小胞体ターゲッティングリポソーム
【課題】 少なくとも1種のPS脂質を含む脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な宿主に投与することを含む、薬物送達の方法を提供する。
【解決手段】 細胞のER膜と融合することができるリポソームのような脂質粒子を含む組成物が提供される。脂質粒子はさらに、細胞のER内腔の内側の粒子の内側に被包された、治療薬またはイメージング剤のようなカーゴを送達することができる。組成物はHIVおよびHCV感染を含むウイルス感染のような、ウイルスによって引き起こされるか、またはウイルスに関連する疾患または状態を治療する、および/または予防することに有用でありうる。
【解決手段】 細胞のER膜と融合することができるリポソームのような脂質粒子を含む組成物が提供される。脂質粒子はさらに、細胞のER内腔の内側の粒子の内側に被包された、治療薬またはイメージング剤のようなカーゴを送達することができる。組成物はHIVおよびHCV感染を含むウイルス感染のような、ウイルスによって引き起こされるか、またはウイルスに関連する疾患または状態を治療する、および/または予防することに有用でありうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
本出願は、2008年3月26日に出願された米国仮特許出願第61/039,638号に対する優先権を主張し、それはそのまま参照として本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本出願は一般に活性薬、たとえば治療薬および/またはイメージング剤を送達するための方法および組成物、さらにとりわけ、リポソームのような脂質粒子を利用する活性薬を送達するための方法および組成物に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様は、少なくとも1種のPS脂質を含む脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な宿主に投与することを含む、薬物送達の方法を提供する。
【0004】
別の態様は、PS脂質またはPI脂質の中の少なくとも1種を含み、CHEMS脂質を含まない脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な宿主に投与することを含む、HIV感染を治療するか、または予防する方法を提供する。
【0005】
さらに別の態様は、少なくとも1種の多価不飽和脂質を含む脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な対象に投与することを含む、薬物送達の方法を提供する。
【0006】
そしてさらに別の態様はPS脂質を含む脂質粒子を含む組成物を提供する。
【0007】
そしてさらに別の態様は少なくとも1種の多価不飽和脂質を含む脂質粒子を含む組成物を提供する。
【0008】
そしてさらに別の態様は、ウイルスに感染した細胞を、a)PIまたはPS脂質の中の少なくとも1種、およびb)少なくとも1種のラベルを含む少なくとも1種の標識脂質を含む脂質粒子と接触させることを含む、ウイルスを標識する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(A)〜(G)は以下の脂質の化学構造を表す:(A)DOPE;(B)DOPC;(C)CHEMS;(D)PI;(E)PS;(F)Rho−PEおよび(G)b−PE。
【図2−1】図2(A)〜(C)はHuh7.5細胞における以下のリポソームとER膜蛋白質EDEMとの共局在を研究した共焦点顕微鏡画像を提示する:(A)PE:CH(モル比3:2)リポソーム;(B)PE:PC(3:2)リポソーム;(C)PE:CH:PI(3:1:1)リポソーム。
【図2−2】図2(D)〜(F)はHuh7.5細胞における以下のリポソームとER膜蛋白質EDEMとの共局在を研究した共焦点顕微鏡画像を提示する:(A)PE:CH(モル比3:2)リポソーム;(B)PE:PC(3:2)リポソーム;(C)PE:CH:PI(3:1:1)リポソーム;(D)PE:PC:PI(2:2:1)リポソーム;(E)PE:CH:PS(3:1:1)リポソーム;(F)PE:PC:PS(2:2:1)リポソーム;(G)PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)リポソーム;(H)PE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)リポソーム。
【図2−3】図2(G)〜(H)はHuh7.5細胞における以下のリポソームとER膜蛋白質EDEMとの共局在を研究した共焦点顕微鏡画像を提示する:(G)PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)リポソーム;(H)PE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)リポソーム。
【図3】図3はリポソームにより送達されたrh−DOPEとEDEM抗体の計算された共局在を提示する。
【図4】図4は、リポソーム中のb−PEのモル百分率の関数として、同じ試料内の分泌されたビリオンの総量(100%)に関するストレプトアビジンにより捕獲されたタグ付きウイルス粒子の百分率を示す。
【図5】図5は、ナイーブHuh7.5細胞と一緒に1時間インキュベーションされたRh−PE−タグ付きJC−1HCVcc(赤色、底部―左パネル)(MOI=0.1)の共焦点顕微鏡画像を示し、その後細胞は洗浄され、新鮮な培地中でさらに0、6、または24時間インキュベーションされた。それぞれのインキュベーション期間後、細胞は固定され、抗−HCVコア抗体(緑色、上部−右パネル)およびDAPI(青色、上部−左パネル)で染色され、その後顕微鏡スライドにマウントされ、共焦点顕微鏡イメージングが行われた。統合画像は底部−右パネルに示される。それぞれのインキュベーション期間の代表的な画像が示される。それぞれの画像の解像度バーは10μmである。
【図6】図6(A)〜(C)は、モル比3:2のPE:CHリポソーム(A);PE:CH:PI(3:1:1)リポソーム(B)およびPE:CH:PS(3:1:1)リポソーム(C)の細胞膜への組み込みを研究した蛍光顕微鏡画像を提示する。
【図7】図7はHuh7.5細胞内側のER−ターゲッティングリポソームの増大した細胞内取り込みおよび脂質保持を実証するプロットを示す。データは、3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値と標準偏差(SD)を表す。グラフはERリポソーム(黒色線)およびpH−感受性リポソーム(赤色線)両方に対する細胞増殖(点線)およびrh−PE−リポソーム取り込み(実線)の2組のデータを表す。Y軸は100%に標準化した2組のデータの最大値を表す。100%細胞増殖の最大値は2.4x10e6細胞/ml(ERリポソームに関して72時間読み取り)であり、rh−PE蛍光の最大値は1.5x10e−3任意単位(AU)/細胞(ERリポソームに関して96時間読み取り)である。
【図8−1】図8(A)は、インキュベーション期間の終了時に、リポソーム膜を破壊するためのTritonX−100の添加により確定される最大蛍光に関して、リポソームから遊離されたカルセインの百分率をPE:CHおよびPE:PC:PI:PSリポソームに対する時間の関数として表すプロットである。
【図8−2】図8(B)は、10%ウシ血清(FBS);10%ヒト血清のいずれかの存在下において、または無血清培地において、Huh7.5細胞と一緒に24時間インキュベーションされたRh−標識リポソーム(50μm脂質濃度)に関する実験の結果を提示する。インキュベーション期間後、細胞は採取され、計数され、そして蛍光はλex=550mm、λexm=590nmにおいて測定された。結果はそれぞれの試料の細胞毎に測定された平均蛍光として提示される。すべてのデータは3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値と標準偏差を表す。
【図9】図9は1xPBSを被包する異なるリポソーム製剤と一緒に5日間インキュベーション後のHuh7.5細胞の生存能力を示す。培地中の最終脂質濃度は0〜500μMまで変動した。結果は3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。
【図10】図10は1xPBSを被包する異なるリポソーム製剤と一緒に5日間インキュベーションした後のPBMCの生存能力を実証する。培地中の最終脂質濃度は0〜500μMまで変動した。結果は3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。
【図11】図11は5日間のリポソームによる処置の間の感染PBMCからのHIVの分泌を表す。
【図12】図12はリポソーム−処置HIV−感染PBMCから分泌されたHIVビリオンの感染力を表す。
【図13】図13は完全DMEM/10%FBS中で45分間Huh7.5細胞と一緒にインキュベーションされた、自己−消光カルセイン−負荷、rh−PE−標識、リポソーム(最終脂質濃度50μM)に関する実験の結果を表す。インキュベーション後のリポソームに由来するカルセインの細胞内消光はλex=490nm、λem=520nmで測定され、同じインキュベーション期間中の総リポソーム取り込みはλex=550nm、λem=590nmにおける蛍光測定により確定された。アッセイは37℃および4℃の両方で実施され、エンドサイトーシスしないリポソーム結合に関して修正するために、すべての4℃の値は37℃の値から差し引かれた。Huh7.5細胞内側に被包されたカルセインを送達するためのリポソームの能力は、インキュベーション後に、処置された細胞におけるカルセイン脱消光とrh−PE蛍光の比を計算することによって測定された。データは3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値とSDを表す。
【図14】図14は、1mM NB−DNJによる5日間処置の間の、感染したPBMCからのHIVの分泌を表す:フリー対リポソーム−媒介送達。
【図15】図15はNB−DNJ−リポソームまたはフリーNB−DNJによって処置されたHIV−感染PBMCから分泌されたHIVビリオンの感染力を示す。
【図16】図16は1mM NB−DNJを被包する異なるリポソーム製剤と一緒に5日間インキュベーション後のPBMCの生存能力を実証する。
【図17】図17はリポソームによる5日間処置後の急性感染および慢性感染両方のHuh7.5細胞からのHCVの分泌を表す。
【図18】図18は、急性感染および慢性感染両方の、リポソーム−処置HCV−感染Huh7.5細胞から分泌されたHCVビリオンの感染力を表す。
【図19】図19は、16時間インキュベーション後にLDを可視化するためにBODIPY493/503(緑色)で探査された、無処置Huh7.5細胞(左パネル)およびPE:PC:PI:PSリポソーム処置−Huh7.5細胞の共焦点顕微鏡画像を示す。
【図20】図20は、PE:PC:PI:PSリポソームで2時間処置され、LD染料(緑色)で探査されたHuh7.5細胞(左パネル)の共焦点顕微鏡画像を示す。PE:PC:PI:PSリポソームは最終脂質濃度50μMになるまで細胞培養培地に添加された。DAPI(青色)は核染料として使用される。底部−右パネルは統合画像である。黄色は細胞内の共局在領域を同定する。
【図21−1】図21Aは、16時間インキュベーションされ、抗−HCVコア抗体(赤色)およびLD染料(緑色)により探査された、無処置Huh7.5細胞(左パネル)およびPE:PC:PI:PSリポソーム処置−Huh7.5細胞(右パネル)の共焦点顕微鏡画像を示す。
【図21−2】図21Bは無処置細胞(左)およびPE:PC:PI:PS細胞(右)両方に関する統合画像(図9Aの白四角)の拡大を示す。
【図21−3】図21CはPE:PC:PI:PSリポソームの存在下(右)および非存在下(左)におけるHCVコア蛋白質/LD相互作用の概念図である。
【図22】図22A〜Dは代表的な多価不飽和脂質:22:6PE(A);20:4PE(B);22:6PC(C)および20:4PC(D)の化学構造を表す。
【図23】図23A〜Bはそれぞれ以下のことを示す:(23A)種々のERリポソーム製剤の存在下において4日間インキュベーションの間の感染したHuh7.5細胞(MOI=0.5)からのJC−1 HCVcc分泌は細胞上清500μlから定量された。分泌は定量PCRによる上清内のJC−1 HCVccRNAの定量により測定される。(23B)リポソーム−処置、JC−1−感染Huh7.5細胞から分泌されたJC−1 HCVccの感染力。分泌されたHCVccの感染力はナイーブHuh7.5細胞の1時間の感染、その後の48時間のインキュベーションにより確定され、その時点で細胞は固定され、感染した細胞の数を定量するために抗−HCVコア抗体により、そしてすべての細胞を可視化するためにDAPIにより染色された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語の定義
特記しない限り、“a”または“an”は“1以上”を意味する。
【0011】
本明細書で使用する“ウイルス感染”という用語は罹病状態を表すことができ、そのような状態においてウイルスは健康な細胞に侵入し、細胞の再生装置を使用して増殖するか、または複製し、最終的に細胞を溶解して細胞死、ウイルス粒子の遊離および新規に産生された子孫ウイルスによる他の細胞の感染に帰着する。ある種のウイルスによる潜伏感染もウイルス感染の可能性のある結果である。
【0012】
本明細書で使用する“ウイルス感染を治療するか、または予防する”という言い方は特有のウイルスの複製を阻止する、ウイルス伝播を阻止する、またはウイルスの宿主中にウイルスが定着することを予防する、およびウイルス感染によって引き起こされる疾患の症状を改善するか、または緩和することを意味しうる。治療がウイルス負荷の低減、死亡率および/または罹病率の減少に帰着する場合、そのような治療は治療効果があると見なすことができる
“治療薬”という用語は、ウイルス感染またはそれによって引き起こされる疾患のような生理的状態を治療することに役立ちうる、分子または化合物のような薬剤を表す。
【0013】
“リポソーム”という用語は、通常球状二重層製剤である二重層製剤において脂質を含む粒子として定義することができる。本明細書で論じられるリポソームは以下の略語によって表される1以上の脂質を含んでいてもよい:
CHEMSはコレステリルヘミスクシネート脂質を意味する。
【0014】
DOPEはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン脂質を意味する。
【0015】
DOPCはジオレオイルホスファチジルコリン脂質を意味する。
【0016】
PEはホスファチジルエタノールアミン脂質またはその誘導体を意味する。
【0017】
PEG−PEはポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートしたPE脂質を意味する。PEG−PEの一例としてはポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン脂質を挙げることができる。PEGのPEG成分の分子量は変化しうる。
【0018】
Rh−PEはリサミンローダミンB−ホスファチジルエタノールアミン脂質を意味する。
【0019】
MCC−PEは、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[4−(p−マレイミドメチル)シクロヘキサン−カルボキサミド]脂質を意味する。
【0020】
PIはホスファチジルイノシトール脂質を意味する。
【0021】
PSはホスファチジルセリンを意味する。
【0022】
“細胞内送達”という用語は、リポソームからいずれかの細胞内コンパートメントへの被包された物質の送達を表すことができる。
【0023】
IC50またはIC90(50%阻害濃度または90%阻害濃度)はそれぞれ、ウイルス感染の50%または90%低減を達成するために使用される治療薬の濃度を表すことができる。
【0024】
PBMCは末梢血単核細胞を意味する。
【0025】
sCD4は可溶性CD4分子を意味する。“可溶性CD4”または“sCD4”または“D1D2”はCD4分子、またはそのフラグメントを意味し、当業者によって理解されるように、それは水性溶液の中にあり、HIV Envのコンホメーションを変更することにより生来の膜−係留CD4の機能を模倣することができる。可溶性CD4の一例としては、例えばSalzwedelらのJ.Virol.74:326 333,2000に記載の2−ドメイン可溶性CD4(sCD4またはD1D2)が挙げられる。
【0026】
MAbはモノクローナル抗体を意味する。
【0027】
DNJはデオキシノジリマイシンを意味する。
【0028】
NB−DNJはN−ブチルデオキシノジリマイシンを意味する。
【0029】
NN−DNJはN−ノニルデオキシノジリマイシンを意味する。
【0030】
BVDVはウシウイルス性下痢症ウイルスを意味する。
【0031】
HBVはB型肝炎ウイルスを意味する。
【0032】
HCVはC型肝炎ウイルスを意味する。
【0033】
HIVはヒト免疫不全症ウイルスを意味する。
【0034】
Ncpは非細胞変性を意味する。
【0035】
Cpは細胞変性を意味する。
【0036】
ERは小胞体を意味する。
【0037】
CHOはチャイニーズハムスター卵巣細胞を意味する。
【0038】
MDBKはMadin−Darbyウシ腎臓細胞を意味する。
【0039】
PCRはポリメラーゼ連鎖反応を意味する。
【0040】
FOSは遊離オリゴサッカライドを意味する。
【0041】
HPLCは高速液体クロマトグラフィーを意味する。
【0042】
PHAはフィトヘマグルチニンを意味する。
【0043】
FBSはウシ胎児血清を意味する。
【0044】
TCID50は50%組織培養感染量を意味する。
【0045】
ELISAは酵素結合免疫吸着法を意味する。
【0046】
IgGはイムノグロブリンを意味する。
【0047】
DAPIは4′,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールを意味する。
【0048】
PBSはリン酸緩衝生理食塩水を意味する。
【0049】
LDは脂肪滴を意味する。
【0050】
NSは非構造を意味する。
【0051】
“MOI”は感染多重度を意味する。
【0052】
関連する出願
本開示は米国特許出願公開第2008−0138351号をそのまま参照として援用する。
【0053】
C型肝炎
世界でおよそ1億7千万人、すなわち世界人口の3%(たとえばWHO,J.Viral.Hepat.1999;6:35−47を参照されたい)および米国のおよそ4百万人がC型肝炎ウイルス(HCV、HepC)に感染している。HCVに急性感染した人の約80%は慢性感染になる。それゆえ、HCVは慢性肝炎の主要な原因である。一旦慢性的に感染すると、ウイルスは治療なしではほとんど取り除けない。まれな症例では、HCV感染は臨床的に急性の疾患および肝不全さえ引き起こす。慢性HCV感染は個人間で劇的に変化することが可能で、ある人は臨床的に重要でないか、あるいは極めて軽度の肝臓疾患に罹患し、決して合併症を発症しないが、他の人は臨床的に明らかな慢性肝炎に罹患し、肝硬変発症に進行する可能性がある。HCVに罹患し、肝硬変を発症する人の約20%は末期肝臓疾患を発症し、そして原発性肝臓癌を発症するリスクが増大することになる。
【0054】
単独の、またはリバビリンとの組み合わせにおける抗ウイルス薬、たとえばインターフェロンは、患者の80%に至るまで有効である(Di Bisceglie,A.M,and Hoofnagle,J.H.2002,Hepatology 36,S121−S127)が、多くの患者はこの組み合わせ療法の形態に耐えられない。
【0055】
脂肪滴
脂肪滴(LD)は中性脂質貯蔵のために使用されうるオルガネラでありうる。LDは細胞質の中を活発に動き、ERを含む他のオルガネラと相互作用することができる。これらの相互作用は他のオルガネラへの脂質および蛋白質の輸送を促進すると考えられる。HCVキャプシド蛋白質(コア)は細胞内LDと会合し、感染性ウイルス粒子産生のために非構造(NS)蛋白質および複製複合体をLD−会合膜に能動的に動員することができる。HCV粒子はLDのすぐそばで観察されていて、ウイルスアセンブリーのいくつかのステップがLD周辺で起こりうることを示している(Miyanariら,Nature Cell Biology,9(2007)pp.1089−1097)。
【0056】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
HIVは後天性免疫不全症候群(AIDS)および関連する障害の原因因子である。少なくとも2種の別個のHIVの型:HIV−1およびHIV−2がある。さらに、これらの型のそれぞれの集団内に大量の遺伝的異質性が存在する。AIDS流行の開始以来、約2千万人が死亡し、概算では4千万を超える人々がHIV−1/AIDSに罹患しながら生存し、世界中で毎日1万4千人が感染している。
【0057】
非常に多くの抗ウイルス治療薬および診断能力が開発されていて、少なくとも利用できる人々にとっては、そのことが命の長さおよび生活の質の両方を大きく改善してきた。これらの薬物の大部分は、ウイルス蛋白質または逆転写のようなプロセスおよびプロテアーゼ活性を妨害する。残念なことに、これらの治療は感染を排除せず、多くの療法の好ましくない効果は過酷であり、そして現在使用されているすべての型の抗ウイルス薬に対してHIVの薬剤耐性株が存在する。
【0058】
N−ブチル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール
N−ブチル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトールとしても公知のNB−DNJはERグルコシダーゼIおよびIIによるプロセッシングを阻止することができ、そしてとりわけ、HIVおよびB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)のような肝炎ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)の糖蛋白質のミスフォールディングおよび/またはER−保持を引き起こすことによる有効な抗ウイルス薬であることが示されている。NB−DNJおよび他のN−置換デオキシノジリマイシン誘導体を合成する方法は、たとえば米国特許第5,622,972号、第4,246,345号、第4,266,025号、第4,405,714号および第4,806,650号に記載される。NB−DNJの抗ウイルス効果は、たとえば肝炎ウイルスに関しては米国特許第6,465,487号;第6,545,021号;第6,689,759号;第6,809,083号に、そしてHIVウイルスに関しては米国特許第4,849,430号において論じられる。
【0059】
NB−DNJのようなグルコシダーゼ阻害剤は細胞培養物およびウッドチャック動物モデルを使用することの両方におけるHBV感染の治療に有効であることが示されている。たとえば、T.Block,X.Lu,A.S.Mehta,B.S.Blumberg,B.Tennant,M.Ebling,B.Korba,D.M.Lansky,G.S.Jacob & R.A.Dwek,Nat Med.1998 May;4(5):610−4を参照されたい。NB−DNJはHBV粒子の分泌を抑制し、HBV DNAの細胞内保持を引き起こす。
【0060】
NB−DNJは、HCVの細胞培養物モデルであるBVDVに対する強い抗ウイルス薬であることが示されている。たとえば、Branza−Nichita N,Durantel D,Carrouee−Durantel S,Dwek RA,Zitzmann N.,J Virol.2001 Apr;75(8):3527−36;Durantel,D.ら,J.Virol,2001,75,8987−8998;N.Zitzmannら,PNAS,1999,96,11878−11882を参照されたい。NB−DNJによる治療は、ウイルス子孫の感染力減少を導くが、分泌されたウイルスの実際の数に対する効果は少ない。
【0061】
NB−DNJはHIVに対する抗ウイルス性があることが示されている;処置はHIV−感染細胞から遊離されたウイルス粒子の数に対しては比較的効果が小さいが、遊離された感染性ウイルスの量は非常に低減される。たとえば、P.B.Fischer,M.Collinら(1995),J.Virol 69(9):5791−7;P.B.Fischer,G.B.Karlsson,T.Butters,R.Dwek and F.Platt,J.Virol.70(1996a),pp.7143-7152、P.B.Fischer,G.B.Karlsson,R.Dwek and F.Platt,.J.Virol.70(1996b),pp.7153-7160を参照されたい。NB−DNJを含む臨床試験はHIV−1感染患者において実施され、結果は抗ウイルス活性に必要な濃度が非常に高く、患者に重篤な副作用を生じることを実証した。たとえば、Fischl M.A.,Resnick L.,Coombs R.,Kremer A.B.,Pottage J.C.Jr,Fass R.J.,Fife K.H.,Powderly W.G.,Collier A.C.,Aspinall R.L.ら,J.Acquir.Immune.Defic.Syndr.1994 Feb;7(2):139−47を参照されたい。現在、NB−DNJ処置に対して耐性のある突然変異HIV株は存在しない。
【0062】
ER蛋白質フォールディングおよびグルコシダーゼIおよびII
グルコシダーゼ阻害によって実証される抗ウイルス効果は、主にカルネキシン/カルレテキュリンサイクルに入ることを遮断することによる、ER内のウイルス糖蛋白質のミスフォールディングまたは保持の結果であると考えられている。伸長しているポリペプチド鎖におけるトリグルコシル化オリゴサッカライド(Glc3Man9GlcNAc2)のAsn−X−Ser/Thrコンセンサス配列への転移後、成熟炭水化物ユニットへのそれ以上のプロセッシングが起こりうる前に3つのα‐結合グルコース残基が遊離されることが必要である。さらに、適切なフォールディングのためにカルネキシン/カルレテキュリンサイクルに入ることを可能にするために2つの外側のグルコース残基が取り除かれなければならない。たとえば、Bergeron,J.J.ら,Trends Biochem.Sci.,1994,19,124−128;Peterson,J.R.ら,Mol.Biol.Cell,1995,6,1173−1184を参照されたい。初期のプロセッシングは、ERに位置し、α1−2結合グルコース残基を特に開裂し、内腔に配向した触媒ドメイン(グルコシダーゼI)を持つ膜内在性酵素に影響を受け;その後α1−3結合グルコース成分の両方を遊離するグルコシダーゼIIの作用を受ける。
【0063】
リポソーム
リポソームは、分子障壁としての役割を果たす細胞膜を回避することによって、水溶性化合物を細胞の内側に直接送達することができる。pH感受性リポソーム製剤は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)またはその誘導体、たとえばDOPEと、中性pHにおいて安定化剤としての役割を果たす酸性基を含む化合物の組み合わせを含むことができる。コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)は、in vivoにおいて他の両親媒性安定化剤に比較してそのコレステロール基がPE含有小胞に高い安定性を与えるため、優れた安定化分子でありうる。リポソーム−媒介送達のin vivoでの効力は、それらの薬物動態および生体内分布に影響を与える血清成分(オプソニン)との相互作用に強く依存しうる。pH−感受性リポソームは、血液循環から速やかに除去され、肝臓および腎臓に蓄積するが、共有結合したポリエチレングリコール(PEG)を持つ脂質の包含は、DOPE:CHEMSリポソームの正味の負電荷を安定化し、長期の循環時間を導くことにより、細網内皮系(RES)によるクリアランスに打ち勝つことができる。DOPE−CHEMSおよびDOPE−CHEMS−PEG−PEリポソームならびにそれらの調製の方法は、たとえばV.A.Slepushkin,S.Simoes,P.Dazin,M.S.Newman,L.S.Guo and M.C.P.de Lima,J.Biol.Chem.272(1997)2382−2388;およびS.Simoes,V.Slepushkin,N.Duzgunes and M.C.Pedroso de Lima,Biomembranes 1515(2001)23−37に記載され、それらは共にそのまま参照として本明細書に援用される。
【0064】
DOPE−CHEMS(モル比6:4)に被包されたNB−DNJの送達は米国特許出願第US2003/0124160号に開示される。
【0065】
開示
発明者らはPIまたはPS脂質(図1を参照されたい)の中の少なくとも1種を含む、リポソームまたはミセルのような脂質粒子は細胞により効率的に取り込まれ、そしてその細胞のER膜と融合してもよいと考える。発明者らはまた、PIまたはPS脂質の中の少なくとも1種を含む脂質粒子は、血液または血清のような血液成分中で高い安定性を有しうることを発見した。たとえば、PIまたはPS脂質の中の少なくとも1種を含むリポソームは、DOPE/CHEMSリポソーム(モル比6:3)またはDOPE/CHEMS/PEG−PE(モル比6:3:0.1)リポソームより、血清中で高い安定性を有しうる。
【0066】
ある態様では、脂質粒子は少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または3%から60%、または5%から50%、または10%から30%のモル濃度でPIおよび/またはPS脂質を含むことができる。ある態様では、脂質粒子中のPS脂質のモル濃度は、少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または3%から60%、または5%から50%、または10%から30%でありうる。ある態様では、脂質粒子中のPI脂質のモル濃度は、少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または3%から60%、または5%から50%、または10%から30%でありうる。ある態様では、脂質粒子中のPIとPS脂質を組み合わせた濃度は、少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または3%から60%、または5%から50%、または10%から30%でありうる。
【0067】
脂質粒子はさらに1種以上のホスファチジルエタノールアミン(PE)脂質またはその誘導体、たとえばDOPEを含んでいてもよい。ある態様では、PE脂質はラベルとコンジュゲートしたPE脂質を含んでいてもよく、該ラベルはたとえば、フルオロフォアラベル、ビオチンラベル、または放射性ラベルでありうる。図1A、1Fおよび1Gは、DOPE脂質、フルオロフォアとコンジュゲートしたPE脂質の例であるRho−PE脂質、およびビオチンラベルとコンジュゲートしたPE脂質の例であるb−PE脂質を提示する。
【0068】
ある態様では、脂質粒子はPCまたはCHEMSリポソームの中の少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。さらにある他の態様では、脂質粒子はPCおよび/またはCHEMS脂質を含まないような粒子であってもよい。
【0069】
ある態様では、PE、PC、PIおよびPS脂質を含む脂質粒子が好ましくてもよい。そのような脂質粒子は、細胞内LDを妨害してもよく、そのことがこれらの脂質粒子によって処置されたHCV―感染細胞から分泌されたHCV粒子の感染力の著しい低減を導いてもよい。PE、PC、PIおよびPS脂質を含む脂質粒子はHCV−感染細胞への脂質の導入に使用されて、LD/HCVコア蛋白質相互作用を妨害してもよい。さらに、PE、PC、PIおよびPS脂質を含む脂質粒子はHCVと同じ細胞受容体を競い、その結果、ウイルスの細胞への侵入を妨げ、ウイルス感染力を低減させてもよい。
【0070】
ウイルス感染
脂質粒子は対象においてウイルスによって引き起こされるか、またはウイルスに関連した疾患または状態を治療する、予防するおよび/またはモニターするために使用することができ、そのような対象は多くの場合哺乳類または鳥類のような温血動物でありうる。多くの場合、対象はヒトでありうる。多くの場合、該疾患または状態はウイルス感染でありうる。
【0071】
ある態様では、PIまたはPS脂質の中の少なくとも1種を含む脂質粒子は、フラビウイルス科に属するウイルスによって引き起こされるか、またはウイルスに関連した疾患または状態を治療する、予防するおよび/またはモニターするために使用することができる。フラビウイルス科にはフラビウイルス属;ヘパシウイルス属およびペスティウイルス属が挙げられる。
【0072】
フラビウイルス属には、ガジェッツガリー(Gadgets Gully)ウイルス(GGYV)、カダム(Kadam)ウイルス(KADV);キャサヌール森林病(Kyasanur Forest disease)ウイルス(KFDV);ランガット(Langat)ウイルス(LGTV);オムスク出血熱(Omsk hemorrhagic fever)ウイルス(OHFV);ポーワッサン(Powassan)ウイルス(POWV);ロイヤルファーム(Royal Farm)ウイルス(RFV);ダニ−媒介性脳炎ウイルス(TBEV);跳躍病ウイルス(LIV);メアバン(Meaban)ウイルス(MEAV);サウマレッツリーフ(Saumarez Reef)ウイルス(SREV);チュレニー(Tyuleniy)ウイルス(TYUV);アロア(Aroa)ウイルス(AROAV);デング(Dengue)ウイルス(DENV)1−4;ケドゴウ(Kedougou)ウイルス(KEDV);カシパコア(Cacipacore)ウイルス(CPCV);コウタンゴ(Koutango)ウイルス(KOUV);日本脳炎ウイルス(JEV);マレー渓谷脳炎(Murray Valley encephalitis)ウイルス(MVEV);セントルイス脳炎(St.Louis encephalitis)ウイルス(SLEV);ウスツ(Usutu)ウイルス(USUV);西ナイル(West Nile)ウイルス(WNV);ヤオウンド(Yaounde)ウイルス(YAOV);ココベラ(Kokobera)ウイルス(KOKV);バガザ(Bagaza)ウイルス(BAGV);イレウス(Ilheus)ウイルス(ILHV);イスラエルトルコ脳膜脳脊髄炎(Israel turkey meningoencephalomyelitis)ウイルス(ITV);ンタヤ(Ntaya)ウイルス(NTAV);テンブス(Tembusu)(TMUV);ジカ(Zika)ウイルス(ZIKV);バンジ(Banzi)ウイルス(BANV);ボウボウイ(Bouboui)ウイルス(BOUV);エッジヒル(Edge Hill)ウイルス(EHV);ジュグラ(Jugra)ウイルス(JUGV);サボヤ(Saboya)ウイルス(SABV);セピク(Sepik)ウイルス(SEPV);ウガンダS(Uganda S)ウイルス(UGSV);ベッセルスブロン(Wesselsbron)ウイルス(WESSV);黄熱病(Yellow fever)ウイルス(YFV);エンテベコウモリ(Entebbe bat)ウイルス(ENTV);ヨコセ(Yokose)ウイルス(YOKV);アポイ(Apoi)ウイルス(APOIV);カウボーンリッジ(Cowbone Ridge)ウイルス(CRV);ジュチアパ(Jutiapa)ウイルス(JUTV);モドク(Modoc)ウイルス(MODV);サルビエヤ(Sal Vieja)ウイルス(SVV);サンパーリタ(San Perlita)ウイルス(SPV);ブカラサコウモリ(Bukalasa bat)ウイルス(BBV);カーレー島(Carey Island)ウイルス(CIV);ダカーコウモリ(Dakar bat)ウイルス(DBV);モンタナミオチス白質脳炎(Montana myotis leukoencephalitis)ウイルス(MMLV);フノンペンコウモリ(Phnom Penh bat)ウイルス(PPBV);リオブラボ(Rio Bravo)ウイルス(RBV)が挙げられる。ヘパシウイルス属には、C型肝炎ウイルス(HCV、Hep C)が挙げられる。ペスティウイルス属には、ボーダー病(Border disease)ウイルス、ウシ下痢症ウイルス(BVDV);および豚コレラ(Classical swine fever)ウイルスが挙げられる。フラビウイルスによって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患には、デング熱;日本脳炎;キャサヌール森林病(Kyasanur Forest disease);マレー渓谷脳炎(Murray Valley encephalitis);セントルイス脳炎(St. Louis encephalitis);チックボーン脳炎(Tick−borne encephalitis);西ナイル脳炎(West Nile encephalitis)および黄熱病が挙げられる。ヘパシウイルスによって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患にはC型肝炎ウイルス感染が挙げられる。ペスティウイルスによって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患には、豚コレラ(Classical swine fever)(CSF)およびウシウイルス性下痢(BVD)またはウシウイルス性下痢/粘膜病(BVD/MD)が挙げられる。
【0073】
ある態様では、脂質粒子はヘパドナウイルス科に属するウイルスよって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患または状態を治療する、予防するおよび/またはモニターするために使用されうる。ヘパドナウイルス科には、B型肝炎ウイルスを含むオルトヘパドナウイルス属、およびアヒルB型肝炎ウイルスを含むアビヘパドナウイルス属が挙げられる。ヘパドナウイルスによって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患にはB型肝炎ウイルス感染が挙げられる。
【0074】
ある態様では、脂質粒子はレトロウイルス科に属するウイルスよって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患または状態を治療する、予防するおよび/またはモニターするために使用されうる。レトロウイルス科には、トリ白血病ウイルスを含むアルファレトロウイルス属;マウス乳癌ウイルスを含むベータレトロウイルス属;マウス白血病ウイルスおよびネコ白血病ウイルスを含むガンマレトロウイルス属;ウシ白血病ウイルスおよびヒトT−リンパ球向性ウイルスを含むデルタレトロウイルス属;ウォールアイ皮膚肉腫ウイルス(Walleye dermal sarcoma virus)を含むイプシロンレトロウイルス属;ヒト免疫不全ウイルスI、サル免疫不全ウイルスおよびネコ免疫不全ウイルスを含むレンチウイルス属;チンパンジー泡沫状ウイルスを含むスプーマウイルス属が挙げられる。レトロウイルス科に属するウイルスによって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患および状態にはHIV I感染が挙げられる。
【0075】
ある態様では、脂質粒子は糖蛋白質含有ウイルスよって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患または状態を治療する、予防するおよび/またはモニターするために使用されうる。脂質粒子は、対象、たとえばヒトに組成物の一部として投与される場合、感染、たとえばウイルス感染の治療および予防のために使用されてもよい。ある態様では、そのような感染は糖蛋白質含有ウイルス、すなわち少なくとも1種の糖蛋白質を含むウイルスによって引き起こされるか、またはそれに関連した感染であってもよい。さらにある態様では、そのような感染は、肝炎感染、たとえばHCV感染またはHBV感染であってもよい。さらにある態様では、そのような感染はレトロウイルス感染、たとえばHIVであってもよい。さらにある態様では、感染はフラビウイルス感染、たとえばHCVであってもよい。
【0076】
脂質粒子がHIV感染を治療するために使用される場合、それがHIV感染細胞から分泌されたHIV粒子の感染力を低減させてもよい。
【0077】
脂質粒子がHCV感染を治療するために使用される場合、それが細胞内LDを妨害し、HCV感染細胞から分泌されたHCV粒子の感染力を低減させてもよい。PE、PC、PIおよびPS脂質を含む脂質粒子がそのような場合に好ましくてもよい。
【0078】
本発明はそれらの操作理論によって限定されるが、発明者らは、PE、PC、PIおよびPS脂質を含む脂質粒子がHCVと同じ細胞受容体を競い、その結果ウイルスの細胞への侵入を妨げ、ウイルス感染力を低減させると考えている。
【0079】
活性薬
ある態様では、少なくとも1種の薬剤、たとえば治療薬またはイメージング剤は脂質粒子内側に被包されてもよい。そのような薬剤は、たとえば、水溶性分子、ペプチドまたはアミノ酸であってもよい。被包された活性薬と一緒に脂質粒子を含む組成物は、活性薬が有効であることが公知の疾患または状態を治療する、予防する、またはモニターするために使用することができる。該疾患または状態は、活性薬の細胞内送達が有益であってもよい任意の疾患または状態であってもよい。
【0080】
PIおよび/PS脂質を含む脂質粒子の使用は、細胞のER内腔への被包された物質の送達を考慮してもよい。
【0081】
ある態様では、脂質粒子の内側に被包された薬剤は、α−グルコシダーゼ阻害剤でありうる。ある態様では、α−グルコシダーゼ阻害剤はERα−グルコシダーゼ阻害剤であってよく、そしてそれはERα−グルコシダーゼI阻害剤またはERα−グルコシダーゼII阻害剤であってもよい。一般に、ウイルスエンベロップ糖蛋白質の適切なフォールディングをカルネキシンおよび/またはカルレティキュリンとの相互作用に頼る任意のウイルスがERα−グルコシダーゼ阻害剤の目標にされうる。
【0082】
アルファグルコシダーゼ阻害剤は、宿主のアルファ−グルコシダーゼ酵素活性を、薬剤の非存在下におけるアルファ−グルコシダーゼの酵素活性に比較して少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%、またはそれより多く阻止する薬剤でありうる。“アルファ−グルコシダーゼ阻害剤”という用語は、宿主のアルファ−グルコシダーゼ活性を阻止する、天然に存在する薬剤および合成薬剤の両方を包含する。適切なアルファ−グルコシダーゼ阻害剤には、限定するものではないがデオキシノジリマイシンおよびN−置換デオキシノジリマイシン、たとえば式Iの化合物:
【0083】
【化1】
【0084】
および薬剤的に受容可能なその塩を挙げることができ、式中、R1は分枝鎖または直鎖アルキル基でありうる置換、または非置換アルキル基;置換、または非置換シクロアルキル基;置換、または非置換アリール基、置換、または非置換オキサアルキル基、置換、または非置換アリールアルキル、シクロアルキルアルキルから選択され、そしてW、X、Y、およびZはそれぞれ独立して水素、アルカノイル基、アロイル基、およびハロアルカノイル基から選択される。
【0085】
ある態様では、R1はC1〜C20アルキル基またはC3〜C12アルキル基から選択されうる。ある態様では、R1はエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、へプチル、n−オクチル、n−ノニルおよびn−デシルから選択されうる。ある態様では、R1はブチルまたはノニルでありうる。
【0086】
ある態様では、R1はC1〜C20アルキル基またはC3〜C12アルキル基であってよく、さらに1から5、または1から3、または1から2個の酸素原子を含むことができるオキサルキルでありうる。オキサルキル基の例としては、−(CH2)2O(CH2)5CH3、−(CH2)2O(CH2)6CH3、-(CH2)6OCH2CH3、および−(CH2)2OCH2CH2CH3が挙げられる。
【0087】
ある態様では、R1はアリールアルキル基でありうる。アリールアルキル基の例としてはC1〜C12−Ph基、たとえばC3−Ph、C4−Ph、C5−Ph、C6−PhおよびC7−Phが挙げられる。
【0088】
ある態様では、式Iの化合物は以下の化合物から選択されるが、それらに限定されない:N−(n−ヘキシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−ヘプチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−オクチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−オクチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール、テトラブチレート;N−(n−ノニル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(n−デシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(n−ウンデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(n−ノニル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−デシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−ウンデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−ドデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(2−エチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(4−エチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(5−メチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(3−プロピルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(1−ペンチルペンチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(1−ブチルブチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(7−メチルオクチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(8−メチルノニル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(9−メチルデシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(10−メチルウンデシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(6−シクロヘキシルヘキシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(4−シクロヘキシルブチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(2−シクロヘキシルエチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(1−シクロヘキシルメチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(1−フェニルメチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(3−フェニルプロピル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(3−(4−メチル)−フェニルプロピル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(6−フェニルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−ノニル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(n−デシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(n−ウンデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(n−ドデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(2−エチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(4−エチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(5−メチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(3−プロピルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(1−ペンチルペンチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(1−ブチルブチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(7−メチルオクチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(8−メチルノニル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(9−メチルデシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(10−メチルウンデシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(6−シクロヘキシルヘキシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(4−シクロヘキシルブチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(2−シクロヘキシルエチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(1−シクロヘキシルメチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(1−フェニルメチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(3−フェニルプロピル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(3−(4−メチル)−フェニルプロピル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(6−フェニルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;薬剤的に受容可能なその塩;およびそのいずれか2種以上の混合物。
【0089】
N−置換デオキシノジリマイシンが有効でありうる疾患および状態は以下の米国特許に開示される:第4,849,430号;第4,876,268号;第5,411,970号;第5,472,969号;第5,643,888号;第6,225,325号;第6,465,487号;第6,465,488号;第6,515,028号;第6,689,759号;第6,809,083号;第6,583,158号;第6589,964号;第6,599,919号;第6,916,829号;第7,141,582号。N−置換デオキシノジリマイシンが有効でありうる疾患および状態には以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:HIV感染;C型肝炎感染およびB型肝炎感染を含む肝炎感染;テイサックス病、ゴーシェ病、クラッベ病およびファブリー病を含むリソソーム脂質蓄積症;ならびに嚢胞性線維症。
【0090】
ある態様では、α−グルコシダーゼ阻害剤は、N−オキサアルキル化デオキシノジリマイシンまたはN−アルキルオキシデオキシノジリマイシン、たとえば米国特許第4,639,436号に記載のN−ヒドロキシエチルDNJ(ミグリトール(Miglitol)またはグリセット(Glyset)(登録商標))でありうる。
【0091】
ある態様では、α−グルコシダーゼ阻害剤はカスタノスペルミンおよび/またはカスタノスペルミン誘導体、たとえば、6−O−ブタノイルカスタノスペルミン(セルゴシビル(celgosivir))を含む米国特許出願第2006/0194835号に開示された式(I)の化合物および薬剤的に受容可能なその塩、ならびにPCT公開第WO01054692号に開示された式IIの化合物または薬剤的に受容可能なその塩でありうる。
【0092】
カスタノスペルミンおよびその誘導体が有効でありうる疾患および状態は、米国特許第
4,792,558号;第4,837,237号;第4,925,796号;第4,952,585号;第5,004,746号;第5,214,050号;第5,264,356号;第5,385,911号;第5,643,888号;第5,691,346号;第5,750,648号;第5,837,709号;第5,908,867号;第6,136,820号;第6,583,158号;第6,589,964号;第6,656,912号および米国特許公報20020006909;20020188011;20060093577;20060194835;20080131398に開示される。カスタノスペルミンおよびその誘導体が有効でありうる疾患および状態には、HIV感染を含むレトロウイルス感染;脳性マラリア;B型肝炎感染およびC型肝炎感染を含む肝炎感染;糖尿病ならびにリソソーム蓄積障害が挙げられるが、それらに限定されない。
【0093】
ある態様では、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤はアカルボース(O−4,6−ジデオキシ−4−[[(1S,4R,5S,6S)−4,5,6−トリヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2−シクロヘキセン−1−イル]アミノ]−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−→−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−グルコース)、またはプレコース(Precose)(登録商標)でありうる。アカルボースは米国特許第4,904,769号に開示される。ある態様では、アルファグルコシダーゼ阻害剤はアカルボースの高度に精製された形状(米国特許第4,904,769号を参照されたい)でありうる。
【0094】
ある態様では、リポソーム内側に被包された薬剤はイオンチャンネル阻害剤でありうる。ある態様では、イオンチャンネル阻害剤はHCVp7蛋白質の活性を阻止する薬剤でありうる。イオンチャンネル阻害剤およびそれらを同定する方法は米国特許公開第2004/0110795号に詳述される。適切なイオンチャンネル阻害剤には、N−(7−オキサ−ノニル)−1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−7−オキサ−ノニル6−MeDGJまたはUT231B)およびN−10−オキサウンデクル−6−MeDGJを含む式Iの化合物および薬剤的に受容可能なその塩が挙げられる。適切なイオンチャンネル阻害剤にはさらに、N−ノニルデオキシノジリマイシン、N−ノニルデオキシガラクトノジリマイシンおよびN−オキサノニルデオキシガラクトノジリマイシンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0095】
ある態様では、リポソーム内に被包された薬剤はイミノ糖でありうる。適切なイミノ糖には、天然に存在するイミノ糖および合成イミノ糖の両方が挙げられる。
【0096】
ある態様では、イミノ糖はデオキシノジリマイシンまたはN−置換デオキシノジリマイシン誘導体でありうる。適切なN−置換デオキシノジリマイシン誘導体の例としては、本出願の式IIの化合物、米国特許第6,545,021号に記載の式Iの化合物およびN−オキサアルキル化デオキシノジリマイシン、たとえば米国特許第4,639,436号に記載のN−ヒドロキシエチルDNJ(ミグリトールまたはグリセット(登録商標))が挙げられる。
【0097】
ある態様では、イミノ糖はカスタノスペルミンまたはカスタノスペルミン誘導体でありうる。適切なカスタノスペルミン誘導体には、米国特許出願第2006/0194835号に開示された式Iの化合物および薬剤的に受容可能なその塩ならびにPCT公開第WO01054692号に開示された式IIの化合物および薬剤的に受容可能なその塩が挙げられるが、それらに限定されない。
【0098】
ある態様では、イミノ糖は、PCT公開第WO99/24401号および第WO01/10429号に開示されたもののような、デオキシガラクトノジリマイシンまたはそのN−置換誘導体でありうる。適切なN−置換デオキシガラクトノジリマイシン誘導体の例としては、N−アルキル化デオキシガラクトノジリマイシン(N−アルキル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール)、たとえばN−ノニルデオキシガラクトノジリマイシン、およびN−オキサ−アルキル化デオキシガラクトノジリマイシン(N−オキサ−アルキル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール)、たとえばN−7−オキサノニルデオキシガラクトノジリマイシンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0099】
ある態様では、イミノ糖は式IIの化合物:
【0100】
【化2】
【0101】
(式中、Rは置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換ヘテロシクリル基、または置換もしくは非置換オキサアルキル基から選択される)を含むN−置換1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−置換MeDGJ)でありうるが、それらに限定されない。ある態様では、置換もしくは非置換アルキル基および/または置換もしくは非置換オキサアルキル基は1から16個の炭素原子、または4から12個の炭素原子または8から10個の炭素原子を含む。ある態様では、置換もしくは非置換アルキル基および/または置換もしくは非置換オキサアルキル基は1から4個の酸素原子、そして他の態様では1から2個の酸素原子を含む。他の態様では、置換もしくは非置換アルキル基および/または置換もしくは非置換オキサアルキル基は1から16個の炭素原子および1から4個の酸素原子を含む。従って、ある態様では、Rは−(CH2)6OCH3、−(CH2)6OCH2CH3、−(CH2)6O(CH2)2CH3、−(CH2)6O(CH2)3CH3、−(CH2)2O(CH2)5CH3、−(CH2)2O(CH2)6CH3、および−(CH2)2O(CH2)7CH3から選択されるが、それらに限定されない。N−置換MeDGJは、たとえばPCT公開第WO01/10429号に開示される。
【0102】
ある態様では、リポソーム内側に被包された薬剤は式IIIを有する窒素含有化合物:
【0103】
【化3】
【0104】
または薬剤的に受容可能なその塩を挙げることができ、式中、R12はC1〜C20、またはC1〜C6またはC7〜C12またはC8〜C16のようなアルキルであり、さらに1から5または1から3または1から2個の酸素を含むことができ、R12はオキサ−置換アルキル誘導体でありうる。オキサ−置換アルキル誘導体の例としては3−オキサノニル、3−オキサデシル、7−オキサノニルおよび7−オキサデシルが挙げられる。
【0105】
R2は水素であり、R3はカルボキシもしくはC1〜C4アルコキシカルボニルであるか、またはR2とR3は一緒に:
【0106】
【化4】
【0107】
であり、式中、nは3または4であり、それぞれのXは独立して水素、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、C1〜C4アルキルカルボキシ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ヒドロキシアルキル、C1〜C6アシルオキシ、またはアロイルオキシであり、そしてそれぞれのYは独立して水素、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、C1〜C4アルキルカルボキシ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ヒドロキシアルキル、C1〜C6アシルオキシ、アロイルオキシであるか、または除去され(すなわち、存在しない);
R4は水素であるか、または除去され(すなわち、存在しない);そして
R5は水素、ヒドロキシ、アミノ、置換されたアミノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アシルオキシ、もしくはアロイルオキシであるか、またはR3とR5は一緒にフェニルを形成し、そしてR4は除去される(すなわち、存在しない)。
【0108】
ある態様では、窒素含有化合物は式:
【0109】
【化5】
【0110】
を有し、式中R6〜R10のそれぞれは独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、C1〜C4アルキルカルボキシ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ヒドロキシアルキル、C1〜C4アシルオキシ、およびアロイルオキシからなる群から選択され;そしてR11は水素またはC1〜C6アルキルである。
【0111】
窒素含有化合物はN−アルキル化ピペリジン、N−オキサ−アルキル化ピペリジン、N−アルキル化ピロリジン、N−オキサ−アルキル化ピロリジン、N−アルキル化フェニルアミン、N−オキサ−アルキル化フェニルアミン、N−アルキル化ピリジン、N−オキサ−アルキル化ピリジン、N−アルキル化ピロール、N−オキサ−アルキル化ピロール、N−アルキル化アミノ酸、またはN−オキサ−アルキル化アミノ酸でありうる。ある態様では、N−アルキル化ピペリジン、N−オキサ−アルキル化ピペリジン、N−アルキル化ピロリジン、またはN−オキサ−アルキル化ピロリジン化合物はイミノ糖でありうる。たとえば、ある態様では、窒素含有化合物は式:
【0112】
【化6】
【0113】
を有する、N−アルキル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−アルキル−DGJ)もしくはN−オキサ−アルキル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−オキサ−アルキル−DGJ)、または式:
【0114】
【化7】
【0115】
を有するN−アルキル−1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−アルキル−MeDGJ)もしくはN−オキサ−アルキル−1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−オキサ−アルキル−MeDGJ)でありうる。
【0116】
本明細書で使用する基は、炭素原子の数が別に特定されない限り、以下の特徴を有する。アルキル基は1から20個の炭素原子を有し、線状であるか、または分枝し、置換されるか、または置換されない。アルコキシ基は1から16個の炭素原子を有し、線状であるか、または分枝し、置換されるか、または置換されない。アルコキシカルボニル基は2から16個の炭素原子を有するエステル基である。アルケニルオキシ基は2から16個の炭素原子、1から6個の二重結合を有し、線状であるか、または分枝し、置換されるか、または置換されない。アルキニルオキシ基は2から16個の炭素原子、1から3個の三重結合を有し、線状であるか、または分枝し、置換されるか、または置換されない。アリール基は6から14個の炭素原子(たとえば、フェニル基)を有し、そして置換されるか、または置換されない。アラルキルオキシ(たとえば、ベンジルオキシ)およびアロイルオキシ(たとえば、ベンゾイルオキシ)基は、7から15個の炭素原子を有し、そして置換されるか、または置換されない。アミノ基は、第1、第2、第3、または第4アミノ基(すなわち、置換されたアミノ基)でありうる。アミノカルボニル基は、1から32個の炭素原子を有するアミド基(たとえば、置換されたアミド基)である。置換された基は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C1−10アシル、またはC1−10アルコキシからなる群から選択される置換基を含むことができる。
【0117】
N−アルキル化アミノ酸は、N−アルキル化a−アミノ酸のような、N−アルキル化された天然に存在するアミノ酸でありうる。天然に存在するアミノ酸は、20個の一般的α−アミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Asp、Asn、Lys、Glu、Gln、Arg、His、Phe、Cys、Trp、Tyr、Met、およびPro)、ならびに天然の産物、たとえばノルロイシン、エチルグリシン、オルニチン、メチルブテニル−メチルトレオニンおよびフェニルグリシンであるその他のアミノ酸の中の1種である。アミノ酸側鎖(たとえばR5)の例としては、H(グリシン)、メチル(アラニン)、−CH2C(O)NH2(アスパラギン)、−CH2−SH(システイン)、および−CH(OH)CH3(トレオニン)が挙げられる。
【0118】
N−アルキル化化合物はアミノ(またはイミノ)化合物の還元アルキル化によって調製されうる。たとえば、アミノまたはイミノ化合物は、アミンをN−アルキル化するために還元剤(たとえば、シアノ水素化ほう素ナトリウム)と一緒にアルデヒドに暴露されうる。同様に、N−オキサ−アルキル化化合物はアミノ(またはイミノ)化合物の還元アルキル化によって調製されうる。たとえば、アミノまたはイミノ化合物はアミンをN−オキサ−アルキル化するために還元剤(たとえば、シアノ水素化ほう素ナトリウム)と一緒にオキサ−アルデヒドに暴露されうる。
【0119】
窒素含有化合物は1以上の保護基を含むことができる。種々の保護基が公知である。一般に、保護基が化合物の他の位置でのいずれか次の反応の条件に対して安定であり、分子の残余部分に有害な影響を与えずに適切な時点で除去されうるならば、保護基の種類は重要ではない。その上、保護基は実質的な合成変換が完了した後、別のものに置換されてもよい。明らかに、ある化合物が、本明細書に開示された化合物の1以上の保護基が異なる保護基によって置換されているという点においてだけ開示された化合物と異なる場合、その化合物は本発明の範囲内にある。別の例および条件はGreene、Protective Groups in Organic Chemistry、(1版,1981,Greene & Wuts、2版,1991)に見出される。
【0120】
窒素含有化合物は、たとえば結晶化またはクロマトグラフィー法によって精製することができる。該化合物は出発物質として立体特異的アミノまたはイミノ化合物を使用することにより立体特異的に調製することができる。
【0121】
長鎖N−アルキル化化合物の調製において出発物質として使用されるアミノおよびイミノ化合物は市販のもの(Sigma,St.Louis,MO;Cambridge Research Biochemicals,Norwich,Cheshire,United Kingdom;Toronto Research Chemicals,Ontario,Canada)を入手するか、または公知の合成法によって調製することができる。。たとえば、該化合物はN−アルキル化イミノ糖化合物またはそのオキサ−置換誘導体でありうる。イミノ糖は、たとえばデオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)、1−メチル−デオキシガラクトノジリマイシン(MeDGJ)、デオキシノジリマイシン(DNJ)、アルトロスタチン、2R,5R−ジヒドロキシメチル−3R,4R−ジヒドロキシピロリジン(DMDP)、またはその誘導体、エナンチオマー、もしくは立体異性体でありうる。
【0122】
ある態様では、脂質粒子内側に被包された薬剤は式IVまたはVの化合物:
【0123】
【化8】
【0124】
(式中、Rは:
【0125】
【化9】
【0126】
であり、R′は:
【0127】
【化10】
【0128】
であり、R1は置換もしくは非置換アルキル基であり;R2は置換もしくは非置換アルキル基であり;W1〜4は水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換ハロアルキル基、置換もしくは非置換アルカノイル基、置換もしくは非置換アロイル基、または置換もしくは非置換ハロアルカノイル基から独立して選択され;X1〜5はH、NO2、N3、またはNH2から独立して選択され;Yは存在しないか、またはカルボニル以外の置換もしくは非置換C1−アルキル基であり;ZはボンドまたはNHから選択され;Zがボンドである場合、Yは存在せず、そしてZがNHである場合、Yはカルボニル以外の置換または非置換C1−アルキル基であり;そしてZ’はボンドまたはNHである。式IVおよびVの化合物ならびにそれらの合成方法は、たとえば、米国公開公報第US2007/0275998号に開示される。式IVおよびVの化合物の限定的でない例としては、N−(N′−{4′アジド−2′−ニトロフェニル)−6−アミノヘキシル)−デオキシノジリマイシン(NAP−DNJ)およびN−(N′−{2,4−ジニトロフェニル)−6−アミノヘキシル)−デオキシノジリマイシン(NDP−DNJ)が挙げられる。
【0129】
多様なイミノ糖化合物の合成は記載されている。たとえば、米国特許第5,622,972号、第5,401,645号、第5,200,523号、第5,043,273号、第4,994,572号、第4,246,345号、第4,266,025号、第4,405,714号、および第4,806,650号が挙げられる。他のイミノ糖誘導体を合成する方法は公知であり、たとえば米国特許第4,861,892号、第4,894,388号、第4,910,310号、第4,996,329号、第5,011,929号、第5,013,842号、第5,017,704号、第5,580,884号、第5,286,877号、および第5,100,797号、ならびにPCT公開第WO 01/10429号に記載される。2R,5R−ジヒドロキシメチル−3R,4R−ジヒドロキシピロリジン(DMDP)のエナンチオ特異的合成はFleet & Smith(Tetrahedron Lett.26:1469−1472,1985)によって記載される。
【0130】
イメージング剤は、タグ付きもしくは蛍光水性物質、たとえばカルセイン、または蛍光標識分子、たとえばsiRNA、抗体、または他の低分子阻害剤でありうる。また、タグ付き脂溶性物質、たとえば細胞においてリポソームを可視化するために使用されるrh−PE脂質、および可視化または精製のためにタグを付けた他の類似の脂質は、細胞の膜への組み込みのために脂質粒子に組み込まれうる。また、これには可視化または精製のための蛍光部分または他のタグを付けたタグ付き脂溶性蛋白質または薬物を挙げることができる。
【0131】
ターゲッティング部分
ある態様では、脂質粒子を含む組成物は、脂質粒子とコンジュゲートするか、または粒子の脂質単層もしくは脂質二重層に挿入されうる、少なくとも1つのターゲッティング部分を含んでいてもよい。ある態様では、ターゲッティング部分はウイルスのエンベロップ蛋白質のリガンドであってもよいリガンド、またはウイルスのエンベロップ蛋白質に対する抗体であってもよい抗体であってもよい。そのような部分はウイルスに感染した細胞を粒子の目標にするために使用されてもよい。そのようなターゲッティング部分はまた、ウイルスに関連するか、またはウイルスによって引き起こされるウイルス感染に対する排除(sterilizing)免疫を獲得するために使用されてもよい。
【0132】
ある態様では、ターゲッティング部分はgp120/gp41ターゲッティング部分を含んでいてもよい。そのような場合、脂質粒子を含む組成物がHIV−1感染を治療する、および/または予防するために好ましくてもよい。gp120/gp41ターゲッティング部分は、sCD4分子またはモノクローナル抗体、たとえばIgG2F5もしくはIgGb12抗体を含むことができる。
【0133】
ある態様では、ターゲッティング部分はE1またはE2ターゲッティング部分、たとえばHCVに由来するE1またはE2蛋白質を含むことができる。そのような場合、脂質粒子を含む組成物がHCV感染を治療する、および/または予防するために好ましくてもよい。ある場合には、ターゲッティング部分はE1および/またはE2蛋白質を目標にすることができる分子、たとえばこれらの蛋白質に対する特定の抗体、および細胞受容体の可溶性部分、たとえば可溶性CD81またはSR−B1分子であってもよい。
【0134】
挿入部分
ある態様では、脂質粒子はその脂質単層、または二重層に挿入された1以上の部分を含んでいてもよい。挿入部分の例としては、膜貫通蛋白質、蛋白質脂質コンジュゲート、標識脂質、脂溶性化合物またはいずれかその組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0135】
ある態様では、挿入部分は脂質−PEGコンジュゲートを含んでいてもよい。そのようなコンジュゲートは脂質粒子のin vivo安定性を増してもよく、および/またはその循環時間を増してもよい。
【0136】
ある態様では、挿入部分は長いアルキル鎖イミノ糖、たとえばC7〜C16アルキルもしくはオキサアルキル置換N−デオキシノジリマイシン(DNJ)、またはC7〜C16アルキルもしくはオキサアルキル置換N−デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)を含んでいてもよい。長いアルキル鎖イミノ糖の限定的でない例としては、N−ノニルDNJおよびN−ノニルDGJが挙げられる。
【0137】
ある態様では、挿入部分はフルオロフォア−脂質コンジュゲートを含んでいてもよく、そしてそれは脂質二重層粒子と接触する細胞のER膜を標識するために使用されてもよい。そのような標識は真核細胞におけるライブおよび/または固定−細胞イメージングに有用であってもよい。
【0138】
PIおよび/またはPS脂質を含む脂質粒子の使用が細胞のER膜への挿入部分の送達に帰着してもよい。
【0139】
多価不飽和脂質粒子
本発明者らはまた、少なくとも1種の多価不飽和脂質を含む脂質粒子、たとえばリポソームが、対象、たとえばヒトにおける、感染、たとえばウイルス感染を治療するおよび/または予防することにおいて有効であってもよいと考えている。
【0140】
ある態様では、多価不飽和脂質は、脂質粒子中の総脂質のモルで少なくとも5%、モルで少なくとも10%、モルで少なくとも15%、モルで少なくとも20%、モルで少なくとも25%、モルで少なくとも30%、モルで少なくとも35%、モルで少なくとも40%、モルで少なくとも45%、モルで少なくとも50%、モルで少なくとも55%、モルで少なくとも60%、モルで少なくとも65%、モルで少なくとも70%、モルで少なくとも75%、モルで少なくとも80%、モルで少なくとも85%、モルで少なくとも90%、またはモルで少なくとも95%を構成してもよい。
【0141】
本明細書で使用する“多価不飽和脂質”という用語は、その疎水性尾部に、1より多い不飽和化学結合、たとえば二重結合または三重結合を含む脂質を表す。
【0142】
ある態様では、多価不飽和脂質はその疎水性尾部に、2から8個、または3から7個または4から6個の二重結合を有することができる。
【0143】
本明細書で使用する“多価不飽和脂質粒子”という用語は、少なくとも1種の多価不飽和脂質を含む脂質粒子を表す。
【0144】
ある態様では、脂質粒子は1種以上の多価不飽和脂質を含んでいてもよい。
【0145】
好ましくは、多価不飽和脂質粒子は多価不飽和PEまたは多価不飽和PC脂質の中の少なくとも1種を含む。図22A〜Dは代表的な多価不飽和PEおよびPC脂質の化学構造を提供する。
【0146】
脂質粒子は、1種以上の付加的な脂質、たとえばPI、PS、またはCHEMSをさらに含んでいてもよい。
【0147】
多価不飽和PEまたは多価不飽和PC脂質の中の少なくとも1種を含む多価不飽和脂質は、先に開示した疾患または状態のような、ウイルスによって引き起こされるか、またはウイルスに関連した疾患または状態を治療する、予防する、モニターするために使用されてもよい。多くの態様では、そのような疾患および状態はウイルス感染でありうる。ある態様では、そのような感染は肝炎感染、たとえばHCV感染またはHBV感染であってもよい。さらにある態様では、そのような感染はレトロウイルス感染、たとえばHIVであってもよい。さらにある態様では、該感染はフラビウイルス感染、たとえばHCV感染であってもよい。
【0148】
ある態様では、多価不飽和脂質粒子は、少なくとも1種の活性薬、たとえば先に開示した薬剤を被包していてもよい。
【0149】
ある態様では、多価不飽和脂質粒子は粒子の脂質単層または二重層に挿入される少なくとも1種の部分を含んでいてもよく、該部分は先に開示した挿入部分のいずれであってもよい。
【0150】
ある態様では、脂質粒子を含む組成物は粒子に結合したターゲッティング部分を含んでいてもよく、しかも該部分は先に開示したターゲッティング部分のいずれであってもよい。
【0151】
ある態様では、PE、PC、PIおよびPS脂質を含み、それらの中の少なくとも1種は不飽和である多価不飽和脂質粒子が、HCV感染の治療または予防に好ましくてもよい。本発明はそれらの操作理論に限定されないが、発明者らはPE、PC、PIおよびPS脂質を含む多価不飽和脂質粒子はHCV−感染細胞からのHCVビリオンの分泌を顕著に減少させうると考えている。なぜなら、ER膜であるHCV複製部位への多価不飽和脂質の送達はHCV RNA複製、その後のHCV分泌を低減しうるからである。
【0152】
投与
ある態様では、脂質粒子を含む組成物は細胞に投与されうる。細胞はウイルスに感染した細胞でありうる。多くの場合、接触した細胞は哺乳動物または鳥のような温血動物に由来する細胞でありうる。ある態様では、接触した細胞はヒトに由来する細胞でありうる。
【0153】
ある態様では、脂質粒子を含む組成物は個体に投与されうる。対象は哺乳動物または鳥のような温血動物でありうる。多くの場合、対象はヒトでありうる。ある態様では、脂質粒子を含む組成物は静脈内注射によって投与されうる。さらにある態様では、脂質粒子を含む組成物は静脈内注射以外の非経口経路、たとえば腹腔内、皮下、皮内、上皮内、筋肉内または経皮経路を介して投与されうる。さらにある態様では、脂質粒子を含む組成物は粘膜表面、たとえば眼球、鼻腔内、肺、腸、直腸、および尿路表面を介して投与されうる。
【0154】
脂質含有組成物、たとえばリポソーム組成物の投与経路は、たとえばA.S.Ulrich,Biophysical Aspects of Using Liposomes as Delivery Vehicles,Bioscience Reports,22巻,2号,Apr 2002,129-150に開示される。
【0155】
脂質粒子を介した治療薬、たとえばNB−DNJのER内腔への送達は、非リポソーム法に比較してER−グルコシダーゼの阻害に必要な治療薬の有効量を減らすことができる。たとえば、NB−DNJの場合、IC90は少なくとも100、または少なくとも500、または少なくとも1000、または少なくとも5000、または少なくとも10000、または少なくとも50000、または少なくとも100000低減されうる。そのようなNB−DNJの有効な抗ウイルス量の低減によって、投与されるNB−DNJの最終濃度は哺乳動物、とりわけヒトにおける毒性レベルより1桁以上低い濃度に帰着しうる。
【0156】
ある態様では、治療薬、たとえばNB−DNJを含む脂質粒子を含む組成物は1以上の付加的な治療薬、たとえば抗ウイルス薬と組み合わせて感染した細胞と接触することができる。ある場合には、そのような付加的な治療薬はNB−DNJと一緒に脂質粒子の中に共に被包されうる。さらにある場合には、感染した細胞をそのような付加的な治療薬と接触させることは、細胞を含む対象への付加的な治療薬の投与の結果でありうる。付加的な治療薬の投与は、組成物に治療薬を添加することによって実行することができる。さらにある場合には、付加的な治療薬の投与はNB−DNJを含む脂質粒子を含む組成物を投与することとは別個に行うことができる。そのような別個の投与は、脂質粒子を含む組成物に使用される投与経路と同じでありうるか、または異なりうる投与経路を介して行うことができる。
【0157】
組み合わせ療法は、抗ウイルス活性に必要な薬剤の有効投薬量を低減し、それによってその毒性を低減するだけでなく、複数の機序を通してウイルスを攻撃する結果として純粋な抗ウイルス効果を改善してもよい。
【0158】
その上、組み合わせ療法はウイルス耐性の発生のチャンスを妨げるか、または減少させるための手段を提供することができる。
【0159】
NB−DNJを含むリポソームと組み合わせて使用することができる特有の付加的な治療薬は、処置されることになる疾患または状態に依存しうる。たとえば、HBV、HCVまたはBVDV感染のような肝炎感染の場合、そのような治療薬はヌクレオシドまたはヌクレオチド抗ウイルス薬および/または免疫賦活/免疫修飾薬でありうる。肝炎処置のためにNB−DNJと組み合わせて使用することができる種々のヌクレオシド薬、ヌクレオチド薬および免疫賦活/免疫修飾薬は、2004年2月10日に発行されたJacobらの米国特許第6,689,759号に例示される。たとえば、C型肝炎処置の場合、NB−DNJはヌクレオシド薬としての1−b−D−リボフラノシル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド(リバビリン)、および免疫賦活/免疫修飾薬としてのインターフェロン、たとえばインターフェロンアルファと組み合わせてリポソーム中に被包されうる。リバビリンおよび/またはインターフェロンによる肝炎感染の処置は、たとえば米国特許第6,172,046号;第6,177,074号;第6,299,872号;第6,387,365号;第6,472,373号;第6,524,570号および第6,824,768号で論じられる。
【0160】
HIV感染を治療する場合、NB−DNJを含むリポソームと組み合わせて使用することができる治療薬は抗−HIV薬であってよく、それらはたとえば、ヌクレオシド逆転写酵素(RT)阻害剤、たとえば(−)−2′−デオキシ−3′−チオシチジン−5′−トリフォスフェート(3TC);(−)−cis−5−フルオロ−1−[2−(ヒドロキシ−メチル)−[1,3−オキサチオラン−5−イル]シトシン(FTC);3′−アジド−3′−デオキシチミジン(AZT)およびジデオキシ−イノシン(ddI);非ヌクレオシドRT阻害剤、たとえばN11−シクロプロピル−4−メチル−5,11−ジヒドロ−6H−ジピリド[3,2−b:2′3′−e]−[1,4]ジアゼピン−6−オン(ネビパリン(Neviparine))、プロテアーゼ阻害剤またはその組み合わせでありうる。抗HIV治療薬は、AZT、DDI、およびネビラピン組み合わせのように、二重または三重の組み合わせで使用することができる。
【0161】
ある態様では、脂質粒子内側に被包される薬剤は、たとえば米国特許出願第11/832,891号の14〜20ページに開示された薬剤であってもよく、該開示はそのまま参照として本明細書に援用される。脂質粒子はER膜と脂質粒子の中の脂質との融合時にERの内腔に被包された薬剤を送達してもよい。
【0162】
標識脂質
ある態様では、脂質粒子は放射性ラベル、フルオロフォアラベルまたはビオチンラベルのような少なくとも1種のラベルにより標識される少なくとも1種の標識脂質を含み、それゆえ粒子自体を標識してもよい。
【0163】
標識脂質粒子は、後に画像処理されうる細胞のER膜の特定の標識のために使用されてもよい。この技術によって画像処理することができる細胞の型は特に限定されない。イメージングは、たとえばライブ(live)または固定(fixed)イメージングによって行われてもよい。固定イメージングは、パラホルムアルデヒドのような固定液で固定されていてもよい死細胞のイメージングを表すことができる。細胞は、マウンティングおよびイメージングの前に、特定の蛋白質またはラベルを検出するために透過化され、抗体で探査されうる。ライブセル顕微鏡検査の場合、イメージングが行われている間、細胞は培地中で依然として生きた状態のままでありうる。
【0164】
標識粒子はウイルスを標識するために使用されてもよい。そのような研究方法を使用して標識されてもよいウイルスの例としては、ER−出芽ウイルス、たとえばBVDVおよびHCVが挙げられる。ラベルがフルオロフォアラベルの場合、標識された脂質二重層粒子は標識されたウイルスのイメージングのために使用されてもよく、そして該イメージングはライブおよび/または固定イメージングでありうる。
【0165】
ラベルがビオチンラベルである場合、標識された脂質粒子は標識されたウイルス粒子の精製のために使用されてもよい。ある場合には、そのような精製はストレプトアビジンを使用して行うことができる。ストレプトアビジンはビオチン−標識物質のバッチ精製のためのセファロースビーズに連結することができる。
【0166】
本発明はさらに以下の実施例によって説明されるが、決してそれらに限定されない。
【実施例】
【0167】
1.リポソーム調製
リポソームは記載されたすべてのアッセイに対して新たに調製された。脂質のクロロホルム溶液はガラス試験管に入れられ、溶媒は窒素ガス流下で留去された。特記しない限り、脂質フィルムは1xPBSバッファー中ボルテックスで攪拌することにより、最終脂質濃度5mMに水和された。生じたマルチラメラ小胞はMini−Extruder装置を使用し、ポア直径100nmのポリカーボネートフィルターを11回通して押し出された。リポソームは0.22μmフィルターユニットを使用して濾過滅菌された。図1(A)〜(E)はこれらの研究で使用された脂質を提示する:A.DOPE;B.DOPC;C.CHEMS;D.PI;E.PS。実験で使用されたPEG−PEはPEG(MW−2000)−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンであった。コレステリルヘミスクシネートを除くすべての脂質は、リポソームの調製のためのすべての物質と同じように、Avanti Polar Lipids(USA)から購入した。コレステリルヘミスクシネートはSigma(UK)から購入した。
【0168】
2.PIおよび/またはPSを含むリポソームはERに局在する
この実験の目的は、PIおよび/またはPS脂質と一緒に、またはそれらを含まずにPEおよびPCまたはCHEMSを含むリポソームでHuh7.5細胞(ヒト肝臓細胞)を処置し、それらのER膜との共局在を確定することであった。リポソームはすべてのリポソームへのローダミン−タグ付きPE(Rh−PE)の組み込みによって標識された。Huh7.5細胞のER膜は抗−EDEM抗体を使用して標識された。EDEM抗体はSanta Cruz Biotechnology(USA)から購入した。共局在は共焦点顕微鏡によって確定された。顕著な共局在は、Huh7.5細胞のER膜と融合するリポソームの証拠として役立ちうる
2.1.リポソーム処置Huh7.5細胞のER膜とリポソームとの共局在を可視化するための特定の方法論:
脂質組成PE:CH、PE:PC、PE:CH:PI、PE:PC:PI、PE:CH:PS、PE:PC:PS、PE:CH:PI:PS、およびPE:PC:PI:PSを持つリポソームは先に記載のように調製され、可視化のためにRh−PEを1%(総モル)含んだ。Huh7.5細胞は番号1.5のガラスカバースライドに一晩接着させ、その後培地が交換され、最終脂質濃度50μMになるまで添加されたリポソームを含む新鮮な培地と取り替えられた。37℃/5%CO2で5分間インキュベーション後、リポソームを含む培地は除去され、細胞は1xPBSで2回洗浄され、付加的に30分間新鮮な培地中でインキュベーションされ、1xPBS/0.1%Tween−20で希釈された4%パラホルムアルデヒド中で15分間固定され、1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄された。その後細胞は4μg/ml抗−EDEM抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄され、4μg/mlFITC−標識二次抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、さらに2回洗浄された。細胞はDAPIで染色され、その後顕微鏡スライドにマウントされた。Carl Zeiss LSM顕微鏡を使用して共焦点画像が撮られ、画像解析はLSMソフトウェアv5.10.を使用して行われた。図1Fはこれらのアッセイで使用されたRh−PE脂質の構造を示す。
【0169】
2.2.Huh7.5細胞における異なるリポソームとERマーカーEDEMとの共局在:
図2(A)〜(F)は、脂質PIおよび/またはPSを含むリポソームがER−膜蛋白質EDEMと共局在したことを実証する。リポソームは5分間Huh7.5細胞と一緒にインキュベーションされ、その後培地は交換され、細胞はリポソームを含まない培地でインキュベーションされた。細胞は固定され、30分間インキュベーション後、抗−EDEM抗体(緑色、上部右画像)で探査され、リポソームに由来するRh−PE脂質との共局在(赤色、底部左画像)は共焦点顕微鏡により確定された。DAPI(青色、上部左画像)は核染料として使用される。共局在は統合画像(底部、右)内の黄色の存在によって測定された。実験は3回反復され、代表的な画像が示される。図2A.PE:CH(モル比3:2)リポソーム;図2B.PE:PC(3:2)リポソーム;図2C.PE:CH:PI(3:1:1)リポソーム;図2D.PE:PC:PI(2:2:1)リポソーム;図2E.PE:CH:PS(3:1:1)リポソーム;図2F.PE:PC:PS(2:2:1)リポソーム;図2G.PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)リポソーム;図2H.PE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)リポソーム。
【0170】
リポソームとER膜マーカー(EDEM)との共局在は先に記載のように、得られた画像を使用して定量された。
【0171】
2.3.画像共局在の定量のための方法論:
MetaMorphソフトウェア(v.7,Molecular Devices,Downingtown,PA,U.S.A.)を使用してパーセンテージ共局在が測定された。画像はメディアンフィルターセットを使用して3x3ピクセルにフィルター処理され、2つの画像(rh−PE/赤色画像およびEDEM/緑色画像)間の統合した共局在を確定するために使用される閾値は、それぞれに対して平均濃度プラス1標準偏差(SD)に設定された。報告された値は30細胞の平均値±SDを表す。
2.4.リポソームとERマーカー(EDEM)のパーセント共局在解析の結果:
画像共局在の定量の結果は、DOPE:CHまたはDOPE:DOPCリポソームへの20%PIまたは20%PSの組み込みがER膜との共局在を著しく増すことを示唆しうる。DOPE:CH:PIおよびDOPE:CH:PSからなるリポソームは、DOPE:CHだけの場合の13%(SD=6.6%)と比較して、それぞれ52%(SD=8.0%)および46%(SD=8.1%)の共局在を実証した。同様に、DOPE:DOPC:PIとDOPE:DOPC:PSの組成物は、DOPE:DOPCリポソームの場合の12%(SD=4.7%)と比較して、それぞれ64%(SD=8.1%)および48%(SD=7.6%)の共局在を実証した。DOPE:CHおよびDOPE:DOPCリポソーム内の20%PIと20%PSの組み合わせはさらにER膜への共局在を増し、その結果DOPE:CH:PI:PSリポソームは76%(SD=8.7%)のER膜共局在を実証し、88%(SD=3.5%)共局在がDOPE:DOPC:PI:PSリポソームにより観察された。
【0172】
図3は、MetaMorphソフトウェアを使用して、リポソーム調製物毎に30の別個の細胞を分析することにより、リポソーム−送達rh−DOPEとEDEM抗体の計算された共局在が確定されたことを示し、ここでは%共局在を確定するために使用される閾値は、それぞれの画像に対して平均濃度プラス1SDに設定された。示された結果は30細胞の平均共局在とSDを表す。
【0173】
これらの結果は、Huh7.5細胞において、PEと組み合わせて脂質PIおよび/またはPSを含むリポソームだけが、リポソームによる5分間パルス(pulse)および30分間追跡(chase)後のERマーカーとの増加した共局在を示すことを実証することができる。ERリポソーム、すなわちPIおよび/またはPS脂質を含むリポソームはERマーカーとの顕著な共局在を実証するため、蛍光−標識ERリポソームが真核細胞のER膜を標識するための迅速で安価な技術として使用されてもよい。
【0174】
3.ERリポソームを介して送達される脂質は、アセンブルし、ER膜から出芽することが公知のウイルスのエンベロップに組み込まれる
以下の実験の目的は、共焦点顕微鏡によって、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)に感染したMadin−Darbyウシ腎臓(MDBK)細胞およびHCV細胞培養物(HCVcc)−感染Huh7.5細胞を、ER膜と共局在することが示されたリポソームにより処置し、そして分泌されたウイルス粒子内へのタグ付きリポソーム脂質の組み込みを調べることであった。BVDVおよびHCVは両方ともアセンブルし、ER膜から出芽するウイルスであり;従って分泌されたウイルス粒子へのリポソームを介して送達されるタグ付き脂質の組み込みは、これらの細胞のER膜とリポソームの融合を示唆する。HIV−1感染末梢血単核細胞(PBMC)は、細胞膜から出芽するウイルスへの脂質の組み込みを検出するための対照として使用される。
【0175】
3.1.ビオチン化PE脂質を使用して分泌されたウイルス粒子へのリポソーム脂質の組み込みをモニターするための特定の方法論:
BVDV細胞培養物:Madin−Darbyウシ腎臓(MDBK)細胞は完全DMEM/10%FBS中、6ウェルプレートのウェル毎に3x105細胞で播種され、0.1の感染多重度(MOI)でncpBVDV株Pe515(National Animal Disease Laboratory,United Kingdom)に感染し、3日毎に10%(vol/vol)ウシ胎児血清を含む新鮮なRPMI1640培地2mlに1:8希釈で継代された。分泌されたBVDV粒子を定量するためのRT−PCRによって確定される安定な感染が達成された後、リポソーム処置が開始された。定量PCRは取り扱い説明書に従って、QIAampウイルスRNA精製キット(QIAamp Viral RNA Purification Kit)(QIAGEN)を使用して上清500μlに対して行われた。リアルタイムPCRは、SyBr Green Mix(QIAGEN)およびncpBVDV RNAに対して設計されたプライマー(フォワード:TAG GGC AAA CCA TCT GGA AG、リバースプライマー:ACT TGG AGC TAC AGG CCT CA)を使用して行われた。
【0176】
JC−1 HCV細胞培養物(HCVcc):Huh7.5細胞(Apath,LLC,Saint Louis,U.S.A.)は10%ウシ胎児血清(FBS)を含む完全DMEM(100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、および1xMEM)中で培養された。すべてのインキュベーションは37℃/5%CO2で行われた。細胞はMOI=0.5で1時間感染し、HCVコア蛋白質免疫蛍光による確定の結果、50%を超える細胞がHCVcc感染に陽性と評価された場合、リポソーム処置が開始された。上清に由来するウイルスRNAの定量、ならびに分泌された粒子の感染力は、それぞれ定量PCRおよびコア蛋白質免疫蛍光によって確定された。
【0177】
HIV細胞培養物:4人の非感染ドナーに由来する末梢血単核細胞(PBMC)は
Histopaque密度勾配遠心法(Sigma−Aldrich,Gillingham,U.K.)を使用して分離され、プールされ、完全RPMI(RPMIプラス10%FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび2mM L−グルタミン)中で、フィトヘマグルチニン(PHA、5μg/ml)により48時間、その後インターロイキン−2(IL2、40U/ml)により72時間刺激された後、実験が開始された。特記しない限り、すべてのインキュベーションは37℃/5%CO2で行われた。細胞を感染させるために、4x106PHA−活性化PBMCおよび初代分離株ストックの100TCID50(50%組織培養感染量)は、6−ウェルプレートのウェル毎に、2ml完全RPMI/10%FBS中で一緒にインキュベーションされた。細胞は16時間感染し、完全RPMI培地で3回洗浄され、その後リポソームとのインキュベーションが開始された。
【0178】
分泌されたビオチン−標識粒子の精製:ウイルス感染細胞は75cm2フラスコで培養され、培地は50μM b−PE−標識22:6ERリポソームを含む培地と取り替えられ、そのまま48時間インキュベーションされた。その後細胞はPBSで2回洗浄され、リポソームを含まない新鮮な培地中でさらに24時間インキュベーションされた。
【0179】
分泌された粒子を含む上清は採取され、細胞はトリパンブルー染色を使用して計数され、そして上清はPBSを使用して試料細胞数に標準化された。分泌されたHCVccおよびBVDVは定量PCRにより力価を測定され、分泌されたビリオンの感染力が確定された。HIV−1はp24捕獲ELISA(capture ELISA)により定量された。ビオチン化粒子捕獲のために高性能ストレプトアビジンセファロース(GE Healthcare)が使用された。セファロースビーズはPBSで1:50(vol:vol)に希釈することにより2回洗浄され、室温で5分間穏やかに混合され、1500rpmで3分間遠心分離することによりペレット化された。セファロースは再懸濁されて50%スラリーを形成し、培養上清(培養上清10ml毎に50%スラリー200μl)に添加された。セファロースおよび上清はそのまま穏やかに振盪しながら室温で1時間インキュベーションされ、その後セファロースビーズは先に記載のようにPBSで5回洗浄された。b−PE−標識ビリオンの量を定量するために1mlの培養上清は取りおかれ、その中の500μlが総ウイルス定量のために使用され、そして500μlがストレプトアビジンセファロース上に捕獲され、PBSで5回洗浄され、そしてHCVccおよびBVDV RT−PCR解析用にウイルスRNA溶解バッファー(QIAGEN)と一緒にビーズをインキュベーションすることにより、またはp24 HIV ELISAアッセイ用に1%エンピゲン(empigen)中でインキュベーションすることにより、RNA定量に直接使用された。
【0180】
3.2.分泌されたウイルス粒子へのb−PE脂質の組み込み:
図1Gは使用されるビオチン化PE脂質(b−PE)の構造を示す。ビオチン−標識PE(b−PE)は、ERリポソーム、すなわちPIおよび/またはPS脂質を含むリポソームに0.1、0.5、1、5、または10モル%で組み込まれ、分泌されたHCVおよびBVDV(2種のER−出芽ウイルス)にタグを付けるための至適濃度は1%であると確定され、該濃度はそれぞれ分泌されたビリオンの総数の90%(SD=3.6%)および91%(SD=1.5%)を捕獲する(図4)。HIV−1の初代分離株(LAI)に感染したPBMCは同様にb−ERリポソームによって処置され、分泌されたHIV−1粒子はいずれも検出可能な量のタグ付き脂質を含まなかった(図4)。この結果は、生産的HIV−1アセンブリーは細胞膜で発生するため、脂質をERおよびER−結合膜に送達するためのこのシステムの特異性を強調することができる。
【0181】
図4はJC−1−感染Huh7.5細胞、BVDV−感染MDBK、またはHIV−1−感染PBMCと48時間インキュベーションしたb−PE脂質を含むERリポソーム(最終脂質濃度50μM)に関する実験の結果を示す。感染細胞は洗浄され、リポソームの非存在下でその後の24時間のインキュベーション期間中に分泌されたb−PE−標識ウイルス粒子はストレプトアビジン−セファロースレジンを使用して捕獲された。結果は、同じ試料内で分泌されたビリオンの総量(100%)に関するストレプトアビジンによって捕獲された標識ウイルス粒子の百分率として表示される。
【0182】
図4の結果は、ER−局在リポソーム(PIおよび/またはPSと組み合わせてPEを含むリポソーム)を介してBVDV−感染MDBK細胞およびHCVcc−感染Huh7.5細胞に送達される脂質は、リポソーム処置中に分泌されるBVDVおよびHCVccウイルスエンベロップの大部分に存在するが、HIVエンベロップには存在しないことを実証する。BVDVおよびHCVはアセンブルし、ER膜から出芽することが公知であるが、HIVは細胞膜においてアセンブルし、そこから出芽するため、このことは、PIおよび/またはPS脂質を含むリポソームは細胞のER膜との融合が可能であるというさらなる証拠である。
【0183】
ERリポソームによる処置後のER−出芽ウイルスへのタグ付き脂質の組み込みはビオチン化脂質に限定されず、蛍光顕微鏡観察による可視化のための蛍光脂質を含むビリオンを産生するために、蛍光脂質が同じように使用されてもよい。
【0184】
3.3.共焦点顕微鏡を使用してrh−PEリポソーム処置後のrh−PE−タグ付きHCVccを画像処理するための方法論:
Huh7.5細胞は75cm2フラスコ中で十分にコンフルエントになるまで培養され、その後培地は50μMのrh−PE−標識22:6ERリポソームを含む培地に取り替えられた。細胞はそのまま48時間インキュベーションされ、PBSで2回洗浄され、リポソームを含まない新鮮な培地中で24時間インキュベーションされた。分泌された粒子を含む上清が採取された。分泌されたHCVccは定量PCRによって力価を測定され、分泌されたビリオンの感染力は先に記載のように確定された。共焦点顕微鏡によるrh−HCVccの可視化のために、ナイーブHuh7.5細胞は完全DMEM/10%FCS中で番号1.5のガラスカバースライドに一晩接着させ、その後、培地はrh−HCVccウイルスストックと取り替えられ、1時間インキュベーションされた。感染後、細胞はPBSで2回洗浄され、新鮮な培地は種々のインキュベーション期間に対して取り替えられ、1xPBSで2回洗浄され、メタノール:アセトン(1:1、vol:vol)で10分間固定され、そして最後に1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄された。その後細胞は初代抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、1xPBS/0.1%Tween−20で4回洗浄され、蛍光−標識二次抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、さらに4回洗浄された。細胞はDAPIで染色され、顕微鏡スライドにマウントされた。共焦点画像はCarl Zeiss LSM顕微鏡を使用して撮られ、画像解析はLSMソフトウェアv5.10.を使用して行われた。
【0185】
3.4.共焦点顕微鏡によるrh−タグ付きHCVccの可視化:
我々は1%rh−ERリポソームおよび固定―細胞共焦点顕微鏡観察を使用して、Huh7.5細胞におけるHCVcc感染を可視化している(図5)。Rh−タグ付きHCVccは1%rh−ERリポソームの存在下で48時間インキュベーション後24時間集められ、MOI=0.1でナイーブ細胞を1時間感染させるために使用された。固定共焦点画像は1時間感染後、ならびに6時間および24時間感染後ただちに撮られ、透過化された細胞は確かにHCVcc粒子を同定するために、抗−HCVコア抗体により探査された。これらの画像において、コア−陽性粒子は感染後1時間まで細胞表面上で直径およそ1μmの単一クラスターとして出現し、その時点でこのクラスターはエンドサイトーシスされるように見え、そしておよそ5μmのクラスターに広がる。この大きなクラスターは細胞の核に向かって移動し、感染した細胞の核の特徴的なくぼみを形成し(図5)、その時点でクラスターは消失し、rh−タグ付き脂質はHCVコア蛋白質から分離し始める。増大したコア蛋白質レベルが感染後およそ24時間目に細胞で観察されて、樹立された感染および新規なコア蛋白質合成を表してもよい。
【0186】
図5は、ナイーブHuh7.5細胞と一緒に1時間インキュベーションされ、その後洗浄され、さらに0、6、または24時間、新鮮な培地中でインキュベーションされた、Rh−PE−タグ付きJC−1 HCVcc(赤色、底部−左パネル)に関する実験の結果を示す。それぞれのインキュベーション期間後、細胞は固定され、抗−HCVコア抗体(緑色、上部−右パネル)およびDAPI(青色、上部−左パネル)で染色され、その後顕微鏡スライドへのマウント、共焦点顕微鏡によるイメージングが行われた。統合画像は底部−右パネルに示される。それぞれのインキュベーション期間の代表的な画像が示される。固定された細胞の共焦点顕微鏡観察がこれらの解析において使用されるが、この技術は、ライブ−セル顕微鏡観察により追跡するための多様な脂質−フルオロフォアコンジュゲートによりビリオンを標識するための方法を提案する。他の脂質コンジュゲートまたは膜貫通蛋白質も細胞のER膜への特定の送達のためにERリポソームへ取り込まれうるため、この型の組み込み技術はビオチンまたは蛍光タグ付き脂質に限定されない。
【0187】
4.ERリポソームを介して送達される脂質はpH−感受性リポソームに比較して細胞中でより長い寿命を有する
この実験の目的は、MDBK細胞を蛍光−標識リポソームで処置し、期間全体にわたってそれらの細胞膜への取り込みおよび組み込みをモニターすることであった。pH−感受性リポソーム、すなわち、PIおよびPS脂質を含まないDOPE−CHEMSまたはDOPE−CHEMS−PEG−PEリポソームは細胞に入ると考えてよく、そしてエンドソームにおけるリポソーム膜の破壊後、脂質はリソソームへのエンドソーム経路に沿って留まると考えられる。PIおよび/またはPS脂質を含むリポソームが細胞内の他の膜と融合することが可能であるならば、それらはpH−感受性リポソームに比較してより長い寿命を有するべきである。リポソームを介して細胞に送達されたRho−PE脂質は5分間処置後、MDBK細胞と一緒に48時間にわたり蛍光顕微鏡により可視化された。
【0188】
4.1.細胞膜へのリポソーム組み込みをモニターするための特定の方法論:
PE:CH、PE:CH:PI、およびPE:CH:PSリポソームは先に記載のように調製され、可視化のために1%(総モル)のRh−PEを含んだ。MDBK細胞は50%のコンフルエンシーで6ウェルプレートに播種され、そのまま一晩接着させた。細胞は1xPBSで2回洗浄され,その後、2mlの完全RPMIに最終脂質濃度50μMになるまで添加されたRh−標識リポソームにより、5分間、37℃、5%CO2で処置された。5分間インキュベーション後、細胞は1xPBSで2回洗浄され、新鮮な完全RPMI培地2mlがそれぞれのウェルに添加され、そしてプレートはそのまま1、10、24、および48時間インキュベーションされた。それぞれのインキュベーション期間終了時に、細胞は2回洗浄され、1xPBS/0.1% Tween−20で希釈された4%パラホルムアルデヒド中で15分間固定され、1xPBS/0.1% Tween−20で2回洗浄された。細胞はイメージング前にDAPIで染色された。蛍光画像はNikon Eclipse TE2000−U顕微鏡により撮られ、画像解析はNikon ACT−1ソフトウェアv2.70を使用して行われた。
【0189】
4.2.細胞膜へのリポソームの組み込み:
図6(A)〜(C)は、脂質PIまたはPSと組み合わせたPEからなるリポソームの蛍光顕微鏡画像がpH−感受性リポソームに比較して細胞膜への増大した組み込みを実証することを示す。MDBK細胞はRh−PE標識リポソームにより5分間処置され、その後細胞は洗浄され、そのまま培地中で1、10、24、および48時間だけインキュベーションされた。それぞれのインキュベーション期間後、細胞は固定され、Rh−PE脂質(赤色)は蛍光顕微鏡下で可視化される。DAPI(青色)は核染料として使用される。実験は2回反復され、1回の実験に由来する代表的な画像が示される。図A.PE:CH(モル比3:2)リポソーム。図6B.PE:CH:PI(モル比3:1:1)リポソーム。図6C.PE:CH:PS(モル比3:1:1)リポソーム。
【0190】
図6の結果は、PIまたはPSと組み合わせたPEからなるリポソームはMDBK細胞の膜への組み込みが可能であることを示す。PE:CH脂質を介して細胞に送達されたRh−PE脂質は細胞培地からのリポソーム除去後24時間でほとんど消失するが、PE:CH:PIおよびPE:CH:PSを介して送達された脂質は48時間にわたって依然として細胞に存在し、膜へのより多い組み込みを示唆する。
【0191】
4.3.処置された細胞におけるリポソーム取り込みおよび脂質保持の定量:
4日間のインキュベーション期間にわたりHuh7.5細胞におけるリポソーム取り込み速度をモニターするために、細胞は培地中において最終脂質濃度50μMの、1%rh−PEを含むDOPE:CHおよびDOPE:DOPC:PI:PSリポソームと一緒にインキュベーションされた。細胞は低密度で播種され、リポソーム取り込みは細胞増殖に関して測定された。4日間インキュベーション後、処置されたHuh7.5細胞は洗浄され、いずれのリポソームも含まない培地に戻され、DOPE:CHおよびDOPE:DOPC:PI:PSリポソームを介して送達されるrh−DOPE脂質の半減期がモニターされた。
【0192】
4.4.処置された細胞におけるリポソーム取り込みおよび脂質保持を定量するための方法論:
リポソームは先に記載のように調製され、細胞におけるそれらの取り込みをモニターするために1%(総モル)のrh−PEを含んだ。長期(4日間)リポソーム取り込みアッセイのために、Huh7.5細胞は2mlの完全DMEM培地/10%FBSのウェル毎に105細胞で6ウェルプレートに播種された。Rh−PE−標識リポソームは最終リン脂質濃度50μMになるまで細胞に添加され、37oC/5% CO2で2、24、48、72、および96時間、そのままインキュベーションされた。インキュベーション期間後、細胞は採取され、分析された。分析のために、細胞は1xPBSで2回洗浄され、計数され、200μlの1xPBS/0.5%Triton X−100に再懸濁され、そして96ウェルプレートに移されて、λex=550nm、λem=590nmにおいて分光蛍光光度計で読み取られた。先に記載のように96時間インキュベーション後の、Huh7.5細胞内側のrh−PE脂質の保持を測定するために、細胞は1xPBSで3回洗浄され、培地は新鮮なDMEM/10%FBSと取り替えられ、そして細胞はそのままさらに8、24、30、および48時間インキュベーションされた。インキュベーション期間後、細胞は採取され、先に記載のように解析された。
【0193】
4.5.Huh7.5細胞におけるリポソーム取り込みおよび脂質保持アッセイの結果:
図7に示すように、活発に分裂するHuh7.5細胞は4日間のインキュベーション期間にわたり、DOPE:DOPC:PI:PSリポソームの継続した取り込みを実証した。4日目に、DOPE:DOPC:PI:PS−処置細胞は、1.5x10−3AU/細胞(SD=3.4x10−4AU/細胞)の蛍光を実証し、それはDOPE:CHリポソーム処置(2.5x10−4AU/細胞(SD=5.5x10−5AU/細胞))で観察された値より6倍大きかった。実際、DOPE:CH−処置細胞で観察された最大蛍光(5.0x10−4AU/細胞(SD=1.1x10−4))はたった24時間処置期間後に到達し、その後細胞に関連した蛍光はゆっくり減少し、減少したリポソーム取り込みもしくは増大したrh−PE脂質エフラックスのいずれか、または両方を示唆する。
【0194】
これらの実験に基づいて、DOPE:CHリポソームに由来するrh−DOPE脂質は、培地からのリポソームの除去後細胞におけるおよそ7時間の半減期を実証した。DOPE:DOPC:PI:PSリポソームで処置された細胞の場合、rh−DOPE半減期はおよそ29時間に延び、処置された細胞の膜へのこれらのリポソームのより多い組み込みを示唆した。
【0195】
図7は、Huh7.5細胞内側の増大した取り込みおよび脂質保持を実証するER−ターゲッティングリポソームの実験の結果を示す。Rh−標識リポソーム(最終脂質濃度50μM)はHuh7.5細胞と一緒に4日間(96時間)インキュベーションされた。細胞へのリポソーム取り込みは、インキュベーション期間を通してモニターされ、最大値(1.5x10−3AU/細胞、DOPE:DOPC:PI:PSリポソーム、96時間読み取り)に関して、細胞毎に観察されるDOPE:CHリポソーム(赤色、実線)およびDOPE:DOPC:PI:PSリポソーム(黒色、実線)の両方の蛍光として提示される。蛍光はλex=550nm、λem=590nmにおいて測定された。96時間インキュベーション後、細胞は洗浄され、新鮮な培地(リポソームを含まない)に入れられ、さらに48時間にわたって細胞内のrh−DOPE脂質の保持をモニターされた。インキュベーション期間中の細胞増殖は、最大値(2.4x106細胞/ml、DOPE:DOPC:PI:PSリポソーム、72時間読み取り)に関して、DOPE:CH(赤色、点線)およびDOPE:DOPC:PI:PS(黒色、点線)の両方に対して提示された。データは3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値とSDを表す。
【0196】
5.ERリポソームは血清存在下における増大した安定性および細胞取り込みを実証する:
薬物送達システムとしてのリポソームの一般的使用はいくつかの問題によって妨げられてきた。血清蛋白質に媒介されるリポソーム内容物の漏出はこれらの問題の1つである。カルセイン−被包リポソームを使用して、10%FBSを含む無細胞培地におけるリポソームの安定性を4日間にわたりモニターした。カルセインはリポソーム内側に被包されている場合は消光した状態である、水溶性、自己−消光フルオロフォアである;しかし、リポソーム不安定化が漏出およびその後のフルオロフォアの脱消光を誘発することになる。
【0197】
5.1.FBSにおけるリポソーム安定性および細胞取り込みを定量するための方法論:
10%FBS存在下でのリポソームの安定性をモニターするために、カルセイン−負荷リポソームが調製され、サイズ−排除クロマトグラフィーにより被包されていないカルセインから分離され、細胞の非存在下で、最終リン脂質濃度50μMになるまで完全DMEM/10%FBSに添加された。リポソームはそのまま4日間インキュベーションされ、24時間毎にリポソーム−含有培地の試料が採取され、リポソーム不安定化および周囲培地へのカルセインの漏出の結果としてのカルセイン脱消光をλex=490nm、λem=520nmにおいてモニターした。蛍光スケールを較正するために、4日間インキュベーション後、最終濃度1%になるまでのTriton X−100の添加はリポソーム膜を破壊し、100%カルセイン脱消光を達成した:%漏出=((In−I0)/(I100−I0))x100、式中I0は0時での蛍光であり、Inはn時での蛍光であり、そしてI100はTriton添加後に完全に脱消光したカルセイン蛍光である。
【0198】
細胞取り込みアッセイの場合、リポソームは先に記載のように調製され、細胞におけるそれらの取り込みをモニターするために1%(総モル)のrh−PEを含んだ。血清存在下、または血清非存在下における短期間リポソーム取り込みアッセイの場合、無血清完全DMEM、または10%FBSもしくは10%ヒト血清(Sigma)を補足した完全DMEMのいずれかの6−ウェルプレートでコンフルエントになるまで培養されたHuh7.5細胞に、rh−PE−標識リポソームは最終リン脂質濃度50μMになるまで添加され、そのまま24時間インキュベーションされた。インキュベーション後、細胞は1xPBSで2回洗浄され、計数され、200μlの1xPBS/0.5%Triton X−100に再懸濁され、96ウェルプレートに移されて、分光蛍光光度計でλex=550nm、λem=590nmにおいて読み取られた。
【0199】
5.2.10%血清の存在下におけるリポソーム安定性および細胞取り込みを定量するためのアッセイの結果:
図8AはpH−感受性DOPE:CHおよびER−ターゲッティングDOPE:DOPC:PI:PSリポソーム内からのカルセイン遊離の割合を実証する。4日間インキュベーション後に、DOPE:PEリポソームからは58%(SD=12.6%)のカルセインが遊離されていたが、DOPE:DOPC:PI:PSリポソームからは32%(SD=9.2%)だけしかカルセインは遊離されず、血清の存在におけるより高い安定性を示唆した。
【0200】
Huh7.5細胞へのリポソーム取り込みに対するFBSとヒト血清両方の効果をモニターするために、膜内に1%rh−PEを含むDOPE:CHおよびDOPE:DOPC:PI:PSリポソームが調製され、無血清培地または10%FCSもしくは10%ヒト血清を含む培地の存在下で、Huh7.5細胞と一緒に24時間インキュベーションされた(最終リポソーム濃度50μM)。細胞におけるリポソーム取り込みは24時間インキュベーション期間後の細胞毎の蛍光の量(任意単位、AU)として表現される。FBSの存在下におけるDOPE:CHリポソーム取り込みは無血清培地に比較して有意に減少することが観察された(それぞれ5.0x10−4AU/細胞(SD=7.0x10−5AU/細胞)対8.2x10−4AU/細胞(SD=2.1x10−4AU/細胞)、P=0.02、図8B)。ヒト血清の存在では有意な差は見られなかった。対照的に、DOPE:DOPC:PI:PSリポソームでは、FBSの存在下における取り込みは無血清培地に比較して有意な増大を実証した(それぞれ6.6x10−4AU/細胞(SD=8.4x10−5AU/細胞)対3.1x10−4AU/細胞(SD=1.2x10−4AU/細胞)、P=0.003、図8b)。さらに、ヒト血清の存在は、Huh7.5細胞におけるDOPE:DOPC:PI:PSリポソーム取り込みの効率をFBSに比較して有意に増大させた(1.4x10−3AU/細胞(SD=1.8x10−4AU/細胞)、P=0.001、図8B)。
【0201】
図10A〜BはER−ターゲッティングリポソームが血清の存在下で安定性および細胞取り込みが増大したことを実証する実験の結果を提示する。(A)自己−消光カルセイン−負荷リポソーム(最終脂質濃度50μM)は完全DMEM+10%FBS中でインキュベーションされ、そのまま4日間37℃でインキュベーションされた。
【0202】
24時間毎に培養物の試料を使用してλex=485nm、λem=520nmでのカルセイン脱消光を測定した。結果は、インキュベーション期間終了時にリポソーム膜を破壊するためのTritonX−100添加により確定される最大蛍光に関して、リポソームから遊離されるカルセインの百分率として提示される。(B)Rh−標識リポソーム(脂質濃度50μM)は10%ウシ血清(FBS)、10%ヒト血清のいずれかの存在下において、または無血清培地において24時間Huh7.5細胞と一緒にインキュベーションされた。インキュベーション期間後、細胞は採取され、計数され、そしてλex=550nm、λem=590nmにおいて蛍光が測定された。結果はそれぞれの試料の細胞毎に測定された平均蛍光として提示される。すべてのデータは3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値とSDを表す。
【0203】
DOPE:DOPC:PI:PSリポソームを使用するこれらの研究は、このリン脂質の組み合わせが、DOPE:CHリポソームと比較して、細胞および血清両方とのいっそう好ましい相互作用を実証しうることを示唆することができる。10%FBSの存在下において、DOPE:DOPC:PI:PSリポソームは、4日間インキュベーション後DOPE:CHリポソームと比較して被包されたカーゴの45%少ない漏出を表す。DOPE:DOPC:PI:PSリポソームはまた、FBSの存在下においてHuh7.5細胞への増大した取り込みを実証し、取り込みはまた、ヒト血清の存在下でさらに増大した。対照的に、DOPE:CHリポソーム取り込みは無血清培地に比較して、FBSの存在下で阻止されるように見えた。本発明はそれらの操作理論によって限定されないが、これらの結果はERを目標とするリポソーム、すなわちPIおよび/またはPS脂質を含むリポソームは、DOPE:CHリポソームによって使用されるものと異なる細胞受容体によってエンドサイトーシスされ、そしてこの機序を介したエンドサイトーシスは血清の存在によって高められうることを示唆しうる。
【0204】
6.Huh7.5細胞およびPBMCにおけるERリポソームの細胞毒性
これらの実験の目的は、Huh7.5細胞およびPBMC両方の1ラウンド処置(5日間)にわたる細胞生存能力に対するリポソームの効果を確定することであった。
【0205】
6.1.Huh7.5細胞およびPBMCにおける細胞毒性の確定のための特定の方法論:
脂質組成PH:CH(3:2)、PE:PC(3:2)、PE:PI(3:2)、PE:CH:PI(3:1:1)、PE:PC:PI(1.5:1.5:2)、PE:PS(3:2)、PE:CH:PS(3:1:1)、PE:PC:PS(1.5:1.5:2)、PE:PI:PS(3:1:1)、PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)およびPE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)を持つリポソームは先に記載のように調製された。Huh7.5細胞およびPBMCはそれぞれ200μlの完全DMEMおよびRPMI+IL2培地中5x104細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに播種され、0〜500μMの範囲の最終脂質濃度を持つ1xPBSを被包したリポソームの存在下でインキュベーションされた。5日間のインキュベーション後、細胞生存能力は取扱説明書に従ってMTSを基礎にした細胞増殖アッセイ(CellTiter 96(登録商標),Promega,San Luis Obispo,U.S.A.)により確定された。
【0206】
6.2.PBSリポソームで5日間処置した場合のHuh7.5細胞およびPBMCにおける細胞毒性:
図9は、1xPBSを被包した異なるリポソーム製剤と一緒に5日間インキュベーション後のHuh7.5細胞の生存能力を示す。培地における最終脂質濃度は0〜500μMまで変動した。結果は、3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。
【0207】
図10は、1xPBSを被包した異なるリポソーム製剤と一緒に5日間インキュベーション後のPBMCの生存能力を示す。培地における最終脂質濃度は0〜500μMまで変動した。結果は、3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。
【0208】
図9および10の結果は、脂質CHEMSを含むリポソームだけが60μMより高い濃度で細胞に添加された場合、Huh7.5細胞およびPBMCにおいて細胞毒性であることを実証することができる。この脂質を含まないERリポソームは、たとえあったとしても、pH−感受性リポソームに比較してほとんど細胞毒性を示さず、従って、in vivoの使用に好ましい。
【0209】
7.ERリポソームで処置された感染PBMCからのHIV−1の分泌
これらの実験の目的は異なるリポソーム組成物で処置されたHIV−1−感染PBMCからのHIV−1分泌レベルの変化をモニターすることであった。
【0210】
7.1.1ラウンドHIV分泌アッセイのための特定の方法論:
脂質組成PH:CH(3:2)、PE:PC(3:2)、PE:PI(3:2)、PE:CH:PI(3:1:1)、PE:PS(3:2)、PE:CH:PS(3:1:1)、PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)およびPE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)を持つリポソームは先に記載のように調製された。薬物処置細胞から分泌されたビリオンによる感染の結果としてのHIVの分泌の変化は、指標細胞としての刺激されたPBMC、およびエンドポイントとしてのp24抗原産生の確定を使用して評価された。4人の正常(非感染)ドナーに由来するPBMCはHistopaque密度勾配遠心法(Sigma−Aldrich,Gillingham,U.K.)を使用して分離され、プールされ、そして完全RPMI(RPMIプラス10%熱―不活性化FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および2mM L−グルタミン)中で48時間フィトヘマグルチニン(PHA、5μg/ml)、続いて72時間インターロイキン−2(IL2、40U/ml)により刺激された。特記しない限り、すべての実験は96ウェルマイクロタイタープレートで行われ、すべてのインキュベーションは37oC/5%CO2で行われた。細胞を感染させるために、4x105PHA−活性化PBMCおよび初代分離株ストックの100TCID50(50%組織培養感染量)がそれぞれのウェルに添加された。16時間の夜通しのインキュベーション後、細胞は完全RPMI培地で3回洗浄され、適切な遊離薬物またはリポソーム処置剤(最終脂質濃度50μM)を含む完全RPMI/IL2に再懸濁された。5日目に、薬物―処置細胞から分泌されたHIVビリオンを含む上清は集められ、p24濃度はp24捕獲ELISAによってそれぞれに対して定量される。
【0211】
7.2.1ラウンドHIV分泌アッセイの結果:
図11は、5日間リポソーム処置した感染PBMCからのHIVの分泌を実証する。すべてのリポソームは1xPBS溶液を被包していて、最終脂質濃度50μMで細胞培養培地に添加されている。ウイルス分泌は、捕獲ELISAによる処置および無処置PBMC上清内のHIVコア蛋白質p24の定量後に計算された。結果は無処置対照に関したHIV分泌の百分率として提示され、2回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。アッセイはLAI(クレードB)、93UG067(クレードD)および93RW024(クレードA)を含む、3種の遺伝的に多様なHIV−1分離株に対して実施された。
【0212】
図11の結果は、脂質PIを含むERリポソームが、無処置対照に比較してPBMCからのHIV分泌をおよそ20%減少させることが可能であることを実証することができる。非−ERターゲッティングリポソーム(PE:CHおよびPE:PC)およびPI脂質を含まないERリポソームは、HIV感染に対して全く効果がない。
【0213】
8.ERリポソームで処置された感染PBMCから分泌されたHIV−1の感染力
これらの実験の目的は、異なるリポソーム組成物で処置されたHIV−1−感染PBMCから分泌されたHIV−1ビリオンの感染力の変化をモニターすることであった。
【0214】
8.1.1ラウンドHIV感染力アッセイのための特定の方法論:
リポソームで処置された感染PBMCから分泌されたHIV−1ビリオンの感染力は、先の段落に記載のように、リポソーム−処置細胞から分泌されたHIVビリオンを含む上清を使用して確定された。すべての上清は完全RPMI/IL2中最終p24濃度10ng/mlに希釈され、100μlは最終p24濃度5ng/mlとなるようにやはり100μlの培地中の4x105PHA−活性化PBMCに添加され、そのまま一晩インキュベーションされた。翌日、細胞は記載のように洗浄され、200μlの新鮮なRPMI/IL2に再懸濁され、そのまま4日間インキュベーションされた後、上清が集められ、捕獲ELISAによってp24含量がアッセイされた。
【0215】
8.2.1ラウンドHIV感染力アッセイの結果:
図12はリポソーム−処置HIV−感染PBMCから分泌されたHIVビリオンの感染力を示す。分泌されたウイルス粒子はナイーブPBMCを感染させるために使用され、そして細胞を感染させる能力は、上清が除去され、細胞が5日間無処置のままでおかれた後にウイルス分泌を測定することによって確定された。結果は無処置対照に関したHIV感染力の百分率として提示され、2回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。アッセイは、LAI(クレードB)、93UG067(クレードD)および93RW024(クレードA)を含む、3種の遺伝的に多様なHIV−1分離株に対して実施された。
【0216】
図12の結果は、ある種のERリポソームが処置されたPBMCから分泌されたウイルス粒子の感染力を低減させることが可能でありうることを実証することができる。最も強い抗ウイルス活性は、PIおよび/またはPSと組み合わせた脂質CHEMSからなるERリポソームに見られ、ここではウイルス粒子の感染力は無処置ビリオンの20%未満である。非ERリポソーム(PE:CHおよびPE:PC)およびERリポソームPE:PSはウイルス感染力に対して全く効果が見られなかった。
【0217】
9.ERリポソームはpH−感受性リポソームに比較してより効率的な細胞内カーゴ遊離を実証する:
これらの実験では、自己−消光濃度の蛍光分子、カルセインを被包するローダミン−標識リポソームが調製され、Huh7.5細胞の存在下でインキュベーションされた。カルセインは細胞内空間に遊離されて脱消光するため、細胞内側への被包されたカーゴの送達は蛍光の増大によってモニターされた。
【0218】
9.1.Huh7.5細胞におけるリポソームの細胞内送達を測定するための特定の方法論:
蛍光測定アッセイのために、5x106Huh7.5細胞は完全DMEM/10%FBSを含む25cm2フラスコに播種され、そのまま一晩置かれた。翌日、1%rh−PEを含むカルセイン−負荷リポソームが培地に添加され(最終リン脂質濃度50μM)、37℃または4℃でそのまま30分間インキュベーションされた。インキュベーション後、細胞は1xPBSで2回洗浄され、トリプシン/EDTA(Invitrogen)で剥がされ、さらに2回洗浄され、そして600μlPBSに再懸濁された。200μlのアリコート3つを使用して蛍光が測定され、平均が求められた。カルセイン脱消光はλex=485nmおよびλem=520nmで測定され、そしてローダミン蛍光はλex=550nmおよびλem=590nmで測定された。エンドサイトーシスしない状態で細胞に結合したリポソームの初期のカルセイン蛍光対ローダミン蛍光の比は、リポソームを4℃で細胞と一緒にインキュベーションすることによって得られ、そして37℃での値を調整するために使用される。
【0219】
9.2.Huh7.5細胞におけるリポソームからの被包されたカルセインの細胞内遊離:
リポソームとの45分間インキュベーション後のHuh7.5細胞における平均rh−DOPE蛍光はリポソームの取り込みを反映し、そして平均カルセイン蛍光は細胞内脱消光、従って蛍光色素の遊離を示す。計算されたカルセイン蛍光対ローダミン蛍光の比は、細胞に結合したリポソーム毎に細胞内に遊離された水性マーカーの量の尺度として見なされる。DOPE:CHリポソームに対するカルセイン/ローダミン比は10.3(SD=2.6)であると計算されたが、DOPE:DOPC:PI:PSリポソームに対する比は15.7(SD=2.4)であり、152%(P=0.02、図13)の増大であった。
【0220】
図13は、完全DMEM/10%FBS中Huh7.5細胞と一緒に45分間インキュベーションされた、自己−消光カルセイン−負荷、rh−PE−標識リポソームに関する実験の結果を提示する。インキュベーション後のリポソームに由来するカルセインの細胞内脱消光はλex=490nm、λem=520nmで測定され、同じインキュベーション期間の総リポソーム取り込みはλex=550nm、λem=590nmでの蛍光測定によって確定された。アッセイは37℃および4℃の両方で実施され、エンドサイトーシスしないリポソーム結合に対して修正するために、すべての4℃の値は37℃の値から差し引かれた。Huh7.5細胞内側の被包されたカルセインを送達するためのリポソームの能力はインキュベーション後の処置された細胞におけるカルセイン脱消光とrh−PE蛍光の比を計算することによって測定された。データは3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値とSDを表す。
【0221】
図13に提示された結果は、PEとPIおよび/またはPSとの組み合わせからなるリポソームは、被包された化合物の効率的な細胞内送達のために特に設計されたリポソーム組成物であるPE:CHリポソームに比較して、リポソーム毎の細胞内カルセイン遊離の増大したレベルを有していることを示唆することができる。これらのアッセイでは、PE:PC:PI:PSリポソームはPE:CHリポソームに比較して、1.5倍多いカルセイン遊離を実証する。
【0222】
10.1mM NB−DNJを被包するリポソームによって処置されたPBMCからのHIV−1の分泌
これらの実験の目的は、被包されたイミノ糖(すなわち、NB−DNJ)をHIV−感染PBMCに送達するリポソームの能力を確定することであった。脂質PIおよびPSを含むリポソームはpH−感受性リポソーム(PE:CH)およびpH−非感受性リポソーム(PE:PC)に比較された。
【0223】
10.1.1ラウンドHIV分泌アッセイのための特定の方法論;
脂質組成PH:CH(3:2)、PE:PC(3:2)、PE:PI(3:2)、PE:CH:PI(3:1:1)、PE:PS(3:2)、PE:PI:PS(3:1:1)、PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)およびPE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)を持つリポソームは、すべてのリポソームが1xPBS中の1mM NB−DNJを被包すること以外は先に記載のように調製された。HIV分泌アッセイは先に記載のように実行された。サイズ−排除クロマトグラフィーによってリポソームは被包されないNB−DNJから精製された。リポソームに関する結果は細胞培養培地に1mMの最終濃度で添加されたNB−DNJに関する結果と比較される。
【0224】
10.2.1ラウンドHIV分泌アッセイの結果:
図14は1mMのフリーNB−DNJ対リポソームに媒介されて送達されたNB−DNJによる5日間処置の間の感染PBMCからのHIV分泌を示す。リポソームは1mM NB−DNJを被包していて、最終脂質濃度50μMで細胞培養培地に添加されている。ウイルス分泌は先に記載のように計算された。結果は無処置対照に関したHIV分泌の百分率として提示され、2つの独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。アッセイはLAI(クレードB)、93UG067(クレードD)および93RW024(クレードA)を含む、3種の遺伝的に多様なHIV−1分離株に対して実施された。
【0225】
図14の結果は、脂質PIまたはPSを含むリポソームは、PE:CHリポソームに比較してより高くはないとしても、同様のHIV分泌の減少によって確定される抗ウイルス活性を達成するために、HIV−感染PBMCに抗ウイルスNB−DNJを送達することが可能でありうることを実証することができる。
【0226】
11.1mM NB−DNJを被包するリポソームによって処置された感染PBMCから分泌されたHIV−1の感染力。
【0227】
これらの実験の目的は、被包されたイミノ糖(すなわち、NB−DNJ)をHIV−感染PBMCに送達するリポソームの能力を確定することであった。脂質PIおよびPSを含むリポソームはpH−感受性リポソーム(PE:CH)およびpH−非感受性リポソーム(PE:PC)と比較された。
【0228】
11.1.1ラウンドHIV感染力アッセイのための特定の方法論:
リポソームによって処置されたPBMCから分泌されたHIVビリオンの感染力は、すべてのリポソームが1xPBS中1mM NB−DNJを被包していること以外は先に記載のように確定された。リポソーム−処置細胞から分泌されたビリオンに関する結果はフリーNB−DNJ−処置細胞および無処置細胞から分泌されたものと比較される。
【0229】
11.2.1ラウンドHIV感染力アッセイの結果:
図15はNB−DNJ−リポソームまたはフリーNB−DNJ−処置HIV−感染PBMCから分泌されたHIVビリオンの感染力を示す。分泌されたウイルス粒子はナイーブPBMCを感染させるために使用され、そして細胞を感染させる能力は先に記載のように確定された。結果は無処置対照に関するHIV感染力の百分率として提示され、2回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。アッセイはAI(クレードB)、93UG067(クレードD)および93RW024(クレードA)を含む、3種の遺伝的に多様なHIV−1分離株に対して実施された。
【0230】
図15の結果は、1mM NB−DNJを被包するERリポソームによるHIV−感染PBMCの処置は無処置対照に比較してHIVの分泌および感染力を減少させることを実証することができる。PIおよびPS脂質を含まないリポソームであるpH−感受性リポソームと脂質PIおよびPSを含むリポソーム間の結果の比較は、1mM NB−DNJを被包している場合、抗ウイルス活性に有意な差は見られないことを明らかにする。
【0231】
抗ウイルス活性は、gp120/gp41ターゲッティング分子、たとえばCD4の可溶性型を薬物被包リポソームの外側表面に化学的に連結することによってさらに高めることができる。ターゲッティング分子は、感染を予防するためにフリーウイルス粒子を中和することに加え、受容体−媒介エンドサイトーシスを介してHIV−感染細胞への薬物−負荷リポソームの取り込み増大を導くべきである。
【0232】
12.PBMCにおける1mM NB−DNJを被包するER−リポソームの細胞毒性:
これらの実験の目的は、PBMCの細胞生存能力に対する1mM NB−DNJを被包するリポソーム1ラウンド処置(5日間)の効果を確定することであった。
【0233】
12.1.PBMCにおける細胞毒性の確定のための特定の方法論:
脂質組成PH:CH(3:2)、PE:PC(3:2)、PE:PI(3:2)、PE:CH:PI(3:1:1)、PE:PS(3:2)、PE:CH:PS(3:1:1)、PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)およびPE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)を持つリポソームは、すべてのリポソームが1xPBS中の1mM NB−DNJを被包する以外は、先に記載のように調製された。1mM NB−DNJを被包するリポソームとの5日間インキュベーション後の細胞生存能力は先に記載のように確定された。
【0234】
12.2.1mM NB−DNJを被包するリポソームによる処置後のPBMC生存能力:
図16は、1mM NB−DNJを被包する異なるリポソーム製剤との5日間インキュベーション後のPBMC生存能力を示す。培地の最終脂質濃度は0から500μMまで変動した。結果は3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。驚くべきことに、ある種のリポソーム内側のNB−DNJの被包はモック−処置対照に比較して,細胞増殖を160%にまで増大させるように見える。
【0235】
13.ERリポソームで処置されたHuh7.5細胞からのHCVの分泌
これらの実験の目的は、異なるリポソーム組成物によって処置されたHCV−感染Huh7.5細胞からのHCV−1−分泌レベルの変化をモニターすることであった。
【0236】
13.1.1ラウンドHIV分泌アッセイのための方法:
アッセイは感染後8日目(急性)および感染後50日目(慢性)の細胞に対して行われた。HCV−感染Huh7.5細胞は6ウェルプレートにおいて75%コンフルエンシーになるまで培養され、その後培地はウェル毎に総容量2mlの完全DMEM+50μMリポソームで取り替えられ、そのまま37℃/5%CO2で72時間インキュベーションされた。すべてのアッセイはトリプリケート試料により行われた。ウイルス分泌解析は、QIAGEN QIAampウイルスRNA精製キットを使用し、取り扱い説明書に従って上清500μlから抽出されたウイルスRNAに対する定量PCRによって行われた。分泌されたウイルスRNAの定量は、初めに逆転写酵素反応を使用することによる分離されたRNAからcDNAへの変換、続いてSyBr GreenミックスとHCV cDNAに対して設計されたプライマーを使用したリアル−タイムPCRによって行われた。
【0237】
13.2.1ラウンド分泌アッセイの結果:
図17は、5日間のリポソーム処置後の、急性および慢性−感染両方の、感染Huh7.5細胞からのHCVの分泌を示す。すべてのリポソームは1xPBS溶液を被包し、最終脂質濃度50μMで細胞培養培地に添加されている。HCV分泌は定量PCRによる処置および無処置Huh7.5細胞の上清内のRNAの定量後計算された。結果は無処置対照に関するHCV RNA分泌の百分率として提示され、トリプリケート試料の平均値を表す。
【0238】
14.ERリポソームにより処置されたHuh7.5細胞から分泌されたHCVの感染力
この実験の目的は、異なるリポソーム組成物によって処置されたHCV−感染Huh7.5細胞から分泌されたHCVビリオンの感染力の変化をモニターすることであった。
【0239】
14.1.1ラウンドHIV感染力アッセイのための方法:
リポソームで処置されたHuh7.5細胞から分泌されたHCVビリオンの感染力は、先の段落に記載のように、リポソーム−処置細胞から分泌されたHCVビリオンを含む上清を使用して確定された。ナイーブHuh7.5細胞は48−ウェルプレートにおいて75%コンフルエンシーになるまで培養され、その後培地はリポソーム−処置細胞から分泌されたHCVを含む上清200μlと取り替えられた。上清はそのまま1時間ナイーブHuh7.5細胞を感染させ、その後細胞は1xPBSで2回洗浄され、完全DMEM500μl中、2日間、37℃/5%CO2でインキュベーションされた。2日間のインキュベーション後、細胞は1xPBSで2回洗浄され、メタノール/アセトン(1:1、vol:vol)で10分間固定され、1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄された。細胞は4μg/ml抗−HCVコア抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄され、4μg/mlFITC−標識二次抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、さらに2回洗浄され、そしてDAPIで染色された。蛍光画像は、先に記載のようにNikon Eclipse TE2000−U顕微鏡を使用して撮られた。感染した細胞の百分率は、HCVに感染した細胞の総数(抗−HCV抗体によって検出される)を計数し、アッセイにおける(DAPI染色によって検出される)細胞の総数で割ることにより計算される。
【0240】
14.2.1ラウンドHIV感染力アッセイの結果:
図18は急性および慢性−感染両方の、リポソーム−処置HCV−感染Huh7.5細胞から分泌されたHCVビリオンの感染力を示す。分泌されたウイルス粒子はナイーブHuh7.5細胞を感染させるために使用され、細胞を感染させる能力は、一旦上清が除去され、細胞が2日間無処置のまま置かれた後にHCVコア蛋白質の存在を測定することによって確定された。結果は、無処置対照に関するHCV感染力の百分率として提示され、トリプリケート試料の平均値を表す。
【0241】
選ばれたERリポソームおよびpH−感受性リポソーム(PE:CH)で処置されたHCV−感染Huh7.5細胞に由来する結果は、すべてのリポソームはウイルス粒子の分泌を増大させるが、分泌された粒子の感染力は無処置粒子に比較して有意に低減されることを示唆する。
【0242】
15.ERリポソームはHuh7.5細胞におけるLDの形成を減少させる
Huh7.5細胞はERリポソームの存在下で一晩インキュベーションされ、細胞LDに対するそれらの効果をモニターされた。LDはリポソーム−処置細胞において共焦点顕微鏡により可視化された。
【0243】
15.1.Huh7.5細胞内のLDを可視化するための方法:
ERリポソームPE:PC:PI:PS(1.5:1.7:1.5:0.3)は先に記載のように調製された。Huh7.5細胞は番号1.5ガラスカバースライドに一晩接着させ、その後培地は交換され、最終脂質濃度50μMになるまで添加されたリポソームを含む新鮮な培地と取り替えられた。37℃/5%CO2で16時間インキュベーション後、リポソームを含む培地は除去され、細胞は1xPBSで洗浄され、1xPBSで希釈された4%パラホルムアルデヒドで15分間固定され、1xPBSで2回洗浄された。その後細胞は20μg/mlのBODIPY493/503を含む1xPBS中で10分間インキュベーションされ、1xPBSで2回洗浄された。BODIPY 493/503はLDのまわりの微小環境の詳細な分析に適する。細胞はDAPIで染色され、その後顕微鏡スライドにマウントされた。共焦点画像はCarl Zeiss LSM顕微鏡を使用して撮られ、画像解析はLSMソフトウェアv5.10を使用して行われた。
【0244】
15.2.ERリポソームによる16時間処置後のHuh7.5細胞内側のLDを可視化した結果
図19は、16時間インキュベーション後にLDを可視化するためにBODIPY 493/503(緑色)で探査された、無処置Huh7.5細胞(左パネル)およびPE:PC:PI:PSリポソーム−処置Huh7.5細胞(右パネル)の実験の結果を示す。PE:PC:PI:PSリポソームは最終脂質濃度50μMになるまで細胞培養培地に添加された。DAPI(青色)は核染料として、および画像濃度を標準化するために使用される。結果は、PE:PC:PI:PSリポソームによるHuh7.5細胞の処置はLDの形成を減少させることを示唆する。
【0245】
16.ERリポソームはHuh7.5細胞においてLDと共局在する
PE:PC:PI:PSリポソームはHuh7.5細胞においてLD形成を妨害することが示されたため、これらのリポソームが細胞内LDと直接相互作用するかどうかを確定するために以下の実験が行われた。共局在を確定するために、Rh−PE標識リポソームはHuh7.5細胞と2時間インキュベーションされ、その後Rh−PE脂質および細胞内LDは共焦点顕微鏡によって可視化された。
【0246】
16.1.LDおよびリポソームの細胞内共局在を可視化するための方法:
ERリポソームPE:PC:PI:PS(1.5:1.7:1.5:0.3)は先に記載のように調製され、可視化のために1%(総モル)のRh−PEを含んだ。Huh7.5細胞は番号1.5ガラスカバースライドに一晩接着させ、その後培地は交換され、最終脂質濃度50μMになるまで添加されたRh−PE標識リポソームを含む新鮮な培地と取り替えられた。37℃/5%CO2で2時間インキュベーション後、リポソームを含む培地は除去され、細胞は固定され、先に記載のようにBODIPY493/503で染色された。細胞はDAPIで染色され、その後顕微鏡スライドにマウントされた。共焦点画像は先に記載のように撮られた。
【0247】
16.2.2時間インキュベーション後のHuh7.5 LDとリポソームの共局在:
図20は、PE:PC:PI:PSリポソーム(赤色)で2時間処置され、LD染料(緑色)で探査されたHuh7.5細胞の実験の結果を示す。PE:PC:PI:PSリポソームは最終脂質濃度50μMまで細胞培養培地に添加された。DAPI(青色)は核染料として使用される。底部−右パネルは統合画像である。黄色は細胞内の共局在領域を同定する。
【0248】
結果は、PE:PI:PS:PCリポソームはたった2時間だけの処置後にHuh7.5細胞のLDと相互作用できることを示唆する。
【0249】
17.ERリポソームによるHCV−感染Huh7.5細胞の処置はHCVコア蛋白質とLDとの会合を阻止する
HCVコア蛋白質と細胞内LD間の相互作用の妨害は、主としてHCV−感染細胞からの非−感染性ウイルス粒子の分泌を導くことができる。
【0250】
これらの実験の目的はリポソーム処置がHuh7.5細胞におけるHCVコア蛋白質とLDの共局在を低減させるかどうかを確定することであった。
【0251】
17.1.LDとHCVコア蛋白質の細胞内共局在を可視化するための方法:
ERリポソームPE:PC:PI:PS(1.5:1.7:1.5:0.3)は先に記載のように調製された。HCV遺伝子型JFH1による感染後8日目にHuh7.5細胞は番号1.5ガラスカバースライドに一晩接着させ、その後培地は交換され、最終脂質濃度50μMになるまで添加されたリポソームを含む新鮮な培地と取り替えられた。37℃/5%CO2で16時間インキュベーション後、リポソームを含む培地は除去され、細胞は1xPBSで2回洗浄され、メタノール/アセトン(1:1、vol:vol)で10分間固定され、1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄された。次に細胞は3μg/ml抗−HCVコア抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄され、4μg/mlAlexaFluor550−標識二次抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、さらに2回洗浄された。細胞は20μg/mlのBODIPY493/503を含む1xPBSと一緒に10分間インキュベーションされ、1xPBSで2回洗浄され、その後DAPIで染色され、そして先に記載のようにマウントされた。共焦点画像は先に記載のように撮られた。
【0252】
17.2.ERリポソームによる16時間処置後のHuh7.5 LDとHCVコア蛋白質の共局在:
図21Aは、16時間インキュベーションされ、抗−HCV抗体(赤色)およびLD染色(緑色)によって探査された、無処置Huh7.5細胞(左パネル)とPE:PC:PI:PSリポソーム−処置Huh7.5細胞(右パネル)に関する実験の結果を示す。PE:PC:PI:PSリポソームは最終脂質濃度50μMになるまで細胞培養培地に添加された。DAPI(青色)は核染料として使用される。底部−右パネルは統合画像である。黄色は細胞内の共局在領域を同定する。図21Bは無処置(左)およびPE:PC:PI:PSリポソーム−処置(右)細胞両方の統合画像(白四角)の拡大を提示する。図21CはPE:PC:PI:PSリポソームの存在下(右)および非存在下(左)におけるHCVコア蛋白質/LD相互作用の概念図である。
【0253】
大きなLD/HCVコア小胞の存在が感染性ウイルス粒子の産生にとって必要であってもよい。これらの結果は、PE:PC:PI:PSリポソーム−によるHCV−感染Huh7.5細胞の処置がHCVコアと細胞内LDとの会合を低減させうることを実証し、そのことはおそらくERリポソーム−処置細胞から分泌されたHCV粒子の感染力の減少を説明しうる。
【0254】
18.ERリポソームを介して多価不飽和脂質をHCV−感染Huh7.5細胞に送達することによるHCV分泌および感染力の減少
HCVに対するERリポソームの抗ウイルス活性を高めるために、PEおよびPC脂質(現在すべての実験において18:1一価不飽和)は多価不飽和PEおよびPC脂質(22:6および/または20:4のいずれか)によって取り替えることができる。
【0255】
図22A〜Dは多価不飽和ERリポソームに組み込まれることになる多価不飽和脂質の化学構造を示す。A.22:6PE。B.20:4PE。C.22:6PC。D.20:4PC。
【0256】
HCV抗ウイルス薬としてのERリポソームの潜在的な役割を検討するために、JC−1−感染Huh7.5細胞は種々のリポソーム組成物で処置され、HCCcc分泌および感染力に対するそれらの効果がモニターされた。HCV複製に対する異なるリポソーム脂質飽和の効果をモニターするために、22:6ERリポソーム(22:6PE:22:6PC:PI:PS、1.5:1.5:1:1)および22:6PEG−ERリポソーム(3%PEG−PE脂質を含む22:6多価不飽和ERリポソーム)に加え、20:4ERリポソーム(20:4PE:20:4PC:PI:PS、1.5:1.5:1:1)および18:1ERリポソーム(18:1PE:18:1PC:PI:PS、1.5:1.5:1:1)が含まれた。
【0257】
18.1.リポソーム処置後のHCVcc分泌および感染力をモニターするための方法論:
方法は、急性JC−1 HCVcc感染に関して先に13&14節において記載のものと同じである。
【0258】
18.2.リポソームによる4日間処置の間のHCVcc分泌:
図23Aで実証したように、18:1および20:4脂質は両方とも無処置対照に比較してHCVcc分泌の増大を導いた(それぞれ218%、SD=34.4%および159%、SD=21.6%)。22:6ERリポソームだけが50μMの濃度で有意に27%(SD=11.3%)HCV分泌を減少させることが示され;同様の減少が50μMの22:6PEG−ERリポソーム処置(23%、SD=6.6%)により観察された。分泌されたウイルス粒子の感染力を測定するために、リポソーム−処置HCVccに由来する上清を使用してナイーブHuh7.5細胞を感染させ、感染した細胞数は感染後48時間目に定量された。図23Bは、すべてのリポソーム処置による、それどころか増大したウイルス分泌を引き起こす18:1および20:4ERリポソーム処置による、HCV感染力の有意な減少を示す。50μM22:6ERリポソームによる処置はHCV感染力を91%(SD=2.2%)減少させた。試験した最も低い22:6ERリポソームの濃度1μMでさえ、感染力を52%(SD=5.3%)減少させ、22:6多価不飽和(pu)ERリポソームがウイルス感染の強力な阻害剤であることを示唆する。
【0259】
図23Aは、種々のERリポソーム製剤の存在下における4日間インキュベーション中に、感染Huh7.5細胞(MOI=0.5)からのJC−1 HCVcc分泌が500μlの細胞上清から定量されたことを示す。分泌は定量PCRによる上清内のJC−1 HCVcc RNAの定量によって測定される。
【0260】
図23Bはリポソーム−処置、JC−1感染Huh7.5細胞に由来する分泌されたJC−1 HCVccの感染力を示す。分泌されたHCVccの感染力は、ナイーブHuh7.5細胞の1時間の感染、続く48時間のインキュベーションによって確定され、その時点で細胞は固定され、感染細胞の数を定量するための抗−HCVコア蛋白質、およびすべての細胞を可視化するためのDAPIにより染色された。
【0261】
図23A〜Bのデータは、脂質22:6を含むERリポソームが、先に記載のERリポソーム(18:1脂質)と同じように、分泌されたHCVビリオンの感染力を有意に減少させうることを示唆することができる。22:6多価不飽和脂質からなるERリポソームは現在抗−HCV療法開発にとって最も好ましいものである。
【0262】
前記の事項は特有の好ましい態様を表すが、本発明はそのように限定されないことは理解されるであろう。当業者は、開示された態様に対して種々の改変が行われてもよいこと、およびそのような改変は本発明の範囲内にあることが意図されることに気がつくであろう。
【0263】
本明細書に引用されたすべての刊行物、特許出願および特許はそのまま本明細書に参照として援用される。
【技術分野】
【0001】
関連する出願
本出願は、2008年3月26日に出願された米国仮特許出願第61/039,638号に対する優先権を主張し、それはそのまま参照として本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本出願は一般に活性薬、たとえば治療薬および/またはイメージング剤を送達するための方法および組成物、さらにとりわけ、リポソームのような脂質粒子を利用する活性薬を送達するための方法および組成物に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様は、少なくとも1種のPS脂質を含む脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な宿主に投与することを含む、薬物送達の方法を提供する。
【0004】
別の態様は、PS脂質またはPI脂質の中の少なくとも1種を含み、CHEMS脂質を含まない脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な宿主に投与することを含む、HIV感染を治療するか、または予防する方法を提供する。
【0005】
さらに別の態様は、少なくとも1種の多価不飽和脂質を含む脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な対象に投与することを含む、薬物送達の方法を提供する。
【0006】
そしてさらに別の態様はPS脂質を含む脂質粒子を含む組成物を提供する。
【0007】
そしてさらに別の態様は少なくとも1種の多価不飽和脂質を含む脂質粒子を含む組成物を提供する。
【0008】
そしてさらに別の態様は、ウイルスに感染した細胞を、a)PIまたはPS脂質の中の少なくとも1種、およびb)少なくとも1種のラベルを含む少なくとも1種の標識脂質を含む脂質粒子と接触させることを含む、ウイルスを標識する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(A)〜(G)は以下の脂質の化学構造を表す:(A)DOPE;(B)DOPC;(C)CHEMS;(D)PI;(E)PS;(F)Rho−PEおよび(G)b−PE。
【図2−1】図2(A)〜(C)はHuh7.5細胞における以下のリポソームとER膜蛋白質EDEMとの共局在を研究した共焦点顕微鏡画像を提示する:(A)PE:CH(モル比3:2)リポソーム;(B)PE:PC(3:2)リポソーム;(C)PE:CH:PI(3:1:1)リポソーム。
【図2−2】図2(D)〜(F)はHuh7.5細胞における以下のリポソームとER膜蛋白質EDEMとの共局在を研究した共焦点顕微鏡画像を提示する:(A)PE:CH(モル比3:2)リポソーム;(B)PE:PC(3:2)リポソーム;(C)PE:CH:PI(3:1:1)リポソーム;(D)PE:PC:PI(2:2:1)リポソーム;(E)PE:CH:PS(3:1:1)リポソーム;(F)PE:PC:PS(2:2:1)リポソーム;(G)PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)リポソーム;(H)PE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)リポソーム。
【図2−3】図2(G)〜(H)はHuh7.5細胞における以下のリポソームとER膜蛋白質EDEMとの共局在を研究した共焦点顕微鏡画像を提示する:(G)PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)リポソーム;(H)PE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)リポソーム。
【図3】図3はリポソームにより送達されたrh−DOPEとEDEM抗体の計算された共局在を提示する。
【図4】図4は、リポソーム中のb−PEのモル百分率の関数として、同じ試料内の分泌されたビリオンの総量(100%)に関するストレプトアビジンにより捕獲されたタグ付きウイルス粒子の百分率を示す。
【図5】図5は、ナイーブHuh7.5細胞と一緒に1時間インキュベーションされたRh−PE−タグ付きJC−1HCVcc(赤色、底部―左パネル)(MOI=0.1)の共焦点顕微鏡画像を示し、その後細胞は洗浄され、新鮮な培地中でさらに0、6、または24時間インキュベーションされた。それぞれのインキュベーション期間後、細胞は固定され、抗−HCVコア抗体(緑色、上部−右パネル)およびDAPI(青色、上部−左パネル)で染色され、その後顕微鏡スライドにマウントされ、共焦点顕微鏡イメージングが行われた。統合画像は底部−右パネルに示される。それぞれのインキュベーション期間の代表的な画像が示される。それぞれの画像の解像度バーは10μmである。
【図6】図6(A)〜(C)は、モル比3:2のPE:CHリポソーム(A);PE:CH:PI(3:1:1)リポソーム(B)およびPE:CH:PS(3:1:1)リポソーム(C)の細胞膜への組み込みを研究した蛍光顕微鏡画像を提示する。
【図7】図7はHuh7.5細胞内側のER−ターゲッティングリポソームの増大した細胞内取り込みおよび脂質保持を実証するプロットを示す。データは、3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値と標準偏差(SD)を表す。グラフはERリポソーム(黒色線)およびpH−感受性リポソーム(赤色線)両方に対する細胞増殖(点線)およびrh−PE−リポソーム取り込み(実線)の2組のデータを表す。Y軸は100%に標準化した2組のデータの最大値を表す。100%細胞増殖の最大値は2.4x10e6細胞/ml(ERリポソームに関して72時間読み取り)であり、rh−PE蛍光の最大値は1.5x10e−3任意単位(AU)/細胞(ERリポソームに関して96時間読み取り)である。
【図8−1】図8(A)は、インキュベーション期間の終了時に、リポソーム膜を破壊するためのTritonX−100の添加により確定される最大蛍光に関して、リポソームから遊離されたカルセインの百分率をPE:CHおよびPE:PC:PI:PSリポソームに対する時間の関数として表すプロットである。
【図8−2】図8(B)は、10%ウシ血清(FBS);10%ヒト血清のいずれかの存在下において、または無血清培地において、Huh7.5細胞と一緒に24時間インキュベーションされたRh−標識リポソーム(50μm脂質濃度)に関する実験の結果を提示する。インキュベーション期間後、細胞は採取され、計数され、そして蛍光はλex=550mm、λexm=590nmにおいて測定された。結果はそれぞれの試料の細胞毎に測定された平均蛍光として提示される。すべてのデータは3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値と標準偏差を表す。
【図9】図9は1xPBSを被包する異なるリポソーム製剤と一緒に5日間インキュベーション後のHuh7.5細胞の生存能力を示す。培地中の最終脂質濃度は0〜500μMまで変動した。結果は3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。
【図10】図10は1xPBSを被包する異なるリポソーム製剤と一緒に5日間インキュベーションした後のPBMCの生存能力を実証する。培地中の最終脂質濃度は0〜500μMまで変動した。結果は3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。
【図11】図11は5日間のリポソームによる処置の間の感染PBMCからのHIVの分泌を表す。
【図12】図12はリポソーム−処置HIV−感染PBMCから分泌されたHIVビリオンの感染力を表す。
【図13】図13は完全DMEM/10%FBS中で45分間Huh7.5細胞と一緒にインキュベーションされた、自己−消光カルセイン−負荷、rh−PE−標識、リポソーム(最終脂質濃度50μM)に関する実験の結果を表す。インキュベーション後のリポソームに由来するカルセインの細胞内消光はλex=490nm、λem=520nmで測定され、同じインキュベーション期間中の総リポソーム取り込みはλex=550nm、λem=590nmにおける蛍光測定により確定された。アッセイは37℃および4℃の両方で実施され、エンドサイトーシスしないリポソーム結合に関して修正するために、すべての4℃の値は37℃の値から差し引かれた。Huh7.5細胞内側に被包されたカルセインを送達するためのリポソームの能力は、インキュベーション後に、処置された細胞におけるカルセイン脱消光とrh−PE蛍光の比を計算することによって測定された。データは3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値とSDを表す。
【図14】図14は、1mM NB−DNJによる5日間処置の間の、感染したPBMCからのHIVの分泌を表す:フリー対リポソーム−媒介送達。
【図15】図15はNB−DNJ−リポソームまたはフリーNB−DNJによって処置されたHIV−感染PBMCから分泌されたHIVビリオンの感染力を示す。
【図16】図16は1mM NB−DNJを被包する異なるリポソーム製剤と一緒に5日間インキュベーション後のPBMCの生存能力を実証する。
【図17】図17はリポソームによる5日間処置後の急性感染および慢性感染両方のHuh7.5細胞からのHCVの分泌を表す。
【図18】図18は、急性感染および慢性感染両方の、リポソーム−処置HCV−感染Huh7.5細胞から分泌されたHCVビリオンの感染力を表す。
【図19】図19は、16時間インキュベーション後にLDを可視化するためにBODIPY493/503(緑色)で探査された、無処置Huh7.5細胞(左パネル)およびPE:PC:PI:PSリポソーム処置−Huh7.5細胞の共焦点顕微鏡画像を示す。
【図20】図20は、PE:PC:PI:PSリポソームで2時間処置され、LD染料(緑色)で探査されたHuh7.5細胞(左パネル)の共焦点顕微鏡画像を示す。PE:PC:PI:PSリポソームは最終脂質濃度50μMになるまで細胞培養培地に添加された。DAPI(青色)は核染料として使用される。底部−右パネルは統合画像である。黄色は細胞内の共局在領域を同定する。
【図21−1】図21Aは、16時間インキュベーションされ、抗−HCVコア抗体(赤色)およびLD染料(緑色)により探査された、無処置Huh7.5細胞(左パネル)およびPE:PC:PI:PSリポソーム処置−Huh7.5細胞(右パネル)の共焦点顕微鏡画像を示す。
【図21−2】図21Bは無処置細胞(左)およびPE:PC:PI:PS細胞(右)両方に関する統合画像(図9Aの白四角)の拡大を示す。
【図21−3】図21CはPE:PC:PI:PSリポソームの存在下(右)および非存在下(左)におけるHCVコア蛋白質/LD相互作用の概念図である。
【図22】図22A〜Dは代表的な多価不飽和脂質:22:6PE(A);20:4PE(B);22:6PC(C)および20:4PC(D)の化学構造を表す。
【図23】図23A〜Bはそれぞれ以下のことを示す:(23A)種々のERリポソーム製剤の存在下において4日間インキュベーションの間の感染したHuh7.5細胞(MOI=0.5)からのJC−1 HCVcc分泌は細胞上清500μlから定量された。分泌は定量PCRによる上清内のJC−1 HCVccRNAの定量により測定される。(23B)リポソーム−処置、JC−1−感染Huh7.5細胞から分泌されたJC−1 HCVccの感染力。分泌されたHCVccの感染力はナイーブHuh7.5細胞の1時間の感染、その後の48時間のインキュベーションにより確定され、その時点で細胞は固定され、感染した細胞の数を定量するために抗−HCVコア抗体により、そしてすべての細胞を可視化するためにDAPIにより染色された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語の定義
特記しない限り、“a”または“an”は“1以上”を意味する。
【0011】
本明細書で使用する“ウイルス感染”という用語は罹病状態を表すことができ、そのような状態においてウイルスは健康な細胞に侵入し、細胞の再生装置を使用して増殖するか、または複製し、最終的に細胞を溶解して細胞死、ウイルス粒子の遊離および新規に産生された子孫ウイルスによる他の細胞の感染に帰着する。ある種のウイルスによる潜伏感染もウイルス感染の可能性のある結果である。
【0012】
本明細書で使用する“ウイルス感染を治療するか、または予防する”という言い方は特有のウイルスの複製を阻止する、ウイルス伝播を阻止する、またはウイルスの宿主中にウイルスが定着することを予防する、およびウイルス感染によって引き起こされる疾患の症状を改善するか、または緩和することを意味しうる。治療がウイルス負荷の低減、死亡率および/または罹病率の減少に帰着する場合、そのような治療は治療効果があると見なすことができる
“治療薬”という用語は、ウイルス感染またはそれによって引き起こされる疾患のような生理的状態を治療することに役立ちうる、分子または化合物のような薬剤を表す。
【0013】
“リポソーム”という用語は、通常球状二重層製剤である二重層製剤において脂質を含む粒子として定義することができる。本明細書で論じられるリポソームは以下の略語によって表される1以上の脂質を含んでいてもよい:
CHEMSはコレステリルヘミスクシネート脂質を意味する。
【0014】
DOPEはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン脂質を意味する。
【0015】
DOPCはジオレオイルホスファチジルコリン脂質を意味する。
【0016】
PEはホスファチジルエタノールアミン脂質またはその誘導体を意味する。
【0017】
PEG−PEはポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートしたPE脂質を意味する。PEG−PEの一例としてはポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン脂質を挙げることができる。PEGのPEG成分の分子量は変化しうる。
【0018】
Rh−PEはリサミンローダミンB−ホスファチジルエタノールアミン脂質を意味する。
【0019】
MCC−PEは、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[4−(p−マレイミドメチル)シクロヘキサン−カルボキサミド]脂質を意味する。
【0020】
PIはホスファチジルイノシトール脂質を意味する。
【0021】
PSはホスファチジルセリンを意味する。
【0022】
“細胞内送達”という用語は、リポソームからいずれかの細胞内コンパートメントへの被包された物質の送達を表すことができる。
【0023】
IC50またはIC90(50%阻害濃度または90%阻害濃度)はそれぞれ、ウイルス感染の50%または90%低減を達成するために使用される治療薬の濃度を表すことができる。
【0024】
PBMCは末梢血単核細胞を意味する。
【0025】
sCD4は可溶性CD4分子を意味する。“可溶性CD4”または“sCD4”または“D1D2”はCD4分子、またはそのフラグメントを意味し、当業者によって理解されるように、それは水性溶液の中にあり、HIV Envのコンホメーションを変更することにより生来の膜−係留CD4の機能を模倣することができる。可溶性CD4の一例としては、例えばSalzwedelらのJ.Virol.74:326 333,2000に記載の2−ドメイン可溶性CD4(sCD4またはD1D2)が挙げられる。
【0026】
MAbはモノクローナル抗体を意味する。
【0027】
DNJはデオキシノジリマイシンを意味する。
【0028】
NB−DNJはN−ブチルデオキシノジリマイシンを意味する。
【0029】
NN−DNJはN−ノニルデオキシノジリマイシンを意味する。
【0030】
BVDVはウシウイルス性下痢症ウイルスを意味する。
【0031】
HBVはB型肝炎ウイルスを意味する。
【0032】
HCVはC型肝炎ウイルスを意味する。
【0033】
HIVはヒト免疫不全症ウイルスを意味する。
【0034】
Ncpは非細胞変性を意味する。
【0035】
Cpは細胞変性を意味する。
【0036】
ERは小胞体を意味する。
【0037】
CHOはチャイニーズハムスター卵巣細胞を意味する。
【0038】
MDBKはMadin−Darbyウシ腎臓細胞を意味する。
【0039】
PCRはポリメラーゼ連鎖反応を意味する。
【0040】
FOSは遊離オリゴサッカライドを意味する。
【0041】
HPLCは高速液体クロマトグラフィーを意味する。
【0042】
PHAはフィトヘマグルチニンを意味する。
【0043】
FBSはウシ胎児血清を意味する。
【0044】
TCID50は50%組織培養感染量を意味する。
【0045】
ELISAは酵素結合免疫吸着法を意味する。
【0046】
IgGはイムノグロブリンを意味する。
【0047】
DAPIは4′,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールを意味する。
【0048】
PBSはリン酸緩衝生理食塩水を意味する。
【0049】
LDは脂肪滴を意味する。
【0050】
NSは非構造を意味する。
【0051】
“MOI”は感染多重度を意味する。
【0052】
関連する出願
本開示は米国特許出願公開第2008−0138351号をそのまま参照として援用する。
【0053】
C型肝炎
世界でおよそ1億7千万人、すなわち世界人口の3%(たとえばWHO,J.Viral.Hepat.1999;6:35−47を参照されたい)および米国のおよそ4百万人がC型肝炎ウイルス(HCV、HepC)に感染している。HCVに急性感染した人の約80%は慢性感染になる。それゆえ、HCVは慢性肝炎の主要な原因である。一旦慢性的に感染すると、ウイルスは治療なしではほとんど取り除けない。まれな症例では、HCV感染は臨床的に急性の疾患および肝不全さえ引き起こす。慢性HCV感染は個人間で劇的に変化することが可能で、ある人は臨床的に重要でないか、あるいは極めて軽度の肝臓疾患に罹患し、決して合併症を発症しないが、他の人は臨床的に明らかな慢性肝炎に罹患し、肝硬変発症に進行する可能性がある。HCVに罹患し、肝硬変を発症する人の約20%は末期肝臓疾患を発症し、そして原発性肝臓癌を発症するリスクが増大することになる。
【0054】
単独の、またはリバビリンとの組み合わせにおける抗ウイルス薬、たとえばインターフェロンは、患者の80%に至るまで有効である(Di Bisceglie,A.M,and Hoofnagle,J.H.2002,Hepatology 36,S121−S127)が、多くの患者はこの組み合わせ療法の形態に耐えられない。
【0055】
脂肪滴
脂肪滴(LD)は中性脂質貯蔵のために使用されうるオルガネラでありうる。LDは細胞質の中を活発に動き、ERを含む他のオルガネラと相互作用することができる。これらの相互作用は他のオルガネラへの脂質および蛋白質の輸送を促進すると考えられる。HCVキャプシド蛋白質(コア)は細胞内LDと会合し、感染性ウイルス粒子産生のために非構造(NS)蛋白質および複製複合体をLD−会合膜に能動的に動員することができる。HCV粒子はLDのすぐそばで観察されていて、ウイルスアセンブリーのいくつかのステップがLD周辺で起こりうることを示している(Miyanariら,Nature Cell Biology,9(2007)pp.1089−1097)。
【0056】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
HIVは後天性免疫不全症候群(AIDS)および関連する障害の原因因子である。少なくとも2種の別個のHIVの型:HIV−1およびHIV−2がある。さらに、これらの型のそれぞれの集団内に大量の遺伝的異質性が存在する。AIDS流行の開始以来、約2千万人が死亡し、概算では4千万を超える人々がHIV−1/AIDSに罹患しながら生存し、世界中で毎日1万4千人が感染している。
【0057】
非常に多くの抗ウイルス治療薬および診断能力が開発されていて、少なくとも利用できる人々にとっては、そのことが命の長さおよび生活の質の両方を大きく改善してきた。これらの薬物の大部分は、ウイルス蛋白質または逆転写のようなプロセスおよびプロテアーゼ活性を妨害する。残念なことに、これらの治療は感染を排除せず、多くの療法の好ましくない効果は過酷であり、そして現在使用されているすべての型の抗ウイルス薬に対してHIVの薬剤耐性株が存在する。
【0058】
N−ブチル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール
N−ブチル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトールとしても公知のNB−DNJはERグルコシダーゼIおよびIIによるプロセッシングを阻止することができ、そしてとりわけ、HIVおよびB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)のような肝炎ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)の糖蛋白質のミスフォールディングおよび/またはER−保持を引き起こすことによる有効な抗ウイルス薬であることが示されている。NB−DNJおよび他のN−置換デオキシノジリマイシン誘導体を合成する方法は、たとえば米国特許第5,622,972号、第4,246,345号、第4,266,025号、第4,405,714号および第4,806,650号に記載される。NB−DNJの抗ウイルス効果は、たとえば肝炎ウイルスに関しては米国特許第6,465,487号;第6,545,021号;第6,689,759号;第6,809,083号に、そしてHIVウイルスに関しては米国特許第4,849,430号において論じられる。
【0059】
NB−DNJのようなグルコシダーゼ阻害剤は細胞培養物およびウッドチャック動物モデルを使用することの両方におけるHBV感染の治療に有効であることが示されている。たとえば、T.Block,X.Lu,A.S.Mehta,B.S.Blumberg,B.Tennant,M.Ebling,B.Korba,D.M.Lansky,G.S.Jacob & R.A.Dwek,Nat Med.1998 May;4(5):610−4を参照されたい。NB−DNJはHBV粒子の分泌を抑制し、HBV DNAの細胞内保持を引き起こす。
【0060】
NB−DNJは、HCVの細胞培養物モデルであるBVDVに対する強い抗ウイルス薬であることが示されている。たとえば、Branza−Nichita N,Durantel D,Carrouee−Durantel S,Dwek RA,Zitzmann N.,J Virol.2001 Apr;75(8):3527−36;Durantel,D.ら,J.Virol,2001,75,8987−8998;N.Zitzmannら,PNAS,1999,96,11878−11882を参照されたい。NB−DNJによる治療は、ウイルス子孫の感染力減少を導くが、分泌されたウイルスの実際の数に対する効果は少ない。
【0061】
NB−DNJはHIVに対する抗ウイルス性があることが示されている;処置はHIV−感染細胞から遊離されたウイルス粒子の数に対しては比較的効果が小さいが、遊離された感染性ウイルスの量は非常に低減される。たとえば、P.B.Fischer,M.Collinら(1995),J.Virol 69(9):5791−7;P.B.Fischer,G.B.Karlsson,T.Butters,R.Dwek and F.Platt,J.Virol.70(1996a),pp.7143-7152、P.B.Fischer,G.B.Karlsson,R.Dwek and F.Platt,.J.Virol.70(1996b),pp.7153-7160を参照されたい。NB−DNJを含む臨床試験はHIV−1感染患者において実施され、結果は抗ウイルス活性に必要な濃度が非常に高く、患者に重篤な副作用を生じることを実証した。たとえば、Fischl M.A.,Resnick L.,Coombs R.,Kremer A.B.,Pottage J.C.Jr,Fass R.J.,Fife K.H.,Powderly W.G.,Collier A.C.,Aspinall R.L.ら,J.Acquir.Immune.Defic.Syndr.1994 Feb;7(2):139−47を参照されたい。現在、NB−DNJ処置に対して耐性のある突然変異HIV株は存在しない。
【0062】
ER蛋白質フォールディングおよびグルコシダーゼIおよびII
グルコシダーゼ阻害によって実証される抗ウイルス効果は、主にカルネキシン/カルレテキュリンサイクルに入ることを遮断することによる、ER内のウイルス糖蛋白質のミスフォールディングまたは保持の結果であると考えられている。伸長しているポリペプチド鎖におけるトリグルコシル化オリゴサッカライド(Glc3Man9GlcNAc2)のAsn−X−Ser/Thrコンセンサス配列への転移後、成熟炭水化物ユニットへのそれ以上のプロセッシングが起こりうる前に3つのα‐結合グルコース残基が遊離されることが必要である。さらに、適切なフォールディングのためにカルネキシン/カルレテキュリンサイクルに入ることを可能にするために2つの外側のグルコース残基が取り除かれなければならない。たとえば、Bergeron,J.J.ら,Trends Biochem.Sci.,1994,19,124−128;Peterson,J.R.ら,Mol.Biol.Cell,1995,6,1173−1184を参照されたい。初期のプロセッシングは、ERに位置し、α1−2結合グルコース残基を特に開裂し、内腔に配向した触媒ドメイン(グルコシダーゼI)を持つ膜内在性酵素に影響を受け;その後α1−3結合グルコース成分の両方を遊離するグルコシダーゼIIの作用を受ける。
【0063】
リポソーム
リポソームは、分子障壁としての役割を果たす細胞膜を回避することによって、水溶性化合物を細胞の内側に直接送達することができる。pH感受性リポソーム製剤は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)またはその誘導体、たとえばDOPEと、中性pHにおいて安定化剤としての役割を果たす酸性基を含む化合物の組み合わせを含むことができる。コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)は、in vivoにおいて他の両親媒性安定化剤に比較してそのコレステロール基がPE含有小胞に高い安定性を与えるため、優れた安定化分子でありうる。リポソーム−媒介送達のin vivoでの効力は、それらの薬物動態および生体内分布に影響を与える血清成分(オプソニン)との相互作用に強く依存しうる。pH−感受性リポソームは、血液循環から速やかに除去され、肝臓および腎臓に蓄積するが、共有結合したポリエチレングリコール(PEG)を持つ脂質の包含は、DOPE:CHEMSリポソームの正味の負電荷を安定化し、長期の循環時間を導くことにより、細網内皮系(RES)によるクリアランスに打ち勝つことができる。DOPE−CHEMSおよびDOPE−CHEMS−PEG−PEリポソームならびにそれらの調製の方法は、たとえばV.A.Slepushkin,S.Simoes,P.Dazin,M.S.Newman,L.S.Guo and M.C.P.de Lima,J.Biol.Chem.272(1997)2382−2388;およびS.Simoes,V.Slepushkin,N.Duzgunes and M.C.Pedroso de Lima,Biomembranes 1515(2001)23−37に記載され、それらは共にそのまま参照として本明細書に援用される。
【0064】
DOPE−CHEMS(モル比6:4)に被包されたNB−DNJの送達は米国特許出願第US2003/0124160号に開示される。
【0065】
開示
発明者らはPIまたはPS脂質(図1を参照されたい)の中の少なくとも1種を含む、リポソームまたはミセルのような脂質粒子は細胞により効率的に取り込まれ、そしてその細胞のER膜と融合してもよいと考える。発明者らはまた、PIまたはPS脂質の中の少なくとも1種を含む脂質粒子は、血液または血清のような血液成分中で高い安定性を有しうることを発見した。たとえば、PIまたはPS脂質の中の少なくとも1種を含むリポソームは、DOPE/CHEMSリポソーム(モル比6:3)またはDOPE/CHEMS/PEG−PE(モル比6:3:0.1)リポソームより、血清中で高い安定性を有しうる。
【0066】
ある態様では、脂質粒子は少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または3%から60%、または5%から50%、または10%から30%のモル濃度でPIおよび/またはPS脂質を含むことができる。ある態様では、脂質粒子中のPS脂質のモル濃度は、少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または3%から60%、または5%から50%、または10%から30%でありうる。ある態様では、脂質粒子中のPI脂質のモル濃度は、少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または3%から60%、または5%から50%、または10%から30%でありうる。ある態様では、脂質粒子中のPIとPS脂質を組み合わせた濃度は、少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または3%から60%、または5%から50%、または10%から30%でありうる。
【0067】
脂質粒子はさらに1種以上のホスファチジルエタノールアミン(PE)脂質またはその誘導体、たとえばDOPEを含んでいてもよい。ある態様では、PE脂質はラベルとコンジュゲートしたPE脂質を含んでいてもよく、該ラベルはたとえば、フルオロフォアラベル、ビオチンラベル、または放射性ラベルでありうる。図1A、1Fおよび1Gは、DOPE脂質、フルオロフォアとコンジュゲートしたPE脂質の例であるRho−PE脂質、およびビオチンラベルとコンジュゲートしたPE脂質の例であるb−PE脂質を提示する。
【0068】
ある態様では、脂質粒子はPCまたはCHEMSリポソームの中の少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。さらにある他の態様では、脂質粒子はPCおよび/またはCHEMS脂質を含まないような粒子であってもよい。
【0069】
ある態様では、PE、PC、PIおよびPS脂質を含む脂質粒子が好ましくてもよい。そのような脂質粒子は、細胞内LDを妨害してもよく、そのことがこれらの脂質粒子によって処置されたHCV―感染細胞から分泌されたHCV粒子の感染力の著しい低減を導いてもよい。PE、PC、PIおよびPS脂質を含む脂質粒子はHCV−感染細胞への脂質の導入に使用されて、LD/HCVコア蛋白質相互作用を妨害してもよい。さらに、PE、PC、PIおよびPS脂質を含む脂質粒子はHCVと同じ細胞受容体を競い、その結果、ウイルスの細胞への侵入を妨げ、ウイルス感染力を低減させてもよい。
【0070】
ウイルス感染
脂質粒子は対象においてウイルスによって引き起こされるか、またはウイルスに関連した疾患または状態を治療する、予防するおよび/またはモニターするために使用することができ、そのような対象は多くの場合哺乳類または鳥類のような温血動物でありうる。多くの場合、対象はヒトでありうる。多くの場合、該疾患または状態はウイルス感染でありうる。
【0071】
ある態様では、PIまたはPS脂質の中の少なくとも1種を含む脂質粒子は、フラビウイルス科に属するウイルスによって引き起こされるか、またはウイルスに関連した疾患または状態を治療する、予防するおよび/またはモニターするために使用することができる。フラビウイルス科にはフラビウイルス属;ヘパシウイルス属およびペスティウイルス属が挙げられる。
【0072】
フラビウイルス属には、ガジェッツガリー(Gadgets Gully)ウイルス(GGYV)、カダム(Kadam)ウイルス(KADV);キャサヌール森林病(Kyasanur Forest disease)ウイルス(KFDV);ランガット(Langat)ウイルス(LGTV);オムスク出血熱(Omsk hemorrhagic fever)ウイルス(OHFV);ポーワッサン(Powassan)ウイルス(POWV);ロイヤルファーム(Royal Farm)ウイルス(RFV);ダニ−媒介性脳炎ウイルス(TBEV);跳躍病ウイルス(LIV);メアバン(Meaban)ウイルス(MEAV);サウマレッツリーフ(Saumarez Reef)ウイルス(SREV);チュレニー(Tyuleniy)ウイルス(TYUV);アロア(Aroa)ウイルス(AROAV);デング(Dengue)ウイルス(DENV)1−4;ケドゴウ(Kedougou)ウイルス(KEDV);カシパコア(Cacipacore)ウイルス(CPCV);コウタンゴ(Koutango)ウイルス(KOUV);日本脳炎ウイルス(JEV);マレー渓谷脳炎(Murray Valley encephalitis)ウイルス(MVEV);セントルイス脳炎(St.Louis encephalitis)ウイルス(SLEV);ウスツ(Usutu)ウイルス(USUV);西ナイル(West Nile)ウイルス(WNV);ヤオウンド(Yaounde)ウイルス(YAOV);ココベラ(Kokobera)ウイルス(KOKV);バガザ(Bagaza)ウイルス(BAGV);イレウス(Ilheus)ウイルス(ILHV);イスラエルトルコ脳膜脳脊髄炎(Israel turkey meningoencephalomyelitis)ウイルス(ITV);ンタヤ(Ntaya)ウイルス(NTAV);テンブス(Tembusu)(TMUV);ジカ(Zika)ウイルス(ZIKV);バンジ(Banzi)ウイルス(BANV);ボウボウイ(Bouboui)ウイルス(BOUV);エッジヒル(Edge Hill)ウイルス(EHV);ジュグラ(Jugra)ウイルス(JUGV);サボヤ(Saboya)ウイルス(SABV);セピク(Sepik)ウイルス(SEPV);ウガンダS(Uganda S)ウイルス(UGSV);ベッセルスブロン(Wesselsbron)ウイルス(WESSV);黄熱病(Yellow fever)ウイルス(YFV);エンテベコウモリ(Entebbe bat)ウイルス(ENTV);ヨコセ(Yokose)ウイルス(YOKV);アポイ(Apoi)ウイルス(APOIV);カウボーンリッジ(Cowbone Ridge)ウイルス(CRV);ジュチアパ(Jutiapa)ウイルス(JUTV);モドク(Modoc)ウイルス(MODV);サルビエヤ(Sal Vieja)ウイルス(SVV);サンパーリタ(San Perlita)ウイルス(SPV);ブカラサコウモリ(Bukalasa bat)ウイルス(BBV);カーレー島(Carey Island)ウイルス(CIV);ダカーコウモリ(Dakar bat)ウイルス(DBV);モンタナミオチス白質脳炎(Montana myotis leukoencephalitis)ウイルス(MMLV);フノンペンコウモリ(Phnom Penh bat)ウイルス(PPBV);リオブラボ(Rio Bravo)ウイルス(RBV)が挙げられる。ヘパシウイルス属には、C型肝炎ウイルス(HCV、Hep C)が挙げられる。ペスティウイルス属には、ボーダー病(Border disease)ウイルス、ウシ下痢症ウイルス(BVDV);および豚コレラ(Classical swine fever)ウイルスが挙げられる。フラビウイルスによって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患には、デング熱;日本脳炎;キャサヌール森林病(Kyasanur Forest disease);マレー渓谷脳炎(Murray Valley encephalitis);セントルイス脳炎(St. Louis encephalitis);チックボーン脳炎(Tick−borne encephalitis);西ナイル脳炎(West Nile encephalitis)および黄熱病が挙げられる。ヘパシウイルスによって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患にはC型肝炎ウイルス感染が挙げられる。ペスティウイルスによって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患には、豚コレラ(Classical swine fever)(CSF)およびウシウイルス性下痢(BVD)またはウシウイルス性下痢/粘膜病(BVD/MD)が挙げられる。
【0073】
ある態様では、脂質粒子はヘパドナウイルス科に属するウイルスよって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患または状態を治療する、予防するおよび/またはモニターするために使用されうる。ヘパドナウイルス科には、B型肝炎ウイルスを含むオルトヘパドナウイルス属、およびアヒルB型肝炎ウイルスを含むアビヘパドナウイルス属が挙げられる。ヘパドナウイルスによって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患にはB型肝炎ウイルス感染が挙げられる。
【0074】
ある態様では、脂質粒子はレトロウイルス科に属するウイルスよって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患または状態を治療する、予防するおよび/またはモニターするために使用されうる。レトロウイルス科には、トリ白血病ウイルスを含むアルファレトロウイルス属;マウス乳癌ウイルスを含むベータレトロウイルス属;マウス白血病ウイルスおよびネコ白血病ウイルスを含むガンマレトロウイルス属;ウシ白血病ウイルスおよびヒトT−リンパ球向性ウイルスを含むデルタレトロウイルス属;ウォールアイ皮膚肉腫ウイルス(Walleye dermal sarcoma virus)を含むイプシロンレトロウイルス属;ヒト免疫不全ウイルスI、サル免疫不全ウイルスおよびネコ免疫不全ウイルスを含むレンチウイルス属;チンパンジー泡沫状ウイルスを含むスプーマウイルス属が挙げられる。レトロウイルス科に属するウイルスによって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患および状態にはHIV I感染が挙げられる。
【0075】
ある態様では、脂質粒子は糖蛋白質含有ウイルスよって引き起こされるか、またはそれらに関連した疾患または状態を治療する、予防するおよび/またはモニターするために使用されうる。脂質粒子は、対象、たとえばヒトに組成物の一部として投与される場合、感染、たとえばウイルス感染の治療および予防のために使用されてもよい。ある態様では、そのような感染は糖蛋白質含有ウイルス、すなわち少なくとも1種の糖蛋白質を含むウイルスによって引き起こされるか、またはそれに関連した感染であってもよい。さらにある態様では、そのような感染は、肝炎感染、たとえばHCV感染またはHBV感染であってもよい。さらにある態様では、そのような感染はレトロウイルス感染、たとえばHIVであってもよい。さらにある態様では、感染はフラビウイルス感染、たとえばHCVであってもよい。
【0076】
脂質粒子がHIV感染を治療するために使用される場合、それがHIV感染細胞から分泌されたHIV粒子の感染力を低減させてもよい。
【0077】
脂質粒子がHCV感染を治療するために使用される場合、それが細胞内LDを妨害し、HCV感染細胞から分泌されたHCV粒子の感染力を低減させてもよい。PE、PC、PIおよびPS脂質を含む脂質粒子がそのような場合に好ましくてもよい。
【0078】
本発明はそれらの操作理論によって限定されるが、発明者らは、PE、PC、PIおよびPS脂質を含む脂質粒子がHCVと同じ細胞受容体を競い、その結果ウイルスの細胞への侵入を妨げ、ウイルス感染力を低減させると考えている。
【0079】
活性薬
ある態様では、少なくとも1種の薬剤、たとえば治療薬またはイメージング剤は脂質粒子内側に被包されてもよい。そのような薬剤は、たとえば、水溶性分子、ペプチドまたはアミノ酸であってもよい。被包された活性薬と一緒に脂質粒子を含む組成物は、活性薬が有効であることが公知の疾患または状態を治療する、予防する、またはモニターするために使用することができる。該疾患または状態は、活性薬の細胞内送達が有益であってもよい任意の疾患または状態であってもよい。
【0080】
PIおよび/PS脂質を含む脂質粒子の使用は、細胞のER内腔への被包された物質の送達を考慮してもよい。
【0081】
ある態様では、脂質粒子の内側に被包された薬剤は、α−グルコシダーゼ阻害剤でありうる。ある態様では、α−グルコシダーゼ阻害剤はERα−グルコシダーゼ阻害剤であってよく、そしてそれはERα−グルコシダーゼI阻害剤またはERα−グルコシダーゼII阻害剤であってもよい。一般に、ウイルスエンベロップ糖蛋白質の適切なフォールディングをカルネキシンおよび/またはカルレティキュリンとの相互作用に頼る任意のウイルスがERα−グルコシダーゼ阻害剤の目標にされうる。
【0082】
アルファグルコシダーゼ阻害剤は、宿主のアルファ−グルコシダーゼ酵素活性を、薬剤の非存在下におけるアルファ−グルコシダーゼの酵素活性に比較して少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%、またはそれより多く阻止する薬剤でありうる。“アルファ−グルコシダーゼ阻害剤”という用語は、宿主のアルファ−グルコシダーゼ活性を阻止する、天然に存在する薬剤および合成薬剤の両方を包含する。適切なアルファ−グルコシダーゼ阻害剤には、限定するものではないがデオキシノジリマイシンおよびN−置換デオキシノジリマイシン、たとえば式Iの化合物:
【0083】
【化1】
【0084】
および薬剤的に受容可能なその塩を挙げることができ、式中、R1は分枝鎖または直鎖アルキル基でありうる置換、または非置換アルキル基;置換、または非置換シクロアルキル基;置換、または非置換アリール基、置換、または非置換オキサアルキル基、置換、または非置換アリールアルキル、シクロアルキルアルキルから選択され、そしてW、X、Y、およびZはそれぞれ独立して水素、アルカノイル基、アロイル基、およびハロアルカノイル基から選択される。
【0085】
ある態様では、R1はC1〜C20アルキル基またはC3〜C12アルキル基から選択されうる。ある態様では、R1はエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、へプチル、n−オクチル、n−ノニルおよびn−デシルから選択されうる。ある態様では、R1はブチルまたはノニルでありうる。
【0086】
ある態様では、R1はC1〜C20アルキル基またはC3〜C12アルキル基であってよく、さらに1から5、または1から3、または1から2個の酸素原子を含むことができるオキサルキルでありうる。オキサルキル基の例としては、−(CH2)2O(CH2)5CH3、−(CH2)2O(CH2)6CH3、-(CH2)6OCH2CH3、および−(CH2)2OCH2CH2CH3が挙げられる。
【0087】
ある態様では、R1はアリールアルキル基でありうる。アリールアルキル基の例としてはC1〜C12−Ph基、たとえばC3−Ph、C4−Ph、C5−Ph、C6−PhおよびC7−Phが挙げられる。
【0088】
ある態様では、式Iの化合物は以下の化合物から選択されるが、それらに限定されない:N−(n−ヘキシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−ヘプチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−オクチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−オクチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール、テトラブチレート;N−(n−ノニル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(n−デシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(n−ウンデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(n−ノニル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−デシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−ウンデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−ドデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(2−エチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(4−エチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(5−メチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(3−プロピルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(1−ペンチルペンチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(1−ブチルブチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(7−メチルオクチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(8−メチルノニル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(9−メチルデシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(10−メチルウンデシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(6−シクロヘキシルヘキシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(4−シクロヘキシルブチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(2−シクロヘキシルエチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(1−シクロヘキシルメチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(1−フェニルメチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(3−フェニルプロピル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(3−(4−メチル)−フェニルプロピル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(6−フェニルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−ノニル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(n−デシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(n−ウンデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(n−ドデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(2−エチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(4−エチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(5−メチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(3−プロピルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(1−ペンチルペンチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(1−ブチルブチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(7−メチルオクチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(8−メチルノニル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(9−メチルデシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(10−メチルウンデシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(6−シクロヘキシルヘキシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(4−シクロヘキシルブチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(2−シクロヘキシルエチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(1−シクロヘキシルメチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(1−フェニルメチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(3−フェニルプロピル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(3−(4−メチル)−フェニルプロピル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;N−(6−フェニルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチレート;薬剤的に受容可能なその塩;およびそのいずれか2種以上の混合物。
【0089】
N−置換デオキシノジリマイシンが有効でありうる疾患および状態は以下の米国特許に開示される:第4,849,430号;第4,876,268号;第5,411,970号;第5,472,969号;第5,643,888号;第6,225,325号;第6,465,487号;第6,465,488号;第6,515,028号;第6,689,759号;第6,809,083号;第6,583,158号;第6589,964号;第6,599,919号;第6,916,829号;第7,141,582号。N−置換デオキシノジリマイシンが有効でありうる疾患および状態には以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:HIV感染;C型肝炎感染およびB型肝炎感染を含む肝炎感染;テイサックス病、ゴーシェ病、クラッベ病およびファブリー病を含むリソソーム脂質蓄積症;ならびに嚢胞性線維症。
【0090】
ある態様では、α−グルコシダーゼ阻害剤は、N−オキサアルキル化デオキシノジリマイシンまたはN−アルキルオキシデオキシノジリマイシン、たとえば米国特許第4,639,436号に記載のN−ヒドロキシエチルDNJ(ミグリトール(Miglitol)またはグリセット(Glyset)(登録商標))でありうる。
【0091】
ある態様では、α−グルコシダーゼ阻害剤はカスタノスペルミンおよび/またはカスタノスペルミン誘導体、たとえば、6−O−ブタノイルカスタノスペルミン(セルゴシビル(celgosivir))を含む米国特許出願第2006/0194835号に開示された式(I)の化合物および薬剤的に受容可能なその塩、ならびにPCT公開第WO01054692号に開示された式IIの化合物または薬剤的に受容可能なその塩でありうる。
【0092】
カスタノスペルミンおよびその誘導体が有効でありうる疾患および状態は、米国特許第
4,792,558号;第4,837,237号;第4,925,796号;第4,952,585号;第5,004,746号;第5,214,050号;第5,264,356号;第5,385,911号;第5,643,888号;第5,691,346号;第5,750,648号;第5,837,709号;第5,908,867号;第6,136,820号;第6,583,158号;第6,589,964号;第6,656,912号および米国特許公報20020006909;20020188011;20060093577;20060194835;20080131398に開示される。カスタノスペルミンおよびその誘導体が有効でありうる疾患および状態には、HIV感染を含むレトロウイルス感染;脳性マラリア;B型肝炎感染およびC型肝炎感染を含む肝炎感染;糖尿病ならびにリソソーム蓄積障害が挙げられるが、それらに限定されない。
【0093】
ある態様では、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤はアカルボース(O−4,6−ジデオキシ−4−[[(1S,4R,5S,6S)−4,5,6−トリヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2−シクロヘキセン−1−イル]アミノ]−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−→−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−グルコース)、またはプレコース(Precose)(登録商標)でありうる。アカルボースは米国特許第4,904,769号に開示される。ある態様では、アルファグルコシダーゼ阻害剤はアカルボースの高度に精製された形状(米国特許第4,904,769号を参照されたい)でありうる。
【0094】
ある態様では、リポソーム内側に被包された薬剤はイオンチャンネル阻害剤でありうる。ある態様では、イオンチャンネル阻害剤はHCVp7蛋白質の活性を阻止する薬剤でありうる。イオンチャンネル阻害剤およびそれらを同定する方法は米国特許公開第2004/0110795号に詳述される。適切なイオンチャンネル阻害剤には、N−(7−オキサ−ノニル)−1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−7−オキサ−ノニル6−MeDGJまたはUT231B)およびN−10−オキサウンデクル−6−MeDGJを含む式Iの化合物および薬剤的に受容可能なその塩が挙げられる。適切なイオンチャンネル阻害剤にはさらに、N−ノニルデオキシノジリマイシン、N−ノニルデオキシガラクトノジリマイシンおよびN−オキサノニルデオキシガラクトノジリマイシンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0095】
ある態様では、リポソーム内に被包された薬剤はイミノ糖でありうる。適切なイミノ糖には、天然に存在するイミノ糖および合成イミノ糖の両方が挙げられる。
【0096】
ある態様では、イミノ糖はデオキシノジリマイシンまたはN−置換デオキシノジリマイシン誘導体でありうる。適切なN−置換デオキシノジリマイシン誘導体の例としては、本出願の式IIの化合物、米国特許第6,545,021号に記載の式Iの化合物およびN−オキサアルキル化デオキシノジリマイシン、たとえば米国特許第4,639,436号に記載のN−ヒドロキシエチルDNJ(ミグリトールまたはグリセット(登録商標))が挙げられる。
【0097】
ある態様では、イミノ糖はカスタノスペルミンまたはカスタノスペルミン誘導体でありうる。適切なカスタノスペルミン誘導体には、米国特許出願第2006/0194835号に開示された式Iの化合物および薬剤的に受容可能なその塩ならびにPCT公開第WO01054692号に開示された式IIの化合物および薬剤的に受容可能なその塩が挙げられるが、それらに限定されない。
【0098】
ある態様では、イミノ糖は、PCT公開第WO99/24401号および第WO01/10429号に開示されたもののような、デオキシガラクトノジリマイシンまたはそのN−置換誘導体でありうる。適切なN−置換デオキシガラクトノジリマイシン誘導体の例としては、N−アルキル化デオキシガラクトノジリマイシン(N−アルキル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール)、たとえばN−ノニルデオキシガラクトノジリマイシン、およびN−オキサ−アルキル化デオキシガラクトノジリマイシン(N−オキサ−アルキル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール)、たとえばN−7−オキサノニルデオキシガラクトノジリマイシンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0099】
ある態様では、イミノ糖は式IIの化合物:
【0100】
【化2】
【0101】
(式中、Rは置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換ヘテロシクリル基、または置換もしくは非置換オキサアルキル基から選択される)を含むN−置換1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−置換MeDGJ)でありうるが、それらに限定されない。ある態様では、置換もしくは非置換アルキル基および/または置換もしくは非置換オキサアルキル基は1から16個の炭素原子、または4から12個の炭素原子または8から10個の炭素原子を含む。ある態様では、置換もしくは非置換アルキル基および/または置換もしくは非置換オキサアルキル基は1から4個の酸素原子、そして他の態様では1から2個の酸素原子を含む。他の態様では、置換もしくは非置換アルキル基および/または置換もしくは非置換オキサアルキル基は1から16個の炭素原子および1から4個の酸素原子を含む。従って、ある態様では、Rは−(CH2)6OCH3、−(CH2)6OCH2CH3、−(CH2)6O(CH2)2CH3、−(CH2)6O(CH2)3CH3、−(CH2)2O(CH2)5CH3、−(CH2)2O(CH2)6CH3、および−(CH2)2O(CH2)7CH3から選択されるが、それらに限定されない。N−置換MeDGJは、たとえばPCT公開第WO01/10429号に開示される。
【0102】
ある態様では、リポソーム内側に被包された薬剤は式IIIを有する窒素含有化合物:
【0103】
【化3】
【0104】
または薬剤的に受容可能なその塩を挙げることができ、式中、R12はC1〜C20、またはC1〜C6またはC7〜C12またはC8〜C16のようなアルキルであり、さらに1から5または1から3または1から2個の酸素を含むことができ、R12はオキサ−置換アルキル誘導体でありうる。オキサ−置換アルキル誘導体の例としては3−オキサノニル、3−オキサデシル、7−オキサノニルおよび7−オキサデシルが挙げられる。
【0105】
R2は水素であり、R3はカルボキシもしくはC1〜C4アルコキシカルボニルであるか、またはR2とR3は一緒に:
【0106】
【化4】
【0107】
であり、式中、nは3または4であり、それぞれのXは独立して水素、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、C1〜C4アルキルカルボキシ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ヒドロキシアルキル、C1〜C6アシルオキシ、またはアロイルオキシであり、そしてそれぞれのYは独立して水素、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、C1〜C4アルキルカルボキシ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ヒドロキシアルキル、C1〜C6アシルオキシ、アロイルオキシであるか、または除去され(すなわち、存在しない);
R4は水素であるか、または除去され(すなわち、存在しない);そして
R5は水素、ヒドロキシ、アミノ、置換されたアミノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アシルオキシ、もしくはアロイルオキシであるか、またはR3とR5は一緒にフェニルを形成し、そしてR4は除去される(すなわち、存在しない)。
【0108】
ある態様では、窒素含有化合物は式:
【0109】
【化5】
【0110】
を有し、式中R6〜R10のそれぞれは独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、C1〜C4アルキルカルボキシ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ヒドロキシアルキル、C1〜C4アシルオキシ、およびアロイルオキシからなる群から選択され;そしてR11は水素またはC1〜C6アルキルである。
【0111】
窒素含有化合物はN−アルキル化ピペリジン、N−オキサ−アルキル化ピペリジン、N−アルキル化ピロリジン、N−オキサ−アルキル化ピロリジン、N−アルキル化フェニルアミン、N−オキサ−アルキル化フェニルアミン、N−アルキル化ピリジン、N−オキサ−アルキル化ピリジン、N−アルキル化ピロール、N−オキサ−アルキル化ピロール、N−アルキル化アミノ酸、またはN−オキサ−アルキル化アミノ酸でありうる。ある態様では、N−アルキル化ピペリジン、N−オキサ−アルキル化ピペリジン、N−アルキル化ピロリジン、またはN−オキサ−アルキル化ピロリジン化合物はイミノ糖でありうる。たとえば、ある態様では、窒素含有化合物は式:
【0112】
【化6】
【0113】
を有する、N−アルキル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−アルキル−DGJ)もしくはN−オキサ−アルキル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−オキサ−アルキル−DGJ)、または式:
【0114】
【化7】
【0115】
を有するN−アルキル−1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−アルキル−MeDGJ)もしくはN−オキサ−アルキル−1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−オキサ−アルキル−MeDGJ)でありうる。
【0116】
本明細書で使用する基は、炭素原子の数が別に特定されない限り、以下の特徴を有する。アルキル基は1から20個の炭素原子を有し、線状であるか、または分枝し、置換されるか、または置換されない。アルコキシ基は1から16個の炭素原子を有し、線状であるか、または分枝し、置換されるか、または置換されない。アルコキシカルボニル基は2から16個の炭素原子を有するエステル基である。アルケニルオキシ基は2から16個の炭素原子、1から6個の二重結合を有し、線状であるか、または分枝し、置換されるか、または置換されない。アルキニルオキシ基は2から16個の炭素原子、1から3個の三重結合を有し、線状であるか、または分枝し、置換されるか、または置換されない。アリール基は6から14個の炭素原子(たとえば、フェニル基)を有し、そして置換されるか、または置換されない。アラルキルオキシ(たとえば、ベンジルオキシ)およびアロイルオキシ(たとえば、ベンゾイルオキシ)基は、7から15個の炭素原子を有し、そして置換されるか、または置換されない。アミノ基は、第1、第2、第3、または第4アミノ基(すなわち、置換されたアミノ基)でありうる。アミノカルボニル基は、1から32個の炭素原子を有するアミド基(たとえば、置換されたアミド基)である。置換された基は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C1−10アシル、またはC1−10アルコキシからなる群から選択される置換基を含むことができる。
【0117】
N−アルキル化アミノ酸は、N−アルキル化a−アミノ酸のような、N−アルキル化された天然に存在するアミノ酸でありうる。天然に存在するアミノ酸は、20個の一般的α−アミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Asp、Asn、Lys、Glu、Gln、Arg、His、Phe、Cys、Trp、Tyr、Met、およびPro)、ならびに天然の産物、たとえばノルロイシン、エチルグリシン、オルニチン、メチルブテニル−メチルトレオニンおよびフェニルグリシンであるその他のアミノ酸の中の1種である。アミノ酸側鎖(たとえばR5)の例としては、H(グリシン)、メチル(アラニン)、−CH2C(O)NH2(アスパラギン)、−CH2−SH(システイン)、および−CH(OH)CH3(トレオニン)が挙げられる。
【0118】
N−アルキル化化合物はアミノ(またはイミノ)化合物の還元アルキル化によって調製されうる。たとえば、アミノまたはイミノ化合物は、アミンをN−アルキル化するために還元剤(たとえば、シアノ水素化ほう素ナトリウム)と一緒にアルデヒドに暴露されうる。同様に、N−オキサ−アルキル化化合物はアミノ(またはイミノ)化合物の還元アルキル化によって調製されうる。たとえば、アミノまたはイミノ化合物はアミンをN−オキサ−アルキル化するために還元剤(たとえば、シアノ水素化ほう素ナトリウム)と一緒にオキサ−アルデヒドに暴露されうる。
【0119】
窒素含有化合物は1以上の保護基を含むことができる。種々の保護基が公知である。一般に、保護基が化合物の他の位置でのいずれか次の反応の条件に対して安定であり、分子の残余部分に有害な影響を与えずに適切な時点で除去されうるならば、保護基の種類は重要ではない。その上、保護基は実質的な合成変換が完了した後、別のものに置換されてもよい。明らかに、ある化合物が、本明細書に開示された化合物の1以上の保護基が異なる保護基によって置換されているという点においてだけ開示された化合物と異なる場合、その化合物は本発明の範囲内にある。別の例および条件はGreene、Protective Groups in Organic Chemistry、(1版,1981,Greene & Wuts、2版,1991)に見出される。
【0120】
窒素含有化合物は、たとえば結晶化またはクロマトグラフィー法によって精製することができる。該化合物は出発物質として立体特異的アミノまたはイミノ化合物を使用することにより立体特異的に調製することができる。
【0121】
長鎖N−アルキル化化合物の調製において出発物質として使用されるアミノおよびイミノ化合物は市販のもの(Sigma,St.Louis,MO;Cambridge Research Biochemicals,Norwich,Cheshire,United Kingdom;Toronto Research Chemicals,Ontario,Canada)を入手するか、または公知の合成法によって調製することができる。。たとえば、該化合物はN−アルキル化イミノ糖化合物またはそのオキサ−置換誘導体でありうる。イミノ糖は、たとえばデオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)、1−メチル−デオキシガラクトノジリマイシン(MeDGJ)、デオキシノジリマイシン(DNJ)、アルトロスタチン、2R,5R−ジヒドロキシメチル−3R,4R−ジヒドロキシピロリジン(DMDP)、またはその誘導体、エナンチオマー、もしくは立体異性体でありうる。
【0122】
ある態様では、脂質粒子内側に被包された薬剤は式IVまたはVの化合物:
【0123】
【化8】
【0124】
(式中、Rは:
【0125】
【化9】
【0126】
であり、R′は:
【0127】
【化10】
【0128】
であり、R1は置換もしくは非置換アルキル基であり;R2は置換もしくは非置換アルキル基であり;W1〜4は水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換ハロアルキル基、置換もしくは非置換アルカノイル基、置換もしくは非置換アロイル基、または置換もしくは非置換ハロアルカノイル基から独立して選択され;X1〜5はH、NO2、N3、またはNH2から独立して選択され;Yは存在しないか、またはカルボニル以外の置換もしくは非置換C1−アルキル基であり;ZはボンドまたはNHから選択され;Zがボンドである場合、Yは存在せず、そしてZがNHである場合、Yはカルボニル以外の置換または非置換C1−アルキル基であり;そしてZ’はボンドまたはNHである。式IVおよびVの化合物ならびにそれらの合成方法は、たとえば、米国公開公報第US2007/0275998号に開示される。式IVおよびVの化合物の限定的でない例としては、N−(N′−{4′アジド−2′−ニトロフェニル)−6−アミノヘキシル)−デオキシノジリマイシン(NAP−DNJ)およびN−(N′−{2,4−ジニトロフェニル)−6−アミノヘキシル)−デオキシノジリマイシン(NDP−DNJ)が挙げられる。
【0129】
多様なイミノ糖化合物の合成は記載されている。たとえば、米国特許第5,622,972号、第5,401,645号、第5,200,523号、第5,043,273号、第4,994,572号、第4,246,345号、第4,266,025号、第4,405,714号、および第4,806,650号が挙げられる。他のイミノ糖誘導体を合成する方法は公知であり、たとえば米国特許第4,861,892号、第4,894,388号、第4,910,310号、第4,996,329号、第5,011,929号、第5,013,842号、第5,017,704号、第5,580,884号、第5,286,877号、および第5,100,797号、ならびにPCT公開第WO 01/10429号に記載される。2R,5R−ジヒドロキシメチル−3R,4R−ジヒドロキシピロリジン(DMDP)のエナンチオ特異的合成はFleet & Smith(Tetrahedron Lett.26:1469−1472,1985)によって記載される。
【0130】
イメージング剤は、タグ付きもしくは蛍光水性物質、たとえばカルセイン、または蛍光標識分子、たとえばsiRNA、抗体、または他の低分子阻害剤でありうる。また、タグ付き脂溶性物質、たとえば細胞においてリポソームを可視化するために使用されるrh−PE脂質、および可視化または精製のためにタグを付けた他の類似の脂質は、細胞の膜への組み込みのために脂質粒子に組み込まれうる。また、これには可視化または精製のための蛍光部分または他のタグを付けたタグ付き脂溶性蛋白質または薬物を挙げることができる。
【0131】
ターゲッティング部分
ある態様では、脂質粒子を含む組成物は、脂質粒子とコンジュゲートするか、または粒子の脂質単層もしくは脂質二重層に挿入されうる、少なくとも1つのターゲッティング部分を含んでいてもよい。ある態様では、ターゲッティング部分はウイルスのエンベロップ蛋白質のリガンドであってもよいリガンド、またはウイルスのエンベロップ蛋白質に対する抗体であってもよい抗体であってもよい。そのような部分はウイルスに感染した細胞を粒子の目標にするために使用されてもよい。そのようなターゲッティング部分はまた、ウイルスに関連するか、またはウイルスによって引き起こされるウイルス感染に対する排除(sterilizing)免疫を獲得するために使用されてもよい。
【0132】
ある態様では、ターゲッティング部分はgp120/gp41ターゲッティング部分を含んでいてもよい。そのような場合、脂質粒子を含む組成物がHIV−1感染を治療する、および/または予防するために好ましくてもよい。gp120/gp41ターゲッティング部分は、sCD4分子またはモノクローナル抗体、たとえばIgG2F5もしくはIgGb12抗体を含むことができる。
【0133】
ある態様では、ターゲッティング部分はE1またはE2ターゲッティング部分、たとえばHCVに由来するE1またはE2蛋白質を含むことができる。そのような場合、脂質粒子を含む組成物がHCV感染を治療する、および/または予防するために好ましくてもよい。ある場合には、ターゲッティング部分はE1および/またはE2蛋白質を目標にすることができる分子、たとえばこれらの蛋白質に対する特定の抗体、および細胞受容体の可溶性部分、たとえば可溶性CD81またはSR−B1分子であってもよい。
【0134】
挿入部分
ある態様では、脂質粒子はその脂質単層、または二重層に挿入された1以上の部分を含んでいてもよい。挿入部分の例としては、膜貫通蛋白質、蛋白質脂質コンジュゲート、標識脂質、脂溶性化合物またはいずれかその組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0135】
ある態様では、挿入部分は脂質−PEGコンジュゲートを含んでいてもよい。そのようなコンジュゲートは脂質粒子のin vivo安定性を増してもよく、および/またはその循環時間を増してもよい。
【0136】
ある態様では、挿入部分は長いアルキル鎖イミノ糖、たとえばC7〜C16アルキルもしくはオキサアルキル置換N−デオキシノジリマイシン(DNJ)、またはC7〜C16アルキルもしくはオキサアルキル置換N−デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)を含んでいてもよい。長いアルキル鎖イミノ糖の限定的でない例としては、N−ノニルDNJおよびN−ノニルDGJが挙げられる。
【0137】
ある態様では、挿入部分はフルオロフォア−脂質コンジュゲートを含んでいてもよく、そしてそれは脂質二重層粒子と接触する細胞のER膜を標識するために使用されてもよい。そのような標識は真核細胞におけるライブおよび/または固定−細胞イメージングに有用であってもよい。
【0138】
PIおよび/またはPS脂質を含む脂質粒子の使用が細胞のER膜への挿入部分の送達に帰着してもよい。
【0139】
多価不飽和脂質粒子
本発明者らはまた、少なくとも1種の多価不飽和脂質を含む脂質粒子、たとえばリポソームが、対象、たとえばヒトにおける、感染、たとえばウイルス感染を治療するおよび/または予防することにおいて有効であってもよいと考えている。
【0140】
ある態様では、多価不飽和脂質は、脂質粒子中の総脂質のモルで少なくとも5%、モルで少なくとも10%、モルで少なくとも15%、モルで少なくとも20%、モルで少なくとも25%、モルで少なくとも30%、モルで少なくとも35%、モルで少なくとも40%、モルで少なくとも45%、モルで少なくとも50%、モルで少なくとも55%、モルで少なくとも60%、モルで少なくとも65%、モルで少なくとも70%、モルで少なくとも75%、モルで少なくとも80%、モルで少なくとも85%、モルで少なくとも90%、またはモルで少なくとも95%を構成してもよい。
【0141】
本明細書で使用する“多価不飽和脂質”という用語は、その疎水性尾部に、1より多い不飽和化学結合、たとえば二重結合または三重結合を含む脂質を表す。
【0142】
ある態様では、多価不飽和脂質はその疎水性尾部に、2から8個、または3から7個または4から6個の二重結合を有することができる。
【0143】
本明細書で使用する“多価不飽和脂質粒子”という用語は、少なくとも1種の多価不飽和脂質を含む脂質粒子を表す。
【0144】
ある態様では、脂質粒子は1種以上の多価不飽和脂質を含んでいてもよい。
【0145】
好ましくは、多価不飽和脂質粒子は多価不飽和PEまたは多価不飽和PC脂質の中の少なくとも1種を含む。図22A〜Dは代表的な多価不飽和PEおよびPC脂質の化学構造を提供する。
【0146】
脂質粒子は、1種以上の付加的な脂質、たとえばPI、PS、またはCHEMSをさらに含んでいてもよい。
【0147】
多価不飽和PEまたは多価不飽和PC脂質の中の少なくとも1種を含む多価不飽和脂質は、先に開示した疾患または状態のような、ウイルスによって引き起こされるか、またはウイルスに関連した疾患または状態を治療する、予防する、モニターするために使用されてもよい。多くの態様では、そのような疾患および状態はウイルス感染でありうる。ある態様では、そのような感染は肝炎感染、たとえばHCV感染またはHBV感染であってもよい。さらにある態様では、そのような感染はレトロウイルス感染、たとえばHIVであってもよい。さらにある態様では、該感染はフラビウイルス感染、たとえばHCV感染であってもよい。
【0148】
ある態様では、多価不飽和脂質粒子は、少なくとも1種の活性薬、たとえば先に開示した薬剤を被包していてもよい。
【0149】
ある態様では、多価不飽和脂質粒子は粒子の脂質単層または二重層に挿入される少なくとも1種の部分を含んでいてもよく、該部分は先に開示した挿入部分のいずれであってもよい。
【0150】
ある態様では、脂質粒子を含む組成物は粒子に結合したターゲッティング部分を含んでいてもよく、しかも該部分は先に開示したターゲッティング部分のいずれであってもよい。
【0151】
ある態様では、PE、PC、PIおよびPS脂質を含み、それらの中の少なくとも1種は不飽和である多価不飽和脂質粒子が、HCV感染の治療または予防に好ましくてもよい。本発明はそれらの操作理論に限定されないが、発明者らはPE、PC、PIおよびPS脂質を含む多価不飽和脂質粒子はHCV−感染細胞からのHCVビリオンの分泌を顕著に減少させうると考えている。なぜなら、ER膜であるHCV複製部位への多価不飽和脂質の送達はHCV RNA複製、その後のHCV分泌を低減しうるからである。
【0152】
投与
ある態様では、脂質粒子を含む組成物は細胞に投与されうる。細胞はウイルスに感染した細胞でありうる。多くの場合、接触した細胞は哺乳動物または鳥のような温血動物に由来する細胞でありうる。ある態様では、接触した細胞はヒトに由来する細胞でありうる。
【0153】
ある態様では、脂質粒子を含む組成物は個体に投与されうる。対象は哺乳動物または鳥のような温血動物でありうる。多くの場合、対象はヒトでありうる。ある態様では、脂質粒子を含む組成物は静脈内注射によって投与されうる。さらにある態様では、脂質粒子を含む組成物は静脈内注射以外の非経口経路、たとえば腹腔内、皮下、皮内、上皮内、筋肉内または経皮経路を介して投与されうる。さらにある態様では、脂質粒子を含む組成物は粘膜表面、たとえば眼球、鼻腔内、肺、腸、直腸、および尿路表面を介して投与されうる。
【0154】
脂質含有組成物、たとえばリポソーム組成物の投与経路は、たとえばA.S.Ulrich,Biophysical Aspects of Using Liposomes as Delivery Vehicles,Bioscience Reports,22巻,2号,Apr 2002,129-150に開示される。
【0155】
脂質粒子を介した治療薬、たとえばNB−DNJのER内腔への送達は、非リポソーム法に比較してER−グルコシダーゼの阻害に必要な治療薬の有効量を減らすことができる。たとえば、NB−DNJの場合、IC90は少なくとも100、または少なくとも500、または少なくとも1000、または少なくとも5000、または少なくとも10000、または少なくとも50000、または少なくとも100000低減されうる。そのようなNB−DNJの有効な抗ウイルス量の低減によって、投与されるNB−DNJの最終濃度は哺乳動物、とりわけヒトにおける毒性レベルより1桁以上低い濃度に帰着しうる。
【0156】
ある態様では、治療薬、たとえばNB−DNJを含む脂質粒子を含む組成物は1以上の付加的な治療薬、たとえば抗ウイルス薬と組み合わせて感染した細胞と接触することができる。ある場合には、そのような付加的な治療薬はNB−DNJと一緒に脂質粒子の中に共に被包されうる。さらにある場合には、感染した細胞をそのような付加的な治療薬と接触させることは、細胞を含む対象への付加的な治療薬の投与の結果でありうる。付加的な治療薬の投与は、組成物に治療薬を添加することによって実行することができる。さらにある場合には、付加的な治療薬の投与はNB−DNJを含む脂質粒子を含む組成物を投与することとは別個に行うことができる。そのような別個の投与は、脂質粒子を含む組成物に使用される投与経路と同じでありうるか、または異なりうる投与経路を介して行うことができる。
【0157】
組み合わせ療法は、抗ウイルス活性に必要な薬剤の有効投薬量を低減し、それによってその毒性を低減するだけでなく、複数の機序を通してウイルスを攻撃する結果として純粋な抗ウイルス効果を改善してもよい。
【0158】
その上、組み合わせ療法はウイルス耐性の発生のチャンスを妨げるか、または減少させるための手段を提供することができる。
【0159】
NB−DNJを含むリポソームと組み合わせて使用することができる特有の付加的な治療薬は、処置されることになる疾患または状態に依存しうる。たとえば、HBV、HCVまたはBVDV感染のような肝炎感染の場合、そのような治療薬はヌクレオシドまたはヌクレオチド抗ウイルス薬および/または免疫賦活/免疫修飾薬でありうる。肝炎処置のためにNB−DNJと組み合わせて使用することができる種々のヌクレオシド薬、ヌクレオチド薬および免疫賦活/免疫修飾薬は、2004年2月10日に発行されたJacobらの米国特許第6,689,759号に例示される。たとえば、C型肝炎処置の場合、NB−DNJはヌクレオシド薬としての1−b−D−リボフラノシル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド(リバビリン)、および免疫賦活/免疫修飾薬としてのインターフェロン、たとえばインターフェロンアルファと組み合わせてリポソーム中に被包されうる。リバビリンおよび/またはインターフェロンによる肝炎感染の処置は、たとえば米国特許第6,172,046号;第6,177,074号;第6,299,872号;第6,387,365号;第6,472,373号;第6,524,570号および第6,824,768号で論じられる。
【0160】
HIV感染を治療する場合、NB−DNJを含むリポソームと組み合わせて使用することができる治療薬は抗−HIV薬であってよく、それらはたとえば、ヌクレオシド逆転写酵素(RT)阻害剤、たとえば(−)−2′−デオキシ−3′−チオシチジン−5′−トリフォスフェート(3TC);(−)−cis−5−フルオロ−1−[2−(ヒドロキシ−メチル)−[1,3−オキサチオラン−5−イル]シトシン(FTC);3′−アジド−3′−デオキシチミジン(AZT)およびジデオキシ−イノシン(ddI);非ヌクレオシドRT阻害剤、たとえばN11−シクロプロピル−4−メチル−5,11−ジヒドロ−6H−ジピリド[3,2−b:2′3′−e]−[1,4]ジアゼピン−6−オン(ネビパリン(Neviparine))、プロテアーゼ阻害剤またはその組み合わせでありうる。抗HIV治療薬は、AZT、DDI、およびネビラピン組み合わせのように、二重または三重の組み合わせで使用することができる。
【0161】
ある態様では、脂質粒子内側に被包される薬剤は、たとえば米国特許出願第11/832,891号の14〜20ページに開示された薬剤であってもよく、該開示はそのまま参照として本明細書に援用される。脂質粒子はER膜と脂質粒子の中の脂質との融合時にERの内腔に被包された薬剤を送達してもよい。
【0162】
標識脂質
ある態様では、脂質粒子は放射性ラベル、フルオロフォアラベルまたはビオチンラベルのような少なくとも1種のラベルにより標識される少なくとも1種の標識脂質を含み、それゆえ粒子自体を標識してもよい。
【0163】
標識脂質粒子は、後に画像処理されうる細胞のER膜の特定の標識のために使用されてもよい。この技術によって画像処理することができる細胞の型は特に限定されない。イメージングは、たとえばライブ(live)または固定(fixed)イメージングによって行われてもよい。固定イメージングは、パラホルムアルデヒドのような固定液で固定されていてもよい死細胞のイメージングを表すことができる。細胞は、マウンティングおよびイメージングの前に、特定の蛋白質またはラベルを検出するために透過化され、抗体で探査されうる。ライブセル顕微鏡検査の場合、イメージングが行われている間、細胞は培地中で依然として生きた状態のままでありうる。
【0164】
標識粒子はウイルスを標識するために使用されてもよい。そのような研究方法を使用して標識されてもよいウイルスの例としては、ER−出芽ウイルス、たとえばBVDVおよびHCVが挙げられる。ラベルがフルオロフォアラベルの場合、標識された脂質二重層粒子は標識されたウイルスのイメージングのために使用されてもよく、そして該イメージングはライブおよび/または固定イメージングでありうる。
【0165】
ラベルがビオチンラベルである場合、標識された脂質粒子は標識されたウイルス粒子の精製のために使用されてもよい。ある場合には、そのような精製はストレプトアビジンを使用して行うことができる。ストレプトアビジンはビオチン−標識物質のバッチ精製のためのセファロースビーズに連結することができる。
【0166】
本発明はさらに以下の実施例によって説明されるが、決してそれらに限定されない。
【実施例】
【0167】
1.リポソーム調製
リポソームは記載されたすべてのアッセイに対して新たに調製された。脂質のクロロホルム溶液はガラス試験管に入れられ、溶媒は窒素ガス流下で留去された。特記しない限り、脂質フィルムは1xPBSバッファー中ボルテックスで攪拌することにより、最終脂質濃度5mMに水和された。生じたマルチラメラ小胞はMini−Extruder装置を使用し、ポア直径100nmのポリカーボネートフィルターを11回通して押し出された。リポソームは0.22μmフィルターユニットを使用して濾過滅菌された。図1(A)〜(E)はこれらの研究で使用された脂質を提示する:A.DOPE;B.DOPC;C.CHEMS;D.PI;E.PS。実験で使用されたPEG−PEはPEG(MW−2000)−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンであった。コレステリルヘミスクシネートを除くすべての脂質は、リポソームの調製のためのすべての物質と同じように、Avanti Polar Lipids(USA)から購入した。コレステリルヘミスクシネートはSigma(UK)から購入した。
【0168】
2.PIおよび/またはPSを含むリポソームはERに局在する
この実験の目的は、PIおよび/またはPS脂質と一緒に、またはそれらを含まずにPEおよびPCまたはCHEMSを含むリポソームでHuh7.5細胞(ヒト肝臓細胞)を処置し、それらのER膜との共局在を確定することであった。リポソームはすべてのリポソームへのローダミン−タグ付きPE(Rh−PE)の組み込みによって標識された。Huh7.5細胞のER膜は抗−EDEM抗体を使用して標識された。EDEM抗体はSanta Cruz Biotechnology(USA)から購入した。共局在は共焦点顕微鏡によって確定された。顕著な共局在は、Huh7.5細胞のER膜と融合するリポソームの証拠として役立ちうる
2.1.リポソーム処置Huh7.5細胞のER膜とリポソームとの共局在を可視化するための特定の方法論:
脂質組成PE:CH、PE:PC、PE:CH:PI、PE:PC:PI、PE:CH:PS、PE:PC:PS、PE:CH:PI:PS、およびPE:PC:PI:PSを持つリポソームは先に記載のように調製され、可視化のためにRh−PEを1%(総モル)含んだ。Huh7.5細胞は番号1.5のガラスカバースライドに一晩接着させ、その後培地が交換され、最終脂質濃度50μMになるまで添加されたリポソームを含む新鮮な培地と取り替えられた。37℃/5%CO2で5分間インキュベーション後、リポソームを含む培地は除去され、細胞は1xPBSで2回洗浄され、付加的に30分間新鮮な培地中でインキュベーションされ、1xPBS/0.1%Tween−20で希釈された4%パラホルムアルデヒド中で15分間固定され、1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄された。その後細胞は4μg/ml抗−EDEM抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄され、4μg/mlFITC−標識二次抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、さらに2回洗浄された。細胞はDAPIで染色され、その後顕微鏡スライドにマウントされた。Carl Zeiss LSM顕微鏡を使用して共焦点画像が撮られ、画像解析はLSMソフトウェアv5.10.を使用して行われた。図1Fはこれらのアッセイで使用されたRh−PE脂質の構造を示す。
【0169】
2.2.Huh7.5細胞における異なるリポソームとERマーカーEDEMとの共局在:
図2(A)〜(F)は、脂質PIおよび/またはPSを含むリポソームがER−膜蛋白質EDEMと共局在したことを実証する。リポソームは5分間Huh7.5細胞と一緒にインキュベーションされ、その後培地は交換され、細胞はリポソームを含まない培地でインキュベーションされた。細胞は固定され、30分間インキュベーション後、抗−EDEM抗体(緑色、上部右画像)で探査され、リポソームに由来するRh−PE脂質との共局在(赤色、底部左画像)は共焦点顕微鏡により確定された。DAPI(青色、上部左画像)は核染料として使用される。共局在は統合画像(底部、右)内の黄色の存在によって測定された。実験は3回反復され、代表的な画像が示される。図2A.PE:CH(モル比3:2)リポソーム;図2B.PE:PC(3:2)リポソーム;図2C.PE:CH:PI(3:1:1)リポソーム;図2D.PE:PC:PI(2:2:1)リポソーム;図2E.PE:CH:PS(3:1:1)リポソーム;図2F.PE:PC:PS(2:2:1)リポソーム;図2G.PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)リポソーム;図2H.PE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)リポソーム。
【0170】
リポソームとER膜マーカー(EDEM)との共局在は先に記載のように、得られた画像を使用して定量された。
【0171】
2.3.画像共局在の定量のための方法論:
MetaMorphソフトウェア(v.7,Molecular Devices,Downingtown,PA,U.S.A.)を使用してパーセンテージ共局在が測定された。画像はメディアンフィルターセットを使用して3x3ピクセルにフィルター処理され、2つの画像(rh−PE/赤色画像およびEDEM/緑色画像)間の統合した共局在を確定するために使用される閾値は、それぞれに対して平均濃度プラス1標準偏差(SD)に設定された。報告された値は30細胞の平均値±SDを表す。
2.4.リポソームとERマーカー(EDEM)のパーセント共局在解析の結果:
画像共局在の定量の結果は、DOPE:CHまたはDOPE:DOPCリポソームへの20%PIまたは20%PSの組み込みがER膜との共局在を著しく増すことを示唆しうる。DOPE:CH:PIおよびDOPE:CH:PSからなるリポソームは、DOPE:CHだけの場合の13%(SD=6.6%)と比較して、それぞれ52%(SD=8.0%)および46%(SD=8.1%)の共局在を実証した。同様に、DOPE:DOPC:PIとDOPE:DOPC:PSの組成物は、DOPE:DOPCリポソームの場合の12%(SD=4.7%)と比較して、それぞれ64%(SD=8.1%)および48%(SD=7.6%)の共局在を実証した。DOPE:CHおよびDOPE:DOPCリポソーム内の20%PIと20%PSの組み合わせはさらにER膜への共局在を増し、その結果DOPE:CH:PI:PSリポソームは76%(SD=8.7%)のER膜共局在を実証し、88%(SD=3.5%)共局在がDOPE:DOPC:PI:PSリポソームにより観察された。
【0172】
図3は、MetaMorphソフトウェアを使用して、リポソーム調製物毎に30の別個の細胞を分析することにより、リポソーム−送達rh−DOPEとEDEM抗体の計算された共局在が確定されたことを示し、ここでは%共局在を確定するために使用される閾値は、それぞれの画像に対して平均濃度プラス1SDに設定された。示された結果は30細胞の平均共局在とSDを表す。
【0173】
これらの結果は、Huh7.5細胞において、PEと組み合わせて脂質PIおよび/またはPSを含むリポソームだけが、リポソームによる5分間パルス(pulse)および30分間追跡(chase)後のERマーカーとの増加した共局在を示すことを実証することができる。ERリポソーム、すなわちPIおよび/またはPS脂質を含むリポソームはERマーカーとの顕著な共局在を実証するため、蛍光−標識ERリポソームが真核細胞のER膜を標識するための迅速で安価な技術として使用されてもよい。
【0174】
3.ERリポソームを介して送達される脂質は、アセンブルし、ER膜から出芽することが公知のウイルスのエンベロップに組み込まれる
以下の実験の目的は、共焦点顕微鏡によって、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)に感染したMadin−Darbyウシ腎臓(MDBK)細胞およびHCV細胞培養物(HCVcc)−感染Huh7.5細胞を、ER膜と共局在することが示されたリポソームにより処置し、そして分泌されたウイルス粒子内へのタグ付きリポソーム脂質の組み込みを調べることであった。BVDVおよびHCVは両方ともアセンブルし、ER膜から出芽するウイルスであり;従って分泌されたウイルス粒子へのリポソームを介して送達されるタグ付き脂質の組み込みは、これらの細胞のER膜とリポソームの融合を示唆する。HIV−1感染末梢血単核細胞(PBMC)は、細胞膜から出芽するウイルスへの脂質の組み込みを検出するための対照として使用される。
【0175】
3.1.ビオチン化PE脂質を使用して分泌されたウイルス粒子へのリポソーム脂質の組み込みをモニターするための特定の方法論:
BVDV細胞培養物:Madin−Darbyウシ腎臓(MDBK)細胞は完全DMEM/10%FBS中、6ウェルプレートのウェル毎に3x105細胞で播種され、0.1の感染多重度(MOI)でncpBVDV株Pe515(National Animal Disease Laboratory,United Kingdom)に感染し、3日毎に10%(vol/vol)ウシ胎児血清を含む新鮮なRPMI1640培地2mlに1:8希釈で継代された。分泌されたBVDV粒子を定量するためのRT−PCRによって確定される安定な感染が達成された後、リポソーム処置が開始された。定量PCRは取り扱い説明書に従って、QIAampウイルスRNA精製キット(QIAamp Viral RNA Purification Kit)(QIAGEN)を使用して上清500μlに対して行われた。リアルタイムPCRは、SyBr Green Mix(QIAGEN)およびncpBVDV RNAに対して設計されたプライマー(フォワード:TAG GGC AAA CCA TCT GGA AG、リバースプライマー:ACT TGG AGC TAC AGG CCT CA)を使用して行われた。
【0176】
JC−1 HCV細胞培養物(HCVcc):Huh7.5細胞(Apath,LLC,Saint Louis,U.S.A.)は10%ウシ胎児血清(FBS)を含む完全DMEM(100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、および1xMEM)中で培養された。すべてのインキュベーションは37℃/5%CO2で行われた。細胞はMOI=0.5で1時間感染し、HCVコア蛋白質免疫蛍光による確定の結果、50%を超える細胞がHCVcc感染に陽性と評価された場合、リポソーム処置が開始された。上清に由来するウイルスRNAの定量、ならびに分泌された粒子の感染力は、それぞれ定量PCRおよびコア蛋白質免疫蛍光によって確定された。
【0177】
HIV細胞培養物:4人の非感染ドナーに由来する末梢血単核細胞(PBMC)は
Histopaque密度勾配遠心法(Sigma−Aldrich,Gillingham,U.K.)を使用して分離され、プールされ、完全RPMI(RPMIプラス10%FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび2mM L−グルタミン)中で、フィトヘマグルチニン(PHA、5μg/ml)により48時間、その後インターロイキン−2(IL2、40U/ml)により72時間刺激された後、実験が開始された。特記しない限り、すべてのインキュベーションは37℃/5%CO2で行われた。細胞を感染させるために、4x106PHA−活性化PBMCおよび初代分離株ストックの100TCID50(50%組織培養感染量)は、6−ウェルプレートのウェル毎に、2ml完全RPMI/10%FBS中で一緒にインキュベーションされた。細胞は16時間感染し、完全RPMI培地で3回洗浄され、その後リポソームとのインキュベーションが開始された。
【0178】
分泌されたビオチン−標識粒子の精製:ウイルス感染細胞は75cm2フラスコで培養され、培地は50μM b−PE−標識22:6ERリポソームを含む培地と取り替えられ、そのまま48時間インキュベーションされた。その後細胞はPBSで2回洗浄され、リポソームを含まない新鮮な培地中でさらに24時間インキュベーションされた。
【0179】
分泌された粒子を含む上清は採取され、細胞はトリパンブルー染色を使用して計数され、そして上清はPBSを使用して試料細胞数に標準化された。分泌されたHCVccおよびBVDVは定量PCRにより力価を測定され、分泌されたビリオンの感染力が確定された。HIV−1はp24捕獲ELISA(capture ELISA)により定量された。ビオチン化粒子捕獲のために高性能ストレプトアビジンセファロース(GE Healthcare)が使用された。セファロースビーズはPBSで1:50(vol:vol)に希釈することにより2回洗浄され、室温で5分間穏やかに混合され、1500rpmで3分間遠心分離することによりペレット化された。セファロースは再懸濁されて50%スラリーを形成し、培養上清(培養上清10ml毎に50%スラリー200μl)に添加された。セファロースおよび上清はそのまま穏やかに振盪しながら室温で1時間インキュベーションされ、その後セファロースビーズは先に記載のようにPBSで5回洗浄された。b−PE−標識ビリオンの量を定量するために1mlの培養上清は取りおかれ、その中の500μlが総ウイルス定量のために使用され、そして500μlがストレプトアビジンセファロース上に捕獲され、PBSで5回洗浄され、そしてHCVccおよびBVDV RT−PCR解析用にウイルスRNA溶解バッファー(QIAGEN)と一緒にビーズをインキュベーションすることにより、またはp24 HIV ELISAアッセイ用に1%エンピゲン(empigen)中でインキュベーションすることにより、RNA定量に直接使用された。
【0180】
3.2.分泌されたウイルス粒子へのb−PE脂質の組み込み:
図1Gは使用されるビオチン化PE脂質(b−PE)の構造を示す。ビオチン−標識PE(b−PE)は、ERリポソーム、すなわちPIおよび/またはPS脂質を含むリポソームに0.1、0.5、1、5、または10モル%で組み込まれ、分泌されたHCVおよびBVDV(2種のER−出芽ウイルス)にタグを付けるための至適濃度は1%であると確定され、該濃度はそれぞれ分泌されたビリオンの総数の90%(SD=3.6%)および91%(SD=1.5%)を捕獲する(図4)。HIV−1の初代分離株(LAI)に感染したPBMCは同様にb−ERリポソームによって処置され、分泌されたHIV−1粒子はいずれも検出可能な量のタグ付き脂質を含まなかった(図4)。この結果は、生産的HIV−1アセンブリーは細胞膜で発生するため、脂質をERおよびER−結合膜に送達するためのこのシステムの特異性を強調することができる。
【0181】
図4はJC−1−感染Huh7.5細胞、BVDV−感染MDBK、またはHIV−1−感染PBMCと48時間インキュベーションしたb−PE脂質を含むERリポソーム(最終脂質濃度50μM)に関する実験の結果を示す。感染細胞は洗浄され、リポソームの非存在下でその後の24時間のインキュベーション期間中に分泌されたb−PE−標識ウイルス粒子はストレプトアビジン−セファロースレジンを使用して捕獲された。結果は、同じ試料内で分泌されたビリオンの総量(100%)に関するストレプトアビジンによって捕獲された標識ウイルス粒子の百分率として表示される。
【0182】
図4の結果は、ER−局在リポソーム(PIおよび/またはPSと組み合わせてPEを含むリポソーム)を介してBVDV−感染MDBK細胞およびHCVcc−感染Huh7.5細胞に送達される脂質は、リポソーム処置中に分泌されるBVDVおよびHCVccウイルスエンベロップの大部分に存在するが、HIVエンベロップには存在しないことを実証する。BVDVおよびHCVはアセンブルし、ER膜から出芽することが公知であるが、HIVは細胞膜においてアセンブルし、そこから出芽するため、このことは、PIおよび/またはPS脂質を含むリポソームは細胞のER膜との融合が可能であるというさらなる証拠である。
【0183】
ERリポソームによる処置後のER−出芽ウイルスへのタグ付き脂質の組み込みはビオチン化脂質に限定されず、蛍光顕微鏡観察による可視化のための蛍光脂質を含むビリオンを産生するために、蛍光脂質が同じように使用されてもよい。
【0184】
3.3.共焦点顕微鏡を使用してrh−PEリポソーム処置後のrh−PE−タグ付きHCVccを画像処理するための方法論:
Huh7.5細胞は75cm2フラスコ中で十分にコンフルエントになるまで培養され、その後培地は50μMのrh−PE−標識22:6ERリポソームを含む培地に取り替えられた。細胞はそのまま48時間インキュベーションされ、PBSで2回洗浄され、リポソームを含まない新鮮な培地中で24時間インキュベーションされた。分泌された粒子を含む上清が採取された。分泌されたHCVccは定量PCRによって力価を測定され、分泌されたビリオンの感染力は先に記載のように確定された。共焦点顕微鏡によるrh−HCVccの可視化のために、ナイーブHuh7.5細胞は完全DMEM/10%FCS中で番号1.5のガラスカバースライドに一晩接着させ、その後、培地はrh−HCVccウイルスストックと取り替えられ、1時間インキュベーションされた。感染後、細胞はPBSで2回洗浄され、新鮮な培地は種々のインキュベーション期間に対して取り替えられ、1xPBSで2回洗浄され、メタノール:アセトン(1:1、vol:vol)で10分間固定され、そして最後に1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄された。その後細胞は初代抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、1xPBS/0.1%Tween−20で4回洗浄され、蛍光−標識二次抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、さらに4回洗浄された。細胞はDAPIで染色され、顕微鏡スライドにマウントされた。共焦点画像はCarl Zeiss LSM顕微鏡を使用して撮られ、画像解析はLSMソフトウェアv5.10.を使用して行われた。
【0185】
3.4.共焦点顕微鏡によるrh−タグ付きHCVccの可視化:
我々は1%rh−ERリポソームおよび固定―細胞共焦点顕微鏡観察を使用して、Huh7.5細胞におけるHCVcc感染を可視化している(図5)。Rh−タグ付きHCVccは1%rh−ERリポソームの存在下で48時間インキュベーション後24時間集められ、MOI=0.1でナイーブ細胞を1時間感染させるために使用された。固定共焦点画像は1時間感染後、ならびに6時間および24時間感染後ただちに撮られ、透過化された細胞は確かにHCVcc粒子を同定するために、抗−HCVコア抗体により探査された。これらの画像において、コア−陽性粒子は感染後1時間まで細胞表面上で直径およそ1μmの単一クラスターとして出現し、その時点でこのクラスターはエンドサイトーシスされるように見え、そしておよそ5μmのクラスターに広がる。この大きなクラスターは細胞の核に向かって移動し、感染した細胞の核の特徴的なくぼみを形成し(図5)、その時点でクラスターは消失し、rh−タグ付き脂質はHCVコア蛋白質から分離し始める。増大したコア蛋白質レベルが感染後およそ24時間目に細胞で観察されて、樹立された感染および新規なコア蛋白質合成を表してもよい。
【0186】
図5は、ナイーブHuh7.5細胞と一緒に1時間インキュベーションされ、その後洗浄され、さらに0、6、または24時間、新鮮な培地中でインキュベーションされた、Rh−PE−タグ付きJC−1 HCVcc(赤色、底部−左パネル)に関する実験の結果を示す。それぞれのインキュベーション期間後、細胞は固定され、抗−HCVコア抗体(緑色、上部−右パネル)およびDAPI(青色、上部−左パネル)で染色され、その後顕微鏡スライドへのマウント、共焦点顕微鏡によるイメージングが行われた。統合画像は底部−右パネルに示される。それぞれのインキュベーション期間の代表的な画像が示される。固定された細胞の共焦点顕微鏡観察がこれらの解析において使用されるが、この技術は、ライブ−セル顕微鏡観察により追跡するための多様な脂質−フルオロフォアコンジュゲートによりビリオンを標識するための方法を提案する。他の脂質コンジュゲートまたは膜貫通蛋白質も細胞のER膜への特定の送達のためにERリポソームへ取り込まれうるため、この型の組み込み技術はビオチンまたは蛍光タグ付き脂質に限定されない。
【0187】
4.ERリポソームを介して送達される脂質はpH−感受性リポソームに比較して細胞中でより長い寿命を有する
この実験の目的は、MDBK細胞を蛍光−標識リポソームで処置し、期間全体にわたってそれらの細胞膜への取り込みおよび組み込みをモニターすることであった。pH−感受性リポソーム、すなわち、PIおよびPS脂質を含まないDOPE−CHEMSまたはDOPE−CHEMS−PEG−PEリポソームは細胞に入ると考えてよく、そしてエンドソームにおけるリポソーム膜の破壊後、脂質はリソソームへのエンドソーム経路に沿って留まると考えられる。PIおよび/またはPS脂質を含むリポソームが細胞内の他の膜と融合することが可能であるならば、それらはpH−感受性リポソームに比較してより長い寿命を有するべきである。リポソームを介して細胞に送達されたRho−PE脂質は5分間処置後、MDBK細胞と一緒に48時間にわたり蛍光顕微鏡により可視化された。
【0188】
4.1.細胞膜へのリポソーム組み込みをモニターするための特定の方法論:
PE:CH、PE:CH:PI、およびPE:CH:PSリポソームは先に記載のように調製され、可視化のために1%(総モル)のRh−PEを含んだ。MDBK細胞は50%のコンフルエンシーで6ウェルプレートに播種され、そのまま一晩接着させた。細胞は1xPBSで2回洗浄され,その後、2mlの完全RPMIに最終脂質濃度50μMになるまで添加されたRh−標識リポソームにより、5分間、37℃、5%CO2で処置された。5分間インキュベーション後、細胞は1xPBSで2回洗浄され、新鮮な完全RPMI培地2mlがそれぞれのウェルに添加され、そしてプレートはそのまま1、10、24、および48時間インキュベーションされた。それぞれのインキュベーション期間終了時に、細胞は2回洗浄され、1xPBS/0.1% Tween−20で希釈された4%パラホルムアルデヒド中で15分間固定され、1xPBS/0.1% Tween−20で2回洗浄された。細胞はイメージング前にDAPIで染色された。蛍光画像はNikon Eclipse TE2000−U顕微鏡により撮られ、画像解析はNikon ACT−1ソフトウェアv2.70を使用して行われた。
【0189】
4.2.細胞膜へのリポソームの組み込み:
図6(A)〜(C)は、脂質PIまたはPSと組み合わせたPEからなるリポソームの蛍光顕微鏡画像がpH−感受性リポソームに比較して細胞膜への増大した組み込みを実証することを示す。MDBK細胞はRh−PE標識リポソームにより5分間処置され、その後細胞は洗浄され、そのまま培地中で1、10、24、および48時間だけインキュベーションされた。それぞれのインキュベーション期間後、細胞は固定され、Rh−PE脂質(赤色)は蛍光顕微鏡下で可視化される。DAPI(青色)は核染料として使用される。実験は2回反復され、1回の実験に由来する代表的な画像が示される。図A.PE:CH(モル比3:2)リポソーム。図6B.PE:CH:PI(モル比3:1:1)リポソーム。図6C.PE:CH:PS(モル比3:1:1)リポソーム。
【0190】
図6の結果は、PIまたはPSと組み合わせたPEからなるリポソームはMDBK細胞の膜への組み込みが可能であることを示す。PE:CH脂質を介して細胞に送達されたRh−PE脂質は細胞培地からのリポソーム除去後24時間でほとんど消失するが、PE:CH:PIおよびPE:CH:PSを介して送達された脂質は48時間にわたって依然として細胞に存在し、膜へのより多い組み込みを示唆する。
【0191】
4.3.処置された細胞におけるリポソーム取り込みおよび脂質保持の定量:
4日間のインキュベーション期間にわたりHuh7.5細胞におけるリポソーム取り込み速度をモニターするために、細胞は培地中において最終脂質濃度50μMの、1%rh−PEを含むDOPE:CHおよびDOPE:DOPC:PI:PSリポソームと一緒にインキュベーションされた。細胞は低密度で播種され、リポソーム取り込みは細胞増殖に関して測定された。4日間インキュベーション後、処置されたHuh7.5細胞は洗浄され、いずれのリポソームも含まない培地に戻され、DOPE:CHおよびDOPE:DOPC:PI:PSリポソームを介して送達されるrh−DOPE脂質の半減期がモニターされた。
【0192】
4.4.処置された細胞におけるリポソーム取り込みおよび脂質保持を定量するための方法論:
リポソームは先に記載のように調製され、細胞におけるそれらの取り込みをモニターするために1%(総モル)のrh−PEを含んだ。長期(4日間)リポソーム取り込みアッセイのために、Huh7.5細胞は2mlの完全DMEM培地/10%FBSのウェル毎に105細胞で6ウェルプレートに播種された。Rh−PE−標識リポソームは最終リン脂質濃度50μMになるまで細胞に添加され、37oC/5% CO2で2、24、48、72、および96時間、そのままインキュベーションされた。インキュベーション期間後、細胞は採取され、分析された。分析のために、細胞は1xPBSで2回洗浄され、計数され、200μlの1xPBS/0.5%Triton X−100に再懸濁され、そして96ウェルプレートに移されて、λex=550nm、λem=590nmにおいて分光蛍光光度計で読み取られた。先に記載のように96時間インキュベーション後の、Huh7.5細胞内側のrh−PE脂質の保持を測定するために、細胞は1xPBSで3回洗浄され、培地は新鮮なDMEM/10%FBSと取り替えられ、そして細胞はそのままさらに8、24、30、および48時間インキュベーションされた。インキュベーション期間後、細胞は採取され、先に記載のように解析された。
【0193】
4.5.Huh7.5細胞におけるリポソーム取り込みおよび脂質保持アッセイの結果:
図7に示すように、活発に分裂するHuh7.5細胞は4日間のインキュベーション期間にわたり、DOPE:DOPC:PI:PSリポソームの継続した取り込みを実証した。4日目に、DOPE:DOPC:PI:PS−処置細胞は、1.5x10−3AU/細胞(SD=3.4x10−4AU/細胞)の蛍光を実証し、それはDOPE:CHリポソーム処置(2.5x10−4AU/細胞(SD=5.5x10−5AU/細胞))で観察された値より6倍大きかった。実際、DOPE:CH−処置細胞で観察された最大蛍光(5.0x10−4AU/細胞(SD=1.1x10−4))はたった24時間処置期間後に到達し、その後細胞に関連した蛍光はゆっくり減少し、減少したリポソーム取り込みもしくは増大したrh−PE脂質エフラックスのいずれか、または両方を示唆する。
【0194】
これらの実験に基づいて、DOPE:CHリポソームに由来するrh−DOPE脂質は、培地からのリポソームの除去後細胞におけるおよそ7時間の半減期を実証した。DOPE:DOPC:PI:PSリポソームで処置された細胞の場合、rh−DOPE半減期はおよそ29時間に延び、処置された細胞の膜へのこれらのリポソームのより多い組み込みを示唆した。
【0195】
図7は、Huh7.5細胞内側の増大した取り込みおよび脂質保持を実証するER−ターゲッティングリポソームの実験の結果を示す。Rh−標識リポソーム(最終脂質濃度50μM)はHuh7.5細胞と一緒に4日間(96時間)インキュベーションされた。細胞へのリポソーム取り込みは、インキュベーション期間を通してモニターされ、最大値(1.5x10−3AU/細胞、DOPE:DOPC:PI:PSリポソーム、96時間読み取り)に関して、細胞毎に観察されるDOPE:CHリポソーム(赤色、実線)およびDOPE:DOPC:PI:PSリポソーム(黒色、実線)の両方の蛍光として提示される。蛍光はλex=550nm、λem=590nmにおいて測定された。96時間インキュベーション後、細胞は洗浄され、新鮮な培地(リポソームを含まない)に入れられ、さらに48時間にわたって細胞内のrh−DOPE脂質の保持をモニターされた。インキュベーション期間中の細胞増殖は、最大値(2.4x106細胞/ml、DOPE:DOPC:PI:PSリポソーム、72時間読み取り)に関して、DOPE:CH(赤色、点線)およびDOPE:DOPC:PI:PS(黒色、点線)の両方に対して提示された。データは3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値とSDを表す。
【0196】
5.ERリポソームは血清存在下における増大した安定性および細胞取り込みを実証する:
薬物送達システムとしてのリポソームの一般的使用はいくつかの問題によって妨げられてきた。血清蛋白質に媒介されるリポソーム内容物の漏出はこれらの問題の1つである。カルセイン−被包リポソームを使用して、10%FBSを含む無細胞培地におけるリポソームの安定性を4日間にわたりモニターした。カルセインはリポソーム内側に被包されている場合は消光した状態である、水溶性、自己−消光フルオロフォアである;しかし、リポソーム不安定化が漏出およびその後のフルオロフォアの脱消光を誘発することになる。
【0197】
5.1.FBSにおけるリポソーム安定性および細胞取り込みを定量するための方法論:
10%FBS存在下でのリポソームの安定性をモニターするために、カルセイン−負荷リポソームが調製され、サイズ−排除クロマトグラフィーにより被包されていないカルセインから分離され、細胞の非存在下で、最終リン脂質濃度50μMになるまで完全DMEM/10%FBSに添加された。リポソームはそのまま4日間インキュベーションされ、24時間毎にリポソーム−含有培地の試料が採取され、リポソーム不安定化および周囲培地へのカルセインの漏出の結果としてのカルセイン脱消光をλex=490nm、λem=520nmにおいてモニターした。蛍光スケールを較正するために、4日間インキュベーション後、最終濃度1%になるまでのTriton X−100の添加はリポソーム膜を破壊し、100%カルセイン脱消光を達成した:%漏出=((In−I0)/(I100−I0))x100、式中I0は0時での蛍光であり、Inはn時での蛍光であり、そしてI100はTriton添加後に完全に脱消光したカルセイン蛍光である。
【0198】
細胞取り込みアッセイの場合、リポソームは先に記載のように調製され、細胞におけるそれらの取り込みをモニターするために1%(総モル)のrh−PEを含んだ。血清存在下、または血清非存在下における短期間リポソーム取り込みアッセイの場合、無血清完全DMEM、または10%FBSもしくは10%ヒト血清(Sigma)を補足した完全DMEMのいずれかの6−ウェルプレートでコンフルエントになるまで培養されたHuh7.5細胞に、rh−PE−標識リポソームは最終リン脂質濃度50μMになるまで添加され、そのまま24時間インキュベーションされた。インキュベーション後、細胞は1xPBSで2回洗浄され、計数され、200μlの1xPBS/0.5%Triton X−100に再懸濁され、96ウェルプレートに移されて、分光蛍光光度計でλex=550nm、λem=590nmにおいて読み取られた。
【0199】
5.2.10%血清の存在下におけるリポソーム安定性および細胞取り込みを定量するためのアッセイの結果:
図8AはpH−感受性DOPE:CHおよびER−ターゲッティングDOPE:DOPC:PI:PSリポソーム内からのカルセイン遊離の割合を実証する。4日間インキュベーション後に、DOPE:PEリポソームからは58%(SD=12.6%)のカルセインが遊離されていたが、DOPE:DOPC:PI:PSリポソームからは32%(SD=9.2%)だけしかカルセインは遊離されず、血清の存在におけるより高い安定性を示唆した。
【0200】
Huh7.5細胞へのリポソーム取り込みに対するFBSとヒト血清両方の効果をモニターするために、膜内に1%rh−PEを含むDOPE:CHおよびDOPE:DOPC:PI:PSリポソームが調製され、無血清培地または10%FCSもしくは10%ヒト血清を含む培地の存在下で、Huh7.5細胞と一緒に24時間インキュベーションされた(最終リポソーム濃度50μM)。細胞におけるリポソーム取り込みは24時間インキュベーション期間後の細胞毎の蛍光の量(任意単位、AU)として表現される。FBSの存在下におけるDOPE:CHリポソーム取り込みは無血清培地に比較して有意に減少することが観察された(それぞれ5.0x10−4AU/細胞(SD=7.0x10−5AU/細胞)対8.2x10−4AU/細胞(SD=2.1x10−4AU/細胞)、P=0.02、図8B)。ヒト血清の存在では有意な差は見られなかった。対照的に、DOPE:DOPC:PI:PSリポソームでは、FBSの存在下における取り込みは無血清培地に比較して有意な増大を実証した(それぞれ6.6x10−4AU/細胞(SD=8.4x10−5AU/細胞)対3.1x10−4AU/細胞(SD=1.2x10−4AU/細胞)、P=0.003、図8b)。さらに、ヒト血清の存在は、Huh7.5細胞におけるDOPE:DOPC:PI:PSリポソーム取り込みの効率をFBSに比較して有意に増大させた(1.4x10−3AU/細胞(SD=1.8x10−4AU/細胞)、P=0.001、図8B)。
【0201】
図10A〜BはER−ターゲッティングリポソームが血清の存在下で安定性および細胞取り込みが増大したことを実証する実験の結果を提示する。(A)自己−消光カルセイン−負荷リポソーム(最終脂質濃度50μM)は完全DMEM+10%FBS中でインキュベーションされ、そのまま4日間37℃でインキュベーションされた。
【0202】
24時間毎に培養物の試料を使用してλex=485nm、λem=520nmでのカルセイン脱消光を測定した。結果は、インキュベーション期間終了時にリポソーム膜を破壊するためのTritonX−100添加により確定される最大蛍光に関して、リポソームから遊離されるカルセインの百分率として提示される。(B)Rh−標識リポソーム(脂質濃度50μM)は10%ウシ血清(FBS)、10%ヒト血清のいずれかの存在下において、または無血清培地において24時間Huh7.5細胞と一緒にインキュベーションされた。インキュベーション期間後、細胞は採取され、計数され、そしてλex=550nm、λem=590nmにおいて蛍光が測定された。結果はそれぞれの試料の細胞毎に測定された平均蛍光として提示される。すべてのデータは3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値とSDを表す。
【0203】
DOPE:DOPC:PI:PSリポソームを使用するこれらの研究は、このリン脂質の組み合わせが、DOPE:CHリポソームと比較して、細胞および血清両方とのいっそう好ましい相互作用を実証しうることを示唆することができる。10%FBSの存在下において、DOPE:DOPC:PI:PSリポソームは、4日間インキュベーション後DOPE:CHリポソームと比較して被包されたカーゴの45%少ない漏出を表す。DOPE:DOPC:PI:PSリポソームはまた、FBSの存在下においてHuh7.5細胞への増大した取り込みを実証し、取り込みはまた、ヒト血清の存在下でさらに増大した。対照的に、DOPE:CHリポソーム取り込みは無血清培地に比較して、FBSの存在下で阻止されるように見えた。本発明はそれらの操作理論によって限定されないが、これらの結果はERを目標とするリポソーム、すなわちPIおよび/またはPS脂質を含むリポソームは、DOPE:CHリポソームによって使用されるものと異なる細胞受容体によってエンドサイトーシスされ、そしてこの機序を介したエンドサイトーシスは血清の存在によって高められうることを示唆しうる。
【0204】
6.Huh7.5細胞およびPBMCにおけるERリポソームの細胞毒性
これらの実験の目的は、Huh7.5細胞およびPBMC両方の1ラウンド処置(5日間)にわたる細胞生存能力に対するリポソームの効果を確定することであった。
【0205】
6.1.Huh7.5細胞およびPBMCにおける細胞毒性の確定のための特定の方法論:
脂質組成PH:CH(3:2)、PE:PC(3:2)、PE:PI(3:2)、PE:CH:PI(3:1:1)、PE:PC:PI(1.5:1.5:2)、PE:PS(3:2)、PE:CH:PS(3:1:1)、PE:PC:PS(1.5:1.5:2)、PE:PI:PS(3:1:1)、PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)およびPE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)を持つリポソームは先に記載のように調製された。Huh7.5細胞およびPBMCはそれぞれ200μlの完全DMEMおよびRPMI+IL2培地中5x104細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに播種され、0〜500μMの範囲の最終脂質濃度を持つ1xPBSを被包したリポソームの存在下でインキュベーションされた。5日間のインキュベーション後、細胞生存能力は取扱説明書に従ってMTSを基礎にした細胞増殖アッセイ(CellTiter 96(登録商標),Promega,San Luis Obispo,U.S.A.)により確定された。
【0206】
6.2.PBSリポソームで5日間処置した場合のHuh7.5細胞およびPBMCにおける細胞毒性:
図9は、1xPBSを被包した異なるリポソーム製剤と一緒に5日間インキュベーション後のHuh7.5細胞の生存能力を示す。培地における最終脂質濃度は0〜500μMまで変動した。結果は、3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。
【0207】
図10は、1xPBSを被包した異なるリポソーム製剤と一緒に5日間インキュベーション後のPBMCの生存能力を示す。培地における最終脂質濃度は0〜500μMまで変動した。結果は、3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。
【0208】
図9および10の結果は、脂質CHEMSを含むリポソームだけが60μMより高い濃度で細胞に添加された場合、Huh7.5細胞およびPBMCにおいて細胞毒性であることを実証することができる。この脂質を含まないERリポソームは、たとえあったとしても、pH−感受性リポソームに比較してほとんど細胞毒性を示さず、従って、in vivoの使用に好ましい。
【0209】
7.ERリポソームで処置された感染PBMCからのHIV−1の分泌
これらの実験の目的は異なるリポソーム組成物で処置されたHIV−1−感染PBMCからのHIV−1分泌レベルの変化をモニターすることであった。
【0210】
7.1.1ラウンドHIV分泌アッセイのための特定の方法論:
脂質組成PH:CH(3:2)、PE:PC(3:2)、PE:PI(3:2)、PE:CH:PI(3:1:1)、PE:PS(3:2)、PE:CH:PS(3:1:1)、PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)およびPE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)を持つリポソームは先に記載のように調製された。薬物処置細胞から分泌されたビリオンによる感染の結果としてのHIVの分泌の変化は、指標細胞としての刺激されたPBMC、およびエンドポイントとしてのp24抗原産生の確定を使用して評価された。4人の正常(非感染)ドナーに由来するPBMCはHistopaque密度勾配遠心法(Sigma−Aldrich,Gillingham,U.K.)を使用して分離され、プールされ、そして完全RPMI(RPMIプラス10%熱―不活性化FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および2mM L−グルタミン)中で48時間フィトヘマグルチニン(PHA、5μg/ml)、続いて72時間インターロイキン−2(IL2、40U/ml)により刺激された。特記しない限り、すべての実験は96ウェルマイクロタイタープレートで行われ、すべてのインキュベーションは37oC/5%CO2で行われた。細胞を感染させるために、4x105PHA−活性化PBMCおよび初代分離株ストックの100TCID50(50%組織培養感染量)がそれぞれのウェルに添加された。16時間の夜通しのインキュベーション後、細胞は完全RPMI培地で3回洗浄され、適切な遊離薬物またはリポソーム処置剤(最終脂質濃度50μM)を含む完全RPMI/IL2に再懸濁された。5日目に、薬物―処置細胞から分泌されたHIVビリオンを含む上清は集められ、p24濃度はp24捕獲ELISAによってそれぞれに対して定量される。
【0211】
7.2.1ラウンドHIV分泌アッセイの結果:
図11は、5日間リポソーム処置した感染PBMCからのHIVの分泌を実証する。すべてのリポソームは1xPBS溶液を被包していて、最終脂質濃度50μMで細胞培養培地に添加されている。ウイルス分泌は、捕獲ELISAによる処置および無処置PBMC上清内のHIVコア蛋白質p24の定量後に計算された。結果は無処置対照に関したHIV分泌の百分率として提示され、2回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。アッセイはLAI(クレードB)、93UG067(クレードD)および93RW024(クレードA)を含む、3種の遺伝的に多様なHIV−1分離株に対して実施された。
【0212】
図11の結果は、脂質PIを含むERリポソームが、無処置対照に比較してPBMCからのHIV分泌をおよそ20%減少させることが可能であることを実証することができる。非−ERターゲッティングリポソーム(PE:CHおよびPE:PC)およびPI脂質を含まないERリポソームは、HIV感染に対して全く効果がない。
【0213】
8.ERリポソームで処置された感染PBMCから分泌されたHIV−1の感染力
これらの実験の目的は、異なるリポソーム組成物で処置されたHIV−1−感染PBMCから分泌されたHIV−1ビリオンの感染力の変化をモニターすることであった。
【0214】
8.1.1ラウンドHIV感染力アッセイのための特定の方法論:
リポソームで処置された感染PBMCから分泌されたHIV−1ビリオンの感染力は、先の段落に記載のように、リポソーム−処置細胞から分泌されたHIVビリオンを含む上清を使用して確定された。すべての上清は完全RPMI/IL2中最終p24濃度10ng/mlに希釈され、100μlは最終p24濃度5ng/mlとなるようにやはり100μlの培地中の4x105PHA−活性化PBMCに添加され、そのまま一晩インキュベーションされた。翌日、細胞は記載のように洗浄され、200μlの新鮮なRPMI/IL2に再懸濁され、そのまま4日間インキュベーションされた後、上清が集められ、捕獲ELISAによってp24含量がアッセイされた。
【0215】
8.2.1ラウンドHIV感染力アッセイの結果:
図12はリポソーム−処置HIV−感染PBMCから分泌されたHIVビリオンの感染力を示す。分泌されたウイルス粒子はナイーブPBMCを感染させるために使用され、そして細胞を感染させる能力は、上清が除去され、細胞が5日間無処置のままでおかれた後にウイルス分泌を測定することによって確定された。結果は無処置対照に関したHIV感染力の百分率として提示され、2回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。アッセイは、LAI(クレードB)、93UG067(クレードD)および93RW024(クレードA)を含む、3種の遺伝的に多様なHIV−1分離株に対して実施された。
【0216】
図12の結果は、ある種のERリポソームが処置されたPBMCから分泌されたウイルス粒子の感染力を低減させることが可能でありうることを実証することができる。最も強い抗ウイルス活性は、PIおよび/またはPSと組み合わせた脂質CHEMSからなるERリポソームに見られ、ここではウイルス粒子の感染力は無処置ビリオンの20%未満である。非ERリポソーム(PE:CHおよびPE:PC)およびERリポソームPE:PSはウイルス感染力に対して全く効果が見られなかった。
【0217】
9.ERリポソームはpH−感受性リポソームに比較してより効率的な細胞内カーゴ遊離を実証する:
これらの実験では、自己−消光濃度の蛍光分子、カルセインを被包するローダミン−標識リポソームが調製され、Huh7.5細胞の存在下でインキュベーションされた。カルセインは細胞内空間に遊離されて脱消光するため、細胞内側への被包されたカーゴの送達は蛍光の増大によってモニターされた。
【0218】
9.1.Huh7.5細胞におけるリポソームの細胞内送達を測定するための特定の方法論:
蛍光測定アッセイのために、5x106Huh7.5細胞は完全DMEM/10%FBSを含む25cm2フラスコに播種され、そのまま一晩置かれた。翌日、1%rh−PEを含むカルセイン−負荷リポソームが培地に添加され(最終リン脂質濃度50μM)、37℃または4℃でそのまま30分間インキュベーションされた。インキュベーション後、細胞は1xPBSで2回洗浄され、トリプシン/EDTA(Invitrogen)で剥がされ、さらに2回洗浄され、そして600μlPBSに再懸濁された。200μlのアリコート3つを使用して蛍光が測定され、平均が求められた。カルセイン脱消光はλex=485nmおよびλem=520nmで測定され、そしてローダミン蛍光はλex=550nmおよびλem=590nmで測定された。エンドサイトーシスしない状態で細胞に結合したリポソームの初期のカルセイン蛍光対ローダミン蛍光の比は、リポソームを4℃で細胞と一緒にインキュベーションすることによって得られ、そして37℃での値を調整するために使用される。
【0219】
9.2.Huh7.5細胞におけるリポソームからの被包されたカルセインの細胞内遊離:
リポソームとの45分間インキュベーション後のHuh7.5細胞における平均rh−DOPE蛍光はリポソームの取り込みを反映し、そして平均カルセイン蛍光は細胞内脱消光、従って蛍光色素の遊離を示す。計算されたカルセイン蛍光対ローダミン蛍光の比は、細胞に結合したリポソーム毎に細胞内に遊離された水性マーカーの量の尺度として見なされる。DOPE:CHリポソームに対するカルセイン/ローダミン比は10.3(SD=2.6)であると計算されたが、DOPE:DOPC:PI:PSリポソームに対する比は15.7(SD=2.4)であり、152%(P=0.02、図13)の増大であった。
【0220】
図13は、完全DMEM/10%FBS中Huh7.5細胞と一緒に45分間インキュベーションされた、自己−消光カルセイン−負荷、rh−PE−標識リポソームに関する実験の結果を提示する。インキュベーション後のリポソームに由来するカルセインの細胞内脱消光はλex=490nm、λem=520nmで測定され、同じインキュベーション期間の総リポソーム取り込みはλex=550nm、λem=590nmでの蛍光測定によって確定された。アッセイは37℃および4℃の両方で実施され、エンドサイトーシスしないリポソーム結合に対して修正するために、すべての4℃の値は37℃の値から差し引かれた。Huh7.5細胞内側の被包されたカルセインを送達するためのリポソームの能力はインキュベーション後の処置された細胞におけるカルセイン脱消光とrh−PE蛍光の比を計算することによって測定された。データは3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値とSDを表す。
【0221】
図13に提示された結果は、PEとPIおよび/またはPSとの組み合わせからなるリポソームは、被包された化合物の効率的な細胞内送達のために特に設計されたリポソーム組成物であるPE:CHリポソームに比較して、リポソーム毎の細胞内カルセイン遊離の増大したレベルを有していることを示唆することができる。これらのアッセイでは、PE:PC:PI:PSリポソームはPE:CHリポソームに比較して、1.5倍多いカルセイン遊離を実証する。
【0222】
10.1mM NB−DNJを被包するリポソームによって処置されたPBMCからのHIV−1の分泌
これらの実験の目的は、被包されたイミノ糖(すなわち、NB−DNJ)をHIV−感染PBMCに送達するリポソームの能力を確定することであった。脂質PIおよびPSを含むリポソームはpH−感受性リポソーム(PE:CH)およびpH−非感受性リポソーム(PE:PC)に比較された。
【0223】
10.1.1ラウンドHIV分泌アッセイのための特定の方法論;
脂質組成PH:CH(3:2)、PE:PC(3:2)、PE:PI(3:2)、PE:CH:PI(3:1:1)、PE:PS(3:2)、PE:PI:PS(3:1:1)、PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)およびPE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)を持つリポソームは、すべてのリポソームが1xPBS中の1mM NB−DNJを被包すること以外は先に記載のように調製された。HIV分泌アッセイは先に記載のように実行された。サイズ−排除クロマトグラフィーによってリポソームは被包されないNB−DNJから精製された。リポソームに関する結果は細胞培養培地に1mMの最終濃度で添加されたNB−DNJに関する結果と比較される。
【0224】
10.2.1ラウンドHIV分泌アッセイの結果:
図14は1mMのフリーNB−DNJ対リポソームに媒介されて送達されたNB−DNJによる5日間処置の間の感染PBMCからのHIV分泌を示す。リポソームは1mM NB−DNJを被包していて、最終脂質濃度50μMで細胞培養培地に添加されている。ウイルス分泌は先に記載のように計算された。結果は無処置対照に関したHIV分泌の百分率として提示され、2つの独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。アッセイはLAI(クレードB)、93UG067(クレードD)および93RW024(クレードA)を含む、3種の遺伝的に多様なHIV−1分離株に対して実施された。
【0225】
図14の結果は、脂質PIまたはPSを含むリポソームは、PE:CHリポソームに比較してより高くはないとしても、同様のHIV分泌の減少によって確定される抗ウイルス活性を達成するために、HIV−感染PBMCに抗ウイルスNB−DNJを送達することが可能でありうることを実証することができる。
【0226】
11.1mM NB−DNJを被包するリポソームによって処置された感染PBMCから分泌されたHIV−1の感染力。
【0227】
これらの実験の目的は、被包されたイミノ糖(すなわち、NB−DNJ)をHIV−感染PBMCに送達するリポソームの能力を確定することであった。脂質PIおよびPSを含むリポソームはpH−感受性リポソーム(PE:CH)およびpH−非感受性リポソーム(PE:PC)と比較された。
【0228】
11.1.1ラウンドHIV感染力アッセイのための特定の方法論:
リポソームによって処置されたPBMCから分泌されたHIVビリオンの感染力は、すべてのリポソームが1xPBS中1mM NB−DNJを被包していること以外は先に記載のように確定された。リポソーム−処置細胞から分泌されたビリオンに関する結果はフリーNB−DNJ−処置細胞および無処置細胞から分泌されたものと比較される。
【0229】
11.2.1ラウンドHIV感染力アッセイの結果:
図15はNB−DNJ−リポソームまたはフリーNB−DNJ−処置HIV−感染PBMCから分泌されたHIVビリオンの感染力を示す。分泌されたウイルス粒子はナイーブPBMCを感染させるために使用され、そして細胞を感染させる能力は先に記載のように確定された。結果は無処置対照に関するHIV感染力の百分率として提示され、2回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。アッセイはAI(クレードB)、93UG067(クレードD)および93RW024(クレードA)を含む、3種の遺伝的に多様なHIV−1分離株に対して実施された。
【0230】
図15の結果は、1mM NB−DNJを被包するERリポソームによるHIV−感染PBMCの処置は無処置対照に比較してHIVの分泌および感染力を減少させることを実証することができる。PIおよびPS脂質を含まないリポソームであるpH−感受性リポソームと脂質PIおよびPSを含むリポソーム間の結果の比較は、1mM NB−DNJを被包している場合、抗ウイルス活性に有意な差は見られないことを明らかにする。
【0231】
抗ウイルス活性は、gp120/gp41ターゲッティング分子、たとえばCD4の可溶性型を薬物被包リポソームの外側表面に化学的に連結することによってさらに高めることができる。ターゲッティング分子は、感染を予防するためにフリーウイルス粒子を中和することに加え、受容体−媒介エンドサイトーシスを介してHIV−感染細胞への薬物−負荷リポソームの取り込み増大を導くべきである。
【0232】
12.PBMCにおける1mM NB−DNJを被包するER−リポソームの細胞毒性:
これらの実験の目的は、PBMCの細胞生存能力に対する1mM NB−DNJを被包するリポソーム1ラウンド処置(5日間)の効果を確定することであった。
【0233】
12.1.PBMCにおける細胞毒性の確定のための特定の方法論:
脂質組成PH:CH(3:2)、PE:PC(3:2)、PE:PI(3:2)、PE:CH:PI(3:1:1)、PE:PS(3:2)、PE:CH:PS(3:1:1)、PE:CH:PI:PS(3:1:0.5:0.5)およびPE:PC:PI:PS(1.5:1.5:1:1)を持つリポソームは、すべてのリポソームが1xPBS中の1mM NB−DNJを被包する以外は、先に記載のように調製された。1mM NB−DNJを被包するリポソームとの5日間インキュベーション後の細胞生存能力は先に記載のように確定された。
【0234】
12.2.1mM NB−DNJを被包するリポソームによる処置後のPBMC生存能力:
図16は、1mM NB−DNJを被包する異なるリポソーム製剤との5日間インキュベーション後のPBMC生存能力を示す。培地の最終脂質濃度は0から500μMまで変動した。結果は3回の独立した実験に由来するトリプリケート試料の平均値を表す。驚くべきことに、ある種のリポソーム内側のNB−DNJの被包はモック−処置対照に比較して,細胞増殖を160%にまで増大させるように見える。
【0235】
13.ERリポソームで処置されたHuh7.5細胞からのHCVの分泌
これらの実験の目的は、異なるリポソーム組成物によって処置されたHCV−感染Huh7.5細胞からのHCV−1−分泌レベルの変化をモニターすることであった。
【0236】
13.1.1ラウンドHIV分泌アッセイのための方法:
アッセイは感染後8日目(急性)および感染後50日目(慢性)の細胞に対して行われた。HCV−感染Huh7.5細胞は6ウェルプレートにおいて75%コンフルエンシーになるまで培養され、その後培地はウェル毎に総容量2mlの完全DMEM+50μMリポソームで取り替えられ、そのまま37℃/5%CO2で72時間インキュベーションされた。すべてのアッセイはトリプリケート試料により行われた。ウイルス分泌解析は、QIAGEN QIAampウイルスRNA精製キットを使用し、取り扱い説明書に従って上清500μlから抽出されたウイルスRNAに対する定量PCRによって行われた。分泌されたウイルスRNAの定量は、初めに逆転写酵素反応を使用することによる分離されたRNAからcDNAへの変換、続いてSyBr GreenミックスとHCV cDNAに対して設計されたプライマーを使用したリアル−タイムPCRによって行われた。
【0237】
13.2.1ラウンド分泌アッセイの結果:
図17は、5日間のリポソーム処置後の、急性および慢性−感染両方の、感染Huh7.5細胞からのHCVの分泌を示す。すべてのリポソームは1xPBS溶液を被包し、最終脂質濃度50μMで細胞培養培地に添加されている。HCV分泌は定量PCRによる処置および無処置Huh7.5細胞の上清内のRNAの定量後計算された。結果は無処置対照に関するHCV RNA分泌の百分率として提示され、トリプリケート試料の平均値を表す。
【0238】
14.ERリポソームにより処置されたHuh7.5細胞から分泌されたHCVの感染力
この実験の目的は、異なるリポソーム組成物によって処置されたHCV−感染Huh7.5細胞から分泌されたHCVビリオンの感染力の変化をモニターすることであった。
【0239】
14.1.1ラウンドHIV感染力アッセイのための方法:
リポソームで処置されたHuh7.5細胞から分泌されたHCVビリオンの感染力は、先の段落に記載のように、リポソーム−処置細胞から分泌されたHCVビリオンを含む上清を使用して確定された。ナイーブHuh7.5細胞は48−ウェルプレートにおいて75%コンフルエンシーになるまで培養され、その後培地はリポソーム−処置細胞から分泌されたHCVを含む上清200μlと取り替えられた。上清はそのまま1時間ナイーブHuh7.5細胞を感染させ、その後細胞は1xPBSで2回洗浄され、完全DMEM500μl中、2日間、37℃/5%CO2でインキュベーションされた。2日間のインキュベーション後、細胞は1xPBSで2回洗浄され、メタノール/アセトン(1:1、vol:vol)で10分間固定され、1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄された。細胞は4μg/ml抗−HCVコア抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄され、4μg/mlFITC−標識二次抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、さらに2回洗浄され、そしてDAPIで染色された。蛍光画像は、先に記載のようにNikon Eclipse TE2000−U顕微鏡を使用して撮られた。感染した細胞の百分率は、HCVに感染した細胞の総数(抗−HCV抗体によって検出される)を計数し、アッセイにおける(DAPI染色によって検出される)細胞の総数で割ることにより計算される。
【0240】
14.2.1ラウンドHIV感染力アッセイの結果:
図18は急性および慢性−感染両方の、リポソーム−処置HCV−感染Huh7.5細胞から分泌されたHCVビリオンの感染力を示す。分泌されたウイルス粒子はナイーブHuh7.5細胞を感染させるために使用され、細胞を感染させる能力は、一旦上清が除去され、細胞が2日間無処置のまま置かれた後にHCVコア蛋白質の存在を測定することによって確定された。結果は、無処置対照に関するHCV感染力の百分率として提示され、トリプリケート試料の平均値を表す。
【0241】
選ばれたERリポソームおよびpH−感受性リポソーム(PE:CH)で処置されたHCV−感染Huh7.5細胞に由来する結果は、すべてのリポソームはウイルス粒子の分泌を増大させるが、分泌された粒子の感染力は無処置粒子に比較して有意に低減されることを示唆する。
【0242】
15.ERリポソームはHuh7.5細胞におけるLDの形成を減少させる
Huh7.5細胞はERリポソームの存在下で一晩インキュベーションされ、細胞LDに対するそれらの効果をモニターされた。LDはリポソーム−処置細胞において共焦点顕微鏡により可視化された。
【0243】
15.1.Huh7.5細胞内のLDを可視化するための方法:
ERリポソームPE:PC:PI:PS(1.5:1.7:1.5:0.3)は先に記載のように調製された。Huh7.5細胞は番号1.5ガラスカバースライドに一晩接着させ、その後培地は交換され、最終脂質濃度50μMになるまで添加されたリポソームを含む新鮮な培地と取り替えられた。37℃/5%CO2で16時間インキュベーション後、リポソームを含む培地は除去され、細胞は1xPBSで洗浄され、1xPBSで希釈された4%パラホルムアルデヒドで15分間固定され、1xPBSで2回洗浄された。その後細胞は20μg/mlのBODIPY493/503を含む1xPBS中で10分間インキュベーションされ、1xPBSで2回洗浄された。BODIPY 493/503はLDのまわりの微小環境の詳細な分析に適する。細胞はDAPIで染色され、その後顕微鏡スライドにマウントされた。共焦点画像はCarl Zeiss LSM顕微鏡を使用して撮られ、画像解析はLSMソフトウェアv5.10を使用して行われた。
【0244】
15.2.ERリポソームによる16時間処置後のHuh7.5細胞内側のLDを可視化した結果
図19は、16時間インキュベーション後にLDを可視化するためにBODIPY 493/503(緑色)で探査された、無処置Huh7.5細胞(左パネル)およびPE:PC:PI:PSリポソーム−処置Huh7.5細胞(右パネル)の実験の結果を示す。PE:PC:PI:PSリポソームは最終脂質濃度50μMになるまで細胞培養培地に添加された。DAPI(青色)は核染料として、および画像濃度を標準化するために使用される。結果は、PE:PC:PI:PSリポソームによるHuh7.5細胞の処置はLDの形成を減少させることを示唆する。
【0245】
16.ERリポソームはHuh7.5細胞においてLDと共局在する
PE:PC:PI:PSリポソームはHuh7.5細胞においてLD形成を妨害することが示されたため、これらのリポソームが細胞内LDと直接相互作用するかどうかを確定するために以下の実験が行われた。共局在を確定するために、Rh−PE標識リポソームはHuh7.5細胞と2時間インキュベーションされ、その後Rh−PE脂質および細胞内LDは共焦点顕微鏡によって可視化された。
【0246】
16.1.LDおよびリポソームの細胞内共局在を可視化するための方法:
ERリポソームPE:PC:PI:PS(1.5:1.7:1.5:0.3)は先に記載のように調製され、可視化のために1%(総モル)のRh−PEを含んだ。Huh7.5細胞は番号1.5ガラスカバースライドに一晩接着させ、その後培地は交換され、最終脂質濃度50μMになるまで添加されたRh−PE標識リポソームを含む新鮮な培地と取り替えられた。37℃/5%CO2で2時間インキュベーション後、リポソームを含む培地は除去され、細胞は固定され、先に記載のようにBODIPY493/503で染色された。細胞はDAPIで染色され、その後顕微鏡スライドにマウントされた。共焦点画像は先に記載のように撮られた。
【0247】
16.2.2時間インキュベーション後のHuh7.5 LDとリポソームの共局在:
図20は、PE:PC:PI:PSリポソーム(赤色)で2時間処置され、LD染料(緑色)で探査されたHuh7.5細胞の実験の結果を示す。PE:PC:PI:PSリポソームは最終脂質濃度50μMまで細胞培養培地に添加された。DAPI(青色)は核染料として使用される。底部−右パネルは統合画像である。黄色は細胞内の共局在領域を同定する。
【0248】
結果は、PE:PI:PS:PCリポソームはたった2時間だけの処置後にHuh7.5細胞のLDと相互作用できることを示唆する。
【0249】
17.ERリポソームによるHCV−感染Huh7.5細胞の処置はHCVコア蛋白質とLDとの会合を阻止する
HCVコア蛋白質と細胞内LD間の相互作用の妨害は、主としてHCV−感染細胞からの非−感染性ウイルス粒子の分泌を導くことができる。
【0250】
これらの実験の目的はリポソーム処置がHuh7.5細胞におけるHCVコア蛋白質とLDの共局在を低減させるかどうかを確定することであった。
【0251】
17.1.LDとHCVコア蛋白質の細胞内共局在を可視化するための方法:
ERリポソームPE:PC:PI:PS(1.5:1.7:1.5:0.3)は先に記載のように調製された。HCV遺伝子型JFH1による感染後8日目にHuh7.5細胞は番号1.5ガラスカバースライドに一晩接着させ、その後培地は交換され、最終脂質濃度50μMになるまで添加されたリポソームを含む新鮮な培地と取り替えられた。37℃/5%CO2で16時間インキュベーション後、リポソームを含む培地は除去され、細胞は1xPBSで2回洗浄され、メタノール/アセトン(1:1、vol:vol)で10分間固定され、1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄された。次に細胞は3μg/ml抗−HCVコア抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、1xPBS/0.1%Tween−20で2回洗浄され、4μg/mlAlexaFluor550−標識二次抗体を含む1xPBS/0.1%Tween−20中で1時間インキュベーションされ、さらに2回洗浄された。細胞は20μg/mlのBODIPY493/503を含む1xPBSと一緒に10分間インキュベーションされ、1xPBSで2回洗浄され、その後DAPIで染色され、そして先に記載のようにマウントされた。共焦点画像は先に記載のように撮られた。
【0252】
17.2.ERリポソームによる16時間処置後のHuh7.5 LDとHCVコア蛋白質の共局在:
図21Aは、16時間インキュベーションされ、抗−HCV抗体(赤色)およびLD染色(緑色)によって探査された、無処置Huh7.5細胞(左パネル)とPE:PC:PI:PSリポソーム−処置Huh7.5細胞(右パネル)に関する実験の結果を示す。PE:PC:PI:PSリポソームは最終脂質濃度50μMになるまで細胞培養培地に添加された。DAPI(青色)は核染料として使用される。底部−右パネルは統合画像である。黄色は細胞内の共局在領域を同定する。図21Bは無処置(左)およびPE:PC:PI:PSリポソーム−処置(右)細胞両方の統合画像(白四角)の拡大を提示する。図21CはPE:PC:PI:PSリポソームの存在下(右)および非存在下(左)におけるHCVコア蛋白質/LD相互作用の概念図である。
【0253】
大きなLD/HCVコア小胞の存在が感染性ウイルス粒子の産生にとって必要であってもよい。これらの結果は、PE:PC:PI:PSリポソーム−によるHCV−感染Huh7.5細胞の処置がHCVコアと細胞内LDとの会合を低減させうることを実証し、そのことはおそらくERリポソーム−処置細胞から分泌されたHCV粒子の感染力の減少を説明しうる。
【0254】
18.ERリポソームを介して多価不飽和脂質をHCV−感染Huh7.5細胞に送達することによるHCV分泌および感染力の減少
HCVに対するERリポソームの抗ウイルス活性を高めるために、PEおよびPC脂質(現在すべての実験において18:1一価不飽和)は多価不飽和PEおよびPC脂質(22:6および/または20:4のいずれか)によって取り替えることができる。
【0255】
図22A〜Dは多価不飽和ERリポソームに組み込まれることになる多価不飽和脂質の化学構造を示す。A.22:6PE。B.20:4PE。C.22:6PC。D.20:4PC。
【0256】
HCV抗ウイルス薬としてのERリポソームの潜在的な役割を検討するために、JC−1−感染Huh7.5細胞は種々のリポソーム組成物で処置され、HCCcc分泌および感染力に対するそれらの効果がモニターされた。HCV複製に対する異なるリポソーム脂質飽和の効果をモニターするために、22:6ERリポソーム(22:6PE:22:6PC:PI:PS、1.5:1.5:1:1)および22:6PEG−ERリポソーム(3%PEG−PE脂質を含む22:6多価不飽和ERリポソーム)に加え、20:4ERリポソーム(20:4PE:20:4PC:PI:PS、1.5:1.5:1:1)および18:1ERリポソーム(18:1PE:18:1PC:PI:PS、1.5:1.5:1:1)が含まれた。
【0257】
18.1.リポソーム処置後のHCVcc分泌および感染力をモニターするための方法論:
方法は、急性JC−1 HCVcc感染に関して先に13&14節において記載のものと同じである。
【0258】
18.2.リポソームによる4日間処置の間のHCVcc分泌:
図23Aで実証したように、18:1および20:4脂質は両方とも無処置対照に比較してHCVcc分泌の増大を導いた(それぞれ218%、SD=34.4%および159%、SD=21.6%)。22:6ERリポソームだけが50μMの濃度で有意に27%(SD=11.3%)HCV分泌を減少させることが示され;同様の減少が50μMの22:6PEG−ERリポソーム処置(23%、SD=6.6%)により観察された。分泌されたウイルス粒子の感染力を測定するために、リポソーム−処置HCVccに由来する上清を使用してナイーブHuh7.5細胞を感染させ、感染した細胞数は感染後48時間目に定量された。図23Bは、すべてのリポソーム処置による、それどころか増大したウイルス分泌を引き起こす18:1および20:4ERリポソーム処置による、HCV感染力の有意な減少を示す。50μM22:6ERリポソームによる処置はHCV感染力を91%(SD=2.2%)減少させた。試験した最も低い22:6ERリポソームの濃度1μMでさえ、感染力を52%(SD=5.3%)減少させ、22:6多価不飽和(pu)ERリポソームがウイルス感染の強力な阻害剤であることを示唆する。
【0259】
図23Aは、種々のERリポソーム製剤の存在下における4日間インキュベーション中に、感染Huh7.5細胞(MOI=0.5)からのJC−1 HCVcc分泌が500μlの細胞上清から定量されたことを示す。分泌は定量PCRによる上清内のJC−1 HCVcc RNAの定量によって測定される。
【0260】
図23Bはリポソーム−処置、JC−1感染Huh7.5細胞に由来する分泌されたJC−1 HCVccの感染力を示す。分泌されたHCVccの感染力は、ナイーブHuh7.5細胞の1時間の感染、続く48時間のインキュベーションによって確定され、その時点で細胞は固定され、感染細胞の数を定量するための抗−HCVコア蛋白質、およびすべての細胞を可視化するためのDAPIにより染色された。
【0261】
図23A〜Bのデータは、脂質22:6を含むERリポソームが、先に記載のERリポソーム(18:1脂質)と同じように、分泌されたHCVビリオンの感染力を有意に減少させうることを示唆することができる。22:6多価不飽和脂質からなるERリポソームは現在抗−HCV療法開発にとって最も好ましいものである。
【0262】
前記の事項は特有の好ましい態様を表すが、本発明はそのように限定されないことは理解されるであろう。当業者は、開示された態様に対して種々の改変が行われてもよいこと、およびそのような改変は本発明の範囲内にあることが意図されることに気がつくであろう。
【0263】
本明細書に引用されたすべての刊行物、特許出願および特許はそのまま本明細書に参照として援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のPS脂質を含む脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な宿主に投与することを含む、薬物送達の方法。
【請求項2】
脂質粒子がリポソームである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂質粒子がPE、CHEMS、PIまたはSP脂質の中の少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
脂質粒子がPE脂質を含み、そしてPE脂質とPS脂質間のモル比が0.5:1から20:1まで変動する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
脂質粒子中のPE脂質とPS脂質間のモル比が1:1から10:1まで変動する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
PE脂質がDOPE脂質およびPEG−PE脂質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
脂質粒子がPE、PIおよびPC脂質を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
ウイルスによって引き起こされるか、またはウイルスに関連した疾患または状態を治療するか、または予防するために適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
疾患または状態がウイルス感染である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記投与がウイルスに感染した細胞の小胞体膜への、脂質粒子の中の1種以上の脂質の組み込みに帰着する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ウイルスがフラビウイルス科に属する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
感染がC型肝炎感染である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記投与がC型肝炎ウイルスに感染した細胞における脂肪滴の産生を低減させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記投与が脂肪滴とC型肝炎ウイルスのコア蛋白質との相互作用を阻止する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記投与がC型肝炎ウイルスの感染力を低減させる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
ウイルスがレトロウイルス科に属する、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
ウイルスがHIV−1ウイルスである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
組成物が脂質粒子に被包された少なくとも1種の活性薬をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記投与が、感染を引き起こすウイルスに感染した細胞の小胞体膜への少なくとも1種の活性薬の送達に帰着する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1種の活性薬がイミノ糖を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1種の活性薬がアルファグルコシダーゼ阻害剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1種の活性薬がイオンチャンネル阻害剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1種の活性薬がN−置換デオキシノジリマイシンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1種の活性薬がN−ブチルデオキシノジリマイシンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種の活性薬が少なくとも1種の抗−HIV薬を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1種の活性薬が少なくとも1種の抗−肝炎薬を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1種の活性薬が免疫刺激薬または免疫調節薬およびヌクレオチドまたはヌクレオシド抗ウイルス薬の中の少なくとも1種を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
組成物が抗ウイルス蛋白質をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
抗ウイルス蛋白質が脂質粒子の脂質単層または二重層の中に挿入されるか、または脂質粒子とコンジュゲートする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
組成物が脂質粒子とコンジュゲートするか、または脂質粒子の脂質単層または二重層の中に挿入されるターゲッティング部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
ターゲッティング部分がgp120/gp41ターゲッティング部分を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ターゲッティング部分がsCD4分子を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
ターゲッティング部分がモノクローナル抗体を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
ターゲッティング部分がEIまたはE2ターゲッティング部分を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
宿主がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
PS脂質またはPI脂質の中の少なくとも1種を含む脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な宿主に投与することを含む、HIV感染を治療するか、予防する方法であって、前記脂質粒子がCHEMS脂質を含まない、前記方法。
【請求項37】
脂質粒子がリポソームである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
脂質粒子がさらにPE脂質を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
PE脂質がDOPE脂質またはPEG−PE脂質の中の少なくとも1種を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
脂質粒子がPC脂質をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
組成物が脂質粒子中に被包された少なくとも1種の抗−HIV薬を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1種の抗−HIV薬がイミノ糖を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1種の抗−HIV薬がアルファグルコシダーゼ阻害剤を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1種の抗−HIV薬がN−置換デオキシノジリマイシンを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1種の抗−HIV薬がN−ブチルデオキシノジリマイシンを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
組成物が脂質粒子とコンジュゲートするか、または脂質粒子の脂質単層または二重層の中に挿入されるターゲッティング部分をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
ターゲッティング部分がgp120/gp41ターゲッティング部分を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ターゲッティング部分がsCD4分子を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
ターゲッティング部分がモノクローナル抗体を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
少なくとも1種の多価不飽和脂質を含む脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な対象に投与することを含む、薬物送達の方法。
【請求項51】
脂質粒子がリポソームである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
脂質粒子が多価不飽和PE脂質および多価不飽和PC脂質の中の少なくとも1種を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
脂質粒子が多価不飽和PE脂質および多価不飽和PC脂質を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
脂質粒子が多価不飽和22:6PE脂質を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
脂質粒子が多価不飽和22:6PC脂質を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
脂質粒子が多価不飽和22:6PC脂質および多価不飽和22:6PE脂質を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
ウイルスによって引き起こされるか、またはウイルスに関連した疾患または状態を治療するか、または予防するために適用される、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
ウイルスがフラビウイルス科に属する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
疾患または状態がC型肝炎感染である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記投与がHCV RNA複製を低減させる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
ウイルスがER−出芽ウイルスである、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
ウイルスが糖蛋白質含有ウイルスである、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
組成物が脂質粒子に被包された少なくとも1種の活性薬をさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項64】
少なくとも1種の活性薬がイミノ糖を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
少なくとも1種の活性薬がアルファ−グルコシダーゼ阻害剤を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
少なくとも1種の活性薬がイオンチャンネル阻害剤を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
少なくとも1種の活性薬がN−置換デオキシノジリマイシンを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
少なくとも1種の活性薬がN−ブチルデオキシノジリマイシンを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
少なくとも1種の活性薬が少なくとも1種の抗−肝炎薬である、請求項63に記載の方法。
【請求項70】
組成物が抗ウイルス蛋白質をさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項71】
脂質粒子とコンジュゲートするか、または脂質粒子の脂質単層または二重層の中に挿入されるターゲッティング部分を組成物が含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
対象がヒトである、請求項50に記載の方法。
【請求項73】
PS脂質を含む脂質粒子を含む組成物。
【請求項74】
脂質粒子がリポソームである、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
脂質粒子がPE、CHEMS、PI、PCまたはSP脂質の中の少なくとも1種をさらに含む、請求項73に記載の組成物。
【請求項76】
脂質粒子がPE脂質を含み、そしてPE脂質とPS脂質間のモル比が0.5:1から20:1まで変動する、請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
脂質粒子中のPE脂質とPS脂質間のモル比が1:1から10:1まで変動する、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
PE脂質がDOPE脂質およびPEG−PE脂質を含む、請求項75に記載の組成物。
【請求項79】
脂質粒子がPE、PIおよびPC脂質を含む、請求項75に記載の組成物。
【請求項80】
脂質粒子中のPS脂質のモル濃度が少なくとも10%である、請求項73に記載の組成物。
【請求項81】
脂質粒子中のPSのモル濃度が少なくとも20%である、請求項80に記載の組成物。
【請求項82】
脂質粒子がPI脂質をさらに含み、そして脂質粒子中のPS脂質とPI脂質の合わせたモル濃度が少なくとも10%である、請求項73に記載の組成物。
【請求項83】
脂質粒子中のPS脂質とPI脂質の合わせたモル濃度が少なくとも20%である、請求項82に記載の組成物。
【請求項84】
少なくとも1種の多価不飽和脂質を含む脂質粒子を含む組成物。
【請求項85】
脂質粒子がリポソームである、請求項84に記載の組成物。
【請求項86】
脂質粒子が多価不飽和PE脂質または多価不飽和PC脂質の中の少なくとも1種を含む、請求項84に記載の組成物。
【請求項87】
脂質粒子が多価不飽和PE脂質および多価不飽和PC脂質を含む、請求項84に記載の組成物。
【請求項88】
脂質粒子が多価不飽和22:6PE脂質を含む、請求項84に記載の組成物。
【請求項89】
脂質粒子が多価不飽和22:6PC脂質を含む、請求項84に記載の組成物。
【請求項90】
脂質粒子が多価不飽和22:6PC脂質および多価不飽和22:6PE脂質を含む、請求項84に記載の組成物。
【請求項91】
脂質粒子中の多価不飽和脂質のモル濃度が少なくとも20%である、請求項84に記載の組成物。
【請求項92】
細胞と、a)PI脂質またはPS脂質の中の少なくとも1種、およびb)少なくとも1種のラベルを含む少なくとも1種の標識脂質を含む脂質粒子を接触させることを含む方法。
【請求項93】
脂質粒子がリポソームである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
脂質粒子がPEおよびCHEMS脂質の中の少なくとも1種をさらに含む、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
脂質粒子がPE脂質を含み、そしてPE脂質とPS脂質間のモル比が0.5:1から20:1まで変動する、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
脂質粒子中のPE脂質とPS脂質間のモル比が1:1から10:1まで変動する、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
PE脂質がDOPE脂質およびPEG−PE脂質を含む、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
脂質粒子がPS、PE、PIおよびPC脂質を含む、請求項92に記載の組成物。
【請求項99】
ウイルスがER−出芽ウイルスである、請求項92に記載の方法。
【請求項100】
ウイルスがHCVウイルスまたはHBVウイルスである、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
少なくとも1種の標識脂質がフルオロフォア−脂質コンジュゲートを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項102】
少なくとも1種の標識脂質がビオチン−脂質コンジュゲートを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項103】
前記の接触が細胞のER膜をラベルで標識することに帰着する、請求項92に記載の方法。
【請求項104】
細胞がER出芽ウイルスに感染した細胞であり、前記の接触が細胞から出芽するウイルス粒子のラベルによる標識に帰着する、請求項92に記載の方法。
【請求項105】
標識ウイルス粒子を精製することをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
標識したウイルス粒子を画像処理することをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも1種のPS脂質を含む脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な宿主に投与することを含む、薬物送達の方法。
【請求項2】
脂質粒子がリポソームである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂質粒子がPE、CHEMS、PIまたはSP脂質の中の少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
脂質粒子がPE脂質を含み、そしてPE脂質とPS脂質間のモル比が0.5:1から20:1まで変動する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
脂質粒子中のPE脂質とPS脂質間のモル比が1:1から10:1まで変動する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
PE脂質がDOPE脂質およびPEG−PE脂質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
脂質粒子がPE、PIおよびPC脂質を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
ウイルスによって引き起こされるか、またはウイルスに関連した疾患または状態を治療するか、または予防するために適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
疾患または状態がウイルス感染である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記投与がウイルスに感染した細胞の小胞体膜への、脂質粒子の中の1種以上の脂質の組み込みに帰着する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ウイルスがフラビウイルス科に属する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
感染がC型肝炎感染である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記投与がC型肝炎ウイルスに感染した細胞における脂肪滴の産生を低減させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記投与が脂肪滴とC型肝炎ウイルスのコア蛋白質との相互作用を阻止する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記投与がC型肝炎ウイルスの感染力を低減させる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
ウイルスがレトロウイルス科に属する、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
ウイルスがHIV−1ウイルスである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
組成物が脂質粒子に被包された少なくとも1種の活性薬をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記投与が、感染を引き起こすウイルスに感染した細胞の小胞体膜への少なくとも1種の活性薬の送達に帰着する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1種の活性薬がイミノ糖を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1種の活性薬がアルファグルコシダーゼ阻害剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1種の活性薬がイオンチャンネル阻害剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1種の活性薬がN−置換デオキシノジリマイシンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1種の活性薬がN−ブチルデオキシノジリマイシンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種の活性薬が少なくとも1種の抗−HIV薬を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1種の活性薬が少なくとも1種の抗−肝炎薬を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1種の活性薬が免疫刺激薬または免疫調節薬およびヌクレオチドまたはヌクレオシド抗ウイルス薬の中の少なくとも1種を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
組成物が抗ウイルス蛋白質をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
抗ウイルス蛋白質が脂質粒子の脂質単層または二重層の中に挿入されるか、または脂質粒子とコンジュゲートする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
組成物が脂質粒子とコンジュゲートするか、または脂質粒子の脂質単層または二重層の中に挿入されるターゲッティング部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
ターゲッティング部分がgp120/gp41ターゲッティング部分を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ターゲッティング部分がsCD4分子を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
ターゲッティング部分がモノクローナル抗体を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
ターゲッティング部分がEIまたはE2ターゲッティング部分を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
宿主がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
PS脂質またはPI脂質の中の少なくとも1種を含む脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な宿主に投与することを含む、HIV感染を治療するか、予防する方法であって、前記脂質粒子がCHEMS脂質を含まない、前記方法。
【請求項37】
脂質粒子がリポソームである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
脂質粒子がさらにPE脂質を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
PE脂質がDOPE脂質またはPEG−PE脂質の中の少なくとも1種を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
脂質粒子がPC脂質をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
組成物が脂質粒子中に被包された少なくとも1種の抗−HIV薬を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1種の抗−HIV薬がイミノ糖を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1種の抗−HIV薬がアルファグルコシダーゼ阻害剤を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1種の抗−HIV薬がN−置換デオキシノジリマイシンを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1種の抗−HIV薬がN−ブチルデオキシノジリマイシンを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
組成物が脂質粒子とコンジュゲートするか、または脂質粒子の脂質単層または二重層の中に挿入されるターゲッティング部分をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
ターゲッティング部分がgp120/gp41ターゲッティング部分を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ターゲッティング部分がsCD4分子を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
ターゲッティング部分がモノクローナル抗体を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
少なくとも1種の多価不飽和脂質を含む脂質粒子を含む組成物を、薬物送達が必要な対象に投与することを含む、薬物送達の方法。
【請求項51】
脂質粒子がリポソームである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
脂質粒子が多価不飽和PE脂質および多価不飽和PC脂質の中の少なくとも1種を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
脂質粒子が多価不飽和PE脂質および多価不飽和PC脂質を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
脂質粒子が多価不飽和22:6PE脂質を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
脂質粒子が多価不飽和22:6PC脂質を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
脂質粒子が多価不飽和22:6PC脂質および多価不飽和22:6PE脂質を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
ウイルスによって引き起こされるか、またはウイルスに関連した疾患または状態を治療するか、または予防するために適用される、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
ウイルスがフラビウイルス科に属する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
疾患または状態がC型肝炎感染である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記投与がHCV RNA複製を低減させる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
ウイルスがER−出芽ウイルスである、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
ウイルスが糖蛋白質含有ウイルスである、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
組成物が脂質粒子に被包された少なくとも1種の活性薬をさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項64】
少なくとも1種の活性薬がイミノ糖を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
少なくとも1種の活性薬がアルファ−グルコシダーゼ阻害剤を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
少なくとも1種の活性薬がイオンチャンネル阻害剤を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
少なくとも1種の活性薬がN−置換デオキシノジリマイシンを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
少なくとも1種の活性薬がN−ブチルデオキシノジリマイシンを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
少なくとも1種の活性薬が少なくとも1種の抗−肝炎薬である、請求項63に記載の方法。
【請求項70】
組成物が抗ウイルス蛋白質をさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項71】
脂質粒子とコンジュゲートするか、または脂質粒子の脂質単層または二重層の中に挿入されるターゲッティング部分を組成物が含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
対象がヒトである、請求項50に記載の方法。
【請求項73】
PS脂質を含む脂質粒子を含む組成物。
【請求項74】
脂質粒子がリポソームである、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
脂質粒子がPE、CHEMS、PI、PCまたはSP脂質の中の少なくとも1種をさらに含む、請求項73に記載の組成物。
【請求項76】
脂質粒子がPE脂質を含み、そしてPE脂質とPS脂質間のモル比が0.5:1から20:1まで変動する、請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
脂質粒子中のPE脂質とPS脂質間のモル比が1:1から10:1まで変動する、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
PE脂質がDOPE脂質およびPEG−PE脂質を含む、請求項75に記載の組成物。
【請求項79】
脂質粒子がPE、PIおよびPC脂質を含む、請求項75に記載の組成物。
【請求項80】
脂質粒子中のPS脂質のモル濃度が少なくとも10%である、請求項73に記載の組成物。
【請求項81】
脂質粒子中のPSのモル濃度が少なくとも20%である、請求項80に記載の組成物。
【請求項82】
脂質粒子がPI脂質をさらに含み、そして脂質粒子中のPS脂質とPI脂質の合わせたモル濃度が少なくとも10%である、請求項73に記載の組成物。
【請求項83】
脂質粒子中のPS脂質とPI脂質の合わせたモル濃度が少なくとも20%である、請求項82に記載の組成物。
【請求項84】
少なくとも1種の多価不飽和脂質を含む脂質粒子を含む組成物。
【請求項85】
脂質粒子がリポソームである、請求項84に記載の組成物。
【請求項86】
脂質粒子が多価不飽和PE脂質または多価不飽和PC脂質の中の少なくとも1種を含む、請求項84に記載の組成物。
【請求項87】
脂質粒子が多価不飽和PE脂質および多価不飽和PC脂質を含む、請求項84に記載の組成物。
【請求項88】
脂質粒子が多価不飽和22:6PE脂質を含む、請求項84に記載の組成物。
【請求項89】
脂質粒子が多価不飽和22:6PC脂質を含む、請求項84に記載の組成物。
【請求項90】
脂質粒子が多価不飽和22:6PC脂質および多価不飽和22:6PE脂質を含む、請求項84に記載の組成物。
【請求項91】
脂質粒子中の多価不飽和脂質のモル濃度が少なくとも20%である、請求項84に記載の組成物。
【請求項92】
細胞と、a)PI脂質またはPS脂質の中の少なくとも1種、およびb)少なくとも1種のラベルを含む少なくとも1種の標識脂質を含む脂質粒子を接触させることを含む方法。
【請求項93】
脂質粒子がリポソームである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
脂質粒子がPEおよびCHEMS脂質の中の少なくとも1種をさらに含む、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
脂質粒子がPE脂質を含み、そしてPE脂質とPS脂質間のモル比が0.5:1から20:1まで変動する、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
脂質粒子中のPE脂質とPS脂質間のモル比が1:1から10:1まで変動する、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
PE脂質がDOPE脂質およびPEG−PE脂質を含む、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
脂質粒子がPS、PE、PIおよびPC脂質を含む、請求項92に記載の組成物。
【請求項99】
ウイルスがER−出芽ウイルスである、請求項92に記載の方法。
【請求項100】
ウイルスがHCVウイルスまたはHBVウイルスである、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
少なくとも1種の標識脂質がフルオロフォア−脂質コンジュゲートを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項102】
少なくとも1種の標識脂質がビオチン−脂質コンジュゲートを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項103】
前記の接触が細胞のER膜をラベルで標識することに帰着する、請求項92に記載の方法。
【請求項104】
細胞がER出芽ウイルスに感染した細胞であり、前記の接触が細胞から出芽するウイルス粒子のラベルによる標識に帰着する、請求項92に記載の方法。
【請求項105】
標識ウイルス粒子を精製することをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
標識したウイルス粒子を画像処理することをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【図1】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8−1】
【図8−2】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21−1】
【図21−2】
【図21−3】
【図22】
【図23】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8−1】
【図8−2】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21−1】
【図21−2】
【図21−3】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2011−518124(P2011−518124A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501322(P2011−501322)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005547
【国際公開番号】WO2009/118658
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(501231576)ユニバーシティ・オブ・オックスフォード (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005547
【国際公開番号】WO2009/118658
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(501231576)ユニバーシティ・オブ・オックスフォード (5)
【Fターム(参考)】
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