説明

小麦粉含有生地の製造法

【課題】本発明の目的は、簡単な製造法で折りパイの様な層を形成しているにも拘わらず崩れ難く保形性があって口どけに優れたパイ等の小麦粉含有膨化食品を容易に製造することができる小麦粉含有生地の製造法を提供する事にある。
【解決手段】本発明は、小麦粉に1個当たりの容積が大きい可塑性油脂組成物を添加攪拌混合することを特徴とする小麦粉含有生地の製造法であり、可塑性油脂組成物の容積が15〜1500ccであり、当該小麦粉含有生地を焼成する小麦粉含有膨化食品の製造法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイ生地等の小麦粉含有生地の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、小麦粉含有膨化食品のひとつであるパイに関しては、大きく分けて「練りパイ」、「折りパイ」そして、「練り折りパイ」がある。「練りパイ」は、小麦粉に油脂組成物を目視できなくなる程度小さくなるまで練り込んだ後、水分を加え油脂組成物を小麦粉ドウ中に細かく分散した生地を作成し、その後、展延、成形して焼成する。一方「折りパイ」は、あらかじめシート状に加工された油脂組成物を小麦粉ドウにサンド後展延し、折り込みを行いパイに仕上げる。「練り折りパイ」は、小麦粉に油脂組成物を目視できる程度の小さな小片状に練りこんだ後水を加え、油脂組成物を小麦粉ドウ中に点在分散した生地を作成しその後折り込みを行いパイに仕上げる。「練りパイ」は製造工程が簡便であるが、折りパイの様に層が出来ず、多数の細かい穴が開いた組織となるため、崩れ難く保形性はあるがビスケット状で硬い食感となる。又、口中での唾液との混ざりがよく口どけ、喉越しがよい。焼成品の練りパイの組織の断面の模式図を「図1」に示した。
又、「折りパイ」は、通常100層前後折りこむため製造工程が煩雑であるが焼成品はきれいな均一な層状となりボリュームが出て軽い食感となる。ただし、一枚一枚の層が大きく剥がれやすいため口中でもそもそして口どけが悪く、喉越し感も悪い。又、表皮部分が剥がれやすく、保形性が弱いため、流通中や食するときに崩れやすく商品的価値を損なう場面が多かった。焼成品の折りパイの組織の断面の模式図を「図2」に示した。
そして、「練り折りパイ」は、折りパイの様にきれいな均一な層状ではなく細かい層が錯綜した組織となる。ボリュームは折りパイ程でないが、層が錯綜しているため噛むとサクッとして細かく砕けホグレ感がよい。又、口中での唾液との混ざりがよいため口溶け、喉越しがよい。又、表皮部も折りパイ程剥がれ難く、保形性がよいため流通中や食するときパラパラ崩れ難く商品的価値を損なう場面が少なかった。焼成品の練り折りパイの組織の断面の模式図を「図3」に示した。
また、これら「練りパイ」、「折りパイ」及び「練り折りパイ」について、生地の折り方とそれに伴う現場作業の煩雑さ、現場の占有面積について概略を表1に纏めた。
【表1】

【0003】
「練りパイ」、「折りパイ」及び「練り折りパイ」を製造するに際して、今までに数多くの提案がなされている。
特許文献1は、乳化剤を1〜30重量%含有する食用油脂組成物1〜30重量部、小麦粉100重量部及び水40〜60重量部の割合で混捏し、次いでロールイン用油脂の折り込みを行った後、成型して焼成することを特徴とする折りパイの製造方法であり、これは乳化剤を1〜30重量%含有する食用油脂組成物とあるように、食用油脂組成物の改良を図ったものである。
特許文献2は、小麦粉主体のドウ生地で油脂を包み込み、圧延ー折り畳み操作を行って得られる積層生地を、2種以上重ね合わせてなる、複合積層生地を提案するものであり、各種積層生地の組み合わせであって折り畳み作業を何回も行うため操作が煩雑であった。
特許文献3は、油脂又はそのエマルションを加圧晶析して得られた油脂組成物を含有することを特徴とするチップ状油脂加工食品が提案されているが、加圧晶析とあるようにこれも油脂組成物の改良を図ったものである。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−192342号公報
【特許文献2】特開平3−266932号公報
【特許文献3】特開2001−252014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡単な製造法で折りパイの様な層を形成しているにも拘わらず崩れ難く保形性があって口どけに優れたパイ等の小麦粉含有膨化食品を容易に製造することができる小麦粉含有生地の製造法を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは目的実現のため鋭意研究を行った結果、従来どちらかと言えば、油脂組成物の改良によって小麦粉含有膨化食品に代表されるパイ等の改善を図ってきたが、逆転の発想で小麦粉含有膨化食品の出来栄えから可塑性油脂組成物の状態及び小麦粉ドウの状態を把握しながら、数多くの試行錯誤を繰り返し検討した結果、従来よりも容積の大きい可塑性油脂組成物を添加攪拌混合することにより、意外にも本発明の目的を達成するに至った。
即ち本発明の第1は、小麦粉に1個当たりの容積が大きい可塑性油脂組成物を添加攪拌混合することを特徴とする小麦粉含有生地の製造法である。第2は、可塑性油脂組成物の容積が15〜1500ccである、第1記載の小麦粉含有生地の製造法である。第3は、可塑性油脂組成物が澱粉類を含む、第1又は第2記載の小麦粉含有生地の製造法である。第4は、第1〜第3の何れか1に記載の小麦粉含有生地を焼成する小麦粉含有膨化食品の製造法である。
【発明の効果】
【0007】
ラインでの生産においては、機械設備が大型となるため、せん断力が大きくかかり可塑性油脂組成物の容積が小さいと練りこまれ過ぎて、本願発明が求める折りパイの様な層を形成しているにも拘わらず崩れ難く保形性があって口どけに優れたパイ等の小麦粉含有膨化食品が得難くなる。従来よりも容積の大きい可塑性油脂組成物を添加攪拌混合することにより、薄片状の油脂組成物を小麦粉ドウ中に残すことが出来、新規な食感と保形性を有する小麦粉含有膨化食品を得ることが出来る。
又、従来の折りパイ製造ラインでは、煩雑なラインを設置するにあたって、生産現場の広い面積を占有する必要があったが、占有面積の少なくてすむ従来のビスケット、クラッカーラインを利用して最小限の折り数で食感、保形性に優れたパイを工業的に大量に生産可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の小麦粉含有生地の製造法としては、小麦粉に1個当たりの容積が大きい可塑性油脂組成物を添加攪拌混合することが必要であって、そうすることによって小麦粉含有生地に薄片状の油脂組成物を分散させることが出来る。薄片状とは長さ5〜50mm、好ましくは、10〜40mm、更に好ましくは、20〜30mmであり、厚さ2〜15mm、好ましくは、4〜10mm、更に好ましくは、5〜8mmである。より均一に近い状態で薄片状の油脂組成物が分散された生地を得るためには、1個当たりの容積が15〜1500ccであり、且つ、前後、左右、上下の長さをX、Y、Zとし、各々最長のものをa、最短のものをbとした場合、a/bの値が3以下のものが好ましい。小麦粉と本願発明の1個当たりの容積が大きい可塑性油脂組成物を攪拌混合し可塑性油脂組成物が薄片状に残る程度に生地中に分散されているのが好ましく、その後、そのまま展延するか、10〜40層の最小限の折り込みを行うことによって簡単な操作で本発明の小麦粉含有生地を得ることができる。
【0009】
容積の大きい可塑性油脂組成物とは、概ね容積としては、15〜1500ccが好ましく、より好ましくは30〜650ccであり、更に好ましくは60〜200ccである。本発明の容積の大きい可塑性油脂組成物は、形状として、立方状、直方状、球状、円柱状のものが好ましい。そして、前後、左右、上下の長さをX、Y、Zとし、各々最長のものをa、最短のものをbとした場合、a/bの値が3以下が好ましく、より好ましくは2.5以下であり、更に好ましくは、2以下である。可塑性油脂組成物の容積が小さすぎると小麦粉に攪拌混合し、水分を加えて小麦粉ドウを形成する際に練り込まれ過ぎて油脂の粒が残らないため、焼成品は層状になりにくく、食感が硬く口中でのホグレ感も悪くなる傾向がある。容積が大きすぎると小麦粉に攪拌混合し、水分を加えて小麦粉ドウを形成する際に油脂が小さな薄片状になりにくく、ミキシング時間が長くかかり作業効率が悪いものとなる。又、ミキシング中に一部は、練り込まれ過ぎ、一部は大きく残りすぎるといった油脂片の大きなものと小さなものといったバラツキが起こりやすく、ある程度の均一な大きさの油脂片をドウ中に分散させ難くなる。そしてこのような生地を焼成すると層は均一性に欠け、一定の浮きが得難くなる。
【0010】
本発明の小麦粉としては、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉などが例示でき、これらの単独、又は2種以上を混合使用することができる。
【0011】
本発明の可塑性油脂組成物に使用する油脂原料としては、例えば、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、上記油脂類の単独又は混合油或いはそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂を使用することが出来る。
可塑性油脂組成物は、油脂そのものであってもいいし、油脂に窒素ガスなどの不活性ガスを入れたショートニングや油相と水相からなる油中水型乳化物であっても良い。可塑性油脂組成物を構成する油脂の最終的な上昇融点が15〜60℃、より好ましくは20〜50℃が好ましい。この場合、低融点、中融点、高融点の油脂を適宜調合し調整するのが好ましい。
【0012】
本発明の可塑性油脂組成物の製造法については特に限定されないが、常法通り融解した油相に、必要に応じて水相を加え混合攪拌し、パーフェクター、ボテーター、コンビネーターなどで急冷捏和することにより製造することができる。油相のみの場合、作業性を改善するために窒素ガスなどの不活性ガスを入れて製造するのが一般的である。油相は油脂単独でもよいし、必要に応じて色素、抗酸化剤、香料等の油溶性成分を添加、溶解/分散させ調製することができる。水相は水又は温水に水溶性の乳成分、必要に応じて食塩、糖類、無機塩類等を添加、溶解/分散させ調製することができる。
【0013】
本発明の可塑性油脂組成物は、油脂そのものであってもいいし、油脂に窒素ガスなどの不活性ガスを入れたショートニングや油相と水相からなる油中水型乳化物であっても良いが、好ましくは油脂中又は水相に澱粉類が分散及び/又は溶解しているのが好ましい。
澱粉類としては、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉等の天然澱粉をはじめ、アルファー化澱粉、エーテル架橋澱粉、リン酸架橋澱粉等の加工澱粉が例示でき、可塑性油脂組成物製造時の加熱時に水相粘度増加が少ない点においてアルファー化澱粉が好ましい。
澱粉類の含有量は可塑性油脂組成物全量に対し、好ましくは0.5〜5重量%含有される。少ないと食感改良効果が乏しく、多すぎると水相粘度が上がり過ぎ製造困難な状況を呈する。
1個当たりの容積が大きい可塑性油脂組成物に澱粉類を含有させることによって、小麦粉と攪拌混合した際に薄片状の油脂組成物が得られ、澱粉含有油脂組成物であるが故に生地層間に澱粉類がある程度均一に分散させることができ、小麦粉含有生地を焼成した際、この澱粉類が各層の表面に澱粉の皮膜を形成し、独特の食感を生じさせることができるので好ましい。
【0014】
本発明の小麦粉含有膨化食品は、上記で得られた小麦粉含有生地を公知の方法で焼成し得ることができるが、一般的には焼成するオーブンの温度は100〜220℃の範囲であることが多い。
【実施例】
【0015】
以下に本発明の実施例を示し本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は、いずれも重量基準を意味する。
【0016】
実施例1
(配合)
強力粉 70(部)
薄力粉 30(部)
食塩 1(部)
脱脂粉乳 2(部)
*容積の大きい可塑性油脂組成物
50(部) (冷蔵庫から出してすぐ使用、8℃)
冷水 44(部) (2〜3℃)

*容積の大きい可塑性油脂組成物(商品名、ファットスプレッドF(アルファー化澱粉2.0重量%含有)、 不二製油(株)製)を40×40×40mm(容積64cc、a/b=1)にカットして使用。

(パイ生地の調製及び焼成)
(1)室温23℃で水以外の原料を30コートミキサーにいれ、フックを使用し中速(205rpm)にて7分ミキシングし、混合生地200gを採取し可塑性油脂組成物の状態を観察した。可塑性油脂組成物の状態は長いもので20mm、厚さ8mm、短いもので長さ5mm、厚さ2mmの薄片状であり、全体として見た場合多くは、長さ15mm、厚さ4mmのものであった。このときの混合物品温は19.5℃であった。
(2)次に冷水を入れ低速(138rpm)にて1分混合する。ザックリ繋がった状態の小麦粉含有生地を調製する。
生地捏ね上げ生地温度 15.2℃、ここで−7〜ー8℃で1時間のリタードをとる。
(3)生地温度5℃にて3つ折り1回後続けて4つ折り1回折りこむ。ここで−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて更に3つ折り1回折り込み36層の生地を得た。次に−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて2mm圧に展延後、40×40mmでカットし、ピケする。
(4)上火180℃、下火160℃、12分更に100℃、10分焼成する。
焼成品は通常の折りパイに比べ噛み出しが硬く、口中でのほぐれ感のよい、カリッとした新規食感のパイとなった。
又、今までにないオイリー感が少なく、さっぱりした味わいのパイに仕上がった。又、パラパラ剥がれ崩れることが少なく、保形性がしっかりしていた。これらの結果を表2に纏めた。
【0017】
比較例1(通常の練りパイ)
(配合)
強力粉 70(部)
薄力粉 30(部)
食塩 1(部)
脱脂粉乳 2(部)
*可塑性油脂組成物(チップ状マーガリン)
50(部) (冷蔵庫から出してすぐ使用、7℃)
冷水 44(部) (2〜3℃)

*可塑性油脂組成物(チップ状マーガリン)、商品名、アートピアペレッティー、不二製油(株)製(直径8mm,長さ50mm、体積2.5cc、a/b=6.25を使用)

(パイ生地の調製及び焼成)
(1)室温23℃で水以外の原料を30コートミキサーにいれ、フックを使用し中速(205rpm)にて4分ミキシングする。可塑性油脂組成物は目視出来ない程度に完全に練り込まれた状態になる。品温20℃であった。
(2)次に冷水を入れ低速(138rpm)にて1分混合する。ザックリ繋がった状態の小麦粉含有生地を調製する。
生地捏ね上げ生地温度 16℃。ここで−7〜ー8℃で1時間リタードをとる。
(3)生地温度5℃にて2mm圧に展延後、40×40mmでカットし、ピケする。
(4)上火180℃、下火160℃、12分更に100℃、10分焼成する。

焼成品は全く層が出来ておらず、ビスッケット状の穴が内相に開いている状態で食感も硬くて重くビスケット的な食感であった。に比べて目が詰まって硬く、パイの層がでていない。これらの結果を表2に纏めた。
【0018】
比較例2(通常の折りパイ)
(配合)
強力粉 70(部)
薄力粉 30(部)
食塩 1(部)
脱脂粉乳 2(部)
ショートニング 7(部)
水 51(部)

(パイ生地の調製及び焼成)
原材料をオールインミックスにて中速[205rpm]で約6分混合する。捏ね上げ生地温度23〜24℃、リタードタイム(5℃にて)15〜20時間取った後、10mm厚シート状ロールインマーガリン(商品名、アートピア200、不二製油(株)製)を生地100部に対して33部ロールインし、3つ折りを1回、連続で4つ折りを1回行う。この生地を−7〜ー8℃で30分間休ませる。生地温度5℃にて更に、3つ折りを2回行い108層の生地を得た。この生地を−7〜ー8℃で30分間休ませる。生地温度5℃にて2mm厚まで展延し40mm×40mmでカット、ピケ後、展板上に乗せ、上火180℃、下火160℃、12分更に100℃、10分焼成する。焼成品はボリュームはでるが、一枚一枚の層が大きく剥がれやすいため口中でもそもそして口溶け悪く、喉越し感も悪い。又、表皮部分が剥がれやすく、パラパラ大きく崩れ易く保形性の乏しいパイであった。これらの結果を表2に纏めた。
【0019】
比較例3(通常の練り折りパイ)
(配合)
強力粉 70(部)
薄力粉 30(部)
食塩 1(部)
脱脂粉乳 2(部)
*可塑性油脂組成物(チップ状マーガリン)
50(部) (冷蔵庫から出してすぐ使用、7℃)
冷水 44(部) (2〜3℃)

*可塑性油脂組成物(チップ状マーガリン)、商品名、アートピアペレッティー、不二製油(株)製(直径8mm,長さ50mm、体積2.5cc、a/b=6.25を使用)

(パイ生地の調製及び焼成)
(1)室温23℃で水以外の原料を30コートミキサーにいれ、フックを使用し中速(205rpm)にて2分ミキシングする。可塑性油脂組成物が均一に生地に分散出来る最低限度のミキシングで止めても目視できる程度2〜3mmnの粒がやっと残る程度まで練り込まれた状態になる。このときの混合物品温は17℃であった。
(2)次に冷水を入れ低速[138rpm]にて1分混合する。ザックリ繋がった状態の小麦粉含有生地を調製する。
生地捏ね上げ生地温度 14℃。ここで−7〜ー8℃で1時間リタードをとる。
(3)生地温度5℃にて3つ折り1回後続けて4つ折り1回折りこむ。ここで−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて更に3つ折り1回折りこ込み36層の生地を得た。。ここで−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて2mm圧に展延後、40×40mmでカットし、ピケする。
(4)上火180℃、下火160℃、12分更に100℃、10分焼成する。

焼成品は(実施例1)に比べて目が詰まって硬く、パイの層がでていない。
チップ状の可塑性油脂組成物の場合小さすぎて、生地に練りこまれやすい。薄片状に残すのは困難であった。これらの結果を表2に纏めた。
【0020】
実施例1、比較例1、比較例2及び比較例3の結果を表2に纏めた。
【表2】


【0021】
実施例2
(配合)
強力粉 70(部)
薄力粉 30(部)
食塩 1(部)
脱脂粉乳 2(部)
*容積の大きい可塑性油脂組成物
50(部) (冷蔵庫から出してすぐ使用、8℃)
冷水 44(部) (2〜3℃)

*容積の大きい可塑性油脂組成物(商品名、アートピア200(澱粉を含有しない)、 不二製油(株)製)を40×40×40mm(容積64cc、a/b=1)にカットして使用。

(パイ生地の調製及び焼成)
(1)室温23℃で水以外の原料を30コートミキサーにいれ、フックを使用し中速(205rpm)にて7分ミキシングし、混合生地200gを採取し可塑性油脂組成物の状態を観察した。可塑性油脂組成物の状態は長いもので10mm、厚さ6mm、短いもので長さ3mm、厚さ1mmの薄片状であり、全体として見た場合、多くは、長さ5mm、厚さ3mmのものであった。このときの混合物品温は19.0℃であった。
(2)次に冷水を入れ低速(138rpm)にて1分混合する。ザックリ繋がった状態の小麦粉含有生地を調製する。
生地捏ね上げ生地温度 15.2℃、ここで−7〜ー8℃で1時間のリタードをとる。
(3)生地温度5℃にて3つ折り1回後続けて4つ折り1回折りこむ。ここで−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて更に3つ折り1回折り込み36層の生地を得た。次に−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて2mm圧に展延後、40×40mmでカットし、ピケする。
(4)上火180℃、下火160℃、12分更に100℃、10分焼成する。
焼成品は実施例1のアルファー化澱粉入りの可塑性油脂組成物を使用したときと同様に折りパイ的な層が出てしかも崩れ難い保形性を有していたが、実施例1のカリッとした食感ではなく、サクッとした食感を有し、オイリー感はあった。
【0022】
実施例3
(配合)
強力粉 70(部)
薄力粉 30(部)
食塩 1(部)
脱脂粉乳 2(部)
*容積の大きい可塑性油脂組成物
50(部) (冷蔵庫から出してすぐ使用、8℃)
冷水 44(部) (2〜3℃)

*容積の大きい可塑性油脂組成物(商品名、ファットスプレッドF(アルファー化澱粉2.0重量%含有)、 不二製油(株)製)を40×40×80mm(容積128cc、a/b=2)にカットして使用。

(パイ生地の調製及び焼成)
(1)室温23℃で水以外の原料を30コートミキサーにいれ、フックを使用し中速(205rpm)にて10分ミキシングし、混合生地200gを採取し可塑性油脂組成物の状態を観察した。可塑性油脂組成物の状態は長いもので25mm、厚さ9mm、短いもので長さ7mm、厚さ2mmの薄片状であり、全体として見た場合、多くは、長さ18mm、厚さ5mmのものであった。このときの混合物品温は19.5℃であった。
(2)次に冷水を入れ低速(138rpm)にて1分混合する。ザックリ繋がった状態の小麦粉含有生地を調製する。
生地捏ね上げ生地温度 15.8℃、ここで−7〜ー8℃で1時間のリタードをとる。
(3)生地温度5℃にて3つ折り1回後続けて4つ折り1回折りこむ。ここで−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて更に3つ折り1回折り込み36層の生地を得た。次に−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて2mm圧に展延後、40×4mmでカットし、ピケする。
(4)上火180℃、下火160℃、12分更に100℃、10分焼成する。
焼成品は通常の折りパイに比べ噛み出しが硬く、口中でのほぐれ感のよい、カリッとした新規食感のパイとなった。又、今までにないオイリー感が少なく、さっぱりした味わいのパイに仕上がった。又、パラパラ剥がれ崩れることが少なく、保形性がしっかりしていた。
【0023】
実施例4
(配合)
強力粉 70(部)
薄力粉 30(部)
食塩 1(部)
脱脂粉乳 2(部)
*容積の大きい可塑性油脂組成物
50(部) (冷蔵庫から出してすぐ使用、8℃)
冷水 44(部) (2〜3℃)

*容積の大きい可塑性油脂組成物(商品名、ファットスプレッドF(アルファー化澱粉2.0重量%含有)、 不二製油(株)製)を40×40×100mm(容積160cc、a/b=2.5)にカットして使用。

(パイ生地の調製及び焼成)
(1)室温23℃で水以外の原料を30コートミキサーにいれ、フックを使用し中速(205rpm)にて11分ミキシングし、混合生地200gを採取し可塑性油脂組成物の状態を観察した。可塑性油脂組成物の状態は長いもので30mm、厚さ9mm、短いもので長さ10mm、厚さ3mmの薄片状であり、全体として見た場合、多くは、長さ21mm、厚さ5mmのものであった。このときの混合物品温は20.5℃であった。
(2)次に冷水を入れ低速(138rpm)にて1分混合する。ザックリ繋がった状態の小麦粉含有生地を調製する。
生地捏ね上げ生地温度 16.5℃、ここで−7〜ー8℃で1時間のリタードをとる。
(3)生地温度5℃にて3つ折り1回後続けて4つ折り1回折りこむ。ここで−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて更に3つ折り1回折り込み36層の生地を得た。次に−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて2mm圧に展延後、40×40mmでカットし、ピケする。
(4)上火180℃、下火160℃、12分更に100℃、10分焼成する。
焼成品は通常の折りパイに比べ噛み出しが硬く、口中でのほぐれ感のよい、カリッとした新規食感のパイとなった。又、今までにないオイリー感が少なく、さっぱりした味わいのパイに仕上がった。又、パラパラ剥がれ崩れることが少なく、保形性がしっかりしていた。
【0024】
実施例5
(配合)
強力粉 70(部)
薄力粉 30(部)
食塩 1(部)
脱脂粉乳 2(部)
*容積の大きい可塑性油脂組成物
50(部) (冷蔵庫から出してすぐ使用、8℃)
冷水 44(部) (2〜3℃)

*容積の大きい可塑性油脂組成物(商品名、ファットスプレッドF(アルファー化澱粉2.0重量%含有)、 不二製油(株)製)を30×30×30mm(容積27cc、a/b=1)にカットして使用。

(パイ生地の調製及び焼成)
(1)室温23℃で水以外の原料を30コートミキサーにいれ、フックを使用し中速(205rpm)にて6分ミキシングし、混合生地200gを採取し可塑性油脂組成物の状態を観察した。可塑性油脂組成物の状態は長いもので10mm、厚さ5mm、短いもので長さ6mm、厚さ1mmの薄片状であり、全体として見た場合、多くは、長さ8mm、厚さ3mmのものであった。このときの混合物品温は18.6℃であった。
(2)次に冷水を入れ低速(138rpm)にて1分混合する。ザックリ繋がった状態の小麦粉含有生地を調製する。
生地捏ね上げ生地温度 14.8℃、ここで−7〜ー8℃で1時間のリタードをとる。
(3)生地温度5℃にて3つ折り1回後続けて4つ折り1回折りこむ。ここで−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて更に3つ折り1回折り込み36層の生地を得た。次に−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて2mm圧に展延後、40×40mmでカットし、ピケする。
(4)上火180℃、下火160℃、12分更に100℃、10分焼成する。
焼成品は通常の折りパイに比べ噛み出しが硬く、口中でのほぐれ感のよい、カリッとした新規食感のパイとなった。又、今までにないオイリー感が少なく、さっぱりした味わいのパイに仕上がった。又、パラパラ剥がれ崩れることが少なく、保形性がしっかりしていた。
【0025】
実施例6
(配合)
強力粉 70(部)
薄力粉 30(部)
食塩 1(部)
脱脂粉乳 2(部)
*容積の大きい可塑性油脂組成物
50(部) (冷蔵庫から出してすぐ使用、8℃)
冷水 44(部) (2〜3℃)

*容積の大きい可塑性油脂組成物(商品名、ファットスプレッドF(アルファー化澱粉2.0重量%含有)、 不二製油(株)製)を110×110×110mm(容積1331cc、a/b=1)にカットして使用。

(パイ生地の調製及び焼成)
(1)室温23℃で水以外の原料を30コートミキサーにいれ、フックを使用し中速(205rpm)にて14分ミキシングし、混合生地200gを採取し可塑性油脂組成物の状態を観察した。可塑性油脂組成物の状態は長いもので35mm、厚さ8mm、短いもので長さ10mm、厚さ3mmの薄片状であり、全体として見た場合、多くは、長さ20mm、厚さ6mmのものであった。このときの混合物品温は20.5℃であった。
(2)次に冷水を入れ低速(138rpm)にて1分混合する。ザックリ繋がった状態の小麦粉含有生地を調製する。
生地捏ね上げ生地温度 17.6℃、ここで−7〜ー8℃で1時間のリタードをとる。
(3)生地温度5℃にて3つ折り1回後続けて4つ折り1回折りこむ。ここで−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて更に3つ折り1回折り込み36層の生地を得た。次に−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて2mm圧に展延後、40×40mmでカットし、ピケする。
(4)上火180℃、下火160℃、12分更に100℃、10分焼成する。
焼成品は通常の折りパイに比べ噛み出しが硬く、口中でのほぐれ感のよい、カリッとした新規食感のパイとなった。又、今までにないオイリー感が少なく、さっぱりした味わいのパイに仕上がった。又、パラパラ剥がれ崩れることが少なく、保形性がしっかりしていた。
【0026】
比較例4
(配合)
強力粉 70(部)
薄力粉 30(部)
食塩 1(部)
脱脂粉乳 2(部)
*容積の大きい可塑性油脂組成物
50(部) (冷蔵庫から出してすぐ使用、8℃)
冷水 44(部) (2〜3℃)

*容積の大きい可塑性油脂組成物(商品名、ファットスプレッドF(アルファー化澱粉2.0重量%含有)、 不二製油(株)製)を10×10×50mm(容積5cc、a/b=5)にカットして使用。

(パイ生地の調製及び焼成)
(1)室温23℃で水以外の原料を30コートミキサーにいれ、フックを使用し中速(205rpm)にて7分ミキシングし容積の大きい可塑性油脂組成物の状態は、目視できる程度2〜3mmnの粒がやっと残る程度まで練り込まれた状態となる。このときの混合物の品温は、20.5℃であった。
(2)次に冷水を入れ低速(138rpm)にて1分混合する。ザックリ繋がった状態の小麦粉含有生地を調製する。
生地捏ね上げ生地温度 16.8℃、ここで−7〜ー8℃で1時間のリタードをとる。
(3)生地温度5℃にて3つ折り1回後続けて4つ折り1回折りこむ。ここで−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて更に3つ折り1回折り込み36層の生地を得た。次に−7〜ー8℃で30分リタードリタードをとる。生地温度5℃にて2mm圧に展延後、40×4mmでカットし、ピケする。
(4)上火180℃、下火160℃、12分更に100℃、10分焼成する。
焼成品は細かい層が錯綜した状態で、細かく砕ける食感であった。この比較例の可塑性油脂組成物の場合小さすぎて、生地に練りこまれやすく、油脂を薄片状に残すのは困難であった。

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、パイ生地等の小麦粉含有生地の製造法に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】焼成品の練りパイの組織の断面の模式図
【0029】
【図2】焼成品の折りパイの組織の断面の模式図
【0030】
【図3】焼成品の練り折りパイの組織の断面の模式図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉に1個当たりの容積が大きい可塑性油脂組成物を添加攪拌混合することを特徴とする小麦粉含有生地の製造法。
【請求項2】
可塑性油脂組成物の容積が15〜1500ccである、請求項1記載の小麦粉含有生地の製造法。
【請求項3】
可塑性油脂組成物が澱粉類を含む、請求項1又は請求項2記載の小麦粉含有生地の製造法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の小麦粉含有生地を焼成する小麦粉含有膨化食品の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−89476(P2007−89476A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283247(P2005−283247)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】