説明

小麦グリアジンの配列を含むポリヌクレオチドおよびRNAiによるサイレンシングのためのその使用

本発明は、hpRNA(ヘアピンRNA)に転写されるポリヌクレオチドを用いることによるRNA干渉(RNAi)による、穀粉用硬質小麦のα(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)およびω(オメガ)グリアジンの特異的サイレンシングに関する。さらに、本発明は、例えばγグリアジン遺伝子のプロモーターまたはD-ホルデインをコードする遺伝子のプロモーターのような遺伝子発現調節配列を介してその発現が小麦種子の特定の組織で特異的に導かれるポリヌクレオチドを含むベクター、細胞、植物または種子にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、hpRNA(ヘアピンRNA)に転写されるポリヌクレオチドの使用による干渉RNA(iRNA)による、硬質小麦および穀粉のα(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)およびω(オメガ)グリアジンの特異的サイレンシングに関する。さらに、本発明は、例えばγグリアジン遺伝子のプロモーターまたはD-ホルデインをコードする遺伝子のプロモーターのような遺伝子発現調節配列を介してその発現が小麦種子の特定の組織で特異的に導かれるポリヌクレオチドを含むベクター、細胞、植物または種子にも関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉(RNAi)は、特定の遺伝子の特異的サイレンシングを可能にする2本鎖RNAにより媒介されるメッセンジャーRNAの分解系である。この発見により、サイレンシングさせたい遺伝子の配列を含み、種々の長さのスペーサー配列で分けられたセンスおよびアンチセンス配列を有する、プロモーターと終結シグナルとで構成されるベクターを設計することが可能になっている。
【0003】
siRNA(小型干渉RNAまたは短い干渉RNAについての英語の略称)は、それより長い前駆体の2本鎖RNA(dsRNA、2本鎖RNAについての英語の略称)に由来する21〜25ヌクレオチド(nt)のdsRNAの分子である。前駆体dsRNAは、その場合にはmiRNAとよばれる内因的な起源のもの(生物のゲノムにコードされる)または外因的な起源のもの(例えばウイルスまたは導入遺伝子)であり得る。siRNAおよびmiRNAはともに、iRNA(干渉RNA)の型である。iRNAは、iRNA配列により認識される特定のmRNA(メッセンジャーRNAについての英語の略称)の転写後発現を抑制する。
【0004】
細胞が、外因的な導入遺伝子、ウイルス媒介物または内因的な遺伝子要素から生じ得るdsRNA前駆体(1本鎖RNAはこの効果を生じない)を受容すると、これは、リボヌクレアーゼIIIファミリーの細胞質酵素であるダイサーとよばれる酵素の作用によりsiRNAに断片化される。ダイサーは、dsRNAを、5’末端がリン酸化され、2つの対形成していないヌクレオチドが3’末端で突出しているおよそ21〜25ヌクレオチドの2本鎖断片(siRNA)に切断する。siRNAの2本の鎖のうちのガイド鎖とよばれる一方だけが、酵素複合体RISC(RNA誘導サイレンシング複合体)に組み込まれ、他方の鎖は分解される。siRNAの5’末端の熱力学的特徴は、2つの鎖のうちのどちらがRISC複合体に組み込まれるのかを決定する。5’末端にてより安定性が低い鎖が、通常、ガイド鎖として組み込まれる。この理由は、これがAU塩基のより高い含量を有すること、または対形成が不完全であることのいずれかである。転写後サイレンシングが生じるためには、サイレンシングされるmRNAに対してガイド鎖が相補的でなければならない。その後、RISC複合体は、複合体中に存在するsiRNAのガイド鎖の相補的mRNAと結合し、mRNAの切断が生じる。この後に、得られた断片は分解される。この方法により、siRNAは、標的ヌクレオチド配列の発現に起因するタンパク質が得られないように、標的ヌクレオチド配列の転写後サイレンシングを引き起こす。
【0005】
小麦中の穀粒タンパク質は、炭水化物(60〜75%)よりも少ない量(7〜18%)で含まれているが、穀粉の機能的特性にとって必須である。主要な穀粒タンパク質は、グルテンを構成するグルテニンおよびグリアジンである。腸管T細胞により認識されるエピトープ(抗原性決定因子)がαおよびγグリアジンの領域で同定されている(Arentz-Hansenら、2002. Gastroenterology 123:803〜809頁)ので、グリアジンは、セリアック病の発生の原因であることが見出されている。セリアック病に罹患した人は、グルテンに対して不耐性である。グルテン不耐性は、グリアジンへの曝露により引き起こされる小腸の近位部の慢性炎症を特徴とする。グリアジン含量が明確に低減された小麦を生産することにより、セリアック病患者のための食物を生産することが可能である。
【0006】
4つの型のグリアジン:α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)およびω(オメガ)が知られている。RNAi技術を用いる小麦粒グリアジンの抑制が、近年用いられている。現在までに、特定のグリアジンを抑制することしかできていない。例えば、プロモーター-センス配列-スペーサー-アンチセンス配列-ターミネーターの構造を有するRNAi型ヘアピンを生じる遺伝子構築物を用いることにより、α型のグリアジン(Folckら、2005. XII International Conference on Plant Embryology、口頭発表)またはγ型のグリアジン(Gil-Humanesら、2008. Journal of Cereal Science 48(3):565〜568頁)をほぼ完全に除去することが可能であったが、全ての型のグリアジンを有効に除去することはまだ可能でない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Arentz-Hansenら、2002. Gastroenterology 123:803〜809頁
【非特許文献2】Folckら、2005. XII International Conference on Plant Embryology、口頭発表
【非特許文献3】Gil-Humanesら、2008. Journal of Cereal Science 48(3):565〜568頁
【非特許文献4】Christensenら、1996. Transgenic Research 5、213〜218頁
【非特許文献5】Jefferson(1987、Plant Mol Biol Rep 5:387〜405頁)
【非特許文献6】Barroら、1998. Theoretical and Applied Genetics 97、684〜695頁
【非特許文献7】Khanら(1985. Cereal Chemistry 62: 310〜313頁)
【非特許文献8】Valdezら、2003、Eur. J. Gastroenterol. Hepatol. 15:465〜474頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
グリアジン含量が大きく低減された種子を有する植物を得ることは、技術的な困難性を示し、例えば、まず、グリアジンをコードする遺伝子の数の増加と、次に、小麦植物が6倍体であることである。小麦植物において安定した形質転換を達成することは、より少ないコピー数のゲノムを有するいずれのその他の植物での形質転換よりも大きい困難性が伴う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、RNAに転写されると、従来技術において記載されるエンドリボヌクレアーゼによりプロセシングされるhpRNA(ヘアピンRNA)、例えばヘアピン形状のRNA、2本鎖RNAを生じることができる配列を生じるように特定の順序で各サブシークエンスが一体化している2つの配列対を含むポリヌクレオチドであって、全ての型の小麦グリアジンをコードするmRNA(メッセンジャーRNA)の全ての転写後サイレンシングを引き起こすsiRNAを生じるために用いられるポリヌクレオチドに関する。この目的のために、4つのサブシークエンスは、ωグリアジンのセンス配列と、α、βおよびγグリアジンのセンス配列と、2つの前出のアンチセンス配列である。
【0010】
このポリヌクレオチドは、例えばγグリアジン遺伝子のプロモーターまたはD-ホルデインをコードする遺伝子のプロモーターのような遺伝子発現調節配列を介してその発現が特に小麦種子の組織で特異的に導かれるが、該ポリヌクレオチドにより、効果的で相乗的な様式で軟質小麦種および硬質小麦種の遺伝子の全ての転写後サイレンシングが達成される。なぜなら、従来技術に記載されるhpRNAによるαおよびγグリアジンのサイレンシングの結果と比較してより多数のグリアジン遺伝子をサイレンシングできるからである。このことは、そこから生じるsiRNAが小麦のα、β、γおよびωグリアジンのmRNAの全てとハイブリッド形成するセンスおよびアンチセンス配列を、小麦種子の特定の組織で誘導できるより高いレベルの発現を有するグリアジンプロモーターと組み合わせた特定の設計に本質的に起因する。ヒトT細胞により認識されるエピトープを含有するグリアジンの群を同定することにより、それらを含有するタンパク質のサイレンシングが、グルテンに対してアレルギー性の人に適する産物を得るために用いることができる小麦種子を生じさせたことにより、この設計に到達した。
【0011】
本発明において、用語DNAおよびRNAは、それぞれデオキシリボ核酸およびリボ核酸のことをいうために用いられる。
【0012】
よって、本発明のある態様は、スペーサー配列により分けられた2つの配列対(a1-a2)および(b2-b1)を含む配列と少なくとも90%同一であるポリヌクレオチドであって、
a.配列a1、a2、b1およびb2が、互いに異なり、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4から、以下の形式で選択される:
b. a1が配列番号1または配列番号4である場合、b1は配列番号4または配列番号1であり、a2は配列番号2または配列番号3であり、
c. a1が配列番号2または配列番号3である場合、b1は配列番号3または配列番号2であり、a2は配列番号1または配列番号4である、
ポリヌクレオチドである。
【0013】
本発明の別の態様は、スペーサー配列により分けられた2つの配列対(a1-a2)および(b2-b1)を含むポリヌクレオチドであって、配列a1、a2、b1およびb2が、前出の態様のパラグラフ(a)〜(c)に記載されているポリヌクレオチドである。
【0014】
配列a1-a2およびb2-b1(以下、当該発明の配列対という)は、次いで、2つの対が、少なくとも1ヌクレオチド長のスペーサー配列によりそれらが互いに連結される直鎖状の連続ヌクレオチド配列を形成するように連結される。好ましくは、スペーサー配列は、dsRNAを形成するプロセスの後に除去される非コード配列である。スペーサー配列は、遺伝子のイントロンの配列の部分であってよい。スペーサー配列の機能は、ポリヌクレオチドをコードするRNA配列の対形成またはハイブリッド形成が起こることができるように、記載される配列対のヒンジとして作用することである。
【0015】
ポリヌクレオチドは、当該発明の配列対を含む配列と少なくとも90%同一である。この様式で、この態様において明記されるヌクレオチド組成を有する元の配列と90%までの同一性のパーセンテージで、配列対を構成する任意のヌクレオチドの変化を考慮する。
【0016】
配列番号1は、セリアック病に罹患した人において免疫応答を生じさせるヒトT細胞により認識されるωグリアジンのエピトープをコードする断片の一部を含むセンス配列である。配列番号2は、α、βおよびγグリアジンのエピトープをコードする断片の一部を含むセンス配列である。配列番号3は、配列番号2のアンチセンス配列であり、配列番号4は、配列番号1のアンチセンス配列である。
【0017】
本発明のポリヌクレオチドは、2つの配列対が互いにハイブリッド形成してヘアピンを形成したRNAを生じさせる。よって、本発明のこれらの第1の2つの態様による、それらによりRNAヘアピンを得ることができる配列の組み合わせを、Table1(表1)およびTable2(表2)に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
本発明の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、スペーサー配列により分けられた2つの配列対(a1-a2)および(b2-b1)を含み、ここで、a1は配列番号1であり、a2は配列番号2であり、b2は配列番号3であり、b1は配列番号4である。
【0021】
別の好ましい実施形態によると、ポリヌクレオチドは、スペーサー配列が配列番号5である2つの配列対(a1-a2)および(b2-b1)を含む。配列番号5の配列は、トウモロコシユビキチンをコードする遺伝子Ubi1のイントロンの断片である。イントロンは、スプライシングとよばれるプロセスにより初期のRNA転写産物から除去されるDNAの領域であり、すなわち、イントロンは、いずれのタンパク質の配列もコードしない。ユビキチンは、破壊のために他のタンパク質に印をつける機能を有するタンパク質である。
【0022】
別の好ましい実施形態は、その5’末端に機能的に連結された遺伝子発現調節配列も含むポリヌクレオチドである。本発明において、遺伝子発現調節配列との用語は、DNA配列の転写の開始またはRNA配列もしくはその他の記載されない配列の翻訳の開始に関して遺伝子の機能性に影響する核酸配列のことをいう。例えば、本発明によりカバーされる遺伝子発現調節配列は、プロモーター、およびある種のイントロンのようなその他のより一般的でない配列である。調節配列は、本発明のポリヌクレオチドの5’末端に機能的な様式で結合し、すなわち、これは、それ自体の調節配列に依存する強度および位置で、ポリヌクレオチドの発現を導くことができる。
【0023】
より好ましい実施形態によると、遺伝子発現調節配列は、配列番号6および/または配列番号7である。配列番号6の配列は、プロリンボックス内に重複を示すγグリアジン遺伝子のプロモーターの配列に相当する。配列番号7は、D-ホルデイン遺伝子のプロモーターの配列に相当する(この遺伝子の2番目のヌクレオチドは、受入番号AY998009を有し、ホルデウム・チレンセ(Hordeum chilense)に属する)。これらのプロモーターはともに、種子の胚乳で発現される。
【0024】
本発明の任意のポリヌクレオチドに相補的な配列も含まれる。
【0025】
以下、「当該発明のポリヌクレオチド」または「本発明のポリヌクレオチド」との用語は、上記の任意のポリヌクレオチドのことをいうために用いる。
【0026】
本発明の別の態様は、当該発明の任意のポリヌクレオチドによりコードされ、hpRNAを形成できるRNA配列であって、a1-a2対によりコードされる配列が、b2-b1対によりコードされる配列と完全にハイブリッド形成するRNA配列である。
【0027】
hpRNA(ヘアピンRNAについての英語の略称)は、転写された配列のハイブリッド形成により形成されるヘアピン形状である。本発明において、配列対a1-a2とb2-b1とがそれらの間で完全にハイブリッド形成する本発明のポリヌクレオチドは、図1Bからわかるように、転写された配列を合成するための鋳型として用いた。hpRNAは、エンドリボヌクレアーゼ、例えばエンドリボヌクレアーゼであるダイサーにより切断されて、およそ21〜25 ntの断片をもたらす2本鎖RNA(dsRNA)である。これらの断片は、siRNAとして知られる。上記のように、siRNAは、mRNA配列の発現に起因するタンパク質が得られないように標的ヌクレオチド配列の転写後サイレンシングを引き起こす。
【0028】
本発明の別の態様は、前出の態様によるhpRNAの配列から生じる少なくとも1つのsiRNAである。siRNAは、RNAiとよぶこともできる。siRNAは、21〜25ヌクレオチドの2本鎖RNAであるが、この数のヌクレオチドに限定されず、これは、当該発明のhpRNA配列から生じる。本発明において、siRNAのヌクレオチドのおよその数を規定する場合において(およそ21〜25ヌクレオチド)、この配列に相補的な別の鎖があり、すなわち、ヌクレオチドまたは塩基対(bp)の用語を交換可能に用いることができると理解される。
【0029】
上記のように、ダイサー酵素は、dsRNAを、5’末端がリン酸化され、2つの対形成していないヌクレオチドが3’末端で突出しているおよそ21〜25ヌクレオチドの2本鎖断片(siRNA)に切断する。siRNAの2本の鎖のうちのガイド鎖とよばれる一方だけが、酵素複合体RISCに組み込まれ、他方の鎖は分解される。siRNAの5’末端の熱力学的特徴は、2つの鎖のうちのどちらがRISC複合体に組み込まれるのかを決定する。5’末端にてより安定性が低い鎖が、通常、ガイド鎖として組み込まれる。ガイド鎖は、転写後サイレンシングが生じるために、サイレンシングされるmRNAに対して相補的でなければならない。その後、RISC複合体は、複合体中に存在するsiRNAのガイド鎖の相補的mRNAと結合し、mRNAの切断が生じる。
【0030】
本発明の別の態様は、当該発明の任意のポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。以下、「当該発明のベクター」または「本発明のベクター」。
【0031】
「ベクター」との用語は、特定の宿主でそれ自体を複製する能力を有し、この用語が示すように、それに融合された別のDNA断片(挿入断片)を増幅するための媒体として働き得るDNA断片のことをいう。「挿入断片」とは、ベクターと融合されるDNA断片のことをいう。本発明の場合、ベクターは、本発明のポリヌクレオチドを含み、これは、それと融合されている場合に、対応する宿主においてそれ自体を複製できる。ベクターは、プラスミド、コスミド、バクテリオファージまたはウイルスベクターであってよく、このベクターの定義に合致するその他の型のベクターを排除しない。
【0032】
本発明の別の態様は、当該発明のベクターで形質導入された単離細胞である。以下、「当該発明の細胞」または「本発明の細胞」。本発明において用いる場合、「細胞」との用語は、原核または真核細胞のことをいう。細胞は、例えば、大腸菌(Escherichia coli)の種の任意の株または例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のような対象のDNAを植物の内部に輸送できる細菌を形質転換することにより外来DNAを複製できる細菌であってよい。好ましくは、細胞とは、真核植物細胞のことをいい、この群のうちで、より好ましくは植物界に属する細胞のことをいう。よって、細胞が植物細胞である場合、「細胞」との用語は、少なくとも柔組織細胞、成長点細胞または分化したかもしくは未分化の任意の型の細胞を含む。よって、この定義は、プロトプラスト(細胞壁を欠く植物細胞)も含む。
【0033】
「形質導入」との用語は、プラスミド、ウイルスベクター(この場合、「形質導入」との用語を用いることもできる)または伝達のためのその他の手段により細胞に外部の遺伝子物質を導入することをいう。「非ウイルス法による形質導入」との用語は、哺乳動物真核細胞に関して用いられ、「形質転換」との用語は、細菌ならびに酵母、藻類および植物のような非動物真核細胞への遺伝子物質の非ウイルス性の移動に関することが好ましい。本発明の場合、「形質導入」との用語は、「形質転換」との用語と等価である。
【0034】
本発明の別の態様は、当該発明の細胞を含む遺伝子改変植物である。「植物」との用語は、植物の全ての部分を含み、これは個別にまたは組み合わせて保存または培養されてよく、生殖質であってもよい。生殖質は、種間遺伝子変動性を有する生物学的物質または生物の種もしくは集団を永続させ得る遺伝子物質で構成される(以下の種子、栄養繁殖体(むかご)または子孫を参照されたい)。植物は、特定の組織で発現される形態(植物発達の特定の時期またはそれが発達する環境条件に応じて)または構成性もしくは異所性の形態(それが一般的で予期されるものとは異なる他の細胞または組織で発現される)にある本発明の細胞を含まなければならない。
【0035】
本発明の植物は、ホモ接合性、ヘテロ接合性またはヘミ接合性の当該発明のポリヌクレオチドを含有し得る。
【0036】
好ましい実施形態によると、植物は、トリチカム属(Triticum)に属する。植物は、それらに限定されないが、トリチカム・エスチバム(Triticum aestivum)、T・エチオピカム(T. aethiopicum)、T・アララチカム(T. araraticum)、T・ベオチカム(T. boeoticum)、T・カルシリカム(T. carthlicum)、T.コンパクタム(T. compactum)、T・ディココイデス(T. dicoccoides)、T・ディコッカム(T. dicoccum)、T・デュラム(T. durum)、T・イスパーニカム(T. ispahanicum)、T・カラミシェビイ(T. karamyschevii)、T・マチャ(T. macha)、T・ミリチネ(T. militinae)、T・モノコッカム(T. monococcum)、T・ポロニカム(T. polonicum)、T・レペンス(T. repens)、T・スペルタ(T. spelta)、T・スフェロコッカム(T. sphaerococcum)、T・チモフェービイ(T. timopheevii)、T・テュラニカム(T. turanicum)、トリチカム・ツルギダム(T. turgidum)、T・ウラルツ(T. urartu)、T・バビロビイ(T. vavilovii)およびT・ズコブスキイ(T. zhukovskyi)を含むリストから選択される。
【0037】
別の好ましい実施形態によると、植物は、トリチカム・エスチバム種またはトリチカム・ツルギダム種である。別の好ましい実施形態によると、植物は、栽培変種Bobwhiteまたは栽培変種Don Pedroに属する。より好ましくは、トリチカム・エスチバム・エスチバム亜種(Triticum aestivum L. ssp aestivum)の小麦種に属する栽培変種BW208およびBW2003(Bobwhite)、ならびにトリチカム・ツルギダム・デュラム亜種(Triticum turgidum L. ssp durum)の小麦種に属するDon Pedro品種が選択される。
【0038】
Bobwhiteは、国際トウモロコシ・小麦改良センター(CIMMYT)から得られる栽培変種の名称である。BW208およびBW2003は、異なるBobwhite系統である。Don Pedroは、これもまたCIMMYTからの硬質小麦の品種である。BobwhiteおよびDon Pedroは、周知の品種である。
【0039】
当該発明の植物は、遺伝子銃、アグロバクテリウム・ツメファシエンスまたは当該発明のポリヌクレオチドを、ゲノム、クロロプラストもしくはミトコンドリアのいずれかのDNAである植物のDNA中に組み込むことを可能にする任意のその他の技術により植物細胞を遺伝子形質転換し、その後に、必須ではないが、形質転換された植物種の特徴および要件に適するin vitro再生プログラムを行うことにより得ることができる。さらに、植物は、例えば当該発明の植物の花粉を用いて、当該発明のポリヌクレオチドを含まない任意の他の植物に授粉するか、または当該発明のポリヌクレオチドを含む植物の雌ずい群に、これらの配列を含まない他の花粉を授粉する交配により当該発明の任意の配列を移動させることにより得ることもできる。当該発明の植物を得るための方法は、このパラグラフに記載されるものだけに限定されない。例えば、小麦の穂からの生殖細胞の遺伝子形質転換を、後に植物を再生させない以外は上記のようにして行うことができる(以下を参照されたい)。さらに、安定的または一過的な形態で本発明の細胞を含む植物も含まれる。
【0040】
本発明の別の態様は、当該発明の任意の植物からの種子である。これは、以下、「当該発明の種子」または「本発明の種子」という。
【0041】
本発明の別の態様は、当該発明の任意の植物に由来する花粉の粒、栄養繁殖体、子孫または植物の部分である。
【0042】
本発明において、花粉は、問題の花粉と適合する任意の植物品種の授粉に起因し得る遺伝子の特徴および表現型の特徴の伝達物質とみなされる。このようにして、本発明のポリヌクレオチドを含む植物を得て、それぞれの交配および/または選択の後に、その配列が安定的な形態で(一過的な形態で発現されてもよいが)、かつ後続の世代において同じ所望の特徴を得るために十分なコピー数で組み込まれた植物を得ることができる。
【0043】
栄養繁殖体は、植物において無性繁殖または生殖を可能にすることにより新しい個別化された植物または器官を得ることを可能にする植物の部分である。別々の部分の組織は、植物の器官の群全体を生じるために、成長点の状態を回復しなければならない。栄養繁殖体は、網羅的でないが、走根、根茎、塊茎または鱗茎を含むリストから選択される。
【0044】
「子孫」との用語は、生殖の結果、すなわち1または複数の親の個体の介在により生じる1または複数の個体のことをいう。例えば、有性生殖により得られる植物の子孫は種子であるが、植物の子孫は、任意の細胞内容物、植物細胞小器官、細胞区画、DNAまたは任意のこれらの組み合わせの融合に起因する任意の細胞であってよい。細胞分裂(例えばin vitro培養のような)のプロセスにおいて、子孫は、分裂から得られる細胞である。
【0045】
本発明の別の態様は、トリチカム属種のアルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンのサイレンシングのための、当該発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞の使用である。
【0046】
本発明の実施例2に示すように、穀粉用小麦(トリチカム・エスチバム(Triticum aestivum L.))の2つの遺伝子型、栽培変種Bobwhite(BW208およびBW2003)および硬質小麦(マカロニコムギ)の1つである栽培変種Don Pedroの小麦植物のゲノムに当該発明のポリヌクレオチドを組み込むことにより、形質転換植物の種子のアルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンのサイレンシングが引き起こされた(図3、図4および図5)。
【0047】
本発明の別の態様は、食物組成物(以下、「当該発明の組成物」または「本発明の組成物」という)を調製するための当該発明の種子の使用である。食物組成物は、それらに限定されないが、他の穀粉および/もしくはセモリナまたは他の化合物と組み合わせたかまたは組み合わせていない当該発明の種子の穀粉および/もしくはセモリナから調製される。
【0048】
本発明において理解されるように、「穀粉」との用語は、種子のふすままたは殻を多少の程度で除いたトリチカム属の任意の種子または植物を粉砕することにより得られる生成物のことをいう。
【0049】
「セモリナ」との用語とは、粗い穀粉(軽く粉砕した小麦種子)、すなわち種々の量の種子の殻を含む、胚乳の破片のことをいう。
【0050】
調製される食物は、それらに限定されないが、パン、製パン製品、練り粉製品、菓子類、食品のパスタ、食品のパン生地、穀粒、飲料、乳製品を含むリストから選択される。
【0051】
本発明の別の態様は、機能性食品、ビタミンサプリメントまたは栄養サプリメントを調製するための当該発明の組成物の使用である。本発明において理解されるように、食品は、それを消費するものの食餌を改善することのような特定の機能を充足する。この目的のために、ビタミンおよび/または栄養サプリメントは、機能性食品に添加してよい。
【0052】
本発明の食物組成物を含む食品は、グルテンに対してアレルギー性である、すなわちセリアック病に罹患している人でさえ食べることができる。
【0053】
本発明の別の態様は、当該発明の植物を得るための方法であって、以下の:
a.植物の部分を選択するステップと、
b.パラグラフ(a)の植物の部分の細胞に、請求項9に記載のベクターを形質導入するステップと、
c.請求項1から6のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む、パラグラフ(b)の形質導入細胞を選択するステップと、
d.パラグラフ(c)で選択される細胞に由来する少なくとも1つの植物を再生させるステップと、
e.ポリヌクレオチドがhpRNAに転写される、パラグラフ(d)により再生させた1または複数の植物を選択するステップと、
f.その種子においてアルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンのサイレンシングを示す、パラグラフ(e)により得られた1または複数の植物を選択するステップと
を含む方法である。
【0054】
小麦植物の場合、当該発明のベクターにより形質導入されるために胚盤が選択される。ベクターに本発明のポリヌクレオチドを挿入することは、当該技術において既知のクローニング方法により、ポリヌクレオチドおよびベクターを制限酵素で切断(消化)し、その後にライゲーションして、ベクターの配列が当該発明のポリヌクレオチドを含むようにすることにより行うことができる。ベクターについては、前出のパラグラフに記載した。
【0055】
当該発明の選択された配列を含むベクターの選択は、以下のような技術により行うことができる:
-培養培地に抗生物質を加えることによる当該発明のベクターを含む細胞の選択。抗生物質のような物質に対するこれらの細胞の耐性は、ベクターの配列に含まれる配列によりコードされる分子の合成により生じる。
-制限酵素での消化。これにより、ベクターに挿入された当該発明の配列の1つの断片が得られる。
【0056】
細胞は、任意の型の微生物培養(例えば大腸菌またはアグロバクテリウム・ツメファシエンス)または植物培養により得られる。
【0057】
細胞の遺伝子形質転換は、例えばエレクトロポレーション、遺伝子銃、アグロバクテリウム・ツメファシエンスによる遺伝子形質転換、または細胞のDNAへの当該発明の任意の配列の組み込みを可能にする任意のその他の技術のような当該技術において既知の技術を用いて行われる。好ましくは、形質転換は、遺伝子銃により行われる。これらの技術により、当該発明の任意の配列を含んで、連続的な細胞分裂の後に、挿入された配列がそれ自体を発現させ続けるベクターを安定した様式で得ることができる。一過的な様式で当該発明の任意の配列を含む細胞も含まれる。
【0058】
当該発明の任意のポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換した細胞は、任意の型の細胞DNA、すなわち核、ミトコンドリアおよび/またはクロロプラストのDNAに配列を組み込むことができ、この場合、通常、他の配列の中でも当該発明のポリヌクレオチドを含むDNAを挿入する。当該発明の任意の配列が組み込まれた細胞の選択は、それらに栄養を与える培養培地に抗生物質を加えることにより行われる。抗生物質または除草剤のような物質に対するこれらの細胞の耐性は、ベクターのDNA配列に含まれる配列によりコードされる分子の合成により生じる。当該発明のポリヌクレオチドを含む細胞を、その存在もしくは不在および/またはその発現を区別することを可能にする任意のその他の技術により選択してもよい。
【0059】
選択された植物細胞は、器官形成または体細胞胚形成のプログラムに供することにより、それが由来する元の細胞の遺伝子物質を含む完全な植物を生じさせることができる。このことは、植物細胞が全能性であり、すなわち、適切な組み合わせのホルモンにより、これらを脱分化させて、完全な新しい植物を再生する能力を有する胚細胞を産生させることができる(なぜなら、これらの胚細胞は、それらが属する植物の遺伝子物質の完全なコピーを含むからである)という事実により可能である。植物のそれぞれの種に適する光および温度の条件も要求される。選択された植物細胞に由来する植物がそれ自体を一旦再生させると、当該発明のポリヌクレオチドがコードするヌクレオチド配列または当該発明の任意のその他の配列(プロモーター配列など)の存在および/または発現の分析を行うことができる。
【0060】
方法は、その種子におけるアルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンの実質的なサイレンシングを示す植物を選択するステップも含む。好ましくは、種子のグリアジンの全ての実質的に完全または完全なサイレンシングを示す植物を選択する。対照植物(当該発明のポリヌクレオチドを含まない植物)の全グリアジン含量の低減は、90%以上である。対照植物は、好ましくは、植物細胞内に当該発明のポリヌクレオチドを含まない。形質転換の前に、対照は、当該発明の植物と同じin vitro培養を経たか、またはこれらの培養ステップを経ていない野生型植物であってもよい。
【0061】
形質導入細胞は、植物の穂からの生殖細胞であってもよく、この場合、上記の植物の穂により生じる種子に由来する少なくとも1つの植物を再生させ、その種子においてアルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンのサイレンシングを示す少なくとも1つの植物を選択する。
【0062】
本明細書および特許請求の範囲の全体において、「含む」との語句およびその異形は、その他の技術的特徴、付加物、成分またはステップを排除することを意図しない。当業者にとって、当該発明のその他の目的、利点および特徴は、本明細書から部分的に、そして当該発明の通例から部分的に明確である。以下の図面および実施例は、説明のためであり、これらは、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】当該発明のポリヌクレオチドの構造を示す図である。 図Aは、スペーサー配列(E)により分けられた配列対a1-a2およびb2-b1を含み、その発現が、遺伝子発現調節配列(R)により導かれるポリヌクレオチドを示す。 図Bは、Sec a1、a2、b2およびb1の配列が記載されるようにハイブリッド形成してヘアピンを形成している、図Aに示すポリヌクレオチドの転写に起因するhpRNAを示す。その後、このRNAをプロセシングし、2本鎖RNA(dsRNA)の新しい配列を生成する。示される最終ステップは、先の配列を、例えば酵素ダイサーのような酵素により断片化して、siRNA(小型干渉RNA)とよばれるおよそ21〜25ヌクレオチドの2本鎖RNA配列を形成することを示す。
【図2】当該発明のポリヌクレオチドの具体例を示す図である。 この場合、配列Rは、ガンマ-グリアジン(γグリアジン)またはD-ホルデインの遺伝子のプロモーター配列である。配列Eは、トウモロコシユビキチン遺伝子のイントロンの断片である。NOStは、転写終結配列である。このポリヌクレオチドを、この具体例において、アンピシリン耐性遺伝子を有するpUC18ベクターに挿入する。
【図3A】当該発明のポリヌクレオチドで形質転換した小麦品種BW208の植物種子のグリアジンの、A-PAGEおよびMALDI-TOF法による分離および同定を示す図である。図Aは、穀粉用小麦(パンコムギ)の対照系統である品種BW208と、ベクターpGhp-ω/α/β/γで形質転換した同じ遺伝子型の穀粉用小麦の系統(B377-2-3)の種子の試料のグリアジンのA-PAGEによる分離を示す。分離により得られたグリアジンの群を示す。
【図3B】当該発明のポリヌクレオチドで形質転換した小麦品種BW208の植物種子のグリアジンの、A-PAGEおよびMALDI-TOF法による分離および同定を示す図である。図Bは、穀粉用小麦(パンコムギ)の対照系統である品種BW208と、ベクターpGhp-ω/α/β/γで形質転換した同じ遺伝子型の穀粉用小麦の系統の種子の試料からのグリアジンのMALDI-TOF分析を示す。対照系統に相当するダイヤグラムにおいて、アルファ(α)、ベータ(β)、ガンマ(γ)およびオメガ(ω)グリアジンの種々の画分が示される。X軸は、所定のイオンの質量(m)とそれが含有するプロトン数(z)との比(m/z)を表す。
【図4】当該発明のポリヌクレオチドで形質転換した小麦品種BW2003の植物種子のグリアジンのA-PAGEによる分離および同定を示す図である。 穀粉用小麦(パンコムギ)の対照系統である品種BW208と、ベクターpGhp-ω/α/β/γで形質転換した同じ遺伝子型の穀粉用小麦の系統からのグリアジンのA-PAGEゲル分離。分離により得られたグリアジンの群を示す。
【図5】当該発明のポリヌクレオチドで形質転換した硬質小麦品種Don Pedroの植物からの種子のグリアジンのA-PAGE法による分離および同定を示す図である。 硬質小麦(マカロニコムギ)の対照系統である品種Don Pedroと、ベクターpGhp-ω/α/β/γで形質転換した同じ遺伝子型の硬質小麦の系統のグリアジンのA-PAGEゲル分離。分離により得られたグリアジンの群を示す。
【図6】当該発明のポリヌクレオチドで形質転換した品種BW208の植物からの種子のグリアジンのA-PAGE法による分離および同定を示す図である。 対照系統BW208およびベクターpDhp-ω/α/β/γで形質転換した同じ遺伝子型の系統(B382-4-1)の3つの種子のグリアジンのA-PAGEゲル分離。分離により得られたグリアジンの群を示す。このベクターに含まれるプロモーターは、D-ホルデインプロモーター(配列番号7)であることに注意されたい。
【図7】ベクターpDhp-ω/α/β/γで形質転換した穀粉用小麦(コムギ)の2つの系統のウェスタンブロット分析を示す図である。 A:遺伝子型BW208のI1、I2およびI3と表す系統B382-4-1の3つの穀粒のグリアジンをSDSゲル分離に供し、グルテン特異的モノクローナル抗体R5とハイブリッド形成させた。 B:遺伝子型BW2003のO2およびO3と表す系統B374-6-2の2つの穀粒のグリアジンをSDSゲル分離に供し、グルテン特異的モノクローナル抗体R5とハイブリッド形成させた。 Aにおいて左に示す数字は、AおよびBの両方についての分子量をkDaで示す。
【図8】ベクターpGhp-ω/α/β/γで形質転換した品種BW208の穀粉用小麦(コムギ)の2つの系統のウェスタンブロット分析を示す図である。 A1、A2およびA3と表す遺伝子導入系B375-3-1の3つの穀粒のグリアジンと、C1およびC2と表す遺伝子導入系B377-2-3の小麦の2つの穀粒のグリアジン(これらはともに遺伝子型BW208である)をSDSゲル分離に供し、グルテン特異的モノクローナル抗体R5とハイブリッド形成させた。 この図において左に示す数字は、分子量をkDaで示す。
【実施例】
【0064】
以下、当該発明のポリヌクレオチドの構築、当該発明のベクターで形質転換した3つの異なる品種の小麦植物の産生、ならびにA-PAGEおよびMALDI-TOF法を用いるグリアジン含量の分析について記載する、本発明者らにより行われたいくつかの試験により、当該発明を説明する。
【0065】
(実施例1)
ベクターpGhp-ω/α/β/γおよびpDhp-ω/α/β/γの構築
1.1α/β/γおよびωグリアジン配列の合成
小麦α/β/γおよびωグリアジンに属するGenebankに蓄積されたDNA配列を別々に整列させ、最大の程度の相同性を示す領域を同定した。これらのアラインメントに基づいて、我々は、α/β/γグリアジンの170bp配列と、ωグリアジンの別の191bp配列とを選択して、α/β/γ断片の増幅のためのプライマーAlpha_hp-F(配列番号8)およびAlpha_hp-R(配列番号9)と、ω断片の増幅のためのプライマーOmega_III-F(配列番号10)およびOmega_III-R(配列番号11)とを設計した(Table1(表1))。2つの断片についてのPCR条件は、以下のとおりであった:最終反応物25μl中に、未成熟穀粒から抽出したトータルRNA 50ngから合成したT・エスチバムBobwhite栽培変種のcDNA、1.5mMのMgCl2、0.2mMのdNTP、0.2μMの各プライマー、1×緩衝液、およびTth(サームス・サーモフィラス(Thermus thermophilus))対Pfu(パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus))が100:1の比率でのポリメラーゼ混合物(BIOTOOLS、Madrid、Spain)0.625ユニット。PCRサイクルの条件は、以下のとおりであった:GeneAmp PCRシステム9700サーモサイクラー(Applied Biosystems)での94℃、5分の最初の段階、35サイクルの94℃、30秒、55℃、30秒および72℃、30秒、ならびに72℃、4分の最後の伸長。各PCRの生成物をGFX PCR DNA精製キット(Amersham Biosciences、Amersham、UK)を用いて精製し、Secugen SL社により配列決定した。α/β断片およびω断片のオーバーラップを達成するために、ωグリアジン断片を再び、オーバーラッププライマー(オーバーラップOmega III R(配列番号12)と順行プライマー配列番号10)を用いて増幅し、α/βグリアジン断片を再び、別のオーバーラッププライマーであるオーバーラップAlpha F(配列番号13)をリバースプライマー配列番号9とともに用いて増幅し、このことにより、それぞれの断片に、他方の断片と相補的な12塩基対を付加した。後者の増幅により、我々は、ωグリアジン断片の3’末端とα/β/γグリアジンの断片の5’末端との間で互いに相補的な2つの断片を得た。PCR条件は、以前に記載したものと同じであった。これらの反応の生成物を1%アガロースゲルで分離し、各断片に相当するバンドをQUIAquickゲル抽出キット(QUIAGEN Inc.、Valencia、CA)を用いて精製した。最終のオーバーラップPCRを、10ngのα/β/γ精製オーバーラップ断片、10ngの精製ω断片、1.5mMのMgCl2、0.2mMのdNTP、0.2μMのプライマーalpha_hp-F、0.2μMのプライマーomega_III-R、1×緩衝液および0.625ユニットのTth/Pfuポリメラーゼの100:1混合物を50μlの最終反応物中で用いて行った。PCRサイクルの条件は、以下のとおりであった:GeneAmp PCRシステム9700サーモサイクラー(Applied Biosystems)での94℃、2分の最初の段階、35サイクルの94℃、30秒、57℃、30秒および72℃、30秒、ならびに72℃、4分の最後の伸長。これらのPCRの生成物を1%アガロースゲルで分離し、ω/α/β断片に相当するサイズ(361bp)を示すバンドを、QUIAquickゲル抽出キット(QUIAGEN Inc.、Valencia、CA)を用いて精製し、プラスミドTOPO(Invitrogen、Carlsbad、CA)にクローニングした。このプラスミドは、対象の遺伝子の組換えにより、attR1およびattR2部位を含む任意のGateway(登録商標)ベクターへの移動を可能にするattL1およびattL2部位を含む。
【0066】
1.2 形質転換ベクターpGhp-ω/α/β/γおよびpDhp-ω/α/β/γの取得。
形質転換ベクターを、ベクターpuc18(2616bp)を用いて合成した。形質転換ベクターpGhp-ω/α/β/γを含む種々の断片を、1つずつ、ベクターpuc18のマルチクローニング部位に導入した。断片Nost(272bp)は、ベクターpANDA-βから、酵素EcoRIを用いる制限により抽出し、puc18に導入して、puc18_Nostを得た。次に、ベクターpANDAの断片attRsense_GUS_attRantisense(4.4kb)を、酵素SaclおよびKpnlの組み合わせでの制限により抽出し、ベクターpuc18_Nostに導入して、puc18_attR_GUS_Nostを得た。この断片は、部位attR1およびattR2を、1kbの連結セグメント(gusリンカー)により分けられたセンスおよびアンチセンス配列とともに含有した。このgusリンカー配列を、我々の実験室にて以前にクローニングしたUbiイントロン断片(1019bp)で、酵素EcoRVでの制限により置換して、プラスミドpuc18_attR_Ubi_Nostを生成した。最後に、グリアジンプロモーター(885bp)を、酵素SphlおよびXholを用いる二重制限により導入して、プラスミドpuc18_Gli_attR_Ubi_Nostを生成した。
【0067】
D-ホルデイン遺伝子プロモーター(836bp)も、酵素SphlおよびXholを用いる二重制限により導入し、ベクターpuc18_D_attR_Ubi_Nostを得た。ベクターpGhp-ω/α/β/γとpDhp-ω/α/β/γとの違いは、前者が小麦γグリアジンのプロモーターを含有し、後者が小麦H-ホルデインのプロモーターを含有することである。
【0068】
次のステップは、ω/α/β断片を、プラスミドpuc18_Gli_attR_Ubi_Nostおよびpuc18_D_attR_Ubi_Nostに導入することであった。プラスミドTOPO+ω/α/βは、部位attL1およびattL2を含有し、プラスミドpuc18_Gli_attR_Ubi_NOStおよびpuc18_D_attR_Ubi_Nostは、部位attR1およびattR2を、イントロンUbiにより分けられたセンスおよびアンチセンス配列とともに含有した。このことにより、キットGateway(登録商標)LR Clonase(商標)酵素ミックス(Invitrogen、Carlsbad、CA)を製造業者の使用説明に従って用いるLR組換え反応を行うことができた。結果として、イントロンUbiにより分けられたセンスおよびアンチセンス配列を有するω/α/β/γ断片が、プラスミドpuc18_Gli_attR_Ubi_NOStおよびpuc18_D_attR_Ubi_Nostの構造に導入された。得られたベクターを、pGhp-ω/α/β/γおよびpDhp-ω/α/β/γと命名し(図2)、それらのその後の増加のために、コンピテント大腸菌細胞(DH5α)に形質転換により導入した。
【0069】
(実施例2)
遺伝子導入系小麦の取得。
遺伝子形質転換を、加圧ヘリウムを用いる加速粒子の系(PDS1000/He(商標)、BIORAD、Hercules、CA)を用いる遺伝子銃により行った。我々は、穀粉用小麦(コムギ)栽培変種Bobwhiteの2つの遺伝子型(BW208およびBW2003)と、硬質小麦(マカロニコムギ)の1つである栽培変種Don Pedroとを用いて、未成熟胚の胚盤を単離した。単離は、滅菌環境において、70%エタノール溶液に3分間、20%次亜塩素酸ナトリウム溶液に10分間浸漬し、滅菌蒸留H2Oで2回すすぐことにより予め滅菌した開花の12〜16日後に回収した未成熟小麦穀粒を用いて行った。遺伝子形質転換のために、我々は、直径0.6μmの金粒子を用い、金1mgあたり1.5pmolのベクターpGhp-ω/α/β/γまたはベクターpDhp-ω/α/β/γおよび0.5pmol/mgのベクターpAHC25(Christensenら、1996. Transgenic Research 5、213〜218頁)と混合した。各発射の条件は、以下のとおりであった:91.4kPa(27inHg)真空圧力、7.584MPa(1100PSI)発射圧、6cm発射距離、および発射あたり60μgの金およびプラスミドの混合物。
【0070】
bar選択遺伝子(ホスフィノトリシン耐性)とuidA遺伝子(β-グルクロニダーゼの合成)とを含むプラスミドpAHC25での同時形質転換により、4mg/lのホスフィノトリシン(PPT)を含む培地での形質転換組織の選択、およびJefferson(1987、Plant Mol Biol Rep 5:387〜405頁)により記載されるプロトコルに従うβ-グルクロニダーゼアッセイ(GUS)によるその後の遺伝子導入組織の同定が可能になった。培地、in vitro培養プロセスおよび植物の再生は、Barroら(Barroら、1998. Theoretical and Applied Genetics 97、684〜695頁)に従った。
【0071】
in vitro培養で再生された植物を土壌に配置し、次いで、本質的でかつ前のパラグラフに記載されるようにしてGUSアッセイに供した。GUSアッセイにおいて陽性の結果が得られた植物から、DNAを、DNAzol試薬(Invitrogen、Carlsbad、CA)を製造業者の使用説明に従って用いて抽出し、PCRを行って、成体植物のゲノム中のプラスミドpGhp-ω/α/β/γ、pDhp-ω/α/β/γおよびpAHC25の存在を確認した。PCR条件は、以下のとおりであった:幼葉から抽出したDNA 100ng、1.5mM MgCl2、0.2mM dNTP、0.2μMの各プライマー、1×緩衝液および0.625ユニットのポリメラーゼTth(BIOTOOLS、Madrid、Spain)。用いたプライマーは、プラスミドpGhp-ω/α/β/γについてprGliF(配列番号14)およびオーバーラップOmega_III_R(配列番号12)、プラスミドpDhp-ω/α/β/γについてprHorDF(配列番号15)およびオーバーラップOmega_III_R(配列番号12)、そしてpAHC25についてBAR_F(配列番号16)およびBAR_R(配列番号17)であった(Table3(表3))。PCRサイクルの条件は、以下のとおりであった:GeneAmp PCRシステム9700サーモサイクラー(Applied Biosystems)での94℃、5分の最初の段階、35サイクルの94℃、30秒、55℃、30秒および72℃、2秒、ならびに72℃、7分の最後の伸長。各PCRの生成物を1%アガロースゲルでの電気泳動により分離し、陽性の系統をその後の分析のために選択した。
【0072】
【表3】

【0073】
(実施例3)
グリアジンの抽出ならびにMALDI/TOFおよびA-PAGE分析。
陽性の系統の種子を乳鉢で破砕して、穀粉を得た。この後に、穀粉を1mlの0.5M NaCl溶液で15分間、室温(RT)にて撹拌機で洗浄し、13,000rpmにて10分間遠心分離した。上清を捨て、沈殿物を蒸留水で15分間RTにて、これもまた撹拌しながら洗浄した。この後に、試料を13,000rpmにて10分間遠心分離し、この後に上清を捨てた。グリアジンを沈殿物から、60%(v/v)エタノール水溶液を5:1の比率(μlエタノール:mg穀粉)で用いて抽出し、撹拌を45分間、RTにて行った。次いで、試料を13,000rpmで遠心分離し、グリアジンを含有する上清を新しいチューブに回収した。抽出物の画分は、MALDI-TOF質量分析法によるグリアジンの同定のために用い、別の画分を、酸性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(A-PAGE)により分離した。MALDI分析のために、我々は、5μlの抽出されたグリアジンを取り、これに、2μlの50mMオクチル-β-D-グルコピラノシド(ODGP)溶液およびマトリクス溶液として用いる0.1%(v/v)のトリフルオロ酢酸(TFA)含有30%(v/v)アセトニトリル水溶液中で飽和した25μlのシナピン酸を加えた。混合物をSpeed-Vac遠心分離機で15分間乾燥させ、残渣を6μlの0.1%TFA含有60%(v/v)エタノール水溶液に溶解した。混合物を、ステンレス鋼試料ホルダに入れ、5分間、RTにて乾燥させた。試料を、MALDI-TOF Voyager DE-PRO(PE Biosystems)中で、標準的な装置構成で分析した。スペクトルを25kVの電圧加速にて、93%の電圧グリッドおよび700ナノ秒の遅延でのリニアポジティブモードで記録した。200のレーザスペクトルを累積して、グリアジンプロファイルを構築した。
【0074】
グリアジンを、Khanら(1985. Cereal Chemistry 62: 310〜313頁)に記載される標準的なプロトコルに従うA-PAGEによるゲル分離に供した。
【0075】
食物中のグルテンの検出についての国際食品規格(Codex Alimentarius)により認められた公的な方法であるので、SDS-PAGEによるゲル分離に供したグリアジンのハイブリッド形成(ウェスタンブロット)を、抗体R5(Valdezら、2003、Eur. J. Gastroenterol. Hepatol. 15:465〜474頁)を用いて行った。
【0076】
A-PAGEおよびMALDI-TOFゲルアッセイは、このハイブリッド配列の組み合わせが、小麦グリアジンのサイレンシングに非常に効果的であることを示した。
【0077】
図3は、当該発明のポリヌクレオチドで形質転換した小麦栽培変種BW208の植物種子のグリアジンの、A-PAGEおよびMALDI-TOF法による分離および同定を示す。図3Aにおいて、ベクターpGhp-ω/α/β/γで形質転換した穀粉用小麦の系統(B377-2-3)(それが由来する小麦栽培変種BW208(パンコムギ)と比較して)の種子に由来するアルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンのそれぞれに相当するバンドの減衰が観察される。図3Bにおいて、アルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンに相当するスペクトル発現プロファイルが観察され、各ピークは異なるタンパク質に相当する。ダイヤグラムにおいて、それぞれの型のグリアジンに相当するピークを示す。対照植物に相当する発現プロファイルおよび当該発明のポリヌクレオチドで形質転換した植物のものにおいて観察できるように、対照植物のプロファイルにおいて観察される各グリアジンに相当するピークの抑制は非常に明らかであり、よって、この栽培変種に属する小麦の穀粒に存在するグリアジンの転写後サイレンシングにおける本発明のポリヌクレオチドおよび方法の効力が示される。
【0078】
図4および5は、それぞれ当該発明のポリヌクレオチドで形質転換した小麦栽培変種BW2003(パンコムギ)および品種Don Pedro(マカロニコムギ)の植物種子のグリアジンのA-PAGE法による分離および同定を示す。両方の場合において、それぞれの対照と比較した、ベクターpGhp-ω/α/β/γで形質転換した小麦の系統(B377-2-3)の種子に由来するアルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンのそれぞれに相当するバンドの減衰が観察できる。
【0079】
図6は、対照系統BW208と、ベクターpDhp-ω/α/β/γで形質転換した同じ遺伝子型の系統(B382-4-1)の3つの種子のA-PAGEグリアジンゲル分離を示す。このベクターに含まれるプロモーターは、遺伝子D-ホルデインのプロモーターである(配列番号7)。遺伝子導入系の種子における、小麦のアルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンのそれぞれに相当するバンドの減衰を見ることができる。
【0080】
図7は、配列番号7の配列によりコードされるプロモーターを含むベクターpDhp-ω/α/β/γで形質転換した穀粉用小麦(パンコムギ)の2つの系統のウェスタンブロット分析を示す。
【0081】
ゲルAにおいて、遺伝子導入系B382-4-1の3つの小麦穀粒(I1、I2およびI3)のグリアジンのSDS-PAGEゲル分離を見ることができる。ゲルBにおいて、遺伝子導入系B374-6-2の2つの小麦穀粒(O2およびO3)のグリアジンの分離を見ることができる。この後に、両方のゲルについて、セリアック病患者にとって潜在的に毒性であるペプチドを認識するモノクローナル抗体R5を用いるハイブリッド形成を行った。モノクローナル抗体R5は、食物中のグルテンの検出についての国際食品規格により公式に認められた方法である。
【0082】
図7Aにおいて、当該発明のペプチドを発現するBW208小麦系統における認識可能なレベルのグリアジンが観察されず、このことは、抗体R5を用いるこのタイプの検出について予測される。図7Bにおいて、この別の遺伝子導入小麦品種BW2003におけるグリアジンの著しい低減を見ることができる。
【0083】
図8において、SDS-PAGEゲル上で、R5グルテン特異的抗体とハイブリッド形成させた場合のA1、A2、A3と表す遺伝子導入系B375-3-1の3つの穀粒のグリアジンと、遺伝子導入系B377-2-3の2つの小麦穀粒のグリアジン(ともに遺伝子型BW208)の減衰が見られる。遺伝子導入系は、γグリアジンのプロモーターを含み、すなわち、これらは、ベクターpGhp-ω/α/β/γで形質転換される。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペーサー配列により分けられた2つの配列対(a1-a2)および(b2-b1)を含む配列と少なくとも90%同一であるポリヌクレオチドであって、
a.配列a1、a2、b1およびb2が、互いに異なり、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4から、以下の形式で選択され:
b. a1が配列番号1または配列番号4である場合、b1は配列番号4または配列番号1であり、a2は配列番号2または配列番号3であり、
c. a1が配列番号2または配列番号3である場合、b1は配列番号3または配列番号2であり、a2は配列番号1または配列番号4である、
ポリヌクレオチド。
【請求項2】
スペーサー配列により分けられた2つの配列対(a1-a2)および(b2-b1)を含むポリヌクレオチドであって、配列a1、a2、b1およびb2が、請求項1のパラグラフ(a)〜(c)に規定されているポリヌクレオチド。
【請求項3】
a1が配列番号1であり、a2が配列番号2であり、b2が配列番号3であり、b1が配列番号4である、請求項1または2のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
スペーサー配列が、配列番号5である、請求項1から3のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
その5’末端に機能的に連結された遺伝子発現調節配列も含む、請求項1から4のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
遺伝子発現調節配列が、配列番号6および/または配列番号7である、請求項1から5のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のポリヌクレオチドによりコードされ、hpRNAを形成できるRNA配列であって、a1-a2対によりコードされる配列が、b2-b1対によりコードされる配列と完全にハイブリッド形成するRNA配列。
【請求項8】
請求項7に記載のhpRNAの配列から生じるsiRNA。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の発現ベクターで形質導入された単離細胞。
【請求項11】
請求項10に記載の形質導入細胞を含む遺伝子改変植物。
【請求項12】
トリチカム属に属する、請求項11に記載の植物。
【請求項13】
トリチカム・エスチバム種またはトリチカム・ツルギダム種に属する、請求項12に記載の植物。
【請求項14】
前記植物が、Bobwhite栽培変種またはDon Pedro栽培変種である、請求項13に記載の植物。
【請求項15】
請求項11から14のいずれかに記載の植物に由来する種子。
【請求項16】
請求項11から14に記載の植物のいずれかに由来する花粉、栄養繁殖体、子孫または植物の部分。
【請求項17】
トリチカム属種のアルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンのサイレンシングのための請求項1から6のいずれかに記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項18】
トリチカム属種のアルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンのサイレンシングのための請求項9に記載のベクターの使用。
【請求項19】
トリチカム属種のアルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンのサイレンシングのための請求項10に記載の細胞の使用。
【請求項20】
食物組成物を調製するための請求項15に記載の種子の使用。
【請求項21】
機能性食品、ビタミンサプリメントまたは栄養サプリメントを調製するための請求項20に記載の組成物の使用。
【請求項22】
請求項11から14のいずれかに記載の遺伝子改変植物を得るための方法であって、以下の:
a.植物の部分を選択するステップと、
b.パラグラフ(a)の植物の部分の細胞に、請求項9に記載のベクターで形質導入するステップと、
c.請求項1から6のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む、パラグラフ(b)の形質導入細胞を選択するステップと、
d.パラグラフ(c)で選択される細胞に由来する少なくとも1つの植物を再生させるステップと、
e.ポリヌクレオチドがhpRNAに転写される、パラグラフ(d)により再生させた1または複数の植物を選択するステップと、
f.その種子においてアルファ、ベータ、ガンマおよびオメガグリアジンのサイレンシングを示す、パラグラフ(e)により得られた1または複数の植物を選択するステップと
を含む方法。

【図5】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−516680(P2012−516680A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546884(P2011−546884)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070045
【国際公開番号】WO2010/089437
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(502408148)
【Fターム(参考)】