説明

屋根瓦と太陽電池モジュールとを連結する連結金具。

【課題】専用の屋根瓦を作製する必要がなく、任意の屋根瓦に対して連結金具を固定させることができ、連結金具を介して屋根瓦に太陽電池モジュールを固定できる、屋根瓦と太陽電池モジュールを連結する連結金具を提供する。
【解決手段】連結金具3の基部30を基端として上方に立ち上がり太陽電池モジュールを固定する立ち上げ部31と、前記連結金具の前端に鉤部を有する第一係止部33とを設け、前記第一係止部を屋根瓦の頭部端に係止するとともに、連結金具の後端を第二係止部34で固定した。この構成により、露出面に突起のない屋根瓦であっても、頭部側と尻部側の少なくとも2箇所で固定でき、任意の屋根瓦に対し連結金具を取り付けることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根瓦の上に太陽電池モジュールを取り付けるための、屋根瓦と太陽電池モジュールとを連結する連結金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、太陽エネルギーを利用して発電が可能な太陽電池モジュールの設置が盛んに行われている。太陽電池モジュールは、適度な勾配で設置することで太陽エネルギーの電気への変換が効率よく行われるとされており、住宅や施設などの勾配屋根に取り付けられる例が数多くある。屋根瓦に対し太陽電池モジュールを設置する方法は、屋根瓦の厚みと略同一の形状にして一体感を持たせたいわゆる屋根一体型であったり、屋根瓦の上に又は屋根瓦に取って代わって金具を設置し、その金具に太陽電池モジュールを固定したりする方法がある。
【0003】
屋根瓦と太陽電池モジュールとを連結する連結金具の例として、特許文献1記載の発明がある。特許文献1記載の発明によると、図19に示すように、断面が略逆門形状である1枚の金属板を加工し、基部30の中央に開口90を形成して、屋根瓦の表面に設けた突起91がはまるようにし、さらに、先端部がフック状になった舌片状弾性部92を設けて、上方より荷重を加えると前記舌片状弾性部を屋根瓦の頭端に設けた肉薄部93に係止できるようにした連結金具3がある。
【0004】
特許文献1記載の発明により、図20に示すように、建築物の勾配屋根に広く使用されている屋根瓦1に対して太陽電池モジュール5を半ば直接、確実かつ安全に固定することが可能になり、屋根上に効率よく太陽電池モジュールを設置することが可能になる。なお、特許文献1記載の発明は、出願人によってすでに完成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−240524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1記載の発明には、さらに改良の余地があった。つまり、前記特許文献1記載の発明の連結金具は、屋根瓦に連結金具を係止する専用の突起を設け、前記突起に対しはまり込ませることができるよう連結金具に開口を設けることで、屋根瓦に対し連結金具を介して太陽電池モジュールを固定している。しかしながら、前提として瓦表面に専用の突起を設けた屋根瓦を新たに製造する必要があるとともに、その突起にあうよう連結金具に開口を設けなければならなかった。このことから、屋根において世間一般に広く使用されている通常の(表面に突起を設けていない)屋根瓦には、連結金具を固定させることができない。言い換えれば、特許文献1記載の連結金具を固定するには、突起の付いた屋根瓦を専用品として作製しなければならないという問題があった。
【0007】
したがって、本発明の課題は、専用の屋根瓦を作製する必要がなく、世間一般に広く用いられる任意の屋根瓦に対して連結金具を固定させることができ、連結金具を介して屋根瓦に太陽電池モジュールを固定することができるような、屋根瓦と太陽電池モジュールとを連結する連結金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するために、屋根瓦と太陽電池モジュールとを連結する連結金具において、前記連結金具の頭側と尻側の両側の基部を基端として上方に立ち上げた太陽電池モジュールを固定する立ち上げ部と、前記連結金具の前端に鉤部を有する第一係止部とを設けて、前記第一係止部を屋根瓦の頭部端面に係止するとともに、連結金具の後端を第二係止部で屋根瓦又は屋根面に固定するという手段を採用する。
【0009】
前記手段を採用することにより、鉤部を有した第一係止部が屋根瓦の頭端を固定するとともに、尻端を所定の第二係止部で固定したので、連結金具が少なくとも屋根瓦の頭側と尻側の2点で安定的に固定される。また、鉤部を有する第一係止部で屋根瓦の頭端を固定したので、尻側に設けた所定の第二係止部により頭端から第一係止部が脱離することはない。
【0010】
本発明はさらに、前記連結金具の基部に弾性体を設ける構成を採用したので、屋根瓦に対し連結金具を固定した状態では、弾性体により連結金具を屋根瓦に固定する向きと反対向きの弾性力が働く。したがって、屋根瓦に対し連結金具に上向きの力が加えられるため、屋根瓦と第一係止部(及び第二係止部のフック部)との摩擦力が大きくなり連結金具が容易に脱離しない。
【0011】
さらに加えて、本発明では、前記第二係止部が屋根瓦の尻部端面に引っ掛けるフック部であるか、連結金具に設けた釘穴から瓦桟又は野地板に対し固定可能な緊結材である構成としたので、従来の工法から施工性を落とすことなく、任意の屋根瓦に対して連結金具を固定させることができる。
【0012】
そして、前記第二係止部と屋根瓦の尻部端面との当接面に弾性部を設けた構成を採用することにより、屋根瓦に対する連結金具の弾性力が、屋根瓦の厚み方向だけでなく流れ方向(長さ方向)にも加えられるため、連結金具がより確実に屋根瓦から脱離しないようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記の構成により、屋根瓦表面に突起のない一般的な屋根瓦であっても連結金具を固定可能としたので、突起のない屋根瓦を製造できればよく、通常屋根に使用されている任意の屋根瓦に対して連結金具を固定でき、屋根瓦と太陽電池モジュールとを半ば直接固定することができるので、汎用性がより高いという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に用いる一般的な屋根瓦の斜視図である。
【図2】本発明に用いる一般的な屋根瓦の平面図である。
【図3】図1中X−X断面図である。
【図4】本発明に係る連結金具の斜視図である。
【図5】本発明に係る連結金具の平面図である。
【図6】本発明に係る連結金具の右側面図である。
【図7】本発明に係る連結金具に設けた弾性部の実施例を示す。
【図8】本発明にかかる連結金具の他の実施例である。
【図9】本発明に用いる太陽電池モジュールの斜視図である。
【図10】本発明に用いる太陽電池モジュールの断面図である。
【図11】本発明に用いる太陽電池モジュールの要部拡大図である。
【図12】本発明の連結金具を用いた屋根を施工する手順(前工程)を示した図である。
【図13】本発明の連結金具を屋根瓦に施工する手順(第一の例)を示した図である。
【図14】本発明の連結金具を屋根瓦に施工する手順(第二の例)を示した図である。
【図15】本発明の連結金具を屋根瓦に施工する手順(第三の例)を示した図である。
【図16】本発明の連結金具を用いた屋根を施工する手順(後工程)を示した図である。
【図17】本発明に用いる太陽電池モジュールを連結金具に施工する手順を示した図である。
【図18】本発明に用いる屋根瓦に連結金具と太陽電池モジュールを施工し終えた状態を示す側面図である。(図16(b)中Y−Y断面図である。)
【図19】従来の連結金具を示した図である。
【図20】従来の連結金具を屋根に施工した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における実施例について詳述する。本発明の連結金具3は、従来の発明と同様に、屋根瓦1に固定され太陽電池モジュール5を固定する構造のものであるから、これら構造を構成する屋根瓦1、連結金具3、太陽電池モジュール5について詳述する。
【0016】
(屋根瓦)
本発明で用いる屋根瓦1は、図1ないし図3に示すように、頭部(前端)A、尻部(後端)B、差込部C、桟部D、及び屋根瓦の葺き並べ時に露出する露出面Eを有する略方形状の屋根瓦であり、世間一般に幅広く用いられているものである(本願では、屋根瓦、連結金具、太陽電池モジュールについて部位の方向や位置を示す際に記号ABCDを付すことがある)。頭部Aは、屋根瓦1を屋根Rに葺いた状態で軒側を向いており、尻部Bは同様に棟側を向いており、差込部C及び桟部Dは同様に桁行き方向を向いている。図1及び図2では、差込部Cは平面視で左側に位置し、桟部は同右側に位置しているが、差込部と桟部とは、左右が入れ替わっていてもよい。差込部Cと桟部Dとは、桁行き方向に隣接する屋根瓦同士でそれらが重合できるよう高さや幅が調整されている。つまり、屋根瓦1を複数葺き並べた状態において、差込部Cは桁行き方向に隣接する屋根瓦の桟部Dに覆われるとともに、尻部Bが流れ方向棟側で隣接する屋根瓦1の頭部Aによって全域が覆われる。
【0017】
前記屋根瓦について詳述すると、頭部Aの下端は、屋根瓦1を葺き並べた状態で覆う差込部Cや桟部Dの形状に合わせて切り欠き部10が必要に応じて設けられており、複数の屋根瓦1を屋根面に葺いた際に、露出面Eよりも高くなった水返し18C及び18Dを跨いで隙間無く葺かれるようになっている。また、図3に示すように、頭部端面には肉薄部19を設けて、後述の連結金具の第一係止部がはまり込みやすいようにしていてもよい。
【0018】
尻部Bには、瓦同士の重合部より屋根の内部に水が浸入しないよう露出面Eよりも高くなった水返し18Bが尻部の略全域にわたって設けられている。また、水返し18Bには、屋根瓦1を野地板70や瓦桟71に固定できるよう釘穴11が設けられているほか、係合突起12が設けられていて、後述の係合凹部13と係合して耐風性能を向上させることができるようになっている。さらには、尻部の端面より、屋根面に固定された木材等に屋根瓦1を引っ掛けるための尻剣14が屋根瓦の下方に向かって突出しているとともに、屋根瓦同士を重ねた際に尻剣が収納される凹部15が設けられている。なお、前記した係合突起12や係合凹部13は省略することも可能である。
【0019】
続けて差込部Cは、前記の係合突部12と係合するよう、差込部Cよりもやや肉薄になった係合凹部13が、差込部Cの縁の頭部寄りに設けられている。差込部Cには、その頭部側を除く周囲にわたって縁水返し16が設けられているほか、その周囲の水返しよりも内方かつ流れ方向に内側縦水返し17が設けられていて、屋根瓦を葺き並べた際に隣接する瓦同士の隙間から浸入する雨水等を屋根面まで浸入させないようにしている。前記屋根瓦同士の隙間に雨水の浸入を抑制するために、露出面Eの差込部寄りには水返し18Cが合わせて設けられている。
【0020】
そして、桟部Dは、差込部Cの全域(アンダーラップ部)が覆われる程度の幅をもって設けられており、必要に応じて露出面Eのうち桁行き方向端部には、周囲に対して高くなった水返し18Dを有している(水返し18C、18Dは、屋根瓦の意匠性を考慮して変形、省略することが可能である)。したがって、本願発明に使用される屋根瓦1は、水返しや模様の有無といった違いはあるが、世間一般的に広く使用されている屋根瓦そのものであり、従来技術で用いた屋根瓦のように露出面Eに対して連結金具3と係合するような突起91を設けない点で大きく異なっている。
【0021】
(連結金具)
本発明に係る連結金具3は、図4ないし図6(これらの図においては、後述の第一の例、第二の例及び第三の例について記号(a)(b)(c)を付して併記している)に示すように、屋根瓦1上に位置するようにそれ自体が係止・固定され、太陽電池モジュール5を係止・固定するために使用される舟形状を成す金具である。前記連結金具は、弾性を有する鋼材(屋根に使用する部材として耐食性に優れたステンレスのバネ鋼等が良い)を所定の大きさ・形状に切断及び切欠き加工した後、曲げ加工することにより、平面が長方形をなし略中央部の断面が略逆門形状の金具として製作される。したがって、本発明に係る連結金具3は、主に基部30、その基部から頭尻側に向かって立ち上がる二つの立ち上げ部31A、31B、桁行き側に向かって立ち上がる二つの側辺壁部32C、32D及び第一係止部33及び第二係止部34とから構成されている。
【0022】
前記基部30において、その頭尻側の部位には、中央に向かって開口されている略コ字形に切り欠かれており、先端が互いに頭尻端面を向くよう、第一弾性体35及び第一弾性体の先端より下方に突出し屋根瓦1の頭部端面に係止される第一係止部33と、第二弾性体34とで構成されている。前記第一、第二弾性体のそれぞれ先端側が前記基部より下位となるように若干曲げられていることで、弾性体としての機能が付加されている。
【0023】
したがって、前記の先端側は、連結金具の頭尻方向においてそれぞれ相反する向きに頭尻側を向いて延びていると同時に前記基部の下方(厚み方向)に位置するので、前記連結金具が屋根瓦上で太陽電池モジュールをその下方から支持するとき、第一、第二弾性体35、36は太陽電池モジュール5の荷重を受けて変形するが、連結金具3自体が弾性材料から作られているので、第一、第二弾性体は弾性変形の範囲で変形して屋根瓦1上で太陽電池モジュール5を支えるとともに、前記屋根瓦上に取り付けられた連結金具3のがたつきやぐらつきを防止している。
【0024】
また、前記第二弾性体36の先端側は、図6等に示すように、屋根瓦1と接触するとき屋根瓦の表面を損傷しないように、基部30を基準として下方に折り曲げられた後、再び基部側に向かって「へ」字状に屈曲している。一方で、前記第一弾性体35の先端は、その断面が下方に向かってコ字状又はフック状に屈曲して第一係止部33を構成している点で第二弾性体と相違している。
【0025】
さらに、連結金具3について説明を続けると、図4や図5等に示すように、連結金具3の基部30の桁行き側は、基部を基端として上方に立ち上がり対峙するよう二つの側辺壁部32C、32Dがある。合わせて、前記側辺壁部の上端より、外方に向かって延びる平坦部38C、38Dが設けられている。したがって、側辺壁部と平坦部で断面視が略逆L字状に形成されている。前記平坦部は、基部30と略平行で平坦となるように設けているので、連結金具3に太陽電池モジュール5を固定する際に、太陽電池モジュール5や、それに接続されているケーブル54が載っても点当たりしない。つまり、平坦部は一種のケーブル受けになっており、ケーブル54が変形したり損傷したりしないようになっている。
【0026】
また、前記平坦部38C、38Dとは別にそれよりも高くなった上位平坦部39C、39Dが設けられている。例として、図4や図6に示すように、側辺壁部の頭尻寄りに上位平坦部39を設けて、そこに太陽電池モジュール5を載置すれば、屋根瓦1と太陽電池モジュール5との間隔が大きく確保できるので、特に夏季など屋根瓦が太陽光に晒され高温になった際に、太陽電池モジュール5に対し熱による悪影響を及ぼしにくくなる。さらには、前記のように上位平坦部39C、39Dで太陽電池モジュール5を支持することによる平坦部との高低差により、ケーブル54が太陽電池モジュール5と屋根瓦1又は連結金具3との間に挟まれて不具合を起こす恐れがなくなるうえ、後述の端子部53が連結金具3と干渉することを防止できる。
【0027】
さらに続けて、連結金具3の基部30の頭尻側には、側辺壁部32C、32Dと同様に基部を基端として上方に立ち上がり対峙するよう二つの立ち上げ部31A、31Bがある。前記立ち上げ部の上端近くには、立ち上げ部31A、31Bより外方に向かって突出した係止爪40が設けられている。前記係止爪は、連結金具3の上方より太陽電池モジュールを固定する際に、太陽電池モジュールの上下位フレーム51A、51Bが係止爪にはまり込むよう、立ち上げ部31を基点としてそこから下方に向かって離れながら円弧を描くように構成されている。係止爪40の位置は、太陽電池モジュール5を係止した際に、フレーム51A、51Bが上位平坦部に載置されるとともに、係止片52A、52Bがちょうど係止されるよう係止爪の上下方向の位置が調整されている。
【0028】
本願発明にかかる連結金具3は、その特徴として、連結金具の尻部側に第二係止部34を設けている点で従来の連結金具と大きく相違する。まず、前記第二係止部の第一の例として、図4(a)ないし図6(a)に示すように、連結金具3の立ち上げ部31Bよりもさらに尻部B側に、屋根瓦1と係止する第二係止部34が尻部端面まで延びている。具体的には、立ち上げ部31Bから屋根瓦1の水返し18B手前まで延出部41が延びており、さらに前記尻部水返しの形状と対応するよう傾斜部42及びその上端から段丘部43が設けられ、さらに加えて段丘部の尻端部より下方に向かってフック状又はコ字状に曲げ加工されたフック部44で第二係止部34を構成しており、それが屋根瓦1の尻部端面を包み込むようになっている。本例の連結金具3は、第一係止部の屋根瓦における頭部端面との当接面と、第二係止部の屋根瓦の尻部端面との当接面の間隔が、屋根瓦の全長と略一致するようになっている。
【0029】
次に、本願発明にかかる第二係止部の第二の例として、図4(b)ないし図6(b)に示すように、第一の例と同様に連結金具の尻部側に延出部41、傾斜部42及び段丘部43が設けられており、段丘部43に対し屋根瓦1と同様に釘穴45を設けて、屋根瓦1を瓦桟71(又は野地板70)に固定する際に前記連結金具も合わせて固定する手段を採用する。連結金具の釘穴45を、屋根瓦の釘穴11と合わせて緊結材72で一緒に固定(以下、共打ちという)することにより、第二係止部34と成して、連結金具3の尻部B側の移動を抑制させることができる。なお、この例では、第一係止部33から連結金具の釘穴45までの間隔が、屋根瓦1の頭部端面から屋根瓦の釘穴までの距離とおおよそ同程度になっており、釘穴に打ち込む緊結材によって連結金具を屋根瓦に係止できるようにしている。
【0030】
さらに、本願発明にかかる第二係止部の第三の例として、図4(c)ないし図6(c)に示すように、第一の例と同様に連結金具の尻部側に延出部41、傾斜部42及び段丘部43が設けられているが、さらに段丘部の尻側端部から野地板まで垂下した垂下部46と、垂下部から野地板と平行に棟側へ延びる野地延出部47とを有し、野地延出部に野地板と緊結できる釘穴45を設けている点で第一の例と異なっている。前記釘穴に対し緊結材72を野地板に打ち込んで固定することにより、第二係止部34を構成して連結金具3の尻部側の移動を抑制させることができる。
【0031】
前記した第一ないし第三の例により、尻部B側は屋根瓦1の尻部端面に対し連結金具3のフック部44による引っ掛かり、もしくは屋根瓦1の釘穴11と連結金具3の釘穴45との共打ち、又は連結金具の野地延出部47の釘穴45から野地板70へ緊結材を打ち込み固定することにより第二係止部34が確保され、頭部A側は連結金具の第一係止部を屋根瓦の頭部端面への係止と協働して2箇所の固定が確保される。このように、本発明においては、屋根瓦1の頭部Aと第一係止部33及び尻部B(又は野地板70)と第二係止部34のそれぞれが係合されることにより、屋根瓦1枚につき連結金具3が少なくとも頭部Aと尻部Bの2箇所において係合されているので、屋根瓦1に対する連結金具3の固定は強固となっている。
【0032】
ここで、第一の例における第二係止部34についてさらに詳述すると、連結金具3において、屋根瓦1の尻部端面と当接する箇所には、弾性部37が設けられていても良い。この弾性部は、連結金具3の施工前の状態でそれと一体形成されていても良いし、連結金具3の施工時に弾性部を所定の手段で形成しても良い。もしくは、弾性部を尻端面に形成してから連結金具を施工してもよい。弾性部の例として、図7に示すように、連結金具と略同質で構成されたバネ材が挙げられる。図7(a)では板バネを追加した例を示しており、図7(b)ではコイルバネを追加した例を示しており、図7(c)ではフック部37自身が頭部側にやや傾いて板バネのような働きをする例を示している。弾性部37の目的は、弾性部37を圧縮しながら屋根瓦1の尻部端面に係止させ、屋根瓦の頭部端面に第一係止部を係止させることにより、弾性部37自身が屋根瓦の長さ方向に広がろうとする力を発生させ、特に頭部Aを固定した第一係止部33が頭部端から脱離しにくいようにすることである。なお、前記弾性部はバネ材で例示したが、EPDMゴムの発泡体等の高い弾性を有するゴム類等で代用することも可能であるし、第二係止部と同様の構成として第一係止部にも弾性部を適用することも可能である。
【0033】
連結金具の他の実施例として、図8(a)では、連結金具の立ち上げ部先端より基部の中央寄りを向くように折り返された平坦部が、側辺壁部の上端に設けた上位平坦部と同程度の高さとなるように設けられている。この構成により、後述の太陽電池モジュールが連結金具に連結されたときに太陽電池モジュールのフレームを面で広く受けて太陽電池モジュール自身を変形しにくくすることができる。また、図8(b)は、第二係止部34に設けた釘穴45を幅方向に長穴で構成して、屋根瓦1の釘穴11の位置や連結金具3の取り付け位置を若干調整したいときに融通が利き汎用性が高くなる。長穴は幅方向だけでなく、図示はしないが長さ方向であっても良い。なお、これらのほかにも、屋根瓦1や太陽電池モジュール5の形状に合わせて適宜変更できるし、連結金具3の加工や生産の効率を考慮して変更することが可能である。
【0034】
(太陽電池モジュールの構造・形状)
図9ないし図11に示すように、本発明に係る太陽電池モジュール5は、屋根瓦1が桁行き方向に4枚又は5枚程度並べられた幅、長さ方向が1枚分の露出面に相当する横長の長方形平面形状をなし、枠型のフレーム51とその中に収納される平板状の太陽電池50、及び太陽電池で発電した電気を流す端子部53とケーブル54から構成されている。フレーム51は、太陽電池モジュール5の長辺に沿って平行に延びる下位フレーム51A及び上位フレーム51Bと、同じく短辺に沿って延びる左右側フレーム51C、51Dとからなり、太陽電池50がフレームで囲まれるよう構成されている。なお、前記上位フレーム51Bは、太陽電池モジュール5が屋根瓦1の上に設置されると、屋根面Rの棟側に位置するようになっている。
【0035】
前記上下位フレーム51B、51Aは、図10及び図11に示すように流れ方向断面が略F字形状をなしており、その上方位置において太陽電池50を挟持し、下方位置において屋根瓦1の露出面Eに係止される連結金具3の係止爪40に係止可能な係止片52をそれぞれ有している。また、太陽電池50の裏面略中央部には、集電した直流電力を取り出す端子部53が設けられており、その端子部に接続されたケーブル54が太陽電池モジュール5の外方に延びる。
【0036】
このように4枚ないし5枚の隣接する屋根瓦1に対して1基の太陽電池モジュール5が設置されると、図12(c)に示すように、屋根瓦1の露出面Eの上にそれと平行に連結金具20が固定されるとともに、図16(b)に示すようにその連結金具3に太陽電池モジュール5を実質上平行に設置可能になる。その結果、図18に示すように、太陽電池モジュール5を屋根瓦1の露出面Eに対して略平行に設置可能になり、屋根瓦1の尻部B側における屋根瓦1と太陽電池モジュール5とのなす空間高さを、頭部A側における同空間高さにすることができ、屋根瓦と太陽電池モジュールとの一体感を向上させることができる。
【0037】
(施工手順)
本発明にかかる連結金具3を用いた屋根瓦1に対する太陽電池モジュール5の施工方法について詳述する。ここでは、屋根瓦について係合突起12及び係合凹部13を設けていない例を、連結金具について弾性部37を設けない例をそれぞれ示している。まず、本願発明の連結金具3を施工するために、屋根面Rを構成する野地板70、瓦桟71、緊結材72及び屋根瓦1を用意する。次に、野地板、ルーフィング(図示なし)、瓦桟等で屋根の下地を構成し、瓦桟に対し軒側から順に屋根瓦を引っ掛け、緊結材等で緊結する。
【0038】
図12(a)に示すように、屋根瓦1を軒から太陽電池モジュール5を施工する位置の手前まで屋根面Rに葺いていく。続けて、図12(b)に示すように、太陽電池モジュールの設置範囲に該当する屋根瓦に対し連結金具3を施工していく。
【0039】
まず、前記第一の例に沿った連結金具の固定方法について説明する。屋根瓦1に対する連結金具3の係止は、図13(a)に示すように、第二係止部34を屋根瓦の尻部Bに係止させる。そして、第二係止部の尻部での係止状態を保ったまま、屋根瓦1に向かって押し付けるように荷重を加えると、図13(b)に示すように、第二弾性体36が屋根瓦の露出面Eに当接し変形が始まる。連結金具を屋根瓦に強く押し付けていくと、基部と屋根瓦の露出面との距離が縮んで、第一係止部33も屋根瓦の頭部端面付近に当接し次第に変形が始まる。第一係止部が変形し始めると、第一係止部自身は頭部側にわずかに伸長して先端が頭部端面の際まで達する。連結金具3に対しさらに荷重を加え続けると、第一係止部34は屋根瓦の長さ方向に伸長しきるが、この状態で連結金具3全体を頭部A側にスライドさせる。すると、図13(c)に示すように、第二係止部が尻部端面に完全に係止されると同時に、第一係止部33が頭部Aの際を超えて頭部端面を滑り降り(頭部端面を上から下に向かって移動し)、フック状になった第一係止部33が頭部端面の最下端まで達して頭部Aに完全に係止される。つまり、連結金具を尻部に係止した後、屋根瓦に向かって押し付けながら頭部側にスライドさせるという動作を加えると、第一係止部及び第二係止部がほぼ同時に屋根瓦に係止される。
【0040】
前記の第一の例は、以下のようにして連結金具を屋根瓦に取り付けることもできる。第二係止部34を屋根瓦の尻部Bより若干飛び出すような位置で、屋根瓦の露出面Eに連結金具3を載置する。次に、屋根瓦に対し連結金具全体を押し付けると、第一弾性部35及び第二弾性部36が圧縮され、頭部側、尻部側にそれぞれ伸長する。連結金具をさらに強く押し付けると、第一、第二弾性部35、36は伸長しきるので、その状態を維持しながら連結金具全体を頭部側に向かってスライドさせると、第二係止部が尻部端面に当接すると同時に、第一係止部が頭部端面をわずかに超えて頭部端面を滑り降り、最終的には第一係止部33が頭部端面を包むようにして頭部Aに完全に係止される。このように、第一の例における連結金具の固定は、尻部端面を第二係止部に係止してから頭部端面に第一係止部を係止してもよいし、屋根瓦に載置した連結金具を屋根瓦に強く押し当てながら頭部側にスライドさせて第一係止部と第二係止部を同時に係止してもよい。
【0041】
次に、前記の第二の例に沿った連結金具の固定方法について説明する。図14(a)に示すように、まず、連結金具の釘穴45と屋根瓦の釘穴11が一致するよう幅方向の位置を調整しながら、第一係止部33を屋根瓦1の頭部端面に係止する。続いて、図14(b)に示すように、第一係止部が頭部端面に完全に係止するまで連結金具3を尻部B側に寄せきった状態で、緊結材72を連結金具の釘穴45と屋根瓦の釘穴11に順次挿し通して、工具等で瓦桟71、野地板70へと打ち込む。緊結材が特にねじであれば、そのねじを瓦桟71や野地板70へ打ち込む勢いを利用して連結金具が屋根瓦に対して張力を保持したまま固定できる。したがって、連結金具3は図14(c)に示すように屋根瓦1から脱離しないようにできる。なお、第三の例で示した連結金具の固定方法は、図15(a)ないし図15(c)に示したとおりであるが、第二の例とほぼ同一であり、第二の例における連結金具の釘穴45と屋根瓦の釘穴11との緊結材の共打ちが、第三の例における野地延出部の釘穴45を野地板に対し緊結材で固定する方法に取って代わっている。
【0042】
以上の過程を経て、屋根瓦1に対する連結金具3の固定が完了する。第一の例においては、連結金具3が固定された後の状態は、弾性部37があればそれが固定時に圧縮された後、弾性力により屋根の流れ方向の移動が制限され、同様に基部に設けた第一、第二弾性体35、36が弾性力により屋根瓦1の厚み方向に張力が加えられるので、連結金具の移動が制限される。つまり、連結金具3は、屋根瓦1に対しぎりぎりの寸法で係止されており、しかも前記したように二方向の移動について制限されているため、連結金具は屋根瓦から脱離することはない。また、第二及び第三の例では、第一係止部34を係止した後、第二係止部35を尻部側で固定されているので、連結金具3が頭部A側に変位し脱離してしまうことがない。なお、第一の例において屋根瓦の施工後に連結金具の施工を行ったが、連結金具をあらかじめ屋根瓦に施工した状態で屋根瓦を葺いていくことも可能である。
【0043】
さらに続けて、屋根瓦1に対して連結金具3の固定が完了したら、それらの工程を繰り返して、図12(c)に示すように太陽電池モジュール5を設置する範囲に該当する屋根瓦すべてに対し連結金具3を固定していく。連結金具の固定が終われば、図16(a)に示すように、太陽電池モジュール5を施工していく。
【0044】
太陽電池モジュール5の固定は、従来の技術と同様に、連結金具3に設けた二つの立ち上げ部31A、31Bの上方にあらかじめ係止爪40A、40Bを設けておき、合わせて太陽電池モジュール5の上下位フレーム51A、51Bに、前記係止爪と係止できるよう係止片52A、52Bを設けて、太陽電池モジュールを連結金具の上方より載置、固定する。図17(a)に示すように、太陽電池モジュール5に設けた係止片52A、52Bの間隔(内寸)は、連結金具3に設けた二つの係止爪40A、40Bの間隔(外寸)よりも若干小さくなっている。したがって、連結金具に太陽電池モジュールを載置しただけでは連結金具の係止爪40A、40Bと太陽電池モジュールの係止片52A、52Bとが係止せず干渉している状態となっている。
【0045】
太陽電池モジュール5を連結金具3に係止するには、前記のように連結金具3に太陽電池モジュール5を載置した状態から、太陽電池モジュール5に対し連結金具側へ荷重を加えていく。すると、連結金具は弾性を有しているので、図17(b)に示すように、連結金具の係止爪40A、40Bは太陽電池モジュールの係止片52A、52Bに押されて立ち上げ部31A、31B全体が基部中央寄りの方向に傾斜し始める。太陽電池モジュール5に対しさらに連結金具側へ荷重を加えていくと、太陽電池モジュールの係止片52A、52Bが連結金具の係止爪をさらに基部中央寄りに押し倒して、たち上げ部をさらに傾けさせる。すると、図17(c)に示すように、係止片52は、間隔が狭まった係止爪40の最も外方に突出した部分を乗り越えて係止爪よりも下方へ位置するとともに、立ち上げ部31の傾きが弾性力の解消により元に戻る。よって、係止爪40と係止片52とが上下方向に係止され、連結金具に対する太陽電池モジュールの係止が完了する。この工程により、太陽電池モジュールは連結金具に対し一種のはめ殺し状態で固定されているので、太陽電池モジュールが連結金具から脱離することはない。
【0046】
前記した工程を繰り返して、図16(b)に示すように、葺き並べられた複数の屋根瓦1に対し複数の連結金具3を介して太陽電池モジュール5を固定していくことができる。これら屋根瓦に対する太陽電池モジュールの施工方法において、図18に示すように、太陽電池モジュールの上下位フレーム51A、51Bは、その太陽電池モジュールの1段上下位に位置する太陽電池モジュールのフレームと、図18における上下方向で重なる部位があるが、連結金具3及び太陽電池モジュール5は、上下段で互いに干渉しないようそれぞれ寸法が調整されている。
【0047】
以上のとおり、本願発明は、前記したような連結金具を用いることで、屋根瓦の露出面に突出部を設けた特殊な屋根瓦を製造しなくても世間一般に広く使われている屋根瓦に対して太陽電池モジュールを屋根瓦の上部で支持固定できるため、従来技術と比べて汎用性が大幅に向上する。しかも、太陽電池モジュールは、屋根瓦1に対し複数の連結金具3を介して実質上直接固定されて十分な固定強度が得られる。さらには、屋根瓦と同じ1段ずつ施工されているので、あたかも太陽電池モジュールが屋根瓦と一体に施工されたような美観となり、意匠性が良い。
【0048】
本発明の実施例を詳述したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において適宜変更できる。たとえば、連結金具3の第二係止部34を輪状又は角状の切り抜き部分を設け、屋根瓦1の係合突起12に引っ掛けてから頭部端面に固定させる構成としても良いし、屋根瓦1の頭部Bに設けた切り欠き部10や係合突起12を避けるように、第一係止部33や第二係止部34を屋根瓦1の幅方向に分散させて、連結金具3の平面視が略H字状になるように変更することもできる。つまり、頭部端面と、尻部端面(又は尻部側の瓦桟や野地板)の任意の箇所で少なくとも2点以上で固定できるような形状変更であれば、本発明の技術的思想を満たすものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、従来から幅広く使用されてきた屋根瓦、特に平坦部を有する屋根瓦に対して太陽電池モジュールを固定する際の、屋根瓦と太陽電池モジュールとを連結する連結金具として、幅広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 屋根瓦
10 切り欠き部
11 釘穴
12 係合突起
13 係合凹部
14 尻剣
15 凹部
16 縁水返し
17 内側縦水返し
18 水返し
19 肉薄部
3 連結金具
30 基部
31 立ち上げ部
32 側辺壁部
33 第一係止部
34 第二係止部
35 第一弾性体
36 第二弾性体
37 弾性部
38 平坦部
39 上位平坦部
40 係止爪
41 延出部
42 傾斜部
43 段丘部
44 フック部
45 釘穴
46 垂下部
47 野地延出部
5 太陽電池モジュール
50 太陽電池
51 フレーム
52 係止片
53 端子部
54 ケーブル
70 野地板
71 瓦桟
72 緊結材
90 開口部
91 突起
92 舌片状弾性部
93 肉薄部
A 頭部
B 尻部
C 差込部
D 桟部
E 露出面
R 屋根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根瓦と太陽電池モジュールとを連結する連結金具において、前記連結金具の頭側と尻側の両側の基部を基端として上方に立ち上げた太陽電池モジュールを固定する立ち上げ部と、前記連結金具の前端に鉤部を有する第一係止部とを設けて、前記第一係止部を屋根瓦の頭部端面に係止するとともに、連結金具の後端を第二係止部で屋根瓦又は屋根面に固定したことを特徴とする屋根瓦と太陽電池モジュールとを連結する連結金具。
【請求項2】
前記連結金具の基部に弾性体を設けた請求項1記載の屋根瓦と太陽電池モジュールとを連結する連結金具。
【請求項3】
前記第二係止部は、屋根瓦の尻部端面に引っ掛けるフック部である請求項1又は2記載の屋根瓦と太陽電池モジュールとを連結する連結金具。
【請求項4】
前記第二係止部は、連結金具に設けた釘穴から瓦桟又は野地板に対し固定可能な緊結材である請求項1又は2記載の屋根瓦と太陽電池モジュールとを連結する連結金具。
【請求項5】
前記第二係止部と屋根瓦の尻部端面との当接面に、弾性部を設けた請求項3記載の屋根瓦と太陽電池モジュールとを連結する連結金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−229518(P2012−229518A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96678(P2011−96678)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(391060661)株式会社鶴弥 (39)
【Fターム(参考)】