説明

岩盤計測用管体構造及びそれを用いた岩盤計測システム

【課題】 間隙水圧と地盤振動とを合理的なコストで同時に計測する。
【解決手段】本発明に係る岩盤計測用管体構造1は、外管2と該外管の内側に配置された内管3とからなる二重管4をボーリング孔5に立て込んで構成してあり、外管2の外周面には、その周囲を環状に取り囲むようにかつその材軸に沿って互いに離間配置されるように複数のパッカー6を設けてある。岩盤計測用管体構造1は、パッカー6の内部充填空間にそれぞれ連通するように連通接続されたパッカー用パイプ7と、隣り合うパッカー6,6の間に拡がる外管2の外側空間9に連通するように配置された間隙水圧計測用パイプ10とを備えるが、パッカー用パイプ7及び間隙水圧計測用パイプ10は、内管3の外周面と外管2の内周面との間に拡がる隙間空間12に挿通配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として数百m以上の深さ位置において岩盤の間隙水圧と地盤振動を計測する際に使用される岩盤計測用管体構造及びそれを用いた岩盤計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大深度地下の利用形態の一つに例えば放射性廃棄物の貯蔵処分施設がある。かかる貯蔵処分施設は、放射能レベルによっては1,000mを越える深さの岩盤内に構築されることがあり、かかる施設を構築するにあたっては、岩盤の強度、透水性あるいは間隙水圧の評価が欠かせない。
【0003】
ここで、岩盤の間隙水圧を計測するにあたっては、まず、ボーリング孔を深さ方向に穿孔し、次いで、所望の深さ位置の上下にパッカーを配置することで該パッカーに挟まれた空間をボーリング孔の他の空間から遮断し、次いで、ボーリング孔内にパイプを挿通してその下端をパッカーで挟み込まれた空間に連通させ、次いで、該パイプ内の水圧を圧力センサーで計測するシステムが知られている。
【0004】
かかる計測システムにおいては、パッカーを深さ方向に沿って多段に配置するとともに、それらのうち、上下段のパッカーで挟まれた空間にそれぞれ連通するように複数のパイプをボーリング孔に挿通配置することで、単一のボーリング孔であっても、異なる深さでの間隙水圧を同時に計測することができる。
【0005】
一方、上述した施設の健全性を評価する上では、岩盤の地盤振動を計測することもきわめて重要であり、従来においては、ボーリング孔を掘削してその孔底に地震計を設置することによって、岩盤の地盤振動を計測していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−91165
【特許文献2】特許第3353714号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、間隙水圧を計測するためのボーリング孔内は上述したように、該計測に必要な多数のパイプが挿通されているところ、地震計を設置するためのボーリング孔は、地震計の吊り降ろし作業やその後のメンテナンス作業のため、孔底から地上に至るまでその中空空間を残しておかなければならない。
【0008】
そのため、間隙水圧を計測するためのボーリング孔と地震計設置のためのボーリング孔とは別々に掘削形成せざるを得ず、岩盤計測システムを構築するにあたり、コスト面で大きな負担になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、間隙水圧と地盤振動とを合理的なコストで同時に計測可能な岩盤計測用管体構造及びそれを用いた岩盤計測システムを提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る岩盤計測用管体構造は請求項1に記載したように、外管及びその内側に配置された内管からなる二重管と、前記外管の周囲を環状に取り囲むようにかつその材軸に沿って互いに離間配置されるように前記外管の外周面に設けられた複数のパッカーと、該パッカーの内部充填空間に連通配置することで該内部充填空間に流体を充填注入して前記パッカーを膨張可能に構成したパッカー用パイプと、前記パッカーのうち、隣り合うパッカーの間に拡がる前記外管周囲の空間に連通させることで該空間に拡がる地下水を導入可能に配置した間隙水圧計測用パイプとを備えるとともに、前記パッカー用パイプ及び前記間隙水圧計測用パイプを前記内管の外周面と前記外管の内周面との間に挿通配置したものである。
【0011】
また、本発明に係る岩盤計測システムは、請求項1記載の岩盤計測用管体構造と、前記間隙水圧計測用パイプに設けられた圧力センサーと、前記内管の下方であって前記ボーリング孔の孔底に設置された地震計とを備えたものである。
【0012】
また、本発明に係る岩盤計測用管体構造は請求項3に記載したように、外管及びその内側に配置された内管からなる二重管と、前記外管の周囲を環状に取り囲むようにかつその材軸に沿って互いに離間配置されるように前記外管の外周面に設けられた複数のパッカーと、該パッカーの内部充填空間に連通配置することで該内部充填空間に流体を充填注入して前記パッカーを膨張可能に構成したパッカー用パイプとを備えるとともに、前記パッカーのうち、隣り合うパッカーの間に拡がる前記外管周囲の空間に連通する圧力センサー接続口を前記外管に形成し、前記パッカー用パイプを前記内管の外周面と前記外管の内周面との間に挿通配置したものである。
【0013】
また、本発明に係る岩盤計測システムは、請求項3記載の岩盤計測用管体構造と、前記圧力センサー接続口に接続された圧力センサーと、前記内管の下方であって前記ボーリング孔の孔底に設置された地震計とを備えたものである。
【0014】
本発明に係る岩盤計測用管体構造及びそれを用いた岩盤計測システムにおいては、内管の内部空間はパイプ類が非挿通の状態となり、該内部空間を地震計を設置したり設置後のメンテナンスを行ったりするための吊り降ろし及び吊り上げ用作業空間として利用することが可能となる。
【0015】
上述した岩盤計測用管体構造を岩盤計測システムに適用するにあたっては、岩盤計測用管体構造を二重管が岩盤内にほぼ鉛直に形成されたボーリング孔に埋設配置されるように構築するとともに、内管の下方であってボーリング孔の孔底に地震計を設置する。
【0016】
このようにすれば、地震計の吊り降ろし及び吊り上げを内管の内部空間を利用してスムーズに行うことが可能となり、かくして単体のボーリング孔に間隙水圧計測と地震計設置の両方の機能を持たせることができる。
【0017】
本発明において想定されるパイプは、パッカー用パイプと間隙水圧計測用パイプの2種類があり、パッカー用パイプは、内管の外周面と外管の内周面との間に挿通配置することを必須構成とするが、間隙水圧計測用パイプはその設置が任意であって、これを設置する場合のみ、パッカー用パイプと同様、内管の外周面と外管の内周面との間に挿通配置する。
【0018】
そして、岩盤計測システムは、間隙水圧計測用パイプを設ける場合には、その上端に圧力センサーを取り付け、間隙水圧計測用パイプを設けない場合には、外管に形成された圧力センサー接続口に圧力センサーを接続することで、それぞれ構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る岩盤計測用管体構造1の鉛直断面図。
【図2】本実施形態に係る岩盤計測用管体構造1の水平断面図であり、(a)はA−A線に沿った断面図、(b)はB−B線に沿った断面図、(c)はC−C線に沿った断面図、(d)はD−D線に沿った断面図、(e)はE−E線に沿った断面図、(f)はF−F線に沿った断面図。
【図3】本実施形態に係る岩盤計測システム21の概略ブロック図。
【図4】変形例に係る岩盤計測用管体構造41の鉛直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る岩盤計測用管体構造及びそれを用いた岩盤計測システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る岩盤計測用管体構造を示した鉛直断面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る岩盤計測用管体構造1は、外管2と該外管の内側に配置された内管3とからなる二重管4をボーリング孔5に立て込んで構成してあり、外管2の外周面には、その周囲を環状に取り囲むようにかつ外管2の材軸に沿って互いに離間配置されるように複数のパッカー6を設けてある。
【0022】
ボーリング孔5は、地上からほぼ鉛直方向に、又は立坑から水平方向に掘削形成された横坑からほぼ鉛直方向に掘削形成されたものであって、100m〜1,000m程度の深さにわたって岩盤内に形成してあり、二重管4もそれに合わせて全長が100m〜1,000mになるように形成してある。
【0023】
岩盤計測用管体構造1は、パッカー6の内部充填空間にそれぞれ連通するように連通接続されたパッカー用パイプ7と、隣り合うパッカー6,6の間に拡がる外管2の外側空間9に連通するように配置された間隙水圧計測用パイプ10とを備え、パッカー用パイプ7は、パッカー6の背面位置にて外管2に形成された透水孔8に接続してあり、間隙水圧計測用パイプ10は、隣り合うパッカー6,6の間の中間位置にて外管2に形成された透水孔11に接続してある。
【0024】
パッカー用パイプ7は、該パイプを介して流体である水をパッカー6の内部充填空間に充填注入することにより、パッカー6を膨張させてボーリング孔5の孔壁に当接させることができるようになっているとともに、間隙水圧計測用パイプ10は、外管2の外側空間9を満たす地下水を導入できるようになっている。
【0025】
ここで、パッカー用パイプ7及び間隙水圧計測用パイプ10は、内管3の外周面と外管2の内周面との間に拡がる隙間空間12に挿通配置してある。
【0026】
パッカー用パイプ7及び間隙水圧計測用パイプ10は図2でよくわかるように、二重管4の断面中心から材軸直交方向に延びる基準軸からの設置角度が例えば0゜、15゜、30゜・・・となるよう、円周方向に順次ずらしながら地上に向けて立設してあり、かかる配置構成により隙間空間12での互いの干渉を避けることができるようになっている。
【0027】
すなわち、岩盤計測用管体構造1は、最下段のパッカー6にパッカー用パイプ7の下端を連通接続し(図2(a)、(b))、その上方に間隙水圧計測用パイプ10をその下端が外管2の外側空間9に連通するように配置し(図2(c))、その上方に下から2段目のパッカー6に下端が連通されるようにパッカー用パイプ7を配置し(図2(d))、その上方に間隙水圧計測用パイプ10をその下端が外管2の外側空間9に連通するように配置し(図2(e))、その上方に下から3段目のパッカー6に下端が連通接続されるようにパッカー用パイプ7を配置し(図2(f))、以下、間隙水圧計測用パイプ10とパッカー用パイプ7とをそれらの下端位置が外管2の内面に沿って螺旋状に上昇するように、隙間空間12に挿通配置してある。
【0028】
一方、本実施形態に係る岩盤計測システム21は図3に示すように、各間隙水圧計測用パイプ10にそれぞれ設けられた複数の圧力センサー22と、内管3の下方であってボーリング孔5の孔底に設置された地震計23と、圧力センサー22及び地震計23を制御するとともに圧力センサー22で計測された間隙水圧データ及び地震計23で計測された地震データをデータ処理する制御部24とで構成してある。
【0029】
本実施形態に係る岩盤計測用管体構造1及びそれを用いた岩盤計測システム21においては、二重管4を構成する外管2及び内管3に挟まれた隙間空間12にパッカー用パイプ7及び間隙水圧計測用パイプ10を挿通配置してあり、間隙水圧を計測する際には、複数の水圧センサー22で該水圧センサーが設置された位置での水圧を計測するとともに、それらの設置位置における高さ(深さ)を用いて計測値を補正することにより、上述した間隙水圧計測用パイプ10がそれぞれ連通された各隙間空間12における間隙水圧を制御部24で算出する。
【0030】
一方、地震計23を用いて地盤振動を計測する際は、内管3の内部空間に吊り降ろされ該内管の下方にてボーリング孔5の孔底に据え付けられた地震計23で地盤振動を計測するとともに、保守点検を行う際は、内管3の内部空間を利用して地震計23を吊り上げ、保守点検後、再び内管3に戻して吊り降ろし、再度据え付ける。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る岩盤計測用管体構造1及びそれを用いた岩盤計測システム21によれば、内管3の内部空間がパイプ非挿通の状態になっているため、該内部空間を、地震計23を設置したり設置後のメンテナンスを行ったりするための吊り降ろし及び吊り上げ用作業空間として利用することが可能となる。
【0032】
そのため、間隙水圧を計測するためのボーリング孔と地震計設置のためのボーリング孔とを従来のように別々に掘削形成する必要がなくなり、岩盤計測システムの構築コストを大幅に低減することが可能となる。
【0033】
本実施形態では、間隙水圧計測用パイプ10を設けてそれらの上端に圧力センサー22をそれぞれ取り付けるようにしたが、これに代えて、図4に示すように間隙水圧計測用パイプ10を省略してもかまわない。
【0034】
すなわち、図4に示す岩盤計測用管体構造41は、上述の実施形態と同様、二重管4をボーリング孔5に立て込むとともに、外管2の外周面に複数のパッカー6を設け、該パッカーの内部充填空間にそれぞれ連通するパッカー用パイプ7を隙間空間12に挿通配置してあるが、隣り合うパッカー6,6の間の中間位置にて外管2に形成された透水孔11は、圧力センサー22を接続するための圧力センサー接続口として機能する。
【0035】
そして、岩盤計測用管体構造41を用いた岩盤計測システムは、各透水孔11に接続された複数の圧力センサー22と、内管3の下方であってボーリング孔5の孔底に設置された地震計23と、圧力センサー22及び地震計23を制御するとともに圧力センサー22で計測された間隙水圧データ及び地震計23で計測された地震データをデータ処理する制御部24とで構成される。
【0036】
かかる構成においては、パッカー用パイプ7のみが内管3の外周面と外管2の内周面との間に拡がる隙間空間12に挿通配置されることとなるが、内管3の内部空間がパイプ非挿通の状態となることによって、該内部空間を、地震計23の吊り降ろし及び吊上げ用作業空間として利用することができるという作用を奏する点については、上述の実施形態と何ら変わりはない。
【符号の説明】
【0037】
1,41 岩盤計測用管体構造
2 外管
3 内管
4 二重管
5 ボーリング孔
6 パッカー
7 パッカー用パイプ
9 外管2の外側空間
10 間隙水圧計測用パイプ
11 透水孔(圧力センサー接続口)
12 隙間空間
21 岩盤計測システム
22 圧力センサー
23 地震計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管及びその内側に配置された内管からなる二重管と、前記外管の周囲を環状に取り囲むようにかつその材軸に沿って互いに離間配置されるように前記外管の外周面に設けられた複数のパッカーと、該パッカーの内部充填空間に連通配置することで該内部充填空間に流体を充填注入して前記パッカーを膨張可能に構成したパッカー用パイプと、前記パッカーのうち、隣り合うパッカーの間に拡がる前記外管周囲の空間に連通させることで該空間に拡がる地下水を導入可能に配置した間隙水圧計測用パイプとを備えるとともに、前記パッカー用パイプ及び前記間隙水圧計測用パイプを前記内管の外周面と前記外管の内周面との間に挿通配置したことを特徴とする岩盤計測用管体構造。
【請求項2】
請求項1記載の岩盤計測用管体構造と、前記間隙水圧計測用パイプに設けられた圧力センサーと、前記内管の下方であって前記ボーリング孔の孔底に設置された地震計とを備えたことを特徴とする岩盤計測システム。
【請求項3】
外管及びその内側に配置された内管からなる二重管と、前記外管の周囲を環状に取り囲むようにかつその材軸に沿って互いに離間配置されるように前記外管の外周面に設けられた複数のパッカーと、該パッカーの内部充填空間に連通配置することで該内部充填空間に流体を充填注入して前記パッカーを膨張可能に構成したパッカー用パイプとを備えるとともに、前記パッカーのうち、隣り合うパッカーの間に拡がる前記外管周囲の空間に連通する圧力センサー接続口を前記外管に形成し、前記パッカー用パイプを前記内管の外周面と前記外管の内周面との間に挿通配置したことを特徴とする岩盤計測用管体構造。
【請求項4】
請求項3記載の岩盤計測用管体構造と、前記圧力センサー接続口に接続された圧力センサーと、前記内管の下方であって前記ボーリング孔の孔底に設置された地震計とを備えたことを特徴とする岩盤計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−145113(P2011−145113A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4473(P2010−4473)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】