説明

屋根における支持部材の固定方法及び固定構造

【課題】屋根に形成された防水層を痛めることなく容易に施工することができる屋根における支持部材の固定方法及び固定構造を提供することを課題とする。
【解決手段】屋根Rの表面Raに支持部材11を固定する支持部材の固定方法であって、屋根Rの表面Raに支持部材11のフランジ部11aを当接して配置する配置工程と、フランジ部11aの表面11aとフランジ部11aの周囲における屋根Rの表面Raとに接着剤を塗布しつつ、繊維シート14をフランジ部11aの表面11a及び屋根Rの表面Raに亘って敷設して繊維シート14に接着剤を含浸させる固定工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根における支持部材の固定方法及び固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、傾斜した屋根にソーラーパネルを固定するソーラーパネルの固定構造が記載されている。このソーラーパネルの固定構造は、屋根に固定された枠状の架台と、この架台の上に取り付けられたソーラーパネルとで構成されている。架台は、金属製のチャンネル部材を枠状に組んで形成されている。チャンネル部材のフランジ部と屋根の表面とはアンカーで固定されている。
【0003】
一方、陸屋根にソーラーパネルを固定する場合のソーラーパネルの固定構造は、屋根の表面に形成された基礎と、基礎に固定された架台と、架台に取り付けられたソーラーパネルとで構成される。ソーラーパネルを陸屋根に固定する場合、屋根に対してソーラーパネルを傾斜させる必要があるため、屋根とソーラーパネルとの間に発生する風荷重が大きくなる。この荷重に耐えるために、屋根と架台との間に、コンクリートや形鋼等で構成された基礎を形成することが一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−91811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のソーラーパネルの固定構造では、屋根に複数のアンカーを打ち込まなければならず、施工手間がかかるという問題があった。また、屋根にアンカーを打ち込むため、屋根に形成された防水層を痛めるおそれがある。一方、陸屋根にソーラーパネルを固定する場合、基礎を形成するための施工手間やコストが増大するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、屋根に形成された防水層を痛めることなく容易に施工することができる屋根における支持部材の固定方法及び固定構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明は、屋根の表面に支持部材を固定する支持部材の固定方法であって、前記屋根の表面に前記支持部材のフランジ部を当接して配置する配置工程と、前記フランジ部の表面と、前記フランジ部の周囲における前記屋根の表面とに接着剤を塗布しつつ、繊維シートを前記フランジ部の表面及び前記屋根の表面に亘って敷設して前記繊維シートに前記接着剤を含浸させる固定工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
かかる方法によれば、繊維シートに接着剤を含浸させることにより、屋根に支持部材を強固に固定することができる。また、従来のようにアンカーを打ち込む必要が無いため、屋根の防水層を痛めることがない。また、接着剤を塗布しつつ繊維シートを敷設するだけであるため、容易に施工することができる。また、繊維シートによれば軽量化を図ることができる。なお、支持部材とは、屋根に固定する物を支持する部材又は支持する構造物の一部の部材を意味する。
【0009】
また、前記繊維シートは、アラミド繊維で構成されていることが好ましい。アラミド繊維によれば、非導電性であるため、錆びることがなく、落雷の可能性も小さい。
【0010】
また、本発明は、屋根における支持部材の固定構造であって、前記支持部材のフランジ部の表面及び前記屋根の表面に亘って敷設された繊維シートを有し、前記繊維シートに接着剤が含浸されることにより前記屋根に前記支持部材が固定されていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、繊維シートに接着剤を含浸させることにより、屋根に支持部材を強固に固定することができる。また、従来のようにアンカーを打ち込む必要が無いため、屋根の防水層を痛めることがない。また、接着剤を塗布しつつ繊維シートを敷設するだけであるため、容易に施工することができる。また、繊維シートによれば軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の屋根における支持部材の固定方法及び固定構造によれば、屋根の防水層を痛めることなく容易に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る支持部材の固定構造を示した斜視図である。
【図2】本実施形態に係る架台を示した斜視図である。
【図3】変形例1を示した斜視図である。
【図4】変形例2を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態では「支持部材」が、ソーラーパネルSを固定する架台2の支柱11である場合を例示する。まずは、図1に示すように、ソーラーパネルの固定構造の全体構成について説明する。説明における前後左右上下は図1の矢印に従う。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るソーラーパネルの固定構造は、ソーラーパネルSを支持する架台2と、屋根Rに架台2を固定する固定部3とで主に構成されている。屋根Rの形態は特に限定されないが、ここではソーラーパネルを陸屋根に固定する場合を例示する。
【0016】
架台2は、図2に示すように、間をあけて配置された複数の支柱11と、左右方向に延設された一対の横材12と、前後方向に延設された複数の縦材13とで主に構成されている。架台2は、複数のソーラーパネルSを固定するための構造物である。ソーラーパネルSは、図1に示すように、架台2の左右方向に複数枚並設される。架台2は、ソーラーパネルSの表面が太陽に対向するように傾斜して形成されている。
【0017】
支柱11は、屋根Rの表面Raに接触するフランジ部11aと、フランジ部11aに立設された柱部11bと、アンカー11cとを有する。フランジ部11aは平面視矩形の板状部材である。柱部11bは、フランジ部11aの中央に立設された中空の角柱である。フランジ11部a及び柱部11bは金属製であって一体形成されている。柱部11bの上端にはアンカー11cが立設されている。
【0018】
図2に示すように、前側に並設された複数の支柱11と、後側に並設された複数の支柱11は、基本的な構成は同じであるが、前側に並設された支柱11よりも後側に並設された支柱11の方が高くなっている。
【0019】
横材12は、左右方向に延設されており、前側と後側に一対設けられている。前側の横材12は、前側に並設された支柱11に架設されており、後側の横材12は、後側に並設された支柱11に架設されている。横材12は、支柱11のアンカー11cにボルトで接合されている。横材12は、金属製の角パイプを用いている。
【0020】
縦材13は、前側の横材12と、後側の横材12に架設された部材であって、屋根Rの前後方向に延設されている。縦材13は、一のソーラーパネルSに対して2本ずつ配設される。図2では、3本の縦材13を描画している。縦材13は、本実施形態では金属製のチャンネル材を用いている。また、本実施形態では、横材12の上面と縦材13の側面とをL型金具13aを介して接合している。縦材13の上面には、ソーラーパネルSを取り付けるための複数の孔13bが形成されている。
【0021】
なお、本実施形態では、L型金具13aを介して横材12と縦材13を接合しているが、これに限定されるものではない。例えば、横材12に対して縦材13の傾斜角度を調節可能な接合部材を介して接合してもよい。また、横材12と縦材13とを溶接してもよい。
【0022】
固定部3は、図1に示すように、繊維シート14と繊維シート14に含浸された接着剤及びプライマーとで構成されている。固定部3は、繊維シート14の繊維間に接着剤が含浸されることにより、屋根Rと支柱11とを強固に固定する部位である。固定部3は、フランジ部11aの表面11aと、表面11aの周囲における屋根Rの表面Raに亘って形成されている。固定部3は、一の支柱11に対して左右方向に一対形成されている。
【0023】
繊維シート14は、例えば、東レ・デュポン(株)製のパラ系アラミド繊維〔商標名「ケブラー(R) 」(「ケブラー(R) 」はデュポン社の登録商標である。)、引張強度2.8kN/mm、引張弾性率107.8kN/mm〕をシート状に構成したものを用いる。繊維シート14は、例えば、炭素繊維シート、ガラス繊維シート、もしくは他の有機繊維シートであってもよい。繊維シート14は、アラミド繊維のように非導電性有機繊維シートを採用することが好ましい。
【0024】
プライマーは、例えば、住友ゴム工業(株)製の常温硬化型エポキシ樹脂「グリップボンドGB15」を用いる。プライマーは必要に応じて適宜用いればよい。また、接着剤は、例えば、住友ゴム工業(株)製の常温硬化型エポキシ樹脂「グリップボンドGB−35W」を用いる。接着剤は、エポキシ系接着剤から適宜選択すればよい。
【0025】
図1に示すように、本実施形態では、特許請求の範囲における「支持部材の固定構造(1)」は、支柱11と、固定部3とで構成された部分に相当する。
【0026】
次に、本実施形態のソーラーパネルの固定方法について説明する。本実施形態のソーラーパネルの固定方法では、配置工程と、固定工程を行う。
【0027】
配置工程では、図2に示すように、屋根Rの表面Raに架台2を構築する。具体的には、支柱11のフランジ部11aを屋根Rの表面Raに当接配置した後、横材12及び縦材13を接合する。
【0028】
固定工程では、支柱11のフランジ部11aの表面11aと、表面11aの周囲における屋根Rの表面Raにプライマー及び接着剤を塗布しつつ、繊維シート14を敷設して繊維シート14に接着剤を含浸させる。この際、繊維シート14の全体に接着剤が行き渡るようにすることが好ましい。また、本実施形態では、一の支柱11に対して2枚の繊維シート14を敷設して、接着剤が硬化するまで静置する。接着剤が硬化したら、縦材13の孔13bを介してソーラーパネルSを固定する。
【0029】
なお、架台2は、現場で構築してもよいし、予め別の場所で構築したものを屋根Rに配置してもよい。また、本実施形態では、プライマー及び接着剤を塗布した後に、繊維シート14を敷設したが、繊維シート14を敷設した後に、接着剤等を塗布してもよい。
【0030】
以上説明した本実施形態に係る支持部材の固定構造1及び固定方法によれば、繊維シート14に接着剤を含浸させることにより、屋根Rに支柱(支持部材)11を強固に固定することができる。また、従来のように屋根Rにアンカーを打ち込む必要が無いため、屋根Rの防水層を痛めることがない。また、接着剤を塗布しつつ繊維シート14を敷設するだけであるため、容易に施工することができる。また、本実施形態によれば、従来のように基礎を構築する必要がないため軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0031】
また、繊維シート14に導電性の低いアラミド繊維を用いることで、支柱11の錆びや腐食を防止できるとともに、落雷の可能性も小さい。また、アラミド繊維によれば、裁断しやすく、しなやかな材料であるため、施工性がよい。
【0032】
[変形例1]
次に、本発明の変形例1について説明する。図3に示すように、変形例1では、支柱21が高さ調整機能を備えている点と、支柱21に対して一枚の繊維シート14を敷設している点で前記した実施形態と相違する。
【0033】
支柱21は、フランジ部21aと、フランジ部21aに立設する下部柱部21bと、下部柱部21bに対して摺動可能に嵌合された上部柱部21cと、固定手段21dとで主に構成されている。下部柱部21bは、中空部を備えた金属製の角柱である。下部柱部21bの側面には、前後方向に貫通する1つの貫通孔22が形成されている。
【0034】
上部柱部21cは、中空部を備えた角柱であって、下部柱部21bよりも一回り大きく形成されている。上部柱部21cは、下部柱部21bに対して上下に摺動可能になっている。上部柱部21cには、前後方向に貫通する3つの貫通孔23が形成されている。
【0035】
固定手段21dは、ボルト21dとナット(図示省略)で構成されている。ボルト21dは連通した貫通孔22,23に挿通されている。貫通孔22に対する貫通孔23の連通位置を適宜調節しつつ、ボルト21d及びナットで締結することにより、支柱(支持部材)21の高さ調節を行うことができる。また、前記したように、横材12に対して縦材13の角度を調節可能な接合部材を用いるとともに、変形例1の支柱21を用いれば、ソーラーパネルSの角度調節を容易に行うことができる。これにより、ソーラーパネルSのメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0036】
また、変形例1では、支柱21の断面形状に合わせて切り欠かれた切欠き部14aを備えた繊維シート14Aを用いている。繊維シート14は、架台2を構築する前に、下部柱部21b及び上部柱部21cに予め挿通させておくことが好ましい。前記した固定工程において、フランジ部21aの表面21aと、表面21aとの周囲の屋根Rの表面Raに接着剤を塗布しつつ、繊維シート14Aを敷設すれば、屋根Rと支柱21とをより強固に接合できるとともに、支柱21の周囲を均一に接合することができる。
【0037】
[変形例2]
次に、変形例2について説明する。図4に示すように、変形例2では、屋根Rが傾斜している点、ソーラーパネルSを縦材31のみで支持している点で前記した実施形態と相違する。変形例2では、縦材31が「支持部材」に相当する。
【0038】
変形例2のように、例えば、切り妻屋根、寄棟屋根等の傾斜した屋根RにソーラーパネルSを固定する場合は、前記した実施形態のように傾斜した架台2を構築する必要が無い。このような場合には、例えば、縦材31を前後方向に複数本配設し、その上にソーラーパネルSを固定すればよい。
【0039】
変形例2に示す支持部材の固定構造は、屋根Rに配置された縦材31と、屋根Rと縦材31とを固定する固定部3Bとで構成されている。縦材31は、断面ハット型のチャンネル部材であって、断面コの字状を呈する本体部31aと、本体部31aの左右両側に張り出したフランジ31b,31bとを備えている。本体部31aの上面には、ソーラーパネルSを取り付けるための複数の孔31cが形成されている。
【0040】
固定部3Bは、縦材31のフランジ31bの表面31bと、表面31bの周囲に亘って敷設された繊維シート14と繊維シート14の全体に含浸された接着剤とで構成されている。固定部3Bは、縦材31の左右両側において、フランジ31bの長手方向全体と屋根Rとに亘って敷設されている。
【0041】
変形例2によれば、前記した実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、傾斜する屋根RにソーラーパネルSを固定する場合に採用することができる。
【0042】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した構成に限定されるものではなく本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では、屋根に固定する被固定物としてソーラーパネルを例示して、支持部材又は支持部材を含んだ架台にソーラーパネルを固定する場合を例示したが、他の被固定物を支持する場合に本発明を採用してもよい。また、本実施形態では、支持部材として柱状部材やチャンネル材を採用したが、フランジ部を備えた部材であれば他の形態であってもよいし、樹脂製、木製であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 支持部材の固定構造
2 架台
3 固定部
11 支柱(支持部材)
11a フランジ部
11a表面
11b 柱部
11c アンカー
12 横材
13 縦材
14 繊維シート
21 支柱(支持部材)
31 縦材(支持部材)
R 屋根
Ra 表面
S ソーラーパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の表面に支持部材を固定する支持部材の固定方法であって、
前記屋根の表面に前記支持部材のフランジ部を当接して配置する配置工程と、
前記フランジ部の表面と、前記フランジ部の周囲における前記屋根の表面とに接着剤を塗布しつつ、繊維シートを前記フランジ部の表面及び前記屋根の表面に亘って敷設して前記繊維シートに前記接着剤を含浸させる固定工程と、を含むことを特徴とする屋根における支持部材の固定方法。
【請求項2】
前記繊維シートは、アラミド繊維で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根における支持部材の固定方法。
【請求項3】
屋根における支持部材の固定構造であって、
前記支持部材のフランジ部の表面及び前記屋根の表面に亘って敷設された繊維シートを有し、前記繊維シートに接着剤が含浸されることにより前記屋根に前記支持部材が固定されていることを特徴とする屋根における支持部材の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104241(P2013−104241A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249453(P2011−249453)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(390002185)大成ロテック株式会社 (90)
【Fターム(参考)】