説明

小麦粉含有食品用の品質改良剤

【課題】クリーミーな食感やしっとりとしたソフトな食感を付与しつつも、口溶けの良い食感を有する小麦粉含有食品を提供する。特には、原料として小麦粉以外に化工澱粉を用いた場合であっても、調製直後に化工澱粉特有の粘りが食感に影響を与えることなく長期保存後や冷凍解凍直後も調製直後と遜色ない良好な食感及び口溶けが保持された小麦粉含有食品を提供する。
【解決手段】小麦粉含有食品に、以下の性質(a)を有するデキストリンを添加する;
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(3)上記調製液を遮光した状態で25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を分光光度計を用いて測定し、これを青価とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たこ焼き、お好み焼き、明石焼き、たい焼き、今川焼き、もんじゃ焼き、ピザ、パン、ケーキやドーナツ等の小麦粉含有食品に良好な口溶けを付与することが可能な小麦粉含有食品用の品質改良剤に関する。詳細には、たこ焼きやお好み焼きであれば、クリーミーな食感でありつつも軽く口溶けの良い食感を付与することが可能であり、ピザ、パン、ケーキやドーナツ等に関してはソフトでしっとりとした食感でありつつも口溶けの良い食感を付与することができる、小麦粉含有食品用の品質改良剤並びに小麦粉含有食品の品質改良方法に関する。特には、冷凍耐性付与を目的として小麦粉以外に化工澱粉を用いた場合であっても、化工澱粉特有の粘りが食感に影響を与えることもなく、冷凍解凍した場合であっても調製直後と遜色ない食感を保持可能な小麦粉含有食品用の品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦粉を原料としたたこ焼き、お好み焼き、明石焼き、たい焼き、今川焼き、もんじゃ焼き、ケーキ、パン、ピザやドーナツ等の各種小麦粉含有食品は、小麦粉の含量が高い程、調製時の加熱によって生地がボソボソとぱさついてしまう上、ボディ感のある重い食感となる、口溶けが悪化することなどが課題とされていた。
【0003】
小麦粉を主原料とした小麦粉含有食品の品質改良方法としては、澱粉分解度DEが5〜28、及び30質量%溶液を4℃で3日間保存したときの濁度が1.0未満という2つの要件を備えた澱粉分解物を含有するお好み焼き、たこ焼き、ホットケーキ、又はスポンジケーキ(特許文献1)、DEが10〜20のマルトデキストリンを含有するたこ焼き粉(特許文献2)、DE20以下のマルトデキストリンを添加する蒸しパンの製造方法(特許文献3)、好ましくはグルコースポリマーを10質量部以上含むデキストリンをスフレケーキ中に1〜10質量部含む、しっとりしたスフレケーキの製造方法(特許文献4)等が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−58016号公報
【特許文献2】特開2001−69903号公報
【特許文献3】特開平08−205831号公報
【特許文献4】特開2007−215448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1〜4に開示されているいずれのデキストリンもその特徴から、(株)ニッシ製のデキストリンNSD−C(後記実験例の比較例1−4)に類似する性質のデキストリンと認められる。しかし、後述する実験例に示すとおり、当該デキストリンを用いた場合は、食感改良効果がほとんど認められず、従来のデキストリンを用いた食感改良には未だ改良の余地があった。例えば、たこ焼きやお好み焼きであれば、従来のデキストリンではトロっとしたクリーミー感を付与することはできず、クリーミー感付与を目的とした場合は、油脂等を添加する必要があった。しかし、油脂を添加することにより、油脂特有の舌にまとわりつくような重い食感となったり、たこ焼きやお好み焼き粉のミックスがべたつくなど、クリーミー感を有しつつも良好な口溶けや軽い食感を有する小麦粉含有食品を調製することは困難であった。同様にして、ピザやパン、ケーキ、ドーナツ等の小麦粉含有食品も、従来のデキストリンを用いた場合は一定のしっとりとした食感の付与は可能であるものの、軽くクリーミーな口溶けを付与することは到底できなかった。例えば、特許文献2に開示されている技術はα−化澱粉を使用しているため、澱粉特有の糊っぽい食感が前面に押し出され、特許文献3や4に開示されているマルトデキストリンもしっとりとした食感を蒸しパンに付与することは可能であるものの、しっとりとする分、口溶けが重くなることは否めず、しっとりとしつつも口溶けの良い食感を付与することは到底できなかった。
【0006】
また、小麦粉含有食品は、長期保存や冷凍解凍により、更なる食感の低下が課題となっている。例えば、たこ焼きやお好み焼きは、各家庭で粉から調理される以外にも、調理済みの冷凍食品として流通し、各家庭で電子レンジを用いて解凍され、食される場合も多々ある。しかし、冷凍食品として流通販売されるたこ焼きやお好み焼きの主原料の穀粉として小麦粉を単独で使用した場合は、冷凍解凍工程を経ることによってボソボソとパサつき、重たい食感となり、これを防止するために、化工澱粉を併用して添加することも試みられている。同様にして、ケーキ、パン、ピザやドーナツといった小麦粉含有食品も、長期保存による食感の低下や小麦粉自体のぼそぼそとした食感を改良するために、化工澱粉を併用することが試みられている。しかし、化工澱粉は、通常の澱粉に比較して冷凍解凍耐性には優れるものの、該澱粉を含有した小麦粉含有食品は、通常の澱粉を使用した場合に比べ、更に糊っぽく重い食感となり、口溶けも悪化することが問題視されていた。そのため、長期保存や冷凍解凍された場合であっても、澱粉特有の糊っぽさやべたつきが食感に影響を与えることなく、更には冷凍解凍後も調製直後と遜色ない良好な食感及び口溶けを保持可能な、小麦粉含有食品が求められていた。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、たこ焼き、お好み焼き、明石焼き、たい焼き、今川焼き、もんじゃ焼き、ピザ、パン、ケーキ及びドーナツ等の小麦粉含有食品用の品質改良剤を提供することを目的とする。例えば、たこ焼きやお好み焼きであれば、トロっとしたクリーミーな食感を付与しつつも、食感が重くなることなく軽い食感及び良好な口溶けを付与可能であり、ピザ、パン、ケーキやドーナツ等であれば、ソフトな食感及び良好な口溶けを付与可能な、小麦粉含有食品用の品質改良剤を提供することを目的とする。特には、原料として小麦粉以外に化工澱粉を用いた場合であっても、化工澱粉特有の粘りが食感に影響を与えることなく、更に冷凍解凍した場合であっても、調製直後と遜色ない良好な食感や口溶けを保持可能な品質改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、以下の性質(a)を有するデキストリンを小麦粉含有食品に添加することにより、小麦粉含有食品を目的とする食感並びに良好な口溶けに改良できることを見出して本発明を完成した。
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(3)上記調製液を遮光した状態で25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を分光光度計を用いて測定し、これを青価とする。
【0009】
本発明は、以下の態様を有する小麦粉含有食品用の品質改良剤、並びに該品質改良剤を含有した小麦粉含有食品に関する;
項1.下記の性質(a)を有するデキストリンを含有することを特徴とする、小麦粉含有食品用の品質改良剤;
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(3)上記調製液を遮光した状態で25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を分光光度計を用いて測定し、これを青価とする。
項2.更に発酵セルロースを含有する、項1に記載の小麦粉含有食品用の品質改良剤。
項3.冷凍保存される小麦粉含有食品用の品質改良剤である、項1又は2に記載の品質改良剤。
項4.項1〜3のいずれかに記載の品質改良剤を含有することを特徴とする、小麦粉含有食品。
項5.化工澱粉を5〜50質量%含有する、項4に記載の小麦粉含有食品。
項6.小麦粉含有食品がたこ焼き、お好み焼き、明石焼き、たい焼き、今川焼き、もんじゃ焼き、ピザ、パン、ケーキ又はドーナツである、項4又は5に記載の小麦粉含有食品。
【0010】
更に本発明は、以下の態様を有する小麦粉含有食品の品質改良方法に関する;
項7.以下の性質(a)を有するデキストリンを添加することを特徴とする小麦粉含有食品の品質改良方法;
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(3)上記調製液を遮光した状態で25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を分光光度計を用いて測定し、これを青価とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、良好な口溶けが付与された、たこ焼き、お好み焼き、明石焼き、たい焼き、今川焼き、もんじゃ焼き、ピザ、パン、ケーキやドーナツ等の小麦粉含有食品を提供することができる。詳細には、たこ焼きやお好み焼き、明石焼き、たい焼き、今川焼き、もんじゃ焼きであれば、クリーミーな食感でありつつも軽く口溶けの良い食感が付与され、ピザ、パン、ケーキやドーナツ等であればソフトでしっとりとした食感及び良好な口溶けを有する小麦粉含有食品を提供できる。特には、冷凍耐性付与を目的として小麦粉以外に化工澱粉を用いた場合であっても、化工澱粉特有の粘りが食感に影響を与えることもなく、冷凍解凍した場合であっても調製直後と遜色ない良好な食感及び良好な口溶けが保持された小麦粉含有食品を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の小麦粉含有食品用の品質改良剤は、以下の性質(a)を有するデキストリンを含有することを特徴とする。
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(3)上記調製液を遮光した状態で、25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を分光光度計を用いて測定し、これを青価とする。
【0013】
青価は、一般に、澱粉のヨウ素反応、具体的には澱粉に含まれるアミロースとヨウ素とが反応して青色を呈することを利用して、澱粉ヨウ素反応液の680nmにおける吸光度として求められる値である。通常、青価は澱粉中のアミロース含量を評価するために用いられるが、本発明では、デキストリン中のアミロース含量を示す指標として用いられる。
【0014】
本発明においてデキストリンの青価は次の方法に従って算出することができる。以下、本明細書で「青価」とはかかる方法で算出される値をいう。
(1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する。(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する。
(3)上記調製液を遮光した状態で、25℃において30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定する。
【0015】
本発明で使用するデキストリンは、前述するように、青価が0.4〜1.2の範囲であることを特徴とする。好ましくは0.5〜0.9の範囲、より好ましくは0.6〜0.8の範囲である。
【0016】
従来公知のデキストリンの青価は、0.4未満〔例えば、「パインデックス#100」(松谷化学工業(株)製)(後記実験例1「比較例1−2」):0.32、「デキストリンNSD-C」((株)ニッシ製)(後記実験例1「比較例1−4」):0.11、「パインデックス#3」(松谷化学工業(株)製)(後記実験例1「比較例1−5」):0.04〕、または1.2より大きく〔例えば、「PASELLI SA2」(AVEBE製)(後記実験例1「比較例1−1」):1.42、「C☆DELIGHT MD01970」((株)カーギルジャパン製)(後記実験例1「比較例1−3」:1.54)〕、この点において本発明で用いるデキストリンと相違する。
【0017】
従来公知のデキストリンのように、デキストリンの青価が0.4未満であった場合は、小麦粉含有食品自体の食感改良効果がほとんど得られず、一方青値が1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、澱粉特有の糊っぽさが小麦粉含有食品の食感を悪化させてしまい、目的とする小麦粉含有食品を得ることはできない。
【0018】
本発明で用いるデキストリンは、さらに下記の性質(b)および(c)を有することが好ましい:
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリンの30質量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm以上である、
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30質量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が200mPa・s以下である。
【0019】
ゼリー強度(b)は、80℃の蒸留水で調製したデキストリンの30質量%水溶液を5℃で24時間静置して得られたゼリー状物(測定対象物)を、5℃条件下で、直径3mmのプランジャーを用いて、プランジャー速度60mm/minで荷重をかけ、ゼリー状物がプランジャーの力で破断した時の荷重(N/cm2)を測定することによって求めることができる。当該ゼリー強度の測定は、通常レオメーターを用いて行なわれる。以下、本明細書で「ゼリー強度」とはかかる方法で算出される値をいう。なお、測定対象物であるゼリー状物の厚みは、得られるゼリー強度に影響しないため、特に制限されない。
【0020】
当該ゼリー強度の上限は、制限されないが、通常20N/cmを挙げることができる。ゼリー強度(b)として、好ましくは5〜20N/cm、より好ましくは6〜10N/cmである。小麦粉含有食品用品質改良剤として、該ゼリー強度が4N/cm未満であるデキストリンを用いた場合、食感改良効果が不十分となる場合があり、一方で、該ゼリー強度が20N/cmであるデキストリンを用いた場合は澱粉特有の性質が食感に影響を与え、糊っぽい食感となる場合がある。
【0021】
粘度(c)は、25℃の蒸留水で調製したデキストリンの30質量%水溶液を25℃で5分間静置した後、25℃条件下で、BL型回転粘度計(ローターNo.2)を用いて回転数12rpmで1分間測定することによって求めることができる。以下、本明細書で「粘度」とはかかる方法で算出される値をいう。
【0022】
当該粘度の下限は、制限されないが、通常20mPa・sを挙げることができる。粘度(c)として、好ましくは20〜100mPa・s、更に好ましくは30〜70mPa・sである。ここで、当該粘度が200mPa・sより大きいデキストリンを用いた場合は粘りや糊っぽい食感が強調され、口溶けが悪化する場合がある。
【0023】
本発明で使用するデキストリンは、前述するように、ゼリー強度(b)が4N/cm2以上で、粘度(c)が200mPa・s以下であることが好ましい。従来公知のデキストリンは、ゼリー強度(b)が4N/cm2以上であっても、粘度(c)が200mPa・sより大きいか〔例えば、「PASELLI SA2」(AVEBE製)(後記実験例1「比較例1−1」):(b)4.8、(c)235、「C☆DELIGHT MD01970」((株)カーギルジャパン製)(後記実験例1「比較例1−3」):(b)6.9、(c)220〕、または上記(b)の条件で調製しても液状を呈してゼリー状とならないもの〔例えば、「パインデックス#100」(松谷化学工業(株)製)(後記実験例1「比較例1−2」)、「デキストリンNSD-C」((株)ニッシ製)(後記実験例1「比較例1−4」)、および「パインデックス#3」(松谷化学工業(株)製)(後記実験例1「比較例1−5」)〕である点で、本発明で用いるデキストリンと相違する。
【0024】
本発明で用いられるデキストリンは、上記性質を有するものであれば、由来する澱粉の種類、DE値(dextrose equivalent:デキストロース当量)、および分子量などは特に限定されない。
【0025】
例えば、デキストリンの原料となる澱粉としては、馬鈴薯、とうもろこし、甘藷、小麦、米、サゴ、およびタピオカなどの各種澱粉を挙げることができる。好ましくは馬鈴薯澱粉である。
【0026】
DE値とは、一般には澱粉の分解程度を示す指標であり、澱粉を加水分解したときに生成するデキストリンおよびぶどう糖や麦芽糖等の還元糖の割合を示すものである。全ての還元糖をぶどう糖(dextrose)の量に換算し、その割合を全体の乾燥固形分に対する質量%で表わしたものである。このDE値が大きい程、還元糖の含有量が多くデキストリンが少なく、逆にDE値が小さい程、還元糖の含有量が少なくデキストリンが多いことを意味する。制限はないが、本発明ではDE値が通常2〜5、好ましくは3〜5、より好ましくは3.5〜4.5のデキストリンが使用される。
【0027】
このような性質を備えるデキストリンは、原料となる澱粉を加水分解することによって調製することができる。澱粉の分解方法は、特に制限なく、例えば酵素処理による分解、および酸処理による分解などを挙げることができるが、好ましくは酵素処理による分解(酵素分解)である。
【0028】
デキストリンの調製方法として、具体的には、耐熱性α―アミラーゼを含有させた澱粉、好ましくは馬鈴薯澱粉溶液を、70〜100℃、好ましくは90〜100℃の範囲で加熱したあとその酵素分解の進行度を、前述する青価(680nmの吸光度)を指標として追跡し、青価が所望の0.4〜1.2の範囲、好ましくは0.5〜0.9の範囲になったときに塩酸の添加によって酵素処理を終了する方法を挙げることができる。また、かかる範囲の青価を有するデキストリンについて、ゼリー強度(b)が4N/cm以上、粘度(c)が200mPa・s以下であるかどうかは、いずれも前述する方法に従って30質量%水溶液を調製して、測定することができる。
【0029】
かくして得られたデキストリンを小麦粉含有食品用の品質改良剤として用いることにより、小麦粉含有食品に目的とする食感並びに良好な口溶けを付与することが可能である。例えば、たこ焼きやお好み焼き、明石焼き、たい焼き、今川焼き、もんじゃ焼きであれば、クリーミーな食感でありつつも軽く口溶けの良い食感を付与することが可能であり、ピザ、パン、ケーキやドーナツ等であれば、ソフトでしっとりとした食感でありつつも口溶けの良い食感を付与することができる。更には、該小麦粉含有食品を冷凍解凍や長期保存した場合においても、調製直後と遜色ない良好な食感及び良好な口溶けを保持させることが可能である。
【0030】
更に、本発明の小麦粉含有食品用の品質改良剤は、食感改良や長期保存、冷凍解凍耐性を目的として小麦粉含有食品に化工澱粉を添加した際に生じる澱粉特有の粘りを顕著に抑制することも可能である。前述のとおり、小麦粉含有食品の穀粉原料として小麦粉を単独で用いた場合、長期保存や冷凍解凍工程を経ることによってボソボソとパサつき、重たい食感となる、口溶けが悪化するなど、調製直後と比較して食感や口溶けが大きく低下することが問題とされており、老化防止や冷凍解凍耐性付与を目的として化工澱粉が使用されてきた。かかる化工澱粉としては、α−化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉などに代表される化工澱粉(アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン)等が挙げられる。しかし、化工澱粉の添加は一方で糊っぽい食感や口溶けの悪化を招き、長期保存や冷凍流通が可能でありつつも、良好な食感及び口溶けを有する小麦粉含有食品が切望されていた。特に、たこ焼きやお好み焼きは小麦粉含有食品の中でも水分含量が高い食品であり、かかる水分を化工澱粉が保持することにより与える食感や口溶けへの影響は多大なものであった。本発明では、かかる化工澱粉を含有、特には化工澱粉を5質量%以上、更には10質量%以上含有した小麦粉含有食品であっても、上記性質を有するデキストリンを添加することにより、化工澱粉特有の糊っぽさやべたつきが食感や口溶けに影響を与えることなく、良好な食感及び口溶けを有する小麦粉含有食品を提供できることを特徴とする。
【0031】
また、本発明は上記品質改良剤を含有する小麦粉含有食品に関する。かかる小麦粉含有食品としては、小麦粉を含有する食品であれば特に限定されないが、具体的には、たこ焼き、お好み焼き、明石焼き、たい焼き、今川焼き、もんじゃ焼き、蒸しパン、菓子パン、食パン等のパン類;スポンジケーキ及びホットケーキ等のケーキ類;ピザ、ドーナツ等を挙げることができる。これら小麦粉含有食品に対する本発明の品質改良剤の添加量としては、対象食品や求められる食感に応じて適宜調整することが可能であるが、具体的には、小麦粉及び澱粉の合計100質量部に対し、上記性質を有するデキストリンの添加量が0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
【0032】
本発明は更に、以下の性質(a)を有するデキストリンを添加することを特徴とする小麦粉含有食品の品質改良方法に関する;
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(3)上記調製液を遮光した状態で25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を分光光度計を用いて測定し、これを青価とする。
【0033】
上記性質を有するデキストリンの添加時期や方法は特に限定されず、最終食品である小麦粉含有食品に上記デキストリンが含有されていればよい。具体的には、上記性質を有するデキストリンを小麦粉含有食品の原材料を混合する際に添加する方法等を用いることにより、目的とする食感を付与しつつも、口溶けが悪化することなく良好な口溶けを小麦粉含有食品に付与することが可能である。
【0034】
本発明では、上記デキストリンに加え、発酵セルロースを併用することにより、更に口溶けが軽く、ふわっとした食感の小麦粉含有食品を提供することが可能である。発酵セルロースは、アセトバクター属をはじめとしたセルロース生産菌が生産するセルロースであれば特に限定されず、使用することができる。商業上入手可能な発酵セルロースとしては、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社のサンアーティスト[商標]シリーズが挙げられる。発酵セルロースの添加量としては、上記性質を有する小麦粉及び澱粉の合計100質量部に対し、0.01〜5.0質量部、好ましくは0.1〜1.0質量部である。発酵セルロースを併用することにより、加熱調理時並びに冷凍後、電子レンジで加熱された場合であっても、従来にないふわっとした軽い食感となる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「質量部」、「%」は「質量%」を意味するものとする。文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0036】
調製例1〜3 小麦粉含有食品用の品質改良剤(デキストリン)の調製
馬鈴薯澱粉を70℃の水に投入し撹拌して懸濁液とした。これに耐熱性α−アミラーゼを添加して混合後、70〜100℃で反応させ、青価(680nmの吸光度)を指標として分解程度を評価した。
【0037】
なお青価は次の方法に従って求めた。
(1)濃度が1w/v%となるようにデキストリン含有水溶液を調製して、これを25℃に冷却する。
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する。
(3)上記調製液を遮光した状態で、25℃において30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定する。
【0038】
このとき、かかる青価(680nmの吸光度)が所望の0.4〜1.2の範囲、好ましくは0.5〜0.9の範囲になったときに塩酸を添加し、これを90℃まで加熱することにより酵素(耐熱性α−アミラーゼ)を失活させて上記反応を停止した。
【0039】
斯くして、青価が0.66、0.60、および0.83であるデキストリン溶液を各々調製した。これらの各デキストリン溶液は、上記酵素反応後、活性炭およびパーライトを用いて脱色ろ過し、スプレードライを行って粉末化して、以下の実験に使用した。以下、青価が0.66、0.60および0.83であるデキストリン(粉末)を、各々調製例1〜3のデキストリンという。
【0040】
調製例1〜3で調製したデキストリンについて、下記の性質(a)〜(c)を測定した。また比較のため、既存のデキストリン〔既存品1:「PASELLI SA2」(AVEBE社製)、既存品2:「パインデックス#100」(松谷化学工業(株)製)、既存品3:「C☆DELIGHT MD01970」((株)カーギルジャパン製)、既存品4:「デキストリンNSD-C」((株)ニッシ製)、既存品5:「パインデックス#3」(松谷化学工業(株)製)〕についても同様にして、性質(a)〜(c)を測定した。
【0041】
(a)青価(Blue Value):
下記の方法で、反応液の吸光度(680nm)を測定する
(1)80℃の蒸留水を用いてデキストリン1w/v%水溶液を調製し、これを25℃まで冷却する。
(2)上記水溶液10mlに、20mgのヨウ素と200mgのヨウ化カリウムを含む水溶液10ml(0.2w/v%のヨウ素、2w/v%のヨウ化カリウム)を添加して、蒸留水を加えて100mlに調整する。
(3)上記水溶液を遮光条件下で25℃において30分間振盪した後、25℃で波長680nmにおける吸光度を測定する。
【0042】
(b)ゼリー強度(N/cm2):
80℃の蒸留水でデキストリン30重量%水溶液を調製し、これを5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)を、下記の方法に従って測定する。
【0043】
5℃条件下で、直径3mmのプランジャーを用いて、プランジャー速度60mm/minで荷重をかけ、測定対象物が破断した時の荷重(N/cm2)を測定する。
【0044】
(c)粘度(mPa・s):
25℃の蒸留水でデキストリン30重量%水溶液を調製し、これを25℃で5分間静置した時の粘度(mPa・s)を、25℃条件下で、BL型回転粘度計(ローターNo.1〜4)を用いて回転数12rpmで1分間測定することによって測定する。なお、この条件で測定できる粘度範囲は、ローターNo.1:0〜500mPa・s、ローターNo.2:0〜2500mPa・s、ローターNo.3:0〜10000mPa・s、ローターNo.4:0〜50000mPa・sである。
【0045】
結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
実験例1 たこ焼きの調製(1)
表1に示す各種デキストリンを用いてたこ焼きを調製した。詳細には表2に示した原料を全て混合し、さらに表3に示した各種デキストリンを3部添加し、たこ焼き用の生地とした。次いで、熱したたこ焼きプレートに生地を注入し、その上に天カス、ネギ、紅しょうが、湯どうししたタコを適量入れ、生地の表面が固まってきたら、裏返し、たこ焼きを回転させながらわずかに表面に焦げ目がつくまで焼き、たこ焼きを調製した。調製直後のたこ焼きの食感を評価し、一部は粗熱をとった後−50℃で急速冷凍し、−20℃の冷凍庫に1週間おいた後、電子レンジで再加熱してから食感を評価した。結果を表3に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
<評価項目>
(調製直後)調製直後の食感を以下の3項目についてそれぞれ5段階で評価した。
軽さ :(軽い)+++>++>+>±>−(重い)
クリーミー感:(クリーミーである)+++>++>+>±>−(糊っぽい、べちゃつく)
口溶け :(良好、口中でほぐれやすい)+++>++>+>±>−(悪い、ぼってりしている)
(冷凍解凍後)冷凍解凍後の食感の総合評価を以下の5段階で評価した。
(ほぼ食感、口溶けの低下がなく、調製直後の食感及び口溶けが保持されている)+++>++>+>±>−(食感がぼそぼそする、重い食感になるなど、更に食感、口溶けが低下している)
なお、冷凍解凍の評価は、調製物を−50℃で急速冷凍し、−20℃の冷凍庫に1週間おいた後、電子レンジで再加熱して食した際の評価である。
【0051】
表3より、青価が0.66(実施例1−1)及び0.60(実施例1−2)のデキストリンを用いることにより、トロっとしたクリーミーな食感を有しつつも重い食感になることなく、軽く良好な口溶けが付与されたたこ焼きを調製することができた。更に調製されたたこ焼きを冷凍解凍した際も調製直後と遜色ない食感及び良好な口溶けが保持された。一方、青価が0.4未満であるデキストリン(比較例1−2:青価0.32、比較例1−4:青価0.11、比較例1−5:青価0.04)を用いた場合は、デキストリン無添加のブランクとほぼ食感に変化はなく、調製したたこ焼きを冷凍解凍した際に生じるボソボソとした食感を改良することもできなかった。同様にして、青価が1.2以上であるデキストリンを用いた場合(比較例1−1:青価1.42、比較例1−3:青価1.54)も、糊っぽい食感やボッテリとした食感となり、目的とするクリーミーな食感及び良好な口溶けからは程遠いものであった。
【0052】
実験例2 たこ焼きの調製(2)
表1と同様の各種デキストリンを用いてたこ焼きを調製した。詳細には表4に示した原料を全て混合し、さらに表5に示した各種デキストリンを3部添加し、たこ焼き用の生地とした。次いで、熱したたこ焼きプレートに生地を注入し、その上に天カス、ネギ、紅しょうが、湯どうししたタコを適量入れ、生地の表面が固まってきたら、裏返し、たこ焼きを回転させながらわずかに表面に焦げ目がつくまで焼き、たこ焼きを調製した。調製直後のたこ焼きの食感を評価し、一部は粗熱をとった後−50℃で急速冷凍し、−20℃の冷凍庫に1週間おいた後、電子レンジで再加熱してから食感を評価した。結果を表5に示す。調製されたたこ焼きについて、調製直後並びに1週間冷凍後、電子レンジで解凍した際の食感について評価した。結果を表5に示す。
【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
小麦粉に加えて化工澱粉を併用することにより、小麦粉を100%使用した実験例1と比較して、口中でのほぐれが多少解消され、ぼってりとした重い食感や冷凍解凍後のボソボソとした食感が一部解消されていた(ブランク)。しかし、一方で化工澱粉特有の糊っぽい食感が前面に押し出され、ブランクのたこ焼きは重い食感となってしまった。しかし、かかる化工澱粉を併用した場合であっても、青価が0.66(実施例2−1)及び0.60(実施例2−2)のデキストリンを用いることにより、糊っぽい食感となることなく、クリーミーかつ軽い食感及び良好な口溶けを有するたこ焼きを調製することができた。一方、比較例のたこ焼きはいずれも化工澱粉特有の糊っぽい食感やベタついた食感となることは避けられず、目的とするクリーミーかつ軽く口溶けの良い食感を有するたこ焼きを調製することは到底できなかった(比較例2−1〜2−5)。
【0056】
実験例3 たこ焼きの調製(3)
表4の処方に従って、使用する化工澱粉をアセチル化アジピン酸架橋澱粉に、デキストリンの添加量を2質量部に変更した以外は実験例2と同様にしてたこ焼きを調製した(実施例3−1)。デキストリンは調製例3のデキストリン(青価0.83)を使用した。デキストリン無添加区では調製されたたこ焼きは、糊っぽい食感となり、更に1週間冷凍後、解凍工程を経ることにより、その食感は更に重い食感となってしまった。一方、調製例3のデキストリンを用いて調製されたたこ焼きは、化工澱粉を使用しているにも関わらず、調製直後、更には冷凍解凍後もクリーミーな食感及び軽い口溶けを有していた。
【0057】
実験例4 たこ焼きの調製(4)
表6の処方に従ってたこ焼きを調製した。詳細には表6に示した原料を全て混合し、たこ焼き用の生地とした。次いで熱したたこ焼きプレートに生地を注入し、その上に天カス、ネギ、紅しょうが、湯どうししたタコを適量入れ、生地の表面が固まってきたら、裏返し、たこ焼きを回転させながらわずかに表面に焦げ目がつくまで焼いた。調製直後のたこ焼きの食感を評価し、更に、一部は粗熱をとった後−50℃で急速冷凍し、−20℃の冷凍庫に1週間おいた後、電子レンジで再加熱してから食感を評価した。
【0058】
【表6】

【0059】
デキストリン無添加区では調製されたたこ焼きは糊っぽい食感となり、更に1週間冷凍後、解凍工程を経ることにより、その食感は更に重い食感となってしまった(比較例4−1)。一方、調製例1のデキストリン(青価0.66)を用いて調製されたたこ焼きは、化工澱粉を使用しているにも関わらず、調製直後、更には冷凍解凍後もクリーミーな食感及び軽い口溶けを有していた。また、発酵セルロースを併用することにより、調製されたたこ焼きはさらにふわっとした食感であり、クリーミーでありながらも非常に軽い食感や口溶けを有するたこ焼きであった(実施例4−1)。
【0060】
実験例5 お好み焼きの調製
表7の処方に従って、お好み焼きを調製した。詳細には、表7に示した原料を全て混合し、お好み焼き用の生地とした。次いで熱したホットプレートに生地を広げ、その上に天カス、ネギ、紅しょうがを適量入れ、プレートとの接地面が固まってきたら、裏返し表面に焦げ目がつくまで焼いた。調製直後のお好み焼きの食感を評価し、更に、一部は粗熱をとった後−50℃で急速冷凍し、−20℃の冷凍庫に1週間おいた後、電子レンジで再加熱してから食感を評価した。結果を表8に示した。
【0061】
【表7】

【0062】
【表8】

【0063】
表8より、青価が0.66(実施例5−1)、0.60(実施例5−2)及び0.83(実施例5−3)のデキストリンを用いることにより、トロっとしたクリーミーな食感を有しつつも重い食感になることなく、軽く良好な口溶けが付与されたお好み焼きを調製することができた。更に調製されたお好み焼きは、冷凍解凍した際も調製直後と遜色ない食感及び良好な口溶けが保持された(実施例5−1〜5−3)。一方、青価が0.4未満であるデキストリン(比較例5−2:青価0.32、比較例5−4:青価0.11、比較例5−5:青価0.04)を用いた場合は、デキストリン無添加のブランクとほぼ食感に変化はなく、化工澱粉特有の糊っぽい食感やベタついた食感となってしまった。同様にして、青価が1.2以上であるデキストリンを用いた場合(比較例5−1:青価1.42、比較例5−3:青価1.54)も、糊っぽい食感となり、目的とするクリーミーな食感及び良好な口溶けからは程遠いものであった。
【0064】
実験例6 冷凍ピザの調製
表9の処方に従って、冷凍ピザを調製した。詳細には表9に示した原料を全てミキサーにてミキシングし、数時間発酵させてから成型後、オーブンで焼き上げた。調製直後のピザの食感を評価し、更に、一部は粗熱をとった後−50℃で急速冷凍し、−20℃の冷凍庫に1週間おいた後、電子レンジで再加熱してから食感を評価した。
【0065】
【表9】

【0066】
調製例2(青価0.60)のデキストリンを用いて調製されたピザは調製直後、更には冷凍解凍後であってもソフトでしっとりとした食感を有していた(実施例6)。更には、しっとりとした食感を有しつつ、口溶けも良好なピザであった。
【0067】
実験例7 ケーキの調製
下記表10の処方に従ってケーキを調製した。詳細には表10に示した原料をホイッパーにてホイップ後、スポンジケーキ型に流し込み焼成した。焼成後、すぐに型から出し、網の上で放冷し、ケーキを調製した。放冷直後のケーキの食感を評価し、一部は−50℃で急速冷凍し、−20℃の冷凍庫に1週間おいた後、電子レンジで再加熱してから食感を評価した。
【0068】
【表10】

【0069】
調製例1(青価0.66)のデキストリンを用いて調製されたケーキは、デキストリン無添加区に比較して、ソフトでしっとりとした食感を有するケーキであった(実施例7)。更には、しっとりとした食感を有しつつも重い口溶けとなることなく、良好な口溶けを有するケーキであった。更には、実施例7のケーキは、冷凍解凍した際もソフトでしっとりとした食感及び良好な口溶けが保持されていた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
クリーミーな食感やしっとりとしたソフトな食感を付与しつつも、口溶けの良い食感を有する小麦粉含有食品を提供できる。例えば、クリーミーな食感でありつつも軽い食感や良好な口溶けを有するたこ焼き、お好み焼き、明石焼き、たい焼き、今川焼き、もんじゃ焼きや、ソフトでしっとりとした食感及び良好な口溶けを有するピザ、パン、ケーキやドーナツ等を提供することができる。特には、原料として小麦粉以外に化工澱粉を用いた場合であっても、化工澱粉特有の粘りが食感に影響を与えることなく、長期保存後や冷凍解凍直後も調製直後と遜色ない良好な食感及び口溶けが保持された小麦粉含有食品を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の性質(a)を有するデキストリンを含有することを特徴とする、小麦粉含有食品用の品質改良剤;
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(3)上記調製液を遮光した状態で25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を分光光度計を用いて測定し、これを青価とする。
【請求項2】
請求項1記載の品質改良剤を含有することを特徴とする、小麦粉含有食品。
【請求項3】
化工澱粉を5〜50質量%含有する、請求項2に記載の小麦粉含有食品。
【請求項4】
小麦粉含有食品がたこ焼き、お好み焼き、明石焼き、たい焼き、今川焼き、もんじゃ焼き、ピザ、パン、ケーキ又はドーナツである、請求項2又は3に記載の小麦粉含有食品。
【請求項5】
以下の性質(a)を有するデキストリンを添加することを特徴とする小麦粉含有食品の品質改良方法;
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(3)上記調製液を遮光した状態で25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を分光光度計を用いて測定し、これを青価とする。

【公開番号】特開2010−154801(P2010−154801A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334719(P2008−334719)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】