説明

工作機械に装着した状態で行う、刃物研磨機

【課題】一般的に製品加工の場合、その大小を問わず真っ先にフェイスミル工具により、正確な六面体を作成することから始まるが、この使用頻度が高いフェイスミル工具は加工効率を上げる為に、工具外周に大きさによって3〜10個のチップ刃をつけているが、この刃先が機械、工具、チップ刃等の諸原因により新品工具を含めバラツキがあり切削効率を著しく悪くしている。
【解決手段】刃物を機械から取り外さず、装着のまま研磨機を機械のベット上にあるバイスで固定し、手動で機械(工具)を回転させながら同じ位置で刃物を研磨することにより各刃の振れ、刃のバラつきが解消され加工効率を大幅に高めた(現在工作機械に工具を装着したまま研磨する研磨機はなし)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工作機械を用いて金属の切削を行う時に必ず発生する刃物の鈍化を機械から工具を外さずに、装着したままの状態で、研磨し即加工が継続出来る装置。
【背景技術】
【先行技術文献】
【0002】
現在工作機械で使用する刃物の研磨は総て、機械から刃物または工具を取り外し、専用の刃物研摩機で研磨をしておりますが、刃研には一定の研磨技術が要求される、設備が高価である、ことから一定以上の規模を持つ会社に限定されており、一般の多くの会社は刃研専門業者に委ねておるのが現況であるが、その研磨内容は社内、社外を問わず総て刃物又は工具を機械から取り外すため以下のような問題を含んでいる。
【0003】
問題点を挙げますと,(1)刃研設備、刃研単価どちらにしても高価である。(2)外部委託の場合は刃物の移動に時間的ロスが大きい。
(3)相手の立場もあり常に早く欲しいとも言えず、効率よく加工するには、刃物の使用頻度にもよりますが、複数の予備刃を必要とする(フェイスミル工具で使用するチップ刃は新品刃に交換が多い)。
【0004】
しかしフェイスミル工具については上記に述べた以上に対処出来ない大きな問題がある、それは機械の芯ぶれ、工具の衝撃による歪み、工具の製作不良、チップ刃の不揃い、等の原因から起こる各刃間の高低のバラ付きである。
部品加工で最初に行う正確な六面体加工には、効率を考え一般的に一つのホルダーに多数の刃を持つフェイスミル工具を使用しているが、その能力を遺憾なく発揮するには数字上、各刃先の高低誤差は百分の一以下の誤差を求められるため、新品工具を含め不可能に近く、ある程度の効率の悪さは諦めているのが現状である。
【0005】
各刃間の誤差の修正は、ホルダーの形状が円形で複雑であり、しかも硬度の焼入れ処理されている。誤差範囲が厳しすぎる等により修正加工は出来ないのが現状である。
【0006】
一般的に刃物研磨機の対象は、エンドミル、メタルソウ、サイドカッターが占めており使用頻度が高いフェイスミル工具刃については、その多くが使い捨てであり仮に研磨するにしてもチップのみを取り出し、それにあった特殊冶具を作成してからとなりメリットが少ないのが現状である。また研磨したとしても,その刃を装着して後、各刃間の誤差、百分の一以下とは成らず、かといってフェイスミル本体如、取り外しての研磨機はなく、現時点での解決は不可能に近い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に述べたフェイスミル工具は大変使用頻度が高いため、その加工運用には一般的に大きな関心を持ちますが、先に述べた如く工具の作成、改造、修正はむずかしく、肝心の刃先の高低のバラ付き解消も、チップの研磨や、新品購入では解決できない事を踏まえ、フェイスミル工具を機械に装着した状態で回転研磨する以外に問題の解決手段は無いのが現況である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、円形状の高速モーターの先端に研磨用の砥石を装着した本体を、長方形の補助版にバンドで固定し一体化とし、事前に補助版中央部に設けた貫通穴と、本体を支えるべく用いた大きなアングル、そのアングルの上向き面上部に説けた穴とを一致させた後、両者を繋ぐボルトを通しナットで締め付けることにより、本体と一体化させた。またアングルとナットの接合部に角度付き目盛り版を設けたので、ナットの締め付けの強弱により貫通しているボルトを中心にモーター本体(砥石)が任意な上下角度を保持、また固定出来る構造とした。
【0009】
モーター本体の左右への動きは、底辺に位置するアングル(6)の両側面をコノ字型に加工した二本のスライドシャフト(18)ではさみ、上下の遊びは上からの調整ボルト締め付けと給油穴設置により滑らかな動きを構築すると共に、その原動力はスライドシャフト中央に設けたネジシャフト(16)の回転によることとした。
【0010】
角度を必要とする刃物研磨については、前項で述べた二本のコノ字型スライドシャフトの下に配置したメインシャフト(11)の回転により対応する。両シャフトを強く固定し、一体化した事により研磨本体の総てを受け止めたメインシャフトは片方を(10)角度目盛り付きフランジに(図左)、片方をメインシャフトの微移動の機構を併せ持つ、フランジ(図右10,19)にそれぞれ挿入接合しており、斜め研磨の場合メインシャフト本体左に位置する(20)回転角度の設定穴に適当なシャフトを挿入し回転することにより任意の角度が得られる。また反対側に研磨刃と砥石の接点位置および研磨量をきめるためにメインシャフトを微小に動かすべく設けたナット装置。
【0011】
研磨本体をスライドシャフトを介して滑らかに動かすために必要な、ネジ部はアングル底辺の中央下部に設けた長ナットに(17)、基盤中央の端から立ち上げた、ネジ基準穴を通したオスネジ(16)を挿入回転することにより、研磨本体は基準穴を基点に、研磨に要求される滑らかな動きをする。
【0012】
また研磨機全体の固定は、工作機械に装着されているバイスを使い、研磨下部に位置する基盤部(1)を固定するが、大きな傾斜角を必要とする加工では、スライドシャフト又はアングル先端がバイス上面に接触する恐れがあるため二台のバイスを用いてバイス中央空間を利用する,等の応用は必要である。
【0013】
複数刃を持つ工具の刃物研磨は、各刃の正確な位置が求められるため、その方策として基盤の隅に設けた丈夫に固定された上向きのシャフトを活用する。
まずシャフト上部に刃先位置決めシャフトが入る特殊フランジを設けた、位置決めシャフトはそのフランジを通過しながら、先端が切削する回転に向き合う方向で、しかも各刃を研磨するのに最も都合の良い確実な位置に接触させフランジ部で固定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は工作機械に各種刃物を装着したまま、刃物を研磨する研磨機を提供する。
今までは、機械、工具、チップ刃、刃物ホルダー等の細かな振れ、寸法違い、歪みなぞの微妙な原因の重なりにより、多数刃の刃先高さ不一致とゆう問題を引き起こし著しく、切削効率を悪くしていたが、刃物を機械に装着したまま、決まった位置で回転研磨することにより、上記に述べた各種原因により現れた現象は各刃の、刃物研磨量の多少により吸収されるため、工具本来の切削能力が発揮できる。
特にフェイスミル工具に至っては、その効果は大きく、例えば過去にミス操作等による衝撃で工具に歪が生じたため、高価を承知で新規購入したが捨てられず、保存している等のフェイスミル工具でも、外形変形による多少の歪みならば機械に装着し研磨することにより再生する可能性は大いにある。
【0015】
また任意な角度を必要とする面取り刃やドリル研磨等も研磨可能であり、その用途は広い、(ドリルは砥石近くでの保持が必要、エンドミルは底辺部のみ)。また一般の工具研磨機では大きなウエイトを占める工具のホルダー装置、並びに研磨時、振動防止を兼ねた重量な架台構造については工作機械で代用するため、研磨機の軽量、縮小、保管に優れ、しかも一般的な刃物研磨機では出来ない特徴である、工具、機械、による振れも修正できる要素を備えながらも、低価格が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 本発明の研磨機を示す平面図
【図2】 同研磨機のモーターより下の平面図
【図3】 同研磨機のA面からの側面図
【図4】 同研磨機のB面からの拡大側面図
【図5】 同研磨機のバイス固定による傾斜研磨の略図
【図6】 同研磨機の工作機械装着による刃の研磨加工略図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0018】
図面上の、(1)研磨機を支える基盤、(2)モーター、(3)砥石、(4)モーターと補助版を固定するバンド、(5)補助版、(6)本体の総ての駆動の中心軸となるアングル、(7)モーターの角度とアングルへの固定及び角度記入フランジの締め付けを兼ね備えたナット、(8)モーターとアングルを接続するシャフト、(9)モーターの冷却空気功、(10)メインシャフト固定フランジ(左右各1)、(11)本体の支えと角度変更を担うメインシャフト、(12)メインシャフト角度読み取り用カラー、(13、14)研磨刃の位置決めポール並びにシャフト、(16)本体をスライド移動させる為のネジシャフト及びハンドル、(17)ネジシャフトを受け止める、アングル底辺下部に設けた長ナット、(18)アングル本体を滑らかに移動出来るべく左右に設けたコノ字型スライド軸、(19)砥石による刃物の研磨量を決めるために、メインシャフトを微妙に移動させることを目的に設けたボルト、(20)本体傾斜時に、使用するハンドル挿入穴、(21)想定される工作機械(略図)、(22)研磨機固定バイス(参考図)、(23)研磨機移動方向矢印
【0019】
以下、上記構成の動作を説明する。発明した研磨機を工作機械のベット上に在るバイスで固定したあと、2モーターと6アングルを固定している7ナットを緩め、モーターの左後部に手を添えて下げることにより、3砥石の角度を上げながら研磨刃の後部に持ってゆき、かつ、刃の逃げ角に合わせながら、若干刃物との隙間を保持した状態でナットを締め固定する。
次に、13,14、基盤隅の、ポール上部に設けたフランジに先端を鈍角に加工したシャフトを、刃先を迎える方向で任意の位置を選び固定したのち、モーターを回転させながら19メインシャフト微移動用に設けたボルトを廻し砥石を刃先に近づけ研磨するが、その量はなるべく少なく、しかし全刃研磨出来ることを目安に決定する。
次に刃物に強度を持たすためと、切削送りを早めるために刃の底辺は若干平らになっていることを踏まえ、16ネジシャフトを廻すことにより砥石が研磨しながら横移動することで解決をした。
【0020】
二個目以降の研磨は工具が逆転しても支障が無い位置に砥石を平行移動した後、手動で工具を少し逆に廻し、刃物ストッパーにゆとりを持たせた状態で、工作機械のベットを下げるか、横にずらして、刃を自由に回転出来る状態にした後、工具を次の研磨に必要と思われる程度に大まかに工具を廻してからベットの復帰、ストッパーの位置等が初回と変わらない事の確認をしながら次の刃の研磨に入る、フェイスミル刃の研磨の最大の目的は、刃研よりも各刃の刃先高低の違いを極力無くすことを主眼とするため、工作機械のベット移動は出来る限り上下より平行移動の方策が無難ではある。
【0021】
研磨に関しては、通常研磨量が大変少ないこと、砥石は刃の後ろから刃の前に向かって研磨圧を掛けるがストッパーが刃物と向き合って固定されているため、研磨中に工具の移動は回転を含め無い。そして刃の数だけ繰り返し研磨して終了となる。
【0022】
傾斜研磨については最初に11メインシャフトに20任意の棒を入れて、10角度付きフランジの数値を見ながら本体を傾け固定した後、上記の操作を行う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に取り付けた金属切削用刃物(ドリル、エンドミル、特にフェイスミル)工具を機械から取り外すことなく、モーターおよびその先端に取り付けた砥石全体をアングル形状の骨格を持つ上部面に取り付け,その砥石を任意の角度に設定しながら、かつアングル底辺をスライドシャフトに密着させることにより砥石の左右の動きを可能にして研磨する装置。
【請求項2】
研磨機本体を、任意な角度に傾斜させる方策として、骨格たるアングル底辺下部に二本のスライドシャフトを介して固定接続され、かつ、両サイドをフランジに挿入接続された円形のメインシャフト機構、この構成により、メインシャフトの回転により、研磨機全体が傾斜するため傾斜角研磨を可能とした装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−83886(P2011−83886A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255474(P2009−255474)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(509278184)株式会社深田工業 (2)
【Fターム(参考)】