説明

層状複水酸化物粒子群およびその製造方法、並びに層状複水酸化物分散液、層状複水酸化物添加樹脂

【課題】 簡単な工程で、凝集体粒子の平均粒径の小さい層状複水酸化物粒子群を製造すること。また、この層状複水酸化物粒子群を用いて、層状複水酸化物分散液、層状複水酸化物添加樹脂を製造すること。
【解決手段】 一般式がM2+1-xM3+x(OH)2(An-x/n・mH2O(ここで、M2+は2価の金属、M3+は3価の金属、An-はn価の陰イオン、0<x<1、m>0)で表され、平均結晶子サイズが20nm以下である層状複水酸化物の凝集体粒子からなる層状複水酸化物粒子群を含有する混合液を調製する混合液調製工程と、前記凝集体粒子を遠心分離し、比重差を利用して凝集体粒子の平均粒径を下げる分級工程と、を有する層状複水酸化物粒子群の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、層状複水酸化物粒子群およびその製造方法、並びに層状複水酸化物分散液、層状複水酸化物添加樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイドロタルサイト等の層状複水酸化物は、層間に種々のイオンや分子等を挿入できる構造を有しており、陰イオン交換機能を発現させることができる。このため、当該陰イオン交換機能を利用して、イオン交換剤、吸着剤、脱臭剤等の用途に利用されている。例えば、ハロゲンを含有する樹脂組成物は、熱や光に対して不安定であり、製造時や使用時の加熱や紫外線によって変色したり劣化したりする。このため、ハイドロタルサイトの粉末が、安定化剤として使用されている。またその他にも、層状複水酸化物は、各種触媒や塗料、インキ等に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、陰イオン交換機能等を高めるために、結晶子サイズを20nm以下にした層状複水酸化物がある(例えば、特許文献2参照)。これを安定化剤や各種触媒、塗料、インキ等に用いれば、更なる効果の向上が期待できる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−164042
【特許文献2】国際公開番号WO2005/087664
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、結晶子サイズを20nm以下にした層状複水酸化物は、その製造過程において結晶が凝集してしまい、細かく分散させるのが困難であるという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、粒度の小さい層状複水酸化物粒子群およびその製造方法、並びにこれらを用いた層状複水酸化物分散液、層状複水酸化物添加樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明における層状複水酸化物粒子群の製造方法は、一般式がM2+1-xM3+x(OH)2(An-x/n・mH2O(ここで、M2+は2価の金属、M3+は3価の金属、An-はn価の陰イオン、0<x<1、m>0)で表され、平均結晶子サイズが20nm以下である層状複水酸化物の凝集体粒子からなる層状複水酸化物粒子群を含有する混合液を調製する混合液調製工程と、前記凝集体粒子を遠心分離し、比重差を利用して凝集体粒子の平均粒径を下げる分級工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
この場合、前記分級工程は、前記遠心分離によって前記凝集体粒子の平均粒径を20μm以下に下げる方が好ましい。また、前記分級工程の後、層状複水酸化物粒子群を含有する混合液を脱水し、乾燥しても良い。また、前記分級工程は、前記凝集体粒子を乾燥した後、遠心分離によって前記凝集体粒子の平均粒径を20μm以下に下げるようにしても良い。また、前記凝集体粒子の表面を高級脂肪酸によって被覆する表面処理工程を有する方が好ましい。また、前記混合液調製工程は、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンを含む酸性溶液とアルカリを含むアルカリ性溶液を混合して一般式がM2+1-xM3+x(OH)2(An-x/n・mH2O(ここで、M2+は2価の金属、M3+は3価の金属、An-はn価の陰イオン、0<x<1、m>0)で表される層状複水酸化物を生成した後、120分以内に前記層状複水酸化物の熟成を停止するものであっても良い。更に、前記層状複水酸化物は、平均結晶子サイズが10nm以下である方が好ましい。
【0009】
また、本発明の層状複水酸化物粒子群は、一般式がM2+1-xM3+x(OH)2(An-x/n・mH2O(ここで、M2+は2価の金属、M3+は3価の金属、An-はn価の陰イオン、0<x<1、m>0)で表され、平均結晶子サイズが20nm以下である層状複水酸化物の凝集体粒子からなるものであって、前記凝集体粒子の平均粒径が20μm以下であることを特徴とする。
【0010】
この場合、前記凝集体粒子の表面は、高級脂肪酸によって被覆されている方が好ましい。
【0011】
また、本発明の層状複水酸化物分散液は、上述した本発明の層状複水酸化物粒子群が液体中に分散していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の層状複水酸化物添加樹脂は、樹脂中に上述した本発明の層状複水酸化物粒子群を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な工程で、凝集体粒子の平均粒径の小さい層状複水酸化物粒子群を製造できる。また、この層状複水酸化物粒子群を用いて、層状複水酸化物分散液、層状複水酸化物添加樹脂を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】湿式分級を行った層状複水酸化物粒子群の粒子径と相対粒子量(%)との関係を示すグラフである。
【図2】通常乾燥を行った層状複水酸化物粒子群の粒子径と相対粒子量(%)との関係を示すグラフである。
【図3】気流式乾燥を行った層状複水酸化物粒子群の粒子径と相対粒子量(%)との関係を示すグラフである。
【図4】気流式乾燥を行った層状複水酸化物粒子群の粒子径と相対粒子量(%)との関係を示すグラフである。
【図5】高級脂肪酸による表面処理を行った層状複水酸化物粒子群の粒子径と相対粒子量(%)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の層状複水酸化物粒子群およびその製造方法について説明する。
【0016】
本発明の層状複水酸化物粒子群の製造方法は、平均結晶子サイズが20nm以下である層状複水酸化物の凝集体粒子からなる層状複水酸化物粒子群を含有する混合液を調製する混合液調製工程と、当該混合液を遠心分離し、比重差を利用して凝集体粒子の平均粒径を下げる分級工程と、からなる。
【0017】
ここで、層状複水酸化物とは、一般式がM2+1-xM3+x(OH)2(An-x/n・mH2O(ここで、M2+は2価の金属、M3+は3価の金属、An-はn価の陰イオン、0<x<1、m>0)で表されるものを意味する。また、平均結晶子サイズとは、X線回折装置を用いてシェラーの方法により求めたものを意味する。
【0018】
また、凝集体粒子とは、層状複水酸化物の結晶が複数凝集して形成された粒子を意味する。また、凝集体粒子の粒径とは、レーザー回折・散乱法を用いて計測した凝集体粒子の粒径を意味する。例えば、株式会社セイシン企業のレーザー回折散乱式粒度分布測定器(型式:LMS−2000e−MU)を用いて計測した粒径を用いることができる。また、平均粒径とは、小さい粒子径側から凝集体の体積を合計した値が全体の50%に達する時の粒径を意味する。
【0019】
混合液調製工程は、分級工程で遠心分離ができるように、層状複水酸化物と水との混合液を調製するものであるが、層状複水酸化物を製造する過程で生じるスラリーをそのまま用いても良い。
【0020】
層状複水酸化物はどのように製造しても良いが、例えば、一般式が、Mg2+1-xAl3+x(OH)2(An-)x/n・mH2O(An-はn価の陰イオン、m>0)の層状複水酸化物の製造方法について以下に説明する。
【0021】
まず、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンを含む酸性溶液を調製する。
【0022】
アルミニウムイオンのアルミニウム源としては、水中でアルミニウムイオンを生成するものであれば良く、特定の物質に限定されるものではない。例えば、アルミナ、アルミン酸ソーダ、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ボーキサイト、ボーキサイトからのアルミナ製造残渣、アルミスラッジ等を用いることができる。また、これらアルミニウム源は、いずれかを単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0023】
また、マグネシウムイオンのマグネシウム源としては、水中でマグネシウムイオンを生成する物であれば良く、特定の物質に限定されるものではない。例えば、ブルーサイト、水酸化マグネシウム、マグネサイト、マグネサイトの焼成物等を用いることができる。これらマグネシウム源は、いずれかを単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0024】
なお、前記アルミニウム源としてのアルミニウム化合物、マグネシウム源としてのマグネシウム化合物は、前記酸性溶液にアルミニウムイオン、マグネシウムイオンが存在していれば完全に溶解している必要はない。したがって、酸性溶液中に溶解していないアルミニウム化合物やマグネシウム化合物を含んでいても問題なく層状複水酸化物を製造することができる。
【0025】
一般式Mg2+1-xAl3+x(OH)2(An-)x/n・mH2Oで表わされる高結晶質の層状複水酸化物は、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンのモル比が1:3(x=0.25)となっていることが知られている。したがって、酸性溶液中のアルミニウムイオンとマグネシウムイオンのモル比は、1:5〜1:2の範囲とするのが好ましい。この範囲とすることによって、アルミニウム源とマグネシウム源を無駄にすることなく、物質収支的に有利に層状複水酸化物を製造することができる。
【0026】
また、前記酸性溶液を酸性に調整するには、硝酸又は塩酸を用いるのが好ましい。
【0027】
次に、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンを含んだ前記酸性溶液を、アルカリを含むアルカリ性溶液と混合する。このアルカリ性溶液は、pHが8〜11のものを用いるのが好ましい。
なお、酸性溶液とアルカリ性溶液の混合は、酸性溶液をアルカリ性溶液へ一気に加えて混合するか、酸性溶液をアルカリ性溶液へ滴下して行うことができるが、好ましくは、混合する際の撹拌能力に応じて酸性溶液とアルカリ性溶液を適量ずつ混合する方が良い。勿論、酸性溶液とアルカリ性溶液を十分に撹拌できるものであれば、これら以外の方法であっても構わない。
【0028】
ここで、アルカリ性溶液に含まれるアルカリとしては、水溶液をアルカリ性とするものであれば良く、特定の物質に限定されるものではない。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどを用いることができる。また、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア水、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムなども用いることができる。これらアルカリはいずれかを単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
また、高結晶質の層状複水酸化物は炭酸イオンと優先的にイオン交換するため、炭酸イオンを含むと目的とする陰イオンと効率良くイオン交換できない。したがって、層状複水酸化物においても、目的とする陰イオンと効率良くイオン交換させるために、前記酸性溶液および前記アルカリ性溶液に炭酸イオンを含まないようにするのが好ましい。
【0030】
なお、酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、熟成を行わないようにすれば、層状複水酸化物の結晶を成長させることなく、結晶子サイズ(結晶子の大きさ)の小さい層状複水酸化物を製造することができる。結晶子サイズは、20nm以下、好ましくは10nm以下になるように、なるべく早く熟成を止めるのが好ましい。
【0031】
熟成を行わないようにするには、酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、当該混合液のpHを層状複水酸化物の結晶成長が止まる値まで下げれば良い。例えば、一般式がMg2+1-xAl3+x(OH)2(An-)x/n・mH2Oで表される層状複水酸化物は、pHを9以下とすれば熟成を止めることができる。また、一般式Zn2+1-xAl3+x(OH)2(An-)x/n・mH2O(An-はn価の陰イオン、m>0)で表される層状複水酸化物は、pHを5以下とすれば熟成を止めることができる。
【0032】
また、水分を除去することによっても、熟成を止めることができる。水分を除去するためには、吸引濾過、遠心分離など適当な方法を用いることができる。
【0033】
したがって、一般式Mg2+1-xAl3+x(OH)2(An-)x/n・mH2Oで表される層状複水酸化物の結晶子サイズを20nm以下にするには、酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後120分以内好ましくは同時に、混合液のpHを9以下に調整すれば良い。pHを9以下とするにはどのような方法を用いても良いが、例えば、酸性溶液とアルカリ性溶液を混合した後、直ちに水で希釈する方法がある。もちろん、酸性溶液とアルカリ性溶液と混合した後120分以内好ましくは同時に、吸引濾過や遠心分離等によって水分を除去しても良い。また、確実に熟成を行わせないためには、酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、速やかに層状複水酸化物を洗浄するのも良い。なお、合成過程で生成されるNaCl等の塩化物は使用目的に応じて洗浄しても含有させておいても構わない。
【0034】
分級工程は、比重差を利用して凝集体粒子を遠心分離し、凝集体粒子の平均粒径を下げるものである。
【0035】
遠心分離は、上述した混合液を湿式分級によって分離する方法や、混合液を乾燥させた後、乾式分級によって分離する方法がある。
【0036】
湿式分級の場合には、例えば、一般的に知られている固液分離装置を用いて行うことができる。乾式分級の場合には、まず混合液を乾燥させる必要がある。乾燥は、通常の乾燥でも良いが、減圧しながら高速の熱風で乾燥させる気流式乾燥機を用いると分散効果で凝集体粒子が微細化される点で好ましい。
【0037】
なお、従来は、樹脂等に添加する凝集体粒子の平均粒径を2μm以下にするのが好ましいとされていた。しかしながら、本願では、層状複水酸化物の平均結晶子サイズを従来の層状複水酸化物の10分の1としたことにより、同一体積当たりの表面積が10倍となった。したがって、凝集体粒子の平均粒径は20μm以下に調製すれば良い。
【0038】
また、分級工程の前に、更に、凝集体粒子の表面を高級脂肪酸によって被覆する表面処理工程を有していても良い。高級脂肪酸による凝集体粒子表面の被覆は、乾式表面処理、湿式表面処理いずれでも行うことができる。
【0039】
湿式表面処理を行う場合は、凝集体粒子が分散している分散液に、高級脂肪酸塩水溶液を添加して水温を20〜90℃に調整して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、凝集体粒子の粒子表面を、高級脂肪酸で被覆し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕等すれば良い。高級脂肪酸塩としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等を用いることができる。
【0040】
乾式表面処理を行う場合は、凝集体粒子粉末をヘンシェルミキサー、サンドミル、エッジランナー、タニナカ式粉砕機、らいかい機等に入れ、高級脂肪酸を添加して乾式混合すれば良い。高級脂肪酸としては、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等を用いることができる。
【0041】
高級脂肪酸塩又は高級脂肪酸の添加量は、層状複水酸化物粒子群に対し、C換算で0.2〜20.0重量%である。0.2重量%未満である場合には、粒子表面に充分な量の高級脂肪酸を被覆することが困難である。また、20.0重量%を超える場合には、被覆効果が飽和するためである。
【0042】
このように調製された層状複水酸化物粒子群は、水に分散したまま層状複水酸化物粒子分散液として用いても良いが、層状複水酸化物粒子群を含有する混合液を脱水、乾燥して、粉状にしても良い。例えば、フィルタプレスにより所定の圧力をかけて水分をできるだけ除去した後、乾燥炉で乾燥させれば良い。
【0043】
このように製造された層状複水酸化物粒子群は、再度水その他の液体に分散させて層状複水酸化物分散液として用いることができる。また、塩化ビニルやポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂に分散させた層状複水酸化物添加樹脂として用いることもできる。樹脂に分散させる場合には、液状の樹脂に直接分散させても良いし、一旦ペレットを作製し、当該ペレットを用いて分散させても良い。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明の層状複水酸化物粒子群およびその製造方法の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
層状複水酸化物において、2価の金属陽イオンとしてはマグネシウムイオン、3価の金属陽イオンとしてはアルミニウムイオンを用いた。酸性溶液は、マグネシウム源として硝酸マグネシウム六水和物1molと、アルミニウム源として硝酸アルミニウム九水和物0.5molを蒸留水1Lに溶かして調製した。また、アルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム3molと炭酸ナトリウム0.25molを蒸留水1Lに溶かして調製した。このアルカリ性溶液に熟成を行わないように酸性溶液を一気に加え、化学式が[Mg5.33Al2.67(OH)16][(CO1.335・4H2O]で表わされる層状複水酸化物を含む混合液(試料1)を作製した。当該層状複水酸化物の結晶子サイズをX線回折装置を用いてシェラーの方法により求めたところ、平均結晶子サイズは9.1nmであった。
【0046】
また、試料1の粒度分布をレーザー回折散乱式粒度分布測定器(株式会社セイシン企業/型式:LMS−2000e−MU)を用いて計測した。粒子径と全体積に対する相対粒子量(%)および小さい粒子径側からの体積の積算値(%)の結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
次に、試料1を固液分離装置(株式会社CMS/固液分離装置レックス)で遠心分離し、試料2を得た。この試料2の粒度分布をレーザー回折散乱式粒度分布測定器(株式会社セイシン企業/型式:LMS−2000e−MU)を用いて計測した。粒子径と全体積に対する相対粒子量(%)および小さい粒子径側からの体積の積算値(%)の結果を表2に示す。また、試料1と試料2の粒度分布を表わすグラフを図1に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
試料1のでは、平均粒径が40.870μm、最大粒径が741.259μmであるのに対し、試料2では、平均粒径が14.051μm、最大粒径が40.870μmであり、層状複水酸化物粒子群の平均粒径、最大粒径共に非常に小さくなっているのがわかる。
【0051】
また、試料1を通常の乾燥炉で乾燥し試料3を得た。この試料3の粒度分布をレーザー回折散乱式粒度分布測定器(株式会社セイシン企業/型式:LMS−2000e−MU)を用いて計測した。粒子径と全体積に対する相対粒子量(%)および小さい粒子径側からの体積の積算値(%)の結果を表3に示す。また、試料3の粒度分布を表わすグラフを図2に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
また、試料1を気流乾燥機(株式会社平岩鉄工所/ジェットドライヤー、型番:HTD−2022L)で乾燥した。なお、気流乾燥機の入り口温度は240℃、出口温度は180℃であった。この試料を乾式分級機で分級して試料4を得た。また、分級に用いた気体をバクフィルタに通して回収し試料5を得た。この試料4,5の粒度分布をレーザー回折散乱式粒度分布測定器(株式会社セイシン企業/型式:LMS−2000e−MU)を用いて計測した。粒子径と全体積に対する相対粒子量(%)および小さい粒子径側からの体積の積算値(%)の結果を表4、表5に示す。また、試料4の粒度分布を表わすグラフを図3、試料5の粒度分布を表わすグラフを図4に示す。
【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
試料3では、平均粒径が67.523μm、最大粒径が344.206μmであるのに対し、試料4では、平均粒径が5.079μm、最大粒径が36.801μmであり、層状複水酸化物粒子群の平均粒径、最大粒径共に非常に小さくなっているのがわかる。また、試料5では、平均粒径が2.106μm、最大粒径が19.018μmであり、層状複水酸化物粒子群の平均粒径、最大粒径共に更に小さくなっているのがわかる。
【0057】
また、試料1の純水で洗浄してNaCl等を除去し、これにオレイン酸カリウムを重量比1%加えて表面処理を行った。この混合液を通常の乾燥炉で乾燥し試料6を得た。この試料6の粒度分布をレーザー回折散乱式粒度分布測定器(株式会社セイシン企業/型式:LMS−2000e−MU)を用いて計測した。粒子径と全体積に対する相対粒子量(%)および小さい粒子径側からの体積の積算値(%)の結果を表6に示す。また、試料6の粒度分布を表わすグラフを図5に示す。
【0058】
【表6】

【0059】
試料3では、平均粒径が67.523μm、最大粒径が344.206μmであるのに対し、試料4では、平均粒径が19.018μm、最大粒径が213.976μmであり、層状複水酸化物粒子群の平均粒径、最大粒径共に小さくなっているのがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式がM2+1-xM3+x(OH)2(An-x/n・mH2O(ここで、M2+は2価の金属、M3+は3価の金属、An-はn価の陰イオン、0<x<1、m>0)で表され、平均結晶子サイズが20nm以下である層状複水酸化物の凝集体粒子からなる層状複水酸化物粒子群を含有する混合液を調製する混合液調製工程と、
前記凝集体粒子を遠心分離し、比重差を利用して凝集体粒子の平均粒径を下げる分級工程と、
を有することを特徴とする層状複水酸化物粒子群の製造方法。
【請求項2】
前記分級工程は、前記混合液を遠心分離によって前記凝集体粒子の平均粒径を20μm以下に下げることを特徴とする請求項1記載の層状複水酸化物粒子群の製造方法。
【請求項3】
前記分級工程の後、層状複水酸化物粒子群を含有する混合液を脱水し、乾燥することを特徴とする請求項1又は2記載の層状複水酸化物粒子群の製造方法。
【請求項4】
前記分級工程は、前記凝集体粒子を乾燥した後、遠心分離によって前記凝集体粒子の平均粒径を20μm以下に下げることを特徴とする請求項1記載の層状複水酸化物粒子群の製造方法。
【請求項5】
前記凝集体粒子の表面を高級脂肪酸によって被覆する表面処理工程を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の層状複水酸化物粒子群の製造方法。
【請求項6】
前記混合液調製工程は、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンを含む酸性溶液とアルカリを含むアルカリ性溶液を混合して一般式がM2+1-xM3+x(OH)2(An-x/n・mH2O(ここで、M2+は2価の金属、M3+は3価の金属、An-はn価の陰イオン、0<x<1、m>0)で表される層状複水酸化物を生成した後、120分以内に前記層状複水酸化物の熟成を停止するものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の層状複水酸化物粒子群の製造方法。
【請求項7】
前記層状複水酸化物は、平均結晶子サイズが10nm以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の層状複水酸化物粒子群の製造方法。
【請求項8】
一般式がM2+1-xM3+x(OH)2(An-x/n・mH2O(ここで、M2+は2価の金属、M3+は3価の金属、An-はn価の陰イオン、0<x<1、m>0)で表され、平均結晶子サイズが20nm以下である層状複水酸化物の凝集体粒子からなる層状複水酸化物粒子群であって、
前記凝集体粒子の平均粒径が20μm以下であることを特徴とする層状複水酸化物粒子群。
【請求項9】
前記凝集体粒子の表面は、高級脂肪酸によって被覆されていることを特徴とする請求項8記載の層状複水酸化物粒子群。
【請求項10】
請求項8又は9記載の層状複水酸化物粒子群が液体中に分散していることを特徴とする層状複水酸化物分散液。
【請求項11】
請求項8又は9記載の層状複水酸化物粒子群を樹脂中に含有することを特徴とする層状複水酸化物添加樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−112560(P2013−112560A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259558(P2011−259558)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000231198)日本国土開発株式会社 (51)
【Fターム(参考)】