履物およびその中底ならびに中底用クッション材
【課題】 足裏に違和感を与えることなく足裏への衝撃を効果的に緩和することができる上、足の疲労を軽減させることができる履物の中底用クッション材を提供する。
【解決手段】 柔軟な材料よりなり、流体が封入された中空部5aを有するクッション材5であって、中空部が、足裏の踵に対応する部分に形成された第1の上方膨出室511と、足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に形成された第2の上方膨出室512と、足裏の踏み付け部に対応する部分に形成された第3の上方膨出室513と、第1の上方膨出室と第2の上方膨出室とを連通させる後部通路521と、第2の上方膨出室と第3の上方膨出室とを連通させる前部通路522とで構成されている。
【解決手段】 柔軟な材料よりなり、流体が封入された中空部5aを有するクッション材5であって、中空部が、足裏の踵に対応する部分に形成された第1の上方膨出室511と、足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に形成された第2の上方膨出室512と、足裏の踏み付け部に対応する部分に形成された第3の上方膨出室513と、第1の上方膨出室と第2の上方膨出室とを連通させる後部通路521と、第2の上方膨出室と第3の上方膨出室とを連通させる前部通路522とで構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンダルや靴等の履物、およびその中底、ならびに中底に用いられるクッション材に関する。
なお、本発明において、履物の「中底」には、本底や中物等に接合して使用されるものの他、履物の中に挿入して使用されるもの、即ち、中敷き(インソール)が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
歩行等に伴う足裏への衝撃を緩和し、また、履き心地を向上させるために、中底にクッション材が設けられた履物が、従来より知られている。
【0003】
このような履物の中底用クッション材については、各種の提案がなされているが、その1つとして次のようなものが知られている。即ち、柔軟な材料よりなり、液体が封入された中空部を有しているクッション材であって、中空部が、足裏の踵に対応する部分に形成された後部の上方膨出室と、足裏の踏み付け部に対応する部分に形成された前部の上方膨出室と、前部および後部の上方膨出室どうしを連通させる通路とで構成されているものである。このクッション材は、例えば、前後各部の上方膨出室を中底上面から突出させるための貫通孔を有する中底本体の下面に接合して使用される(下記の特許文献1参照)。
上記のクッション材が中底に設けられた履物によれば、歩行等に伴って足裏の踵部および踏み付け部にかかる衝撃が、内部に液体が入った上方膨出室の弾性変形によって緩和される。特に、上記クッション材の場合、前後部の上方膨出室どうしが通路によって連通させられているので、荷重の移動に応じて液体が中空部内を前後に移動することにより上方膨出室のサイズが増減し、より優れた緩衝効果が得られるようになっている。
【0004】
しかしながら、上述したクッション材の場合、歩行等に伴って前後いずれか一方の上方膨出室が荷重により圧縮された際に、液体の移動により膨張した同他方の上方膨出室のサイズが大きくなりすぎて足裏に違和感を与えるおそれがある一方、各上方膨出室を膨張時に違和感を与えない程度のサイズに設定すると十分な緩衝効果が得られないおそれがあった。
また、上記クッション材のように上方膨出室が踵部および踏み付け部にそれぞれ対応する前後2箇所に設けられていると、立っている際に微妙な重心移動が生じることにより各上方膨出室が圧縮または膨張するため、バランスを保ちにくい上、足裏の縦アーチや横アーチが崩れやすく、かえって足の疲労を増大させるおそれがあった。
【特許文献1】実用新案登録第3041986号公報
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、足裏に違和感を与えることなく足裏への衝撃を効果的に緩和することができる上、足の疲労を軽減させることができる履物の中底用クッション材を提供することにある。
【0006】
本発明による履物の中底用クッション材は、柔軟な材料よりなり、流体が封入された中空部を有しているものであって、中空部が、足裏の踵に対応する部分に形成された第1の上方膨出室と、足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に形成された第2の上方膨出室と、足裏の踏み付け部に対応する部分に形成された第3の上方膨出室と、第1の上方膨出室と第2の上方膨出室とを連通させる後部通路と、第2の上方膨出室と第3の上方膨出室とを連通させる前部通路とで構成されていることを特徴としている。
【0007】
本発明のクッション材にあっては、これを履物の中底に設けることにより、次のような作用効果を奏する。
即ち、まず、歩行等に伴って履物底の後部が接地すると、足裏の踵部に荷重が加わるが、この際、第1の上方膨出室が圧縮方向に弾性変形し、それによって足裏の踵への衝撃が緩和される。第1の上方膨出室の圧縮により、その内部の流体は、後部通路を通じて第2の上方膨出室に移動した後、更に前部通路を通じて第3の上方膨出室に移動し、それによって第2および第3の上方膨出室が膨張する。
次に、履物底の前部によって地面を蹴り出そうとすると、足裏の踏み付け部(=足指の付け根部付近)に荷重が加わるが、この際、第3の上方膨出室が圧縮方向に弾性変形し、それにより足裏の踏む付け部への衝撃が緩和される。また、この際、第3の上方膨出室は、足指を掛けるための突起としても機能し、それによって蹴り出し動作がよりスムーズに行われる。第3の上方膨出室の圧縮により、その内部の流体は、前部通路を通じて第2の上方膨出室に移動した後、更に後部通路を通じて第1の上方膨出室に移動し、それによって第1および第2の上方膨出室が膨張する。
このように、本発明のクッション材によれば、歩行等の動作に伴って、第1ないし第3の上方膨出室が順次圧縮と膨張を繰り返すことにより、足裏への衝撃が効果的に緩和される。
また、本発明のクッション材の場合、上方膨出室が前後方向に3つ並んでいるため、歩行等に伴って第1および第3の上方膨出室のうちいずれか一方が荷重により圧縮された際、ここから移動する流体は同他方の上方膨出室と第2の上方膨出室とに分散されるため、膨張したこれらの上方膨出室のサイズが大きくなりすぎて足裏に違和感を与えるおそれがない。
さらに、本発明によるクッション材によれば、立っている際に、第2の上方膨出室によって足裏の第2ないし第4の中足骨底付近が支えられるため、バランスを保ちやすい上、足裏の縦アーチや横アーチが崩れ難く、足の疲労を軽減することができる。
【0008】
本発明による履物の中底用クッション材において、中空部に封入される流体は、特に限定されず、気体、液体、ゲル等の中から適宜に選択して使用すればよいが、生産性、コスト、安全性等を考慮した場合、空気が好適に用いられる。
【0009】
本発明による履物の中底用クッション材において、第3の上方膨出室が、互いに連通するように左右に並んで2つ形成され、前部通路が、第2の上方膨出室と左右それぞれの側の第3の上方膨出室とを連通させるように2つに分岐しているのが好ましい。
【0010】
上記態様の場合、足裏における踏み付け部の左右両側にかかる荷重の変化に応じて、左右2つの第3の上方膨出室が即時に圧縮または膨張するので、より確実に踏み付け部への衝撃を緩和することができる。
【0011】
本発明による履物の中底用クッション材は、平坦な下面シートと、中空部を形成するための上方凸状成形部を有する上面シートとを重ね合わせて接合することにより形成されている場合がある。
【0012】
上記の場合、上下2枚のシートを用意して、一方に所要の成形加工を施した後、両者を重ね合わせて接合することによってクッション材が得られるので、製造が容易であり、コストを抑えることができる。
なお、この場合、中空部に封入される流体は、特別な封入手段を必要としない空気となされる。
上面シートおよび下面シートとしては、通常、熱可塑性軟質樹脂シート、または少なくとも片面が熱可塑性樹脂層よりなる柔軟な複合シートが用いられ、シートどうしの接合はヒートシールによって行われる。もっとも、シートの材料や接合手段は、これらに限定されず、その他適宜のものを用いることができる。
【0013】
本発明によるクッション材を備えた履物の中底の構成は、特に限定されないが、その1つの態様として、中底芯とこれの上面を覆う柔軟な中底表皮との間に、本発明のクッション材が介在されてなる場合がある。
【0014】
上記態様の履物の中底にあっては、クッション材を中底芯と中底表皮との間に介在させてなるので、従来の中底の構成部品を利用することができ、製造も容易である。また、クッション材が中底の表面に露出しないので、例えば、サンダル等の中底として利用した場合にも、クッション材によって外観が損なわれるおそれがない。この態様の中底は、通常、本底や中物等の上に、接着等によって接合される。
【0015】
上記態様の履物の中底において、好適には、中底芯の上面に、クッション材における中空部以外の部分の厚みにほぼ等しい深さを有するクッション材収容用凹部が形成されている。
【0016】
上記のような凹部が中底芯の上面に形成されていれば、中底表皮の表面のうちクッション材の第1ないし第3の上方膨出室に対応する箇所のみが上方に膨出するため、履いた際に違和感を与えるおそれがなく、履き心地が損なわれない。
【0017】
本発明のクッション材を備えた履物の中底のその他の態様として、軟質発泡樹脂よりなる中底本体の下面に、本発明のクッション材が接合されてなり、中底本体は、クッション材の第1ないし第3の上方膨出室がそれぞれ収容される第1ないし第3の上方凸状カップ部を有している場合がある。
【0018】
上記態様の履物の中底は、履物の中に挿入して使用される中敷きとして用いられる。この中底は、中底本体とその下面に接合されたクッション材とで構成されるため、製造が容易であって、コストが安くつく。また、クッション材が中底の表面に露出しないので、外観が損なわれるおそれがない上、中底本体における第1ないし第3のカップ部の下面側にクッション材の第1ないし第3の上方膨出室がそれぞれ収容されるため、各上方膨出室の圧縮・膨張による衝撃の緩和が確実に機能する。
なお、上記において、中底本体を構成する「軟質発泡樹脂」には、単体のものの他、軟質発泡樹脂よりなる主材に他のシート状材料(例えば布等)を積層したものが含まれるものとする。
【0019】
上記第2の態様の履物の中底において、中底本体の下面に、クッション材における第1ないし第3の上方膨出室以外の部分を収容するための凹部が、第1ないし第3のカップ部に連なって形成されているのが好ましい。
【0020】
上記のような凹部が中底本体下面の所要箇所に形成されていれば、クッション材における上方膨出室以外の部分が中底表面に段差として現れることがないため、履いた際に違和感を与えるおそれがなく、履き心地が損なわれない。また、同凹部の底面とこれに収容されるクッション材の上面部分とを接着等によって接合すれば良いので、接合作業を簡単に行うことができる。
【0021】
また、本発明には、上述した態様のクッション材付き中底を備えた履物が含まれる。
【0022】
本発明の履物によれば、クッション材および中底について上述した効果と同様の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1〜7には本発明の第1の実施形態が示されている。この実施形態は、本発明をサンダルの中底に適用したものである。なお、これらの図では、左足用のものを示している。
【0024】
本実施形態のサンダルの中底(4)は、図1〜3に示すように、中底芯(41)とこれの上面を覆う柔軟な中底表皮(42)との間にクッション材(5)が介在されてなる。
【0025】
クッション材(5)は、柔軟な材料よりなり、かつ、空気が封入された中空部(5a)を有している。
中空部(5a)は、足裏の踵に対応する部分に形成された第1の上方膨出室(511)と、足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に形成された第2の上方膨出室(512)と、足裏の踏み付け部に対応する部分に形成された第3の上方膨出室(513)と、第1の上方膨出室(511)と第2の上方膨出室(512)とを連通させる後部通路(521)と、第2の上方膨出室(512)と第3の上方膨出室(513)とを連通させる前部通路(522)とで構成されている。
第3の上方膨出室(513)は、互いに連通するように左右に並んで2つ形成されており、前部通路(522)は、第2の上方膨出室(512)と左右それぞれの側の第3の上方膨出室(513)とを連通させるように左右2つに分岐している。
【0026】
このクッション材(5)は、平坦な下面シート(501)と、中空部(5a)を形成するための上方凸状成形部(502a)を有する上面シート(502)とを重ね合わせて接合することにより形成されている。
各シート(501)(502)は、熱可塑性軟質樹脂シートよりなり、互いに重ね合わせられるように所要の同一形状にカットされている。各シート(501)(502)の厚みは、特に限定されないが、耐圧強度や緩衝機能等を考慮した場合、0.3〜1mm程度とするのが好ましい。
上面シート(502)の成形部(502a)は、例えば、熱可塑性軟質樹脂シートを加熱下で金型により加圧成形した後、自然冷却することによって形成される。
上面シート(501)と下面シート(502)の接合は、ヒートシールによって行われる。
シート(501)(502)どうしの接合部(5b)は、中空部(5a)の周囲に形成されており、その幅は例えば平均5mm程度となされる。また、第2および第3の上方膨出室(512)(513)ならびに2つに分岐した前部通路(522)で囲まれた箇所にも、シート(501)(502)どうしの接合部(5b)が形成されている。
この実施形態では、通常のヒートシール手段を用いて上面シート(501)と下面シート(502)とを接合することによって、両シート(501)(502)間に空気が自然に封入されるようになっている。従って、特別な流体封入工程や封止手段が不要となるので、製造が容易であり、コストも安くつくという利点がある。
【0027】
クッション材(5)の中空部(5a)のうち、第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)は、いずれも、下面側が平坦であって、上面側がなだらかなドーム状となっている。第1の上方膨出室(511)は、平面より見て前側が細くなったほぼ涙滴形をしている。第2の上方膨出室(512)は、平面より見て後側が細くなったほぼ涙滴形をしている。第3の上方膨出室(513)は、それぞれ平面より見て略円形であって、足裏の踏み付け部の横幅方向に沿うようにやや斜めに並んで配置されている。
後部通路(521)および左右2本に分岐した前部通路(522)は、それぞれ略蒲鉾形の横断面を有するものであって、平面より見て直線に近いものとなされ、また、その高さは第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)の高さの1/2〜1/3程度となされている。
【0028】
中底芯(41)は、通常、複数枚のシート状材料を重ね合わせて接合した積層体からなる。より具体的には、中底芯(41)は、例えば、板紙(411)と、板紙(411)の下面に接合された綿布(図示略)と、板紙(411)の上面に接合された軟質発泡樹脂シート(412)とで構成されている。
中底芯(41)の上面には、クッション材(5)における中空部(5a)以外の部分、即ち、接合部(5b)の厚みにほぼ等しい深さを有するクッション材収容用凹部(413)が形成されている。凹部(413)の平面形状は、クッション材(5)の輪郭形状とほぼ合致している。この凹部(413)は、例えば、中底芯(41)が前述したように板紙(411)、綿布および軟質発泡樹脂シート(412)よりなる積層体で構成されている場合、上面を構成する軟質発泡樹脂シート(412)に所要形状の切り抜き(412a)を予め設けておくことにより、形成することができる。
クッション材(5)は、好適には、その下面が中底芯(41)における上記凹部(413)の底面に接着等により接合され、使用時に位置ズレを生じないように固定される。
中底芯(41)の上記凹部(413)にクッション材(5)が収容固定されることにより、中底(4)の上面は、中空部(5a)に対応する部分のみが上方に突出することになるため、履いた際に違和感を与えるおそれのある段差が形成されず、優れた履き心地が得られる。
【0029】
中底表皮(42)は、中底芯(41)の上面から下面の周縁部にかけてを覆うものであって、これらの部分に接着等によって接合されている。従って、中底芯(41)上面の凹部(413)に収容されたクッション材(5)もこの中底表皮(42)によって覆われている。中底表皮(42)は、例えば、布、合成皮革、ビニールシート等よりなる。
【0030】
図4には、上記の中底(4)を備えたサンダル(1)が示されている。このサンダル(1)は、本底(3)の上に上記中底(4)が接合されてなるサンダル底(2)と、サンダル底(2)に取り付けられたサンダルバンド(6)とで構成されている。サンダルバンド(6)は、その左右両縁の吊り込み代(図示略)が、本底(3)と中底(4)との間に挟み込まれて接合されることにより、サンダル底(2)と一体化されている。なお、本底(3)およびサンダルバンド(6)の構成や材料は、特に限定されず、適宜のものを使用することができる。
【0031】
上記のサンダル(1)を履いた際には、次のような作用効果が奏される。
即ち、まず、歩行に伴ってサンダル底(2)の踵部が接地すると、足裏の踵部に荷重が加わるが、この際、図5に示すように、クッション材(5)の第1の上方膨出室(511)が圧縮方向に弾性変形し、それによって足裏の踵への衝撃が緩和される。第1の上方膨出室(511)の圧縮により、その内部の空気は、後部通路(521)を通じて第2の上方膨出室(512)に移動した後、更に前部通路(522)を通じて第3の上方膨出室(513)に移動し、それによって第2および第3の上方膨出室(512)(513)が膨張する。
次に、サンダル底(2)の前部によって地面を蹴り出そうとすると、足裏の踏み付け部(=足指の付け根部付近)に荷重が加わるが、この際、図6に示すように、クッション材(5)の第3の上方膨出室(513)が圧縮方向に弾性変形し、それにより足裏の踏む付け部への衝撃が緩和される。ここで、第3の上方膨出室(513)は、互いに連通するように左右に並んで2つ設けられており、それぞれが前部通路(522)を介して第2の上方膨出室(512)に連通しているので、足裏における踏み付け部の左右両側にかかる荷重の変化に応じて即時に圧縮または膨張し、より的確に足裏の踏み付け部への衝撃が緩和される。また、この際、第3の上方膨出室(513)は、足指を掛けるための突起としても機能し、蹴り出し動作をサポートする役割を果たす。第3の上方膨出室(513)の圧縮により、その内部の空気は、前部通路(522)を通じて第2の上方膨出室(512)に移動した後、更に後部通路(521)を通じて第1の上方膨出室(511)に移動し、それによって第1および第2の上方膨出室(511)(512)が膨張する。
このように、歩行動作に伴って、第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)が順次圧縮と膨張を繰り返すことにより、足裏への衝撃が効果的に緩和される。
【0032】
また、クッション材(5)は、第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)が前後方向に並んで設けられているため、歩行に伴って第1および第3の上方膨出室(511)(513)のうちいずれか一方が荷重により圧縮された際、ここから移動する空気は同他方の上方膨出室と第2の上方膨出室(512)とに分散される。従って、冒頭で述べた従来技術のように、膨張した上方膨出室のサイズが大きくなりすぎて足裏に違和感を与えるおそれがなく、履き心地が良い。
【0033】
さらに、上記のサンダル(1)を履いて立っている場合には、図7に示すように、第1の上方膨出室(511)および第3の上方膨出室(513)により多くの荷重(体重)がかかるため、第2の上方膨出室(512)に空気が最も多く流入して、同室(512)が最も大きく膨張すると考えられる。従って、膨張した第2の上方膨出室(512)により、足裏の第2ないし第4の中足骨底付近が下から支えられるため、バランスを保ちやすい上、足裏の縦アーチや横アーチが形成・保持され易くなっている。
【0034】
つまり、この実施形態のサンダル(1)によれば、中底(4)に設けられたクッション材(5)によって、歩行等に伴う足裏への衝撃を効果的に緩和することが可能であるとともに、足裏に違和感を与えることなく快適な履き心地が得られ、また、足裏の縦アーチや横アーチが形成・保持されるため、慢性的な足の疲労を軽減することができる。
【0035】
図8〜11には、本発明の第2の実施形態が示されている。この実施形態は、本発明を靴の中底に適用したものである。なお、これらの図では、左足用のものを示している。
【0036】
第2の実施形態の靴の中底(4A)は、図8〜10に示すように、中底本体(43)の下面にクッション材(5)が接合されてなる。
クッション材(5)は、図1〜7に示す第1の実施形態のクッション材(5)と実質的に同一であるので、詳しい説明は省略する。
中底本体(43)は、軟質発泡樹脂製であって、クッション材(5)の第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)がそれぞれ収容される第1ないし第3の上方凸状カップ部(431)(432)(433)を有している。中底本体(43)の後部周縁部には、立上り部(435)が形成されている。中底本体(43)の上面には、布等よりなる被覆材(44)が接合されている。
また、中底本体(43)の下面には、クッション材(5)における第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)以外の部分を収容するための凹部(434a)(434b)が、第1ないし第3のカップ部(431)(432)(433)に連なって形成されている。凹部(434a)(434b)は、クッション材(5)の上記部分の厚みとほぼ同じ深さを有している。従って、後部通路(521)および前部通路(522)を収容する部分の凹部(434a)の深さは、シート(501)(502)どうしの接合部(5b)を収容する凹部(434b)の深さよりもやや大きくなっている。
中底本体(43)の凹部(434a)(434b)底面に、クッション材(5)の上記部分の上面が、接着等によって接合されている。
【0037】
図11には、上記の中底(4A)を備えた靴(11)が示されている。この靴(11)は、靴底(12)と、靴底(12)に取り付けられたアッパー(13)と、靴(1)内に挿入された上記中底(4A)とを備えている。即ち、この実施形態では、中底(4A)は、中敷きとして用いられている。なお、靴底(12)およびアッパー(13)の構成や材料は、特に限定されず、適宜のものを使用することができる。
【0038】
この実施形態の靴(11)によれば、第1実施形態のサンダル(1)とほぼ同様の作用効果が奏される。
加えて、この実施形態では、中底(4A)が、中底本体(43)とその下面に接合されたクッション材(5)とで構成されるため、その製造が容易であり、コストも抑えることができる。
また、クッション材(5)が中底(4A)の表面に露出しないので、外観が損なわれるおそれがない上、中底本体(43)における第1ないし第3のカップ部(431)(432)(433)の下面側にクッション材(5)の第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)がそれぞれ収容されるため、各上方膨出室(511)(512)(513)の圧縮・膨張による衝撃緩和機能が確実に働く。
さらに、中底本体(43)の下面に、クッション材(5)における上方膨出室以外の部分を収容するための凹部(434a)(434b)が形成されており、クッション材(5)の上記部分が中底(4A)上面に段差として現れることがないため、履いた際に違和感を与えるおそれがなく、履き心地が損なわれない。また、上記凹部(434a)(434b)の底面とこれに収容されるクッション材(5)の上面部分とを接着等によって接合すれば良いので、接合作業も簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであって、中底を一部切り欠いて示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う中底の縦断面図である。
【図3】図1の中底の分解斜視図である。
【図4】図1の中底を備えたサンダルを示す斜視図である。
【図5】サンダル底の踵部が接地した際の中底の状態を示す側面図である。
【図6】サンダル底の前部によって地面を蹴り出す際の中底の状態を示す側面図である。
【図7】立っている際の中底の状態を示す側面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態を示すものであって、中底を一部切り欠いて示す平面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う中底の縦断面図である。
【図10】図8の中底の分解斜視図である。
【図11】図8の中底を備えた靴を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
(1):サンダル
(11):靴
(4)(4A):中底
(41):中底芯
(413):クッション材収容用凹部
(42):中底表皮
(43):中底本体
(431):第1の上方凸状カップ部
(432):第2の上方凸状カップ部
(433):第3の上方凸状カップ部
(434a)(434b):凹部
(5):クッション材
(501):下面シート
(502):上面シート
(502a):上方凸状成形部
(5a):中空部
(511):第1の上方膨出室
(512):第2の上方膨出室
(513):第3の上方膨出室
(521):後部通路
(522):前部通路
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンダルや靴等の履物、およびその中底、ならびに中底に用いられるクッション材に関する。
なお、本発明において、履物の「中底」には、本底や中物等に接合して使用されるものの他、履物の中に挿入して使用されるもの、即ち、中敷き(インソール)が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
歩行等に伴う足裏への衝撃を緩和し、また、履き心地を向上させるために、中底にクッション材が設けられた履物が、従来より知られている。
【0003】
このような履物の中底用クッション材については、各種の提案がなされているが、その1つとして次のようなものが知られている。即ち、柔軟な材料よりなり、液体が封入された中空部を有しているクッション材であって、中空部が、足裏の踵に対応する部分に形成された後部の上方膨出室と、足裏の踏み付け部に対応する部分に形成された前部の上方膨出室と、前部および後部の上方膨出室どうしを連通させる通路とで構成されているものである。このクッション材は、例えば、前後各部の上方膨出室を中底上面から突出させるための貫通孔を有する中底本体の下面に接合して使用される(下記の特許文献1参照)。
上記のクッション材が中底に設けられた履物によれば、歩行等に伴って足裏の踵部および踏み付け部にかかる衝撃が、内部に液体が入った上方膨出室の弾性変形によって緩和される。特に、上記クッション材の場合、前後部の上方膨出室どうしが通路によって連通させられているので、荷重の移動に応じて液体が中空部内を前後に移動することにより上方膨出室のサイズが増減し、より優れた緩衝効果が得られるようになっている。
【0004】
しかしながら、上述したクッション材の場合、歩行等に伴って前後いずれか一方の上方膨出室が荷重により圧縮された際に、液体の移動により膨張した同他方の上方膨出室のサイズが大きくなりすぎて足裏に違和感を与えるおそれがある一方、各上方膨出室を膨張時に違和感を与えない程度のサイズに設定すると十分な緩衝効果が得られないおそれがあった。
また、上記クッション材のように上方膨出室が踵部および踏み付け部にそれぞれ対応する前後2箇所に設けられていると、立っている際に微妙な重心移動が生じることにより各上方膨出室が圧縮または膨張するため、バランスを保ちにくい上、足裏の縦アーチや横アーチが崩れやすく、かえって足の疲労を増大させるおそれがあった。
【特許文献1】実用新案登録第3041986号公報
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、足裏に違和感を与えることなく足裏への衝撃を効果的に緩和することができる上、足の疲労を軽減させることができる履物の中底用クッション材を提供することにある。
【0006】
本発明による履物の中底用クッション材は、柔軟な材料よりなり、流体が封入された中空部を有しているものであって、中空部が、足裏の踵に対応する部分に形成された第1の上方膨出室と、足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に形成された第2の上方膨出室と、足裏の踏み付け部に対応する部分に形成された第3の上方膨出室と、第1の上方膨出室と第2の上方膨出室とを連通させる後部通路と、第2の上方膨出室と第3の上方膨出室とを連通させる前部通路とで構成されていることを特徴としている。
【0007】
本発明のクッション材にあっては、これを履物の中底に設けることにより、次のような作用効果を奏する。
即ち、まず、歩行等に伴って履物底の後部が接地すると、足裏の踵部に荷重が加わるが、この際、第1の上方膨出室が圧縮方向に弾性変形し、それによって足裏の踵への衝撃が緩和される。第1の上方膨出室の圧縮により、その内部の流体は、後部通路を通じて第2の上方膨出室に移動した後、更に前部通路を通じて第3の上方膨出室に移動し、それによって第2および第3の上方膨出室が膨張する。
次に、履物底の前部によって地面を蹴り出そうとすると、足裏の踏み付け部(=足指の付け根部付近)に荷重が加わるが、この際、第3の上方膨出室が圧縮方向に弾性変形し、それにより足裏の踏む付け部への衝撃が緩和される。また、この際、第3の上方膨出室は、足指を掛けるための突起としても機能し、それによって蹴り出し動作がよりスムーズに行われる。第3の上方膨出室の圧縮により、その内部の流体は、前部通路を通じて第2の上方膨出室に移動した後、更に後部通路を通じて第1の上方膨出室に移動し、それによって第1および第2の上方膨出室が膨張する。
このように、本発明のクッション材によれば、歩行等の動作に伴って、第1ないし第3の上方膨出室が順次圧縮と膨張を繰り返すことにより、足裏への衝撃が効果的に緩和される。
また、本発明のクッション材の場合、上方膨出室が前後方向に3つ並んでいるため、歩行等に伴って第1および第3の上方膨出室のうちいずれか一方が荷重により圧縮された際、ここから移動する流体は同他方の上方膨出室と第2の上方膨出室とに分散されるため、膨張したこれらの上方膨出室のサイズが大きくなりすぎて足裏に違和感を与えるおそれがない。
さらに、本発明によるクッション材によれば、立っている際に、第2の上方膨出室によって足裏の第2ないし第4の中足骨底付近が支えられるため、バランスを保ちやすい上、足裏の縦アーチや横アーチが崩れ難く、足の疲労を軽減することができる。
【0008】
本発明による履物の中底用クッション材において、中空部に封入される流体は、特に限定されず、気体、液体、ゲル等の中から適宜に選択して使用すればよいが、生産性、コスト、安全性等を考慮した場合、空気が好適に用いられる。
【0009】
本発明による履物の中底用クッション材において、第3の上方膨出室が、互いに連通するように左右に並んで2つ形成され、前部通路が、第2の上方膨出室と左右それぞれの側の第3の上方膨出室とを連通させるように2つに分岐しているのが好ましい。
【0010】
上記態様の場合、足裏における踏み付け部の左右両側にかかる荷重の変化に応じて、左右2つの第3の上方膨出室が即時に圧縮または膨張するので、より確実に踏み付け部への衝撃を緩和することができる。
【0011】
本発明による履物の中底用クッション材は、平坦な下面シートと、中空部を形成するための上方凸状成形部を有する上面シートとを重ね合わせて接合することにより形成されている場合がある。
【0012】
上記の場合、上下2枚のシートを用意して、一方に所要の成形加工を施した後、両者を重ね合わせて接合することによってクッション材が得られるので、製造が容易であり、コストを抑えることができる。
なお、この場合、中空部に封入される流体は、特別な封入手段を必要としない空気となされる。
上面シートおよび下面シートとしては、通常、熱可塑性軟質樹脂シート、または少なくとも片面が熱可塑性樹脂層よりなる柔軟な複合シートが用いられ、シートどうしの接合はヒートシールによって行われる。もっとも、シートの材料や接合手段は、これらに限定されず、その他適宜のものを用いることができる。
【0013】
本発明によるクッション材を備えた履物の中底の構成は、特に限定されないが、その1つの態様として、中底芯とこれの上面を覆う柔軟な中底表皮との間に、本発明のクッション材が介在されてなる場合がある。
【0014】
上記態様の履物の中底にあっては、クッション材を中底芯と中底表皮との間に介在させてなるので、従来の中底の構成部品を利用することができ、製造も容易である。また、クッション材が中底の表面に露出しないので、例えば、サンダル等の中底として利用した場合にも、クッション材によって外観が損なわれるおそれがない。この態様の中底は、通常、本底や中物等の上に、接着等によって接合される。
【0015】
上記態様の履物の中底において、好適には、中底芯の上面に、クッション材における中空部以外の部分の厚みにほぼ等しい深さを有するクッション材収容用凹部が形成されている。
【0016】
上記のような凹部が中底芯の上面に形成されていれば、中底表皮の表面のうちクッション材の第1ないし第3の上方膨出室に対応する箇所のみが上方に膨出するため、履いた際に違和感を与えるおそれがなく、履き心地が損なわれない。
【0017】
本発明のクッション材を備えた履物の中底のその他の態様として、軟質発泡樹脂よりなる中底本体の下面に、本発明のクッション材が接合されてなり、中底本体は、クッション材の第1ないし第3の上方膨出室がそれぞれ収容される第1ないし第3の上方凸状カップ部を有している場合がある。
【0018】
上記態様の履物の中底は、履物の中に挿入して使用される中敷きとして用いられる。この中底は、中底本体とその下面に接合されたクッション材とで構成されるため、製造が容易であって、コストが安くつく。また、クッション材が中底の表面に露出しないので、外観が損なわれるおそれがない上、中底本体における第1ないし第3のカップ部の下面側にクッション材の第1ないし第3の上方膨出室がそれぞれ収容されるため、各上方膨出室の圧縮・膨張による衝撃の緩和が確実に機能する。
なお、上記において、中底本体を構成する「軟質発泡樹脂」には、単体のものの他、軟質発泡樹脂よりなる主材に他のシート状材料(例えば布等)を積層したものが含まれるものとする。
【0019】
上記第2の態様の履物の中底において、中底本体の下面に、クッション材における第1ないし第3の上方膨出室以外の部分を収容するための凹部が、第1ないし第3のカップ部に連なって形成されているのが好ましい。
【0020】
上記のような凹部が中底本体下面の所要箇所に形成されていれば、クッション材における上方膨出室以外の部分が中底表面に段差として現れることがないため、履いた際に違和感を与えるおそれがなく、履き心地が損なわれない。また、同凹部の底面とこれに収容されるクッション材の上面部分とを接着等によって接合すれば良いので、接合作業を簡単に行うことができる。
【0021】
また、本発明には、上述した態様のクッション材付き中底を備えた履物が含まれる。
【0022】
本発明の履物によれば、クッション材および中底について上述した効果と同様の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1〜7には本発明の第1の実施形態が示されている。この実施形態は、本発明をサンダルの中底に適用したものである。なお、これらの図では、左足用のものを示している。
【0024】
本実施形態のサンダルの中底(4)は、図1〜3に示すように、中底芯(41)とこれの上面を覆う柔軟な中底表皮(42)との間にクッション材(5)が介在されてなる。
【0025】
クッション材(5)は、柔軟な材料よりなり、かつ、空気が封入された中空部(5a)を有している。
中空部(5a)は、足裏の踵に対応する部分に形成された第1の上方膨出室(511)と、足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に形成された第2の上方膨出室(512)と、足裏の踏み付け部に対応する部分に形成された第3の上方膨出室(513)と、第1の上方膨出室(511)と第2の上方膨出室(512)とを連通させる後部通路(521)と、第2の上方膨出室(512)と第3の上方膨出室(513)とを連通させる前部通路(522)とで構成されている。
第3の上方膨出室(513)は、互いに連通するように左右に並んで2つ形成されており、前部通路(522)は、第2の上方膨出室(512)と左右それぞれの側の第3の上方膨出室(513)とを連通させるように左右2つに分岐している。
【0026】
このクッション材(5)は、平坦な下面シート(501)と、中空部(5a)を形成するための上方凸状成形部(502a)を有する上面シート(502)とを重ね合わせて接合することにより形成されている。
各シート(501)(502)は、熱可塑性軟質樹脂シートよりなり、互いに重ね合わせられるように所要の同一形状にカットされている。各シート(501)(502)の厚みは、特に限定されないが、耐圧強度や緩衝機能等を考慮した場合、0.3〜1mm程度とするのが好ましい。
上面シート(502)の成形部(502a)は、例えば、熱可塑性軟質樹脂シートを加熱下で金型により加圧成形した後、自然冷却することによって形成される。
上面シート(501)と下面シート(502)の接合は、ヒートシールによって行われる。
シート(501)(502)どうしの接合部(5b)は、中空部(5a)の周囲に形成されており、その幅は例えば平均5mm程度となされる。また、第2および第3の上方膨出室(512)(513)ならびに2つに分岐した前部通路(522)で囲まれた箇所にも、シート(501)(502)どうしの接合部(5b)が形成されている。
この実施形態では、通常のヒートシール手段を用いて上面シート(501)と下面シート(502)とを接合することによって、両シート(501)(502)間に空気が自然に封入されるようになっている。従って、特別な流体封入工程や封止手段が不要となるので、製造が容易であり、コストも安くつくという利点がある。
【0027】
クッション材(5)の中空部(5a)のうち、第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)は、いずれも、下面側が平坦であって、上面側がなだらかなドーム状となっている。第1の上方膨出室(511)は、平面より見て前側が細くなったほぼ涙滴形をしている。第2の上方膨出室(512)は、平面より見て後側が細くなったほぼ涙滴形をしている。第3の上方膨出室(513)は、それぞれ平面より見て略円形であって、足裏の踏み付け部の横幅方向に沿うようにやや斜めに並んで配置されている。
後部通路(521)および左右2本に分岐した前部通路(522)は、それぞれ略蒲鉾形の横断面を有するものであって、平面より見て直線に近いものとなされ、また、その高さは第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)の高さの1/2〜1/3程度となされている。
【0028】
中底芯(41)は、通常、複数枚のシート状材料を重ね合わせて接合した積層体からなる。より具体的には、中底芯(41)は、例えば、板紙(411)と、板紙(411)の下面に接合された綿布(図示略)と、板紙(411)の上面に接合された軟質発泡樹脂シート(412)とで構成されている。
中底芯(41)の上面には、クッション材(5)における中空部(5a)以外の部分、即ち、接合部(5b)の厚みにほぼ等しい深さを有するクッション材収容用凹部(413)が形成されている。凹部(413)の平面形状は、クッション材(5)の輪郭形状とほぼ合致している。この凹部(413)は、例えば、中底芯(41)が前述したように板紙(411)、綿布および軟質発泡樹脂シート(412)よりなる積層体で構成されている場合、上面を構成する軟質発泡樹脂シート(412)に所要形状の切り抜き(412a)を予め設けておくことにより、形成することができる。
クッション材(5)は、好適には、その下面が中底芯(41)における上記凹部(413)の底面に接着等により接合され、使用時に位置ズレを生じないように固定される。
中底芯(41)の上記凹部(413)にクッション材(5)が収容固定されることにより、中底(4)の上面は、中空部(5a)に対応する部分のみが上方に突出することになるため、履いた際に違和感を与えるおそれのある段差が形成されず、優れた履き心地が得られる。
【0029】
中底表皮(42)は、中底芯(41)の上面から下面の周縁部にかけてを覆うものであって、これらの部分に接着等によって接合されている。従って、中底芯(41)上面の凹部(413)に収容されたクッション材(5)もこの中底表皮(42)によって覆われている。中底表皮(42)は、例えば、布、合成皮革、ビニールシート等よりなる。
【0030】
図4には、上記の中底(4)を備えたサンダル(1)が示されている。このサンダル(1)は、本底(3)の上に上記中底(4)が接合されてなるサンダル底(2)と、サンダル底(2)に取り付けられたサンダルバンド(6)とで構成されている。サンダルバンド(6)は、その左右両縁の吊り込み代(図示略)が、本底(3)と中底(4)との間に挟み込まれて接合されることにより、サンダル底(2)と一体化されている。なお、本底(3)およびサンダルバンド(6)の構成や材料は、特に限定されず、適宜のものを使用することができる。
【0031】
上記のサンダル(1)を履いた際には、次のような作用効果が奏される。
即ち、まず、歩行に伴ってサンダル底(2)の踵部が接地すると、足裏の踵部に荷重が加わるが、この際、図5に示すように、クッション材(5)の第1の上方膨出室(511)が圧縮方向に弾性変形し、それによって足裏の踵への衝撃が緩和される。第1の上方膨出室(511)の圧縮により、その内部の空気は、後部通路(521)を通じて第2の上方膨出室(512)に移動した後、更に前部通路(522)を通じて第3の上方膨出室(513)に移動し、それによって第2および第3の上方膨出室(512)(513)が膨張する。
次に、サンダル底(2)の前部によって地面を蹴り出そうとすると、足裏の踏み付け部(=足指の付け根部付近)に荷重が加わるが、この際、図6に示すように、クッション材(5)の第3の上方膨出室(513)が圧縮方向に弾性変形し、それにより足裏の踏む付け部への衝撃が緩和される。ここで、第3の上方膨出室(513)は、互いに連通するように左右に並んで2つ設けられており、それぞれが前部通路(522)を介して第2の上方膨出室(512)に連通しているので、足裏における踏み付け部の左右両側にかかる荷重の変化に応じて即時に圧縮または膨張し、より的確に足裏の踏み付け部への衝撃が緩和される。また、この際、第3の上方膨出室(513)は、足指を掛けるための突起としても機能し、蹴り出し動作をサポートする役割を果たす。第3の上方膨出室(513)の圧縮により、その内部の空気は、前部通路(522)を通じて第2の上方膨出室(512)に移動した後、更に後部通路(521)を通じて第1の上方膨出室(511)に移動し、それによって第1および第2の上方膨出室(511)(512)が膨張する。
このように、歩行動作に伴って、第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)が順次圧縮と膨張を繰り返すことにより、足裏への衝撃が効果的に緩和される。
【0032】
また、クッション材(5)は、第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)が前後方向に並んで設けられているため、歩行に伴って第1および第3の上方膨出室(511)(513)のうちいずれか一方が荷重により圧縮された際、ここから移動する空気は同他方の上方膨出室と第2の上方膨出室(512)とに分散される。従って、冒頭で述べた従来技術のように、膨張した上方膨出室のサイズが大きくなりすぎて足裏に違和感を与えるおそれがなく、履き心地が良い。
【0033】
さらに、上記のサンダル(1)を履いて立っている場合には、図7に示すように、第1の上方膨出室(511)および第3の上方膨出室(513)により多くの荷重(体重)がかかるため、第2の上方膨出室(512)に空気が最も多く流入して、同室(512)が最も大きく膨張すると考えられる。従って、膨張した第2の上方膨出室(512)により、足裏の第2ないし第4の中足骨底付近が下から支えられるため、バランスを保ちやすい上、足裏の縦アーチや横アーチが形成・保持され易くなっている。
【0034】
つまり、この実施形態のサンダル(1)によれば、中底(4)に設けられたクッション材(5)によって、歩行等に伴う足裏への衝撃を効果的に緩和することが可能であるとともに、足裏に違和感を与えることなく快適な履き心地が得られ、また、足裏の縦アーチや横アーチが形成・保持されるため、慢性的な足の疲労を軽減することができる。
【0035】
図8〜11には、本発明の第2の実施形態が示されている。この実施形態は、本発明を靴の中底に適用したものである。なお、これらの図では、左足用のものを示している。
【0036】
第2の実施形態の靴の中底(4A)は、図8〜10に示すように、中底本体(43)の下面にクッション材(5)が接合されてなる。
クッション材(5)は、図1〜7に示す第1の実施形態のクッション材(5)と実質的に同一であるので、詳しい説明は省略する。
中底本体(43)は、軟質発泡樹脂製であって、クッション材(5)の第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)がそれぞれ収容される第1ないし第3の上方凸状カップ部(431)(432)(433)を有している。中底本体(43)の後部周縁部には、立上り部(435)が形成されている。中底本体(43)の上面には、布等よりなる被覆材(44)が接合されている。
また、中底本体(43)の下面には、クッション材(5)における第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)以外の部分を収容するための凹部(434a)(434b)が、第1ないし第3のカップ部(431)(432)(433)に連なって形成されている。凹部(434a)(434b)は、クッション材(5)の上記部分の厚みとほぼ同じ深さを有している。従って、後部通路(521)および前部通路(522)を収容する部分の凹部(434a)の深さは、シート(501)(502)どうしの接合部(5b)を収容する凹部(434b)の深さよりもやや大きくなっている。
中底本体(43)の凹部(434a)(434b)底面に、クッション材(5)の上記部分の上面が、接着等によって接合されている。
【0037】
図11には、上記の中底(4A)を備えた靴(11)が示されている。この靴(11)は、靴底(12)と、靴底(12)に取り付けられたアッパー(13)と、靴(1)内に挿入された上記中底(4A)とを備えている。即ち、この実施形態では、中底(4A)は、中敷きとして用いられている。なお、靴底(12)およびアッパー(13)の構成や材料は、特に限定されず、適宜のものを使用することができる。
【0038】
この実施形態の靴(11)によれば、第1実施形態のサンダル(1)とほぼ同様の作用効果が奏される。
加えて、この実施形態では、中底(4A)が、中底本体(43)とその下面に接合されたクッション材(5)とで構成されるため、その製造が容易であり、コストも抑えることができる。
また、クッション材(5)が中底(4A)の表面に露出しないので、外観が損なわれるおそれがない上、中底本体(43)における第1ないし第3のカップ部(431)(432)(433)の下面側にクッション材(5)の第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)がそれぞれ収容されるため、各上方膨出室(511)(512)(513)の圧縮・膨張による衝撃緩和機能が確実に働く。
さらに、中底本体(43)の下面に、クッション材(5)における上方膨出室以外の部分を収容するための凹部(434a)(434b)が形成されており、クッション材(5)の上記部分が中底(4A)上面に段差として現れることがないため、履いた際に違和感を与えるおそれがなく、履き心地が損なわれない。また、上記凹部(434a)(434b)の底面とこれに収容されるクッション材(5)の上面部分とを接着等によって接合すれば良いので、接合作業も簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであって、中底を一部切り欠いて示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う中底の縦断面図である。
【図3】図1の中底の分解斜視図である。
【図4】図1の中底を備えたサンダルを示す斜視図である。
【図5】サンダル底の踵部が接地した際の中底の状態を示す側面図である。
【図6】サンダル底の前部によって地面を蹴り出す際の中底の状態を示す側面図である。
【図7】立っている際の中底の状態を示す側面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態を示すものであって、中底を一部切り欠いて示す平面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う中底の縦断面図である。
【図10】図8の中底の分解斜視図である。
【図11】図8の中底を備えた靴を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
(1):サンダル
(11):靴
(4)(4A):中底
(41):中底芯
(413):クッション材収容用凹部
(42):中底表皮
(43):中底本体
(431):第1の上方凸状カップ部
(432):第2の上方凸状カップ部
(433):第3の上方凸状カップ部
(434a)(434b):凹部
(5):クッション材
(501):下面シート
(502):上面シート
(502a):上方凸状成形部
(5a):中空部
(511):第1の上方膨出室
(512):第2の上方膨出室
(513):第3の上方膨出室
(521):後部通路
(522):前部通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な材料よりなり、流体が封入された中空部(5a)を有している履物の中底用クッション材(5)において、
中空部(5a)が、足裏の踵に対応する部分に形成された第1の上方膨出室(511)と、足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に形成された第2の上方膨出室(512)と、足裏の踏み付け部に対応する部分に形成された第3の上方膨出室(513)と、第1の上方膨出室(511)と第2の上方膨出室(512)とを連通させる後部通路(521)と、第2の上方膨出室(512)と第3の上方膨出室(513)とを連通させる前部通路(522)とで構成されていることを特徴とする、履物の中底用クッション材。
【請求項2】
第3の上方膨出室(513)が、互いに連通するように左右に並んで2つ形成され、前部通路(522)が、第2の上方膨出室(512)と左右それぞれの側の第3の上方膨出室(513)とを連通させるように2つに分岐していることを特徴とする、請求項1記載の履物の中底用クッション材。
【請求項3】
平坦な下面シート(501)と、中空部(5a)を形成するための上方凸状成形部(502a)を有する上面シート(502)とを重ね合わせて接合することにより形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の履物の中底用クッション材。
【請求項4】
中底芯(41)とこれの上面を覆う柔軟な中底表皮(42)との間に、請求項1〜3のいずれか1つに記載のクッション材(5)が介在されてなることを特徴とする、履物の中底。
【請求項5】
中底芯(41)の上面に、クッション材(5)における中空部(5a)以外の部分の厚みにほぼ等しい深さを有するクッション材収容用凹部(413)が形成されていることを特徴とする、請求項4記載の履物の中底。
【請求項6】
軟質発泡樹脂よりなる中底本体(43)の下面に、請求項1〜3のいずれか1つに記載のクッション材(5)が接合されてなり、中底本体(43)は、クッション材(5)の第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)がそれぞれ収容される第1ないし第3の上方凸状カップ部(431)(432)(433)を有していることを特徴とする、履物の中底。
【請求項7】
中底本体(43)の下面に、クッション材(5)における第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)以外の部分を収容するための凹部(434a)(434b)が、第1ないし第3のカップ部(431)(432)(433)に連なって形成されていることを特徴とする、請求項6記載の履物の中底。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1つに記載の中底(4)(4A)を備えていることを特徴とする、履物。
【請求項1】
柔軟な材料よりなり、流体が封入された中空部(5a)を有している履物の中底用クッション材(5)において、
中空部(5a)が、足裏の踵に対応する部分に形成された第1の上方膨出室(511)と、足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に形成された第2の上方膨出室(512)と、足裏の踏み付け部に対応する部分に形成された第3の上方膨出室(513)と、第1の上方膨出室(511)と第2の上方膨出室(512)とを連通させる後部通路(521)と、第2の上方膨出室(512)と第3の上方膨出室(513)とを連通させる前部通路(522)とで構成されていることを特徴とする、履物の中底用クッション材。
【請求項2】
第3の上方膨出室(513)が、互いに連通するように左右に並んで2つ形成され、前部通路(522)が、第2の上方膨出室(512)と左右それぞれの側の第3の上方膨出室(513)とを連通させるように2つに分岐していることを特徴とする、請求項1記載の履物の中底用クッション材。
【請求項3】
平坦な下面シート(501)と、中空部(5a)を形成するための上方凸状成形部(502a)を有する上面シート(502)とを重ね合わせて接合することにより形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の履物の中底用クッション材。
【請求項4】
中底芯(41)とこれの上面を覆う柔軟な中底表皮(42)との間に、請求項1〜3のいずれか1つに記載のクッション材(5)が介在されてなることを特徴とする、履物の中底。
【請求項5】
中底芯(41)の上面に、クッション材(5)における中空部(5a)以外の部分の厚みにほぼ等しい深さを有するクッション材収容用凹部(413)が形成されていることを特徴とする、請求項4記載の履物の中底。
【請求項6】
軟質発泡樹脂よりなる中底本体(43)の下面に、請求項1〜3のいずれか1つに記載のクッション材(5)が接合されてなり、中底本体(43)は、クッション材(5)の第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)がそれぞれ収容される第1ないし第3の上方凸状カップ部(431)(432)(433)を有していることを特徴とする、履物の中底。
【請求項7】
中底本体(43)の下面に、クッション材(5)における第1ないし第3の上方膨出室(511)(512)(513)以外の部分を収容するための凹部(434a)(434b)が、第1ないし第3のカップ部(431)(432)(433)に連なって形成されていることを特徴とする、請求項6記載の履物の中底。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1つに記載の中底(4)(4A)を備えていることを特徴とする、履物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−112456(P2009−112456A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287479(P2007−287479)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(591131349)株式会社パンジー (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(591131349)株式会社パンジー (6)
【Fターム(参考)】
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