説明

嵩高印刷用紙

【課題】 嵩高で柔軟性に優れ、かつオフセット印刷適性を有する柔軟嵩高印刷用紙の提供。
【解決手段】 単繊維の幅が15μm以下の範囲にあって、繊維長分布の尖度が8以上であるLパルプを使用し、この原料Lパルプ中に、不透明化剤、自己定着性澱粉を含有させることを特徴とする、嵩高で柔軟性に優れ、かつオフセット印刷適性を有する柔軟嵩高印刷用紙。不透明化剤および自己定着性澱粉の配合量はそれぞれ0.2〜2%および0.5〜4%であるのが特に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵩高で柔軟性に優れかつオフセット印刷適性を有する印刷用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙に嵩高性と柔軟性を付与する方法として、通常、紙の主原料であるパルプの材種の選定や改質、パルプの叩解度の調整、嵩高薬品や嵩高填料の配合、表面処理剤の塗布、プレス・カレンダー等の抄紙機条件の調整等が行われる。
柔軟嵩高紙は、これらの手段を一つだけ使用するか又は複数組み合わせることにより、成紙の嵩高性、柔軟性、紙力を保持させるように抄造するのが一般的であるが、この場合、紙を嵩高、柔軟にすると、紙表面の平滑性や内部結合強度のような紙力が低下し、オフセット印刷時のインキ着肉不良、ピック、フクレ、粉落ち等の印刷トラブルの原因となり易い。これを補うべく、紙の表面の平滑性を上げたり、紙の強度を強くしたりすると、逆に嵩高性や柔軟性が損なわれるという問題が生じる。従って、これらの特性を両立させる好適な処理条件を如何につくるかが、従来からの技術的な課題となっていた。
【0003】
原料パルプの材種については比較的嵩高になるパルプが知られており、特に中質紙に配合される機械パルプの場合では、化学パルプに比べてより嵩高な紙を得ることが可能である。例えば特許文献1及び2において嵩高なパルプとして、NBCTMP材のラジアータパインを提示している。又、化学パルプの場合においても、広葉樹材の特定な樹種(ガムウッド、メープル、バーチ)では嵩高になるとしている。(特許文献8)然しながら、これらのパルプは繊維が比較的太く剛直であること等の特徴を有し、このことが嵩高へ寄与していると考えられている。パルプ自体で嵩高化するのにはこれは有効な方法であるが、一方で平滑性や柔軟性が損なわれる為、使用する紙用途が限られることや、特定な樹種のみを選別して集荷することは実際的ではない。
【0004】
パルプの改質の例として、水酸化ナトリウムで処理して得られるマーセル化パルプ(特許文献3、4)や、グリオキザール等の架橋剤でパルプ繊維の水素結合力を弱めたカールドファイバー(特許文献5)、パルプシートを液体アンモニアに浸漬し乾燥後解繊処理する方法(特許文献6)等も提案されている。これらの改質パルプも、改質処理操作が煩雑であったり用途が極めて限定されていたりして汎用性に乏しい。
【0005】
またパルプの叩解度は、嵩高性、柔軟性と紙力と密接に関連する要素であり、この範囲を規定した提案もなされている。(特許文献15、16)叩解を進めていくと紙の嵩高性と柔軟性はほぼ直線的に低下するが、紙力と平滑性は逆に向上する。本来この両方の特性を見ながら、要求品質に適合させる叩解度の範囲を設定する必要があるものの、この範囲をあまり狭い範囲で規定しまうことは、他の薬品・抄紙条件の調整が制約を受け、紙の嵩高性・柔軟性と紙力とを好適なバランスで両立させるには好ましくない。
【0006】
一方嵩高薬品や特殊な填料については、これを原料パルプに内添することにより、紙の嵩高性、柔軟性を発現させることができるといわれている。嵩高薬品は、繊維表面を疎水化・繊維間結合距離を増加させることにより、又無定形シリカのような嵩高填料は、1次粒子が凝集して3次元構造の2次粒子となった、いわゆる細孔量の多さにより嵩高性を発現させると云われている。
【0007】
嵩高薬品は通常、嵩高剤、柔軟化剤、低密度化薬品等と呼称され、現在数種類のものが市販されている。各種の提案がなされており、例えば特許文献7のようなアルキレンオキサイドオリゴマー(商品名:スルゾール、BASF社製)や特許文献8のような多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物(商品名:KB-115、花王社製)等を例示できる。また嵩高剤の組成・融点・HLBを規定する方法(特許文献14)等がある。これらの嵩高薬品はその特性故に全般に紙力を低下させるが、それぞれの組成によって、嵩高性能や柔軟化の程度にも差違が見られる。これらのうち、発泡性を有する嵩高薬品にあっては抄紙工程において白水の泡トラブルを発生させたり、他に紙のサイズ性を低下させたり等の弊害もあって、これらの性能は必ずしも十分とは云えない。
又、嵩高填料として、合成ゼオライト(商品名:チキソレックス、KOFRAN社製)を配合する方法(特許文献9)、無定形シリカ(ホワイトカーボンとも呼称される)を配合する方法(特許文献10)等もあるが、この場合特に抄紙時の紙中への定着が難しく、実際の操業に適用するには問題が多い。
併用処方の提案としては、NBCTMPを所定量配合しかつ表面にクリアーサイズを塗布する方法(特許文献2)、内添填料として無定形シリカと嵩高剤を併用する方法(特許文献7)、表面処理剤として第四級アンモニウム塩と嵩高剤を併用する方法(特許文献11)、表面処理剤として尿素と嵩高剤を併用する方法(特許文献12)等がある。また原料パルプとして機械パルプを所定量配合しかつ填料として合成ゼオライトを内添する方法(特許文献9)、嵩高剤の融点と抄紙機の余熱乾燥温度を規定する方法(特許文献13)等がある。
【特許文献1】特許第2650533号公報
【特許文献2】特開平5-98593号公報
【特許文献3】特開平7-189168号公報
【特許文献4】特開2003-293284号公報
【特許文献5】特開平7-189168号公報
【特許文献6】特開平10-121395号公報
【特許文献7】特開2000-282392号公報
【特許文献8】特開2001-234497号公報
【特許文献9】特開2001-336088号公報
【特許文献10】特開2001-288690号公報
【特許文献11】特開2001-271292号公報
【特許文献12】特開2001-288691号公報
【特許文献13】特開2002-155495号公報
【特許文献14】特開2000-273792号公報
【特許文献15】特開2001-73299号公報
【特許文献16】特開2000-98496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、嵩高で柔軟性に優れ、かつオフセット印刷適性を有する柔軟嵩高印刷用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、単繊維の幅が15μm以下の範囲にあって、繊維長分布の尖度が8以上であるという特定の繊維形態のLパルプを使用し、この原料Lパルプ中に、不透明化剤、自己定着性澱粉を含有させていることを特徴とする、嵩高で柔軟性に優れ、かつオフセット印刷適性を有する柔軟嵩高印刷用紙である。本発明の一つの実施態様は上記不透明化剤として、ポリアミド化合物にグリシジル基を導入した化合物を0.2〜2%含有することを特徴とする柔軟嵩高印刷用紙である。別の一つの実施態様は、自己定着性澱粉を紙中に0.5〜3%含有することを特徴とする柔軟嵩高印刷用紙である。更に別の一つの実施態様は、紙の縦方向、横方向の補正クラーク剛度積の平方根が5以下であることを特徴とする柔軟嵩高印刷用紙である。
【発明の効果】
【0010】
このような構成を取ることによって、本発明の柔軟嵩高印刷用紙は、元来相反する紙の特性である、嵩高性・柔軟性と強度特性を両立させ、嵩高で、柔軟性に富み、かつ優れたオフセット印刷適性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の詳細について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0012】
本発明は、種々のパルプ材の繊維形態と成紙物性との関係を鋭意研究した結果、単繊維の幅、繊維長の分布と嵩高性、インキ着肉性の間に相関があることを見出した。即ち、原料Lパルプとして、単繊維の巾が15μm以下の範囲にあって、繊維長分布の尖度が8以上であるものが比較的嵩高でインキ着肉性が良好であることが確かめられた。ここでいうところの繊維長の尖度とは、繊維長の分布を描いた時、標準分布と比較して度数分布曲線の相対的な鋭角度または平坦度を示す統計量のことであり、尖度が正で大きい程繊維長が揃っていることを表している。本発明で用いられる原料Lパルプは、叩解処理により容易に強度が向上する木材繊維、靭皮繊維、靭皮繊維等からなる天然パルプを主体とする広葉樹晒硫酸塩パルプパルプ(LBKP)である。これ以外の木材パルプの具体例として、針葉樹晒硫酸塩パルプ(NBKP)、針葉樹晒亜硫酸塩パルプ(NBSP)、広葉樹晒亜硫酸塩パルプ(LBSP)等がある。他に機械パルプ(GP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)も用途に応じて任意の割合で配合することができる。パルプのフリーネスは、特に限定されるものではないが、本発明の柔軟嵩高印刷用紙においては、カナダ標準フリーネス(CSF)が350ml〜500mlの範囲のものが使用される。この範囲を超えたものは、紙の剛度と印刷強度等が基準外となり易く、好ましくない。
【0013】
本発明において用いられる不透明化剤は、ポリアミド化合物にグリシジル基を導入した化合物(特許文献14)であり、繊維間の水素結合を阻害または切断して形成されたシートを嵩高柔軟化させる作用を有する。現在市販されている代表的なものとして日華化学(株)の商品名マスクートシリーズを例示できる。このシリーズ何れにおいても、本発明の柔軟嵩高印刷用紙の製造が可能である。この不透明化剤は、前記の嵩高薬品と比較して特に抄紙時のパルプへの定着率が高く、紙にサイズ性を付与しかつ柔軟性に優れるという特徴がある。
この不透明化剤の添加率は対絶乾パルプ0.2〜2%の範囲とすることが好ましい。0.2%未満では、嵩高柔軟性が不十分となり、2%を超えると柔軟効果は増加する反面、嵩高効果は上昇せず、紙力の低下が大きくなるので好ましくない。更に好ましくは0.45〜1.8%、特に好ましくは0.5〜1.5%の量で使用する。
【0014】
本発明において用いられる紙力剤は、自己定着性の澱粉であり、紙製品に広く利用されているカチオン澱粉と比べて原料パルプへの定着性に優れている。即ち、前記の嵩高薬品による紙力の低下を抑制する為に、通常ポリアクリルアミドのような高分子紙力増強剤を併用する場合があるが、この場合には紙力が回復する一方で紙が硬くなり柔軟性を損なうという欠点がある。本発明の自己定着性の両性澱粉は、高分子紙力増強剤を併用することなく、澱粉のみでその効果が期待できる。現在市販されている代表的なものとして、日本食品加工社の自己定着性澱粉がある。この自己定着性の両性澱粉の添加率は対絶乾パルプ0.5〜4%の範囲としている。0.5%より低いと紙力が弱く、4%を超えた添加量ではパルプへの定着性とコストへの悪影響が懸念される。更に好ましくは0.8〜3.0%、特に好ましくは1.0〜2.5%の量で使用する。
【0015】
本発明においては、紙の柔軟性を定量化して評価する方法として、紙の縦方向、横方向のクラーク剛度をそれぞれ紙厚で補正した補正クラーク剛度の値を求め、これらの積の平方根の値を用いた。鋭意検討の結果、紙厚が高いとクラーク剛度は高くなることから、同じ厚みにおける柔軟性を比較する為に紙厚の要素を補正し、かつ紙の縦と横の影響を加味することにより、触感による柔軟性の評価の指標となることが判明した。この値は無次元で、5以下の範囲にあれば柔軟性が良好であることを見出した。
【0016】
さらに本発明においては、オフセット印刷強度を評価判定する方法として、枚葉オフセット印刷機による他、J.TAPPI No.18−2:2000に規定される内部結合強度を用いている。この内部結合強度の目安として0.06N・m以上であれば、フクレ、ピック、粉落ちの発生しない耐刷力を有することが確認されている。
【0017】
本発明において用いられる填料は、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン等の公知公用の填料であり、特に限定されない。パルプに添加するその他の抄紙薬品としては、必要に応じてサイズ剤、歩留向上剤、染料、蛍光増白剤、消泡剤、スライムコントロール剤などの一般に公知公用の抄紙薬品が使用される。これらの抄紙薬品の添加後に酸性紙又は中性紙として抄紙される。
【0018】
本発明の原紙の製造は、長網、またはオントップフォーマ型等のツインワイヤー型等公知公用の抄紙機により抄紙される。原紙の表面強度を付与する為のクリアーサイズの塗布方式についても特に限定されるものではないが、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ブレードコーター等が使用できる。
【0019】
本発明においては、さらに紙に嵩高性と柔軟性を付与する方法として、抄紙機のプレス工程のプレス圧を下げて、湿紙の段階での紙の密度を低くする処置を施している。また紙の表面に平滑性を付与する為のカレンダー処理についても、出来るだけカレンダー圧を下げることによって紙の密度を上げない処置も施している。
【0020】
以上のように、特定の繊維形態を有するLパルプ、不透明化剤、自己定着性澱粉を配合することにより、嵩高で柔軟性に優れ、かつオフセット印刷適性を有する柔軟嵩高印刷用紙を得ることができる。
実施例:
次に、実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。本発明の柔軟嵩高印刷用紙の評価は、紙の嵩高性の程度に関しては比容により、柔軟性の程度に関しては紙の縦と横方向の補正クラーク剛度の積の平方根により、紙力に関しては内部結合強度と表面強度により行った。
【0021】
比容(単位cm3/g):JIS P 8118:1998に従って密度を測定し、この密度の逆数を比容とした。この値が大きいほど嵩高な紙となる。
【0022】
柔軟性(単位無次元):JIS P 8143:1996に従ってクラーク剛度を測定し、以下の式により補正クラーク剛度を算出する。
クラーク剛度補正値=クラーク剛度/(紙厚)3
次いで、縦、横の補正クラーク剛度の積を求め、その平方根を柔軟性の指標とした。この値が小さいほど柔軟な紙となる。
【0023】
内部結合強度(単位N・m):J.TAPPI No.18−2:2000に従って測定した。この値が大きいほど紙力の強い紙となる。
【0024】
表面強度:枚葉オフセット印刷機(型式:ローランド702、使用インキ:大日本インキ化学工業(株)社製VALUS−G墨R101、印刷速度:10000枚/時、ベタ部インク濃度:1.5)を使用し、10000枚印刷後のブランケットの粉落ち程度、フクレ、ピックなどの印刷品質を視感評価した。実施例1と同程度の場合を○とし、これより劣る場合を△とした。
【実施例1】
【0025】
単繊維の幅が13.2μm以下で繊維長分布の尖度が11.0のLBKP95部(フリーネス480ml)及びNBKP5部の割合で混合したパルプスラリーに、カチオン澱粉(商品名:ケート308、王子ナショナル(株)社製)0.5%と自己定着性澱粉(商品名:HRボンド、日本食品化工(株)社製)を対絶乾パルプ1.5%、不透明化剤(商品名:マスクートK−100、日華化学(株)社製)を対絶乾パルプ0.6%、硫酸アルミニウムを対絶乾パルプ1%、填料(商品名:タマパールTP−121、奥多摩工業(株)社製)を対絶乾パルプ25%添加した。この原料を長網抄紙機にて抄紙した。次いでオンマシンのサイズプレスコーターにより澱粉を両面絶乾塗布量2.5g/m2となるように塗工して、目標坪量80g/m2の書籍用紙を得た。評価した結果を表1に示す。短繊維の幅および尖度は、カヤーニ繊維長測定装置(メッツォ社製 FiberLab)により測定して算出した。
【実施例2】
【0026】
実施例1において、不透明化剤(商品名:マスクートK−100、日華化学(株)社製)を対絶乾パルプ1.0%、自己定着性澱粉(商品名:HRボンド、日本食品化工(株)社製)を対絶乾パルプ2.0%添加とした以外は実施例1と同様にして目標坪量80g/m2の書籍用紙を得た。評価した結果を表1に示す。
【実施例3】
【0027】
実施例1において、不透明化剤(商品名:マスクートK−100、日華化学(株)社製)を対絶乾パルプ0.15%とした以外は実施例1と同様にして目標坪量80g/m2の書籍用紙を得た。評価した結果を表1に示す。
【実施例4】
【0028】
実施例1において、自己定着性澱粉(商品名:HRボンド、日本食品化工(株)社製)を対絶乾パルプ3.5%添加とした以外は実施例1と同様にして目標坪量80g/m2の書籍用紙を得た。評価した結果を表1に示す。
【実施例5】
【0029】
実施例1において、自己定着性澱粉(商品名:HRボンド、日本食品化工(株)社製)を対絶乾パルプ0.4%添加とした以外は実施例1と同様にして目標坪量80g/m2の書籍用紙を得た。評価した結果を表1に示す。
【実施例6】
【0030】
実施例1において、不透明化剤(商品名:マスクートK−100、日華化学(株)社製)を対絶乾パルプ2.2%とした以外は実施例1と同様にして目標坪量80g/m2の書籍用紙を得た。評価した結果を表1に示す。
[比較例1]
【0031】
実施例1において、不透明化剤(商品名:マスクートK−100、日華化学(株)社製)を無添加とした以外は実施例1と同様にして目標坪量80g/m2の書籍用紙を得た。評価した結果を表1に示す。
[比較例2]
【0032】
実施例1において、単繊維の幅が15μmより大きい(15.8μm)繊維長分布の尖度が8より小さい(7.4)LBKPを使用した以外は実施例1と同様にして目標坪量80g/m2の書籍用紙を得た。評価した結果を表1に示す。
実施例および比較例の測定結果は、表1の通りとなった。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例1、2および4を見ると明らかな通り、単繊維の幅が15μm以下の範囲にあって、繊維長分布の尖度が8以上であるLパルプを使用し、不透明化剤として、ポリアミド化合物にグリシジル基を導入した化合物を0.2〜2%及び自己定着性澱粉を紙中に0.5〜4%配合することにより、高比容で柔軟性が5以下かつ内部結合強度が0.6N・cm以上で印刷品質が良好な柔軟嵩高印刷用紙を得ることができる。
【0035】
一方、実施例3の場合には不透明化剤が0.15%と請求項2に規定する0.2〜2%の範囲に不足して配合すると、柔軟性が5.21と若干低下してしまう。実施例6の場合の様に不透明化剤が2.2%と請求項2に規定する範囲を超えて配合されると、柔軟性は良いものの、内部結合強度および印刷品質が低下する。実施例5の場合には自己定着性澱粉が0.4%と請求項3に規定する0.5〜4%に不足して配合されると、印刷品質および内部強度が低下する。しかしながら実施例3、5および6の嵩高印刷用紙は実用の範囲に包含される。
【0036】
不透明化剤を配合していない比較例1の場合には、比容が低く且つ柔軟性に欠けることがわかり、柔軟嵩高印刷用紙として好ましくない。
【0037】
比較例2では、単繊維の幅が15.8μmと15μmより大きい範囲にあり、繊維長分布の尖度が7.4と8より小さいLパルプを使用すると印刷品質が低下し、オフセット印刷適性を有する柔軟嵩高印刷用紙として好ましくない。
【0038】
表1から明らかなように、請求項1の本発明に係わる実施例で得られた印刷用紙は、実用に耐える品質から優れた品質の範囲内にあり、中でも請求項1に記載の発明と請求項2〜4に記載の発明の構成要件を備えた印刷用紙は、嵩高で柔軟性に優れ、かつオフセット印刷適性を有する柔軟嵩高印刷用紙である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維の幅が15μm以下の範囲にあって、繊維長分布の尖度が8以上であるLパルプを使用し、この原料Lパルプ中に、不透明化剤、自己定着性澱粉を含有させることを特徴とする、嵩高で柔軟性に優れ、かつオフセット印刷適性を有する柔軟嵩高印刷用紙。
【請求項2】
不透明化剤として、ポリアミド化合物にグリシジル基を導入した化合物を0.2〜2%含有することを特徴とする請求項1に記載の柔軟嵩高印刷用紙。
【請求項3】
自己定着性澱粉を紙中に0.5〜4%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の柔軟嵩高印刷用紙。
【請求項4】
紙の縦方向、横方向の補正クラーク剛度積の平方根が5以下であることを特徴とする請求項1〜3に記載の柔軟嵩高印刷用紙。




【公開番号】特開2006−28646(P2006−28646A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204409(P2004−204409)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】