尿由来の前駆細胞およびその使用方法
本明細書において、尿中前駆細胞、および尿サンプルからの尿中前駆細胞の培養を生産する方法を提供する。本発明の細胞は、選択細胞培地の使用に基づいた選別、形態学に基づいた選別、および/または細胞特異的マーカーによる選別を行うことができる。c−kit陽性であり、尿路上皮細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、または間質細胞に分化可能である、分離された尿中前駆細胞も提供する。尿中前駆細胞の使用方法であって、細胞が組織足場上に播種される方法も提供する。治療を必要とする被験体の治療方法であって、分化したUPCを含む膀胱組織基質を提供するステップと、およびその基質を患者の体内に移植するステップとを含む方法も提供する。最後に、尿サンプルの輸送に適した容器と、培地と、1種類以上の抗生物質と、前記容器、培地、および抗生物質を保持するための包装材料と、場合により使用説明書とを含むキットが提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2007年5月21日に出願された米国仮特許出願第60/939,247号明細書、および2007年6月11日に出願された米国仮特許出願第60/943,215号明細書の利益を主張し、これら各文献の開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は概して、尿由来の細胞の分離、分離された細胞、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
再生医療は、身体の外傷組織の再生に焦点を当てた組織工学の応用分野の1つである。再生医療の用途としては、膀胱などの器官の再建または置換が挙げられる。
【0004】
多くの疾患および外傷により、膀胱の損傷または損失が生じることがあり、その器官の修復または置換が必要となる。膀胱外反症、後部尿道弁、または脊髄髄膜瘤(一般には二分脊椎として知られている)などの先天性異常を有する小児は、高圧膀胱および過緊張低コンプライアンス膀胱を発症することがある。成人集団では、米国において、膀胱がんは、男性では悪性腫瘍と通常診断されるものの第4位であり、女性では悪性腫瘍と通常診断されるものの第9位である。
【0005】
膀胱の基本的な機能は、低圧下で尿をたくわえることができ意志コントロール下で空にすることができる、容量の大きな貯留槽を提供することである。膀胱機能を失ったことに苦しむ患者は、生活の質が劇的に悪化し、水腎症および腎不全になる危険性がある。
【0006】
膀胱再建、または膀胱形成術は、薬物療法が不十分な場合に指示されることが多い。現在、膀胱拡大術が、腸の開放セグメント(detubularized segment)を膀胱上に配置することによって通常行われている。腸セグメントまたは胃弁を泌尿器再建に使用することは有効であるが、いくつかの問題が発生し得る。有害な副作用としては、感染、腸閉塞、粘膜産生、電解質異常、穿孔、および発癌性が挙げられる。したがって、組織工学的再生による膀胱再建のより臨床的に適用可能な方法が必要とされている。
【0007】
組織工学の発展によって、膀胱再生は、初代培養細胞を播種した生分解性膜を使用することによって可能となることが示されている((Kropp,et al.(1996)J.Urol.156:599)、(Atala,et al.(1992)J.Urol.148:658)、(Oberpenning,et al.(1999)Nat.Biotechnol.17:149))。この概念の実現性は、ヒトにおいてすでに示され、膀胱再生および膀胱容量の拡大が実施された(Atala,et al.(2006)The Lancet 367:1241−46)。
【0008】
膀胱再生を首尾よく実現するために使用されている生体材料の足場としては、無細胞コラーゲンマトリックスおよび合成ポリマーが挙げられる。コラーゲンマトリックスとしては、ブタ膀胱粘膜下膜(BSM)および小腸粘膜下組織(SIS)が挙げられ、これらはどちらも、正常な細胞増殖、分化、および機能に必要な多数の天然成分、たとえばコラーゲン、糖タンパク質、プロテオグリカン、および機能性増殖因子などを含有する((Hodde,et al.(2001)Endothelium 8:11)、(Voytik−Harbin,et al.(1997)J.Cell.Biochem.67:478))。合成ポリマーの足場としては、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、および乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)が挙げられる((Oberpenning,et al.(1999)Nat.Biotechnol.17:149)、(Atala,et al.(1993)J.Urol.150:608))。
【0009】
自家膀胱細胞は、癌を有さない患者における組織工学的構造物のための細胞源として最も一般的に使用されている。生体材料の足場上に播種された患者自身の培養細胞は、組織を再生するための骨組みとして機能することができる。しかし、膀胱細胞を得るためには、侵襲性組織生検手順が細胞採取のために行われ、これは、医療費を増加させ、出血、感染、ならびに尿道または膀胱の外傷などの予測される合併症とも関連している。さらに、膀胱生検により得られた細胞は、生検の前または最中に粘膜組織が破壊されることが原因で、場合により増殖しないことがある(Zhang & Frey(2003)Adv.Exp.Med.Biol.539:907)。
【0010】
胚性幹細胞、胎性幹細胞、および成体幹細胞などの別の細胞源が、泌尿器再建のために調査されている。幹細胞は、自己再生し、最終分化しないので、様々な種類の細胞を産生することができる。ヒト胚性幹細胞によって、組織工学の目標に対して期待が生じたが((Frimberger,et al.(2005)Urology 65:827)、(Lakshmanan,et al.(2005)Urology 65:821))、免疫適合性、腫瘍形成、および倫理の問題が残る。胎性幹細胞または成体幹細胞は、宿主組織中に非常に少ない数でのみ検出され、培養中に十分に数が増えないことがあり、より限定された分化能しか有しないことがある(Vogel(2001)Science 292:1820)。したがって、組織工学における幹細胞の現在の臨床用途は限定され得る。
【0011】
生検による自己細胞の収穫に対するより好ましい代案が、特に生検のために自己細胞を採取できない場合に、泌尿器組織工学および細胞療法のために必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
尿サンプルを提供するステップと、次に尿中前駆細胞を該尿サンプルから分離するステップとを含む、尿中前駆細胞(UPC)の培養を生産する方法が、本明細書において提供される。ある実施形態では、該分離ステップは、(a)細胞を尿サンプルから収集して粗細胞サンプルを得るステップと、(b)尿中前駆細胞を該粗細胞サンプルから選別するステップとによって行われる。ある実施形態では該収集ステップは、該尿サンプルの遠心分離によって行われる。
【0013】
ある実施形態では、選別は、該細胞を、細胞選択培地を含む組成物中に配置することで行われる。ある実施形態では、選別は、形態学に基づいて行われる。ある実施形態では、選別は、尿中前駆細胞に特異的なマーカー、たとえば、C−kit(CD117)、SSEA−4、CD105、CD73、CD90、CD133、および/またはCD44を選別することによって行われる。ある実施形態では、尿中前駆細胞は、哺乳動物被験体(たとえばヒト被験者)に由来する。本明細書に開示されるいずれかの方法によって産生された尿中前駆細胞は、本発明の別の一態様となる。
【0014】
c−kit陽性であり、尿路上皮、平滑筋、内皮、および間質細胞からなる群より選択される2つ以上の系譜に分化することが可能な、分離された尿中前駆細胞も提供される。
【0015】
UPCを提供するステップと、UPCを分化させるステップと、分化させた細胞を生分解性組織足場上に播種するステップとを含む、細胞を組織足場上に播種する方法が提供される。組織足場は、コラーゲンマトリックスおよび/または合成ポリマー(たとえばポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、または乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)など)を含むことができる。
【0016】
膀胱組織基質を提供するステップであって、該基質が分化したUPCを含むステップと、基質を患者に移植するステップとを含む、治療を必要とする被験体の治療方法が提供される。基質は、コラーゲンマトリックスおよび/または合成ポリマー(たとえばポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、または乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)など)を含むことができる。
【0017】
尿サンプルの輸送に好適な容器と、培地と、1種類以上の抗生物質と、該容器、培地、および抗生物質を保持するための包装材料と、場合により使用説明書とを含むことができるキットが提供される。
【0018】
本発明のさらなる一態様は、前述の治療方法を行うための薬物を調製するための前述の細胞の使用である。
【0019】
以上およびその他の本発明の目的および態様は、図面および以下に示す明細書においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】尿中前駆細胞(UPC)分化の提案される経路の図である。
【図2】インビトロで培養した尿由来の前駆細胞の顕微鏡画像。これらの細胞は支持細胞層(feeding layer cell)を使用せずに増殖可能である。
【図3】尿細胞培養の細胞増殖曲線。細胞は、1つの細胞が6cmの培養皿中にコンフルエントになるまで10〜12日で増殖した。
【図4】蛍光標示式細胞分取器(FACS)のグラフが、CD44、105、73、90、および133などの前駆細胞マーカーが尿から分離した細胞中に存在することを示している。
【図5】膀胱生検により得られたヒト尿路上皮(A〜D)およびUPC(E〜H)のウロプラキン(UPIa)、サイトケラチン7、13、19、17、および核酸を使用した免疫蛍光染色の顕微鏡画像。
【図6】核酸および平滑筋に特異的なマーカーで二重染色したUPCの顕微鏡画像。これらの画像は、尿由来の平滑筋前駆細胞が、α平滑筋アクチン(ASMA)(A)、カルポニン(B)、デスミン(C)、およびミオシン(D)などの平滑筋タンパク質マーカーを発現することを示している。
【図7】インビボでの埋め込みから1か月後のUPC−膀胱粘膜下膜(BSM)およびUPC−小腸粘膜下組織(SIS)構造物の組織学的な特徴。A.SIS足場上で増殖したUPCのマッソン三色染色および検出。B.SISマトリックス上で同定したLacZ標識UPC。C.尿細胞を播種したBSM移植片のヘマトキシリン−エオシン(H&E)された部分。D.UPCのヒトX/Y染色体がBSMマトリックス中に示された。
【図8】培養尿細胞中に観察された4種類の細胞:内皮様細胞、平滑筋様細胞、上皮様細胞、および間質様細胞。
【図9】細胞を、FACSによって、細胞特異的マーカーAE1/AE3、デスミン、ビメンチン、およびエリスロポエチンの場合で分析した。
【図10】クローンUPCのギムザバンド核型が、継代6の正常染色体パターンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、前駆細胞、ならびに尿由来の前駆細胞の選別および培養を行う方法に関する。好都合には、尿中に見出された細胞は、組織生検を必要とせずに得ることができ、患者の不快感および起こり得る合併症をなくすことができる。
【0022】
記載のすべての米国特許参考文献の開示は、それらが本明細書における開示と一致している限りにおいて参照により本明細書に組み入れられる。本明細書における本発明の説明および添付の特許請求の範囲に使用される場合、文脈が明確に他のことを示しているのでなければ、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形も含むことを意図している。さらに、化合物の量、用量、時間、温度などの測定可能な値に言及する場合に本明細書において使用される用語「約」および「およそ」は、指定の量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはさらには0.1%のばらつきを含むことを意味する。または、本明細書において使用される場合、「および/または」および「/」は、関連する列挙品目1つ以上のあらゆるおよびすべての可能な組み合わせ、ならびに代替物(「または」)の中で解釈される場合はそれらの組み合わせがないことを意味し包含している。
【0023】
「尿中前駆細胞」または「UPC」は、多能性および増殖能の両方を有する、尿から収集および/または分離された細胞である。UPCは、1つ以上の系譜の中の様々な細胞種類を得ることができるという点で「多能性」である。たとえば、ある実施形態によるUPCは、以下の1つ以上への分化能を有する。膀胱尿路上皮細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、間質細胞、さらには骨細胞、筋細胞、上皮細胞、およびその他の種類の細胞および組織。従来の研究では、尿路上皮細胞が成熟軟骨細胞に分化できることが示されている(Fernandez−Conde,Bone(1996)18(3):289−91)。
【0024】
尿路内腔から脱落した細胞は、インビトロでの培養および維持が困難な古いまたは損傷した表層細胞であると一般に考えられている。尿から得られる少数の細胞は、支持細胞層上で急速に増殖することができる。しかし、支持細胞層は、通常は胚性マウス組織由来のものであり、それによって、ヒト細胞がマウスフィーダー細胞を使用して培養される場合、ウイルスが動物からヒトに移動することがある。この問題を回避するために、最近になって本発明者らは、支持細胞層を使用せずに尿由来の細胞を増殖させている。前駆細胞の性質を有し増殖能および多能性が依然として存在する細胞が得られた。
【0025】
本発明者らの研究は、尿中に前駆細胞および成熟細胞の混合細胞集団が存在することを示している。本明細書において開示される場合、尿は、尿路上皮前駆細胞および平滑筋前駆細胞、ならびに内皮前駆細胞および間質前駆細胞を含有する。尿中に見出される前駆細胞は、膀胱組織、腎組織などから生じることができる。ある実施形態では、腎由来の細胞に対してUPCの選択が生じる。これはたとえば、収集した細胞の継代によって行うことができ、その理由は、腎細胞は一般に継代によって生存しないと考えられているからである。ある実施形態ではUPCは、24〜48時間の間(たとえば31.3時間ごと)に十分に2倍まで増殖するので、これらの細胞を大量に増殖させることができる。さらなる実施形態では、UPCは腫瘍形成を誘導せず、ある実施形態ではUPCは、増殖または分化のためにフィーダー細胞を必要としない。
【0026】
「分離」は、細胞を、それらの自然環境以外の条件下に置くことを意味する。しかし、用語「分離」は、これらの細胞を後に他の細胞と組み合わせて使用したり他の細胞との混合物として使用したりすることを排除するものではない。
【0027】
「被験体」は一般にヒト被験者であり、「患者」が挙げられるが、これに限定されるものではない。被験体は、男性または女性であってよく、限定するものではないが白色人種、アフリカ系アメリカ人、アフリカ人、アジア人、ラテンアメリカ人、インド人などのあらゆる人種または民俗であってよい。被験体は、新生児、生後1か月以内の乳幼児、乳児、小児、青年、成人、および老人などのあらゆる年齢であってよい。
【0028】
被験体は、たとえば、獣医学および/または調合薬開発の目的のための動物被験体、特にイヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、齧歯類(たとえば、ラットおよびマウス)、ウサギ、霊長類(ヒトではない霊長類を含む)などの哺乳動物被験体を含むこともできる。
【0029】
<細胞の収集>
UPCは、尿を産生するヒトなどのあらゆる動物から収集することができる。本発明のある実施形態では、尿中前駆細胞は、哺乳動物の尿から収集される。たとえば、UPCは、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ、サル、またはヒトの尿から収集することができる。特定の実施形態では、尿中前駆細胞は、ヒトの尿から得られる。
【0030】
ある実施形態では、UPCは、自然排尿された新鮮尿、あるいは尿道カテーテルまたは膀胱洗浄により排出された尿のサンプルから収集される。尿サンプルは、4℃において1500RPMで5分間遠心分離して、上澄みを吸引し、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)等の好適な溶液で洗浄することができる。場合によりPBSは、それぞれ細菌の外傷および感染の可能性から保護するために、5%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有することができる。
【0031】
細胞を生体液から分離するための方法および装置のさらなる例は、たとえば、米国特許第5,912,116号明細書、米国特許出願公開第20040087017号明細書、米国特許出願公開第20020012953号明細書、および国際公開第2005/047529号パンフレットに見ることができる。
【0032】
<細胞の選別および増殖>
ある実施形態では、収集されたUPCは増殖する。「増殖」は、生存細胞数の増加を意味する。増殖は、たとえば、細胞の少なくとも一部が分裂してさらなる細胞を産生する1つ以上の細胞周期で細胞が成長することによって実現することができる。
【0033】
「初代培養」は、収集した細胞を培養容器中に播種した後に確立される最初の培養である。「継代」は、培養の第2の培養容器への移動または継代培養を意味し、通常は、機械的または酵素的脱凝集、再播種、および多くの場合は増殖速度に依存して2つ以上の娘培養への分割を含んでいる。集団が特定の遺伝子型または表現型で選別される場合、その培養は継代培養によって「細胞株」となり、すなわちその培養は均一であり望ましい特性を有する。「細胞系」の確立は、細胞株とは対照的に、特定の系譜に関連する場合もあるが、概して未分化の状態である。
【0034】
「選別」は、ある細胞種類を別の細胞腫類と区別するあらゆる独自の特性に基づくことができ、たとえば、密度、大きさ、独自のマーカー、独自の代謝経路、栄養要求性、タンパク質の発現、タンパク質の排出などに基づくことができる。たとえば、細胞は、遠心分離勾配を使用した密度および大きさに基づいて選別することができる。独自のマーカーは、蛍光標示式細胞分取(FACS)、免疫磁気ビーズ選別、磁気細胞分離法(MACS)、パニングなどを使用して選別することができる。独自の代謝経路および栄養要求性は、細胞が特に無血清環境中で増殖される培地の栄養成分の構成および/または量を変化させることによって利用することができる。タンパク質の発現および/または排出は、種々のアッセイ、たとえば、ELISAを使用して検出することができる。
【0035】
ある実施形態では、UPCは、前駆細胞培地などの前駆細胞の増殖を促進する特定の増殖環境中で尿から分離した細胞を提供することによって選別される。ある実施形態では、前駆細胞培地は、3/4のDMEM、1/4のハムF12、10%のFBS、0.4mg/mlのヒドロコルチゾン、10−10Mのクロン・トキシン(Chron Toxin)、5mg/mlのインスリン、1.2mg/mlのアデニン、2.5mg/mlのトランスフェリン+0.136mg/mlの3,39,5−トリヨード−L−チロニン、10mg/mlのEGF、および1%のペニシリン−ストレプトマイシンを含有する(Zhang et al.,In vitro Cell Dev.Biol.−Animal 37:419,2001)。さらなる実施形態では、分離されたUPCは、前駆細胞の選択的分化を促進する特定の増殖環境中で得られる。たとえば、ある実施形態では、ケラチノサイト無血清培地で増殖させたUPCは尿路上皮になる。さらなる実施形態では、10%ウシ胎児血清を有するDMEM中で増殖させたUPCは平滑筋様細胞になる。ある実施形態では、内皮様細胞は、20%のFBS、2mmol/lのL−グルタミン、EGF(5nl/ml)1%ピルビン酸ナトリウム、および1%のペニシリン−ストレプトマイシンを有するM199中で培養することができる。ある実施形態では、間質様細胞は、10%のFBS、2mmol/lのL−グルタミン、および1%のペニシリン−ストレプトマイシンを有するDMEM中で培養することができる。
【0036】
別の実施形態では、UPCは形態学によって選別される。たとえば、尿から分離された細胞は、1つの細胞に分離できる濃度に希釈して(たとえば、細胞は、マルチウェルプレート中約0.5細胞/ウェルの濃度に希釈することができる)、顕微鏡下で観察することができる。1種類の細胞が入ったウェルは、保持して増殖され、観察される形態学によって、たとえば、尿路上皮細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、および/または間質細胞に選別することができる(図6A参照)。
【0037】
本発明のある実施形態による尿中前駆細胞は、同定、選別、および/または分離を1つ以上の「マーカー」に基づいて行うことができる。このようなマーカーとしては、特異的な遺伝子発現、このような細胞の表面上に見出される抗原分子などが挙げられる。特定の実施形態では、尿中前駆細胞の選別および分離は、少なくとも1つの特異的マーカーの発現に基づいて行われる。ある実施形態では、UPCは、CD117(C−kit)、SSEA−4、CD105、CD73、CD90、CD133、およびCD44などの1つ以上のマーカーを有し、CD31、CD34、およびCD45の1つ以上のマーカーは測定可能な量では有さない。したがって、ある実施形態は、CD117、SSEA−4、CD105、CD73、CD90、CD133、およびCD44の1つ以上を発現し、および/またはCD31、CD34、およびCD45の1つ以上を発現しない尿中前駆細胞の選別および分離を含んでいる。たとえば、ある実施形態では本発明の尿中前駆細胞の同定、選別、および/または分離はCD117の発現に基づいて行われる。
【0038】
ある実施形態では、UPCは、本明細書において開示される場合、たとえば遠心分離によって細胞を尿サンプルから収集することによって、および/または細胞を好適な培地中または培地上に直接配置することによって、および/または前駆細胞特異的細胞マーカーの発現に基づいた尿中前駆細胞の選別および分離によって(たとえば、免疫組織化学またはウエスタンブロット解析によって)得ることができる。あるいは、尿中前駆細胞は、細胞の収集および選別を、たとえばフルオロフォア(たとえば、APC、フィコエリトリン、アロフィコシアニン類、フルオレセイン、テキサスレッド(TEXAS RED)など)に結合したマーカー特異的抗体(たとえば抗CD117抗体)を使用した蛍光標示式細胞分取、または磁性粒子に結合したマーカー特異的抗体を使用した磁気選別によって行うことで得ることができる。例として、細胞は、CD117受容体タンパク質の細胞外ドメイン(アミノ酸23〜322)に特異的に結合するウサギポリクローナル抗体とともに温置することができる(De Coppi,et al.(2007)Nat.Biotechnol.25:100)。CD117陽性細胞は、磁性ヤギ抗ウサギIgGマイクロビーズ(Goat Anti−Rabbit IgG MicroBead)とともに温置して精製し、Mini−MACS装置上で選別することができる。尿中前駆細胞は、マイクロビーズ(MicroBead)に直接結合したモノクローナル抗CD117抗体を使用して選別することもできる。固相に取り付け取り外すことを含むあらゆる好適な選別方法が本発明の範囲内と考えられる。
【0039】
本発明のある実施形態による尿中前駆細胞は、たとえば1:4希釈によって、慣例的に継代または継代培養することができ、約50〜70%の集密度まで増殖させることができる。尿中前駆細胞の分離された集団は、慣例的に増殖させることができ、通常の培養条件下、たとえば5%CO2で37℃の加湿雰囲気下に維持することができる。本発明の細胞はKFSM−前駆細胞培地(1:1)を有する複合培地中で増殖可能であるが(Zhang et al.,In vitro Cell Dev.Biol.−Animal 37:419,2001)、前駆細胞の所望の細胞への分化をより厳密に制御するためには、尿路上皮前駆細胞の場合はKSFMなどの単純な無血清培地中、あるいは平滑筋前駆細胞または間質前駆細胞の場合は、ダルベッコ最少必須培地(Dulbecco’s Minimal Essential Media)(DMEM)、ハンクス塩基性塩溶液(Hank’s Basic Salt Solution)(HBSS)、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)、RPMI、またはイスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s−modified Dulbecco’s medium)(IMDM)などの10%FBSを有する培地中で細胞を維持することが一般に好ましい。クローン尿中前駆細胞系は、96ウェルプレート中または24ウェルプレート中のいずれかでの従来の限界希釈法によって産生することもできる。細胞コロニーの形成後、細胞が取り出され、マルチウェルディッシュ中に移される。
【0040】
ある実施形態では、明確な細胞集団の増殖および分化を促進するために、増殖因子または他の分裂促進剤が培地中に含まれる。これに関して、本発明の特定の実施形態は、尿中前駆細胞の尿路上皮細胞、平滑筋細胞、間質細胞などへの増殖および分化を支援する選択培地を使用した尿中前駆細胞の培養を含んでいる。本文脈における場合の分化は、細胞が特定の形態学的または機能的性質を得る細胞の状態を意味する。例として、0.09mMのカルシウムを補充したケラチノサイト無血清培地(KSFM)中で尿中前駆細胞を増殖させると、これらの細胞は尿路上皮に分化する。同様に、血清、たとえば、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したDMEM中で培養した尿中前駆細胞は、平滑筋細胞の分化を促進する。したがって、本発明は、分化して、少なくとも1つの尿路上皮特異的マーカー、または少なくとも1つの平滑筋特異的マーカー、または少なくとも1つの他の組織特異的マーカー(たとえば、間質特異的)を発現する、尿中前駆細胞集団も包含する。
【0041】
UPCが特定の細胞腫類に分化しているかどうかの決定は、これらの細胞種類に特異的なマーカーの検出によって行うことができる。たとえば、尿路上皮細胞は、たとえば、ウロプラキン、サイトケラチン7、サイトケラチン13、サイトケラチン17、およびサイトケラチン19、およびサイトケラチン20などの1つ以上の尿路上皮の特異的マーカーの存在によって同定することができ、一方、平滑筋細胞は、たとえば、α平滑筋アクチン、デスミン、カルポニン、およびミオシンなどの1つ以上の平滑筋特異的マーカーの存在によって同定することができる。細胞種類特異的マーカーの発現は、あらゆる好適な従来方法を使用して測定することができ、そのような方法としては、たとえば、免疫組織化学および/またはウエスタンブロット解析が挙げられる。
【0042】
さらに、所望であれば、本発明の細胞は使用前に凍結または凍結保存することができ、その後解凍して生存形態にすることができる。細胞の凍結または凍結保存(後に生存形態に戻すための)方法は当分野において周知である。たとえば、細胞の凍結保存は、増殖培地と、水が氷の結晶を形成するのを防止する他の液体との混合物中で凍結させ、続いて液体窒素温度(たとえば約−80〜約−196℃)で細胞を保管することを含むことができる。たとえば、米国特許第6,783,964号明細書を参照されたい。
【0043】
<治療方法>
本明細書に開示される方法を使用して治療できる疾患は、尿路組織の増加または置換を含むが、これらに限定されるものではない。本明細書において使用される場合、「治療」は、患者、たとえば、疾患に苦しむまたは疾患の発症の危険性のある患者に利益を付与するあらゆる種類の治療を意味する。治療としては、患者の状態を改善する(たとえば1つ以上の症候の軽減)、発病または疾患の進行を遅らせることなどの目的で行われる行為または控えられる行為が挙げられる。
【0044】
本発明のある実施形態による尿中前駆細胞は、種々の機能性細胞型に分化できることが示され、本発明の尿中前駆細胞は、たとえば、膀胱外反症、膀胱容量不足、膀胱の部分または全摘出術後の膀胱の再掲、外傷により損傷した膀胱、腎臓、または尿管の修復などの尿路の疾患および症状の治療において用途が見いだされている。ある実施形態による治療は、先天性異常、癌、外傷、放射線、感染、医原性損傷、神経損傷、またはその他の原因などの尿路の疾患および症状が関与している。一般に、治療は、尿路機能の修正、尿路機能の改善、あるいは尿路の疾患または症状を防止または治療するための、損傷した尿路細胞または全組織または器官の再建、修復、増大、または置換を伴う。これに関して、尿中前駆細胞は、尿管、膀胱、尿道、腎盂、腎臓、骨、軟骨、筋肉、皮膚などの尿路構造の組織工学に使用することができる。
【0045】
さらに、尿中前駆細胞は、下部尿路の薬理学、および尿路疾患の診断において用途を見いだすこともできる。本発明のある実施形態による細胞は、血尿または尿路系の腫瘍、たとえば、膀胱、腎盂、腎臓、尿管、前立腺、および尿道の腫瘍、腎性糖尿病、尿細管ネクローシス、急性または慢性腎不全、ならびに腎移植後の腎拒絶反応などの腎疾患、ならびに間質膀胱炎、神経因性膀胱、照射膀胱(irradiated bladder)、ならびに膀胱尿管逆流または逆流性腎症などの他の疾患などの疾患の診断に使用することができる。たとえば、米国特許第5,733,739号明細書、第5,325,169号明細書、および第5,741,648号明細書を参照されたい。
【0046】
本発明によると、ある実施形態では治療は、たとえば、未分化、分化、またはそれらの混合物の尿中前駆細胞の有効量を、治療を必要とする被験体に投与することによって、疾患の少なくとも1つの徴候または症状、あるいは被験体の状態を回復または緩和することを含む。
【0047】
組織が埋め込まれる用途において、ある実施形態では細胞は、組織が中に埋め込まれる被験体と同じ種である。ある実施形態では細胞は、自己(すなわち、治療される被験体に由来する)、同遺伝子系(すなわち、遺伝学的には同じであるが異なる被験体、たとえば一卵性双生児由来)、同種異系(すなわち、同じ種の遺伝学的には異なる個体に由来)、または異種(すなわち、異なる種の個体に由来)によるものである。
【0048】
ある実施形態では、本発明の細胞が被験体の治療に使用される場合、細胞から、薬学的に許容される賦形剤または担体と混合された細胞を含有する医薬組成物が配合される。このような製剤は、当分野において周知の技術を使用して調製することができる。たとえば、米国特許出願公開第2003/0180289号明細書、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Alfonso R.Gennaro,editor,20th ed,Lippincott Williams & Wilkins:Philadelphia,PA,2000を参照されたい。本発明による医薬製剤の製造においては、典型的には細胞は、特に許容される担体と混合される。当然ながら担体は、製剤中のすべての他の成分に対して適合性となる意味において許容されるべきであり、患者に対して有害となるべきではない。担体は、固体または液体、またはその両方(たとえばヒドロゲル)であってよく、本発明の細胞とともに単位用量製剤として配合することができる。一実施形態では、本発明の細胞は、細胞の凝集を軽減するために担体中の懸濁液として提供される。
【0049】
別の一実施形態では、本発明の細胞は、カプセル化された形態で配合される(たとえば、インビボで細胞の生存能を維持するために栄養素および酸素が透過性であるカプセル中に封入される)。細胞を透過性カプセル中に封入するための材料および方法は周知であり、たとえば米国特許第6,783,964号明細書に記載されている。たとえば、細胞は、半透膜で取り囲まれた多糖類ガムの内部細胞含有コアを含む50または100μm〜1または2mmの直径のマイクロカプセル、アルギネートをポリリジン、ポリオルニチン、およびそれらの組み合わせと共に含むマイクロカプセルの中に封入することができる。他の好適なカプセル化材料としては、米国特許第5,702,444号明細書に記載のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
特定の一実施形態では、本発明の細胞は、生分解性の足場またはマトリックスとともに投与される。膀胱細胞は、インビトロでの共培養をコラーゲンに富んだ足場上で行った後、平滑筋細胞の表面上に増殖する尿路上皮の明確な層を有する正常な膀胱構造を形成することが可能であることが示されている(Zhang,et al.(2000)J.Urol.164:928)。さらに、膀胱細胞を播種した足場構造物は、部分膀胱瘻造設術モデル中の組織再構築の再生過程に用いられることが示されている(Zhang,et al.(2005)BJU Int.96:1120)。したがって、前駆細胞の実施形態は、膀胱を完全に再生するための後のインビボ埋め込みのための、インビトロの細胞工学的足場構造物において用途が見いだされる。
【0051】
生分解性の足場またはマトリックスは、生物学的機能に対して毒性および障害作用を有さないあらゆる物質であり、宿主の構成成分になることができる。望ましくは、足場またはマトリックスは、マトリックスの孔隙上および孔隙中の両方に細胞が堆積できるようするため多孔質であり、ある実施形態では成形される。このような製剤は、少なくとも1つの細胞集団を生分解性足場に供給して、細胞集団を足場の上および/または中に播種することによって調製される。ある実施形態では、次に、播種された足場が被移植者である被験体の体内に埋め込まれ、そこで独立に層状に組織化した細胞集団が、新しい器官または組織構造の形成を促進する。
【0052】
使用可能な生分解性足場としては、たとえば、天然または合成のポリマー、たとえば、コラーゲン(たとえば、SISおよびBSM)、ポリ(ラクテート酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリオルトエステル、およびポリ無水物などのポリ(αエステル)、ならびにそれらのコポリマーなどが挙げられ、制御された速度で加水分解されることで分解することができ、再吸収される。他の好適な材料の例は米国特許第7,186,554号明細書中に提供されている。
【0053】
生分解性足場は、たとえば、溶媒キャスティング、圧縮成形、フィラメント延伸、メッシュ化、リーチング、ウィービング、およびコーティングなどの方法を使用して「成形」することができる。溶媒キャスティングでは、塩化メチレンなどの適切な溶媒中の1種類以上のポリマーの溶液を分岐パターンの凹凸構造としてキャストする。溶媒を蒸発させた後、薄いフィルムが得られる。圧縮成形では、ポリマーを最大30,000ポンド/平方インチの圧力で適切なパターンにプレス成形する。フィラメント延伸は溶融ポリマーから延伸することを含み、メッシュ化は繊維を圧縮してフェルト状材料にすることによってメッシュを形成することを含む。リーチングでは、2種類の材料を含有する溶液を最終形態に類似した形状に広げる。次に溶媒を使用して一方の成分を溶解させて除去することで、孔隙が形成される(米国特許第5,514,378号明細書参照)。核形成では、再建尿路上皮移植片の形状の薄いフィルムを、放射性核分裂生成物に曝露して、放射線で損傷した材料のトラックを形成する。次にこのポリカーボネートシートを酸または塩基でエッチングし、放射線で損傷した材料のトラックを孔隙に変える。最後に、レーザーを使用して、多くの材料が通過する個別の孔の成形および焼失を行うことで、均一な孔径を有する再建尿路上皮移植片構造を形成することができる。これらの複数の成形技術は組み合わせて使用することができる。たとえば、生分解性マトリックスを織成し、圧縮成形し、接着剤を使用することができる。さらに、異なる方法で成形した異なるポリマー材料を互いに接合して複合構造を形成することができる。この複合構造は層状構造であってよい。たとえば、1つのポリマーマトリックスを1つ以上のポリマーマトリックスに取り付けて多層ポリマーマトリックス構造を形成することができる。この取り付けは、液体ポリマーを使用した接着、または縫合によって行うことができる。さらに、このポリマーマトリックスは、中実ブロックとして形成し、レーザーまたはその他の標準的な機械加工技術によって所望の最終形態に成形することができる。レーザー成形は、レーザーを使用して材料を除去する方法を意味する。
【0054】
生分解性足場は、たとえば埋め込み後の新組織の形成を促進するために、埋め込みの前(細胞を播種する前または後)に添加剤または薬物で処理することができる。したがって、たとえば、増殖因子、サイトカイン、細胞外マトリックス成分、および/またはその他の生物活性材料を生分解性足場に加えて、移植片の治癒および新組織の形成を促進することができる。このような添加剤は、一般に、適切な新組織が移植された器官または組織中に形成されるように、再建または拡大される組織または器官により選択される。骨の治癒を促進するために使用されるこのような添加剤の例としては、たとえば、Kirker−Head(1995)Vet.Surg.24(5):408−19が参照される。
【0055】
生分解性足場上への細胞の播種は、標準的な方法により行うことができる。たとえば、組織修復に使用されるポリマー基質上への細胞の播種が報告されている(たとえば、参照により本明細書に組み入れられるAtalaに付与された米国特許第6,171,344号明細書、Atala,et al.(1992)J.Urol.148:658−62、Atala,et al.(1993)J.Urol.150:608−12)。例として、培養中で増殖した細胞は、トリプシン処理により細胞を分離することができ、分離した細胞を生分解性足場に播種することができる。あるいは、細胞培養で得られた細胞は培養皿から細胞層として持ち上げることができ、その細胞層は、細胞をあらかじめ分離することなく、生分解性足場上に直接播種することができる。
【0056】
生分解性足場上に播種される細胞の密度は変化させることができる。たとえば、ある実施形態では細胞密度が高いと、播種された細胞による組織形成がより促進され、密度が低いと宿主から移植片に細胞が浸潤することによって比較的大きな組織を形成することができる。生分解性足場および細胞に依存して他の播種技術を使用することもできる。たとえば、減圧濾過によって細胞を生分解性足場に適用することができる。細胞種類の選別、および生分解性足場上への細胞の播種は、本明細書の教示を考慮すれば、当業者の日常的な作業となる。
【0057】
さらなる実施形態では、本発明の製剤は、非経口投与(たとえば、皮下、筋肉内、皮内、静脈内、動脈内、腹腔内への注射)または埋め込みのための製剤を含む。ある実施形態では、投与は、単純な注射、または腎動脈などの好適な血管中に配置されたカテーテルによる注入のいずれかによって、血管内に行われる。別の一実施形態では、投与は、前述のように増大すべき器官または組織への移植片として行われる。
【0058】
非経口投与に適した本発明の製剤としては、好ましくは水性である滅菌液体、細胞注入組成物が挙げられ、これらの製剤は、意図する受容者の血液と等張にすることができる。これらの製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、および意図する受容者の血液と等張にするための溶質を含有することもできる。これらの製剤は、投与される細胞は別にすると、細菌およびウイルスなどの汚染微生物が存在しないという意味で滅菌されている。本発明の製剤は、注入可能(synringeable)かつ注射可能な形態であってよいし、たとえば被験体の膀胱、尿道、尿管、または腎臓の中に外科的に移植するのに適した形態であってよいし、被験体への投与に適した他のあらゆる形態であってもよい。
【0059】
ある実施形態によると、被験体に投与される細胞は、カプセル化などの他のステップの存在または非存在、あるいは細胞の免疫抑制療法の実施に依存して、治療される被験体に対して同系(すなわち、同遺伝子系および自己などの同族)、同種異系(すなわち同種)、または異種(すなわち、異種性)であってよい。
【0060】
細胞の治療有効用量は、被験体間である程度変動し、被験体の年齢、体重、および症状、ならびに送達経路などの要因に依存する。このような用量は、当業者に公知の手順により決定することができる。一般に、ある実施形態では、被験体当たり1×105、1×106、または5×106から1×107、1×108、または1×109細胞以上の用量を1回で投与したり、数回に分割して投与したりすることができる。別の実施形態では、被験体の体重1kg当たり1〜100×108細胞の値の用量を1回で投与したり、数回に分割して投与したりすることができる。当然ながら、必要であれば追跡投与を行うことができる。
【0061】
所望または必要である場合には、被験体は、公知の技術により、ラパマイシン、アザチオプリン、コルチコステロイド、シクロスポリン、および/またはFK506などの、投与される細胞の移植片拒絶反応を抑制する物質を投与することもできる。たとえば、米国特許第5,461,058号明細書、第5,403,833号明細書、および第5,100,899号、ならびに米国特許第6,455,518号明細書、第6,346,243号明細書、および第5,321,043号明細書を参照されたい。
【0062】
さらに、本発明の細胞は、播種の前に遺伝物質(たとえば特異的遺伝子)をトランスフェクトすることができる。有用な遺伝物質は、たとえば宿主の免疫応答を軽減または除去することができる遺伝的配列であってよい。たとえば、クラスIおよびクラスII組織適合抗原などの細胞表面抗原の発現を抑制することができる。これによって、移植細胞が宿主によって拒絶される可能性を減少させることができる。
【0063】
<尿中前駆細胞を収集するためのキット>
尿サンプルを収集するためのキットも本明細書において提供される。好ましくは本発明によるキットは、遠隔地(たとえば好適な実験施設)への輸送中に尿中前駆細胞の生存能を維持する機能を果たす。ある実施形態では、キットは、好適な培地(たとえば、1〜15mLの、ある実施形態では5mLの、ウシ胎児血清などの血清)を含有する管を含む。この培地は、使用前に解凍するように、凍結させて提供することができる。別の実施形態では、キットは、抗生物質(たとえば、1〜15mLの、ある実施形態では5mLの、1%ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有する溶液)を含有する管を含む。抗生物質は粉末形態であってもよいし、水溶液であってもよい(場合により、使用前に解凍するように、凍結させて提供される)。
【0064】
キットは、尿サンプル(たとえば、好適な容積、たとえば100〜1,000mL、ある実施形態では500mLの3つの滅菌プラスチック瓶)を収集するための好適な容器(たとえば、瓶)を含むこともできる。キットは、アルコール消毒綿を含むこともできる。ある実施形態ではアイスバック、冷パックなどの冷却手段が、尿をおよそ4℃に冷却して維持するために含まれる(たとえば、3インチ×2インク×0.5インチの寸法の2つのアイスバッグ)。さらなる実施形態は、上記の構成品を維持することが可能な容器(たとえば、高さ6インチ×幅6インチ×長さ7インチの寸法のプラスチック製の箱)を含み、場合により使用説明書も含む。
【0065】
本発明を以下の非限定的実施例により、さらに詳細に説明する。
〔実施例1〕
【0066】
<尿からの前駆細胞の分離および特性決定>
58のヒト尿サンプルを、2〜50歳の範囲の年齢の22名の男性および1名の女性の提供者(15名の健常人および8名の患者)から収集した。すべての培養中で細菌汚染は見られなかった。尿サンプルを4℃、1500RPMで5分間遠心分離し、滅菌PBSで2回洗浄した。段階希釈法を使用して、細胞を平均0.5細胞/ウェルで、前駆細胞培地を有するマルチウェルプレート中に入れた。この前駆細胞培地は、3/4のDMEM、1/4のハムF12、10%のFBS、0.4mg/mlのヒドロコルチゾン、10−10Mのクロン・トキシン、5mg/mlインスリン、1.2mg/mlのアデニン、2.5mg/mlのトランスフェリン+0.136mg/mlの3,39,5−トリヨード−L−チロニン、10mg/mlのEGF、および1%のペニシリン−ストレプトマイシンを含有する(Zhang et al.,In vitro Cell Dev.Biol.−Animal 37:419,2001)。1種類の細胞を同定し、50%を超える集密度まで増殖させた。次に細胞を継代培養し、6cmの培養皿に移し、増殖させた。
【0067】
増殖した初代細胞が、尿サンプルから開始した培養の約39%で得られた。コロニー中の平均細胞数は、2日目で健常人で4.5/100ml尿であった(表1および図1)。細胞は小さくより明るい外観の細胞であり、長期間の観察による本発明者らの経験に基づくと、膀胱粘膜の基層由来のものがほとんどであると思われ、比較的未分化であった。各クローン系で尿細胞の高収率が一貫して実現された。尿細胞の細胞倍増期間は、前駆細胞培地およびKSFM(1:1)の複合培地中で31.3時間であった。尿細胞が1つの細胞から6cmの培養皿中で集密的となるまで10〜12日を要した(図2)。
【0068】
【表1】
【0069】
尿細胞の分子的および細胞的特徴を示すために、前駆細胞特異的および分化細胞特異的マーカーの発現を分析した。継代1、3、および4の尿細胞すべては、C−kit、SSEA−4、CD105+、CD73+、CD90+、CD133+、およびCD44+を含む前駆細胞特異的表面マーカーに関して陽性染色を示し、CD31−、CD34−、およびCD45−に関しては陰性染色を示した(表2およびく)。CD44は、膀胱基底細胞の細胞表面マーカーであると考えられている(Desai,et al.(2000)Mod.Pathol.13:1315)。基底細胞は自己再生能を有し、増殖して中間細胞および表皮細胞に分化することができ、基底細胞は尿路上皮前駆細胞または幹細胞と呼ばれる(Staack,et al.(2005)Differentiation 73:121)。尿中の基底細胞は、CD44によって、および基底細胞および中間細胞の細胞内タンパク質マーカーであるサイトケラチン13を使用した免疫蛍光法によって確認した(Romih,et al.(2005)Cell Tissue Res.320:259)。
【0070】
【表2】
【0071】
前駆細胞および成熟細胞の混合細胞集団が尿中に存在すると思われる。尿は尿路上皮前駆細胞および平滑筋前駆細胞を含有することが分かった。これらの細胞は前述のCDマーカーで確認した。さらに、尿路上皮前駆細胞マーカーおよび平滑筋細胞マーカーを、これらの細胞をさらに特徴付けるために使用した。尿路上皮前駆細胞特異的マーカーに対するモノクローナル抗体のウロプラキンIaならびにサイトケラチン7、13、17、および19を、70%の細胞集密度において、各抗体について以下の希釈で使用した。抗サイトケラチン7、1:200、抗サイトケラチン13、1:100、抗サイトケラチン17、1:100、および抗サイトケラチン19、1:100。ウロプラキンおよび上記サイトケラチンの尿中前駆細胞中での発現を測定し、通常の生検組織から得られた培養尿路上皮中のマーカーの発現と比較し(Zhang,et al.(2003)Adv.Exp.Med.Biol.539:907、Ludwikowski,et al.(1999)BJU Int.84:507、Sugasi,et al.(2000)J.Urol.164:951、Zhang,et al.(2001)In vitro Cell Dev.Biol.Anim.37:419)、正常ヒト膀胱粘膜とも比較した(Southgate et al.,Lab Investigation(1994)71:583)。免疫蛍光の程度は、陰性(−)から強度に陽性(++++)までの範囲で規定した。組織生検から得た培養尿路上皮と同様に、尿細胞は、ウロプラキンIa、ならびにサイトケラチン(CK)7、13、17、および19を発現した(図3および表3)。
【0072】
【表3】
【0073】
さらに、免疫蛍光法によって、体内の膀胱細胞を、平滑筋細胞特異的マーカーのα平滑筋アクチン(ASMA)、デスミン、ミオシン、およびカルポニンを発現する尿から得た細胞と比較した(図4および表4)。
【0074】
【表4】
〔実施例3〕
【0075】
<尿中前駆細胞の細胞収縮性およびタイトジャンクション>
尿由来の平滑筋細胞の機能特性は、コラーゲン格子を使用して細胞収縮性を求めることによって確認される。コラーゲン格子収縮アッセイ方法は、当分野において公知である(Kropp,et al.(1999)J.Urol.162:1779)。アゴニストに応答した収縮性は、格子開放の直前にアゴニストを無血清培地に加えることを除けば同様の方法で行われる。試験されるアゴニストとしてはCaイオノフォアA23187(1025M)およびKClが挙げられる。
【0076】
尿由来の尿路上皮前駆細胞のタイトジャンクションを解析する。尿路上皮のバリア機能は、頂端膜プラークと細胞間タイトジャンクションによって維持される。尿中前駆細胞中のタイトジャンクション成分は、電気顕微鏡検査(electric microscopy)等の従来方法を使用して調べられる(Zhang,et al.(2003)Adv.Exp.Med.Biol.539:907、Ludwikowski,et al.(1999)BJU Int.84:507、Sugasi,et al.(2000)J.Urol.164:951、Zhang,et al.(2001)In vitro Cell Dev.Biol.Anim.37:419、Cross,et al.(2005)Am.J.Physiol.Renal Physiol.289:F459)。
〔実施例4〕
【0077】
<尿中前駆細胞の平滑筋細胞への分化>
尿中前駆細胞の平滑筋細胞への分化に対する、上皮−間質細胞相互作用または細胞間相互作用の影響を調べるために(Staack,et al.(2005)Differentiation 73:121、DiSandro,et al.(1998)J.Urol.160:1040)、2つの共培養方法を使用する。その第1は、4.5μmのサイズ排除を有するトランスウェル(transwell)装置を使用する間接共培養である。尿平滑筋前駆細胞を、上部チャンバーのウェル上に入れ、組織生検で得た膀胱平滑筋細胞および/または尿路上皮をトランスウェルユニットの底部ウェル上に播種する(Luk,et al.(2005)J.Immunol.Methods 305:39、Gerstenfeld,et al.(2003)Connect Tissue Res.44(suppl 1):85)。第2の方法は、直接共培養法であり、0.4μmの孔径のトランスウェルインサートを使用して行われる。このトランスウェルは、基底膜として使用され、その下面上で尿中前駆細胞が培養され、一方、反対側の上面上で正常ヒト膀胱尿路上皮および平滑筋細胞が培養される(Le Visage,et al.92004)Tissue Eng.10:1426)。続いて尿細胞は、表現型の出現、分子解析、および平滑筋タンパク質発現免疫組織化学的染色によって、細胞播種から3、7、14、および28日後に評価される。
〔実施例5〕
【0078】
<尿中前駆細胞を播種した足場>
尿中前駆細胞の膀胱粘膜下膜(BSM)および小腸粘膜下組織(SIS)上への細胞付着性、増殖、および分化を評価して、臨床応用における細胞−マトリックス相互作用を求めた。インビトロでの細胞播種構造物では、尿中前駆細胞由来の尿路上皮のBSM粘膜側への播種、尿中前駆細胞由来の平滑筋細胞の漿膜上への播種を混合培地(KSFM:DMEM、1:1)の存在下で行った。
【0079】
続いて、播種したマトリックスを無胸腺マウスの皮下に埋め込んだ。埋め込まれた培養組織を取り出し、組織科学(H&Eおよびトリクロム(Trichrom))、免疫組織化学(サイトケラチンおよび平滑筋細胞特異的マーカー)、ウエスタンブロット解析、およびヒトX/Y染色体検出アッセイ(FISH)により評価した。組織化学的および免疫組織化学的分析では、標準手順を使用して、培養組織を10%の中性緩衝ホルマリン中で固定し、脱水し、パラフィン中に埋め込んだ。5mmの断片を切り取り、標本にした。通常のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色およびマッソン(Masson)三色染色を行った。免疫組織化学的染色も、平滑筋細胞タンパク質に対するモノクローナル抗体の、α平滑筋アクチン(1:1000で希釈)、デスミン(1:20)、カルポニン(1:50)、およびミオシン(1:100)、ならびに尿路上皮細胞特異的タンパク質に対するモノクローナル抗体の、サイトケラチンAE1/AE3(1:100の抗体希釈)を使用して行った(Zhang,et al.(2005)BJU Int.96:1120、Zhang,et al.(2003)Adv.Exp.Med.Biol.539:907、Zhang,et al.(2000)J.Urol.164:928、Zhang,et al.(2006)BJU Int.98:1100、Zhang,et al.(2004)Tissue Eng.10:181、Zhang,et al.(2001)In vitro Cell Dev.Biol.Anim.37:419)。
【0080】
ウエスタンブロット解析用のタンパク質は、公知の方法により溶解緩衝液を使用して、細胞、または細胞を播種した足場組織を溶解させることによって分離した(Zhang,et al.(2005)BJU Int.96:1120、Lin,et al.(2004)J.Urol.171:1348)。マウス抗ヒトα平滑筋アクチン、デスミン、ミオシン、およびAE1/AE3を一次抗体として使用し、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgGを二次抗体として使用した。タンパク質バンドの存在を市販の高感度ケミルミネッセンスアッセイキットによって検出した。
【0081】
移植組織中、尿中前駆細胞は、埋め込みから1か月後にLacZで染色された。埋め込まれた細胞はヒトX/Y染色体によっても確認した。好都合には、尿中前駆細胞は、インビボで、多層尿路上皮細胞および平滑筋様組織構造を足場中に形成した(図5)。さらに、埋め込みから3か月後に移植組織中に腫瘍は見られなかった。
【0082】
したがって、これらのデータは、尿から得られた細胞が、膀胱組織工学の供給源として機能できるというインビトロおよびインビボでの証拠となっている。尿中前駆細胞は、容易に利用可能であり、インビトロで増殖して尿路上皮および平滑筋に分化することが示されている。尿中前駆細胞由来の膀胱細胞は、それぞれ尿路上皮特異的タンパク質および平滑筋特異的タンパク質の発現などの尿路上皮様および平滑筋様の表現型を示す。コラーゲンマトリックスは、尿中前駆細胞の三次元増殖を補助し、このことは膀胱再建に対する基本的な要求である。インビボで尿中前駆細胞を播種した足場によって、膀胱再建の費用対効果の大きい方法が得られる。
【0083】
以上は本発明の例であり、本発明を限定するものと解釈すべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲により規定され、請求項の同等物も本発明の範囲に含まれる。
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2007年5月21日に出願された米国仮特許出願第60/939,247号明細書、および2007年6月11日に出願された米国仮特許出願第60/943,215号明細書の利益を主張し、これら各文献の開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は概して、尿由来の細胞の分離、分離された細胞、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
再生医療は、身体の外傷組織の再生に焦点を当てた組織工学の応用分野の1つである。再生医療の用途としては、膀胱などの器官の再建または置換が挙げられる。
【0004】
多くの疾患および外傷により、膀胱の損傷または損失が生じることがあり、その器官の修復または置換が必要となる。膀胱外反症、後部尿道弁、または脊髄髄膜瘤(一般には二分脊椎として知られている)などの先天性異常を有する小児は、高圧膀胱および過緊張低コンプライアンス膀胱を発症することがある。成人集団では、米国において、膀胱がんは、男性では悪性腫瘍と通常診断されるものの第4位であり、女性では悪性腫瘍と通常診断されるものの第9位である。
【0005】
膀胱の基本的な機能は、低圧下で尿をたくわえることができ意志コントロール下で空にすることができる、容量の大きな貯留槽を提供することである。膀胱機能を失ったことに苦しむ患者は、生活の質が劇的に悪化し、水腎症および腎不全になる危険性がある。
【0006】
膀胱再建、または膀胱形成術は、薬物療法が不十分な場合に指示されることが多い。現在、膀胱拡大術が、腸の開放セグメント(detubularized segment)を膀胱上に配置することによって通常行われている。腸セグメントまたは胃弁を泌尿器再建に使用することは有効であるが、いくつかの問題が発生し得る。有害な副作用としては、感染、腸閉塞、粘膜産生、電解質異常、穿孔、および発癌性が挙げられる。したがって、組織工学的再生による膀胱再建のより臨床的に適用可能な方法が必要とされている。
【0007】
組織工学の発展によって、膀胱再生は、初代培養細胞を播種した生分解性膜を使用することによって可能となることが示されている((Kropp,et al.(1996)J.Urol.156:599)、(Atala,et al.(1992)J.Urol.148:658)、(Oberpenning,et al.(1999)Nat.Biotechnol.17:149))。この概念の実現性は、ヒトにおいてすでに示され、膀胱再生および膀胱容量の拡大が実施された(Atala,et al.(2006)The Lancet 367:1241−46)。
【0008】
膀胱再生を首尾よく実現するために使用されている生体材料の足場としては、無細胞コラーゲンマトリックスおよび合成ポリマーが挙げられる。コラーゲンマトリックスとしては、ブタ膀胱粘膜下膜(BSM)および小腸粘膜下組織(SIS)が挙げられ、これらはどちらも、正常な細胞増殖、分化、および機能に必要な多数の天然成分、たとえばコラーゲン、糖タンパク質、プロテオグリカン、および機能性増殖因子などを含有する((Hodde,et al.(2001)Endothelium 8:11)、(Voytik−Harbin,et al.(1997)J.Cell.Biochem.67:478))。合成ポリマーの足場としては、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、および乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)が挙げられる((Oberpenning,et al.(1999)Nat.Biotechnol.17:149)、(Atala,et al.(1993)J.Urol.150:608))。
【0009】
自家膀胱細胞は、癌を有さない患者における組織工学的構造物のための細胞源として最も一般的に使用されている。生体材料の足場上に播種された患者自身の培養細胞は、組織を再生するための骨組みとして機能することができる。しかし、膀胱細胞を得るためには、侵襲性組織生検手順が細胞採取のために行われ、これは、医療費を増加させ、出血、感染、ならびに尿道または膀胱の外傷などの予測される合併症とも関連している。さらに、膀胱生検により得られた細胞は、生検の前または最中に粘膜組織が破壊されることが原因で、場合により増殖しないことがある(Zhang & Frey(2003)Adv.Exp.Med.Biol.539:907)。
【0010】
胚性幹細胞、胎性幹細胞、および成体幹細胞などの別の細胞源が、泌尿器再建のために調査されている。幹細胞は、自己再生し、最終分化しないので、様々な種類の細胞を産生することができる。ヒト胚性幹細胞によって、組織工学の目標に対して期待が生じたが((Frimberger,et al.(2005)Urology 65:827)、(Lakshmanan,et al.(2005)Urology 65:821))、免疫適合性、腫瘍形成、および倫理の問題が残る。胎性幹細胞または成体幹細胞は、宿主組織中に非常に少ない数でのみ検出され、培養中に十分に数が増えないことがあり、より限定された分化能しか有しないことがある(Vogel(2001)Science 292:1820)。したがって、組織工学における幹細胞の現在の臨床用途は限定され得る。
【0011】
生検による自己細胞の収穫に対するより好ましい代案が、特に生検のために自己細胞を採取できない場合に、泌尿器組織工学および細胞療法のために必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
尿サンプルを提供するステップと、次に尿中前駆細胞を該尿サンプルから分離するステップとを含む、尿中前駆細胞(UPC)の培養を生産する方法が、本明細書において提供される。ある実施形態では、該分離ステップは、(a)細胞を尿サンプルから収集して粗細胞サンプルを得るステップと、(b)尿中前駆細胞を該粗細胞サンプルから選別するステップとによって行われる。ある実施形態では該収集ステップは、該尿サンプルの遠心分離によって行われる。
【0013】
ある実施形態では、選別は、該細胞を、細胞選択培地を含む組成物中に配置することで行われる。ある実施形態では、選別は、形態学に基づいて行われる。ある実施形態では、選別は、尿中前駆細胞に特異的なマーカー、たとえば、C−kit(CD117)、SSEA−4、CD105、CD73、CD90、CD133、および/またはCD44を選別することによって行われる。ある実施形態では、尿中前駆細胞は、哺乳動物被験体(たとえばヒト被験者)に由来する。本明細書に開示されるいずれかの方法によって産生された尿中前駆細胞は、本発明の別の一態様となる。
【0014】
c−kit陽性であり、尿路上皮、平滑筋、内皮、および間質細胞からなる群より選択される2つ以上の系譜に分化することが可能な、分離された尿中前駆細胞も提供される。
【0015】
UPCを提供するステップと、UPCを分化させるステップと、分化させた細胞を生分解性組織足場上に播種するステップとを含む、細胞を組織足場上に播種する方法が提供される。組織足場は、コラーゲンマトリックスおよび/または合成ポリマー(たとえばポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、または乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)など)を含むことができる。
【0016】
膀胱組織基質を提供するステップであって、該基質が分化したUPCを含むステップと、基質を患者に移植するステップとを含む、治療を必要とする被験体の治療方法が提供される。基質は、コラーゲンマトリックスおよび/または合成ポリマー(たとえばポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、または乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)など)を含むことができる。
【0017】
尿サンプルの輸送に好適な容器と、培地と、1種類以上の抗生物質と、該容器、培地、および抗生物質を保持するための包装材料と、場合により使用説明書とを含むことができるキットが提供される。
【0018】
本発明のさらなる一態様は、前述の治療方法を行うための薬物を調製するための前述の細胞の使用である。
【0019】
以上およびその他の本発明の目的および態様は、図面および以下に示す明細書においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】尿中前駆細胞(UPC)分化の提案される経路の図である。
【図2】インビトロで培養した尿由来の前駆細胞の顕微鏡画像。これらの細胞は支持細胞層(feeding layer cell)を使用せずに増殖可能である。
【図3】尿細胞培養の細胞増殖曲線。細胞は、1つの細胞が6cmの培養皿中にコンフルエントになるまで10〜12日で増殖した。
【図4】蛍光標示式細胞分取器(FACS)のグラフが、CD44、105、73、90、および133などの前駆細胞マーカーが尿から分離した細胞中に存在することを示している。
【図5】膀胱生検により得られたヒト尿路上皮(A〜D)およびUPC(E〜H)のウロプラキン(UPIa)、サイトケラチン7、13、19、17、および核酸を使用した免疫蛍光染色の顕微鏡画像。
【図6】核酸および平滑筋に特異的なマーカーで二重染色したUPCの顕微鏡画像。これらの画像は、尿由来の平滑筋前駆細胞が、α平滑筋アクチン(ASMA)(A)、カルポニン(B)、デスミン(C)、およびミオシン(D)などの平滑筋タンパク質マーカーを発現することを示している。
【図7】インビボでの埋め込みから1か月後のUPC−膀胱粘膜下膜(BSM)およびUPC−小腸粘膜下組織(SIS)構造物の組織学的な特徴。A.SIS足場上で増殖したUPCのマッソン三色染色および検出。B.SISマトリックス上で同定したLacZ標識UPC。C.尿細胞を播種したBSM移植片のヘマトキシリン−エオシン(H&E)された部分。D.UPCのヒトX/Y染色体がBSMマトリックス中に示された。
【図8】培養尿細胞中に観察された4種類の細胞:内皮様細胞、平滑筋様細胞、上皮様細胞、および間質様細胞。
【図9】細胞を、FACSによって、細胞特異的マーカーAE1/AE3、デスミン、ビメンチン、およびエリスロポエチンの場合で分析した。
【図10】クローンUPCのギムザバンド核型が、継代6の正常染色体パターンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、前駆細胞、ならびに尿由来の前駆細胞の選別および培養を行う方法に関する。好都合には、尿中に見出された細胞は、組織生検を必要とせずに得ることができ、患者の不快感および起こり得る合併症をなくすことができる。
【0022】
記載のすべての米国特許参考文献の開示は、それらが本明細書における開示と一致している限りにおいて参照により本明細書に組み入れられる。本明細書における本発明の説明および添付の特許請求の範囲に使用される場合、文脈が明確に他のことを示しているのでなければ、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形も含むことを意図している。さらに、化合物の量、用量、時間、温度などの測定可能な値に言及する場合に本明細書において使用される用語「約」および「およそ」は、指定の量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはさらには0.1%のばらつきを含むことを意味する。または、本明細書において使用される場合、「および/または」および「/」は、関連する列挙品目1つ以上のあらゆるおよびすべての可能な組み合わせ、ならびに代替物(「または」)の中で解釈される場合はそれらの組み合わせがないことを意味し包含している。
【0023】
「尿中前駆細胞」または「UPC」は、多能性および増殖能の両方を有する、尿から収集および/または分離された細胞である。UPCは、1つ以上の系譜の中の様々な細胞種類を得ることができるという点で「多能性」である。たとえば、ある実施形態によるUPCは、以下の1つ以上への分化能を有する。膀胱尿路上皮細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、間質細胞、さらには骨細胞、筋細胞、上皮細胞、およびその他の種類の細胞および組織。従来の研究では、尿路上皮細胞が成熟軟骨細胞に分化できることが示されている(Fernandez−Conde,Bone(1996)18(3):289−91)。
【0024】
尿路内腔から脱落した細胞は、インビトロでの培養および維持が困難な古いまたは損傷した表層細胞であると一般に考えられている。尿から得られる少数の細胞は、支持細胞層上で急速に増殖することができる。しかし、支持細胞層は、通常は胚性マウス組織由来のものであり、それによって、ヒト細胞がマウスフィーダー細胞を使用して培養される場合、ウイルスが動物からヒトに移動することがある。この問題を回避するために、最近になって本発明者らは、支持細胞層を使用せずに尿由来の細胞を増殖させている。前駆細胞の性質を有し増殖能および多能性が依然として存在する細胞が得られた。
【0025】
本発明者らの研究は、尿中に前駆細胞および成熟細胞の混合細胞集団が存在することを示している。本明細書において開示される場合、尿は、尿路上皮前駆細胞および平滑筋前駆細胞、ならびに内皮前駆細胞および間質前駆細胞を含有する。尿中に見出される前駆細胞は、膀胱組織、腎組織などから生じることができる。ある実施形態では、腎由来の細胞に対してUPCの選択が生じる。これはたとえば、収集した細胞の継代によって行うことができ、その理由は、腎細胞は一般に継代によって生存しないと考えられているからである。ある実施形態ではUPCは、24〜48時間の間(たとえば31.3時間ごと)に十分に2倍まで増殖するので、これらの細胞を大量に増殖させることができる。さらなる実施形態では、UPCは腫瘍形成を誘導せず、ある実施形態ではUPCは、増殖または分化のためにフィーダー細胞を必要としない。
【0026】
「分離」は、細胞を、それらの自然環境以外の条件下に置くことを意味する。しかし、用語「分離」は、これらの細胞を後に他の細胞と組み合わせて使用したり他の細胞との混合物として使用したりすることを排除するものではない。
【0027】
「被験体」は一般にヒト被験者であり、「患者」が挙げられるが、これに限定されるものではない。被験体は、男性または女性であってよく、限定するものではないが白色人種、アフリカ系アメリカ人、アフリカ人、アジア人、ラテンアメリカ人、インド人などのあらゆる人種または民俗であってよい。被験体は、新生児、生後1か月以内の乳幼児、乳児、小児、青年、成人、および老人などのあらゆる年齢であってよい。
【0028】
被験体は、たとえば、獣医学および/または調合薬開発の目的のための動物被験体、特にイヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、齧歯類(たとえば、ラットおよびマウス)、ウサギ、霊長類(ヒトではない霊長類を含む)などの哺乳動物被験体を含むこともできる。
【0029】
<細胞の収集>
UPCは、尿を産生するヒトなどのあらゆる動物から収集することができる。本発明のある実施形態では、尿中前駆細胞は、哺乳動物の尿から収集される。たとえば、UPCは、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ、サル、またはヒトの尿から収集することができる。特定の実施形態では、尿中前駆細胞は、ヒトの尿から得られる。
【0030】
ある実施形態では、UPCは、自然排尿された新鮮尿、あるいは尿道カテーテルまたは膀胱洗浄により排出された尿のサンプルから収集される。尿サンプルは、4℃において1500RPMで5分間遠心分離して、上澄みを吸引し、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)等の好適な溶液で洗浄することができる。場合によりPBSは、それぞれ細菌の外傷および感染の可能性から保護するために、5%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有することができる。
【0031】
細胞を生体液から分離するための方法および装置のさらなる例は、たとえば、米国特許第5,912,116号明細書、米国特許出願公開第20040087017号明細書、米国特許出願公開第20020012953号明細書、および国際公開第2005/047529号パンフレットに見ることができる。
【0032】
<細胞の選別および増殖>
ある実施形態では、収集されたUPCは増殖する。「増殖」は、生存細胞数の増加を意味する。増殖は、たとえば、細胞の少なくとも一部が分裂してさらなる細胞を産生する1つ以上の細胞周期で細胞が成長することによって実現することができる。
【0033】
「初代培養」は、収集した細胞を培養容器中に播種した後に確立される最初の培養である。「継代」は、培養の第2の培養容器への移動または継代培養を意味し、通常は、機械的または酵素的脱凝集、再播種、および多くの場合は増殖速度に依存して2つ以上の娘培養への分割を含んでいる。集団が特定の遺伝子型または表現型で選別される場合、その培養は継代培養によって「細胞株」となり、すなわちその培養は均一であり望ましい特性を有する。「細胞系」の確立は、細胞株とは対照的に、特定の系譜に関連する場合もあるが、概して未分化の状態である。
【0034】
「選別」は、ある細胞種類を別の細胞腫類と区別するあらゆる独自の特性に基づくことができ、たとえば、密度、大きさ、独自のマーカー、独自の代謝経路、栄養要求性、タンパク質の発現、タンパク質の排出などに基づくことができる。たとえば、細胞は、遠心分離勾配を使用した密度および大きさに基づいて選別することができる。独自のマーカーは、蛍光標示式細胞分取(FACS)、免疫磁気ビーズ選別、磁気細胞分離法(MACS)、パニングなどを使用して選別することができる。独自の代謝経路および栄養要求性は、細胞が特に無血清環境中で増殖される培地の栄養成分の構成および/または量を変化させることによって利用することができる。タンパク質の発現および/または排出は、種々のアッセイ、たとえば、ELISAを使用して検出することができる。
【0035】
ある実施形態では、UPCは、前駆細胞培地などの前駆細胞の増殖を促進する特定の増殖環境中で尿から分離した細胞を提供することによって選別される。ある実施形態では、前駆細胞培地は、3/4のDMEM、1/4のハムF12、10%のFBS、0.4mg/mlのヒドロコルチゾン、10−10Mのクロン・トキシン(Chron Toxin)、5mg/mlのインスリン、1.2mg/mlのアデニン、2.5mg/mlのトランスフェリン+0.136mg/mlの3,39,5−トリヨード−L−チロニン、10mg/mlのEGF、および1%のペニシリン−ストレプトマイシンを含有する(Zhang et al.,In vitro Cell Dev.Biol.−Animal 37:419,2001)。さらなる実施形態では、分離されたUPCは、前駆細胞の選択的分化を促進する特定の増殖環境中で得られる。たとえば、ある実施形態では、ケラチノサイト無血清培地で増殖させたUPCは尿路上皮になる。さらなる実施形態では、10%ウシ胎児血清を有するDMEM中で増殖させたUPCは平滑筋様細胞になる。ある実施形態では、内皮様細胞は、20%のFBS、2mmol/lのL−グルタミン、EGF(5nl/ml)1%ピルビン酸ナトリウム、および1%のペニシリン−ストレプトマイシンを有するM199中で培養することができる。ある実施形態では、間質様細胞は、10%のFBS、2mmol/lのL−グルタミン、および1%のペニシリン−ストレプトマイシンを有するDMEM中で培養することができる。
【0036】
別の実施形態では、UPCは形態学によって選別される。たとえば、尿から分離された細胞は、1つの細胞に分離できる濃度に希釈して(たとえば、細胞は、マルチウェルプレート中約0.5細胞/ウェルの濃度に希釈することができる)、顕微鏡下で観察することができる。1種類の細胞が入ったウェルは、保持して増殖され、観察される形態学によって、たとえば、尿路上皮細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、および/または間質細胞に選別することができる(図6A参照)。
【0037】
本発明のある実施形態による尿中前駆細胞は、同定、選別、および/または分離を1つ以上の「マーカー」に基づいて行うことができる。このようなマーカーとしては、特異的な遺伝子発現、このような細胞の表面上に見出される抗原分子などが挙げられる。特定の実施形態では、尿中前駆細胞の選別および分離は、少なくとも1つの特異的マーカーの発現に基づいて行われる。ある実施形態では、UPCは、CD117(C−kit)、SSEA−4、CD105、CD73、CD90、CD133、およびCD44などの1つ以上のマーカーを有し、CD31、CD34、およびCD45の1つ以上のマーカーは測定可能な量では有さない。したがって、ある実施形態は、CD117、SSEA−4、CD105、CD73、CD90、CD133、およびCD44の1つ以上を発現し、および/またはCD31、CD34、およびCD45の1つ以上を発現しない尿中前駆細胞の選別および分離を含んでいる。たとえば、ある実施形態では本発明の尿中前駆細胞の同定、選別、および/または分離はCD117の発現に基づいて行われる。
【0038】
ある実施形態では、UPCは、本明細書において開示される場合、たとえば遠心分離によって細胞を尿サンプルから収集することによって、および/または細胞を好適な培地中または培地上に直接配置することによって、および/または前駆細胞特異的細胞マーカーの発現に基づいた尿中前駆細胞の選別および分離によって(たとえば、免疫組織化学またはウエスタンブロット解析によって)得ることができる。あるいは、尿中前駆細胞は、細胞の収集および選別を、たとえばフルオロフォア(たとえば、APC、フィコエリトリン、アロフィコシアニン類、フルオレセイン、テキサスレッド(TEXAS RED)など)に結合したマーカー特異的抗体(たとえば抗CD117抗体)を使用した蛍光標示式細胞分取、または磁性粒子に結合したマーカー特異的抗体を使用した磁気選別によって行うことで得ることができる。例として、細胞は、CD117受容体タンパク質の細胞外ドメイン(アミノ酸23〜322)に特異的に結合するウサギポリクローナル抗体とともに温置することができる(De Coppi,et al.(2007)Nat.Biotechnol.25:100)。CD117陽性細胞は、磁性ヤギ抗ウサギIgGマイクロビーズ(Goat Anti−Rabbit IgG MicroBead)とともに温置して精製し、Mini−MACS装置上で選別することができる。尿中前駆細胞は、マイクロビーズ(MicroBead)に直接結合したモノクローナル抗CD117抗体を使用して選別することもできる。固相に取り付け取り外すことを含むあらゆる好適な選別方法が本発明の範囲内と考えられる。
【0039】
本発明のある実施形態による尿中前駆細胞は、たとえば1:4希釈によって、慣例的に継代または継代培養することができ、約50〜70%の集密度まで増殖させることができる。尿中前駆細胞の分離された集団は、慣例的に増殖させることができ、通常の培養条件下、たとえば5%CO2で37℃の加湿雰囲気下に維持することができる。本発明の細胞はKFSM−前駆細胞培地(1:1)を有する複合培地中で増殖可能であるが(Zhang et al.,In vitro Cell Dev.Biol.−Animal 37:419,2001)、前駆細胞の所望の細胞への分化をより厳密に制御するためには、尿路上皮前駆細胞の場合はKSFMなどの単純な無血清培地中、あるいは平滑筋前駆細胞または間質前駆細胞の場合は、ダルベッコ最少必須培地(Dulbecco’s Minimal Essential Media)(DMEM)、ハンクス塩基性塩溶液(Hank’s Basic Salt Solution)(HBSS)、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)、RPMI、またはイスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s−modified Dulbecco’s medium)(IMDM)などの10%FBSを有する培地中で細胞を維持することが一般に好ましい。クローン尿中前駆細胞系は、96ウェルプレート中または24ウェルプレート中のいずれかでの従来の限界希釈法によって産生することもできる。細胞コロニーの形成後、細胞が取り出され、マルチウェルディッシュ中に移される。
【0040】
ある実施形態では、明確な細胞集団の増殖および分化を促進するために、増殖因子または他の分裂促進剤が培地中に含まれる。これに関して、本発明の特定の実施形態は、尿中前駆細胞の尿路上皮細胞、平滑筋細胞、間質細胞などへの増殖および分化を支援する選択培地を使用した尿中前駆細胞の培養を含んでいる。本文脈における場合の分化は、細胞が特定の形態学的または機能的性質を得る細胞の状態を意味する。例として、0.09mMのカルシウムを補充したケラチノサイト無血清培地(KSFM)中で尿中前駆細胞を増殖させると、これらの細胞は尿路上皮に分化する。同様に、血清、たとえば、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したDMEM中で培養した尿中前駆細胞は、平滑筋細胞の分化を促進する。したがって、本発明は、分化して、少なくとも1つの尿路上皮特異的マーカー、または少なくとも1つの平滑筋特異的マーカー、または少なくとも1つの他の組織特異的マーカー(たとえば、間質特異的)を発現する、尿中前駆細胞集団も包含する。
【0041】
UPCが特定の細胞腫類に分化しているかどうかの決定は、これらの細胞種類に特異的なマーカーの検出によって行うことができる。たとえば、尿路上皮細胞は、たとえば、ウロプラキン、サイトケラチン7、サイトケラチン13、サイトケラチン17、およびサイトケラチン19、およびサイトケラチン20などの1つ以上の尿路上皮の特異的マーカーの存在によって同定することができ、一方、平滑筋細胞は、たとえば、α平滑筋アクチン、デスミン、カルポニン、およびミオシンなどの1つ以上の平滑筋特異的マーカーの存在によって同定することができる。細胞種類特異的マーカーの発現は、あらゆる好適な従来方法を使用して測定することができ、そのような方法としては、たとえば、免疫組織化学および/またはウエスタンブロット解析が挙げられる。
【0042】
さらに、所望であれば、本発明の細胞は使用前に凍結または凍結保存することができ、その後解凍して生存形態にすることができる。細胞の凍結または凍結保存(後に生存形態に戻すための)方法は当分野において周知である。たとえば、細胞の凍結保存は、増殖培地と、水が氷の結晶を形成するのを防止する他の液体との混合物中で凍結させ、続いて液体窒素温度(たとえば約−80〜約−196℃)で細胞を保管することを含むことができる。たとえば、米国特許第6,783,964号明細書を参照されたい。
【0043】
<治療方法>
本明細書に開示される方法を使用して治療できる疾患は、尿路組織の増加または置換を含むが、これらに限定されるものではない。本明細書において使用される場合、「治療」は、患者、たとえば、疾患に苦しむまたは疾患の発症の危険性のある患者に利益を付与するあらゆる種類の治療を意味する。治療としては、患者の状態を改善する(たとえば1つ以上の症候の軽減)、発病または疾患の進行を遅らせることなどの目的で行われる行為または控えられる行為が挙げられる。
【0044】
本発明のある実施形態による尿中前駆細胞は、種々の機能性細胞型に分化できることが示され、本発明の尿中前駆細胞は、たとえば、膀胱外反症、膀胱容量不足、膀胱の部分または全摘出術後の膀胱の再掲、外傷により損傷した膀胱、腎臓、または尿管の修復などの尿路の疾患および症状の治療において用途が見いだされている。ある実施形態による治療は、先天性異常、癌、外傷、放射線、感染、医原性損傷、神経損傷、またはその他の原因などの尿路の疾患および症状が関与している。一般に、治療は、尿路機能の修正、尿路機能の改善、あるいは尿路の疾患または症状を防止または治療するための、損傷した尿路細胞または全組織または器官の再建、修復、増大、または置換を伴う。これに関して、尿中前駆細胞は、尿管、膀胱、尿道、腎盂、腎臓、骨、軟骨、筋肉、皮膚などの尿路構造の組織工学に使用することができる。
【0045】
さらに、尿中前駆細胞は、下部尿路の薬理学、および尿路疾患の診断において用途を見いだすこともできる。本発明のある実施形態による細胞は、血尿または尿路系の腫瘍、たとえば、膀胱、腎盂、腎臓、尿管、前立腺、および尿道の腫瘍、腎性糖尿病、尿細管ネクローシス、急性または慢性腎不全、ならびに腎移植後の腎拒絶反応などの腎疾患、ならびに間質膀胱炎、神経因性膀胱、照射膀胱(irradiated bladder)、ならびに膀胱尿管逆流または逆流性腎症などの他の疾患などの疾患の診断に使用することができる。たとえば、米国特許第5,733,739号明細書、第5,325,169号明細書、および第5,741,648号明細書を参照されたい。
【0046】
本発明によると、ある実施形態では治療は、たとえば、未分化、分化、またはそれらの混合物の尿中前駆細胞の有効量を、治療を必要とする被験体に投与することによって、疾患の少なくとも1つの徴候または症状、あるいは被験体の状態を回復または緩和することを含む。
【0047】
組織が埋め込まれる用途において、ある実施形態では細胞は、組織が中に埋め込まれる被験体と同じ種である。ある実施形態では細胞は、自己(すなわち、治療される被験体に由来する)、同遺伝子系(すなわち、遺伝学的には同じであるが異なる被験体、たとえば一卵性双生児由来)、同種異系(すなわち、同じ種の遺伝学的には異なる個体に由来)、または異種(すなわち、異なる種の個体に由来)によるものである。
【0048】
ある実施形態では、本発明の細胞が被験体の治療に使用される場合、細胞から、薬学的に許容される賦形剤または担体と混合された細胞を含有する医薬組成物が配合される。このような製剤は、当分野において周知の技術を使用して調製することができる。たとえば、米国特許出願公開第2003/0180289号明細書、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Alfonso R.Gennaro,editor,20th ed,Lippincott Williams & Wilkins:Philadelphia,PA,2000を参照されたい。本発明による医薬製剤の製造においては、典型的には細胞は、特に許容される担体と混合される。当然ながら担体は、製剤中のすべての他の成分に対して適合性となる意味において許容されるべきであり、患者に対して有害となるべきではない。担体は、固体または液体、またはその両方(たとえばヒドロゲル)であってよく、本発明の細胞とともに単位用量製剤として配合することができる。一実施形態では、本発明の細胞は、細胞の凝集を軽減するために担体中の懸濁液として提供される。
【0049】
別の一実施形態では、本発明の細胞は、カプセル化された形態で配合される(たとえば、インビボで細胞の生存能を維持するために栄養素および酸素が透過性であるカプセル中に封入される)。細胞を透過性カプセル中に封入するための材料および方法は周知であり、たとえば米国特許第6,783,964号明細書に記載されている。たとえば、細胞は、半透膜で取り囲まれた多糖類ガムの内部細胞含有コアを含む50または100μm〜1または2mmの直径のマイクロカプセル、アルギネートをポリリジン、ポリオルニチン、およびそれらの組み合わせと共に含むマイクロカプセルの中に封入することができる。他の好適なカプセル化材料としては、米国特許第5,702,444号明細書に記載のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
特定の一実施形態では、本発明の細胞は、生分解性の足場またはマトリックスとともに投与される。膀胱細胞は、インビトロでの共培養をコラーゲンに富んだ足場上で行った後、平滑筋細胞の表面上に増殖する尿路上皮の明確な層を有する正常な膀胱構造を形成することが可能であることが示されている(Zhang,et al.(2000)J.Urol.164:928)。さらに、膀胱細胞を播種した足場構造物は、部分膀胱瘻造設術モデル中の組織再構築の再生過程に用いられることが示されている(Zhang,et al.(2005)BJU Int.96:1120)。したがって、前駆細胞の実施形態は、膀胱を完全に再生するための後のインビボ埋め込みのための、インビトロの細胞工学的足場構造物において用途が見いだされる。
【0051】
生分解性の足場またはマトリックスは、生物学的機能に対して毒性および障害作用を有さないあらゆる物質であり、宿主の構成成分になることができる。望ましくは、足場またはマトリックスは、マトリックスの孔隙上および孔隙中の両方に細胞が堆積できるようするため多孔質であり、ある実施形態では成形される。このような製剤は、少なくとも1つの細胞集団を生分解性足場に供給して、細胞集団を足場の上および/または中に播種することによって調製される。ある実施形態では、次に、播種された足場が被移植者である被験体の体内に埋め込まれ、そこで独立に層状に組織化した細胞集団が、新しい器官または組織構造の形成を促進する。
【0052】
使用可能な生分解性足場としては、たとえば、天然または合成のポリマー、たとえば、コラーゲン(たとえば、SISおよびBSM)、ポリ(ラクテート酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリオルトエステル、およびポリ無水物などのポリ(αエステル)、ならびにそれらのコポリマーなどが挙げられ、制御された速度で加水分解されることで分解することができ、再吸収される。他の好適な材料の例は米国特許第7,186,554号明細書中に提供されている。
【0053】
生分解性足場は、たとえば、溶媒キャスティング、圧縮成形、フィラメント延伸、メッシュ化、リーチング、ウィービング、およびコーティングなどの方法を使用して「成形」することができる。溶媒キャスティングでは、塩化メチレンなどの適切な溶媒中の1種類以上のポリマーの溶液を分岐パターンの凹凸構造としてキャストする。溶媒を蒸発させた後、薄いフィルムが得られる。圧縮成形では、ポリマーを最大30,000ポンド/平方インチの圧力で適切なパターンにプレス成形する。フィラメント延伸は溶融ポリマーから延伸することを含み、メッシュ化は繊維を圧縮してフェルト状材料にすることによってメッシュを形成することを含む。リーチングでは、2種類の材料を含有する溶液を最終形態に類似した形状に広げる。次に溶媒を使用して一方の成分を溶解させて除去することで、孔隙が形成される(米国特許第5,514,378号明細書参照)。核形成では、再建尿路上皮移植片の形状の薄いフィルムを、放射性核分裂生成物に曝露して、放射線で損傷した材料のトラックを形成する。次にこのポリカーボネートシートを酸または塩基でエッチングし、放射線で損傷した材料のトラックを孔隙に変える。最後に、レーザーを使用して、多くの材料が通過する個別の孔の成形および焼失を行うことで、均一な孔径を有する再建尿路上皮移植片構造を形成することができる。これらの複数の成形技術は組み合わせて使用することができる。たとえば、生分解性マトリックスを織成し、圧縮成形し、接着剤を使用することができる。さらに、異なる方法で成形した異なるポリマー材料を互いに接合して複合構造を形成することができる。この複合構造は層状構造であってよい。たとえば、1つのポリマーマトリックスを1つ以上のポリマーマトリックスに取り付けて多層ポリマーマトリックス構造を形成することができる。この取り付けは、液体ポリマーを使用した接着、または縫合によって行うことができる。さらに、このポリマーマトリックスは、中実ブロックとして形成し、レーザーまたはその他の標準的な機械加工技術によって所望の最終形態に成形することができる。レーザー成形は、レーザーを使用して材料を除去する方法を意味する。
【0054】
生分解性足場は、たとえば埋め込み後の新組織の形成を促進するために、埋め込みの前(細胞を播種する前または後)に添加剤または薬物で処理することができる。したがって、たとえば、増殖因子、サイトカイン、細胞外マトリックス成分、および/またはその他の生物活性材料を生分解性足場に加えて、移植片の治癒および新組織の形成を促進することができる。このような添加剤は、一般に、適切な新組織が移植された器官または組織中に形成されるように、再建または拡大される組織または器官により選択される。骨の治癒を促進するために使用されるこのような添加剤の例としては、たとえば、Kirker−Head(1995)Vet.Surg.24(5):408−19が参照される。
【0055】
生分解性足場上への細胞の播種は、標準的な方法により行うことができる。たとえば、組織修復に使用されるポリマー基質上への細胞の播種が報告されている(たとえば、参照により本明細書に組み入れられるAtalaに付与された米国特許第6,171,344号明細書、Atala,et al.(1992)J.Urol.148:658−62、Atala,et al.(1993)J.Urol.150:608−12)。例として、培養中で増殖した細胞は、トリプシン処理により細胞を分離することができ、分離した細胞を生分解性足場に播種することができる。あるいは、細胞培養で得られた細胞は培養皿から細胞層として持ち上げることができ、その細胞層は、細胞をあらかじめ分離することなく、生分解性足場上に直接播種することができる。
【0056】
生分解性足場上に播種される細胞の密度は変化させることができる。たとえば、ある実施形態では細胞密度が高いと、播種された細胞による組織形成がより促進され、密度が低いと宿主から移植片に細胞が浸潤することによって比較的大きな組織を形成することができる。生分解性足場および細胞に依存して他の播種技術を使用することもできる。たとえば、減圧濾過によって細胞を生分解性足場に適用することができる。細胞種類の選別、および生分解性足場上への細胞の播種は、本明細書の教示を考慮すれば、当業者の日常的な作業となる。
【0057】
さらなる実施形態では、本発明の製剤は、非経口投与(たとえば、皮下、筋肉内、皮内、静脈内、動脈内、腹腔内への注射)または埋め込みのための製剤を含む。ある実施形態では、投与は、単純な注射、または腎動脈などの好適な血管中に配置されたカテーテルによる注入のいずれかによって、血管内に行われる。別の一実施形態では、投与は、前述のように増大すべき器官または組織への移植片として行われる。
【0058】
非経口投与に適した本発明の製剤としては、好ましくは水性である滅菌液体、細胞注入組成物が挙げられ、これらの製剤は、意図する受容者の血液と等張にすることができる。これらの製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、および意図する受容者の血液と等張にするための溶質を含有することもできる。これらの製剤は、投与される細胞は別にすると、細菌およびウイルスなどの汚染微生物が存在しないという意味で滅菌されている。本発明の製剤は、注入可能(synringeable)かつ注射可能な形態であってよいし、たとえば被験体の膀胱、尿道、尿管、または腎臓の中に外科的に移植するのに適した形態であってよいし、被験体への投与に適した他のあらゆる形態であってもよい。
【0059】
ある実施形態によると、被験体に投与される細胞は、カプセル化などの他のステップの存在または非存在、あるいは細胞の免疫抑制療法の実施に依存して、治療される被験体に対して同系(すなわち、同遺伝子系および自己などの同族)、同種異系(すなわち同種)、または異種(すなわち、異種性)であってよい。
【0060】
細胞の治療有効用量は、被験体間である程度変動し、被験体の年齢、体重、および症状、ならびに送達経路などの要因に依存する。このような用量は、当業者に公知の手順により決定することができる。一般に、ある実施形態では、被験体当たり1×105、1×106、または5×106から1×107、1×108、または1×109細胞以上の用量を1回で投与したり、数回に分割して投与したりすることができる。別の実施形態では、被験体の体重1kg当たり1〜100×108細胞の値の用量を1回で投与したり、数回に分割して投与したりすることができる。当然ながら、必要であれば追跡投与を行うことができる。
【0061】
所望または必要である場合には、被験体は、公知の技術により、ラパマイシン、アザチオプリン、コルチコステロイド、シクロスポリン、および/またはFK506などの、投与される細胞の移植片拒絶反応を抑制する物質を投与することもできる。たとえば、米国特許第5,461,058号明細書、第5,403,833号明細書、および第5,100,899号、ならびに米国特許第6,455,518号明細書、第6,346,243号明細書、および第5,321,043号明細書を参照されたい。
【0062】
さらに、本発明の細胞は、播種の前に遺伝物質(たとえば特異的遺伝子)をトランスフェクトすることができる。有用な遺伝物質は、たとえば宿主の免疫応答を軽減または除去することができる遺伝的配列であってよい。たとえば、クラスIおよびクラスII組織適合抗原などの細胞表面抗原の発現を抑制することができる。これによって、移植細胞が宿主によって拒絶される可能性を減少させることができる。
【0063】
<尿中前駆細胞を収集するためのキット>
尿サンプルを収集するためのキットも本明細書において提供される。好ましくは本発明によるキットは、遠隔地(たとえば好適な実験施設)への輸送中に尿中前駆細胞の生存能を維持する機能を果たす。ある実施形態では、キットは、好適な培地(たとえば、1〜15mLの、ある実施形態では5mLの、ウシ胎児血清などの血清)を含有する管を含む。この培地は、使用前に解凍するように、凍結させて提供することができる。別の実施形態では、キットは、抗生物質(たとえば、1〜15mLの、ある実施形態では5mLの、1%ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有する溶液)を含有する管を含む。抗生物質は粉末形態であってもよいし、水溶液であってもよい(場合により、使用前に解凍するように、凍結させて提供される)。
【0064】
キットは、尿サンプル(たとえば、好適な容積、たとえば100〜1,000mL、ある実施形態では500mLの3つの滅菌プラスチック瓶)を収集するための好適な容器(たとえば、瓶)を含むこともできる。キットは、アルコール消毒綿を含むこともできる。ある実施形態ではアイスバック、冷パックなどの冷却手段が、尿をおよそ4℃に冷却して維持するために含まれる(たとえば、3インチ×2インク×0.5インチの寸法の2つのアイスバッグ)。さらなる実施形態は、上記の構成品を維持することが可能な容器(たとえば、高さ6インチ×幅6インチ×長さ7インチの寸法のプラスチック製の箱)を含み、場合により使用説明書も含む。
【0065】
本発明を以下の非限定的実施例により、さらに詳細に説明する。
〔実施例1〕
【0066】
<尿からの前駆細胞の分離および特性決定>
58のヒト尿サンプルを、2〜50歳の範囲の年齢の22名の男性および1名の女性の提供者(15名の健常人および8名の患者)から収集した。すべての培養中で細菌汚染は見られなかった。尿サンプルを4℃、1500RPMで5分間遠心分離し、滅菌PBSで2回洗浄した。段階希釈法を使用して、細胞を平均0.5細胞/ウェルで、前駆細胞培地を有するマルチウェルプレート中に入れた。この前駆細胞培地は、3/4のDMEM、1/4のハムF12、10%のFBS、0.4mg/mlのヒドロコルチゾン、10−10Mのクロン・トキシン、5mg/mlインスリン、1.2mg/mlのアデニン、2.5mg/mlのトランスフェリン+0.136mg/mlの3,39,5−トリヨード−L−チロニン、10mg/mlのEGF、および1%のペニシリン−ストレプトマイシンを含有する(Zhang et al.,In vitro Cell Dev.Biol.−Animal 37:419,2001)。1種類の細胞を同定し、50%を超える集密度まで増殖させた。次に細胞を継代培養し、6cmの培養皿に移し、増殖させた。
【0067】
増殖した初代細胞が、尿サンプルから開始した培養の約39%で得られた。コロニー中の平均細胞数は、2日目で健常人で4.5/100ml尿であった(表1および図1)。細胞は小さくより明るい外観の細胞であり、長期間の観察による本発明者らの経験に基づくと、膀胱粘膜の基層由来のものがほとんどであると思われ、比較的未分化であった。各クローン系で尿細胞の高収率が一貫して実現された。尿細胞の細胞倍増期間は、前駆細胞培地およびKSFM(1:1)の複合培地中で31.3時間であった。尿細胞が1つの細胞から6cmの培養皿中で集密的となるまで10〜12日を要した(図2)。
【0068】
【表1】
【0069】
尿細胞の分子的および細胞的特徴を示すために、前駆細胞特異的および分化細胞特異的マーカーの発現を分析した。継代1、3、および4の尿細胞すべては、C−kit、SSEA−4、CD105+、CD73+、CD90+、CD133+、およびCD44+を含む前駆細胞特異的表面マーカーに関して陽性染色を示し、CD31−、CD34−、およびCD45−に関しては陰性染色を示した(表2およびく)。CD44は、膀胱基底細胞の細胞表面マーカーであると考えられている(Desai,et al.(2000)Mod.Pathol.13:1315)。基底細胞は自己再生能を有し、増殖して中間細胞および表皮細胞に分化することができ、基底細胞は尿路上皮前駆細胞または幹細胞と呼ばれる(Staack,et al.(2005)Differentiation 73:121)。尿中の基底細胞は、CD44によって、および基底細胞および中間細胞の細胞内タンパク質マーカーであるサイトケラチン13を使用した免疫蛍光法によって確認した(Romih,et al.(2005)Cell Tissue Res.320:259)。
【0070】
【表2】
【0071】
前駆細胞および成熟細胞の混合細胞集団が尿中に存在すると思われる。尿は尿路上皮前駆細胞および平滑筋前駆細胞を含有することが分かった。これらの細胞は前述のCDマーカーで確認した。さらに、尿路上皮前駆細胞マーカーおよび平滑筋細胞マーカーを、これらの細胞をさらに特徴付けるために使用した。尿路上皮前駆細胞特異的マーカーに対するモノクローナル抗体のウロプラキンIaならびにサイトケラチン7、13、17、および19を、70%の細胞集密度において、各抗体について以下の希釈で使用した。抗サイトケラチン7、1:200、抗サイトケラチン13、1:100、抗サイトケラチン17、1:100、および抗サイトケラチン19、1:100。ウロプラキンおよび上記サイトケラチンの尿中前駆細胞中での発現を測定し、通常の生検組織から得られた培養尿路上皮中のマーカーの発現と比較し(Zhang,et al.(2003)Adv.Exp.Med.Biol.539:907、Ludwikowski,et al.(1999)BJU Int.84:507、Sugasi,et al.(2000)J.Urol.164:951、Zhang,et al.(2001)In vitro Cell Dev.Biol.Anim.37:419)、正常ヒト膀胱粘膜とも比較した(Southgate et al.,Lab Investigation(1994)71:583)。免疫蛍光の程度は、陰性(−)から強度に陽性(++++)までの範囲で規定した。組織生検から得た培養尿路上皮と同様に、尿細胞は、ウロプラキンIa、ならびにサイトケラチン(CK)7、13、17、および19を発現した(図3および表3)。
【0072】
【表3】
【0073】
さらに、免疫蛍光法によって、体内の膀胱細胞を、平滑筋細胞特異的マーカーのα平滑筋アクチン(ASMA)、デスミン、ミオシン、およびカルポニンを発現する尿から得た細胞と比較した(図4および表4)。
【0074】
【表4】
〔実施例3〕
【0075】
<尿中前駆細胞の細胞収縮性およびタイトジャンクション>
尿由来の平滑筋細胞の機能特性は、コラーゲン格子を使用して細胞収縮性を求めることによって確認される。コラーゲン格子収縮アッセイ方法は、当分野において公知である(Kropp,et al.(1999)J.Urol.162:1779)。アゴニストに応答した収縮性は、格子開放の直前にアゴニストを無血清培地に加えることを除けば同様の方法で行われる。試験されるアゴニストとしてはCaイオノフォアA23187(1025M)およびKClが挙げられる。
【0076】
尿由来の尿路上皮前駆細胞のタイトジャンクションを解析する。尿路上皮のバリア機能は、頂端膜プラークと細胞間タイトジャンクションによって維持される。尿中前駆細胞中のタイトジャンクション成分は、電気顕微鏡検査(electric microscopy)等の従来方法を使用して調べられる(Zhang,et al.(2003)Adv.Exp.Med.Biol.539:907、Ludwikowski,et al.(1999)BJU Int.84:507、Sugasi,et al.(2000)J.Urol.164:951、Zhang,et al.(2001)In vitro Cell Dev.Biol.Anim.37:419、Cross,et al.(2005)Am.J.Physiol.Renal Physiol.289:F459)。
〔実施例4〕
【0077】
<尿中前駆細胞の平滑筋細胞への分化>
尿中前駆細胞の平滑筋細胞への分化に対する、上皮−間質細胞相互作用または細胞間相互作用の影響を調べるために(Staack,et al.(2005)Differentiation 73:121、DiSandro,et al.(1998)J.Urol.160:1040)、2つの共培養方法を使用する。その第1は、4.5μmのサイズ排除を有するトランスウェル(transwell)装置を使用する間接共培養である。尿平滑筋前駆細胞を、上部チャンバーのウェル上に入れ、組織生検で得た膀胱平滑筋細胞および/または尿路上皮をトランスウェルユニットの底部ウェル上に播種する(Luk,et al.(2005)J.Immunol.Methods 305:39、Gerstenfeld,et al.(2003)Connect Tissue Res.44(suppl 1):85)。第2の方法は、直接共培養法であり、0.4μmの孔径のトランスウェルインサートを使用して行われる。このトランスウェルは、基底膜として使用され、その下面上で尿中前駆細胞が培養され、一方、反対側の上面上で正常ヒト膀胱尿路上皮および平滑筋細胞が培養される(Le Visage,et al.92004)Tissue Eng.10:1426)。続いて尿細胞は、表現型の出現、分子解析、および平滑筋タンパク質発現免疫組織化学的染色によって、細胞播種から3、7、14、および28日後に評価される。
〔実施例5〕
【0078】
<尿中前駆細胞を播種した足場>
尿中前駆細胞の膀胱粘膜下膜(BSM)および小腸粘膜下組織(SIS)上への細胞付着性、増殖、および分化を評価して、臨床応用における細胞−マトリックス相互作用を求めた。インビトロでの細胞播種構造物では、尿中前駆細胞由来の尿路上皮のBSM粘膜側への播種、尿中前駆細胞由来の平滑筋細胞の漿膜上への播種を混合培地(KSFM:DMEM、1:1)の存在下で行った。
【0079】
続いて、播種したマトリックスを無胸腺マウスの皮下に埋め込んだ。埋め込まれた培養組織を取り出し、組織科学(H&Eおよびトリクロム(Trichrom))、免疫組織化学(サイトケラチンおよび平滑筋細胞特異的マーカー)、ウエスタンブロット解析、およびヒトX/Y染色体検出アッセイ(FISH)により評価した。組織化学的および免疫組織化学的分析では、標準手順を使用して、培養組織を10%の中性緩衝ホルマリン中で固定し、脱水し、パラフィン中に埋め込んだ。5mmの断片を切り取り、標本にした。通常のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色およびマッソン(Masson)三色染色を行った。免疫組織化学的染色も、平滑筋細胞タンパク質に対するモノクローナル抗体の、α平滑筋アクチン(1:1000で希釈)、デスミン(1:20)、カルポニン(1:50)、およびミオシン(1:100)、ならびに尿路上皮細胞特異的タンパク質に対するモノクローナル抗体の、サイトケラチンAE1/AE3(1:100の抗体希釈)を使用して行った(Zhang,et al.(2005)BJU Int.96:1120、Zhang,et al.(2003)Adv.Exp.Med.Biol.539:907、Zhang,et al.(2000)J.Urol.164:928、Zhang,et al.(2006)BJU Int.98:1100、Zhang,et al.(2004)Tissue Eng.10:181、Zhang,et al.(2001)In vitro Cell Dev.Biol.Anim.37:419)。
【0080】
ウエスタンブロット解析用のタンパク質は、公知の方法により溶解緩衝液を使用して、細胞、または細胞を播種した足場組織を溶解させることによって分離した(Zhang,et al.(2005)BJU Int.96:1120、Lin,et al.(2004)J.Urol.171:1348)。マウス抗ヒトα平滑筋アクチン、デスミン、ミオシン、およびAE1/AE3を一次抗体として使用し、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgGを二次抗体として使用した。タンパク質バンドの存在を市販の高感度ケミルミネッセンスアッセイキットによって検出した。
【0081】
移植組織中、尿中前駆細胞は、埋め込みから1か月後にLacZで染色された。埋め込まれた細胞はヒトX/Y染色体によっても確認した。好都合には、尿中前駆細胞は、インビボで、多層尿路上皮細胞および平滑筋様組織構造を足場中に形成した(図5)。さらに、埋め込みから3か月後に移植組織中に腫瘍は見られなかった。
【0082】
したがって、これらのデータは、尿から得られた細胞が、膀胱組織工学の供給源として機能できるというインビトロおよびインビボでの証拠となっている。尿中前駆細胞は、容易に利用可能であり、インビトロで増殖して尿路上皮および平滑筋に分化することが示されている。尿中前駆細胞由来の膀胱細胞は、それぞれ尿路上皮特異的タンパク質および平滑筋特異的タンパク質の発現などの尿路上皮様および平滑筋様の表現型を示す。コラーゲンマトリックスは、尿中前駆細胞の三次元増殖を補助し、このことは膀胱再建に対する基本的な要求である。インビボで尿中前駆細胞を播種した足場によって、膀胱再建の費用対効果の大きい方法が得られる。
【0083】
以上は本発明の例であり、本発明を限定するものと解釈すべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲により規定され、請求項の同等物も本発明の範囲に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿中前駆細胞の培養物を生産する方法であって、
尿サンプルを提供するステップと、続いて
尿中前駆細胞を前記尿サンプルから分離するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記分離ステップが、
(a)細胞を尿サンプルから収集して粗細胞サンプルを得るステップと、
(b)尿中前駆細胞を前記粗細胞サンプルから選別するステップと
によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記収集ステップが、前記尿サンプルの遠心分離によって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記選別ステップが、細胞選択培地を含む組成物中に前記細胞を配置することによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記選別ステップが、形態学に基づいて対象の細胞を選別することによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記選別ステップが、尿中前駆細胞に特異的なマーカーを選別することによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記選別ステップが、尿中前駆細胞に特異的なマーカーを選別することによって行われ、前記マーカーの選別がFACSによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記マーカーが、C−kit(CD117)、SSEA−4、CD105、CD73、CD90、CD133、およびCD44からなる群より選択される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記尿中前駆細胞が哺乳動物被験体から得られる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の方法によって産生された分離細胞。
【請求項11】
前記尿中前駆細胞を、尿路上皮細胞および平滑筋細胞からなる群の少なくとも1つに分化させるステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
分離された尿中前駆細胞であって、c−kit陽性であり、尿路上皮細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、および間質細胞からなる群より選択される2つ以上の系譜に分化可能できる、細胞。
【請求項13】
播種された組織足場を提供する方法であって、前記方法が、
請求項10に記載の分離尿中前駆細胞を提供するステップと、
前記尿中前駆細胞を、尿路上皮細胞および平滑筋細胞からなる群の少なくとも1つに分化させて、分化した細胞を産生するステップと、
前記分化した細胞を生分解性組織足場上に播種するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記組織足場がコラーゲンマトリックスを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組織足場が合成ポリマーを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記組織足場が、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、および乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)からなる群より選択される合成ポリマーを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
生分解性組織足場と尿中前駆細胞とを含む、播種された組織足場。
【請求項18】
前記尿中前駆細胞が分化しているまたは未分化である、請求項17に記載の播種された組織足場。
【請求項19】
前記尿中前駆細胞が、尿路上皮細胞、平滑筋細胞、間質細胞、および上皮細胞からなる群より選択される細胞に分化する、請求項17に記載の播種された組織足場。
【請求項20】
前記生分解性組織足場がコラーゲンマトリックスを含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載の播種された組織足場。
【請求項21】
前記生分解性組織足場が合成ポリマーを含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載の播種された組織足場。
【請求項22】
前記生分解性組織足場が、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、および乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)からなる群より選択される合成ポリマーを含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載の播種された組織足場。
【請求項23】
治療を必要とする被験体の治療方法であって、
膀胱組織基質を提供するステップであって、ここで、前記基質は尿中前駆細胞を含み、
前記尿中前駆細胞を、尿路上皮細胞および平滑筋細胞からなる群の少なくとも1つに分化させて、分化した細胞を産生するステップと、
前記分化した細胞を生体適合性基質に播種するステップと、
前記基質を前記患者の体内に移植するステップと
を含む、方法。
【請求項24】
前記基質がコラーゲンマトリックスを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記基質が合成ポリマーを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記基質が、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、および乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)からなる群より選択される合成ポリマーを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
尿サンプルの輸送に適した容器と、
培地と、
1種類以上の抗生物質と、
前記容器、培地、および抗生物質を保持するための包装材料と、
場合により、使用説明書と
を含む、キット。
【請求項28】
冷却手段をさらに含む、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
アルコール消毒綿をさらに含む、請求項27または28に記載のキット。
【請求項30】
前記容器が滅菌されている、請求項27、28または29に記載のキット。
【請求項1】
尿中前駆細胞の培養物を生産する方法であって、
尿サンプルを提供するステップと、続いて
尿中前駆細胞を前記尿サンプルから分離するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記分離ステップが、
(a)細胞を尿サンプルから収集して粗細胞サンプルを得るステップと、
(b)尿中前駆細胞を前記粗細胞サンプルから選別するステップと
によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記収集ステップが、前記尿サンプルの遠心分離によって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記選別ステップが、細胞選択培地を含む組成物中に前記細胞を配置することによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記選別ステップが、形態学に基づいて対象の細胞を選別することによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記選別ステップが、尿中前駆細胞に特異的なマーカーを選別することによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記選別ステップが、尿中前駆細胞に特異的なマーカーを選別することによって行われ、前記マーカーの選別がFACSによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記マーカーが、C−kit(CD117)、SSEA−4、CD105、CD73、CD90、CD133、およびCD44からなる群より選択される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記尿中前駆細胞が哺乳動物被験体から得られる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の方法によって産生された分離細胞。
【請求項11】
前記尿中前駆細胞を、尿路上皮細胞および平滑筋細胞からなる群の少なくとも1つに分化させるステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
分離された尿中前駆細胞であって、c−kit陽性であり、尿路上皮細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、および間質細胞からなる群より選択される2つ以上の系譜に分化可能できる、細胞。
【請求項13】
播種された組織足場を提供する方法であって、前記方法が、
請求項10に記載の分離尿中前駆細胞を提供するステップと、
前記尿中前駆細胞を、尿路上皮細胞および平滑筋細胞からなる群の少なくとも1つに分化させて、分化した細胞を産生するステップと、
前記分化した細胞を生分解性組織足場上に播種するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記組織足場がコラーゲンマトリックスを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組織足場が合成ポリマーを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記組織足場が、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、および乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)からなる群より選択される合成ポリマーを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
生分解性組織足場と尿中前駆細胞とを含む、播種された組織足場。
【請求項18】
前記尿中前駆細胞が分化しているまたは未分化である、請求項17に記載の播種された組織足場。
【請求項19】
前記尿中前駆細胞が、尿路上皮細胞、平滑筋細胞、間質細胞、および上皮細胞からなる群より選択される細胞に分化する、請求項17に記載の播種された組織足場。
【請求項20】
前記生分解性組織足場がコラーゲンマトリックスを含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載の播種された組織足場。
【請求項21】
前記生分解性組織足場が合成ポリマーを含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載の播種された組織足場。
【請求項22】
前記生分解性組織足場が、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、および乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)からなる群より選択される合成ポリマーを含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載の播種された組織足場。
【請求項23】
治療を必要とする被験体の治療方法であって、
膀胱組織基質を提供するステップであって、ここで、前記基質は尿中前駆細胞を含み、
前記尿中前駆細胞を、尿路上皮細胞および平滑筋細胞からなる群の少なくとも1つに分化させて、分化した細胞を産生するステップと、
前記分化した細胞を生体適合性基質に播種するステップと、
前記基質を前記患者の体内に移植するステップと
を含む、方法。
【請求項24】
前記基質がコラーゲンマトリックスを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記基質が合成ポリマーを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記基質が、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、および乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)からなる群より選択される合成ポリマーを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
尿サンプルの輸送に適した容器と、
培地と、
1種類以上の抗生物質と、
前記容器、培地、および抗生物質を保持するための包装材料と、
場合により、使用説明書と
を含む、キット。
【請求項28】
冷却手段をさらに含む、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
アルコール消毒綿をさらに含む、請求項27または28に記載のキット。
【請求項30】
前記容器が滅菌されている、請求項27、28または29に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−527605(P2010−527605A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509363(P2010−509363)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/006438
【国際公開番号】WO2008/153685
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(507189574)ウェイク・フォレスト・ユニヴァーシティ・ヘルス・サイエンシズ (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/006438
【国際公開番号】WO2008/153685
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(507189574)ウェイク・フォレスト・ユニヴァーシティ・ヘルス・サイエンシズ (14)
【Fターム(参考)】
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