小型飛行装置の現在位置や飛行状況等と一緒に無線送信器50を経て外部の制御装置へ無線で送信させるようにしてもよい。なお、本発明の小型飛行装置では、上記したように一定の飛行高度で飛行速度を変化させる場合や、一定の飛行速度で飛行高度を変化させるときには、胴体26の前後方向の角度姿勢が変化する。このため、上記ペイロード51としてCCDセンサ51aを用いる場合には、たとえば、上記CCDセンサ51aを、胴体26に、該胴体26の前後方向角度姿勢がある一定の角度姿勢となるときに、CCDセンサ51aが下向きや前方斜め下向きの配置となるように取り付けておき、目標位置にて撮影を行う際には、本発明の小型飛行装置を、胴体26の角度姿勢が上記一定の角度姿勢となるよう予め設定してある所定の飛行速度で、且つ飛行高度を変化させずに飛行させるようにコントローラ46にて飛行制御させたり、あるいは、上記CCDセンサ51aを、胴体26に対し、該CCDセンサ51aの向きが、胴体26の姿勢にかかわらず常に下向きや前方斜め下向きとなるよう、ユニバーサルジョイント等を介して取り付けておくようにすればよい。
【0072】
更に、図1(イ)に示す如く、胴体26の所要位置には、本発明の小型飛行装置を接地させるための脚52を設けるようにしてある。該脚52は、たとえば、本発明の小型飛行装置を離陸させるときに、左右の各羽ばたき翼27a,27bにより全体推力Tをできるだけ垂直方向に近い角度で発生させて、該全体推力Tより得られる垂直分力が最大となるようにして、全体揚力Lを最も効率よく得ることができるようにするために、図2(ロ)に示す如く、胴体26に作用する全体推力Tのうち水平方向の成分である全体推進力Fが最も小さくなるように、前後方向重心移動アクチュエータ40によりスライダ42と錘29をガイド部材41の後端部まで移動させ、機体重心Gを、重心移動領域rの最後部まで変位させて、胴体26の前後方向角度姿勢を最も垂直に近い角度姿勢とした状態として、地上等に載置できるように設けるようにすればよい。
【0073】
なお、本発明の小型飛行装置は飛行体であることから、上記した各種構成要素は、いずれも軽量であることが重要になる。したがって、上記各種構成要素は、いずれも、要求される強度や機能が満たされる範囲内において軽い材質のものを適宜選択して用いるようにすればよい。
【0074】
上記構成としてある本発明の小型飛行装置を使用する場合は、作業者が所要の離陸位置まで搬送して地上や所要個所に脚52を介して載置した状態にて、外部の制御装置より無線にて目標位置までの飛行及び所要の目的、たとえば、ペイロード51として搭載してある各種センサによる上記目標位置の状況観測等を行うよう飛行指令を発すると、該指令が本発明の小型飛行装置の無線受信器47及び指令設定器48を経てコントローラ46に入力される。このようにコントローラ46へ指令が入力されると、該コントローラ46では、上記指定された目標位置までの飛行コースが設定され、この所定の飛行コースに沿って飛行できるような揚力や推進力が得られるように、各羽ばたき翼27a,27bの翼駆動用モータ30と、重心移動装置28の前後方向重心移動アクチュエータ40と、左右方向重心移動アクチュエータ37へそれぞれ指令が発せられる。これにより、上記各羽ばたき翼27a,27bが翼駆動用モータ30によりそれぞれ羽ばたき作動されると共に、胴体26の前後方向及び左右方向の姿勢が制御されることから、本発明の小型飛行装置は、ほぼ垂直に近い角度姿勢で離陸した後、上記所定の飛行コースに沿って目標位置まで飛行するようになる。
【0075】
この飛行の際、乱流等により姿勢が乱れると、姿勢センサ44より入力される信号によりコントローラ46にて該姿勢の乱れが検出されて、この姿勢の乱れを修正するよう上記コントローラ46より重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へ指令が発せられて、機体重心Gの位置が前後左右方向に適宜調整されるため、本発明の小型飛行装置の姿勢の乱れは解消された状態で飛行を継続できるようになる。
【0076】
又、風の影響等により所定の飛行コースから逸脱すると、位置センサ43からの信号によりコントローラ46にて飛行コースからのずれが検出されて、この飛行コースからのずれを修正するよう上記コントローラ46より各翼駆動用モータ30及び重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へそれぞれ指令が発せられて、揚力や推進力が適宜調整されるため、本発明の小型飛行装置は目標位置へ向けて飛行できるようになる。
【0077】
更に、飛行コース上に障害物がある場合には、衝突防止センサ45からの信号によりコントローラ46にて上記障害物が検出され、この障害物を迂回して飛行できるよう上記コントローラ46より各翼駆動用モータ30及び重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へ指令が発せられて、揚力や推進力が適宜調整されるため、本発明の小型飛行装置は障害物を避けて飛行できるようになる。
【0078】
本発明の小型飛行装置が目標位置に達すると、ペイロード51に搭載したセンサによる上記目標位置の状況が計測されて、たとえば、上記センサをCCDセンサ51aとした場合には、上記目標位置の状況の映像が撮影でき、又、化学センサ51bとしたり、バイオセンサ51cとした場合には、上記目標位置における雰囲気ガスの分析等を行わせて、該目標位置の映像や雰囲気中のガス成分の分析結果等を、状態監視器49、無線送信器50を介し外部の制御装置へ送信させることができるようになる。
【0079】
その後、上記目標位置における目的の作業が終了すると、離陸位置あるいは予め指定された所定位置まで帰還するための飛行コースに沿って飛行できるよう上記コントローラ46より各翼駆動用モータ30及び重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へ指令が発せられて、揚力及び推進力が適宜調整されるため、本発明の小型飛行装置は、上記離陸位置あるいは所定位置まで帰還させられるようになる。
【0080】
このように、本発明の小型飛行装置によれば、胴体26の左右位置に設けてある各羽ばたき翼27a,27bの迎角を、機体重心G位置の前後方向への変位による胴体26の前後方向角度姿勢の変更に伴って制御できると共に、各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を独立に制御できるようにしてあり、更には、胴体26の左右方向の重量バランスも制御できるため、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右位置に作用する推進力Fa,Fbや、これらの合力である全体推進力Fや、全体揚力Lを調整できる。このために、本発明の小型飛行装置は、そのサイズからレイノルズ数が10〜10程度と低いものであるため、メーターサイズの飛行体とは大幅に異なる流体との相互作用を受けて、常に乱流の中を飛行するような状況となるが、姿勢センサ44にて検出される姿勢の乱れを常時修正して胴体26の左右方向を水平に保持したまま、高度な飛行性能を達成することができる。
【0081】
更に目標位置と使用目的に関する飛行指令を与えることにより、上記目標位置までの自律飛行を行わせた後、該目標位置における所定の作業を行わせ、しかる後、離陸位置あるいは所定位置まで戻るように飛行させることができる。そのため、たとえば、災害発生現場や人が容易に近づけない個所の撮影を行ったり、該個所の雰囲気中に含まれるガスの成分を分析して、有害ガスの発生の有無を確認したりする等、遠隔地から上記目標位置の情報収集を行なうことが可能になる。
【0082】
更に、ペイロード51に把持装置を搭載しておけば、所要の搬送物を、目標位置として設定される人が容易に近付けない個所や、遠隔地まで搬送させたり、回収させたりすることも可能になる。
【0083】
なお、上記実施の形態において、上記各羽ばたき翼27a,27bを、各翼駆動用モータ30の出力軸30aの交互の正、逆転駆動により羽ばたき作動させて、本発明の小型飛行装置へ水平方向前方への全体推進力Fを与えて前進飛行させる際、上記各羽ばたき翼27a,27bの胴体26下方への打下げ時の速度が、胴体26上方への打上げ時の速度よりも大となるように上記各翼駆動用モータ30の駆動を制御し、これにより、該各羽ばたき翼27a,27bで発生させる後流の向きを、胴体26の前後方向の角度姿勢と同様に設定される各羽ばたき翼27a,27bの迎角よりも下方へ偏らせることができるようにして、この後流の反力として得られる全体推力Tの向きを、図6に示す如く、上記羽ばたき翼27a,27bの設定されている迎角よりも上方へ偏らせるようにしてもよい。このようにすれば、本発明の小型飛行装置を水平方向前方に高速で前進飛行させる際、上記各羽ばたき翼27a,27bの迎角をゼロ、すなわち、水平方向前方に向けた姿勢として、該各羽ばたき翼27a,27bによる通常揚力又は非羽ばたき揚力がほとんど期待できない状態としても、該各羽ばたき翼27a,27bより進行方向前方に対しやや斜め上向きに全体推力Tを発生させることができることから、その垂直分力により機体重量Wと釣合わせるための全体揚力Lを得ることが可能になる。よって、本発明の小型飛行装置を高速で前進飛行させるときに、胴体26の前後方向角度姿勢を、進行方向前方に水平に向けることが可能になる。
【0084】
図7は本発明の実施の他の形態として、図1(イ)(ロ)乃至図5に示した実施の形態の応用例を示すもので、上記実施の形態と同様の構成において、胴体26の左右位置に、左右の羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させるための各翼駆動用モータ30を、出力軸30aが胴体26の前方に向く配置としてそれぞれ取り付けるようにした構成に代えて、胴体26の左右位置に、翼駆動用モータ30を、出力軸30aが胴体26の前方やや上向きの配置となるようにそれぞれ取り付け、該各翼駆動用モータ30の出力軸30aに、図1(ロ)に示したと同様に、駆動ロッド31と、連結ロッド33と、上記翼駆動用モータ30の出力軸30aと平行な面内に配置してある翼本体32とからなる左右一対の羽ばたき翼27a,27bの上記駆動ロッド31を、それぞれ連結して固定した構成とし、胴体26の前後方向角度姿勢を水平とするときに、上記左右の各羽ばたき翼27a,27bが、本発明の小型飛行装置を水平方向前方に高速で前進飛行させるときに該各羽ばたき翼27a,27bに要求される迎角と同様の前方やや上向きの迎角で配置させることができるようにしたものである。
【0085】
その他の構成は図1(イ)(ロ)乃至図5に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0086】
本実施の形態によれば、胴体26の左右位置に設けてある各翼駆動用モータ30により、左右の各羽ばたき翼27a,27bをそれぞれ羽ばたき作動させて水平方向前方に高速で前進飛行するときに、胴体26の前後方向角度姿勢を、水平にすることが可能となる。
【0087】
次に、図8(イ)(ロ)は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)乃至図5の実施の形態と同様の構成において、重心移動装置28を、前後方向重心移動アクチュエータ40により錘29を前後方向へ移動させることに伴って、機体重心Gを、揚力作用点Pよりも胴体26の下方側位置にて胴体26の前後方向に沿う方向の重心移動領域r内で変位させることができるようにした構成に代えて、重心移動装置28の前後方向重心移動アクチュエータ40により錘29を後端部側へ移動させて、機体重心Gの位置を重心移動領域rの最後部へ変位させるときに、該機体重心Gの位置が、胴体26の前後方向角度姿勢を上記各羽ばたき翼27a,27bにより垂直方向上向きの全体推力Tを発生させることができるような状態、すなわち、胴体26の前後方向角度姿勢を垂直方向上向きにした状態で、揚力作用点Pの下方に位置させることができるようにしたものである。
【0088】
具体的には、図1(イ)(ロ)乃至図5に示したと同様に、錘29を前後方向へ移動させるための前後方向重心移動アクチュエータ40と、上記錘29と前後方向重心移動アクチュエータ40とを一緒に左右方向へ移動させるための左右方向重心移動アクチュエータ37とからなる構成としてある重心移動装置28を、たとえば、図8(イ)に示す如く、胴体26の後部寄り位置に、胴体26の前後方向に対して前側が低く、後側が高くなるよう所要角度傾斜させて取り付けて、上記重心移動装置28の前後方向重心移動アクチュエータ40により錘29を前後方向に移動させることに伴って機体重心Gの位置が変位する重心移動領域rを、胴体26前方側が低く、胴体26後方側へ行くにしたがって胴体26の上部側へ延びるように設定できるようにする。これにより、図8(イ)に示す如く、上記前後方向重心移動アクチュエータ40にて錘29を胴体26前方側へ移動させて重心移動領域rの前端部に機体重心Gを位置させると、胴体26の前後方向角度姿勢をほぼ水平姿勢とした状態にて、上記機体重心Gを揚力作用点Pの下方に位置させることができるようにすると共に、前後方向重心移動アクチュエータ40にて錘29を胴体26後方側へ移動させて上記重心移動領域rの後端部に機体重心Gを変位させると、図8(ロ)に示す如く、胴体26の前後方向角度姿勢を垂直方向上向きの状態とするときに、上記機体重心Gを揚力作用点Pの下方に位置させることができるようにしてある。
【0089】
なお、本実施の形態においては、小型飛行装置を接地させるための脚52を、胴体26の前後方向角度姿勢を垂直方向上向きとして所要位置に載置できるよう胴体26の後方に向けて設けるようにしてある。その他の構成は図1(イ)(ロ)乃至図5に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0090】
本実施の形態によれば、重心移動装置28の前後方向重心移動アクチュエータ40により錘29をガイド部材41の後端部まで移動させて、機体重心Gの位置を、重心移動領域rの後端部まで変位させることにより、図8(ロ)に示す如く、胴体26の前後方向角度姿勢を垂直方向上向きの姿勢とした状態にて、機体重心Gを揚力作用点Pの下方に位置させることができる。このために、本実施の形態の小型飛行装置によれば、図8(ロ)に示す如き胴体26の前後方向角度姿勢が垂直方向上向きの姿勢となる状態にて、各翼駆動用モータ30により左右の各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させると、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ、垂直方向上向きの全体推力Tを作用させることができるようになる。この場合、上記全体推力Tは、すべて全体揚力Lとして作用させられるようになり、水平分力としての全体推進力Fは発生しない。したがって、本実施の形態の小型飛行装置は、上記のように胴体26の前後方向角度姿勢を垂直方向上向きの角度姿勢とした状態にて、左右の羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用させる垂直方向上向きの全体揚力Lの大きさを、機体重量Wよりも大きくすれば垂直上昇でき、又、全体揚力Lを機体重量Wと釣合うようにすれば空中停止飛行(ホバリング)でき、全体揚力Lが機体重量Wよりも小さくなるようにすることにより、垂直下降させることができるようになる。これにより、本実施の形態によれば、図1(イ)(ロ)乃至図5の実施の形態と同様の効果を得ることができることに加えて、小型飛行装置を、垂直上昇、ホバリング、垂直下降させることができるようになるため、飛行性能の更なる向上化を図ることができる。
【0091】
次いで、図9及び図10(イ)(ロ)は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)乃至図5の実施の形態と同様の構成において、胴体26の左右位置に設ける各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させるためのアクチュエータを、単なる翼駆動用モータ30を用いた構成に代えて、出力軸に対して所要の弾性係数を有する弾性部材により復元トルク(復元力)を与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにしてある共振型アクチュエータとしての共振型の翼駆動用モータ53を用いるようにしたものである。
【0092】
すなわち、上記共振型の翼駆動用モータ53は、図10(イ)(ロ)に示す如く、出力軸53aの中間部に、該出力軸53aと直角方向で且つ相対する方向に所要長さ突出するようにばね用アーム54を取り付け、一方、翼駆動用モータ53のケースの前面の外周部における180度対向する2個所に、出力軸53aと平行に延びるようにばね用の支柱55をそれぞれ設ける。該各支柱55と上記アーム54の先端部同士との間には、所要の弾性係数を有する弾性部材として、たとえば、所要のばね定数を有するばね56を介在させて、出力軸53aが回転するとき、ばね56の弾性力が作用するようにした構成とする。
すなわち、上記出力軸53aを正、逆転駆動させるときには、該出力軸53aと一緒に回転する上記各ばね用アーム54の先端部位置が、位置固定されている上記各ばね用支柱55に対して近接、離反するよう相対変位させられることに伴い、上記各ばね用アーム54の先端部とばね用支柱55との間の各ばね56が初期状態より伸縮変形させられるようにし、この伸縮変形するときの各ばね56の有する弾性力(初期形状への復元力)により、上記各ばね用アーム54の先端部位置と各ばね用支柱55との相対位置を初期状態へ戻すように力が各ばね用アーム54に与えられるようにし、これにより、翼駆動用モータ53の出力軸53aに対して初期状態へ復元させるような所要の復元トルク(復元力)を与えることができるようにした構成としてある。なお、上記共振型の翼駆動用モータ53のモータ自体は、電磁モータ又は超音波モータのいずれの形式であってもよい。
【0093】
したがって、上記各共振型の翼駆動用モータ53の出力軸53aの正、逆転駆動により上記各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させるときには、上記各翼駆動用モータ53の回転する出力軸53a及びロータ等の可動部と、羽ばたき作動する各羽ばたき翼27a,27bと、該各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気による慣性力が生じることから、この慣性力と、上記ばね56により各共振型の翼駆動用モータ53の出力軸53aに対して与えられる復元力によって形成される振動系(以下、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系と云う)に対して、各共振型の翼駆動用モータ53より変動外力が加えられることになる。よって、このように各共振型の翼駆動用モータ53より上記羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系に対して変動外力を加える際の該変動外力の周波数、具体的には、各共振型の翼駆動用モータ53の出力軸53aの交互の正、逆転駆動の周波数が、上記振動系の共振周波数に等しくなるようにすることにより、上記各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動に伴って生じる上記の如き慣性力をキャンセルすることができて、各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させる各共振型の翼駆動用モータ53の負荷を軽減させることができるようにしてある。
【0094】
上記構成としてある共振型の翼駆動用モータ53は、図9に示す如く、図1(イ)(ロ)乃至図5の実施の形態における翼駆動用モータ30と同様に、胴体26の左右両側部位置に、出力軸53aが胴体26の前方を向くように取り付けると共に、上記出力軸53aに、左右の各羽ばたき翼27a,27bの駆動ロッド31の基端部をそれぞれ連結して固定するようにしてある。
【0095】
なお、本実施の形態では、上記したように各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を、それぞれ共振型の翼駆動用モータ53にて行わせるようにしてあることに伴い、飛行制御機能、姿勢制御機能、障害物回避機能を備えて該各制御機能に基づいて各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動をそれぞれ独立して制御するためのコントローラ46(図5参照)としては、各羽ばたき翼27a,27bの共振型の翼駆動用モータ53へそれぞれ指令を与える際、各共振型の翼駆動用モータ53の出力軸53aの交互の正、逆転駆動の周波数を、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数と等しい周波数に保ちながら、上記各共振型の翼駆動用モータ53の出力軸53aを交互に正、逆転駆動させるときの角度範囲を増減させることができる機能を有するものとしてある。これにより、上記周波数にて羽ばたき作動させる各羽ばたき翼27a,27bの振幅を制御することで、該各羽ばたき翼27a,27bにて発生させてそれぞれ胴体26へ作用させる推力Ta,Tbの大きさを個別に制御できるようにしてある。その他の構成は図1(イ)(ロ)乃至図5に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0096】
本実施の形態によれば、各共振型の翼駆動用モータ53の出力軸53aの交互の正、逆転駆動の周波数が、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しくなる所定の周波数となるようにして各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させる状態にて、上記各翼駆動用モータ53ごとに出力軸53aを交互に正、逆転駆動するときの角度範囲を増減させて、それぞれの羽ばたき翼27a,27bの振幅を独立して調整することにより、それぞれの羽ばたき翼27a,27bにて発生させる推力Ta,Tb(図4参照)の大きさを個別に制御できることから、該推力Ta,Tbの制御と、重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37による機体重心Gの前後方向及び左右方向への変位を制御することにより、図1(イ)(ロ)乃至図5の実施の形態と同様の効果を得ることができる。更に、各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動により発生する慣性力をキャンセルして、各共振型の翼駆動用モータ53の負荷を軽減させた状態にて、上記各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させることができるため、各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動で発生する慣性力の変動を緩和できる。このため、本発明の小型飛行装置にて所要の使用目的を達成できるようにすべく、使用目的に対応させたペイロード51を十分に搭載できるようにすると共に、長距離を長時間飛行できるようにすることが求められ、そのため、各羽ばたき翼27a,27bを、高い周波数(数10Hz〜数100Hz)で羽ばたき作動させることが要求される場合であっても、各羽ばたき翼27a,27bを上記要求を満たすように高い周波数で羽ばたき作動させることができる。
【0097】
図11(イ)(ロ)乃至図13は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)乃至図5の実施の形態と同様の構成において、胴体26の左右両側部位置に設ける各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を、翼駆動用モータ30により行わせるようにしてあることに代えて、胴体26の左右両側部位置にそれぞれ設ける各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を、各々独立して制御可能な線形アクチュエータとして、たとえば、ムービングコイル形の線形アクチュエータ57によりそれぞれ行わせるようにしたものである。
【0098】
すなわち、上記ムービングコイル形の線形アクチュエータ57は、図12(イ)(ロ)に示す如く、一端側を閉塞した円筒状の支持容器58の他端側を、中央部に所要口径の開口部59を有する蓋部58aで閉鎖できるようにし、且つ該支持容器58の内部に、半径方向の磁界を発生させる環状のギャップ(溝)60aを備えた永久磁石製の磁気回路60を設置して、該磁気回路60と蓋部58aとの間に所要の空間部を形成すると共にギャップ60aが蓋部58a側に開放するようにする。上記磁気回路60のギャップ60a内には、コイル61を、軸心方向に往復移動できるように挿入配置して、該コイル61の蓋部58a側の軸方向端部に、取付部材62を取り付け、更に、該取付部材62の中央部に、上記蓋部58aの中央部の開口部59にスライド自在に挿入させた出力軸63の一端を取り付けた構成としてある。これにより、上記コイル61に所要周波数の交流電力を給電すると、該コイル61を上記磁気回路60のギャップ60a内における磁界との相互作用により軸心方向に往復運動させることができて、このコイル61の軸心方向の往復運動に伴い、取付部材62を上記空間部内で移動させて、上記出力軸63を、上記給電する交流電力の周波数と同様の周波数で軸心方向に振動(往復移動)させることができるようにしてある。なお、たとえば、上記コイル61の外周部所要個所と、その外周に位置する支持容器58の内面とを、放射方向に配したばねの如き弾性部材(図示せず)を介して接続して、上記線形アクチュエータ57への給電停止時に、上記出力軸63を中立位置に保持できるようにしてもよい。
【0099】
上記構成としてある線形アクチュエータ57は、図11(イ)(ロ)に示す如く、胴体26の左右両側部位置の図示しない固定部に、出力軸63が上向きとなるように取り付ける。上記出力軸63には、図1(イ)(ロ)乃至図5に示した実施の形態における各翼駆動用モータ30の出力軸30aに連結した場合と同様に、左右方向に延びて胴体26の外方へ所要寸法突出するようにしてある駆動ロッド31の一端部(胴体26側の端部)を図12(イ)に示す如く直角の状態で連結して固定すると共に、該駆動ロッド31の胴体26外方へ突出した他端側に、図1(イ)(ロ)乃至図5に示した実施の形態における翼本体32と同様の構成とし且つ上記線形アクチュエータ57の出力軸63と直角な面内に配置してある翼本体32の前縁部を、複数の連結ロッド33を介し取り付けて、出力軸63の軸心方向の往復移動により、駆動ロッド31、連結ロッド33を介し翼本体32が、該翼本体32の面に垂直な方向へ往復移動するようにした構成としてある。
【0100】
かかる構成としてあることから、上記各線形アクチュエータ57の出力軸63を軸心方向に所要の振幅で振動させることにより、該出力軸63に連結してある駆動ロッド31と連結ロッド33と翼本体32とからなる左右の各羽ばたき翼27a,27bが、上記翼本体32の面に垂直な方向へ振動させられて羽ばたき作動させられるようになる。この羽ばたき作動の際、上記各線形アクチュエータ57の出力軸63の振動する速度を個別に制御したり、出力軸63の振動する振幅を個別に制御することにより、それぞれ対応する羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき速度や羽ばたき振幅の制御を介し羽ばたき作動が独立して制御されるようになることから、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右位置へそれぞれ作用させる推力TaとTbを個別に制御できるようになる。
【0101】
更に又、本実施の形態では、上記したように各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を、それぞれ線形アクチュエータ57にて行わせるようにしてあることに伴い、飛行制御機能、姿勢制御機能、障害物回避機能を備えて該各制御機能に基づいて各羽ばたき翼27a,27bにて発生させる揚力La,Lbと推進力Fa,Fbをそれぞれ独立して制御するためのコントローラとしては、図5に示した各羽ばたき翼27a,27bの翼駆動用モータ30と、重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へそれぞれ指令を与えるコントローラ46に代えて、図13に示す如く、各羽ばたき翼27a,27bの線形アクチュエータ57と、重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へそれぞれ指令を与えて、該各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき速度と、機体重心Gの前後方向及び左右方向への変位を介した胴体26の前後方向角度姿勢と同様の各羽ばたき翼27a,27bの迎角の制御及び胴体26の左右方向の角度姿勢を制御する指令を与える機能を有するコントローラ46aを設けるようにしてある。
【0102】
その他の構成は図1(イ)(ロ)乃至図5に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0103】
本実施の形態によれば、上記各線形アクチュエータ57により胴体26の左右位置に設けた各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を個別に制御して、それぞれの羽ばたき翼27a,27bより個別に大きさを制御した推力Ta,Tbを胴体26の左右位置に対して作用させることができる。
【0104】
したがって、上記コントローラ46aにより、図1(イ)(ロ)乃至図5に示した実施の形態におけるコントローラ46によるそれぞれ対応する前後方向及び左右方向各重心移動アクチュエータ40及び37による胴体26の前後方向角度姿勢の制御及び左右方向の角度姿勢の制御と同様の制御を行わせながら、上記各線形アクチュエータ57の制御による左右の羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を個別に制御することにより、図1乃至図5に示した実施の形態と同様の飛行性能を得ることができる。よって、コントローラ46aの有する飛行制御機能、姿勢制御機能、障害物回避機能に基づいて、各線形アクチュエータ57と重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へ制御指令を与えることにより、図1(イ)(ロ)乃至図5の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
上記のように本実施の形態における小型飛行装置を飛行させるときに水平方向前方に高速飛行させる場合には、図1乃至図5に示した実施の形態における図2(イ)に示した高速飛行状態と同様に、前後方向重心移動アクチュエータ40により錘29の胴体26前方側へ移動させて、機体重心Gの位置を重心移動領域rの前端部寄りに配置することにより、胴体26の前後方向角度姿勢を前方やや上向きの姿勢とさせるようにし、これにより、各羽ばたき翼27a,27bを、上記胴体26と同様に所要迎角で前方やや上向きの姿勢となるようにした状態にて、上記各線形アクチュエータ57に交流電力を給電して羽ばたき作動させることにより、上記各羽ばたき翼27a,27bにて、全体推力Tを前方やや上向きに発生させて、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用させる全体揚力Lが、本発明の小型飛行装置の気体重量Wと釣合うようにすればよい。なお、上記各線形アクチュエータ57に対し、交流電力を供給するときに直流分を同時に負荷して、対応する各羽ばたき翼27a,27bの打下げ時の速度が打上げ時の速度よりも大となるように上記各線形アクチュエータ57の駆動を制御し、これにより、図6に示した実施の形態と同様に、該各羽ばたき翼27a,27bで発生させる全体推力Tの向きを、羽ばたき翼27a,27bに設定されている迎角よりも上方へ偏らせて、該上方へ偏らせた全体推力Tの垂直分力を利用して機体重量Wを支えるための全体揚力Lを得ることができるようにすれば、高速で前進飛行する場合に、上記各羽ばたき翼27a,27bの迎角を、水平方向前方に向けた姿勢とすることができる。よって、高速で前進飛行する際の胴体26の前後方向角度姿勢を、水平姿勢とすることが可能になる。
【0106】
更に、胴体26の左右位置に、線形アクチュエータ57を、出力軸63が上方よりもやや後方へ傾いた姿勢となるようにそれぞれ取り付けることにより、該各線形アクチュエータ57の出力軸63に、該出力軸63に直角な平面内に配した翼本体32を有する羽ばたき翼27a,27bの駆動ロッド31を連結して固定することで、図7に示した実施の形態と同様に、胴体26の前後方向角度姿勢を水平とするときに、上記左右の各羽ばたき翼27a,27bを、本発明の小型飛行装置を水平方向前方に高速で前進飛行させるときに該各羽ばたき翼27a,27bに要求される迎角と同様の前方やや上向きの迎角で配置させることができるようにしてもよい。このようにしても、高速で前進飛行する際の胴体26の前後方向角度姿勢を、水平姿勢とすることが可能になる。
【0107】
図14(イ)(ロ)はいずれも図11(イ)(ロ)乃至図13の実施の形態の応用例を示すもので、図14(イ)に示すものは、図11(イ)(ロ)乃至図13の実施の形態に示したように、線形アクチュエータ57の出力軸63に、各羽ばたき翼27a,27bの駆動ロッド31の一端部(胴体26側の端部)を直接固定する構成に代えて、各線形アクチュエータ57の支持容器58の蓋部58aの前面における出力軸63より胴体26外側寄りとなる左右方向の一側位置に、出力軸63と平行に所要寸法突出するブラケット64を設けて、該ブラケット64の先端部に、それぞれ対応する羽ばたき翼27a,27b(図では羽ばたき翼27aについてのみ示してある)の駆動ロッド31の基端側となる一端寄りの所要個所を、ピン65によりそれぞれ回動自在に枢着して支持させ、該各駆動ロッド31の基端側としての一端部には、軸心方向に沿って所要の寸法を有する長孔66を設ける。一方、上記線形アクチュエータ57の出力軸63の先端部には、先端側に左右方向に連通する隙間を備えたクレビス形状の連結部材67を取り付けて、該連結部材67の先端側の隙間に上記駆動ロッド31の一端部を沿わせて配置させ、上記駆動ロッド31の長孔66に挿通させた動力伝達用ピン68の両端部を、上記連結部材67の先端部に取り付けて連結部材67と駆動ロッド31の一端部とを係合させるようにし、線形アクチュエータ57の出力軸63が軸心方向へ振動することにより、上記動力伝達用ピン68と長孔66を介し駆動ロッド31が揺動させられるようにした構成としたものである。
【0108】
又、図14(ロ)に示すものは、各線形アクチュエータ57の支持容器58の蓋部58aの前面における出力軸63より胴体26中心側寄りとなる左右方向の他側位置に、出力軸63と平行に所要寸法突出するブラケット64を設けて、該ブラケット64の先端部に、それぞれ対応する羽ばたき翼27a,27b(図では羽ばたき翼27aについてのみ示してある)の駆動ロッド31の基端側としての一端部を、ピン65によりそれぞれ回動自在に枢着して支持させると共に、図14(イ)に示したと同様に、駆動ロッド31の基端側となる所要個所に長孔66を設け、線形アクチュエータ57の出力軸63の先端に固定した図14(イ)と同様の連結部材67に、上記駆動ロッド31の長孔66形成部を沿わせて、動力伝達用ピン68を長孔66に通すことにより係合させるようにし、線形アクチュエータ57の出力軸63が軸心方向へ振動することにより、駆動ロッド31がブラケット64への枢着点を中心に揺動させられるようにした構成としたものである。
【0109】
その他の構成は、いずれも図11(イ)(ロ)乃至図13に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。又、たとえば、上記コイル61の外周部所要個所と、その外周に位置する支持容器58の内面とを、放射方向に配したばねの如き所要の弾性部材(図示せず)を介し接続して、上記線形アクチュエータ57への給電停止時に、上記出力軸63を中立位置に保持できるようにしてもよい。
【0110】
上記図14(イ)及び図14(ロ)に示したものでは、いずれも、線形アクチュエータ57の出力軸63を軸心方向に振動させることにより、該出力軸63に連結部材67を介して取り付けてある動力伝達用ピン68が、各羽ばたき翼27a,27bの駆動ロッド31における長孔66の部分を上記出力軸63の軸心方向に押し引き駆動させるようにする。これにより、上記各駆動ロッド31は、図14(イ)及び図14(ロ)にそれぞれ一点鎖線及び二点鎖線で示す如く、線形アクチュエータ57の支持容器58の蓋部58aの前面所要位置に設けたブラケット64の先端部のピン65を支点として揺動させられるようになることから、該各駆動ロッド31の他端部に取り付けてある翼本体32を、羽ばたき作動させることができるようになる。更に、このようにして各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させる際には、各線形アクチュエータ57の出力軸63の振動の振幅を、該出力軸63に取り付けてある連結部材67の先端部の上記動力伝達用ピン68にて押し引き駆動される駆動ロッド31の長孔66の位置から支点、すなわち、上記ブラケット64の先端部のピン65までの距離d1と、該支点となるブラケット64の先端部のピン65から上記駆動ロッド31の胴体26外方へ突出した他端側における翼本体32の取付位置までの距離d2との比(d2/d1)に応じて増幅させて各羽ばたき翼27a,27bへ伝達することができる。このために、線形アクチュエータ57の出力軸63の振動の振幅が小さくても、各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動の振幅を大きく設定することが容易になり、したがって、線形アクチュエータ57の小型化を図るのに有利なものとすることができる。
【0111】
図15及び図16(イ)(ロ)は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図11(イ)(ロ)乃至図13の実施の形態と同様の構成において、胴体26の左右位置に設けて左右の羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させるためのアクチュエータを、単なる線形アクチュエータ57を用いることに代えて、出力軸63に対して所要の弾性係数を有する弾性部材により復元力を与えながら該出力軸63を振動できるようにしてある共振型アクチュエータとして、たとえば、ムービングコイル形式の共振型の線形アクチュエータ69を用いるようにしたものである。
【0112】
すなわち、上記ムービングコイル形の共振型の線形アクチュエータ69は、図16(イ)(ロ)に示す如く、図12(イ)(ロ)に示した線形アクチュエータ57と同様の構成において、支持容器58の蓋部58aの前面の外縁部における周方向の複数個所(図では4個所)に、出力軸63と平行に延びるようにばね用の支柱70をそれぞれ設け、該各ばね用支柱70の先端部と、蓋部58aの開口部59を通して外部へ突出させてある上記出力軸63の中間部との間に、放射方向に配置した所要の弾性係数を有する弾性部材としての所要のばね定数を有するばね71を介在させて、各ばね71を上記出力軸63とばね用支柱70にそれぞれ連結した構成としてある。これにより、上記共振型の線形アクチュエータ69におけるコイル61に所要周波数の交流電力を給電して図12(イ)(ロ)に示した線形アクチュエータ57と同様に、出力軸63を、コイル61と磁気回路60のギャップ60a内における磁界との相互作用により軸心方向に振動(往復運動)させるときに、該出力軸63が軸心方向に変位して位置固定の各ばね用支柱70の先端部に対して相対変位すると、上記出力軸63とばね用支柱70との間の各ばね71が初期状態より伸長させられて、この伸長させられた各ばね71の弾性力により、上記振動する出力軸63に対して初期状態へ戻すような所要の復元力を与えることができるようにしてある。なお、上記において、各ばね71は、たとえば、コイルばね等のように、伸縮変形を利用して出力軸63の軸心方向の変位に対して復元力を与えるものとして説明したが、板ばねのような曲げ変形を利用する形式のばねとして、出力軸63が軸心方向に変位することに伴って曲げ変形されるときに生じる反発力(弾性力)により、上記出力軸63に対して復元力を与えることができるようにしてもよい。
【0113】
したがって、上記共振型の線形アクチュエータ69の出力軸63の振動により該出力軸63に連結してある羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させるべく、該共振型の線形アクチュエータ69にて振動(往復移動)する出力軸63、取付部材62及びコイル61とからなる可動部と、羽ばたき作動する各羽ばたき翼27a,27bと、該各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気による慣性力、及び、上記ばね71より上記各共振型の線形アクチュエータ69の出力軸63に対して与えられる復元力によって形成される振動系(以下、図9乃至図10(イ)(ロ)の実施の形態と同様に、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系と云う)に対して、各共振型の線形アクチュエータ69より変動外力を加えるときに、該変動外力の周波数、具体的には、各共振型の線形アクチュエータ69の出力軸63を振動させる周波数が、上記羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しくなるようにする。これにより、上記各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動に伴って生じる上記の如き慣性力をキャンセルすることができ、各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させる各共振型の線形アクチュエータ69の負荷を軽減させることができるようにしてある。
【0114】
上記構成としてある共振型の線形アクチュエータ69は、図11(イ)(ロ)乃至図13に示した実施の形態における線形アクチュエータ57と同様に、胴体26の左右両側部位置の図示しない固定部に、出力軸63が上向きとなるように設置すると共に、該各共振型の線形アクチュエータ69の出力軸63に、該出力軸63とは直角な平面内に配置した翼本体32と、駆動ロッド31と、連結ロッド33とからなる羽ばたき翼27a,27bの上記駆動ロッド31の一端部(胴体26側の端部)を、直角の状態で連結して固定するようにする。
【0115】
したがって、上記共振型の線形アクチュエータ69の出力軸63を上記羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい周波数にて所要の振幅で振動させることにより、該出力軸63に駆動ロッド31を連結してある各羽ばたき翼27a,27bが、翼本体32の面に垂直な方向へ振動させられて羽ばたき作動されるようになり、この際、上記各共振型の線形アクチュエータ69の出力軸63を、上記所定の周波数で振動させるときの振幅を個別に制御することにより、それぞれ対応する羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動の振幅を独立に制御して、該各羽ばたき翼27a,27bにて発生させる推力Ta,Tbの大きさを個別に制御できるようにしてある。
【0116】
なお、本実施の形態では、上記したように各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を、それぞれ共振型の線形アクチュエータ69にて行わせるようにしてあることに伴い、飛行制御機能、姿勢制御機能、障害物回避機能を備えて該各制御機能に基づいて各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動をそれぞれ独立して制御するためのコントローラ46a(図13参照)としては、各羽ばたき翼27a,27bの共振型の線形アクチュエータ69へそれぞれ指令を与える際、該各共振型の線形アクチュエータ69の出力軸63を振動させる周波数を、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数と等しい周波数に保ちながら、上記各共振型の線形アクチュエータ69の出力軸63を振動させるときの振幅を増減させることができる機能を有するものとしてある。これにより、上記周波数にて羽ばたき作動させる各羽ばたき翼27a,27bの振幅を制御することで、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用させる推力Ta,Tbの大きさを個別に制御できるようにしてある。その他の構成は図11(イ)(ロ)乃至図13に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0117】
本実施の形態によれば、図11(イ)(ロ)乃至13に示した実施の形態と同様の効果を得ることができ、更に、上記各共振型の線形アクチュエータ69を、出力軸63に対してばね71の弾性力に基づいた復元力を作用させることができるようにした構成としてあるため、上記各共振型の線形アクチュエータ69の出力軸63を、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所要の周波数で振動させて、上記各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させることにより、該各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルできることから、各共振型の線形アクチュエータ69の負荷を軽減させることができる。したがって、各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動で発生する慣性力の変動を緩和できることから、本実施の形態の小型飛行装置にて所要の使用目的を達成できるようにするために、使用目的に対応させたペイロード51を十分に搭載できるようにすると共に、長距離を長時間飛行できるようにすることが求められ、そのため、各羽ばたき翼27a,27bを、高い周波数(数10Hz〜数100Hz)で羽ばたき作動させることが要求される場合であっても、各羽ばたき翼27a,27bを上記要求を満たすように高い周波数で羽ばたき作動させることができる。
【0118】
図17(イ)(ロ)はいずれも図15及び図16(イ)(ロ)に示す実施の形態の応用例を示すもので、図17(イ)に示すものは、図16(イ)(ロ)に示したように、出力軸63と支持容器58の蓋部58aの前面に設けたばね用支柱70との間にばね71を介在させてなる共振型の線形アクチュエータ69の上記出力軸63の先端部に、各羽ばたき翼27a,27bの駆動ロッド31の一端部(胴体26側の端部)を直接固定するようにした構成に代えて、上記と同様に、出力軸63と支持容器58の蓋部58aの前面に設けたばね用支柱70との間にばね71を介在させてなる共振型の線形アクチュエータ69に、図14(イ)に示したと同様に、支持容器58の蓋部58aの前面にて出力軸63より胴体26外側寄りとなる左右方向の一側位置にブラケット64を設けて、該ブラケット64の先端部に、各羽ばたき翼27a,27bの駆動ロッド31の基端側となる一端寄りの所要個所を、ピン65により揺動可能に支持させると共に、上記駆動ロッド31の基端部に設けた長孔66を、出力軸63の先端部に取り付けた連結部材67に添わせて動力伝達用ピン68にて係合させてなる構成として、各共振型の線形アクチュエータ69により出力軸63を振動させるときに、上記ばね71の弾性力による復元力を作用させながら、上記ブラケット64の先端部を支点として上記駆動ロッド31を揺動させて各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させることができるようにしたものである。
【0119】
又、図17(ロ)に示すものは、上記と同様に、出力軸63と支持容器58の蓋部58aの前面に設けたばね用支柱70との間にばね71を介在させてなる共振型の線形アクチュエータ69に、図14(ロ)に示したと同様に、支持容器58の蓋部58aの前面にて出力軸63より胴体26中央寄りとなる左右方向の他側位置にブラケット64を設けて、該ブラケット64の先端部に、各羽ばたき翼27a,27bの駆動ロッド31の基端部を、ピン65により揺動可能に支持させると共に、上記駆動ロッド31の基端側となる一端寄りの所要個所に設けた長孔66を、出力軸63の先端部に取り付けた連結部材67に添わせて動力伝達用ピン68にて係合させてなる構成として、各共振型の線形アクチュエータ69にて出力軸63を振動させるときに、上記ばね71の弾性力による復元力を作用させながら、上記ブラケット64の先端部を支点として上記駆動ロッド31を揺動させて各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させることができるようにしたものである。
【0120】
上記図17(イ)(ロ)に示した実施の形態によれば、いずれも、羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときに、上記各共振型の線形アクチュエータ69の出力軸63を振動させるときには、該出力軸63に対してばね71の弾性力に基づいた復元力を作用させることができることから、図15及び図16(イ)(ロ)に示した実施の形態と同様の効果を得ることができ、更に、図14(イ)(ロ)に示した実施の形態と同様に、出力軸63の振動を、増幅させて各羽ばたき翼27a,27bへ伝達できるため、共振型の線形アクチュエータ69における出力軸63の振動の振幅が小さくても、各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動の振幅を大きく設定することが容易になり、共振型の線形アクチュエータ69の小型化を図るのに有利なものとすることができる。
【0121】
次に、図18(イ)(ロ)乃至図20は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)乃至図5の実施の形態と同様に、胴体26の左右両側位置に羽ばたき翼27a,27bを備え、且つ胴体26の所要位置に、機体重心Gの位置を前後方向と左右方向へ変位させることができるようにするための重心移動装置28を備えてなる構成において、上記胴体26の左右両側位置に設ける羽ばたき翼27a,27bを、該胴体26に対する取り付け角度が固定されて、迎角が胴体26の前後方向角度姿勢と一緒に変更されるようにしてある構成に代えて、胴体26の左右両側位置に、羽ばたき速度を独立して制御できるようにしてある羽ばたき翼27a,27bを、上下方向に角度変更可能にそれぞれ設け、該各羽ばたき翼27a,27bの角度及び羽ばたき速度をそれぞれ適宜制御することにより、該各羽ばたき翼27a,27bごとに発生させる推力Ta,Tb(図4参照)の方向及び大きさを独立して制御して、胴体26の左右位置へ上記各羽ばたき翼27a,27bより作用させる揚力La,Lbと推進力Fa,Fbの大きさをそれぞれ独立に制御できるようにしたものである。
【0122】
すなわち、上記胴体26の左右両側位置に、図18(イ)(ロ)に示す如く、翼駆動用モータ30を出力軸30aが前向きとなるようにそれぞれ配置する。上記各翼駆動用モータ30のケース外側面には、出力軸30aとは直交する方向で相対する方向に回転支持軸72を取り付け、該翼駆動用モータ30の両側へ延びる回転支持軸72を、胴体26の前後方向の中間部付近における左右両側位置の図示しない固定部にそれぞれ設けてある左右一対の軸受73a,73bに回転自在に支持させるようにして、図18(イ)(ロ)に示す如く胴体26上に設置させる。更に、一方(片側)の回転支持軸72、たとえば、各翼駆動用モータ30の胴体26の中心側に位置する各々の回転支持軸72に、角度変更用ギア74をそれぞれ取り付け、且つ該各ギア74に噛合させた各ピニオン75を、各々独立させた角度制御用モータ76の出力軸76aに取り付け、各角度制御用モータ76によりピニオン75を独立して回転させることにより、上記角度変更用ギア74、回転支持軸72を介して翼駆動用モータ30を、それぞれ独立して前後方向に沿う垂直面内で上下方向に回転(角度変更)できるようにしてある。これにより、上記各角度制御用モータ76の回転数を適宜制御することで、それぞれ対応する翼駆動用モータ30と一緒に該翼駆動用モータ30に取り付ける羽ばたき翼27a,27bの迎角をそれぞれ上下方向に独立に変更できるようにしてある。なお、上記翼駆動用モータ30及び角度制御用モータ76は、電磁モータ又は超音波モータのいずれの形式であってもよい。
【0123】
上記各翼駆動用モータ30の出力軸30aには、図1(イ)(ロ)乃至図5に示した実施の形態と同様に、駆動ロッド31と連結ロッド33と上記出力軸30aに平行な面内に配置してある翼本体32からなる羽ばたき翼27a,27bの上記駆動ロッド31の一端部(胴体26側端部)を、図18(ロ)に示す如く直角の状態で連結して固定してある。
これにより、上記各翼駆動用モータ30の正、逆転駆動する速度や角度範囲を個別に制御することにより、それぞれ対応する羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を制御して、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右両側位置にそれぞれ作用させる推力Ta,Tbの大きさを独立して制御できるようにしてある。更に、上記各角度制御用モータ76により各翼駆動用モータ30と一緒に上記各羽ばたき翼27a,27bの迎角を上下方向に変更することによって、上記各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右両側位置へそれぞれ作用させる上記推力Ta,Tbの向きをそれぞれ独立に変更できるようにしてある。
【0124】
上記重心移動装置28は、図1(イ)(ロ)乃至図5に示したものと同様に、胴体26の後部寄り位置に該胴体26の左右幅方向に延びるよう設けた左右方向重心移動アクチュエータ37と、胴体26の前後方向に沿わせた配置として、上記左右方向重心移動アクチュエータ37のスライダ39上に取り付けた前後方向重心移動アクチュエータ40と、該前後方向重心移動アクチュエータ40のスライダ42上に設けた所要重量の錘29とからなる構成としてある。
【0125】
かかる構成としてあることにより、本実施の形態の小型飛行装置では、上記各角度制御用モータ76により、各翼駆動用モータ30と一緒にそれぞれ対応する各羽ばたき翼27a,27bを上下方向へ回転させることで、該各羽ばたき翼27a,27bの胴体26の前後方向に対する角度姿勢を、胴体26の前方に向いた姿勢から、胴体26の上方へ向いた姿勢まで変更できるようになる。このように、各羽ばたき翼27a,27bを、各翼駆動用モータ30と一緒に上下方向へ回転させて、胴体26の前後方向に対する相対的な角度姿勢を変化させるときには、上記各角度制御用モータ76にて各羽ばたき翼27a,27b及び翼駆動用モータ30を上下方向へ回転させるための回転力の反力により、胴体26の前後方向角度姿勢を、上記羽ばたき翼27a,27bの回転方向とは逆方向へ回旋させるような力が誘導されるようになる。
【0126】
そのため、本実施の形態の小型飛行装置では、上記のように各角度制御用モータ76により各羽ばたき翼27a,27b及び翼駆動用モータ30を上下方向へ回転させるときに胴体26に対して誘導される上記回旋力を、重心移動装置28の前後方向重心移動アクチュエータ40により機体重心Gの位置を揚力作用点P(図2(イ)(ロ)参照)に対し前後方向へ変位させることで胴体26に対して発生させる回転モーメント(回旋力)により相殺して、胴体26の前後方向角度姿勢を常に水平に保持することができるようにしてある。すなわち、羽ばたき翼27a,27bを、翼駆動用モータ30と一緒に胴体26の前後方向に対して相対的に上方へ回転させる場合には、胴体26に対し、機首を下げる方向の回旋力が作用するようになる。よって、この場合は、上記前後方向重心移動アクチュエータ40にて、スライダ42と一緒に錘29を後方へ所要量移動させて、機体重心Gの位置を揚力作用点Pの下方位置よりも後側へ所要量変位させ、これにより、胴体26に対して機首を上げる方向の回転モーメントを発生させて、上記胴体26に作用する機首を下げる方向の回旋力を打ち消すようにしてある。一方、羽ばたき翼27a,27bを、翼駆動用モータ30と一緒に胴体26の前後方向に対して相対的に下方へ回転させる場合には、胴体26に対し、機首を上げる方向の回旋力が作用するようになるため、この場合には、前後方向重心移動アクチュエータ40にて、スライダ42と一緒に錘29を前方へ所要量移動させて、機体重心Gの位置を揚力作用点Pの下方位置よりも前側へ所要量変位させることにより、胴体26に対して機首を下げる方向の回転モーメントを発生させて、上記胴体26に作用する機首を上げる方向の回旋力を打ち消すようにしてある。なお、上記各角度制御用モータ76による羽ばたき翼27a,27bと翼駆動用モータ30の上下方向の角度変更作業が終了した後は、上記前後方向重心移動アクチュエータ40により、機体重心Gの位置を、胴体26の前後方向角度姿勢が水平姿勢となるときに、揚力作用点Pの下方となる位置へ戻すようにするようにして、胴体26の前後方向角度姿勢を水平姿勢に保持させるようにしてある。
【0127】
上記のように、本実施の形態の小型飛行装置においては、機体重心Gの位置は、胴体26の前後方向角度姿勢を水平状態とするときに、揚力作用点Pの下方となる位置より前後方向に所要量ずつ移動させることができるようにすればよいことに伴い、上記前後方向重心移動アクチュエータ40の作動により機体重心Gを前後方向に変位可能な領域、すなわち、重心移動領域r(図2(イ)(ロ)参照)は、機体重心Gの位置を、上記揚力作用点Pの下方位置を中心として前後方向にほぼ均等に所要量ずつ変位できるように設定すればよい。なお、上記角度制御用モータ76の駆動により翼駆動用モータ30と一緒に各羽ばたき翼27a,27bを上下方向に角度変更させることに伴って、胴体26における該各羽ばたき翼27a,27bより揚力La,Lbの作用する揚力作用点Pの位置が胴体26の前後方向に変位する場合は、上記重心移動装置28の前後方向重心移動アクチュエータ40を適宜作動させて、機体重心Gの位置を、上記揚力作用点Pの前後方向の変位に追従させて前後方向へ変位させて、機体重心Gを、常に揚力作用点Pの下方に位置させるようにする。
【0128】
したがって、上記本実施の形態における小型飛行装置では、胴体26の前後方向角度姿勢を水平状態に保持したまま、各角度制御用モータ76による対応する各翼駆動用モータ30の上下方向への回転に伴って、左右の各羽ばたき翼27a,27bの迎角を、それぞれ独立に制御すると共に、各翼駆動用モータ30の出力軸30aを交互に正、逆転駆動させるときの速度や角度範囲を制御して各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を制御することにより、上記各羽ばたき翼27a,27bごとに発生させる推力TaとTbの大きさ及び方向を独立に制御できることから、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右位置へそれぞれ作用させる揚力La,Lbと推進力Fa,Fbの大きさ及びバランスを独立に変更できるため、高度の飛行性能が実現されるようになる。
【0129】
すなわち、たとえば、胴体26の前後方向角度姿勢を水平状態に保持したまま角度制御用モータ76により翼駆動用モータ30を回動させて各羽ばたき翼27a,27bの迎角を、図19(ロ)に示す如く、それぞれ90度、すなわち、垂直方向上向きとなる姿勢とさせた状態にて、翼駆動用モータ30の駆動により出力軸30aを交互に正、逆転駆動させることにより羽ばたき作動させると、双方の羽ばたき翼27a,27bにて発生させる全体推力Tは垂直方向上向きとなって、全体揚力Lのみが発生され、水平分力である全体推進力Fは生じない。よって、気流のない領域にて、上記各翼駆動用モータ30によるそれぞれの羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を調整して、該各羽ばたき翼27a,27bにて発生させる全体推力Tに等しい全体揚力Lが、本実施の形態における小型飛行装置の機体重量Wを上回るようにすれば、該小型飛行装置は、水平方向に移動されることなく垂直上昇するようになる。一方、上記全体揚力Lが機体重量Wを下回るようにすると、本実施の形態の小型飛行装置は垂直に降下させられるようになる。更に、上記全体揚力Lが機体重量Wと釣り合うようにすれば、本発明の小型飛行装置は空中停止飛行(ホバリング)を行うことができるようになる。
【0130】
又、たとえば、上記角度制御用モータ76により翼駆動用モータ30を回転させて羽ばたき翼27a,27bの角度を変更すると、該各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動により発生する全体推力Tの方向が垂直方向上向きより傾くことから、該全体推力Tの水平分力として全体推進力Fが発生するようになる。したがって、図19(イ)に示す如く、胴体26の前後方向角度姿勢を水平に保持したまま、左右の羽ばたき翼27a,27bを、いずれも所要迎角で前方やや上向きとなるような姿勢とさせた状態にて、各翼駆動用モータ30の駆動により羽ばたき作動させると、該各羽ばたき翼27a,27bの発生する全体推力Tが前方やや上向きに作用するようになる。このため、上記全体推力Tの水平分力として全体推進力Fが得られるようになるため、この全体推進力Fに応じて本発明の小型飛行装置は前進する。この際、上記全体推力Tの垂直分力と、上記小型飛行装置が前進飛行するときに上記所要迎角に設定されている各羽ばたき翼27a,27bにて発生される通常揚力又は非羽ばたき揚力の和として左右の各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用される全体揚力Lが、本発明の小型飛行装置の機体重量Wと釣り合うように適宜調整することにより、本実施の形態の小型飛行装置は、静かな気流中では、一定高度を保持したまま、上記全体推進力Fの大きさに応じて前方へ飛行できるようになる。
【0131】
なお、上記のように上記各羽ばたき翼27a,27bを、各翼駆動用モータ30の交互正、逆転駆動により羽ばたき作動させて本発明の小型飛行装置へ水平方向の推進力を与える際、上記各羽ばたき翼27a,27bの打下げ時の速度が打上げ時の速度よりも大となるように上記各翼駆動用モータ30の駆動を制御し、これにより、該各羽ばたき翼27a,27bで発生させる全体推力Tの向きを、羽ばたき翼27a,27bに設定されている迎角よりも上方へ偏らせるようにして、この上方へ偏った全体推力Tにより機体重量Wを支えるための揚力を得るようにしてもよい。このようにすれば、本発明の小型飛行装置を水平方向前方に飛行させる際、上記各羽ばたき翼27a,27bの迎角をゼロ、すなわち、水平方向前方に向けた姿勢とすることが可能になる。
【0132】
更に、上記のように本発明の小型飛行装置を一定高度を保持した状態で前方へ飛行させる際、図1(イ)(ロ)乃至図5の実施の形態の小型飛行装置を図4(イ)(ロ)に示したように左右方向への旋回飛行させる場合と同様に、上記胴体26左側の羽ばたき翼27aの羽ばたき作動と、胴体26右側の羽ばたき翼27bの羽ばたき作動に差が生じるよう調整することにより、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左側と右側に作用する推力TaとTbの大きさに差が生じるようにして、上記推力Taの水平分力として胴体26の左側に作用する推進力Faと、上記推力Tbの水平分力として胴体26の右側に作用する推進力Fbに差が生じるようにし、同時に、上記のように推力TaとTbとに差を生じさせることに応じて、胴体26の左右位置に対し、各羽ばたき翼27aと27bより揚力LaとLbをそれぞれ異なる大きさで作用することに対応させて、重心移動装置28の左右方向重心移動アクチュエータ37により、錘29と前後方向重心移動アクチュエータ40を、より大きな揚力La又はLbが作用する胴体26の左右の一側方向へ一緒に所要量移動させ、機体重心Wの位置を、胴体26の左右幅方向の中央部より上記一側寄りに変位させて、上記小型飛行装置の左右の重心バランスを、より大きな揚力La又はLbが作用している胴体26の左右いずれか一側の方が重くなるようにして、胴体26の左右方向を水平状態に保持させるように調整すると、本実施の形態における小型飛行装置を、胴体26の左右方向を水平に保持したまま左右方向へ旋回飛行させたり、あるいは、飛行している小型飛行装置を左右方向へ旋回させようとする乱れた気流中では、小型飛行装置の進行方向を保持して該小型飛行装置が所定の飛行コースから左右方向へ外れるのを防止しながら飛行させることができるようになる。
【0133】
なお、上記のように左右方向への旋回飛行を行わせたり、乱れた気流中にて飛行コースから外れるの防止するために、左右の各羽ばたき翼27a,27bにてそれぞれ発生させる推力Ta,Tbの大きさを相違させるようにする際、該各羽ばたき翼27aと27bより胴体26の左右位置へそれぞれ作用させる揚力LaとLbの和、すなわち、全体揚力Lが、機体重量Wと釣合うようにしておけば、本実施の形態の小型飛行装置の飛行高度は変化しない。又、上記において、左右の羽ばたき翼27a,27bにて発生させる全体揚力Lが機体重量Wを上回るようにすれば、左右方向へ旋回させながら飛行高度を上昇させることができ、一方、全体揚力Lが機体重量Wよりも小さくなるようにすれば、左右方向へ旋回させながら飛行高度を低下させることが可能となる。
【0134】
更に、図19(ロ)に示したように、本実施の形態の小型飛行装置にホバリング、垂直上昇あるいは垂直降下を行わせている状態において、左右のいずれか一側の羽ばたき翼27a又は27bの姿勢を、やや前方に傾斜させ、且つ他側の羽ばたき翼27b又は27aの姿勢を、やや後方に傾斜させるようにすれば、胴体26の左側と右側に、互いに前後方向に逆向きの推進力を作用させることができるようになるため、本発明の小型飛行装置をその場で左右方向に回頭させることも可能になる。更に、左右両側の各羽ばたき翼27a,27bを、すべてやや後方に傾斜した姿勢とすれば、後進飛行させることも可能になる。
【0135】
したがって、本実施の形態の小型飛行装置においては、左右の翼駆動用モータ30による各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動の独立した制御、各角度制御用モータ76による翼駆動用モータ30の上下方向の回転による各羽ばたき翼27a,27bの迎角の独立した制御、重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40と37による機体重心G位置の変位による胴体26の前後方向と左右方向の角度姿勢の制御とを組み合わせることにより、上記本実施の形態の小型飛行装置を、垂直上昇、垂直下降、ホバリング、ホバリングしながらのその場回頭、前進飛行、後進飛行、左右方向への旋回、飛行高度の変更を自在とすることができて、高度な飛行性能を達成できる。
【0136】
更に又、本実施の形態では、図1(イ)(ロ)乃至図5に示した実施の形態における図5に示したコントローラ46と同様に、飛行制御機能、姿勢制御機能、障害物回避機能を備えて該各制御機能に基づいて各羽ばたき翼27a,27bにて発生させる揚力と推進力をそれぞれ独立して制御するためのコントローラ46bを設けるようにしてある。なお、上記したように本実施の形態では、各羽ばたき翼27a,27bの迎角の変更を、胴体26の前後方向角度姿勢を水平に保持したまま、各角度制御用モータ76の作動により行わせるようにしてあることに伴い、上記コントローラ46bは、図5に示した如く、各羽ばたき翼27a,27bの翼駆動用モータ30と、重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へそれぞれ指令を与えるようにしてあるコントローラ46の機能に代えて、図20に示す如く、各羽ばたき翼27a,27bの翼駆動用モータ30と、各羽ばたき翼27a,27bごとに対応する角度制御用モータ76と、前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へそれぞれ指令を与えて、翼駆動用モータ30による各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき速度の独立した制御と、角度制御用モータ76による各羽ばたき翼27a,27bの迎角の独立した制御と、前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40と37による機体重心Gの前後方向及び左右方向への変位を介して胴体26の前後方向角度姿勢及び左右方向の角度姿勢を水平に保持させるための指令を与える機能を有するようにしてある。
【0137】
具体的には、上記コントローラ46bの飛行制御機能としては、図5に示したコントローラ46と同様に、GPSや、磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ等の位置センサ43より入力される信号に基づいて本発明の小型飛行装置自体の位置(たとえば、三次元座標)を検出することができるようにしてある。又、外部の制御装置より無線受信器47、指令設定器48を介して飛行指令、たとえば、目標位置がGPS座標等により設定されると、上記検出された自己の初期位置(離陸位置)から目標位置に至るための方向、距離等を求めて、飛行コースを、たとえば、先ず、所要高さ位置まで垂直に上昇した後、目標位置に向けて所要方位へ前進飛行するというような飛行コースを自動的に判断して設定できるようにしてある。更に、該設定された飛行コースに沿って飛行するために要求される飛行速度の変化、飛行高度の変化、左右方向への旋回等を行わせるために、上記角度制御用モータ76に指令を与えて、各羽ばたき翼27a,27bの迎角の制御を行うと共に、各翼駆動用モータ30へ指令を与えて、各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を制御して、該各羽ばたき翼27a,27bにて発生させる推力Ta,Tbの方向及び大きさをそれぞれ独立して制御できるようにしてあり、これにより、該各推力Ta,Tbの水平分力として得られる左右の羽ばたき翼27aと27bより胴体26の左右位置へそれぞれ作用させる推進力Fa,Fbと、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右位置へそれぞれ作用させる揚力La,Lbとをそれぞれ独立して制御できるようにしてある。更に又、重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37にそれぞれ独立に指令を与えて、機体重心Gの位置を前後左右方向へ適宜変位させることにより、上記のように羽ばたき翼27a,27bの迎角を変えたり、左右の羽ばたき翼27a,27bで発生させる推力TaとTbの大きさ及び方向を変化させることに伴って、胴体26の前後方向角度姿勢及び左右方向の角度姿勢が変化することを防止して胴体26を水平に保持できるようにしてある。これにより、本実施の形態の小型飛行装置は、胴体26を常に水平状態に保持したまま上記設定された飛行コースに沿って上記目標位置まで飛行することができるようにしてある。
【0138】
又、飛行制御機能として、図5に示したコントローラ46と同様に、小型飛行装置を上記のように所定の飛行コースに沿って飛行させる際に、環境に存在する乱流により飛行コースが乱されても、随時修正しながら本発明の小型飛行装置を目標位置まで飛行させることができる機能、及び、目標位置における所定の目的が達成された後に、本発明の小型飛行装置を初期位置(離陸位置)あるいは予め設定された所定の位置まで戻るように帰還用の飛行コースを設定すると共に、該帰還用飛行コースに沿って上記したと同様の制御を行うことで飛行させることもできるようにしてあるものとする。
【0139】
上記コントローラ46bは、姿勢制御機能として、搭載してある姿勢センサ44より入力される信号に基づいて、飛行しているときの胴体26の前後方向及び左右方向の角度姿勢を常時監視し、外乱等の影響により胴体26が前後方向に傾いたことが検出される場合には、重心移動装置28の前後方向重心移動アクチュエータ40へ適宜指令を与えて、錘29の位置を、胴体26が傾いている前後いずれかの方向とは逆の方向へ所要量移動させることにより、機体重心G位置を、胴体26が傾いている前後方向とは逆の方向へ変位させて、胴体26の前後方向角度姿勢を水平に修正することができるようにしてある。又、外乱等の影響により胴体26の左右方向が、水平状態より傾いた場合には、左右方向重心移動アクチュエータ37へ適宜指令を与えて、錘29と前後方向重心移動アクチュエータ40の位置を、胴体26が傾いている左右いずれかの方向とは逆の方向へ所要量移動させることにより、機体重心Gの位置を、そのとき行っている前進飛行あるいは左右方向への旋回飛行のときに設定されているべき位置より、左右の傾斜した方向とは逆の方向へ変位させ、左右の重量バランスを変化させることで、胴体26の左右方向への傾きを水平状態に修正して、飛行中は、該胴体26の左右方向を常に水平状態に保持することができるようにしてある。
【0140】
上記コントローラ46bは、更に別の機能として、図5に示したコントローラ46の障害物回避機能と同様に、衝突防止センサ45より入力される信号に基づいてコントローラ46bが進行方向前方を常に監視し、飛行コースの前方に障害物の存在が検出されると、各羽ばたき翼27a,27bの翼駆動用モータ30、角度制御用モータ76、重心移動装置28の前後方向重心及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へ適宜指令を与えることにより、飛行方向を上下左右方向へ適宜変更して上記障害物を迂回させた後、コントローラ46bの有する上記飛行制御機能に基づいて、目標位置に至る飛行コースあるいは帰還用飛行コースに戻るようにして、飛行コース上に存在する障害物を自動的に回避することができるようにしてある障害物回避機能も備えているものとする。
【0141】
本実施の形態の小型飛行装置は、胴体26を水平状態に保持したまま垂直上昇、垂直下降を行なうことができて、垂直離着陸を行なうことができるため、該小型飛行装置の離着陸時に接地させるための脚52は、図18(イ)に示す如く、胴体26の下面側に設けるようにしてある。その他、図1(イ)(ロ)乃至図5に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0142】
本実施の形態によれば、上記角度制御用モータ76の回転を制御して翼駆動用モータ30と一緒に各羽ばたき翼27a,27bを上下方向に回転させて、胴体26の左右両側位置の各羽ばたき翼27a,27bの迎角を、図19(ロ)に示すように、それぞれ垂直方向上向きとさせたり、図19(イ)に示すように、前方やや上向きの姿勢とさせた状態で、該各羽ばたき翼27a,27bの迎角の方向に向けて推力Ta,Tbを発生させることができる。
【0143】
したがって、図1(イ)(ロ)乃至図5に示した実施の形態におけるコントローラ46による飛行制御機能、姿勢制御機能、障害物回避機能に基づいた各羽ばたき翼27a,27bにて発生させる推力Ta,Tb、各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用させる揚力La,Lb、及び、上記推力Ta,Tbの水平分力として各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用させる推進力Fa,Fbの制御と同様に、コントローラ46bの有する姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能に基づいて、翼駆動用モータ30と角度制御用モータ76と重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へ制御指令を与えて、左右の各羽ばたき翼27a,27bの迎角、及び、羽ばたき作動をそれぞれ独立に制御して、該各羽ばたき翼27a,27bにて発生させる推力Ta,Tb、各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用させる揚力La,Lb、及び、各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用させる推進力Fa,Fbをそれぞれ自在に制御することができることから、図1(イ)(ロ)乃至図5の実施の形態と同様の効果を得ることができる。更に、本実施の形態の小型飛行装置は、飛行中に胴体26の前後方向及び左右方向を常に水平状態に保持することができるようになるため、たとえば、ペイロード51として固定式のCCDセンサ51aを搭載して、目標位置の撮影を行う場合等に、より有利なものとすることができる。
【0144】
図21(イ)(ロ)乃至図23は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図18(イ)(ロ)乃至図20の実施の形態と同様の構成において、胴体26の左右両側位置の各羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させるためのアクチュエータとして、角度制御用モータ76の駆動により胴体26に対して上下方向に角度変更できるようにしてある翼駆動用モータ30を用いることに代えて、角度制御用モータ76の駆動により胴体26に対して上下方向に角度変更可能に設けた線形アクチュエータとしてのボイスコイル形の線形アクチュエータ57を用いるようにしたものである。
【0145】
すなわち、図11(イ)(ロ)乃至図13に示した実施の形態における図12(イ)(ロ)に示した線形アクチュエータ57と同様の構成としてある線形アクチュエータ57を、胴体26の左右両側位置に、図21(イ)(ロ)に示す如く、出力軸63が上向きとなるようにそれぞれ配置する。該各線形アクチュエータ57の支持容器58の外側面には、出力軸63の往復動方向とは直交する方向で且つ相対する方向に回転支持軸72を取り付けて、該支持容器58の両側へ延びる回転支持軸72を、胴体26の前後方向の中間部付近における左右両側位置にそれぞれ設けてある左右一対の軸受73a,73bに回転自在に支持させるようにして、図21(イ)(ロ)に示す如く胴体26上に設置させる。更に一方(片側)の回転支持軸72、たとえば、各線形アクチュエータ57の胴体26の中心側に位置する各々の回転支持軸72に、角度変更用ギア74をそれぞれ取り付け、且つ該各角度変更用ギア74に噛合させた各ピニオン75を、各々独立させた角度制御用モータ76の出力軸76aに取り付け、各角度制御用モータ76によりピニオン75を独立して回転させることにより、上記角度変更用ギア74、回転支持軸72を介して線形アクチュエータ57を、それぞれ独立して前後方向に沿う垂直面内で上下方向に回転(角度変更)できるようにしてある。これにより、上記各角度制御用モータ76の回転数を適宜制御することで、それぞれ対応する線形アクチュエータ57の角度変更に伴って、該線形アクチュエータ57に取り付ける羽ばたき翼27a,27bの迎角をそれぞれ上下方向に独立に変更できるようにしてある。
【0146】
更に、上記線形アクチュエータ57の出力軸63には、図11(イ)(ロ)乃至図13に示した実施の形態における各線形アクチュエータ57の出力軸63に連結した場合と同様に、該出力軸63とは直角な面内に配置した翼本体32を備えてなる羽ばたき翼27a,27bの駆動ロッド31の一端部(胴体26側端部)を直角の状態で連結して固定する。なお、本実施の形態の各図では、線形アクチュエータ57の出力軸63を垂直方向上向きとするときに、翼本体32は翼前縁が水平方向前向き、すなわち、迎角がゼロの姿勢となり、線形アクチュエータ57の出力軸63を水平方向後向きとするときに、翼本体32は翼前縁が垂直方向上向き、すなわち、迎角が90度の姿勢となるように設定してある。
【0147】
かかる構成としてあることから、上記各線形アクチュエータ57の出力軸63を軸心方向に所要の振幅で振動させることにより、該出力軸63に連結してある駆動ロッド31と連結ロッド33と翼本体32とからなる各羽ばたき翼27a,27bが、上記翼本体32の面に垂直な方向へ振動させられて羽ばたき作動させられるようになり、この際、上記各線形アクチュエータ57の出力軸63の振動する速度や振幅を個別に制御することにより、それぞれ対応する羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動が独立して制御されて、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右両側位置にそれぞれ作用させる推力Ta,Tb(図4参照)の大きさを独立して制御できるようにしてある。更に、上記各角度制御用モータ76により各線形アクチュエータ57と一緒に上記各羽ばたき翼27a,27bの迎角を上下方向に変更することによって、上記各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右両側位置へそれぞれ作用させる上記推力Ta,Tbの向きをそれぞれ独立に変更できるようにしてある。
【0148】
更に又、本実施の形態では、上記したように各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動を、それぞれ線形アクチュエータ57にて行わせるようにしてあることに伴い、姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能を備えて該各制御機能に基づいて各羽ばたき翼27a,27bごとに発生させる推力Ta,Tbの方向と大きさ、すなわち、発生させる揚力La,Lbと推進力Fa,Fb(図4参照)のそれぞれの大きさを独立して制御すると共に、重心位置の制御に伴う姿勢制御を行うためのコントローラとしては、図20に示した各羽ばたき翼27a,27bの翼駆動用モータ30と角度制御用モータ76、及び、重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へそれぞれ指令を与えるコントローラ46bに代えて、図23に示す如く、各羽ばたき翼27a,27bの線形アクチュエータ57と角度制御用モータ76へそれぞれ指令を与えて、該各羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動と迎角をそれぞれ制御すると共に、重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へ指令を与えて、胴体26の前後方向及び左右方向を常に水平姿勢に制御する機能を有するコントローラ46cを設けるようにしてある。
【0149】
その他の構成は図18(イ)(ロ)乃至図20に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0150】
本実施の形態によれば、上記角度制御用モータ76の回転を制御して線形アクチュエータ57と一緒に各羽ばたき翼27a,27bを上下方向に回転させて、該各羽ばたき翼27a,27bの迎角を、図22(ロ)に示すように、90度として該各羽ばたき翼27a,27bをそれぞれ垂直方向上向きの姿勢とさせて、各線形アクチュエータ57により羽ばたき作動させることにより、発生させる推力Ta,Tbのすべてが揚力La,Lbとして作用するようにして、垂直上昇、垂直下降、ホバリングを行なわせるようにしたり、又、図22(イ)に示すように、各羽ばたきよく27a,27bを、進行方向前方やや上向きの迎角とさせた状態で羽ばたき作動させることにより、推力Ta,Tbの和である全体推力Tを前方やや上向きに発生させて、該全体推力Tの水平成分として得られる大きな全体推進力Fが、左右の羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用するようにすると共に、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26へ作用させる全体揚力Lが機体重量Wと釣合うようにさせることにより、一定の飛行高度で前進飛行させることが可能となる。
【0151】
したがって、図18(イ)(ロ)乃至図20に示した実施の形態におけるコントローラ46bによるそれぞれ対応する角度制御用モータ76と翼駆動用モータ30の制御を介して行う各羽ばたき翼27a,27bごとに独立した迎角及び羽ばたき作動の制御、及び、重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37の制御を介した胴体26の前後方向角度姿勢及び左右方向の角度姿勢の制御と同様に、コントローラ46cの有する飛行制御機能、姿勢制御機能、障害物回避機能に基づいて、角度制御用モータ76と線形アクチュエータ57へ制御指令を与えることにより、各羽ばたき翼27a,27bの迎角、及び、羽ばたき作動をそれぞれ独立に制御すると共に、重心移動装置28の前後方向及び左右方向の各重心移動アクチュエータ40及び37へ制御指令を与えて、胴体26の前後方向角度姿勢及び左右方向の角度姿勢を常に水平姿勢に保つよう制御させることで、図18(イ)(ロ)乃至図20の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0152】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、以下に述べるようにしたものも含むものである。たとえば、本発明の小型飛行装置のサイズは、適宜増減してもよい。胴体1は、たとえば、流線形のような本発明の小型飛行装置の飛行時に抵抗とならないような形状としてあれば、形状は自在に決定してよい。
【0153】
重心移動装置28は、左右方向重心移動アクチュエータ37のスライダ39の上側に、前後方向重心移動アクチュエータ40を取り付け、該前後方向重心移動アクチュエータ40のスライダ42上に錘29を取り付けてなる構成として示したが、前後方向重心移動アクチュエータ40のスライダ42上に、左右方向重心移動アクチュエータ37を取り付け、該左右方向重心移動アクチュエータ37のスライダ39上に錘29を取り付けた構成としてもよい。更に、錘29を前後左右方向へ移動させて、機体重心Gの位置を上記各実施の形態で述べたように胴体26の前後方向及び左右方向へ変位させることができれば、上記錘29を前後左右方向へ移動させるための機構は、いかなる構成のものを採用してもよい。
【0154】
各羽ばたき翼27a,27bにおける駆動ロッド31と翼本体32を繋ぐ連結ロッド33の本数は、3本として示してあるが、適宜増減してもよい。翼本体32は、軽量で且つ羽ばたき作動により本発明の小型飛行装置を飛行させるために必要とされる所要の揚力及び推進力を得られるような面積、及び、羽ばたき作動時にフェザリングを生じさせるための柔軟性を備えた平面状のものとしてあれば、横骨部材34の本数を増やしたり、縦骨部材35の本数を増減させてもよい。更には、一枚板状のものとする等、横骨部材34と縦骨部材35とフィルム36とからなる構成以外のものとしてもよい。又、形状は低アスペクト比の矩形状とすることが好ましいが、低アスペクト比でなくてもよく、その形状を矩形状以外のものに変更してもよい。翼本体32と連結ロッド33は共に柔軟性を備えていることが望ましいが、いずれか一方の柔軟性のみで翼本体32にフェザリングを生じさせることができれば、他方は柔軟性を備えていなくてもよい。翼本体32の前縁部を、連結ロッド33を介在させることなく駆動ロッド31に直接取り付けるようにしてもよい。
【0155】
図9及び図10(イ)(ロ)の実施の形態における共振型の翼駆動用モータ53において、羽ばたき翼27a,27bを羽ばたき作動させるべく出力軸53aの正、逆転駆動を行うときに、該出力軸53aの回転に伴って変形され、この変形状態より初期形状へ戻ろうとする復元力を利用して上記出力軸53aに対して十分な復元力(復元トルク)を与えることができるようにすれば、出力軸53aに直角方向に取り付けるばね用アーム54の本数や、共振型の翼駆動用モータ53のケース前面に突設するばね用支柱55の本数を適宜増減して、1本のばね用アーム54の先端部に対し、複数のばね用支柱55の先端部に個別に一端側を取り付けてある複数のばね56の他端側を一緒に取り付けるようにしたり、1本のばね用支柱55の先端部に、複数のばね用アーム54の先端部に個別に一端側を取り付けてある複数のばね56の他端側を一緒に取り付ける等、ばね56の取付け方は適宜変更してよく、又、ばね56の本数を適宜増減させるようにしてもよい。更には、出力軸53aに内周側端部を取り付けた渦巻ばねの外周側端部を、共振側の翼駆動用モータ53のケース前面の所要個所に設けたばね用支柱に連結する等、ばねの形式は、任意のものを採用してもよい。更に、出力軸53aの所要の角度範囲における正、逆転駆動を許容でき、且つ該回転される出力軸53aに対して復元トルクを与えることができるような所要の弾性係数を備えていれば、ばね用アーム54の先端部とばね用支柱55の先端部との間に、たとえば、ゴム等のばね56以外の弾性部材を介在させて設ける等、いかなる弾性部材を採用するようにしてもよい。
【0156】
図15及び図16(イ)(ロ)の実施の形態、及び、図17(イ)(ロ)の実施の形態における共振型の線形アクチュエータ69において、出力軸63の振動時に該出力軸63に対して復元力を作用させるためのばね71は、周方向に4本設けるものとして示したが、数は適宜増減させてよい。又、上記ばね71は、出力軸63と、支持容器58の蓋部58aの前面に突設したばね用支柱70の先端部との間に介在させて設けるものとして説明したが、上記出力軸63の振動に伴って変形され、この変形状態からの復元力により振動する出力軸63に対して復元力を作用させることができるようにしてあれば、たとえば、図16(イ)に二点鎖線で示す如く、蓋部58aと磁気回路60との間に形成されている空間部における軸心方向中間位置とほぼ対応する支持容器58の内周面と、コイル61の蓋部58a側の外周部との間に、周方向の複数個所に半径方向に沿うよう(放射方向となるよう)に配置した所要のばね定数を有するばね71を介在させて、各ばね71を支持容器58とコイル61にそれぞれ接続した構成とする等、ばねの配置は自在に設定してよい。又、所要の弾性係数を備えていれば、ゴム等のばね71以外の弾性部材等、いかなる弾性部材を採用するようにしてもよい。
【0157】
図18(イ)(ロ)乃至図20の実施の形態においては、各羽ばたき翼27a,27bの迎角を変更させる場合、軸受73a,73bに回転支持軸72を介して回動自在に支持させてある翼駆動用モータ30を、又、図21(イ)(ロ)乃至図23の実施の形態においては、軸受73a,73bに回転支持軸72を介して回動自在に支持させてある線形アクチュエータ57を、それぞれ角度制御用モータ76によりピニオン75、角度変更用ギア74を介して上下方向に回転させるものとして示したが、本発明の小型飛行装置を飛行させるときに各羽ばたき翼27a,27bに所望される迎角を取らせることができるように所要の角度範囲で回転でき、且つ本発明の小型飛行装置の飛行に支障を来たさないサイズ、重量としてあれば、上記翼駆動用モータ30や線形アクチュエータ57を上下方向に回転させる機構は、ラック、ピニオン機構や、所要のアクチュエータによる直接あるいはリンクを介した押し引き機構、その他のいかなる機構を採用してもよい。
【0158】
図18(イ)(ロ)乃至図20の実施の形態、及び、図21(イ)(ロ)乃至図23の実施の形態においては、左右の羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動と迎角を独立に制御できて、該各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右位置へ作用させる揚力La,Lbと推進力Fa,Fbの大きさをそれぞれ独立して制御できるようにしてあることから、左右方向への旋回飛行時、あるいは、外乱等により胴体26に対して左右方向へ傾けようとする力が作用するときに、左右の各羽ばたき翼27a,27bの迎角及び羽ばたき作動を独立に制御して、それぞれ発生させる推力Ta,Tbの方向及び大きさを独立に変更して、変更後の推力Ta,Tbの水平分力である推進力Fa,Fbの大きさが、そのときの飛行状態を継続するために胴体26の左右位置へそれぞれ作用させるべき推進力Fa,Fbの大きさとなるように保持したまま、左右の各羽ばたき翼27a,27bより胴体26の左右位置へ作用させる揚力LaとLbの大きさを、上記胴体26が傾けられる側となる左右方向の一側に作用する揚力La又はLbの方が、他側に作用する揚力Lb又はLaよりも大きくなるように変化させて、該胴体26の水平姿勢を保持できるように制御すれば、重心移動装置28における左右方向重心移動アクチュエータ37を省略することも可能になる。
【0159】
図18(イ)(ロ)乃至図20の実施の形態においては、胴体26の左右位置に、角度制御用モータ76の駆動により上下方向に角度変更できるよう設けて左右の羽ばたき翼27a,27bをそれぞれ羽ばたき作動させるためのアクチュエータとしては、翼駆動用モータ30を用いるものとして説明したが、該翼駆動用モータ30に代えて、図10(イ)(ロ)に示した如き共振型の翼駆動用モータ53を用いるようにしてもよい。この場合は、図18乃至図20の実施の形態の効果に加えて、羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動時に、出力軸53aにばね56による復元トルクを作用させて、該羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動により生じる慣性力をキャンセルして、アクチュエータの負荷を軽減させる効果が期待できる。
【0160】
図21(イ)(ロ)乃至図23の実施の形態においては、胴体26の左右位置に、角度制御用モータ76の駆動により上下方向に角度変更できるよう設けて左右の羽ばたき翼27a,27bをそれぞれ羽ばたき作動させるためのアクチュエータとしては、図12(イ)(ロ)に示す如き線形アクチュエータ57を用いるものとして説明したが、該線形アクチュエータ57に代えて、図16(イ)(ロ)に示した如き線形アクチュエータ57を用いるようにしてもよい。又、図12(イ)(ロ)に示した如き共振型の線形アクチュエータ53や、図14(イ)及び(ロ)にそれぞれ示す如き共振型の線形アクチュエータ53を用いるようにしてもよい。この場合は、図21(イ)(ロ)乃至図23の実施の形態の効果に加えて、羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動時に、出力軸63にばね71による復元トルクを作用させて、該羽ばたき翼27a,27bの羽ばたき作動により生じる慣性力をキャンセルして、アクチュエータの負荷を軽減させる効果が期待できる。
【0161】
なお、又、図11(イ)(ロ)乃至図13の実施の形態、図14(イ)(ロ)の実施の形態、図21(イ)(ロ)乃至図23の実施の形態における線形アクチュエータ、並びに、図15(イ)(ロ)及び図16の実施の形態、及び、図17(イ)(ロ)の実施の形態における共振型の線形アクチュエータ69は、いずれもボイスコイル形のものとして説明したが、出力軸63を軸心方向に所要速度、所要振幅で振動させることができれば、上記出力軸63を振動させるための駆動形式は、線形超音波モータや電磁式の線形モータの駆動形式を採用するようにしてもよい。
【0162】
図14(イ)(ロ)の実施の形態、及び、図17(イ)(ロ)の実施の形態においては、線形アクチュエータ57,69のブラケット64に回動可能に取り付けてある羽ばたき翼27a,27bの駆動ロッド31の基端側を、線形アクチュエータ57,69の出力軸63に、該出力軸63の軸心方向への振動により揺動できるように連結できれば、駆動ロッド31の長孔66と、出力軸63側に取り付けた動力伝達用ピン68とを係合させる構成以外のいかなる連結手段を採用してもよい。
【0163】
位置センサ43は、本発明の小型飛行装置の位置を検出することができれば、GPSや磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ以外にも、加速度センサ等、任意のものを採用してもよい。姿勢センサ44は、たとえば、GPS受信機及びアンテナを3台ずつ用いる等、ジャイロ以外のものを採用するようにしてもよい。衝突防止センサ45は、飛行方向の前方に位置する障害物を検出できれば、光フローセンサ以外にも、超音波や赤外線のエコーにより障害物を検出するセンサ等、任意の形式のものを採用してもよい。
【0164】
本発明の小型飛行装置の飛行に支障を来たさないサイズ、重量としてあれば、ペイロード51は、本発明の小型飛行装置の所望の使用目的に応じて、任意のものとしてよい。したがって、本発明の小型飛行装置は、上記積載するペイロード51に応じた任意の使用目的に適用できる。
【0165】
更に、上記実施の形態ではコントローラ46,46a,46b,46cは、飛行制御機能、姿勢制御機能、障害物回避機能を有するものとして説明したが、これらは基本的な機能であり、本発明の小型飛行装置に、別の小型飛行装置との通信装置を設けて、コントローラ46,46a,46b,46cに、別の小型飛行装置と相互に連係した働きをさせるための機能を追加したり、飛行に関わる別の外部情報を収集するための別のセンサを追加して、該センサの信号に基づいて上記飛行制御機能、姿勢制御機能、障害物回避機能等にそれぞれ修正を加えることができるようにしたり、更に、上記ペイロード51に搭載する機器の制御機能を追加する等、任意の機能を併せ持つようにしてもよい。その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の小型飛行装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は一部切断概略側面図、(ロ)は概略切断平面図である。
【図2】図1の装置の飛行状態を示すもので、(イ)は高速で前進飛行する場合、(ロ)は低速で前進飛行する場合について、それぞれ推力、揚力、推進力と重心位置及び機体重量との関係を示す概要図である。
【図3】図1の装置の飛行状態を示すもので、(イ)は一定高度で前進飛行する場合、(ロ)は飛行高度を上昇させる場合、(ハ)は飛行高度を下降させる場合について、それぞれ推力、揚力、推進力と重心位置及び機体重量との関係を示す概要図である。
【図4】図1の装置の飛行状態を示すもので、(イ)は右方向へ旋回する場合、(ロ)は左方向へ旋回する場合について、それぞれ推力、揚力、推進力と重心位置との関係を示す概要図である。
【図5】図1の装置の制御機構を示す概要図である。
【図6】図1の装置にて、前進飛行時に推力発生方向を変更した状態を示す概略側面図である。
【図7】本発明の実施の他の形態を示す概略側面図である。
【図8】本発明の実施の更に他の形態を示すもので、(イ)は一部切断概略側面図、(ロ)は垂直飛行する場合における推力、揚力と重心位置及び機体重量との関係を示す概要図である。
【図9】本発明の実施の更に他の形態を示す概略切断平面図である。
【図10】図9の装置で用いる共振型の翼駆動用モータを拡大して示すもので、(イ)は切断側面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視図である。
【図11】本発明の実施の更に他の形態を示すもので、(イ)は一部切断概略側面図、(ロ)は概略切断平面図である。
【図12】図11の装置で用いる線形アクチュエータを拡大して示すもので、(イ)は切断側面図、(ロ)は(イ)のB−B方向矢視図である。
【図13】図11の装置の制御機構を示す概要図である。
【図14】(イ)(ロ)はいずれも図11の装置に用いる線形アクチュエータの他の形態をそれぞれ示すもので、図12(イ)(ロ)の変形例を示す概要図である。
【図15】本発明の実施の更に他の形態を示す概略切断平面図である。
【図16】図15の装置で用いる共振型の線形アクチュエータを拡大して示すもので、(イ)は切断側面図、(ロ)は(イ)のC−C方向矢視図である。
【図17】(イ)(ロ)はいずれも図15の装置に用いる線形アクチュエータの他の形態をそれぞれ示すもので、図16(イ)(ロ)の変形例を示す概要図である。
【図18】本発明の実施の更に他の形態を示すもので、(イ)は一部切断概略側面図、(ロ)は概略切断平面図である。
【図19】図18の装置の飛行状態を示すもので、(イ)は高速で前進飛行する場合、(ロ)は垂直に飛行する場合をそれぞれ示す概要図である。
【図20】図19の装置の制御機構を示す概要図である。
【図21】本発明の実施の更に他の形態を示すもので、(イ)は一部切断概略側面図、(ロ)は概略切断平面図である。
【図22】図21の装置の飛行状態を示すもので、(イ)は高速で前進飛行する場合、(ロ)は垂直に飛行する場合をそれぞれ示す概要図である。
【図23】図21の装置の制御機構を示す概要図である。
【図24】従来提案されている羽ばたき翼形式の飛行装置の一例を示す概要図である。
【図25】従来提案されている羽ばたき翼形式の飛行装置の別の例を示す概要図である。
【図26】従来提案されている羽ばたき翼形式の飛行装置の更に別の例を示す概要図である。
【図27】従来提案されている回転翼式の飛行体の一例を示す概要図である。
【符号の説明】
【0167】
26 胴体
27a,27b 羽ばたき翼
28 重心移動装置
29 錘
30 翼駆動用モータ(アクチュエータ)
30a 出力軸
31 駆動ロッド
32 翼本体
33連結ロッド
37 左右方向重心移動アクチュエータ(重心移動アクチュエータ)
38 ガイド部材
39 スライダ
40 前後方向重心移動アクチュエータ(重心移動アクチュエータ)
41 ガイド部材
42 スライダ
44 姿勢センサ
46,46a,46b,46c コントローラ
53 共振型の翼駆動用モータ(アクチュエータ)
53a 出力軸
56 ばね(弾性部材)
57 線形アクチュエータ(アクチュエータ)
63 出力軸
69 共振型の線形アクチュエータ(アクチュエータ)
71 ばね(弾性部材)
G 機体重心
P 揚力作用点(揚力が作用する位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体の左右位置に、それぞれ羽ばたき翼を設けて、該各羽ばたき翼を独立に駆動して羽ばたき作動ができるようにし、且つ上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変位させることができるようにしてある重心移動装置を設けてなり、上記左右の各羽ばたき翼より作用する胴体への揚力作用位置に対する機体重心の相対的な位置を制御することにより、上記胴体と共に左右の各羽ばたき翼の迎角を所要角度に保持しながらそれぞれ羽ばたき作動させて飛行できるようにした構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項2】
胴体の左右位置に、羽ばたき翼を羽ばたき作動させるための別々のアクチュエータを設け、該各アクチュエータの出力軸に、左右一対の羽ばたき翼を個別に取り付けて、上記各アクチュエータにより上記左右の羽ばたき翼の羽ばたき作動を独立に制御できるようにし、且つ上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変位させて胴体の姿勢を制御できるようにしてある重心移動装置を設けてなる構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項3】
胴体の左右位置に設ける別々のアクチュエータを、出力軸を胴体の略前後方向に向けて配置した翼駆動用モータとして、該各翼駆動用モータの出力軸の交互の正、逆転駆動の速度及び又は角度範囲を独立して制御できるようにし、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータの出力軸にそれぞれ取り付けて、上記各駆動ロッドを介して各羽ばたき翼の羽ばたき作動を独立して制御できるようにした請求項2記載の小型飛行装置。
【請求項4】
胴体の左右位置に設ける別々の翼駆動用モータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにしてなる共振型の翼駆動用モータとして、該各共振型の翼駆動用モータの所定周波数での交互の正、逆転駆動による角度範囲を独立して制御できるようにし、各羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅を独立して制御できるようにした請求項3記載の小型飛行装置。
【請求項5】
胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各翼駆動用モータの交互の正、逆転駆動による左右の各羽ばたき翼の羽ばたき作動の独立した制御と、重心移動装置による機体重心位置の制御による胴体の姿勢制御を行うコントローラを備えた請求項3又は4記載の小型飛行装置。
【請求項6】
胴体の左右位置に設ける別々のアクチュエータを、出力軸を胴体の略上下方向に向けて配置した線形アクチュエータとして、該各線形アクチュエータの出力軸の軸心方向の振動速度及び又は振幅の独立した制御ができるようにし、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けて、上記各駆動ロッドを介して各羽ばたき翼の羽ばたき作動を独立して制御できるようにした請求項2記載の小型飛行装置。
【請求項7】
胴体の左右位置に設ける線形アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとして、該各共振型の線形アクチュエータの所定周波数での出力軸の振動による振幅を独立して制御できるようにし、各羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅を独立して制御できるようにした請求項6記載の小型飛行装置。
【請求項8】
胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各線形アクチュエータの出力軸の振動による左右の羽ばたき翼の羽ばたき作動の独立した制御と、重心移動装置による機体重心位置の制御による胴体の姿勢制御を行うコントローラを備えた請求項6又は7記載の小型飛行装置。
【請求項9】
胴体の左右位置に、羽ばたき翼をそれぞれ上下方向に角度調整可能に設けて、該各羽ばたき翼を独立に駆動して羽ばたき作動ができるようにし、且つ上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変位できるようにしてある重心移動装置を設けてなり、上記左右の羽ばたき翼より胴体に対して作用する揚力作用位置に対する機体重心の相対的な位置を制御して上記胴体の姿勢を制御し、更に、上記各羽ばたき翼を所要の迎角に保持しながらそれぞれ羽ばたき作動させて飛行できるようにした構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項10】
胴体の左右位置に、羽ばたき翼を羽ばたき作動させるための別々のアクチュエータを、出力軸が前後方向又は上下方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を一体に保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付け、更に、上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変位させて胴体の姿勢を制御できるようにしてある重心移動装置を設けた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項11】
胴体の左右位置に角度変更可能に設ける別々のアクチュエータを、翼駆動用モータとして、該各翼駆動用モータの出力軸の上下方向の角度の独立した制御と、出力軸の交互の正、逆転駆動の速度及び又は角度範囲を独立して制御できるようにし、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータの出力軸にそれぞれ取り付けて、上記各羽ばたき翼ごとに迎角と、上記駆動ロッドを介した各羽ばたき翼の羽ばたき作動を独立して制御できるようにした請求項10記載の小型飛行装置。
【請求項12】
胴体の左右位置に角度変更可能に設ける翼駆動用モータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにしてなる共振型の翼駆動用モータとして、該各共振型の翼駆動用モータの所定周波数での交互の正、逆転駆動による角度範囲を独立して制御できるようにし、各羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅を独立して制御できるようにした請求項11記載の小型飛行装置。
【請求項13】
胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各翼駆動用モータの出力軸の上下方向の角度の制御と、各翼駆動用モータの交互の正、逆転駆動による左右の各羽ばたき翼の羽ばたき作動の独立した制御と、重心移動装置による機体重心位置の制御による胴体の姿勢制御を行うコントローラを備えた請求項11又は12記載の小型飛行装置。
【請求項14】
胴体の左右位置に角度変更可能に設ける別々のアクチュエータを、線形アクチュエータとして、該各線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の独立した制御と、出力軸の軸心方向の振動速度及び又は振幅の独立した制御ができるようにし、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けて、上記各羽ばたき翼ごとに、迎角と、上記駆動ロッドを介した各羽ばたき翼の羽ばたき作動を独立して制御できるようにした請求項10記載の小型飛行装置。
【請求項15】
胴体の左右位置に角度変更可能に設ける線形アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとして、該各共振型の線形アクチュエータごとの所定周波数での出力軸の振動による振幅を独立して制御できるようにし、各羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅を独立に制御できるようにした請求項14記載の小型飛行装置。
【請求項16】
胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に各線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御と、各線形アクチュエータの出力軸の振動による左右の各羽ばたき翼の羽ばたき作動の独立した制御と、重心移動装置による機体重心位置の変位による制御による胴体の姿勢制御を行うコントローラを備えた請求項14又は15記載の小型飛行装置。
【請求項17】
重心移動装置は、直線状に延びるガイド部材の任意の位置へスライダを移動させることができるようにしてある2つの重心移動アクチュエータを、胴体の前後方向と左右幅方向に沿うよう配置すると共に、一方の重心移動アクチュエータのスライダに、他方の重心移動アクチュエータのガイド部材を取り付け、且つ該他方の重心移動アクチュエータのスライダに、錘を取り付けてなるものとし、上記各重心移動アクチュエータにより、錘を、胴体の前後方向及び左右方向へ移動させて、機体重心の位置を胴体の前後左右方向に変位できるものとした請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15又は16記載の小型飛行装置。
【請求項18】
重心移動装置を、左右の各羽ばたき翼より胴体に対して作用する揚力作用位置の下方にて機体重心の位置を胴体の前後左右方向へ変位できるものとした請求項17記載の小型飛行装置。
【請求項19】
重心移動装置は、左右の各羽ばたき翼にて垂直方向上向きの推力を発生させるときに、機体重心の位置を、上記各羽ばたき翼より胴体に対し作用する上記推力の作用点の真下の位置に保持できるものとした請求項18記載の小型飛行装置。
【請求項20】
羽ばたき翼を、駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる構成として、上記駆動ロッドと翼本体の前縁部との間に、上記駆動ロッドと直角方向に延びる柔軟性を備えた連結ロッドを介在させてなるものとした請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19記載の小型飛行装置。
【請求項21】
羽ばたき翼を、駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる構成として、上記翼本体を、前縁部と直角方向に柔軟性を備えてなるものとした請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20記載の小型飛行装置。
【請求項22】
羽ばたき翼を、駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる構成として、上記翼本体を低アスペクト比とした請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は21記載の小型飛行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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