説明

局所的に投与される低用量のコルチコステロイド

本発明は、局所的に投与される低用量のコルチコステロイドを使用して、坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、狭窄症、脊髄症(mylopathy)、下背部痛、椎間関節痛、変形性関節症、関節リウマチ、骨溶解、腱炎、手根管症候群、または足根管症候群を含むいずれかの炎症性疾患により引き起こされる疼痛を治療することを提供する。より具体的には、局所的に投与される低用量のコルチコステロイドを、患者の疼痛の部位またはその部位近くの硬膜上腔、神経周囲腔、または孔周囲腔(foramenal space)に、薬物ポンプまたは生分解性薬物デポーにより放出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所的に送達される低用量のコルチコステロイドを使用して、坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、狭窄症、脊髄症(mylopathy)、下背部痛、椎間関節痛、変形性関節症、関節リウマチ、骨溶解、腱炎、手根管症候群、または足根管症候群を含むいずれかの炎症性疾患により引き起こされる疼痛を治療することを提供する。より具体的には、局所的に送達される低用量のコルチコステロイドを、患者の疼痛部位またはその部位近くの硬膜上腔、神経周囲腔、または孔周囲腔(foramenal space)に、薬物ポンプまたは生分解性薬物デポーにより放出することができる。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、多くの医学的症状と関連しており、そして数百万人のアメリカ人が罹患している。アメリカ疼痛財団(The American Pain Foundation)は、関節痛(関節炎またはその他の疾患)および背痛に罹患する60歳以上のヒトの20%を含む、5000万人以上のアメリカ人が、慢性疼痛を患っていると報告している。さらに、ほぼ2500万人のアメリカ人が、外傷または外科手術により、毎年急性疼痛を経験している。疼痛の管理に関するコストは、毎年1000億ドルと推計されている。その経済的な負担に加えて、疼痛は、罹患した個体のクオリティー・オブ・ライフに対して大きな影響を及ぼし、そして急性障害および慢性障害の最も一般的な原因の一つである。
【0003】
神経繊維を含む体組織が、病原体、外傷、炎症性症状、または有害刺激から侵害機械刺激までの侵害刺激、熱刺激および/または冷刺激、または化学的刺激、により損傷を受ける場合、人体は疼痛を認識する。損傷組織および神経繊維と関連した肥満細胞は、炎症性メディエータ、例えば、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、ヒスタミン、インターロイキン-1(IL-1)、IL-6、IL-8、および神経増殖因子(NGF)を分泌することにより、炎症プロセスを開始する。
【0004】
これらのメディエータは、単球、好中球、および同様の細胞等のその他の細胞を、外傷部位へと遊走させる。さらに、これらのメディエータはまた、貪食細胞などの白血球細胞のいくつかを補助して、それら自体の炎症性メディエータを活性化させる。炎症性メディエータ、例えば、損傷を受けたか刺激を受けた神経細胞および神経繊維により分泌されるNGFが、侵害モダリティの伝達に関与する活性神経繊維、特に知覚線維AおよびC、の数を増加させることが示された。A繊維のサブセットであるAδ繊維は、急な疼痛、すなわち、突然のそして鋭い感覚のタイプの疼痛の性質、を最初に持つ。C繊維は、ゆっくりとした灼熱様の疼痛の性質の伝達が最初に関与する。
【0005】
疼痛および疼痛により影響を受ける領域の範囲は、異痛症および痛覚過敏症の測定により、しばしば規定することができる。異痛症は、その他の面では非-侵害刺激であるものに対する疼痛反応である。言いかえると、異痛症は、通常は疼痛反応を引き起こさない刺激、例えば、軽い圧力、皮膚上の衣類の移動、または穏やかな熱や低温の適用、から生じる疼痛のことを言う。
【0006】
痛覚過敏症は、疼痛に対する過敏症である。すなわち、穏やかな侵害刺激が、極端な疼痛性刺激として認識される可能性がある。さらに、痛覚過敏症は通常、一次性および二次性痛覚過敏領域からなる。一次性痛覚過敏症は、直接的な損傷組織から直接的に由来する疼痛知覚のことを言う。二次性痛覚過敏症は、一次性組織損傷のすぐ周囲の組織から発生する、過剰な疼痛感受性の知覚のことを言う。従って、二次性痛覚過敏症は、疼痛に対する感受性の増加が、直接の損傷を越えて拡張され、そしてその周囲の一見したところ損傷を受けていない近傍の組織にまで拡張された場合の、状況が関連する。疼痛が関連する炎症性メディエータは:変形性関節症、関節リウマチ、骨溶解、腱炎、坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、狭窄症、脊髄症(mylopathy)、下背部痛、椎間関節痛、腱炎、手根管症候群、足根管症候群、脊髄症(mylopathy)、等が含まれてよいが、これらには限定されない、様々な症状と関連している。
【0007】
一般に、炎症は、何らかの侵害刺激に対する正常でそして必須の応答であり、限局的な応答から全身性の応答まで多様である可能性がある。炎症性応答には一般的に、1)炎症性メディエータ、例えば、ヒスタミン、セロトニン、ロイコキニン類(leukokinins)、SRS-A、リソソーム酵素、リンホキニン類(lymphokinins)、プロスタグランジン類、等の放出を引き起こす、初期損傷;2)血管透過性の増加および血管滲出の増加を含む血管拡張;3)白血球遊走、走化性、および貪食作用;および4)結合組織細胞の増殖;が含まれる一連の事象が付随する。
【0008】
コルチコステロイドは、炎症を治療するために有用であることが、当該技術分野において知られている。コルチコステロイドは、全ての体組織に影響を及ぼし、そして様々な細胞作用を生成する。これらのステロイドは、炭水化物、脂質、タンパク質の生合成および代謝、および水と電解質のバランスを制御する。細胞の生合成または代謝に影響を与えるコルチコステロイドは、グルココルチコイドと呼ばれ、一方水と電解質のバランスに影響を与えるコルチコステロイドはミネラルコルチコイドである。グルココルチコイドおよびミネラルコルチコイドは両方とも、副腎皮質から放出される。コルチゾルは、副腎から分泌される最も強力なグルココルチコイドである。
【0009】
坐骨神経痛の治療のため、コルチコステロイドが、腰部硬膜上腔中に注射されてきた。これらのステロイドは、血管拡張および貪食細胞が組織に浸透する能力を減少させることにより、炎症を制御する。坐骨神経痛の現在の代表的な標準的非-手術的治療は、ステロイド入りの硬膜外注射である。これらの注射の臨床上の利点は、議論のある事項である。この手順についてのガイドラインは整っておらず、そして合併症が神経性疼痛を抑えるために使用される大容量(large bolus)ステロイド注射に伴っていた。
【0010】
U.S.特許番号6,468,527('527特許)は、バイオ-ベースのシーラント組成物およびその調製方法および使用方法を開示する。'527特許において開示されるこのバイオシーラントには、フィブリノーゲンおよびトロンビンと、コルチコステロイドとを組み合わせることが含まれ、ここでコルチコステロイドを使用して、フリーズドライの状態からトロンビンを再構成する。ステロイドは、フィブリノーゲンのフィブリン塊への自然な変換により、標的領域に送達され、そしてそこでとどまる。
【0011】
U.S.特許番号5,336,505('505特許)は、インプラント、軟膏、クリーム、ゲルなどの生体内分解性医薬組成物を調製するために適した、生体内分解性のオルトエステルポリマーを開示する。この'505特許は、具体的なポリオルトエステル類を使用して、コルチコステロイドを送達することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】U.S.特許番号6,468,527
【特許文献2】U.S.特許番号5,336,505
【発明の概要】
【0013】
本発明は、局所的に投与される低用量のコルチコステロイドを提供して、坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、狭窄症、脊髄症(mylopathy)、下背部痛、椎間関節痛、変形性関節症、関節リウマチ、骨溶解、腱炎、手根管症候群、または足根管症候群、を含むいずれかの炎症性疾患により引き起こされる疼痛を治療することにより、従来技術の欠点を解消する。より具体的には、局所的に投与される低用量のコルチコステロイドを、患者の疼痛部位またはその部位近くの硬膜上腔、神経周囲腔、または孔周囲腔(foramenal space)に、薬物ポンプまたは生分解性薬物デポーにより放出することができる。
【0014】
生分解性薬物デポーが天然または合成の生体適合性生分解性材料から作製されるインプラントを含むことは、本発明の目的である。天然のポリマーには、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、合成ポリ(アミノ酸)、およびプロラミン類などのタンパク質;ヒアルロン酸およびヘパリンなどのグリコサミノグリカン類;アルギネート、キトサン、スターチ、およびデキストラン類などの多糖;およびその他の天然に生じるかまたは化学的に修飾した生分解性ポリマー;が含まれるが、これらには限定されない。合成生体適合性生分解性材料には、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリバレロラクトン、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン類)、ポリ(アミノ酸類)、ポリ(無水物)、ポリケタール類、ポリ(アリーレート)(poly(arylates))、ポリ(オルトエステル類)、ポリ(オルトカーボネート類)、ポリ(ホスホエステル類)、ポリ(エステル-co-アミド)、ポリ(ラクチド-co-ウレタン)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA-g-PLGA、PEGT-PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート類、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、PEO-PPO-PEO(プルロニック類)、PEO-PPO-PAAコポリマー類、およびPLGA-PEO-PLGAブレンド、およびこれらのコポリマーおよびこれらのいずれかの組合せ、が含まれるが、これらには限定されない。生分解性薬物デポーが、微粒子、微小球、カプセル、ゲル、コーティング、マトリクス、ウェーファー、ピル、ペレット、またはその他の医薬的に送達可能な組成物、およびこれらのいずれかの組合せ、の組成物を含む、移植可能な生体適合性生分解性ポリマーから作製されることが、本発明の別の目的である。
【0015】
炎症、機械的刺激、化学的刺激、熱刺激、またはこれらのいずれかの組合せから生じる人体内のいずれかの領域における疼痛が含まれていてもよい、患者の疼痛部位またはその部位近くに生分解性薬物デポーを配置することが、本発明のさらに別の目的である。
【0016】
本発明の態様には、生分解性薬物デポーを有することが含まれ、ここで生体適合性生分解性ポリマーは、神経刺激領域周囲の硬膜上腔、神経周囲腔、または孔周囲腔(foramenal space)または後根神経節が含まれる、患者の疼痛部位またはその部位近くに局所的に、低用量のコルチコステロイドを放出する。
【0017】
本発明の別の態様には、生分解性薬物デポーを有することが含まれ、ここで生体適合性生分解性ポリマーは、約0.1μm〜約1000μmの粒子サイズ、より好ましくは1μm〜200μmの粒子サイズを有する微粒子から構成され、そして局所的に送達される低用量のコルチコステロイドと関連する。
【0018】
本発明のさらに別の態様には、生分解性薬物デポーを有することが含まれ、ここでコルチコステロイドは、デキサメタゾン、ベータメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロン・アセトニド、2酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロン・ヘキサアセトニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、ピバル酸フルメタゾン、2酢酸ジフロラゾン、フルオシノロン・アセトニド、フルオロメトロン、酢酸フルオロメトロン、プロピオン酸クロベタゾール、デスオキシメタゾン、フルオキシメステロン、フルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、シピオン酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(hydrocortisone probutate)、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、酢酸パラメタゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、ピバル酸クロコルトロン、フルオシノロン、デキサメタゾン21-アセテート、ベータメタゾン17-バレレート、イソフルプレドン、9-フルオロコルチゾン、6-ヒドロキシデキサメタゾン、ジクロリゾン、メクロリゾン、フルプレドニデン、ドキシベタソール、ハロプレドン、ハロメタゾン、クロベタゾン、ジフルコルトロン、酢酸イソフルプレドン、フルオロヒドロキシアンドロステンジオン、ベクロメタゾン、フルメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノロン、クロベタゾール、コルチゾン、パラメタゾン、クロコルトロン、プレドニゾロン21-ヘミサクシネート遊離酸、プレドニゾロンメタスルホ安息香酸、プレドニゾロン・テルブテート、およびトリアムシノロン・アセトニド21-パルミテートを含む。
【0019】
本発明の目的には、生分解性薬物デポーを有することが含まれ、ここでコルチコステロイドは、フルオシノロンであり、そして生体適合性生分解性ポリマーにより、約10μg/kg/日を超えない速度で、患者の疼痛部位またはその部位近くに放出される。送達速度は、約1.6μg/kg/日〜約2.56×10-4μg/kg/日の範囲であってもよい。
【0020】
本発明の目的には、生分解性薬物デポーを有することが含まれ、ここでコルチコステロイドは、デキサメタゾンであり、そして生体適合性生分解性ポリマーにより、約100μg/kg/日を超えない速度で、患者の疼痛部位またはその部位近くに放出される。送達速度は、約20.0μg/kg/日〜約0.001μg/kg/日の範囲であってもよい。
【0021】
本発明のさらに別の目的には、生分解性薬物デポーを有することが含まれ、ここで局所的に投与される低用量のコルチコステロイドは、約0.1%〜約99%(w/w)のポリマー、より好ましくは約1%〜約80%、より好ましくは約1%〜約50%、最も好ましくは約1%〜約30%からコルチコステロイドをローディングすることを含む、患者の疼痛部位またはその部位近くでの制御放出のために、生分解性ポリマーと混合される。
【0022】
生分解性薬物デポーが、適切なビヒクル中に含む微粒子と関連させた、局所的に投与される低用量のコルチコステロイドを有することは、本発明の目的であり、ここで局所的に送達される低用量のコルチコステロイドが、微粒子に対して重量%でポリマーの約0.1%〜約99%(w/w)、より好ましくは約1%〜約80%、より好ましくは約1%〜約50%、最も好ましくは約1%〜約30%で存在する。生分解性薬物デポーが、医薬的に許容可能な賦形剤をさらに含むことが、本発明の目的である。
【0023】
本発明の態様には、患者の疼痛を治療するための生分解性薬物デポーを有することが含まれ、ここで患者の疼痛は、坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、狭窄症、脊髄症(mylopathy)、下背部痛、椎間関節痛、変形性関節症、関節リウマチ、骨溶解、腱炎、手根管症候群、または足根管症候群を含む炎症性疾患により引き起こされる。
【0024】
本発明のさらに別の態様は、以下の工程:i)コルチコステロイドを局所送達するための疼痛部位の選択;ii)選択された部位またはその部位近くへの生分解性薬物デポーの配置、そして、iii)選択された部位またはその部位近くへの局所的に送達される低用量のコルチコステロイドの放出;を含む、患者の疼痛を治療する方法を提供する。
【0025】
患者の疼痛を治療する方法には、坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、狭窄症、脊髄症(mylopathy)、下背部痛、椎間関節痛、変形性関節症、関節リウマチ、骨溶解、腱炎、手根管症候群、または足根管症候群を含む炎症性疾患により引き起こされる疼痛が含まれることが、本発明の目的である。
【0026】
本発明のさらに別の態様には、患者の疼痛を治療する方法が含まれ、ここで生分解性薬物デポーの送達には、シリンジおよび針またはカニューレを使用して、デポーを患者の疼痛部位またはその部位近くに注射することが含まれる。
【0027】
疼痛を治療する方法には、微粒子、マイクロカプセル、カプセル、ゲル、コーティング、マトリックス、ウェーファー、ピル、ペレット、その他の医薬的な送達組成物、またはこれらの組合せを含む粘性型、固形型、またはゲル型を有するインプラントを、患者の疼痛部位またはその部位近くに配置することにより、生分解性薬物デポーを送達することが含まれることが、本発明の目的である。
【0028】
患者の疼痛を治療する方法には、硬膜外で針/カテーテルまたはカニューレアッセンブリを使用することにより生分解性薬物デポーを患者の疼痛部位またはその部位近くに送達すること、または外科手術中に生分解性薬物デポーを配置すること、が含まれることが、本発明の目的である。
【0029】
本発明のさらに別の目的には、患者の疼痛部位に硬膜上腔、神経周囲腔、孔周囲腔(foramenal space)、または後根神経節が含まれる、患者の疼痛を治療する方法が含まれる。
【0030】
患者の疼痛を治療する方法には、フルオシノロン、デキサメタゾンのいずれかまたはこれらの組合せであるコルチコステロイドが含まれることが、本発明の目的である。
患者の疼痛を治療する方法が、100μg/kg/日を超えない速度で投与されるコルチコステロイドを投与することが、本発明の態様である。この速度はまた、化合物の具体的な活性に従って、約100μg/kg/日〜約1 pg/kg/日の範囲であってもよい。より具体的には、コルチコステロイドは、約50μg/kg/日〜約100 pg/kg/日の速度で投与される。最も具体的には、コルチコステロイドは、約30μg/kg/日〜約500 pg/kg/日の速度で投与される。
【0031】
患者の疼痛を治療する方法には、局所的に放出される低用量のコルチコステロイドを含む組成物を患者の疼痛部位またはその部位近くに薬物ポンプで送達することが含まれることが、本発明の目的である。
【0032】
本発明のさらに別の態様には、患者の疼痛を治療する方法が含まれ、ここで局所的に放出される低用量のコルチコステロイドが薬物ポンプにより送達され、そして局所的に放出される低用量のコルチコステロイドを含む組成物には、フルオシノロン、デキサメタゾンのいずれか、またはこれらの組合せが含まれる。
【0033】
本発明の別の態様には、患者の疼痛を治療する方法が含まれ、ここで薬物ポンプは、局所的に放出される低用量のコルチコステロイドを、100μg/kg/日を超えない速度で投与する。この速度は、患者の疼痛部位またはその部位近くでの化合物の具体的な活性に従って、約100μg/kg/日〜約1 pg/kg/日の範囲であってもよい。より具体的には、コルチコステロイドは、約50μg/kg/日〜約100 pg/kg/日の速度で投与される。最も具体的には、コルチコステロイドは、約30μg/kg/日〜約500 pg/kg/日の速度で投与される。
【0034】
本発明のさらに別の態様には、患者の疼痛を治療する方法を有することが含まれ、ここで患者の疼痛は、坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、狭窄症、脊髄症(mylopathy)、下背部痛、椎間関節痛、変形性関節症、関節リウマチ、骨溶解、腱炎、手根管症候群、または足根管症候群を含む炎症性疾患により引き起こされる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、様々な用量のデキサメタゾンおよびフルオシノロンの、ラットCCIモデルにおける対熱足退避反応潜時(thermal paw withdrawal latency)に対する作用を示す。
【図2】図2は、様々な用量のデキサメタゾンおよびフルオシノロンの、ラットCCIモデルにおける機械的異痛症反応に対する作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
“局所的に放出される低用量”、“局所的に送達される低用量”、または“局所的に投与される低用量”は全て、炎症による疼痛を軽減するために局所的に送達されるコルチコステロイドの量のことをいい、この量は、そのような疼痛を患う患者に対して通常は全身性に投与される用量と比較して少ない。例えば、ヒトにおいて毎日送達される局所的に放出される低用量のコルチコステロイドには:コルチゾン:2.5 mg/日;プレドニゾン:0.5 mg/日;メチルプレドニゾロン:0.4 mg/日;トリアムシノロン(triameinolone):0.4 mg/日;ベータメタゾン:7.5μg/日;デキサメタゾン:7.5μg/日;ヒドロコルチゾン:2.0 mg/日;フルオシノロン:0.3μg/日;が含まれていてもよいが、これらには限定されない。局所的に放出される低用量のコルチコステロイドは、100μg/kg/日、90μg/kg/日、80μg/kg/日、70μg/kg/日、60μg/kg/日、50μg/kg/日、40μg/kg/日、30μg/kg/日、20μg/kg/日、および10μg/kg/日(そして100と10のあいだの全ての整数)を超えない用量を有するべきである。
【0037】
“生分解性薬物デポー”、“薬物デポー”、“デポー”、または“デポー”は、局所的に送達される低用量のコルチコステロイドを患者の疼痛部位に対して放出するために、医師が身体の内部に配置する、いずれかの外来性インプラントのことをいう。外来性のインプラントには:微粒子、微小球、カプセル、ゲル、コーティング、マトリックス、ウェーファー、ピル、ファイバー、ペレット、またはその他の適切な医薬的送達組成物が含まれてもよいが、これらには限定されず;これらの全ては、生分解性ポリマーから構成されるものであってもそうではなくてもよい。生分解性ポリマーは、身体が容易に除去する非-毒性残留物へと分解し、または分解し、またはゆっくりと溶解し、そして無傷の身体から除去される。ポリマーをin-vivoで固形化することができ、あるいは、ex-vivoで固形化することができ、炎症領域に対して制御放出するために薬物を取り込む固形マトリックスを形成する。適切な生分解性ポリマーには、天然のまたは合成の生体適合性生分解性材料が含まれていてもよいが、これらには限定されない。天然のポリマーには、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン合成ポリ(アミノ酸)、およびプロラミン類などのタンパク質;ヒアルロン酸およびヘパリンなどのグリコサミノグリカン類;アルギネート、キトサン、スターチ、およびデキストラン類などの多糖類;およびその他の天然に存在する生分解性ポリマーまたは化学的に修飾した生分解性ポリマー;が含まれるが、これらには限定されない。合成生体適合性生分解性材料には、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PG)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリバレロラクトン、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン類)、ポリ(アミノ酸類)、ポリ(無水物)、ポリケタール類、ポリ(アリーレート)(poly(arylates))、ポリ(オルトエステル類)、ポリ(オルトカーボネート類)、ポリ(ホスホエステル類)、ポリ(エステル-co-アミド)、ポリ(ラクチド-co-ウレタン)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA-g-PLGA、PEGT-PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート類、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、PEO-PPO-PEO(プルロニック類)、PEO-PPO-PAAコポリマー類、およびPLGA-PEO-PLGAブレンド、およびこれらのコポリマー、およびこれらのいずれかの組合せ、が含まれるが、これらには限定されない。
【0038】
“患者”は、いずれかの動物、好ましくは哺乳動物のことをいい、ここで哺乳動物には、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ラム、ラマ、サル、類人猿、またはヒトが含まれていてもよいが、これらには限定されない。
【0039】
“薬物ポンプ”は、医師または獣医師により体内にまたはあるいは身体の外側に配置することができるいずれかの装置のことをいい、これは、機械的ポンピング作用または電気機械的ポンピング作用により、移植されたカテーテルを介して体内の炎症部位へと局所的に送達される低用量のコルチコステロイドを放出する。
【0040】
“神経性炎症”は、人体中の刺激を受けたかまたは損傷を受けた神経細胞または神経繊維などと関連する炎症関連細胞による、炎症メディエータの局所的放出により引き起こされる炎症のことをいう。
【0041】
“送達”は、薬物を患者体内に配置するために使用されるいずれかの手段のことをいう。そのような手段には、薬物を標的領域中に放出する生分解性薬物デポーを患者体内に配置すること、または薬物を標的領域中に放出する薬物ポンプを患者に接着しまたは挿入すること、または薬物を標的領域中に放出する薬物ポンプを患者に対して挿入すること、が含まれていてもよいが、これらには限定されない。生分解性薬物デポーを、様々な方法、例えば、ドリル部位への配置、シリンジ、カテーテルまたはカニューレアッセンブリによる注入、または銃型装置による強制的注入、により、または手術中の患者の手術部位への配置により、送達させることができることを、当業者は理解する。さらに、例えば、浸透圧ポンプ、椎間ポンプ(interbody pump)、輸液ポンプ、移植可能ミニポンプ、蠕動ポンプ、その他の医薬的ポンプ、または医薬的な送達ポンプと機能可能に連結されたカテーテルとともに標的部位またはその部位近くにカテーテルを挿入することによる局所的に投与されるシステムなどの、様々なポンピング機械もまた、薬物を標的領域内部へと送達することができる。
【0042】
用語“治療”および患者を“治療する”は、患者における疼痛の症候を減少し、低下し、停止し、防止し、または予防することをいう。本明細書中で記載される発明に関して、“治療”および“治療する”には、ある期間での、症候の部分的な軽減、ならびに症候の完全な軽減が含まれる。この期間は、数時間、数日、数ヶ月、または数年であってもよい。
【0043】
“患者の疼痛部位”は、例えば、神経根により引き起こされる坐骨神経痛、椎間板の線維輪断裂中に神経繊維が成長することにより引き起こされる背痛、変形性関節症を有する膝関節、または硬膜外にまたは神経周囲腔に広がる疼痛などの、疼痛を引き起こす体内のいずれかの領域のことをいう。患者により認識される疼痛は、炎症性応答、機械的刺激、化学的刺激、熱刺激、ならびに異痛症から生じる場合がある。
【0044】
あるいは、患者の疼痛部位には、生分解性薬物デポーまたは薬物ポンプが本発明において使用される体内のどのような場所が含まれていてもよく、手術部位など、炎症を生じつつあるかまたは将来的に生じる、いずれかの損傷部位が含まれるが、これらには限定されない。
【0045】
さらに、患者の疼痛部位は、頸椎、胸椎、または腰椎間の脊椎中の1または複数の部位を含むことができ、または肩関節、股関節、またはその他の関節などの炎症があるかまたは損傷を受けた関節の周辺領域中に位置する1または複数の部位を含むことができる。生分解性薬物デポーまたは薬物ポンプの移植を、骨折を修復し、腫瘍を除去するなどのための外科手術と同時に行うことができ、または以前の外傷、損傷、外科手術、またはその他の炎症のイニシエータの結果として、疼痛、特に慢性疼痛を経験する個体中に行うことができる。
【0046】
患者の疼痛部位には、例えば神経系の神経根または脳の領域などの組織中に、またはそれらの近傍に(約10 cm以内、または好ましくは例えば約5 cm以内)に、薬物を静置される、認識される疼痛領域もまた含まれる。
【0047】
“患者の疼痛部位またはその部位近く”は、生分解性薬物デポーまたは薬物ポンプが本発明において使用される体内のいずれかの場所、損傷組織または炎症性疼痛を引き起こす神経繊維のすぐそば、またはそのような損傷組織または神経細胞または神経繊維から約0.1 cm〜約10 cm以内、好ましくは損傷部位または炎症部位から5 cm未満である場所、のことをいう。
【0048】
本発明の様々な態様の記載は、以下に提供される。これらの態様は、身体の硬膜外または神経周囲腔中またはその周辺の神経性炎症に関連した疼痛を治療することを最初は意図していたが、本発明がこれらの用途のみを目的とするとは、推測すべきではない。特定の用語および参考文献のいずれかまたは全ての使用は、本発明の異なる態様を詳細に説明するためにのみある。
【0049】
同様に、本発明の改変およびさらなる修飾のいずれかおよび全てが、当業者が気付くように、本発明の範囲内のものであることが意図される。限定的ではない例は、炎症によって引き起こされる骨-疾患の予防である。
【0050】
コルチコステロイドおよび薬物用量の選択
本発明と関連したコルチコステロイドは、天然のまたは合成のステロイドホルモンのいずれであってもよい。天然のコルチコステロイドは、副腎皮質または概して人体により、分泌される。コルチコステロイドは、グルココルチコイド活性および/またはミネラルコルチコイド活性を有していてもよい。本発明に関して、コルチコステロイドの限定的ではない例には:デキサメタゾン、ベータメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロン・アセトニド、2酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロン・ヘキサアセトニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、ピバル酸フルメタゾン、2酢酸ジフロラゾン、フルオシノロン・アセトニド、フルオロメトロン、酢酸フルオロメトロン、プロピオン酸クロベタゾール、デスオキシメタゾン、フルオキシメステロン、フルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、シピオン酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(hydrocortisone probutate)、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、酢酸パラメタゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、ピバル酸クロコルトロン、フルオシノロン、デキサメタゾン21-アセテート、ベータメタゾン17-バレレート、イソフルプレドン、9-フルオロコルチゾン、6-ヒドロキシデキサメタゾン、ジクロリゾン、メクロリゾン、フルプレドニデン、ドキシベタソール、ハロプレドン、ハロメタゾン、クロベタゾン、ジフルコルトロン、酢酸イソフルプレドン、フルオロヒドロキシアンドロステンジオン、ベクロメタゾン、フルメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノロン、クロベタゾール、コルチゾン、パラメタゾン、クロコルトロン、プレドニゾロン21-ヘミサクシネート遊離酸、プレドニゾロンメタスルホ安息香酸、プレドニゾロン・テルブテート、およびトリアムシノロン・アセトニド21-パルミテートが含まれていてもよい。
【0051】
本発明には、毎日送達される局所的に放出される低用量のコルチコステロイドを使用して、疼痛を治療することが含まれる。局所的に送達される低用量には、ポンプまたは薬物デポーにより放出されるいずれかの日用量のコルチコステロイドが含まれていてもよく、これは炎症性疼痛を患う患者に対して一般的に与えられるであろう全身用量よりも少ないものであってもよい。例えば、ヒトにおいて毎日送達された局所的に送達される低用量のコルチコステロイドには:コルチゾル:2.5 mg/日;プレドニゾン:0.5 mg/日;メチルプレドニゾロン:0.4 mg/日;トリアムシノロン(triameinolone):0.4 mg/日;ベータメタゾン:7.5μg/日;デキサメタゾン:7.5μg/日;ヒドロコルチゾン:2.0 mg/日;フルオシノロン:0.3μg/日;が含まれていてもよいが、これらには限定されない。用量は、100μg/kg/日、90μg/kg/日、80μg/kg/日、70μg/kg/日、60μg/kg/日、50μg/kg/日、40μg/kg/日、30μg/kg/日、20μg/kg/日、および10μg/kg/日(そして100と10のあいだの全ての整数)を超えない。
【0052】
特定の態様において、用量は、生分解性薬物デポーにより提供されるか、または様々なタイプの薬物ポンプにより送達されるが、しかしながら薬物は、炎症の標的領域またはその近傍に低用量で提供されるべきものである。本発明のコルチコステロイドは、制御されそして直接的な方法で、炎症を所望のように修飾することを目的として、局所的に放出される低用量で送達するために、注意深く製剤化されることが望ましい。さらに、生分解性薬物デポーまたは薬物ポンプは、迅速または直接的な放出から、持続性放出まで、連続的な範囲で、低用量コルチコステロイドを送達することができる。
【0053】
患者における適切な分配および吸収のため、薬物の制御放出を、所望の期間にわたり所望の部位で生じさせることができる。好都合には、生分解性薬物デポーが移植される場合、薬物の制御放出が、従来の手段で到達するには深部であり、複雑であり、痛みを伴い、または危険性が高い部位および/またはそれ以外ではアクセスできない部位に対して、振り向けることができる。
【0054】
コルチコステロイドの制御放出のためのポリマーデポー
局所的に放出される低用量のコルチコステロイドを、体組織内部において時間とともに崩壊する生体適合性生分解性ポリマー中に、ステロイドを分配させることにより、制御的かつ持続的な様式で送達することができる。さらに、インプラントまたはコルチコステロイドを、保護的コーティング中に取り込むことができ、これによりポリマーマトリックスからのコルチコステロイドの放出を遅らせる。生体適合性生分解性ポリマーは、好ましくは、表面浸食によるかまたは全体浸食によるかのいずれかにより、加水分解により分解される。しかしながら、ポリマーデポーの表面の表面浸食は、いくつかの用途のためには好ましいものである可能性がある。というのも、局所的に送達される低用量のコルチコステロイドの放出が、持続的なだけでなく、所望の放出速度を有することを確実にするためである。
【0055】
多数の生分解性ポリマーを使用して、コルチコステロイドを炎症部位に対して放出することができる。ポリマーおよびコルチコステロイドを一緒に混合する場合、体内の標的領域にて、薬物の持続的放出を可能にするために、生分解性ポリマーは、ポリマーマトリックス中にステロイドを取り込む。生分解性薬物デポーは、約2年未満の期間をかけてin vivoで崩壊することができ、この場合、薬物デポーの少なくとも50%が、約3ヶ月から約1年以内のどこかの時点で溶解する。
【0056】
本発明の一態様において、生分解性ポリマーには、天然のまたは合成の生体適合性生分解性材料が含まれていてもよいが、これらには限定されない。天然のポリマーには、タンパク質(アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、合成ポリ(アミノ酸)、およびプロラミン類など);グリコサミノグリカン類(ヒアルロン酸およびヘパリン);多糖類(アルギネート、キトサン、スターチ、およびデキストラン類);およびその他の天然に存在するかまたは化学的に修飾した生分解性ポリマー;が含まれるが、これらには限定されない。合成生体適合性生分解性材料には、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PG)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリバレロラクトン、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン類)、ポリ(アミノ酸類)、ポリ(無水物)、ポリケタール類、ポリ(アリーレート)(poly(arylates))、ポリ(オルトエステル類)、ポリ(オルトカーボネート類)、ポリ(ホスホエステル類)、ポリ(エステル-co-アミド)、ポリ(ラクチド-co-ウレタン)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA-g-PLGA、PEGT-PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート類、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、PEO-PPO-PEO(プルロニック類)、PEO-PPO-PAAコポリマー類、およびPLGA-PEO-PLGAブレンド、およびこれらのコポリマー、およびこれらのいずれかの組合せ、からなる群が含まれるが、これらには限定されない。これらのポリマーは、本件明細書中で開示される制御放出組成物または持続的放出組成物を作製する際に使用することができる。
【0057】
ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)は、Alkermes(Cambridge, MA)から商業的に入手可能である。適切なAlkermesの製品には、00 DL 7E、8515 DLG 7E、7525 DLG 7E、6535 DLG 7E、5050 DLG 7E(Lakeshore Biomaterials, Birmingham, AL);LactelTM(Durect, Pelham, AL);およびResomerTM (Boeringer Ingelheim)およびポリ(d,l-乳酸)(d,l-PLA)(これらの場合、ラクチドとグリコリドに関するこの製品のモル%組成は所定のものである)が含まれる。例えば、7525 DLG 7Eは、75%ラクチドおよび25%グリコリドのモル%比を有する。示したように、生体内分解性コポリマーは、幅広い分子量およびグリコール酸に対する乳酸の幅広い比で、入手可能である。
【0058】
供給者から購入しないならば、生分解性ポリマーをU.S. Pat. No. 4,293,539(Ludwig, et al.)において示される手順により調製することができ、この開示内容は、その全体が参考文献として本明細書中に援用される。Ludwigは、容易に除去可能なポリマー化触媒(例えば、Dowex HCR-W2-Hなどの強酸イオン-交換樹脂)の存在下にて、乳酸およびグリコール酸を縮合することにより、そのようなコポリマーを調製する。
【0059】
微粒子
均質な生分解性薬物デポー中に局所的に放出される低用量のコルチコステロイドを取り込むことに代えて、薬物デポーは、小型の生分解性微粒子の形状を形成すること、すなわち、生分解性微粒子を製剤化することができ、これは100μg/kg/日、90μg/kg/日、80μg/kg/日、70μg/kg/日、60μg/kg/日、50μg/kg/日、40μg/kg/日、30μg/kg/日、20μg/kg/日、および10μg/kg/日(そして100と10のあいだの全ての整数)を超えない速度で、コルチコステロイドを放出する。放出速度は、患者の疼痛部位またはその部位近くでの化合物の具体的な活性に依存して、約100μg/kg/日〜約1 pg/kg/日の範囲であってもよい。より具体的には、コルチコステロイドは、約50μg/kg/日〜約100 pg/kg/日の速度で投与される。最も具体的には、コルチコステロイドは、約30μg/kg/日〜約500 pg/kg/日の速度で投与される。微粒子の製造または生分解性微粒子の作製方法は、当該技術分野において公知である。上述した生分解性ポリマーのいずれかから作製される微粒子は、スプレー乾燥、溶媒蒸発、相分離、流動床コーティング(fluidized bed coating)またはそれらの組合せにより調製することができる。
【0060】
溶媒蒸発により、コルチコステロイドが有機溶媒中に可溶であれば、それをポリマーを揮発性有機溶媒に溶解し、局所的に放出される低用量のコルチコステロイドを有機相に対して添加し、界面活性剤またはポリビニルアルコールなどのポリマーを含有する水中で有機相を乳化し、そして最終的に溶媒を減圧下で除去して別個の硬化した頑丈な微粒子を形成することにより、生分解性ポリマー中に捕捉することができる。
【0061】
相分離の手順により、水溶性物質をポリマー中に捕捉し、微粒子を調製する。相分離には、生分解性ポリマーの液滴形成が関与する。次いで、シリコーンオイルなどの非溶媒を添加することにより、ポリマーが有機溶媒から抽出される。
【0062】
あるいは、微粒子は、公開された国際特許出願WO 95/13799(この開示は、その全体を本明細書中に援用する)中に記載される1995年のRamstack et al.のプロセスにより、調製することができる。Ramstack et al.のプロセスは、本質的には、活性物質とポリマーとを含む第1の相、および第2の相を提供し、これらを静的ミキサーを介して急冷液(quench liquid)中にポンプで送り込み、活性物質を含有する微粒子を形成する。第1の相および第2の相は、実質的に混合しなくてもよく、そして第2の相には、好ましくはポリマーおよび活性物質のための溶媒が含まれず、そして乳化剤の水溶液が含まれる。
【0063】
流動床コーティング(fluidized bed coating)において、薬物を、ポリマーとともに有機溶媒中に溶解する。次いで、この溶液を、例えば、Wursterのエアサスペンションコーティング装置を介して処理し、最終マイクロカプセル生成物を形成する。
【0064】
生分解性薬物デポーは、局所浸透または注入のために適したサイズ分布範囲で、微粒子として調製することができる。微粒子の直径および形状を操作して、放出特性を修飾することができる。例えば、より小さな直径の微粒子は、局所的に放出される低用量コルチコステロイドのためのより早い放出速度および増大した組織浸透性を有する。しかしながら、より大きな直径の微粒子は、反対の作用を有する。
【0065】
さらに、その他の粒子形状(例えば、管状形)もまた、球状型と比較して、そのような代わりの幾何学的形状に伴う質量対表面積比の増大のために、局所的に放出される低用量コルチコステロイドの放出速度を修飾することができる。注射可能な微粒子の直径は、例えば、直径約1ミクロン〜約200ミクロンのサイズ範囲である。より好ましい態様において、微粒子は、約5〜約120ミクロンの直径の範囲である。
【0066】
局所的に送達される低用量のコルチコステロイドを放出する生分解性微粒子は、適切な水性キャリアまたは非水性キャリア中で乳化させることができ、それには、水、塩類溶液、医薬的に許容可能なオイル、低融点ワックス、脂肪、脂質、リポソーム、および脂溶性で、水に実質的に不溶性で、そして患者体内の天然のプロセスにより生分解性および/または除去可能であるいずれかその他の医薬的に許容可能な物質が含まれていてもよいが、これらには限定されない。野菜や種などの植物のオイルが含まれる。例には、トウモロコシ(corn)油、ゴマ油、キャノーラ(cannoli)油、ダイズ油、ヒマシ(castor)油、ピーナッツ油、オリーブ油、ラッカセイ油、トウモロコシ(maize)油、アーモンド油、亜麻油、ベニバナ油、ヒマワリ油、セイヨウアブラナ油、ココナッツ油、ヤシ油、ババス油、および綿実油から作製されるオイル;カルナバワックス(carnoba wax)、蜜ロウ、および獣脂などのワックス;トリグリセリドなどの脂肪、脂肪酸およびエステル等の脂質、および赤血球ゴーストおよびリン脂質層等のリポソーム;が含まれる。
【0067】
生分解性ポリマーのコルチコステロイドのローディング
局所的に投与される低用量のコルチコステロイドが、患者の疼痛部位中またはその近くへの制御放出のために生分解性ポリマーと混合される場合、コルチコステロイドの有用なローディングは、約0.1%〜約99%(w/w)のポリマー、より好ましくは約1%〜約80%、より好ましくは約1%〜約50%、最も好ましくは約1%〜約30%のポリマーである。
【0068】
コルチコステロイドが、局所的に投与される低用量のコルチコステロイドを含む微粒子が懸濁される適切なビヒクルとともに含まれる場合、このコルチコステロイドは、例えば、コルチコステロイドに対して、重量%にして約0.1%〜約99%(w/w)のポリマー、より好ましくは約1%〜約80%、より好ましくは約1%〜約50%、最も好ましくは約1%〜約30%のポリマーが存在する。
【0069】
局所的に送達される低用量コルチコステロイドの放出
局所的に送達される低用量のコルチコステロイドを、重量で0.000.1%〜99.9%またはそれ以上、好ましくは重量で0.5%〜60%またはそれ以上、およびより好ましくは重量で1%〜40%またはそれ以上の%ローディングで、生分解性ポリマーまたはその他の制御放出製剤中に取り込むことができる。
【0070】
コルチコステロイドの形状および製造の方法に加えて、ポリマー中に取り込まれる薬物の%およびマトリクスまたは製剤の形状を操作することにより、局所的に放出される低用量のコルチコステロイドの特定のローディングを送達するための薬物デポーをあつらえることができる。一日あたりに放出される薬物の量は、製剤(例えば、マトリクス)中に取り込まれる薬物の%と比例して増大する(例えば、約1〜約50から90%)。好ましい態様において、特定の薬剤、装置を作成しそしてローディングするために使用される方法、およびポリマーに依存して、実質的により多くの薬剤を取り込むことができるが、約5〜30%の薬物が取り込まれたポリマーマトリクスまたはその他の製剤を使用する。
【0071】
生分解性ポリマーは、体内組織または体液中で徐々に生体崩壊を受けるため、コルチコステロイドは、炎症部位に対して放出される。生分解性ポリマーデポーによるコルチコステロイドの薬物動態学的放出プロファイルは、炎症関連疼痛の所望の治療を提供するために、一次放出、ゼロ次放出、2相または多相放出であってもよい。いずれかの薬物動態学的事象において、ポリマーの生体内崩壊およびそれに続くコルチコステロイドの放出の結果、ポリマーマトリックスからのコルチコステロイドの制御放出を生じることができる。放出速度は、患者の疼痛部位またはその部位近くでの化合物の具体的な活性に依存して、約100μg/kg/日〜約1 pg/kg/日の範囲であってもよい。コルチコステロイド放出の追加的な速度には、およそ95μg/kg/日〜およそ10 pg/kg/日;およそ90μg/kg/日〜およそ25 pg/kg/日;およそ85μg/kg/日〜およそ50 pg/kg/日;およそ80μg/kg/日〜およそ75 pg/kg/日;およそ75μg/kg/日〜およそ100 pg/kg/日;およそ70μg/kg/日〜およそ250 pg/kg/日;およそ65μg/kg/日〜およそ500 pg/kg/日;およそ60μg/kg/日〜およそ750 pg/kg/日;およそ55μg/kg/日〜およそ1 ng/kg/日;およそ50μg/kg/日〜およそ10 ng/kg/日;およそ45μg/kg/日〜およそ25 ng/kg/日;およそ40μg/kg/日〜およそ50 ng/kg/日;およそ35μg/kg/日〜およそ75 ng/kg/日;およそ30μg/kg/日〜およそ100 ng/kg/日;およそ25μg/kg/日〜およそ250 ng/kg/日;およそ20μg/kg/日〜およそ500 ng/kg/日;およびおよそ15μg/kg/日〜およそ750 ng/kg/日;が含まれていてもよい。別の態様において、コルチコステロイドの用量は、およそ15μg/kg/日〜およそ50 pg/kg/日である。別の態様において、用量は、およそ10μg/kg/日〜およそ75 pg/kg/日である。別の態様において、用量は、およそ5μg/kg/日〜およそ100 pg/kg/日である。別の態様において、用量は、およそ20μg/kg/日〜およそ500 pg/kg/日である。あるいは、放出速度は、約50μg/kg/日〜約100 pg/kg/日の速度の範囲であってもよく、そして約30μg/kg/日〜約500 pg/kg/日であってもよい。
【0072】
賦形剤
生分解性ポリマーマトリックスからのコルチコステロイドの放出速度を、医薬的に許容可能な賦形剤を製剤に対して添加することにより、修飾しまたは安定化させることができる。賦形剤には、コルチコステロイドまたは生分解性ポリマーではない、生分解性ポリマーデポーに対して添加されたいずれかの有用な有効成分が含まれていてもよい。医薬的に許容可能な賦形剤には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、スターチ、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、PEG、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、滅菌塩類溶液、シロップ、およびメチルセルロースが含まれていてもよいが、これらには限定されない。生分解性薬物デポーからのコルチコステロイドの放出速度を修飾するための賦形剤には、孔形成剤、pH調整剤、還元剤、抗酸化物質、およびフリーラジカルスカベンジャーが含まれていてもよいが、これらには限定されない。
【0073】
ポリマーデポーによるコルチコステロイドの送達
本発明の生分解性組成物の非経口投与は、主として筋肉内注射により行うことができる。ほとんどの体空間に関して、針の使用を許容することができる。生分解性薬物デポーを網嚢孔(foramenal)腔中に注射するため、約18〜23ゲージのゲージを有する針が、適切である。しかしながら、生分解性薬物デポーを送達するために針/カテーテルの組合せが選択される場合、カテーテルを導入する約16〜18ゲージのゲージサイズを有する針が適切である可能性がある。
【0074】
別の態様において、カテーテルの遠位端を、例えば神経根の3 cm以内の、網嚢孔(foramenal)腔のちょうど内部で終了させることができる。この態様には、坐骨神経痛に関連する炎症性疼痛部位付近の放出される薬物が含まれていてもよい。
【0075】
本発明のポリマーデポーのため、穴(bore)のサイズの範囲は、様々な身体の部位に対して適用するために必要とされる(例えば、28〜14ゲージ)。この柔軟性により、貫通性の針を除去可能なようにプラスチック点滴カテーテル中に包み込むこともできる。炎症による疼痛を治療する特定の手順に関して、より細い針を使用する。より細い針は、同一の穴を有するが、より長いものであり、従ってより細く見える。
【0076】
ポリマーデポーを介したコルチコステロイドの投与により、身体の具体的な領域に対して正確に、薬物を送達する。このように、当業者は、患者に対する悪影響を回避しまたは最小化することができる。
【0077】
薬物ポンプによるコルチコステロイドの送達
局所的に放出される低用量のコルチコステロイドを、薬物ポンプにより標的領域に対して局所的に送達することができる。ポンプは、身体の特定の領域に、薬物を連続的にそして正確に送達する。このアッセンブリは、経口投薬に伴う吐き気または中毒などの患者に対する悪影響を回避しまたは最小化することができる。
【0078】
局所的に送達される低用量のコルチコステロイドの制御投与には、例えば、輸液ポンプまたは標的部位に挿入される移植可能ミニポンプ、または移植可能制御放出装置(例えば、U.S.特許番号6,001,386に記載される装置)、または持続的放出送達システム(例えば、U.S.特許番号6,007,843に記載されるシステム)が含まれていてもよい。投与システムは、患者の疼痛部位またはその部位近くで、標的化された薬物放出速度を提供することができ、この部位で、ポンプが低用量のコルチコステロイドを、予め選択された標的化放出速度に実質的に適合した速度で、局所的に放出する。この放出速度は、100μg/kg/日、90μg/kg/日、80μg/kg/日、70μg/kg/日、60μg/kg/日、50μg/kg/日、40μg/kg/日、30μg/kg/日、20μg/kg/日、および10μg/kg/日(そして100と10のあいだの全ての整数)を超えない。放出速度は、患者の疼痛部位またはその部位近くでの化合物の具体的な活性に従って、約100μg/kg/日〜約1 pg/kg/日の範囲であってもよい。コルチコステロイドの放出の追加的な速度には、およそ95μg/kg/日〜およそ10 pg/kg/日;およそ90μg/kg/日〜およそ25 pg/kg/日;およそ85μg/kg/日〜およそ50 pg/kg/日;およそ80μg/kg/日〜およそ75 pg/kg/日;およそ75μg/kg/日〜およそ100 pg/kg/日;およそ70μg/kg/日〜およそ250 pg/kg/日;およそ65μg/kg/日〜およそ500 pg/kg/日;およそ60μg/kg/日〜およそ750 pg/kg/日;およそ55μg/kg/日〜およそ1 ng/kg/日;およそ50μg/kg/日〜およそ10 ng/kg/日;およそ45μg/kg/日〜およそ25 ng/kg/日;およそ40μg/kg/日〜およそ50 ng/kg/日;およそ35μg/kg/日〜およそ75 ng/kg/日;およそ30μg/kg/日〜およそ100 ng/kg/日;およそ25μg/kg/日〜およそ250 ng/kg/日;およそ20μg/kg/日〜およそ500 ng/kg/日;およびおよそ15μg/kg/日〜およそ750 ng/kg/日;が含まれていてもよい。別の態様において、コルチコステロイドの用量は、およそ15μg/kg/日〜およそ50 pg/kg/日である。別の態様において、用量は、およそ10μg/kg/日〜およそ75 pg/kg/日である。別の態様において、用量は、およそ5μg/kg/日〜およそ100 pg/kg/日である。別の態様において、用量は、およそ20μg/kg/日〜およそ500 pg/kg/日である。あるいは、放出速度は、約50μg/kg/日〜約100 pg/kg/日の速度の範囲であってもよく、そして約30μg/kg/日〜約500 pg/kg/日の範囲であってもよい。
【0079】
適切なポンプの一例は、SynchroMed(登録商標)(Medtronic, Minneapolis, Minnesota)ポンプである。このポンプは、3つの密封されたチャンバーを有する。第1のチャンバーは、電子モジュールおよびバッテリーを含有する。第2のチャンバーは、蠕動ポンプと薬剤容器を含有する。第3のチャンバーは、不活性ガスを含有し、これにより薬物を蠕動ポンプへと送り込むために必要な圧力を提供する。ポンプを充填するため、薬物を容器充填口(reservoir fill port)を介して、拡張性の容器に注入する。
【0080】
不活性ガスは、容器に圧力を発生し、そしてその圧力により薬物をフィルターを介してそしてポンプチャンバー中へと送り込む。次いで、薬物を、ポンプチャンバーから装置の外にそしてカテーテルの内部にポンプで送り出し、それにより薬物を標的部位、すなわち患者の疼痛部位またはその部位近くの部位へと振り向ける。
【0081】
薬物の送達速度を、マイクロプロセッサにより調節することができる。このことにより、使用されるポンプにより同量または異なる量の薬物を、特定の回数、または送達と送達との間の設定間隔で、送達することができ、それにより所望の標的化された放出速度と調和するように放出速度を制御する。
【0082】
あるいは、薬物送達のために適したその他の機器を使用して、局所的に放出される低用量のコルチコステロイドを、患者の疼痛部位またはその部位近くに送達することもできる。本発明の方法に対して適応させるために適切なものであってもよい送達機器には、例えば、標的化された具体的な薬物送達のための医療用カテーテルを記載するU.S.特許番号6,551,290(Elsberry, et al.)において見出される機器;生理活性物質を調節可能なように放出するための移植可能医療機器を記載するU.S.特許番号6,571,125(Thompson)において見出される機器;生物体内の選択された部位に対して治療薬を送達するための実質内点滴カテーテルシステムを記載するU.S.特許番号6,594,880(Elsberry)において見出される機器;そして等体積の薬剤を間隔をあけた部位に点滴するための移植可能カテーテルを記載するU.S.特許番号5,752,930(Rise, et al.)において見出される機器;が含まれるが、これらには限定されない。
【0083】
本発明の方法において使用するために適応させることができるさらなる設計は、例えば、LernerのU.S.特許番号6,913,763において提供され、フィードバック制御された送達方法を伴う事前プログラム可能な移植可能装置が関連する。化学物質の制御放出のための微小容器(micro-reservoir)浸透圧性放出システムに関連するUS特許出願2004/0106914、液体医薬を送達するための小型の軽量機器に関するGormanらのU.S.特許番号7,144,384、移植可能超小型点滴機器に関するUS 2004/0082908、移植可能セラミックバルブポンプアッセンブリに関するForsellのU.S.特許番号6,979,351、そして折り畳み式液体チャンバーを備える移植可能輸液ポンプに関するUS 2004/0065615。Alzet(登録商標)浸透圧ポンプ(Durect Corporation, Cupertino, California)はまた、本発明の方法の方法において使用するために適切な、様々なサイズ、ポンピング速度、そして持続時間で、利用可能である。
【0084】
疼痛の重症度や持続期間などの症状に基づいて、医師、獣医師、または適切な医療関係者、または患者が、患者の疼痛部位またはその部位近くでの、低用量コルチコステロイドの局所投与速度を決定することができる。ステロイドの投与期間、局所的に放出される投与間の間隔、低用量のサイズ、容量投与の継続性または自発性は、医師、獣医師、またはその他の医療関係者により、全て適切に決定される。
【0085】
医療関係者は、薬物を、患者の疼痛部位またはその部位近くに投与する際の選択肢を有する。有効量の局所的に放出される低用量のコルチコステロイドおよび1またはそれ以上の追加の治療薬、局所的に投与される低用量のコルチコステロイドおよび/またはもう一つの追加の治療薬を、薬物ポンプにより投与することができる。
【0086】
局所的に投与される低用量のコルチコステロイドの薬物ポンプの放出は、(1)局所的かつ持続的であるか、(2)少なくとも1日〜約12ヶ月の期間生じるか、または(3)継続的または断続的であるか、のいずれであってもよい。さらに、医療提供者は、標的化放出速度を有する医薬組成物を選択する選択肢を有する。例えば、標的化放出速度は、約2週間〜約12ヶ月であってもよい。患者が治療経過を通じてフィードバックをもたらすため、医療提供者は、組合せを変更することができる。従って、医療提供者は、特に疼痛の治療、特に慢性疼痛の治療のための、以前は利用できなかった多数の選択肢を有する。
【実施例】
【0087】
PLGAペレット中15%フルオシノロンアセトニドの調製および放出速度
15%フルオシノロンを含有するPLGAの生分解性薬物デポーを調製するため、0.75 dL/gのIVおよび117 kDaの分子量を有するおよそ50グラムの85/15ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)(Lakeshore Biomaterials, Birmingham, AL)を、ポリプロピレンビーカー中に入れ、そして液体窒素(およそ200 mL)で10分間冷却する。次いで、ポリマーをUltra Centrifugal Mill ZM 200(Retsch GmbH & Co., Haan, Germany)を使用して、およそ80ミクロンの平均直径の微細粒子に粉砕する。粉砕したポリマー粒子を回収し、そして10 cmのアルミニウム秤量皿中に入れる。この皿を、減圧下、35℃で24時間、減圧オーブン中に入れ、粉砕プロセスから生じる凝集物を除去する。
【0088】
次に、化学天秤を使用して、3.5グラムのポリマーをアルミニウム秤量皿中で秤量する。0.7グラムのフルオシノロン・アセトニド(Spectrum Chemical, Gardena, CA)を追加する。構成成分を、ポリマーおよび薬物が均一に混合されるように見えるまで、スパチュラを使用して攪拌する。次に、0.46グラムのポリエチレングリコールメチルエーテル(MW 550, Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を、薬物およびポリマー混合物に対して添加する。混合物が均質に見えるまで、構成成分をスパチュラを使用して混合する。
【0089】
次に、混合物をHAAKE MiniLab Rheomex押出成形機(Model CTW5, Thermo Electron Corp, Waltham, MA)中にロードし、そして0.75 mmの直径の型押し機を通じて押し出す(温度120℃、25 rpm)。次いで、得られたポリマー鎖を、およそ0.75 mmの長さの円筒状ペレットに切断する(縦横比 = 1)。切断されたペレットは、密封したガラスバイアル中にて保存し、それを用時まで、乾燥窒素を用いてパージングした。
【0090】
およそ25 mgのペレットを、10 mLのリン酸緩衝塩類溶液、0.5%SDS(pH 7.4)を含有する各々3バイアル中で秤量する。バイアルを密封し、そして37℃に設定したModel C24インキュベータ/シェーカー(New Brunswick Scientific Co., Edison, NJ)中に配置し、そしておよそ70 RPMで攪拌する。特定の時点で、溶出バッファーを除去し、そしてUV/Vis分光光度計を用いて240 nmで薬物について解析する(Model:Lambda 850, Perkin Elmer, Waltham, MA)。サンプルバイアルを、新鮮なバッファーで補充し、そして次の時点までインキュベータ/シェーカーに戻す。放出された累積薬物は、最初の薬物総重量の%としてプロットされる。
【0091】
20日の前には、10%未満(累積)のフルオシノロンが、デポーから溶出される。day 20には、10%よりもわずかに多く(累積)のフルオシノロンが溶出される。day 40までには、およそ15%(累積)のフルオシノロンが、デポーから溶出される。day 60までには、およそ20%(累積)のフルオシノロンが、デポーから溶出される。
【0092】
PLGAペレット中での15%デキサメタゾンの調製および放出速度
15%デキサメタゾンを含有するPLGAの生分解性薬物デポーを調製するため、0.75 dL/gのIVおよび117 kDaの分子量を有するおよそ50グラムの85/15ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)(Lakeshore Biomaterials, Birmingham, AL)を、ポリプロピレンビーカー中に入れ、液体窒素(およそ200 mL)で10分間冷却する。次いで、ポリマーをUltra Centrifugal Mill ZM 200(Retsch GmbH & Co., Haan, Germany)を称して、およそ80ミクロンの平均直径の微細粒子に粉砕する。粉砕したポリマー粒子を回収し、そして10 cmのアルミニウム秤量皿中に入れる。この皿を、減圧下、35℃で24時間、減圧オーブン中に入れ、粉砕プロセスから生じる凝集物を除去する。
【0093】
次に、化学天秤を使用して、3.0グラムのポリマーをアルミニウム秤量皿中で秤量する。次に、0.6グラムのデキサメタゾン(Spectrum Chemical, Gardena, CA)を追加する。構成成分を、ポリマーおよび薬物が均一に混合されるように見えるまで、スパチュラを使用して攪拌する。次に、0.41グラムのポリエチレングリコールメチルエーテル(MW 550, Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を、薬物およびポリマー混合物に対して添加する。混合物が均質に見えるまで、構成成分をスパチュラを使用して混合する。
【0094】
次に、混合物をHAAKE MiniLab Rheomex押出成形機(Model CTW5, Thermo Electron Corp., Waltham, MA)中にロードし、そして0.75 mm直径の型押し機を通じて押し出す(温度120℃、25 rpm)。次いで、得られたポリマー鎖を、およそ0.75 mmの長さの円筒状ペレットに切断する(縦横比 = 1)。切断されたペレットは、密封したガラスバイアル中にて保存し、それを用時まで、乾燥窒素を用いてパージングした。
【0095】
およそ25 mgのペレットを、10 mLのリン酸緩衝塩類溶液(pH 7.4)を含有する各々3バイアル中で秤量する。バイアルを密封し、そして37℃に設定したModel C24インキュベータ/シェーカー(New Brunswick Scientific Co., Edison, NJ)中に配置し、そしておよそ70 RPMで攪拌する。特定の時点で、溶出バッファーを除去し、そしてUV/Vis分光光度計を用いて242 nmで薬物について解析する(Model:Lambda 850, Perkin Elmer, Waltham, MA)。サンプルバイアルを、新鮮なバッファーで補充し、そして次の時点までインキュベータ/シェーカーに戻す。放出された累積薬物は、最初の薬物総重量の%としてプロットされる。
【0096】
2日目には、約10%(累積)の薬物が溶出された。10日目には、20%よりもわずかに少ない(累積)量の薬物が溶出された。20日目には、20%よりもわずかに多い(累積)量の薬物が溶出された。溶出された薬物の量は、60日までに、およそ27%(累積)にまで漸増した。
【0097】
ラット慢性絞扼性損傷(Chronic Constriction Injury)モデルでの、全身的に投与されたフルオシノロンの薬物低減研究
この研究の目的は、強力なコルチコステロイドであるフルオシノロン・アセトニド(Sigma Cat# F8880-25MG;Sigma Aldrich, St. Louis, MO)が、動物モデルにおいて神経障害性疼痛を低減する効率を評価することである。この動物モデルは、Bennett and Xie(1988)により記載された手順と同様の手順により誘導される慢性絞扼性損傷モデル(CCI)による、オスWistarラット(300〜326 g)における疼痛関連行動に関連する。2%イソフルレン麻酔のもと、このラットの通常の坐骨神経が、鈍性剥離により筋肉(大腿二頭筋)を分離することにより、大腿部中央部で曝露され、そして接着組織から剥離される。4回のルースな絞扼を、クロムコーティング腸線縫合糸(chromic gut;4-0吸収性縫合糸、Jorgensen Laboratories, Inc. Loveland, CO)を使用して、1 mm離して配置する。
【0098】
CCI誘導の後、各群(n=7)は、全身性注射を介した治療を受ける。ビヒクル対照動物(Group 1)には、1×リン酸緩衝溶液(PBS)を手術のその日(Day 0)から3日ごとに腹腔内(IP)で与え、エタネルセプト(etanercept)(Group 2;3 mg/kg)を、Day 0から3日ごとにIPで投与する。Group 3、Group 4およびGroup 5の動物には、フルオシノロン(0.5、5、または25μg/kg)をDay 0から毎日、皮下(SC)にて与える。
【0099】
対熱痛覚過敏症を、足底鎮痛装置(plantar analgesia instrument;Stoelting, Wood Dale, IL)を使用して測定する。試験の前に、各動物を、透明のプラスチックチャンバーである足底試験装置上に配置し、そして15分間、休止/順化を行わせる。光点(熱)ビーム刺激を、各動物のCCIの足に適用する。足退避の後、自動化調節が、刺激およびタイマーの両方ともを中断する。熱源機器を、強度50に設定し、そして15秒間での最大カットオフを、組織損傷を防止するように設定する。各動物の損傷部位(右後跂)の対熱痛覚過敏症足退避反応潜時応答を、CCI手術の2日前(損傷前ベースライン)、手術後Day 7、Day 14、およびDay 21に測定する。各試験からのデータを、一元ANOVAにより解析する。
【0100】
機械的異痛症を、von Frey単一フィラメント試験(monofilament test)(Stoelting, Wood Dale, IL)を使用して測定する。各動物のCCIの足の足底表面を、Chaplan et al.(1994)により記載されるように試験する。各動物を、金網底を有する、懸下した透明のプラスチックチャンバーに配置する。試験の前に、各動物を15分間順化させる。50%足退避閾値反応閾値応答を、Dixon(1980)の“アップ-ダウン法”に従って、刺激強度を連続的に増加または減少させることにより、測定する。
【0101】
試験は、2.0 gの座屈重量(buckling weight)を有するフィラメントを用いて開始され、そして約15 gまで、連続的に適用される一連のフィラメントを通じて継続される。各フィラメントは、座屈作用(buckle effect)を引き起こすために十分な圧力を適用される。5秒後に足の持ち上げ/退避応答がないことは、次に重い重量に対するフィラメントを使用することを促す。足退避は、陽性応答を意味する。試験は、さらに4回の測定を連続して行い、そして試験を使用して応答閾値を算出する。4回の連続した陽性応答は、0.25 gのスコアを与えられ、そして5回の連続的な陰性応答(すなわち、足退避なし)は、15 gのスコアを与えられる。各動物の機械的足退避閾値は、外科手術の1日前(手術前ベースライン)およびDay 8、Day 15、およびDay 22に測定される。
【0102】
50%足退避閾値を、式10(Xf + κδ)/10,000〔Xfは使用した最終von Freyフィラメント(対数単位)であり、κは応答パターンを解析する値(Chaplan at al., 1994により記載された表から得られる)であり、およびδは刺激間の平均差異(対数単位)である〕を使用して算出する(PWT;Luo and Calcutt, 2002, Chaplan et al. 1994)。データを、各試験について、一元ANOVAを使用して解析する。
【0103】
全ての動物は、治療グループに関わらず、坐骨神経のCCIの後、姿勢異常(すなわち、歩行時および足の姿勢における異常)を発症する。全ての動物は、防御行動(すなわち、損傷跂を防御する行動)を示し、そして実験に使われていない動物において通常見られるように、つま先を広げるのではなく、つま先を一緒に置く。顕著な跛行(limp)が見られ、そして数頭の動物では、手術後の初めの数日(1〜6)のあいだの長期間、CCI-罹患跂を持ち上げた。姿勢異常を使用して、感覚刺激を最小限にしまたは回避する。
【0104】
表1Aおよび1Bは、0.5、5、または25μg/kgの用量のフルオシノロンで処置した動物についての各行動試験前-CCIベースライン値の%として、対熱足退避反応潜時(thermal paw withdrawal latency)およびvon Frey閾値応答をぞれぞれまとめたものである。
【0105】
【表1】

【0106】
Fisher LSD試験を、各グループをビヒクル対照と比較し、そしてDay 7、Day 14、およびDay 21について互いに比較するために行う。これらの結果から、全ての試験日にわたり、3種の用量のフルオシノロンが、ビヒクル対照に対して対熱反応潜時を増加することが示される(Fisher LSD、p<0.05)。Day 7には、LSDの結果から、5μg/kgの用量が、25μg/kgの用量と比較して有意に高い効率であることが示される(Fisher LSD、p<0.05)。Day 14およびDay 21では、5および25μg/kgの用量の両方とも、0.5μg/kgの用量と比較して、有意に高い効率である(Fisher LSD、p<0.05)。5および25μg/kgの用量は両方とも、同様の作用を生じる(Fisher LSD、p>0.05、n.s.)。
【0107】
この研究から得られたデータにより、0.5、5、および25μg/kg/日の用量で投与されたフルオシノロンが、ビヒクル対照グループと比較した場合、対熱刺激後の足退避反応潜時期間を有意に増加させることが示される(ANOVA;F(3, 24)= 37.21、p<0.05)。さらに、5および25μg/kg/日のフルオシノロンにより、試験された全ての日で、エタネルセプト(etanercept)と比較して、対熱痛覚過敏症が有意に向上する(ANOVA;p<0.05)。0.5μg/kg/日のフルオシノロンはまた、エタネルセプト(etanercept)よりも対熱反応潜時を向上させる傾向もある;しかしながら、これらの改善はまた、Day 7において統計的に有意である(ANOVA;p<0.05)。このデータにより、0.5、5、または25μg/kg/日の用量のSCでのフルオシノロン投与により、ビヒクル対照と比較した場合、機械的異痛症を有意に改善する(総合ANOVA(overall ANOVA))ことが示される。さらに、この結果により、3種類の用量のフルオシノロンが、エタネルセプト(etanercept)と比較して、機械的異痛症を改善する傾向があることが示唆される;しかしながら、これらの改善は、統計的に有意というわけではない。
【0108】
21日間にわたる25μg/kgのフルオシノロンの毎日のSC投与の結果、ビヒクル対照と比較して、体重増加の有意な減少が生じる(約50 g、Day 22までの体重差)。このグループにおける体重増加は、Day 5(約10 gの差異)から始めて、そして研究の最後まで依然として(約50 gの差異)、ビヒクル対照よりも一貫して低い。21日間にわたる0.5または5μg/kgのフルオシノロンの毎日のSC投与は、体重増加に対して何ら影響を有さない。
【0109】
まとめると、総合ANOVAにより、フルオシノロンが、対熱反応潜時の有意な増加を生成することが示される[F(3,24)= 8.40、p<0.05]。エタネルセプト(etanercept)と比較した場合の0.5μg/kgのt-テストの結果は、Day 7では反応潜時の有意な増加を示す(Day 7[(12)= -3.35、p<0.05]);しかし、Day 14およびDay 21では示さない(Day 14 [(12)= -1.54, n.s.];Day 21[(12)= 0.0, n.s.])。5μg/kgのt-テストの結果は、全ての試験日で反応潜時の有意な増加をしめす:Day 7[(12)= -4.58、p<0.05];Day 14[(12)= -3.82、p<0.05];およびDay 21[(12)= -2.18、p<0.05]。フルオシノロンの機械的な閾値をエタネルセプト(etanercept)の機械的な閾値と比較する場合、総合ANOVAは、何ら有意な差異を示さない(F[3, 24] = + 0.67, n.s.)。
【0110】
ラット慢性絞扼性損傷(Chronic Constriction Injury)モデルにおけるフルオシノロンおよびデキサメタゾンのポンプ送達
上述の実験の後、局所的に投与される低用量のフルオシノロン・アセトニド(Sigma Cat# F8880-25MG;Lot# 043K1167, Sigma Aldrich)およびデキサメタゾン(Sigma Aldrich)を、同一のCCIラットモデルにおいて調べる。CCI手術は、上述したように行い、そしてラットを、7つの処置グループの1つにランダムに割り当てる(n=7)。
【0111】
各CCI手術を完了した後、対照を含めて全ての動物を、カテーテル(結紮ループを有する滅菌カテーテル)に接続したAlzet(登録商標)浸透圧性ミニ-ポンプ(体積流量0.5μl/h)(Model 2002-Lot No. 10125-05, Durect Corp., Cupertino, CA)を移植し、損傷日(Day 0)から始めるデキサメタゾン、フルオシノロン、またはPBSの局所的投与を可能にする。カテーテル端部をできる限り垂直に、そして坐骨神経の近くにしかし神経に接触することなく、神経周囲腔において、遠位カテーテル端部を筋肉内にプロレン縫合糸(Prolene suture、4-0、非-吸収性、Ethicon, Inc., Somerville, NJ)を用いて固定する。カテーテルの近位末端をローディングした浸透圧性輸液ポンプに接触させる。ポンプおよびカテーテルを、皮膚下に同一の切開を通して突き抜けさせ、そして肩甲骨間の動物の背部のSC腔中に残存させる。その後、この切開を外科用クリップを使用して閉鎖する。
【0112】
無菌条件下および2%イソフルレン麻酔下で、小さな切開を動物の背部の肩甲骨間に作製し(ポンプの直上)、Day 10にポンプ容器を交換する。
ポンプ容器は、Day 10およびDay 22に回収する。残りのポンプ容量を回収し、測定し、-20℃で解析まで保存する。血清サンプルを、Day 0、Day 5、Day 12、Day 17、およびDay 22に得る。2〜5%の麻酔下で、血液を、全ての動物から、後眼窩血管叢から採取する(0.5 mlの血液)。血液を回収し、血清分離用試験管内で凝固させ、そして3000 rpmで10分間遠心することにより処理する。
【0113】
フルオシノロンを、0.0032 ng/時間(0.02304 ng/kg/日)、0.016 ng/時間(0.1152 ng/kg/日)、および0.08 ng/時間(0.576 ng/kg/日)の用量で投与する。デキサメタゾンを、2.0 ng/時間(14.4 ng/kg/日)、10 ng/時間(72 ng/kg/日)、および50 ng/時間(360 ng/kg/日)で投与する。0.5μl/時間のPBSを、陰性対照として投与する。上述したように誘導されそして測定される対熱痛覚過敏症を、Day -2、Day 7、Day 14、およびDay 21に測定する。上述したように誘導されそして測定される機械的異痛症を、Day -1、Day 8、Day 15、およびDay 22に測定する。
【0114】
全ての動物は、治療グループに関わらず、上述したように、姿勢異常、防御行動、および顕著な跛行(limp)を示す。いくらかの動物では、手術後の初めの数日(1〜6)のあいだの長期間、CCI-罹患跂を持ち上げた。これらの防御的姿勢異常は、全てのグループにおいて見られる。観察された“疼痛”の特徴から、動物はCCIの結果として刺激に対して感受性であり、そして姿勢異常を使用して、感覚刺激を最小限にしまたは回避することが示唆される。さらに、これらの動物のいずれも、カテーテルポンプのインプラントにより、姿勢異常(すなわち、歩行時および足の姿勢における異常)を何ら有さないように見える。
【0115】
対熱足退避反応潜時試験の結果を、図1に開示する。この図面からも明らかなように、2.0、10、および50 ng/時間のデキサメタゾンにより、試験された3日間全てについて、PBSの場合と比較して、退避までの時間が増加する。同様に、0.0032、0.016、および0.08 ng/時間の用量でのフルオシノロンにより、PBSの場合と比較して、対熱足退避反応潜時試験の増加を生じる。両薬物についての結果は、統計的に有意である(p<0.05)。
【0116】
von Frey閾値応答試験の結果を、図2に開示する。このテストに関して、Day 15での10 ng/時間、Day 15での50 ng/時間、およびDay 22での50 ng/時間を除き、3種全ての用量のデキサメタゾンにより、ラットについての機械的閾値の増加がもたらされる。さらに、3種全ての用量のフルオシノロンにより、試験された各日のラットについての機械的閾値の増加がもたらされる。しかしながら、これらの試験の結果は、統計的に有意というわけではない。
【0117】
本明細書中における本発明は、特定の態様を参照して記載されるが、これらの態様は単に、本発明の原理および応用の例示に過ぎないことが理解されるべきである。例えば、当業者は、本発明のいずれかの態様におけるDNA構築物の概念、ならびにこれらのDNA構築物を送達するための方法およびシステムを、心筋、末梢神経系、器官の疾患(糖尿病)、脊椎や関節の疾患、および肥満等の複合疾患を含む(しかしこれらには限定されない)その他の疾患に対して、過剰な実験をすることなく適用することができることを理解するだろう。従って、多数の修飾を例示的な態様に対して行うことができ、そして添付の請求の範囲により定義される本発明の概念および範囲を逸脱することなく、その他のアレンジを考案することができることが、理解されるべきである。
【0118】
明細書中で引用された全ての刊行物は、特許文献も非特許文献も両方とも、本発明が属する技術分野における当業者の技術レベルを示すものである。これら全ての文献は、それぞれの個別の文献が参照により援用されるものとして具体的にそして個別に示されるのと同様の程度まで、参考文献として本明細書中に完全に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性生分解性ポリマーおよびコルチコステロイドを含む哺乳動物における疼痛を治療するための組成物であって、この生体適合性生分解性ポリマーは、コルチコステロイドを100μg/kg哺乳動物体重/日を超えない速度で放出し、このコルチコステロイドはこの哺乳動物の疼痛部位またはその部位近くに放出される、前記組成物。
【請求項2】
生体適合性生分解性ポリマーが、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、合成ポリ(アミノ酸)、プロラミン類、グリコサミノグリカン類、ヒアルロン酸、ヘパリン多糖類、アルギネート、キトサン、スターチ、デキストラン類、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PG)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリバレロラクトン、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン類)、ポリ(アミノ酸類)、ポリ(無水物)、ポリケタール類ポリ(アリーレート)(poly(arylates))、ポリ(オルトエステル類)、ポリ(オルトカーボネート類)、ポリ(ホスホエステル類)、ポリ(エステル-co-アミド)、ポリ(ラクチド-co-ウレタン)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA-g-PLGA、PEGT-PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート類、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、PEO-PPO-PEO(プルロニック類)、PEO-PPO-PAAコポリマー類、PLGA-PEO-PLGAブレンド、これらのコポリマー、およびこれらの組合せ、からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
コルチコステロイドが、デキサメタゾン、ベータメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロン・アセトニド、2酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロン・ヘキサアセトニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、ピバル酸フルメタゾン、2酢酸ジフロラゾン、フルオシノロン・アセトニド、フルオロメトロン、酢酸フルオロメトロン、プロピオン酸クロベタゾール、デスオキシメタゾン、フルオキシメステロン、フルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、シピオン酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(hydrocortisone probutate)、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、酢酸パラメタゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、ピバル酸クロコルトロン、フルオシノロン、デキサメタゾン21-アセテート、ベータメタゾン17-バレレート、イソフルプレドン、9-フルオロコルチゾン、6-ヒドロキシデキサメタゾン、ジクロリゾン、メクロリゾン、フルプレドニデン、ドキシベタソール、ハロプレドン、ハロメタゾン、クロベタゾン、ジフルコルトロン、酢酸イソフルプレドン、フルオロヒドロキシアンドロステンジオン、ベクロメタゾン、フルメタゾン、ジフロラゾン、クロベタゾール、コルチゾン、パラメタゾン、クロコルトロン、プレドニゾロン21-ヘミサクシネート遊離酸、プレドニゾロンメタスルホ安息香酸、プレドニゾロン・テルブテート、およびトリアムシノロン・アセトニド21-パルミテート、からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
コルチコステロイドがフルオシノロンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
コルチコステロイドがデキサメタゾンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
疼痛が、炎症性疾患、炎症、坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、狭窄症、脊髄症(mylopathy)、下背部痛、椎間関節痛、変形性関節症、関節リウマチ、骨溶解、腱炎、手根管症候群、および足根管症候群、からなる群から選択される症状と関連する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
生体適合性生分解性ポリマーおよびコルチコステロイドを含む哺乳動物における疼痛を低減するための組成物であって、この生体適合性生分解性ポリマーは、コルチコステロイドを50μg/kg哺乳動物体重/日を超えない速度で放出し、このコルチコステロイドは哺乳動物の疼痛部位またはその部位近くに放出される、前記組成物。
【請求項8】
生体適合性生分解性ポリマーが、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、合成ポリ(アミノ酸)、プロラミン類、グリコサミノグリカン類、ヒアルロン酸、ヘパリン多糖類、アルギネート、キトサン、スターチ、デキストラン類、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PG)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリバレロラクトン、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン類)、ポリ(アミノ酸類)、ポリ(無水物)、ポリケタール類、ポリ(アリーレート)(poly(arylates))、ポリ(オルトエステル類)、ポリ(オルトカーボネート類)、ポリ(ホスホエステル類)、ポリ(エステル-co-アミド)、ポリ(ラクチド-co-ウレタン)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA-g-PLGA、PEGT-PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート類、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、PEO-PPO-PEO(プルロニック類)、PEO-PPO-PAAコポリマー類、PLGA-PEO-PLGAブレンド、これらのコポリマー、およびこれらの組合せ、からなる、群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
コルチコステロイドが、デキサメタゾン、ベータメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロン・アセトニド、2酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロン・ヘキサアセトニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、ピバル酸フルメタゾン、2酢酸ジフロラゾン、フルオシノロン・アセトニド、フルオロメトロン、酢酸フルオロメトロン、プロピオン酸クロベタゾール、デスオキシメタゾン、フルオキシメステロン、フルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、シピオン酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(hydrocortisone probutate)、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、酢酸パラメタゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、ピバル酸クロコルトロン、フルオシノロン、デキサメタゾン21-アセテート、ベータメタゾン17-バレレート、イソフルプレドン、9-フルオロコルチゾン、6-ヒドロキシデキサメタゾン、ジクロリゾン、メクロリゾン、フルプレドニデン、ドキシベタソール、ハロプレドン、ハロメタゾン、クロベタゾン、ジフルコルトロン、酢酸イソフルプレドン、フルオロヒドロキシアンドロステンジオン、ベクロメタゾン、フルメタゾン、ジフロラゾン、クロベタゾール、コルチゾン、パラメタゾン、クロコルトロン、プレドニゾロン21-ヘミサクシネート遊離酸、プレドニゾロンメタスルホ安息香酸、プレドニゾロン・テルブテート、およびトリアムシノロン・アセトニド21-パルミテート、からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
コルチコステロイドが、フルオシノロンまたはデキサメタゾンである、請求項に記載の組成物。

【請求項11】
コルチコステロイドの局所送達部位を選択し、その局所送達部位にコルチコステロイドを送達するためにインプラントを哺乳動物体内または表面に配置する工程を含む、哺乳動物における疼痛を治療するための方法であって、インプラントがコルチコステロイドを約100μg/kg哺乳動物体重/日を超えない速度で放出する、前記方法。
【請求項12】
インプラントが、コルチコステロイドおよび生分解性ポリマーを含む生分解性薬物デポーである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コルチコステロイドが、デキサメタゾン、ベータメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロン・アセトニド、2酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロン・ヘキサアセトニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、ピバル酸フルメタゾン、2酢酸ジフロラゾン、フルオシノロン・アセトニド、フルオロメトロン、酢酸フルオロメトロン、プロピオン酸クロベタゾール、デスオキシメタゾン、フルオキシメステロン、フルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、シピオン酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(hydrocortisone probutate)、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、酢酸パラメタゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、ピバル酸クロコルトロン、フルオシノロン、デキサメタゾン21-アセテート、ベータメタゾン17-バレレート、イソフルプレドン、9-フルオロコルチゾン、6-ヒドロキシデキサメタゾン、ジクロリゾン、メクロリゾン、フルプレドニデン、ドキシベタソール、ハロプレドン、ハロメタゾン、クロベタゾン、ジフルコルトロン、酢酸イソフルプレドン、フルオロヒドロキシアンドロステンジオン、ベクロメタゾン、フルメタゾン、ジフロラゾン、クロベタゾール、コルチゾン、パラメタゾン、クロコルトロン、プレドニゾロン21-ヘミサクシネート遊離酸、プレドニゾロンメタスルホ安息香酸、プレドニゾロン・テルブテート、およびトリアムシノロン・アセトニド21-パルミテート、からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
コルチコステロイドが、フルオシノロンまたはデキサメタゾンである、請求項11記載の方法。
【請求項15】
コルチコステロイドの局所送達部位を選択し、その局所送達部位にコルチコステロイドを送達するためにインプラントを哺乳動物体内または表面に配置する工程を含む、哺乳動物における疼痛を低減するための方法であって、インプラントがコルチコステロイドを約50μg/kg哺乳動物体重/日を超えない速度で放出する、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−530435(P2010−530435A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513319(P2010−513319)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/065869
【国際公開番号】WO2008/157057
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(506298792)ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド (366)
【Fターム(参考)】