少なくとも2成分の薬物を投与する装置
少なくとも2成分の薬物を投与する装置は、(i)第1の端部に入口開口部を伴うルーメン及びその第1の端部の反対の第2の端部に出口開口部を伴う先端部を有する内側カニューレ、並びに(ii)内側カニューレのそれぞれ第1及び第2の端部に面する互いに反対の第1及び第2の端部を有し、内側カニューレの第1の端部と第2の端部との間の軸方向長さに沿って内側カニューレを囲む外側シースを含む、同心ルーメン構成を備え、外側シースは、その第2の端部において内側カニューレに封止的かつ固定的に結合され、内側カニューレの周りの外側ルーメンを画定し、内側カニューレは、内側カニューレの周りの外側ルーメンと内側カニューレのルーメンとの間に流体連通を提供する少なくとも1つの開口部を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2成分の薬物を投与する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2種類の成分を有する薬物を、例えば患者の体組織の表面などの表面上に散布若しくは滴下するか、又は対組織内若しくは臓器内に注射するかのいずれかによって投与する装置は、基本的には既知である。具体的には、少なくとも2成分の薬物を投与する装置は、米国特許第B−6,565,539号、同第B−6,464,663号、同第B−6,234,994号、同第A−6,113,571号、国際特許出願第WO−A−2007/059801号、欧州特許第B−1 091 694号及び同第B−0 654 976号から既知である。
【0003】
米国特許出願第A−2008/0103564号、同第A−2008/0060970号、同第A−2007/0,213,660号及び国際特許出願第WO−A−2008/103296号は、フィブリン封止剤を円板内に投与する装置を開示している。この装置は、2つの同心の針、又は外側の針及び内側のカテーテルを備えている。外側の針は内側の針を更に延出させ、治療の対象である患者内に挿入されるように設計されている。
【0004】
国際特許出願第WO−A−97/28834号及び米国特許第A−5,814,022号は、2種類の成分を別個に収容する2つの円筒状の区画を含む調合器を開示している。この円筒状の区画は、同心円状に、又は並んで配置されている。本発明によれば、マニホールドは別個の内側及び外側手段を含むことができ、この内側手段は外側手段よりも遠くまで延出している。このような実施形態において、2つの円筒の内容物は、2種類の成分が一緒に混合される共通出口の中に導かれる。出願は、内側手段と外側手段との間の流体連通の存在については触れていない。
【0005】
欧州特許第A−0 139 091号は、血管内への適正な進入を示すフラッシュバック開存性確認装置を開示している。カテーテルは、カテーテルと針との間の流体流路及び針の中に延在する開口部を伴う針上カテーテルを利用している。外側カテーテルは薬物を注射するのに好適ではなく、装置は2成分の薬物を生体組織内に投与することを目的としていない。
【0006】
既知の装置を用いて、成分内の1つが成分内の別の1つを活性化することのできる薬物を投与することができる。
【0007】
既知の装置の大半は、多重ルーメンカテーテル又はカニューレを備えており、成分がその先端から出ているので、カテーテル又はカニューレの外部で一体となっている。
【0008】
米国特許第B−6,254,587号、同第A−4,897,079号、同第A−4,959,058号、同第A−5,984,889号、欧州特許第B−0 537 573号、国際特許出願第WO−A−2008/092029号、同第WO−A−2008/106357号、及び同第WO−A−84/04043号には、多重ルーメンカニューレなどを有するその他の医療装置が開示されている。
【0009】
このような装置のほとんどは、装置内で成分を混合し、並びに組織損傷の最小限化及び/又は密閉適用を確実にするには適切ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術の弱点を克服した、少なくとも2成分の薬物を投与する装置の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、少なくとも2成分の薬物を投与する装置であって、
−(i)第1の端部に入口開口部を伴うルーメン及びその第1の端部と反対の第2の端部に出口開口部を伴う先端部を有する内側カニューレ、並びに(ii)内側カニューレのそれぞれ第1及び第2の端部に面する互いに反対の第1及び第2の端部を有し、内側カニューレの第1の端部と第2の端部との間の軸方向長さに沿って内側カニューレを囲む外側シースを含む、同心ルーメン構成を備え、
−外側シースがその第2の端部において内側カニューレに封止的かつ固定的に結合され、内側カニューレの周りの外側ルーメンを画定し、
−内側カニューレが、内側カニューレの周りの外側ルーメンと内側カニューレのルーメンとの間に流体連通を提供する少なくとも1つの開口部を備えた、装置に関する。
【0012】
本発明の一実施形態において、内側カニューレの少なくとも1つの開口部は、外側シースの第2の端部に隣接して配置されている。
【0013】
この設計は、表面並びにひびわれ及び間隙などの狭い開口部上に薬物を散布若しくは滴下し、又は決められた量の薬物を、例えば椎間板(IVD)のような生体組織などの区画内に注射するための、成分が装置を出る前に相互に接触する、本発明による装置の使用を可能とする。
【0014】
別の実施形態において、本発明による装置は、薬物の成分を貯蔵する少なくとも第1の貯蔵容器及び第2の貯蔵容器を更に備え、これら容器は同心ルーメン構成と接続でき、第1の容器が内側カニューレのルーメンと流体連通し、第2の容器が内側カニューレの周りの外側ルーメンと流体連通している。
【0015】
更に別の実施形態において、本発明による装置は、容器と同心ルーメン構成との間に流体連通を提供する接続要素を更に備えている。
【0016】
本発明の更に別の実施形態において、接続要素は、第1の容器に接続する第1のポート及び第2の容器に接続する第2のポートを備え、第1のポートは内側カニューレの入口開口部と流体連通し、第2のポートは外側シースの第1の端部で外側ルーメンと流体連通している。
【0017】
代替の実施形態において、接続要素は、同心ルーメン構成の内側カニューレ及び外側シースを保持する保持要素を更に備え、保持要素は、同心ルーメン構成が中を通って延伸する内部中空スペースを備え、外側シースの第1の端部は中空スペース内に位置し、内側カニューレは終端要素の中を通って更に延伸し、第2のポートに始まって終端要素の内部中空スペース内で終端する接続経路が提供されている。
【0018】
投与すべき薬物の2種類よりも多い成分を取り扱う一実施形態において、同心ルーメン構成は、軸方向長さに沿って外側シースを囲み、外側シースの第1及び第2の端部にそれぞれ面する第1及び第2の端部を備えた少なくとも1つの更なるシースを更に備え、この更なるシースは、その第2の端部に隣接した外側シースに封止的に結合し、外側シースの周りに更なるルーメンを画定し、外側シースは、外側シースの周りの更なる外側ルーメンと内側カニューレの周りの外側シース内のルーメンとの間に流体連通を提供する少なくとも1つの開口部を備え、薬物の更なる成分を貯蔵し、同心ルーメン構成の少なくとも1つの更なるシースの第1の端部に接続できる少なくとも1つの更なる貯蔵容器が備わっている。
【0019】
本発明の更に別の実施形態において、装置は、薬物の成分を容器から同心ルーメン構成へ、更にその中を通って内側カニューレの第2の端部の先端部から外へ加圧する加圧機構を更に備えている。
【0020】
本発明の更に別の実施形態において、少なくとも1つの成分は、薬物の少なくとも第2の成分によって活性化される。
【0021】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1つの成分は、フィブリノーゲンを含み、少なくとも第2の成分はトロンビンを含んでいる。
【0022】
本発明の更に別の実施形態において、投与は注射によって実行される。
【0023】
本発明の更にまた別の実施形態において、投与は散布又は滴下によって実行される。
【0024】
本発明の別の態様は、必要としている患者に少なくとも2種類の成分を含む薬物を投与する方法に関し、この方法は、以下の工程を含む。
−本発明による装置を提供する工程と、
−同心ルーメン構成の内側カニューレの先端部を生体組織内に貫通させる工程と、
−同心ルーメン構成の内側カニューレの先端部を通じて混合状態の少なくとも2成分の薬物を投与する工程。
【0025】
本発明の一実施形態において、薬物はフィブリノーゲン成分及びトロンビン成分を伴うフィブリン封止剤であって、フィブリン封止剤中に使用できるトロンビン成分の例が、欧州特許第B−0 534 178号、国際特許出願第WO−A−93/05822号、及び欧州特許第B−0 378 798号に記載されている。
【0026】
薬物の成分のうちの1つは、米国特許第B−6,121,232号及び国際特許出願第WO−A−98/33533号に記載されている、生物活性成分(BAC)であって、欧州特許第B−1 390 485号に記載されているようにプラスミン(プラスミノゲン)が除去され、トラネキサム酸を添加していない(米国特許第B−7,641,918号)。
【0027】
別の代替の形態として、薬物は、薬前駆体成分及び薬前駆体活性化成分を伴う薬である。
【0028】
本発明の別の態様は、少なくとも2種類の成分を含む薬物を必要としている患者に投与する方法に関し、この方法は、以下の工程を含む。
−本発明による装置を提供する工程と、
−生体組織上に、同心ルーメン構成の内側カニューレの先端部を通じて混合状態の少なくとも2成分の薬物を投与する工程であって、この投与する工程は滴下又は散布によって実行される、工程。
【0029】
本発明の一実施形態において、薬物の投与の方法は、散布による。このような実施形態において、成分のうちの1つは、気体、例えば空気である。
【0030】
本発明の更なる態様において、本発明は、以下の工程を含む、患者の組織欠陥を治療する方法を提供する。
−本発明による装置を提供する工程と、
−患者に混合状態の少なくとも2種類の成分を含む薬物を投与する工程。
【0031】
本発明の一実施形態において、欠陥は、腎臓欠陥、ろう孔、潰瘍、出血、硬膜の亀裂又はひびわれ、脳脊髄液漏れ、脊椎円板欠陥、線維輪の完全裂傷及び亀裂、線維輪の破裂、椎間板の亀裂若しくはひびわれ又は椎間板の高さの減少のような脊椎の疾患、障害又は症状、心臓血管疾患、心臓疾患、焼痂、乳腺切除後の漿液腫などの漿液腫、痔、肺切除によるなどの空気漏れ、悪性胸水、膀胱炎、及び尿管吻合又は腸吻合などの吻合からなる群から選択される。
【0032】
本発明の別の実施形態において、薬物は、封止剤である。
【0033】
本発明の更に別の実施形態において、封止剤はフィブリン封止剤である。別の態様において、本発明は、同心ルーメン構成の内側カニューレの先端部を通じて混合状態の少なくとも2種類の成分を含む薬物を、表面上に投与する、本発明による装置の使用に関する。
【0034】
本発明の一実施形態において、投与は滴下又は散布によって実行される。
【0035】
本発明の別の実施形態において、表面は、患者の身体部位の表面である。
【0036】
本発明の更に別の実施形態において、薬物は、フィブリノーゲン成分及びトロンビン成分を伴うフィブリン封止剤である。
【0037】
本発明の更なる実施形態において、薬物は、薬前駆体成分及び薬前駆体活性化成分を伴う薬である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図1】投与すべき薬物の2成分のための貯蔵容器を伴う同心2重ルーメンカニューレを有し、手動操作可能な加圧機構を更に提供する、本発明による装置の実施形態。
【図2】装置の実施形態。
【図3】図2のIII部位の更なる拡大図。
【図4】3成分薬物を投与する3重同心ルーメンを備えた同心ルーメンの構成の実施形態。
【図5】4成分薬物を投与する4重同心ルーメンを備えた同心ルーメンの構成の実施形態。
【図6】中実のスタイレットを備えた同心ルーメンの構成の実施形態。
【図7】IVDスペース内にフィブリン封止剤を注射した後の摘出され空になった円板の高さ回復。異なる穿刺直径(1.6〜3.5mm)において、測定を実施した。結果を、同一の実験における未処理の円板(100%)の最大可能圧縮の百分率として呈示した。
【図8】等級1及び2の変性椎間板(B)をシミュレートした完全環状裂傷(A)並びに環状亀裂を有する摘出された椎間板内に注射後のフィブリン封止剤の局在化。注射治療は、0.8192mmの外径を有する針(21G針)を使用して実施した。封止剤の局在化には矢印をつけた。
【図9】インビボ設定(A)におけるフィブリン封止剤成分を注射したIVDから得た代表的な切片内のフィブリンの免疫染色。対照(B)として、インビトロで調製された、染色されキャストされたフィブリン凝塊を使用した。図9Cは、実施された第2の調査におけるフィブリン封止剤成分を注射したIVDから得た代表的な切片内のフィブリンの免疫染色。フィブリン染色には矢印をつけた。
【図10】線維輪組織を0.8192mm、1.067mm、1.270mm、及び1.651mm(それぞれ21G、19G、18G、及び16G)の外径を有する針で穿刺したときの、穿刺が引き起こした環状切除(線維輪組織の切り取り)の百分率(A)及び削り取られた組織の重量(B)。(C)は、穿刺手順後の椎間板の切片の代表的な写真。線維輪組織(annulus tissue)の破裂には矢印をつけた。
【図11】0.6414mm/1.270mm(23G/18G)(内側/外側)及び0.8192mm/1.651mm(21G/16G)の外径寸法を有する同心針内で、異なる力で達成される流速。N=ニュートン
【図12】0.6414mm/1.270mm(23G/18G、A)及び0.8192mm/1.651mm(21G/16G、B)の外径寸法を有する同心針内の針目詰まりを克服するために必要な最大力。目詰まり後に注射が再開されたときの最大値を記録した。
【図13】外側シースの第2の端部が追加部品によって内側カニューレに封止的かつ固定的に結合している、装置の代替の実施形態。
【図14】図13のIの部位を更に拡大した断面図。
【図15】図14のIIとして印された箇所における同心ルーメン構成の断面図の種々の実施形態。図Aは、本発明による、内側ルーメンを囲む外側ルーメン。図Bは、2つの相対するルーメンを伴う外側カニューレを有する同心ルーメン構成。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明による2成分の薬物を投与する装置の第1の実施形態の多種多様な図を図1〜3に示す。
【0040】
装置10は、保持要素22を備える接続要素20に取り付けられた内側ルーメン16及び外側シース又はカニューレ18の双方を画定する内側カニューレ14を備えた同心2重ルーメン構成12を備えている。接続要素20は、2つのポート24、26を備えており、第1のポート24は、内側カニューレ14の第1の又は内側のルーメン16と流体連通しており、第2のポート26は、内側カニューレ14の周りに環状空隙として形成され、外側シース又はカニューレ18によって半径方向に制限されている外側ルーメン28と流体連通している。
【0041】
2つのポート24、26は、例えば装置10によって投与される(例えば、生体組織などの上に散布若しくは滴下され、又はその中に注射される)べき成分を貯蔵する貯蔵容器30、32に流体連通している。この実施形態において、貯蔵容器30、32は、中空シリンダ34、36及びそれらに関連づけられたプランジャ38、40を有する注射器として形成されている。双方の注射器を同時に手動操作するために、基本的には当該技術分野において既知(例えば、米国特許第B−6,234,994号を参照)のとおり、シリンダ34、36は、第1の結合要素42によって結合しており、プランジャ38、40は第2の結合要素44によって結合している。また、プランジャ38、40をシリンダ34、36内に加圧する自動的に又は手動で操作可能な加圧機構46を使用することもできる。これらの加圧機構は、当該技術分野において一般に既知である(例えば、米国特許出願第A−2008/0103564号、同第A−2008/0060970号、同第B−6,464,663号、及び同第B−6,565,539号を参照)。シリンダ34、36の出口は、接続要素20の第1及び第2のポート24、26に直接取り付けることもでき、又は例えば、出口48、50とポート24、26との間に配置された流体制御装置52、54を用いることによって、間接的に取り付けることもできる。これら流体制御装置52、54は、第1の工程で流体制御装置に取り付けられた容器(図示せず)から注射器内に成分を吸い込む工程、並びに投与のために接続要素20及び同心ルーメン構成12を通じて注射器から成分を排出する工程に使用することができる。本発明による装置に使用できる流体制御装置の例は、欧州特許第B−0 814 866号及び米国特許第A−6,113,571号に記載されている。
【0042】
図2及び3により更に詳細に示されるように、接続要素20の第2のポート26は、例えば、2重ルーメン構成12が中を通って延在し固定されている内部中空スペース58に至る曲がり管56のような接続経路によって保持要素22と流体連通している。中空スペース58は、外側環状ルーメン28と流体連通している。
【0043】
外側カニューレ又はシース18は、内側カニューレ14の先端部62から間隔をあけた自由端60で切頭されている。外側シース又はカニューレ18は、その切頭された端部60において、内側カニューレ14の外面に固定的に取り付けられている。2つのカニューレのこの固定的な結合によって封止結合が形成されている。外側シース又はカニューレ18の中に延在する内側カニューレの部位内で、内側カニューレ14の壁部64は少なくとも1つの穴部又は開口部66を備えており、この開口部を介して内側ルーメン16及び外側ルーメン28が流体連通している。したがって、第2のポート26を介して及び更にチューブ56を通り、並びに中空スペース58を通って及び更に外側ルーメン28を通って流れる成分は、内側カニューレ14の内側ルーメン16を通って流れる他の成分と接触するので、少なくとも1つの穴部66の下流では双方の成分が内側カニューレ14を通って流れており、互いに混合され、混合物として先端部62から排出される。
【0044】
「混合される」という用語は、成分が一体となることを指す。混合によって、完全に、実質的に、又は部分的に均質な混合物を得ることができる。
【0045】
3成分薬物を投与する装置10’及び4成分薬物を投与する装置10”の代替の実施形態を図4及び5に示す。装置10’は、内側ルーメン16を画定する内側カニューレ14、中間環状ルーメン28を画定する中間シース又はカニューレ18、及び外側環状ルーメン70を画定する外側シース又はカニューレ68を有する3重ルーメン構成12’を備えている。カニューレはその自由端60、61で封止的に結合されており、内側カニューレ14内の少なくとも第1の開口部66が内側ルーメン16と中間の又は真ん中のルーメン28との間に流体連通を提供する一方、少なくとも第2の開口部72が中間ルーメン28と外側ルーメン70との間に流体連通を提供する。図4に示されるように、装置10’の接続要素20は、前述の3重ルーメン構成12’のルーメンと流体連通する3つのポート24、26、及び74を備えている。
【0046】
図5において、装置10”は、投与すべき薬物の4成分が中を通って適用される4つのポート24、26、74、76を有する接続要素20を備えている。装置10”は更に、図2〜4の3重ルーメン構成12’及び2重ルーメン構成12に類似した設計の4重ルーメン構成12”を備え、次の内側カニューレ又はシース68にある少なくとも1つの穴部82を通って次の内側環状ルーメン70と流体連通する更に外側の環状ルーメン80を画定する更に外側のカニューレ又はシース78を含んでいる。
【0047】
成分のうちの一方をもう一方の成分によって活性化できる少なくとも2成分の薬物の適用を可能とする装置を設計した。例えば、人体の外面又は人体内の場所などの一定の場所に薬物を適用することができる。人体内の場所は、細胞及び/若しくは細胞外基質などの生体物質、液体並びに/又は気体で満たされた、閉じた区画であってもよい。このような実施形態では、投与は注射によって実行できる。
【0048】
あるいは、人体内の場所は、体内の器官の表面であってもよい。このような実施形態では、投与は散布又は滴下によって実行できる。
【0049】
装置は、少なくとも2成分の各々の別々の供給を可能とする、少なくとも2つの同心の針又はカニューレを備えている(図4及び5を参照)。本発明の一実施形態において、装置は2つの同心の針又はカニューレを備えている。外側のカニューレ又はシースは、内側のカニューレの先端部の近くで終端しており、外側カニューレはこの場所で内側カニューレと封止的かつ固定的に結合(例えば溶接又は接着によって)している。
【0050】
外側シースの第2の端部が追加部品90によって内側カニューレに封止的かつ固定的に結合している、装置10”の代替の実施形態を図13に示す。図14は、図13のIの部位を更に拡大した断面図を示す。都合よくは、このような装置は、密閉された表面上への滴下による薬物の投与を可能とする小径の可撓性の同心構成を有している。このような装置の使用は、均質に混合された薬物を体内の遠隔部位又は狭い部位に投与するうえで有利であり、例えば脳脊髄液(CSF)の漏れを低減し及び/又は最小限に抑えるための硬膜の閉鎖において腹腔鏡手術を行うときには特に有利である。
【0051】
同心ルーメン構成は、押出し成形によって形成でき、多重ルーメンの外側カニューレを有することができる。図15は、図14のIIとして印された箇所における同心ルーメン構成の断面図の種々の実施形態を示す。図Aは、本発明による、内側ルーメンを囲む外側ルーメンを示す。図Bは、2つの相対するルーメン98を伴う外側カニューレを有する同心ルーメン構成を示す。
【0052】
内側カニューレは、カニューレの封止点の近くに少なくとも1つの穴部66を備えている。この又は内側カニューレにある各穴部は、外側ルーメンと内側ルーメンとの間に流体連通を提供する。成分は、内側及び外側ルーメンの中を別々に流れ、例えば組織又は領域などの選択された標的内に適用される直前に、内側カニューレ内で混合される。内側カニューレ内の穴部の下流で完全混合が行われる。
【0053】
本発明の一実施形態において、流体の流速は、0.5、1、2.5、5、10mL/分のように、約0.5〜約10mL/分である。
【0054】
内側カニューレの内径は、約0.0035〜約2mmの範囲であってよい。本発明の一実施形態において、内側カニューレの内径は、約0.495mmである。都合よくは、内側針の外径と外側針の内径との間の距離が、例えば0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5mmなどのように約0.05mmよりも大きい場合に、同心針内の適切な流れが得られる。本発明の一実施形態において、内側針の外径と外側針の内径との間の距離は、約0.2mmである。本発明の別の実施形態において、内側針の外径と外側針の内径との間の距離は、約0.49mmである。
【0055】
本発明の別の実施形態において、装置は、造影剤、気体、又は細胞組成物などの第3の成分の、例えば注射による投与のための3重同心針を備えている。造影剤は、例えばIopamiro(商標)のようなヨウ素系造影剤などの、種々の非毒性薬剤から選択できる。
【0056】
装置は、混合されたときに安定しない薬物、又は適用時まで別個に保持する必要のある薬物を適用するために使用できる。
【0057】
本発明によれば、2成分フィブリン封止剤、フィブリノーゲン及びトロンビンの椎間板内投与に際して、線維輪(AF)を通って髄核(NP)内に貫通する針は、与える損傷を可能な限り小さくするために可能な限り細い必要があることが判った。注射施術中に円板に与える損傷は、AFの亀裂及び破裂並びに円板からのNP物質の漏れにつながりかねない。本発明によれば、この装置設計によって、任意の所望の場所の標的組織に対する損傷を最小限に抑えることが可能となることが判った。
【0058】
2つのカニューレの封止的かつ固定的な結合は、締まりばめ(圧入)締付け、接着、レーザー溶接、冷間成形、加熱成形などの様々な技術を使用して、又は当該技術分野において既知の封止を形成するその他任意の方法によって実行できる。
【0059】
本発明の装置は、例えば腎切除術、外傷性の腎臓の再生及び瘻修復などの泌尿器科、糖尿病性潰瘍、慢性潰瘍、例えば止血栓として及び治癒の促進のための潰瘍、静脈瘤の閉鎖、拡張蛇行静脈の閉鎖、ろう孔内充填、円板の内部断裂、脊椎の疾患、障害又は症状の治療のため、硬膜の亀裂又はひびの封止(硬膜の閉鎖)及びCSFの漏れの低減又は防止のためなどの神経外科、線維輪の完全裂傷及び亀裂の封止、線維輪の穿刺の封止、IVDの充填及び封止のため、IVD高さ回復又は復元、心臓手術、焼痂を切除するため、漿液腫の治療のためなどの乳腺切除、痔核の閉塞、空気漏れの防止及び治療のためなどの肺切除、悪性胸水の寛解、膀胱炎の充填、及び尿管吻合術など、しかしこれらに限定されない任意の医療用途において、少なくとも2成分から作られる薬物を損傷した組織又は領域の中又は上に投与するために使用できる。別の例は、第1の成分として薬剤前駆体及び第2の成分として活性化剤の悪性組織内への投与である。
【0060】
本発明の一実施形態において、装置は脊椎の疾患、障害又は症状の治療に使用される。
【0061】
用語「脊椎疾患、障害又は症状」は、例えば椎間板及び/又は中枢神経系の疾患、障害又は症状を指す。
【0062】
用語「椎間板疾患、障害又は症状」は、円板ヘルニア、円板亀裂、脊髄狭窄、黒色円板、椎間板性疼痛等のような椎間板変性及び/又は損傷を含む、複数の障害、疾患又は症状を指す。
【0063】
しばしば、「椎間板疾患、障害又は症状」という用語は、「変性円板疾患(DDD)」又は「円板内部断裂(IDD)」という用語と同義に用いられる。
【0064】
本発明の一実施形態において、円板の高さを復元又は増加するために、NP部位内にフィブリン封止剤が適用される。本発明の別の実施形態において、適用されるフィブリン封止剤は、天然髄核組織と同様に圧縮荷重に耐えることができる。AFに存在する完全裂傷又は小さな亀裂によりNP物質が漏れた結果、円板の高さが減少する場合がある。AF内の任意のひび、空隙又は開口部を塞ぐために、フィブリン封止剤を使用することができる。
【0065】
円板の高さの減少は、AF内の裂傷若しくは亀裂の存在又は不在に拘らずに発生することがある。高さは、髄核の脱水及び謬原繊維の劣化に起因して減少することがある。
【0066】
本発明の一実施形態において、装置は、椎間板内電熱治療後にAF内の空隙を塞ぐフィブリン封止剤を投与するために用いられる(Derby及びKim BJ.、「Effect of intradiscal electrothermal treatment with a short heating catheter and fibrin on discogenic low back pain」、Am J Phys Med Rehabil.2005;84:560〜561)。
【0067】
本発明の更に別の実施形態において、装置は、NP内の空隙を塞ぐフィブリン封止剤を投与するために使用される。本発明のまた更に別の実施形態において、装置は、フィブリン封止剤を投与してNPの構造、物理的特性及び生体力学的機能をシミュレートするために使用される。
【0068】
フィブリン封止剤は、NPを除去せずに損傷した円板内に適用され得る。あるいは、フィブリン封止剤の投与前に、NPの全て又は一部が摘出される。切除術は、細胞外マトリクスを崩壊させることにより酵素的に、機械的に、ニュークレオトーム(Nucleotome)プローブを用いることにより、及び/又は当該技術分野において既知である任意の他の方法により、実行できる。
【0069】
軟骨組織を分解することができるタンパク質分解酵素としては、セリンプロテアーゼ、例えば、トリプシン、キモトリプシン、膵エラスターゼ、システインプロテアーゼ、例えばパパインキモパパイン、アスパラギン酸ペプチダーゼ、例えばペプシン、メタロペプチダーゼ、例えばコラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、プロナーゼ、コンドロイチナーゼ、ヒアルロニダーゼ、及び/又は同じ若しくは同様の様式で板物質を分解する他の化学物質、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本明細書で使用するとき、用語「中枢神経系の疾患、障害又は症状」とは、脳若しくは脊髄の正常な機能又は情報伝達を崩壊させる任意の疾患、障害、又は外傷を指す。制限なく、神経外科、外傷、虚血、低酸素症、神経変性疾患、代謝障害、感染疾患、椎間板の圧迫、腫瘍、自己免疫疾患及びCSF漏れによる、脳及び脊髄損傷に言及することができる。
【0071】
薬物は、外科用封止剤であってもよい。生物学的封止剤(例えば、フィブリノーゲン及びトロンビンなどの凝固タンパク質並びに/又はその他の天然生成物から作られている)、アクリル酸、シアノアクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーなどの合成封止剤、並びに例えばゼラチン−レゾルシノール−ホルムアルデヒド(GFR)接着剤などの生物学的材料及び合成材料の混合から作られた半合成封止剤を含むがこれらに限定されない、異なる種類の外科用封止剤を使用することができる。本発明の一実施形態において、薬物は国際特許出願第WO−A−2006/086510号に記載されているような合成封止剤である。本発明の別の実施形態において、薬物は、フィブリン封止剤である。
【0072】
代表的な2成分の薬物には、フィブリノーゲン及びトロンビン、アルギン酸及びカルシウム、コンドロイチン硫酸塩及びヒアルロン酸などの酸、抗原及び補助剤、コロイド懸濁液を組成する2成分、リポソームの組成を可能とする2成分、一方が他方による活性化を必要とする2成分、一方の成分が他方の成分を活性化する2成分、任意の2種類の液体の混合が含まれるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、薬物中の2成分はフィブリノーゲン及びトロンビンである。このような実施形態において、2成分が混合されると、重合プロセスが活性化され、流れに対する抵抗が過剰になる前に封止剤の適用が遅滞なく有利に実行される。
【0073】
本発明の一実施形態において、一方の成分は他方よりも粘稠度が高い。本発明の別の実施形態において、粘稠な成分が内側ルーメン内に移動する。内側ルーメン全体を通じて粘稠な成分の供給を促進するために、例えば外側カニューレの内径を犠牲にして、内側カニューレの内径を増加させることができる。本発明の更なる実施形態において、2成分の薬物は、BAC及びトロンビンである。本発明の更に別の実施形態において、内側ルーメンを通ってBAC成分が供給され、外側ルーメンを通ってトロンビン成分が供給される。あるいは、外側ルーメンを通じてBAC成分を供給し、内側ルーメンを通じてトロンビン成分を供給することができる。
【0074】
トロンビンの量を変えることで、重合に必要な時間が短縮又は延長される。典型的には、フィブリノーゲンの単位量当たりのトロンビンの濃度を上昇させることにより、より速いフィブリン組成が得られ、その結果凝塊の形成が早くなり過ぎ、針の目詰まりを招きかねない。他の脊椎針又は硬膜外針に比べて2成分が比較的短い距離を一緒に流れるので、装置に特有の設計がこの問題を最小限に抑える。一設定において、内側針内で部分的に固化した凝塊の形成を許容した場合(注射手技の約2分の遅延により)、凝塊は針から問題なく排出され、追加的な薬物の供給が可能であることが示された。本発明の同心針の目詰まりを取り除くのに必要な力は、合流した流れがより長い、同じゲージの他の針と比べて著しく低い。本発明の一実施形態において、使用されるトロンビンの濃度は約1000IU/mLである。本発明の別の実施形態において、使用されるトロンビンの濃度は約100IU/mLである。
【0075】
本発明による同心ルーメン構成を備える装置は、少なくとも2成分の薬物の適用を可能とする。本発明の一実施形態において、第1の成分を第2の成分によって活性化できる2成分の薬物が適用される。2成分の薬物は、例えば体内などの一定の場所に適用できる。本発明による同心ルーメン構成は、国際特許出願第WO−A−2007/059801号に記載されたものからY混合モジュールを除いたものなどの、2種類以上の成分の適用のために設計された任意のアプリケータ装置に使用できる。
【0076】
本発明の一実施形態において、同心ルーメン構成の内側針は0.8192mm(21G)の外径を有し、外側針は1.651mm(16G)の外径を有する。本発明の別の実施形態において、内側針は0.6414mm(23G)の外径を有し、外側針は1.270mm(18G)の外径を有する。本発明の更に別の実施形態において、内側針は0.6414mm(23G)の外径を有し、外側針は1.651mm(16G)の外径を有する。
【0077】
同心針/ルーメン構成12の長さは、約10〜約700mmであることができる。本発明の一実施形態において、長さは約20〜約500mmである。本発明の別の実施形態において、長さは300mmである。本発明の更に別の実施形態において、長さは180mmである。本発明の更にまた別の実施形態において、長さは90mmである。外側針は、内側針の先端部から間隔をあけた部位で終端している。突出した内側針は、所望の場所内に貫通することができる。本発明の一実施形態において、内側針の突出によって、体内組織内への貫通が可能となる。本発明の別の実施形態において、装置は、椎間板内注射に使用され、内側針は外側針の後12mmで終端している。本発明の更に別の実施形態において、内側カニューレは、外側カニューレの後3〜50mmで終端している。
【0078】
ポート24の中心とポート26の中心との間の距離は、アプリケータ装置95の出口48、50間の距離に適することができる。本発明の一実施形態において、国際特許出願第WO−A−2007/059801号に記載されているアプリケータ装置が使用され、2つのポート24、26の中心間の距離は18mmである。
【0079】
針/カニューレは、例えば生体適合性の材料などの任意の材料で形成されてもよい。本発明の一実施形態において、使用される材料は剛性であり、軟組織又は骨などの組織内に貫通することを可能とする。針は、組織内への薬物の浸透中に発生する可能性のある変形に耐えることができる。あるいは、針/カニューレは可撓性材料で作ることもできる。各種ステンレス鋼を含む金属、合金、塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン(各種PE)、ポリウレタン(PU)、Ultem(登録商標)(ポリエーテルイミド、PEI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PS)、ポリプロピレン(PP)などのポリマー及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されないいくつかの材料を使用できる。
【0080】
突出する内側針の外面を回転させることができる。内側針は、1つ以上の穴部を備えている。内側針内の穴部の下流で、成分の完全混合が行われる。最適なフィブリン封止剤の供給のために、穴部と突出する内側針の先端部との間の距離が均質な混合物の組成を可能にし、同時に、目詰まりが発生して流れに対する抵抗が過剰になる前に薬物が針から排出されることを可能にする。また、最適な結果を得るために、トロンビン濃度及び流速を変えることができる。本発明の一実施形態において、突出する内側針の先端部の端部から20mmのように、3〜50mmに位置する1つの穴部が備わっている。本発明の一実施形態において、装置は椎間板内注射に使用され、344,737Pa(50PSI)のように、最大約689,474Pa(100PSI)の圧力に耐える。
【0081】
装置は、造影剤及び/又は細胞組成物を注射するための図4及び5に示されるような追加的なカニューレ又は針を収容することができる。
【0082】
本発明による同心針構成を備える装置はまた、以下の部品のうちの1つ以上をも備えることができる。
1.端部にルアーロック(雌及び雄)を有する2つの接続管を出口48、50とポート24、26との間、又は流体制御装置52、54とポート24、26との間に取り付けることができる。接続管によって、操作者が組織内で針を動かすことなくアプリケータ装置を自由に動かすことができ、したがって潜在的な組織の損傷の危険を最小限に抑え、かつ/又は装置の使いやすさを最大限に引き出すことができる。
2.アプリケータ装置に緩やかな連続的な力を印加することを可能とする自動的又は手動の加圧機構。例えば図1の46を参照。本発明の一実施形態において、加圧機構はネジを利用している。
3.損傷部位に加えられた圧力の監視を可能とする力又は圧力を測定するユニット。
4.同心ルーメン構成内に中実のスタイレットを追加できる(例えば図6)。このようなスタイレットを有することによって、アセンブリが体内を意図する場所に進むときに、内側針のルーメン内の皮膚及び皮下組織などの非標的組織の蓄積を防止でき、又は実質的に防止できる。その結果、投与手順の過程で意図する部位への非標的組織が侵入することによる感染の危険が低減される。都合よくは、スタイレットはまた、終端要素内の同心針構成を補強及び支持し、同心針の屈曲又は破壊を防止することができる。スタイレットは内側針のルーメン内に位置することができ、内側針構成全体を通って延伸することができる。スタイレットは、終端要素を通って内側針の第1の端部まで又は第1のポート24の端部まで更に延伸することができる。図6では、同心針構成12は、内側針のルーメン内に位置する中実のスタイレット85を備えている。スタイレットは、各種ステンレス鋼を含む金属、合金、塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン(各種PE)、ポリウレタン(PU)、Ultem(登録商標)(ポリエーテルイミド、PEI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PS)、ポリプロピレン(PP)などのポリマー及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない任意の物質で作ることができる。
【0083】
「終端要素」という用語は、内部中空スペース58内に位置する外側シース18の第1の端部と内側ルーメン16との間のT型継手を指す。
【0084】
接続要素20及びアプリケータ装置95は、端部に雄及び雌のルアーロックを有する接続管などのアダプタ又はその他の当該技術分野において既知の類似のアダプタによって取り付けることができる。
【0085】
接続管の長さは最大約60cmであることができる。接続管の内径は、約0.5〜約5mmであることができる。接続管は、シリコン、塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(各種のPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、アプリケータ装置と接続要素20との間の可撓性の接続を可能とする任意の材料で形成され得る。
【0086】
本発明の一実施形態において、接続管は少なくとも344,737Pa(50PSI)の圧力に耐える。
【0087】
加圧機構装置が存在する場合、この装置はアプリケータ装置に緩やかな連続的な力を印加することを可能とする。本発明の一実施形態において、加圧機構は、増加する圧力を放出することなく椎間板の背圧に対して連続した力を印加することを可能とする。
【0088】
加圧機構は、異なる形状又は大きさで提供することができる。加圧機構は、アプリケータ装置の全部又は一部を収容することができる。前者の場合、加圧機構は目盛り付き注射器の可視化を可能とする。
【0089】
加圧機構は、ステンレス鋼などの金属、合金、塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン(各種PE)、ポリウレタン(PU)、Ultem(登録商標)(ポリエーテルイミド、PEI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PS)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)プラスチックなどのポリマー、及びこれらの組み合わせで作ることができる。
【0090】
薬物を投与中に印加される圧力は、ロードセル及び/又はひずみゲージなどの力測定ユニットによって間接的に監視することができる。力測定ユニットは、任意の大きさ又は形状であることができる。本発明の一実施形態において、印加される圧力は、10mmの直径及び7mmの高さを有する円筒形ロードセルによって間接的に監視されている。
【0091】
圧力はまた、アナログ又はデジタル圧力計のような圧力センサー測定ユニットによって直接監視することもできる。圧力センサー測定ユニットは、例えば延長管によって流体の流動経路上、又は流体伝導路のその他任意の部品に定置できる。直接測定はまた、力情報を圧力測定データに変換する適切な圧力変換器要素を使用することによっても実行できる。圧力変換器要素は、流体の流動経路上に定置することができる。
【0092】
力測定装置及び圧力センサーユニットは、7セグメントLCDのコンピュータ用スクリーン及び当該技術分野において既知のその他任意の可視化ユニットのような、しかしこれらに限定されない視覚表示モニタを備えることができる。
【0093】
力測定ユニット又は圧力測定ユニットは、加圧機構内に収容され得る。
【0094】
装置の構成要素は、1人の患者用であってもよく、又は複数の患者による繰り返し用途のために滅菌することもできる。構成要素は、ガンマ線、蒸気滅菌、薬品蒸気、高電圧電子線照射などを含むがこれらに限定されない、当該技術分野において既知の異なる方法によって事前滅菌することができる。本発明の一実施形態において、装置の構成要素は、蒸気滅菌を用いて滅菌されている。
【0095】
以上又は以下に引用する出願、特許、及び刊行物の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。以下の例は例示であり、限定するものではない。
【実施例】
【0096】
実施例1:同心針
1.270mm(18G)、0.8192mm(21G)、0.6414mm(23G)(エチレンオキシドで滅菌した、日本、東京都の小林商事株式会社製の脊椎針「phoenix」)及び1.651mm(16G)(Sigma社カタログ番号Z100897−1EA)の外径寸法を有する脊椎針を使用して、同心針を組み立てた。針の長さは90mmであった。
【0097】
0.8192mm/1.651mm(21G/16G)及び0.6414mm/1.270mm(23G/18G)(内側/外側)の外径寸法を有する2つの同心針を組み立てた。内側針及び外側針を結合するために、プラスチック製のデルリンブッシュを使用した。ポリエチレン接着剤を使用して2つの針を封止した。突出する内側針の遠位先端部から20mmの距離をおいて、内側針に混合穴が位置しており、即ち、2成分は、針から放出されるまでの20mmの距離を一緒に流れる。これらの実験に使用した、組み立てられた同心ルーメン構成を図2及び3に示す。
【0098】
実施例2:同心針を用いて適用される2成分のフィブリン封止剤
2成分のフィブリン封止剤中の1000IU/mLトロンビン(欧州特許第B−0 378 798号に記載されているものと同様)及びBAC(米国特許第B−6,121,232号及び国際特許出願第WO−A−98/33533号に記載されているとおりに調製し、欧州特許第B−1,390,485号に記載されているとおりにプラスミン(プラスミノゲン)を除去し、トラネキサム酸は添加しなかった)を使用した。使用直前に、希釈緩衝液でトロンビン成分を10倍希釈した(DDW(Riedel−de Haen社カタログ番号31307)中の0.4MのCaCl2を生理食塩水中で1:10に希釈して0.04Mの最終濃度とした)。BAC成分はそのまま使用した。下記の全ての実験において、トロンビン成分は外側針の中を通して投与し、BAC成分は内側針の中を通して投与した。
【0099】
実施例3:圧縮荷重後の円板の高さ回復に対する穿刺直径の影響
2成分のフィブリン封止剤、フィブリノーゲン及びトロンビンの椎間板内投与における同心針の有効性を観察した。フィブリン封止剤を椎間板内に注射する目的の1つは、円板の高さを復元し又は増加させることである。このような投与において、針は線維輪(AF)を通って髄核の部位まで導入される。注射手技の過程で加えられる穿刺直径は、AFの亀裂及び破裂並びにその結果として起こる椎間板からのNP物質の漏れのような、重大な円板の損傷を引き起こす可能性がある。円板は荷重を受けるので、どの穿刺直径が円板に重大な損傷を加えずに、圧縮荷重後の円板の高さ回復を可能とするかを評価する必要がある。したがって、圧縮荷重後にその最初の高さを維持する円板の能力に対する、穿刺直径の影響を観察するために、以下の実験を実行した。摘出したブタの腰椎(L1〜L5;Lahav,Israel)を筋組織から取り除き、腰椎体を電動骨のこぎりを使用して真ん中で切断して、摘出された椎間板を得た。その後、摘出した椎間板を、電気研磨機を用いて平坦化して、滑らかで平行な対称的上面及び下面を作製した。摘出した椎間板を引張圧縮試験機(LF plus,LLOYD instruments Ltd,Hampshire,UK)に定置し、500Nで圧縮を測定した。次に、PBS(Sigma社カタログ番号C−6885及びH−2126それぞれ0.5mL)中にコラゲナーゼ6mg/mL及びヒアルロニダーゼ2mg/mLを含有する溶液の注射によりNP組織を酵素学的に消化した。30分後、1.651mm(16G)の外径を有する針に結合した2つの注射器を摘出したIVDの反対端に挿入し、約2mLのPBSをIVD内に注射した。2つの反対側の注射器間で円板の内容物を移すことによって、円板スペースを数回、空にし、充填し、次にIVD内容物を廃棄した。記述したとおりにPBSを注射し、かつIVDの内容物を空にすることを3回実行した。この手順を、約2mLのEDTA(10mM;Riedel−de−Haen社カタログ番号34549)を用いてもう1度繰り返した。
【0100】
次に、1.651mmの外径を有する針(16G針)、又は異なる直径(1.6、2、2.5、及び3.5mm)の穴を得る異なるドリルを使用して各々の空になった円板を4回穿刺した。次に、各々の空になった円板の圧縮を500Nで測定した。
【0101】
その後、Y混合モジュールを除き国際特許出願第WO−A−2007/059801号に記載されているとおりにOmrix社の注入装置を使用して、穿刺され空になった円板にフィブリン封止剤を注射した(上述のとおり、等量を同時に適用)。余剰の溶液が注射部位から溢れるまで、存在する穿刺の中を通して成分を注射した。再充填された椎間板を、凝塊が形成されるまで約30分間、室温で温置した。温置期間後、充填された椎間板の圧縮測定を500Nで行った。
【0102】
全ての測定を5回繰り返した。円板のばらつきを排除し、標準化を保証するために、各個別のIVDについて、最大可能圧縮値(100%とみなす)からの百分率として高さ回復を計算した。未処理の円板の500N荷重下の圧縮値から空になった円板の500N荷重下の圧縮値を差し引くことによって、最大値(下記の式の分母)を計算した。分子は再充填された円板の圧縮値を表す。
【0103】
以下の式に従って、フィブリン充填された円板の高さ回復能力を計算した。
【数1】
【0104】
図7は、髄核スペースにフィブリン封止剤を注射した後の空になった円板の高さ回復能力を示す。異なる穿刺直径(1.6〜3.5mm)において測定を実施した。結果を、上述のとおり最大可能圧縮値(100%)の百分率として示す。
【0105】
結果は、3mm及び3.5mmの穿刺直径は、1.6〜2.5mmの穿刺直径と比較して、圧縮荷重後の円板の高さの著しい減少となったことを示している。3mm及び3.5mmの穿刺直径は、それらの初期の高さのそれぞれ50%及び12%を回復した。その一方、1.6〜2.5mmの穿刺直径は、それらの最初の高さの約60〜80%を回復した(図7)。
【0106】
このことは、周囲の組織に加えられる損傷が最小限に抑えられるので、標的組織又は器官内への薬物の直接適用に1.6、2及び2.5mm(16、14及び13G)の外径を有する針のような小径の針を使用する利点を示している。高圧を受ける器官に薬物を適用する場合、小径の針を使用することが非常に重要である。
【0107】
実施例4:0.8192mmの外径を有する針(21G針)を使用した摘出した椎間板内へのフィブリン封止剤の注射
上述のように、フィブリン封止剤を使用して、椎間板の高さを復元し又は増加させることができる。実験の目的は、0.8192mmの外径を有する針(21G針)による注射後、フィブリン封止剤がNP領域内に浸透できるかを判定することであった。この目的のために、摘出されたブタの腰椎(L1〜L5)を筋組織から取り除き、腰椎体を電動骨のこぎりを使用して真ん中で切断して、摘出されたIVDを得た。PBS中2mg/mLのヒアルロニダーゼを含有する0.5mLの消化液の注射によって摘出されたIVDからそれらの髄核組織を空にした。30分後、実施例3で指定したPBS及びEDTAでIVDを洗浄した。その後、次のようにして空になった摘出されたIVDの線維輪に瑕疵を加えた。1.651mmの外径を有する針(16G針)を使用して髄核組織に1.6mmの穿刺直径の穴を開けた。次に、開けられた穴からメスを挿入して(「modified Dallas Discogram」命名システム(Sachsら、「Dallas discogram description.A new classification of CT/discography in low−back disorders」、Spine.1987;12:287〜294)に従って特徴付けられた)等級1及び2変性円板をシミュレートした完全環状裂傷及び環状亀裂を得た。この工程の後、メスを取り去り、2mm金属製ネジを穴の中に挿入した。次に、0.8192mmの外径を有する針(21G針)を使用して、インジゴカルミン色素(トロンビン100IU中0.15mg/mL、Sigma社カタログ番号13116−4)を含有するフィブリン封止剤(上述のものと同様)を空になった摘出された椎間板内の髄核スペースに注射した。余剰の溶液が注射部位から溢れるまで、異なる場所に封止剤を注射した。図8は、等級1及び2の変性円板(B)をシミュレートした完全環状裂傷(A)並びに環状亀裂を有する円板内に注射手順後のフィブリン封止剤の局在化を示す。封止剤の局在化には矢印をつけた。
【0108】
結果は、フィブリン封止剤は注射手順後にNP領域内に浸透でき、環状亀裂及び裂傷を塞ぐことができることを明らかに示している。
【0109】
実施例5:同心針構成を使用したインビボ設定における椎間板内へのフィブリン封止剤の注射
インビボ設定において椎間板スペース内にフィブリン封止剤を注射する同心針構成の能力を調査するために、以下の実験を行った。また、注射手順中の同心針構成の使いやすさ及び機能をも評価した。
【0110】
この目的のために、本発明の同心針構成を使用して、ブタの椎間板内にフィブリン封止剤を注射した。対照として、0.8192の外径を有する標準21G脊椎針でPBSのインビボ注射を使用した。フィブリン封止剤及びPBSを注射するために使用した注入装置について下記に説明する。
【0111】
フィブリン封止剤の注射に使用した注入装置図1に示されるように、Omrix社のアプリケータ装置を(Y混合モジュールを除いて国際特許出願第WO−A−2007/059801号に記載されているように)接続要素20及び同心ルーメン構成12に接続した。端部にルアーロックを有する2つの可撓性接続管を用いて接続した。アプリケータ装置を、注入装置のプランジャ(図1の38、40)に緩やかな連続した力を印加することを可能とするネジを収容する加圧機構の外殻の中に入れた。注射手順中に印加した圧力を監視するために、装置はロードセル圧力変換器(Burster社の9201−v001)を含んでいた。視覚表示のために、変換器を可撓性のコードを介してコンピュータシステムに接続した。
【0112】
同心針構成は、Tegra Medical社によって、1.651mmの外径及び1.3589mmの内径を有する薄い壁部の外側針(16G針)、並びに0.8192mmの外径及び0.514mmの内径を有する内側針(21G針)で特別に製作された。外側針を、その端部において内側針に結合し、レーザー溶接した。内側針は外側針よりも更に20mm延伸し、内側針にある開口部(0.2×1.5mm)は内側針の先端部の端部の手前25mmに位置している。これは、2種類の成分が、突出した内側針から排出される手前25mmの距離で一緒に流れることを意味している。
【0113】
接続要素20及び同心ルーメン構成12を除く同一の注入装置でPBSを注射した。その代わりに、標準の0.8192mm(21G)脊椎針(エチレンオキシドで滅菌した、日本、東京都の小林商事株式会社製の「phoenix」脊椎針)を使用した。3方ストップコックを使用して、1つの延長接続管に2つのシリンダの出口を接続した。
【0114】
フィブリン封止剤
これらの実験には、OMRIX Biopharmaceuticals LTD社製のフィブリン接着剤、Evicel(商標)を使用した。使用直前に、トロンビン希釈緩衝液(150mMのNaCl、20mMの酢酸ナトリウム、2%のマニトール、6mg/mLの人血清アルブミン及び40mMのCaCl2)を使用してトロンビン成分を10倍(約100IU/mLに)希釈した。BAC成分はそのまま使用した。
【0115】
注射手順の前に、2成分を37℃で15分間解凍し、室温で30分間、ローラー上に定置した。
【0116】
注射手順の前に、造影剤(イオパミロ370;Bracco s.p.a)を30%の濃度でトロンビン成分中に添加した(混合フィブリン接着剤中では15%の最終濃度)。
【0117】
生理食塩水
注射前に、15%イオパミロを生理食塩水に加えた。
【0118】
実験動物
51kg及び53kgの体重の2頭の交雑育種の雌の家畜ブタ(サススクロファ)を使用した。動物は、公認の施設で現行の倫理規定に従って取り扱われ、飼育されていた。動物は、手術前に身体検査を受けた。体重、体温、心拍数及び呼吸数を測定した。
【0119】
手術中、管理された呼吸補助及び輸液補助により、動物を継続的に観察した。
【0120】
麻酔レジメン
ケタミン(15〜25mg/kg)、キシラジン(2mg/kg)及びジアゼパム(0.5〜10mg/kg)の筋肉内混合液(intramuscular mixture)を用いて麻酔を誘導した。気管内挿管が可能となる十分な程度の麻酔が得られるまで、この混合液を投与した。次に、気管内挿入管を獣医麻酔器に取り付けた。残りの準備及び外科手術の間、11〜15mL/kg/分の酸素流量を伴う1〜3%イソフルランの半閉鎖循環式吸入によって麻酔を維持した。
【0121】
輸液療法
静脈内アクセスを確保し、手術の期間を通じて、約10〜11mL/kg/時の流量で乳酸化リンガー溶液を投与した。手術中、ECG、脈拍、及び血圧を監視した。
【0122】
外科手術
外科用剃刀を備えた動物用電気バリカンで、脊椎部位の脱毛を行った。刈り取った毛及びくずを取り除くために、この部位に掃除機をかけた。動物の全身をドレープで覆った。上述のとおりに、麻酔下で外科手術を実施した。動物をその腹側を下にして横たえ、下記に詳述するように、フィブリン封止剤又は生理食塩水を含有する造影剤をIVDスペース内に注射した。蛍光写真(General Electric OEC9900)を視覚誘導として使用して、IVD空洞の場所を探し当て、注射物質の場所及び分布を視認した。
【0123】
注射手順
生理食塩水及びフィブリン封止剤の双方を、以下のとおりに各ブタに注射した。
1.21G脊椎針をブタのIVD(L4〜L5)の付近に位置づけ、次に、上述のように、注入装置の接続管に取り付けた。次に、針を円板の髄核領域内に挿入し、造影剤を含有する生理食塩水をその中に注射した。圧力モニタが344,737Pa(50PSI)を示したときに注射を停止した。
2.接続要素20に接続された同心針構成をIVD(L2〜L3)の付近に位置づけた。次の工程で、針構成を上述のように注入装置の2つの接続管に取り付けた。2つの接続管を接続要素に取り付ける前に、それらの先端部までフィブリン接着剤成分を充填した。蛍光写真で内側針の先端部から造影剤が出るのが見られるまで、非常に少量の(針の先端部に存在する)2成分を注射した。次に、同心針を、円板の線維輪を通じて髄各領域の中まで挿入し、造影剤を含有するフィブリン封止剤を、圧力が344,737Pa(50PSI)に達するまで注射した。
【0124】
同様の方法で生理食塩水及びフィブリン封止剤を第2のブタに注射したが、但し今回は、L2〜L3のIVDには生理食塩水を注射し、L4〜L5のIVDにはフィブリン封止剤を注射した。どちらのブタも、L1〜L2は処置を受けていない。
【0125】
手術後、安楽死まで、何らかの痛みの兆候又は異常な挙動を評価するために、動物を観察した。体重、挙動及び注射部位における局所的兆候について、これらを毎週検査した。手術後の動物の歩行能力に特に注意を払い、跛行の症状を観察した。
【0126】
動物は、ペントバルビタールナトリウム(0.3mL/kg)のIV注射により、手術の28日後に安楽死させた。背中(spine back)(胸部から仙骨まで)を周囲組織(筋組織)、骨盤及び大腿骨と共に取り出した。分析まで、脊椎及び周囲組織を冷凍機付きの容器内に定置した。
【0127】
円板摘出手順
約4時間後、電気のこぎりを使用して、双方の脊椎のIVD(L1〜L2、L2〜L3、L4〜L5)を真ん中で切断して摘出されたIVDを得、120mLの新鮮なホルマリンを収容する封止されたプラスチックチューブの中に4日間、室温で定置した。仙骨に対する腰椎の場所に従って、腰椎に番号をつけた。
【0128】
定着及び切片の作製
摘出されたIVDを10%ホルマリン溶液中に少なくとも4日間定置した。次の工程で、IVDをホルマリン溶液から脱灰溶液(Calci−clear;national diagnostics rapid;カタログ番号HS 105)中に3〜4日間、移した。次に、70%から100%まで4段階で濃度を上昇させたエタノール中で静かに攪拌することによってIVDを脱水した。その後、IVDを室温(20〜25℃)で30分間、Histoclear(Gadot社カタログ番号5989−27−5)中で洗浄し、次に56〜60℃で1時間、パラフィン中に埋め込んだ。ミクロトームを使用してNP領域から6μMの切片を切り取り、この切片を70%エタノール中ですすぎ、40℃の水浴に最大10分間定置し、スライドガラス上に乗せた。スライドを、37℃で1時間放置して乾燥させた。
【0129】
免疫染色
免疫染色法によって、椎間板スペース内のフィブリンの存在を判定した。スライドを室温で5分間、PBS中で静かに攪拌しながら温置した。この手順を4回繰り返した。次に、スライドをIF緩衝液(PBS中に5mL、5%のウシ胎児血清(FCS)及び1g、2%のBSA)中に室温で30分間温置し、PBSで5分間洗浄した。次の工程で、ヤギ抗フィブリノーゲン(Sigma社カタログ番号F8512、IF緩衝液中で1:100に希釈)を用いてスライドを約75分間温置し、PBSで5分間、4回洗浄した。スライドを2級抗ヤギ抗体(Sigma社カタログ番号A7650、IF緩衝液中で1:2000に希釈)を用いて30分間温置し、PBSで5分間、4回洗浄した。抗体バインディングを可視化するために、「Sigma Fast Red」キット(カタログ番号N3020)を使用して切片を現像した。キットは、製造者の使用説明書に従って使用した。インビトロで予備成形された、染色されキャストされたフィブリン凝塊が参照の役割を果たした。希釈されたトロンビン成分(トロンビン希釈緩衝液で1:10に希釈)及びBAC成分の等量(合計で0.5mL)を混合することによって、キャストされたフィブリン凝塊を予備成形した。凝塊を約30分間放置して重合させた。
【0130】
ヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色
細胞核及び細胞質を染色するH&E染色法によって、注射された髄核領域の損傷を判定した。スライドをヘマトキシリン溶液(Sigma社カタログ番号MHS32)中に10分間沈め、水道水で10分間洗浄した。次に、スライドをエオシン溶液(Sigma社カタログ番号E4382)中に30秒間定置し、水道水で洗浄した。次の工程で、濃度を上昇させたエタノール(70%〜100%)中に液浸することによってスライドを脱水した。その後、Histoclearでスライドを洗浄し、顕微鏡下で分析した。
【0131】
アルシアンブルー染色
アルシアンブルー溶液(100mLの3%酢酸中に溶解した1gのアルシアンブルー、Fluka社カタログ番号45731)でスライドを3分間被覆した。次に、アルシアンブルー溶液を除去し、紙タオルを使用して残存物を丁寧に吸収した。その後、変色のために、スライドを5%酢酸で10分間洗浄し、その後脱塩水で5分間洗浄した。
【0132】
本発明による同心ルーメン針構成を備えた注入装置を使用した椎間板内注射は、一切の合併症を伴わずに実行されたことが、外科医によって報告された。外科医は更に、同心針は、PBS注射に使用された針(0.8192の外径を有する針)と比較して、曲げに対する耐性が増したと報告した。
【0133】
手術の1日後、どちらのブタもそれらの檻の中で立ち上がり自由に動き回ることができた。手術の有害作用は観察されず、鎮痛剤を必要とはしなかった。H&E染色法によって判定されたように(データは図示せず)、同心針構成によって、又は0.8192mm(21G)脊椎針(0.8192の外径を有する)によって注射されたブタの髄核領域に病理所見は観察されなかった。
【0134】
動物は、実験期間を通じて体重が増加した。28日目には、動物の体重は65及び61.5であった(これらの体重は10.5〜12kg増加した)。
【0135】
図9Aは、フィブリン封止剤成分を注射したIVDから得た代表的な切片内のフィブリンの免疫染色を示している。フィブリン染色を実証するために使用した免疫染色されキャストされたフィブリン凝塊を図9Bに示す。陽性のフィブリン染色に矢印をつけた。
【0136】
染色した切片にフィブリンが存在することが明らかであり、本発明による同心針構成を備えたアプリケータ装置の使用を、インビボ設定においてNP領域内に挿入し、椎間板スペース内にフィブリンを注射するために有効に使用できることを示している。
【0137】
これらの結果は、上述のように同心ルーメン構成を備えた注入装置を用いて、15頭の動物の椎間板スペースにフィブリンを注射した別のセットの実験で確認された。実験は、上記に詳述したのと同一の方法に以下の変更を加えて実行された。造影剤として30%の最終濃度のOmnipaque(商標)(GE Healthcare社、カタログ番号NDC 0407−1413−51)を使用し、溶液(フィブリン成分又は生理食塩水)を、413,685Pa(60PSI)の圧力に達するまで注射し、注射手順の3日後に動物を安楽死させた。
【0138】
円板を抽出し、摘出されたIVDを得、NP領域から6μMの切片を切り取り、上記に詳述した手順に従ってスライドガラス上に乗せた。次の工程で、免疫染色法によって、椎間板内のフィブリンの存在を確認した(上述の手順を参照)。免疫染色の前に、上述のとおりアルシアンブルー溶液でスライドを対比染色した。
【0139】
図9Cは、実施された第2の調査におけるフィブリン封止剤成分を注射したIVDから得た代表的な切片内のフィブリンの免疫染色を示している。フィブリン染色に矢印をつけた。
【0140】
得られた結果は、前回の結果と一致している。椎間板スペース内にフィブリンが存在し、したがって椎間板内への薬物の注射に同心針構成が好適であることが分かった。
【0141】
実施例6:異なる針ゲージによって線維輪組織に加えられた損傷の評価
実施例3は、注射手順中にできた穿刺直径が圧縮荷重後の高さ復元能力に影響することを示した。
【0142】
周辺組織に対する注射の影響を更に評価するために、線維輪組織の損傷(環状切除)の程度に対する針ゲージの影響を評価した。この目的のために、摘出されたブタの腰椎を筋組織から取り除き、線維輪組織を異なるゲージの針で穿刺した(針の鈍化を防止するために各針について約5回の穿刺)。各穿刺後、針の中に金属棒を挿入し、針内に溜まった線維輪物質(annulus material)を収集し、その重量を測定した。穿刺毎に削り取られた線維輪組織を計算できるように、削り取られた線維輪組織の合計重量を穿刺回数で除した。
【0143】
線維輪組織の切り取り(環状切除)をもたらした穿刺の百分率及び各ゲージ寸法についての穿刺毎の削り取られた組織の重量を図10A及びBにそれぞれ示す。結果は、3〜4の独立した実験の平均値±S.D.を示している。
【0144】
結果は、穿刺の結果として起こる組織の切り取りは、針の直径に比例し、即ちより小さな直径の針ではより少ない組織が切り取られることを示している。
【0145】
穿刺手順後のIVD切片を観察すると(図10C)、より大きなゲージの針(より小さな直径の針)による穿刺がより小さいゲージの針(より大きな直径の針)と比較して線維輪構造に対してより小さな損傷を加えることが明白である。線維輪組織内の破裂に矢印をつけた。
【0146】
これらの結果は、より大きな針ゲージを使用することによって、注射手順の結果として起こる組織の損傷の程度が軽減されることを示している。
【0147】
実施例7:流量に対する同心針の抵抗
本実施例は、同心針の流量特性を調査するために実施した。この目的のために、Omrix社の注入装置(Y混合モジュールを除いて国際特許出願第WO−A−2007/059801号に記載されたとおり)にフィブリン封止剤(上述のものと同様)を充填した。各成分2mLを別個の注射器内に適用した。その後、同心針(外径0.8192mm/1.651mm(21G/16G)又は0.6414mm/1.270mm(23G/18G)(内側/外側))を装置に接続し、流量に対する同心針の抵抗を測定した。要求された流速(0.5〜5mL/分)を引張圧縮試験機に供給し、各流速を達成するために必要であった最大力を同心針の種類毎に記録した(図11)。装置に印加された力によってプランジャが動き、その結果注射器から封止剤が排出された。結果は、3つの独立した実験の平均値±S.D.を表している。
【0148】
0.6414mm/1.270mm(23G/18G)の外径を有する同心針が、0.8192mm/1.651mm(21G/16G)の針と比較して流量に対するより高い抵抗を有することが明白である。
【0149】
更に、同等の流速を達成するためには、0.8192mm/1.651mm(21G/16G)の同心針と比較して、0.6414mm/1.270mm(23G/18G)の同心針ではより大きな力を必要としたことが明らかである。例えば、5mL/分の流量を所望の場合、0.6414mm/1.270mm(23G/18G)及び0.8192mm/1.651mm(21G/16G)の針では、それぞれ20及び11Nの力が必要である。
【0150】
実施例8:針の目詰まりを取り除くのに必要な力
2成分を一緒に混合するとき、重合プロセスが活性化され、装置の目詰まりが発生する場合がある。したがって、同心針の目詰まりを取り除くのに必要な力を調査するために、以下の実施例を実施した。
【0151】
Y混合モジュールを除いて国際特許出願第WO−A−2007/059801号に記載されたようなOmrix社の注入装置にフィブリン封止剤(上述のものと同様)を充填した。各成分2mLを別個の注射器内に適用した。その後、0.8192mm/1.651mm(21G/16G)又は0.6414mm/1.270mm(23G/18G)の同心針を装置に接続した。余剰の溶液が針から溢れ、針が満たされていることを示すまで注射器から封止剤を排出した。
【0152】
注射を2分間停止し、流れが再開するまでプランジャに力を印加した。LF plus(LLOYD)測定器を使用して力を測定した。図12は、0.6414mm/1.270mm(23G/18G、A)及び0.8192mm/1.651mm(21G/16G、B)の同心針内の針目詰まりを克服するために必要な最大力を示している。結果は、針毎の15回の測定値の平均値±S.D.を表している。
【0153】
結果は、0.6414mm/1.270mm(23G/18G)の針の目詰まりを取り除くのに必要な力が、0.8192mm/1.651mm(21G/16G)の針よりも著しく大きい(それぞれ15N対6N)ことを実証している。分散測定の上限は、0.6414mm/1.270mm(23G/18G)及び0.8192mm/1.651mm(21G/16G)の同心針についてそれぞれ約35及び9.5Nであった。
【0154】
これらの結果は、相応の力を印加すると、内側針内に部分的に固化した凝塊を針から問題なく排出することができることを示している。
【0155】
本発明は特定の実施例に関して図示して説明されたが、本発明がそれらの実施例に限定されることを意図するものではない。特許請求の範囲によって定義される本発明の真の範囲から逸脱することなく変更及び修正がなされ得ることが、当業者には理解されよう。したがって、添付の「特許請求の範囲」及びその等価物の範疇に含まれるような全ての変更及び修正が、本発明に含まれることが意図されている。
【0156】
〔実施の態様〕
(1) 少なくとも2成分の薬物を投与する装置であって、
−(i)第1の端部に入口開口部を伴うルーメン(16)及びその第1の端部と反対の第2の端部(62)に出口開口部を伴う先端部を有する内側カニューレ(14)、並びに(ii)前記内側カニューレのそれぞれ第1及び第2の端部に面する互いに反対の第1及び第2の端部を有し、前記内側カニューレの前記第1の端部と第2の端部との間の軸方向長さに沿って前記内側カニューレを囲む外側シース(18)を含む、同心ルーメン構成(12)を備え、
−前記外側シースがその第2の端部(60)において前記内側カニューレに封止的かつ固定的に結合され、前記内側カニューレの周りの外側ルーメン(28)を画定し、
−前記内側カニューレが、前記内側カニューレの周りの前記外側ルーメン(28)と前記内側カニューレの前記ルーメン(16)との間に流体連通を提供する少なくとも1つの開口部(66)を備えた、装置。
(2) 前記薬物の前記成分を貯蔵する少なくとも第1の貯蔵容器(32)及び第2の貯蔵容器(30)を更に備え、前記容器が前記同心ルーメン構成(12)と接続でき、前記第1の容器が前記内側カニューレの前記ルーメン(16)と流体連通し、前記第2の容器が前記内側カニューレ(14)の周りの前記外側ルーメン(28)と流体連通する、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記容器(30、32)と前記同心ルーメン構成(12)との間に流体連通を提供する接続要素(20)を更に備える、実施態様1又は2に記載の装置。
(4) 前記接続要素(20)が、前記第1の容器(32)に接続する第1のポート(24)及び前記第2の容器(30)に接続する第2のポート(26)を備え、前記第1のポートが前記内側カニューレの前記入口開口部と流体連通し、前記第2のポートが前記外側シースの前記第1の端部で前記外側ルーメンと流体連通している、実施態様3に記載の装置。
(5) 前記接続要素(20)が、前記同心ルーメン構成の前記内側カニューレ及び外側シースを保持する保持要素(22)を更に備え、前記保持要素が、前記同心ルーメン構成が中を通って延伸する内部中空スペース(58)を備え、前記外側シースの前記第1の端部が前記中空スペース内に位置し、前記内側カニューレが前記終端要素の中を通って更に延伸し、前記第2のポート(26)に始まって前記終端要素の前記内部中空スペース内で終端する接続経路(56)が備わった、実施態様4に記載の装置。
(6) 前記内側カニューレの前記少なくとも1つの開口部(66)が、前記外側シースの前記第2の端部(60)に隣接して配置される、実施態様1〜5のいずれかに記載の装置。
(7) 前記同心ルーメン構成が、軸方向長さに沿って前記外側シース(18)を囲み、前記外側シースの前記第1及び第2の端部にそれぞれ面する第1及び第2の端部を備えた少なくとも1つの更なるシース(68)を更に備え、前記更なるシースが、その第2の端部に隣接した前記外側シース(18)に封止的に結合し(61)、前記外側シースの周りに更なるルーメン(70)を画定し、前記外側シースが、前記外側シース(18)の周りの前記更なる外側ルーメン(70)と前記内側カニューレの周りの前記外側シース内の前記ルーメン(28)との間に流体連通を提供する少なくとも第2の開口部(72)を備え、前記薬物の更なる成分を貯蔵し、前記同心ルーメン構成の前記少なくとも1つの更なるシースの前記第1の端部に接続できる少なくとも1つの更なる貯蔵容器が備わっている、実施態様1〜6のいずれかに記載の装置。
(8) 前記成分を前記容器(30、32)から前記同心ルーメン構成(12)へ、かつ更にその中を通って前記内側カニューレの前記第2の端部(62)の前記先端部から外へ加圧する加圧機構(46)を更に備える、実施態様1〜7のいずれかに記載の装置。
(9) 前記少なくとも1つの成分が、前記薬物の前記少なくとも第2の成分によって活性化される、実施態様1〜8のいずれかに記載の装置。
(10) 前記少なくとも1つの成分がフィブリノーゲンを含み、前記少なくとも第2の成分がトロンビンを含む、実施態様1〜8のいずれかに記載の装置。
【0157】
(11) 前記投与が注射によって実行される、実施態様1〜10のいずれかに記載の装置。
(12) 前記投与が散布又は滴下によって実行される、実施態様1〜10のいずれかに記載の装置。
(13) 必要としている患者に少なくとも2種類の成分を含む薬物を投与する方法であって、
−実施態様1〜10のいずれかに記載の装置を提供する工程と、
−前記同心ルーメン構成の前記内側カニューレの前記先端部を生体組織内に貫通させる工程と、
−前記同心ルーメン構成の前記内側カニューレの前記先端部を通じて混合状態の前記少なくとも2成分の薬物を投与する工程とを含む、方法。
(14) 前記薬物が、フィブリノーゲン成分及びトロンビン成分を伴うフィブリン封止剤である、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記薬物が、薬前駆体成分及び薬前駆体活性化成分を伴う薬である、実施態様13に記載の方法。
(16) 少なくとも2種類の成分を含む薬物を必要としている患者に投与する方法であって、
−実施態様1〜10のいずれかに記載の装置を提供する工程と、
−生体組織上に、前記同心ルーメン構成の前記内側カニューレの前記先端部を通じて混合状態の前記少なくとも2成分の薬物を投与する工程であって、前記投与する工程が滴下又は散布によって実行される、前記投与する工程とを含む、方法。
(17) 患者の組織欠陥を治療する方法であって、
−実施態様1〜10のいずれかに記載の装置を提供する工程と、
−前記患者に混合状態の少なくとも2種類の成分を含む薬物を投与する工程とを含む、方法。
(18) 前記欠陥が、腎臓欠陥、ろう孔、潰瘍、出血、硬膜の亀裂又はひびわれ、脳脊髄液漏れ、脊椎円板欠陥、線維輪の完全裂傷及び亀裂、線維輪の破裂、椎間板の亀裂若しくはひびわれ又は椎間板の高さの減少のような脊椎の疾患、障害又は症状、心臓血管疾患、心臓疾患、焼痂、乳腺切除後の漿液腫などの漿液腫、痔、肺切除によるなどの空気漏れ、悪性胸水、膀胱炎、及び尿管吻合又は腸吻合などの吻合からなる群から選択される、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記薬物が封止剤である、実施態様17又は18に記載の方法。
(20) 前記封止剤がフィブリン封止剤である、実施態様19に記載の方法。
【0158】
(21) 前記同心ルーメン構成の前記内側カニューレの前記先端部を通じて混合状態の少なくとも2種類の成分を含む薬物を、表面上に投与する、実施態様1〜10のいずれかに記載の装置の使用。
(22) 前記投与が、滴下又は散布によって実行される、実施態様21に記載の使用。
(23) 前記表面が、患者の身体部位の表面である、実施態様21又は22に記載の使用。
(24) 前記薬物が、フィブリノーゲン成分及びトロンビン成分を伴うフィブリン封止剤である、実施態様21〜23のいずれかに記載の使用。
(25) 前記薬物が、薬前駆体成分及び薬前駆体活性化成分を伴う薬である、実施態様21〜23のいずれかに記載の使用。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2成分の薬物を投与する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2種類の成分を有する薬物を、例えば患者の体組織の表面などの表面上に散布若しくは滴下するか、又は対組織内若しくは臓器内に注射するかのいずれかによって投与する装置は、基本的には既知である。具体的には、少なくとも2成分の薬物を投与する装置は、米国特許第B−6,565,539号、同第B−6,464,663号、同第B−6,234,994号、同第A−6,113,571号、国際特許出願第WO−A−2007/059801号、欧州特許第B−1 091 694号及び同第B−0 654 976号から既知である。
【0003】
米国特許出願第A−2008/0103564号、同第A−2008/0060970号、同第A−2007/0,213,660号及び国際特許出願第WO−A−2008/103296号は、フィブリン封止剤を円板内に投与する装置を開示している。この装置は、2つの同心の針、又は外側の針及び内側のカテーテルを備えている。外側の針は内側の針を更に延出させ、治療の対象である患者内に挿入されるように設計されている。
【0004】
国際特許出願第WO−A−97/28834号及び米国特許第A−5,814,022号は、2種類の成分を別個に収容する2つの円筒状の区画を含む調合器を開示している。この円筒状の区画は、同心円状に、又は並んで配置されている。本発明によれば、マニホールドは別個の内側及び外側手段を含むことができ、この内側手段は外側手段よりも遠くまで延出している。このような実施形態において、2つの円筒の内容物は、2種類の成分が一緒に混合される共通出口の中に導かれる。出願は、内側手段と外側手段との間の流体連通の存在については触れていない。
【0005】
欧州特許第A−0 139 091号は、血管内への適正な進入を示すフラッシュバック開存性確認装置を開示している。カテーテルは、カテーテルと針との間の流体流路及び針の中に延在する開口部を伴う針上カテーテルを利用している。外側カテーテルは薬物を注射するのに好適ではなく、装置は2成分の薬物を生体組織内に投与することを目的としていない。
【0006】
既知の装置を用いて、成分内の1つが成分内の別の1つを活性化することのできる薬物を投与することができる。
【0007】
既知の装置の大半は、多重ルーメンカテーテル又はカニューレを備えており、成分がその先端から出ているので、カテーテル又はカニューレの外部で一体となっている。
【0008】
米国特許第B−6,254,587号、同第A−4,897,079号、同第A−4,959,058号、同第A−5,984,889号、欧州特許第B−0 537 573号、国際特許出願第WO−A−2008/092029号、同第WO−A−2008/106357号、及び同第WO−A−84/04043号には、多重ルーメンカニューレなどを有するその他の医療装置が開示されている。
【0009】
このような装置のほとんどは、装置内で成分を混合し、並びに組織損傷の最小限化及び/又は密閉適用を確実にするには適切ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術の弱点を克服した、少なくとも2成分の薬物を投与する装置の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、少なくとも2成分の薬物を投与する装置であって、
−(i)第1の端部に入口開口部を伴うルーメン及びその第1の端部と反対の第2の端部に出口開口部を伴う先端部を有する内側カニューレ、並びに(ii)内側カニューレのそれぞれ第1及び第2の端部に面する互いに反対の第1及び第2の端部を有し、内側カニューレの第1の端部と第2の端部との間の軸方向長さに沿って内側カニューレを囲む外側シースを含む、同心ルーメン構成を備え、
−外側シースがその第2の端部において内側カニューレに封止的かつ固定的に結合され、内側カニューレの周りの外側ルーメンを画定し、
−内側カニューレが、内側カニューレの周りの外側ルーメンと内側カニューレのルーメンとの間に流体連通を提供する少なくとも1つの開口部を備えた、装置に関する。
【0012】
本発明の一実施形態において、内側カニューレの少なくとも1つの開口部は、外側シースの第2の端部に隣接して配置されている。
【0013】
この設計は、表面並びにひびわれ及び間隙などの狭い開口部上に薬物を散布若しくは滴下し、又は決められた量の薬物を、例えば椎間板(IVD)のような生体組織などの区画内に注射するための、成分が装置を出る前に相互に接触する、本発明による装置の使用を可能とする。
【0014】
別の実施形態において、本発明による装置は、薬物の成分を貯蔵する少なくとも第1の貯蔵容器及び第2の貯蔵容器を更に備え、これら容器は同心ルーメン構成と接続でき、第1の容器が内側カニューレのルーメンと流体連通し、第2の容器が内側カニューレの周りの外側ルーメンと流体連通している。
【0015】
更に別の実施形態において、本発明による装置は、容器と同心ルーメン構成との間に流体連通を提供する接続要素を更に備えている。
【0016】
本発明の更に別の実施形態において、接続要素は、第1の容器に接続する第1のポート及び第2の容器に接続する第2のポートを備え、第1のポートは内側カニューレの入口開口部と流体連通し、第2のポートは外側シースの第1の端部で外側ルーメンと流体連通している。
【0017】
代替の実施形態において、接続要素は、同心ルーメン構成の内側カニューレ及び外側シースを保持する保持要素を更に備え、保持要素は、同心ルーメン構成が中を通って延伸する内部中空スペースを備え、外側シースの第1の端部は中空スペース内に位置し、内側カニューレは終端要素の中を通って更に延伸し、第2のポートに始まって終端要素の内部中空スペース内で終端する接続経路が提供されている。
【0018】
投与すべき薬物の2種類よりも多い成分を取り扱う一実施形態において、同心ルーメン構成は、軸方向長さに沿って外側シースを囲み、外側シースの第1及び第2の端部にそれぞれ面する第1及び第2の端部を備えた少なくとも1つの更なるシースを更に備え、この更なるシースは、その第2の端部に隣接した外側シースに封止的に結合し、外側シースの周りに更なるルーメンを画定し、外側シースは、外側シースの周りの更なる外側ルーメンと内側カニューレの周りの外側シース内のルーメンとの間に流体連通を提供する少なくとも1つの開口部を備え、薬物の更なる成分を貯蔵し、同心ルーメン構成の少なくとも1つの更なるシースの第1の端部に接続できる少なくとも1つの更なる貯蔵容器が備わっている。
【0019】
本発明の更に別の実施形態において、装置は、薬物の成分を容器から同心ルーメン構成へ、更にその中を通って内側カニューレの第2の端部の先端部から外へ加圧する加圧機構を更に備えている。
【0020】
本発明の更に別の実施形態において、少なくとも1つの成分は、薬物の少なくとも第2の成分によって活性化される。
【0021】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1つの成分は、フィブリノーゲンを含み、少なくとも第2の成分はトロンビンを含んでいる。
【0022】
本発明の更に別の実施形態において、投与は注射によって実行される。
【0023】
本発明の更にまた別の実施形態において、投与は散布又は滴下によって実行される。
【0024】
本発明の別の態様は、必要としている患者に少なくとも2種類の成分を含む薬物を投与する方法に関し、この方法は、以下の工程を含む。
−本発明による装置を提供する工程と、
−同心ルーメン構成の内側カニューレの先端部を生体組織内に貫通させる工程と、
−同心ルーメン構成の内側カニューレの先端部を通じて混合状態の少なくとも2成分の薬物を投与する工程。
【0025】
本発明の一実施形態において、薬物はフィブリノーゲン成分及びトロンビン成分を伴うフィブリン封止剤であって、フィブリン封止剤中に使用できるトロンビン成分の例が、欧州特許第B−0 534 178号、国際特許出願第WO−A−93/05822号、及び欧州特許第B−0 378 798号に記載されている。
【0026】
薬物の成分のうちの1つは、米国特許第B−6,121,232号及び国際特許出願第WO−A−98/33533号に記載されている、生物活性成分(BAC)であって、欧州特許第B−1 390 485号に記載されているようにプラスミン(プラスミノゲン)が除去され、トラネキサム酸を添加していない(米国特許第B−7,641,918号)。
【0027】
別の代替の形態として、薬物は、薬前駆体成分及び薬前駆体活性化成分を伴う薬である。
【0028】
本発明の別の態様は、少なくとも2種類の成分を含む薬物を必要としている患者に投与する方法に関し、この方法は、以下の工程を含む。
−本発明による装置を提供する工程と、
−生体組織上に、同心ルーメン構成の内側カニューレの先端部を通じて混合状態の少なくとも2成分の薬物を投与する工程であって、この投与する工程は滴下又は散布によって実行される、工程。
【0029】
本発明の一実施形態において、薬物の投与の方法は、散布による。このような実施形態において、成分のうちの1つは、気体、例えば空気である。
【0030】
本発明の更なる態様において、本発明は、以下の工程を含む、患者の組織欠陥を治療する方法を提供する。
−本発明による装置を提供する工程と、
−患者に混合状態の少なくとも2種類の成分を含む薬物を投与する工程。
【0031】
本発明の一実施形態において、欠陥は、腎臓欠陥、ろう孔、潰瘍、出血、硬膜の亀裂又はひびわれ、脳脊髄液漏れ、脊椎円板欠陥、線維輪の完全裂傷及び亀裂、線維輪の破裂、椎間板の亀裂若しくはひびわれ又は椎間板の高さの減少のような脊椎の疾患、障害又は症状、心臓血管疾患、心臓疾患、焼痂、乳腺切除後の漿液腫などの漿液腫、痔、肺切除によるなどの空気漏れ、悪性胸水、膀胱炎、及び尿管吻合又は腸吻合などの吻合からなる群から選択される。
【0032】
本発明の別の実施形態において、薬物は、封止剤である。
【0033】
本発明の更に別の実施形態において、封止剤はフィブリン封止剤である。別の態様において、本発明は、同心ルーメン構成の内側カニューレの先端部を通じて混合状態の少なくとも2種類の成分を含む薬物を、表面上に投与する、本発明による装置の使用に関する。
【0034】
本発明の一実施形態において、投与は滴下又は散布によって実行される。
【0035】
本発明の別の実施形態において、表面は、患者の身体部位の表面である。
【0036】
本発明の更に別の実施形態において、薬物は、フィブリノーゲン成分及びトロンビン成分を伴うフィブリン封止剤である。
【0037】
本発明の更なる実施形態において、薬物は、薬前駆体成分及び薬前駆体活性化成分を伴う薬である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図1】投与すべき薬物の2成分のための貯蔵容器を伴う同心2重ルーメンカニューレを有し、手動操作可能な加圧機構を更に提供する、本発明による装置の実施形態。
【図2】装置の実施形態。
【図3】図2のIII部位の更なる拡大図。
【図4】3成分薬物を投与する3重同心ルーメンを備えた同心ルーメンの構成の実施形態。
【図5】4成分薬物を投与する4重同心ルーメンを備えた同心ルーメンの構成の実施形態。
【図6】中実のスタイレットを備えた同心ルーメンの構成の実施形態。
【図7】IVDスペース内にフィブリン封止剤を注射した後の摘出され空になった円板の高さ回復。異なる穿刺直径(1.6〜3.5mm)において、測定を実施した。結果を、同一の実験における未処理の円板(100%)の最大可能圧縮の百分率として呈示した。
【図8】等級1及び2の変性椎間板(B)をシミュレートした完全環状裂傷(A)並びに環状亀裂を有する摘出された椎間板内に注射後のフィブリン封止剤の局在化。注射治療は、0.8192mmの外径を有する針(21G針)を使用して実施した。封止剤の局在化には矢印をつけた。
【図9】インビボ設定(A)におけるフィブリン封止剤成分を注射したIVDから得た代表的な切片内のフィブリンの免疫染色。対照(B)として、インビトロで調製された、染色されキャストされたフィブリン凝塊を使用した。図9Cは、実施された第2の調査におけるフィブリン封止剤成分を注射したIVDから得た代表的な切片内のフィブリンの免疫染色。フィブリン染色には矢印をつけた。
【図10】線維輪組織を0.8192mm、1.067mm、1.270mm、及び1.651mm(それぞれ21G、19G、18G、及び16G)の外径を有する針で穿刺したときの、穿刺が引き起こした環状切除(線維輪組織の切り取り)の百分率(A)及び削り取られた組織の重量(B)。(C)は、穿刺手順後の椎間板の切片の代表的な写真。線維輪組織(annulus tissue)の破裂には矢印をつけた。
【図11】0.6414mm/1.270mm(23G/18G)(内側/外側)及び0.8192mm/1.651mm(21G/16G)の外径寸法を有する同心針内で、異なる力で達成される流速。N=ニュートン
【図12】0.6414mm/1.270mm(23G/18G、A)及び0.8192mm/1.651mm(21G/16G、B)の外径寸法を有する同心針内の針目詰まりを克服するために必要な最大力。目詰まり後に注射が再開されたときの最大値を記録した。
【図13】外側シースの第2の端部が追加部品によって内側カニューレに封止的かつ固定的に結合している、装置の代替の実施形態。
【図14】図13のIの部位を更に拡大した断面図。
【図15】図14のIIとして印された箇所における同心ルーメン構成の断面図の種々の実施形態。図Aは、本発明による、内側ルーメンを囲む外側ルーメン。図Bは、2つの相対するルーメンを伴う外側カニューレを有する同心ルーメン構成。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明による2成分の薬物を投与する装置の第1の実施形態の多種多様な図を図1〜3に示す。
【0040】
装置10は、保持要素22を備える接続要素20に取り付けられた内側ルーメン16及び外側シース又はカニューレ18の双方を画定する内側カニューレ14を備えた同心2重ルーメン構成12を備えている。接続要素20は、2つのポート24、26を備えており、第1のポート24は、内側カニューレ14の第1の又は内側のルーメン16と流体連通しており、第2のポート26は、内側カニューレ14の周りに環状空隙として形成され、外側シース又はカニューレ18によって半径方向に制限されている外側ルーメン28と流体連通している。
【0041】
2つのポート24、26は、例えば装置10によって投与される(例えば、生体組織などの上に散布若しくは滴下され、又はその中に注射される)べき成分を貯蔵する貯蔵容器30、32に流体連通している。この実施形態において、貯蔵容器30、32は、中空シリンダ34、36及びそれらに関連づけられたプランジャ38、40を有する注射器として形成されている。双方の注射器を同時に手動操作するために、基本的には当該技術分野において既知(例えば、米国特許第B−6,234,994号を参照)のとおり、シリンダ34、36は、第1の結合要素42によって結合しており、プランジャ38、40は第2の結合要素44によって結合している。また、プランジャ38、40をシリンダ34、36内に加圧する自動的に又は手動で操作可能な加圧機構46を使用することもできる。これらの加圧機構は、当該技術分野において一般に既知である(例えば、米国特許出願第A−2008/0103564号、同第A−2008/0060970号、同第B−6,464,663号、及び同第B−6,565,539号を参照)。シリンダ34、36の出口は、接続要素20の第1及び第2のポート24、26に直接取り付けることもでき、又は例えば、出口48、50とポート24、26との間に配置された流体制御装置52、54を用いることによって、間接的に取り付けることもできる。これら流体制御装置52、54は、第1の工程で流体制御装置に取り付けられた容器(図示せず)から注射器内に成分を吸い込む工程、並びに投与のために接続要素20及び同心ルーメン構成12を通じて注射器から成分を排出する工程に使用することができる。本発明による装置に使用できる流体制御装置の例は、欧州特許第B−0 814 866号及び米国特許第A−6,113,571号に記載されている。
【0042】
図2及び3により更に詳細に示されるように、接続要素20の第2のポート26は、例えば、2重ルーメン構成12が中を通って延在し固定されている内部中空スペース58に至る曲がり管56のような接続経路によって保持要素22と流体連通している。中空スペース58は、外側環状ルーメン28と流体連通している。
【0043】
外側カニューレ又はシース18は、内側カニューレ14の先端部62から間隔をあけた自由端60で切頭されている。外側シース又はカニューレ18は、その切頭された端部60において、内側カニューレ14の外面に固定的に取り付けられている。2つのカニューレのこの固定的な結合によって封止結合が形成されている。外側シース又はカニューレ18の中に延在する内側カニューレの部位内で、内側カニューレ14の壁部64は少なくとも1つの穴部又は開口部66を備えており、この開口部を介して内側ルーメン16及び外側ルーメン28が流体連通している。したがって、第2のポート26を介して及び更にチューブ56を通り、並びに中空スペース58を通って及び更に外側ルーメン28を通って流れる成分は、内側カニューレ14の内側ルーメン16を通って流れる他の成分と接触するので、少なくとも1つの穴部66の下流では双方の成分が内側カニューレ14を通って流れており、互いに混合され、混合物として先端部62から排出される。
【0044】
「混合される」という用語は、成分が一体となることを指す。混合によって、完全に、実質的に、又は部分的に均質な混合物を得ることができる。
【0045】
3成分薬物を投与する装置10’及び4成分薬物を投与する装置10”の代替の実施形態を図4及び5に示す。装置10’は、内側ルーメン16を画定する内側カニューレ14、中間環状ルーメン28を画定する中間シース又はカニューレ18、及び外側環状ルーメン70を画定する外側シース又はカニューレ68を有する3重ルーメン構成12’を備えている。カニューレはその自由端60、61で封止的に結合されており、内側カニューレ14内の少なくとも第1の開口部66が内側ルーメン16と中間の又は真ん中のルーメン28との間に流体連通を提供する一方、少なくとも第2の開口部72が中間ルーメン28と外側ルーメン70との間に流体連通を提供する。図4に示されるように、装置10’の接続要素20は、前述の3重ルーメン構成12’のルーメンと流体連通する3つのポート24、26、及び74を備えている。
【0046】
図5において、装置10”は、投与すべき薬物の4成分が中を通って適用される4つのポート24、26、74、76を有する接続要素20を備えている。装置10”は更に、図2〜4の3重ルーメン構成12’及び2重ルーメン構成12に類似した設計の4重ルーメン構成12”を備え、次の内側カニューレ又はシース68にある少なくとも1つの穴部82を通って次の内側環状ルーメン70と流体連通する更に外側の環状ルーメン80を画定する更に外側のカニューレ又はシース78を含んでいる。
【0047】
成分のうちの一方をもう一方の成分によって活性化できる少なくとも2成分の薬物の適用を可能とする装置を設計した。例えば、人体の外面又は人体内の場所などの一定の場所に薬物を適用することができる。人体内の場所は、細胞及び/若しくは細胞外基質などの生体物質、液体並びに/又は気体で満たされた、閉じた区画であってもよい。このような実施形態では、投与は注射によって実行できる。
【0048】
あるいは、人体内の場所は、体内の器官の表面であってもよい。このような実施形態では、投与は散布又は滴下によって実行できる。
【0049】
装置は、少なくとも2成分の各々の別々の供給を可能とする、少なくとも2つの同心の針又はカニューレを備えている(図4及び5を参照)。本発明の一実施形態において、装置は2つの同心の針又はカニューレを備えている。外側のカニューレ又はシースは、内側のカニューレの先端部の近くで終端しており、外側カニューレはこの場所で内側カニューレと封止的かつ固定的に結合(例えば溶接又は接着によって)している。
【0050】
外側シースの第2の端部が追加部品90によって内側カニューレに封止的かつ固定的に結合している、装置10”の代替の実施形態を図13に示す。図14は、図13のIの部位を更に拡大した断面図を示す。都合よくは、このような装置は、密閉された表面上への滴下による薬物の投与を可能とする小径の可撓性の同心構成を有している。このような装置の使用は、均質に混合された薬物を体内の遠隔部位又は狭い部位に投与するうえで有利であり、例えば脳脊髄液(CSF)の漏れを低減し及び/又は最小限に抑えるための硬膜の閉鎖において腹腔鏡手術を行うときには特に有利である。
【0051】
同心ルーメン構成は、押出し成形によって形成でき、多重ルーメンの外側カニューレを有することができる。図15は、図14のIIとして印された箇所における同心ルーメン構成の断面図の種々の実施形態を示す。図Aは、本発明による、内側ルーメンを囲む外側ルーメンを示す。図Bは、2つの相対するルーメン98を伴う外側カニューレを有する同心ルーメン構成を示す。
【0052】
内側カニューレは、カニューレの封止点の近くに少なくとも1つの穴部66を備えている。この又は内側カニューレにある各穴部は、外側ルーメンと内側ルーメンとの間に流体連通を提供する。成分は、内側及び外側ルーメンの中を別々に流れ、例えば組織又は領域などの選択された標的内に適用される直前に、内側カニューレ内で混合される。内側カニューレ内の穴部の下流で完全混合が行われる。
【0053】
本発明の一実施形態において、流体の流速は、0.5、1、2.5、5、10mL/分のように、約0.5〜約10mL/分である。
【0054】
内側カニューレの内径は、約0.0035〜約2mmの範囲であってよい。本発明の一実施形態において、内側カニューレの内径は、約0.495mmである。都合よくは、内側針の外径と外側針の内径との間の距離が、例えば0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5mmなどのように約0.05mmよりも大きい場合に、同心針内の適切な流れが得られる。本発明の一実施形態において、内側針の外径と外側針の内径との間の距離は、約0.2mmである。本発明の別の実施形態において、内側針の外径と外側針の内径との間の距離は、約0.49mmである。
【0055】
本発明の別の実施形態において、装置は、造影剤、気体、又は細胞組成物などの第3の成分の、例えば注射による投与のための3重同心針を備えている。造影剤は、例えばIopamiro(商標)のようなヨウ素系造影剤などの、種々の非毒性薬剤から選択できる。
【0056】
装置は、混合されたときに安定しない薬物、又は適用時まで別個に保持する必要のある薬物を適用するために使用できる。
【0057】
本発明によれば、2成分フィブリン封止剤、フィブリノーゲン及びトロンビンの椎間板内投与に際して、線維輪(AF)を通って髄核(NP)内に貫通する針は、与える損傷を可能な限り小さくするために可能な限り細い必要があることが判った。注射施術中に円板に与える損傷は、AFの亀裂及び破裂並びに円板からのNP物質の漏れにつながりかねない。本発明によれば、この装置設計によって、任意の所望の場所の標的組織に対する損傷を最小限に抑えることが可能となることが判った。
【0058】
2つのカニューレの封止的かつ固定的な結合は、締まりばめ(圧入)締付け、接着、レーザー溶接、冷間成形、加熱成形などの様々な技術を使用して、又は当該技術分野において既知の封止を形成するその他任意の方法によって実行できる。
【0059】
本発明の装置は、例えば腎切除術、外傷性の腎臓の再生及び瘻修復などの泌尿器科、糖尿病性潰瘍、慢性潰瘍、例えば止血栓として及び治癒の促進のための潰瘍、静脈瘤の閉鎖、拡張蛇行静脈の閉鎖、ろう孔内充填、円板の内部断裂、脊椎の疾患、障害又は症状の治療のため、硬膜の亀裂又はひびの封止(硬膜の閉鎖)及びCSFの漏れの低減又は防止のためなどの神経外科、線維輪の完全裂傷及び亀裂の封止、線維輪の穿刺の封止、IVDの充填及び封止のため、IVD高さ回復又は復元、心臓手術、焼痂を切除するため、漿液腫の治療のためなどの乳腺切除、痔核の閉塞、空気漏れの防止及び治療のためなどの肺切除、悪性胸水の寛解、膀胱炎の充填、及び尿管吻合術など、しかしこれらに限定されない任意の医療用途において、少なくとも2成分から作られる薬物を損傷した組織又は領域の中又は上に投与するために使用できる。別の例は、第1の成分として薬剤前駆体及び第2の成分として活性化剤の悪性組織内への投与である。
【0060】
本発明の一実施形態において、装置は脊椎の疾患、障害又は症状の治療に使用される。
【0061】
用語「脊椎疾患、障害又は症状」は、例えば椎間板及び/又は中枢神経系の疾患、障害又は症状を指す。
【0062】
用語「椎間板疾患、障害又は症状」は、円板ヘルニア、円板亀裂、脊髄狭窄、黒色円板、椎間板性疼痛等のような椎間板変性及び/又は損傷を含む、複数の障害、疾患又は症状を指す。
【0063】
しばしば、「椎間板疾患、障害又は症状」という用語は、「変性円板疾患(DDD)」又は「円板内部断裂(IDD)」という用語と同義に用いられる。
【0064】
本発明の一実施形態において、円板の高さを復元又は増加するために、NP部位内にフィブリン封止剤が適用される。本発明の別の実施形態において、適用されるフィブリン封止剤は、天然髄核組織と同様に圧縮荷重に耐えることができる。AFに存在する完全裂傷又は小さな亀裂によりNP物質が漏れた結果、円板の高さが減少する場合がある。AF内の任意のひび、空隙又は開口部を塞ぐために、フィブリン封止剤を使用することができる。
【0065】
円板の高さの減少は、AF内の裂傷若しくは亀裂の存在又は不在に拘らずに発生することがある。高さは、髄核の脱水及び謬原繊維の劣化に起因して減少することがある。
【0066】
本発明の一実施形態において、装置は、椎間板内電熱治療後にAF内の空隙を塞ぐフィブリン封止剤を投与するために用いられる(Derby及びKim BJ.、「Effect of intradiscal electrothermal treatment with a short heating catheter and fibrin on discogenic low back pain」、Am J Phys Med Rehabil.2005;84:560〜561)。
【0067】
本発明の更に別の実施形態において、装置は、NP内の空隙を塞ぐフィブリン封止剤を投与するために使用される。本発明のまた更に別の実施形態において、装置は、フィブリン封止剤を投与してNPの構造、物理的特性及び生体力学的機能をシミュレートするために使用される。
【0068】
フィブリン封止剤は、NPを除去せずに損傷した円板内に適用され得る。あるいは、フィブリン封止剤の投与前に、NPの全て又は一部が摘出される。切除術は、細胞外マトリクスを崩壊させることにより酵素的に、機械的に、ニュークレオトーム(Nucleotome)プローブを用いることにより、及び/又は当該技術分野において既知である任意の他の方法により、実行できる。
【0069】
軟骨組織を分解することができるタンパク質分解酵素としては、セリンプロテアーゼ、例えば、トリプシン、キモトリプシン、膵エラスターゼ、システインプロテアーゼ、例えばパパインキモパパイン、アスパラギン酸ペプチダーゼ、例えばペプシン、メタロペプチダーゼ、例えばコラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、プロナーゼ、コンドロイチナーゼ、ヒアルロニダーゼ、及び/又は同じ若しくは同様の様式で板物質を分解する他の化学物質、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本明細書で使用するとき、用語「中枢神経系の疾患、障害又は症状」とは、脳若しくは脊髄の正常な機能又は情報伝達を崩壊させる任意の疾患、障害、又は外傷を指す。制限なく、神経外科、外傷、虚血、低酸素症、神経変性疾患、代謝障害、感染疾患、椎間板の圧迫、腫瘍、自己免疫疾患及びCSF漏れによる、脳及び脊髄損傷に言及することができる。
【0071】
薬物は、外科用封止剤であってもよい。生物学的封止剤(例えば、フィブリノーゲン及びトロンビンなどの凝固タンパク質並びに/又はその他の天然生成物から作られている)、アクリル酸、シアノアクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーなどの合成封止剤、並びに例えばゼラチン−レゾルシノール−ホルムアルデヒド(GFR)接着剤などの生物学的材料及び合成材料の混合から作られた半合成封止剤を含むがこれらに限定されない、異なる種類の外科用封止剤を使用することができる。本発明の一実施形態において、薬物は国際特許出願第WO−A−2006/086510号に記載されているような合成封止剤である。本発明の別の実施形態において、薬物は、フィブリン封止剤である。
【0072】
代表的な2成分の薬物には、フィブリノーゲン及びトロンビン、アルギン酸及びカルシウム、コンドロイチン硫酸塩及びヒアルロン酸などの酸、抗原及び補助剤、コロイド懸濁液を組成する2成分、リポソームの組成を可能とする2成分、一方が他方による活性化を必要とする2成分、一方の成分が他方の成分を活性化する2成分、任意の2種類の液体の混合が含まれるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、薬物中の2成分はフィブリノーゲン及びトロンビンである。このような実施形態において、2成分が混合されると、重合プロセスが活性化され、流れに対する抵抗が過剰になる前に封止剤の適用が遅滞なく有利に実行される。
【0073】
本発明の一実施形態において、一方の成分は他方よりも粘稠度が高い。本発明の別の実施形態において、粘稠な成分が内側ルーメン内に移動する。内側ルーメン全体を通じて粘稠な成分の供給を促進するために、例えば外側カニューレの内径を犠牲にして、内側カニューレの内径を増加させることができる。本発明の更なる実施形態において、2成分の薬物は、BAC及びトロンビンである。本発明の更に別の実施形態において、内側ルーメンを通ってBAC成分が供給され、外側ルーメンを通ってトロンビン成分が供給される。あるいは、外側ルーメンを通じてBAC成分を供給し、内側ルーメンを通じてトロンビン成分を供給することができる。
【0074】
トロンビンの量を変えることで、重合に必要な時間が短縮又は延長される。典型的には、フィブリノーゲンの単位量当たりのトロンビンの濃度を上昇させることにより、より速いフィブリン組成が得られ、その結果凝塊の形成が早くなり過ぎ、針の目詰まりを招きかねない。他の脊椎針又は硬膜外針に比べて2成分が比較的短い距離を一緒に流れるので、装置に特有の設計がこの問題を最小限に抑える。一設定において、内側針内で部分的に固化した凝塊の形成を許容した場合(注射手技の約2分の遅延により)、凝塊は針から問題なく排出され、追加的な薬物の供給が可能であることが示された。本発明の同心針の目詰まりを取り除くのに必要な力は、合流した流れがより長い、同じゲージの他の針と比べて著しく低い。本発明の一実施形態において、使用されるトロンビンの濃度は約1000IU/mLである。本発明の別の実施形態において、使用されるトロンビンの濃度は約100IU/mLである。
【0075】
本発明による同心ルーメン構成を備える装置は、少なくとも2成分の薬物の適用を可能とする。本発明の一実施形態において、第1の成分を第2の成分によって活性化できる2成分の薬物が適用される。2成分の薬物は、例えば体内などの一定の場所に適用できる。本発明による同心ルーメン構成は、国際特許出願第WO−A−2007/059801号に記載されたものからY混合モジュールを除いたものなどの、2種類以上の成分の適用のために設計された任意のアプリケータ装置に使用できる。
【0076】
本発明の一実施形態において、同心ルーメン構成の内側針は0.8192mm(21G)の外径を有し、外側針は1.651mm(16G)の外径を有する。本発明の別の実施形態において、内側針は0.6414mm(23G)の外径を有し、外側針は1.270mm(18G)の外径を有する。本発明の更に別の実施形態において、内側針は0.6414mm(23G)の外径を有し、外側針は1.651mm(16G)の外径を有する。
【0077】
同心針/ルーメン構成12の長さは、約10〜約700mmであることができる。本発明の一実施形態において、長さは約20〜約500mmである。本発明の別の実施形態において、長さは300mmである。本発明の更に別の実施形態において、長さは180mmである。本発明の更にまた別の実施形態において、長さは90mmである。外側針は、内側針の先端部から間隔をあけた部位で終端している。突出した内側針は、所望の場所内に貫通することができる。本発明の一実施形態において、内側針の突出によって、体内組織内への貫通が可能となる。本発明の別の実施形態において、装置は、椎間板内注射に使用され、内側針は外側針の後12mmで終端している。本発明の更に別の実施形態において、内側カニューレは、外側カニューレの後3〜50mmで終端している。
【0078】
ポート24の中心とポート26の中心との間の距離は、アプリケータ装置95の出口48、50間の距離に適することができる。本発明の一実施形態において、国際特許出願第WO−A−2007/059801号に記載されているアプリケータ装置が使用され、2つのポート24、26の中心間の距離は18mmである。
【0079】
針/カニューレは、例えば生体適合性の材料などの任意の材料で形成されてもよい。本発明の一実施形態において、使用される材料は剛性であり、軟組織又は骨などの組織内に貫通することを可能とする。針は、組織内への薬物の浸透中に発生する可能性のある変形に耐えることができる。あるいは、針/カニューレは可撓性材料で作ることもできる。各種ステンレス鋼を含む金属、合金、塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン(各種PE)、ポリウレタン(PU)、Ultem(登録商標)(ポリエーテルイミド、PEI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PS)、ポリプロピレン(PP)などのポリマー及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されないいくつかの材料を使用できる。
【0080】
突出する内側針の外面を回転させることができる。内側針は、1つ以上の穴部を備えている。内側針内の穴部の下流で、成分の完全混合が行われる。最適なフィブリン封止剤の供給のために、穴部と突出する内側針の先端部との間の距離が均質な混合物の組成を可能にし、同時に、目詰まりが発生して流れに対する抵抗が過剰になる前に薬物が針から排出されることを可能にする。また、最適な結果を得るために、トロンビン濃度及び流速を変えることができる。本発明の一実施形態において、突出する内側針の先端部の端部から20mmのように、3〜50mmに位置する1つの穴部が備わっている。本発明の一実施形態において、装置は椎間板内注射に使用され、344,737Pa(50PSI)のように、最大約689,474Pa(100PSI)の圧力に耐える。
【0081】
装置は、造影剤及び/又は細胞組成物を注射するための図4及び5に示されるような追加的なカニューレ又は針を収容することができる。
【0082】
本発明による同心針構成を備える装置はまた、以下の部品のうちの1つ以上をも備えることができる。
1.端部にルアーロック(雌及び雄)を有する2つの接続管を出口48、50とポート24、26との間、又は流体制御装置52、54とポート24、26との間に取り付けることができる。接続管によって、操作者が組織内で針を動かすことなくアプリケータ装置を自由に動かすことができ、したがって潜在的な組織の損傷の危険を最小限に抑え、かつ/又は装置の使いやすさを最大限に引き出すことができる。
2.アプリケータ装置に緩やかな連続的な力を印加することを可能とする自動的又は手動の加圧機構。例えば図1の46を参照。本発明の一実施形態において、加圧機構はネジを利用している。
3.損傷部位に加えられた圧力の監視を可能とする力又は圧力を測定するユニット。
4.同心ルーメン構成内に中実のスタイレットを追加できる(例えば図6)。このようなスタイレットを有することによって、アセンブリが体内を意図する場所に進むときに、内側針のルーメン内の皮膚及び皮下組織などの非標的組織の蓄積を防止でき、又は実質的に防止できる。その結果、投与手順の過程で意図する部位への非標的組織が侵入することによる感染の危険が低減される。都合よくは、スタイレットはまた、終端要素内の同心針構成を補強及び支持し、同心針の屈曲又は破壊を防止することができる。スタイレットは内側針のルーメン内に位置することができ、内側針構成全体を通って延伸することができる。スタイレットは、終端要素を通って内側針の第1の端部まで又は第1のポート24の端部まで更に延伸することができる。図6では、同心針構成12は、内側針のルーメン内に位置する中実のスタイレット85を備えている。スタイレットは、各種ステンレス鋼を含む金属、合金、塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン(各種PE)、ポリウレタン(PU)、Ultem(登録商標)(ポリエーテルイミド、PEI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PS)、ポリプロピレン(PP)などのポリマー及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない任意の物質で作ることができる。
【0083】
「終端要素」という用語は、内部中空スペース58内に位置する外側シース18の第1の端部と内側ルーメン16との間のT型継手を指す。
【0084】
接続要素20及びアプリケータ装置95は、端部に雄及び雌のルアーロックを有する接続管などのアダプタ又はその他の当該技術分野において既知の類似のアダプタによって取り付けることができる。
【0085】
接続管の長さは最大約60cmであることができる。接続管の内径は、約0.5〜約5mmであることができる。接続管は、シリコン、塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(各種のPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、アプリケータ装置と接続要素20との間の可撓性の接続を可能とする任意の材料で形成され得る。
【0086】
本発明の一実施形態において、接続管は少なくとも344,737Pa(50PSI)の圧力に耐える。
【0087】
加圧機構装置が存在する場合、この装置はアプリケータ装置に緩やかな連続的な力を印加することを可能とする。本発明の一実施形態において、加圧機構は、増加する圧力を放出することなく椎間板の背圧に対して連続した力を印加することを可能とする。
【0088】
加圧機構は、異なる形状又は大きさで提供することができる。加圧機構は、アプリケータ装置の全部又は一部を収容することができる。前者の場合、加圧機構は目盛り付き注射器の可視化を可能とする。
【0089】
加圧機構は、ステンレス鋼などの金属、合金、塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン(各種PE)、ポリウレタン(PU)、Ultem(登録商標)(ポリエーテルイミド、PEI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PS)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)プラスチックなどのポリマー、及びこれらの組み合わせで作ることができる。
【0090】
薬物を投与中に印加される圧力は、ロードセル及び/又はひずみゲージなどの力測定ユニットによって間接的に監視することができる。力測定ユニットは、任意の大きさ又は形状であることができる。本発明の一実施形態において、印加される圧力は、10mmの直径及び7mmの高さを有する円筒形ロードセルによって間接的に監視されている。
【0091】
圧力はまた、アナログ又はデジタル圧力計のような圧力センサー測定ユニットによって直接監視することもできる。圧力センサー測定ユニットは、例えば延長管によって流体の流動経路上、又は流体伝導路のその他任意の部品に定置できる。直接測定はまた、力情報を圧力測定データに変換する適切な圧力変換器要素を使用することによっても実行できる。圧力変換器要素は、流体の流動経路上に定置することができる。
【0092】
力測定装置及び圧力センサーユニットは、7セグメントLCDのコンピュータ用スクリーン及び当該技術分野において既知のその他任意の可視化ユニットのような、しかしこれらに限定されない視覚表示モニタを備えることができる。
【0093】
力測定ユニット又は圧力測定ユニットは、加圧機構内に収容され得る。
【0094】
装置の構成要素は、1人の患者用であってもよく、又は複数の患者による繰り返し用途のために滅菌することもできる。構成要素は、ガンマ線、蒸気滅菌、薬品蒸気、高電圧電子線照射などを含むがこれらに限定されない、当該技術分野において既知の異なる方法によって事前滅菌することができる。本発明の一実施形態において、装置の構成要素は、蒸気滅菌を用いて滅菌されている。
【0095】
以上又は以下に引用する出願、特許、及び刊行物の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。以下の例は例示であり、限定するものではない。
【実施例】
【0096】
実施例1:同心針
1.270mm(18G)、0.8192mm(21G)、0.6414mm(23G)(エチレンオキシドで滅菌した、日本、東京都の小林商事株式会社製の脊椎針「phoenix」)及び1.651mm(16G)(Sigma社カタログ番号Z100897−1EA)の外径寸法を有する脊椎針を使用して、同心針を組み立てた。針の長さは90mmであった。
【0097】
0.8192mm/1.651mm(21G/16G)及び0.6414mm/1.270mm(23G/18G)(内側/外側)の外径寸法を有する2つの同心針を組み立てた。内側針及び外側針を結合するために、プラスチック製のデルリンブッシュを使用した。ポリエチレン接着剤を使用して2つの針を封止した。突出する内側針の遠位先端部から20mmの距離をおいて、内側針に混合穴が位置しており、即ち、2成分は、針から放出されるまでの20mmの距離を一緒に流れる。これらの実験に使用した、組み立てられた同心ルーメン構成を図2及び3に示す。
【0098】
実施例2:同心針を用いて適用される2成分のフィブリン封止剤
2成分のフィブリン封止剤中の1000IU/mLトロンビン(欧州特許第B−0 378 798号に記載されているものと同様)及びBAC(米国特許第B−6,121,232号及び国際特許出願第WO−A−98/33533号に記載されているとおりに調製し、欧州特許第B−1,390,485号に記載されているとおりにプラスミン(プラスミノゲン)を除去し、トラネキサム酸は添加しなかった)を使用した。使用直前に、希釈緩衝液でトロンビン成分を10倍希釈した(DDW(Riedel−de Haen社カタログ番号31307)中の0.4MのCaCl2を生理食塩水中で1:10に希釈して0.04Mの最終濃度とした)。BAC成分はそのまま使用した。下記の全ての実験において、トロンビン成分は外側針の中を通して投与し、BAC成分は内側針の中を通して投与した。
【0099】
実施例3:圧縮荷重後の円板の高さ回復に対する穿刺直径の影響
2成分のフィブリン封止剤、フィブリノーゲン及びトロンビンの椎間板内投与における同心針の有効性を観察した。フィブリン封止剤を椎間板内に注射する目的の1つは、円板の高さを復元し又は増加させることである。このような投与において、針は線維輪(AF)を通って髄核の部位まで導入される。注射手技の過程で加えられる穿刺直径は、AFの亀裂及び破裂並びにその結果として起こる椎間板からのNP物質の漏れのような、重大な円板の損傷を引き起こす可能性がある。円板は荷重を受けるので、どの穿刺直径が円板に重大な損傷を加えずに、圧縮荷重後の円板の高さ回復を可能とするかを評価する必要がある。したがって、圧縮荷重後にその最初の高さを維持する円板の能力に対する、穿刺直径の影響を観察するために、以下の実験を実行した。摘出したブタの腰椎(L1〜L5;Lahav,Israel)を筋組織から取り除き、腰椎体を電動骨のこぎりを使用して真ん中で切断して、摘出された椎間板を得た。その後、摘出した椎間板を、電気研磨機を用いて平坦化して、滑らかで平行な対称的上面及び下面を作製した。摘出した椎間板を引張圧縮試験機(LF plus,LLOYD instruments Ltd,Hampshire,UK)に定置し、500Nで圧縮を測定した。次に、PBS(Sigma社カタログ番号C−6885及びH−2126それぞれ0.5mL)中にコラゲナーゼ6mg/mL及びヒアルロニダーゼ2mg/mLを含有する溶液の注射によりNP組織を酵素学的に消化した。30分後、1.651mm(16G)の外径を有する針に結合した2つの注射器を摘出したIVDの反対端に挿入し、約2mLのPBSをIVD内に注射した。2つの反対側の注射器間で円板の内容物を移すことによって、円板スペースを数回、空にし、充填し、次にIVD内容物を廃棄した。記述したとおりにPBSを注射し、かつIVDの内容物を空にすることを3回実行した。この手順を、約2mLのEDTA(10mM;Riedel−de−Haen社カタログ番号34549)を用いてもう1度繰り返した。
【0100】
次に、1.651mmの外径を有する針(16G針)、又は異なる直径(1.6、2、2.5、及び3.5mm)の穴を得る異なるドリルを使用して各々の空になった円板を4回穿刺した。次に、各々の空になった円板の圧縮を500Nで測定した。
【0101】
その後、Y混合モジュールを除き国際特許出願第WO−A−2007/059801号に記載されているとおりにOmrix社の注入装置を使用して、穿刺され空になった円板にフィブリン封止剤を注射した(上述のとおり、等量を同時に適用)。余剰の溶液が注射部位から溢れるまで、存在する穿刺の中を通して成分を注射した。再充填された椎間板を、凝塊が形成されるまで約30分間、室温で温置した。温置期間後、充填された椎間板の圧縮測定を500Nで行った。
【0102】
全ての測定を5回繰り返した。円板のばらつきを排除し、標準化を保証するために、各個別のIVDについて、最大可能圧縮値(100%とみなす)からの百分率として高さ回復を計算した。未処理の円板の500N荷重下の圧縮値から空になった円板の500N荷重下の圧縮値を差し引くことによって、最大値(下記の式の分母)を計算した。分子は再充填された円板の圧縮値を表す。
【0103】
以下の式に従って、フィブリン充填された円板の高さ回復能力を計算した。
【数1】
【0104】
図7は、髄核スペースにフィブリン封止剤を注射した後の空になった円板の高さ回復能力を示す。異なる穿刺直径(1.6〜3.5mm)において測定を実施した。結果を、上述のとおり最大可能圧縮値(100%)の百分率として示す。
【0105】
結果は、3mm及び3.5mmの穿刺直径は、1.6〜2.5mmの穿刺直径と比較して、圧縮荷重後の円板の高さの著しい減少となったことを示している。3mm及び3.5mmの穿刺直径は、それらの初期の高さのそれぞれ50%及び12%を回復した。その一方、1.6〜2.5mmの穿刺直径は、それらの最初の高さの約60〜80%を回復した(図7)。
【0106】
このことは、周囲の組織に加えられる損傷が最小限に抑えられるので、標的組織又は器官内への薬物の直接適用に1.6、2及び2.5mm(16、14及び13G)の外径を有する針のような小径の針を使用する利点を示している。高圧を受ける器官に薬物を適用する場合、小径の針を使用することが非常に重要である。
【0107】
実施例4:0.8192mmの外径を有する針(21G針)を使用した摘出した椎間板内へのフィブリン封止剤の注射
上述のように、フィブリン封止剤を使用して、椎間板の高さを復元し又は増加させることができる。実験の目的は、0.8192mmの外径を有する針(21G針)による注射後、フィブリン封止剤がNP領域内に浸透できるかを判定することであった。この目的のために、摘出されたブタの腰椎(L1〜L5)を筋組織から取り除き、腰椎体を電動骨のこぎりを使用して真ん中で切断して、摘出されたIVDを得た。PBS中2mg/mLのヒアルロニダーゼを含有する0.5mLの消化液の注射によって摘出されたIVDからそれらの髄核組織を空にした。30分後、実施例3で指定したPBS及びEDTAでIVDを洗浄した。その後、次のようにして空になった摘出されたIVDの線維輪に瑕疵を加えた。1.651mmの外径を有する針(16G針)を使用して髄核組織に1.6mmの穿刺直径の穴を開けた。次に、開けられた穴からメスを挿入して(「modified Dallas Discogram」命名システム(Sachsら、「Dallas discogram description.A new classification of CT/discography in low−back disorders」、Spine.1987;12:287〜294)に従って特徴付けられた)等級1及び2変性円板をシミュレートした完全環状裂傷及び環状亀裂を得た。この工程の後、メスを取り去り、2mm金属製ネジを穴の中に挿入した。次に、0.8192mmの外径を有する針(21G針)を使用して、インジゴカルミン色素(トロンビン100IU中0.15mg/mL、Sigma社カタログ番号13116−4)を含有するフィブリン封止剤(上述のものと同様)を空になった摘出された椎間板内の髄核スペースに注射した。余剰の溶液が注射部位から溢れるまで、異なる場所に封止剤を注射した。図8は、等級1及び2の変性円板(B)をシミュレートした完全環状裂傷(A)並びに環状亀裂を有する円板内に注射手順後のフィブリン封止剤の局在化を示す。封止剤の局在化には矢印をつけた。
【0108】
結果は、フィブリン封止剤は注射手順後にNP領域内に浸透でき、環状亀裂及び裂傷を塞ぐことができることを明らかに示している。
【0109】
実施例5:同心針構成を使用したインビボ設定における椎間板内へのフィブリン封止剤の注射
インビボ設定において椎間板スペース内にフィブリン封止剤を注射する同心針構成の能力を調査するために、以下の実験を行った。また、注射手順中の同心針構成の使いやすさ及び機能をも評価した。
【0110】
この目的のために、本発明の同心針構成を使用して、ブタの椎間板内にフィブリン封止剤を注射した。対照として、0.8192の外径を有する標準21G脊椎針でPBSのインビボ注射を使用した。フィブリン封止剤及びPBSを注射するために使用した注入装置について下記に説明する。
【0111】
フィブリン封止剤の注射に使用した注入装置図1に示されるように、Omrix社のアプリケータ装置を(Y混合モジュールを除いて国際特許出願第WO−A−2007/059801号に記載されているように)接続要素20及び同心ルーメン構成12に接続した。端部にルアーロックを有する2つの可撓性接続管を用いて接続した。アプリケータ装置を、注入装置のプランジャ(図1の38、40)に緩やかな連続した力を印加することを可能とするネジを収容する加圧機構の外殻の中に入れた。注射手順中に印加した圧力を監視するために、装置はロードセル圧力変換器(Burster社の9201−v001)を含んでいた。視覚表示のために、変換器を可撓性のコードを介してコンピュータシステムに接続した。
【0112】
同心針構成は、Tegra Medical社によって、1.651mmの外径及び1.3589mmの内径を有する薄い壁部の外側針(16G針)、並びに0.8192mmの外径及び0.514mmの内径を有する内側針(21G針)で特別に製作された。外側針を、その端部において内側針に結合し、レーザー溶接した。内側針は外側針よりも更に20mm延伸し、内側針にある開口部(0.2×1.5mm)は内側針の先端部の端部の手前25mmに位置している。これは、2種類の成分が、突出した内側針から排出される手前25mmの距離で一緒に流れることを意味している。
【0113】
接続要素20及び同心ルーメン構成12を除く同一の注入装置でPBSを注射した。その代わりに、標準の0.8192mm(21G)脊椎針(エチレンオキシドで滅菌した、日本、東京都の小林商事株式会社製の「phoenix」脊椎針)を使用した。3方ストップコックを使用して、1つの延長接続管に2つのシリンダの出口を接続した。
【0114】
フィブリン封止剤
これらの実験には、OMRIX Biopharmaceuticals LTD社製のフィブリン接着剤、Evicel(商標)を使用した。使用直前に、トロンビン希釈緩衝液(150mMのNaCl、20mMの酢酸ナトリウム、2%のマニトール、6mg/mLの人血清アルブミン及び40mMのCaCl2)を使用してトロンビン成分を10倍(約100IU/mLに)希釈した。BAC成分はそのまま使用した。
【0115】
注射手順の前に、2成分を37℃で15分間解凍し、室温で30分間、ローラー上に定置した。
【0116】
注射手順の前に、造影剤(イオパミロ370;Bracco s.p.a)を30%の濃度でトロンビン成分中に添加した(混合フィブリン接着剤中では15%の最終濃度)。
【0117】
生理食塩水
注射前に、15%イオパミロを生理食塩水に加えた。
【0118】
実験動物
51kg及び53kgの体重の2頭の交雑育種の雌の家畜ブタ(サススクロファ)を使用した。動物は、公認の施設で現行の倫理規定に従って取り扱われ、飼育されていた。動物は、手術前に身体検査を受けた。体重、体温、心拍数及び呼吸数を測定した。
【0119】
手術中、管理された呼吸補助及び輸液補助により、動物を継続的に観察した。
【0120】
麻酔レジメン
ケタミン(15〜25mg/kg)、キシラジン(2mg/kg)及びジアゼパム(0.5〜10mg/kg)の筋肉内混合液(intramuscular mixture)を用いて麻酔を誘導した。気管内挿管が可能となる十分な程度の麻酔が得られるまで、この混合液を投与した。次に、気管内挿入管を獣医麻酔器に取り付けた。残りの準備及び外科手術の間、11〜15mL/kg/分の酸素流量を伴う1〜3%イソフルランの半閉鎖循環式吸入によって麻酔を維持した。
【0121】
輸液療法
静脈内アクセスを確保し、手術の期間を通じて、約10〜11mL/kg/時の流量で乳酸化リンガー溶液を投与した。手術中、ECG、脈拍、及び血圧を監視した。
【0122】
外科手術
外科用剃刀を備えた動物用電気バリカンで、脊椎部位の脱毛を行った。刈り取った毛及びくずを取り除くために、この部位に掃除機をかけた。動物の全身をドレープで覆った。上述のとおりに、麻酔下で外科手術を実施した。動物をその腹側を下にして横たえ、下記に詳述するように、フィブリン封止剤又は生理食塩水を含有する造影剤をIVDスペース内に注射した。蛍光写真(General Electric OEC9900)を視覚誘導として使用して、IVD空洞の場所を探し当て、注射物質の場所及び分布を視認した。
【0123】
注射手順
生理食塩水及びフィブリン封止剤の双方を、以下のとおりに各ブタに注射した。
1.21G脊椎針をブタのIVD(L4〜L5)の付近に位置づけ、次に、上述のように、注入装置の接続管に取り付けた。次に、針を円板の髄核領域内に挿入し、造影剤を含有する生理食塩水をその中に注射した。圧力モニタが344,737Pa(50PSI)を示したときに注射を停止した。
2.接続要素20に接続された同心針構成をIVD(L2〜L3)の付近に位置づけた。次の工程で、針構成を上述のように注入装置の2つの接続管に取り付けた。2つの接続管を接続要素に取り付ける前に、それらの先端部までフィブリン接着剤成分を充填した。蛍光写真で内側針の先端部から造影剤が出るのが見られるまで、非常に少量の(針の先端部に存在する)2成分を注射した。次に、同心針を、円板の線維輪を通じて髄各領域の中まで挿入し、造影剤を含有するフィブリン封止剤を、圧力が344,737Pa(50PSI)に達するまで注射した。
【0124】
同様の方法で生理食塩水及びフィブリン封止剤を第2のブタに注射したが、但し今回は、L2〜L3のIVDには生理食塩水を注射し、L4〜L5のIVDにはフィブリン封止剤を注射した。どちらのブタも、L1〜L2は処置を受けていない。
【0125】
手術後、安楽死まで、何らかの痛みの兆候又は異常な挙動を評価するために、動物を観察した。体重、挙動及び注射部位における局所的兆候について、これらを毎週検査した。手術後の動物の歩行能力に特に注意を払い、跛行の症状を観察した。
【0126】
動物は、ペントバルビタールナトリウム(0.3mL/kg)のIV注射により、手術の28日後に安楽死させた。背中(spine back)(胸部から仙骨まで)を周囲組織(筋組織)、骨盤及び大腿骨と共に取り出した。分析まで、脊椎及び周囲組織を冷凍機付きの容器内に定置した。
【0127】
円板摘出手順
約4時間後、電気のこぎりを使用して、双方の脊椎のIVD(L1〜L2、L2〜L3、L4〜L5)を真ん中で切断して摘出されたIVDを得、120mLの新鮮なホルマリンを収容する封止されたプラスチックチューブの中に4日間、室温で定置した。仙骨に対する腰椎の場所に従って、腰椎に番号をつけた。
【0128】
定着及び切片の作製
摘出されたIVDを10%ホルマリン溶液中に少なくとも4日間定置した。次の工程で、IVDをホルマリン溶液から脱灰溶液(Calci−clear;national diagnostics rapid;カタログ番号HS 105)中に3〜4日間、移した。次に、70%から100%まで4段階で濃度を上昇させたエタノール中で静かに攪拌することによってIVDを脱水した。その後、IVDを室温(20〜25℃)で30分間、Histoclear(Gadot社カタログ番号5989−27−5)中で洗浄し、次に56〜60℃で1時間、パラフィン中に埋め込んだ。ミクロトームを使用してNP領域から6μMの切片を切り取り、この切片を70%エタノール中ですすぎ、40℃の水浴に最大10分間定置し、スライドガラス上に乗せた。スライドを、37℃で1時間放置して乾燥させた。
【0129】
免疫染色
免疫染色法によって、椎間板スペース内のフィブリンの存在を判定した。スライドを室温で5分間、PBS中で静かに攪拌しながら温置した。この手順を4回繰り返した。次に、スライドをIF緩衝液(PBS中に5mL、5%のウシ胎児血清(FCS)及び1g、2%のBSA)中に室温で30分間温置し、PBSで5分間洗浄した。次の工程で、ヤギ抗フィブリノーゲン(Sigma社カタログ番号F8512、IF緩衝液中で1:100に希釈)を用いてスライドを約75分間温置し、PBSで5分間、4回洗浄した。スライドを2級抗ヤギ抗体(Sigma社カタログ番号A7650、IF緩衝液中で1:2000に希釈)を用いて30分間温置し、PBSで5分間、4回洗浄した。抗体バインディングを可視化するために、「Sigma Fast Red」キット(カタログ番号N3020)を使用して切片を現像した。キットは、製造者の使用説明書に従って使用した。インビトロで予備成形された、染色されキャストされたフィブリン凝塊が参照の役割を果たした。希釈されたトロンビン成分(トロンビン希釈緩衝液で1:10に希釈)及びBAC成分の等量(合計で0.5mL)を混合することによって、キャストされたフィブリン凝塊を予備成形した。凝塊を約30分間放置して重合させた。
【0130】
ヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色
細胞核及び細胞質を染色するH&E染色法によって、注射された髄核領域の損傷を判定した。スライドをヘマトキシリン溶液(Sigma社カタログ番号MHS32)中に10分間沈め、水道水で10分間洗浄した。次に、スライドをエオシン溶液(Sigma社カタログ番号E4382)中に30秒間定置し、水道水で洗浄した。次の工程で、濃度を上昇させたエタノール(70%〜100%)中に液浸することによってスライドを脱水した。その後、Histoclearでスライドを洗浄し、顕微鏡下で分析した。
【0131】
アルシアンブルー染色
アルシアンブルー溶液(100mLの3%酢酸中に溶解した1gのアルシアンブルー、Fluka社カタログ番号45731)でスライドを3分間被覆した。次に、アルシアンブルー溶液を除去し、紙タオルを使用して残存物を丁寧に吸収した。その後、変色のために、スライドを5%酢酸で10分間洗浄し、その後脱塩水で5分間洗浄した。
【0132】
本発明による同心ルーメン針構成を備えた注入装置を使用した椎間板内注射は、一切の合併症を伴わずに実行されたことが、外科医によって報告された。外科医は更に、同心針は、PBS注射に使用された針(0.8192の外径を有する針)と比較して、曲げに対する耐性が増したと報告した。
【0133】
手術の1日後、どちらのブタもそれらの檻の中で立ち上がり自由に動き回ることができた。手術の有害作用は観察されず、鎮痛剤を必要とはしなかった。H&E染色法によって判定されたように(データは図示せず)、同心針構成によって、又は0.8192mm(21G)脊椎針(0.8192の外径を有する)によって注射されたブタの髄核領域に病理所見は観察されなかった。
【0134】
動物は、実験期間を通じて体重が増加した。28日目には、動物の体重は65及び61.5であった(これらの体重は10.5〜12kg増加した)。
【0135】
図9Aは、フィブリン封止剤成分を注射したIVDから得た代表的な切片内のフィブリンの免疫染色を示している。フィブリン染色を実証するために使用した免疫染色されキャストされたフィブリン凝塊を図9Bに示す。陽性のフィブリン染色に矢印をつけた。
【0136】
染色した切片にフィブリンが存在することが明らかであり、本発明による同心針構成を備えたアプリケータ装置の使用を、インビボ設定においてNP領域内に挿入し、椎間板スペース内にフィブリンを注射するために有効に使用できることを示している。
【0137】
これらの結果は、上述のように同心ルーメン構成を備えた注入装置を用いて、15頭の動物の椎間板スペースにフィブリンを注射した別のセットの実験で確認された。実験は、上記に詳述したのと同一の方法に以下の変更を加えて実行された。造影剤として30%の最終濃度のOmnipaque(商標)(GE Healthcare社、カタログ番号NDC 0407−1413−51)を使用し、溶液(フィブリン成分又は生理食塩水)を、413,685Pa(60PSI)の圧力に達するまで注射し、注射手順の3日後に動物を安楽死させた。
【0138】
円板を抽出し、摘出されたIVDを得、NP領域から6μMの切片を切り取り、上記に詳述した手順に従ってスライドガラス上に乗せた。次の工程で、免疫染色法によって、椎間板内のフィブリンの存在を確認した(上述の手順を参照)。免疫染色の前に、上述のとおりアルシアンブルー溶液でスライドを対比染色した。
【0139】
図9Cは、実施された第2の調査におけるフィブリン封止剤成分を注射したIVDから得た代表的な切片内のフィブリンの免疫染色を示している。フィブリン染色に矢印をつけた。
【0140】
得られた結果は、前回の結果と一致している。椎間板スペース内にフィブリンが存在し、したがって椎間板内への薬物の注射に同心針構成が好適であることが分かった。
【0141】
実施例6:異なる針ゲージによって線維輪組織に加えられた損傷の評価
実施例3は、注射手順中にできた穿刺直径が圧縮荷重後の高さ復元能力に影響することを示した。
【0142】
周辺組織に対する注射の影響を更に評価するために、線維輪組織の損傷(環状切除)の程度に対する針ゲージの影響を評価した。この目的のために、摘出されたブタの腰椎を筋組織から取り除き、線維輪組織を異なるゲージの針で穿刺した(針の鈍化を防止するために各針について約5回の穿刺)。各穿刺後、針の中に金属棒を挿入し、針内に溜まった線維輪物質(annulus material)を収集し、その重量を測定した。穿刺毎に削り取られた線維輪組織を計算できるように、削り取られた線維輪組織の合計重量を穿刺回数で除した。
【0143】
線維輪組織の切り取り(環状切除)をもたらした穿刺の百分率及び各ゲージ寸法についての穿刺毎の削り取られた組織の重量を図10A及びBにそれぞれ示す。結果は、3〜4の独立した実験の平均値±S.D.を示している。
【0144】
結果は、穿刺の結果として起こる組織の切り取りは、針の直径に比例し、即ちより小さな直径の針ではより少ない組織が切り取られることを示している。
【0145】
穿刺手順後のIVD切片を観察すると(図10C)、より大きなゲージの針(より小さな直径の針)による穿刺がより小さいゲージの針(より大きな直径の針)と比較して線維輪構造に対してより小さな損傷を加えることが明白である。線維輪組織内の破裂に矢印をつけた。
【0146】
これらの結果は、より大きな針ゲージを使用することによって、注射手順の結果として起こる組織の損傷の程度が軽減されることを示している。
【0147】
実施例7:流量に対する同心針の抵抗
本実施例は、同心針の流量特性を調査するために実施した。この目的のために、Omrix社の注入装置(Y混合モジュールを除いて国際特許出願第WO−A−2007/059801号に記載されたとおり)にフィブリン封止剤(上述のものと同様)を充填した。各成分2mLを別個の注射器内に適用した。その後、同心針(外径0.8192mm/1.651mm(21G/16G)又は0.6414mm/1.270mm(23G/18G)(内側/外側))を装置に接続し、流量に対する同心針の抵抗を測定した。要求された流速(0.5〜5mL/分)を引張圧縮試験機に供給し、各流速を達成するために必要であった最大力を同心針の種類毎に記録した(図11)。装置に印加された力によってプランジャが動き、その結果注射器から封止剤が排出された。結果は、3つの独立した実験の平均値±S.D.を表している。
【0148】
0.6414mm/1.270mm(23G/18G)の外径を有する同心針が、0.8192mm/1.651mm(21G/16G)の針と比較して流量に対するより高い抵抗を有することが明白である。
【0149】
更に、同等の流速を達成するためには、0.8192mm/1.651mm(21G/16G)の同心針と比較して、0.6414mm/1.270mm(23G/18G)の同心針ではより大きな力を必要としたことが明らかである。例えば、5mL/分の流量を所望の場合、0.6414mm/1.270mm(23G/18G)及び0.8192mm/1.651mm(21G/16G)の針では、それぞれ20及び11Nの力が必要である。
【0150】
実施例8:針の目詰まりを取り除くのに必要な力
2成分を一緒に混合するとき、重合プロセスが活性化され、装置の目詰まりが発生する場合がある。したがって、同心針の目詰まりを取り除くのに必要な力を調査するために、以下の実施例を実施した。
【0151】
Y混合モジュールを除いて国際特許出願第WO−A−2007/059801号に記載されたようなOmrix社の注入装置にフィブリン封止剤(上述のものと同様)を充填した。各成分2mLを別個の注射器内に適用した。その後、0.8192mm/1.651mm(21G/16G)又は0.6414mm/1.270mm(23G/18G)の同心針を装置に接続した。余剰の溶液が針から溢れ、針が満たされていることを示すまで注射器から封止剤を排出した。
【0152】
注射を2分間停止し、流れが再開するまでプランジャに力を印加した。LF plus(LLOYD)測定器を使用して力を測定した。図12は、0.6414mm/1.270mm(23G/18G、A)及び0.8192mm/1.651mm(21G/16G、B)の同心針内の針目詰まりを克服するために必要な最大力を示している。結果は、針毎の15回の測定値の平均値±S.D.を表している。
【0153】
結果は、0.6414mm/1.270mm(23G/18G)の針の目詰まりを取り除くのに必要な力が、0.8192mm/1.651mm(21G/16G)の針よりも著しく大きい(それぞれ15N対6N)ことを実証している。分散測定の上限は、0.6414mm/1.270mm(23G/18G)及び0.8192mm/1.651mm(21G/16G)の同心針についてそれぞれ約35及び9.5Nであった。
【0154】
これらの結果は、相応の力を印加すると、内側針内に部分的に固化した凝塊を針から問題なく排出することができることを示している。
【0155】
本発明は特定の実施例に関して図示して説明されたが、本発明がそれらの実施例に限定されることを意図するものではない。特許請求の範囲によって定義される本発明の真の範囲から逸脱することなく変更及び修正がなされ得ることが、当業者には理解されよう。したがって、添付の「特許請求の範囲」及びその等価物の範疇に含まれるような全ての変更及び修正が、本発明に含まれることが意図されている。
【0156】
〔実施の態様〕
(1) 少なくとも2成分の薬物を投与する装置であって、
−(i)第1の端部に入口開口部を伴うルーメン(16)及びその第1の端部と反対の第2の端部(62)に出口開口部を伴う先端部を有する内側カニューレ(14)、並びに(ii)前記内側カニューレのそれぞれ第1及び第2の端部に面する互いに反対の第1及び第2の端部を有し、前記内側カニューレの前記第1の端部と第2の端部との間の軸方向長さに沿って前記内側カニューレを囲む外側シース(18)を含む、同心ルーメン構成(12)を備え、
−前記外側シースがその第2の端部(60)において前記内側カニューレに封止的かつ固定的に結合され、前記内側カニューレの周りの外側ルーメン(28)を画定し、
−前記内側カニューレが、前記内側カニューレの周りの前記外側ルーメン(28)と前記内側カニューレの前記ルーメン(16)との間に流体連通を提供する少なくとも1つの開口部(66)を備えた、装置。
(2) 前記薬物の前記成分を貯蔵する少なくとも第1の貯蔵容器(32)及び第2の貯蔵容器(30)を更に備え、前記容器が前記同心ルーメン構成(12)と接続でき、前記第1の容器が前記内側カニューレの前記ルーメン(16)と流体連通し、前記第2の容器が前記内側カニューレ(14)の周りの前記外側ルーメン(28)と流体連通する、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記容器(30、32)と前記同心ルーメン構成(12)との間に流体連通を提供する接続要素(20)を更に備える、実施態様1又は2に記載の装置。
(4) 前記接続要素(20)が、前記第1の容器(32)に接続する第1のポート(24)及び前記第2の容器(30)に接続する第2のポート(26)を備え、前記第1のポートが前記内側カニューレの前記入口開口部と流体連通し、前記第2のポートが前記外側シースの前記第1の端部で前記外側ルーメンと流体連通している、実施態様3に記載の装置。
(5) 前記接続要素(20)が、前記同心ルーメン構成の前記内側カニューレ及び外側シースを保持する保持要素(22)を更に備え、前記保持要素が、前記同心ルーメン構成が中を通って延伸する内部中空スペース(58)を備え、前記外側シースの前記第1の端部が前記中空スペース内に位置し、前記内側カニューレが前記終端要素の中を通って更に延伸し、前記第2のポート(26)に始まって前記終端要素の前記内部中空スペース内で終端する接続経路(56)が備わった、実施態様4に記載の装置。
(6) 前記内側カニューレの前記少なくとも1つの開口部(66)が、前記外側シースの前記第2の端部(60)に隣接して配置される、実施態様1〜5のいずれかに記載の装置。
(7) 前記同心ルーメン構成が、軸方向長さに沿って前記外側シース(18)を囲み、前記外側シースの前記第1及び第2の端部にそれぞれ面する第1及び第2の端部を備えた少なくとも1つの更なるシース(68)を更に備え、前記更なるシースが、その第2の端部に隣接した前記外側シース(18)に封止的に結合し(61)、前記外側シースの周りに更なるルーメン(70)を画定し、前記外側シースが、前記外側シース(18)の周りの前記更なる外側ルーメン(70)と前記内側カニューレの周りの前記外側シース内の前記ルーメン(28)との間に流体連通を提供する少なくとも第2の開口部(72)を備え、前記薬物の更なる成分を貯蔵し、前記同心ルーメン構成の前記少なくとも1つの更なるシースの前記第1の端部に接続できる少なくとも1つの更なる貯蔵容器が備わっている、実施態様1〜6のいずれかに記載の装置。
(8) 前記成分を前記容器(30、32)から前記同心ルーメン構成(12)へ、かつ更にその中を通って前記内側カニューレの前記第2の端部(62)の前記先端部から外へ加圧する加圧機構(46)を更に備える、実施態様1〜7のいずれかに記載の装置。
(9) 前記少なくとも1つの成分が、前記薬物の前記少なくとも第2の成分によって活性化される、実施態様1〜8のいずれかに記載の装置。
(10) 前記少なくとも1つの成分がフィブリノーゲンを含み、前記少なくとも第2の成分がトロンビンを含む、実施態様1〜8のいずれかに記載の装置。
【0157】
(11) 前記投与が注射によって実行される、実施態様1〜10のいずれかに記載の装置。
(12) 前記投与が散布又は滴下によって実行される、実施態様1〜10のいずれかに記載の装置。
(13) 必要としている患者に少なくとも2種類の成分を含む薬物を投与する方法であって、
−実施態様1〜10のいずれかに記載の装置を提供する工程と、
−前記同心ルーメン構成の前記内側カニューレの前記先端部を生体組織内に貫通させる工程と、
−前記同心ルーメン構成の前記内側カニューレの前記先端部を通じて混合状態の前記少なくとも2成分の薬物を投与する工程とを含む、方法。
(14) 前記薬物が、フィブリノーゲン成分及びトロンビン成分を伴うフィブリン封止剤である、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記薬物が、薬前駆体成分及び薬前駆体活性化成分を伴う薬である、実施態様13に記載の方法。
(16) 少なくとも2種類の成分を含む薬物を必要としている患者に投与する方法であって、
−実施態様1〜10のいずれかに記載の装置を提供する工程と、
−生体組織上に、前記同心ルーメン構成の前記内側カニューレの前記先端部を通じて混合状態の前記少なくとも2成分の薬物を投与する工程であって、前記投与する工程が滴下又は散布によって実行される、前記投与する工程とを含む、方法。
(17) 患者の組織欠陥を治療する方法であって、
−実施態様1〜10のいずれかに記載の装置を提供する工程と、
−前記患者に混合状態の少なくとも2種類の成分を含む薬物を投与する工程とを含む、方法。
(18) 前記欠陥が、腎臓欠陥、ろう孔、潰瘍、出血、硬膜の亀裂又はひびわれ、脳脊髄液漏れ、脊椎円板欠陥、線維輪の完全裂傷及び亀裂、線維輪の破裂、椎間板の亀裂若しくはひびわれ又は椎間板の高さの減少のような脊椎の疾患、障害又は症状、心臓血管疾患、心臓疾患、焼痂、乳腺切除後の漿液腫などの漿液腫、痔、肺切除によるなどの空気漏れ、悪性胸水、膀胱炎、及び尿管吻合又は腸吻合などの吻合からなる群から選択される、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記薬物が封止剤である、実施態様17又は18に記載の方法。
(20) 前記封止剤がフィブリン封止剤である、実施態様19に記載の方法。
【0158】
(21) 前記同心ルーメン構成の前記内側カニューレの前記先端部を通じて混合状態の少なくとも2種類の成分を含む薬物を、表面上に投与する、実施態様1〜10のいずれかに記載の装置の使用。
(22) 前記投与が、滴下又は散布によって実行される、実施態様21に記載の使用。
(23) 前記表面が、患者の身体部位の表面である、実施態様21又は22に記載の使用。
(24) 前記薬物が、フィブリノーゲン成分及びトロンビン成分を伴うフィブリン封止剤である、実施態様21〜23のいずれかに記載の使用。
(25) 前記薬物が、薬前駆体成分及び薬前駆体活性化成分を伴う薬である、実施態様21〜23のいずれかに記載の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2成分の薬物を投与する装置であって、
−(i)第1の端部に入口開口部を伴うルーメン(16)及びその第1の端部と反対の第2の端部(62)に出口開口部を伴う先端部を有する内側カニューレ(14)、並びに(ii)前記内側カニューレのそれぞれ第1及び第2の端部に面する互いに反対の第1及び第2の端部を有し、前記内側カニューレの前記第1の端部と第2の端部との間の軸方向長さに沿って前記内側カニューレを囲む外側シース(18)を含む、同心ルーメン構成(12)を備え、
−前記外側シースがその第2の端部(60)において前記内側カニューレに封止的かつ固定的に結合され、前記内側カニューレの周りの外側ルーメン(28)を画定し、
−前記内側カニューレが、前記内側カニューレの周りの前記外側ルーメン(28)と前記内側カニューレの前記ルーメン(16)との間に流体連通を提供する少なくとも1つの開口部(66)を備えた、装置。
【請求項2】
前記薬物の前記成分を貯蔵する少なくとも第1の貯蔵容器(32)及び第2の貯蔵容器(30)を更に備え、前記容器が前記同心ルーメン構成(12)と接続でき、前記第1の容器が前記内側カニューレの前記ルーメン(16)と流体連通し、前記第2の容器が前記内側カニューレ(14)の周りの前記外側ルーメン(28)と流体連通する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記容器(30、32)と前記同心ルーメン構成(12)との間に流体連通を提供する接続要素(20)を更に備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記接続要素(20)が、前記第1の容器(32)に接続する第1のポート(24)及び前記第2の容器(30)に接続する第2のポート(26)を備え、前記第1のポートが前記内側カニューレの前記入口開口部と流体連通し、前記第2のポートが前記外側シースの前記第1の端部で前記外側ルーメンと流体連通している、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記接続要素(20)が、前記同心ルーメン構成の前記内側カニューレ及び外側シースを保持する保持要素(22)を更に備え、前記保持要素が、前記同心ルーメン構成が中を通って延伸する内部中空スペース(58)を備え、前記外側シースの前記第1の端部が前記中空スペース内に位置し、前記内側カニューレが前記終端要素の中を通って更に延伸し、前記第2のポート(26)に始まって前記終端要素の前記内部中空スペース内で終端する接続経路(56)が備わった、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記内側カニューレの前記少なくとも1つの開口部(66)が、前記外側シースの前記第2の端部(60)に隣接して配置される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記同心ルーメン構成が、軸方向長さに沿って前記外側シース(18)を囲み、前記外側シースの前記第1及び第2の端部にそれぞれ面する第1及び第2の端部を備えた少なくとも1つの更なるシース(68)を更に備え、前記更なるシースが、その第2の端部に隣接した前記外側シース(18)に封止的に結合し(61)、前記外側シースの周りに更なるルーメン(70)を画定し、前記外側シースが、前記外側シース(18)の周りの前記更なる外側ルーメン(70)と前記内側カニューレの周りの前記外側シース内の前記ルーメン(28)との間に流体連通を提供する少なくとも第2の開口部(72)を備え、前記薬物の更なる成分を貯蔵し、前記同心ルーメン構成の前記少なくとも1つの更なるシースの前記第1の端部に接続できる少なくとも1つの更なる貯蔵容器が備わっている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記成分を前記容器(30、32)から前記同心ルーメン構成(12)へ、かつ更にその中を通って前記内側カニューレの前記第2の端部(62)の前記先端部から外へ加圧する加圧機構(46)を更に備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの成分が、前記薬物の前記少なくとも第2の成分によって活性化される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの成分がフィブリノーゲンを含み、前記少なくとも第2の成分がトロンビンを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記投与が注射によって実行される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記投与が散布又は滴下によって実行される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項1】
少なくとも2成分の薬物を投与する装置であって、
−(i)第1の端部に入口開口部を伴うルーメン(16)及びその第1の端部と反対の第2の端部(62)に出口開口部を伴う先端部を有する内側カニューレ(14)、並びに(ii)前記内側カニューレのそれぞれ第1及び第2の端部に面する互いに反対の第1及び第2の端部を有し、前記内側カニューレの前記第1の端部と第2の端部との間の軸方向長さに沿って前記内側カニューレを囲む外側シース(18)を含む、同心ルーメン構成(12)を備え、
−前記外側シースがその第2の端部(60)において前記内側カニューレに封止的かつ固定的に結合され、前記内側カニューレの周りの外側ルーメン(28)を画定し、
−前記内側カニューレが、前記内側カニューレの周りの前記外側ルーメン(28)と前記内側カニューレの前記ルーメン(16)との間に流体連通を提供する少なくとも1つの開口部(66)を備えた、装置。
【請求項2】
前記薬物の前記成分を貯蔵する少なくとも第1の貯蔵容器(32)及び第2の貯蔵容器(30)を更に備え、前記容器が前記同心ルーメン構成(12)と接続でき、前記第1の容器が前記内側カニューレの前記ルーメン(16)と流体連通し、前記第2の容器が前記内側カニューレ(14)の周りの前記外側ルーメン(28)と流体連通する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記容器(30、32)と前記同心ルーメン構成(12)との間に流体連通を提供する接続要素(20)を更に備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記接続要素(20)が、前記第1の容器(32)に接続する第1のポート(24)及び前記第2の容器(30)に接続する第2のポート(26)を備え、前記第1のポートが前記内側カニューレの前記入口開口部と流体連通し、前記第2のポートが前記外側シースの前記第1の端部で前記外側ルーメンと流体連通している、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記接続要素(20)が、前記同心ルーメン構成の前記内側カニューレ及び外側シースを保持する保持要素(22)を更に備え、前記保持要素が、前記同心ルーメン構成が中を通って延伸する内部中空スペース(58)を備え、前記外側シースの前記第1の端部が前記中空スペース内に位置し、前記内側カニューレが前記終端要素の中を通って更に延伸し、前記第2のポート(26)に始まって前記終端要素の前記内部中空スペース内で終端する接続経路(56)が備わった、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記内側カニューレの前記少なくとも1つの開口部(66)が、前記外側シースの前記第2の端部(60)に隣接して配置される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記同心ルーメン構成が、軸方向長さに沿って前記外側シース(18)を囲み、前記外側シースの前記第1及び第2の端部にそれぞれ面する第1及び第2の端部を備えた少なくとも1つの更なるシース(68)を更に備え、前記更なるシースが、その第2の端部に隣接した前記外側シース(18)に封止的に結合し(61)、前記外側シースの周りに更なるルーメン(70)を画定し、前記外側シースが、前記外側シース(18)の周りの前記更なる外側ルーメン(70)と前記内側カニューレの周りの前記外側シース内の前記ルーメン(28)との間に流体連通を提供する少なくとも第2の開口部(72)を備え、前記薬物の更なる成分を貯蔵し、前記同心ルーメン構成の前記少なくとも1つの更なるシースの前記第1の端部に接続できる少なくとも1つの更なる貯蔵容器が備わっている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記成分を前記容器(30、32)から前記同心ルーメン構成(12)へ、かつ更にその中を通って前記内側カニューレの前記第2の端部(62)の前記先端部から外へ加圧する加圧機構(46)を更に備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの成分が、前記薬物の前記少なくとも第2の成分によって活性化される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの成分がフィブリノーゲンを含み、前記少なくとも第2の成分がトロンビンを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記投与が注射によって実行される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記投与が散布又は滴下によって実行される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【公表番号】特表2012−518458(P2012−518458A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550700(P2011−550700)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000137
【国際公開番号】WO2010/095128
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511203455)オムリックス・バイオファーマシューティカルズ・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Omrix Biopharmaceuticals Ltd.
【住所又は居所原語表記】Bldg. 14, Weizmann Science Park, P.O. Box 619, Rehovot 76106 Israel
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000137
【国際公開番号】WO2010/095128
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511203455)オムリックス・バイオファーマシューティカルズ・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Omrix Biopharmaceuticals Ltd.
【住所又は居所原語表記】Bldg. 14, Weizmann Science Park, P.O. Box 619, Rehovot 76106 Israel
【Fターム(参考)】
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