説明

屈折率分布測定方法および屈折率分布測定装置

【課題】2媒質法や2波長による屈折率分布測定において、媒質や波長ごとに照明光学系の瞳の大きさが異なっていても高精度な屈折率分布の測定を可能とする。
【解決手段】屈折率分布測定方法は、第1および第2の媒質中にそれぞれ配置された被検光学素子を透過した光の波面の計測値である第1および第2の波面計測値を取得し、第1および第2の媒質中に配置された被検光学素子における光の透過領域に対応する照明光学系における光の透過領域である第1および第2の光線透過領域を計算し、第1および第2の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第1および第2の波面収差を計算し、第1および第2の波面計測値を第1および第2の波面収差を用いて補正し、これら補正波面を用いて被検光学素子の屈折率分布を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ等の被検光学素子の屈折率分布を測定する屈折率分布測定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ等の被検光学素子(以下、被検レンズという)の屈折率分布を測定する屈折率分布測定装置には、いわゆる2媒質法(特許文献1参照)や2波長法を用いるものがある。これら2媒質法や2波長法を用いる屈折率分布測定装置において、被検レンズの大きさや種類によっては、射出NA(開口数)が大きい照明光学系が用いられることがある。このような射出NAが大きい照明光学系を用いる場合、該照明光学系からの射出光の波面(射出波面)を、収差を含まない理想波面にすることは難しい。2媒質法や2波長法を用いる屈折率分布測定装置において、照明光学系で発生する波面収差は、被検レンズの屈折率分布の測定値に影響を与える。このため、被検レンズの透過波面の計測値から照明光学系で発生する波面収差の影響を除外する必要がある。
【0003】
ただし、従来、2媒質法や2波長法を用いる屈折率分布測定装置において、照明光学系で発生する波面収差の影響を除外する方法は提案されていない。
【0004】
特許文献2には、集光レンズの収差に影響されず、被検面の形状を高精度に測定可能とした形状測定装置が開示されている。この装置は、集光レンズの参照面で反射した光と、該光の光源と同一の光源から照射されて所定の基準面で反射した光との干渉による干渉縞の像から集光レンズの収差を算出する。そして、該算出した収差を用いて、参照面に対する被検面の形状偏差と、参照面に対する基準ゲージの形状偏差をそれぞれ補正する。さらに、それぞれ補正された被検面の形状偏差と基準ゲージの形状偏差との差分を算出し、最終的に集光レンズの収差の影響による測定誤差を含まない形状データを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−223903号公報
【特許文献2】特開平10−30916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2にて開示された技術を2媒質法や2波長法による波面計測に適用しようとしても、2媒質法や2波長法では、媒質や波長ごとに照明光学系の瞳の大きさが異なるため、照明光学系の波面収差の影響を除外することは困難である。
【0007】
本発明は、2媒質法や2波長を用いて屈折率分布を測定する場合に、媒質や波長ごとに照明光学系の瞳の大きさが異なっていても該照明光学系の波面収差の影響を低減し、高精度な屈折率分布の測定を可能とする屈折率分布測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての屈折率分布測定方法は、照明光学系から射出された光を被検光学素子の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する第1の媒質中に配置された被検光学素子に入射させ、該被検光学素子を透過した光の波面の計測値である第1の波面計測値を取得するステップと、照明光学系から射出された光を被検光学素子の屈折率および第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の媒質中に配置された被検光学素子に入射させ、該被検光学素子を透過した光の波面の計測値である第2の波面計測値を取得するステップと、第1の媒質中に配置された被検光学素子における光の透過領域に対応する照明光学系における光の透過領域である第1の光線透過領域を計算するステップと、第2の媒質中に配置された被検光学素子における光の透過領域に対応する照明光学系における光の透過領域である第2の光線透過領域を計算するステップと、第1の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第1の波面収差を計算するステップと、第2の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第2の波面収差を計算するステップと、第1の波面計測値を第1の波面収差を用いて補正して第1の補正波面を求めるステップと、第2の波面計測値を第2の波面収差を用いて補正して第2の補正波面を求めるステップと、第1および第2の補正波面を用いて、被検光学素子の屈折率分布を計算するステップとを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の他の一側面としての屈折率分布測定方法は、照明光学系から射出された第1の波長を有する第1の光を被検光学素子の屈折率とは異なる屈折率を有する媒質中に配置された被検光学素子に入射させ、該被検光学素子を透過した第1の光の波面の計測値である第1の波面計測値を取得するステップと、照明光学系から射出された第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2の光を該媒質中に配置された被検光学素子に入射させ、該被検光学素子を透過した第2の光の波面の計測値である第2の波面計測値を取得するステップと、該媒質中に配置された被検光学素子における第1の光の透過領域に対応する照明光学系における第1の光の透過領域である第1の光線透過領域を計算するステップと、該媒質中に配置された被検光学素子における第2の光の透過領域に対応する照明光学系における第2の光の透過領域である第2の光線透過領域を計算するステップと、第1の波長に対する第1の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第1の波面収差を計算するステップと、第2の波長に対する第2の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第2の波面収差を計算するステップと、第1の波面計測値を第1の波面収差を用いて補正して第1の補正波面を求めるステップと、第2の波面計測値を第2の波面収差を用いて補正して第2の補正波面を求めるステップと、第1および第2の補正波面を用いて、被検光学素子の屈折率分布を計算するステップとを有することを特徴とする。
【0010】
なお、光学素子をモールド成形する成形ステップと、光学素子を評価する評価ステップとを有し、該評価ステップにおいて、上記屈折率分布測定方法を用いて光学素子の屈折率分布を測定する光学素子の製造方法も、本発明の他の一側面を構成する。
【0011】
また、本発明のさらに他の一側面としての屈折率分布測定装置は、被検光学素子に向けて光を射出する照明光学系と、被検光学素子を透過した光の波面を計測するための検出部と、演算部とを有する。該演算部は、照明光学系からの光を被検光学素子の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する第1の媒質中に配置された被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した光の波面の計測値である第1の波面計測値を検出器を用いて取得し、照明光学系から射出された光を被検光学素子の屈折率および第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の媒質中に配置された被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した光の波面の計測値である第2の波面計測値を検出器を用いて取得する。さらに、演算部は、第1の媒質中に配置された被検光学素子における光の透過領域に対応する照明光学系における光の透過領域である第1の光線透過領域を計算し、第2の媒質中に配置された被検光学素子における光の透過領域に対応する照明光学系における光の透過領域である第2の光線透過領域を計算し、第1の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第1の波面収差を計算し、第2の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第2の波面収差を計算し、第1の波面計測値を第1の波面収差を用いて補正して第1の補正波面を求め、第2の波面計測値を第2の波面収差を用いて補正して第2の補正波面を求め、第1および第2の補正波面を用いて、被検光学素子の屈折率分布を計算することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のさらに他の一側面としての屈折率分布測定装置は、被検光学素子に向けて光を射出する照明光学系と、被検光学素子を透過した光の波面を計測するための検出部と、演算部とを有する。該演算部は、照明光学系から射出された第1の波長を有する第1の光を被検光学素子の屈折率とは異なる屈折率を有する媒質中に配置された被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した第1の光の波面の計測値である第1の波面計測値を検出器を用いて取得し、照明光学系から射出された第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2の光を該媒質中に配置された被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した第2の光の波面の計測値である第2の波面計測値を検出器を用いて取得する。さらに、演算部は、該媒質中に配置された被検光学素子における第1の光の透過領域に対応する照明光学系における第1の光の透過領域である第1の光線透過領域を計算し、該媒質中に配置された被検光学素子における第2の光の透過領域に対応する照明光学系における第2の光の透過領域である第2の光線透過領域を計算し、第1の波長に対する第1の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第1の波面収差を計算し、第2の波長に対する第2の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第2の波面収差を計算し、第1の波面計測値を第1の波面収差を用いて補正して第1の補正波面を求め、第2の波面計測値を第2の波面収差を用いて補正して第2の補正波面を求め、第1および第2の補正波面を用いて、被検光学素子の屈折率分布を計算することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の他の一側面としての屈折率分布測定プログラムは、コンピュータに、以下のステップを含む処理を実行させることを特徴とする。該処理は、照明光学系から射出された光を被検光学素子の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する第1の媒質中に配置された被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した光の波面の計測値である第1の波面計測値を取得するステップと、照明光学系から射出された光を被検光学素子の屈折率および第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の媒質中に配置された被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した光の波面の計測値である第2の波面計測値を取得するステップと、第1の媒質中に配置された被検光学素子における光の透過領域に対応する照明光学系における光の透過領域である第1の光線透過領域を計算するステップと、第2の媒質中に配置された被検光学素子における光の透過領域に対応する照明光学系における光の透過領域である第2の光線透過領域を計算するステップと、第1の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第1の波面収差を計算するステップと、第2の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第2の波面収差を計算するステップと、第1の波面計測値を第1の波面収差を用いて補正して第1の補正波面を求めるステップと、第2の波面計測値を前記第2の波面収差を用いて補正して第2の補正波面を求めるステップと、第1および第2の補正波面を用いて、被検光学素子の屈折率分布を計算するステップとを含む。
【0014】
さらに、本発明の他の一側面としての屈折率分布測定プログラムは、コンピュータに、以下のステップを含む処理を実行させることを特徴とする。該処理は、照明光学系から射出された第1の波長を有する第1の光を被検光学素子の屈折率とは異なる屈折率を有する媒質中に配置された被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した第1の光の波面の計測値である第1の波面計測値を取得するステップと、照明光学系から射出された第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2の光を媒質中に配置された被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した第2の光の波面の計測値である第2の波面計測値を取得するステップと、該媒質中に配置された被検光学素子における第1の光の透過領域に対応する照明光学系における第1の光の透過領域である第1の光線透過領域を計算するステップと、該媒質中に配置された被検光学素子における第2の光の透過領域に対応する照明光学系における第2の光の透過領域である第2の光線透過領域を計算するステップと、第1の波長に対する第1の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第1の波面収差を計算するステップと、第2の波長に対する第2の光線透過領域に対応する照明光学系の波面収差の計算値である第2の波面収差を計算するステップと、第1の波面計測値を第1の波面収差を用いて補正して第1の補正波面を求めるステップと、第2の波面計測値を第2の波面収差を用いて補正して第2の補正波面を求めるステップと、第1および第2の補正波面を用いて、被検光学素子の屈折率分布を計算するステップとを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被検光学素子の屈折率分布を、照明光学系の波面収差の影響を十分に低減して高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1である屈折率分布測定方法(2媒質法)を用いる屈折率分布測定装置の第1の媒質使用時の構成を示す図。
【図2】実施例1の屈折率分布測定方法を用いる屈折率分布測定装置の第2の媒質使用時の構成を示す図。
【図3】実施例1の屈折率分布測定方法を示すフローチャート。
【図4】図1および図2に示した屈折率分布測定装置の照明光学系の収差を測定する際の光学配置を示す図。
【図5】本発明の実施例2である屈折率分布測定方法(2波長法)を用いる屈折率分布測定装置の構成を示す図。
【図6】実施例2の屈折率分布測定方法を示すフローチャート。
【図7】図5に示した屈折率分布測定装置の照明光学系の収差を測定する際の光学配置を示す図。
【図8】実施例1,2にて説明した屈折率分布計測方法を用いた光学素子の製造方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0018】
図1および図2には、本発明の実施例1である2媒質法による屈折率分布測定方法を用いる屈折率分布測定装置の構成を示している。図1は、被検光学素子としての被検レンズの屈折率とは異なる第1の屈折率を有する第1の媒質中に被検レンズを配置して該被検レンズを透過した波面を計測するときの装置構成を示している。図2は、被検レンズの屈折率および第1の媒質の第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の媒質中に被検レンズを配置して該被検レンズを透過した波面を計測するときの装置構成を示している。
【0019】
照明光学系Lは、レーザ等の光源1と、開口が十分に小さいピンホール2と、集光レンズ3とにより構成され、収束球面波としての光(参照光)を後述する被検レンズ15に向けて射出する。RAは、照明光学系Lの光軸である。
【0020】
照明光学系Lの射出側(下流側)における光軸RA上に配置された液槽5は、照明光学系Lに近い側に配置された前側窓ガラス16と、照明光学系Lから遠い側に配置された後側窓ガラス17とを有する。前側窓ガラス16と後側窓ガラス17のそれぞれの厚みと屈折率は既知であり、また前側窓ガラス16と後側窓ガラス17との間の間隔も既知である。
【0021】
液槽5中には、屈折率が既知である第1の媒質18(図1)又は第2の媒質19(図2)が満たされる。そして、液漕5(第1の媒質18または第2の媒質19)内における光軸RA上には、被検レンズ15が配置される。本実施例は、被検レンズ15として正の光学パワーを有するレンズを用いる場合について説明し、該被検レンズ15を照明光学系Lの像点よりも下流に配置する。なお、被検レンズとして負の光学パワーを有するレンズを用いることもでき、この場合は、照明光学系Lの像点より上流に被検レンズを配置する。被検光学素子として、レンズ以外の光学素子を用いてもよい。
【0022】
液槽5よりも下流における光軸RA上には、被検レンズ15を透過した光の波面(透過波面)を計測するための波面検出部Sが配置されている。本実施例では、波面検出部Sとして、回折格子7と検出器9とにより構成されるトールボット干渉計を用いる。ただし、トールボット干渉計に代えて、シャックハルトマンセンサ等の波面センサを用いてもよい。
【0023】
回折格子7としては、透過型回折格子であって、互いに直交する2方向にて既知の周期を有する正方格子が用いられる。回折格子7は、厚みと屈折率が既知である基板ガラス13上に形成されている。また、検出器9としては、CCDセンサ等の撮像素子が用いられる。検出器9は、回折格子7から射出した回折光同士の干渉による発生する干渉縞を撮影する。検出器9の入射面側には、厚みと屈折率が既知であるカバーガラス14が配置されている。
【0024】
液槽5、回折格子7および検出器9はそれぞれ、液漕駆動部6、回折格子駆動部8および検出器駆動部10を備えており、光軸RAに平行に設置されたレール11上を互いに独立に移動することができる。
【0025】
演算部12は、コンピュータプログラムとしての屈折率分布測定プログラムによって動作するパーソナルコンピュータにより構成されており、検出器9にて撮影された干渉縞から波面を計測する。具体的には、第1の媒質18中に配置された被検レンズ15を透過した光の干渉縞から波面計測値としての透過波面W1を計算し、第2の媒質19中に配置された被検レンズ15を透過した光の干渉縞から波面計測値としての透過波面W2を計算する。また、演算部12は、内部メモリを備えており、該内部メモリに、予め測定した照明光学系Lの波面収差Wiのデータを格納している。演算部12は、透過波面W1,W2を用いて照明光学系Lの波面収差Wiの影響を補正、すなわち低減(除去を含む)した被検レンズ15の屈折率分布を計算する。
【0026】
さらに、演算部12は、光軸RA上に配置された上記素子の設計情報から、波面計測に適した該素子の配置を計算することができ、該計算した配置の情報(以下、配置情報という)に基づいて各駆動部6,8,10を駆動する。例えば、回折格子7と検出器9との間の間隔を、トールボット条件を満足するように調整する。
【0027】
Rは照明光学系Lの射出瞳の半径を示す。また、r1は第1の媒質18中に配置された被検レンズ15における照明光学系Lからの光(光線)の透過領域に対応する照明光学系Lにおける当該光線の透過領域(第1の光線透過領域)の半径を示す。r2は第2の媒質19中に配置された被検レンズ15における照明光学系Lからの光(光線)の透過領域に対応する照明光学系Lにおける当該光線の透過領域(第2の光線透過領域)の半径を示す。
【0028】
次に、本実施例において、照明光学系Lの波面収差Wiの影響を補正しつつ被検レンズ15の屈折率分布を求める処理(2媒質法による屈折率分布測定方法)を、図3のフローチャートに従って説明する。該処理は、演算部12が上述した屈折率分布測定プログラムを実行することで行われる。
【0029】
まずステップ001では、照明光学系Lの波面収差Wi(R,θ)を計測する。θは偏角を表す。波面収差Wi(R,θ)は、例えば図4に示すように、液槽5を光軸RA上から除去した状態で波面検出部Sにて計測される。ただし、これに限らず、波面収差Wi(R,θ)を、照明光学系Lと液槽5との間の光軸RA上に別途波面センサを挿入して計測してもよい。また、ピンホール2の射出波面が理想球面であることを確認した後、集光レンズ3を別の波面測定器に移設して測定した透過波面の測定値をWi(R,θ)としてもよい。
【0030】
次にステップ002では、Wi(R,θ)を多項式により近似して波面収差近似関数Wi(r,θ)を求める。このときに用いる近似多項式として、例えば、ゼルニケ多項式がある。簡易的に実施する場合、近似多項式は、照明光学系Lの瞳に対して回転対称な関数でもよい。波面収差Wi(R,θ)の経時変化が少なければ、一度求めた関数Wi(r,θ)を常に用いてもかまわない。この場合、2回目以降の測定からはステップ001とステップ002を省略することができる。
【0031】
次にステップ101では、第1の媒質18中に配置した被検レンズ15を透過した光の波面を計測して第1の波面計測値としての透過波面W1を取得する。透過波面W1は、例えば、得られた干渉縞に対して、演算部12でフーリエ変換位相回復法と、位相アンラップと、差分波面の積分処理とを行って求める。
【0032】
次にステップ102では、第2の媒質19中に配置した被検レンズ15を透過した光の波面を計測して第2の波面計測値としての透過波面W2を取得する。透過波面W2も、得られた干渉縞に対して、上述した透過波面W1と同様の処理を行って求める。
【0033】
続いてステップ103では、光軸RA上の各素子の配置情報から、光線追跡シミュレーションによって、第1および第2の媒質18,19の媒質ごとに被検レンズ15の光線透過領域に対応する照明光学系Lの光線透過領域の半径r1,r2を計算する。
【0034】
さらにステップ104では、波面収差近似関数Wi(r,θ)に半径r1,r2を代入して、媒質ごとに異なる光線透過領域に対応する照明光学系Lの波面収差近似関数Wi(r1,θ),Wi(r2,θ)を計算する。なお、波面収差近似関数Wi(r1,θ),Wi(r2,θ)を計算することは、第1および第2の媒質18,19に対する照明光学系Lの波面収差の計算値である第1の波面収差および第2の波面収差を取得(計算)することに相当する。
【0035】
次にステップ105では、上記配置情報から、光線追跡シミュレーションによって、透過波面W1,W2および波面収差近似関数Wi(r1,θ),Wi(r2,θ)のそれぞれの座標軸を被検レンズ15の瞳座標に変換する。
【0036】
次にステップ106では、以下の式(1)に示すように、媒質ごとの透過波面W1,W2から波面収差近似関数Wi(r1,θ),Wi(r2,θ)をそれぞれ減算する。これにより、照明光学系Lの収差の影響が補正された透過波面(第1の補正波面および第2の補正波面:以下、まとめて補正透過波面という)W1′,W2′を算出する。
【0037】
【数1】

【0038】
次にステップ107では、補正透過波面W1′,W2′を用いて、以下の式(2)に示す2媒質法での計算式に従って、被検レンズ15の屈折率分布GIを求める。式(2)において、Nは被検レンズ15の屈折率であり、nは第1の媒質18の屈折率である。nは第2の媒質19の屈折率であり、Dは被検レンズ15の光線透過方向での幾何学的厚みを示す。
【0039】
【数2】

【0040】
本実施例によれば、照明光学系Lの射出NA(開口数)が大きく、従来であれば照明光学系Lの波面収差の影響を低減することが困難であった場合でも、該波面収差の影響を十分に低減して被検レンズ15の屈折率分布を高精度に得ることができる。
【実施例2】
【0041】
図5には、本発明の実施例2である2波長法による屈折率分布測定方法を用いる屈折率分布測定装置の構成を示している。
【0042】
照明光学系Lは、レーザ等の光源1と、ビームスプリッタBSと、波長計測器20と、開口が十分に小さいピンホール2と、集光レンズ3とにより構成され、収束球面波としての光(参照光)を後述する被検レンズ15に向けて射出する。本実施例で用いる光源1は、互いに異なる波長を有する2種類の光を適宜出力することができる。該2種類の光のうち第1の光の波長(第1の波長)をλ1とし、第2の光の波長(第2の波長)をλ2とする。また、RAは、照明光学系Lの光軸である。
【0043】
ビームスプリッタBSは、光源1から射出した光の一部を分割(反射)して波長計測器20に入射させる。波長計測器20は、分光器や光スペクトルアナライザ等により構成され、ビームスプリッタBSから入射した光の波長をモニタする。
【0044】
照明光学系Lの射出側(下流側)における光軸RA上に配置された液槽5は、照明光学系Lに近い側に配置された前側窓ガラス16と、照明光学系Lから遠い側に配置された後側窓ガラス17とを有する。前側窓ガラス16と後側窓ガラス17のそれぞれの厚みと波長ごとの屈折率は既知であり、また前側窓ガラス16と後側窓ガラス17との間の間隔も既知である。
【0045】
液槽5中には、波長ごとの屈折率が既知である媒質18が満たされる。そして、液漕5(媒質18)内における光軸RA上には、被検レンズ15が配置される。本実施例は、被検レンズ15として正の光学パワーを有するレンズを用いる場合について説明し、該被検レンズ15を照明光学系Lの像点よりも下流に配置する。なお、被検レンズとして負の光学パワーを有するレンズを用いることもでき、この場合は、照明光学系Lの像点より上流に被検レンズを配置する。被検光学素子として、レンズ以外の光学素子を用いてもよい。
【0046】
液槽5よりも下流における光軸RA上には、被検レンズ15を透過した光の波面(透過波面)を計測するための波面検出部Sが配置されている。本実施例では、波面検出部Sとして、回折格子7と検出器9とにより構成されるトールボット干渉計を用いる。ただし、トールボット干渉計に代えて、シャックハルトマンセンサ等の波面センサを用いてもよい。
【0047】
回折格子7としては、透過型回折格子であって、互いに直交する2方向にて既知の周期を有する正方格子が用いられる。回折格子7は、厚みと波長ごとの屈折率が既知である基板ガラス13上に形成されている。また、検出器9としては、CCDセンサ等の撮像素子が用いられる。検出器9は、回折格子7から射出した回折光同士の干渉による発生する干渉縞を撮影する。検出器9の入射面側には、厚みと波長ごとの屈折率が既知であるカバーガラス14が配置されている。
【0048】
液槽5、回折格子7および検出器9はそれぞれ、液漕駆動部6、回折格子駆動部8および検出器駆動部10を備えており、光軸RAに平行に設置されたレール11上を互いに独立に移動することができる。
【0049】
演算部12は、コンピュータプログラムとしての屈折率分布測定プログラムによって動作するパーソナルコンピュータにより構成されており、検出器9にて撮影された干渉縞から波面を計測する。具体的には、媒質18中に配置された被検レンズ15を透過した第1の光(波長λ1)の干渉縞から波面計測値としての透過波面Wλ1を計算し、該被検レンズ15を透過した第2の光(波長λ2)の干渉縞から波面計測値としての透過波面Wλ2を計算する。また、演算部12は、内部メモリを備えており、該内部メモリに、予め測定した、波長λ1,λ2のそれぞれに対する照明光学系Lの波面収差Wλ1i,Wλ2iのデータを格納している。演算部12は、透過波面Wλ1,Wλ2を用いて照明光学系Lの波面収差λ1i,Wλ2iの影響を補正、すなわち低減(除去を含む)した被検レンズ15の屈折率分布を計算する。
【0050】
さらに、演算部12は、光軸RA上に配置された上記素子の設計情報から、波面計測に適した該素子の配置を計算することができ、該計算した配置の情報(以下、配置情報という)に基づいて各駆動部6,8,10を駆動する。例えば、回折格子7と検出器9との間の間隔を、波長ごとにトールボット条件を満足するように調整する。
【0051】
Rは照明光学系Lの射出瞳の半径を示す。また、rλ1は媒質18中に配置された被検レンズ15における照明光学系Lからの第1の光(光線)の透過領域に対応する照明光学系Lにおける当該光線の透過領域(第1の光線透過領域)の半径を示す。rλ2は媒質18中に配置された被検レンズ15における照明光学系Lからの第2の光(光線)の透過領域に対応する照明光学系Lにおける当該光線の透過領域(第2の光線透過領域)の半径を示す。
【0052】
次に、本実施例において、照明光学系Lの波面収差Wλ1i,Wλ2iの影響を補正しつつ被検レンズ15の屈折率分布を求める処理(2波長法による屈折率分布測定方法)を、図6のフローチャートに従って説明する。該処理は、演算部12が上述した屈折率分布測定プログラムを実行することで行われる。
【0053】
まずステップ201では、第1の光(波長λ1)を用いて照明光学系Lの波面収差Wλ1i(R,θ)を計測し、さらに第2の光(波長λ2)を用いて照明光学系Lの波面収差Wλ2i(R,θ)を計測する。θは偏角を表す。波面収差Wλ1i(R,θ),Wλ2i(R,θ)は、例えば図7に示すように、液槽5を光軸RA上から除去した状態で波面検出部Sにて計測される。ただし、これに限らず、波面収差Wλ1i(R,θ),Wλ2i(R,θ)を、照明光学系Lと液槽5との間の光軸RA上に別途波面センサを挿入して計測してもよい。また、ピンホール2の射出波面が理想球面であることを確認した後、集光レンズ3を別の波面測定器に移設して第1の光(波長λ1)と第2の光(波長λ2)を用いて測定した透過波面の測定値をそれぞれ、Wλ1i(R,θ),Wλ2i(R,θ)としてもよい。
【0054】
次にステップ202では、波面収差Wλ1i(R,θ),Wλ2i(R,θ)のそれぞれを多項式により近似して波面収差近似関数Wλ1i(r,θ),Wλ2i(r,θ)を求める。このときに用いる近似多項式として、例えば、ゼルニケ多項式がある。簡易的に実施する場合、近似多項式は、照明光学系Lの瞳に対して回転対称な関数でもよい。波面収差Wλ1i(R,θ),Wλ2i(R,θ)の経時変化が少なければ、一度求めた関数Wλ1i(r,θ),Wλ2i(r,θ)を常に用いてもかまわない。この場合、2回目以降の測定からはステップ201とステップ202を省略することができる。
【0055】
次にステップ301では、媒質18中に配置した被検レンズ15を透過した第1の光(波長λ1)の波面を計測して透過波面Wλ1を取得する。透過波面Wλ1は、例えば、得られた干渉縞に対して、演算部12でフーリエ変換位相回復法と、位相アンラップと、差分波面の積分処理とを行って求める。
【0056】
次にステップ302では、媒質18中に配置した被検レンズ15を透過した第2の光(波長λ2)光の波面を計測して透過波面Wλ2を取得する。透過波面Wλ2も、得られた干渉縞に対して、上述した透過波面Wλ1と同様の処理を行って求める。
【0057】
続いてステップ303では、光軸RA上の各素子の配置情報から、光線追跡シミュレーションによって、第1および第2の光の光ごと(波長ごと)に被検レンズ15の光線透過領域に対応する照明光学系の光線透過領域の半径rλ1,rλ2を計算する。
【0058】
さらにステップ304では、波面収差近似関数Wλ1i(r,θ)に半径rλ1を代入し、波面収差近似関数Wλ2i(r,θ)に半径rλ2を代入する。これにより、波長ごとに異なる光線透過領域に対応する照明光学系Lの波面収差近似関数Wλ1i(rλ1,θ),Wλ2i(rλ2,θ)を計算する。なお、波面収差近似関数Wλ1i(rλ1,θ),Wλ2i(rλ2,θ)を計算することは、第1および第2の波長に対する照明光学系Lの波面収差の計算値である第1の波面収差および第2の波面収差を取得(計算)することに相当する。
【0059】
次にステップ305では、上記配置情報から、光線追跡シミュレーションによって、透過波面Wλ1,Wλ2および波面収差近似関数Wλ1i(rλ1,θ),Wλ2i(rλ2,θ)のそれぞれの座標軸を被検レンズ15の瞳座標に変換する。
【0060】
次にステップ306では、以下の式(3)で示すように、波長ごとの透過波面Wλ1,Wλ2からWλ1i(rλ1,θ),Wλ2i(rλ2,θ)をそれぞれ減算する。これにより、照明光学系Lの収差の影響が補正された透過波面(第1の補正波面および第2の補正波面:以下、まとめて補正透過波面という)Wλ1′,Wλ2′を算出する。
【0061】
【数3】

【0062】
次にステップ307では、補正透過波面Wλ1′,Wλ2′を用いて、以下の式(4)に示す2波長法での計算式に従って、被検レンズ15の波長λ1に対する屈折率分布GI(λ1)を求める。式(4)において、N(λ1),N(λ2)はそれぞれ被検レンズ15の波長λ1,λ2に対する屈折率であり、n(λ1),n(λ2)はそれぞれ媒質18の波長λ1,λ2に対する屈折率である。Dは被検レンズ15の光線透過方向での幾何学的厚みを示す。
【0063】
【数4】

【0064】
本実施例によれば、照明光学系Lの射出NA(開口数)が大きく、従来であれば照明光学系Lの波面収差の影響を低減することが困難であった場合でも、該波面収差の影響を十分に低減して被検レンズ15の屈折率分布を高精度に得ることができる。
【実施例3】
【0065】
実施例1および実施例2にて説明した屈折率分布測定装置(屈折率分布測定方法)によって測定された結果を、レンズ等の光学素子の製造方法にフィードバックすることも可能である。図8には、モールド成形を利用した光学素子の製造方法の例を示している。
【0066】
図8において、ステップS400は光学素子を設計するステップであり、設計者が光学設計ソフト等を用いて光学素子を設計する。
【0067】
ステップS410は、ステップS400で設計された光学素子に基づいて、光学素子をモールド成形するための金型を設計・加工するステップである。
【0068】
ステップS420は、ステップS410で加工された金型を用いて、光学素子をモールド成形するステップである。
【0069】
ステップS430は、ステップS420で成形された光学素子の形状を計測し、その精度を評価するステップである。ステップS430にて評価された形状が、要求する精度を満足しなかった場合、ステップS440にて金型の鏡面の補正量が算出され、ステップS410で再度金型を加工する。
【0070】
ステップS450は、ステップS430で所望の形状精度を満足していた光学素子の光学性能を評価するステップである。ステップS450では、実施例1および実施例2のそれぞれで図3および図6を用いて説明した屈折率分布測定方法を実行し、その結果を用いて光学素子の光学性能を評価する。ステップS450にて評価された光学性能が、要求する仕様に達しなかった場合は、ステップS460にて光学面の補正量が算出され、その結果を用いてステップS400で再度、光学素子を設計する。
【0071】
ステップS470は、ステップS450で所望の光学性能を実現できた光学素子の製造条件で、光学素子を量産するステップである。
【0072】
本実施例の光学素子の製造方法により、光学素子の屈折率分布を高精度に計測することができるので、高屈折率硝材を用いた光学素子であっても、モールド成形で精度良く量産することが可能になる。
【0073】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
レンズ等の被検光学素子の屈折率分布を高精度に測定する測定方法および測定装置を提供できる。
【符号の説明】
【0075】
15 被検レンズ
18 第1の媒質
19 第2の媒質
L 照明光学系
r1,r2,rλ1,rλ2 照明光学系における光線透過領域の半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光学系から射出された光を被検光学素子の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する第1の媒質中に配置された前記被検光学素子に入射させ、該被検光学素子を透過した前記光の波面の計測値である第1の波面計測値を得るステップと、
前記照明光学系から射出された前記光を前記被検光学素子の屈折率および前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の媒質中に配置された前記被検光学素子に入射させ、該被検光学素子を透過した前記光の波面の計測値である第2の波面計測値を得るステップと、
前記第1の媒質中に配置された前記被検光学素子における前記光の透過領域に対応する前記照明光学系における前記光の透過領域である第1の光線透過領域を計算するステップと、
前記第2の媒質中に配置された前記被検光学素子における前記光の透過領域に対応する前記照明光学系における前記光の透過領域である第2の光線透過領域を計算するステップと、
前記第1の光線透過領域に対応する前記照明光学系の波面収差の計算値である第1の波面収差を計算するステップと、
前記第2の光線透過領域に対応する前記照明光学系の波面収差の計算値である第2の波面収差を計算するステップと、
前記第1の波面計測値を前記第1の波面収差を用いて補正して第1の補正波面を求めるステップと、
前記第2の波面計測値を前記第2の波面収差を用いて補正して第2の補正波面を求めるステップと、
前記第1および第2の補正波面を用いて、前記被検光学素子の屈折率分布を計算するステップとを有することを特徴とする屈折率分布測定方法。
【請求項2】
照明光学系から射出された第1の波長を有する第1の光を被検光学素子の屈折率とは異なる屈折率を有する媒質中に配置された前記被検光学素子に入射させ、該被検光学素子を透過した前記第1の光の波面の計測値である第1の波面計測値を得るステップと、
前記照明光学系から射出された前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2の光を前記媒質中に配置された前記被検光学素子に入射させ、該被検光学素子を透過した前記第2の光の波面の計測値である第2の波面計測値を得るステップと、
前記媒質中に配置された前記被検光学素子における前記第1の光の透過領域に対応する前記照明光学系における前記第1の光の透過領域である第1の光線透過領域を計算するステップと、
前記媒質中に配置された前記被検光学素子における前記第2の光の透過領域に対応する前記照明光学系における前記第2の光の透過領域である第2の光線透過領域を計算するステップと、
前記第1の波長に対する前記第1の光線透過領域に対応する前記照明光学系の波面収差の計算値である第1の波面収差を計算するステップと、
前記第2の波長に対する前記第2の光線透過領域に対応する前記照明光学系の波面収差の計算値である第2の波面収差を計算するステップと、
前記第1の波面計測値を前記第1の波面収差を用いて補正して第1の補正波面を求めるステップと、
前記第2の波面計測値を前記第2の波面収差を用いて補正して第2の補正波面を求めるステップと、
前記第1および第2の補正波面を用いて、前記被検光学素子の屈折率分布を計算するステップとを有することを特徴とする屈折率分布測定方法。
【請求項3】
光学素子をモールド成形する成形ステップと、
前記光学素子を評価する評価ステップとを有し、
前記評価ステップにおいて、請求項1又は2に記載の屈折率分布測定方法を用いて前記光学素子の屈折率分布を測定することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項4】
被検光学素子に向けて光を射出する照明光学系と、
前記被検光学素子を透過した光の波面を計測するための検出部と、
演算部とを有し、
前記演算部は、
前記照明光学系からの前記光を前記被検光学素子の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する第1の媒質中に配置された前記被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した前記光の波面の計測値である第1の波面計測値を、前記検出器を用いて取得し、
前記照明光学系から射出された前記光を前記被検光学素子の屈折率および前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の媒質中に配置された前記被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した前記光の波面の計測値である第2の波面計測値を、前記検出器を用いて取得し、
前記第1の媒質中に配置された前記被検光学素子における前記光の透過領域に対応する前記照明光学系における前記光の透過領域である第1の光線透過領域を計算し、
前記第2の媒質中に配置された前記被検光学素子における前記光の透過領域に対応する前記照明光学系における前記光の透過領域である第2の光線透過領域を計算し、
前記第1の光線透過領域に対応する前記照明光学系の波面収差の計算値である第1の波面収差を計算し、
前記第2の光線透過領域に対応する前記照明光学系の波面収差の計算値である第2の波面収差を計算し、
前記第1の波面計測値を前記第1の波面収差を用いて補正して第1の補正波面を求め、
前記第2の波面計測値を前記第2の波面収差を用いて補正して第2の補正波面を求め、
前記第1および第2の補正波面を用いて、前記被検光学素子の屈折率分布を計算することを特徴とする屈折率分布測定装置。
【請求項5】
被検光学素子に向けて光を射出する照明光学系と、
前記被検光学素子を透過した光の波面を計測するための検出部と、
演算部とを有し、
前記演算部は、
前記照明光学系から射出された第1の波長を有する第1の光を被検光学素子の屈折率とは異なる屈折率を有する媒質中に配置された前記被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した前記第1の光の波面の計測値である第1の波面計測値を、前記検出器を用いて取得し、
前記照明光学系から射出された前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2の光を前記媒質中に配置された前記被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した前記第2の光の波面の計測値である第2の波面計測値を、前記検出器を用いて取得し、
前記媒質中に配置された前記被検光学素子における前記第1の光の透過領域に対応する前記照明光学系における前記第1の光の透過領域である第1の光線透過領域を計算し、
前記媒質中に配置された前記被検光学素子における前記第2の光の透過領域に対応する前記照明光学系における前記第2の光の透過領域である第2の光線透過領域を計算し、
前記第1の波長に対する前記第1の光線透過領域に対応する前記照明光学系の波面収差の計算値である第1の波面収差を計算し、
前記第2の波長に対する前記第2の光線透過領域に対応する前記照明光学系の波面収差の計算値である第2の波面収差を計算し、
前記第1の波面計測値を前記第1の波面収差を用いて補正して第1の補正波面を求め、
前記第2の波面計測値を前記第2の波面収差を用いて補正して第2の補正波面を求め、
前記第1および第2の補正波面を用いて、前記被検光学素子の屈折率分布を計算することを特徴とする屈折率分布測定装置。
【請求項6】
コンピュータに、
照明光学系から射出された光を被検光学素子の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する第1の媒質中に配置された前記被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した前記光の波面の計測値である第1の波面計測値を取得するステップと、
前記照明光学系から射出された前記光を前記被検光学素子の屈折率および前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の媒質中に配置された前記被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した前記光の波面の計測値である第2の波面計測値を取得するステップと、
前記第1の媒質中に配置された前記被検光学素子における前記光の透過領域に対応する前記照明光学系における前記光の透過領域である第1の光線透過領域を計算するステップと、
前記第2の媒質中に配置された前記被検光学素子における前記光の透過領域に対応する前記照明光学系における前記光の透過領域である第2の光線透過領域を計算するステップと、
前記第1の光線透過領域に対応する前記照明光学系の波面収差の計算値である第1の波面収差を計算するステップと、
前記第2の光線透過領域に対応する前記照明光学系の波面収差の計算値である第2の波面収差を計算するステップと、
前記第1の波面計測値を前記第1の波面収差を用いて補正して第1の補正波面を求めるステップと、
前記第2の波面計測値を前記第2の波面収差を用いて補正して第2の補正波面を求めるステップと、
前記第1および第2の補正波面を用いて、前記被検光学素子の屈折率分布を計算するステップとを含む処理を実行させるコンピュータプログラムであることを特徴とする屈折率分布測定プログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
照明光学系から射出された第1の波長を有する第1の光を被検光学素子の屈折率とは異なる屈折率を有する媒質中に配置された前記被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した前記第1の光の波面の計測値である第1の波面計測値を取得するステップと、
前記照明光学系から射出された前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2の光を前記媒質中に配置された前記被検光学素子に入射させたときの該被検光学素子を透過した前記第2の光の波面の計測値である第2の波面計測値を取得するステップと、
前記媒質中に配置された前記被検光学素子における前記第1の光の透過領域に対応する前記照明光学系における前記第1の光の透過領域である第1の光線透過領域を計算するステップと、
前記媒質中に配置された前記被検光学素子における前記第2の光の透過領域に対応する前記照明光学系における前記第2の光の透過領域である第2の光線透過領域を計算するステップと、
前記第1の波長に対する前記第1の光線透過領域に対応する前記照明光学系の波面収差の計算値である第1の波面収差を計算するステップと、
前記第2の波長に対する前記第2の光線透過領域に対応する前記照明光学系の波面収差の計算値である第2の波面収差を計算するステップと、
前記第1の波面計測値を前記第1の波面収差を用いて補正して第1の補正波面を求めるステップと、
前記第2の波面計測値を前記第2の波面収差を用いて補正して第2の補正波面を求めるステップと、
前記第1および第2の補正波面を用いて、前記被検光学素子の屈折率分布を計算するステップとを含む処理を実行させるコンピュータプログラムであることを特徴とする屈折率分布測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−108932(P2013−108932A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256077(P2011−256077)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】