説明

局所感染と全身感染を区別するための遺伝子活性検出用ポリヌクレオチドの使用

【課題】生体試料中の疾患関連遺伝子の発現変化を鑑別することによって、局所感染と全身感染の区別、診断並びに/若しくは経過観察及び/又は治療を可能にする手段と方法の提供
【解決手段】本発明は、局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者を区別するための遺伝子活性の検出に対するSEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69並びに/若しくはそれらの遺伝子座及び/又はそれらの転写産物に従うそれぞれの配列のヌクレオチド数に対して2〜100%の長さをもつポリヌクレオチドの使用に関する。ここではSEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に従う配列のすべてが使用される。同時に方法及びこの方法を実行するためのキットに関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に基づけば、局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者を区別するための遺伝子活性検出用のポリヌクレオチド並びに/若しくはその遺伝座及び/又はその転写産物の使用に関する。また請求項3及び請求項15に基づけば、局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者を区別するために、患者の試料から得られた遺伝子活性を使用することに関する。本発明は、さらに請求項17に基づけば、インビトロにおける遺伝子活性の測定方法に関し、また、請求項25に基づけばキットに関する。
【0002】
本発明は、特に、遺伝子発現分析により局所感染と全身感染を区別するためのマーカー遺伝子並びに/若しくはその断片及びそれらの使用に関する。さらに本発明は、マーカー遺伝子に由来するPCRプライマー及びプローブに関する。
【背景技術】
【0003】
リポ多糖などの細菌細胞壁成分は血中サイトカイン濃度の変化をもたらす(Mathiak
2003)。また、プロカルシトニン(PCT)やマンナン結合レクチン(MBL)などそれぞれのタンパク質マーカーは、術後感染の指標として用いられる(Siassi 2005)。細菌病原体に対する血液の免疫反応は、また、機能ゲノミクスによって特徴づけることができ(Feezor and Moldawer 2003, M. Foti et al., 2006)、さらに細菌タンパク質は、宿主細胞の転写と翻訳に変化を引き起こす原因となる(Flo 2004)。従って遺伝子発現プロフィールは、抗菌物質の作用機構の決定に使用することができる(Hutter 2004)。血液試料中の遺伝子の転写分析は、生存する敗血症患者と生存しない敗血症患者の相違を明らかにすることに利用される(Pachot 2006)。
【0004】
さまざまな疾患においてそれぞれの遺伝子の発現変化が知られており、また局所感染の場合、それぞれの発現変化がマウス筋肉組織において記述されており(A. Boelen, 2005)、さらにニワトリ(X. Wang, 2006)又はブタの腸管粘膜(T. A. Niewold, 2006)において局所ウイルス感染した上皮細胞におけるいくつかの遺伝子変化についの記述があるが、局所感染と全身感染の区別のために、マーカー遺伝子とそれらの転写産物についても、また全血試料と血液細胞から得られるいくつかの定量的転写値を組み合わせた使用についても知られていない。また一方、動物モデルで実施された発現分析は、必ずしもヒトの病態生理に置き換えることができるとは限らないことが文献(Rittirsch et al., 2006 and Esmond, 2004)から知られている。
【0005】
全血中に局在しており、血液、血液細胞及び臓器並びに末梢組織からの細胞に由来する可変濃度の転写産物(またmRNAや低分子RNA、特にマイクロRNAや付加RNA)の定量は、血液に基づく診断支援のための必須条件である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Boelen A, Kwakkel J, Alkemade A, et al.Induction of type 3 deiodinase activity in inflammatory cells of mice withchronic local inflammation. Endocrinology.2005 Dec;146(12):5128-34. Epub 2005 Sep 8.
【0007】
【非特許文献2】BoxG, Cox D. An analysis of transformations (with discussion). Journal of theRoyal Society B 1964; 26, 211-252.
【0008】
【非特許文献3】Brazma A, Hingamp P, Quackenbush J, et al., Minimum information about amicroarray experiment (MIAME)-toward standards for microarray data. Nat Genet.2001Dec;29(4):365-71.
【0009】
【非特許文献4】FeezorRJ, Moldawer LL. Genetic Polymorphisms, Functional Genomics and the HostInflammatory Response to Injury and Inflammation. Nestle Nutr Workshop Ser ClinPerform Programme. 2003;8:15-32; discussion 32-7.
【0010】
【非特許文献5】FloTH, Smith KD, Sato S, et al. Lipocalin 2 mediates an innate immune response tobacterial infection by sequestrating iron. Nature. 2004 Dec16;432(7019):917-21. Epub 2004 Nov 7.
【0011】
【非特許文献6】FotiM, Granucci F, Pelizzola M, et al. Dendritic cells in pathogen recognition andinduction of immune responses: a functional genomics approach. J Leukoc Biol.2006 May;79(5):913-6.
【0012】
【非特許文献7】HodgesJL, Lehmann EL. Estimates of location based on rank tests. The Annales ofMathematical Statistics 1963; 34, 598-611.
【0013】
【非特許文献8】Hutter B, Schaab C, Albrecht S, et al.Prediction of Mechanisms of Action of Antibacterial Compounds by GeneExpression Profiling. AntimicrobAgents Chemother. 2004 Aug;48(8):2838-44.
【0014】
【非特許文献9】MathiakG, Kabir K, Grass G, et al. Lipopolysaccharides from different bacterialsources elicit disparate cytokine responses in whole blood assays. Int J MolMed. 2003 Jan;11(1):41-4.
【0015】
【非特許文献10】NiewoldTA, Veldhuizen EJ, van der Meulen J, et al. The early transcriptional responseof pig small intestinal mucosa to invasion by Salmonella enterica serovartyphimurium DT104. Mol Immunol. 2007 Feb;44(6):1316-22. Epub 2006 Aug 1.
【0016】
【非特許文献11】PachotA, Lepape A, Vey S, et al. Systemic transcriptional analysis in survivor andnon-survivor septic shock patients: a preliminary study. Immunol Lett. 2006 Jul15;106(1):63-71. Epub 2006 May 17.
【0017】
【非特許文献12】HasteT, Tibshirani R, Friedman J. The Elements of Statistical Learning; Data mining,Inference, and Prediction. Springer 2001.
【0018】
【非特許文献13】SiassiM, Riese J, Steffensen R, et al. Mannan-binding lectin and procalcitoninmeasurement for prediction of post-operative infection. Crit Care. 2005 Oct5;9(5):R483-9. Epub 2005 Jul 19.
【0019】
【非特許文献14】WangX, Rosa AJ, Oliverira HN, et al. Transcriptome of local innate and adaptiveimmunity during early phase of infectious bronchitis viral infection. VitalImmunol. 2006 Winter;19(4):768-74.
【発明の概要】
【0020】
本特許出願において開示される発明の出発点は、局所感染や全身感染した場合に、個体試料の血液細胞中に存在している種々の遺伝子の遺伝子活性は、局所感染も全身感染もないと診断された当該個体の遺伝子の遺伝子活性とは異なっており、また血液からの転写産物の疾患依存的な濃度変化を伴うマーカー遺伝子として、共同で又は単独で使用することができるという発見である。これら遺伝子の活性の正規化又は相対的定量化は、診断、予後診断、治療観察及び経過観察を補助するものとして利用することができる。
【0021】
従って本発明は、生体試料中の疾患関連遺伝子の発現変化を鑑別することによって、局所感染と全身感染の区別、診断並びに/若しくは経過観察及び/又は治療を可能にする手段と方法を提供するという目的に基づく。

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】局所感染及び全身感染を区別するため、関連遺伝子からの無作為選択を説明するためのいわゆるヒートマップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この目的は、請求項1、3及び15の特徴によって達成される。
【0024】
方法に関しては、この目的は請求項17の特徴によって達成される。
【0025】
請求項25に基づくキットは、同様にこの目的を達成する。
【0026】
従属する請求項は、本発明の好ましい実施態様を示す。
【0027】
定義
本発明の目的のために、以下の定義を用いる。
【0028】
局所感染:局所感染とは、病原体が感染部位にとどまり、さらに体内に広がることなく、この位置でのみ症状を引き起こす感染である。例として局所感染には気道感染、下痢、又は皮膚のできものがある。
【0029】
全身感染とは、病原体が臓器系全体又は生物全体にわたって広がる感染である。
【0030】
体液:本発明が意図するものの範囲内で、体液とはヒトを含む哺乳動物の任意の体液であると理解される。
【0031】
遺伝子:遺伝子とは、生物学的に活性のあるリボ核酸(RNA)を産生するための基本情報を含むデオキシリボ核酸(DNA)上の部分である。本発明が意図するものの範囲内で遺伝子はさらに、導き出された任意のDNA配列、部分配列及び合成類似体(例えばペプチド核酸(PNA))であると理解される。従ってRNAレベルでの遺伝子発現の測定に関する本発明の記述は、ある制限を構成するものではなく、応用例を構成するものである。
【0032】
遺伝子座:遺伝子座とはゲノムにおける遺伝子の位置である。ゲノムがいくつかの染色体から成る場合には、遺伝子座は遺伝子がある染色体内の位置をいう。この遺伝子のさまざまな発現又は変異体は対立遺伝子と呼ばれ、すべてが染色体すなわち遺伝子座上の同じ位置にある。従って遺伝子座という用語には、一方においては特定の遺伝子産物に対する純粋な遺伝情報が含まれ、他方では、遺伝子座での遺伝子によって任意の機能又は非機能状況にある任意の調節DNA部分及び任意の付加DNA配列が含まれる。
【0033】
遺伝子活性:遺伝子活性とは、転写される遺伝子及び/又は翻訳産物を生成する遺伝子の能力の程度であると理解される。
【0034】
遺伝子発現とは、遺伝子の生成過程及び/又は遺伝子型の表現型への発現である。
【0035】
マーカー遺伝子:マーカー遺伝子とは、異なるRNA試料について、遺伝子の発現及び転写が疾患に関連して変化を示す遺伝子であり、また遺伝子活性の変化が、異なる試料について診断、経過観察及び治療観察の目的に役立つことを示す遺伝子である。
【0036】
ハイブリダイゼーション条件とは、当業者によく知られており、自由分子と結合分子の熱力学的平衡の達成に影響し得る物理的及び化学的なパラメーターである。最適なハイブリダイゼーション条件のために、プローブ分子とサンプル分子の接触時間、ハイブリダイゼーション緩衝液中のカチオン濃度、温度、容量及びハイブリダイズする分子の濃度や濃度比を相互に調和させなければならない。
【0037】
増幅条件とは、核酸の形を持つ出発物質の再生産を可能にする、周期的に変化する反応条件である。反応混合物中には、出発物質の相補領域に付着することができる短いオリゴヌクレオチドと同じような、核酸生成のための1つの成分(デオキシヌクレオチド)の他に、ポリメラーゼと呼ばれる核酸合成酵素が存在している。当業者によく知られているカチオン濃度、pH値、容量及び周期的に繰り返される1つの反応ステップの時間と温度は、増幅の進捗に重要である。
【0038】
プライマー:本発明の構成においてプライマーと呼ばれるものは、例えばDNAポリメラーゼなどDNA複製酵素のための出発点としての役目を果たすオリゴヌクレオチドである。プライマーはDNAのみならずRNAでもまた作成される(Primer3;例えば、MITの http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi
を参照)。
【0039】
プローブ:本出願においてプローブとは、分子標識(例えば蛍光標識、特に分子ビーコン、TaqMan(登録商標)プローブ、同位体標識など)を備えてもよく、また、標的DNA分子及び/又は標的RNA分子の配列特異的な検出に用いられる核酸断片(DNA又はRNA)である。
【0040】
PCRとは、英語名称である“Polymerase Chain Reaction”の略号である。ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)は、DNA依存的DNAポリメラーゼを用いて、生体外のインビトロでDNAを複製する方法である。PCRは、特に本発明に基づけば、興味のあるDNA鎖の約3000塩基対までの短い一部を複製するために用いられる。DNA鎖は、遺伝子若しくは遺伝子のごく一部、又は非コードDNA配列であってもよい。当業者は、PCR法のすべては“PCR”の表現に含まれ、多くのPCR法は先行技術として知られていることを十分理解している。これは特に“リアルタイムPCR”について当てはまる。
【0041】
PCRプライマー:PCRは一般的に2本のプライマーを必要とするが、これは、複製されるべき領域が両側で限定される個別の2つの一本鎖DNAに関して、DNA合成のための出発点を固定するためである。このようなプライマーは当業者によく知られており、例えばウェブサイトである“Primer3”;MITの http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi
を参照することができる。
【0042】
転写産物:本発明の目的に対して、転写産物とはDNA鋳型を用いて産生される任意のRNA産物であると理解される。
【0043】
低分子RNA:一般的な低分子RNAである。しかしながらこのグループの代表は特に排他的ではない。
a)scRNA(低分子細胞質RNA)は真核生物の細胞質中にあるいくつかの低分子RNA分子のひとつである。
b)snRNA(低分子核RNA)は細胞核にのみ存在する多くの低分子RNA種のひとつである。snRNAのあるものは、スプライシング又は他のRNA処理反応に関与する。
c)低分子非タンパク質コードRNAは、いわゆる低分子核RNA(snoRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)及び低分子二本鎖RNA(dsRNA)を含み、遺伝子発現を多様なレベルで可能にするが、多様なレベルにはクロマチン構造、RNA編集、RNA安定性、翻訳、及び、場合により転写とスプライシングも含まれる。一般的にこれらのRNAは、タンパク質コード転写産物を含むより長い一次転写産物であるイントロンとエクソンから、複数の経路を介して処理される。
ヒトゲノムのおよそ1.2%だけがタンパク質をコードするが、それにもかかわらず大部分は転写される。実際のところ、哺乳動物やヒトで見いだされる転写産物のおよそ98%は、タンパク質コード遺伝子のイントロンや非タンパク質コード遺伝子のエクソンとイントロンといった非タンパク質コードRNA(ncRNA)で構成されており、タンパク質コード遺伝子のアンチセンス又はこれらが重複したものを多く含む。
【0044】
低分子核RNA(snoRNA)は、標的RNAにおいてヌクレオチドの配列特異的な修飾を調節している。ここで2種類の修飾が生じており、すなわち、2'-O-リボースメチル化と偽ウリジル化であり、これらは、一方でボックスC/D−snoRNAと呼ばれ、他方ではボックスH/ACA
snoRNAと呼ばれる2つの大きなsnoRNAファミリーによって調節されている。そのようなsnoRNAはおよそ60から300ヌクレオチドの長さを示す。
【0045】
miRNA(マイクロRNA)とsiRNA(低分子干渉RNA)は同じくらいのより低分子のRNAであり、一般的に21個から25個のヌクレオチドを有する。miRNAは内在性の低分子ヘアピン前駆体構造から生じ、翻訳抑制の標的として類似しているが同一ではない配列を持つ他の遺伝子座を使用する。
【0046】
siRNAは、しばしば外因性の起源であるより長い二本鎖RNA又は長いヘアピンから生じる。siRNAは、通常、試料の遺伝子座又はゲノム中の他の位置にある相同配列を標的とし、そこでいわゆる遺伝子抑制、RNAiともいわれる現象に関与する。
しかしながら、miRNAとsiRNAとの境界は流動的である。
【0047】
d)さらに“低分子RNA”の表現は、いわゆる転移因子(TE)、特にレトロエレメントも含むことができる。これらは本発明の目的に対して、“低分子RNA”の表現で理解される。
【0048】
本発明は、マイクロアレイ、リアルタイムPCRアッセイ及び他の測定系で、血液及び血液細胞から正規化され定量的な発現データを測定するための、血液からの新たなマーカー遺伝子の同定、適切なマイクロアレイプローブ及びこれらの使用、さらにこれらを組み合わせた使用について記述する。そして局所炎症の判定のため、また一般的な全身炎症、感染及び全身反応において結果としてそこに生じる免疫反応を区別するため、測定には増幅の有無及び定量化や可視化のさまざまな可能性が伴う。
【0049】
本発明の方法は、個体の体液サンプル、特に血液サンプル又は組織サンプルについて、局所感染と全身感染を区別することが可能であるということに特徴付けられる。それは、1個又は数個のマーカー遺伝子の活性を用いて、参照遺伝子の遺伝子産物量と比較した、又は当業者に知られたさらなる方法により正規化又は定量化された遺伝子産物の存在と量を確認することによる。
【0050】
この目的のために開示されるものは、血液及び血液細胞から得られる遺伝子配列とそれらに由来するプローブであり、これらは遺伝子活性と転写産物の測定、可視化、正規化及び定量化に用いることができる。好ましい実施態様におけるオリゴヌクレオチドプローブの配列は表1〜5に示され、添付された配列プロトコールSEQ ID No.1〜SEQ ID No.69に対応する。ここで、50〜100ヌクレオチドの長さをもつ好ましい実施態様においては、オリゴヌクレオチドプローブの配列からさらなる配列を推測してもよく、これらは、SEQ ID No.1〜SEQ ID No.69の配列をもつ表1〜5に示された遺伝子の転写産物に特異的に結合する。PCRなどの増幅方法において使用される配列の長さと組み合わせは、これらが目的とする酵素的な操作と増幅に対応する限りは任意なものでよい。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
マーカー遺伝子は単独で使用してもよく、又はいくつかを組み合わせて使用してもよい。ここで記述するように、通常、マーカー遺伝子の活性は、マイクロアレイ用のハイブリダイゼーションプローブを用いて、又はPCRプライマーとリアルタイムPCRを用いて測定することができる。しかしながらマーカー遺伝子とその発現産物は、当業者に知られる他の方法、例えばNASBA(核酸配列に基づく増幅)やさまざまな組み合わせなどでも測定することができる。また、マーカー遺伝子とその発現産物は多くの方法又は可視化を可能にするもの、例えば鎖置換の利用又はモノクローナル抗体の利用などによっても測定することができる。プローブは遺伝子、発現産物(mRNA)、断片又は完全にはmRNAに加工されない発現中間産物に対して使用することができる。
【0057】
さらなる実施態様において、プローブは、本発明で開示されるマーカー遺伝子又はこれらの転写産物の特異領域に結合する。また一方で、プローブは、ここで開示される遺伝子配列又はそれから転写された配列の任意の領域と相互作用してもよい。プライマーとプローブは連続する塩基対合を介して相互作用してもよいが、必ずしも全相補配列と連続的に相互作用する必要はない。すなわち、ここでは緩衝液組成、塩濃度、洗浄手段及び温度を可変的に選択することができる。
【0058】
同様に、マーカー遺伝子の変化は、1つ又はいくつかの参照サンプルの発現値(又はこれらから得られる平均値などのデータ)と比較することができる。参照サンプルは標的サンプルと同時に測定する必要はないが、例えば較正様式又は値若しくは表としてデータベースに保存する。
【0059】
本発明の1つの実施態様では、発現値は、表1〜5に記載されたマーカー遺伝子の他に、血液及び血液細胞から得られるマーカー遺伝子の核酸及び転写産物を用いて測定される。測定は、1つ又はいくつかの参照サンプルと発現値を比較することにより(公開されていないドイツ国特許出願DE 10 2007 010 252.8号明細書にあるように)及びマーカー核酸との関連でマーカー遺伝子発現を定量することにより行われる。
【0060】
本発明の他の実施態様は、表1〜5に記載の配列を持つ核酸及びDNAプローブ、及び低分子RNA、特にマイクロRNA、siRNA並びに/若しくは繰り返し体の結合及び/又は血液中に又は血液細胞から得られる表1〜5に記載の転写産物(RNA又はmRNA)の結合は、溶液中又は表面若しくは粒子若しくはビーズへの固定化を任意に組み合わせて用いられ、かつ、核酸の結合量(発現値)とプローブに結合した1つ又はいくつかのマーカー核酸を比較することによる正規化及び結合したマーカー核酸と比較する定量化のために、結合した遺伝子転写産物を使用することを特徴とする。
【0061】
本発明の1つの実施態様には以下の特徴がある。すなわち、参照遺伝子及びマーカー遺伝子に由来するRNA量の相関に基づいた局所感染と全身感染を、エクスビボ又はインビトロで区別する方法には次のステップが含まれる。すなわち、第2〜4相臨床試験において局所感染又は全身感染を伴う患者の選定基準又は除外基準として請求項3〜6のいずれか1項に記載の使用。
【0062】
本発明の他の実施態様は、マーカー遺伝子RNAを測定する前にマーカー遺伝子RNAをDNAとハイブリダイズさせ、そして、参照RNA/DNA複合体のマーキングシグナルを検出し、ある所定の場合においてはさらに変換し、またある所定の場合においては較正曲線又は表の形式で保存することを特徴とする。
【0063】
本発明の他の実施態様は、マーカー遺伝子又はその一部分のRNAが、配列決定又は部分配列決定によって、例えばピロシーケンスによって同定及び定量されることを特徴とする。
【0064】
本発明の他の実施態様は、mRNA又はマイクロRNAがマーカー遺伝子RNAとして使用されることを特徴とする。
【0065】
本発明の他の実施態様では、DNAは、マーカー遺伝子RNA又はそのインビトロ転写産物の特異結合に使われるマイクロアレイの形態を持つ支持体上の、予め決められた領域において、特に固定化されて用意されることを特徴とする。
【0066】
本発明の他の実施態様では、生体試料はヒトのものであることが特徴である。
【0067】
配列ID No.1〜配列ID
No.69の配列は本発明の範囲に含まれ、69個の配列を含む添付の配列プロトコールに詳細が開示されているので、本発明の一部を構成している。
【0068】
本発明の他の実施態様では、表1〜5に対応する配列から導かれる固定化又は遊離プローブは標識されていることが特徴である。この実施態様に対して、分子ビーコンと呼ばれる自己相補的オリゴヌクレオチドがプローブとして使用される。このプローブの末端には蛍光色素分子/消光剤対があるので、相補的配列が存在しない場合でもこのプローブは折り畳みヘアピン構造で存在し、対応する試料配列とのみ蛍光シグナルを与える。分子ビーコンのヘアピン構造は、試料が特異的捕捉配列とハイブリダイズし、コンフォーメーション変化とレポーター蛍光の遊離をもたらすまで安定である。
【0069】
本発明の意味するところの範囲内で、マーカー遺伝子は任意の派生するDNA配列、すなわち部分配列並びに合成類似体(例えばペプチド核酸、PNA)及びアプタマーであると理解される。RNAレベルでの遺伝子発現の測定と関連する本発明の記述は、限定を意味するものではなく、応用例を示すものである。
【0070】
本発明の方法に係る1つの応用は、局所感染と全身感染を区別するために、全血から得られる異なる遺伝子発現の測定データを決定することである。そのために、マーカー遺伝子のRNAは対応する患者の全血から単離される。その後RNAは標識される。標識には、例えば32Pによる放射活性標識又は色素分子(蛍光)による標識がある。この目的のために、従来から知られている任意の分子及び/又は検出シグナルを標識分子として利用することができる。対応する分子及び/又は方法は、当業者に等しく知られている。
【0071】
1.上記のように標識したRNAは、次いで、マイクロアレイ上に固定化したDNA分子とハイブリダイズさせる。本発明に従えば、マイクロアレイ上に固定化したDNA分子は、局所感染と全身感染を区別するための遺伝子の特異的選択性を示す。
【0072】
2.続いて、ハイブリダイズした分子のシグナル強度は、従来よく知られている適切な測定装置(蛍光体撮像装置、マイクロアレイスキャナー)で測定され、さらにソフトウェア支援評価により分析される。患者試料のマーカー遺伝子と参照遺伝子間の発現比率は、測定されたシグナル強度から決定される。下方及び/又は上方に制御された遺伝子の発現比率から、以下に示される実験のように、局所感染と全身感染の区別に関する結果を出すことが可能である。
【0073】
3.本発明の方法に係る他の応用は、計画された治療に患者が反応する可能性を、治療しながら判定すること、及び/又は特殊な治療への反応を判定し、並びに/若しくは全身感染が確認された患者において“薬物モニタリング”という意味における治療の終点の固定と全身感染の重症度の判定のための、特異的な遺伝子発現の測定にある。そのために、RNA(検査RNA及び参照RNA)は、経時的に集められた患者の血液試料から単離される。異なるRNA試料は一緒に標識され、マイクロアレイ上に固定化された選択されたマーカー遺伝子及び参照遺伝子とハイブリダイズさせる。1つ又はいくつかの参照遺伝子とマーカー遺伝子間の発現比率に基づき、計画された治療に患者が反応する可能性、及び/又は開始された治療が有効であるかどうか、並びに/若しくはどれくらい長く患者は対応して治療を受けなければならいのか、並びに/若しくは用いられた用量と継続期間で最大治療効果にすでに達したのかどうか、を評価することが可能である。
【0074】
本発明の方法に係る他の応用は、ハイブリダイゼーション非依存的方法、特に酵素又は化学的加水分解、表面プラズモン共鳴法(SPR法)、それに続く核酸及び/又はこの誘導体並びに/若しくは断片の定量化により定量的情報を得るため、本発明に基づく遺伝子のRNAを使用することにある。
【0075】
4.PCR(また例えばNASBAなどの付加的増幅方法)により増幅及び定量された参照遺伝子の転写産物は、局所並びに全身感染及びそれらの重症度の判別における遺伝子発現データの正規化のために、本発明に従う他の実施態様を構成する。増幅された転写産物のシグナル強度は、次いで適切な測定装置(PCR蛍光検出器)により測定され、さらにソフトウェア支援評価により分析される。測定されたシグナル強度から患者試料のマーカー遺伝子と参照遺伝子間の発現比率が測定される。以下で示される試験の通り、下方及び/又は上方に制御された遺伝子の発現比率に基づき、局所感染と全身感染の区別及び所定の場合にはそれらの重症度に関する結果を出すことが可能である。
【0076】
本発明の方法に係る他の応用は、いくつかの試料において、任意に増幅したmRNA定量の正規化にある。これには、a)異なる試料にわたって、SEQ ID No.1〜SEQ ID No.69より選択された1つ又はいくつかの核酸の発現値の比較;b)いくつかの試料にわたって、SEQ ID No.1〜SEQ ID No.69より選択された1つ又はいくつかの核酸の発現値の正規化のための値の導出、及びc)前記ステップb)に基づき、いくつかの試料から単離された他の核酸の発現についての正規化、が含まれる。
【0077】
本発明はさらに、マーカー遺伝子としての使用を目的とし、患者試料における遺伝子発現プロフィールのインビトロ測定を行うため、SEQ ID No.1〜SEQ ID No.69に記載の配列及び/又は少なくとも1〜100個、好ましい実施態様では1〜5個及び1〜10個の核酸を含むこれらの遺伝子断片をもつポリヌクレオチドの選択を含むキットに関する。
【0078】
本発明はさらに、マーカー遺伝子としての使用を目的とし、患者試料における遺伝子発現プロフィールのインビトロ測定を行うため、SEQ ID No.1〜SEQ ID No.69に記載のハイブリダイゼーションプローブ及び/又は少なくとも50個のヌクレオチドを含むこれらの遺伝子断片の選択を含むキットに関する。
【0079】
本発明の別の実施態様は、局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者を区別するために、少なくとも1つの患者試料からインビトロで得られた遺伝子活性を使用することにある。当該遺伝子活性は、下記のステップを含む方法により得られる:
a)患者に由来する試料から試料核酸の単離;
b)増幅条件下で、SEQ ID No.1〜SEQ ID No.69に記載の核酸配列と標識又は非標識合成オリゴヌクレオチドプライマーの接触と再生。ここで、再生部分の長さは50から3000ヌクレオチドを含み、マーカーは、局所又は全身感染した患者において異なる量で存在するこれらの遺伝子産物を示す;
c)再生核酸鎖の定性的、半定量的又は定量的測定による再生の進捗の検出、及び増幅された核酸量の評価基準である増幅シグナルと参照核酸量の増幅シグナルとの比較による一連の活性データの作成。
【0080】
マイクロアレイ又はその他の定量法、例えばリアルタイムPCRにより測定された遺伝子活性と遺伝子発現についての他の応用は、診断目的(例えば、特に細菌感染における個体の免疫反応の重症度を評価するため、また患者データ管理システム又はエキスパートシステムの枠組みにおけるもの)のソフトウェアを作成するためのさらなる電子的処理のための、又は細胞情報伝達経路のモデル化のための、局所及び全身感染の判別を目的とした利用にある。
【0081】
本発明の他の実施態様は、SEQ ID No.1〜SEQ ID No.69に記載のポリヌクレオチドの少なくとも1つ、特に核酸プローブ又は相補体は、マーカー遺伝子の転写産物又はその相補体との結合に用いられることを特徴とする。
【0082】
本発明の他の実施態様は、参照遺伝子の転写産物と結合するマーカー遺伝子の合成類似体又は合成オリゴヌクレオチドが、特におよそ60塩基対を含むことを特徴とする。
【0083】
本発明の他の実施態様は、放射活性標識、特に32P、14C、125I、33P又はHを検出可能な標識として用いることを特徴とする。
【0084】
本発明の他の実施態様は、非放射活性標識、特に色素又は蛍光標識、酵素標識若しくは免疫標識及び/又は量子ドット若しくは電気的に測定可能なシグナル、特に、例えばハイブリダイゼーションにおける電位並びに/若しくは伝導度及び/又は容量の変化を検出可能な標識として用いることを特徴とする。
【0085】
本発明の他の実施態様は、マーカー遺伝子RNA並びに参照RNA及び/又はそれらの酵素的若しくは化学的誘導体は同じ標識を持つことを特徴とする。
【0086】
本発明の他の実施態様は、マーカー遺伝子RNA並びに参照RNA及び/又は酵素的若しくは化学的誘導体は異なる標識を持つことを特徴とする。
【0087】
本発明の他の実施態様は、核酸プローブは支持体材料、例えばガラス又はプラスチックなどに固定化されることを特徴とする。
【0088】
本発明の他の実施態様は、個々のDNA分子は共有結合により支持体材料に固定化されることを特徴とする。
【0089】
本発明の他の実施態様は、個々のDNA分子は、静電相互作用並びに/若しくは双極子間相互作用並びに/若しく疎水性相互作用及び/又は水素ブリッジによって支持体材料に固定化されることを特徴とする。
【0090】
当業者は、請求項及び明細書に示された本発明の個々の特徴は、なんら制限されることなく任意にお互いを結びつけることができるということを承知する。
【0091】
請求項25に記載のキット及びポリヌクレオチドの集団は、等しく本発明の目的を達成する。
【0092】
さらに本発明は、局所又は全身感染を伴う患者の治療に伴う経過評価に役立つ。
【0093】
また本発明は、“インシリコ”エキスパートシステムの作成及び/又は細胞情報伝達経路の“インシリコ”モデル化に対して使用することができる。
【0094】
本発明に従って遺伝子発現プロフィールを作成するため、表1〜5に記載されたSEQ ID
No.1〜SEQ ID No.69から成る群、及び少なくとも5〜2000個、好ましくは20〜200個、さらに好ましくは20〜80個のヌクレオチドを含むこれらの遺伝子断片から選ばれる複数の特異遺伝子及び/又は遺伝子断片が用いられる。
【0095】
さらに本発明は、標的遺伝子の不活性化若しくは活性化及び/又は活性変換のための、及び/又は、局所又は全身感染及び局所感染から全身感染への患者の経過を監視するための遺伝子活性の測定のための、患者試料からインビトロで得られた遺伝子発現プロフィールの使用、及び/又は、SEQ ID No.1〜SEQ ID No.69から成る群及び少なくとも5〜2000個、好ましくは20〜200個、さらに好ましくは20〜80個のヌクレオチドを含むこれらの遺伝子断片より選ばれ、この目的のために使用されるプローブの使用に関する。
【0096】
本発明の他の実施態様は、特異マーカー遺伝子及び/又は遺伝子断片の少なくとも1つは、SEQ
ID No.1〜SEQ ID No.69から成る群及び少なくとも5〜2000個、好ましくは20〜200個、さらに好ましくは20〜80個のヌクレオチドを含むこれらの遺伝子断片より選ばれることを特徴とする。
【0097】
本発明の他の実施態様は、少なくとも2〜69個の異なるcDNAが使用されることを特徴とする。
【0098】
本発明の他の実施態様は、SEQ ID No.1〜SEQ ID No.69に記載された遺伝子若しくは遺伝子断片及び/又はそれらのRNAから導かれる配列は、対応する合成類似体、アプタマー及びペプチド核酸と置き換えられることを特徴とする。
【0099】
本発明の他の実施態様は、遺伝子の合成類似体は5〜100塩基対、特に約70塩基対を含むことを特徴とする。
【0100】
本発明の他の実施態様は、遺伝子活性がハイブリダイゼーション法により測定されることを特徴とする。
【0101】
本発明の他の実施態様は、遺伝子活性がマイクロアレイにより測定されることを特徴とする。
【0102】
本発明の他の実施態様は、遺伝子活性がハイブリダイゼーション非依存性の方法、特に酵素的及び/又は増幅方法、好ましくはPCRとそれに続く核酸並びに/若しくは誘導体及び/又はこれらの断片の定量、により測定されることを特徴とする。
【0103】
本発明の他の実施態様は、細胞内容物を遊離させるため、細胞試料を任意に溶解処理することを特徴とする。
【0104】
血液に関連する本発明の記述は、本発明の1つの応用例を示すのみである。
【0105】
本教示の完全な開示のために、最初に提出された特許請求の範囲は当業者が関係する任意の請求項及び/又は請求項の組み合わせの開示を含むということに留意する。
【0106】
患者データは表6〜8より取得することができる。
追加的な有利な点と特徴は実施例と図面に由来する。
図1は、局所感染及び全身感染を区別するため、関連遺伝子からの無作為選択を説明するためのヒートマップを示す。
【実施例】
【0107】
マイクロアレイ実験の説明
(Brazma et al. 2001に基づくMinimum Information About a Microarray Experiment [MIAME] checklist − 新版January 2005に従う。)。これは参考文献としてここに完全に組み込まれる。
【0108】
スライドの読み込み/スキャナー技術仕様
a)スキャナー:GenePix 4000B共焦点落射式蛍光スキャナー(アキソン・インスツルメンツ(Axon Instruments))
b)スキャニングソフトウェア:GenePix Pro 4.0又は5.0
c)スキャン条件:レーザー出力: Cy3チャンネル−100%
Cy5チャンネル−100%
PMT電圧: Cy3チャンネル−700V
Cy5チャンネル−800V
d)空間分解能(画素空間)−10μm
【0109】
データの出力と処理
実験の枠組みにおいて、患者の59個の血液試料からのRNAをハイブリダイズした。それぞれのRNA対(患者対比較RNA)はマイクロアレイ上で共ハイブリダイズした。患者RNAは赤色蛍光色素で標識し、比較RNAは緑色蛍光色素で標識した。ハイブリダイズアレイのデジタル画像はアキソン・インスツルメンツのGenePix Pro 4.0又は5.0により評価した。スポットの検出、シグナルの定量化及びスポット特性の評価のために、GenePix(登録商標)分析ソフトウェアを使用した。GenePix(登録商標)ソフトウェアの設定に従い、スポットは100=“良”、0=“検出”、−50=“未検出”、−75=“不存在”、−100=“偽”として分類した。生データは対応するファイルに保存した。
【0110】
正規化、変換及びデータ選択方法
e)シグナルデータの変換及び正規化
シグナルデータはボックス−コックスべき変換(Box and Cox 1964)、中央値及びMAD(中央値からの絶対偏差の中央値)を用いて正規化した。
【0111】
f)除去
マイクロアレイ上の技術上の反復(同一試料についての重複スポット)は、スポット特性に基づいて、修正及び変換シグナル強度から除去した。それぞれのスポットについて、最高の特性評価をした反復を選び、関連したシグナル強度を平均した。まったく測定できない反復をもつスポット発現は“NA”(利用不可)に指定した。
【0112】
実施例1
血液及び血液細胞から局所感染又は全身感染の識別に用いるマーカー遺伝子の同定:
遺伝子発現の測定
51例の集中治療室(ICU)患者について遺伝子発現を測定した。そこには15例の局所感染患者及び36例の全身感染患者がいた。分析において、患者一人あたり1日のICU日で検討した(表6)。SIG-M5細胞株からの全RNAを参照試料とした。すべての患者試料は個別のマイクロアレイ上で参照試料と共ハイブリダイズさせた。
【0113】
【表6】

【0114】
実験の説明
血液の採取とRNAの単離
患者の全血は、PAXGeneキットを用いて製造者(キアゲン(Qiagen))の仕様書に従い、集中治療室において患者から採取した。全血の採取後、試料の全RNAはPAXGene血液RNAキットを用いて製造者(キアゲン(Qiagen))仕様書に従い単離した。
【0115】
細胞培養
細胞培養(対照試料)について、19本の冷凍培養細胞(SIGM5)(液体窒素中で冷凍させたもの)を利用した。細胞はそれぞれ2mlの20%ウシ胎仔血清(FCS)添加イスコフ培地(Biochrom AG)に播種した。培養細胞は12ウェルプレート中、5%CO下、37℃で24時間培養した。次いで12ウェルの内容物を等量の2部に分割し、最終的に同一形式の3枚のプレートを得た(全部で36ウェル)。培養は同一条件で24時間継続した。この後、各プレートの12ウェルから得られた培養物をまとめ、遠心分離(1000×g、5分、室温)した。その上清を捨て、細胞沈殿物は上記に特定した培地40mlに懸濁した。この40mlの懸濁細胞は、2本の250ml試験管に等しく分け入れ、48時間の培養後、上記に特定した培地を5ml追加してもう一度培養した。残り2枚のプレートに残っている2mlのうち80μlを、予め1mlの培地を入れて用意していた同一プレートの空ウェルに入れた。48時間の培養後、12ウェルプレートの1つのみを次のように処理した:各ウェルより500μlを採取しまとめた。結果として得られた6mlを、およそ10mlの新鮮培地を含む1本の250ml試験管に入れた。この混合物を室温で1000×g、5分間遠心分離し、上記に特定した培地10mlに懸濁した。その後の細胞計測では次の結果が得られた:1mlあたりの細胞数は1.5×10個、全容量は10ml、全細胞数は1.5×10個。細胞数がまだ十分ではなかったので、上記に特定した細胞懸濁液の2.5mlを、250ml(75cm)試験管(全部で4本の試験管)中で上記に特定した培地30ml中に入れた。72時間の培養後、新鮮培地のそれぞれ20mlを試験管に入れた。24時間の培養後、上記記載に従って細胞計測を行い、全細胞数は3.8×10個となった。所望する細胞数である2×10個を得るため、細胞を4本の試験管中で上記に特定した培地47.5ml中に再懸濁した。24時間の培養時間後、細胞を遠心分離し、Ca2+及びMg2+不含リン酸緩衝液(Biochrom AG)で2回洗浄した。
【0116】
全RNAの単離は、NucleoSpin RNA Lキット(Machery & Nagel)を用い製造者仕様書に従って行った。上述の手順は所要の細胞数が得られるまで繰り返した。これは全RNAの所要量6mgを得るために必要であり、10個の細胞あたり600μgのRNA効率におおよそ対応していた。
【0117】
逆転写/標識/ハイブリダイゼーション
全血採取後、試料の全RNAを単離し、その特性についてPAXGene血液RNAキット(PreAnalytiX)を用い製造者仕様書に従って調べた。各サンプルから10μgの全RNAを取り出し、参照RNAとしてSIGM5細胞からの全RNAの10μgと一緒に、逆転写酵素スーパースクリプトII(インビトロジェン(Invitrogen))を用いて相補的DNA(cDNA)へ書き換えた。続いてRNAをアルカリ加水分解によりバッチより除去した。反応バッチにおいてdTTPの一部は、後でcDNAへの蛍光色素のカップリングを可能にするため、アミノアリルdUTP(AA−dUTP)と置き換えた。
【0118】
反応バッチの精製後、試料及び対照のcDNAを蛍光色素のAlexa647及びAlexa555と共有結合させて標識し、SIRS-Lab社のマイクロアレイ上でハイブリダイズさせた。使用したマイクロアレイ上には55〜70塩基対の長さをもつ固定化ポリヌクレオチドが5308個あり、それぞれは1つのヒト遺伝子、及び品質保証のための対照スポットに相当する。1つの例示のマイクロアレイは、15×15のラスタースポットを有する28個のサブアレイに分割される。
【0119】
ハイブリダイゼーション及び引き続く洗浄並びに乾燥は、それぞれハイブリダイゼーションステーションHS400(テカン(Tacan))中で製造者仕様書に従い、42℃で10.5時間行った。使用したハイブリダイゼーション溶液は、それぞれの標識cDNA試料、3.5×SSC(1×SSCは150mM塩化ナトリウム及び15mMクエン酸ナトリウムを含む。)、0.3%ドデシル硫酸ナトリウム(v/v)、25%ホルムアミド(v/v)、及び0.8μg/μl cot-1 DNA、酵母tRNA並びにポリ−A RNAそれぞれから成る。引き続くマイクロアレイの洗浄は、以下のプログラムにより室温で行った:洗浄緩衝液1(2×SSC、0.03%ドデシル硫酸ナトリウム)、洗浄緩衝液2(1×SSC)、及び最後に洗浄緩衝液3(0.2×SSC)でそれぞれ90秒の洗浄。次いでマイクロアレイは窒素流下、2.5バールの圧力で30℃、150秒間乾燥させた。
【0120】
ハイブリダイゼーション後、マイクロアレイのハイブリダイゼーションシグナルはGenePix
4000Bスキャナー(Axon)を用いて読み出し、区別された発現遺伝子の発現比率をソフトウェアGenePix Pro 4.0(Axon)を用いて測定した。
【0121】
評価:
評価のために、スポットの平均強度を関連スポット画素の中央値として測定した。
【0122】
正規化:
追加分析のためには赤色シグナル強度のみを使用した。それぞれのアレイは、ボックス−コックスべき変換(Box and Cox 1964)、中央値及びMAD(中央値からの絶対偏差の中央値)を用いて個々に正規化した。
【0123】
分類遺伝子試料の選択:
分類遺伝子試料の選択は、いわゆるフィルターを用いて行った。最初に、最大の変動係数をもつ1000個の遺伝子試料を決定した。次いで2つのグループ(局所感染と全身感染)を、これら1000個の遺伝子に基づいてマンホイットニー検定を用いて相互に比較した。p値が0.001以下である遺伝子試料をホッジス−レーマン推定量を用いて用意し、最高の推定値(絶対量)を示す遺伝子プローブを分類に用いた。
【0124】
分類:
分類のために、k−最近隣法をk=3で用いた。分類誤算は10倍相互検証の100回繰り返しによって推定した。
【0125】
遺伝子試料の最適数:
相互検証によって推定した分類誤差の最小値は、69個の遺伝子試料で実現された。表1〜5に示された69個の遺伝子試料への固定は、ブートストラップ法を用いて実行された。従って、ブートストラップ試料による最良の69個の遺伝子試料の選択は5000回繰り返され、その後、遺伝子試料はそれらの選択頻度に従って分類された。
【0126】
分類誤差:
表1〜5に示された69個の遺伝子試料について、10倍相互検証の100回繰り返しによって推定した分類誤差は全体で15.7%である。局所感染患者群では分類誤差は26.7%であり、全身感染患者群では分類誤差は11.1%である。従って全身感染患者では、約90%の安全性であることが確認される。
【0127】
実施例2
全身感染から局所感染への患者経過による分類遺伝子の検証
【0128】
遺伝子発現の測定:
無作為に選択したICU患者で、感染が全身から局所に変化した患者の遺伝子発現を測定した。分析においては、患者についての8連続ICU日で検討した。
細胞株SIG-M5から得た全RNAを参照試料とした。
すべての患者試料は、それぞれのマイクロアレイ上で参照試料とともに共ハイブリダイズした(表7、8)。
【0129】
【表7】

【0130】
【表8】

【0131】
正規化:
追加分析のためには赤色シグナル強度のみを利用した。それぞれのアレイは、ボックス−コックスべき変換、中央値及びMAD(中央値からの絶対偏差の中央値)を用いて個々に正規化した。
【0132】
分類遺伝子試料の選択:
患者日の分類のため、31個の遺伝子プローブの一部を用いた。その構成は次の通りである。
Seq ID: 5, 6, 9,
10 - 14, 17, 18, 23〜26, 31, 37, 38, 40, 43, 45〜48, 51, 53, 55〜57, 62, 66, 67.
【0133】
分類:
分類はk−最近隣法をk=3で行った。訓練データセットとして、実施例1に記載した患者を用いた。
【0134】
分類誤差:
すべての患者日(第1〜6日:全身感染、第7、8日:局所感染)は正確に分類された。
【0135】
以下には発明の他の実施態様を示し、これらもまた本目的を達成するために適している。
【0136】
A)局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者を区別するための遺伝子活性の検出に対するSEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69並びに/若しくはそれらの遺伝子座及び/又はそれらの転写産物に従うそれぞれの配列のヌクレオチド数に対して2〜100%の長さをもつ少なくとも1つのポリヌクレオチドの使用であって、SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載の配列の少なくとも1つが用いられる使用。
【0137】
B)遺伝子活性が、ハイブリダイゼーション法、特にマイクロアレイ上でのハイブリダイゼーション法及び/又は酵素法、特に増幅法、好ましくはPCR、より好ましくはリアルタイムPCR法により証明されることを特徴とする、Aに記載の使用。
【0138】
C)局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者を区別するための、少なくとも1個の患者試料からインビトロで得られる遺伝子活性の使用であって、当該遺伝子活性は以下のステップを含む方法に基づき得られるところの使用:
a)患者に由来する試料から試料核酸の単離;
b)検出可能な標識体による試料核酸及び/又はプローブ核酸の標識。ここでプローブ核酸は、局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者の区別が可能な遺伝子並びに/若しくは遺伝子座又はそれらの転写産物を示し、プローブ核酸は、SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載された少なくとも1つのポリヌクレオチド又はSEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載されたそれぞれの配列のヌクレオチド数に対して2〜100%の長さをもつ少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む;
c)ハイブリダイゼーション条件下で、試料核酸とプローブ核酸の接触;
d)ハイブリダイズした試料核酸とプローブ核酸の標識シグナルの、特に定量的な検出;
e)局所感染を伴う状態又は全身感染を伴う状態が患者に存在するのかどうかを告知するための、ステップd)で得られた標識シグナルと少なくとも1つの参照値の比較。
【0139】
D)局所感染から全身感染若しくは全身感染から局所感染となる感染の治療に伴う経過評価のため及び/又は適切な治療の決定のための、C)に記載の遺伝子活性データの使用。
【0140】
E)局所又は全身感染を伴う患者の分類のための、C)又はD)に記載の使用。
【0141】
F)発現挙動が同程度であるSEQ ID No. 1〜69をもつポリヌクレオチドの遺伝子活性を遺伝子活性集団と連結させる、C)〜E)に記載の使用。
【0142】
G)第2〜4相臨床試験において局所感染又は全身感染を伴う患者の選定基準又は除外基準として、C)〜D)に記載の使用。
【0143】
H)さらなる電子的処理のための遺伝子活性データを作成するための、C)〜G)に記載の使用。
【0144】
I)診断目的及び/又は患者データ管理システムを支援するものとして、患者個人の予後診断及び/又は疾患経過を記述するためのソフトウェア作成のため、得られた遺伝子活性データを使用する、C)〜H)に記載の使用。
【0145】
J)臨床エキスパートシステムの作成及び/又は細胞情報伝達経路のモデル化のために、患者試料からインビトロで得られた遺伝子活性データを使用する、C)〜I)に記載の使用。
【0146】
K)遺伝子活性データの作成のため、SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載のポリヌクレオチド配列をもち、少なくとも約10%、特に約20%、好ましくは約50%、特に好ましくは約80%の配列相同性を示す特異遺伝子及び/又は遺伝子断片を使用する、C)〜J)に記載の使用。
【0147】
L)遺伝子断片が特に5〜1000個、好ましくは20〜200個、より好ましくは20〜80個のヌクレオチドを含む、K)に記載の使用。
【0148】
M)試料核酸はRNA、特に全RNAであり、プローブ核酸はDNA、特にcDNAであり、又はmRNAであることを特徴とする、C)〜L)に記載の使用。
【0149】
N)遺伝子活性データが遺伝子発現プロフィールを形成することを特徴とする、C)〜M)に記載の使用。
【0150】
O)局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者の区別のための、少なくとも1つの患者試料からインビトロで得られた遺伝子活性の使用であって、当該遺伝子活性は下記のステップを含む方法に基づいて得られるところの使用:
a.患者に由来する試料から試料核酸の単離;
b.増幅条件下で、SEQ ID No.1〜SEQ ID No.69に記載された核酸配列の少なくとも1つと、標識又は非標識合成オリゴヌクレオチドプライマーの接触と再生。ここで、再生部分の長さは50から2000ヌクレオチドを含み、マーカーは、局所又は全身感染した患者において異なる量で存在する遺伝子産物を示す;
c.再生核酸鎖の定性的、半定量的又は定量的測定による再生の進捗の検出、及び、増幅された核酸量の評価基準である増幅シグナルを参照核酸量の増幅シグナルと比較することによる一連の活性データの作成。
【0151】
P)増幅バッチは、追加成分、特にデオキシヌクレオチド、ポリメラーゼ、塩、緩衝液、及び核酸に結合する蛍光色素を含むことを特徴とする、O)に記載の使用。
【0152】
Q)局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者を区別するための遺伝子活性のインビトロ測定方法であって、当該方法が以下のステップを含むところの方法:
a.患者に由来する試料から試料核酸の単離;
b.検出可能な標識体による試料核酸及び/又は少なくとも1つのプローブ核酸の標識。
ここでプローブ核酸は、局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者の区別が可能な遺伝子並びに/若しくは遺伝子座及び/又はそれらの転写産物を示し、プローブ核酸は、SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチド又はSEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載のそれぞれの配列のヌクレオチド数に対して2〜100%の長さをもつポリヌクレオチドを含む;
c.ハイブリダイゼーション条件下で、試料核酸とプローブ核酸の接触;
d.ハイブリダイズした試料核酸とプローブ核酸の標識シグナルの定量的検出;
e.局所感染を伴う状態又は全身感染を伴う状態が患者に存在するのかどうかを告知するための、ステップd)で得られた標識シグナルと少なくとも1つの参照値の比較。
【0153】
R)遺伝子断片が5〜1000、好ましくは20〜200、より好ましくは20〜80個のヌクレオチドを含むことを特徴とする、Q)に記載の方法。
【0154】
S)SEQ ID No. 1〜SEQ
ID No. 69及び/又はそれらから導かれる配列に従うポリヌクレオチドは、合成類似体、アプタマー、スピーゲルマー(spiegelmers)、及びペプチド拡核酸若しくはモルフォリノ核酸と置き換えられることを特徴とする、Q)〜R)に記載の方法。
【0155】
T)遺伝子の合成類似体は5〜100、特に約70塩基対を含むことを特徴とする、S)に記載の方法。
【0156】
U)遺伝子活性がマイクロアレイにより測定されることを特徴とする、Q)〜T)に記載の方法。
【0157】
V)試料が、組織、体液、特に血液、血清、血漿、尿、唾液又は細胞若しくは細胞成分、又はこれらの混合物から選択されることを特徴とする、Q)〜U)に記載の方法。
【0158】
W)細胞内容物を遊離させるため、試料、特に細胞試料を溶解処理することを特徴とする、Q)〜V)に記載の方法。
【0159】
X)試料核酸はRNA、特に全RNAであり、プローブ核酸はDNA、特にcDNAであり、又はmRNAであることを特徴とする、Q)〜W)に記載の方法。
【0160】
Y)ポリヌクレオチド配列SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69並びに/若しくはプライマー並びに/若しくはプローブ及び/又はこれらに対するアンチセンス、又はこれらが患者の感染状態(局所又は全身)を特異的に確定するもの、及び/又は、患者試料中の遺伝子活性をインビトロで測定するため及び/又は局所から全身へ若しくは全身から局所へという患者の感染経過を確定するための、SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載のそれぞれの配列のヌクレオチド数に対して2〜100%の長さをもつポリヌクレオチド、を少なくとも1つ含むキット。
【0161】
Z)ポリヌクレオチド配列が、遺伝子座、mRNA、低分子RNA、特にscRNA、snoRNA、マイクロRNA、siRNA、dsRNA、ncRNA又は転移因子をも含むことを特徴とする、Y)に記載のキット。
【0162】
図1において、局所感染及び全身感染を区別するため、関連遺伝子からの無作為選択を説明するためのいわゆるヒートマップが示されている。
図1は、横列において平均値(すなわち、それぞれの遺伝子についてすべての患者の平均値)を中心に置いたそれぞれの転写産物の正規化発現データを説明する。縦列は異なる患者を示す。淡灰色/白色は平均値より高い発現を示し、濃灰色/黒色は平均値より低い発現を示す。
ヒートマップ上部にある淡灰色バーは局所感染を伴う患者を示し、濃灰色バーは全身感染を伴う患者を示す。
さらに当業者に知られている“完全”法を用いて、階層的クラスタリングが横列(転写産物)に対して実行された。ここで用いられた距離はピアソンに従う相関距離である。左側の系統樹によって、転写産物は基本的に4つのクラスターに分類されることがわかる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者を区別するための遺伝子活性の検出に対するSEQ
ID No. 1〜SEQ ID No. 69並びに/若しくはそれらの遺伝子座及び/又はそれらの転写産物に従うそれぞれの配列のヌクレオチド数に対して2〜100%の長さをもつポリヌクレオチドの使用であって、SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載の配列のすべてが用いられる使用。
【請求項2】
前記遺伝子活性が、ハイブリダイゼーション法、特にマイクロアレイ上でのハイブリダイゼーション法及び/又は酵素法、特に増幅法、好ましくはPCR,より好ましくはリアルタイムPCR法により検出されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者を区別するための、少なくとも1個の患者試料からインビトロで得られる遺伝子活性の使用であって、当該遺伝子活性は以下のステップを含む方法に基づき得られるところの使用:
a)患者に由来する試料から試料核酸の単離;
b)検出可能な標識体による試料核酸及び/又はプローブ核酸の標識。ここでプローブ核酸は、局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者の区別が可能な遺伝子並びに/若しくは遺伝子座又はそれらの転写産物を示し、またプローブ核酸は、SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載されたすべてのポリヌクレオチド又はSEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載されたそれぞれの配列のヌクレオチド数に対して2〜100%の長さをもつポリヌクレオチドを含む;
c)ハイブリダイゼーション条件下で、試料核酸とプローブ核酸の接触;
d)ハイブリダイズした試料核酸とプローブ核酸の標識シグナルの定量的な検出;
e)局所感染を伴う状態又は全身感染を伴う状態が患者に存在するのかどうかを告知するための、ステップd)で得られた標識シグナルと少なくとも1つの参照値の比較。
【請求項4】
局所感染から全身感染若しくは全身感染から局所感染となる感染の治療に伴う経過評価のため及び/又は適切な治療の決定のための、請求項3に記載の遺伝子活性データの使用。
【請求項5】
局所又は全身感染を伴う患者の分類のための、請求項3又は4に記載の使用。
【請求項6】
発現挙動が同程度であるSEQ ID No. 1〜69をもつポリヌクレオチドの遺伝子活性を遺伝子活性集団と連結させる、請求項3〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
第2〜4相臨床試験において局所感染又は全身感染を伴う患者の選定基準又は除外基準として、請求項3〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
さらなる電子的処理のための遺伝子活性データを作成するための、請求項3〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
診断目的及び/又は患者データ管理システムを支援するものとして、患者個人の予後診断及び/又は疾患経過を記述するためのソフトウェア作成のため、得られた遺伝子活性データを使用する、請求項3〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
臨床エキスパートシステムの作成及び/又は細胞情報伝達経路のモデル化のために、患者試料からインビトロで得られた遺伝子活性データを使用する、請求項3〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
遺伝子活性データの作成のために、SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載のポリヌクレオチド配列をもち、少なくとも約10%、特に約20%、好ましくは約50%、特に好ましくは約80%の配列相同性を示す特異遺伝子及び/又は遺伝子断片を使用する、請求項3〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
遺伝子断片が特に5〜1000個、好ましくは20〜200個、より好ましくは20〜80個のヌクレオチドを含む、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
試料核酸はRNA、特に全RNAであり、プローブ核酸はDNA、特にcDNAであり、又はmRNAであることを特徴とする、請求項3〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
遺伝子活性データが遺伝子発現プロフィールを形成することを特徴とする、請求項3〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者の区別のための、少なくとも1つの患者試料からインビトロで得られた遺伝子活性の使用であって、当該遺伝子活性は下記のステップを含む方法に基づいて得られるところの使用:
a)患者に由来する試料から試料核酸の単離;
b)増幅条件下で、SEQ ID No.1〜SEQ ID No.69に記載された核酸配列と標識又は非標識合成オリゴヌクレオチドプライマーの接触と再生。ここで、再生部分の長さは50から2000ヌクレオチドを含み、マーカーは、局所又は全身感染した患者において異なる量で存在する遺伝子産物を示す;
c)再生核酸鎖の定性的、半定量的又は定量的測定による再生の進捗の検出、及び、増幅された核酸量の評価基準である増幅シグナルを参照核酸量の増幅シグナルと比較することによる一連の活性データの作成。
【請求項16】
増幅バッチは、追加成分、特にデオキシヌクレオチド、ポリメラーゼ、塩、緩衝液、及び核酸に結合する蛍光色素を含むことを特徴とする、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者を区別するための遺伝子活性のインビトロ測定方法であって、当該方法が以下のステップを含むところの方法:
a)患者に由来する試料から試料核酸の単離;
b)検出可能な標識体による試料核酸及び/又はプローブ核酸の標識。ここでプローブ核酸は、局所感染を伴う状態と全身感染を伴う状態の患者の区別が可能な遺伝子並びに/若しくは遺伝子座又はそれらの転写産物を示し、またプローブ核酸は、SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載のすべてのポリヌクレオチド又はSEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載のそれぞれの配列のヌクレオチド数に対して2〜100%の長さをもつポリヌクレオチドを含む;
c)ハイブリダイゼーション条件下で、試料核酸とプローブ核酸の接触;
d)ハイブリダイズした試料核酸とプローブ核酸の標識シグナルの定量的検出;
e)局所感染を伴う状態又は全身感染を伴う状態が患者に存在するのかどうかを告知するための、ステップd)で得られた標識シグナルと少なくとも1つの参照値の比較。
【請求項18】
遺伝子断片が5〜1000、好ましくは20〜200、より好ましくは20〜80個のヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
SEQ ID No. 1〜SEQ ID
No. 69及び/又はそれらから導かれる配列に従うポリヌクレオチドは、合成類似体、アプタマー、スピーゲルマー(spiegelmers)、及びペプチド拡核酸若しくはモルフォリノ核酸と置き換えられることを特徴とする、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項20】
遺伝子の合成類似体は5〜100、特に約70塩基対を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
遺伝子活性がマイクロアレイにより測定されることを特徴とする、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
試料が、組織、体液、特に血液、血清、血漿、尿、唾液又は細胞若しくは細胞成分、又はこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
細胞内容物を遊離させるため、試料、特に細胞試料を溶解処理することを特徴とする、請求項15〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
試料核酸はRNA、特に全RNAであり、プローブ核酸はDNA、特にcDNAであり、又はmRNAであることを特徴とする、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ポリヌクレオチド配列SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69並びに/若しくはプライマー並びに/若しくはプローブ及び/又はこれらに対するアンチセンス、又はこれらが患者の感染状態(局所又は全身)を特異的に確定するもの、及び/又は、患者試料中の遺伝子活性をインビトロで測定するため及び/又は局所から全身へ若しくは全身から局所へという患者の感染経過を確定するための、SEQ ID No. 1〜SEQ ID No. 69に記載のそれぞれの配列のヌクレオチド数に対して2〜100%の長さをもつポリヌクレオチド、を含むキット。
【請求項26】
ポリヌクレオチド配列が、遺伝子座、mRNA、低分子RNA、特にscRNA、snoRNA、マイクロRNA、siRNA、dsRNA、ncRNA又は転移因子をも含むことを特徴とする、請求項25に記載のキット。


【図1】
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【公表番号】特表2010−535017(P2010−535017A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518566(P2010−518566)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006332
【国際公開番号】WO2009/018962
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(507123305)エスアイアールエス‐ラブ ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】