説明

岸壁用はしご

【課題】 港湾や漁港の安全性をより高めることのできる岸壁用はしごを提供する。
【解決手段】 岸壁100の側壁1001に設置されたはしご本体1に、センサ2が設置される。一方、はしご本体1近傍の岸壁100の地上部分(地面1002)には、警報装置3が設置される。そして、センサ2が人の存在を検知すると警報装置3から警報が行われる。したがって、はしご本体1に落水者が掴まることにより、センサ2が検知し、地上に設置された警報装置3から警報が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岸壁の側壁に昇降可能に設置する岸壁用はしごに関する。
【背景技術】
【0002】
港湾や漁港の防波堤や船舶係留のための岸壁の壁面には、岸壁用はしごが設置されている(例えば、特許文献1参照)。これは、落水者が登って来れるようにするもので、港湾や漁港の安全対策として必須とも言える設備である。
【特許文献1】実開昭62−120700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような従来の岸壁用はしごにおいては、以下のような問題があった。まず、従来の岸壁用はしごは、落水者が自力で岸壁の上(すなわち地面)まで登ってくることが前提となっている。しかしながら、誤って落水した人の衣服は、水(海水等)を含んで重くなるため、これを着て岸壁用はしごを登ることは困難な場合も生じ得る。さらに、落水した際のショックや焦りにより正常な精神状態を保てないことも容易に想像されるため、岸壁用はしごに掴まることはできても、必ずしも自力で登れるものではなかった。したがって、このような岸壁用はしごを設置しても港湾や漁港の安全性を保つことができない場合があった。
【0004】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するべくなされたもので、港湾や漁港の安全性をより高めることのできる岸壁用はしごを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る岸壁用はしごは、岸壁の側壁に設置するはしご本体と、当該はしご本体に設置され、人の存在を検知可能なセンサと、前記はしご本体近傍の岸壁の地上部分に設置可能な警報装置とを具備し、前記センサが人の存在を検知すると前記警報装置から警報するものである。
【0006】
上記構成の岸壁用はしごによれば、岸壁の側壁に設置されたはしご本体に、センサが設置される。一方、はしご本体近傍の岸壁の地上部分には、警報装置が設置される。そして、センサが人の存在を検知すると警報装置から警報が行われる。したがって、はしご本体に落水者が掴まることにより、センサが検知し、地上に設置された警報装置から警報が行われる。
【0007】
このように、はしご本体にセンサを設け、センサが落水してはしご本体に掴まった人の存在を感知した際に、地上の警報装置により警報することで、地上にいる人に落水者の存在を知らせることができる。したがって、落水者が自力で岸壁用はしごを登れない場合であっても、地上の人に知らせることにより救助される可能性が高くなるため、港湾や漁港の安全性をより高めることができる。
【0008】
ここで、岸壁とは、主に船舶を接岸し貨物の積み卸しや船客の乗下船をするための施設であるが、海岸、川岸等に人工的に設けられた側壁を有する施設であればよく、桟橋、ドルフィン、護岸および防波堤をも含む概念である。
【0009】
好ましくは、前記はしご本体は、弾性材で形成された1対の側柱と、前記弾性材と同質の弾性材で一体に形成され、所定の間隔で双方の前記側柱を結んで固定された複数の横桟とを具備し、前記側柱の横桟固定面側の所定箇所には、センサ設置穴が設けられ、前記センサは、前記センサ設置穴に、相対する側柱に向けて設置されるように構成される。
【0010】
この場合、センサは、はしご本体の横桟が固定される側柱の横桟固定面に設けられたセンサ設置穴に取り付けられる。そして、センサは、相対する側柱に向けられている(センサが取り付けられている側柱と反対側の側柱に向けらている)ため、落水者が横桟に掴まることにより、センサが人の存在を検知する。したがって、より容易かつ確実に人の存在を検知することができる。
【0011】
好ましくは、前記センサは、焦電センサであるように構成される。
【0012】
この場合、センサは、人体から出る熱(赤外線)を検出する焦電センサ(熱センサ)が用いられる。この焦電センサを用いることにより、人の存在の有無を容易に検出できる一方、消費電力が少なくすむとともに、安価に設置できる。
【0013】
好ましくは、前記警報装置には、太陽光発電ユニットが設けられ、前記センサおよび警報装置に電力を供給するように構成される。
【0014】
この場合、センサおよび警報装置の電力が警報装置に設けられた太陽光発電ユニットにより供給される。したがって、本発明に係る岸壁用はしごに別途電源を接続することなく独立して所定の箇所に設置することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る岸壁用はしごによれば、はしご本体にセンサを設け、センサが落水してはしご本体に掴まった人の存在を感知した際に、地上の警報装置により警報することで、地上にいる人に落水者の存在を知らせることができる。したがって、落水者が自力で岸壁用はしごを登れない場合であっても、地上の人に知らせることにより救助される可能性が高くなるため、港湾や漁港の安全性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1および図2は本発明の一実施形態に係る岸壁用はしごの岸壁への施工状態図である。図1ははしご本体を正面(海側)から見た図であり、図2ははしご本体を側面から見た図である。
【0017】
本実施形態の岸壁用はしごは、岸壁100の側壁1001に設置するはしご本体1と、当該はしご本体1に設置され、人の存在を検知可能なセンサ2と、前記はしご本体1近傍の岸壁100の地上部分(地面1002)に設置可能な警報装置3とを具備し、前記センサ2が人の存在を検知すると前記警報装置3から警報するものである。
【0018】
上記構成の岸壁用はしごによれば、岸壁100の側壁1001に設置されたはしご本体1に、センサ2が設置される。一方、はしご本体1近傍の岸壁100の地上部分である地面1002には、警報装置3が設置される。そして、センサ2が人の存在を検知すると警報装置3から警報が行われる。したがって、はしご本体1に落水者が掴まることにより、センサ2が検知し、地面1002に設置された警報装置3から警報が行われる。
【0019】
このように、はしご本体1にセンサ2を設け、センサ2が落水してはしご本体に掴まった人の存在を感知した際に、地上の警報装置3により警報することで、地上にいる人に落水者の存在を知らせることができる。したがって、落水者が自力で岸壁用はしごを登れない場合であっても、地上の人に知らせることにより救助される可能性が高くなるため、港湾や漁港の安全性をより高めることができる。
【0020】
ここで、本実施形態のはしご本体1およびセンサ2についてより具体的に説明する。図3は図1のX−X断面図である。図1および図3に示すように、本実施形態において、はしご本体1は、厚肉筒状の弾性材で形成された1対の側柱11と、前記弾性材と同質の弾性材で一体に形成され、所定の間隔で双方の前記側柱11を結んで固定された複数の横桟12とを具備する。
【0021】
本実施形態の側柱11は、空洞部14を有し、スタッドボルト16により、岸壁100の側壁1001に架台4を介して固定される。この際の施工作業を容易にするために、側柱11の正面には施工用穴15が開けられている。側柱11の長さ(すなわち、はしご本体1の長さ)は、取り付けられる岸壁100等における海面200の高さにより適当な長さの側柱11を用意する。より具体的には、例えば、干潮時の海面200の高さから所定長さ下方にまで横桟12が位置するように設置する。特に、落水者がはしご本体1の横桟12に足を掛けられる程度の長さに設置することが好ましい。落水者がはしご本体1の横桟12に掴まった上、足を掛けることができるようにすることで、自力で登り易くするためである。なお、図2に示すように、岸壁100の下方が平らでない場合には、ジョイント式のはしご10をはしご本体1の下端に取り付けて延長することとしてもよい。
【0022】
側柱11の横桟固定面111側の所定箇所には、センサ設置穴13が設けられる。そして、前記センサ2は、前記センサ設置穴13に、相対する側柱11に向けて設置される。
【0023】
このように、センサ2は、相対する側柱11に向けられている(センサ2が取り付けられている側柱11と反対側の側柱11に向けらている)ため、落水者が横桟12に掴まることにより、センサ2が人の存在を検知する。したがって、より容易かつ確実に人の存在を検知することができる。
【0024】
本実施形態において、センサ2は、人体から出る熱(赤外線)を検出する焦電センサ(熱センサ)が用いられる。この焦電センサを用いることにより、人の存在の有無を容易に検出できる一方、消費電力が少なくすむとともに、安価に設置できる。
【0025】
なお、本実施形態においては、センサ2として焦電センサを用いたが、これに限定されるものではなく光センサ、マイクロ波センサ等、種々の好適なセンサを使用可能である。
【0026】
また、本実施形態においては、それぞれの側柱11の対面する位置にセンサ2を設けているが、どちらか一方でもよい。対面する位置にセンサ2を設ける場合、一方のセンサ2から他方のセンサ2に対して赤外線を照射し、通常時は他方のセンサ2においてつねに赤外線を検知している状態にしておき、人が横桟12を掴んで一方のセンサ2からの赤外線照射を遮ることにより、人の存在を検知することとしてもよい。
【0027】
また、本実施形態においては、側柱11の長手方向についても複数のセンサ2を設けているが、いずれか一方でもよい。また、その位置(高さ)については、海面200の高さや潮位変動の状況に応じて好適に用いられ得る。例えば、側柱11の長手方向に複数のセンサ2を設ける場合、下方のセンサ2を干潮時の海面200の高さよりある程度高い位置(波があまりかからないような高さ)に設けるとともに、上方のセンサ2を満潮時の海面200の高さよりある程度高い位置に設けることとしてもよい。特に、焦電センサを用いる場合、水中では熱(赤外線)がうまく伝わらず、人の存在を検知できない可能性がある。一方、あまり高い位置にセンサ2を設けると、はしご本体1に掴まるのが精一杯の落水者を検知できないという問題が生じ得る。したがって、上述のように側柱11の長手方向に複数のセンサ2を設けることにより、海面200の高さがいずれにある場合であっても、なるべく低い位置(海面200の高さに近い位置)において人の存在を検知し得る状態に置くことができ、より早期かつ確実に人の存在を検知することができる。
【0028】
ここで、センサ2の電力供給の態様および警報装置3についてより具体的に説明する。本実施形態の警報装置3は、地上(岸壁100の地面1002上)にいる人に視覚的に警報する発光部31と、発光部31を所定の高さに配置するための支柱33と、支柱33を支持する土台34とを有している。また、本実施形態において、警報装置3の発光部31の頂部に太陽光発電ユニット32が設けられ、前記センサ2および警報装置3(の発光部31)に電力を供給するように構成される。センサ2に対しては、太陽光発電ユニット32から発光部31および支柱33の内部を通じてはしご本体1に向けて配線し、はしご本体1の側柱11の空洞14内を通してセンサ2に配線する(図1において配線16で示す)。また、横桟12の内部または裏側に配線することにより対向する側柱に配されるセンサ2に対してもシンプルに配線できる。なお、警報装置3とセンサ2との間の地上部分の配線には配線カバー5が設けられるとともに、側柱11の空洞14内および横桟12内/裏側の配線は防水処理(防水パイプ内を配線する等)が施される。
【0029】
このようにして、センサ2および警報装置3の発光部31の電力が警報装置3に設けられた太陽光発電ユニット32により供給される。したがって、本発明に係る岸壁用はしごに別途電源を接続することなく独立して所定の箇所に設置することができる。
【0030】
ここで、警報装置3の発光部31の態様について説明する。図4は本発明に係る岸壁用はしごに使用するスタンド型の警報装置の具体例を示す図である。また、図5は本発明に係る岸壁用はしごに使用する地面設置型の警報装置の具体例を示す図である。
【0031】
図4(a)の警報装置3は、発光部31としてLED35を内部の円筒構造の周方向に配置し、タイミングをずらして点滅発光させることにより、擬似的に回転発光させたように見せるものである。このように、発光態様だけで回転発光しているように見せるため、視認性の高い発光部31を安価に実現することができる。さらに、上下方向に複数段LED35を配置することにより、さらなる視認性の向上を図ることができる。なお、LED35を水平回転可能な回転機構を備え、LED35は常時点灯させた状態で、実際に回転させる態様も当然に実施可能である。
【0032】
図4(b)の警報装置3は、発光部31として同じくLED35を直方体の側面に複数配置したものである。この警報装置3は側面にも太陽光発電ユニット32が設けられるため、LED35の発光輝度および/またはセンサ2のセンサ感度をさらに高める(より高い発光輝度のLED35および/またはより高い感度のセンサ2を配置する)ことができる。
【0033】
図5(a)、図5(b)の警報装置3は、支柱33の不要な(土台34と発光部31および太陽光発電ユニット32とが略一体に形成された)地面設置型の警報装置3であり、岸壁100の地面1002に直接取り付けるため、視認性の点ではスタンド型の警報装置3に劣るが、コストおよび耐久性の点で優れるため、適宜、スタンド型の警報装置3の警報装置に補助的に追加することが好ましい。もしくは、音声による警報装置(スピーカ装置等)を別途設け、遠くにいる人にも警報を報知する一方で、警報音に気付いて岸壁100に近付いてきた人(救助する人)に対しては該当する岸壁用はしごの位置を図5のような警報装置3で示すこととしてもよい。図5(a)の警報装置3は、前後方向にLED(図示せず)を並列配置した発光部31を有している一方、図5(b)の警報装置3は、LED(図示せず)を周方向に放射状配置した発光部31(上記擬似発光させる態様も採用可能である)を有している。もちろん、図4の警報装置3に対して、音声による警報装置を組み合わせて使用することも可能である。
【0034】
以上のように、複数の態様の警報装置3を適宜組み合わせて配置することにより、より効果的な警報報知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る岸壁用はしごの岸壁への施工状態図(正面図)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る岸壁用はしごの岸壁への施工状態図(側面図)である。
【図3】図1のX−X断面図である。
【図4】本発明に係る岸壁用はしごに使用するスタンド型の警報装置の具体例を示す図である。
【図5】本発明に係る岸壁用はしごに使用する地面設置型の警報装置の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 はしご本体
11 側柱
111 横桟固定面
12 横桟
13 センサ設置穴
2 センサ
3 警報装置
32 太陽光発電ユニット
100 岸壁
1001 岸壁の側壁
1002 岸壁の地上部分(地面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸壁の側壁に設置するはしご本体と、
当該はしご本体に設置され、人の存在を検知可能なセンサと、
前記はしご本体近傍の岸壁の地上部分に設置可能な警報装置とを具備し、前記センサが人の存在を検知すると前記警報装置から警報することを特徴とする岸壁用はしご。
【請求項2】
前記はしご本体は、弾性材で形成された1対の側柱と、前記弾性材と同質の弾性材で一体に形成され、所定の間隔で双方の前記側柱を結んで固定された複数の横桟とを具備し、前記側柱の横桟固定面側の所定箇所には、センサ設置穴が設けられ、
前記センサは、前記センサ設置穴に、相対する側柱に向けて設置されることを特徴とする請求項1記載の岸壁用はしご。
【請求項3】
前記センサは、焦電センサであることを特徴とする請求項1または2記載の岸壁用はしご。
【請求項4】
前記警報装置には、太陽光発電ユニットが設けられ、
前記センサおよび警報装置に電力を供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の岸壁用はしご。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−274760(P2006−274760A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99466(P2005−99466)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000106955)シバタ工業株式会社 (81)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】