説明

少なくとも2つのグループの微生物を識別する方法

本発明は、同じ酵素活性を示す少なくとも2つのグループの微生物を識別する方法であって、a) 同じ酵素活性によって代謝される第一酵素基質と第二酵素基質とを含有する反応培地中で複数のグループの微生物をインキュベートし、b) 該グループの微生物を識別する、という工程を含んでなる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、同じ酵素活性を示す少なくとも2つのグループの微生物を識別するための方法に関する。また、本発明は、同じ酵素活性を示す少なくとも2つのグループの微生物を識別するための特定の反応培地及び同じその使用に関する。
【0002】
長い間、特定の酵素基質は微生物の酵素活性の特徴の有無を決定するために用いられてきた。これらの酵素基質は、一般的に、標的部位とも称される明らかにしようとする酵素活性に特異的な第一部位と、例えば基質が加水分解された場合にコロニーの着色を特異的に誘導したり、容易に検出可能な沈殿が出現するといった標識部位とも称される標識として作用する第二部位の2つの部位からなる。これら基質の選択によって、例えば異なる着色などの反応の有無に従って、微生物の性質を特徴付けたり、様々なグループの微生物を区別することができる。したがって、細菌の場合、大腸菌(Escherichia coli)は一般に、β-グルクロニダーゼ又はβ-ガラクトシダーゼの活性などのオキシダーゼ類の酵素活性を示すことによって明らかにされる。同様に、リステリア属(Listeria genus)は、β-グルコシダーゼ活性を示すことによって検出されうる。また、特にサルモネラ属(Salmonella genus)を示すためにエステラーゼ活性が検出されてもよい。実際、サルモネラ属は、色素生産性基質、例えばインジゴ生成の合成基質を加水分解することができる非特異的なエステラーゼを有する。サルモネラを検出する場合、より一般的にはエステラーゼ活性を有する細菌の場合、これらの細菌の検出及び/又は識別は、従来、エステラーゼ活性を有する細菌が懸濁しているコロニーの検出及び/又は識別が可能である寒天培地上で行われている。
【0003】
しかしながら、他のグループの微生物に関してある特定のグループの微生物を明らかにするための単一の酵素活性が、いつも十分であるとは限らない。例えば、グラム陰性細菌とグラム陽性細菌、例えばKESグループの細菌(クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)及びセラチア(Serratia)、グラム陰性細菌)とエンテロコッカス属の細菌(グラム陽性細菌)を区別したい場合、特異性を上げるためにいくつかの酵素活性を検出することが必要である。いくつかの酵素基質を同じ培養培地に併用することが望ましいが、生産コストを高くしうる。さらに場合によって、様々な活性を示すための条件を両立させられないので、同じ反応培地に自然に異なる活性を現させることができない。したがって、ビオメリュウから市販される色素生産性培地であるCPS ID 3を用いると、KESグループの細菌(クレブシエラ、エンテロバクター及びセラチア、グラム陰性細菌)は、オキシダーゼ活性(β-グルコシダーゼ)によって検出される、エンテロコッカス属の細菌(グラム陽性細菌)と同様に、青-緑のコロニーを産生する。これら2つのグループの区別は顕微鏡試験による更なる工程によって確認しなければならない。
【0004】
本発明は、迅速、安価かつ実施が容易な方法で様々なグループの微生物を特異的に識別し、区別するために特に適する新規の方法を提供することによって、従来の問題の解決を提案するものである。
【0005】
驚くべきことに、発明者等は、2つのグループの微生物によって示される酵素活性に特異的な基質の組み合わせを慎重に選択することによって、同じ酵素活性を示す2つのグループの微生物を区別することが可能であることを示した。
【0006】
本発明の更なる開示に移る前に、本発明の理解を促すために以下の定義を示す。
本発明の目的のために、微生物なる用語は、グラム陽性細菌又はグラム陰性細菌、酵母、及びより一般的には、研究室で操作することができる又は増幅させることができる裸眼では見えない単細胞微生物である微生物を包含する。
【0007】
グラム陰性細菌とは、以下の属の細菌を指すことができる。シュードモナス(Pseudomonas)、大腸菌(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、エンテロバクター(Enterobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、セラチア(Serratia)、プロテウス(Proteus)、カンピロバクター(Campylobacter)、ヘモフィルス(Haemophilus)、モルガネラ(Morganella)、ビブリオ(Vibrio)、エルシニア(Yersinia)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ブランハメラ(Branhamella)、ナイセリア(Neisseria)、バークホリデリア(Burkholderia)、シトロバクター(Citrobacter)、ハフニア(Hafnia)、エドワードジエラ(Edwardsiella)、エロモナス(Aeromonas)、モラクセラ(Moraxella)、パスツレラ(Pasteurella)、プロビデンシア(Providencia)、アクチノバシラス(Actinobacillus)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、ボルデテラ(Bordetella)、セデセア(Cedecea)、エルウィニア(Erwinia)、パンテア(Pantoea)、ラルストニア(Ralstonia)、シュテノトロフォモナス(Stenotrophomonas)、キサントモナス(Xanthomonas)及びレジオネラ(Legionella)。
【0008】
グラム陽性細菌とは、以下の属の細菌を指すことができる。エンテロコッカス(Enterococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、バシラス(Bacillus)、リステリア(Listeria)、クロストリジウム(Clostridium)、ガルドネレラ(Gardnerella)、コクリア(Kocuria)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、ミクロコッカス(Micrococcus)、マイコバクテリア(Mycobacteria)及びコリネバクテリウム(Corynebacteria)。
【0009】
酵母とは、以下の属の酵母を指すことができる。カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、ロドトルラ(Rhodotorula)、酵母菌(Saccharomyces)及びトリコスポロン(Trichosporon)。
【0010】
反応培地なる用語は、代謝の発現及び/又は微生物の成長に必要なすべての成分を含有する培地を意味することを目的とする。この反応培地は、表示培地としてのみ用いてもよいし、培養と表示培地として用いてもよい。前者の場合には、微生物の培養は播種の前に行い、後者の場合には、反応培地は培養培地をも構成する。この培地は、場合によって他の添加物、例えば、ペプトン、一又は複数の増殖因子、糖類、一又は複数の選択剤、バッファ、一又は複数のゲル化剤などを含有してもよい。この反応培地は、液体の形態でも、すぐに使える、すなわちチューブやフラスコ又はペトリ皿への播種用のゲルの形態でもよい。
【0011】
酵素基質なる用語は、微生物の直接的又は間接的な検出が可能となる生成物に酵素によって加水分解されうる任意の基質を意味することを目的とする。この基質は、特に、明らかにされる酵素活性に特異的な第一の部位と標識として作用する第二の部位(これ以降標識部位と称する)を含んでなる。この標識部位は色素生産性、蛍光発生性、発光性などであってもよい。固形支持体(フィルター、寒天、電気泳動ゲル)に適する色素生産性基質は、特に、インドキシル(indoxyl)ベースの基質及びその誘導体、ヒドロキシキノリン又はエスクレチン(esculetin)ベースの基質及びその誘導体であってもよく、これらはオキシダーゼ及びエステラーゼの活性の検出を可能とする。
【0012】
インドキシルベースの基質とは、特に以下のものを指すことができる。5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-アセチル-β-D-グルコサミン、5-ブロモ-3-インドリル-N-アセチル-β-D-グルコサミン、6-クロロ-3-インドリル-N-アセチル-β-D-グルコサミン、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリル-N-アセチル-β-D-グルコサミン、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-アセチル-β-D-ガラクトサミン、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-セロビオシド、5-ブロモ-3-インドリル-β-D-セロビオシド、6-クロロ-3-インドリル-β-D-セロビオシド、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリル-β-D-セロビオシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトシド、5-ブロモ-3-インドリル-β-D-ガラクトシド、6-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトシド、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトシド、6-ブロモ-3-インドリル-β-D-ガラクトシド、3-インドキシル-β-D-ガラクトシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-α-D-ガラクトシド、5-ブロモ-3-インドリル-α-D-ガラクトシド、6-クロロ-3-インドリル-α-D-ガラクトシド、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリル-α-D-ガラクトシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルコシド、5-ブロモ-3-インドリル-β-D-グルコシド、6-クロロ-3-インドリル-β-D-グルコシド、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリル-β-D-グルコシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-メチル-β-D-グルコシド、6-ブロモ-3-インドリル-β-D-グルコシド、3-インドキシル-β-D-グルコシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-α-D-グルコシド、5-ブロモ-3-インドリル-α-D-グルコシド、6-クロロ-3-インドリル-α-D-グルコシド、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリル-α-D-グルコシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-メチル-α-D-グルコシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド、5-ブロモ-3-インドリル-β-D-グルクロニド、6-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド、6-ブロモ-3-インドリル-β-D-グルクロニド、3-インドキシル-β-D-グルクロニド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-α-D-マンノシド、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリル-α-D-マンノシド、6-クロロ-3-インドリル-α-D-マンノシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-マンノシド、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリル-β-D-マンノシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-リボシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-L-フコシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-キシロシド、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリル-β-D-キシロシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルミオイノシトール-1-ホスフェート、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル ホスフェート、5-ブロモ-3-インドキシル-β-D-ホスフェート、6-クロロ-3-インドキシル ホスフェート、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル ホスフェート、3-インドキシル ホスフェート、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル アセテート、5-ブロモ-3-インドキシル-β-D-アセテート、6-クロロ-3-インドキシル アセテート、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル アセテート、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル ブチレート、5-ブロモ-3-インドキシル-β-D-ブチレート、6-クロロ-3-インドキシル ブチレート、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル ブチレート、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル オクタノエート、5-ブロモ-3-インドキシル-β-D-オクタノエート、6-クロロ-3-インドキシル オクタノエート、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル オクタノエート、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル ノナノエート、5-ブロモ-3-インドキシル-β-D-ノナノエート、6-クロロ-3-インドキシル ノナノエート、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル ノナノエート、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル デカノエート、5-ブロモ-3-インドキシル-β-D-デカノエート、6-クロロ-3-インドキシル デカノエート、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル オレエート、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル パルミテート、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル スルフェート、及び5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル スルフェート。
【0013】
また、フラボイド(flavoids)から得られる基質に言及する。「フラボイドから得られる」なる用語は、特に、3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-リボシド、3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-ガラクトシド、3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-グルコシド、3-ヒドロキシフラボン-β-D-ガラクトシド、3-ヒドロキシフラボン-β-D-グルコシド、又は、3',4'-ジヒドロキシフラボン-3',4'-ジアセテートを意味することを目的とする。
【0014】
また、ニトロフェノールベースの基質の場合にはオキシダーゼ及びエステラーゼの活性、そしてニトロアニリンベースの基質の場合にはペプチダーゼ活性を検出するために、ニトロフェノール及びニトロアニリンベースの基質及びその誘導体であってもよい。また、ヒドロキシクマリンベースの基質、特に4-メチルウンベリフェロンないしはシクロヘキセノエスクレチンベースの基質の場合にはオキシダーゼ及びエステラーゼの活性、アミノクマリンベースの基質、特に7-アミノ-4-メチルクマリンベースの基質の場合にはペプチダーゼ活性を検出するために、クマリンベースの基質及びその誘導体であってもよい。また、オキシダーゼ、エステラーゼ及びペプチダーゼの活性を検出するためにアミノフェノールベースの基質及びその誘導体であってもよい。また、オキシダーゼ及びエステラーゼの活性を検出するためにアリザリンベースの基質及びその誘導体であってもよい。最後に、ナフトールによるオキシダーゼ及びエステラーゼの活性と、ナフチルアミンによるペプチダーゼ活性を検出することができる、ナフトール及びナフチルアミンベースの基質及びこれらの誘導体であってもよい。
【0015】
「ナフトールベースの基質」なる用語は、本出願人による欧州特許第1224196号に定義されるように、特に、ナフトール、β-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、ナフトール AS BI、ナフトール AS、又はp-ナフトールベンゼインベースの基質を意味することを目的とする。これは、オキシダーゼ、エステラーゼ、ホスファターゼ又はスルファターゼ基質であってもよい。オキシダーゼ基質は、特に、N-アセチル-β-ヘキソサミニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-セロビオシド又はα-マンノシダーゼ基質である。
【0016】
「アリザリンベースの基質」なる用語は、特に、本出願人による欧州特許第1235928号に記載の基質、すなわち以下の一般式の基質を意味することを目的とする。

式中:
−Rは標的部位又はHであり、Rは標的部位又はHであり、R及びRの少なくとも一が標的部位であり、
−Rは、NHCOXタイプのH、SOH、Cl、Br、F、I、NO、NH、NR10、アシルアミノ、アミノアリール又はアミノアシルアミノであり、Xはアルキル、アリール及びアラルキル、又はアラニンなどのα-アミノ酸残基と同等であり、
−Rは、NHCOXタイプのH、SOH、Cl、Br、F、I、NO、NH、NR10、アシルアミノ、アミノアリール又はアミノアシルアミノであり、Xはアルキル、アリール及びアラルキル、又はアラニンなどのα-アミノ酸残基と同等であり、
−ある変異体では、R及びRは互いに結合しており、少なくとも5つの端、好ましくは6つの端を有する環を形成し、
−R、R、R及びRのそれぞれは以下の原子ないしは原子の基のうちの1つ:H、ハロゲン、特にCl又はBr、OH、SOH、アルキル又はアルコキシからなり、
−R及びR10はそれぞれメチル、アルキル、アリール又はアラルキルからなり、又はRないしR10の一方は環(ピペリジン、ピロリジン、モルフォリンなど)を構成し、R10ないしRの他方は水素原子を構成する。
【0017】
酵素基質は天然の基質であってよく、その加水分解生成物は直接又は間接的に検出されるものである。天然の基質とは、特にトリプトファナーゼ又はデアミナーゼ活性を検出するためのトリプトファン、デアミナーゼ活性を検出するための環状アミノ酸(トリプトファン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン)、ホスホリパーゼ活性を検出するためのフォスファチジルイノシトールなどを指すことができる。
【0018】
この趣旨において、本発明は、同じ酵素活性を示す少なくとも2つのグループの微生物を識別するための方法であって、
a) 同じ酵素活性によって代謝される第一酵素基質と第二酵素基質とを含有する反応培地中で複数のグループの微生物をインキュベートし、
b) 複数のグループの微生物を識別する
という工程を含んでなる方法に関する。
【0019】
一般的に、インキュベート及び識別工程は当業者に広く知られている。例えば、インキュベート温度は37℃であってもよい。インキュベート空気に関して、好ましくは好気性であってもよいが、嫌気性、微好気性又はCO下であってもよい。識別は、反応培地に拡散しないでコロニーに集中する呈色反応の変化を視覚化することによって肉眼にて行われてもよい。蛍光を明らかにする場合、当業者に公知の蛍光読み取り装置が用いられる。
【0020】
好ましくは、本発明は、同じ酵素活性を示す、第一グループの微生物と第二グループの微生物を識別するための方法であって、
a) 同じ酵素活性によって代謝される第一酵素基質と第二酵素基質とを含有する反応培地中で第一グループの微生物と第二グループの微生物をインキュベートし、
b) 該グループの微生物を識別する
という工程を含んでなる方法に関する。
【0021】
好ましくは、前記の同じ酵素活性は、オキシダーゼ、エステラーゼ及びペプチダーゼの酵素活性から選択され、より好ましくは前記の同じ酵素活性は、β-D-グルコシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、α-D-グルコシダーゼ、α-D-ガラクトシダーゼ、α-マンノシダーゼ、β-D-グルクロニダーゼ、N-アセチル-D-ヘキソサミニダーゼ、β-D-セロビオシダーゼ、エステラーゼ、ホスファターゼ、フォスフォリパーゼ、スルファターゼ及びペプチダーゼから選択される。
【0022】
本発明の好適な実施態様では、前記の第一グループの微生物は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のグループであり、前記の第二のグループの微生物はフェカリス菌(Enterococcus faecalis)であり、前記の同じ酵素活性はα-グルコシダーゼ活性であり、前記の第一及び第二の基質はインドキシルベースのものである。
好ましくは、第一基質は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-メチル-α-グルコシドであり、第二基質は6-クロロ-3-インドリル-α-グルコシドである。
【0023】
本発明の他の好適な実施態様では、前記の第一及び第二のグループの微生物は異なる血清型のサルモネラ菌(salmonellae)であり、前記の同じ酵素活性はエステラーゼ活性であり、前記の第一及び第二の基質はインドキシルベースのものである。
好ましくは、前記第一基質は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル オクタノエートであり、前記第二基質は5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル オクタノエートである。
【0024】
本発明の他の好適な実施態様では、前記の第一グループの微生物はグラム+細菌のグループであり、前記の第二のグループの微生物はグラム−細菌のグループであり、前記の同じ酵素活性はβ-グルコシダーゼ活性であり、前記第一基質はフラボイド誘導体であり、前記第二基質はインドキシルベースのものである。
好ましくは、前記第一基質は3-ヒドロキシフラボン-β-グルコシドであり、前記第二基質は5-ブロモ-4-クロロ-N-メチル-3-インドリル-β-グルコシドである。
【0025】
本発明の他の好適な実施態様では、前記の第一グループの微生物はグラム+細菌のグループであり、前記の第二のグループの微生物はグラム−細菌のグループであり、前記の同じ酵素活性はβ-グルクロニダーゼ活性であり、前記第一基質はナフトールベースのものであり、前記第二基質はインドキシルベースのものである。
好ましくは、前記第一基質はp-ナフトールベンゼイン-β-グルクロニドであり、前記第二基質は6-クロロ-3-インドリル-β-グルクロニドである。
【0026】
本発明の他の好適な実施態様では、前記の第一グループの微生物は酵母のグループであり、前記の第二のグループの微生物は細菌のグループであり、前記の同じ酵素活性はヘキソサミニダーゼ活性であり、前記第一基質はアリザリンベースのものであり、前記第二基質はインドキシルベースのものである。
好ましくは、前記第一基質はアリザリン-N-アセチル-β-グルコサミニドであり、前記第二基質は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-アセチル-β-グルコサミニドである。
【0027】
本発明に係る方法の実施態様に関係なく、反応培地は、好ましくはβ-D-グルクロニダーゼ活性、β-グルコシダーゼ活性、トリプトファナーゼ活性及びデアミナーゼ活性から選択される、少なくとも一、好ましくはいくつかの他の酵素活性によって代謝される、少なくとも一、好ましくはいくつかの他の基質を含んでもよい。より好適な実施態様では、前記の他の基質は、6-クロロ-3-インドリル-β-グルクロニド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-メチル-β-D-グルコシド、3',4'-ジヒドロキシ-4'-β-D-グルコシド及びトリプトファンから選択される。
【0028】
したがって、すべてβ-グルコシダーゼ活性を示す第一グループのグラム−細菌と第二グループのグラム+細菌を区別し識別することが可能であるだけでなく、少なくとも、β-グルクロニダーゼ活性を示す第三グループの細菌とデアミナーゼ活性を示す第四グループの細菌、及びトリプトファナーゼ活性を示すサブグループを識別することもできる。
【0029】
また、本発明は、同じ酵素活性を示す、少なくとも2つのグループの微生物、好ましくは第一グループの微生物と第二グループの微生物を識別するために、同じ酵素活性によって代謝される少なくとも一の第一酵素基質と少なくとも一の第二酵素基質とを含有する反応培地の使用に関する。
好ましくは、本発明は、同じ酵素活性を示す、第一グループの微生物と第二グループの微生物を識別するために、同じ酵素活性によって代謝される少なくとも一の第一酵素基質と少なくとも一の第二酵素基質とを含有する反応培地の使用に関する。
好ましくは、前記の同じ酵素活性は、オキシダーゼ、エステラーゼ及びペプチダーゼの酵素活性から選択され、より好ましくは前記の同じ酵素活性は、β-D-グルコシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、α-D-グルコシダーゼ、α-D-ガラクトシダーゼ、α-マンノシダーゼ、β-D-グルクロニダーゼ、N-アセチル-D-ヘキソサミニダーゼ、β-D-セロビオシダーゼ、エステラーゼ、ホスファターゼ、フォスフォリパーゼ、スルファターゼ及びペプチダーゼから選択される。
【0030】
本発明の好適な実施態様では、前記の第一グループの微生物は黄色ブドウ球菌のグループであり、前記の第二のグループの微生物はフェカリス菌であり、前記の同じ酵素活性はα-グルコシダーゼ活性であり、前記の第一及び第二の基質はインドキシルベースのものである。
好ましくは、第一基質は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-メチル-α-グルコシドであり、第二基質は6-クロロ-3-インドリル-α-グルコシドである。
【0031】
本発明の他の好適な実施態様では、前記の第一及び第二のグループの微生物は異なる血清型のサルモネラ菌であり、前記の同じ酵素活性はエステラーゼ活性であり、前記の第一及び第二の基質はインドキシルベースのものである。
好ましくは、前記第一基質は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル オクタノエートであり、前記第二基質は5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル オクタノエートである。
【0032】
本発明の他の好適な実施態様では、前記の第一グループの微生物はグラム+細菌のグループであり、前記の第二のグループの微生物はグラム−細菌のグループであり、前記の同じ酵素活性はβ-グルコシダーゼ活性であり、前記第一基質はフラボイド誘導体であり、前記第二基質はインドキシルベースのものである。
好ましくは、前記第一基質は3-ヒドロキシフラボン-β-グルコシドであり、前記第二基質は5-ブロモ-4-クロロ-N-メチル-3-インドリル-β-グルコシドである。
【0033】
本発明の他の好適な実施態様では、前記の第一グループの微生物はグラム+細菌のグループであり、前記の第二のグループの微生物はグラム−細菌のグループであり、前記の同じ酵素活性はβ‐グルクロニダーゼ活性であり、前記第一基質はナフトールベースのものであり、前記第二基質はインドキシルベースのものである。
好ましくは、前記第一基質はp-ナフトールベンゼイン-β-グルクロニドであり、前記第二基質は6-クロロ-3-インドリル-β-グルクロニドである。
【0034】
本発明の他の好適な実施態様では、前記の第一グループの微生物は酵母のグループであり、前記の第二のグループの微生物は細菌のグループであり、前記の同じ酵素活性はヘキソサミニダーゼ活性であり、前記第一基質はアリザリンベースのものであり、前記第二基質はインドキシルベースのものである。
好ましくは、前記第一基質はアリザリン-N-アセチル-β-グルコサミニドであり、前記第二基質は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-アセチル-β-グルコサミニドである。
【0035】
本発明の使用の態様に関係なく、反応培地は、好ましくはβ-D-グルクロニダーゼ活性、β-グルコシダーゼ活性、トリプトファナーゼ活性及びデアミナーゼ活性から選択される、少なくとも一、好ましくはいくつかの他の酵素活性によって代謝される、少なくとも一、好ましくはいくつかの他の基質を含んでもよい。より好適な実施態様では、前記の他の基質は、6-クロロ-3-インドリル-β-グルクロニド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-メチル-β-D-グルコシド、3',4'-ジヒドロキシ-4'-β-D-グルコシド及びトリプトファンから選択される。
【0036】
したがって、すべてβ-グルコシダーゼ活性を示す第一グループのグラム−細菌と第二グループのグラム+細菌を区別し識別することが可能であるだけでなく、少なくとも、β-グルクロニダーゼ活性を示す第三グループの細菌とデアミナーゼ活性を示す第四グループの細菌、及びトリプトファナーゼ活性を示すサブグループを識別することもできる。このような培地は特に尿路感染症を診断するために非常に有用である。
【0037】
また、本発明は、同じ酵素活性によって代謝される、少なくとも一の第一酵素基質と少なくとも一の第二酵素基質とを含有する反応培地に関する。
本発明の好適な実施態様では、前記第一及び第二の基質がインドキシルベースのものである。好ましくは、第一基質は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-メチル-α-グルコシドであり、第二基質は6-クロロ-3-インドリル-α-グルコシドである。このような培地は、黄色ブドウ球菌のグループとフェカリス菌のグループを識別するために特に適する。
【0038】
本発明の他の好適な実施態様では、前記第一及び第二の基質がインドキシルベースのものである。好ましくは、前記第一基質は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル オクタノエートであり、前記第二基質は5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル オクタノエートである。このような培地は、異なる血清型のサルモネラ菌のグループを識別するために特に適する。
本発明の他の好適な実施態様では、前記第一基質はフラボイド誘導体、好ましくは3-ヒドロキシフラボン-β-グルコシドであり、前記第二基質はインドキシルベースのもの、好ましくは5-ブロモ-4-クロロ-N-メチル-3-インドリル-β-グルコシドである。 このような培地は、グラム−細菌のグループに対してグラム+細菌のグループを識別するために特に適する。
【0039】
本発明の他の好適な実施態様では、前記第一基質はナフトールベースのものであり、前記第二基質はインドキシルベースのものである好ましくは、前記第一基質はp-ナフトールベンゼイン-β-グルクロニドであり、前記第二基質は6-クロロ-3-インドリル-β-グルクロニドである。 このような培地は、グラム−細菌のグループに対してグラム+細菌のグループを識別するために特に適する。
本発明の他の好適な実施態様では、前記第一基質はアリザリンベースのものであり、前記第二基質はインドキシルベースのものである。好ましくは、前記第一基質はアリザリン-N-アセチル-β-グルコサミニドであり、前記第二基質は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-アセチル-β-グルコサミニドである。このような培地は、酵母のグループに対して細菌のグループを識別するために特に適する。
【0040】
本発明の実施態様に関係なく、反応培地は、好ましくはβ-D-グルクロニダーゼ活性、β-グルコシダーゼ活性、トリプトファナーゼ活性及びデアミナーゼ活性から選択される、少なくとも一、好ましくはいくつかの他の酵素活性によって代謝される、少なくとも一、好ましくはいくつかの他の基質を含んでもよい。より好適な実施態様では、前記の他の基質は、6-クロロ-3-インドリル-β-グルクロニド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-メチル-β-D-グルコシド、3',4'-ジヒドロキシ-4'-β-D-グルコシド及びトリプトファンから選択される。
【0041】
したがって、すべてβ-グルコシダーゼ活性を示す第一グループのグラム−細菌と第二グループのグラム+細菌を区別し識別することが可能であるだけでなく、少なくとも、β-グルクロニダーゼ活性を示す第三グループの細菌とデアミナーゼ活性を示す第四グループの細菌、及びトリプトファナーゼ活性を示すサブグループを識別することもできる。
【0042】
以下の実施例は例示として挙げるものであって、限定するためのものでは全くない。これら実施例により本発明の理解がより明確になるであろう。
【実施例】
【0043】
実施例1:同じ酵素活性を示す様々なグループの微生物によって代謝される同じ基質における相違を決定するための試験
本目的は、同じ所定の酵素活性、例えばα酵素の酵素活性を示す、少なくとも2つのグループの微生物、例えば第一グループと第二グループの微生物を区別することである。
2つのグループの微生物各々の活性は、α酵素の様々な基質、例えば基質A、基質B及び基質Cに関して評価する。各々の基質A、B及びCは、区別しようとする前記第一グループの微生物と前記第二グループの微生物の代謝に適する反応培地に別々に加える。したがって、基質Aを含有する培地A、基質Bを含有する培地B、基質Cを含有する培地Cなどを作製する。
【0044】
酵母間を区別するための指標として、酵母の代謝に適する培地は特に、場合によって一部ないしは完全にグルコースフリーのSabouraud培地であってもよい。
細菌の代謝に適する培地は特に、トリプターゼ大豆培地又はコロンビア培地であってもよい。
尿中微生物の代謝に適する培地は特に、その酵素基質を含まないCPS ID 3培地であってもよい。
もちろん、区別しようとする微生物及び調べる酵素活性に応じて、他の反応培地も好ましい。本出願では、液体培地又はゲル培地であってもよい。
各々の培地は等分する。区別しようとする各々のグループの微生物の一又は複数の菌株を等分したそれぞれの培地に播く。次いで、これらの培養物は好適な条件下でインキュベートする。
【0045】
同じ酵素活性のための少なくとも2つの基質間の各々の基質の加水分解は、場合によって様々なインキュベート時間の後に評価して、存在するか否かを決定する。この加水分解の相違は微生物のグループによるものである。
このような相違が同定される場合、この加水分解の相違を表している酵素基質を補充した類似の反応培地を作製する。これは予め等分する。区別しようとする各々のグループの微生物の一又は複数の菌株を等分したこの培地に播く。次いで、これらの培養物を好適な条件下でインキュベートし、その後、場合によって様々なインキュベート時間の後に調べて、酵素的な発現の相違によって調べる微生物のグループを区別することができるか否かを評価する。実際に、複数のグループの区別は、基質間の加水分解の相違だけでなく、基質と起こりうる相互作用それぞれの加水分解によって生じるシグナル間の相違、特に酵素基質のレベル及び/又は生じるシグナルのレベルの相違に依存する。
上記に展開した実施例は、2つのグループの微生物でなく、3、4又はそれ以上のグループの微生物を区別するために同じ方法で実施することができるものである。
【0046】
実施例2:黄色ブドウ球菌とフェカリス菌との種間を区別するための、α-グルコシダーゼの2つのインドキシルベースの基質である、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-メチル-α-グルコシド(X-N-Me-α-GLU)と6-クロロ-3-インドリル-α-グルコシド(ローズ-α-GLU [ピンク-α-GLU])との組合せの使用
200ml容量の50℃で溶解したコロンビアアガーを以下の表1に示す様々な基質組成物に加えた。
表1

【0047】
次いで、構成した培地をペトリ皿に分配した。
10μlのキャリブレイトしたループ(calibrated loop)にて、0.5マクファーランド(McFarland)のキャリブレイトした懸濁液を用いて、3つの異なる株の黄色ブドウ球菌とフェカリス菌を各培地に播いた。すべての培養物を37℃で24時間インキュベートした。
24時間のインキュベート後に得た増殖と呈色の結果を表2に示す。表中、Gは増殖、Cは呈色、Iは呈色なし、Inは呈色反応強度、記号++は非常に良好な増殖、記号+は菌株の良好な増殖、記号+/−は菌株の中程度の増殖、記号−は菌株の増殖がないことを表す。1は弱い呈色強度に相当し、2は中程度、そして3は強力な強度に相当する。
表2

【0048】
上記の表2の結果は、試験した2種、黄色ブドウ球菌とフェカリス菌が各々の基質について異なる呈色反応強度を表すことを示す。同じ培地中のこれら2つの基質の組合せにより種ごとに異なる呈色反応が観察された。ゆえに、同じ酵素活性であって、この活性のための2つの基質が存在する場合には、各々の基質に対する酵素の親和性が異なる場合に2種を区別することは可能である。さらに、糖ペプチド、例えばバンコマイシン又はタイコプラニンが、例えば2〜16mg/lの間の適切な濃度で加えられる場合、この培地は、糖ペプチド耐性のグラム陽性球菌、特に「獲得された」耐性を有するもの、例として、バンコマイシン耐性の黄色ブドウ球菌(VRSA)又はバンコマイシン耐性のフェカリス菌又はフェシウム菌(E. faecium)(VRE)の検出に特に好適である。
【0049】
実施例3:異なる血清型のサルモネラ菌を区別するための、エステラーゼに対する2つのインドキシルベースの基質である5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル オクタノエート(X-C8)と5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル オクタノエート(Magenta-C8)との組合せの使用
200ml容量の50℃で溶解したコロンビアアガーを以下の表3に示す様々な基質組成物に加えた。
表3

【0050】
次いで、構成した培地をペトリ皿に分配した。
10μlのキャリブレイトしたループ(calibrated loop)にて、0.5マクファーランド(McFarland)のキャリブレイトした懸濁液を用いて、様々な血清型のサルモネラ菌を各培地に播いた。すべての培養物を37℃で24時間インキュベートした。
24時間のインキュベート後に得た増殖と呈色の結果を表4に示す。表中、Gは増殖、Cは呈色、Iは呈色なし、Inは呈色反応強度、記号++は非常に良好な増殖、記号+は菌株の良好な増殖、記号+/−は菌株の中程度の増殖、記号−は菌株の増殖がないことを表す。1は弱い呈色強度に相当し、2は中程度、そして3は強力な強度に相当する。
表4

【0051】
表4の結果は、様々な血清型のサルモネラ菌のエステラーゼ活性の親和性が基質によって可視化されたことを示す。ダブリン血清型はMagenta-C8よりも特にX-C8を加水分解する。逆に、他の血清型はMagenta-C8を選択的に加水分解し、この基質に対して呈色反応強度がより強い。この結果、同じ酵素活性のこれら2つの基質を含有する培地によって、様々な血清型のサルモネラ菌について着色したコロニーを得ることと、他の血清型のサルモネラ菌やエステラーゼを発現しない細菌からダブリン血清型を分離することが可能である。
【0052】
実施例4:β-グルコシダーゼ活性を有するグラム+細菌とグラム−細菌を区別するための、β-グルコシダーゼ基質である3-ヒドロキシフラボン-β-グルコシド(HF-β-GLU)、又は3',4'-ジヒドロキシフラボン-β-グルコシド(DHF-β-GLU)とインドキシルベースの基質である5-ブロモ-4-クロロ-N-メチル-3-インドリル-β-グルコシド(X-N-Me-β-GLU)の使用
200ml容量の50℃で溶解したコロンビアアガーを以下の表5に示す様々な基質組成物に加えた。
表5

【0053】
次いで、構成した培地をペトリ皿に分配した。10μlのキャリブレイトしたループ(calibrated loop)にて、0.5マクファーランド(McFarland)のキャリブレイトした懸濁液を用いて、エンテロバクター・クロアカ、クレブシエラ・ニューモニエ、霊菌、フェシウム菌、フェカリス菌、E.ガリナラム、黄色ブドウ球菌及び大腸菌の菌株を各培地に播いた。すべての培養物を37℃で24時間インキュベートした。
24時間のインキュベート後に得た増殖と呈色の結果を表6に示す。表中、Gは増殖、Cは呈色、Iは呈色なし、Inは呈色反応強度、記号++は非常に良好な増殖、記号+は菌株の良好な増殖、記号+/−は菌株の中程度の増殖、記号−は菌株の増殖がないことを表す。1は弱い呈色強度に相当し、2は中程度、3は強力、4は非常に強力な強度に相当する。
表6

【0054】
表6の結果は、グラム陰性のβ-グルコシダーゼ-陽性種はインドキシルベースの基質を選択的に加水分解するのに対して、グラム陽性のβ-グルコシダーゼ-陽性種はフラボイドベースの基質を選択的に加水分解する。結果として、同じ酵素活性を有するグラム陽性細菌とグラム陰性細菌を分離することが可能である。実際に、複数のグループの相違は、基質間で異なる加水分解に依存するが、基質の加水分解によって生じるシグナル間の相違にも依存する。
【0055】
実施例5:β-グルクロニダーゼ活性を有するグラム+細菌とグラム−細菌を区別するための、p-ナフトールベンゼイン-β-グルクロニド基質(pNB-β-GUR)とインドキシルベースの基質である6-クロロ-3-インドリル-β-グルクロニド(ローズ-β-GUR [ピンク-β-GUR])の使用
200ml容量の50℃で溶解したコロンビアアガーを以下の表7に示す様々な基質組成物に加えた。
表7

【0056】
次いで、構成した培地をペトリ皿に分配した。
10μlのキャリブレイトしたループ(calibrated loop)にて、0.5マクファーランド(McFarland)のキャリブレイトした懸濁液を用いて、様々な菌株の微生物を各培地に播いた。すべての培養物を37℃で24時間インキュベートした。
24時間のインキュベート後に得た増殖と呈色の結果を表8に示す。表中、Gは増殖、Cは呈色、Iは呈色なし、Inは呈色反応強度、記号++は非常に良好な増殖、記号+は菌株の良好な増殖、記号+/−は菌株の中程度の増殖、記号−は菌株の増殖がないことを表す。1は弱い呈色強度に相当し、2は中程度、3は強力、そして4は非常に強力な強度に相当する。
表8

【0057】
表8の結果は、グラム陰性のβ-グルクロニダーゼ-陽性種はインドキシルベースの基質を選択的に加水分解するのに対して、グラム陽性のβ-グルクロニダーゼ-陽性種はp-ナフトールベンゼインベースの基質を選択的に加水分解する。結果として、同じ酵素活性を有するグラム陽性細菌とグラム陰性細菌を分離することが可能である。
【0058】
実施例6:ヘキソサミニダーゼ活性を有する細菌と酵母を識別するための、アリザリンベースの基質であるアリザリン-β-N-アセチルグルコサミニド(Aliz-β-NAG)とインドキシルベースの基質である5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-N-アセチルグルコサミニド(X-β-NAG)の使用
200ml容量の50℃で溶解したコロンビアアガーを表9に示す様々な基質組成物に加えた。
表9

【0059】
次いで、構成した培地をペトリ皿に分配した。10μlのキャリブレイトしたループ(calibrated loop)にて、0.5マクファーランド(McFarland)のキャリブレイトした懸濁液を用いて、様々な菌株の微生物を各培地に播いた。すべての培養物を37℃で24時間インキュベートした。
24時間のインキュベート後に得た増殖と呈色の結果を表10に示す。表中、Gは増殖、Cは呈色、Iは呈色なし、Inは呈色反応強度、記号++は非常に良好な増殖、記号+は菌株の良好な増殖、記号+/−は菌株の中程度の増殖、記号−は菌株の増殖がないことを表す。1は弱い呈色強度に相当し、2は中程度、3は強力、そして4は非常に強力な強度に相当する。
表10

【0060】
表10の結果は、ヘキソサミニダーゼ陽性細菌がアリザリンベースの基質を選択的に加水分解するのに対して、ヘキソサミニダーゼ陽性酵母はインドキシルベースの基質を選択的に加水分解することを示す。結果として、各グループに対する酵素の親和性が異なる場合に、同じ活性に対して2つの基質を用いると同じ酵素活性を有する酵母から細菌を分離することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ酵素活性を示す少なくとも2つのグループの微生物を識別する方法であって、
a) 同じ酵素活性によって代謝される第一酵素基質と第二酵素基質とを含有する反応培地中で複数のグループの微生物をインキュベートし、
b) 複数のグループの微生物を識別する
という工程を含んでなる方法。
【請求項2】
同じ酵素活性を示す少なくとも2つのグループの微生物を識別するために、同じ酵素活性によって代謝される少なくとも一の第一酵素基質と少なくとも一の第二酵素基質とを含有する反応培地の使用。
【請求項3】
同じ酵素活性を示す、第一グループの微生物と第二グループの微生物を識別する方法であって、
a) 同じ酵素活性によって代謝される第一酵素基質と第二酵素基質とを含有する反応培地中で第一グループの微生物と第二グループの微生物をインキュベートし、
b) 該グループの微生物を識別する
という工程を含んでなる方法。
【請求項4】
同じ酵素活性を示す第一グループの微生物と第二グループの微生物を識別するために、同じ酵素活性によって代謝される少なくとも一の第一酵素基質と少なくとも一の第二酵素基質とを含有する反応培地の使用。
【請求項5】
前記の同じ酵素活性が、オキシダーゼ、エステラーゼ及びペプチダーゼの酵素活性から選択される、請求項1又は3に記載の方法又は請求項2又は4に記載の使用。
【請求項6】
・ 前記第一グループの微生物が黄色ブドウ球菌のグループであり、前記第二グループの微生物はフェカリス菌のグループであり、
・ 前記の同じ酵素活性がα-グルコシダーゼ活性であり、
・ 前記の第一及び第二の基質がインドキシルベースのものである
請求項3に記載の方法又は請求項4に記載の使用。
【請求項7】
・ 前記の第一及び第二のグループの微生物が異なるセロタイプのサルモネラ菌であり、・ 前記の同じ酵素活性がエステラーゼ活性であり、
・ 前記の第一及び第二の基質がインドキシルベースのものである
請求項3に記載の方法又は請求項4に記載の使用。
【請求項8】
・ 前記第一グループの微生物がグラム+細菌のグループであり、前記第二グループの微生物がグラム−細菌のグループであり、
・ 前記の同じ酵素活性がβ-グルコシダーゼ活性であり、
・ 前記の第一基質がフラボイド誘導体である
請求項3に記載の方法又は請求項4に記載の使用。
【請求項9】
・ 前記第一グループの微生物がグラム+細菌のグループであり、前記第二グループの微生物がグラム−細菌のグループであり、
・ 前記の同じ酵素活性がβ‐グルクロニダーゼ活動性である、
・ 前記第一基質がナフトールベースのものであり、前記第二基質がインドキシルベースのものである
請求項3に記載の方法又は請求項4に記載の使用。
【請求項10】
・ 前記第一グループの微生物が酵母のグループであり、前記第二グループの微生物が細菌のグループであり、
・ 前記の同じ酵素活性がヘキソサミニダーゼ活性であり、
・ 前記第一基質がアリザリンベースのものであり、前記第二基質がインドキシルベースのものである
請求項3に記載の方法又は請求項4に記載の使用。
【請求項11】
前記反応培地が、好ましくはβ-D-グルクロニダーゼ活性、β-グルコシダーゼ活性、トリプトファナーゼ活性及びデアミナーゼ活性から選択される、少なくとも一の他の酵素活性によって代謝される少なくとも一の他の基質を含む、請求項1、3及び5から10のいずれか一に記載の方法。
【請求項12】
前記反応培地が、好ましくはβ-D-グルクロニダーゼ活性、β-グルコシダーゼ活性、トリプトファナーゼ活性及びデアミナーゼ活性から選択される、少なくとも一の他の酵素活性によって代謝される少なくとも一の他の基質を含む、請求項2、4及び5から10のいずれか一に記載の使用。
【請求項13】
同じ酵素活性によって代謝される、少なくとも一の第一酵素基質と少なくとも一の第二酵素基質とを含有する反応培地。
【請求項14】
前記第一及び第二の基質がインドキシルベースのものである、請求項13に記載の反応培地。
【請求項15】
前記第一基質がフラボイド誘導体であり、前記第二基質がインドキシルベースのものである、請求項13に記載の反応培地。
【請求項16】
前記第一基質がナフトールベースのものであり、前記第二基質がインドキシルベースのものである、請求項13に記載の反応培地。
【請求項17】
前記第一基質がアリザリンベースのものであり、前記第二基質がインドキシルベースのものである、請求項13に記載の反応培地。
【請求項18】
また、好ましくはβ-D-グルクロニダーゼ活性、β-グルコシダーゼ活性、トリプトファナーゼ活性及びデアミナーゼ活性から選択される、少なくとも一の他の酵素活性によって代謝される少なくとも一の他の基質を含むことを特徴とする、請求項13から17のいずれか一に記載の反応培地。

【公表番号】特表2009−528042(P2009−528042A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556829(P2008−556829)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050844
【国際公開番号】WO2007/099254
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(304043936)ビオメリュー (26)
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
【Fターム(参考)】