説明

局所用組成物およびその使用

本発明は、局所適用のための組成物およびその使用に関する。本発明は、毛皮を有する温血動物の皮膚への微生物の付着をそれぞれ制限することができる少なくとも1種の第1および第2の単糖またはオリゴ糖を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所適用のための組成物に関し、この組成物は、毛皮を有する温血動物の皮膚上の微生物の付着を制限するのに適している。本発明は、さらに、獣医学分野におけるこのような組成物の使用に関する。
【0002】
動物の皮膚は、病原微生物によって絶えず攻撃されている。表皮の角質層は、そのpH、その相対的に低い含水量および殺菌作用を有する抗菌ペプチドの存在によって、これらの病原微生物に対する第1のバリアの機能を果たす。
【0003】
それにもかかわらず、水分増加または皮膚創傷などの表皮構造の変化は、病原微生物による皮膚のコロニー形成および感染を促進する。
【0004】
抗生物質は、その静菌および/または殺菌作用により、これらの病原微生物に有効に対抗することを可能とする。
【0005】
それにもかかわらず、広く行きわたった、しばしば過剰な抗生物質の使用のために、細菌は、抗生物質耐性を獲得し、その抗菌作用を制限し無効にさえしている。
【0006】
このことは、我々が病原微生物に対抗するための新たな手段を開発しようとする理由の1つである。
【0007】
ある細菌の表面は、レクチンを含み、このレクチンは、この細菌が上皮細胞の表面にある糖タンパクおよび糖脂質に特有な糖基(sugar radical)を認識し結合することを可能にすることが知られている。上皮細胞の糖タンパクおよび糖脂質の糖基を模倣することによって、特定の糖類は、緑膿菌などの細菌のフィブロネクチンなどの糖タンパクへの付着を制限することがin vitroで実証されている(「Inhibition of Pseudomonas aeruginosa adhesion to fibronectin」、PA-IL and monosaccharides:involvement of a lectin-like process、Julie Rebiere-Huet、Patrick Di Martino、およびChristian Hulen.Can.J.Microbiol./Rev.Can.Microbiol.50(5):303〜312(2004))。
【0008】
特定の糖類のこれらのいわゆる「抗-付着」特性は、特にUS4518517およびEP A1 0561489で公表されている文献に記載されているように、例えばデオドラントでヒトに使用されている。
【0009】
しかしながら、毛皮を有する温血動物の体を覆う皮膚は、極めて少ししか汗腺はないが、そのより薄い厚さによって、毛皮を構成する豊富な毛によって、脂腺の発達によってヒトの皮膚と異なる。したがって、細菌(より一般的には病原体)およびヒトの皮膚の間の相互関係から、細菌および毛皮を有する温血動物の皮膚の間に存在する相互関係に対する関係を推定することは、可能ではない。
【特許文献1】US4518517
【特許文献2】EP A1 0561489
【非特許文献1】「Inhibition of Pseudomonas aeruginosa adhesion to fibronectin」、PA-IL and monosaccharides:involvement of a lectin-like process、Julie Rebiere-Huet、Patrick Di Martino、およびChristian Hulen.Can.J.Microbiol./Rev.Can.Microbiol.50(5):303〜312(2004)
【非特許文献2】「In vitro assays for canine keratinocyte activation modulation by fucose,arabinose and rhamnose」、C.Ibisch、P.Bourdeau、C.CadiotおよびH.Gatto.17th ESVD-ECVD Congress、Copenhagen 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記を踏まえて、本発明が解決しようとする課題は、毛皮を有する温血動物の皮膚上の微生物、とりわけ病原体の存在を予防し、かつ/または減少させるのに適した局所適用のための組成物の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によって提案されるこの課題に対する解決策は、第一に、毛皮を有する温血動物の皮膚上の微生物付着をそれぞれが制限することができる少なくとも1種の第1および少なくとも1種の第2の単糖またはオリゴ糖を含むことを特徴とする局所適用のための組成物を含む。
【0012】
特に考えられる病原微生物は、スタフィロコッカスインテルメディウス(Staphylococcus intermedius)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびマラセジアパチデルマティス(Malassezia pachydermatis)である。特に、毛皮を有する温血動物は、ペット、特にイヌ、ネコおよびウマである。
【0013】
本発明は、同様に、毛皮を有する温血動物の皮膚状態を予防すること、抑制する助けとなることまたは治療することを目的とした局所用組成物の製造のための、微生物の付着をそれぞれが制限することができる第1および第2の単糖またはオリゴ糖の使用を含む。
【0014】
さらに、本発明は、帯電マイクロもしくはナノ粒子担体または非帯電マイクロもしくはナノ粒子担体を含む組成物を含み、これらの担体は、単糖またはオリゴ糖などの少なくとも1種の活性物質を含む。
【0015】
微生物の付着を制限することができる単一の単糖またはオリゴ糖が組成物中に存在することによって、特定の病原微生物のファミリーの限定された数の付着を特異的に阻害することが可能となる。しかしながら、本発明によって、一つの組成物が、微生物の付着をそれぞれが制限することができる少なくとも2種類の単糖またはオリゴ糖を含む場合、微生物の阻害は、ファミリーの非常により多数に影響を与え、毛皮を有する温血動物の皮膚上の病原微生物の付着が大幅に減少するほどの微生物の有効な阻害が観察される。第3の単糖またはオリゴ糖の添加も極めて有利である。それにもかかわらず、多数の他の単糖またはオリゴ糖の添加は、利点が少ないように見える。
【0016】
本発明は、以下の非制限的な説明を読めばより良く理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による組成物は、少なくとも1種の第1および少なくとも1種の第2の単糖またはオリゴ糖を含み、ここで、第1の単糖またはオリゴ糖は、前記第2の単糖またはオリゴ糖と異なる。
【0018】
単糖は、3種の化学元素、即ち炭素、水素および酸素からなる分子である。これらは、3から8個の炭素原子を含む。最も一般的な単糖のうちには、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロースおよびリキソースなどのペントース、ならびにアロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、マンノース、ラムノース、ソルボース、タロースおよびタガトースなどのヘキソースがある。
【0019】
オリゴ糖は、前記単糖によって構成されるホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーである。特に、これらは、単糖の二量体、三量体または四量体である。
【0020】
本発明によれば、第1および第2の単糖またはオリゴ糖は、それぞれ、毛皮を有する温血動物の皮膚、特にこれらの動物の皮膚のケラチノサイト、より具体的にはこれらの動物の皮膚の角質細胞への微生物の付着を予防し、かつ/または制限することができる。したがって、これらは、糖タンパクおよび糖脂質の糖基を模倣し、これらの糖タンパクおよび糖脂質と競合し、それ故、細菌および酵母の付着を予防する。したがって、皮膚細胞および組織への病原微生物の特定の付着機構を標的にすることによって、本発明は、毛皮を有する温血動物への病原微生物のコロニー形成および感染の過程を予防しまたは制限することを可能にする。
【0021】
本発明の組成物に使用しうる第1または第2の単糖のうち、ペントースおよびヘキソースが、有利に選択される。ペントースの非制限的な例としては、D-アラビノースを挙げることができる。ヘキソースの非制限的な例としては、D-フコース、L-フコース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-マンノースおよびL-ラムノースを挙げることができる。
【0022】
本発明の組成物に使用しうる第1または第2のオリゴ糖のうち、前述の単糖により構成されるホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーが有利に選択されよう。
【0023】
前述の単糖またはオリゴ糖は、すべて、少なくとも抗-付着特性を有する。
【0024】
本発明の組成物は、有利には、第3の単糖またはオリゴ糖も含み、この単糖またはオリゴ糖は、前記第1および第2の単糖またはオリゴ糖と異なる。
【0025】
この第3の単糖またはオリゴ糖は、有利には、毛皮を有する温血動物の皮膚上への微生物の付着をこれ自体制限することができる。
【0026】
本発明の第3の単糖またはオリゴ糖が、単糖である場合、これは、ペントースおよびヘキソースから有利に選択される。ペントースの非制限的な例としては、D-アラビノースを挙げることができる。ヘキソースの非制限的な例としては、D-フコース、L-フコース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-マンノースおよびL-ラムノースを挙げることができる。
【0027】
本発明の組成物に使用しうる第3のオリゴ糖のうち、前述の単糖により構成されるホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーが、有利に選択されよう。
【0028】
第1、第2および/または第3の単糖またはオリゴ糖は、毛皮を有する温血動物の皮膚のケラチノサイトによるTNF-αの産生を有利に減少させることができる。TNF-αの産生に対するこの作用は、in vitroでイヌのケラチノサイトで最近実証されたことを留意されたい(「In vitro assays for canine keratinocyte activation modulation by fucose,arabinose and rhamnose」、C.Ibisch、P.Bourdeau、C.CadiotおよびH.Gatto.17th ESVD-ECVD Congress、Copenhagen 2001)。TNF-αの産生の減少は、免疫調節作用を有し、皮膚炎症の減少をもたらす。これは、したがって抗刺激性作用を有する。
【0029】
有利には、本発明の組成物の第1の単糖またはオリゴ糖は、L-ラムノースまたはL-ラムノースによって構成されるホモオリゴマーであり、本発明の組成物の第2の単糖またはオリゴ糖は、D-ガラクトースまたはD-ガラクトースによって構成されるホモオリゴマーであり、本発明の組成物の第3の単糖またはオリゴ糖は、D-マンノースまたはD-マンノースによって構成されるホモオリゴマーである。
【0030】
さらに、本発明の組成物は、有利にアルキルポリグルコシドも含む。本発明のアルキルポリグリコシド(APG)は、1種または複数のグルコース残基およびアルキル基から構成された、脂肪アルコールとグルコースまたはそのポリマーの1種との縮合から得られる物質である。
【0031】
以下の実施例2に示されるように、本発明のアルキルポリグリコシドは、とりわけ、スタフィロコッカスインテルメディウスなどの特定の微生物の、毛皮を有する温血動物の皮膚への付着を予防し、かつ/または制限することができる。したがって、本発明の組成物におけるこのようなアルキルポリグリコシドの存在は、単糖またはオリゴ糖の抗-付着特性に感受性が低いまたは感受性がないより広い範囲の微生物に付着阻害活性を拡大することを可能にする。有利には、本発明の組成物に使用されるアルキルポリグルコシドは、ラウリルジグルコシドである。
【0032】
さらに、本発明によれば、第1、第2および/または第3の単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドは、マイクロまたはナノ粒子担体中に有利に含まれる。実際には、単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドの5から90%は、これらの担体中に含まれる。
【0033】
マイクロまたはナノ粒子担体のうちで、マイクロカプセル、マイクロスフェア、高分子複合体、ナノスフェア、ナノカプセル、ラテックスまたはベシクルなどの、本発明の単糖またはオリゴ糖の制御放出を可能にする全ての担体系を使用することが可能である。
【0034】
マイクロまたはナノ粒子担体の非制限的な例として、Novasomes(商標)の商標でNOVAVAX(商標)社から市販のマルチラメラベシクル、Spherulites(商標)と呼ばれるタマネギ状構造を有する球形マルチラメラベシクル、ポリウレタン、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド-ポリウレア樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホネート樹脂およびポリスルホンアミド樹脂ベースのマイクロカプセルを挙げることが可能である。
【0035】
特に、Spherulites(商標)は、親水性または疎水性分子を約90%のカプセル化効率でカプセル化することができる。これらがカプセル化する分子は、徐々に放出される。カプセル化された化合物の放出は、速度論的にまたは熱力学的に制御することができる。
【0036】
本発明のマイクロまたはナノ粒子担体は、0.01μmから150μmの間の直径を有する。これらの担体が、ナノ粒子担体である場合、これらの直径は、好ましくは0.1μmから0.5μmの間であり、これらが、マイクロ粒子担体である場合、これらの直径は、好ましくは1μmから50μmの間である。
【0037】
さらに、本発明のマイクロまたはナノ粒子担体は、帯電しているか、または帯電していない。
【0038】
これらの担体が帯電している場合、これらは、有利には陽イオン性である。この場合、これらの正電荷のため、これらの担体は、動物の皮膚のみならず、これらの毛皮の毛にも結合する。これらは、単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドの皮膚の表面および毛における定常および制御放出を確実にする。したがって、機械的作用、例えば動物の洗浄後でさえも、本発明の組成物の利点は保たれる。この漸進的な放出作用により、長期にわたり、細菌付着に対して単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドの活性を維持することが可能となる。
【0039】
本発明のマイクロまたはナノ粒子担体が、帯電していない場合、これらは、非イオン性と呼ばれる。この場合、前述の緩慢な放出作用に加えて、これらの存在は、単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドの皮膚を通した拡散を促進する。同様に、担体中に存在する単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドが、ケラチノサイトの活性化およびTNF-αの分泌に対する阻害作用を有する場合、皮膚炎抑制効果が改善される。さらに、病原微生物は、健常な皮膚より炎症を起こしている皮膚に対してより容易に付着するので、非イオン性マイクロまたはナノ粒子担体の存在によって促進される、単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドの皮膚を通した拡散は、皮膚炎を抑制し、しばしば炎症の原因となる細菌の付着を、事実上、間接的に制限することを可能にする。
【0040】
有利な一実施形態においては、本発明の組成物は、陽イオン性マイクロまたはナノ粒子担体および非イオン性マイクロまたはナノ粒子担体の両方を含む。この場合、利点は、担体の各タイプの細菌付着の抑制へのそれぞれの寄与にある。第1に、遊離の単糖もしくはオリゴ糖(担持されていない)および/または遊離のアルキルポリグルコシドは、細菌付着への直接かつ即時の作用を有する。次いで、組成物の陽イオン性マイクロまたはナノ粒子担体は、単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドの細菌付着への直接かつ緩慢な作用を確実にし、一方、非イオン性マイクロまたはナノ粒子担体は、皮膚炎を弱め、細菌付着を減少させる抗-刺激作用を発揮する。
【0041】
したがって、本発明の組成物は、非イオン性マイクロまたはナノ粒子担体中にカプセル化された単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドの皮膚を通したより良い拡散によって増強される免疫調節作用のみならず、陽イオン性マイクロまたはナノ粒子担体中にカプセル化された単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドの存在によって延ばされた抗付着作用を有する。
【0042】
本発明の組成物は、防腐剤、キレート剤、角質溶解剤、角質調整剤(keratoregulator)、抗脂漏剤およびクレンジングまたは柔軟剤を含むこともできることを留意されたい。
【0043】
本発明の組成物に使用しうる防腐剤の非制限的な例としては、単独でまたは混合物で用いられる、クロルヘキシジン、ヘキサクロロフェン、パラクロロメタキシレノール、ピロクトンオラミンおよびトリクロサンを挙げることが可能である。本発明の組成物に使用しうるキレート剤の非制限的な例としては、単独でまたは混合物で用いられる、ジエチレントリアミン五酢酸およびエチレンジアミン四酢酸を挙げることが可能である。本発明の組成物に使用しうる角質溶解剤、角質調整剤または抗脂漏剤の非制限的な例としては、単独でまたは混合物で用いられる、乳酸、サリチル酸、硝酸銀、硫黄および尿素、乳酸アンモニウムまたはグルコン酸亜鉛を挙げることが可能である。最後に、本発明の組成物に使用しうるクレンジングまたは柔軟剤の非制限的な例としては、単独でまたは混合物で用いられる、リノール酸、ココグルコシド、デシルグルコシド、二ナトリウムココアンホジアセテート、ラウレス二ナトリウム、ナトリウムドクセート、ナトリウムステアレートおよびスルホスクシネートを挙げることが可能である。
【0044】
実際に、本発明の局所用組成物は、より具体的には、皮膚および粘膜の治療を対象としており、軟膏、クリーム、乳剤、ポマード、ワイプ、合成洗剤、溶液、ゲル、スプレー、泡沫、懸濁液、ローション、シャンプー、または洗浄ベースの形態で存在することができる。
【0045】
これらの組成物は、獣医学的使用のための化粧品または医薬品として使用される。より具体的には、これらは、毛皮を有する温血動物の衛生用に、毛皮を有する温血動物における、刺激性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、角質脂漏症候群(keratoseborrheic syndrome)、外耳炎、膿皮症またはマラセジア皮膚炎を抑制、予防または治療する一助となるために使用される。
【0046】
本発明は、したがって、毛皮を有する温血動物における、刺激性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、角質脂漏症候群、外耳炎、膿皮症またはマラセジア皮膚炎の治療のための薬剤を制御または調製する一助となる局所用組成物の製造における、単糖またはオリゴ糖の使用、ならびに単糖またはオリゴ糖を含む組成物を使用しての毛皮を有する温血動物におけるこれらの皮膚状態の治療方法に関する。
【0047】
当然ながら、組成物中に存在する単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドの選択、存在する単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドの数、ならびに担体中の可能なカプセル化は、本発明の組成物の最終用途によって決定される。
【0048】
イヌのアトピー性皮膚炎を抑制する一助となることに特に適した一実施例においては、本発明の組成物は、少なくとも2種の特異的な単糖、即ちL-フコースおよびL-ラムノースを含むローションであり、ここで、これらの単糖は、Spherulite(商標)担体中に含まれている。イヌの外耳炎に特に適した別の実施例においては、本発明の組成物は、3種の単糖、即ちL-ラムノース、D-マンノースおよびD-ガラクトースを含む溶液である。イヌの膿皮症の予防に特に適した最後の一実施例においては、組成物は、上記の3種の単糖と一緒にアルキルポリグルコシドを含むシャンプーである。
【0049】
本発明を、以下の実施例1および2を用いて説明する。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
3種の異なるシュードモナス菌株、即ちP1、P2、P3のイヌの角質細胞への付着について、単糖による阻害を比較する研究を行った。研究された3種の単糖は、それぞれD-ガラクトース、D-マンノースおよびL-ラムノースである。
【0051】
3種のシュードモナス菌株は、感染性耳炎のイヌから採取した。角質細胞は、CuDerm(商標)社から市販のD-squame(商標)ブランド粘着性パッドを用いて6匹の異なる健常なイヌから採取した。
【0052】
2種の濃度(0.05%および0.1%)で、単糖と一緒に、または単糖と一緒ではなく、3種の菌株、即ちP1、P2またはP3のうちの1種、およびPBS(リン酸緩衝食塩水)をそれぞれ含む細菌の懸濁液を作製した。これらの懸濁液を角質細胞層にそれぞれ置いた。これらの層を次いで湿度室中でインキュベートした。インキュベーション後、これらの角質細胞を洗浄し染色した。付着したシュードモナスを、次いでコンピュータによる画像解析によって定量化した。
【0053】
その後、単糖の存在下での菌株の付着の百分率を、単糖の存在しない菌株(陽性対照)の付着の百分率に対して算出した。
【0054】
3種の菌株P1からP3について、付着の百分率を、陽性対照(100%)に対して比較した。
【0055】
3種のシュードモナス菌株についての平均阻害百分率は、D-ガラクトースで25.6%、D-マンノースで19.4%およびL-ラムノースで30.8%であった。
【0056】
3種の単糖のそれぞれが、シュードモナスの角質細胞への付着を制限するようである。3種の単糖を組み合わせて使用する場合、53.4%の平均阻害百分率が驚くべきことに観測される。
【0057】
したがって、本発明によって、抗-付着特性をそれぞれ有する複数の単糖またはオリゴ糖が組成物中に存在する場合、作用は連動する。これは、少なくとも、本発明の組成物が、これらの特性を有する3種の単糖またはオリゴ糖を含む場合である。
【0058】
(実施例2)
スタフィロコッカスインテルメディウスの3種の異なる菌株、即ちS1、S2およびS2のイヌの角質細胞への付着について、アルキルポリグルコシド(Plantaren(商標)1200)による阻害を比較する研究を行った。
【0059】
スタフィロコッカスインテルメディウスの3種の菌株を、膿皮症(イヌ膿皮症)のイヌから採取した。角質細胞は、CuDerm(商標)社から市販のD-squame(商標)ブランド粘着性パッドを用いて、サンプルを採取する前の3週間においては局所的または全身性の治療を受けていない異なる健常なイヌから採取した。
【0060】
1%の濃度で、糖類と一緒に、または糖類と一緒ではなく、3種の菌株、即ちS1、S2またはS3のうちの1種、およびPBS(リン酸緩衝食塩水)をそれぞれ含む細菌の懸濁液を作製した。これらの懸濁液を角質細胞層上にそれぞれ置いた。これらの層を、次いで湿度室中でインキュベートした。インキュベーション後、これらの角質細胞を洗浄し染色した。付着したスタフィロコッカスインテルメディウスを、次いでコンピュータによる画像解析によって定量化した。
【0061】
その後、糖類の存在下での菌株の付着の百分率を、糖類を含まない菌株(陽性対照)の付着の百分率に対して算出した。
【0062】
3種の菌株S1からS3について、付着百分率を、陽性対照(100%)に対して比較した。
【0063】
3種のスタフィロコッカスインテルメディウス菌株の平均阻害百分率は、アルキルポリグルコシドについては47.71%であった。
【0064】
したがって、アルキルポリグルコシドは、スタフィロコッカスインテルメディウスの角質細胞への付着を制限するようである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛皮を有する温血動物の皮膚への微生物の付着をそれぞれが制限することができる少なくとも1種の第1および少なくとも1種の第2の単糖またはオリゴ糖を含むことを特徴とする、局所適用のための組成物。
【請求項2】
毛皮を有する温血動物の皮膚への微生物の付着を制限することができる第3の単糖またはオリゴ糖をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の単糖またはオリゴ糖が、L-ラムノースであり、第2の単糖またはオリゴ糖が、D-ガラクトースであり、第3の単糖またはオリゴ糖が、D-マンノース、またはこれらのホモオリゴマーであることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
毛皮を有する温血動物の皮膚への微生物の付着を制限することができるアルキルポリグルコシドをさらに含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルキルポリグルコシドが、ラウリルジグルコシドであることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドが、マイクロまたはナノ粒子担体中に含まれることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記マイクロまたはナノ粒子担体が、帯電しており、好ましくは陽イオン性であることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記マイクロまたはナノ粒子担体が、非イオン性であることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
組成物中に存在する前記単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドの5から90%が、マイクロまたはナノ粒子担体中に含まれることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
毛皮を有する温血動物の皮膚状態を予防すること、治療することまたは制御する一助となることを目的とした局所用組成物の製造のための、微生物の付着をそれぞれが制限することができる第1および第2の単糖またはオリゴ糖の使用。
【請求項11】
前記組成物が、微生物の付着を制限することができる第3の単糖またはオリゴ糖をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記単糖またはオリゴ糖が、D-アラビノース、D-フコース、L-フコース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-マンノースおよびL-ラムノースならびにそれらのホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーから選択されることを特徴とする、請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
第1の単糖またはオリゴ糖が、L-ラムノースであり、第2の単糖またはオリゴ糖が、D-ガラクトースであり、第3の単糖またはオリゴ糖が、D-マンノース、またはこれらのホモオリゴマーであることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が、毛皮を有する温血動物の皮膚への微生物の付着を制限することができるアルキルポリグルコシドをさらに含むことを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記アルキルポリグルコシドが、ラウリルジグルコシドであることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドが、マイクロまたはナノ粒子担体中に含まれることを特徴とする、請求項10から15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記マイクロまたはナノ粒子担体が、帯電しており、好ましくは陽イオン性であることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記マイクロまたはナノ粒子担体が、非イオン性であることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記組成物中に存在する単糖またはオリゴ糖および/またはアルキルポリグルコシドの5から90%が、マイクロまたはナノ粒子担体中に含まれることを特徴とする、請求項16から18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
毛皮を有する温血動物における、刺激性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、角質脂漏症候群、外耳炎、膿皮症またはマラセジア皮膚炎を予防する、制御する一助となるまたは治療するための、請求項10から19のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2008−534659(P2008−534659A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504802(P2008−504802)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000730
【国際公開番号】WO2006/106220
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(507329424)ヴィルバック・ソシエテ・アノニム (2)
【Fターム(参考)】