展開構造体及び衝撃吸収装置
【課題】狭小部にも設置することができ、展開に大きな力を必要とせず、平面から立体に展開して衝突エネルギーを有効に吸収することができる展開構造体及び衝撃吸収装置を得る。
【解決手段】展開構造体10は、固定板22と、固定板22と対向して平行に配置された展開板24と、固定板22に回転可能に設けられた複数の第1回動部28と、展開板24に回転可能に設けられた複数の第2回動部30と、第1回動部28及び第2回動部30に連結された複数のアーム部材32と、展開板24を固定板22から離間させるエアバック装置16とを有する。ここで、展開時にエアバック装置16により展開板24が固定板22から離間され、アーム部材32が回転し、展開板24がスライドするように立上げられる。そして、展開板24に衝撃力が作用したとき、アーム部材32に衝撃力が伝わり、アーム部材32の軸力、曲げ抵抗、塑性変形により衝撃エネルギーが吸収される。
【解決手段】展開構造体10は、固定板22と、固定板22と対向して平行に配置された展開板24と、固定板22に回転可能に設けられた複数の第1回動部28と、展開板24に回転可能に設けられた複数の第2回動部30と、第1回動部28及び第2回動部30に連結された複数のアーム部材32と、展開板24を固定板22から離間させるエアバック装置16とを有する。ここで、展開時にエアバック装置16により展開板24が固定板22から離間され、アーム部材32が回転し、展開板24がスライドするように立上げられる。そして、展開板24に衝撃力が作用したとき、アーム部材32に衝撃力が伝わり、アーム部材32の軸力、曲げ抵抗、塑性変形により衝撃エネルギーが吸収される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開構造体及び衝撃吸収装置に係り、特に、平面から立体に展開可能な展開構造体と、衝突位置にある展開構造体を展開させて衝突による衝撃を吸収する衝撃吸収装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の衝突安全構造では、車両の構成部材の変形により衝突エネルギーが吸収され、車両などの衝撃力が緩和されている。例えば、前面衝突であれば、衝突時にフロントボディが変形して衝突エネルギーを吸収し、その後ろ側の車両の衝撃力が緩和される。このため、車両の構成部材については、衝突エネルギーを効率よく吸収するための構造が種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1では、運動変換装置を含む衝撃吸収緩衝装置が提案されている。運動変換装置は、枝状配置要素からなる梁構造を有しており、この梁構造で直線運動(衝撃)を回転運動に変換して、衝撃を吸収・緩衝して衝撃吸収力を向上させている。
【0004】
特許文献2では、ショックアブソーバでバンパを支持し、ショックアブソーバの弾性力と減衰力とによりバンパに対する衝撃を緩和する車両の衝撃緩和装置が提案されている。特許文献2の衝撃緩和装置は、ショックアブソーバを自動車用のサスペンションとして実用化されている可変ダンパで構成し、路上障害物との衝突時に、可変ダンパの減衰力を弱めてバンパを柔らかくしている。
【0005】
一方、衝撃吸収構造の初期形状をコンパクト化する試みとして、展開型の衝撃吸収装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3の衝撃吸収装置では、機械的なアクチュエータ手段により圧縮されたビームが展開して、エネルギー吸収構造体を形成する。このため、初期形状が小さい寸法であるにもかかわらず、展開後は比較的長い「つぶれ長さ」が提供される。
【特許文献1】特開2000−257688号公報
【特許文献2】特開平10−109605号公報
【特許文献3】特表2002−528682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、構成部材の変形により衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収構造では、衝突エネルギーを有効に吸収するために、構成部材を変形させるための領域を予め確保しておかなければならない。このため、衝撃吸収構造を適用できる用途や範囲が制限され、衝突エネルギーを有効に吸収する衝撃吸収構造を狭小部に設置することが困難となっている。
【0007】
また、特許文献2のように、ショックアブソーバ(油圧シリンダ等)の粘性抵抗を利用して衝突エネルギーを吸収する衝突吸収構造は、ショックアブソーバを配置するための領域を予め確保しておかなければならない。しかし、ショックアブソーバの小型化は困難であり、構成部材の変形より衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収構造と同様に、狭小部に設置することが困難となっている。
【0008】
さらに、特許文献3の展開型の衝撃吸収装置は、複雑で小型化や軽量化が困難であり、アクチュエータ手段や圧縮されたビームを収納するための領域を予め確保しておかなければならず、狭小部に設置することが困難となっている。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、展開前は平面的で狭小部にも設置することができ、展開に大きな力を必要とせず、平面から立体に展開して衝突エネルギーを有効に吸収することができる展開構造体及び衝撃吸収装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る展開構造体は、衝撃が作用する物に固定される固定部材と、前記固定部材と対向して平行に配置された展開部材と、前記固定部材に回転可能に設けられた複数の第1回動部材と、前記展開部材に回転可能に設けられた複数の第2回動部材と、前記第1回動部材及び前記第2回動部材に互いに平行となるように連結された複数のアーム部材と、前記複数のアーム部材を倒して前記固定部材と前記展開部材を接近させた状態から、前記展開部材を前記固定部材から離間させる展開手段と、を有する。
【0011】
上記構成によれば、展開構造体の非展開時には、展開構造体は、アーム部材を倒して固定部材と展開部材が接近した収納状態となっている。
【0012】
一方、展開構造体の展開時には、展開手段が展開部材を固定部材から離間させる。これにより、第1回動部材と第2回動部材が回転してアーム部材が回転し、展開部材が固定部材に対してスライドするように立上げられる。
【0013】
ここで、互いに平行となるように連結された複数のアーム部材が、ほとんど摩擦の無い状態で固定部材及び展開部材と回転結合している。これにより、アーム部材やスライドする側の展開部材の質量を軽量とすれば、展開部材がスライドして展開する際に、大きな摩擦力や慣性力、重力などの影響を受けないため、大きな力を加えること無く展開可能である。
【0014】
そして、展開部材に固定部材方向への力(衝撃力)が作用したとき、アーム部材の両端部が第1回動部材と第2回動部材に保持され、アーム部材に衝撃力が作用する。このとき、まず、アーム部材の軸力や曲げ抵抗で衝撃エネルギーが吸収される。続いて、アーム部材が座屈(塑性変形)して衝撃エネルギーを吸収する。展開部材は、アーム部材の長さとほぼ等しい長さのエネルギー吸収ストロークが確保されているので、衝撃エネルギーを十分吸収することができる。
【0015】
このように、本発明では、展開部材が収納可能となっているため、展開構造体を狭小部に設置することができる。また、展開部材がスライドするように立上がって展開することにより、展開後のエネルギー吸収ストロークが十分に得られる。
【0016】
本発明の請求項2に係る展開構造体は、記第1回動部材は、一端が前記固定部材に回転可能に取付けられた第1回転部と、他端に前記アーム部材が固定される第1支持部とを有し、前記第2回動部材は、一端が前記固定部材に回転可能に取付けられた第2回転部と、他端に前記アーム部材が固定される第2支持部とを有する。
【0017】
上記構成によれば、展開部材の展開時に第1回転部及び第2回転部が回転すると、第1支持部及び第2支持部が、第1回転部及び第2回転部の回転中心からオフセットした位置で固定部材及び展開部材と接触する。これにより、第1回動部材及び第2回動部材の回転が規制され、アーム部材が固定される。
【0018】
このように、第1回動部材及び第2回動部材において、第1回転部及び第2回転部が、第1支持部及び第2支持部から離れているので、回転するだけでアーム部材が固定され、アーム部材の固定手段を別途設ける必要がなくなり、展開構造体を簡易な構成とすることができる。
【0019】
本発明の請求項3に係る衝撃吸収装置は、請求項1又は請求項2に記載の展開構造体が少なくとも1つ配置された衝撃吸収部と、衝突物を特定するための情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段で取得された情報に基づいて、衝突が不可避であると予測された場合に、前記展開手段を駆動制御して前記展開部材を展開させる制御部と、を含む。
【0020】
上記構成によれば、情報取得手段により、衝突物を特定するための情報が取得される。続いて、制御部が、情報取得手段で取得された情報に基づいて、衝突が不可避であると予測した場合に、展開手段を駆動制御して展開部材を展開させる。展開部材の展開によって、衝撃吸収のためのエネルギー吸収ストロークが十分に得られる。
【0021】
続いて、衝撃吸収部に衝突物が衝突すると、展開部材に固定部材方向への力(衝撃力)が作用し、アーム部材の両端部が第1回動部材と第2回動部材に保持され、アーム部材に衝撃力が作用する。このとき、第1アーム部材の軸力、曲げ抵抗、及び塑性変形により衝撃エネルギーが吸収される。展開部材は、アーム部材の長さとほぼ等しい長さのエネルギー吸収ストロークが確保されているので、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0022】
このように、本発明では、展開部材が収納可能となっているため、展開構造体を狭小部に設置することができる。また、展開部材がスライドするように立上がって展開することにより、展開後のエネルギー吸収ストロークが十分に得られる。
【0023】
本発明の請求項4に係る衝撃吸収装置は、前記展開手段が、前記固定部材と前記展開部材の間に配置された袋体と、前記袋体の内部に気体又は液体を送出して拡張させる送出手段と、を有する。
【0024】
上記構成によれば、制御部が、情報取得手段で取得された情報に基づいて、衝突が不可避であると予測した場合に、送出手段を駆動して袋体の内部に気体又は液体を送り込み、展開部材を展開させる。このように、気体又は液体を送り込むだけで展開部材を展開させることができるので、展開手段を簡易な構成とすることができる。
【0025】
本発明の請求項5に係る衝撃吸収装置は、前記展開手段が、エアバック装置である。
【0026】
上記構成によれば、エアバックに気体が送り込まれることにより展開部材が展開するので、液体を送り込むものと比較して、展開部材の展開時間を短くすることができる。
【0027】
本発明の請求項6に係る衝撃吸収装置は、前記展開手段が、前記第1回動部材を回転させる回転モータである。
【0028】
上記構成によれば、回転モータによって第1回動部材が回転することにより展開部材が展開するので、展開手段を簡易な構成とすることができる。
【0029】
本発明の請求項7に係る衝撃吸収装置は、前記展開手段が、前記展開部材に一端が連結されたワイヤ部材と、前記ワイヤ部材の他端を巻取る巻取モータと、を有する。
【0030】
上記構成によれば、巻取モータがワイヤ部材の他端を巻取ると、ワイヤ部材を介して展開部材が引かれて展開するので、展開手段を簡易な構成とすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、上記構成としたので、展開構造体を狭小部に設置することができる。また、展開部材の展開に大きな力を必要としない。さらに、展開部材の展開後のエネルギー吸収ストロークが十分に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の展開構造体及び衝撃吸収装置の実施形態を図面に基づき説明する。
【0033】
図1には、衝突物との衝突による衝撃を吸収するための衝撃吸収装置100を有する車両200が示されている。車両200は、フードパネル202、フロントバンパ204、フロントサイドドア206、フロントフェンダーパネル208、フロントピラー210を有している。ここで、本実施形態では、衝撃吸収装置100は、フロントバンパ204のバンパカバーとバンパフレームとの間に設けている。
【0034】
次に、衝撃吸収装置100について説明する。
【0035】
図2には、衝撃吸収装置100の構成がブロック図で示されている。衝撃吸収装置100は、衝撃吸収部110と、衝突物の衝突位置を特定するための情報を取得する情報取得手段として設置されたセンサ部102と、センサ部102から取得した情報に基づいて展開構造体10の展開駆動を制御する制御部104と、が設けられている。
【0036】
衝撃吸収部110は、前述のフロントバンパ204(図1参照)と展開構造体10を備えている。展開構造体10は、制御部104により展開駆動を行う展開駆動部14と、展開駆動部14の展開駆動により展開される展開構造部12とで構成されている。
【0037】
センサ部102は、車両200の前方、側方及び後方を撮影するビデオカメラ102Aと、車両200の前方、側方及び後方の熱画像を撮影する赤外線カメラ102Bと、自車両の前方、側方及び後方の障害物(衝突物)を検出するレーダ102Cと、車両200への前方、側方及び後方からの衝突を検知する感圧センサ102Dと、が設けられている。レーダ102Cは、レーザレーダでもよく、ミリ波レーダでもよい。また、ビデオカメラ102A、赤外線カメラ102B、レーダ102C、及び感圧センサ102Dの各々で得られたデータは、制御部104に逐次入力される。
【0038】
制御部104は、衝突物が衝突する衝突部位を推定する衝突部位推定手段106と、推定された衝突部位において衝突物が衝突する衝突範囲を推定する衝突範囲推定手段108と、が設けられている。ここで、制御部104は、センサ部102から入力されたデータに基づいて衝突が不可避であると予測された場合に、衝突部位における衝突範囲に設けられた衝撃吸収部110の展開駆動部14を作動して、衝突位置にある展開構造部12を展開させるように、予めプログラム設定されている。
【0039】
図3は、制御部104で行われる作動ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0040】
まず、ステップS10では、センサ部102から入力されたデータに基づいて、衝突の危険性が検知される。例えば、レーダ102Cで得られたデータ等から、衝突物の接近の有無や衝突物の接近方向を検知することができる。衝突物の接近方向が分かれば、前面衝突か側面衝突かも判断することができ、衝突物が衝突する部位を推定することができる。
【0041】
続いて、ステップS12では、センサ部102から入力されたデータに基づいて、衝突物の形状・重量・速度を予測する。衝突物の形状・重量・速度が分かれば、衝突物が衝突する部位だけでなく、衝突部位における具体的な衝突の範囲を推定することができる。
【0042】
次に、ステップS14では、予測された衝突物の形状・重量・速度から、衝突を回避できるか否かが判断される。衝突は回避できると判断(肯定判断)された場合は、そこでルーチンを終了する。一方、衝突は回避できないと判断(否定判断)した場合は、衝撃吸収部110(図2参照)の展開構造部12を展開させるために、展開駆動部14に駆動信号を出力して、ルーチンを終了する。展開により、複数の梁を有する展開構造体10が形成され、衝突エネルギーが吸収される。このように、必要な部位の展開構造体10を展開させるなど、衝突物の特性に応じて制御動作が行われる。
【0043】
次に、展開駆動部14について説明する。
【0044】
図4には、展開駆動部14としてのエアバック装置16が示されている。図4(a)は、エアバック装置16の構造を示す断面図であり、図4(b)は、エアバック装置16が作動した状態を示す概略図である。エアバック装置16は、ガスを瞬時に発生させるインフレータ18と、インフレータ18から送り込まれたガスにより瞬時に膨らむバック(袋体)20と、を備えている。エアバック装置16が動作する前は、バック20は折り畳まれて収納されている。衝突が検知されると、インフレータ18に駆動信号が入力され(点火電流がONになり)、バック20にガスが送り込まれて、バック20が瞬時に膨張するようになっている。
【0045】
次に、展開構造体10について説明する。
【0046】
図5には、展開構造体10の斜視図が示されている。なお、図5において、上下方向(矢印A、B方向)が水平方向を表しており、展開構造体10は、水平方向に展開するようになっている。また、図5は、矢印A方向への展開途中の状態を示しており、非展開時には、展開構造体10は、矢印B方向に畳まれて収納されている。
【0047】
展開構造体10は、フロントバンパ204(図1参照)のバンパフレーム(本体側)に図示しないボルト及びナットで固定される固定板22と、固定板22と対向して平行に配置された展開板24とを有している。固定板22及び展開板24の互いに対向する面には、回転移動して展開板24を固定板22に近接又は離間させる4つの可動部26(26A、26B、26C、26D)が互いに並列となるように取付けられている。なお、4つの可動部26A〜26Dは、いずれも同じ部材で構成されているため、以後は可動部26Aについて説明し、可動部26B〜26Dの説明は省略する。
【0048】
可動部26Aは、固定板22の平面22Aに取付けられた第1回動部28と、展開板24の平面24Aに取付けられた第2回動部30と、第1回動部28及び第2回動部30に両端が連結された円柱棒状のアーム部材32とで構成されている。なお、第1回動部28及び第2回動部30は、同じ部材で構成されており、アーム部材32の中央を中心として、各部材が互いに点対称の配置となっている。また、固定板22の平面24Aには、エアバック装置16のバック20(図4参照)が設けられている。
【0049】
アーム部材32を構成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)などの汎用樹脂や、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。また、繊維強化された複合材料や、金属と繊維材料と樹脂との結合構造体なども、材料として好適である。
【0050】
第1回動部28は、柱状の取付部34を有しており、取付部34が固定板22の平面22A上に立設されている。取付部34の先端部には、取付部34を挟むように平面視略コ字状に切欠部36が形成された板状の回転部38が設けられている。ここで、回転部38は、切欠部36に取付部34の先端部が挿入され、回転部38及び取付部34に形成された貫通穴(図示省略)にボルト及びナットからなる締結部材40が挿通されることにより、固定板22に対して回転可能となっている。
【0051】
回転部38における締結部材40の締結部と反対側の端部には、略円柱状の固定部42が突設されている。固定部42の上面には、アーム部材32の一端が嵌合により固定されている。また、固定部42の底面42Aは、展開板24の展開時に、固定板22の平面22Aと接触するようになっている。
【0052】
第2回動部30は、第1回動部28と同様にして、取付部34、切欠部36、回転部38、締結部材40、固定部42、及び底面42Aを備えており、固定部42にアーム部材32の他端が嵌合により固定されている。これにより、可動部26Aは、矢印C方向からの正面視にて、時計回り又は反時計回りに回転可能となっており、展開板24の展開時に第1回動部28が時計回りに回転すると、固定部42の底面42Aと平面22A、及び底面42Aと平面24Aとがそれぞれ接触して、展開板24が支持されるようになっている。
【0053】
次に、本発明の実施形態の作用について説明する。
【0054】
図6(a)は、衝突物との衝突が検知される前(展開前)の展開構造体10の状態を示している。展開前は、固定板22と展開板24が近接配置されており、エアバック装置16のバック20が、固定板22と展開板24の間に折り畳まれて収納されている。
【0055】
まず、図6(b)に示すように、センサ部102(図2参照)で衝突が検知されたとき、インフレータ18(図4参照)に駆動信号が入力されて、バック20にガスが送り込まれ、バック20が瞬時に膨張する。膨張したバック20により、展開板24が矢印A方向に押圧されると共に、可動部26A〜26Dが、固定板22側の第1回動部28の回転部38を回転中心として時計回りに回転する。
【0056】
続いて、図6(c)に示すように、展開板24がスライドしながら立ち上げられると、第1回動部28の固定部42の底面42Aと固定板22の平面22Aが接触する。同時に、第2回動部30の固定部42の底面(図では上面)42Aと展開板24の平面24Aとが接触する。ここで、各固定部42は、各回転部38の回転中心からオフセットした位置で固定板22及び展開板24と接触するため、第1回動部28及び第2回動部30の回転が規制され、アーム部材32が固定される。これにより、展開板24が可動部26A〜26Dで支持される。なお、バック20は、展開板24の展開が完了すると、内部のガスが抜かれてしぼむ。
【0057】
ここで、互いに平行となるように連結された複数のアーム部材32が、ほとんど摩擦の無い状態で固定板22及び展開板24と回転結合している。これにより、アーム部材32や展開板24の質量を軽量とすれば、展開板24がスライドして展開する際に、大きな摩擦力や慣性力、重力などの影響を受けないため、大きな力を加えること無く展開可能である。
【0058】
続いて、図7(a)〜図7(c)に示すように、衝突物がフロントバンパ204(図1参照)に衝突すると、衝撃力Fが展開板24に作用し、展開板24は固定板22へ向けて押圧される。ここで、アーム部材32の両端部が、第1回動部28及び第2回動部30に保持されているため、アーム部材32は移動(回動)が規制されている。これにより、各アーム部材32に衝撃力Fが作用する。
【0059】
そして、展開板24及びアーム部材32に継続して衝撃力Fが作用すると、初めに、アーム部材32の軸力や曲げ抵抗により衝突エネルギーが吸収される。続いて、アーム部材32が、略くの字状に塑性変形しながら衝突エネルギーを吸収し、やがて折り畳まれる。
【0060】
ここで、展開構造体10では、アーム部材32の長さとほぼ等しい長さのエネルギー吸収ストロークが確保されているため、衝突エネルギーを十分吸収することができる。そして、アーム部材32が完全に潰れると、展開板24は、固定板22及び第1回動部28によって移動を規制される。なお、バック20の図示は省略している。
【0061】
このように、本発明の展開構造体10では、展開板24が収納可能となっているため、展開構造体10を狭小部に設置することができる。また、展開板24がスライドするように立上って展開することにより、展開後のエネルギー吸収ストロークが十分に得られる。
【0062】
次に、展開構造体10を用いた衝突実験について説明する。
【0063】
図8(a)、(b)は、展開構造体10の衝突実験の方法を示す概略図(正面図、平面図)である。台車50は、L字型の荷台54が設けられており、荷台54の側面56(衝突側)に展開構造体10の固定板22が取付けられている。ここで、重量15kgの台車50を矢印D方向に速度3m/s(メートル/秒)で走行させて剛壁面52に衝突させたときの時間と台車50に作用する荷重との関係を図9に示す。図9において、時間0.02秒が衝突時となる。台車50は、衝突時に4.5kN程度の荷重が作用するが、衝突エネルギーは徐々に吸収され、台車50が受ける衝撃力が大幅に緩和されることが確認された。
【0064】
次に、可動部26の傾斜角度を変更したときの展開構造体10への荷重実験について説明する。なお、本実験では、図5において、展開板24を0.1m×0.05mの矩形状とし、アーム部材32の長さを0.1mとして、固定板22に対するアーム部材32の傾斜角度を63°、71°、90°と変更した3種類の展開構造体10を用いた。また、本実験では、展開板24に重量10kgの重りが5m/sの速度で衝突したときの時間と、固定板22に作用する荷重との関係を得た。
【0065】
図10(a)、(b)、(c)は、アーム部材32の傾斜角度をそれぞれ63°、71°、90°としたときの衝突状態での時間と荷重との関係を示している。図10(a)〜(c)を比較すると、衝突時に作用する荷重は、アーム部材32の傾斜角度が小さい方が低く抑えられていることが分かる。このように、アーム部材32の傾斜角度を変更することにより、衝突時の荷重を低減させることが可能となる。
【0066】
なお、図10(a)、(b)のグラフでは、衝突後にさらにもう1つのピークが生じているが、これは、展開構造体10が衝突エネルギーを吸収してアーム部材32が潰れた後の展開板24に作用する荷重によるものである。アーム部材32の傾斜角度が倒れている方が、衝突エネルギー吸収ストロークが短く早く潰れるため、ピークの出現位置は、早い時間で現れることになる。
【0067】
次に、展開構造体10の他の実施形態(変形例)について説明する。なお、前述した実施形態と基本的に同一の部品には、前記実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0068】
図11(a)には、他の実施形態の第1例として、展開構造体60が示されている。展開構造体60は、前述の展開構造体10(図5参照)の第1回動部28及び第2回動部30に換えて、第3回動部62及び第4回動部64が設けられている。第3回動部62及び第4回動部64は、アーム部材32の軸線上に配置されている。また、第3回動部62及び第4回動部64は、第1回動部28及び第2回動部30の取付部34と切欠部36(図5参照)に係止部が設けられており、展開板24が展開したときに、この係止部で係止されることにより、アーム部材32を固定板22に対して垂直に立設可能としている。このように、回転する部位に係止部を形成することにより、各回動部をアーム部材32の軸線上に配置してもよい。
【0069】
図11(b)には、他の実施形態の第2例として、展開構造体70が示されている。展開構造体70は、前述の展開構造体10(図5参照)の第1回動部28及び第2回動部30に換えて、第5回動部72及び第6回動部74が設けられている。第5回動部72及び第6回動部74は、対向する位置にコ字状の溝が形成されており、この溝に板材76が嵌合され固定されている。このように、棒状のアーム部材32を用いるだけでなく、1組のアーム部材32に換えて、一枚の板材76を用いてもよい。
【0070】
図12(a)、(b)には、他の実施形態の第3例として、展開構造体80が示されている。展開構造体80は、前述の展開構造体10(図5参照)の固定板22の一端(下端)に設けられたボルト及びナットからなる締結部材82を回転軸として、板材からなる底蓋84が開閉可能(回転可能)に設けられている。底蓋84は、ソレノイド等の電磁スイッチによって移動する支持手段(図示省略)により支持されており、展開時に支持手段のスイッチがONとなることで、下方側へ開放されるようになっている。また、展開構造体80は、展開板24の一端(下端)に、錘部材86が取付けられている。
【0071】
展開構造体80は、非展開時において、第1回動部28が底蓋84で支持されており移動が規制されているため、可動部26A〜26Dが回転せず、展開板24の展開は行われない。一方、展開時には、前述の支持手段のスイッチがONとなり、底蓋84が開放される。これにより、第1回動部28の回転が自由に行われ、錘部材86の重みで展開板24が下方側へ移動して展開される。このように、底蓋84と錘部材86を用いることで、展開駆動部14を簡易な構成とすることができる。
【0072】
図13(a)には、他の実施形態の第4例として、展開構造体120が示されている。展開構造体120は、前述の展開構造体10(図5参照)の可動部26Aと可動部26Bのそれぞれの第1回動部28にギア(図示省略)が取付けられ、このギアがモータ122A、122Bで回転駆動される構成となっている。モータ122A、122Bは、制御部104(図2参照)で駆動制御される。このように、第1回動部材28を直接回転駆動させるようにしてもよい。なお、各第1可動部28に取付けられたギアを複数のギア列で連動させ、1つのモータで駆動することにより、さらに簡易な構成で展開が行える。
【0073】
図13(b)には、他の実施形態の第5例として、展開構造体130が示されている。展開構造体130は、前述の展開構造体10(図5参照)の展開板24の展開側(図の右側)端部にワイヤ132の一端が連結され、ワイヤ132の他端がモータ134で巻取られる構成となっている。モータ134は、制御部104(図2参照)で駆動制御される。このように、展開板24を引張ることで展開させるようにしてもよい。
【0074】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0075】
衝撃吸収装置100は、フロントバンパ204のバンパカバーとバンパフレームとの間の他に、例えば、フードパネル202を構成するアウタパネルとインナパネルとの隙間や、フードパネル202とフロントフェンダーパネル208との隙間など、通常はクラッシュボックスを設置できない狭く小さい部位に設置してもよい。また、バック時の衝突に備えて、ラッゲージドアやリアバンパに設置してもよく、フロントサイドドア206、フロントピラー210などに設置してもよい。
【0076】
展開構造体10、60、70、80、120、130は、いずれも複数並べて配置してもよい。また、各連結部は、連結部材として固定板又は展開板に固定されるものだけでなく、固定板、展開板に直接凹部を形成して、球体を回転自在に嵌めてもよい。
【0077】
また、展開構造体10を展開させる展開駆動部14として、エアバック装置16を用いる例について説明したが、展開構造体10を押圧することができればよく、エアバック装置16には限定されない。例えば、エアキャップのように気体や液体が封入された袋体を、展開構造体10の展開板24に押し付けるようにしてもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、押圧により展開構造体10を展開させる例について説明したが、加熱や電圧印加により自己変形する材料で展開構造体10を形成し、自己変形により展開構造体10を展開させることも可能である。自己変形する材料としては、熱膨張率の異なる2種類の金属板を合板したバイメタル、電界の作用により高分子ゲル中の可動イオンの濃度分布が変化して膨潤/収縮する高分子アクチュエータなどを用いることができる。
【0079】
また、可動部26は、2つ以上の複数で配置されればよい。可動部26の数が増加すると、衝突エネルギー吸収量が増加する。さらに、アーム部材32を長くし、幅を広くすると、衝突エネルギー吸収量がさらに増加する。
【0080】
また、アーム部材32は、軸線が直線状のものに限らず、軸線が湾曲したアーチ状の部材であってもよい。さらに、アーム部材32はパイプ状でもロッド状でもよく、パイプの中に発泡材(発砲アルミ、発泡ウレタン等)を入れてもよい。アーム部材32の断面形状は、円形に限らず、四角形、六角形等の多角形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態に係る衝撃吸収装置を車両に設置する場合の設置部位を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る衝撃吸収装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る制御部が行う作動ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るエアバック装置の断面図及び作動時の外観図である。
【図5】本発明の実施形態に係る展開構造体の斜視図である。
【図6】(a)〜(c)本発明の実施形態に係る展開構造体の展開状態を示す模式図である。
【図7】(a)〜(c)本発明の実施形態に係る展開構造体の衝突エネルギーの吸収状態を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態に係る展開構造体の衝突実験の方法を示す概略図である。
【図9】本発明の実施形態に係る展開構造体の衝突実験で得られた時間と荷重の関係を示すグラフである。
【図10】(a)〜(c)本発明の実施形態に係る展開構造体において、アーム部材の角度を変えたときの時間と荷重の関係を示すグラフである。
【図11】(a)本発明の他の実施形態の第1例に係る展開構造体の概略図である。(b)本発明の他の実施形態の第2例に係る展開構造体の斜視図である。
【図12】本発明の他の実施形態の第3例に係る展開構造体の概略図である。
【図13】(a)本発明の他の実施形態の第4例に係る展開構造体の概略図である。(b)本発明の他の実施形態の第5例に係る展開構造体の概略図である。
【符号の説明】
【0082】
10 展開構造体(展開構造体)
16 エアバック装置(展開手段、エアバック装置)
18 インフレータ(送出手段)
20 バック(袋体)
22 固定板(固定部材)
24 展開板(展開部材)
28 第1回動部(第1回動部材)
30 第2回動部(第2回動部材)
32 アーム部材(アーム部材)
38 回転部(第1回転部、第2回転部)
42 固定部(第1支持部、第2支持部)
100 衝撃吸収装置(衝撃吸収装置)
102 センサ部(情報取得手段)
104 制御部(制御部)
110 衝撃吸収部(衝撃吸収部)
122A モータ(回転モータ)
122B モータ(回転モータ)
132 ワイヤ(ワイヤ部材)
134 モータ(巻取モータ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開構造体及び衝撃吸収装置に係り、特に、平面から立体に展開可能な展開構造体と、衝突位置にある展開構造体を展開させて衝突による衝撃を吸収する衝撃吸収装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の衝突安全構造では、車両の構成部材の変形により衝突エネルギーが吸収され、車両などの衝撃力が緩和されている。例えば、前面衝突であれば、衝突時にフロントボディが変形して衝突エネルギーを吸収し、その後ろ側の車両の衝撃力が緩和される。このため、車両の構成部材については、衝突エネルギーを効率よく吸収するための構造が種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1では、運動変換装置を含む衝撃吸収緩衝装置が提案されている。運動変換装置は、枝状配置要素からなる梁構造を有しており、この梁構造で直線運動(衝撃)を回転運動に変換して、衝撃を吸収・緩衝して衝撃吸収力を向上させている。
【0004】
特許文献2では、ショックアブソーバでバンパを支持し、ショックアブソーバの弾性力と減衰力とによりバンパに対する衝撃を緩和する車両の衝撃緩和装置が提案されている。特許文献2の衝撃緩和装置は、ショックアブソーバを自動車用のサスペンションとして実用化されている可変ダンパで構成し、路上障害物との衝突時に、可変ダンパの減衰力を弱めてバンパを柔らかくしている。
【0005】
一方、衝撃吸収構造の初期形状をコンパクト化する試みとして、展開型の衝撃吸収装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3の衝撃吸収装置では、機械的なアクチュエータ手段により圧縮されたビームが展開して、エネルギー吸収構造体を形成する。このため、初期形状が小さい寸法であるにもかかわらず、展開後は比較的長い「つぶれ長さ」が提供される。
【特許文献1】特開2000−257688号公報
【特許文献2】特開平10−109605号公報
【特許文献3】特表2002−528682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、構成部材の変形により衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収構造では、衝突エネルギーを有効に吸収するために、構成部材を変形させるための領域を予め確保しておかなければならない。このため、衝撃吸収構造を適用できる用途や範囲が制限され、衝突エネルギーを有効に吸収する衝撃吸収構造を狭小部に設置することが困難となっている。
【0007】
また、特許文献2のように、ショックアブソーバ(油圧シリンダ等)の粘性抵抗を利用して衝突エネルギーを吸収する衝突吸収構造は、ショックアブソーバを配置するための領域を予め確保しておかなければならない。しかし、ショックアブソーバの小型化は困難であり、構成部材の変形より衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収構造と同様に、狭小部に設置することが困難となっている。
【0008】
さらに、特許文献3の展開型の衝撃吸収装置は、複雑で小型化や軽量化が困難であり、アクチュエータ手段や圧縮されたビームを収納するための領域を予め確保しておかなければならず、狭小部に設置することが困難となっている。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、展開前は平面的で狭小部にも設置することができ、展開に大きな力を必要とせず、平面から立体に展開して衝突エネルギーを有効に吸収することができる展開構造体及び衝撃吸収装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る展開構造体は、衝撃が作用する物に固定される固定部材と、前記固定部材と対向して平行に配置された展開部材と、前記固定部材に回転可能に設けられた複数の第1回動部材と、前記展開部材に回転可能に設けられた複数の第2回動部材と、前記第1回動部材及び前記第2回動部材に互いに平行となるように連結された複数のアーム部材と、前記複数のアーム部材を倒して前記固定部材と前記展開部材を接近させた状態から、前記展開部材を前記固定部材から離間させる展開手段と、を有する。
【0011】
上記構成によれば、展開構造体の非展開時には、展開構造体は、アーム部材を倒して固定部材と展開部材が接近した収納状態となっている。
【0012】
一方、展開構造体の展開時には、展開手段が展開部材を固定部材から離間させる。これにより、第1回動部材と第2回動部材が回転してアーム部材が回転し、展開部材が固定部材に対してスライドするように立上げられる。
【0013】
ここで、互いに平行となるように連結された複数のアーム部材が、ほとんど摩擦の無い状態で固定部材及び展開部材と回転結合している。これにより、アーム部材やスライドする側の展開部材の質量を軽量とすれば、展開部材がスライドして展開する際に、大きな摩擦力や慣性力、重力などの影響を受けないため、大きな力を加えること無く展開可能である。
【0014】
そして、展開部材に固定部材方向への力(衝撃力)が作用したとき、アーム部材の両端部が第1回動部材と第2回動部材に保持され、アーム部材に衝撃力が作用する。このとき、まず、アーム部材の軸力や曲げ抵抗で衝撃エネルギーが吸収される。続いて、アーム部材が座屈(塑性変形)して衝撃エネルギーを吸収する。展開部材は、アーム部材の長さとほぼ等しい長さのエネルギー吸収ストロークが確保されているので、衝撃エネルギーを十分吸収することができる。
【0015】
このように、本発明では、展開部材が収納可能となっているため、展開構造体を狭小部に設置することができる。また、展開部材がスライドするように立上がって展開することにより、展開後のエネルギー吸収ストロークが十分に得られる。
【0016】
本発明の請求項2に係る展開構造体は、記第1回動部材は、一端が前記固定部材に回転可能に取付けられた第1回転部と、他端に前記アーム部材が固定される第1支持部とを有し、前記第2回動部材は、一端が前記固定部材に回転可能に取付けられた第2回転部と、他端に前記アーム部材が固定される第2支持部とを有する。
【0017】
上記構成によれば、展開部材の展開時に第1回転部及び第2回転部が回転すると、第1支持部及び第2支持部が、第1回転部及び第2回転部の回転中心からオフセットした位置で固定部材及び展開部材と接触する。これにより、第1回動部材及び第2回動部材の回転が規制され、アーム部材が固定される。
【0018】
このように、第1回動部材及び第2回動部材において、第1回転部及び第2回転部が、第1支持部及び第2支持部から離れているので、回転するだけでアーム部材が固定され、アーム部材の固定手段を別途設ける必要がなくなり、展開構造体を簡易な構成とすることができる。
【0019】
本発明の請求項3に係る衝撃吸収装置は、請求項1又は請求項2に記載の展開構造体が少なくとも1つ配置された衝撃吸収部と、衝突物を特定するための情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段で取得された情報に基づいて、衝突が不可避であると予測された場合に、前記展開手段を駆動制御して前記展開部材を展開させる制御部と、を含む。
【0020】
上記構成によれば、情報取得手段により、衝突物を特定するための情報が取得される。続いて、制御部が、情報取得手段で取得された情報に基づいて、衝突が不可避であると予測した場合に、展開手段を駆動制御して展開部材を展開させる。展開部材の展開によって、衝撃吸収のためのエネルギー吸収ストロークが十分に得られる。
【0021】
続いて、衝撃吸収部に衝突物が衝突すると、展開部材に固定部材方向への力(衝撃力)が作用し、アーム部材の両端部が第1回動部材と第2回動部材に保持され、アーム部材に衝撃力が作用する。このとき、第1アーム部材の軸力、曲げ抵抗、及び塑性変形により衝撃エネルギーが吸収される。展開部材は、アーム部材の長さとほぼ等しい長さのエネルギー吸収ストロークが確保されているので、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0022】
このように、本発明では、展開部材が収納可能となっているため、展開構造体を狭小部に設置することができる。また、展開部材がスライドするように立上がって展開することにより、展開後のエネルギー吸収ストロークが十分に得られる。
【0023】
本発明の請求項4に係る衝撃吸収装置は、前記展開手段が、前記固定部材と前記展開部材の間に配置された袋体と、前記袋体の内部に気体又は液体を送出して拡張させる送出手段と、を有する。
【0024】
上記構成によれば、制御部が、情報取得手段で取得された情報に基づいて、衝突が不可避であると予測した場合に、送出手段を駆動して袋体の内部に気体又は液体を送り込み、展開部材を展開させる。このように、気体又は液体を送り込むだけで展開部材を展開させることができるので、展開手段を簡易な構成とすることができる。
【0025】
本発明の請求項5に係る衝撃吸収装置は、前記展開手段が、エアバック装置である。
【0026】
上記構成によれば、エアバックに気体が送り込まれることにより展開部材が展開するので、液体を送り込むものと比較して、展開部材の展開時間を短くすることができる。
【0027】
本発明の請求項6に係る衝撃吸収装置は、前記展開手段が、前記第1回動部材を回転させる回転モータである。
【0028】
上記構成によれば、回転モータによって第1回動部材が回転することにより展開部材が展開するので、展開手段を簡易な構成とすることができる。
【0029】
本発明の請求項7に係る衝撃吸収装置は、前記展開手段が、前記展開部材に一端が連結されたワイヤ部材と、前記ワイヤ部材の他端を巻取る巻取モータと、を有する。
【0030】
上記構成によれば、巻取モータがワイヤ部材の他端を巻取ると、ワイヤ部材を介して展開部材が引かれて展開するので、展開手段を簡易な構成とすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、上記構成としたので、展開構造体を狭小部に設置することができる。また、展開部材の展開に大きな力を必要としない。さらに、展開部材の展開後のエネルギー吸収ストロークが十分に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の展開構造体及び衝撃吸収装置の実施形態を図面に基づき説明する。
【0033】
図1には、衝突物との衝突による衝撃を吸収するための衝撃吸収装置100を有する車両200が示されている。車両200は、フードパネル202、フロントバンパ204、フロントサイドドア206、フロントフェンダーパネル208、フロントピラー210を有している。ここで、本実施形態では、衝撃吸収装置100は、フロントバンパ204のバンパカバーとバンパフレームとの間に設けている。
【0034】
次に、衝撃吸収装置100について説明する。
【0035】
図2には、衝撃吸収装置100の構成がブロック図で示されている。衝撃吸収装置100は、衝撃吸収部110と、衝突物の衝突位置を特定するための情報を取得する情報取得手段として設置されたセンサ部102と、センサ部102から取得した情報に基づいて展開構造体10の展開駆動を制御する制御部104と、が設けられている。
【0036】
衝撃吸収部110は、前述のフロントバンパ204(図1参照)と展開構造体10を備えている。展開構造体10は、制御部104により展開駆動を行う展開駆動部14と、展開駆動部14の展開駆動により展開される展開構造部12とで構成されている。
【0037】
センサ部102は、車両200の前方、側方及び後方を撮影するビデオカメラ102Aと、車両200の前方、側方及び後方の熱画像を撮影する赤外線カメラ102Bと、自車両の前方、側方及び後方の障害物(衝突物)を検出するレーダ102Cと、車両200への前方、側方及び後方からの衝突を検知する感圧センサ102Dと、が設けられている。レーダ102Cは、レーザレーダでもよく、ミリ波レーダでもよい。また、ビデオカメラ102A、赤外線カメラ102B、レーダ102C、及び感圧センサ102Dの各々で得られたデータは、制御部104に逐次入力される。
【0038】
制御部104は、衝突物が衝突する衝突部位を推定する衝突部位推定手段106と、推定された衝突部位において衝突物が衝突する衝突範囲を推定する衝突範囲推定手段108と、が設けられている。ここで、制御部104は、センサ部102から入力されたデータに基づいて衝突が不可避であると予測された場合に、衝突部位における衝突範囲に設けられた衝撃吸収部110の展開駆動部14を作動して、衝突位置にある展開構造部12を展開させるように、予めプログラム設定されている。
【0039】
図3は、制御部104で行われる作動ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0040】
まず、ステップS10では、センサ部102から入力されたデータに基づいて、衝突の危険性が検知される。例えば、レーダ102Cで得られたデータ等から、衝突物の接近の有無や衝突物の接近方向を検知することができる。衝突物の接近方向が分かれば、前面衝突か側面衝突かも判断することができ、衝突物が衝突する部位を推定することができる。
【0041】
続いて、ステップS12では、センサ部102から入力されたデータに基づいて、衝突物の形状・重量・速度を予測する。衝突物の形状・重量・速度が分かれば、衝突物が衝突する部位だけでなく、衝突部位における具体的な衝突の範囲を推定することができる。
【0042】
次に、ステップS14では、予測された衝突物の形状・重量・速度から、衝突を回避できるか否かが判断される。衝突は回避できると判断(肯定判断)された場合は、そこでルーチンを終了する。一方、衝突は回避できないと判断(否定判断)した場合は、衝撃吸収部110(図2参照)の展開構造部12を展開させるために、展開駆動部14に駆動信号を出力して、ルーチンを終了する。展開により、複数の梁を有する展開構造体10が形成され、衝突エネルギーが吸収される。このように、必要な部位の展開構造体10を展開させるなど、衝突物の特性に応じて制御動作が行われる。
【0043】
次に、展開駆動部14について説明する。
【0044】
図4には、展開駆動部14としてのエアバック装置16が示されている。図4(a)は、エアバック装置16の構造を示す断面図であり、図4(b)は、エアバック装置16が作動した状態を示す概略図である。エアバック装置16は、ガスを瞬時に発生させるインフレータ18と、インフレータ18から送り込まれたガスにより瞬時に膨らむバック(袋体)20と、を備えている。エアバック装置16が動作する前は、バック20は折り畳まれて収納されている。衝突が検知されると、インフレータ18に駆動信号が入力され(点火電流がONになり)、バック20にガスが送り込まれて、バック20が瞬時に膨張するようになっている。
【0045】
次に、展開構造体10について説明する。
【0046】
図5には、展開構造体10の斜視図が示されている。なお、図5において、上下方向(矢印A、B方向)が水平方向を表しており、展開構造体10は、水平方向に展開するようになっている。また、図5は、矢印A方向への展開途中の状態を示しており、非展開時には、展開構造体10は、矢印B方向に畳まれて収納されている。
【0047】
展開構造体10は、フロントバンパ204(図1参照)のバンパフレーム(本体側)に図示しないボルト及びナットで固定される固定板22と、固定板22と対向して平行に配置された展開板24とを有している。固定板22及び展開板24の互いに対向する面には、回転移動して展開板24を固定板22に近接又は離間させる4つの可動部26(26A、26B、26C、26D)が互いに並列となるように取付けられている。なお、4つの可動部26A〜26Dは、いずれも同じ部材で構成されているため、以後は可動部26Aについて説明し、可動部26B〜26Dの説明は省略する。
【0048】
可動部26Aは、固定板22の平面22Aに取付けられた第1回動部28と、展開板24の平面24Aに取付けられた第2回動部30と、第1回動部28及び第2回動部30に両端が連結された円柱棒状のアーム部材32とで構成されている。なお、第1回動部28及び第2回動部30は、同じ部材で構成されており、アーム部材32の中央を中心として、各部材が互いに点対称の配置となっている。また、固定板22の平面24Aには、エアバック装置16のバック20(図4参照)が設けられている。
【0049】
アーム部材32を構成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)などの汎用樹脂や、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。また、繊維強化された複合材料や、金属と繊維材料と樹脂との結合構造体なども、材料として好適である。
【0050】
第1回動部28は、柱状の取付部34を有しており、取付部34が固定板22の平面22A上に立設されている。取付部34の先端部には、取付部34を挟むように平面視略コ字状に切欠部36が形成された板状の回転部38が設けられている。ここで、回転部38は、切欠部36に取付部34の先端部が挿入され、回転部38及び取付部34に形成された貫通穴(図示省略)にボルト及びナットからなる締結部材40が挿通されることにより、固定板22に対して回転可能となっている。
【0051】
回転部38における締結部材40の締結部と反対側の端部には、略円柱状の固定部42が突設されている。固定部42の上面には、アーム部材32の一端が嵌合により固定されている。また、固定部42の底面42Aは、展開板24の展開時に、固定板22の平面22Aと接触するようになっている。
【0052】
第2回動部30は、第1回動部28と同様にして、取付部34、切欠部36、回転部38、締結部材40、固定部42、及び底面42Aを備えており、固定部42にアーム部材32の他端が嵌合により固定されている。これにより、可動部26Aは、矢印C方向からの正面視にて、時計回り又は反時計回りに回転可能となっており、展開板24の展開時に第1回動部28が時計回りに回転すると、固定部42の底面42Aと平面22A、及び底面42Aと平面24Aとがそれぞれ接触して、展開板24が支持されるようになっている。
【0053】
次に、本発明の実施形態の作用について説明する。
【0054】
図6(a)は、衝突物との衝突が検知される前(展開前)の展開構造体10の状態を示している。展開前は、固定板22と展開板24が近接配置されており、エアバック装置16のバック20が、固定板22と展開板24の間に折り畳まれて収納されている。
【0055】
まず、図6(b)に示すように、センサ部102(図2参照)で衝突が検知されたとき、インフレータ18(図4参照)に駆動信号が入力されて、バック20にガスが送り込まれ、バック20が瞬時に膨張する。膨張したバック20により、展開板24が矢印A方向に押圧されると共に、可動部26A〜26Dが、固定板22側の第1回動部28の回転部38を回転中心として時計回りに回転する。
【0056】
続いて、図6(c)に示すように、展開板24がスライドしながら立ち上げられると、第1回動部28の固定部42の底面42Aと固定板22の平面22Aが接触する。同時に、第2回動部30の固定部42の底面(図では上面)42Aと展開板24の平面24Aとが接触する。ここで、各固定部42は、各回転部38の回転中心からオフセットした位置で固定板22及び展開板24と接触するため、第1回動部28及び第2回動部30の回転が規制され、アーム部材32が固定される。これにより、展開板24が可動部26A〜26Dで支持される。なお、バック20は、展開板24の展開が完了すると、内部のガスが抜かれてしぼむ。
【0057】
ここで、互いに平行となるように連結された複数のアーム部材32が、ほとんど摩擦の無い状態で固定板22及び展開板24と回転結合している。これにより、アーム部材32や展開板24の質量を軽量とすれば、展開板24がスライドして展開する際に、大きな摩擦力や慣性力、重力などの影響を受けないため、大きな力を加えること無く展開可能である。
【0058】
続いて、図7(a)〜図7(c)に示すように、衝突物がフロントバンパ204(図1参照)に衝突すると、衝撃力Fが展開板24に作用し、展開板24は固定板22へ向けて押圧される。ここで、アーム部材32の両端部が、第1回動部28及び第2回動部30に保持されているため、アーム部材32は移動(回動)が規制されている。これにより、各アーム部材32に衝撃力Fが作用する。
【0059】
そして、展開板24及びアーム部材32に継続して衝撃力Fが作用すると、初めに、アーム部材32の軸力や曲げ抵抗により衝突エネルギーが吸収される。続いて、アーム部材32が、略くの字状に塑性変形しながら衝突エネルギーを吸収し、やがて折り畳まれる。
【0060】
ここで、展開構造体10では、アーム部材32の長さとほぼ等しい長さのエネルギー吸収ストロークが確保されているため、衝突エネルギーを十分吸収することができる。そして、アーム部材32が完全に潰れると、展開板24は、固定板22及び第1回動部28によって移動を規制される。なお、バック20の図示は省略している。
【0061】
このように、本発明の展開構造体10では、展開板24が収納可能となっているため、展開構造体10を狭小部に設置することができる。また、展開板24がスライドするように立上って展開することにより、展開後のエネルギー吸収ストロークが十分に得られる。
【0062】
次に、展開構造体10を用いた衝突実験について説明する。
【0063】
図8(a)、(b)は、展開構造体10の衝突実験の方法を示す概略図(正面図、平面図)である。台車50は、L字型の荷台54が設けられており、荷台54の側面56(衝突側)に展開構造体10の固定板22が取付けられている。ここで、重量15kgの台車50を矢印D方向に速度3m/s(メートル/秒)で走行させて剛壁面52に衝突させたときの時間と台車50に作用する荷重との関係を図9に示す。図9において、時間0.02秒が衝突時となる。台車50は、衝突時に4.5kN程度の荷重が作用するが、衝突エネルギーは徐々に吸収され、台車50が受ける衝撃力が大幅に緩和されることが確認された。
【0064】
次に、可動部26の傾斜角度を変更したときの展開構造体10への荷重実験について説明する。なお、本実験では、図5において、展開板24を0.1m×0.05mの矩形状とし、アーム部材32の長さを0.1mとして、固定板22に対するアーム部材32の傾斜角度を63°、71°、90°と変更した3種類の展開構造体10を用いた。また、本実験では、展開板24に重量10kgの重りが5m/sの速度で衝突したときの時間と、固定板22に作用する荷重との関係を得た。
【0065】
図10(a)、(b)、(c)は、アーム部材32の傾斜角度をそれぞれ63°、71°、90°としたときの衝突状態での時間と荷重との関係を示している。図10(a)〜(c)を比較すると、衝突時に作用する荷重は、アーム部材32の傾斜角度が小さい方が低く抑えられていることが分かる。このように、アーム部材32の傾斜角度を変更することにより、衝突時の荷重を低減させることが可能となる。
【0066】
なお、図10(a)、(b)のグラフでは、衝突後にさらにもう1つのピークが生じているが、これは、展開構造体10が衝突エネルギーを吸収してアーム部材32が潰れた後の展開板24に作用する荷重によるものである。アーム部材32の傾斜角度が倒れている方が、衝突エネルギー吸収ストロークが短く早く潰れるため、ピークの出現位置は、早い時間で現れることになる。
【0067】
次に、展開構造体10の他の実施形態(変形例)について説明する。なお、前述した実施形態と基本的に同一の部品には、前記実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0068】
図11(a)には、他の実施形態の第1例として、展開構造体60が示されている。展開構造体60は、前述の展開構造体10(図5参照)の第1回動部28及び第2回動部30に換えて、第3回動部62及び第4回動部64が設けられている。第3回動部62及び第4回動部64は、アーム部材32の軸線上に配置されている。また、第3回動部62及び第4回動部64は、第1回動部28及び第2回動部30の取付部34と切欠部36(図5参照)に係止部が設けられており、展開板24が展開したときに、この係止部で係止されることにより、アーム部材32を固定板22に対して垂直に立設可能としている。このように、回転する部位に係止部を形成することにより、各回動部をアーム部材32の軸線上に配置してもよい。
【0069】
図11(b)には、他の実施形態の第2例として、展開構造体70が示されている。展開構造体70は、前述の展開構造体10(図5参照)の第1回動部28及び第2回動部30に換えて、第5回動部72及び第6回動部74が設けられている。第5回動部72及び第6回動部74は、対向する位置にコ字状の溝が形成されており、この溝に板材76が嵌合され固定されている。このように、棒状のアーム部材32を用いるだけでなく、1組のアーム部材32に換えて、一枚の板材76を用いてもよい。
【0070】
図12(a)、(b)には、他の実施形態の第3例として、展開構造体80が示されている。展開構造体80は、前述の展開構造体10(図5参照)の固定板22の一端(下端)に設けられたボルト及びナットからなる締結部材82を回転軸として、板材からなる底蓋84が開閉可能(回転可能)に設けられている。底蓋84は、ソレノイド等の電磁スイッチによって移動する支持手段(図示省略)により支持されており、展開時に支持手段のスイッチがONとなることで、下方側へ開放されるようになっている。また、展開構造体80は、展開板24の一端(下端)に、錘部材86が取付けられている。
【0071】
展開構造体80は、非展開時において、第1回動部28が底蓋84で支持されており移動が規制されているため、可動部26A〜26Dが回転せず、展開板24の展開は行われない。一方、展開時には、前述の支持手段のスイッチがONとなり、底蓋84が開放される。これにより、第1回動部28の回転が自由に行われ、錘部材86の重みで展開板24が下方側へ移動して展開される。このように、底蓋84と錘部材86を用いることで、展開駆動部14を簡易な構成とすることができる。
【0072】
図13(a)には、他の実施形態の第4例として、展開構造体120が示されている。展開構造体120は、前述の展開構造体10(図5参照)の可動部26Aと可動部26Bのそれぞれの第1回動部28にギア(図示省略)が取付けられ、このギアがモータ122A、122Bで回転駆動される構成となっている。モータ122A、122Bは、制御部104(図2参照)で駆動制御される。このように、第1回動部材28を直接回転駆動させるようにしてもよい。なお、各第1可動部28に取付けられたギアを複数のギア列で連動させ、1つのモータで駆動することにより、さらに簡易な構成で展開が行える。
【0073】
図13(b)には、他の実施形態の第5例として、展開構造体130が示されている。展開構造体130は、前述の展開構造体10(図5参照)の展開板24の展開側(図の右側)端部にワイヤ132の一端が連結され、ワイヤ132の他端がモータ134で巻取られる構成となっている。モータ134は、制御部104(図2参照)で駆動制御される。このように、展開板24を引張ることで展開させるようにしてもよい。
【0074】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0075】
衝撃吸収装置100は、フロントバンパ204のバンパカバーとバンパフレームとの間の他に、例えば、フードパネル202を構成するアウタパネルとインナパネルとの隙間や、フードパネル202とフロントフェンダーパネル208との隙間など、通常はクラッシュボックスを設置できない狭く小さい部位に設置してもよい。また、バック時の衝突に備えて、ラッゲージドアやリアバンパに設置してもよく、フロントサイドドア206、フロントピラー210などに設置してもよい。
【0076】
展開構造体10、60、70、80、120、130は、いずれも複数並べて配置してもよい。また、各連結部は、連結部材として固定板又は展開板に固定されるものだけでなく、固定板、展開板に直接凹部を形成して、球体を回転自在に嵌めてもよい。
【0077】
また、展開構造体10を展開させる展開駆動部14として、エアバック装置16を用いる例について説明したが、展開構造体10を押圧することができればよく、エアバック装置16には限定されない。例えば、エアキャップのように気体や液体が封入された袋体を、展開構造体10の展開板24に押し付けるようにしてもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、押圧により展開構造体10を展開させる例について説明したが、加熱や電圧印加により自己変形する材料で展開構造体10を形成し、自己変形により展開構造体10を展開させることも可能である。自己変形する材料としては、熱膨張率の異なる2種類の金属板を合板したバイメタル、電界の作用により高分子ゲル中の可動イオンの濃度分布が変化して膨潤/収縮する高分子アクチュエータなどを用いることができる。
【0079】
また、可動部26は、2つ以上の複数で配置されればよい。可動部26の数が増加すると、衝突エネルギー吸収量が増加する。さらに、アーム部材32を長くし、幅を広くすると、衝突エネルギー吸収量がさらに増加する。
【0080】
また、アーム部材32は、軸線が直線状のものに限らず、軸線が湾曲したアーチ状の部材であってもよい。さらに、アーム部材32はパイプ状でもロッド状でもよく、パイプの中に発泡材(発砲アルミ、発泡ウレタン等)を入れてもよい。アーム部材32の断面形状は、円形に限らず、四角形、六角形等の多角形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態に係る衝撃吸収装置を車両に設置する場合の設置部位を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る衝撃吸収装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る制御部が行う作動ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るエアバック装置の断面図及び作動時の外観図である。
【図5】本発明の実施形態に係る展開構造体の斜視図である。
【図6】(a)〜(c)本発明の実施形態に係る展開構造体の展開状態を示す模式図である。
【図7】(a)〜(c)本発明の実施形態に係る展開構造体の衝突エネルギーの吸収状態を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態に係る展開構造体の衝突実験の方法を示す概略図である。
【図9】本発明の実施形態に係る展開構造体の衝突実験で得られた時間と荷重の関係を示すグラフである。
【図10】(a)〜(c)本発明の実施形態に係る展開構造体において、アーム部材の角度を変えたときの時間と荷重の関係を示すグラフである。
【図11】(a)本発明の他の実施形態の第1例に係る展開構造体の概略図である。(b)本発明の他の実施形態の第2例に係る展開構造体の斜視図である。
【図12】本発明の他の実施形態の第3例に係る展開構造体の概略図である。
【図13】(a)本発明の他の実施形態の第4例に係る展開構造体の概略図である。(b)本発明の他の実施形態の第5例に係る展開構造体の概略図である。
【符号の説明】
【0082】
10 展開構造体(展開構造体)
16 エアバック装置(展開手段、エアバック装置)
18 インフレータ(送出手段)
20 バック(袋体)
22 固定板(固定部材)
24 展開板(展開部材)
28 第1回動部(第1回動部材)
30 第2回動部(第2回動部材)
32 アーム部材(アーム部材)
38 回転部(第1回転部、第2回転部)
42 固定部(第1支持部、第2支持部)
100 衝撃吸収装置(衝撃吸収装置)
102 センサ部(情報取得手段)
104 制御部(制御部)
110 衝撃吸収部(衝撃吸収部)
122A モータ(回転モータ)
122B モータ(回転モータ)
132 ワイヤ(ワイヤ部材)
134 モータ(巻取モータ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃が作用する物に固定される固定部材と、
前記固定部材と対向して平行に配置された展開部材と、
前記固定部材に回転可能に設けられた複数の第1回動部材と、
前記展開部材に回転可能に設けられた複数の第2回動部材と、
前記第1回動部材及び前記第2回動部材に互いに平行となるように連結された複数のアーム部材と、
前記複数のアーム部材を倒して前記固定部材と前記展開部材を接近させた状態から、前記展開部材を前記固定部材から離間させる展開手段と、
を有する展開構造体。
【請求項2】
前記第1回動部材は、一端が前記固定部材に回転可能に取付けられた第1回転部と、他端に前記アーム部材が固定される第1支持部とを有し、
前記第2回動部材は、一端が前記固定部材に回転可能に取付けられた第2回転部と、他端に前記アーム部材が固定される第2支持部とを有する請求項1に記載の展開構造体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の展開構造体が少なくとも1つ配置された衝撃吸収部と、
衝突物を特定するための情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段で取得された情報に基づいて、衝突が不可避であると予測された場合に、前記展開手段を駆動制御して前記展開部材を展開させる制御部と、
を含む衝撃吸収装置。
【請求項4】
前記展開手段が、前記固定部材と前記展開部材の間に配置された袋体と、前記袋体の内部に気体又は液体を送出して拡張させる送出手段と、を有する請求項3に記載の衝撃吸収装置。
【請求項5】
前記展開手段が、エアバック装置である請求項4に記載の衝撃吸収装置。
【請求項6】
前記展開手段が、前記第1回動部材を回転させる回転モータである請求項3に記載の衝撃吸収装置。
【請求項7】
前記展開手段が、前記展開部材に一端が連結されたワイヤ部材と、前記ワイヤ部材の他端を巻取る巻取モータと、を有する請求項3に記載の衝撃吸収装置。
【請求項1】
衝撃が作用する物に固定される固定部材と、
前記固定部材と対向して平行に配置された展開部材と、
前記固定部材に回転可能に設けられた複数の第1回動部材と、
前記展開部材に回転可能に設けられた複数の第2回動部材と、
前記第1回動部材及び前記第2回動部材に互いに平行となるように連結された複数のアーム部材と、
前記複数のアーム部材を倒して前記固定部材と前記展開部材を接近させた状態から、前記展開部材を前記固定部材から離間させる展開手段と、
を有する展開構造体。
【請求項2】
前記第1回動部材は、一端が前記固定部材に回転可能に取付けられた第1回転部と、他端に前記アーム部材が固定される第1支持部とを有し、
前記第2回動部材は、一端が前記固定部材に回転可能に取付けられた第2回転部と、他端に前記アーム部材が固定される第2支持部とを有する請求項1に記載の展開構造体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の展開構造体が少なくとも1つ配置された衝撃吸収部と、
衝突物を特定するための情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段で取得された情報に基づいて、衝突が不可避であると予測された場合に、前記展開手段を駆動制御して前記展開部材を展開させる制御部と、
を含む衝撃吸収装置。
【請求項4】
前記展開手段が、前記固定部材と前記展開部材の間に配置された袋体と、前記袋体の内部に気体又は液体を送出して拡張させる送出手段と、を有する請求項3に記載の衝撃吸収装置。
【請求項5】
前記展開手段が、エアバック装置である請求項4に記載の衝撃吸収装置。
【請求項6】
前記展開手段が、前記第1回動部材を回転させる回転モータである請求項3に記載の衝撃吸収装置。
【請求項7】
前記展開手段が、前記展開部材に一端が連結されたワイヤ部材と、前記ワイヤ部材の他端を巻取る巻取モータと、を有する請求項3に記載の衝撃吸収装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−257525(P2009−257525A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109308(P2008−109308)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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