説明

小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキン及びこのパッキンを使用したシール構造

【課題】ボンベ開口部のかしめ型シール構造で漏れ通路を確実に遮断できる小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキン及びこのパッキンを使用したかしめ構造を提供する。
【解決手段】本発明にかかるかしめ封板パッキン(1)は、環状の本体(2)の軸線(X)方向の一面(3)に平坦のシール面(4)を、他面(5)に該軸線と平行に突出する複数の柱(6)を備える。また、該本体の外周面(7)に歪み吸収用の環状凹部(8)、該環状凹部を挟んで該平坦のシール面側に曲面のシール面(9)及び該他面側に放射状に突き出た円弧状の位置決め(10)を備える。該複数の柱は、端面(11)が該平坦のシール面と平行で、ボンベ(21)の開口部(22)に形成されたスリーブ(23)の開口端縁部(24)と反対端の段面(25)と該他面との間にガス通路(26)を形成する。該位置決めは該スリーブの内周面(27)と該外周面との間にガス通路(28)を確保する。本発明にかかるかしめ構造は、該封板パッキンを用いたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキン及びこのパッキンを使用したシール構造にかかり、ガス漏れを効果的に防ぐものに関する。
【背景技術】
【0002】
酸素、亜酸化窒素等の支燃性ガスや、プロパン、水素等の可燃性ガス、あるいはその混合ガスを小型高圧ガス容器に充填及び封止する方法として、容器のかしめ部に封板とパッキンを挿入してかしめるやり方が行われている。
【0003】
かしめ型封板のパッキンとして、次のようなものが知られている。実開昭48−113709号公報には、ガス充填時にパッキンと封板がボンベの段面上で踊ってこじれ、後のかしめ作業に支障が生じるのを防ぐと共に、ボンベからの脱出を防ぐようにしたパッキンが示されている。また、実公昭52−37739号公報には、円環状本体の外周縁から半径方向外方へ突出する足を形成してボンベからの脱出を更に効果的に防ぐようにしたパッキンが示されている。
【特許文献1】実開昭48−113709号公報
【特許文献2】実公昭52−37739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実開昭48−113709号公報に示されたパッキンは、放射方向外方に突出しボンベ開口部内径に適合する外径部分と、その内径より小さい外径部分を有し、ボンベ開口部に設けられる段面との間にこの小径部分外面と導通するガス通路を形成する凹凸部が軸線方向の端面に設けられている。このパッキンは、かしめ状態でその外周部上面と封板外周部下面、及びその外周部下面とボンベの環状段面との圧接でシールをなしており、パッキンの外周面でのシールは期待していない。パッキンの下面の凹凸部はシール面に不連続部分が生じやすく、環状段面間のシールは不完全になりやすい。しかも、パッキンのシール面における半径方向の幅の大小は面圧力が不均等を生じ、そのため、この型式のシールはガス漏れを生じやすかった。
【0005】
実公昭52−37739号公報に示されたパッキンは、環状本体の一側外周縁部からその軸線方向外方の斜め放射方向にボンベの装着部内径に密接する足を突出させたもので、このパッキンをボンベの装着部内径に挿入すると、これらの足の先端が内径に密接し、ガス通路が確保されながらパッキンの抜け出しが防止される。このパッキンもその外周面でのシールを期待していない。かしめの際にはこれらの足が潰れるが、この潰れによってシール面に不連続や、面圧力の不均等が生じ、シールが不安定になる点は、前記のパッキンと同様である。
【0006】
そこで本発明は、ボンベにガスを充填する際のガス通路確保のためパッキンに形成されてシール面の不連続や、面圧力の不均等の原因となっている構成部分である足、突起、位置決め等を、環状凹部でパッキンの平坦のシール面や曲面のシール面から分離することにより、ボンベ開口部のかしめ型シール構造で漏れ通路となる二つの通路を確実に遮断できる小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキン及びこのパッキンを使用したかしめ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキンで、環状の本体は、その軸線方向の一面に平坦のシール面を備え、他面に該軸線と平行に突出する複数の柱を備え、外周面に歪み吸収用の環状凹部、該環状凹部を挟んで該平坦のシール面側に曲面のシール面及び該他面側に放射状に突き出た円弧状の位置決めを備えている。該複数の柱は、端面が該平坦のシール面と平行で、ボンベの開口部に形成されたスリーブの開口端縁部と反対端の段面と該他面との間にガス通路を形成するためのものである。そして、該位置決めは該スリーブの内周面と該外周面との間にガス通路を確保する役目も負っている。
【0008】
パッキンの一面が提供するシール面は、シールの目的を達するため、平坦に構成される。他面から軸線と平行に突き出た柱は、ボンベの開口部の内面に形成される段面に載ってこの他面と段面の間にガス通路を形成する。この柱は直断面形状を呈し、柱の先端はこの他面と平行の平面で段面に載っているので、段面上に安定して載置され、充填ガスの急激な流れに対しても柱の先端が歪んだりせず、従って、パッキンや封板が踊ったりしない。
【0009】
柱の数は、円周上に等間隔で最低3個あれば一応の目的は達するが、ガスの流動抵抗に一層効果的に対抗させるためには、更に個数を増やすのが望ましい。ボンベ開口部からパッキンが抜け出るのを防ぐため、パッキンの外周面から放射方向外方へ突出する位置決めが設けられる。パッキンを開口部内に挿入すると位置決めが周壁面に圧接して変形し、その部分でガス充填用の隙間がなくなるので、充填ガスが乱流を起こし、パッキンが踊る恐れがある。そこで、この位置決めの有る部分では柱を設けず、充填ガスを円滑にボンベ内に導くようにするのがよい。
【0010】
かしめ時の歪み部分を吸収できないと、それが凹凸を生じ、ガス漏れの原因となる。そこで、本発明では外周面に環状凹部を形成する。そして、この該環状凹部を挟んで該平坦のシール面側に曲面のシール面を設け、該他面側に放射状に突き出た円弧状の位置決めを備えている。パッキンの内径には封板の環状脚部が嵌合するので、パッキンの歪みは本体部分の変形、柱や位置決めの押し潰しによる失形、即ち本来の形を失うこと、となって現れる。本体内に吸収できなかった偏肉部分は環状凹部に入り込むので、シール面に凹凸を生じることはない。そのため、かしめの際の変形でシール面に不連続や、面圧力の不均等が生じることがなく、長期にわたり安定したシールを果たせる。
【0011】
該柱が円柱、楕円柱、角柱の内の一つであってもよい。
この場合、成形が容易で、ガスの流動圧力にも十分対抗できる。
【0012】
該環状凹部は該軸線上で該他面側に偏った位置に設けられていてもよい。
この場合、柱の押し潰しによる変形をその至近距離で吸収できるので、かしめに大きな力を必要としない。
【0013】
該環状凹部の断面形状は半円形状であってもよい。
この場合、凹部の変形が均等に行われ、かしめによる変形部分の吸収をむらなく行える。
【0014】
本発明にかかる小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキンを用いたかしめ構造は、ボンベの開口部に形成されたスリーブの開口端縁部が内側にかしめられた状態で、該スリーブの内周面が環状脚部を有する封板の外周縁部の外面を該軸線と平行方向へ押圧して該本体を変形し、該外周縁部の内面が該平坦のシール面に圧接して第一の漏れ通路を遮断し、該他面が該段面に、また該外周面が該内周面に、該柱及び該位置決めの失形かつ偏肉部の該環状凹部への吸収状態で、それぞれ圧接して第二の漏れ通路を遮断するようになっている。
この場合、該環状凹部を挟んで一方に平坦なシール面と曲面のシール面があり、他方に柱と円弧状の位置決めが形成されているので、これらのシール面が不連続となって、面圧力の不均等が生じたりすることがなく、長期にわたり安定したシール構造を提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキンによれば、外周面に設けた該環状凹部を挟んで該平坦のシール面側に曲面のシール面を設け、該他面側に放射状に突き出た円弧状の位置決めを備えているので、パッキンの本体部分の変形による偏肉部分、柱や位置決め等の押し潰しによる歪み部分は環状の凹部に入り込み、シール面に凹凸を生じることはなく、封板外周縁部の内面とパッキンの平坦のシール面間で第一の漏れ通路を密閉し、パッキンの外周面とスリーブの内周面及び他面と段面の密接により第二の漏れ通路を密閉できる。
【0016】
請求項2によれば、成形が容易で、ガスの流動圧力にも十分対抗できる。
【0017】
請求項3によれば、柱の押し潰しによる変形をその至近距離で吸収できるので、かしめに大きな力を必要としない。
【0018】
請求項4によれば、凹部の変形が均等に行われ、かしめによる変形部分の吸収をむらなく行える。
【0019】
請求項5のかしめ構造によれば、該環状凹部を挟んで一方に平坦なシール面と曲面のシール面があり、他方に柱と円弧状の位置決めが形成されているので、これらのシール面が不連続となって、面圧力の不均等が生じたりすることがなく、ボンベの開口部に形成されたスリーブの開口端縁部が内側にかしめられた状態で、該スリーブの内周面が環状脚部を有する封板の外周縁部の外面を軸線と平行方向へ押圧して該本体を変形し、該外周縁部の内面が該平坦のシール面に圧接して第一の漏れ通路を遮断し、該他面が該段面に、また該外周面が該内周面に、該柱及び該位置決めの失形かつ偏肉部の該環状凹部への吸収状態で、それぞれ圧接して第二の漏れ通路を遮断し、長期にわたり安定したシールを果たせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明にかかる小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキンの具体例を、左半分を切断して、示した正面図、図2は底面図、図3はこのパッキンを使用したシール構造の具体例を示す切断面図で、左半分はガス充填状態、右半分はガス充填後のかしめ状態を示す。
【0021】
1は環状のパッキン、2は本体である。このパッキン1は通常のように弾性を有する。この本体2は、その軸線X方向の一面3の平坦のシール面4を備え、他面5にこの軸線Xと平行に突出する複数の柱6を備え、外周面7に歪み吸収用の環状凹部8、この環状凹部8を挟んで平坦のシール面4側に曲面のシール面9及び他面5側に放射状に突き出た円弧状の位置決め10を備えている。そして、この複数の柱6は、端面11が平坦のシール面4と平行で、ボンベ21の開口部22に形成されたスリーブ23の開口端縁部24と反対端の段面25と他面5との間にガス通路26を形成するためのものである。この位置決め10はスリーブ23の内周面27と外周面7との間にガス通路26を形成するためのもので、またスリーブ23の内周面27と外周面7との間にガス通路28を確保する役目も負っている。
【0022】
パッキンの一面3が提供する平坦のシール面4は、シールの目的を達するためのものである。他面5から軸線Xと平行に突き出た柱6は、ボンベ21の開口部22の内面に形成される段面25に載ってこの他面5と段面25の間にガス通路26を形成する。この柱6は直断面形状を呈し、柱6の先端はこの他面5と平行の端面11で段面25に載っているので、この段面25上に安定して載置され、充填ガスの急激な流れに対しても柱6の先端が歪んだりせず、従って、このパッキン1や封板30が踊ったりしない。
【0023】
柱6の数は、円周上に等間隔で最低3個あれば一応の目的は達するが、ガスの流動抵抗に一層効果的に対抗させるためには、更に個数を増やすのが望ましい。ボンベ開口部22からパッキン1が抜け出るのを防ぐため、パッキン1の外周面7から放射方向外方へ突出する位置決め10が設けられる。パッキン1を開口部22内に挿入すると位置決め10が内周面27に圧接して変形し、その部分でガス充填用の隙間がなくなるので、充填ガスが乱流を起こし、パッキンが踊る恐れがある。そこで、この位置決め10の有る部分では柱6を設けず、充填ガスを円滑にボンベ21内に導くようにするのがよい。
【0024】
かしめ時の歪み部分を吸収できないと、それがシール面で凹凸を生じ、ガス漏れの原因となる。そこで、本発明では外周面7に環状凹部8を形成する。パッキン1の内径には封板30の環状脚部29が嵌合するので、パッキン1の本体2の部分や柱6の押し潰しによる歪み部分は、外周面7に向かって現れる。これらの変形部分は環状凹部8に入り込むので、曲面のシール面9に凹凸を生じることはない。
【0025】
柱6が円柱、楕円柱、角柱の内の一つとなっている。
こうすると、成形が容易で、ガスの流動圧力にも十分対抗できる。
【0026】
環状凹部8は軸線X上で他面5側に偏った位置に設けられている。
こうすると、柱6の押し潰しによる変形をその至近距離で吸収できるので、かしめに大きな力を必要としない。
【0027】
環状凹部8の断面形状は半円形状となっている。
こうすると、環状凹部8の変形が均等に行われ、かしめによる変形部分の吸収をむらなく行える。
【0028】
本発明にかかる小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキンを用いたかしめ構造は、ボンベ21の開口部22に形成されたスリーブ23の開口端縁部24が内側にかしめられた状態で、このスリーブ23の内周面27が環状脚部29を有する封板30の外周縁部31の外面32をこの軸線Xと平行方向へ押圧して本体2を変形し、外周縁部31の内面33が平坦のシール面4に圧接して第一の漏れ通路34を遮断し、他面5が段面25に、また外周面7が内周面27に、柱6及び位置決め10の失形かつ偏肉部の環状凹部8への吸収状態で、それぞれ圧接して第二の漏れ通路35を遮断するようになっている。
こうすると、環状凹部8を挟んで一方に平坦なシール面4と曲面のシール面9があり、他方に柱6と円弧状の位置決め10が形成されているので、これらのシール面4や9が不連続となって、面圧力の不均等が生じたりすることがなく、長期にわたり安定したシール構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる小型高圧ガスボンベのかしめ型パッキンの具体例を、左半分を切断して、示す正面図である。
【図2】底面図である。
【図3】パッキンを使用したかしめ構造の具体例を示す切断面図で、左半分はガス充填状態を、右半分は充填を終えてかしめた状態を示す。
【図4】図3に示した第一の漏れ通路34及び第二の漏れ通路35の部分の拡大図で、引き出し波線は各通路の漏れ方向を示すそれぞれの矢頭部分から引き出してある。
【符号の説明】
【0030】
1 パッキン
2 本体
3 一面
4 平坦のシール面
5 他面
6 柱
7 外周面
8 環状凹部
9 曲面のシール面
10 位置決め
11 端面
X 軸線
21 ボンベ
22 開口部
23 スリーブ
24 開口端縁部
25 段面
26 ガス通路
27 内周面
28 ガス通路
29 環状脚部
30 封板
31 外周縁部
32 外面
33 内面
34 第一の漏れ通路
35 第二の漏れ通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の本体(2)は、
その軸線(X)方向の一面(3)に平坦のシール面(4)を備え、他面(5)に該軸線(X)と平行に突出する複数の柱(6)を備え、外周面(7)に歪み吸収用の環状凹部(8)、該環状凹部(8)を挟んで該平坦のシール面(4)側に曲面のシール面(9)及び該他面(5)側に放射状に突き出た円弧状の位置決め(10)を備えており、
該複数の柱(6)は、端面(11)が該平坦のシール面(4)と平行で、ボンベ(21)の開口部(22)に形成されたスリーブ(23)の開口端縁部(24)と反対端の段面(25)と該他面(5)との間にガス通路(26)を形成するためのもので、
該位置決め(10)は該スリーブ(23)の内周面(27)と該外周面(7)との間にガス通路(28)を確保する役目も負っている
ことを特徴とする小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキン(1)。
【請求項2】
該柱(6)が円柱、楕円柱、角柱の内の一つである請求項1に記載の小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキン(1)。
【請求項3】
該環状凹部(8)は該軸線(X)上で該他面(5)側に偏った位置に設けられている請求項1又は2に記載の小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキン(1)。
【請求項4】
該環状凹部(8)の断面形状は半円形状である請求項1、2又は3に記載の小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキン(1)。
【請求項5】
請求項1に記載の小型高圧ガスボンベのかしめ封板パッキン(1)を用いたもので、ボンベ(21)の開口部(22)に形成されたスリーブ(23)の開口端縁部(24)が内側にかしめられた状態で、該スリーブ(23)の内周面(27)が環状脚部(29)を有する封板(30)の外周縁部(31)の外面(32)を該軸線(X)と平行方向へ押圧して該本体(2)を変形し、該外周縁部(31)の内面(33)が該平坦のシール面(4)に圧接して第一の漏れ通路(34)を遮断し、該他面(5)が該段面(25)に、また該外周面(7)が該内周面(27)に、該柱(6)及び該位置決め(10)の失形かつ偏肉部の該環状凹部(8)への吸収状態で、それぞれ圧接して第二の漏れ通路(35)を遮断するようになっていることを特徴とするかしめ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−170407(P2006−170407A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367556(P2004−367556)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(390009818)日本炭酸瓦斯株式会社 (11)
【Fターム(参考)】