説明

尿検査具及び容器

【課題】尿の跳ね返りを十分に抑制することができる使い勝手の良い尿検査具及び容器を提供する。
【解決手段】概略偏平の棒状に形成された容器7と、その容器7の内部に収容された検査体44とを有し、上記容器7の長手方向の一端側7aに前記検査体44により検査される被検査対象の尿を内部に採り入れるスリット28を有する採尿部20が形成された尿検査具1において、前記採尿部20の側方の容器側辺部7cに、尿を掛ける際に尿を誘導して通過させる貫通する尿誘導孔(尿誘導部)24が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採尿部にかけた尿を容器内部の検査体に吸収、展開させ、この検査体の反応による色変化の有無などを確認することにより、尿中に存在する各種被検査物の検査を行う尿検査具に関するものであって、使用時(検査時)における尿の跳ね返りを抑制することが可能な尿検査具及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した尿検査具として、採尿部材がむき出しに設けられたものや、検査体を内蔵する容器の採尿部にスリット状の採尿窓が複数条形成されたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−55809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような尿検査具を用いて検査を行う時、ユーザーは採尿部に尿をかけるが、その時に尿の跳ね返りが起こる場合がある。この場合に、尿が飛び散ったりすると、尿が周囲や手にかかることで不衛生感を持ったり尿の飛び跳ねを避けたりするため、ユーザーは尿から尿検査具を遠ざける等するので、採尿部での尿の採取量が不十分になってしまい、正確な検査が行えないなどの問題があった。
【0005】
そこで、検査時における尿の跳ね返りを抑制し、衛生的に使用でき、かつ使い勝手が良く、正確な検査が行える尿検査具がユーザーに望まれていた。
【0006】
しかしながら、例えば特許文献1の尿検査具は、採尿窓においての尿の跳ね返りは抑制されているものの、採尿部の周りで見ると、未だ尿の跳ね返りは十分に抑制されておらず、尿の跳ね返りを抑制するという観点では改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、尿の跳ね返りを十分に抑制することができる使い勝手の良い尿検査具及び容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の尿検査具は、棒状容器と、該容器の内部に設けられた反応部材と、長手方向の一端側に設けられている採尿部とを有し、前記採尿部に掛けられた尿を前記反応部材により検査する尿検査具において、前記採尿部の周縁部に、当該周縁部にかかった尿を特定方向へ誘導する尿誘導部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に係る尿検査具は、請求項1に記載の尿検査具において、前記採尿部は、前記容器における長手方向の一端側に採尿孔を有する状態で設けられ、前記尿誘導部が前記採尿部の側方の容器側辺部に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に係る尿検査具は、請求項2に記載の尿検査具において、前記尿誘導部は、前記容器を貫通する尿誘導孔を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に係る尿検査具は、請求項2または3に記載の尿検査具において、前記尿誘導部は、前記採尿部の両側に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項5に係る尿検査具は、請求項3または4に記載の尿検査具において、前記尿誘導孔は、前記容器の長手方向に長いものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項6に係る尿検査具は、請求項2乃至5のいずれか1つに記載の尿検査具において、前記容器には、前記採尿部よりも前記長手方向の一端側とは反対の他端側に段差部が突出形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項7に係る尿検査具は、請求項2乃至6のいずれか1つに記載の尿検査具において、前記容器側辺部は、前記尿誘導部が配された部分を、前記容器側辺部における他の部分よりも薄肉にして形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項8に係る尿検査具は、請求項2乃至7のいずれか1つに記載の尿検査具において、前記採尿孔が前記長手方向に長いスリットであって、前記採尿部に前記スリットの幅方向に複数並設されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項9に係る尿検査具は、請求項1に記載の尿検査具において、前記採尿部は、前記反応部材へ尿を展開させる尿吸収体が容器から露出した部分のみで構成され、その尿吸収体の露出部の側方の側辺部に前記尿誘導部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項10に係る尿検査具は、請求項9に記載の尿検査具において、前記尿誘導部は、前記露出部を貫通する尿誘導孔を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項11に係る尿検査具は、請求項9または10に記載の尿検査具において、前記尿誘導部は、前記露出部の両側に設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項12に係る尿検査具は、請求項10または11に記載の尿検査具において、前記尿誘導孔は、前記長手方向に長いものであることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項13に係る尿検査具は、請求項9乃至12のいずれか1つに記載の尿検査具において、前記容器における前記尿吸収体露出部側に、段差部が突出形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項14に係る尿検査具用容器は、請求項2乃至8のいずれか1つに記載の尿検査具に使用される容器であって、採尿部を有する表側片と、前記表側片に嵌合される裏側片とを備え、前記表側片の前記採尿部には採尿孔が形成され、また、前記採尿部の両側のうちの少なくとも片側に尿誘導部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明による場合には、採尿部の周縁部に、該周縁部へかかった尿を特定方向へ誘導する尿誘導部が設けられているので、周縁部にかかった尿が尿誘導部を介して特定方向へ誘導される。よって、尿の跳ね返りを十分に抑制することができ、使い勝手を向上させ得る。前記尿誘導部としては、例えば請求項2のように前記採尿部が前記容器における長手方向の一端側に採尿孔を有する状態で設けられている構成の場合には、その採尿部の側方の容器側辺部に設けられる。ここで、側方とは、容器の長手方向と直交する容器の幅方向をいい、容器側辺部とは容器の幅方向の端部に近い部分をいう。特に、請求項4のように尿誘導部を採尿部の両側に設けることで、尿の跳ね返り、飛び散りを採尿部の両側で抑えることが可能となり、使い勝手をより向上させ得る。更に、容器裏面片側に回り込んだ尿が、反対側から飛び散ることも抑制することができるようになり、使い勝手をより向上させ得る。そのような尿誘導部としては、例えば請求項3のように容器を貫通する尿誘導孔を用いることができる。尿誘導孔の容器貫通方向は、例えば容器の表裏方向(尿を掛ける方向)が選ばれる。また、前記尿誘導孔としては、容器の形状を考慮して請求項5のように容器の長手方向に長いものが好ましい。つまり、尿誘導孔を容器の長手方向に長く開口させることで、尿の跳ね返りを抑制するために有効な容器の幅寸法を規制しつつ尿誘導孔自体を大きくすることが可能となり、これにより尿の跳ね返りを抑制することができる。
【0023】
更に、請求項6の発明による場合には、段差部が障壁として機能し、段差部よりも他端側(手で持つ側)への尿の跳ね返りを抑制することができ、これにより使い勝手をより向上させ得る。
【0024】
更にまた、請求項7の発明による場合には、尿誘導部が設けられた容器側辺部は、尿誘導部が配された部分を、容器側辺部における他の部分(容器側辺部における尿誘導部以外の部分)よりも表裏方向の厚さを薄肉にして形成されているので、尿誘導部の尿通過長さを短くすることができ、これにより尿誘導部と尿との間の抵抗が小さくなり尿を逃げ易くすることが可能になる。一例として、尿誘導部(尿誘導孔)を表側片と裏側片とで構成する場合は、尿誘導部の尿通過長さが長くなって抵抗が大きくなり尿が逃げ難くなるが、尿誘導部を表側片のみで構成する場合には、尿誘導部が短くなって尿との間の抵抗が小さくなり、より尿を逃げ易くすることが可能になる。
【0025】
更にまた、請求項8の発明による場合には、採尿孔をスリット状として、採尿部にスリットの幅方向へ複数並設するので、採尿部に対する採尿孔の面積比を高くすることができる。これは、例えば、丸孔を多数設ける場合には、隣り合う孔の間に仕切り(肉部)を要するが、スリットを複数並設する場合には仕切りの数を少なくすることができるからである。この構成とすることで、尿の跳ね返りを効果的に抑制することができるとともに、検査に必要な尿の量を短時間で採取することが可能になって、使用性の向上につながる。
【0026】
前記採尿部は、請求項9のように、反応部材へ尿を展開させる尿吸収体が容器から露出した部分のみで構成されたものであってもよく、その場合において、上記尿吸収体の露出部の側方の側辺部(露出部の幅方向端部に近い部分)に前記尿誘導部が設けられていてもよい。この構成にあっても、尿吸収体露出部の側辺部にかかった尿が尿誘導部を介して特定方向へ誘導される。よって、尿の跳ね返りを十分に抑制することができ、使い勝手を向上させ得る。特に、請求項11のように尿誘導部を尿吸収体露出部の両側に設けることで、尿の跳ね返り、飛び散りを採尿部の両側で抑えることが可能となり、使い勝手をより向上させ得る。そのような尿誘導部としては、例えば請求項10のように尿吸収体露出部を貫通する尿誘導孔を用いることができる。尿誘導孔の露出部貫通方向は、例えば露出部の表裏方向(容器表裏方向と同じ方向であって尿を掛ける方向)が選ばれる。また、前記その尿誘導孔としては、請求項12のように容器の長手方向に長いものが好ましい。つまり、尿誘導孔を露出部において容器長手方向に長く開口させることで、尿の跳ね返りを抑制するために有効な尿吸収体露出部の幅寸法を規制しつつ尿誘導孔自体を大きくすることが可能となり、これにより尿の跳ね返りを抑制することができる。また、前記尿吸収体露出部としては、凹凸が形成されていてもよい。この凹凸によって表面積が増大し、尿吸収量を増大化させることができるからである。また、凹凸に伴う表面積の大きさにより、尿の吸収量をコントロールすることができるとともに、尿吸収体の材質に応じても尿吸収量のコントロールが可能になる。
【0027】
更に、請求項13の発明による場合には、段差部が障壁として機能し、段差部よりも他端側(手で持つ側)への尿の跳ね返りを抑制することができ、これにより使い勝手をより向上させ得る。
【0028】
更にまた、請求項14の発明に係る容器による場合には、表側片と裏側片とを別体として製作しているので、容器内に配設する部材、例えば検査体などを表側片と裏側片とのうちの一方に配し、表側片と裏側片を嵌合させることで尿検査具を簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る尿検査具(キャップを着けた状態)を示す外観斜視図である。
【図2】図1の尿検査具(キャップを外した状態)を示す外観斜視図である。
【図3】尿検査具本体を示す平面図である。
【図4】尿検査具本体を示す底面図である。
【図5】尿検査具本体を示す縦断面図である。
【図6】図3のVI−VI線による端面図である。
【図7】図3のVII−VII線による端面図である。
【図8】尿検査具本体における採尿部と判定表示窓との間の部分を拡大して示す縦断面図である。
【図9】(a)は待機状態の尿検査具を示し、(b)は待機状態の尿検査具のキャップを尿検査具本体から外して容器の他端側に取り付けた状態を示す。
【図10】本発明の尿検査具における採尿部に適用される採尿孔の形態を示す図である。
【図11】本発明の尿検査具における採尿部に適用される採尿孔の他の形態を示す図である。
【図12】本発明の尿検査具における採尿部に適用される採尿孔の更に他の形態を示す図である。
【図13】本発明の尿検査具における採尿部に適用される採尿孔の更に他の形態を示す図である。
【図14】本発明の尿検査具における採尿部に適用される採尿孔の更に他の形態を示す図である。
【図15】本発明の尿検査具に適用される尿誘導部の形態を示す図である。
【図16】本発明の尿検査具に適用される尿誘導部の他の形態を示す図である。
【図17】本発明の尿検査具に適用される尿誘導部の更に他の形態を示す図である。
【図18】本発明の尿検査具に適用される尿誘導部の更に他の形態を示す図である。
【図19】本発明の尿検査具に適用される尿誘導部の更に他の形態を示す図である。
【図20】本発明の尿検査具における容器側辺部の形態例を示す断面図である。
【図21】本発明の第2実施形態に係る尿検査具を示す平面図である。
【図22】本発明の第2実施形態の他の尿検査具を示す平面図である。
【図23】本発明の第2実施形態の更に他の尿検査具を示す平面図である。
【図24】本発明の尿検査具に適用される尿誘導部の更に他の形態を示す図である。
【図25】本発明の第2実施形態の更に他の尿検査具を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明を具体的に説明する。
【0031】
本発明の尿検査具は、尿検査具用の棒状をした容器とその容器に収容される検査具とで構成される。また必要に応じて、該容器の長手方向における一端側あるいは両端側に着脱可能に取付けられる、キャップを有しても良い。
【0032】
容器は、表側片と裏側片とで構成され、これらを嵌合させる等により互いに組み付けて使用することができる。また、一体成形によってもよい。キャップおよび容器としてはプラスチック、エラストマー等の樹脂材料など、公知の素材が使用でき、透明性、不透明性、成形性、強度等、目的に応じ適宜選択可能である。
【0033】
本発明の尿検査具には、少なくとも採尿部、判定表示部、把持部が備えられている。ここで採尿部の一形態としては、該尿検査具において使用時に尿をかける容器長手方向の一端側に設けられていて採尿孔を有する。容器には採尿孔、尿誘導部などが設けられる。また容器の内部には後述する検査シートの尿吸収体が収容される。該尿検査具の使用時においては、採尿部に尿をかけることで、該採尿孔から検査対象物である尿が検査シートに付設されている尿吸収体に取り込まれ、検査に供されることとなる。その他の形態として、尿検査具において、使用時に尿をかける容器長手方向の一端側に設けられていて、容器から尿吸収体がその大半を露出した状態で配設されているものもある。その形態の場合、尿吸収体には尿誘導部が設けられ、容器の内部には後述する検査シートの反応部材(検査体)が収容される。該尿検査具の使用時においては、採尿部に尿をかけることで、そこから検査対象物である尿が検査シートに取り込まれ、検査に供されることとなる。
【0034】
採尿孔は容器表側片に設けられる。採尿孔の形状としては、尿が尿吸収体に取り込まれる形状であればよく、特に規定しない。例えば図10に示すように採尿部20に長楕円のひとつの採尿孔28Aを形成し、あるいは矩形形状のひとつの孔を形成してもよい(図10中の24は尿誘導孔を示す。)。または、図11に示す網目状の採尿孔28B、図12に示すドット状の多数の採尿孔28Cを採尿部20に形成してもよい。あるいは、図13に示すように長楕円形状の複数の採尿孔28Dを横列に並設し、図14に示すように同様の採尿孔28Eを斜列状に並設し、または同様の採尿孔を縦列に並設する等にしてもよく、採尿孔の形状を長楕円形状に代えて、矩形にしてもよい。更に、これらを組み合わせても良い。なお、尿の跳ね返りを抑制する観点では、スリット状(柵状)の採尿孔をスリットの幅方向に複数並設することが好ましい。このようにスリット状に採尿孔を形成する場合、並設する間隔は狭く、数が多い方が、採尿部に対する採尿孔の面積比を高くすることができ、これにより尿採取の効率が良くなって、尿の跳ね返りもより抑制される。しかしながら、容器の素材によっては、成型が困難であったり、強度に問題が生じたりする可能性もある。また容器に収容される検査体の支持部材としての機能を考慮すると、押さえが不十分になることで、検査体に位置ずれが生じ、検査薬としての機能が損なわれる可能性もある。従って、尿の跳ね返り抑制の観点と検査体としての機能とを勘案した上で、採尿孔の形状と数は適宜選択することが好ましい。
【0035】
また、容器表側片の採尿孔の近傍にさらに段差部を設けることで、跳ね返った尿が手の方向に飛び散る際の障壁として前記段差部が機能し、段差部よりも容器の他端側(手で持つ側)への尿の跳ね返り防止に寄与する。これにより尿の跳ね返りを避けるために採尿部での尿の採取量が不十分となる事態を避けることができ、検査精度の向上にもつながる。なお、意匠性、機能性を考慮し、段差部の形状および高さは適宜選択が可能である。
【0036】
本発明における尿検査具の採尿部側方の容器側辺部(本発明の実施例においては7c)
の少なくとも片側に、尿誘導部が設けられている。該尿誘導部の形態としては、尿を特定方向に誘導するものであればよい。具体的な形態としては、以下の3つが挙げられる。
【0037】
・ 切り欠き形状であること
・ 貫通孔であること
・ 上記両方を組み合わせること
上記切り欠き形状とは、採尿部を一部切り欠いた形状をいい、例えば図18に示すように容器側辺部7cの一部を切り落としたような切欠部(尿誘導部)24Dなどが該当する。勿論、切欠部(尿誘導部)は片側の容器側辺部7cのみに設けることも可能である。また、前述したように、容器から尿吸収体の大半を露出した状態で尿吸収体が配設されているタイプの尿検査具では、尿吸収体の露出部に直接、上述した切欠部(尿誘導部)を設けることができる。
【0038】
貫通孔(尿誘導部)としては、種々の形状を採ることができ、例えば図15に示すドット状の貫通孔24A、図9(b)に示すスリット状の尿誘導部24等が挙げられ、スリットとする際の開口長さ等については適宜選択可能である。また、図16、図17に示すように大きさが異なる2以上のスリットを有する貫通孔24B、24Cを用いてもよい。また、図24に示すように採尿部20の周縁部に沿った形状、例えば概略U字状の貫通孔24Fを用いてもよい。この図24に示す尿検査具1Dの貫通孔24Fは、両側の側辺部7cにそれぞれ設けた2つの孔部24F1、24F2の一端側7aを、先端部7dに設けた湾曲した孔部24F3で繋いだ形状である。なお、貫通孔24Fは、両側の孔部24F1、24F2を省略し、先端部7dの孔部24F3だけを設けた形態、または両側の孔部24F1、24F2を省略しかつ先端部7dにだけ貫通孔(例えば円形や矩形などの貫通孔)を設けた形態としてもよい。なお、図24中の28Fは採尿孔である。更に、図25に示すように、尿吸収体42の露出部42aの周りを囲むように囲繞部材53を設け、その囲繞部材53と露出部42aとの隙間を貫通孔24Gとして配した構成の尿検査具1Eにしてもよい。上記囲繞部材53は、途中が折れ曲がっていて、その折れ曲がり部とは反対側に両端が位置した形状となっていて、その両端が容器に連結されている。
【0039】
上記両方を組み合わせることとは、例えば表側片に貫通孔を設け、裏側片の対応部位を切り欠き形状とし、これらを組合せること(つまり表側片にのみ尿誘導部を設けること)、或いはその逆に、裏側片に貫通孔を設け、表側片の対応部位を切り欠き形状とし、これらを組合せること(つまり裏側片にのみ尿誘導部を設けること)、或いは容器の長手方向に貫通孔と切り欠き形状とした部分(例えば後述する切欠部24D等)とを並設することなどをいう。なお、上述した容器の長手方向に貫通孔と切り欠き形状とした部分を並設する場合は、裏側片の容器側辺部7cを切り欠き形状としたとき表側片に対して貫通孔と切り欠き形状とした部分を並設し、表側片の容器側辺部7cを切り欠き形状としたとき裏側片に対して貫通孔と切り欠き形状とした部分を並設し、表側片および裏側片の容器側辺部7cが切り欠き形状でないときは表側片と裏側片に貫通孔と切り欠き形状とした部分を並設する構成とされる。
【0040】
なお、尿誘導部の形成位置については、該尿検査具の容器側辺部であれば、図19に示すように片方の容器側辺部7cに尿誘導部24(24A、24B、24C、24D等でもよい)を設けても尿の跳ね返りの抑制効果を奏することが可能であるが、さらに容器側辺部の両側(本発明の実施例においては 7c、7c)であることがより好ましい。このことは、尿吸収体の露出部に尿誘導部を形成する場合も同様である。
【0041】
尿誘導部は前記のように、切り欠き形状にすること、貫通孔を設けること、またはこれらを組み合わせること等を選択することができる。この場合において、尿の誘導性を高めるためには、容器の表裏方向の厚さを薄肉に形成するのが好ましい。また、尿の誘導性を確保しつつ、尿の跳ね返りをより効果的に抑制するためには、図20に示すように容器側辺部の尿誘導孔(尿誘導部)24よりも外側の部分26に段差26aを設けて表面積を増やすための加工を施したり、段差26aに代えて溝を設けて表面積を増やすための加工を施したりしてもよい。
【0042】
判定表示部には、検査後の判定結果を一目瞭然とするため、判定窓を設けることが好ましい。判定窓の数、形状については、判定結果の表示態様により、適宜選択可能である。また、視認を容易にするため、判定窓を塞ぐ樹脂膜等は透明あるいは半透明のものが好ましい。
【0043】
把持部は使用性を高めるために、必要に応じて凹凸等の滑り止め加工を施しても良い。
【0044】
以上のように本発明の尿検査具は、表側片及び裏側片からなる容器と、容器内の検査体とで構成されるが、表側片と検査体は断面構造において必ずしも密接している必要はなく、間に適宜空間(隙間)を設けてもよい。例えば、pHによる色調の変化を確認するなどの単純な反応系を利用した検査の場合は、該空間を設けることで、尿吸収体に収容された検査検体である尿が、検査体に展開する際の展開がスムーズとなり、よりスピーディーに検査を行うことが可能となる。一方で、例えばイムノクロマト法の原理を利用した検査の場合は、検査検体である尿と抗体との反応時間を十分確保する必要がある。その場合は、表側片と検査体を密接させることで、検査検体の展開速度の調整が可能となる。さらに、必要に応じて表側片、裏側片のそれぞれの裏面、すなわち容器を組み立てた際の内面には、その間に挟み込む検査体を固定するための突起部材、押さえ部材等を設けることができる。これらの突起部材等の部材を構成に加えることにより、尿吸収体に吸収された検査検体を展開させる際の流路の調整が可能となり、またよりきめ細かい展開速度の調整が可能となる。このことは、検査の精度ならびに再現性向上の観点からも有用である。
【0045】
また、本発明の尿検査具では、少なくとも尿吸収体、反応部材で構成される検査体を用いて、尿吸収体に吸収された尿中に存在する被検物質を毛細管現象により、反応部材まで展開させ、そこで同定・検査・判定が行われる。
【0046】
更に、本発明の尿検査具では、尿を検査対象とする各種検査を行うことができる。具体的にはhCG、hLH等の各種ホルモン、pH、ブドウ糖、蛋白質、潜血等が挙げられる。
【0047】
検査シートとしては、例えばストリップ状に形成されたベースシートの上に、尿吸収体、反応部材、吸水濾紙が容器の一端側(本発明の実施例においては7a)から順に配して設けられている。必要に応じて、尿吸収体に、尿に反応して変色する化学種、pH指示薬等の変色手段を設けてもよく、或いは、尿吸収体と反応部材との間に、尿移動調整体を介在させても良く、また吸水濾紙に乾燥剤を付設してもよい。特にイムノクロマト測定法を利用した検査を行う場合、被検物質と検査対象に応じたモノクローナル抗体との反応時間の確保が必要となるため、尿吸収体と反応部材との間に尿移動調整体を設けるとよい。
【0048】
なお、検査体は単一のクロマトグラフ媒体からなっていても、また数種類のクロマトグラフ媒体を展開方向に有するものでもよい。後者の検査体としては、数種類のクロマトグラフ媒体どうしを直接的に繋いだもの、あるいは、長尺の別のクロマトグラフ媒体上に短いクロマトグラフ媒体を部分的に貼付したもの、或いは数種類のクロマトグラフ媒体の間を別のクロマトグラフ媒体で繋いだものでもよい。
【0049】
本発明の尿検査具の各部材に使用される素材としては、検査目的、検査対象等に応じて公知のものが適宜使用できる。具体的には次のものが挙げられる。
【0050】
前記ベースシートとしては、ニトロセルロース、グラスフィルター等が使用される。また、尿吸収体としては不織布等が、尿移動調整体としては不織布やガラス繊維等が、反応部材としては、各種濾紙(定性濾紙、定量濾紙、分液濾紙、硝子繊維濾紙、シリカ繊維濾紙、複合繊維等で構成される)や各種不織布等が使用される。また、これらの材料は、互換性を有し、他の部材用に使用することができる。
【0051】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る尿検査具(キャップを着けた状態)を示す外観斜視図であり、図2はその尿検査具(キャップを外した状態)を示す外観斜視図である。また、図3は尿検査具本体を示す平面図、図4は尿検査具本体を示す底面図、図5は尿検査具本体を示す縦断面図、図6は図3のVI−VI線による端面図、図7は図3のVII−VII線による端面図、図8は尿検査具本体における採尿部と判定表示窓との間の部分を拡大して示す縦断面図である。
【0052】
この尿検査具1は、尿検査具本体3とキャップ5とを有する。尿検査具本体3は概略偏平の棒状に形成された容器7を有し、この容器7の長手方向の一端側7aに対しても、一端側7aとは反対の他端側7bに対しても、キャップ5が着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0053】
容器7は、表側片9と裏側片11とを互いに嵌め合わせることで構成されており、表側片9は尿を掛けるときに人体側に向けられ、裏側片11はその反対側に向けられる。容器7の長手方向と直交する面における外寸は、尿を掛ける方向(表裏方向)を短く、その方向と直交する方向(幅方向)を長くした偏平形状に形成されている。容器7の内部には検査シート40が設けられる。
【0054】
表側片9には、尿が掛けられる採尿部20と判定表示窓22と尿誘導部としての貫通する尿誘導孔24とが設けられている。採尿部20は長手方向の一端側7aに配され、その採尿部20を挟む両側方(長手方向と直交する容器7の幅方向)の容器側辺部7cにそれぞれ貫通する尿誘導孔24が形成され、採尿部20よりも他端側7bに判定表示窓22が配されている。なお、採尿部20は、上述したようにキャップ5を容器7の一端側7aに取り付けることにより、そのキャップ5により覆われることになる。
【0055】
裏側片11は、前記一端側7aを除いて、表側片9とほぼ同一形状となるように形成されていて、裏側片11の一端側7aの幅W1(図4参照)は、表側片9の両方の尿誘導孔24で挟まれた幅寸法W2(≒W1)(図3参照)とほぼ同じ寸法で形成されている。よって、尿誘導孔24は、表側片9のみによって構成されている。そして、このように尿誘導孔24が表側片9のみによって構成されることで、尿誘導孔24は浅くなるように形成される。
【0056】
また、この尿誘導孔24は、容器7の表裏方向に貫通しかつ容器7の長手方向に長いもので、容器7の幅方向外側に寄せて形成されていて、尿誘導孔24から採尿部20までの距離よりも尿誘導孔24から容器7の前記幅方向外側までの距離が短く、尿誘導孔24よりも前記幅方向外側の部分は幅方向において薄肉の肉部26となっている。
【0057】
採尿部20には、表側片9の前記表裏方向に貫通する採尿孔としてのスリット28が3つ、スリット28の幅方向に並設された柵状に形成されており、各スリット28の幅方向は、前記容器7の幅方向と一致する。各スリット28は容器7の長手方向に長いもので同一に形成されていて、尿誘導孔24よりも長く形成されている。スリット28をその幅方向で挟む両側には、裏側片11へ向けて突出したスリット形成部29が設けられていて、スリット形成部29のスリット28側の側面30は、スリット28の内奥側を広幅W3、スリット28の外表側を狭幅W4(<W3)とするテーパー状に形成されている(図6参照)。
【0058】
また、表側片9には、採尿部20と判定表示窓22との間であって、採尿部20の近傍に、採尿部20よりも外側方に突出した段差部32が形成されており、この段差部32は採尿部20側(一端側7a)を急峻にして形成されている。尿誘導孔24の前記他端側7bの端部は、段差部32の間近に位置している。判定表示窓22は、透明な樹脂膜22aで塞がれている。なお、樹脂膜22aは半透明であってもよい。
【0059】
更に、採尿部20の段差部32側(他端側7b)であって採尿部20の内面側には、前記検査シート40側に向けて突出した突出部34が形成されている(図8参照)。この突出部34は、検査シート40側を平坦にかつ3つのスリット28の内奥側を塞ぐように形成されており、この突出部34の外側に当たった尿を、一旦一端側7aへ戻した後に突出部34の裏側に移動させ、その後に他端側7bへ移動させる、つまり迂回させる機能を有する。
【0060】
上記突出部34の一端側7aの部分には、他の部分よりも裏側片11に向けて更に突出した押圧部36が形成されている。この押圧部36は、後述する尿移動調整体43を押圧して尿の移動を調整するものである。押圧部36の突出高さ寸法は、尿移動調整体43の厚み寸法などに応じて適宜選定される。また、採尿部20の一端側7aには、スリット28の裏側片11側を塞ぐように連結部38が形成されている。
【0061】
検査シート40は、ベースシート41の上に、尿吸収体42と尿移動調整体43と反応部材(検査体)44と吸水濾紙45とが、一端側7aからこの順に配して設けられている。尿移動調整体43の一端側7aの端部は、ベースシート41と尿吸収体42の他端側7bの端部との間に挟まれており、尿移動調整体43の他端側7bの端部とベースシート41との間には反応部材44の一端側7aの端部が挟まれ、反応部材44の他端側7bの端部は、吸水濾紙45の一端側7aの端部とベースシート41との間に挟まれている。なお、乾燥剤が別途設けられることもある。
【0062】
第1実施形態においてベースシート41は、ニトロセルロース製のシートで形成されている。また尿移動調整体43は、ガラス繊維で形成されており、ここで被検物質の標識化が行われる。尿吸収体42は、不織布で形成されていて、この尿吸収体42は前記スリット28とともに、尿を容器7内に採り入れて尿移動調整体43を介し、検査体(反応部材)44へ供給する尿採取部を構成する。また、尿吸収体42には、スリット28の両側に設けられた前記スリット形成部29の内面が密着されている。更に、尿移動調整体43には前記押圧部36の内面が密着されている。上記スリット形成部29と押圧部36が形成された突出部34とは、互いに繋がっているので、スリット28と検査シート40との間は、スリット28の長手方向及び幅方向の4方向のうちの3方向が塞がれていて、一端側7aのみ開放された状態となっている。
【0063】
上記検査体(反応部材)44は、本実施例では尿中ヒト黄体形成ホルモン(hLH)を検出するものであり、着色パターンに基づき陽性又は陰性が検査されるようになっている。また、上記尿移動調整体43は、検査対象に応じて、つまり用いる検査体の種類に応じて、材質等が適宜選択される。
【0064】
そして、上述のように尿移動調整体43に押圧部36の内面が密着されるとともに、スリット28を挟む両側の側面30がテーパー状に形成されているので、以下のような効果を奏する。
【0065】
即ち、スリット28の両側のスリット形成部29におけるスリット側の側面30を、スリット内奥側を広幅W3、スリット外表側を狭幅W4とするテーパー状に形成しているので、スリット28から入った尿の外側への逆流(戻り)を堰き止めて、スリット28に入ってくる尿と衝突し難くし、これにより尿の撥ねを低減することが可能になる。この効果は、上述したようにスリット28を幅方向で挟むスリット形成部29の内面を採尿部20の内側に設けた尿吸収体42に密着させることにより得られる。一方、このように密着させると、スリット形成部29と尿吸収体42との間に隙間が無いため、尿を溜める箇所が少なくなってスリット28から入った尿が尿吸収体42を介して検査体44へ移動し易くなって、検査体44との間での反応に要する時間を確保することができなくなる。しかし、スリット28の両側のスリット形成部29におけるスリット側の側面30を上述したテーパー状に形成しているので、スリット28から入った尿の尿吸収体42から検査体44への移動を遅くするように尿の移動速度を制御し得る。これにより検査体44に供給される尿の移動速度を適正にすることが可能となって、検査体44との間での反応に要する時間を確保することができるようになり、検査精度を向上させることが可能になる。よって、スリット形成部29におけるスリット側の側面30を上述したテーパー状に形成し、かつスリット形成部29の内面を尿吸収体42に密着させることで、尿の跳ね返りの低減化と検査精度の向上とを両立させることが可能になる。
【0066】
なお、上述した構成に代えて、スリット形成部29を尿吸収体42から離してスリット形成部29と尿吸収体42との間に隙間を形成した場合には、スリット28へ尿が入り込み難くなり、尿の跳ね返りが顕著になる。また、同じく、スリット形成部29の内面を尿吸収体42に密着させ、かつスリット28の両側のスリット形成部29におけるスリット側の側面30を上記とは逆のテーパー状に形成した場合には、スリット28から外側へ尿の逆流が起こる際に、上述した逆のテーパー状の側面が前記逆流を起こし易くするので、スリット28に入ってくる尿と衝突して尿の跳ね返りが発生し易くなる。
【0067】
このように構成された第1実施形態に係る尿検査具1における検査内容につき説明する。
【0068】
図9(a)に示す待機状態の尿検査具1のキャップ5を尿検査具本体3から外して、図9(b)に示すように容器7の他端側7bに取り付ける。これにより採尿部20と尿誘導孔24とが露出するとともに、尿検査具1の全長が長くなる。
【0069】
その後、容器7の他端側7bに取り付けたキャップ5を上側に位置させて把持し、下側に位置する採尿部20に目掛けて尿を掛ける。これにより採尿部20に尿が掛けられるとともに尿吸収体42に尿が吸収される。また、採尿部20の両側方の容器側辺部7cには尿誘導孔24が形成されているので、容器側辺部7cに掛かった尿が尿誘導孔24を介して、特定方向、例えば尿誘導孔24の深さ方向、或いは尿の飛ぶ方向に誘導されて通過する。よって、尿の跳ね返り(または撥ね)が十分に抑制され、使い勝手が向上する。
【0070】
更に、上述したようにキャップ5を容器7の他端側7bに取り付けることにより尿検査具1の全長が長くなるので、手で把持するキャップ5から採尿部20までの長さが長くなって、手で把持する部分と尿が掛けられる部分である採尿部20との距離を長くすることができる。
【0071】
また、尿誘導孔24が棒状容器7の長手方向に長く形成されている。つまり、尿誘導孔24を前記長手方向に長くすることで、尿の跳ね返りを抑制するために有効な容器7の幅寸法を規制しつつ尿誘導孔24自体を大きくすることが可能となっているので、これにより尿の跳ね返りを抑制することができる。加えて、上述したように尿誘導孔24の容器幅方向外側部分は薄肉の肉部26となっていて、肉部26の厚みが、本実施形態では1.0mmであるため、これによっても尿の跳ね返りが抑制される。なお、肉部26の厚みとしては、0.1mm以上、10mm以下が好ましい。その理由は、0.1mmよりも小さくした場合には、肉部26の強度が低下して破損しやすくなり、逆に10mmよりも大きくした場合には、尿の跳ね返りの抑制効果が得られ難くなるからである。
【0072】
また、段差部32は、採尿部20よりも他端側(手で持つ側)7bへの尿の跳ね返り防止に寄与するので、これにより使い勝手をより向上させ得る。なお、段差部32は、採尿部20の近傍に配することに代えて採尿部20から離してもよく、その両者間の距離は、段差部32の外側方への突出高さに応じて調整(接近または離隔)し、前記他端側(手で持つ側)7bへの尿の跳ね返りを防止でき得る値に経験的に定めればよい。
【0073】
更に、採尿部20に、3本のスリット28をスリット28の幅方向に設けているので、採尿部20に対するスリット(採尿孔)の面積比を高くすることができ、その採尿孔に採取される尿の量を、検査に必要な範囲内で増やすことが可能となって、これによっても尿の跳ね返りを抑制することができる。また、スリット28を幅方向で挟むスリット形成部29の肉厚を適当な大きさにすることができ、これにより容器7の成形性を困難にすることなく、しかも前記スリット形成部29の強度低下を抑制することが可能となる。
【0074】
更にまた、尿誘導孔24を表側片9だけで形成しているので、表側片9と裏側片11とで構成する場合よりも尿を通り抜け易くすることができる。つまり、尿誘導孔24を表側片9と裏側片11とで構成する場合は、尿誘導孔が深くなって尿との間の抵抗が大きくなり尿が通り抜け難くなるが、第1実施形態のように尿誘導孔24を表側片9のみで構成する場合には、尿誘導孔24が浅くなって尿との間の抵抗が小さくなり、尿を通り抜け易くすることが可能になる。
【0075】
なお、上述した第1実施形態では採尿部20の側方の容器側辺部の両方にそれぞれ尿誘導孔を設けた構成にしているが、本発明はこれに限らず、採尿部20の片側の容器側辺部に尿誘導孔を設けた構成にしてもよい。また、尿誘導孔は、容器の長手方向に長いものを片側の容器側辺部に1つ設ける形態ではなく、容器の長手方向に複数の尿誘導孔を並べて配置する形態などを含む。
【0076】
また、上述した第1実施形態では採尿部20に3本のスリット(採尿孔)28を設けるようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、採尿部20に適当な大きさのスリット(採尿孔)を1又は2、或いは4以上で設けるようにしてもよい。このようにすることで、例えば採尿部の大きさ及び尿採取量などに対応させることが可能になる。
【0077】
(第2実施形態)
図21は、本発明の第2実施形態に係る尿検査具を示す平面図である。なお、第1実施形態の尿検査具と同一部分には同一の符号を付している。
【0078】
この尿検査具1Aは、表側片および裏側片の段差部32よりも一端側を欠落させた容器50を用いていて、その容器50から、尿吸収体42がその大半を露出させた状態で配設されている。この尿吸収体42の露出部42aは、尿が掛けられる採尿部として用いられ、その露出部42aの側方(幅方向)の側辺部に尿誘導部51が設けられている。前記尿誘導部51は、露出部42aの両側に設けられていて、尿を掛ける方向に露出部42aを貫通する尿誘導孔として形成されている。
【0079】
したがって、この第2実施形態にあっても、尿吸収体42の露出部42aの側辺部にかかった尿が尿誘導部(尿誘導孔)51を介して特定方向へ誘導されるので、尿の跳ね返りを十分に抑制することができ、使い勝手を向上させ得る。このとき、尿誘導部51が尿吸収体42の露出部42aの両側に設けられているので、尿の跳ね返り、飛び散りを採尿部の両側で抑えることが可能となり、使い勝手をより向上させ得る。また、尿誘導部(尿誘導孔)51は、容器50の長手方向に長くなるように形成されているので、尿の跳ね返りを抑制するために有効な尿吸収体露出部の幅寸法を規制しつつ尿誘導孔自体を大きくすることが可能となり、これにより尿の跳ね返りを抑制することができる。更に、段差部32を残しているので、その段差部32が障壁として機能し、段差部32よりも他端側(手で持つ側)7bへの尿の跳ね返りを抑制することができ、これにより使い勝手をより向上させ得る。なお、尿誘導部51は、露出部42aの側辺部における片側に設けるようにしてもよい。また、尿吸収体42の露出部42aに設ける尿誘導部としては、図23に示す尿検査具1Cのように、容器50の長手方向に長く、かつその長手方向の一端側(他端側7bとは反対側)を露出部42aの縁に開口させた尿誘導部(尿誘導孔)51Aを用いてもよい。
【0080】
上述した露出部42aにおける両側の尿誘導部51で挟まれた部分には、図22に示すように凹凸部52を形成することが好ましい。この凹凸部52は、凹凸によって表面積が増大し、尿吸収量を増大化させる機能を有し、凹凸に伴う表面積の大小により、尿の吸収量をコントロールすることができる。また、凹凸部52は、尿吸収体42の材質に応じても尿吸収量のコントロールが可能になる。上記凹凸部52の形状としては、図22では2本の長い四角形状を採用しているが、凹凸部52の形状については、任意のものを選ぶことができる。一例としては、例えば採尿孔28A〜28Eに用いた形状である一つの長楕円形状、網目形状、多数のドットを含む形状、複数の長楕円形状、複数の斜列状の長孔(図10〜図14参照)などでもよい。
【0081】
【表1】

【0082】
表1は、尿撥ね(跳ね返り)の観察結果を纏めた表である。なお、実施例1は、上述した第1実施形態に係る尿検査具による場合のもので、実施例2は、上述した図21に示す第2実施形態に係る尿検査具1Aによる場合、比較例1は採尿部に3本のスリット(採尿孔)を設けるものの尿誘導孔(尿誘導部)を省略した尿検査具による場合のもので、比較例2は採尿部が尿吸収体の大半を露出させたもので、かつ尿誘導孔(尿誘導部)を省略した尿検査具による場合のものである。
【0083】
この表1より理解されるように、比較例1と比較例2の場合には共に、主に左右した方向に撥ねが観察されたが、本願の実施例1、2による場合には、ほとんど撥ねは観察されなかった。
【0084】
【表2】

【0085】
表2は、検査に必要な尿の量を調査した結果である。なお、実施例1及び比較例2は、表1と同一のものを使用し、これら尿検査具を水平面に対して45゜傾けた状態にセットし、その状態の尿検査具に対して直交する方向から、尿の代わりとして水を、15mL/secの流速で当てた。そして、水を当てる時間を、0.5秒、1秒、2秒、3秒、5秒と変化させ、水の移動が検査に問題が無いか否かにつき調査した。
【0086】
この表2より理解されるように、比較例2の場合には、当てる時間が短いときに検査が困難となるが、本願の実施例1による場合には、0.5秒から支障なく検査を行うことができることがわかる。
【0087】
なお、上述した第2実施形態では、尿吸収体42において露出部42aとして露出させる大きさを大半としているが、本発明はこれに限らない。例えば、採尿部として機能し得れば、一部であっても、或いは全部であってもよい。
【0088】
また、上述した第2実施形態では、容器50として、表側片および裏側片の両方において段差部32よりも一端側を欠落させた構成にしているが、本発明はこれに限らず、表側片のみ段差部32よりも一端側を欠落させ、裏側片は一端側まで残った構成としてもよい。但し、尿誘導部51を尿が通り抜け得るように幅寸法を狭く調整することが要求される。
【0089】
更に、上述した第1、第2実施形態では尿中ヒト黄体形成ホルモン(hLH)やヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)を検出する形態の尿検査具に適用しているが、本発明はこれに限らず、尿を検査対象とする各種検査に適用することができる。このような適用に際して、検査シートの構成は適宜調整される。
【0090】
更にまた、上述した第1、第2実施形態ではキャップを有する尿検査具に本発明を適用しているが、本発明はこれに限らず、キャップを省略した尿検査具に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 尿検査具
3 尿検査具本体
5 キャップ
7 容器
7a 一端側
7b 他端側
7c 容器側辺部
9 表側片
11 裏側片
20 採尿部
22 判定表示窓
24 尿誘導部(尿誘導孔または貫通孔)
26 薄肉の肉部
28 スリット
29 スリット形成部
30 側面
32 段差部
36 押圧部
42 尿吸収体
44 検査体(反応部材)
50 容器
51 尿吸収体の露出部の尿誘導部(尿誘導孔)
52 凹凸部
53 囲繞部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状容器と、該容器の内部に設けられた反応部材と、長手方向の一端側に設けられている採尿部とを有し、前記採尿部に掛けられた尿を前記反応部材により検査する尿検査具において、
前記採尿部の周縁部に、当該周縁部にかかった尿を特定方向へ誘導する尿誘導部が設けられていることを特徴とする尿検査具。
【請求項2】
請求項1に記載の尿検査具において、
前記採尿部は、前記容器における長手方向の一端側に採尿孔を有する状態で設けられ、前記尿誘導部が前記採尿部の側方の容器側辺部に設けられていることを特徴とする尿検査具。
【請求項3】
請求項2に記載の尿検査具において、
前記尿誘導部は、前記容器を貫通する尿誘導孔を有することを特徴とする尿検査具。
【請求項4】
請求項2または3に記載の尿検査具において、
前記尿誘導部は、前記採尿部の両側に設けられていることを特徴とする尿検査具。
【請求項5】
請求項3または4に記載の尿検査具において、
前記尿誘導孔は、前記容器の長手方向に長いものであることを特徴とする尿検査具。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1つに記載の尿検査具において、
前記容器には、前記採尿部よりも前記長手方向の一端側とは反対の他端側に段差部が突出形成されていることを特徴とする尿検査具。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれか1つに記載の尿検査具において、
前記容器側辺部は、前記尿誘導部が配された部分を、前記容器側辺部における他の部分よりも薄肉にして形成されていることを特徴とする尿検査具。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれか1つに記載の尿検査具において、
前記採尿孔が前記長手方向に長いスリットであって、前記採尿部に前記スリットの幅方向に複数並設されていることを特徴とする尿検査具。
【請求項9】
請求項1に記載の尿検査具において、
前記採尿部は、前記反応部材へ尿を展開させる尿吸収体が容器から露出した部分のみで構成され、その尿吸収体の露出部の側方の側辺部に前記尿誘導部が設けられていることを特徴とする尿検査具。
【請求項10】
請求項9に記載の尿検査具において、
前記尿誘導部は、前記露出部を貫通する尿誘導孔を有することを特徴とする尿検査具。
【請求項11】
請求項9または10に記載の尿検査具において、
前記尿誘導部は、前記露出部の両側に設けられていることを特徴とする尿検査具。
【請求項12】
請求項10または11に記載の尿検査具において、
前記尿誘導孔は、前記長手方向に長いものであることを特徴とする尿検査具。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか1つに記載の尿検査具において、
前記容器における前記尿吸収体露出部側に、段差部が突出形成されていることを特徴とする尿検査具。
【請求項14】
請求項2乃至8のいずれか1つに記載の尿検査具に使用される容器であって、
採尿部を有する表側片と、前記表側片に嵌合される裏側片とを備え、前記表側片の前記採尿部には採尿孔が形成され、また、前記採尿部の両側のうちの少なくとも片側に尿誘導部が形成されていることを特徴とする尿検査具用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−17689(P2011−17689A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33760(P2010−33760)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】