説明

屋根上断熱構造及びそのためのシート状物敷設方法

【課題】簡単に既存建物の屋根に適用可能な断熱構造を提供する。
【解決手段】太陽光を遮光する遮光樹脂材に赤外線反射コートを施して形成した遮光シート21と、該遮光シート裏面に複数形成したポケット22に収納される断熱樹脂材23と、を含んで構成される遮光断熱体20を屋根上に敷設した、屋根上断熱構造を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
畜舎や鶏舎などの建物における室内環境調節に関する技術が以下に開示される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、畜舎や鶏舎といった建物にあっては、特に夏の太陽熱による室内の温度上昇を抑えることが重要で、このために特許文献1の断熱保温装置は、天井裏を断熱用充填材の収容室に形成することで、屋根に照りつける太陽光に対し断熱を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭53−130175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1などの先行技術では、上記のように特殊な屋根構造とすることで太陽熱対策を図っている。しかし、その特殊な構造を既存の建物へ適用するには大規模な改造工事が必要になることが明白で、費用や工事期間に鑑みると既存建物での採用は難しいと予想される。この点を考慮すると、簡単に既存建物の屋根に適用可能な断熱構造があるとよい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
当課題を解決するために提案するのは、太陽光を遮光する遮光樹脂材に赤外線反射コートを施して形成した遮光シートと、該遮光シート裏面に複数形成したポケットに収納される断熱樹脂材と、を含んで構成される遮光断熱体を屋根上に敷設した、屋根上断熱構造である。
さらに、このような屋根上断熱構造の施工方法として、多数の縦桟と横桟を有する格子状の樹脂ネットを屋根の上面に固定し、シート状物に設けた把持部材で前記樹脂ネットの縦桟又は横桟を把持することにより、前記シート状物を前記屋根へ敷設する、シート状物敷設方法を提案する。
【発明の効果】
【0006】
上記提案に係る屋根上断熱構造によれば、屋根上に遮光断熱体を敷設することで断熱構造を得るので、既存建物の屋根を改造する必要がない。すなわち、遮光断熱体を屋根に取り付けるだけの簡単な工事で、既存建物の屋根に断熱構造を提供することができる。そして、上記提案に係るシート状物敷設方法によれば、屋根に固定した樹脂ネットを把持部材に把持させるという簡単な作業で、既存建物の屋根にシート状物を取り付けることができ、屋根上断熱構造の施工作業の簡素化に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】屋根上断熱構造の概要を示した図。
【図2】シート状物敷設方法で使用する樹脂ネットと把持部材を示した図。
【図3】遮光断熱体の実施形態を示した正面図。
【図4】遮光断熱体の実施形態を示した背面図。
【図5】実施形態に係る遮光断熱体を2枚連結した状態で示した図。
【図6】敷設した遮光断熱体の縁部を拡大して示した図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る屋根上断熱構造の実施形態について、まず概略を図1に示す。図示のように、例えば鶏舎である建物1の屋根上に遮光断熱機能を有するシート状物2を敷設した構造である。太陽光が屋根に届かなくなり、太陽光の直射が防止されるので、太陽熱による建物1の室内温度上昇が抑制される。
【0009】
シート状物2は、屋根全域を1枚で覆うものであってもよいし、複数枚を繋ぎ合わせて敷設するものであってもよい。複数枚のシート状物2を繋ぎ合わせる場合、その繋ぎ目は水上から水下へ(つまり屋根の勾配方向=水の流れの方向へ)沿わせ、雨水がスムーズに排水されるようにしておくとよい。また、本実施形態のシート状物2は、その縁部2aを延長して建物1の軒下へ回り込ませてあり、その回り込ませた端を軒下に固定して、軒下に回り込ませた縁部2aの内側に収納空間を形成している。この収納空間には、カーテン部材3を収納しておくことができる。このカーテン部材3の縁部は、シート状物2の縁部2aに固着させてあり、縁部2aの軒下固定を解くことで、カーテン部材3を軒から垂れ下げて建物1の側方を覆うことができるようになっている。
【0010】
図2に、シート状物2の敷設方法に関して示してある。
まず、図2Aに示すように、シート状物2を取り付けるために使用する樹脂ネット10を屋根の上面に固定する。樹脂ネット10は、例えば低密度ポリエチレン製で、多数の縦桟11と横桟12を有する格子状に形成される。その固定方法は、本実施形態の場合、平板状の固定治具13で上から縦桟11及び横桟12の任意の部位を押さえ付ける方法としてある。固定治具13は、建物1の屋根材を固定しているボルト1aを一旦外し、固定治具13を通して締め直すことにより、任意の部位に設けることができる。樹脂ネット10は、固定治具13を使用して、屋根上面のほぼ全域に張り巡らすとよい。
【0011】
一方のシート状物2の裏面(屋根に対向する面)には、図2Bと図2Cに示すように、把持部材2bが任意の部位に多数設けられており、この把持部材2bを使用してシート状物2が樹脂ネット10へ取り付けられる。把持部材2bは、シート状物2の角部及び角部間に必要に応じて適切な個数を設けることができる。本実施形態の把持部材2bは、面ファスナーをシート状物2に溶着又は接着剤により接着したものである。図2Dに示すように、樹脂ネット10上に被せたシート状物2の把持部材2bで、その下にある縦桟11又は横桟12を1本又は複数本把持することにより、シート状物2を屋根上に敷設することができる。すなわち、屋根に固定した樹脂ネット10を把持部材2bに把持させるという簡単な作業で、既存建物1の屋根にシート状物2を取り付けることができる。また、樹脂ネット10は、樹脂製であることから錆が発生せず、屋根を汚すことがないし、軽量であるため楊重、施工が容易である。
【0012】
図3と図4に、シート状物2として使用するのに適した遮光断熱体20について、正面図と背面図で示す。
遮光断熱体20は、遮光シート21、遮光シート21裏面に形成されたポケット22、ポケット22に収納される断熱樹脂材23を含んで構成される。
本実施形態の遮光シート21は、太陽光(可視光)をほぼ100%遮光する、ポリエチレンの遮光樹脂材から形成される可撓性のシートである。遮光樹脂材にはさらに赤外線反射コートとして酸化チタンコートを施してあり、これにより遮光シート21は、太陽光に含まれた熱源である赤外線を86%程度反射し、遮熱の機能をもつ。この遮光シート21の裏面、すなわち太陽光に当たらない屋根側に向く面に、同素材シートの要部を固着することにより、ポケット22が多数並ぶように形成されている。各ポケット22は、三方の固着部22a(接着剤による接着、溶着、縫製等で形成)により封筒状に形成され、口部22bから断熱樹脂材23をそれぞれ差し入れることができる。断熱樹脂材23を挿入した後に口部22bは、接着剤による接着又は溶着、あるいは結束具により閉じられ、ポケット22内に断熱樹脂材23が収納される。本実施形態の断熱樹脂材23は、ポリエチレンの繊維素材から形成された長方形の板状で所定の厚みをもち、熱伝導率が0.039w/mk程度の断熱性能を備えて、遮光シート21を通し進入する放射熱の7%程度を冷却する。なお、ポケット22に断熱樹脂材23を1つずつ収納する実施形態を示すが、1つのポケット22に複数の断熱樹脂材23を収納することもできる。
【0013】
遮光断熱体20は、施工現場でポケット22に断熱樹脂材23を収納する作業を実施することができるので、現場への搬送が楽である。すなわち、断熱樹脂材23を収納してない遮光シート21はロール状にして搬送することができ、また、断熱樹脂材23は積み上げて搬送することができるので、いずれもコンパクトにまとめて搬送することが可能である。
【0014】
本実施形態の遮光断熱体20では、その裏面に、ポケット22の口部22bを覆って延伸し、遮光シート21よりも側方へ飛び出す長方形のフラップ24が、その側縁部を溶着又は接着剤により接着するようにして設けられる。本実施形態のフラップ24はポリエチレン製であり、このフラップ24の裏面に、図2に示したのと同様の把持部材25が複数溶着又は接着剤により接着される。屋根に固定した上記の樹脂ネット10の縦桟11又は横桟12を把持部材25で把持することにより、遮光断熱体20を屋根上に敷設することができる。
【0015】
図5に示すように、本実施形態の遮光断熱体20は、フラップ24を利用して、雨水を屋根へ通さないように防水しつつ互いに連結することができる。隣り合った2つの遮光断熱体20は、互いの遮光シート21の側部を重ね合わせ、当該重ね合わせ部分を溶着又は接着剤により接着するか結束バンドで締めることにより、連結される。この遮光シート21の側部を重ね合わせる前に、その下にある両者のフラップ24を防気布折りする。すなわち、図5Cに示すように、互いのフラップ24の裏面どうしを当接させ、この裏面どうしを合わせた部分を端から巻き込んで丸めた上で、遮光シート21の側部を重ね合わせる。これにより、遮光シート21の継ぎ目から雨水が漏れてきたとしても、フラップ24から下へ雨水が漏れ出すことはなく、屋根の勾配に従って水上から水下へフラップ24上を流れ落ちる。
【0016】
図6は、屋根上に敷設した遮光断熱体20における遮光シート21の縁部21aについて、拡大して示した図である。本実施形態の遮光シート21における縁部21aは、建物1の屋根からはみ出して軒下へ回り込ませることができる程度に長く形成されている。図5のように連結して屋根上へ遮光断熱体20を敷設したときに、図6Aに示すごとく縁部21aを軒下へ回り込ませ、固定具(ビスやボタン等)26により軒下に端を固定する。この端を固定した縁部21aの内側は、袋状の収容空間として使用することができるので、ここにカーテン部材30が収容される。カーテン部材30は、その端部を遮光シート21の縁部21aに接着剤による接着や溶着等で固着させ、折り畳んで収容されている。したがって、カーテン部材30は、固定具26を取り外して縁部21aを垂れ下げると取り出され、建物1の側方に垂れ下げることができる。
【0017】
垂れ下がるカーテン部材30の丈は、地面まで届いて内と外とを隔てることの可能な長さとすることができる。あるいは、図6Bに示すように、カーテン部材30の丈は50cm程度と短くしておき、垂れ下がるカーテン部材30の下端に樹脂ファスナー(レールファスナー等)31を取り付けておくこともできる。この場合、樹脂ファスナー31を利用して別の延長カーテン部材32をカーテン部材30に接続し、丈を延長する。当該実施形態によれば、縁部21a内に収容されていたカーテン部材30を取り出して垂れ下げることにより、遮光シート21及びカーテン部材30を利用して、建物1を含む閉じられた空間を形成することができる(つまり建物1を隔離することができる)。この空間を、ウイルスフィルター付きの除塵機で正圧(大気圧より高圧)に維持すれば、外から建物1へのウイルス侵入を防ぐ隔離構造を構築することが可能となる。反対に、ウイルスフィルター付きの除塵機で負圧(大気圧より低圧)に維持すれば、建物1から外へのウイルス放出を防ぐ隔離構造を構築することが可能となる。
【符号の説明】
【0018】
1 建物
2 シート状物
2a 縁部
2b 把持部材
3 カーテン部材
10 樹脂ネット
11 縦桟
12 横桟
13 固定治具
20 遮光断熱体
21 遮光シート
21a 縁部
22 ポケット
22a 固着部
22b 口部
23 断熱樹脂材
24 フラップ
25 把持部材
30 カーテン部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を遮光する遮光樹脂材に赤外線反射コートを施して形成した遮光シートと、該遮光シート裏面に複数形成したポケットに収納される断熱樹脂材と、を含んで構成される遮光断熱体を屋根上に敷設した、屋根上断熱構造。
【請求項2】
多数の縦桟と横桟を有する格子状の樹脂ネットを前記屋根の上面に固定し、前記遮光断熱体に設けた把持部材で前記樹脂ネットの縦桟又は横桟を把持することにより、前記遮光断熱体が敷設されている、請求項1記載の屋根上断熱構造。
【請求項3】
前記遮光シートの縁部が前記屋根の軒下へ回り込んで固定されており、当該回り込んだ遮光シートの内側に、端部を前記遮光シートに固着したカーテン材が、取り出し可能に収容される、請求項1又は請求項2記載の屋根上断熱構造。
【請求項4】
請求項3記載の屋根上断熱構造において前記遮光シートの縁部内に収容されている前記カーテン部材を取り出して垂れ下げることにより、前記遮光シート及び前記カーテン部材を利用して閉じられた空間を形成し、該空間を負圧又は正圧にする、隔離構造。
【請求項5】
多数の縦桟と横桟を有する格子状の樹脂ネットを屋根の上面に固定し、シート状物に設けた把持部材で前記樹脂ネットの縦桟又は横桟を把持することにより、前記シート状物を前記屋根へ敷設する、シート状物敷設方法。
【請求項6】
前記シート状物として、太陽光を遮光する遮光樹脂材に赤外線反射コートを施して成形した遮光シートと、該遮光シート裏面に複数形成したポケットに収納される断熱樹脂材と、を含んで構成される遮光断熱体を使用する、請求項5載のシート状物敷設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−255317(P2012−255317A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129918(P2011−129918)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000189800)常盤工業株式会社 (9)
【出願人】(500303940)株式会社 小川テック (14)
【Fターム(参考)】