説明

小型RNAを検出する方法

【課題】被験試料に含まれる鎖長が200ヌクレオチド以下と短く、配列は非常に類似する、非常に微量な小型RNAを高感度、かつ高精度に検出できる方法を提供する
【解決手段】担体表面に凹凸部を有し、該凹凸部の凸部の頂面に選択結合性物質が固定化された選択結合性物質固定化担体を用いて、被験試料に含まれる小型RNAを検出する方法であって、該小型RNAまたは該小型RNAと相補的な配列を有するDNAの少なくとも一方の末端に標識物質を結合させた標識体を選択結合性物質と反応させることにより小型RNAを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロRNAおよびnon−coding RNA分子のような小型RNAを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
non−coding RNA(ncRNA)とは、タンパク質をコードしないRNAの総称であり、ハウスキーピングRNAと調節系のRNAとに大別される。前者のハウスキーピングRNAとしては、リボゾームRNA(rRNA)、運搬RNA(tRNA)、スプライシングに関与する核内低分子RNA(snRNA)、rRNAの修飾に関与する核小体低分子RNA(snoRNA)等が知られている。一方、後者の調節系RNAについては、生体機能の解明に重要な機能を果たしている因子として、近年特に注目を集めているものであり、遺伝子発現やRNAの細胞内分布を調節し遺伝子発現抑制機構に重要な役割を担っていることが最近になって明らかにされつつある。この調節系RNAが機能する遺伝子発現抑制機構は、RNA干渉(RNAi)と呼ばれ、1988年に線虫を用いた実験で明らかにされ、その後、ショウジョウバエや哺乳類細胞でも同様の機構の存在が明らかとなった。この調節系RNAとしてのncRNAは、鎖長がおよそ20〜25塩基であり、その作用機序は、マイクロRNA(miRNA)による翻訳抑制と、snall interference RNA(siRNA)による標的mRNAの切断及び標的DNA領域のヘテロクロマチン化を介した遺伝子サイレンシングとに大別される。
【0003】
miRNAは、内在性miRNAからヘアピン様構造のRNA(前駆体)として転写されてくる。この前駆体は、特定の酵素RNase III切断活性を有するdsRNA切断酵素(Drosha、Dicer)により切断された後、二本鎖の形態へと変化し、その後一本鎖となる。そして、片方のアンチセンス鎖がRISCと称するタンパク質複合体に取り込まれ、mRNAの翻訳抑制に関与すると考えられている。このように、miRNAは、転写後、各段階においてその態様は異なるので、通常、miRNAをターゲット(検出対象)とする場合は、ヘアピン構造体、二本鎖構造体、一本鎖構造体等の各種形態を考慮する必要がある。miRNAは15〜25塩基のRNAからなり、様々な生物でその存在が確認されている。
【0004】
一方、siRNAは、ウイルス、トランスポゾン、トランスジーン、内在性dsRNA等の長鎖dsRNAから、RNase III切断活性を有するdsRNA切断酵素(Dicer)により切り出される。その後、dsRNAの片方のアンチセンスRNAが、RISC、又はRITSと称するタンパク質複合体に取り込まれ、複合体としてmRNAの分解又は転写抑制に関与する。従って、siRNAの取り得る態様としては、dsRNAとしての二本鎖の状態、RISCとの複合体を形成している一本鎖の状態もあるので、通常、siRNAをターゲット(検出対象)とする場合は、長鎖dsRNA、切断後のsiRNA、又は一本鎖等の各種形態を考慮する必要がある。
【0005】
ところで、一般に、核酸固定化基板(DNAチップ)を用いた発現解析では、数百から数万種の遺伝子に対応した塩基配列を利用したプローブが固定された基板を用いて被験試料をDNAチップに添加することによって試料中の遺伝子がプローブと結合し、この結合量を何らかの手段によって測定することにより、被験試料中の遺伝子量を知ることができる。DNAチップ上に固定化するプローブに対応した遺伝子の選択は自由である。しかしながら、検出対象が上記の小型RNAの場合、細胞又は組織に含まれる上記の小型RNAは鎖長が200ヌクレオチド以下と短く、また配列は非常に類似するため、DNAチップ上で特異的に上記の小型RNAを区別することは難しく、さらに細胞又は組織に含まれる上記の小型RNAは微量であるため、高感度に上記の小型RNAを区別することは難しい。
【0006】
従って、上記の小型RNAの短い鎖長の核酸を検出し解析しようとする分野においては、高感度かつ高精度に上記の小型RNAを検出できる有効な技術の確立が急務の課題となっている。
【0007】
その解決策の一つとして、上記の小型RNAに含まれるグアニン塩基を特異的に認識するプローブを用いて上記の小型RNAを標識した被験試料をDNAチップに添加してmiRNAを測定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、通常、上記の小型RNAに含まれるグアニン塩基の位置は多様であり、上記の小型RNAに含まれるグアニン塩基の数は一定でないため、上記の小型RNAに含まれるグアニン塩基の数によっては検出が困難な上記の小型RNAが生じる。
【0008】
また上記の小型RNAの3’末端にアミノ修飾されたアデニン塩基を酵素的に複数個付加し、付加したアミノ修飾済みアデニン塩基にプローブを標識した被験試料をDNAチップに添加してmiRNAを測定する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、3’末端へ付与されるアデニン塩基数にはバラツキが存在し、上記の小型RNAへ標識されるプローブ数は一定にならないため、上記の小型RNAへの3’末端へ付与されるアデニン塩基数によっては検出が困難なmiRNAもしくはncRNA等が生じる。
【0009】
また、上記の小型RNAを脱リン酸化した3’末端にプローブが1つ標識された1つのシトシン塩基を付加した被験試料をDNAチップに添加してmiRNAを測定する方法などが提案されている(例えば、特許文献3、非特許文献1参照)。しかしながら、通常、一個のシトシン塩基の大きさは小さく、標識するプローブの大きさは大きいため、1個のグアニン塩基を付与するだけでは標識プローブの立体障害によって検出が困難な上記の小型RNAが生じる。また、上記の小型RNAは微量のため、1個のプローブの標識だけでは十分に強いシグナルが得られず検出が困難な上記の小型RNAが生じる。
【0010】
また、ビオチン標識したランダムプライマーを用いて小型RNAを逆転写し、ビオチン標識した相補DNAを検出する方法(非特許文献2参照)が知られているが、5μgの被験資料を必要とするため、被検資料によっては測定できない場合もある。
【0011】
また小型RNAの3’末端を化学修飾し、ビオチン化して検出する方法(非特許文献3参照)が知られているが、修飾の作業工程が多いため測定ノイズが入ってしまう。
【特許文献1】米国特許第6,262,252号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/118806号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0172845号明細書
【非特許文献1】「Nucleic Acids Research」,2004,Vol.32,No.11,e86
【非特許文献2】「Proc.Natl.Acad.Sci.」,June 29,2004,vol.101,No.26,9740−9744
【非特許文献3】「Nucleic Acids Research」,2005,Vol.33(No.2),e17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は、被験試料に含まれる鎖長が200ヌクレオチド以下と短く、配列は非常に類似する、非常に微量な上記の小型RNAを高感度、かつ高精度に検出できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の特徴を有する。
【0014】
本発明は第一の実施態様において、担体表面に凹凸部を有し、該凹凸部の凸部の頂面に選択結合性物質が固定化された選択結合性物質固定化担体を用いて、被験試料に含まれる小型RNAを検出する方法であって、該小型RNAまたは該小型RNAと相補的な配列を有するDNAの少なくとも一方の末端に標識物質を結合させた標識体を選択結合性物質と反応させることを特徴とする、小型RNAを検出する方法である。
【0015】
また別の実施形態において、前記標識体が、小型RNAまたは小型RNAと相補的な配列を有するDNAの3’末端に標識物質を結合させた標識体である、小型RNAを検出する方法である。
【0016】
また別の実施形態において、前記標識体が、小型RNAまたは小型RNAと相補的な配列を有するDNAの3’末端にリンカー配列を介して標識物質を結合させた標識体である、小型RNAを検出する方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、微量のRNAサンプルに含まれる小型RNAを高いS/N比で検出する方法を提供するものであり、これにより小型RNAを高感度に検出することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明をさらに具体的に説明する。
【0019】
本明細書において小型RNAとは、脊椎動物、ホヤ類、半索類、軟体動物類、環形動物および節足動物を含む多くの進化的に分岐した生物種を構成する200塩基長未満の範囲であるRNAを意味する。また、マイクロRNA(miRNA)は小型RNAに含まれる15〜25塩基の一本鎖RNAであり、様々な生物でその存在が確認されている。
【0020】
本明細書において、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドなどの略号による表示は、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)及び当技術分野における慣用に従うものとする。さらに「ポリヌクレオチド」とは、RNA及びDNAのいずれも包含する核酸として用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、totalRNA、mRNA、rRNA、tRNA、snRNA、snoRNA、miRNA及び合成RNAのいずれもが含まれる。また、本明細書では、ポリヌクレオチドは核酸と互換的に使用される。
【0021】
本発明の小型RNAを検出する方法は、担体表面に固定化された選択結合性物質に、その選択結合性物質と反応する小型RNAまたは小型RNAと相補的な配列を有するDNAを含む溶液を接触させ、接触した状態を観察することで小型RNAを検出する。
【0022】
相補配列(相補鎖、逆鎖)とは、小型RNAを構成する塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、又はその部分配列、(ここでは便宜上、これを正鎖と呼ぶ)に対してA:T(U)、G:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味する。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズできる程度の相補関係を有するものであってもよい。
【0023】
本発明において、選択結合性物質固定化担体としては、例えば特開2006-78197号公報に記載のものを用いることができるで。
【0024】
選択結合性物質とは、被験試料に含まれる小型RNAと直接的又は間接的に、選択的に結合し得る物質を意味する。本発明の小型RNAを検出する方法においては、具体的にはDNA、RNA、PNA、LNA(LockedNucleicAcid)などの核酸誘導体を用いることができる。ここで誘導体とは、核酸の場合、蛍光団などによるラベル化誘導体、修飾ヌクレオチド(例えばハロゲン、メチルなどのアルキル、メトキシなどのアルコキシ、チオ、カルボキシメチルなどの基を含むヌクレオチド及び塩基の再構成、二重結合の飽和、脱アミノ化、酸素分子の硫黄分子への置換などを受けたヌクレオチドなど)を含む誘導体などの化学修飾誘導体を意味する。
【0025】
特定の塩基配列を有する一本鎖核酸は、該塩基配列又はその一部と相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸と選択的にハイブリダイズして結合するので、本発明でいう選択結合性物質に該当する。本発明に用いる選択結合性物質は、市販のものでもよく、また、生細胞などから得られたものでもよい。選択結合性物質として、特に好ましいものは、核酸である。この核酸の中でも、オリゴ核酸と呼ばれる、長さが10塩基から100塩基までの核酸は、合成機で容易に人工的に合成が可能である。さらに、20塩基未満ではハイブリダイゼーションの安定性が低いという観点から20〜100塩基がより好ましい。
【0026】
検出したい小型RNAは、miRNA(マイクロRNA)であっても良い。その情報は例えば、http://www.sanger.ac.uk/Software/Rfam/mirna/index.shtmlにアクセスすることで知ることができる。目的とするmiRNAを検出するには、検出対象のmiRNAと相補な配列を有する核酸を選択結合性物質として用いればよい。
【0027】
小型RNAと相補的な配列を有するDNAは、被験試料に含まれる小型RNAを、逆転写酵素などを用いて得ることができる。
【0028】
本明細書において検出・診断対象となる被験試料としては、組織試料、生物体全体、細胞培養物、または体液などからなる天然源等が挙げられる。
【0029】
本発明では、小型RNAまたは小型RNAの相補配列を有するDNA少なくとも3’末端または5’末端のいずれかに標識物質を結合させることで標識した標識体を用いる。好ましくは、3’末端に標識物質を結合させる。標識物質の結合には酵素反応、化学反応などを用いることができる。好ましくは、酵素を用いて反応させる。さらに好ましくは、小型RNAの3’末端に標識体を結合させる。
【0030】
標識物質は、少なくとも2つ以上の核酸の重合体であるリンカー配列を含んでいても良い。酵素反応には、T4 RNA LigaseやTerminal Deoxitidil Transferase,Poly A polymeraseなどを用いても良い。
【0031】
本発明において、使用できる標識物質としては、蛍光色素、りん光色素、放射線同位体など、標識に用いる公知の物質を用いることができる。好ましいのは、測定が簡便で、信号が検出しやすい蛍光色素である。具体的には、シアニン(シアニン2)、アミノメチルクマリン、フルオロセイン、インドカルボシアニン(シアニン3)、シアニン3.5、テトラメチルローダミン、ローダミンレッド、テキサスレッド、インドカルボシアニン(シアニン5)、シアニン5.5、シアニン7、オイスターなどの公知の蛍光色素が挙げられる。
【0032】
蛍光色素の検出は、蛍光顕微鏡や蛍光スキャナなどを用いることができる。
【0033】
また、標識体として発光性を有する半導体微粒子を用いてもよい。このような半導体微粒子としては、例えばカドミウムセレン(CdSe)、カドミウムテルル(CdTe)、インジウムガリウムリン(InGaP)、シルバーインジウム硫化亜鉛(AgInZnS)などが挙げられる。
【0034】
小型RNAまたは小型RNAと相補的な配列を有するDNAの末端へ標識体を結合させる方法は、酵素反応を用いて行うことができる。酵素反応として、T4RNALigaseを用いることも好ましい。
【実施例】
【0035】
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1
(DNAチップ)
選択結合性物質固定化担体として「3D−Gene(登録商標) Human miRNA oligo chip」(東レ株式会社;TRT-XR311)を用いた。
【0037】
(RNAの標識)
末端に標識物質を結合させる方法として、「miRCURY LNA microRNA Hy5 Power labeling kit」(エキシコン社;208030-A)を用いた。被験試料には、miRNAの含有が確認されたFirstChoice Human Liver Total RNA(ABI社;AM7960)を用いた。上述のtotalRNA 100ng、300ng、500ng、1000ngのそれぞれについて、メーカー推奨のプロトコールでmiRNAを標識した。
【0038】
(ハイブリダイゼーション)
全ての標識済みmiRNAをそれぞれ「ハイブリダイゼーションバッファー」(東レ株式会社;TRT-XR301)に溶解し、37℃で16時間ハイブリダイズを行った。ハイブリダイズ終了後、DNAチップを30℃の0.5×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び42℃の0.2×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.05×SSC溶液による連続した条件で洗浄した。
【0039】
(遺伝子発現量の測定)
上述の方法によりハイブリダイゼーションを行ったDNAチップをDNAチップスキャナー(ScanArrayLite、パーキンエルマージャパン)を用いてスキャンし、画像を取得してGenePixPro5.0(Molecular Device社)にて蛍光強度を数値化した。統計学的処理は「Speed T.著,「Statistical analysis of geneexpression microarray data」,Chapman&Hall/CRC」及び「Causton H.C.ら著「Abeginner’s guide Microarray gene expression data analysis」,Blackwell publishing」を参考にして行った。すなわち、ハイブリダイズ後の画像解析から得られたデータについて、それぞれの対数値をとり、各々のmiRNAについてシグナル強度を算出した。
【0040】
「3D−Gene Human miRNA oligo chip」(東レ株式会社;TRT-XR311)は約800種のマイクロRNAを検出することができるが、この中から配列番号1,2,3,4で表されるRNAを選択し解析に用いた。
【0041】
その結果を「Array3」として図1,2,3,4、5に示す。配列番号1のRNAの結果を図1に、配列番号2のRNAの結果を図2、配列番号3のRNAの結果を図3、配列番号4のRNAの結果を図4に示す。図5に実施例および比較例1、比較例2のノイズの値を示している。比較例1、および比較例2については後述する。
【0042】
各図は実施例1および比較例1、2の結果から得られたシグナル強度を縦軸にした棒グラフで表している。左からArray1-1000ng(比較例1)、Array2-3000ng(比較例2)、Array3-100ng(実施例1においてtotalRNAが100ngの場合)、Array3-300ng(実施例1においてtotalRNAが300ngの場合)、Array3-500ng(実施例1においてtotalRNAが500ngの場合)、Array3-1000ng(実施例1においてtotalRNAが1000ngの場合の結果を示している。)の結果を示す。
【0043】
図1,2,3,4から、実施例においてはtotalRNAの量が増加するにしたがってシグナル強度が増加していることがわかる。また、ノイズの値はtotalRNAの量に関係しないことが図5から分かる。
【0044】
比較例1
凹凸部が設けられていない平坦なガラス基板で作成されたDNAチップの場合と比較した。
【0045】
基板として、「DNAマイクロアレイ用コートスライドガラス」(松浪硝子)を用いた。以下の条件で、それぞれ選択結合性物質(プローブDNA)としてオリゴヌクレオチドを固定化した。配列番号1、2,3,4のRNAと相補配列のDNA(約20塩基、5’末端アミノ化)を合成した。この配列番号1,2,3,4のRNAと相補配列のDNAは5’末端がアミノ化されている。このオリゴヌクレオチドを、終濃度が0.03nmolおよびμLとなるようにDNAマイクロアレイ用SpottingSolution(松浪硝子)に溶解した。この溶液をアレイヤー(スポッター)(日本レーザー電子製;GeneStamp−II)を用いて、計4点スポットした。以上のようにして得られた分析用チップを、「Array1」とした。
【0046】
RNAの標識は、「miRCURY LNA microRNA Hy5 Power labeling kit」(エキシコン社;208030-A)を用いた。被験試料には、miRNAの含有が確認されたFirstChoice Human Liver TotalRNA(ABI社;AM7960)を用いた。上述のtotalRNA1000ngを用いた。ハイブリダイゼーションは、マイクロピペットを用いてArray1のオリゴヌクレオチドがスポットされた面にアプライした。ギャップカバーガラス(松浪硝子)を被験試料溶液がアプライされた面に載せて、ハイブリダイゼーションチャンバー(タカラバイオ株式会社;TX711)にセットし、37℃で16時間反応させた。遺伝子発現量の測定は実施例と同様である。その結果を図1,2,3,4、5に「Array1-1000ng」として示す。
【0047】
図1,2,3,4から分かるように、Array1-1000ngのシグナル強度は、実施例におけるtotalRNAが300ngの場合よりも低い。また、図5からノイズの値が同等であることから、実施例1は比較例1より少ないtotalRNA量を用いても高いS/N比で検出することができているといえる。
【0048】
比較例2
異なる標識方法との比較として、グアニン塩基を特異的に認識して標識する方法を比較した。標識にはLabel ITmiRNA Labeling Kit,Cy5(タカラバイオ社;V8610)を用い、上述のtotalRNA3000ngについて、メーカー推奨のプロトコールでmiRNAを標識した。標識方法以外は実施例1と同様である。その結果を図1,2,3,4、5に「Array2-3000ng」として示す。
【0049】
図1,2,3,4から分かるように、Array2-3000ngのシグナル強度は、実施例においてtotalRNAが1000ngの場合よりも低い(図1,2,3,4参照)。また、図5からノイズの値が同等であることから、実施例1は比較例2より少ないtotalRNA量を用いても高いS/N比で検出することができているといえる。
【0050】
以上の実施例1、比較例1および比較例2の結果から、実施例1に示した方法を用いることで比較例1および比較例2よりも少ない被験試料からmiRNAを高いS/N比で検出することができているといえる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】配列番号1のRNAを用いた実施例1、比較例1、比較例2の結果を表す。
【図2】配列番号2のRNAを用いた実施例1、比較例1、比較例2の結果を表す。
【図3】配列番号3のRNAを用いた実施例1、比較例1、比較例2の結果を表す。
【図4】配列番号4のRNAを用いた実施例1、比較例1、比較例2の結果を表す。
【図5】実施例1、比較例1、比較例2のノイズの値を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体表面に凹凸部を有し、該凹凸部の凸部の頂面に選択結合性物質が固定化された選択結合性物質固定化担体を用いて、被験試料に含まれる小型RNAを検出する方法であって、該小型RNAまたは該小型RNAと相補的な配列を有するDNAの少なくとも一方の末端に標識物質を結合させた標識体を選択結合性物質と反応させることを特徴とする、小型RNAを検出する方法。
【請求項2】
前記標識体が、小型RNAまたは小型RNAと相補的な配列を有するDNAの3’末端に標識物質を結合させた標識体である、請求項1に記載の小型RNAを検出する方法。
【請求項3】
前記標識体が、小型RNAまたは小型RNAと相補的な配列を有するDNAの3’末端にリンカー配列を介して標識物質を結合させた標識体である、請求項1または2に記載の小型RNAを検出する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−94075(P2010−94075A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267568(P2008−267568)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】