説明

尿素とメタノールからジメチルカーボネートを合成するための触媒、その製造方法及び応用

【課題】 本発明は尿素とメタノールからジメチルカーボネートを合成するのに用いる触媒を提供する。
【解決手段】 触媒(重量百分率)は、その組成が活性成分:20〜50wt%、担体:80〜50wt%で、等体積噴霧浸透方法によって製造される。尿素をメタノールに溶解して尿素メタノール溶液を調製した後、該尿素メタノール溶液とメタノールとを向流にて反応段に供給し、反応温度120〜250℃、圧力0.1 MPa〜5MPa、塔底温度70〜210℃、濃縮段温度70〜250℃、精留段温度70〜280℃、還流比1−20:1の条件で反応を行わせる。本発明によれば、簡単な製造方法で、再現性が良く、触媒精留反応器でのジメチルカーボネートの収率と尿素の転化率を高める触媒を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒及びその製造方法に関する。具体的には、本発明は、尿素とメタノールから、直接、ジメチルカーボネートを合成するのに用いられる触媒、その製造方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ジメチルカーボネート(DMC)は、新規の環境にやさしい(以下、「緑色」という)化学工業製品として国内外で頗る重視されているものである。DMCは、その分子中にメトキシ基、カルボニル基とカルボキシメチル基を含み、良好な反応活性を有しているために、劇毒物であるホスゲンに取って代わり得るカルボニル化剤として、硫酸ジメチルを代替するメチル化剤として用いられる。DMCは、それを原料として、直接、食品添加剤、酸化防止剤、植物保護剤、高級樹脂、燃料、薬物中間体、界面活性剤等を合成することができるので、有機合成における潜在的「新規の基、ブロック」と言われている。同時に、DMCは比較的高い酸素含有量と適当な蒸気圧、耐水性、混合分配系数を持っているために、理想的なガソリン添加剤としても用いることができる。したがって、DMCの応用分野は更に拡がっており、化学工業分野の新しい経済増長点として重要な現実的意義があり、市場の潜在需要量は非常に大きい。
【0003】
従来、DMCは主としてホスゲン法によって合成されていたが、原料としてのホスゲンの劇毒性と塩素イオンの腐食性から、DMCの大規模生産と応用は制限されていた。1983年、イタリアの会社Enichemは、液相メタノール酸化カルボニ化によってDMCを合成する非ホスゲン法ルートを開発(Romano U., Tesei R., Mauri M.M. etal, Synthesis of dimethyl carbonate from methanol, carbon monoxide, and oxgen catalyzed by copper compounds, Ind. Eng. Chem. Prod. Res. Rev., 1980, 19: 396〜403;Micheal A.P., ChristopHer L.M. Review of Dimethyl Carbonate(DMC) Manufacture and its Characteristic as a Fuel Additive. Energy and Fuels 1997,11,2〜29]し,DMCの合成を新しい段階に入らせた。1992年、日本の宇部興産は気相メタノール酸化カルボニ化法を開発(J.Kizlink, Collect Czech Chem Comm. 1993,58,1399;Y.Sasaki, Chem Lett. 1996,825;S.T.King, Reaction mechanism of oxidative carbonylation of methanol to dimethyl carbonate in Cu〜Y zeolite J.Catal., 1996,161,530〜538)し,DMC合成の迅速な商業化を促した。しかし、その触媒は、CuClを主要活性成分として用いるために、設備に対する腐食性が大で、触媒寿命が短いものであった。更に、原料ガスの価格が高く、一酸化炭素は毒性を有するという欠点があった。ほかの非ホスゲンDMC合成法としては、二酸化炭素とエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドとを触媒の存在下で反応させて、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートを合成し、その後で、メタノールを用いたエステル交換反応によって、DMC、エチレングリコール及びプロピレングリコールを得るエステル交換反応である(Knifton J.F., Duranleau R.G. Ethylene glycol〜dimethyl carbonate cogeneration, J. Mol. Catal., 1991, 67: 389〜399;Nishihara K. US 5292917, 1993;Tatsumi T., Watanabe Y. and Koyano K.A., Synthesis of dimethyl carbonate from ethylene carbonate and methanol using TS〜1 as solid base catalyst. Chem. Commun., 1996, (19): 2281〜2282.)。他の合成方法と比べると、該プロセスによれば、原料が安価で、毒性が少なく、工業生産の結果としての三廃(廃水、廃ガス、廃棄物)の発生がないと同時に、腐食性が低く、副産物としてのエチレングリコール及びプロピレングリコールは再利用することができる。しかしながら、現在では、触媒の活性があまり高くなく、触媒寿命が短く、反応条件が厳しく、且つ反応過程で種々の有機溶媒を添加しなければならないので、後続の生産物の分離工程を非常に困難なものにし、設備投下費用とエネルギ消費を増加させるものとなっている。したがって、新規な反応経路を研究してプロセスの技術経済性と可操作性を更に高めることは、非常に重要な意味がある。
【0004】
上記の欠点を克服するために、本発明者は、尿素とメタノールから、直接、ジメチルカーボネートを合成する新たなプロセスと技術を開発し、それは、中国特許出願No.01130478.2(「尿素とメタノールからジメチルカーボネートを合成する方法」)(特許文献1)及び中国特許出願No.01131680.2(「不均一系触媒を用いて尿素とメタノールからジメチルカーボネートを合成する方法」)(特許文献2)として公開されている。これらの方法において、反応原料である尿素とメタノールはいずれも大口原料で、価格が安いので、原料コストが低く、且つ反応過程は安全であり、プロセスが簡単で、操作も容易なので、反応の活性と生産物の選択性が高くなり、ジメチルカーボネートの生産コストを大幅に低減させることができるものであった。しかし、該プロセスにおいて、ジメチルカーボネートの収率は依然として低く、更に高めることが望まれるものであった。
【特許文献1】中国特許出願第01130478.2号明細書
【特許文献2】中国特許出願第01131680.2号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の実状に鑑みなされたものであり、その目的は、尿素とメタノールから、直接、ジメチルカーボネートを合成するのに用いる、転化率と選択性の高い負荷型触媒及びその製造法と応用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の触媒の組成(重量百分率)は、活性成分20〜50wt%、担体80〜50wt%である。担体として用いられるものには、活性炭、α−アルミナ、γ−アルミナ、シリカ又は分子篩等が含まれるが、これらのものに限定されるものではない。活性成分は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移元素の酸化物及び塩化物中の一種又は二種以上の組み合わせである。前記アルカリ金属は、K、Na、Cs又はLiである。前記アルカリ土類金属は、Ca又はMgである。前記遷移元素は、Zn、Pb、Mn、La又はCeである。
【0007】
本発明の触媒の製造方法は、以下のステップを含む。
触媒の組成(重量百分率)で、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移元素の一種又は二種以上の可溶性金属塩を含む水溶液を調製する;水酸化カリウム又はアンモニア液を用いて、溶液のpH値を0〜5の範囲に調節する;等体積噴霧浸透方法を用いて、水溶液を担体に浸透させる;続いて、100℃〜250℃、2〜24時間の条件でベーキングする;最後に、500℃〜1000℃、2〜12時間の条件で焼成する。
【0008】
前記の可溶性金属塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移元素の硝酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、水酸化物又はハロゲン化物等が挙げられる。前記のpH値は、1〜3の範囲にあることが好ましい。前記の焼成温度は、650〜850℃であることが好ましい。前記の焼成時間は、3〜8 hrであることが好ましい。触媒の製造工程において、肝心なことは、水溶液pH値の制御、焼成温度と焼成時間である。
【0009】
本発明の触媒反応は、触媒精留反応器中で行われ、触媒は、触媒精留反応器の反応段に装填される。尿素をメタノールに溶解して尿素メタノール溶液を調製した後、触媒段の上部から尿素メタノール溶液を触媒床に供給する。その中の尿素は触媒床に入り、尿素メタノール溶液中のメタノールはその温度が高いために、触媒精留反応器の精留段に入る。また、反応原料としてのメタノールは、触媒段の下部から触媒床に入る。尿素とメタノールは、触媒段で反応してジメチルカーボネートを生成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好適な一実施態様として、本発明の触媒は、以下の方法によって触媒精留反応器に適用される。
(1)尿素をメタノールに溶解させて、尿素が1wt%〜99wt%である尿素メタノール溶液を形成する。
(2)尿素メタノール溶液を、0.01〜10ml/g-cat minの供給速度で触媒精留反応器の触媒段の上部から触媒床に供給し、又、反応原料としてのメタノールを0.01〜20ml/g-cat minの供給速度で,触媒精留反応器の触媒段の下部から触媒床に供給する。反応温度は120〜250℃、反応圧力は0.1MPa〜5MPa、塔底温度は70〜210℃、濃縮段温度は70〜250℃、精留段温度は70〜280℃、還流比は、1〜20:1である。
【0011】
尿素は、前記尿素メタノール溶液中で20〜50重量%であることが好ましい。前記尿素メタノール溶液の供給速度は、0.1〜2ml/g-cat minであることが好ましい。前記反応原料としてのメタノール供給速度は、0.1〜10ml/g-cat minであることが好ましい。前記反応温度は、150〜200℃であることが好ましい。前記反応圧力は、0.5 MPa〜3MPaであることが好ましい。前記塔底温度は、110〜180℃であることが好ましい。前記濃縮段温度は、150〜190℃であることが好ましい。前記精留段温度は、150〜200℃であることが好ましい。前記還流比は、1〜6:1であることが好ましい。
【0012】
本発明には、以下の長所がある。
触媒は、固体担体触媒系で、その製造が簡便で、再現性も良く、工業的大規模生産がし易い。触媒、反応物、生産物間の反応は不均一系触媒反応であるために、触媒と生産物を分離する必要がない。また、製造された新規負荷型触媒は、触媒精留反応器でのジメチルカーボネートの収率を更に高めることができ、高い反応活性と選択性があり、副産物が少ない。
【実施例】
【0013】
比較例.
触媒はZnOである(触媒はZnOの焼成により得られたものである)。
尿素60.08gをメタノール602.7gに溶解して、尿素メタノール溶液を調製し、尿素メタノール溶液の供給速度を0.1ml/g-cat minとし、メタノール溶液の供給速度を0.5ml/g-cat minとした。反応温度は200℃、反応圧力は4.0MPa、塔底温度は170℃、濃縮段温度は200℃、精留段温度は200℃、還流比は、8:1とした。その結果を表1に示す。
【0014】
実施例1.
80Wt%硝酸カルシウム溶液100mlを調製し、水酸化カリウムを用いて溶液pH値を1.5に調整した後、等体積噴霧浸透法により、該溶液を100gの活性炭担体へ噴霧浸透させ、続いて、150℃、12時間の条件でベーキングし、700℃、6時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化カルシウム:21wt%、活性炭:79wt%であった。
【0015】
尿素60.08gをメタノール60.12gに溶解して、尿素メタノール混合溶液を調製した後、触媒精留反応器の触媒段の上部より、尿素メタノール溶液を0.1ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、また、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを0.5ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給した。反応温度は150℃、反応圧力は0.2 MPa、塔底温度は80℃、濃縮段温度は85℃、精留段温度は85℃、還流比は1:1とした。その結果を表1に示す。
【0016】
実施例2.
60Wt%酢酸亜鉛溶液100mlを調製し、水酸化カリウムを用いてそのpH値を1.0に調整した後、等体積噴霧浸透方法により、該溶液を70gのSiO2担体へ1時間浸透させた。続いて、250℃、10時間の条件でベーキングし、500℃、12時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化亜鉛:24wt%、シリカ:76wt%であった。
【0017】
尿素60gをメタノール120.13gに溶解した後、反応温度170℃、反応圧力2.0 MPaの条件で、触媒精留反応器の触媒段の上部より、尿素メタノール溶液を1ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、又、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを5ml/g-cat minの供給速度で,触媒床に供給した。反応温度170℃、反応圧力2.0 MPaにした。塔底温度は130℃、濃縮段温度は170℃、精留段温度は180℃、還流比は2:1とした。その結果を表1に示す。
【0018】
実施例3.
92Wt%酢酸亜鉛溶液100mlを調製し、水酸化カリウムを用いてpH値を2.0に調整した後、等体積噴霧浸透方法により、該溶液を50gのSiO2担体へ1時間浸透させた。続いて、150℃、10時間の条件でベーキングし、800℃、12時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化亜鉛:41wt%、シリカ:59wt%であった。
【0019】
尿素60gをメタノール120.13gに溶解した後、触媒精留反応器の触媒段の上部より、尿素メタノール溶液を1ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを2ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給した。反応温度を170℃、反応圧力を2.0 MPaとした。塔底温度は130℃、濃縮段温度は170℃、精留段温度は180℃、還流比は2:1にした。その結果を表1に示す。
【0020】
実施例4.
60Wt%硝酸カリウム溶液100mlを調製し、水酸化カリウムを用いてpH値を1.2に調整し、等体積噴霧浸透方法により、該溶液を70gSiO2担体へ1時間浸透させた。続いて、150℃、10時間の条件でベーキングし、800℃、12時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化カリウム:22wt%、シリカ:78wt%であった。
【0021】
尿素60gをメタノール120.13gに溶解した後、触媒精留反応器の触媒段の上部より、尿素メタノール溶液を1ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを5ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給した。反応温度を220℃、反応圧力を2.5 MPaとした。塔底温度は180℃、濃縮段温度は185℃、精留段温度は220℃、還流比は2:1にした。その結果を表1に示す。
【0022】
実施例5.
40Wt%硝酸セシウム溶液100mlを調製し、水酸化カリウムを用いてそのpH値を3.5に調整した後、等体積噴霧浸透方法により、該溶液を70gのSiO2担体へ1時間浸透させた。続いて、180℃、10時間の条件でベーキングし、800℃、12時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化セシウム:25wt%、シリカ:75wt%であった。
【0023】
尿素30gをメタノール120.13gに溶解した後、触媒精留反応器の触媒段の上部より、尿素メタノール溶液を1ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを5ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給した。反応温度を190℃、反応圧力を2.0MPaとした。塔底温度は130℃、濃縮段温度は180℃、精留段温度は190℃、還流比は4:1とした。その結果を表1に示す。
【0024】
実施例6.
2Wt%蓚酸カリウムと85Wt%硝酸亜鉛水溶液100mlを調製し、水酸化カリウムを用いてpH値を2.0に調整した後、等体積噴霧浸透方法により、溶液を50gのγ−アルミナ担体へ2時間浸透させた。続いて、100℃、15時間の条件でベーキングし、750℃、4時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化カリウム:5wt%、酸化亜鉛:40wt%、アルミナ:55wt%であった。
【0025】
尿素60.08gをメタノール320.7 gに溶解した後、触媒精留反応器の触媒段の上部より、尿素メタノール溶液を3.5ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを9ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給した。反応温度を180℃、反応圧力を2.0MPaとした。塔底温度は180℃、濃縮段温度は180℃、精留段温度は180℃、還流比は4:1にした。表1にその結果を示す。
【0026】
実施例7.
2Wt%硝酸カリウム水溶液50mlと80Wt%硝酸亜鉛溶液50mlを調製し、水酸化カリウムを用いてpH値を2.0に調整した後、等体積噴霧浸透方法により、前記の溶液をそれぞれγ−アルミナ担体へ1時間浸透させた。続いて、150℃、8時間の条件でベーキングし、800℃、8時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化カリウム:2wt%、酸化亜鉛:31wt%、アルミナ:67wt%であった。
【0027】
尿素60.08gをメタノール60.7 gに溶解して混合溶液を調製した後、触媒精留反応器の触媒段の上部より、該尿素メタノール溶液を0.5ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを1.5ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給した。反応温度を200℃、反応圧力を2.0MPaとした。塔底温度は170℃、濃縮段温度は200℃、精留段温度は200℃、還流比は8:1にした。その結果を表1に示す。
【0028】
実施例8.
5Wt%硝酸カリウム水溶液25mlを調製し、水酸化カリウムを用いてそのpH値を4.0に調整した。また、80Wt%硝酸カルシウム水溶液75mlを調製し、そのpH値を2.0に調整した。等体積噴霧浸透方法により、前記の水溶液をそれぞれγ−アルミナ担体へ2時間浸透させ後、170℃、10時間の条件でベーキングし、700℃、6時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化カリウム:2wt%、酸化亜鉛:39wt%、アルミナ:63wt%であった。
【0029】
尿素60.08gをメタノール20.07 gに溶解して混合溶液を調製し、触媒精留反応器の触媒段の上部より、該尿素メタノール溶液を2ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを5ml/g-cat min供給速度で,触媒床に供給した。反応温度を200℃、反応圧力を4.0MPaとした。塔底温度は170℃、濃縮段温度は200℃、精留段温度は200℃、還流比は8:1にした。その結果を表1に示す。
【0030】
実施例9.
5Wt%硝酸セシウム溶液25mlを調製し、水酸化カリウムを用いてそのpH値を5.0に調整した。又、60Wt%硝酸カルシウム水溶液75mlを調製し、そのpH値を2.0に調整した。その後、等体積噴霧浸透方法により、前記の溶液をそれぞれ50gのα〜アルミナ担体へ2時間浸透させた。続いて、170℃、10時間の条件でベーキングし、650℃、6時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化セシウム:3wt%、酸化カルシウム:22wt%、アルミナ:75wt%であった。
【0031】
尿素60.08gをメタノール72.7 gに溶解して混合溶液を調製した後、触媒精留反応器の触媒段の上部より、該尿素メタノール溶液を1.0ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを4.0ml/g-cat minの供給速度で,触媒床に供給した。反応温度を200℃、反応圧力を1.0MPaとした。塔底温度は170℃、濃縮段温度は200℃、精留段温度は200℃、還流比は8:1にした。その結果を表1に示す。
【0032】
実施例10.
35Wt%硝酸ランタン溶液5mlを調製し、水酸化カリウムを用いてそのpH値を4.0に調整し、又、70Wt%硝酸亜鉛溶液95mlを調製し、そのpH値を2.0に調整した後、等体積噴霧浸透方法により、前記の溶液をそれぞれ70gの活性炭担体へ1時間浸透させた。続いて、150℃、8時間の条件でベーキングし、700℃、3時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化ランタン:2wt%、酸化亜鉛:28wt%、活性炭:70wt%であった。
【0033】
尿素174.96 gをメタノール29.7 gに溶解して混合溶液を調製し、触媒精留反応器の触媒段の上部より、該尿素メタノール溶液を2ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを5ml/g-cat minの供給速度で,触媒床に供給した。反応温度を200℃、反応圧力を1.5MPaとした。塔底温度は200℃、濃縮段温度は200℃、精留段温度は200℃、還流比は10:1にした。その結果を表1に示す。
【0034】
実施例11.
70Wt%水酸化マグネシウム溶液100mlを調製した後、水酸化カリウムを用いてpH値を1.5に調整し、等体積噴霧浸透方法により、該溶液を70gの分子篩担体へ1時間浸透させた。続いて、150℃、8時間の条件でベーキングし、650℃、3時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化マグネシウム:30wt%、分子篩:70wt%であった。
【0035】
尿素74.96gをメタノール459.7 gに溶解して混合溶液を調製した後、触媒精留反応器の触媒段の上部より、該尿素メタノール溶液を1ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを3ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給した。反応温度を200℃、反応圧力を2.0MPaとした。塔底温度は200℃、濃縮段温度は200℃、精留段温度は200℃、還流比は4:1にした。その結果を表1に示す。
【0036】
実施例12.
20Wt%硝酸カリウム溶液10mlを調製し、水酸化カリウムを用いてpH値を3.0に調整した。又、35Wt%硝酸ランタン溶液、80Wt%硝酸亜鉛溶液80mlを調製し、pH値を2.0に調整した。等体積噴霧浸透方法により、前記の溶液をそれぞれ70gのγ−アルミナ担体へ1時間浸透させた。続いて、150℃、8時間の条件でベーキングし、700℃、3時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化カリウム:2wt%、酸化ランタン:2wt%、酸化亜鉛:27 wt%、アルミナ:69wt%であった。
【0037】
尿素74.96gをメタノール459.7 gに溶解して混合溶液を調製した後、触媒精留反応器の触媒段の上部より、該尿素メタノール溶液を10ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを20ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給した。反応温度を200℃、反応圧力を1.5MPaとした。塔底温度は200℃、濃縮段温度は200℃、精留段温度は200℃、還流比は10:1にした。その結果を表1に示す。
【0038】
実施例13.
70Wt%塩化マグネシウム溶液100mlを調製し、水酸化カリウムを用いてそのpH値を1.5に調整した後、等体積噴霧浸透方法により、該溶液を60gの分子篩担体へ1時間浸透させた。続いて、150℃、8時間の条件でベーキングし、950℃、2時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化マグネシウム50wt%、分子篩50wt%であった。
【0039】
尿素74.96gをメタノール459.7 gに溶解して混合溶液を調製した後、触媒精留反応器の触媒段の上部より、該尿素メタノール溶液を1ml/g-cat min供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを3ml/g-cat min供給速度で触媒床に供給した。反応温度を200℃、圧力を2.0MPaとした。塔底温度は200℃、濃縮段温度は200℃、精留段温度は200℃、還流比は4:1とした。その結果を表1に示す。
【0040】
実施例14.
70Wt%硝酸鉛溶液100mlを調製し、水酸化カリウムを用いてそのpH値を0.5に調整した後、等体積噴霧浸透方法により、該溶液を60gの分子篩担体へ1時間浸透させた。続いて、150℃、10時間の条件でベーキングし、750℃、10時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化鉛:36wt%、分子篩:64wt%であった。
【0041】
尿素74.96gをメタノール459.7 gに溶解して混合溶液を調製した後、触媒精留反応器の触媒段の上部より、該尿素メタノール溶液を0.2ml/g-cat min供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを0.8ml/g-cat min供給速度で,触媒床に供給した。反応温度を185℃、圧力を1.0MPaとした。塔底温度は120℃、濃縮段温度は170℃、精留段温度は185℃、還流比は4:1とした。その結果を表1に示す。
【0042】
実施例15.
60Wt%硝酸ナトリウム溶液100mlを調製し、水酸化カリウムを用いてそのpH値を3.5に調整した後、等体積噴霧浸透方法により、該溶液を70gのシリカ担体へ1時間浸透させた。続いて、180℃、10時間の条件でベーキングし、800℃、12時間の条件で焼成した。得られた触媒の組成は、酸化ナトリウム:25wt%、シリカ:75wt%であった。
【0043】
尿素30gをメタノール120.13gに溶解して混合溶液を調製した後、触媒精留反応器の触媒段の上部より、該尿素メタノール溶液を1ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを5ml/g-cat minの供給速度で,触媒床に供給した。反応温度を190℃、圧力を2.0MPaとした。塔底温度は130℃、濃縮段温度は180℃、精留段温度は190℃、還流比は4:1とした。その結果を表1に示す。
【0044】
表1.


【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素とメタノールからジメチルカーボネートを合成するのに用いる触媒であって、
前記触媒の組成(重量百分率)は、活性成分20〜50wt%、担体80〜50wt%であり、
前記担体は、活性炭、α−アルミナ、γ−アルミナ、シリカ又は分子篩を含み、且つ前記活性成分は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移元素の酸化物及び塩化物中の一種又は二種以上の組み合わせであることを特徴とする尿素とメタノールからジメチルカーボネートを合成するのに用いる触媒。
【請求項2】
前記アルカリ金属がK、Na、Cs又はLiであることを特徴とする請求項1記載の尿素とメタノールからジメチルカーボネートを合成するのに用いる触媒。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属が、Ca又はMgであることを特徴とする請求項1記載の尿素とメタノールからジメチルカーボネートを合成するのに用いる触媒。
【請求項4】
前記遷移元素が、Zn、Pb、Mn、La又はCeであることを特徴とする請求項1記載の尿素とメタノールからジメチルカーボネートを合成するのに用いる触媒。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の尿素とメタノールからジメチルカーボネートを合成するのに用いる触媒を製造する方法であって、
20〜50wt%が活性成分、80〜50wt%が担体である触媒の組成(重量百分率)で、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移元素の一種又は二種以上の可溶性金属塩を含む水溶液を作製し、溶液のpH値を0〜5の範囲に調節した後、等体積噴霧浸透方法により、該水溶液を担体に噴霧浸透させ、続いで100℃〜250℃、2〜24時間の条件でベーキングし、最後に500℃〜1000℃、2〜12時間の条件で焼成する工程を包含することを特徴とする尿素とメタノールからジメチルカーボネートを合成するのに用いる触媒の製造方法。
【請求項6】
前記可溶性金属塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移元素の硝酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、水酸化物又はハロゲン化物を含むことを特徴とする請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記pH値が、1〜3の範囲であることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
【請求項8】
前記焙成温度が、650〜850℃であることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
【請求項9】
前記焙成時間が、3〜8hrであることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
【請求項10】
(1)尿素をメタノールに溶解して、尿素の重量百分率が1〜99%である尿素メタノール溶液を作製し、
(2)触媒精留反応器の触媒段の上部より、該尿素メタノール溶液を0.01−10ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、触媒精留反応器の触媒段の下部より、反応原料であるメタノールを0.01−20ml/g-cat minの供給速度で触媒床に供給し、反応温度を120〜250℃、圧力を0.1 MPa〜5MPa、塔底温度を70〜210℃、濃縮段温度を70〜250℃、精留段温度を70〜280℃、還流比を1〜20:1とすることによってジメチルカーボネートを製造する方法であって、
請求項1から4の何れか一項に記載の触媒を使用することを特徴とするジメチルカーボネートの製造方法。
【請求項11】
前記尿素メタノール溶液中の尿素が20〜50重量%であることを特徴とする請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
前記尿素メタノール溶液の供給速度が、0.1〜2 ml/g-cat minであることを特徴とする請求項10記載の製造方法。
【請求項13】
前記反応原料メタノールの供給速度が0.1〜10 ml/g-cat minであることを特徴とする請求項10記載の製造方法。
【請求項14】
前記反応温度が150〜200℃であることを特徴とする請求項10記載の製造方法。
【請求項15】
前記反応圧力が、0.5 MPa 〜3MPaであることを特徴とする請求項10記載の製造方法。
【請求項16】
前記塔底温度が110〜180℃であることを特徴とする請求項10記載の製造方法。
【請求項17】
前記濃縮段温度が150〜190℃であることを特徴とする請求項10記載の製造方法。
【請求項18】
前記精留段温度が150〜200℃であることを特徴とする請求項10記載の製造方法。
【請求項19】
前記還流比が1〜6:1であることを特徴とする請求項10記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−61905(P2006−61905A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235315(P2005−235315)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(505308272)中國科學院山西煤炭化學研究所 (1)
【出願人】(505308283)肥城阿斯徳化工有限公司 (1)
【Fターム(参考)】