説明

尾鉱の処理方法

【課題】山元にて廃棄状態に近い形で貯鉱されている鉄鉱石の尾鉱を、輸送コスト等の低減を可能にできると共に、焼結原料として好適な状態にするための処理方法を提案することにある。
【解決手段】山元での湿式選鉱時に発生する、平均粒径が10μm以下の高水分超微粉状鉄鉱石である尾鉱を、乾燥処理をすることなくそのまま混合攪拌型造粒機に導いて、その山元において混合造粒し、得られた尾鉱造粒物を積み地を経て揚げ地まで輸送し、その後、その尾鉱造粒物を揚げ地においても乾燥することなく、焼結原料として用いる尾鉱の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石の湿式選鉱残渣として知られている超微粉状尾鉱の処理方法に関し、とくに、その尾鉱の、山元での払い出しから積み出し港(積み地)での積み出しを経て、積み降し港(揚げ地)において焼結原料にするまでの処理方法についての提案である。
【背景技術】
【0002】
近年、原料である鉄鉱石の需要は、中国やインド等の新興国における鉄鋼需要の増大を受けて、世界的に伸びている。ところで、我が国鉄鋼各社では、鉄鉱石の約60%を主にオーストラリアから輸入している。しかし、そのオーストラリアでは、焼結鉱の製造に好適な高品位へマタイト鉱石が枯渇しており、そのため最近では、多量のゲーサイトを含むマラマンバ鉱石、ピソライト鉱石あるいはリンを多量に含有するへマタイト鉱石などが、出荷の主力になりつつあるのが実情である。
【0003】
鉄鉱石のサプライヤーとしては、オーストラリアの他にブラジル、インド等の山元が上げられるが、インドについては、原則としてFe含有量が60mass%以上の鉄鉱石は国内使用を優先され、輸出が制限されている。そのため、世界全体として見ると、Feが60mass%以上の高品位鉄鉱石は著しく不足傾向にあるのが実情である。この意味において、現在では、これまでは未利用であった低品位鉄鉱石の有効活用のための技術開発が強く望まれている。
【0004】
鉄鉱石の山元では、通常、鉱山で採鉱した脈石含有鉄鉱石を破砕し、サイジング処理によってまず塊鉱石を選鉱分離し、次いで、そのアンダーサイズの鉄鉱石粉をさらに湿式のサイジング処理によって焼結用粉鉱石として分離回収している。一方、この湿式サイジング処理後のアンダーサイズである微粉については、シックナーに流し込み、このシックナーでの沈殿残渣を抜き出し、これを尾鉱(テーリングとも言う、有用な鉱石である精鉱に対するものとしてこれを尾鉱と呼称している)として取り出し、一般には、鉱山近くの池や沼地を堆積場として貯鉱(通常、ボタ山またはズリ山という)している。この尾鉱は、精鉱に比べて鉄分が54mass%と若干少なく、一方でスラグ成分となるSiOやAlを1.4〜5.0mass%含有し、そして平均粒径(レーザー散乱法:(マイクロトラック)により測定した値)が10μm以下と小さいため、焼結鉱製造用原料としては、これまで、不適当な鉱石とされていたものである。従って、貯鉱とは言っても、現実的には廃棄されている状況に等しい。その貯鉱量は、鉱山によっては数千万トンにも及ぶと言われている。
【0005】
ところで、近年、鉄鉱石需要の高まりに伴い、鉄鉱石の積み出しに便利な、海岸近くの山元(鉱山)は少なくなっているのが実情である。鉄鉱石を海外に供給する山元というのは、今後ますます、内陸(奥地)になることが予想される。このことは総輸送経費に対する内陸輸送経費の占める割合が大きくなることを意味しており、原料(鉄鉱石)価格の高騰の原因ともなっている。
【0006】
また、上述した尾鉱は、粒径が10μmと小さいために、ハンドリングが困難を極めるという問題がある。とりわけ、尾鉱の構成主体である粒径10μm程度の超微粉は、大気中に浮遊粉塵として容易に飛散するものであることから、一般に、池や沼沢に貯鉱せざるを得ないという事情もある。
【0007】
ところで、石炭輸送に関しては、特許文献1では、山元から荷揚げまでの総輸送費に対して大きな割合を占める内陸輸送費、港湾建設費、海上輸送費を低減するために、(a)石炭を山元から積み地まではスラリー状のものをパイプラインで輸送し、(b)内陸輸送されたスラリーを積み地において一旦、貯炭すると共に、スラリー内の微粉炭を水中造粒装置により造粒し、(c)ペレット状石炭を、海底パイプラインを介して沖合に設置されている脱水・機械揚げ設備まで輸送し、(d)海底パイプラインから搬出されるペレット状の石炭を含むスラリーを脱水した後、脱水されたペットを船積みする、石炭輸送方法を提案している。
【0008】
しかしながら、このような輸送方法を、前記尾鉱のハンドリングに適用した場合、次のような問題がある。
第1の問題は、尾鉱の場合、石炭とは異なり、水中では造粒しにくいこと、第2の問題は、海上輸送コストを低減するためには、尾鉱または尾鉱造粒物を可能な限り脱水する必要があるところ、尾鉱の粒径は10μm以下と極めて小さく、脱水効率や目詰まり等の問題があり、脱水に限界があること、等である。即ち、尾鉱は、粒径が小さいために親水性が大きく、粘土質であることから、フィルタープレス等で脱水を行ったとしても、なお、取り扱いが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58-193832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術が抱えているハンドリング上の障害を解決するためには、尾鉱をロータリーキルン等の専用の乾燥機によってまず乾燥し、その後、乾燥ダストやバインダー等を加えてブリケットやペレットにする方法も考えられるが、設備コストや運転コストの面で課題が残る。
【0011】
このような理由で、従来、尾鉱の造粒方法および運搬方法については、低コストで処理する有効な方法がなく、そのために、これまでは、山元の池や沼地などを使って、実質的には廃棄の状態での貯鉱が行われ、有効に利用されてこなかったのが実情である。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上掲のような事情に鑑み、山元にて廃棄状態に近い形で貯鉱されている鉄鉱石の尾鉱を、輸送コスト等の低減を可能にできると共に、焼結原料として好適な状態にするための処理方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を実現するために、発明者らは、以下に説明する尾鉱の処理方法を提案する。即ち、本発明は、山元での湿式選鉱時に発生する、平均粒径が10μm以下の高水分超微粉状鉄鉱石である尾鉱を、乾燥処理をすることなくそのまま混合攪拌型造粒機に導いて、その山元において混合造粒し、得られた尾鉱造粒物を積み地を経て揚げ地まで輸送し、その後、その尾鉱造粒物を揚げ地においても乾燥することなく、焼結原料として用いることを特徴とする尾鉱の処理方法である。
【0014】
本発明の尾鉱の処理方法において、前記尾鉱造粒物を、揚げ地において、単独または他の焼結原料と混合して混合機または攪拌機で解砕し、平均粒径1mm〜5mmの大きさとして、他の焼結原料と混合し造粒して成形焼結原料とすることが好ましい。
【0015】
本発明の尾鉱の処理方法において、前記尾鉱造粒物を、揚げ地において、水分を添加して水含有量15mass%超のスラリー化した尾鉱原料として、他の焼結原料と混合して成形焼結原料とすることが好ましい。
【0016】
本発明の尾鉱の処理方法において、前記尾鉱は、水分含有量が30〜60mass%のものであることが好ましい。
【0017】
本発明の尾鉱の処理方法において、尾鉱の混合造粒時に、尾鉱よりも低水分の鉄鉱石粉、乾燥原料粉および添加材のうちから選ばれるいずれか1種以上を添加することが好ましい。
【0018】
本発明の尾鉱の処理方法において、前記尾鉱としては、主要成分の組成が、Fe≧60mass%、SiO≧1.5mass%、Al≧1.5mass%である南米産ヘマタイト鉄鉱石であって、山元において湿式選鉱残渣として得られ、屋外で貯鉱されているものを用いることが好ましい。
【0019】
本発明の尾鉱の処理方法において、前記尾鉱としては、主要成分の組成が、Fe≧54mass%、SiO≧1.5mass%、Al≧1.4mass%であるアフリカ産ヘマタイト鉄鉱石であって、山元において湿式選鉱残渣として得られ、屋外で貯鉱されているものを用いることが好ましい。
【0020】
本発明の尾鉱の処理方法においては、前記尾鉱造粒物は、水分含有量が5〜15mass%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上のような処理方法である本発明によれば、山元において廃棄状態で貯鉱されていた高水分超微粉状尾鉱を、乾燥処理することなく、その山元において予め輸送に便利な塊成化物とするので、山元から揚げ地までの輸送コストを大幅に低減することができ、ひいては低品位鉄鉱石の低コストでの有効利用の道を拓くことができる。
【0022】
本発明によれば、水分が高くかつ超微粉状態であることからハンドリングが難しい鉄鉱石の尾鉱を、混合撹拌型造粒機を用いて造粒するようにしたので、乾燥せずに塊成化することができる。
【0023】
本発明によれば、尾鉱の造粒(塊成化)に当たって、混合攪拌型造粒機を用いることに併せ、水分の高い尾鉱と、その尾鉱の水分量に応じて、低水分鉄鉱石粉、乾燥原料粉および添加材のうちから選ばれるいずれか1種以上を加えて混合、造粒するようにしたので、山元での塊成化が容易である。
【0024】
本発明によれば、付着水分量の少ない塊成化物(尾鉱造粒物)が得られるから、後工程での処理、例えばリクレーマーや積み込み重機、ベルトコンベア等によるハンドリング処理が容易になる。
【0025】
さらに、本発明によれば、積み地、揚げ地での乾燥設備が不要になり、そのままでも、直ちに焼結用原料として使用することもできるようになる。なお、このような処理を行った尾鉱造粒物については、これを焼結原料として使用する場合、この尾鉱造粒物(塊成化物)は超微細粉によって構成されているために、焼結処理時にバインダーとして作用するようになるため、焼結鉱の生産性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】尾鉱の含水率と容積との関係を示す説明図である。
【図2】尾鉱の含水率と、造粒後の塊成化物(尾鉱造粒物)粒径との関係を示すグラフである。
【図3】本発明方法において使用する混合攪拌型造粒機を中心とする設備を示す模式図である。
【図4】本発明の実施例を示す尾鉱のハンドリングフローの図である。
【図5】実施例2における焼成試験結果を示すグラフである。
【図6】実施例2における焼成試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、高水分で粘性の高い尾鉱についての、含水率(ここで、含水率とは、湿原料重量に対する含有水分比率である)と試料の体積との一般的な関係を示す説明図であり、図2は、そうした尾鉱の含水率と塊成化物粒径との関係を示すグラフである。
【0028】
図1において、図中の液性領域4とは、尾鉱が自由に変形する領域のことであり、含水率の減少にともない、該尾鉱の容積は次第に減少し、その尾鉱に若干のせん断抵抗が生れてくる領域である。このときの水分が液性限界7である。
【0029】
そして、尾鉱の含水率が、さらに低下して上記液性限界7(約30mass%)以下になると、尾鉱の容積もまたさらに減少して、塑性を示すようになる。この塑性領域3は、一般に、尾鉱を握り締めると破壊面が生じ、液性領域4のように変形が継続しない領域のことである。この時の含水率を塑性限界6(約20mass%)と言う。
【0030】
この塑性限界6から含水率をさらに減少させると、尾鉱の容積の収縮が収まり、やがて止まって、半固体状領域2ないしは固体状領域1になる。この収縮の止まる含水率を収縮限界5(約10mass%)と言う。
【0031】
発明者らの研究によると、高水分の尾鉱を造粒し塊成化してハンドリングしやすくするためには、固体領域1から半固体状領域2の範囲で含水率を調整する必要のあることがわかった。この点、もし、収縮限界5から塑性限界6の含水率で尾鉱の塊成化ができれば、脱水コストを低減することができると考えられる。
【0032】
なお、前記液性領域にある尾鉱の含水率(30〜60mass%)を低減し、少なくとも10〜20mass%程度の半固体領域2、好ましくは15mass%程度以下、さらに好ましくは10mass%程度以下の安定した固体領域1にするには、低水分の鉄鉱石粉や乾燥原料粉等を混合(配合)することが有効となる。例えば、低水分鉄鉱石としては、山元においては、湿式選鉱処理前の粉鉄鉱石を使用することができる。山元でヤード置きされた湿式選鉱前の鉄鉱石粉は、含水率3〜8mass%程度であるから、低水分鉄鉱石粉の1つとして有用である。
【0033】
こうした尾鉱の造粒(塊成化)に適する含水率については、建設汚泥処理プロセスにおいて、含水率10〜20mass%程度で安定化処理している例もあり、発明者らは、含水率20mass%近傍での尾鉱の塊成化を目指してラボ実験を実施した。実験材料としては、含水率40mass%の尾鉱、この尾鉱と同じ銘柄で含水率が4mass%の低水分鉄鉱石粉を混合して使用した。それぞれの含水率は、山元で池などに廃棄状態で貯蔵された状態、あるいはヤード置きされた状態を模擬した値である。
【0034】
図2は、このときの造粒実験の結果を示す。この図において、横軸には実験材料の含水率、縦軸には排出された塊成化物の平均粒径を示す。
【0035】
実験では最初に、尾鉱(含水率40mass%)のみを混合攪拌型造粒機に40kg投入し、混合攪拌を行った。しかし、混合物がスラリー状のため、塊成化不能となった(図中の領域8b)。次に、その尾鉱に対し、含水率が4mass%の低水分鉄鉱石粉の配合量を70mass%まで増加させ、全含水率を15mass%まで低減させると、混合物の造粒が円滑に行われる(領域8a)ようになった。さらに、造粒物の含水率を10mass%程度以下までに低減すると、平均粒径5mm程度の小さいペレット状の塊成化物(尾鉱造粒物)が得られた。
【0036】
以上の実験結果から、沼地などの野外に貯鉱されている高水分の尾鉱については、これを乾燥せずにそのまま、混合攪拌型の造粒機を使って造粒するか、好ましくは低水分の鉄鉱石粉、乾燥原料粉または乾燥添加材等を混合した上で造粒した場合には、ハンドリングが容易になり、経済的に運搬が可能なものにすることができることが判明した。
【0037】
以下、本発明処理方法の実施形態の一例を、図3、図4に基づき説明する。
図3は、本発明方法で使用する混合攪拌型造粒機を中心とした設備を示す模式図である。この図において、図示の10は、混合攪拌型造粒機であり、内部には装入物(尾鉱)を攪拌し、混錬するための複数の回転羽根11が回転軸11aに取付けられた状態で配設されている。この混合攪拌型造粒機10は、水平設置のものだけに限らず、傾斜配置のものであってもよい。この造粒機の回転羽根の形状、回転羽根の個数に制約はなく、造粒性能と動力コストに見合うものにする。なお、この混合攪拌型造粒機10において、前記回転羽根11は、回転軸11aを中心に装置内全体を周回するように支持されており、回転方向、回転数は可変である。また、回転軸11aは偏心していてもよく、回転軸11a自体が別の回転軸に支持された構造のものであってもよい。
【0038】
上記混合攪拌型造粒機10は、計量装置12を備えており、この計量装置12からは所定の制御信号を、各サイロ13、16、17、18の切出し装置15、22に出力して、装入物の投入量(受け入れ量)を自動的に管理することができる。
【0039】
次に、前記混合攪拌型造粒機10への尾鉱の供給方法について説明する。混合攪拌型造粒機10への尾鉱もしくは乾燥鉄鉱石粉等を含むそれらの混合物の投入(供給)は、ローカルコンディションに適した可動重機・ホッパを備え付けて行われる。そして、尾鉱をこの混合攪拌型造粒機10内にスムースに投入するには、スラリー受入れ用の貯蔵槽や沈殿槽を設置して、含水率が55mass%程度になる沈降泥としたものを使用することが望ましい。そして、そうした沈降泥をバックホー等の重機で掻き取り、該混合攪拌型造粒機10に直接装入するか、パワーフィーダーや二軸スクリュフィーダ等の汚泥に適した切出し装置15を有する受入れサイロ13を経て投入することが望ましいが、こうした方法に限定されるものではない。
【0040】
本発明において好ましくは、上記尾鉱に対して、低水分原料(鉄鉱石粉)、乾燥原料粉あるいは乾燥した添加材のいずれか1種以上を混合して含水率を調整する。
a.低水分の鉄鉱石粉19とは、処理目的の尾鉱14よりも低水分の鉄鉱石粉のことであり、塊成化物の水分を調節できるものであればよい。例えば、山元では、湿式選鉱前の含水率が3〜8mass%の鉄鉱石粉を使用することが好ましい。
b.乾燥原料粉20とは、含水率が0mass%に近い粉体であり、例えば、鉄鉱石の選鉱処理過程で発生する乾式集塵鉄鉱石粉(ダスト)等を用いることが好ましい。
c.添加材21とは、塊成化物の強度を増加させるために加えられるものであり、例えば、セメントや生石灰、バインダー、薬剤等を用いることが好ましい。
【0041】
本発明方法において、尾鉱14に対して好ましくは、塊成化に必要な含水率に調整するために、前記低水分鉄鉱石粉19や、乾燥原料粉20を添加し、さらに主としてハンドリング強度を向上させるために用いられるセメント等の添加材21を添加するが、これら(低水分鉄鉱石粉19、乾燥原料粉20、添加材21)については、含水率管理精度を上げるために、密閉型のサイロ16、17、18内に貯蔵しておくことが好ましい。尾鉱14や低水分鉄鉱石粉19等のサイロからのこれらの原料の切出し装置15、22は、計量装置12の制御信号により運転、停止が行われる。
【0042】
次に、前記混合攪拌型造粒機10による尾鉱の塊成化方法について説明する。
まず、高水分(30〜60mass%)の尾鉱14を、前記混合攪拌型造粒機10内に所定量に投入し、さらに、その投入実績に応じて、低水分鉄鉱石粉19または乾燥原料(鉄鉱石)粉20を添加して混合し造粒することが望ましい。これらの原料の投入量は、この混合攪拌型造粒機10に付帯させて設けた計量装置12により測定され、その投入量実績値さえ判れば、必要な低水分鉄鉱石粉19、乾燥原料粉20の添加量を計算できるからである。このような造粒方法の下では、最初に尾鉱14を回転羽根11で攪拌することにより、尾鉱14に内包された水分を充分に開放させることができるが、その後に加えられる低水分鉄鉱石粉19および乾燥原料粉20が、尾鉱の水分を効率よく吸収することができるメリットがある。
【0043】
次に、混合し造粒して得られる塊成化物の養生、運搬方法について説明する。前記混合攪拌型造粒機10の排出口23から排出された塊成化物は、ベルトコンベア等の搬送機械24で転動装置25に供給され、次いで、必要に応じて転動装置25によって、さらに転動造粒され、その後、搬送機械24で養生ヤード26に送給され、自然養生させた後に、輸送することが好ましい。その理由は、造粒機10から排出された後の塊成化物は、多くは表面に水分が付着しており、山積みにしておくと塊成化物どうしが圧密化して固着し、強固な大塊となるおそれがあるためである。このような事態を防止するためには、重機で定期的に掻き均すか、好ましくは、排出後に転動装置25等により塊成化物表面の凹凸を均す方法が有効である。
【0044】
混合造粒の方法としては、傾斜ベルトコンベア、パンペレタイザー、転動ドラム等の装置をローカルコンディションに適した組み合わせで使用すればよく、複雑な設備を必要としない。このように転動造粒処理された塊成化物は、表面の凹凸が少なく、養生ヤード26においても塊成化物どうしが固着するようなことが少ない。
【0045】
このように、本発明によれば、混合撹拌型造粒機10を用いることにより、高水分で超微粉状尾鉱を、乾燥させずにそのままで混合造粒し、塊成化することができるから、ハンドリングや運搬が容易にできるようになる。
【0046】
次に、上述のようにして、山元において混合造粒した塊成化物(尾鉱造粒物)は、ベルトコンベアあるいは運搬車、貨車などにて積み地(積み出し港)まで搬送したのち、鉱石運搬船などにて、揚げ地(積み降し港)となる我国に運搬することになる。本発明においては、こうして揚げ地において、荷揚げされた尾鉱造粒物を、基本的には、そのまま、つまり乾燥することなく、そして整粒することなく直接、焼結原料の一部として、一般的な焼結原料と混合して用いることができる。
【0047】
しかしながら、上述した尾鉱造粒物は、時として、特に、図1に示すような“半固体状領域”で混合造粒されたものの場合、平均粒径で10〜30mmの粗大造粒物となることがある。この場合、これを直接、焼結原料として使用すると、焼成の不均一を招いて、焼結生産性を低下させるという問題が生じることがある。
【0048】
そこで、本発明では、揚げ地における処理として、前記尾鉱造粒物を、乾燥することなくそのまま、あるいは他の焼結原料と混合してアイリッヒミキサー、レディゲミキサー、プロシェアミキサー、パドルミキサーの如き混合機または攪拌機である解砕機を使って解砕し、平均粒径を5mm以下、好ましくは4mm以下の大きさに粉砕して、成形焼結原料用原料粉として用いるようにすると、成形焼結原料の造粒性が向上し、焼結生産性を上げることができる。なお、アイリッヒミキサー、レディゲミキサー等は造粒機としても使用されるが、回転数を高めて使用することにより、解砕機として使用できるものである。
なお、前記尾鉱造粒物の解砕は、細かくするほどよいが、下限は平均粒径で1mm程度、望ましくは平均粒径2mm程度となるように解砕する。このような粒径範囲(1〜5mm)に解砕しておくと、他の焼結原料に添加して造粒成形する際、造粒時の混合、攪拌作用により、該尾鉱としてはさらに細分化し、平均粒径が10μm以下の大きさとなって、原料中に分散され成形焼結原料粉として用いられる。
【0049】
また、本発明では、揚げ地における処理として、前記尾鉱造粒物を、そのまま水分含有量が15mass%超になるまで水分を添加して混合攪拌することによってスラリー化し、成形焼結原料として用いると、前記尾鉱造粒物中の特に尾鉱である超微粉の流動性、分散性が確保されるために、造粒時の混合、攪拌作用により、容易に原料中に分散する。その結果、造粒性が向上し、生産性を上げることができる。なお、前記スラリー化する際の水の添加量の上限は、焼結原料造粒時の設定水分量を超えない値とする。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
図4は、鉄鉱石の尾鉱造粒物を、積み地まで輸送して処理する本発明方法の一実施例を示すものである。この図に示すように、山元27において発生した尾鉱14は、ピット28に貯鉱される。その尾鉱14は、ピット28中の水中に貯鉱されており、必要に応じ、このピット28からパイプ30およびポンプ31を使って、または重機により、沈殿タンク29、または仮置きヤード32に送られる。この時の尾鉱の含水率は30〜60mass%である。
【0051】
そして、主としてスラリー状態である尾鉱14は、沈殿タンク29もしくは仮置きヤード32から、重機33により受入れサイロ13内に投入される。なお、尾鉱のスラリーは、受入れサイロ13を経由することなく、重機で直接、混合攪拌型造粒機10内に投入してもよい。もちろん、混合攪拌型造粒機10の投入前に、仮置きヤード32にて簡易養生させてもよい。受入れサイロ13から混合攪拌型造粒機10内へ投入された尾鉱(実績)量と含水率をもとに、低水分鉄鉱石粉19、乾燥鉄鉱石粉20、添加材21の少なくともいずれかが所定量づつそれぞれのサイロ16、17、18から切り出される。そして、投入された総ての尾鉱の混合スラリーは、混合攪拌型造粒機10において混合、攪拌、造粒されたのち排出される。
【0052】
このような処理を経て製造される塊成化物(尾鉱造粒物)は、塊成化状況に応じて、転動装置25に運ばれ、養生ヤード26に積まれ、尾鉱14は自然養生された塊成化物38として、重機33によって船34に積み込まれる。その後、揚げ地(製鉄所)に輸送され、荷揚げ後、一旦、製鉄所のヤードに積まれたのち、乾燥処理することなく、そのまま切り出されて焼結工場に送られ、成形焼結原料の原料粉の一部として使用される。
【0053】
なお、この実施例では、尾鉱として、南米産ヘマタイト鉱石としてカラジャス鉄鉱石を用いた。このカラジャス鉄鉱石は主要成分の組成が、Fe≧60mass%、SiO≧1.5mass%、Al≧1.5mass%のものである。また、アフリカ産ヘマタイト鉄鉱石の例としてクンバ鉄鉱石を用いた。このクンバ鉄鉱石は主要成分の組成が、Fe≧54mass%、SiO≧1.5mass%、Al≧1.4mass%のものである。また、尾鉱の配合率は18mass%、低水分鉱は82mass%で、乾燥粉や添加材は使用していない。尾鉱の水分含有量にもよるが、尾鉱の配合率は5〜40mass%、低水分鉄鉱石粉60〜95mass%、必要に応じて、乾燥鉄鉱石粉1〜10mass%、添加材1〜10mass%を入れるが好ましい。これらの尾鉱を使い、上述した本発明に係る尾鉱の処理方法に適用した場合に、問題なく処理できることが確認された。
【0054】
(実施例2)
実施例1で製造された尾鉱造粒物(塊成化物)を、表1に示す配合割合でDL式焼結機を模擬したラボ試験装置にて焼成実験を行った。比較例は、尾鉱造粒物を配合していない例、発明例1は、鉱石原料の6.7mass%を尾鉱造粒物にそのまま振り替えて配合した例、発明例2は、揚げ地において、尾鉱造粒物をアイリッヒミキサーにて25rpmで3分間解砕処理して配合した例である。また、発明例3は、揚げ地において、尾鉱造粒物に注水して水分を加え15mass%超えの水分含有量20〜22mass%として攪拌しスラリー化することにより解砕処理して配合した例である。焼成試験は、径300mm、高さ400mmの焼結用鉄鍋を使用し、吸引差圧200mmAq一定で実施した。
【0055】
この焼成試験では、図5に示すように、本発明に従う発明例1は、成形焼結原料としてそのまま尾鉱造粒物を使用できることが分かる。比較例に比べると、尾鉱造粒物の水分値が高くなると、造粒工程で水分の偏在に起因する粗大造粒物を含む成形焼結原料が生成して、焼成不均一を起こして、生産性が低下する領域があることが分かった。
【0056】
また、本発明に従う発明例2の焼成試験は、ハンドリングに適当な水分であると言えるが、水分5〜15mass%を含むとき、高い側の水分の場合に、造粒性悪化をきたす尾鉱造粒物を、アイリッヒミキサーにて予め解砕処理して配合使用した例である。この発明例2では、アイリッヒミキサーにて解砕処理すること、さらに焼結原料へ成形焼結原料の原料粉として使用したときの造粒時の攪拌効果によって、尾鉱造粒物中平均粒径が10μm以下の尾鉱も原料中に均一に分散され、これらが相乗的に作用して、造粒性が改善された。その結果、焼成が均一に行われ、図5に示すように、焼結生産性は、比較例、発明例1に比べ安定していた。
【0057】
また、本発明に従う発明例3は、揚げ地において、尾鉱造粒物に注水して15mass%超え〜22mass%の水分含有量として攪拌−混合することによりスラリー化したのち解砕処理し、そのスラリーを他の焼結原料に添加し、混合し造粒したものである。その結果、尾鉱造粒物中の平均粒径が10μm以下の尾鉱は、水と同様の流動性をもって振舞うため、焼結原料中に均一に分散され、造粒性が向上し、焼成が均一に行われ、図6に示すように、焼結生産性が高めに安定していた。
【0058】
なお、スラリー化する際の尾鉱造粒物への水分含有量の上限値は、焼結原料の造粒時の設定水分量に影響を及ぼさない範囲では自由にとることができる。焼結原料の造粒時の設定水分量に影響を与える場合は、スラリー化した尾鉱造粒物の配合量を減少させるか、スラリー中の水分含有量を減少させることで自由に設定することもできる。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、尾鉱の処理方法に関する技術であるが、この技術はまた、尾鉱およびその混合粉だけではなく、高水分の超微粉焼結原料粉の処理法としても有効である。
【符号の説明】
【0061】
10 混合攪拌型造粒機
11 回転羽根
11a 回転軸
12 計量装置
14 尾鉱
15、22 切出し装置
19 低水分鉄鉱石粉
20 乾燥原料(鉄鉱石)粉
21 添加材
25 転動装置
26 養生ヤード
27 山元
28 ピット
29 沈殿タンク
30 パイプ
31 ポンプ
32 仮置きヤード
33 重機
34 船

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山元での湿式選鉱時に発生する、平均粒径が10μm以下の高水分超微粉状鉄鉱石である尾鉱を、乾燥処理をすることなくそのまま混合攪拌型造粒機に導いて、その山元において混合造粒し、得られた尾鉱造粒物を積み地を経て揚げ地まで輸送し、その後、その尾鉱造粒物を揚げ地においても乾燥することなく、焼結原料として用いることを特徴とする尾鉱の処理方法。
【請求項2】
前記尾鉱造粒物を、揚げ地において、単独または他の焼結原料と混合して混合機または攪拌機で解砕し、平均粒径1mm〜5mmの大きさとして、他の焼結原料と混合し造粒して成形焼結原料とすることを特徴とする請求項1に記載の尾鉱の処理方法。
【請求項3】
前記尾鉱造粒物を、揚げ地において、水分を添加して水含有量が15mass%超のスラリー化した尾鉱原料として、他の焼結原料と混合して成形焼結原料とすることを特徴とする請求項1に記載の尾鉱の処理方法。
【請求項4】
前記尾鉱は、水分含有量が30〜60mass%のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の尾鉱の処理方法。
【請求項5】
尾鉱の混合造粒時に、尾鉱よりも低水分の鉄鉱石粉、乾燥原料粉および添加材のうちから選ばれるいずれか1種以上を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の尾鉱の処理方法。
【請求項6】
前記尾鉱としては、主要成分の組成が、Fe≧60mass%、SiO≧1.5mass%、Al≧1.5mass%である南米産ヘマタイト鉄鉱石であって、山元において湿式選鉱残渣として得られ、屋外で貯鉱されているものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の尾鉱の処理方法。
【請求項7】
前記尾鉱としては、主要成分の組成が、Fe≧54mass%、SiO≧1.5mass%、Al≧1.4mass%であるアフリカ産ヘマタイト鉄鉱石であって、山元において湿式選鉱残渣として得られ、屋外で貯鉱されているものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の尾鉱の処理方法。
【請求項8】
前記尾鉱造粒物は、水分含有量が5〜15mass%であること特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の尾鉱の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−43354(P2010−43354A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162622(P2009−162622)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】