説明

尿在宅検診方法

【目的】尿試料を用いて在宅検診を行うに際して、試料の輸送方法が重要なのでそれを開発する。
【構成】採取した尿を入れた容器を家庭用冷蔵庫で凍結させた塩化カリウム水溶液からなる合体型冷凍剤の間にはさみ、断熱箱に入れて健診センターに送付し、必要な検査データを解析する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は、尿試料を用いて在宅検診を行う場合の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
尿試料による検査は、無浸しゆうであるため、老人、子供、病人等にとって有用といわれている。血清を試料とする在宅検診は、国内では実用化されているが、血清試料の採取に難点があるため、広く普及するには至っていない。
尿試料の在宅検診は、誰でも容易に行えるため、血清試料に比較して普及するはずであるが、実際は
(1)検査項目が血清に比較して少ない。
(2)尿試料は変化しやすいため、採取から検査まで日数を要する在宅検診には適さない。
の2点が大きな障壁となっていた。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
在宅にて採取した試料成分を安定化して輸送し正しい検査の値が出るようにする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明者は、尿検査項目のほとんどが冷凍で安定していることに着目した。しかし、在宅検診の場合、尿を冷凍するには家庭用冷蔵庫を使用せねばならないが、尿試料を冷凍室で冷凍することには強い抵抗がある。また、家庭用冷蔵庫の冷凍室で凍結させた冷凍剤を使用して、尿試料を凍結するには特別な冷凍剤を使用せねばならない。これらを解決して、発明者は、尿在宅検診が可能なる方法を開発した。
【0005】
尿試料を冷凍室に入れて冷凍することは容易に考え付くが衛生上から拒否される。そこで、冷凍室で凍結させた冷凍剤を用いて、尿試料を冷凍することが考えられる。しかしながら、冷凍剤には過冷却現象があるため、一般的家庭用冷蔵庫で凍結する薬剤は限られる。発明者は塩化カリウム水溶液を容器につめた冷凍剤が適していること、さらに塩化カリウムの毒性は小さく安全性が極めて高いことに思い至った。本発明では、塩化カリウム濃度として、5〜25重量%濃度、好ましくは10〜20%のものを用いる(10%以下では低温保持時間が短く本発明に好ましくない。20%以上では、飽和濃度以上となり析出する)。
【0006】
従来行われていた尿の一般的検査項目としては、比重、蛋白、糖、ビリルビン、ケトン体、潜血、沈渣等がある。本発明によらない場合の在宅検査項目としては、比重、蛋白、糖、ビルリビン、ケトン体等がようやく可能といったところである。しかし、本発明によれば、これらに加えて、ガン、肺炎、インフルエンザ、糖アルコール、8OH−dG、ピリ菌、骨粗鬆症等の在宅検査が可能となる。特に冷凍で輸送することにより、原因菌の増殖が抑制されるため種々の感染症検査が可能となる。
【発明の好ましい実施態様】
【0007】
一定時間、例えば、早朝尿、食後1hr、2hr、空腹時などにおいて、容器に尿10〜50mlを採取する。前日より冷凍庫で凍結させておいた200ml〜1000mlの合体型冷凍剤2個を凍結させておき、尿試料を入れた容器を冷凍剤の間にはさむようにして(図1)、断熱外箱(図3)に入れ、宅配便等を使って、尿成分試験所(もしくはその窓口会社)に送付する。沈渣など、凍結が不可の成分については、保冷箱を断熱材で仕切るか、冷凍剤と接しないようにして、凍結しないように輸送する。なお、図1では、尿試料容器は1つとしているが、2つ以上が挟める物も同じ構造であり、本発明の保冷箱に含める。図3の断熱外箱の内部にはでっぱり(5)があり、これは押さえの役割を果たすとともに、合体型冷凍剤容器を取り出しやすくする役目がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】合体型冷凍剤容器の平面図
【図2】合体型冷凍剤容器の斜視図
【図3】断熱外箱の平面図(a) 断熱外箱のふた斜視図(b) 断熱外箱本体斜視図(c)
【符号の説明】
(1)断熱外箱
(2)尿サンプル容器
(3)合体型冷凍剤容器の真ん中のくぼみ
(4)合体型冷凍剤容器
(5)押さえ
【実施例1】
朝起きてトイレに行き、紙コップに約50mlをとり、それを尿試料容器3本に10〜15mlずつ分けて入れた。次に、前日より、家庭用冷凍庫に入れて凍結(塩化カリウム水溶液13重量%)させておいた2つの合体型冷凍容器の真中近辺に2つの尿試料容器を入れて挟み、それを、発砲スチロール製断熱容器に入れた。合体冷凍容器の横に新聞紙で包んだもの1本の尿試料容器を入れて、断熱容器のふたを閉めクール宅配便にて臨床検査センターに送付した。そこで、凍結した尿試料1本を解凍し、尿成分を分析した。残りの1本は追加測定のために冷凍保存庫に入れておいた。別の保冷状態の試料1本については、沈渣に用いた。
【実施例2】
図2の(2)の尿サンプル容器60mlに尿50mlを入れ、図2の(4)の冷凍剤として各々120mlの塩化カリウム水溶液12重量%を入れたもので、家庭用冷凍庫内に入れて1日前に凍結させておいたものの間に尿サンプル容器をはさみ、図3の発砲スチロール断熱容器に保存した。尿サンプルの凍結状態を観察したところ、24時間まで凍結していた。よって、尿サンプルを冷凍剤にはさみ凍結状態にして、宅配便で尿成分試験所に夕刻送ったとした場合、翌日の夕方まで凍結状態であるので尿在宅検診に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿を容器に採取し、あらかじめ凍結させておいた−5℃〜−18℃の冷凍剤を用いて凍結状態とし、それを保冷容器に入れて、尿成分試験所に輸送して成分の測定を行い、健康診査のためのデータを得る事を特徴とする尿在宅検診方法。
【請求項2】
請求項1記載の冷凍剤が、塩化カリウムを主要成分とする水溶液からなることを特徴とする尿在宅検診方法。
【請求項3】
請求項1記載の尿検診項目が少なくとも感染症の原因菌を含むことを特徴とする尿在宅検診方法。
【請求項4】
請求項1記載の保冷容器が、密閉可能な断熱外箱(1)と、尿サンプル容器(2)を、くぼみ(3)の部分に約半部分を収納でき、2つを合わせると、間に(2)をはさめる構造の合体型冷凍剤容器(4)から構成されることを特徴とする尿在宅検診方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−294191(P2009−294191A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171563(P2008−171563)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(504390366)有限責任中間法人 検査医学標準物質機構 (5)
【出願人】(598049436)
【出願人】(500226247)株式会社 川合技研 (1)
【Fターム(参考)】