説明

少なくとも1個の触媒層中にアンチモン酸バナジウムを有する、カルボン酸及び/又は無水カルボン酸を製造するための多層触媒、及び低いホットスポット温度を有する無水フタル酸の製造方法

本発明は、カルボン酸及び/又は無水カルボン酸を製造するための触媒系であって、重畳触媒層の大部分が反応管中に配置され、アンチモン酸バナジウムがその触媒層の少なくとも一層の活性触媒材料に導入されていること、を含む系に関する。さらに、本発明は、少なくとも一種の炭化水素及び分子状酸素を含むガス流が触媒層の大部分を通過し、且つ最大ホットスポット温度が425℃未満である、気相酸化のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸及び/又は無水カルボン酸を製造するための触媒系であって、重畳触媒層の大部分が反応管中に配置され、アンチモン酸バナジウムがその触媒層の少なくとも1個における活性触媒材料に導入されていること、を含む系に関する。本発明は、さらに、少なくとも一種の炭化水素及び分子状酸素を含有するガス流が触媒層の大部分を通過し、且つ最大ホットスポット温度が425℃未満である、気相酸化のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのカルボン酸及び/又は無水カルボン酸は、固定床反応器中で、ベンゼン、キシレン、ナフタレン、トルエン又はジュレン等の炭化水素の触媒気相酸化により工業的に製造される。このような方法で、安息香酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又は無水ピロメリト酸等を得ることができる。一般に、酸素含有ガス及び酸化されるべき出発材料の混合物は、触媒床が存在する管に通される。その温度を調整するために、その管は溶融塩等の伝熱媒体により包囲されている。
【0003】
本発明の方法で用いられる触媒は、一般に、触媒活性材料がシェルの形態で不活性支持体に施された被覆触媒である。その触媒活性材料のシェルの厚さは、通常、0.02〜0.25mm、好ましくは0.05〜0.15mmである。触媒における活性組成物の割合は、通常、5〜25質量%であり、たいていは7〜15質量%である。一般に、触媒は基本的に均一な化学組成を有する活性材料のシェルを備える。さらに、2層以上の活性材料の異なるシェルを連続して支持体に施すこともまた可能である。その際、これは2層シェル又は多重シェル触媒とよばれる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
不活性支持体材料としては、特許文献2等に記載されるように、芳香族炭化水素を、アルデヒド、カルボン酸及び/又は無水カルボン酸へと酸化させるための被覆触媒の製造の際に有利に用いられる、実質的に全ての先行技術に係る支持体材料を用いることができる。好ましくは、直径3〜6mmの球状形態であるか、あるいは外径5〜9mm、長さ4〜7mm及び内径3〜7mmのリング形態のステアタイトが用いられる。
【0005】
通常、二酸化チタンが触媒活性組成物のためにアナターゼ形態で用いられる。二酸化チタンは、15〜60m2/gの、特に15〜45m2/gの、特に好ましくは13〜28m2/gのBET表面積を好ましくは有する。使用される二酸化チタンは、単一の二酸化チタンを、又は二酸化チタンの混合物を含み得る。後者の場合、BET表面積の値は、個々の二酸化チタンの寄与部分の質量平均である。使用される二酸化チタンは、例えば、5〜15m2/gのBET表面積を有するTiO2と15〜50m2/gのBET表面積を有するTiO2との混合物を有利に含む。
【0006】
好適なバナジウム源は、特に、五酸化バナジウム又はメタバナジン酸アンモニウムである。好適なアンチモン源は様々な酸化アンチモンである。可能なリン源は、特に、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸アンモニウム又はリン酸エステルであり、及び、特に、リン酸二水素アンモニウムである。可能なセシウム源は、酸化物若しくは水酸化物であるか、又は酸化物へと熱的に転化され得るカルボキシレート等、特に、アセテート、マロネート若しくはオキサレート、カーボネート、炭酸水素塩、硫酸塩、又は硝酸塩のような塩である。
セシウム及びリンの任意的な付加とは別に、例えば、触媒活性を減少させ、或いは増大させることにより促進剤として作用してその触媒の活性及び選択性に影響を与える多数の他の酸化物化合物が、少量、触媒活性組成物中に含まれ得る。促進剤としては、一例として、一般に酸化物又は水酸化物の形態で用いられるアルカリ金属、特に、上述のセシウム、及びまた、リチウム、カリウム及びルビジウム、酸化タリウム(I)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化錫、酸化銀、酸化銅、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ヒ素、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン及び酸化セリウムが挙げられる。
【0007】
上述の促進剤の中で、好ましい添加剤は、触媒活性組成物に対して0.01〜0.50質量%の量のニオブ及びタングステンの酸化物である。
【0008】
被覆触媒の個々のシェルの施用は、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6等に記載されるように、被覆ドラム中での支持体への溶液若しくは懸濁液の吹き付け、又は流動床中における溶液若しくは懸濁液での被覆等、それ自体公知の任意の方法により実施され得る。有機結合剤、好ましくは、有利に水性分散液形態でのアクリル酸−マレイン酸、酢酸ビニル−ラウリン酸ビニル、酢酸ビニル−アクリレート、スチレン−アクリレート及び酢酸ビニル−エチレンのコポリマーが、一般に、使用される懸濁液へと添加される。その結合剤は、例えば、35〜65質量%の固形物含量を有する水性分散液として市販されている。使用されるそのような結合剤分散液の量は、その懸濁液の質量に対して通常2〜45質量%、好ましくは5〜35質量%、特に好ましくは7〜20質量%である。
【0009】
支持体は、例えば、流動床又は移動床装置において、上昇するガス流、特に、空気中で流動化される。その装置は、通常、流動化ガスが、埋設された管(immersed tube)を介して下部から、あるいは上部から導入される円錐状又は球状の容器を含む。懸濁液はノズルを介してその上部から、側部から、又は下部から流動床へと噴霧される。埋設された管内の中心に配置されるか、あるいは埋設された管の周囲に同心円状に配置された上昇管の使用が有利である。支持体粒子を上方へと輸送する大きなガス速度は上昇管の範囲で優勢である。外側のリングでは、ガス速度は少しだけその緩和された速度を超えている。こうして、粒子は環状に且つ垂直方向に移動される。好適な流動床装置が、例えば、特許文献7に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE19839001A1
【特許文献2】WO2004/103561
【特許文献3】WO2005/030388
【特許文献4】DE4006935A1
【特許文献5】DE19824532A1
【特許文献6】EP0966324B1
【特許文献7】DE−A4006935
【特許文献8】180430/82
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
触媒支持体を触媒活性組成物で被覆するとき、通常、20〜500℃の被覆温度が採用され、そして被覆が大気圧下で、又は減圧下で実施され得る。一般に、被覆は0〜200℃で、好ましくは、20〜150℃で、特に、60〜120℃で実施される。
【0012】
結果として生じる触媒前駆体の、200℃超〜500℃までの温度での熱処理の結果として、結合剤はその施された層から熱分解及び/又は燃焼により除去される。熱処理は好ましくは気相酸化反応器中で、その場で(in situ)実施される。
【0013】
日本で公開された明細書の特許文献8は、o−キシレンから無水フタル酸への酸化のための触媒活性組成物として二酸化チタン及びアンチモン酸バナジウムを含有する二層触媒を開示している。しかしながら、可能なo−キシレン負荷及び空間速度はそれらの触媒の場合には限定される。
【0014】
例えば、標準m3当たり80〜100gの範囲のo−キシレン負荷におけるo−キシレンの無水フタル酸(PA)への酸化の際のホットスポット温度は、通常、440℃を超える。高いホットスポット温度は、o−キシレンからCO、CO2及び水への全酸化の過度な増加をもたらし、且つ触媒の損傷増大に関係する。それゆえ、可能な限り低いホットスポット温度が望ましい。
【0015】
本発明の目的は、カルボン酸及び/又は無水カルボン酸を製造するための改良された触媒、特に、標準m3当たり少なくとも80gのo−キシレン負荷のための、o−キシレンからPAへの部分的な酸化のために改良された触媒を提供することが目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
その目的は、少なくとも3個の層を有し、且つ製造の際にアンチモン酸バナジウムが少なくとも1個の触媒層に添加される、カルボン酸及び/又は無水カルボン酸を製造するための多層触媒によって達成される。そのような触媒のホットスポット温度は、アンチモン酸バナジウムを添加することなく製造された同等の触媒の場合より全体的に著しく低く、且つカルボン酸又は無水カルボン酸の収量は著しく高い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
活性材料中で少なくとも1個の層に導入されるアンチモン酸バナジウムは、任意のバナジウムとアンチモン化合物の反応により製造され得る。混合酸化物又はアンチモン酸バナジウムをもたらすための酸化物の直接反応が好ましい。アンチモン酸バナジウムは様々なV/Sbモル比を有し得る。そして、適宜に、さらなるバナジウム又はアンチモン化合物もまた含み得る。そして、さらなるバナジウム又はアンチモン化合物と混合して使用され得る。アンチモン酸バナジウムの製造は、例えば、水溶液中での酸化物の反応、又は過酸化水素の使用を含み得る。後者の場合、例えば、五酸化バナジウムが過酸化水素水溶液に溶解され、続いて三酸化アンチモンと反応させてアンチモン酸バナジウムを作り得る。
【0018】
好ましい実施の形態では、例えば、高いホットスポット温度を避けるために、本発明に係る触媒は、3個、4個又は5個の層を含むことができ、及びまた、好適な上流床及び/又は下流床との組み合わせで、あるいは中間層と共に用いられ得る。そして、その上流床及び/又は下流床並びに中間層は、一般に触媒的に不活性な、あるいは触媒活性の低い材料を含み得る。
【0019】
本発明は、さらに、少なくとも3個の層を有し、且つその製造の際にアンチモン酸バナジウムが少なくとも1個の触媒層に添加される多層触媒を用いて、炭化水素を気相酸化させる方法を提供する。本発明に係る方法は、ベンゼン、キシレン、トルエン、ナフタレン又はジュレン(1,2,4,5−テトラメチル−ベンゼン)等の芳香族C6−C10炭化水素を、無水マレイン酸、無水フタル酸、安息香酸及び/又はピロメリット酸二無水物等のカルボン酸及び/又は無水カルボン酸へと気相酸化させるために好ましい。その方法は、o−キシレン及び/又はナフタレンからの無水フタル酸の製造のために特に好適である。無水フタル酸の製造のための気相反応は一般に公知であり、例えば、WO2004/103561に記載されている。
【0020】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、ホットスポット温度は触媒層の何れにおいても425℃以下である。
【0021】
本発明は、さらに、少なくとも3個の層を有し、且つその製造の際にアンチモン酸バナジウムが少なくとも1個の触媒層に添加される多層触媒を、カルボン酸及び/又は無水カルボン酸を製造するために使用する方法を提供する。
【実施例】
【0022】
例1(本発明による)
触媒層1(CL1)(V及びSb源としてのアンチモン酸バナジウム):
アンチモン酸バナジウムの製造:
6lの脱塩水を恒温の二重壁ガラス容器に導入した。2855.1gの五酸化バナジウム及び1827.5gの三酸化アンチモンをその中に懸濁させた。続いて、さらなる1lの脱塩水でさらにすすぎ、攪拌しながら懸濁液を100℃へと加熱し、100℃に到達後、この温度で16時間攪拌した。続いて、懸濁液を80℃へと冷却し、スプレードライにより乾燥させた。入口温度は340℃で、出口温度は110℃であった。こうして得たスプレードライ粉末は、32質量%のバナジウム含量と30質量%のアンチモン含量を有していた。こうして製造したアンチモン酸バナジウムは、4.24のバナジウム酸化状態と95m2/gのBET表面積を有していた。
【0023】
懸濁液及び被覆の製造:
4.44gの炭酸セシウム、413.7gの二酸化チタン(Fuji TA 100CT型、アナターゼ、BET表面積:27m2/g)、222.1gの二酸化チタン(Fuji TA 100型、アナターゼ、BET表面積:7m2/g)及び91.6gのアンチモン酸バナジウムを1869gの脱塩水で懸濁し、18時間攪拌して均一分散を達成させた。酢酸ビニルとラウリン酸ビニルのコポリマーを含む78.4gの有機結合剤を、50質量%水性分散液の形態でこの懸濁液へと添加した。流動床装置中で、768gのこの懸濁液を、7mm×7mm×4mmの寸法を有するリング形態のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)2kgへと噴霧し、乾燥させた。
【0024】
この触媒を450℃で1時間焼結した後、ステアタイトリングに施された活性材料の量は8.4%であった。活性材料の分析内容は、V257.1%、Sb234.5%、Cs0.50%、残部TiO2であった。
【0025】
CL1とは対照的に、CL2、CL3、CL4及びCL5の製造の際に、その懸濁液を製造するためのV及びSb源として五酸化バナジウム及び三酸化アンチモンをアンチモン酸バナジウムの代わりに用いた。
【0026】
触媒層2(CL2)(V及びSb源としての五酸化バナジウム及び三酸化アンチモン):
懸濁液組成物の変更を伴う、CL1に類似した製造。450℃で1時間のその触媒の焼成後、ステアタイトリングに施された活性材料の量は9.1%であった。活性材料の分析内容は、V257.1%、Sb231.8%、Cs0.38%、16m2/gの平均BET表面積を有する残部TiO2であった。
【0027】
触媒層3(CL3)(V及びSb源としての五酸化バナジウム及び三酸化アンチモン):
懸濁液組成物の変更を伴う、CL1に類似した製造。450℃で1時間のその触媒の焼成後、ステアタイトリングに施された活性材料の量は8.5%であった。活性材料の分析内容は、V257.95%、Sb232.7%、Cs0.31%、18m2/gの平均BET表面積を有する残部TiO2であった。
【0028】
触媒層4(CL4)(V及びSb源としての五酸化バナジウム及び三酸化アンチモン):
懸濁液組成物の変更を伴う、CL1に類似した製造。その触媒の450℃で1時間の焼成後、ステアタイトリングに施された活性材料の量は8.5%であった。活性材料の分析された含量は、V257.1%、Sb232.4%、Cs0.10%、17m2/gの平均BET表面積を有する残部TiO2であった。
【0029】
触媒層5(CL5):
懸濁液組成物の変更を伴う、CL1に類似した製造。450℃で1時間のその触媒の焼成後、ステアタイトリングに施された活性材料の量は9.1%であった。活性材料の分析内容は、V2520%、P0.38%、23m2/gの平均BET表面積を有する残部TiO2であった。
【0030】
o−キシレンの無水フタル酸への酸化:
o−キシレンの無水フタル酸への触媒酸化を、塩浴を用いて冷却され、25mmの管内径を有する管型反応器中で実施した。反応器入口から反応器出口まで、80cmのCL1、60cmのCL2、70cmのCL3、50cmのCL4及び60cmのCL5を、25mmの内径を有する長さ3.5mの鉄管へと導入した。その鉄管は、温度を調整するために溶融塩により包囲されており、触媒温度測定のために、4mmの外径と、取り付けられた引き出し可能な熱電対とを有する熱電対管を備えている。
【0031】
標準m3当たり30〜100gの99.2質量%o−キシレンの負荷量を有する空気4.0m3標準/hを、その管に上から下へと通した。標準m3当たり80gのo−キシレンで、表1にまとめた結果を得た(“PA収量”は、純度100%のo−キシレンに対して得られた無水フタル酸の質量%量である)。
【0032】
例2(本発明によらない):
反応器入口から反応器出口まで、130cmのCL2、70cmのCL3、60cmのCL4、60cmのCL5を、25mmの内径を有する長さ3.5mの鉄管に導入した。例1とは対照的に、アンチモン酸バナジウムを触媒層の何れにも添加しなかった。
【0033】
【表1】

【0034】
両方の例では、反応器出口ガス中のキシレン及びフタリドの含量は0.10質量%未満であるか、又は0.15質量%未満であった。例1のPA収量は例2のそれより著しく高く、例1のホットスポット温度は例2のそれより著しく低い。
【0035】
例3(本発明による):
触媒層6(CL6)(V及びSb源としての五酸化バナジウム及び三酸化アンチモン):
懸濁液組成物の変更を伴う、CL1に類似した製造。450℃で1時間のその触媒の焼成後、ステアタイトリングに施された活性材料の量は8.5%であった。活性材料の分析内容は、V2511.0%、Sb232.4%、Cs0.22%、21m2/gの平均BET表面積を有する残部TiO2であった。
【0036】
o−キシレンの無水フタル酸への酸化:
反応器入口から反応器出口まで、80cmのCL1、60cmのCL2、70cmのCL3、50cmのCL6及び60cmのCL5を取り付けた。標準m3当たり30〜100gの99.2質量%o−キシレンの負荷量を有する空気4.0標準m3/hを、その管に上から下へと通過させた。標準m3当たり80及び100gのo−キシレンで、表2にまとめた結果を得た(“PA収量”は、純度100%のo−キシレンに対して得られた無水フタル酸の質量%量である)。
【0037】
【表2】

【0038】
例4(本発明による)
触媒層7(CL7)(V及びSb源としてのアンチモン酸バナジウム):
アンチモン酸バナジウムを、V/Sb比を変更させて例1と類似する方法により製造した。こうして得られたスプレードライ粉末は28.5質量%のバナジウム含量及び36質量%のアンチモン含量を有していた。
【0039】
懸濁液及び被覆の製造:
例4のアンチモン酸バナジウムを用い、懸濁液組成物を変更すると共に、例1を参照する。
【0040】
450℃での1時間の触媒の焼成後、ステアタイトリングに施された活性材料の量は8.3%であった。活性材料の分析内容は、V257.1%、Sb236.0%、Cs0.50%、20m2/gの平均BET表面積を有する残部TiO2であった。
【0041】
o−キシレンの無水フタル酸への酸化:
反応器入口から反応器出口まで、80cmのCL7、60cmのCL2、70cmのCL3、50cmのCL6及び60cmのCL5を取り付けた。標準m3当たり30〜100gの99.2質量%o−キシレンの負荷量を有する空気4.0標準m3/hを、その管に上から下へと通過させた。これは表3にまとめた結果をもたらした(“PA収量”は純度100%のo−キシレンに対して得られた無水フタル酸の質量%量である)。
【0042】
例5(本発明による):
触媒層8(CL8)(V及びSb源としてのアンチモン酸バナジウム):
アンチモン酸バナジウムを、V/Sb比を変更させて例1と類似の方法により製造した。こうして得られたスプレードライ粉末は35質量%のバナジウム含量と25.5質量%のアンチモン含量を有する。
【0043】
懸濁液及び被覆の製造:
例5のアンチモン酸バナジウムを用い、懸濁液組成物を変更すると共に、例1を参照する。
【0044】
450℃で1時間の触媒の焼成後、ステアタイトリングに施された活性材料の量は8.3%であった。活性材料の分析内容は、V257.1%、Sb233.5%、Cs0.55%、20m2/gの平均BET表面積を有する残部TiO2であった。
【0045】
o−キシレンの無水フタル酸への酸化:
反応器入口から反応器出口まで、80cmのCL8、60cmのCL2、70cmのCL3、50cmのCL6及び60cmのCL5を取り付けた。標準m3当たり30〜100gの99.2質量%o−キシレンの負荷量を有する空気4.0標準m3/hを、その管に上から下へと通過させた。これは表3にまとめた結果をもたらした(“PA収量”は純度100%のo−キシレンに対して得られた無水フタル酸の質量%量である)。
【0046】
【表3】

【0047】
例6(本発明によらない)
触媒層9(CL9)(V及びSb源としての五酸化バナジウム及び三酸化アンチモン):
懸濁液組成物の変更を伴う、CL1と類似した製造。450℃で1時間の触媒の焼成後、ステアタイトリングに施された活性材料の量は8.5%であった。活性材料の分析内容は、V257.1%、Sb236.0%、Cs0.38%、20m2/gの平均BET表面積を有する残部TiO2であった。
【0048】
o−キシレンの無水フタル酸への酸化:
反応器入口から反応器出口まで、80cmのCL9、60cmのCL2、60cmのCL3、60cmのCL6及び60cmのCL5を取り付けた。標準m3当たり30〜100gの99.2質量%o−キシレンの負荷量を有する空気4.0標準m3/hを、その管に上から下へと通過させた。これは表4にまとめた結果をもたらした(“PA収量”は純度100%のo−キシレンに対して得られた無水フタル酸の質量%量である)。
【0049】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸及び/又は無水カルボン酸を製造するための、少なくとも3個の層を有する多層触媒であって、
当該触媒の製造の際に、アンチモン酸バナジウムが少なくとも1個の触媒層に添加されることを特徴とする多層触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の多層触媒を用いて、o−キシレンを無水フタル酸へと酸化させる方法。
【請求項3】
ホットスポット温度が前記触媒層の何れにおいても425℃以下である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
カルボン酸及び/又は無水カルボン酸を製造するために、請求項1に記載の触媒を使用する方法。
【請求項5】
少なくとも3個の層を有する、カルボン酸及び/又は無水カルボン酸を製造するための多層触媒の製造方法であって、
アンチモン酸バナジウムを少なくとも1個の触媒層に添加することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2013−511377(P2013−511377A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539279(P2012−539279)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067432
【国際公開番号】WO2011/061132
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】