屈折率分布型レンズおよびその製造方法、屈折率分布型レンズアレイおよびその製造方法
【課題】 フレア光の発生を抑制し、解像度の高い屈折率分布型レンズおよび屈折率型分布レンズアレイを提供することにある。
【解決手段】 マトリックス樹脂と下記式(1)で表される屈折率分布を有する透明柱状構造体とから構成される屈折率分布型レンズであって、マトリックス樹脂の屈折率が透明柱状構造体の外周部の屈折率よりも高く、マトリックス樹脂と透明柱状構造体の間で屈折率が連続的に変化している屈折率分布型レンズ。
n(L)=n0{1−(g2/2)L2} …(1)
ただし、n(L)は中心軸からの距離Lの位置における屈折率、Lは中心軸からの距離(0≦L≦0.8r)、rは透明柱状構造体の半径、n0 は中心軸における屈折率、gは屈折率分布定数である。
【解決手段】 マトリックス樹脂と下記式(1)で表される屈折率分布を有する透明柱状構造体とから構成される屈折率分布型レンズであって、マトリックス樹脂の屈折率が透明柱状構造体の外周部の屈折率よりも高く、マトリックス樹脂と透明柱状構造体の間で屈折率が連続的に変化している屈折率分布型レンズ。
n(L)=n0{1−(g2/2)L2} …(1)
ただし、n(L)は中心軸からの距離Lの位置における屈折率、Lは中心軸からの距離(0≦L≦0.8r)、rは透明柱状構造体の半径、n0 は中心軸における屈折率、gは屈折率分布定数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率分布型レンズ、屈折率分布型レンズの製造方法、屈折率分布型レンズアレイ、および屈折率分布型レンズアレイの製造方法に関し、詳細には、ファクシミリ、スキャナ、複写機等に搭載されるイメージセンサに用いられる屈折率分布型レンズおよび屈折率型レンズアレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
中心軸から外周面に向けて半径方向に2次曲線で近似される屈折率分布を有する柱状構造体は、レンズ作用を有することから、複写機、ファクシミリ、スキャナ等の読み取りレンズやLEDプリンタの書き込みレンズとして広く用いられている。この屈折率分布を有する柱状構造体(以下、屈折率分布型レンズという。)は、ガラス製や合成樹脂製のものがよく知られているが、一般的には、その両端面を伝送体中心軸に垂直な平行平面となるように鏡面研磨して、単体で微小レンズとして使用されたり、あるいはその多数を互いに平行となるようにしてアレイ状に配列し接着一体化してレンズアレイの形態として使用されたりしている。
【0003】
特に、画像伝送に用いられる屈折率分布型レンズおよびレンズアレイにおいては、高い解像力と良好な画像コントラストを有する光学特性に優れたレンズが求められていることから、いわゆるフレア光が問題となる。
【0004】
フレア光とは、レンズ周辺に発生する結像に寄与しない光のことであり、屈折率分布型レンズの外周部付近での屈折率分布の歪みに起因するものである。屈折率分布型レンズでは、一方の端面から入射した光線は柱状構造体であるレンズの内部をサインカーブを描いて進行し他端面から出射して結像するが、一般にレンズ内部の屈折率分布は必ずしも理想的な分布に一致しているわけではない。特に柱状構造体の外周部付近では、2次曲線で近似される理想的な屈折率分布から外れる傾向にあり、この外周部付近での屈折率分布の歪みとレンズ外周面を通してレンズ内に入る外光とに起因して、レンズ周辺にフレア光が発生する。
【0005】
また、この屈折率分布型レンズ端面の中心から入射する光が、レンズの光軸に対してある角度θよりも大きい角度で入射した場合、その光はレンズの外周面に衝突する。そのときの角度θを開口角といい、θより小さい角度で入射した光は結像に寄与するが、θよりも大きな角で入射した光はレンズの外周面とマトリックス樹脂の界面で全反射して、結像に寄与しないフレア光となる。これらのフレア光がレンズの解像力および画像のコントラストに悪影響を及ぼす。
【0006】
この問題を解決するため、特許文献1では、レンズ素子が互いに平行となるように配列し接着一体化してレンズアレイとする際に、レンズ外周面の屈折率と等しい屈折率の接着剤またはレンズ外周面の屈折率よりも大きい屈折率の接着剤を用いてマトリックス樹脂を形成することにより、フレア光をカットする技術が提案されている。この方法においては、開口角θよりも大きな入射角でレンズ端面に入射した光がレンズ内部においてその外周部に到達した場合に、レンズ外周面よりもマトリックス樹脂の屈折率が大きいため、界面において全反射することがなく、全反射に起因するフレア光の発生を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−226601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1にも記載されているように、レンズ外周面と厳密に同じ屈折率を有する接着剤を選定することは技術的に極めて困難である。また、レンズ外周面よりも屈折率の高い接着剤を用いたとしても、屈折率が不連続に変化する界面に光が入射するとフレネル反射が起きるため、フレネル反射に起因するフレア光の発生を抑制することはできない。本発明の目的は、フレア光の発生を抑制し、解像度の高い屈折率分布型レンズおよび屈折率分布型レンズアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、マトリックス樹脂と下記式(1)で表される屈折率分布を有する透明柱状構造体とから構成される屈折率分布型レンズであって、マトリックス樹脂の屈折率が透明柱状構造体の外周部の屈折率よりも高く、マトリックス樹脂と透明柱状構造体の間で屈折率が連続的に変化している屈折率分布型レンズまたは屈折率分布型レンズアレイの発明に関するものであり、それらの製造方法に関するものである。
n(L)=n0{1−(g2/2)L2} …(1)
ただし、n(L)は中心軸からの距離Lの位置における屈折率、Lは中心軸からの距離(0≦L≦0.8r)、rは透明柱状構造体の半径、n0 は中心軸における屈折率、gは屈折率分布定数である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレア光の抑制により光学性能(解像度)が向上するため、材料設計が容易な屈折率分布型レンズおよび屈折率分布型レンズアレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の屈折率分布型レンズの斜視図である。
【図2】透明柱状構造体の断面図である。
【図3】本発明の屈折率分布型レンズの屈折率分布を示すグラフである。
【図4】従来の屈折率分布型レンズの屈折率分布を示すグラフである。
【図5】本発明の屈折率分布型レンズ内での光の進み方を示す概略図である。
【図6】従来の屈折率分布型レンズ内での光の進み方を示す概略図である。
【図7】フレア光をあらわした模式図である。
【図8】屈折率分布を有する透明柱状構造体の製造装置の概略図である。
【図9】本発明の屈折率分布型レンズアレイ(1次元配列)の斜視図である。
【図10】本発明の屈折率分布型レンズアレイ(2次元配列)の斜視図である。
【図11】レンズ光学性能の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の屈折率分布型レンズ、屈折率分布型レンズアレイおよびそれらの製造方法について説明する。
まず本発明の屈折率分布型レンズ1の斜視図を図1に示す。屈折率分布型レンズ1は、マトリックス樹脂3と透明柱状構造体2から構成されている。
【0013】
透明柱状構造体2の寸法は、特に制限されないが、直径が0.1〜1mm程度である円筒形状をしている。
また、透明柱状構造体2の材質は、特に制限されず、プラスチックの他、ガラス等の他の材料であってもよい。透明柱状構造体2がプラスチックである場合には、マトリックス樹脂3は、透明柱状構造体2とマトリックス樹脂3の間の屈折率の連続的変化の面から、透明柱状構造体2の外周部を構成する樹脂と相溶する樹脂であることが好ましい。
【0014】
図2は透明柱状構造体2の縦断面図(透明柱状構造体2の中心軸4に沿って切断した断面図)および横断面図(透明柱状構造体2の中心軸4に垂直な面で切断した断面図)である。
透明柱状構造体2は、中心軸4上の屈折率をn0、屈折率分布定数をgとした場合に、0≦L≦0.8rの範囲で中心軸から半径方向に距離L離れた点での屈折率n(L)が、近似的に下記式(1)で表される屈折率分布を持つ屈折率分布型レンズである。
n(L)=n0{1−(g2/2)L2} …(1)
【0015】
本発明の屈折率分布型レンズ1は、マトリックス樹脂3の屈折率が透明柱状構造体2の外周部の屈折率よりも高く、マトリックス樹脂3と透明柱状構造体2の間で屈折率が連続的に変化している。図3は屈折率分布型レンズ1の横断面図と屈折率分布を示すグラフである。
【0016】
本発明の屈折率分布型レンズ1においては、透明柱状構造体2とマトリックス樹脂3の間で屈折率が連続的に変化している。屈折率の変化のしかたについては、特に制限されないが、連続的且つ滑らかに変化することが好ましい。ここで屈折率が連続的且つ滑らかに変化するとは、図3のマトリックス樹脂3と透明柱状構造体2の間での屈折率変化を表すグラフにおいて、屈折率変化の傾きである微分係数が不連続となるような特異点が存在しないということである。
【0017】
このように透明柱状構造体2とマトリックス樹脂3の間で屈折率が連続的に変化する場合に、後述するようにフレネル反射の発生を抑制することができ、フレネル反射に起因するフレア光の発生を抑制することが可能となる。
【0018】
なお、図4に従来の屈折率分型レンズの屈折率分布を示す。従来の屈折率分布型レンズは、透明柱状構造体の屈折率よりもマトリックス樹脂の屈折率が高く、透明柱状構造体とマトリックス樹脂の間で屈折率が不連続となっているため、透明柱状構造体とマトリックス樹脂の界面でフレネル反射が発生する。
【0019】
本発明において、透明柱状構造体2の中心屈折率n0は、特に制限されないが、透明柱状構造体2を構成する材料の選択肢が広くなり、良好な屈折率分布を形成しやすくなる等の観点から、1.4≦n0 ≦1.6であることが好ましい。
また、透明柱状構造体2の外周部の屈折率n1は、レンズの用途によってn0>n1≧n0−0.2の範囲をとることができる。
【0020】
マトリックス樹脂3の屈折率n2は、特に制限されないが、フレア光抑制の面および透明柱状構造体2とマトリックス樹脂3の間の連続的な屈折率分布を形成しやすいという観点から、n1≦n2≦n1+0.1の範囲にあることが好ましく、n1≦n2≦n1+0.05の範囲にあることがより好ましい。
【0021】
一般に、透明柱状構造体2内の屈折率分布は必ずしも理想的な分布に一致しているわけではなく、特に0.8r≦L≦rとなる外周部付近で理想的分布から外れていることが多い。そこで、透明柱状構造体2はこの外周部付近での屈折率分布の歪みに起因するフレア光を吸収するために、0.8r≦L≦rである外周部に光吸収層5を含有することが好ましい。
【0022】
次に、本発明の屈折率分布型レンズ1における光の進み方について図5を用いて説明する。透明柱状構造体2の入射端面に開口角θ以下の角度で入射した光10は、光吸収層5、および透明柱状構造体2とマトリックス樹脂3の界面6に触れることなく透明柱状構造体2内部を通過して、結像に寄与する光として他方の端面より出射する。
【0023】
一方、開口角θ以上の角度で入射した結像に寄与しない光11は、一部は光吸収層5で吸収されるが、吸収されずに残った光はマトリックッス樹脂3に到達する。そして、マトリックス樹脂3に到達した光は、マトリックス樹脂3と透明柱状構造体2の間で屈折率が連続的に変化しているため、全反射を起こさず、またフレネル反射を起こさない。すなわち、開口角θ以上の角度で入射した光は、全てマトリックス樹脂内へと進行するため、フレア光が発生せず、レンズの性能低下が抑制される。
【0024】
マトリックス樹脂3は、光吸収剤を含むことが好ましい。マトリックス樹脂が光吸収剤を含む場合に、マトリックス樹脂内に進入した光が光吸収剤によって吸収され減衰するため、隣接する他の透明柱状構造体へ進入するクロストーク光がカットされ、レンズの性能低下が抑制される傾向にある。
【0025】
光吸収剤としては、特に制限されず、屈折率分布型レンズ1が用いられる光学系で使用される波長の光を吸収し得る種々の染料、顔料、色素が使用できる。中でも、屈折率分布型レンズ1での使用波長光を吸収する染料を組み合わせて用いることが特に有効である。屈折率分布型レンズ1を、カラースキャナー等の用途に用いる場合には、RGB各波長の光を吸収する染料を組み合わせて用いることが好ましい。可視光領域のすべての光を吸収することを目的とする場合には、多種の染料、顔料、色素を混合した黒色のものを選択できる。また、カーボンブラック、グラファイトカーボン等の光吸収剤も用いることができる。その他光を吸収する物質であれば特に限定されることはない。
【0026】
次に、本発明の屈折率分布型アレイについて説明する。本発明の屈折率分布型アレイは、上述した屈折率分布型レンズを1次元または2次元に規則的に複数配列させたものである。図9に1次元に配列させたアレイ50を、図10に2次元に配列させたアレイ60を示す。
【0027】
最後に、本発明の屈折率分布型レンズおよび屈折率分布型レンズアレイの製造方法について説明する。
屈折率分布型レンズおよび屈折率分布型レンズアレイは、基本的には、公知のプラスチックロッドレンズ製造方法により透明柱状構造体を製造し、さらにこの透明柱状構造体を1次元または2次元に配列することにより製造することができる。
【0028】
先ず、モノマー相互拡散法により透明柱状構造体2を製造する方法について図8に沿って説明する。
硬化後の屈折率nがn1 >n2 >・・・・>nN (N≧3)となるN種類の未硬化の樹脂材料を、N基の混練装置20で別個に混練し、紡糸装置22へと送る。
【0029】
未硬化の樹脂材料は、粘度が103〜108ポイズで硬化性のものであることが好ましい。粘度が小さすぎると賦形に際し糸切れが生じるようになり糸状物の形成が困難である。また粘度が大きすぎると賦形時に操作性が不良となり各層の同心円性が損なわれたり、太さ斑の大きな糸状体となりやすいので好ましくない。
この未硬化の樹脂材料を構成する物質としてはラジカル重合性ビニル単量体または該単量体と該単量体に可溶な重合体とからなる組成物等を用いることができる。
【0030】
ラジカル重合性ビニル単量体としては、特に制限されないが、例えば、メチルメタクリレート(n=1.49)、スチレン(n=1.59)、クロルスチレン(n=1.61)、酢酸ビニル(n=1.47)、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル(メタ)アクリレート(n=1.37〜1.44)、屈折率1.43〜1.62の(メタ)アクリレート類たとえばエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジまたはトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ、トリまたはテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、フッ素化アルキレングリコールポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
これら未硬化の樹脂材料から糸状体を形成する際の未硬化の樹脂材料の粘度調整を容易にするため、および糸状体の中心から外周へ向かい連続的な屈折率分布を持たせるため、前記の未硬化の樹脂材料はビニル単量体とそれに可溶な重合体とで構成されていることが好ましい。
【0032】
未硬化の樹脂原料に可溶な重合体としては、特に制限されないが、前記のラジカル重合性ビニル単量体から生成する重合体と相溶性が良いことが好ましく、例えば、ポリメチルメタクリレート(n=1.49)、ポリメチルメタクリレート系共重合体(n=1.47〜1.50)、ポリ4−メチルペンテン−1(n=1.46)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(n=1.46〜1.50)、ポリカーボネート(n=1.50〜1.57)、ポリフッ化ビニリデン(n=1.42)、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体(n=1.42〜1.46)、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロペン共重合体(n=1.40〜1.46)、ポリフッ化アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
粘度を調整するため、各層に同一の屈折率を有する重合体を用いた場合には、中心から外周に向かって連続的な屈折率分布を有するプラスチック光伝送体が得られるので好ましい。特に、ポリメチルメタクリレートは、透明性に優れるとともにそれ自体の屈折率も高いので、本発明の屈折率分布型光伝送体を作成するに際して用いる重合体としては好適なものである。
【0034】
未硬化の樹脂材料より形成した糸状物を硬化するためには、未硬化物中に熱硬化触媒あるいは光硬化触媒を添加しておくことが好ましく、熱硬化触媒としては、特に制限されないが、パーオキサイド系またはアゾ系の触媒を用いることができる。光硬化触媒としては、特に制限されないが、ベンゾフェノン、ベンゾインアルキルエーテル、4'ーイソプロピルー2ーヒドロキシー2ーメチルプロピオフェノン、1ーヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルメチルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、クロロチオキサントン、チオキサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N−メチルジエタノールアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
【0035】
紡糸装置22は、紡糸ヘッド24と、相互拡散部26と、硬化処理部28とを備えている。未硬化の樹脂材料は、紡糸ヘッド24内の複合紡糸ノズル30から吐出され、複合紡糸されて糸状体32とされる。
未硬化の樹脂材料は、吐出される際、中心から外周部に向かって順次屈折率が低くなるような配置で、同心円状に積層され、糸状体32を形成する。複合紡糸ノズル21から吐出された糸状体32は、ニップローラ34によって引き上げられ、紡糸装置22の相互拡散部26および硬化処理部28を順次に通過する。
【0036】
複合紡糸ノズル30から吐出された直後の糸状体32の屈折率分布は、層間に屈折率の段差があるため、階段状となっている。この糸状体32の各層間の屈折率分布が連続的になるように隣接層間の物質の相互拡散処理を行い、相互拡散処理と同時に、または相互拡散処理を行った後、糸状体32を硬化処理し、透明円柱構造体原糸を得る。なお、相互拡散処理とは、糸状体に窒素雰囲気下、10〜60℃、より好ましくは20〜50℃で数秒〜数分間の熱履歴を与えることをいう。
得られた透明円柱構造体原糸は、必要に応じて、加熱延伸した後、緩和処理を行ってもよい。このようにして作製した透明円柱構造体原糸は、適宜、所定のサイズに切断して透明円柱構造体とする。
【0037】
次に、得られた透明柱状構造体を用いて、屈折率分布型レンズを製造する。
本発明の屈折率分布型レンズは、上記のようにして得られた透明柱状構造体をマトリックス樹脂原料中に包埋させて、マトリックス樹脂原料に含まれる浸透性成分を透明柱状構造体に浸透させた後に、マトリックス樹脂原料を硬化させることによって製造することができる。
【0038】
透明柱状構造体とマトリックス樹脂原料の間には屈折率の段差があるが、マトリックス樹脂原料に含まれる成分が透明柱状構造体内部に浸透・拡散するように処理を行うことにより、透明柱状構造体とマトリックス樹脂の間の屈折率の差が消失し、次いでマトリックス樹脂原料を硬化させマトリックス樹脂とすることで、透明柱状構造体とマトリックス樹脂との間で屈折率が連続的に変化するような屈折率分布型レンズを製造することができる。
マトリックス樹脂原料に含まれる浸透成分を拡散させる処理としては、特に制限されないが、マトリックス樹脂原料と透明柱状構造体が接触した状態で数秒〜数時間保持する方法が挙げられる。この際、より短時間で浸透・拡散処理を完了させるため、室温〜100℃の温度で加温してもよい。
【0039】
マトリックス樹脂としては、特に制限されないが、透明柱状構造体の外周部を構成する樹脂との相溶性が高いことが好ましい。この相溶性が高い場合に、マトリックス樹脂の原料が透明柱状構造体の内部に浸透・拡散しやすい傾向にある。マトリックス樹脂の原料としては、特に制限されないが、例えば、ラジカル重合性ビニル単量体を用いることができる。特に、透明柱状構造体の原料として用いられる樹脂原料と同種の単量体である場合には、透明柱状構造体に対する相溶性が高く、容易に硬化物内部へと浸透・拡散することができるため、好ましい。
【0040】
マトリックス樹脂原料の硬化方法としては、特に制限されないが、熱硬化触媒による熱硬化反応、あるいは光硬化触媒による光硬化反応、吸湿反応等の各種硬化方法を用いることができる。
【0041】
屈折率分布型レンズが1次元または2次元に配列された屈折率分布型レンズアレイは、以下の製造方法により製造することができる。
【0042】
まず、プレス上盤の表面に複数の透明円柱構造体を並列配置して仮留めする。そして、一方の面にマトリックス樹脂原料が所定の間隔をあけて塗布された基板をマトリックス樹脂原料が塗布された面が上方に向くようにしてプレス上盤の下方に配置し、当該基板をプレス上盤に仮留めされた透明円柱構造体に押圧して固定し、該マトリックス樹脂原料に含まれる浸透成分を前記透明柱状構造体の外周部に浸透せしめる。ついで、該浸透性成分および未硬化のマトリックス樹脂原料を硬化させて、屈折率分布型レンズアレイを製造する。
【0043】
マトリックス樹脂原料の塗布方法としては、マトリックス樹脂原料の粘度、種類に応じて、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法等の公知のコーティング法を用いることができる。
【0044】
前記基板は平板でもよいし、透明柱状構造体を一定の間隔で配置収納するU字状あるいはV字状等の溝を設けた板であってもよい。基板の材質は、特に限定されないが、レンズアレイを作製する工程での加工が容易な材料であることが好ましい。基板の材料としては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂などが好ましく、アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリイミド系樹脂、液晶ポリマー、エポキシ系樹脂などが特に好ましい。また、基板の基材、補強材として、繊維や紙を用いてもよいし、基板に離型剤、染料、顔料等を添加してもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、実施例、比較例において、レンズ性能(MTF)の測定は下記の方法により行った。
【0046】
<レンズ性能(MTF)の測定>
レンズの解像度を示すMTFは、図12に示すように、光源40、フィルター41、拡散板42、空間周波数12[Lp/mm]を有する格子43、中心軸に垂直な両端面を研磨した屈折率分布型レンズを複数本並べたアレイ44、およびCCDラインセンサー45を配置し、格子43を屈折率分布型レンズアレイ44の結像面に設置したCCDラインセンサー45に結像させて格子画像47を読みとり、その測定光量の最大値(iMAX )と最小値(iMIN )とを測定し、次式
MTF[%]={(iMAX −iMIN )/(iMAX +iMIN )}×100(%)
により求めた。なお、空間周波数とは、図12の46に示すごとく、白ラインと黒ラインとの組み合わせを1ラインとし、このラインの組み合わせが1mmの幅の中に何組設けてあるかを示すものである。
【0047】
実施例1
ポリメチルメタクリレート(〔η〕=0.40,MEK中,25℃にて測定:以下、ポリメチルメタクリレートの〔η〕は全て同じ)46質量部、メチルメタクリレート24質量部、ジシクロペンタニルアクリレート30質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5質量部およびハイドロキノン0.1質量部を70℃に加熱混練して第1層形成用原液とした。ポリメチルメタクリレート45質量部、ベンジルメタクリレート5質量部、メチルメタクリレート28.6質量部、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート5質量部、ジシクロペンタニルアクリレート16.4質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5質量部、ハイドロキノン0.1質量部を70℃に加熱混練して第2層形成用原液とした。ポリメチルメタクリレート48質量部、ベンジルメタクリレート6.8質量部、メチルメタクリレート35.2質量部、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート10質量部、1ーヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5質量部、ハイドロキノン0.1質量部を70℃に加熱混練して第3層形成用原液とした。ポリメチルメタクリレート44.8質量部、ベンジルメタクリレート13.1質量部、メチルメタクリレート12.9質量部、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート29.2質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5質量部、ハイドロキノン0.1質量部、三井東圧染料(株)製染料MS Yellow HD−180 0.006質量部、三井東圧染料(株)製染料MS Magenta HM−1450 0.003質量部、日本化薬(株)製染料Blue ACR 0.014質量部、三菱化学(株)製染料Diarein Blue 4G 0.014質量部、および日本化薬(株)製染料KAYASORB CY−10 0.006質量部を70℃に加熱混練して第4層形成用原液とした。ポリメチルメタクリレート40.3質量部、ベンジルメタクリレート16.9質量部、メチルメタクリレート2.4質量部、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート40.4質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5質量部、ハイドロキノン0.1質量部、三井東圧染料(株)製染料MS Yellow HD−180 0.14質量部、三井東圧染料(株)製染料MS Magenta HM−1450 0.14質量部、日本化薬(株)製染料Blue ACR 0.57質量部、三菱化学(株)製染料Diarein Blue 4G 0.011質量部、および日本化薬(株)製染料KAYASORB CY−10 0.011質量部を70℃に加熱混練して第5層形成用原液とした、この5種類の原液を同心円状5層複合ノズルを用いて、中心から外側に向けて第1層から第5層となるように配列して同時に押し出した。
【0048】
複合紡糸ノズル30の温度は54℃、各層の吐出比を半径方向寸法の比で、第1層/第2層/第3層/第4層/第5層=24/31.1/40.2/2.2/2.5として、糸状に押し出した。ついで40Wのケミカルランプ36本を円状等間隔に上下2段に配設した第一光照射硬化処理部26、および高圧水銀ランプを2つ配設した第二光照射硬化処理部28の中心に糸状物を通過させて硬化させ、200cm/minの速度でニップローラー34で引き取り、透明柱状構造体を得た。
【0049】
得られた透明柱状構造体は、半径r=0.60mmであり、中心部の屈折率n0=1.497、外周部の屈折率n1=1.487であり、中心軸からの距離(0≦L≦0.8r)における屈折率分布は下記式(1)で表される2次曲線で近似され、屈折率分布定数はg=0.49であった。
n(L)=n0{1−(g2/2)L2} …(1)
【0050】
この透明柱状構造体を複数本を用い、基板としてアクリル樹脂板(厚さ1.0mm)2枚を用い、マトリックス樹脂原料としてポリメチルメタクリレート46質量部、フェニルメタクリレート22.5質量部、メチルメタクリレート10質量部、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート21.5質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5質量部、ハイドロキノン0.1質量部、三井東圧染料(株)製染料MS Yellow HD−180 0.149質量部、三井東圧染料(株)製染料MS Magenta HM−1450 0.146質量部、日本化薬(株)製染料Blue ACR 0.584質量部、三菱化学(株)製染料Diarein Blue 4G 0.025質量部、および日本化薬(株)製染料KAYASORB CY−10 0.017質量部からなる原料を用いて、アクリル樹脂板の間に透明柱状構造体を1列に平行に密着させて配列し、マトリックス樹脂原料を充填し、30分間60℃の雰囲気化でマトリックス樹脂原料に含まれる成分を透明柱状構造体に浸透させる処理を行った後、高圧水銀ランプを用いて、基板の両面から4000mJ/cm2(合計8000mJ/cm2)のUVを照射することにより、マトリックス樹脂原料を硬化させてマトリックス樹脂とし、両端面を切断して研磨して、レンズ長8mmの屈折率分布型レンズアレイを製作した。
【0051】
マトリックス樹脂の屈折率は1.494で、透明柱状構造体の外周部の屈折率(n1=1.487)との屈折率差は0.007であった。
この屈折率分布型レンズアレイの端面を、光学顕微鏡で観察したところ、透明柱状構造体とマトリックス樹脂との間に明確な界面がないことが観察された。つまり、マトリクス樹脂と透明柱状構造体との間において、屈折率が連続的に変化していた。
【0052】
この屈折率分布型レンズアレイは525nmにおけるフレア光、クロストーク光が少なく、12Lp/mmの格子43を用いてこのレンズアレイの特性を測定したところ、525nmの波長の光に対する共役長は15.5mmであり共役長におけるMTFは75.5%であった。
【0053】
この屈折率分布型アレイを用いて525nmの発光波長を有するLEDを光源とし、CCDを受光センサーとしたイメージスキャナを組み立てた。このイメージスキャナはフレア光、クロストーク光による影響が非常に少なく解像度が高く、屈折率分布型アレイは画像をクリアに伝送することができた。
【0054】
比較例1
実施例1で得られた透明柱状構造体を用い、基盤としてベークライト樹脂板2枚を用い、マトリックス樹脂原料としてハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製エポキシ接着剤アラルダイトを用いて、ベークライト樹脂板の間に透明柱状構造体を1列に平行に密着させて配列しマトリックス樹脂原料を充填し、60℃で30分間加熱処理を施してマトリックス樹脂原料を硬化させて、両端面を切断して研磨して、レンズ長8mmの屈折率分布型レンズアレイを作成した。
【0055】
マトリックス樹脂の屈折率は1.61であり、透明柱状構造体の外周部の屈折率(n1=1.487)との屈折率差は0.007であった。
この屈折率分布型レンズアレイの端面を、光学顕微鏡で観察したところ、透明柱状構造体とマトリックス樹脂との間に明確な界面があることが観察された。
【0056】
実施例1と同様にこのレンズアレイの特性を測定したところ、実施例のものと比べてフレア光が増加したためにMTFが若干減少し、525nmの波長の光に対する共役長は15.9mmであり共役長におけるMTFは68.3%であった。
【0057】
また、実施例1と同様にして組み立てたイメージスキャナはクロストーク光による影響で解像度が若干低く、伝送した画像は実施例のものよりもクリアではなかった。
【符号の説明】
【0058】
1 屈折率分布型レンズ
2 透明柱状構造体
3 マトリックス樹脂
4 中心軸
5 光吸収層
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率分布型レンズ、屈折率分布型レンズの製造方法、屈折率分布型レンズアレイ、および屈折率分布型レンズアレイの製造方法に関し、詳細には、ファクシミリ、スキャナ、複写機等に搭載されるイメージセンサに用いられる屈折率分布型レンズおよび屈折率型レンズアレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
中心軸から外周面に向けて半径方向に2次曲線で近似される屈折率分布を有する柱状構造体は、レンズ作用を有することから、複写機、ファクシミリ、スキャナ等の読み取りレンズやLEDプリンタの書き込みレンズとして広く用いられている。この屈折率分布を有する柱状構造体(以下、屈折率分布型レンズという。)は、ガラス製や合成樹脂製のものがよく知られているが、一般的には、その両端面を伝送体中心軸に垂直な平行平面となるように鏡面研磨して、単体で微小レンズとして使用されたり、あるいはその多数を互いに平行となるようにしてアレイ状に配列し接着一体化してレンズアレイの形態として使用されたりしている。
【0003】
特に、画像伝送に用いられる屈折率分布型レンズおよびレンズアレイにおいては、高い解像力と良好な画像コントラストを有する光学特性に優れたレンズが求められていることから、いわゆるフレア光が問題となる。
【0004】
フレア光とは、レンズ周辺に発生する結像に寄与しない光のことであり、屈折率分布型レンズの外周部付近での屈折率分布の歪みに起因するものである。屈折率分布型レンズでは、一方の端面から入射した光線は柱状構造体であるレンズの内部をサインカーブを描いて進行し他端面から出射して結像するが、一般にレンズ内部の屈折率分布は必ずしも理想的な分布に一致しているわけではない。特に柱状構造体の外周部付近では、2次曲線で近似される理想的な屈折率分布から外れる傾向にあり、この外周部付近での屈折率分布の歪みとレンズ外周面を通してレンズ内に入る外光とに起因して、レンズ周辺にフレア光が発生する。
【0005】
また、この屈折率分布型レンズ端面の中心から入射する光が、レンズの光軸に対してある角度θよりも大きい角度で入射した場合、その光はレンズの外周面に衝突する。そのときの角度θを開口角といい、θより小さい角度で入射した光は結像に寄与するが、θよりも大きな角で入射した光はレンズの外周面とマトリックス樹脂の界面で全反射して、結像に寄与しないフレア光となる。これらのフレア光がレンズの解像力および画像のコントラストに悪影響を及ぼす。
【0006】
この問題を解決するため、特許文献1では、レンズ素子が互いに平行となるように配列し接着一体化してレンズアレイとする際に、レンズ外周面の屈折率と等しい屈折率の接着剤またはレンズ外周面の屈折率よりも大きい屈折率の接着剤を用いてマトリックス樹脂を形成することにより、フレア光をカットする技術が提案されている。この方法においては、開口角θよりも大きな入射角でレンズ端面に入射した光がレンズ内部においてその外周部に到達した場合に、レンズ外周面よりもマトリックス樹脂の屈折率が大きいため、界面において全反射することがなく、全反射に起因するフレア光の発生を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−226601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1にも記載されているように、レンズ外周面と厳密に同じ屈折率を有する接着剤を選定することは技術的に極めて困難である。また、レンズ外周面よりも屈折率の高い接着剤を用いたとしても、屈折率が不連続に変化する界面に光が入射するとフレネル反射が起きるため、フレネル反射に起因するフレア光の発生を抑制することはできない。本発明の目的は、フレア光の発生を抑制し、解像度の高い屈折率分布型レンズおよび屈折率分布型レンズアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、マトリックス樹脂と下記式(1)で表される屈折率分布を有する透明柱状構造体とから構成される屈折率分布型レンズであって、マトリックス樹脂の屈折率が透明柱状構造体の外周部の屈折率よりも高く、マトリックス樹脂と透明柱状構造体の間で屈折率が連続的に変化している屈折率分布型レンズまたは屈折率分布型レンズアレイの発明に関するものであり、それらの製造方法に関するものである。
n(L)=n0{1−(g2/2)L2} …(1)
ただし、n(L)は中心軸からの距離Lの位置における屈折率、Lは中心軸からの距離(0≦L≦0.8r)、rは透明柱状構造体の半径、n0 は中心軸における屈折率、gは屈折率分布定数である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレア光の抑制により光学性能(解像度)が向上するため、材料設計が容易な屈折率分布型レンズおよび屈折率分布型レンズアレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の屈折率分布型レンズの斜視図である。
【図2】透明柱状構造体の断面図である。
【図3】本発明の屈折率分布型レンズの屈折率分布を示すグラフである。
【図4】従来の屈折率分布型レンズの屈折率分布を示すグラフである。
【図5】本発明の屈折率分布型レンズ内での光の進み方を示す概略図である。
【図6】従来の屈折率分布型レンズ内での光の進み方を示す概略図である。
【図7】フレア光をあらわした模式図である。
【図8】屈折率分布を有する透明柱状構造体の製造装置の概略図である。
【図9】本発明の屈折率分布型レンズアレイ(1次元配列)の斜視図である。
【図10】本発明の屈折率分布型レンズアレイ(2次元配列)の斜視図である。
【図11】レンズ光学性能の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の屈折率分布型レンズ、屈折率分布型レンズアレイおよびそれらの製造方法について説明する。
まず本発明の屈折率分布型レンズ1の斜視図を図1に示す。屈折率分布型レンズ1は、マトリックス樹脂3と透明柱状構造体2から構成されている。
【0013】
透明柱状構造体2の寸法は、特に制限されないが、直径が0.1〜1mm程度である円筒形状をしている。
また、透明柱状構造体2の材質は、特に制限されず、プラスチックの他、ガラス等の他の材料であってもよい。透明柱状構造体2がプラスチックである場合には、マトリックス樹脂3は、透明柱状構造体2とマトリックス樹脂3の間の屈折率の連続的変化の面から、透明柱状構造体2の外周部を構成する樹脂と相溶する樹脂であることが好ましい。
【0014】
図2は透明柱状構造体2の縦断面図(透明柱状構造体2の中心軸4に沿って切断した断面図)および横断面図(透明柱状構造体2の中心軸4に垂直な面で切断した断面図)である。
透明柱状構造体2は、中心軸4上の屈折率をn0、屈折率分布定数をgとした場合に、0≦L≦0.8rの範囲で中心軸から半径方向に距離L離れた点での屈折率n(L)が、近似的に下記式(1)で表される屈折率分布を持つ屈折率分布型レンズである。
n(L)=n0{1−(g2/2)L2} …(1)
【0015】
本発明の屈折率分布型レンズ1は、マトリックス樹脂3の屈折率が透明柱状構造体2の外周部の屈折率よりも高く、マトリックス樹脂3と透明柱状構造体2の間で屈折率が連続的に変化している。図3は屈折率分布型レンズ1の横断面図と屈折率分布を示すグラフである。
【0016】
本発明の屈折率分布型レンズ1においては、透明柱状構造体2とマトリックス樹脂3の間で屈折率が連続的に変化している。屈折率の変化のしかたについては、特に制限されないが、連続的且つ滑らかに変化することが好ましい。ここで屈折率が連続的且つ滑らかに変化するとは、図3のマトリックス樹脂3と透明柱状構造体2の間での屈折率変化を表すグラフにおいて、屈折率変化の傾きである微分係数が不連続となるような特異点が存在しないということである。
【0017】
このように透明柱状構造体2とマトリックス樹脂3の間で屈折率が連続的に変化する場合に、後述するようにフレネル反射の発生を抑制することができ、フレネル反射に起因するフレア光の発生を抑制することが可能となる。
【0018】
なお、図4に従来の屈折率分型レンズの屈折率分布を示す。従来の屈折率分布型レンズは、透明柱状構造体の屈折率よりもマトリックス樹脂の屈折率が高く、透明柱状構造体とマトリックス樹脂の間で屈折率が不連続となっているため、透明柱状構造体とマトリックス樹脂の界面でフレネル反射が発生する。
【0019】
本発明において、透明柱状構造体2の中心屈折率n0は、特に制限されないが、透明柱状構造体2を構成する材料の選択肢が広くなり、良好な屈折率分布を形成しやすくなる等の観点から、1.4≦n0 ≦1.6であることが好ましい。
また、透明柱状構造体2の外周部の屈折率n1は、レンズの用途によってn0>n1≧n0−0.2の範囲をとることができる。
【0020】
マトリックス樹脂3の屈折率n2は、特に制限されないが、フレア光抑制の面および透明柱状構造体2とマトリックス樹脂3の間の連続的な屈折率分布を形成しやすいという観点から、n1≦n2≦n1+0.1の範囲にあることが好ましく、n1≦n2≦n1+0.05の範囲にあることがより好ましい。
【0021】
一般に、透明柱状構造体2内の屈折率分布は必ずしも理想的な分布に一致しているわけではなく、特に0.8r≦L≦rとなる外周部付近で理想的分布から外れていることが多い。そこで、透明柱状構造体2はこの外周部付近での屈折率分布の歪みに起因するフレア光を吸収するために、0.8r≦L≦rである外周部に光吸収層5を含有することが好ましい。
【0022】
次に、本発明の屈折率分布型レンズ1における光の進み方について図5を用いて説明する。透明柱状構造体2の入射端面に開口角θ以下の角度で入射した光10は、光吸収層5、および透明柱状構造体2とマトリックス樹脂3の界面6に触れることなく透明柱状構造体2内部を通過して、結像に寄与する光として他方の端面より出射する。
【0023】
一方、開口角θ以上の角度で入射した結像に寄与しない光11は、一部は光吸収層5で吸収されるが、吸収されずに残った光はマトリックッス樹脂3に到達する。そして、マトリックス樹脂3に到達した光は、マトリックス樹脂3と透明柱状構造体2の間で屈折率が連続的に変化しているため、全反射を起こさず、またフレネル反射を起こさない。すなわち、開口角θ以上の角度で入射した光は、全てマトリックス樹脂内へと進行するため、フレア光が発生せず、レンズの性能低下が抑制される。
【0024】
マトリックス樹脂3は、光吸収剤を含むことが好ましい。マトリックス樹脂が光吸収剤を含む場合に、マトリックス樹脂内に進入した光が光吸収剤によって吸収され減衰するため、隣接する他の透明柱状構造体へ進入するクロストーク光がカットされ、レンズの性能低下が抑制される傾向にある。
【0025】
光吸収剤としては、特に制限されず、屈折率分布型レンズ1が用いられる光学系で使用される波長の光を吸収し得る種々の染料、顔料、色素が使用できる。中でも、屈折率分布型レンズ1での使用波長光を吸収する染料を組み合わせて用いることが特に有効である。屈折率分布型レンズ1を、カラースキャナー等の用途に用いる場合には、RGB各波長の光を吸収する染料を組み合わせて用いることが好ましい。可視光領域のすべての光を吸収することを目的とする場合には、多種の染料、顔料、色素を混合した黒色のものを選択できる。また、カーボンブラック、グラファイトカーボン等の光吸収剤も用いることができる。その他光を吸収する物質であれば特に限定されることはない。
【0026】
次に、本発明の屈折率分布型アレイについて説明する。本発明の屈折率分布型アレイは、上述した屈折率分布型レンズを1次元または2次元に規則的に複数配列させたものである。図9に1次元に配列させたアレイ50を、図10に2次元に配列させたアレイ60を示す。
【0027】
最後に、本発明の屈折率分布型レンズおよび屈折率分布型レンズアレイの製造方法について説明する。
屈折率分布型レンズおよび屈折率分布型レンズアレイは、基本的には、公知のプラスチックロッドレンズ製造方法により透明柱状構造体を製造し、さらにこの透明柱状構造体を1次元または2次元に配列することにより製造することができる。
【0028】
先ず、モノマー相互拡散法により透明柱状構造体2を製造する方法について図8に沿って説明する。
硬化後の屈折率nがn1 >n2 >・・・・>nN (N≧3)となるN種類の未硬化の樹脂材料を、N基の混練装置20で別個に混練し、紡糸装置22へと送る。
【0029】
未硬化の樹脂材料は、粘度が103〜108ポイズで硬化性のものであることが好ましい。粘度が小さすぎると賦形に際し糸切れが生じるようになり糸状物の形成が困難である。また粘度が大きすぎると賦形時に操作性が不良となり各層の同心円性が損なわれたり、太さ斑の大きな糸状体となりやすいので好ましくない。
この未硬化の樹脂材料を構成する物質としてはラジカル重合性ビニル単量体または該単量体と該単量体に可溶な重合体とからなる組成物等を用いることができる。
【0030】
ラジカル重合性ビニル単量体としては、特に制限されないが、例えば、メチルメタクリレート(n=1.49)、スチレン(n=1.59)、クロルスチレン(n=1.61)、酢酸ビニル(n=1.47)、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル(メタ)アクリレート(n=1.37〜1.44)、屈折率1.43〜1.62の(メタ)アクリレート類たとえばエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジまたはトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ、トリまたはテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、フッ素化アルキレングリコールポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
これら未硬化の樹脂材料から糸状体を形成する際の未硬化の樹脂材料の粘度調整を容易にするため、および糸状体の中心から外周へ向かい連続的な屈折率分布を持たせるため、前記の未硬化の樹脂材料はビニル単量体とそれに可溶な重合体とで構成されていることが好ましい。
【0032】
未硬化の樹脂原料に可溶な重合体としては、特に制限されないが、前記のラジカル重合性ビニル単量体から生成する重合体と相溶性が良いことが好ましく、例えば、ポリメチルメタクリレート(n=1.49)、ポリメチルメタクリレート系共重合体(n=1.47〜1.50)、ポリ4−メチルペンテン−1(n=1.46)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(n=1.46〜1.50)、ポリカーボネート(n=1.50〜1.57)、ポリフッ化ビニリデン(n=1.42)、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体(n=1.42〜1.46)、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロペン共重合体(n=1.40〜1.46)、ポリフッ化アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
粘度を調整するため、各層に同一の屈折率を有する重合体を用いた場合には、中心から外周に向かって連続的な屈折率分布を有するプラスチック光伝送体が得られるので好ましい。特に、ポリメチルメタクリレートは、透明性に優れるとともにそれ自体の屈折率も高いので、本発明の屈折率分布型光伝送体を作成するに際して用いる重合体としては好適なものである。
【0034】
未硬化の樹脂材料より形成した糸状物を硬化するためには、未硬化物中に熱硬化触媒あるいは光硬化触媒を添加しておくことが好ましく、熱硬化触媒としては、特に制限されないが、パーオキサイド系またはアゾ系の触媒を用いることができる。光硬化触媒としては、特に制限されないが、ベンゾフェノン、ベンゾインアルキルエーテル、4'ーイソプロピルー2ーヒドロキシー2ーメチルプロピオフェノン、1ーヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルメチルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、クロロチオキサントン、チオキサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N−メチルジエタノールアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
【0035】
紡糸装置22は、紡糸ヘッド24と、相互拡散部26と、硬化処理部28とを備えている。未硬化の樹脂材料は、紡糸ヘッド24内の複合紡糸ノズル30から吐出され、複合紡糸されて糸状体32とされる。
未硬化の樹脂材料は、吐出される際、中心から外周部に向かって順次屈折率が低くなるような配置で、同心円状に積層され、糸状体32を形成する。複合紡糸ノズル21から吐出された糸状体32は、ニップローラ34によって引き上げられ、紡糸装置22の相互拡散部26および硬化処理部28を順次に通過する。
【0036】
複合紡糸ノズル30から吐出された直後の糸状体32の屈折率分布は、層間に屈折率の段差があるため、階段状となっている。この糸状体32の各層間の屈折率分布が連続的になるように隣接層間の物質の相互拡散処理を行い、相互拡散処理と同時に、または相互拡散処理を行った後、糸状体32を硬化処理し、透明円柱構造体原糸を得る。なお、相互拡散処理とは、糸状体に窒素雰囲気下、10〜60℃、より好ましくは20〜50℃で数秒〜数分間の熱履歴を与えることをいう。
得られた透明円柱構造体原糸は、必要に応じて、加熱延伸した後、緩和処理を行ってもよい。このようにして作製した透明円柱構造体原糸は、適宜、所定のサイズに切断して透明円柱構造体とする。
【0037】
次に、得られた透明柱状構造体を用いて、屈折率分布型レンズを製造する。
本発明の屈折率分布型レンズは、上記のようにして得られた透明柱状構造体をマトリックス樹脂原料中に包埋させて、マトリックス樹脂原料に含まれる浸透性成分を透明柱状構造体に浸透させた後に、マトリックス樹脂原料を硬化させることによって製造することができる。
【0038】
透明柱状構造体とマトリックス樹脂原料の間には屈折率の段差があるが、マトリックス樹脂原料に含まれる成分が透明柱状構造体内部に浸透・拡散するように処理を行うことにより、透明柱状構造体とマトリックス樹脂の間の屈折率の差が消失し、次いでマトリックス樹脂原料を硬化させマトリックス樹脂とすることで、透明柱状構造体とマトリックス樹脂との間で屈折率が連続的に変化するような屈折率分布型レンズを製造することができる。
マトリックス樹脂原料に含まれる浸透成分を拡散させる処理としては、特に制限されないが、マトリックス樹脂原料と透明柱状構造体が接触した状態で数秒〜数時間保持する方法が挙げられる。この際、より短時間で浸透・拡散処理を完了させるため、室温〜100℃の温度で加温してもよい。
【0039】
マトリックス樹脂としては、特に制限されないが、透明柱状構造体の外周部を構成する樹脂との相溶性が高いことが好ましい。この相溶性が高い場合に、マトリックス樹脂の原料が透明柱状構造体の内部に浸透・拡散しやすい傾向にある。マトリックス樹脂の原料としては、特に制限されないが、例えば、ラジカル重合性ビニル単量体を用いることができる。特に、透明柱状構造体の原料として用いられる樹脂原料と同種の単量体である場合には、透明柱状構造体に対する相溶性が高く、容易に硬化物内部へと浸透・拡散することができるため、好ましい。
【0040】
マトリックス樹脂原料の硬化方法としては、特に制限されないが、熱硬化触媒による熱硬化反応、あるいは光硬化触媒による光硬化反応、吸湿反応等の各種硬化方法を用いることができる。
【0041】
屈折率分布型レンズが1次元または2次元に配列された屈折率分布型レンズアレイは、以下の製造方法により製造することができる。
【0042】
まず、プレス上盤の表面に複数の透明円柱構造体を並列配置して仮留めする。そして、一方の面にマトリックス樹脂原料が所定の間隔をあけて塗布された基板をマトリックス樹脂原料が塗布された面が上方に向くようにしてプレス上盤の下方に配置し、当該基板をプレス上盤に仮留めされた透明円柱構造体に押圧して固定し、該マトリックス樹脂原料に含まれる浸透成分を前記透明柱状構造体の外周部に浸透せしめる。ついで、該浸透性成分および未硬化のマトリックス樹脂原料を硬化させて、屈折率分布型レンズアレイを製造する。
【0043】
マトリックス樹脂原料の塗布方法としては、マトリックス樹脂原料の粘度、種類に応じて、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法等の公知のコーティング法を用いることができる。
【0044】
前記基板は平板でもよいし、透明柱状構造体を一定の間隔で配置収納するU字状あるいはV字状等の溝を設けた板であってもよい。基板の材質は、特に限定されないが、レンズアレイを作製する工程での加工が容易な材料であることが好ましい。基板の材料としては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂などが好ましく、アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリイミド系樹脂、液晶ポリマー、エポキシ系樹脂などが特に好ましい。また、基板の基材、補強材として、繊維や紙を用いてもよいし、基板に離型剤、染料、顔料等を添加してもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、実施例、比較例において、レンズ性能(MTF)の測定は下記の方法により行った。
【0046】
<レンズ性能(MTF)の測定>
レンズの解像度を示すMTFは、図12に示すように、光源40、フィルター41、拡散板42、空間周波数12[Lp/mm]を有する格子43、中心軸に垂直な両端面を研磨した屈折率分布型レンズを複数本並べたアレイ44、およびCCDラインセンサー45を配置し、格子43を屈折率分布型レンズアレイ44の結像面に設置したCCDラインセンサー45に結像させて格子画像47を読みとり、その測定光量の最大値(iMAX )と最小値(iMIN )とを測定し、次式
MTF[%]={(iMAX −iMIN )/(iMAX +iMIN )}×100(%)
により求めた。なお、空間周波数とは、図12の46に示すごとく、白ラインと黒ラインとの組み合わせを1ラインとし、このラインの組み合わせが1mmの幅の中に何組設けてあるかを示すものである。
【0047】
実施例1
ポリメチルメタクリレート(〔η〕=0.40,MEK中,25℃にて測定:以下、ポリメチルメタクリレートの〔η〕は全て同じ)46質量部、メチルメタクリレート24質量部、ジシクロペンタニルアクリレート30質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5質量部およびハイドロキノン0.1質量部を70℃に加熱混練して第1層形成用原液とした。ポリメチルメタクリレート45質量部、ベンジルメタクリレート5質量部、メチルメタクリレート28.6質量部、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート5質量部、ジシクロペンタニルアクリレート16.4質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5質量部、ハイドロキノン0.1質量部を70℃に加熱混練して第2層形成用原液とした。ポリメチルメタクリレート48質量部、ベンジルメタクリレート6.8質量部、メチルメタクリレート35.2質量部、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート10質量部、1ーヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5質量部、ハイドロキノン0.1質量部を70℃に加熱混練して第3層形成用原液とした。ポリメチルメタクリレート44.8質量部、ベンジルメタクリレート13.1質量部、メチルメタクリレート12.9質量部、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート29.2質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5質量部、ハイドロキノン0.1質量部、三井東圧染料(株)製染料MS Yellow HD−180 0.006質量部、三井東圧染料(株)製染料MS Magenta HM−1450 0.003質量部、日本化薬(株)製染料Blue ACR 0.014質量部、三菱化学(株)製染料Diarein Blue 4G 0.014質量部、および日本化薬(株)製染料KAYASORB CY−10 0.006質量部を70℃に加熱混練して第4層形成用原液とした。ポリメチルメタクリレート40.3質量部、ベンジルメタクリレート16.9質量部、メチルメタクリレート2.4質量部、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート40.4質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5質量部、ハイドロキノン0.1質量部、三井東圧染料(株)製染料MS Yellow HD−180 0.14質量部、三井東圧染料(株)製染料MS Magenta HM−1450 0.14質量部、日本化薬(株)製染料Blue ACR 0.57質量部、三菱化学(株)製染料Diarein Blue 4G 0.011質量部、および日本化薬(株)製染料KAYASORB CY−10 0.011質量部を70℃に加熱混練して第5層形成用原液とした、この5種類の原液を同心円状5層複合ノズルを用いて、中心から外側に向けて第1層から第5層となるように配列して同時に押し出した。
【0048】
複合紡糸ノズル30の温度は54℃、各層の吐出比を半径方向寸法の比で、第1層/第2層/第3層/第4層/第5層=24/31.1/40.2/2.2/2.5として、糸状に押し出した。ついで40Wのケミカルランプ36本を円状等間隔に上下2段に配設した第一光照射硬化処理部26、および高圧水銀ランプを2つ配設した第二光照射硬化処理部28の中心に糸状物を通過させて硬化させ、200cm/minの速度でニップローラー34で引き取り、透明柱状構造体を得た。
【0049】
得られた透明柱状構造体は、半径r=0.60mmであり、中心部の屈折率n0=1.497、外周部の屈折率n1=1.487であり、中心軸からの距離(0≦L≦0.8r)における屈折率分布は下記式(1)で表される2次曲線で近似され、屈折率分布定数はg=0.49であった。
n(L)=n0{1−(g2/2)L2} …(1)
【0050】
この透明柱状構造体を複数本を用い、基板としてアクリル樹脂板(厚さ1.0mm)2枚を用い、マトリックス樹脂原料としてポリメチルメタクリレート46質量部、フェニルメタクリレート22.5質量部、メチルメタクリレート10質量部、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート21.5質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5質量部、ハイドロキノン0.1質量部、三井東圧染料(株)製染料MS Yellow HD−180 0.149質量部、三井東圧染料(株)製染料MS Magenta HM−1450 0.146質量部、日本化薬(株)製染料Blue ACR 0.584質量部、三菱化学(株)製染料Diarein Blue 4G 0.025質量部、および日本化薬(株)製染料KAYASORB CY−10 0.017質量部からなる原料を用いて、アクリル樹脂板の間に透明柱状構造体を1列に平行に密着させて配列し、マトリックス樹脂原料を充填し、30分間60℃の雰囲気化でマトリックス樹脂原料に含まれる成分を透明柱状構造体に浸透させる処理を行った後、高圧水銀ランプを用いて、基板の両面から4000mJ/cm2(合計8000mJ/cm2)のUVを照射することにより、マトリックス樹脂原料を硬化させてマトリックス樹脂とし、両端面を切断して研磨して、レンズ長8mmの屈折率分布型レンズアレイを製作した。
【0051】
マトリックス樹脂の屈折率は1.494で、透明柱状構造体の外周部の屈折率(n1=1.487)との屈折率差は0.007であった。
この屈折率分布型レンズアレイの端面を、光学顕微鏡で観察したところ、透明柱状構造体とマトリックス樹脂との間に明確な界面がないことが観察された。つまり、マトリクス樹脂と透明柱状構造体との間において、屈折率が連続的に変化していた。
【0052】
この屈折率分布型レンズアレイは525nmにおけるフレア光、クロストーク光が少なく、12Lp/mmの格子43を用いてこのレンズアレイの特性を測定したところ、525nmの波長の光に対する共役長は15.5mmであり共役長におけるMTFは75.5%であった。
【0053】
この屈折率分布型アレイを用いて525nmの発光波長を有するLEDを光源とし、CCDを受光センサーとしたイメージスキャナを組み立てた。このイメージスキャナはフレア光、クロストーク光による影響が非常に少なく解像度が高く、屈折率分布型アレイは画像をクリアに伝送することができた。
【0054】
比較例1
実施例1で得られた透明柱状構造体を用い、基盤としてベークライト樹脂板2枚を用い、マトリックス樹脂原料としてハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製エポキシ接着剤アラルダイトを用いて、ベークライト樹脂板の間に透明柱状構造体を1列に平行に密着させて配列しマトリックス樹脂原料を充填し、60℃で30分間加熱処理を施してマトリックス樹脂原料を硬化させて、両端面を切断して研磨して、レンズ長8mmの屈折率分布型レンズアレイを作成した。
【0055】
マトリックス樹脂の屈折率は1.61であり、透明柱状構造体の外周部の屈折率(n1=1.487)との屈折率差は0.007であった。
この屈折率分布型レンズアレイの端面を、光学顕微鏡で観察したところ、透明柱状構造体とマトリックス樹脂との間に明確な界面があることが観察された。
【0056】
実施例1と同様にこのレンズアレイの特性を測定したところ、実施例のものと比べてフレア光が増加したためにMTFが若干減少し、525nmの波長の光に対する共役長は15.9mmであり共役長におけるMTFは68.3%であった。
【0057】
また、実施例1と同様にして組み立てたイメージスキャナはクロストーク光による影響で解像度が若干低く、伝送した画像は実施例のものよりもクリアではなかった。
【符号の説明】
【0058】
1 屈折率分布型レンズ
2 透明柱状構造体
3 マトリックス樹脂
4 中心軸
5 光吸収層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂と下記式(1)で表される屈折率分布を有する透明柱状構造体とから構成される屈折率分布型レンズであって、マトリックス樹脂の屈折率が透明柱状構造体の外周部の屈折率よりも高く、マトリックス樹脂と透明柱状構造体の間で屈折率が連続的に変化している屈折率分布型レンズ。
n(L)=n0{1−(g2/2)L2} …(1)
(ただし、n(L)は中心軸からの距離Lの位置における屈折率、Lは中心軸からの距離(0≦L≦0.8r)、rは透明柱状構造体の半径、n0 は中心軸における屈折率、gは屈折率分布定数である。)
【請求項2】
マトリックス樹脂が光吸収剤を含むことを特徴とする請求項1記載の屈折率分布型レンズ。
【請求項3】
請求項1記載の屈折率分布型レンズを1次元または2次元に規則的に複数配列させた屈折率分布型レンズアレイ。
【請求項4】
マトリックス樹脂原料中に透明柱状構造体を包埋させて、マトリックス樹脂原料に含まれる成分を透明柱状構造体に浸透させた後に、マトリックス樹脂原料を硬化させることを特徴とする請求項1記載の屈折率分布型レンズを製造する方法。
【請求項5】
マトリックス樹脂原料中に透明柱状構造体を包埋させて、マトリックス樹脂原料に含まれる成分を透明柱状構造体に浸透させた後に、マトリックス樹脂原料を硬化させることを特徴とする請求項3記載の屈折率分布型レンズアレイを製造する方法。
【請求項1】
マトリックス樹脂と下記式(1)で表される屈折率分布を有する透明柱状構造体とから構成される屈折率分布型レンズであって、マトリックス樹脂の屈折率が透明柱状構造体の外周部の屈折率よりも高く、マトリックス樹脂と透明柱状構造体の間で屈折率が連続的に変化している屈折率分布型レンズ。
n(L)=n0{1−(g2/2)L2} …(1)
(ただし、n(L)は中心軸からの距離Lの位置における屈折率、Lは中心軸からの距離(0≦L≦0.8r)、rは透明柱状構造体の半径、n0 は中心軸における屈折率、gは屈折率分布定数である。)
【請求項2】
マトリックス樹脂が光吸収剤を含むことを特徴とする請求項1記載の屈折率分布型レンズ。
【請求項3】
請求項1記載の屈折率分布型レンズを1次元または2次元に規則的に複数配列させた屈折率分布型レンズアレイ。
【請求項4】
マトリックス樹脂原料中に透明柱状構造体を包埋させて、マトリックス樹脂原料に含まれる成分を透明柱状構造体に浸透させた後に、マトリックス樹脂原料を硬化させることを特徴とする請求項1記載の屈折率分布型レンズを製造する方法。
【請求項5】
マトリックス樹脂原料中に透明柱状構造体を包埋させて、マトリックス樹脂原料に含まれる成分を透明柱状構造体に浸透させた後に、マトリックス樹脂原料を硬化させることを特徴とする請求項3記載の屈折率分布型レンズアレイを製造する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−101233(P2013−101233A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245166(P2011−245166)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
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