説明

少なくとも一つのトレー状揺動プラットフォームを含むバイオリアクタアセンブリ

本発明は、2リットルから数千リットルまでの培養量の同一条件下で線形のスケールアップを可能にする、リアクタフレームを含むバイオリアクタアセンブリに関する。バイオリアクタは、少なくとも2リットルの全体積を受けるように適合された少なくとも一つの使い捨てバッグを保持することができる少なくとも一つの揺動プラットフォームを含む。前記少なくとも一つのプラットフォームは、バッグ中の流体を動かし、波状の動きを形成させるトレー状付形物を有する。前記少なくとも一つのプラットフォームは、リアクタフレームに取り付けられ、垂直軸に沿って互いの上に配置されている。特に、揺動中、揺動プラットフォームの重量分布が概ね平衡状態になる。本発明はさらに、バイオリアクタアセンブリを使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
最先端技術
20世紀中、細胞培養は産業の規模にまで達した。酵素又は二次代謝産物を産生する微生物の増殖のための数10万リットルのステンレス鋼製の発酵容器さえ珍しくない。方法としては、バッチ、流加、連続又は半連続かん流がある。徐々に、より能力が試される培養物、たとえば哺乳動物、昆虫又は植物細胞が、高度に特化した培地を使用する発酵容器中での増殖に適合されてきた。これらの容器の設計は詳細が異なるが、いくつか共通の特徴を有している。容器の中に垂直に配置されたかく拌ブレードを回転させることによって細胞が懸濁状態に維持され、底部での空気、O2又はCO2の注入によってガス交換が促進される。培地の組成及びpHは、そのようなパラメータを調節するための連続的なモニタリング及び化学成分の注入によって調整することができる。
【0002】
この設計には欠点がいくつかある。ブレードによって誘発される剪断力及びごく小さな気泡のキャビテーションが、比較的高感度の細胞型又は有機体に対して有害である。また、これらの容器は、交差汚染を防ぐため、生産稼働の合間に徹底的に清浄されなければならず、それが時間浪費的であり、個々の培養物に関して検証されなければならない。さらには、かく拌型発酵槽は、高度な訓練を受けたオペレータを要する。かく拌型発酵槽のコストは全サイズ範囲で高く、したがって、かく拌型発酵槽は長期にわたり繰り返し使用されて、ひいては機械的不具合の結果として感染の危険が増す。もっとも重大なことには、研究又はパイロット規模におけるかく拌型発酵槽の場合の培養条件の最適化は、工業規模生産へと線形に移し換えることができない。規模が拡大すると、流体力学的性質、エアレーション、起泡性及び細胞増殖性が桁違いに変化するからである。この主題に関して利用可能な様々な手引き書、科学関係の出版物及び特許が、研究規模から生産規模への細胞培養のスケールアップが有意な専門知識及び詳細なプロトコル適合を要するという良好な指標である(たとえば、K van‘t Riet, J Tramper 1991 Basic Bioreactor Design, Marcel Dekker Publ.を参照)。より虚弱な細胞型又は有機体に関しては、より巧緻なかく拌技術、たとえばエアリフト発酵槽が使用される場合でさえ、大規模かく拌型培養容器は存続可能な装置とはいえない。
【0003】
これらの欠点が使い捨て発酵槽の開発につながった。このような使い捨て発酵槽の一例が、上記課題の少なくともいくつかを解決する、波動かく拌に基づくシステムである。たとえばSingh(米国特許第6,544,788号)及びRoll(WO00/66706)によって発明された装備を用いると、脆い細胞、たとえばCHO細胞(Pierce, 2004 Bioprocessing J 3: 51-56)、ハイブリドーマ細胞(Ling et al., 2003, Biotechn Prog, 19: 158-162)及び昆虫細胞(Weber et al., 2002 Cytotechn 38: 77-85)でさえ、揺動プラットフォームに取り付けた封止プラスチックバッグで増殖させることができることが実証された。また、波動かく拌使い捨てバッグ中での足場依存性細胞及びウイルスの増殖に成功している(Singh, 1999 Cytotechn 30: 149-158)。このような使い捨てユニットは、比較的安価であり、一回しか使用されないため感染の危険を減らし、揺動プラットフォームが液相中に波形を誘発してガス交換を促進するため内部かく拌部品を要しない。この原理は、工業用発酵槽のような数10万リットルのサイズに拡張することはできないが、現在、1リットルから500リットルのものが市販されている(バッグ全容積、Wave Biotechnology社、スイス、Wave Biotech社、米国)。しかし、深さ及び高さの違いの結果として、種々のバッグの流体力学的性質は異なる。したがって、これらのバッグの使用は、スケールアップ過程の各ステップを最適化することを要する。
【0004】
発明の概要
本発明は、2リットルから数千リットルまでの培養容積の同一条件下で線形のスケールアップを可能にする、使い捨てバックを波動かく拌と共に使用する最初のバイオリアクタを提供する。バイオリアクタのモジュール式でフレキシブルな設計が、一つの構造で異なるバッグの平行的な培養を可能にして、異なる培養及び培養条件を同時に稼働させることができるようにする。あるいはまた、一つのバッグを異なるコンパートメントに分割して、異なる条件を同時に稼働させることもできる。
【0005】
バイオリアクタは、使い捨て発酵槽の増大する必要性、特に、波動かく拌型培養システムをスケールアップする必要性を受け入れるように設計されたものである。バイオリアクタの基本設計は少なくとも一つのプラットフォーム又はトレーを有する。2個以上のプラットフォーム又はトレーの場合、そのようなプラットフォーム又はトレーは互いの上に取り付けることができる。トレーは、調節可能な角度で、調節可能なサイクル速度で揺動することができる。垂直方向の設計は設置面積を大きく減らす。
【0006】
バイオリアクタは、最初の線形スケーリング設計を提供することにより、生体培養をスケールアップする場合に通常伴う問題を解消した。各培養バッグの深さ及び高さ、特に深さと高さとの比がすべてのバッグに関して一定に維持されて、したがって、すべてのバッグサイズで同一の波動かく拌の流体力学的性質が維持される。したがって、小さなバッグで最適化されたプロトコルがそのままで最大級のバッグに移される。さらには、バイオリアクタは、多くの小さな量を平行的に増殖させて、新たな細胞系又は新たな生物学的化合物の産生に最適な培地条件を特定する独自のオプションを提供する。これらの同じ条件をフルスケール生産環境に適用することができる。
【0007】
バイオリアクタは、あらゆる種類の細胞、たとえば哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、ウイルス、マイクロ担体培養物、酵母、バクテリア、発端細胞などをインキュベートし、培養するのに適している。さらには、より複雑な系、たとえば多細胞系及び器官の培養を可能にする。使い捨てバッグを使用するモジュール式設計はさらに、好気性条件及び嫌気性条件をはじめとする異なる条件下での細胞のインキュベート及び培養を可能にする。そのうえ、黒いバッグの使用は、反応が暗所で起こることを可能にし、透明なバッグの使用は、昼光又は特定波長の光による照射を可能にする。
【0008】
バイオリアクタはまた、分離プロセスで求められるような、沈降を防ぐために成分どうしの一定の混合を要する他のプロセスに使用することもできる。一般に、揺動は、かく拌又はバブリングのような他の混合法が不可能である場合に実施することができる。これらのプロセスの例は当該技術で周知であり、溶解、均質化、酵素インキュベートをはじめとするインキュベート、たとえば親和力に基づく分離、乳化及び発酵を含む。同じくこれらのプロセスの場合、使い捨てバッグを使用するモジュール式設計は、これらのプロセスが異なる条件、たとえば高又は低酸素圧、嫌気性条件、不活性ガスなどの適用の下で起こることを可能にする。
【0009】
これに加えて、使い捨てバッグを使用するモジュール式設計は、これらのプロセス中に条件を可変性にして、それにより、巧緻なプロセスを実施することを可能にする。
【0010】
利点
本発明のバイオリアクタは、単一ユニット揺動バイオリアクタに対していくつかの利点を有する。一つの電気モータ・速度調整ユニットしか要らず、すべての揺動プラットフォームが同じ速度及び/又は揺動角度を有し、特に2個以上のプラットフォームが垂直又は略垂直な軸に沿って互いの上に配置される場合、アセンブリ全体が効率的な小さな設置面積しか要しない。小さな設置面積はまた、衛生上の理由から気密性にすることができ、温度制御することができる一つの部屋へのアセンブリ全体の容易な収容を可能にする。
【0011】
本発明の好ましい実施態様で記載されているような、たとえば16個のユニットをユニットあたり70リットルの全容積で提供するアセンブリの平行設計は、より大きな容積の単一ユニットバイオリアクタに対して利点を有する。第一に、ひとたび一つのユニットに関して培養条件が最適化されると、バイオリアクタそのもののサイズを増す場合に周知の問題である、スケールアップの場合のさらなる変更が不要である。本発明のバイオリアクタでは、スケールアップは、互いの上のプラットフォームの数を増すこと又は単にアセンブリの幅を増すことのいずれかにより、達成することができる。
【0012】
線形スケーリング性の利点の他にも、平行ユニット手法は、培養失敗の危険を減らし、それにより、産生全体の信頼性を高める。これは、なおも未知の生物学的パラメータが産生を阻害するかもしれない又はたとえば複雑な培地要件、細胞内感染源もしくは機械的不具合の結果として望まれない感染が比較的頻繁に起こるかもしれない、増殖させにくいことが知られている生物を使用する場合に特に重要である。
【0013】
平行設計のもう一つの利点は、培養条件を産生規模で直接最適化し、試験する可能性である。本発明に記載される好ましい実施態様は、揺動バイオリアクタの波形、ひいては流体力学的性質及びガス交換性質(本発明ではスケールアップの前に一度だけ最適化すればよい、培養条件に対して影響を及ぼすパラメータ)を変化させることなく、16種の異なる条件を同じ稼働で試験すること又は、わずかな変更だけで、32もしくは48もしくは64種の異なる培養条件を試験することを可能にする。また、それぞれが異なる組み換えタンパク質を産生する異なる細胞系を平行に稼働させることもできる。
【0014】
バイオリアクタアセンブリは、使い捨て培養バッグを保持するように設計されており、このアセンブリと使い捨てバッグとの組み合わせがさらなる利点を保有する。清浄及び衛生のために必要な、稼働の合間のダウンタイムが、ガラス又はステンレス鋼製の容器の場合に比較して有意に減少する。従来の発酵槽をオペレータがモニタする場合に比べてオペレータの専門知識レベルを下げることができる。さらには、使い捨てバッグの使用は、交差汚染の発生を強力に排除し、稼働中及び稼働の合間の品質管理検証の必要性を減らす。
【0015】
図1〜4は、本発明の一部である可能な装置のいくつかを示す。
【0016】
発明の説明
本明細書及び請求の範囲において、明らかにそうではない場合を除き、単数形は複数の指示対象をも含む。断りない限り、本明細書で使用するすべての専門・技術用語は、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0017】
本発明のバイオリアクタアセンブリは、リアクタフレーム及びリアクタフレームに取り付けられた少なくとも一つの揺動プラットフォーム(6)を含み、前記プラットフォームは、少なくとも2リットル又は5リットルの全体積を受けるように適合された少なくとも一つの使い捨てバッグを保持することができる。2個以上の揺動プラットフォームが使用されるならば、前記揺動プラットフォームは、垂直軸(v)(図1、2及び3を参照)又は略垂直軸(図示せず)に沿って互いの上に配置される。あるいはまた、前記2個以上のプラットフォームは、水平面で互いに対向する状態で取り付けられる。バイオリアクタアセンブリは多様な構造をとることができる。リアクタフレームは、垂直ポール(7)、支持ビーム(8)、一つ以上の水平ビーム(10)、開放溝(9)及び/又は接地板を含む。好ましい実施態様を参照して本明細書で使用するバイオリアクタアセンブリは、図における相対位置のせいで、前面(図1及び3、正面図)、背面及び二つの側面を有するように示されている。図2には、好ましい実施態様の側面図が示されている。好ましい実施態様では、揺動プラットフォーム(6)は2個の垂直ポール(7)の間に取り付けられている。アセンブリは、垂直ポール(7)の間の一つ以上の水平ビーム(10)によって補剛することができる。アセンブリのいずれか側又は両側の支持ビーム(8)は、垂直ポール(7)に取り付けることができる。垂直ポール(7)及び/又は支持ビーム(8)は、床に固着することができるが、床は、好ましくは振動を誘発することなくアセンブリの重量を負担するのに十分な強度を有するべきである。加えて又は代替的に、バイオリアクタの垂直ポール(7)及び/又は支持ビーム(8)は、剛性の接地板に取り付けることができる。さらなる実施態様では、垂直ポールは、天井を介して固着される。当業者には、垂直ポール(7)、支持ビーム(8)及び/又は接地板の下に車輪を取り付けることによってアセンブリをより易動性にすることができることが明らかであろう。加えて、アセンブリは、管などを保持するための一つ以上の開放溝(9)を含むことができる。バイオリアクタアセンブリの寸法は、ユーザのニーズに応じて広く異なることができる。特に、リアクタフレームの寸法は、揺動プラットフォームの寸法によって決まる。リアクタフレームは、バッグ、その内容物及び揺動によって加えられる力を含めたバイオリアクタアセンブリ全体としての重量を支持するのに適した、当業者には周知であるいかなる材料でできていてもよい。バイオリアクタは、たとえば、アラミド及びカーボンファイバのような軽い材料から作ることもできるが、好ましくは、鋼、アルミニウム又はステンレス鋼からなる群より選択される材料でできている。
【0018】
バイオリアクタアセンブリの各揺動プラットフォームは、たとえば図2に示すように、水平軸に沿って一つの自由度で揺動(傾動)するように適合されている。回動の軸は軸受け装着軸(4)であり、この軸により、揺動プラットフォーム(6)がリアクタフレーム、たとえば垂直ポール(7)に取り付けられている。好ましくは、揺動プラットフォームの傾動は、バッグ中に波状の動きを誘発し、持続させる。そのようなものとして、本発明は、各プラットフォームを揺動させるための手段をさらに含む、本明細書に記載のバイオリアクタアセンブリに関する。前記プラットフォームそれぞれは、水平軸に沿って一つの自由度で揺動することができ、そのプラットフォームの揺動が、バッグ中の流体を動かし、波状の動きを形成させる。プラットフォームを揺動させるための手段は、電動モータ(1)、ギヤボックス(Z)及びモータの回転動をプラットフォームの傾動に変換する伝達系(2、3、4、5、11)を含むことができる。好ましくは、モータ(1)は、リアクタフレームに対し、たとえばリアクタフレームの上に、たとえば垂直ポール(7)又は水平ビーム(10)の上に取り付けられる。さらなる実施態様では、モータ(1)は、リアクタフレームには取り付けられず、トランスファー系を介してリアクタフレームと接続されるだけである。たとえば、モータはまた、床に配置することもできるし、たとえば衛生、安全又は保守の理由から、リアクタフレームが配置されている部屋とは異なる部屋、たとえばリアクタフレーム及び揺動プラットフォームを含む収納室の外に配置することもできる。したがって、本発明のバイオリアクタアセンブリはさらに、プラットフォームを揺動させるための前記手段が電動モータ(1)、たとえば周波数調整エレクトロモータ又は単一ステップレス電子モータ、たとえば周波数調整1.5kW電子モータを含むことを特徴とする。AC可変周波数ドライブ(VFD)又はDC可変速度ドライブ(VSD)とも知られる周波数調整エレクトロモータは、ABB(スイス)、Siemens(ドイツ)、Lenze(ドイツ)及びFincor(米国)のような製造元から得ることができる。モータ(1)は、ギヤボックス(Z)を介して第一の連結棒(2)に接続されている。第一の連結棒(2)は、ギヤボックス(Z)の歯車に対して一定範囲の取り付け点を有することができ、モータの回転動を一つの平面、たとえば揺動の水平軸で行き来する動きに変換することを可能にする。好ましくは、プラットフォームの揺動角は、全サイクルから約+10〜+30°及び−10〜−30°の間、より好ましくは約+15〜−15°の間までの範囲である。そのようなものとして、本発明は、少なくとも一つのプラットフォームそれぞれを揺動させるための手段が、各プラットフォームを一つの自由度でプラットフォームの水平位置に対して−15°〜+15°の所定の角度範囲で揺動させるように適合されていることをさらに特徴とする、本明細書に記載のバイオリアクタアセンブリに関する。
【0019】
本明細書中、全移動サイクル又は移動サイクルとは、揺動プラットフォームを任意の出発位置から上、下及び再び上又は下、上及び再び下に、出発位置と同じ位置に達するまで駆動する、おそらくはエレクトロモータに接続されたギヤボックスを介して伝達される駆動軸の全サイクル又は回動と定義される。モータの円運動は、強力軸受けを介する3個の異なるバー又はタンブラ(2、3、5)を介してプラットフォームの揺動に変換される。タイプ1連結棒(2)は、いくつかの位置でギヤボックス(Z)に取り付けることができ、それにより、たとえば最大+15〜−15°の揺動角に効果的に影響を加える。接続タンブラ(3)に取り付けられた接続軸(11)の軸受けは、揺動プラットフォーム(6)を担持する軸(4)の軸受けの垂直に上に配置することができる。モータ(1)の回転動は接続軸(14)によってリアクタフレームの両側に伝達されて、構造のねじれを防ぐことができる。回転動が両側に伝達される場合、両側が、類似した、たとえば同一の伝達系を含むということは明らかである。したがって、当業者には、揺動プラットフォームがリアクタフレームに可動的に取り付けられるということが明からであろう。換言するならば、揺動プラットフォームは、一つの自由度でリアクタフレームに対して動くことができる。
【0020】
プラットフォームの揺動の速度及び振幅は、培地の波状の動き又は生体反応が起こるために最適な条件を提供するように制御し、調節することができる。プラットフォームが揺動して行き来する角度は、ギヤボックス(Z)の歯車に対するタイプ1連結棒(2)の取り付け点を変更すること、ギヤボックスの歯車の直径及び取り付け点を変更すること又は連結棒(2)の長さを変えることのいずれかによって簡単に調節することができる。
【0021】
もう一つの実施態様では、本明細書に記載のバイオリアクタアセンブリは、プラットフォームを揺動させるための前記手段が、運動サイクル中に前記プラットフォームの重量分布を概ね平衡状態に維持するように適合されていることを特徴とする。モータの円運動が揺動プラットフォームを駆動するため、すべてのプラットフォームの運動量は、360°又はその倍数でなければならない。これは、二つのプラットフォームを運動の位相において約180°異なるように取り付けることができ、三つのプラットフォームを約120°異なるように、すなわち各プラットフォームの運動サイクルにおいて0°、120°及び240°でそれぞれ取り付けることができることを意味する。たとえば、5個のプラットフォームが使用される場合、3個のプラットフォームの運動量が約360°であり、残り2個のプラットフォームの運動量も同じく360°であることが理解されよう。あるいはまた、5個のプラットフォームそれぞれは約72°異なる、すなわち各プラットフォームの運動サイクルにおいてそれぞれ約0°、約72°、約144°、約216°及び約288°である。これは、システムの平衡状態を維持するためである。たとえば、第一のプラットフォームが+15°傾動するならば、第二のプラットフォームは−15°傾動し、前記第一のプラットフォームが−15°まで下がると、同時に、第二のプラットフォームは、第一のプラットフォームと同じ振幅で、ただし反対の位相で+15°まで上がる。好ましくは、前記プラットフォームが概ね同じである、すなわち、概ね同じ重量分布及び重心を有するということが明らかであろう。
【0022】
あるいはまた、前記プラットフォームは、運動サイクル中、プラットフォームごとの運動サイクルのランダムな分布によって概ね平衡状態に維持される。6個以上のプラットフォームがリアクタフレームに取り付けられるならば、プラットフォームのランダムな動き、すなわち互いに異なるプラットフォームの運動量が、バイオリアクタを平衡状態に維持することができる。当業者は、平衡状態が損なわれる場合には、リアクタフレームを補強してもよいことを理解するであろう。
【0023】
さらに別の実施態様では、プラットフォームを揺動させるための前記手段は、稼働中に、各プラットフォームを、他のプラットフォームが運動中であるときでも停止させることができるように適合されている。
【0024】
揺動プラットフォーム(6)は、垂直ポール(7)に取り付けることができる軸受け装着軸(4)に取り付けることができる。少なくとも一つの揺動プラットフォームが互いの上に配置されている。軸受け装着軸(4)は垂直軸(v)に沿って整合している。揺動プラットフォーム(6)は、使い捨てバッグを保持するように設計されている。本発明のバイオリアクタアセンブリは、垂直軸に沿って互いの上に配置された2〜20個の揺動プラットフォーム、たとえば2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は10又は12又は14又は16又は20個の揺動プラットフォームを含む。
【0025】
あるいはまた、少なくとも1個の揺動プラットフォームを2個以上の垂直又は略垂直なポール上で対にして互いに対向させて配置することもできる。
【0026】
少なくとも一つの揺動プラットフォームの寸法は、幅広く変化させることができる。好ましくは、揺動プラットフォームの寸法はバッグ中の波状の動きを許容する。そのようなものとして、本発明は、前記揺動プラットフォーム(6)又はトレーの奥行き(x)が0〜5mのサイズを有することができ、好ましくは、約0.5m〜約1.2m、より好ましくは約.085m、たとえば83cmの寸法を有することを特徴とする、本明細書に記載のバイオリアクタアセンブリに関する。揺動プラットフォーム(6)又はトレーの幅(y)は、約0.4m〜8m、好ましくは約3mの寸法を有することができる。これに関して、奥行き(x)は、揺動プラットフォームの前面から背面までの距離であり、幅(y)は、揺動プラットフォームの一方の側面から反対側面までの距離である。揺動プラットフォームは下面及び実質的に平坦な上面を有する。前記揺動プラットフォームの上面は、バッグを担持するように適合されている。
【0027】
揺動プラットフォームは、様々な、すなわち少なくとも二つの空間的に画定された領域又はコンパートメントを含むことができる。各コンパートメントは、少なくとも一つのバッグを選択的に保持するために個別に場所指定可能である。コンパートメントは、隣接コンパートメント間の接触が阻止されるようなコンパートメントである。コンパートメントは長方形であってもよいが、いかなる適当な別個の形状を使用してもよい。したがって、本発明は、揺動プラットフォームがコンパートメントに分割されている、本明細書に記載のアセンブリに関する。
【0028】
本発明は、特に、リアクタフレーム及びリアクタフレームに取り付けられた少なくとも一つの揺動プラットフォームを含み、前記少なくとも一つのプラットフォームが、少なくとも2リットルの全体積を受けるように適合された少なくとも一つの使い捨てバッグを保持することができるバイオリアクタアセンブリであって、前記少なくとも一つの揺動プラットフォームが、プラットフォームの揺動がバッグ中の流体を動かし、波状の動きを形成させるようなトレー状付形物を含むことを特徴とするバイオリアクタアセンブリに関する。
【0029】
揺動プラットフォームの上面は、プラットフォームの外側境界においても、前記揺動プラットフォームの上面に対して垂直に上に突出する延長部を有することができる。前記延長物は、たとえば幅約74cm、奥行き約83cm、高さ約20cmのトレー状構造(トレー)を形成することができる。したがって、本発明は、前記揺動プラットフォームがトレー状付形物を有することができる、本明細書に記載のアセンブリに関する。トレー状の付形物又は構造は、揺動中のバッグの配置を支持することができる。前記トレー状構造をコンパートメントに分割してもよいことは明らかであろう。そのようなものとして、本発明は、前記トレー又はトレー状構造が少なくとも一つのインサートを含むことをさらに特徴とする、本明細書に記載のバイオリアクタアセンブリに関する。前記インサートは、トレーをコンパートメントに分割することができ、揺動中の使い捨てバッグの配置を支持することができる。
【0030】
各プラットフォームは、少なくとも一つのバッグを保持するように適合されている。バッグのサイズが小さくなるならば、各プラットフォームが2個以上のバッグを保持することもできるということは明らかであろう。たとえば、本発明のバイオリアクタアセンブリは、プラットフォームあたり1〜約24個のバッグ、好ましくはプラットフォームあたり1又は2又は3又は4又は6又は8又は9又は12又は15又は16又は18又は20又は24個のバッグを含むことができる。
【0031】
好ましくは、バッグは使い捨て可能である。バッグは、ガス流入及び制限されたガス流出によって加圧することができる。バッグは、大気圧に対して過圧を有することもできる。この最大限の過圧は、個々のバッグの強度に依存し、原則的には制限されない。
【0032】
加圧バッグの形状は、プラットフォームの傾動が方向転換するとき、正しい液体の転動波の形成を決定する。大部分の場合、加圧バッグは、偏平化したバルーンの形態をとる。バッグの正しい形態は、トレー状付形物を有することができるプラットフォームそのものによって指定されることができる(図4を参照)。図4のプラットフォームは直線的な側面を含むが、カーブした側面を有するプラットフォームもまた本発明の一部であることが特に強調される。
【0033】
バッグのサイズが揺動プラットフォームの寸法にとってわずかに大きすぎ、バッグが揺動プラットフォームの正方形形状を占有する傾向を示すならば、インレー(13)を揺動プラットフォームの内側に前面及び背面に沿って配置すると、培養バッグの正しいカーブを達成することができ、それが他方で転動波の流体力学的性質を変化させる。
【0034】
あるいはまた、波状の動きを支持するバッグの正しい形状は、たとえば、バッグ固有の性質によって達成することができる。加圧培養バッグの前面及び背面(後面)の丸みのある形状が、プラットフォームの揺動が方向転換するとき、正しい転動波を誘発する。
【0035】
バッグの正しい形状を支持するもう一つの方法は、ほとんど又は全く拡張しない、バッグのボディの周囲の補強ストラップによる方法又は外的手段、たとえばバッグの上部に外部支持装置、たとえばクランプ又は強固なふた(12)を取り付ける方法である。ふたは、バッグを定位置に維持するのに役立つことができる。さらには、ふたは、バッグに対して下向きの力を加えることができ、それにより、バッグは、揺動時に流体の波状の動きを支持する立体形状を帯びる。したがって、本発明は、前記トレーが少なくとも一つのふたをさらに含むことを特徴とする、本明細書に記載のアセンブリに関する。
【0036】
強固なふた(12)は、使い捨てバッグ中に封止することができる管コネクタへのアクセスを許す、たとえば幅約5cmの開放スリットを有することができる。培地投入、接種、空気流入及び流出、サンプリングポートならびにモニタリングセンサ(必要な場合)のための使い捨て管材は、標準コネクタ、たとえば一般に使用されるルアーロックを使用して、開放溝(9)中に配置された、必要なポンプ、モニタ設備又は下流側の処理装置に接続する管材に接続することができる。もう一つの実施態様では、揺動プラットフォームは、揺動プラットフォームの上面から下面に延びる穴をたとえばプラットフォームの前面に含むことができ、プラットフォームの前記前面、ひいてはバッグが下向きに傾動したとき、この穴を通して管を接続して培養物の容易な収穫を可能にすることができる。
【0037】
前記バッグそれぞれは、2〜500リットル、好ましくは約5〜300リットル、より好ましくは20〜200リットル、さらに好ましくは50〜100リットル、もっとも好ましくは約70リットルの全容積を有することができる。あるいはまた、約35リットルのバッグ2個又は約20リットルのバッグ3個が適当であろう。本発明では、バッグの全容積は、液状媒体とガス充填ヘッドスペースとを合わせた容積と定義される。
【0038】
このバイオリアクタアセンブリに関して記載されるような滅菌使い捨てバッグは広く利用可能である。これらは、滅菌された空のバッグ又は無菌の乾燥粉末状媒体を予備充填されたバッグ又は滅菌された液状媒体を予備充填されたバッグを含む。これらのバッグは、求められる配置及びサイズの管コネクタの供給業者(たとえば、Cambrex社、米国、Stedim、米国、Millipore、米国、Wave Biotechnology、スイス)により、容易にカスタマイズすることができる。使い捨てバッグ材料は、培養要件に依存して選択され、簡単なPEプラスチック箔又は複合PE/PP箔から種々の起源の積層プラスチック材料(PE/PP/EVA/ナイロンなど)(そのうち一番内側の箔はバッグの内容物と化学的に反応しない。たとえば、培地中へのプラスチック軟化剤の拡散があってはならない、箔へのホルモンの吸収があってはならない、発熱因子を含んではならない等々)にまで及ぶことができる。箔は、当該技術で一般に公知である加熱装置により、揺動プラットフォーム上でのユニットサイズに適切である長さ及び幅で封止することができる。バッグは、登録されたクラス10.000クリーンルーム中で製造することができ、使用の前に、漏れに関して、たとえばASTM−F2095−01認定試験(FDA連邦公報)を使用して検査することができる。
【0039】
本発明のバッグは、微生物、細胞又は小さな有機体を存続、増殖又は培養するのに特に適している。したがって、本発明は、微生物、細胞又は有機体を使い捨てバッグ中で培養する方法に関する。特に、本発明は、使い捨てバッグ中で微生物、細胞又は有機体を平行培養する方法であって、
(a)増殖培地及び培養試料をバッグ、好ましくは少なくとも二つのバッグに導入するステップ、
(b)前記バッグを、本明細書に記載のバイオリアクタアセンブリの揺動プラットフォーム又はトレーに取り付け、おそらくはバッグをプラットフォーム上に分散させるステップ、
(c)プラットフォーム又はトレーを一つの自由度で揺動させて、それにより、バッグ中の液状媒体に波動を誘発するステップ
を含み、ステップ(a)及び(b)の順序を互換する、たとえば逆にすることができる方法に関する。そのようなものとして、本発明は、プラットフォームの揺動が、毎分約1〜60回、好ましくは毎分10〜45回、より好ましくは毎分20〜30回の範囲の所定の速度に設定されている上記方法に関する。好ましくは、プラットフォームの揺動は、バッグ中の液状媒体の波動を誘発し、持続させる。
【0040】
限定なしに、培養に使用される細胞は、動物、哺乳類、鳥類、は虫類、魚類、両生類、ヒト、節足動物、環形動物、昆虫、海綿体、線形動物、植物、真菌、酵母又は微生物起源の細胞であることができる。本発明の方法は、バクテリオファージをはじめとするウイルスの産生に使用される細胞に関するということが理解されよう。
【0041】
バイオリアクタは、あらゆる種類の細胞、たとえば哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、ウイルス、マイクロ担体培養物、酵母、バクテリア、発端培養物などをインキュベートし、培養するのに適している。さらには、より複雑な系、たとえば多細胞系及び器官の培養を可能にする。使い捨てバッグを使用するモジュール式設計はさらに、好気性条件及び嫌気性条件をはじめとする異なる条件下での細胞のインキュベート及び培養を可能にする。
【0042】
バイオリアクタはまた、成分どうしの一定の混合を要する他のプロセスに使用することもできる。一般に、揺動は、かく拌又はバブリングのような他の混合方法が不可能である場合に実施することができる。これらのプロセスの例は当該技術で周知であり、溶解、均質化、酵素インキュベートをはじめとするインキュベート、たとえば親和力に基づく分離、乳化及び発酵を含む。したがって、本発明は、使い捨てバッグ中で成分を平行インキュベート又は均質化する方法であって、
(a)液状媒体及び少なくとも一つの他の成分を使い捨てバッグに導入するステップ、及び
(b)前記バッグを、本明細書に記載のバイオリアクタアセンブリの揺動プラットフォーム又はトレーに取り付けるステップ、及び
(c)プラットフォーム又はトレーを一つの自由度で揺動させて、それにより、バッグ中の液状媒体に波動を誘発するステップ
を含み、ステップ(a)及び(b)の順序を互換することができる方法に関する。
【0043】
同じくこれらのプロセスの場合、使い捨てバッグを使用するモジュール式設計は、これらのプロセスが異なる条件、たとえば高又は低酸素圧、嫌気性条件、不活性ガスなどの適用の下で起こることを可能にする。
【0044】
これに加えて、使い捨てバッグを使用するモジュール式設計は、これらのプロセス中に条件を可変性にして、それにより、巧緻なプロセスを実施することを可能にする。
【0045】
バイオリアクタアセンブリ全体を、培地を加熱又は冷却するための温度制御チャンバの中に構築することもできるし、揺動プラットフォームを、広く利用可能なフラットなサーモスタット式加熱要素又は培養バッグを載せることができるマットとともに設置することもできる。温度制御チャンバは、病原性有機体を増殖させるとき安全措置として燻蒸消毒が可能でなければならない場合、容易に気密性にすることができる。
【0046】
最後の実施態様では、本発明は、微生物、細胞又は有機体の培養、好ましくは平行培養のための、上記のバイオリアクタアセンブリの使用に関する。
【0047】
当業者には、広く多様なニーズを受け入れるために本明細書に記載のバイオリアクタアセンブリを構成及び再構成することができることが明らかであろう。
【0048】
本発明のリアクタアセンブリを当該技術で公知の他のバイオリアクタと区別する主要な特徴は、このリアクタアセンブリが、新たな各培養容積を最適化するさらなる必要なしに、約2リットルの小さな容積から500リットルの大容積までの線形スケールアップを可能にするということである。
【0049】
以下、好ましい実施態様の詳細な説明を、限定としてではなく、例示として提供する。
【0050】
好ましい実施態様の詳細な説明
図1(正面図)及び図2(側面図)は、バイオリアクタアセンブリの一般的設計の好ましい実施態様を示す。使い捨てバッグのための全部で4×4個のユニットを保持する4個の揺動プラットフォーム(6)が、2個の垂直ポール(7)の間で、常に平衡状態にあるように、隣接プラットフォーム間の最大角度30°で互いの上に取り付けられている。周波数調整された1.5kWの電子モータ(1)が、取り付けられたギヤボックス(Z)とともに、リアクタフレームの上に配置されている。モータは、ギヤボックス(Z)を介して第一の連結棒(2)に接続され、この連結棒は、一定範囲の取り付け点を有して、それにより、モータの円運動を、すべてのプラットフォームの揺動角が10〜30°の範囲であるような方法で一つの平面における動きにする。揺動は、強力軸受けを含む3個の異なるバー又はタンブラ(2、3、5)を介して伝達される。バー(2)は、いくつかの位置でギヤボックスに取り付けることができ、それにより、プラットフォーム担持軸(4)を通過する水平軸に対して最大+15〜−15°の揺動角に効果的に影響を加える。タンブラ(3)中のプラットフォーム担持軸の中央軸受け(11)が、揺動プラットフォーム(6)を担持する軸(4)の軸受けの垂直に上に配置されている。アセンブリは、垂直ポール(7)と垂直ポールに取り付けられた支持ビーム(8)との間の水平ビーム(10)によって補剛されている。揺動は、接続軸(14)によってモータとは反対の側に伝達され、その側から、同様なバー及びタンブラのセットが動きをすべての揺動プラットフォームに伝達する。いずれの部材(7)及び(8)も床に固着されている。
【0051】
揺動プラットフォーム(6)は、軸受け装着軸(4)に取り付けられ、使い捨て培養バッグを保持するように設計され、83cmの深さ及び20cmの高さを有する。好ましくは、プラットフォームは、図4に示すようなトレー状付形物を有して、プラットフォームの揺動がバッグ中の流体を動かし、波状の動きを形成させるようになっている。幅は、1個のプラットフォーム上に配置される使い捨てバッグの数及びプラットフォームの長さに依存する。この例では、ユニット幅は74cmであり、4個のユニットを保持する場合でプラットフォーム全幅は300cmであり(図2を参照)、幅80cm、深さ90cmのバッグサイズを保持することができる。ひとたび使い捨てバッグが保持ユニットの中に配置されると、バッグは、使い捨てバッグ中に封止された管コネクタへのアクセスを許す約5cm幅の開放スリットを有する強固なふた(12)によって覆われる。培地投入、接種、空気流入及び流出、サンプリングポートならびにモニタリングセンサ(必要な場合)のための使い捨て管材は、標準コネクタを使用して、開放溝(9)中に配置された、必要なポンプ、モニタ設備又は下流側の処理装置に接続する管材に接続される。また、揺動プラットフォームの下面には穴が設けられ、バッグのその側が下に傾動したときこの穴を通して管を接続して培養物を容易に収穫できるようにしている。使い捨てバッグは、ガス流入及び制限されたガス流出によって加圧され、ひとたびふた(12)が定位置に固着されると、偏平化したバルーンの形態をとる。
【0052】
実施例
実施例1:バイオリアクタへの応用
この実施例では、何種かの微生物を本発明のバイオリアクタで増殖させた。これら対象の培養微生物は、Rhizobium radiobacter(Young, J. M., Kuykendall, L. D., Martinez-Romero, E., Kerr, A. & Sawada, H. (2201). Int J Syst Evol Microbiol 51, 89-103; ATCC 19358)及びArthrobacter histidinolovans(Skerman, V. B. D., McGowan, V., and Sneath, P. H. A. (1980). (editors). Int. J. Syst. Bacteriol., 30, 225-420; ATCC 11442)であった。
【0053】
Rhizobium radiobacterは、バイオリアクタを使用して、1リットルあたり50マイクロリットルの消泡剤204(Sigma)で補足した0.5*LBブロス(2.5g/l酵母抽出物、5g/lペプトン、2.5g/l NaClを含有)0.8リットルを充填した5リットルバッグ中、29℃及び20rpmで増殖させた。培養物は、エアポンプを使用する連続エアレーション下で増殖させた。培養物を、振とうフラスコ中29℃及び225rpmで増殖させた終夜(約24時間)培養物からOD1.3(600nm)で接種した。培養中、微生物の増殖の指標として異なる時点における光学密度(OD)を計測することにより、培養密度をモニタした。
【0054】
Rhizobium radiobacterと同様にして、Arthrobacter histidinolovansを、バイオリアクタ中、1リットルあたり50マイクロリットルの消泡剤204(Sigma)で補足した0.5*LBブロス0.8リットルを充填した5リットルバッグ中、29℃及び20rpmで増殖させた。培養物は、エアレーションポンプを使用する連続エアレーション下で増殖させた。培養物を、振とうフラスコ中29℃及び225rpmで増殖させた終夜(約24時間)培養物からOD1.0(600nm)で接種した。培養中、微生物の増殖の指標として異なる時点における光学密度(OD)を計測することにより、培養密度をモニタした。
【0055】
Rhizobium radiobacter及びArthrobacter histidinolovansの結果を表1に示す。この表から、このバイオリアクタが両種のバクテリアの培養に非常に適していることが明らかである。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例2:大腸菌におけるiMAbタンパク質の発現
大腸菌におけるタンパク質産生のためのバイオリアクタの使用を研究するため、大腸菌BL21(Al)(Novagen)を、pET−12a(Novagen)に基づく発現ベクタCM126−iMAb(ベクタはWO03050283に記載)で形質転換した。細胞を、電気穿孔によってベクタで形質転換し、振とうフラスコ中、37℃、225rpmで終夜増殖させた。その後、細胞を、バイオリアクタ上、30℃、40rpmで、70リットル(全容積)バッグ中、1リットルあたり50マイクロリットルの消泡剤204(Sigma)及びカルベニシリン(100マイクログラム/ml)で補足した3*TY培地(24g/lトリプトン、15g/l酵母抽出物、5g/l NaCl)を含有する培地35リットル中、OD0.1(600nm)で接種した。OD0.9(600nm)に達したところで、イソプロピルチオ−β−ガラクトシド(IPTG)を0.2%アラビノーズとともに最終濃度1mMまで加えてタンパク質発現を開始させた。エアレーションポンプを使用して培養物を絶えずエアレーションした。IPTG添加の約4時間後に細胞を収穫し、中空糸技術を使用して濃縮し(400kDのカットオフで)、濃縮したペレットを使用まで−20℃で貯蔵した。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE、図5を参照)によってタンパク質発現を分析した。細胞の湿重量及び乾燥重量を測定し、全タンパク質発現量を計算した。使用したバクテリア誘導システムのせいで、培養物のODはあまり高くなかった。iMabタンパク質を発現する大腸菌細胞は、バイオリアクタ中で非常に効率的に、全タンパク質の40%の優れた発現レベルで増殖することが結論づけられた(図5を参照)。特に、さらなる最適化なしに35リットル量の培養物をバイオリアクタで容易に増殖させることができることは、優れたタンパク質発現と相まって、非常に有益である。
【0058】
この培養の詳細は次のとおりであった。
全培養物量: 35リットル
OD600nm: 7.6
細胞湿重量: 5.87g/l
細胞乾燥重量: 1.38g/l
全タンパク質: 0.69g/l
iMab発現: 全タンパク質の40%
iMab産生: 0.28g/l
35リットルバッチ中の全iMab: 9.8g
【0059】
実施例3:線形スケーリング性
大腸菌におけるタンパク質発現のためのバイオリアクタの線形スケールアップ特性を研究するため、大腸菌BL21(DE3)(Novagen)を、pET−12a(Novagen)に基づく発現ベクタCM126−iMAb(WO03050283に記載)で形質転換した。細胞をベクタで電気穿孔し、4.5%(w/v)グルコース及び100マイクログラム/mlカルベニシリンで補足した3×SY培地(24g/lソイトン、15g/l酵母抽出物、5g/l NaCl)100mlを含有する振とうフラスコ中で増殖させた。培養物を37℃、225rpmでインキュベートした。線形スケールアップのために播種量を拡大するため、振とうフラスコ培養物を使用して、培地(振とうフラスコと同一)5リットルを含む13リットルバッグに接種した。OD1.5(600nm)に達したのち、この培養物を、中空糸技術により、400kDaの膜カットオフサイズ、3100cm2の表面積、14.5psiで180L/hのクロスフロー速度、10psiの膜間圧で濃縮した。
【0060】
線形スケールアップ実験で試験したバッグ容積は、3、8、12、40リットルであった。すべてのバッグの充填率は50%であった。すべてのバッグは長さが同一であった。バッグの幅(広さ)を変えることにより、液面レベルを同一に維持した。同一の長さ及び液面は、かく拌波がすべてのバッグで同一であることを保証するのに役立つものであった。
【0061】
バッグには、1リットルあたり50マイクロリットルの消泡剤204(Sigma)及び100マイクログラム/mlのカルベニシリンで補足した0.2μmフィルタ滅菌3×SY培地を充填した。接種の前に、バッグを37℃で予熱した。バッグに対し、0.1の出発ODの濃縮細胞を接種した。細胞培養物を、37℃、12°の揺動角及び毎分40回の揺動速度でインキュベートした。エアシリンダを使用して、培養物を、培養物10リットルあたり毎分1リットル流量で連続的にエアレーションした(O220%、N280%)。接種後T=0、105、235、325及び960分で各バッグから試料を採取した。収集した試料からOD(600nm)及びpHを決定した(図6及び表2を参照)。接種後980分で細胞を収穫した。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE、図8を参照)によって最終試料のタンパク質発現を分析した。細胞の乾燥重量を二重反復で測定し、全タンパク質発現量を計算した(図7を参照)。
【0062】
【表2】

【0063】
4個のバッグのODはすべての時点ですべて同程度であった(図6)。t=325分まで、ODはほぼ重複していたが、最終点で、容積に関連するものではないいくらかの違いが出た(最大差は20%)。表2から結論づけられるように、培養物のpHは時間に沿って非常に同程度であった。最終時点でもpHの差は0.2以下である。
【0064】
4個のバッグの最終試料の計測された乾燥重量(図7)は、培養量1リットルあたり約775mgの平均乾燥重量を示す。すべての最終試料の乾燥重量は、10%のマージン内でほぼ同程度であった。図8のiMab発現分析は、OD、pH及び乾燥重量に関する従来の研究結果を極めたものである。iMAbタンパク質発現は、ゲル中で認められたように、4個のバッグでほぼ同一であり、全大腸菌タンパク質の約25%であると推定されて、本バイオリアクタを使用する培養のスケールアップの線形性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】好ましい実施態様の正面図である。
【図2】好ましい実施態様の側面図である。
【図3】ミニバイオリアクタを示す図である。
【図4】プラットフォーム形状を示す図である。
【図5】iMab発現を示すポリアクリルアミドゲルを示す図である。
【図6】線形スケールアップにおける4個のバッグの相対光学密度を示す図である。
【図7】t=960分で最終試料に関して二重反復で決定した細胞乾燥重量を示す図である。
【図8】最終培養試料のSDS−PAGE分析を示す図である(t=960分)。ゲルは、クーマシーブリリアントブルーで染色した。
【符号の説明】
【0066】
1 ステップレス電気モータ
2 タイプ1連結棒
3 接続タンブラ
4 軸受けを通過するプラットフォーム担持軸
5 タイプ2連結棒
6 揺動プラットフォーム
7 垂直ポール
8 支持ビーム
9 開放したケーブル及び管溝
10 水平支持ビーム
11 接続軸の軸受け
12 覆いふた
13 インレー(省略可能)
14 接続軸
z ギヤボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアクタフレーム及びリアクタフレームに取り付けられた少なくとも一つの揺動プラットフォームを含み、前記少なくとも一つのプラットフォームが、少なくとも2リットルの全体積を受けるように適合された少なくとも一つの使い捨てバッグを保持することができるバイオリアクタアセンブリであって、前記少なくとも一つの揺動プラットフォームが、プラットフォームの揺動がバッグ中の流体を動かし、波状の動きを形成させるようなトレー状付形物を含むことを特徴とするバイオリアクタアセンブリ。
【請求項2】
リアクタフレーム及びリアクタフレームに取り付けられた少なくとも一つの揺動プラットフォームを含み、前記少なくとも一つのプラットフォームが、少なくとも2リットルの全体積を受けるように適合された少なくとも一つの使い捨てバッグを保持することができるバイオリアクタアセンブリであって、プラットフォームの動きが、運動サイクル中に前記プラットフォームの重量分布を概ね平衡状態に維持するように適合されていることを特徴とするバイオリアクタアセンブリ。
【請求項3】
揺動プラットフォームが垂直又は略垂直の軸に沿って互いの上に配置されていることをさらに特徴とする、請求項1又は2記載のバイオリアクタアセンブリ。
【請求項4】
前記少なくとも一つのプラットフォームそれぞれを水平軸に沿って一つの自由度で揺動させるための手段をさらに含むことをさらに特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリ。
【請求項5】
プラットフォームを揺動させるための手段が、プラットフォームを一つの自由度でプラットフォームの水平位置に対して−15°〜+15°の所定の角度範囲で揺動させるように適合されていることをさらに特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリ。
【請求項6】
前記揺動プラットフォームが少なくとも二つのコンパートメントに分割されていることができることをさらに特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリ。
【請求項7】
前記少なくとも一つのバッグが外部支持手段によってプラットフォーム上の定位置に維持されることをさらに特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリ。
【請求項8】
前記プラットフォームがトレーを含み、前記トレーが好ましくは少なくとも一つのインサートを含む、請求項1〜7のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリ。
【請求項9】
前記トレーが少なくとも一つのふたをさらに含むことをさらに特徴とする、請求項8記載のバイオリアクタアセンブリ。
【請求項10】
前記少なくとも一つの揺動プラットフォームそれぞれの奥行き(x)が約0.5m〜約1.2m、好ましくは約0.85mの寸法を有することをさらに特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリ。
【請求項11】
前記少なくとも一つの揺動プラットフォームそれぞれの幅(y)が約0.4m〜8m、好ましくは約3mの寸法を有することをさらに特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリ。
【請求項12】
リアクタフレームが、鋼、アルミニウム又はステンレス鋼からなる群より選択される材料でできていることをさらに特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリ。
【請求項13】
プラットフォームを揺動させるための前記手段が、周波数調整エレクトロモータ又は単一ステップレス電子モータを含むことをさらに特徴とする、請求項3〜12のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリ。
【請求項14】
微生物、細胞又は有機体を培養するためにプラットフォームあたり約1〜24個の使い捨てバッグを含み、前記バッグそれぞれが約2〜500リットルの全容積を有する、請求項1〜13のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリ。
【請求項15】
細胞培養又はウイルス培養の線形スケールアップを可能にするバイオリアクタアセンブリ。
【請求項16】
使い捨てバッグ中で微生物、細胞又は有機体を平行培養する方法であって、
(a)増殖培地及び培養試料を少なくとも二つのバッグに導入するステップ、
(b)前記バッグを、請求項1〜15のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリの揺動プラットフォーム又はトレーに取り付けるステップ、及び
(c)プラットフォーム又はトレーを一つの自由度で揺動させて、それにより、バッグ中の液状媒体に波動を誘発するステップ
を含み、ステップ(a)及び(b)の順序を互換することができる方法。
【請求項17】
前記細胞が、動物細胞、哺乳類細胞、鳥類細胞、は虫類細胞、魚類細胞、両生類細胞、ヒト細胞、節足動物細胞、海綿体細胞、環形動物細胞、昆虫細胞、線形動物細胞、植物細胞、真菌細胞、酵母又は微生物細胞からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記細胞が、バクテリオファージをはじめとするウイルスの産生に使用される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
使い捨てバッグ中で成分を平行インキュベート又は均質化する方法であって、
(a)液状媒体及び少なくとも一つの他の成分を使い捨てバッグに導入するステップ、
(b)前記バッグを、請求項1〜15のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリの揺動プラットフォーム又はトレーに取り付けるステップ、及び
(c)プラットフォーム又はトレーを一つの自由度で揺動させて、それにより、バッグ中の液状媒体に波動を誘発するステップ
を含み、ステップ(a)及び(b)の順序を互換することができる方法。
【請求項20】
前記少なくとも一つのプラットフォームそれぞれの揺動が、毎分約1〜60回、好ましくは毎分約10〜30回の範囲の所定の速度に設定されている、請求項16〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
混合、溶解、均質化、酵素インキュベートをはじめとするインキュベート、乳化及び/又は発酵のための、請求項1〜15のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリの使用。
【請求項22】
微生物、細胞又は有機体の培養のための、請求項1〜15のいずれか1項記載のバイオリアクタアセンブリの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−513034(P2008−513034A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532785(P2007−532785)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007094
【国際公開番号】WO2005/111192
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】