説明

局内光回線終端装置及び局内光回線終端装置の帯域付与方法

【課題】ONUが突発的に給電が絶たれてもDyingGaspをOLTへ確実に送信する。
【解決手段】本発明は、複数のONUと光ファイバ等で接続されてネットワークシステムを構成するOLT及びその帯域付与方法である。少なくとも、OLT単位に設定されるDBA周期Tdba[Sec]、登録される任意のONUの電力保持時間Tdg[Sec]、ONUの最低保証帯域Bmin[bps]、OLT−ONU間のシステムとして許容する導通フレームの最大長Fmax[Byte]及びONUのベストエフォートON/OFFの各パラメータから、DyingGasp送出が可能かどうかの判定を行い、DBA周期X(X=Tdg÷Tdba、Xは1以上の整数)回に1回、REPORT送信用GrantにDyingGasp用帯域を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1:n接続のようなE-PON[(Ethernet Passive Optical Network)(Ethernetは登録商標)]形のトポロジーを用い、ONU(光加入者線終端装置:Optical Network Unit)からの送信を制御するOLT(局内光回線終端装置:Optical Line Terminal)及びOLTの帯域付与方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にE-PON装置は、図1に示すように、1台のOLTと、複数のONUとを光ファイバ及び光カプラ等で接続するPoint to Multi Point型の光加入者ネットワークシステムである。OLTとONUとの間で通信をする場合の動作は、IEEE802.3ah、IEEE802.3av(米国電気電子学会)で標準化されている。ONUはLLID(ロジカルリンク識別子)にて論理的に識別される。下り信号(OLT→ONUの方向の信号)は、スプリッタで分岐された全てのONUに到達する為、ONUでは、自分宛のLLIDもしくは全員宛のLLID(Broadcast LLID)を受信し、他宛のLLIDは廃棄する。
【0003】
また、上り信号(ONU→OLTの方向の信号)は、各ONUから送出されたフレームを光カプラで合波される為、各ONUが送出する光信号の送信タイミングを制御しないと衝突が発生する。
【0004】
衝突を回避する為の方法として、OLTは、送出のタイミングと送出する長さとを各ONUに指示し、各ONUはその指示に従い送出することで衝突を回避している。
【0005】
このOLTが決定する各ONUの上りフレーム送出量は、各ONUから申告されたREPORTフレームによる上り送信帯域のリクエスト量を元にOLTにて決定され、OLTから送出されるGATEフレームにて各ONUの上り信号の送出タイミングが指示される。この上り信号の送出タイミングとは、ONUが上り信号の送信帯域のリクエストを出す為のREPORT帯域と、ユーザデータを出す為の帯域の2つからなる。REPORT帯域は、常時、上り帯域のリクエスト量の申告を行う必要から、DBA周期と呼ばれる一定の間隔で帯域を付与されることが一般的である。一方、ユーザデータの帯域は上りのデータ送出が発生した場合のみ申告され、REPORTによる上り送信帯域のリクエスト量が”0”の場合には、OLTはGATEフレームにて指示するONUの上り信号送信の量は”0”になる。このようにONUからのREPORTによる申告状況に応じて動的に帯域を割り当てる方法をDBA(動的帯域割当:Dynamic Bandwidth Allocation)と言い、中でもREPORTのステータスに応じて割当を行うことを特徴としたDBAの方法をSR-DBA(Status Reporting - DBA)と言う。
【0006】
SR-DBAを実施する場合の特徴として、図2に示すように、REPORTを一定時間の間に収集し、収集したREPORT情報から一定時間で割当の計算を行い、GATEにて帯域の割当を行う必要がある。従って、REPORT帯域と上り各ONUのユーザ帯域は時間的に分けられる。つまり、ONUはREPORTのみを一旦上り送出し、次にユーザデータを送出するという2回のバーストに分けて上り送出を行う。
【0007】
OLTの中で一定時間の周期をDBA周期と言い、このDBA周期は一般的に、OLTとONUの距離が長くなればなるほど、またOLTに接続されるONUの台数が多くなればなるほど、またOLTでの帯域付与の演算が複雑で演算時間が長くなればなるほど、長く取る必要がある。なお、PON装置では、各ONUから集められるデータに対してOLT側にて各々のデータにその都度同期しデータ抽出する必要がある為、上りデータは、図3に示すように、ONUのレーザーが点灯及び滅灯する為に必要とする時間(Laser On Time、Laser Off Time)やOLTが同期するために必要な時間(Sync Time)がある。それらを称してバーストオーバーヘッドと呼ばれ、上り送信には必ず必要となる時間である。
【0008】
この場合、SR-DBAにて各々のONUの申告してくるデータ量の合計が、上り全帯域量を超える場合が想定される。このようにONUの申告値が輻輳している場合でも、任意のONUに対してある一定の上り帯域を最低限確保したいという要求がある。このようなONUには優先的に帯域を確保するように帯域配分を設定することが可能である。この帯域を保証帯域と呼ぶ。また、この保証帯域以外の余り帯域を、他のONU各々でシェアして使用することができる帯域としてベストエフォート帯域と呼ぶ。ベストエフォート帯域の配分方法は、余った帯域を、要求している全ONUにて均等に配分するものや、任意の係数に比例して配分するものなど、さまざまな配分方法がある。これらの保証帯域やベストエフォート帯域は個々のONU単位に任意に設定できるものが一般的である。
【0009】
ここで保証帯域が0.1Mbpsでベストエフォート配分無し(ベストエフォートOFF)という場合の帯域付与の例を考える。
【0010】
まず、Ethernetにおける帯域の表現方法は、可変長のEthernetフレーム(例64Byte〜1518Byte)にPreambleの8Byte、最小IFG(Inter Frame Gap)の12Byteを付加して隙間無く伝送した場合に100%のワイヤーレート(ギガビットイーサネット(イーサネットは登録商標)の場合は1000Mbps)となる。従って、0.1Mbpsとは、64Byte長のEthernetフレームの場合には、100000bit÷8bit÷(64+8+12)Byte=148.81Frame/Sec、つまり1秒間に148.81Frame送信することを意味する。
【0011】
一方、1518byte長のEthernetフレームの場合だと、100000bit÷8bit÷(1518+8+12)Byte=8.13Frame/Secとなる。これは1518byteを平均間隔で送信する場合に換算すると、約123mSに1Frameの割合での送出となる。
【0012】
これをPON装置の上り信号区間で考えると、DBA周期を500uSとした場合には、上記の1518Byteの場合だと、一度1518Byteを送信した場合、平均的に0.1Mbpsを送出しようとすると123mSに1回つまり246DBA周期に1回の送出割合となる。
【0013】
SR-DBAを用いたPONシステムの1518ByteFrameの送信例を図4に示す。
【0014】
また、IEEE802.3ahによるとEPONシステムにおいて、ONUの電源断が発生した場合には、OAMフレーム(ONU用の管理フレーム)を用いて電源断通知(DyingGasp)メッセージをONUからOLTへ通知する必要がある。
【0015】
DyingGaspメッセージはONUが自ら電源状態を監視し、電源断の発生を契機にOLTへ通知するメッセージである為、電源断発生からOLTへ通知するまでの間は、コンデンサなど一定時間電荷を貯めておくような仕組みが必要である。
【0016】
SR-DBAにおけるDyingGaspメッセージの送信方法も、REPORTフレームにて帯域を要求し、OLTからGATEフレームにてgrant(割当)を付与されてONUから出力されるという点では、図4に説明した送出の方法と同じである。
【0017】
尚、IEEE802.3ahにおけるDyingGaspメッセージ送出のOAMフレーム長は64Byteである。
【0018】
また、ONU自身が電源断になるのを判断してDyingGaspを送信するものとして、特許文献1に記載の通信システムがある。この通信システムでは、ONU自身が動作不能となる状態が近いことを検知し、OLTに対してDyingGaspを送信するとともに、送信帯域要求を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008-283536
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上記従来技術では、SR-DBAにおいて、小さい保証帯域で且つベストエフォートOFFの設定や、ONU接続数の増加、ONU接続距離の長距離化、複雑なDBA演算などでDBA周期が非常に長い場合など、ONUの電源断時の電力保持時間との兼ね合いで、DyingGasp送出ができない場合が発生してしまうという問題がある。
【0021】
また、特許文献1の通信システムでは、ONUが停電等により突発的に動作不能となる場合が考慮されておらず、このような場合には対応できないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の局内光回線終端装置は、複数の光加入者線終端装置と光ファイバ等で接続されてネットワークシステムを構成する局内光回線終端装置であって、少なくとも、局内光回線終端装置単位に設定されるDBA周期Tdba[Sec]、登録される任意の光加入者線終端装置の電力保持時間Tdg[Sec]、光加入者線終端装置の最低保証帯域Bmin[bps]、局内光回線終端装置−光加入者線終端装置間のシステムとして許容する導通フレームの最大長Fmax[Byte]及び光加入者線終端装置のベストエフォートON/OFFの各パラメータから、DyingGasp送出が可能かどうかの判定を行い、DBA周期X(X=Tdg÷Tdba、Xは1以上の整数)回に1回、REPORT送信用GrantにDyingGasp用帯域を付与する機能を具備したことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の局内光回線終端装置の帯域付与方法は、上記局内光回線終端装置の処理機能と同様の構成を備えている。
【発明の効果】
【0024】
光加入者線終端装置が突発的に給電が絶たれても、DyingGaspを局内光回線終端装置へ確実に送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ネットワークシステムを示す構成図である。
【図2】REPORTの収集動作を示すタームチャートである。
【図3】上りデータのフレーム構成を示す図である。
【図4】SR-DBAを用いたPONシステムの1518ByteFrameの送信例を示すタームチャートである。
【図5】帯域の付与方法を示すタームチャートである。
【図6】DyingGaspメッセージを第1Grantに含めた場合のオーバーヘッドの減少例を示す概念図である。
【図7】局内光回線終端装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】光加入者線終端装置の構成例を示すブロック図である。
【図9】局内光回線終端装置のCPU部での処理機能を示すフローチャートである。
【図10】変形例に係るシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明はPONシステムにおける DyingGaspの送出方法の改良に関するものであって、ONUが商用電源から突発的に給電が絶たれた場合等においても前記DyingGaspをOLTへ確実に送信することができるように改良したものである。
【0027】
どのようなタイミングでONUの電源が断された場合でも、ONUの電力保持時間以内にOLTがONUに対してDyingGasp分の上り帯域付与を実施すれば、Dying Gaspメッセージは送出可能である。
【0028】
SR-DBAにおけるOLTの帯域付与アルゴリズムとして、
DyingGasp帯域付与するDBA周期間隔<ONU電力保持時間/DBA周期
(単位は1以上で取れる最大の整数)
の周期毎にDyingGasp用Grantの付与を行うことで、ONUの電力保持時間Tdg以内に最低1回はDyingGaspを送出可能となる。
【0029】
さらに、通常ユーザデータを送信する為の第2Grantではなく、REPORTを送信する為に必要な第1Grantの帯域に、DyingGaspメッセージ分(64+8+12Byte分)の拡大を実施することでDyingGaspの送出が可能になり、ユーザデータが無い場合などに無駄なバーストオーバーヘッドを使わないので、帯域の有効利用に適している。
【0030】
帯域の付与の方法として、ONUの電力保持時間Tdgは5mS、DBA周期は500uSとした場合の例を図5に示す。また、DyingGaspメッセージを、OAMフレームが送出される第2Grantではなく、第1Grantに含めた場合のオーバーヘッドの減少例を図6に示す。IEEE802.3ahによると、バーストオーバーヘッドの各Default値は、Lasar On Time=512nS、Laser Off Time=512nS、SyncTime=512nSであり、ギガビットイーサ換算で192Byte分に相当する。
【0031】
OLT10の構成例を図7に示す。OLT10は、NI側送受信部101と、ブリッジ部102と、OAM送受信部103と、MPCP送受信部104と、CPU部105と、RAM部106と、ROM部107と、PON送信部108と、PON受信部109と、PON光送受信部110とから構成されている。
【0032】
NI側送受信部101は、上位ネットワークからユーザデータであるEthernetフレームの送受信を行う。ブリッジ部102は、PON側への転送の為のバッファやVLAN識別の為のVLAN-Tag付与削除、アドレス学習、優先処理等を行う。MPCP送受信部104及びOAM送受信部103は、PONインタフェースの制御に必要な機能で、ONUのREPORT送信等を行う。ON送信部108は、ユーザデータやPON制御フレームを制御して、PON光送受信部110へ送信する。PON受信部109は、PON光送受信部110からのユーザデータやPON制御フレームを受信及び識別して、MPCP送受信部104、OAM送受信部103、ブリッジ部102へ振り分ける。PON光送受信部110は、PON送信部108からの電気信号を光信号へ変換し、PONインタフェースへの送信及びPONインタフェースからの光信号を電気信号に変換してPON受信部109へ送信する。CPU部105は、各種設定、読み出しを行うと共に、図9に示す処理機能を格納している。RAM部106は、CPU部のプログラム実行やDBA演算処理の一時記憶の為の記憶手段である。ROM部107は、装置起動のプログラムやDBA処理プログラムや設定値を格納する。
【0033】
さらに、CPU部105は、MPCP制御部104を含む各部と接続されていて、MPCP送受信部104から収集した各ONUのREPORTから、各ONUへ付与するGrant値のDBA演算処理を実施しMPCP送受信部104へ付与情報を伝達する機能を備えている。
【0034】
次に、ONU20の構成例を図8に示す。
【0035】
ONU20は、UI側送受信部201と、ブリッジ部202と、OAM送受信部203と、MPCP送受信部204と、CPU部205と、RAM部206と、ROM部207と、PON送信部208と、PON受信部209と、PON光送受信部210とから構成されている。
【0036】
UI側送受信部201は、ユーザネットワークからユーザデータであるEthernetフレームの送受信を行う。ブリッジ部202は、PON側への転送の為のバッファやVLAN識別の為のVLAN-Tag付与削除、アドレス学習、優先処理等を行う。MPCP送受信部204及びOAM送受信部203は、PONインタフェースの制御に必要な機能で、ONUのREPORT送信等を行う。PON送信部208は、ユーザデータやPON制御フレームをPON光送受信部210へ送信する。PON受信部209は、PON光送受信部210からのユーザデータやPON制御フレームを受信及び識別しMPCP送受信部204、OAM送受信部203、ブリッジ部202へ振り分ける。PON光送受信部210は、PON送信部208からの電気信号を光信号へ変換しPONインタフェースへ送信及びPONインタフェースからの光信号を電気信号に変換しPON受信部209へ送信する。CPU部205は、各種設定、読み出しを行う。RAM部206は、CPU部のプログラム実行や一時記憶の為の記憶手段である。ROM部207は、プログラムや設定値を格納する。
【0037】
さらに、CPU部205は、各部と接続されていて、UNI送受信部201から入力されバッファ部202に蓄積されたユーザフレームやOAM送受信部203に蓄積されたOAMフレーム蓄積量などを計算し、REPORT生成に必要な情報をMPCP送受信部204に伝達する機能を備えている。
【0038】
そして、OLT10は、複数のONU20と光ファイバ及び光カプラ等で接続されてネットワークシステムを構成している。
【0039】
以上の構成されたネットワークシステムは、次のように動作する。
【0040】
OLT10のCPU部105は、図9のフローチャートに示すように、OLT単位に設定されるDBA周期Tdba[Sec]を入力し(ステップST1)、登録される任意のONU#mの電力保持時間Tdg[Sec] を入力し(ステップST2)、ONU#mの最低保証帯域Bmin[bps] を入力し(ステップST3)、OLT-ONU間のシステムとして許容する導通フレームの最大長Fmax[Byte]を入力する(ステップS T4)。さらに、最大フレーム長でのレート[fps]AをA=Bmin÷(Fmax×8)にて算出し(ステップST5)、DBA周期の回数[回/Sec]BをB=1÷Tdbaにて算出する(ステップST6)。
【0041】
次いで、ステップST7にてTdg>Tdbaであるか否かを判定し、True(真)の場合、つまりONU#mの電力保持時間がDBA周期Tdbaよりも長い場合はST8に遷移する。False(偽)の場合はST1に遷移して、IF設定のDBA周期の変更を行う。
【0042】
ST8では、Tdg÷Tdba>3であるか否かを判定し、Trueの場合、つまりONU#mの電力保持時間TdgがDBA周期Tdbaの3倍より大きい場合はST9へ遷移し、Falseの場合はST11に遷移する。
【0043】
ST9では、ONU#mのPON上り帯域設定がベストエフォートOFFであるか否かを判定し、Trueの場合、つまりONU#mの設定がベストエフォートOFFの場合はST10へ遷移し、Falseの場合はST12へ遷移する。
【0044】
ST10では、最大フレーム長でのレート[fps]とDBA周期の回数[回/Sec]を比較する。即ち、A>Bか否かを判定する。ここで、最大フレーム長でのレート[fps]Aは、ST5のように、A=Bmin÷(Fmax×8)にて算出され、DBA周期の回数[回/Sec]Bは、ST6のように、B=1÷Tdbaにて算出される。A>BがTrueの場合はST12へ遷移し、Falseの場合はST11へ遷移する。
【0045】
ST11では、DyingGasp用帯域付与間隔Xの計算が、X=Tdg÷Tdbaにて行われる。尚、Xは1以上の整数である。
【0046】
ST12では、DyingGasp用帯域付与は不要と判定する。
【0047】
最終的にST11となった場合は、X回のDBA周期毎にDyingGasp用の帯域としてREPORT帯域をDyingGaspメッセージが送信できる分、つまり84Byte(64+8+12Byte)分だけ拡大して付与する動作(図6下段に示す動作)を行う。
【0048】
また最終的にST12となった場合は、DyingGasp用の帯域割付は不要であるため、上記付与動作は行わない。
【0049】
以上のように、OLT単位に設定されるDBA周期Tdba[Sec]と、登録される任意のONU#mの電力保持時間Tdg[Sec]と、ONU#mの最低保証帯域Bmin[bps]と、OLT-ONU間のシステムとして許容する導通フレームの最大長[Byte]と、ONU#mのベストエフォートON/OFFなどのパラメータから、DyingGasp送出可能かどうかの判定を行い、判定の結果、対処の必要がある場合には、DBA周期X回に1回はDyingGasp用の帯域を割り当てることで、前記DyingGaspをOLTへ確実に送信することができる。即ち、SR-DBAにおいて小さい保証帯域で且つベストエフォートOFFの設定や、ONU接続数の増加、ONU接続距離の長距離化、複雑なDBA演算などでDBA周期が非常に長い場合など、ONUの電源断時の電力保持時間との兼ね合いで、DyingGasp送出ができないという問題が解消して、上りバースト帯域を低減させることなく、前記DyingGaspをOLTへ確実に送信することができるようになる。
【0050】
[変形例]
上記実施形態では、予め接続されるONUの電量保持時間Tdgが判明している状態での説明を実施したが、ONUのマルチベンダ化等に伴い、1つのOLTに複数種類のONUが接続される可能性がある。
【0051】
それらの場合、図9のフローチャートの「ONU#m電力保持時間入力Tdg[Sec]」の変わりに、図10に示すように、実際のONUの接続のシーケンス中に、TdgをONUから取得する方法が考えられる。
【0052】
IEEE802.3ahによると図10に示すMPCP_DISCOVERYプロセス、OAM_DISCOVERYプロセスを実施した後で、認証プロセスなど実際にONUの接続が正常な接続でありユーザデータの導通を開始するプロセスよりも前の間に、図10に示すように、拡張OAMやMPCP等を使ってTdgを取得するGET_RequestメッセージをOLTからONUへ送信し、これを受けてONUはTdgの値を付加したGET_ResponseメッセージをOLTへ送出する。OLTでは、取得したTdgを使って、動作の説明にて述べた通りの動作を行うことが可能となり、消費電力や回路構成などの違いからTdgの異なる複数種類のONUをサポートすることが可能となる。
【0053】
さらに、本発明は上記実施形態そのものに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々の構成要素、公知技術等を付加、削除、変更等が可能である。
【符号の説明】
【0054】
ONU:光加入者線終端装置、OLT:局内光回線終端装置、10:OLT、101:NI側送受信部、102:ブリッジ部、103:OAM送受信部、104:MPCP送受信部、105:CPU部、106:RAM部、107:ROM部、108:PON送信部、109:PON受信部、110:PON光送受信部、20:ONU、201:UI側送受信部、202:ブリッジ部、203:OAM送受信部、208:PON送信部、209:PON受信部、210:PON光送受信部、205:CPU部、206:RAM部、207:ROM部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光加入者線終端装置と光ファイバ等で接続されてネットワークシステムを構成する局内光回線終端装置であって、
少なくとも、局内光回線終端装置単位に設定されるDBA周期Tdba[Sec]、登録される任意の光加入者線終端装置の電力保持時間Tdg[Sec]、光加入者線終端装置の最低保証帯域Bmin[bps]、局内光回線終端装置−光加入者線終端装置間のシステムとして許容する導通フレームの最大長Fmax[Byte]及び光加入者線終端装置のベストエフォートON/OFFの各パラメータから、DyingGasp送出が可能かどうかの判定を行い、DBA周期X(X=Tdg÷Tdba、Xは1以上の整数)回に1回、REPORT送信用GrantにDyingGasp用帯域を付与する処理部を具備したことを特徴とする局内光回線終端装置。
【請求項2】
請求項1に記載の局内光回線終端装置において、
上記DBA周期X回に1回、REPORT送信用GrantにDyingGasp用帯域を付与するか否かの判定を行う上記処理部が、以下のサブ処理部を備えたことを特徴とする局内光回線終端装置。
(1) 電力保持時間Tdg>DBA周期Tdbaであるか否かを判定し、電力保持時間TdgがDBA周期Tdbaよりも長い場合に後述する第2のサブ処理部の処理に遷移させ、短い場合にDBA周期を変更する第1のサブ処理部
(2) Tdg÷Tdba>3であるか否かを判定し、電力保持時間TdgがDBA周期Tdbaの3倍より大きい場合は後述する第3のサブ処理部の処理に遷移させ、小さい場合は後述する第5のサブ処理部の処理に遷移させる第2のサブ処理部
(3) 光加入者線終端装置のPON上り帯域設定がベストエフォートOFFであるか否かを判定し、設定がベストエフォートOFFの場合に後述する第4のサブ処理部の処理に遷移させ、ONの場合に第6のサブ処理部の処理に遷移させる第3のサブ処理部
(4) 最大フレーム長でのレート[fps]A>DBA周期の回数[回/Sec]Bであるか否かを判定し、AがBより小さい場合は後述する第5のサブ処理部の処理へ遷移させ、AがBより大きい場合は後述する第6のサブ処理部の処理へ遷移させる第4のサブ処理部
(5) DyingGasp用帯域付与間隔Xを、X=Tdg÷Tdba(Xは1以上の整数)で計算し、X回のDBA周期毎にDyingGasp用の帯域としてREPORT送信用Grantを拡大する第5のサブ処理部
(6) DyingGasp用帯域付与は不要と判定し、REPORT送信用Grantを拡大しない第6のサブ処理部
【請求項3】
請求項1又は2に記載の局内光回線終端装置において、
DBA周期X回に1回のDyingGasp用帯域を必要とされた場合に、DyingGaspメッセージを送出する為のGrantを付与する機能を備えたことを特徴とする局内光回線終端装置。
【請求項4】
請求項3に記載の局内光回線終端装置において、
上記DyingGaspメッセージ送出の為のGrant付与において、DyingGaspメッセージそのものの長さ分だけREPORT送信用Grantを拡大し、ユーザデータの送出が無い場合にバーストオーバーヘッドの無駄使いによる上り帯域効率の劣化を防ぐ機能を具備したことを特徴とする局内光回線終端装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の局内光回線終端装置において、
上記光加入者線終端装置の電力保持時間Tdgを、拡張OAM又はMPCPを用いて収集することを特徴とする局内光回線終端装置。
【請求項6】
複数の光加入者線終端装置と光ファイバ等で接続されてネットワークシステムを構成する局内光回線終端装置の帯域付与方法であって、
少なくとも、局内光回線終端装置単位に設定されるDBA周期Tdba[Sec]、登録される任意の光加入者線終端装置の電力保持時間Tdg[Sec]、光加入者線終端装置の最低保証帯域Bmin[bps]、局内光回線終端装置−光加入者線終端装置間のシステムとして許容する導通フレームの最大長Fmax[Byte]及び光加入者線終端装置のベストエフォートON/OFFの各パラメータから、DyingGasp送出が可能かどうかの判定を行い、DBA周期X(X=Tdg÷Tdba、Xは1以上の整数)回に1回、REPORT送信用GrantにDyingGasp用帯域を付与することを特徴とする局内光回線終端装置の帯域付与方法。
【請求項7】
請求項6に記載の局内光回線終端装置の帯域付与方法において、
上記DBA周期X回に1回、REPORT送信用GrantにDyingGasp用帯域を付与するか否かの判定を、以下の処理工程で行うことを特徴とする局内光回線終端装置の帯域付与方法。
(1) 電力保持時間Tdg>DBA周期Tdbaであるか否かを判定し、電力保持時間TdgがDBA周期Tdbaよりも長い場合に後述する第2の処理工程に遷移し、短い場合にDBA周期を変更する第1の処理工程
(2) Tdg÷Tdba>3であるか否かを判定し、電力保持時間TdgがDBA周期Tdbaの3倍より大きい場合は後述する第3の処理工程に遷移し、小さい場合は後述する第5の処理工程に遷移する第2の処理工程
(3) 光加入者線終端装置のPON上り帯域設定がベストエフォートOFFであるか否かを判定し、設定がベストエフォートOFFの場合に後述する第4の処理工程に遷移し、ONの場合に第6の処理工程に遷移する第3の処理工程
(4) 最大フレーム長でのレート[fps]A>DBA周期の回数[回/Sec]Bであるか否かを判定し、AがBより小さい場合は後述する第5の処理へ遷移し、AがBより大きい場合は後述する第6の処理へ遷移する第4の処理工程
(5) DyingGasp用帯域付与間隔Xを、X=Tdg÷Tdba(Xは1以上の整数)で計算し、X回のDBA周期毎にDyingGasp用の帯域としてREPORT送信用Grantを拡大する第5の処理工程
(6) DyingGasp用帯域付与は不要と判定し、REPORT送信用Grantを拡大しない第6の処理工程
【請求項8】
請求項6又は7に記載の局内光回線終端装置の帯域付与方法において、
DBA周期X回に1回のDyingGasp用帯域を必要とされた場合に、DyingGaspメッセージを送出する為のGrantを付与することを特徴とする局内光回線終端装置の帯域付与方法。
【請求項9】
請求項8に記載の局内光回線終端装置の帯域付与方法において、
上記DyingGaspメッセージ送出の為のGrant付与において、DyingGaspメッセージそのものの長さ分だけREPORT送信用Grantを拡大し、ユーザデータの送出が無い場合にバーストオーバーヘッドの無駄使いによる上り帯域効率の劣化を防ぐことを特徴とする局内光回線終端装置の帯域付与方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか1項に記載の局内光回線終端装置の帯域付与方法において、
上記光加入者線終端装置の電力保持時間Tdgを、拡張OAM又はMPCPを用いて収集することを特徴とする局内光回線終端装置の帯域付与方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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