説明

屋根用固定装置

【課題】
雨水の瓦材下方への侵入を一次的に防止すると共に、たとえ雨水が瓦材よりも下方に侵入する場合でも、当該雨水が瓦材下方の下地材よりも下方に侵入することを確実に防止することができる二重の雨水侵入機能を有することにより、太陽電池モジュール等の屋根設置体を長期間にわたって安定的に設置することができる屋根用固定装置を提供する。
【解決手段】
本願発明によれば、屋根設置体を支持する屋根用固定装置において、下地材に鋲着または締結される基台と、基台に連接して上方に延びる支柱と、支柱の上部から上方に延びて屋根設置体を支持する支持部材と、支柱を内包し支持部材が挿通される通孔を備えるカバー体とを有して構成され、カバー体は、下地材との間に隙間を設けた状態で支柱に取り付けられると共に、基台は下地材に水密に留め付けられている屋根用固定装置によって課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、家屋の屋根上に太陽電池モジュール等の屋根設置体を設置するために使用される屋根用固定装置に関し、特に屋根の瓦材に形成された孔部を通して屋根の下地材に固定される構造を有する屋根用固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電が普及するのに伴って、家屋の屋根上に太陽電池モジュール等の太陽エネルギー利用機器を設置することが多くなってきている。一般にこのような産業用、家庭用として使用される太陽電池モジュールは、直列または並列に接続された複数の太陽電池素子をガラスや樹脂等から成る透光性基板に一体的に設けて、当該透光性基板をフレーム内に収容することで構成される。そして、フレームに形成された貫通孔やネジ孔に挿通されるボルトやネジを、家屋の屋根上に設置されたレールや支持金具等に対して締結または締込み等することにより、太陽電池モジュールは家屋の屋根上に固定される。また、太陽エネルギーを利用する太陽エネルギー利用機器としては、太陽電池モジュール以外にも、太陽熱温水器等が広く知られており、各種の太陽エネルギー利用機器の屋根上への取り付けに関しても、同様の方法が用いられている。なお、本願明細書では、太陽エネルギー利用機器等の屋根上に設置される機械、機器、機材等を屋根設置体と称するとともに、屋根設置体を屋根上に設置するために設けられるレールや支持金具等を取付部材と称することとする。
【0003】
家屋上において傾斜を有する屋根に太陽電池モジュール等の屋根設置体を取り付ける場合には、台風などの強風にも耐えられるように、屋根に強固に取り付ける必要がある。然るに、傾斜する屋根に敷設される瓦材等は、太陽電池モジュール等の重量のある屋根設置体を支持し得る強度を有しておらず、所定の力を超える力が作用すると、瓦材が破損あるいは瓦材が屋根上から脱落してしまうことがある。したがって、屋根設置体を家屋の屋根上に強固に固定するためには、屋根設置体を屋根上に設置するためのレールや支持金具等として与えられる取付部材を、木製の板や合板等から形成される野地板と呼ばれる屋根の下地材や、木製の細い柱や金属柱等から形成されて下地材を支持する垂木に対して、固定装置を介して固定する必要がある。
【0004】
そこで、ドリル等を用いて瓦材に孔部を形成し、当該孔部を介して取付部材に対する支持部を備えた支柱を下地材に固定する構造を有する屋根用固定装置が開発されている。例えば特許文献1には、鉄やステンレス、アルミニウム等の強度の高い金属からなる基台と、該基台にネジやボルトで取り付けられる支柱と、該支柱の上部で屋根設置体や支持レールを支える上部支持部と、支柱に沿って主に上下方向へ移動可能な可動部とから構成される屋根用固定装置が開示されている。この種の屋根用固定装置においては、瓦に穴を開けて設置することに伴う防水性をどのように確保するかが重要であるが、特許文献1においては、金属、樹脂、ゴム、セラミックなどの耐候性を有する素材からなる円盤状の可動部を穴の周縁部から支柱に亘って設けることで当該防水性の確保が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−133382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8は、瓦材に形成された孔部を介して下地材に取り付けられる、従来の屋根用固定装置を示す断面図である。固定装置111は、ボルト112等の固定手段を用いて下地材113に固定される基台114と、基台114にネジやボルトで取り付けられる支柱115と、支柱115の上部でレール等の取付部材を支持する上部支持部116と、瓦材117に形成された孔部118を覆うとともに支柱115に対して相対移動可能に形成された可動部119とを有して構成されている。可動部119は、瓦材117に形成された孔部118を覆うカバー部119aと、カバー部119aから上方に延びて支柱115の外周面を囲むガイド部119bとから成る。可動部119と瓦材117との間には、コーキング材120が充填されていて、瓦材117に形成された孔部118から屋根内側(下地材113側)へ雨水等が入り込まないようになっている。この固定装置111では、太陽電池モジュールの設置等に起因して上部支持部116に負荷が作用しても、当該負荷は支柱115及び基台114を介して下地材113により支持されるので、当該負荷が支柱115に対して相対移動可能な可動部119に作用することはない。これにより、瓦材117と可動部119との間の防水処理部(コーキング材120)に外力が加わるのを防ぐことができるので、防水性を向上させることができる。
【0007】
しかしながら、上記のような構成を有する固定装置においては、瓦材の下方への水の浸入を防ぐべく、カバー部がコーキング材を介して瓦材に取り付けられているが、当該瓦材の表面は激しい日射にさらされることとなり、経年劣化が激しく、当該日射によりコーキングが早期に劣化してしまうおそれがある。コーキングが劣化すると、当該カバー部と瓦材間から容易に雨水が侵入してしまうことが考えられる。また、ガイド部はカバー部から突出する支柱の中途部までを覆うものとなっているが、当該中途部をどの程度の高さまで覆えば雨水の侵入を確実に防ぐことができるかは不明であり、当該高さを超える量の雨水が瓦材表面を流れると、やはり雨水が瓦材下方に侵入してしまうことが考えられる。また、当該構成を達成すべく、可動部の形状が複雑となるばかりでなく取り付けも困難なものとなることが考えられる。
【0008】
そこで、本願発明は、雨水の瓦材下方への侵入を一次的に防止すると共に、たとえ雨水が瓦材よりも下方に侵入する場合でも、当該雨水が瓦材下方の下地材よりも下方に侵入することを確実に防止することができる二重の雨水侵入機能を有する簡易な構成の屋根用固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願発明は、下地材上に複数の瓦材を敷設することで構成される屋根のいずれかの瓦材に形成された孔部を介して瓦材の下側に導入されるとともに下地材に固定され、瓦材の上方で屋根設置体を支持する屋根用固定装置において、下地材に鋲着または締結される1または複数の基台と、基台に連接して基台から上方に延びる支柱と、支柱の上部から上方に延びて屋根設置体を支持する支持部材と、支柱を内包するように形成されて、支持部材が挿通される通孔を備えるカバー体とを有して構成され、前記カバー体は、前記下地材との間に隙間を設けた状態で支柱に取り付けられると共に、前記基台は前記下地材に水密に留め付けられていることを特徴とする。これにより、カバー体により瓦材表面から下地材に向けての雨水の侵入を抑制することができる。また、たとえ雨水が通孔やカバー体と孔部との間の隙間等から進入する場合でも、基台は下地材に水密性を有した状態で取り付けられているので、これらの間への雨水の侵入は確実に防止され、当該雨水は下地材の勾配に沿って速やかに流れ落ちることとなる。また、通孔からカバー体内に雨水が侵入する場合であっても当該雨水はカバーの下端部と下地材の間の隙間から下地材の勾配に沿って流れ落ちることとなり、カバー体内に雨水が溜まってしまうこともない。
【0010】
また、本願発明は、前記下地材には貫通孔が開設されるともに、前記基台には前記貫通孔に対向する位置に挿通孔が設けられ、当該貫通孔と挿通孔に亘って締結部材が挿通されることで当該基台が下地材に取り付けられており、これら基台と下地材との間には、パッキン部材が設けられていることを特徴とする。これにより、締結部材によって基台と下地材との間に挟持力が付与され、当該挟持力がパッキン部材と下地材、パッキン部材と基台との間に生じてパッキン部材はこれら2部材に密着した状態でこれらの間に設けられることとなり、基台と下地材の間への雨水の侵入をより確実に防止することができる。
【0011】
また、本願発明は、前記カバー体は、円筒形状の側方カバー部と、該側方カバー部の上端において該側方カバー部に連接して内側を覆うように形成された上方カバー部とを有して構成され、前記側方カバー部が全周にわたって同一の高さを有し、前記側方カバー部の高さが前記下地材の表面部から前記瓦材に形成された前記孔部の周縁部までの最大距離よりも大きくなるように、前記カバー体が形成されることを特徴とする。これにより、カバー体の上方カバー部が瓦材の表面部よりも上側に位置することになり、瓦材の表面部から上方に突出する側方カバー部と瓦材の表面部との交線が円弧状となって、側方カバー部の外周面が屋根の棟側から軒側に向かう方向(水勾配方向)において下り傾斜の滑らかな排水経路を構成するので、カバー体よりも棟側において瓦材に降りかかる雨水等は、側方カバー部の外周面に沿って円滑に排水され、瓦材上のカバー体周囲において雨水が滞留するのを防止することができる。
【0012】
また、本願発明は、前記カバー体の前記上方カバー部が平坦となるように、前記カバー体が形成されることを特徴とする。これにより、カバー体の上方カバー部を下地材の表面部に対して平行となるようにカバー体を設置することができるので、瓦材とは異なる傾斜を有する下地材の傾斜を瓦材の外側からでも明確に把握することが可能となり、屋根用固定装置の設置、屋根設置体の設置等において施工を容易にすることができ、また施工状態を検証することができる。
【0013】
また、本願発明は、前記カバー体が前記基台に載置され、前記基台の一部が前記カバー体の下端より、はみ出ていることを特徴とする。これにより、カバー体は下地材との間に基台の厚み分の隙間を設けた状態で支柱に取り付けられることになり、通孔からカバー体内に雨水が侵入する場合であっても当該雨水はカバー体の下端部と下地材の間の隙間から下地材の勾配に沿って流れ落ちることとなり、カバー体内に雨水が溜まってしまうことが防止される。
【発明の効果】
【0014】
本願発明に係る屋根用固定装置によれば、雨水の瓦材下方への侵入を一次的に防止すると共に、たとえ雨水が瓦材よりも下方に侵入する場合でも、当該雨水が瓦材下方の下地材よりも下方に侵入することを確実に防止することができる二重の雨水侵入機能を有する簡易な構成の屋根用固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る屋根用固定装置を示す断面図である。
【図2】基台、支柱及び支持部材から成る構造の一例を示す斜視図である。
【図3】カバー体の構造の一例を示す斜視図である。
【図4】基台と下地材との間のパッキン部材の一例を示す正面図である。
【図5】第1の実施形態に係る屋根用固定装置における雨水の流れを示す断面図である。
【図6】基台、支柱及び支持部材から成る構造の一例を示す斜視図である。
【図7】基台、支柱及び支持部材から成る構造の一例を示す平面図である。
【図8】従来の屋根用固定装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 屋根用固定装置
2 ボルト(締結手段)
3 ナット(締結手段)
4 下地材
5 基台
6 支柱
7 カバー体
8 取付部材
9 ボルト(支持部材)
10 瓦材
11 孔部
12 シーリング部
13 ナット
14 ナット
21 隙間
22 ブチルテープ
31 雨水
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して本願発明に係る実施の形態を説明する。
図1は、屋根に固定された態様における、本願発明の第1の実施の形態に係る屋根用固定装置を示す断面図である。屋根用固定装置1は、ボルト2とナット3との対から構成される締結手段により下地材4に締結されて、下地材4に水密に留め付けられている2つの基台5と、それぞれの基台5に連接されて基台5から上方に延びる支柱6と、支柱6を内包するように形成されたカバー体7と、カバー体7は、下地材4との間に隙間21を設けた状態で支柱6の上壁部に取り付けられ、カバー体7に形成された通孔を通して上方に延び、レール等の取付部材8を支持する支持部材9とを有して構成されている。
【0018】
瓦材10に形成された孔部11とカバー体7との間には、コーキング材、接着剤等を充填することで形成されるか、あるいは防水パッキン等として与えられるシーリング部12が設けられている。
【0019】
図1に示されるように、この実施の形態において、支持部材9は、支柱6及びカバー体7にそれぞれ形成された通孔に挿通されるボルトとして与えられる。支柱6とカバー体7とは概ね同一の高さを有し、支持部材(ボルト)9にナット13を締結することで、カバー体7が支柱6に対して固定される。そして、取付部材8に形成された通孔に支持部材9を挿通させた状態において、支持部材9にナット14を締結することで、取付部材8が屋根用固定装置1に対して固定される。なお、基台5の下面と下地材4の表面部との接触面における水密性を向上させるために、少なくともこれら接触面が形成される領域において、下地材4上にブチルテープを張る構成とするのが好適である。また、締結手段の代わりに、基台5が下地材4にネジ、リベット等で鋲着されていてもよい。
【0020】
図2は基台、支柱及び支持部材から成る構造の一例を示す斜視図である。図2に示されるように、板状の2つの基台5には、それぞれボルトを挿通させるための通孔5aが形成されている。支柱6は、2つの基台5の端縁部にその下端部がそれぞれ連接されて当該連接部位から上方に延びる2つの側壁部6aと、基台5に対して概ね平行に延び、2つの側壁部6aを連結する上壁部6bとを有して構成されている。また、支柱6は、基台5が下地材4に固定された際に、上壁部6bが瓦材10の表面部よりも上側に位置するような高さを有するように形成されている。
【0021】
基台5及び支柱6は、板状部材を折り曲げることで形成することができる。また、2つの基台5に対して支柱6の側壁部6aの下端部をそれぞれ溶接して接合することにより、基台5と支柱6とを一体的に形成することもできる。基台5及び支柱6は、例えば鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属や樹脂成形品等から形成することができる。なお、この実施の形態では、支持部材9は支柱6の上壁部6bに形成された通孔6cに挿通されるボルトとして与えられているが、支持部材9として周知の種々の支持器具を用いることができる。また、支持部材9を例えば支柱6の上壁部6bに溶接することで支持部材9と支柱6とが一体的に形成される構成としてもよい。
【0022】
図3は、カバー体の構造の一例を示す斜視図である。図3に示されるように、カバー体7は、円筒状の側方カバー部7aと、側方カバー部7aの上端部に連接して側方カバー部7aの内側を覆うように形成された上方カバー部7bと、支持部材9を挿通させるために上方カバー部7bに形成された通孔7cとを有して構成されている。カバー体7は、少なくとも支柱6の一対の側壁部6aと上壁部6bを内包する大きさを有し、また側方カバー部7aの下端部から上方カバー部7bの裏面までの高さが基台5の底面から支柱6の上壁部6bの上面までの高さと概ね同一であるかあるいはそれよりも少し小さくなるように、形成されている。なお、カバー体7に形成された通孔7cにおける水密性を向上するために、カバー体7の表面に向けて締結されるナット13とカバー体7の表面部との間に防水パッキンを介在させる構成としてもよい。なお、カバー体は、塩化ビニル等の防水性の樹脂素材や防錆塗料を塗布した金属部材、或いは防錆性を有するアルミやスチールを素材として形成されている。
【0023】
次に、第1の実施の形態による屋根用固定装置を家屋の屋根上に設置する施工手順について説明する。先ず下地材4上に配設されている瓦材10にドリル等を用いて孔部11を形成する。次に、孔部11を介して基台5と支柱6とから成るユニットを挿入し、ボルト、ナット等の締結手段を用いて基台5を下地材4に締結する。その際、図4に示すように、基台5の下面と下地材4の表面部との接触面における水密性を向上させるために、少なくともこれら接触面が形成される領域において、下地材4上にパッキン部材として、ブチルテープ22を張る構成とするのが好適である。次に、ボルト(支持部材)9を支柱6の通孔6cに挿通させる。そして、カバー体7に形成された通孔7cにボルト9を挿通させて、支柱6を内包するようにしてカバー体7を支柱6の上壁部6b上に設置する。次に、ボルト9にナット13を螺合し、その後カバー体7の表面部に向けてナット13を締結することにより、支柱6の上壁部6bの上面とカバー体7の上方カバー部7bの下面とを接触させる。この際、ナット13がカバー体7の表面部を押圧することで、カバー体7が下方に移動させられるが、カバー体7は、下地材4との間に隙間を設けた状態で支柱6に取り付けられている。
【0024】
次に、カバー体7の側方カバー部7bと瓦材10に形成された孔部11の周縁部との間に、例えばコーキング材を介装することによりシーリング部12を形成する。さらに、屋根設置体を屋根上に設置するための取付部材8を固定するために、取付部材8に形成された通孔にボルト9を挿通させた状態でナット14を締結する。これにより、取付部材8は、支持部材9、支柱6及び基台5を介して、下地材4に固定される。
【0025】
以上のように、この実施の形態によれば、下地材4上に複数の瓦材10を敷設することで構成される屋根のいずれかの瓦材10に形成された孔部11を介して瓦材10の下側に導入されるとともに下地材4に固定され、瓦材10の上方で屋根設置体を支持する屋根用固定装置1が、下地材4に締結されて、下地材4に水密に留め付けられる複数の基台5と、基台5に連接して基台5から上方に延びる支柱6と、支柱6の上部から上方に延びて屋根設置体を支持する支持部材9と、支柱6を内包するように形成されて、支持部材9が挿通される通孔7cを備えるカバー体7とを有して構成され、カバー体7は、下地材4との間に隙間を設けた状態で支柱6に取り付けられている。屋根用固定装置1は、カバー体7が雨水の瓦材10下方への侵入を一次的に防止すると共に、たとえ雨水がカバー体7内に侵入する場合でも、基台5は下地材4に水密に留め付けられているので、当該雨水が瓦材10下方の下地材4よりも下方に侵入することを確実に防止することができる二重の雨水侵入機能を有す。図5に示すように、さらにカバー体7内に雨水31が侵入する場合であっても当該雨水31はカバー体7の下端部と下地材4の間の隙間21から下地材4の勾配に沿って、カバー体7の外へ流れ落ちることとなり、カバー体7内に雨水が溜まってしまうことが防止される。
【0026】
また、基台5と下地材4の間に例えばブチルテープのようなパッキン部材を設けることにより、基台5と下地材4との間の水密性をさらに高めることができる。雨水がカバー体7内に侵入する場合でも、当該雨水が瓦材10下方の下地材4よりも下方に侵入することをさらに確実に防止することができるので、簡易な構造を有して信頼性の高い屋根用固定装置を提供することができる。
【0027】
また、カバー体7の側方カバー部7aの高さが下地材4の表面部から瓦材10に形成された孔部11の周縁部までの最大距離よりも大きくなるように、カバー体7が形成されるようにしたので、カバー体7の上方カバー部7bが瓦材10の表面部よりも上側に位置することになり、瓦材10の表面部から上方に突出する側方カバー部7aと瓦材10の表面部との交線が円弧状となって、側方カバー部7aの外周面が屋根の棟側から軒側に向かう方向(水勾配方向)において下り傾斜の滑らかな排水経路を構成するので、カバー体7よりも棟側において瓦材10に降りかかる雨水等は、側方カバー部7aの外周面に沿って円滑に排水されることになる。これにより、瓦材10上のカバー体7周囲において雨水が滞留するのを防止することができる。
【0028】
また、カバー体7の側方カバー部7aが全周にわたって同一の高さを有するとともに、上方カバー部7bが平坦となるように、カバー体7が形成されているので、カバー体7の上方カバー部7bを下地材4の表面部に対して平行になるようにカバー体7を設置することができる。これにより、瓦材10と異なる傾斜を有する下地材4の傾斜を瓦材10の外側からでも明確に把握することが可能となり、屋根用固定装置の設置並びに屋根設置体の設置等において施工を簡易に実施することができ、また施工状態を検証することができる。また、屋根の傾斜は各建物によってさまざまな傾斜角度を有するものとなるが、カバー体の側方カバー部の高さは全周に亘って等しく形成されているため、いずれの屋根上にカバー体を設置しても上部カバー体の傾斜角度を屋根の傾斜角度に一致させることができるものとなる。また、カバー体の側方カバー部の高さは全周に亘って等しく形成されており、且つ、上方カバー部の中央部に通孔が形成されているため、カバー体の向きに異方性がなくなり、カバー体をいずれの向きであっても支柱に取り付けることができる。
【0029】
カバー体を、下地材との間に隙間を設けた状態で支柱の上壁部に取り付けるようにするためには様々な構成を採り得る。ひとつの構成として、カバー体が基台と支柱を内包するように形成されていて、カバー体が下地材との間に隙間を設けた状態で支柱に取り付けられるようにされているようにする。例として、再び図2及び図3を参照すると、カバー体7の側方カバー部7aの内面の直径は、基台5の全長及び全幅よりも大きく、かつ、カバー体7の側方カバー部7aの下端部から上方カバー部7bの裏面までの高さが、基台5の底面から支柱6の上壁部6bの上面までの高さよりも少し小さくなるように、形成されていると、カバー体7を、基台5及び支柱6を内包し、下地材4との間に隙間を設けた状態で支柱6の上壁部に取り付けることが可能である。
【0030】
カバー体を、下地材との間に隙間を設けた状態で支柱の上壁部に取り付けるようにする別の構成として、カバー体が基台に載置され、基台の一部がカバー体の下端より、はみ出ている形態とすることができる。例として図6は、基台5の全長が円筒形状の側方カバー部7aの内面の直径よりも大きく、かつ、基台5の幅が側方カバー部7aの内面の直径よりも小さい場合の屋根用固定装置1を示す斜視図である。図7はその平面図である。基台5の全長が円筒形状の側方カバー部7aの内面の直径よりも大きく、かつ、基台5の幅が側方カバー部7aの内面の直径よりも小さいので、基台の一部がカバー体の下端より、はみ出ている。側方カバー部7aの下端部から上方カバー部7bの裏面までの高さが基台5の上面から支柱6の上壁部6bの上面までの高さとほぼ等しい。したがって、カバー体7は、側方カバー部7aの下端部の一部は基台5の上面に接触するが、側方カバー部7aの下端部の基台5の上面に接触しない部分は基台5の厚み分だけ下地材4から隙間21を空けて浮いた状態になる。これにより、カバー体7の通孔7cに支持部材9を挿通するだけでカバー体7と下地材4との間に隙間21が形成されるものとなり、カバー体7に雨水が侵入した場合でも、当該基台5の上面に接触しない部分にできた隙間21から排出される。
【0031】
なお、上記の実施の形態により説明される屋根用固定装置は、本願発明を限定するものではなく、例示することを意図して開示されているものである。本願発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載により定められるものであり、特許請求の範囲において記載された発明の技術的範囲において種々の設計的変更が可能である。例えば、実施の形態に記載されるカバー体は筒状の側方カバー部と側方カバー部の内側を覆うように形成される上方カバー部とから構成されるが、カバー体の構成はこのような構成に限られるものではなく、支柱(及び基台)を内包するように形成される例えばドーム状の形態を有するカバー体を用いることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材上に複数の瓦材を敷設することで構成される屋根のいずれかの前記瓦材に形成された孔部を介して前記瓦材の下側に導入されるとともに前記下地材に固定され、前記瓦材の上方で屋根設置体を支持する屋根用固定装置において、
前記下地材に鋲着または締結される1または複数の基台と、
前記基台に連接して前記基台から上方に延びる支柱と、
前記支柱の上部から上方に延びて前記屋根設置体を支持する支持部材と、
前記支柱を内包するように形成されて、前記支持部材が挿通される通孔を備えるカバー体とを有して構成され、
前記カバー体は、前記支柱を内包して前記下地材との間に隙間を設けた状態で前記支柱に取り付けられると共に、前記基台は前記下地材に水密に留め付けられていることを特徴とする屋根用固定装置。
【請求項2】
前記下地材には貫通孔が開設されるともに、前記基台には前記貫通孔に対向する位置に挿通孔が設けられ、当該貫通孔と挿通孔に亘って締結部材が挿通されることで当該基台が下地材に取り付けられており、これら基台と下地材との間には、パッキン部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の屋根用固定装置。
【請求項3】
前記カバー体は、円筒形状の側方カバー部と、該側方カバー部の上端において該側方カバー部に連接して内側を覆うように形成された上方カバー部とを有して構成され、
前記側方カバー部が全周にわたって同一の高さを有し、前記側方カバー部の高さが前記下地材の表面部から前記瓦材に形成された前記孔部の周縁部までの最大距離よりも大きくなるように、前記カバー体が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の屋根用固定装置。
【請求項4】
前記カバー体の前記上方カバー部が平坦となるように、前記カバー体が形成されることを特徴とする請求項3に記載の屋根用固定装置。
【請求項5】
前記カバー体は前記基台に載置され、前記カバー体は前記基台の一部が前記カバー体の下端よりはみ出す状態で前記支柱に取り付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の屋根用固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−87587(P2013−87587A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231888(P2011−231888)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】