説明

工作機械及びパレット

【課題】工作機械において、パレット上に装着され且つ主軸とテーブルとの相対移動のストロークを超える大きさを有したワークを加工できるようにする。
【解決手段】工作機械13は、テーブル35上でパレットP1又はP2を水平方向に移動させるパレット移動手段と、テーブル35上で移動されたパレットP1又はP2を複数の異なる水平方向位置に位置決めするための位置決め手段と、複数の異なる水平方向位置に位置決めされたパレットP1又はP2をテーブル35にクランプするクランプ手段とを備え、テーブル35上の複数の異なる水平方向位置から選択された一つの位置にパレットP1又はP2をクランプできるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットを取り付けたテーブルと、工具を装着した主軸とを相対移動させることにより、パレットに装着されたワークを加工する工作機械及びパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の技術分野では、ワークを装着したパレットを工作機械のテーブルに着脱可能に取り付けて、ワークを加工することが広く行われている。また、テーブルに取り付けられたパレットの交換を自動化するために、パレット交換装置をテーブルに隣接させて設けることも一般的である。例えば、特許文献1に開示のパレット交換装置では、テーブルと隣接させて設けられたパレット支持部材にパレットを支持しておき、パレット交換装置に設けられたパレット移載手段をパレットに係合させて、パレット支持部材とテーブルとの間で、パレット支持部材及びテーブルに設けられたパレット案内手段に沿ってパレットを移動させ、載せ替えるようにしている。なお、テーブル上へのパレットの取付けは、パレット支持部材からテーブルへパレットを移載した後、テーブル上に設けられた一つの嵌合突起又は嵌合凹部をパレットの対応する位置に設けられた一つの嵌合凹部又は嵌合突起に嵌合させることによりテーブル上の所定位置にパレットを位置決めし、この位置でパレットをクランプすることによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−161492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、工作機械の主軸とテーブルとの相対移動のストロークは、加工対象のワークの大きさに応じた大きさを有している必要がある。したがって、長いワークを加工する場合には、移動ストロークが大きい工作機械が必要となり、大きな設置面積を必要とすると共に、コストも高くなるという問題がある。このため、パレットを用いずに、テーブル上にワークを直接固定し、一つのワークを加工する途中で、テーブル上でワークの装着位置を例えば水平方向(左右方向)にずらした後に再びテーブル上にワークを直接的に固定して加工を再開することで、水平方向の相対移動のストロークが短い主軸及びテーブルを用いて水平方向に長いワークを加工できるようにしていた。しかしながら、このような方法では、パレット交換装置を用いた自動交換を行うことができず、加工の途中でテーブル上で再度段取りを行うことが必要となるので、加工時間が長くなり、加工効率を低下させるという別の問題を引き起こしていた。
【0005】
なお、従来のテーブル上でパレットを位置決めしてクランプすることができるのは、一箇所のみであり、一つのワークを加工する間に、テーブル上でパレットを移動して異なる位置に位置決めしてクランプすることはできなかった。
【0006】
本発明は前述の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、工作機械において、パレット上に装着され且つ主軸とテーブルとの相対移動のストロークを超える大きさを有したワークを加工できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するため、本発明によれば、パレットを取り付けたテーブルと工具を装着した主軸とを相対移動させることにより、前記パレットに装着されたワークを加工する工作機械であって、前記テーブル上で前記パレットを移動させるパレット移動手段と、前記テーブル上で移動される前記パレットを複数の異なる位置に位置決めするための位置決め手段と、前記複数の異なる位置に位置決めされた前記パレットを前記テーブルにクランプするクランプ手段とを備え、前記テーブル上の複数の位置から選択された一つの位置に前記パレットを位置決めし、クランプすることを可能にした工作機械が提供される。
【0008】
本発明の工作機械は、テーブル上でパレットを移動させるためのパレット移動手段を備えていると共に、テーブル上で複数の異なる位置にパレットを位置決めしクランプすることができる。したがって、一つのワークの加工途中で、パレット移動手段によってテーブル上でパレットを移動させ、異なる位置に位置決めしてクランプし、この位置で主軸によるワークの加工を再開することが可能となる。
【0009】
上記工作機械において、前記位置決め手段は、嵌合突起と、該嵌合突起と嵌合する嵌合凹部とからなり、前記嵌合突起及び前記嵌合凹部のうちの一方が前記テーブル及び前記パレットのうちの一方の一つの位置に設けられ、前記嵌合突起及び前記嵌合凹部のうちの他方が前記テーブル及び前記パレットのうちの他方の複数の異なる位置に設けられるようにすることが好ましい。
【0010】
また、前記テーブルに隣接して設けられ、前記テーブルとの間で前記パレットの授受を行うパレット段取り台をさらに備え、前記パレット移動手段によって、前記テーブルと前記パレット段取り台との間で前記パレットを移動させることが好ましい。
【0011】
前記パレット移動手段は、例えば、前記テーブルに設けられ駆動モータによって回転駆動されるスプロケットと前記パレットに設けられ前記スプロケットに係合するチェーンとの組合せ、又は、前記テーブルに設けられ駆動モータによって回転駆動されるピニオンと前記パレットに設けられ前記ピニオンに係合するラックとの組合せによって構成することができる。
【0012】
また、本発明によれば、概略長方形状を有しワークが装着される、工作機械のためのパレットであって、前記パレットにおいて前記ワークを装着される面と反対側の面上の前記パレットの長手方向の複数の位置に、工作機械のテーブルに設けられた位置決め部と嵌合する嵌合部を備え、前記位置決め部を複数の前記嵌合部のうちの一つと嵌合させることにより前記工作機械のテーブル上の複数の位置に前記パレットを位置決めすることを可能にした工作機械のためのパレットが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一つのワークの加工途中で、パレット移動手段によってテーブル上でパレットを移動させ、異なる位置にパレットを位置決めしてクランプし、この位置で主軸によるワークの加工を再開することが可能となるので、テーブル上でのワークの移動によって主軸とテーブルとの相対移動のストロークを補い、工作機械の主軸とテーブルとの相対移動のストロークを超える長さのワークをパレットに装着した状態で加工することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一つの実施の形態による工作機械の全体構成図である。
【図2】図1に示されている工作機械の部分断面側面図である。
【図3】図1に示されているパレットの正面図である。
【図4】図1に示されている工作機械のテーブルに対するパレットのクランプ位置の例を示す線図である。
【図5】本発明による工作機械の変形形態を示す部分断面側面図である。
【図6】本発明による工作機械のその他の実施の形態を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の工作機械及びパレットの実施の形態を説明する。
最初に、図1を参照して、本発明の実施の形態による工作機械13の全体構成を説明する。工作機械13は、スプラッシュガード15によって周囲を取り囲まれたマシニングセンタのような機械本体11と、スプラッシュガード15を隔てて機械本体11の両側に隣接してそれぞれ設けられた第1のパレット段取り台17及び第2のパレット段取り台19と、機械制御装置21とを備えている。本実施の形態では、機械制御装置21は、機械本体11の起動、停止を制御したり、工具交換装置(図示せず)の動作を制御したり、第1及び第2のパレット段取り台17,19の動作を制御したりするように構成されている。
【0016】
スプラッシュガード15には、機械本体11と第1及び第2のパレット段取り台17,19との間でパレットP1及びP2の授受を行うときにパレットP1及びP2を通過させるための開口部15a及び15bと、開口部15a及び15bを開閉するための開閉扉23a及び23bと、開閉扉23a及び23bを駆動して開閉させるための開閉扉用駆動モータMD1及びMD2とが設けられており、開閉扉用駆動モータMD1及びMD2の動作は、機械制御装置21によって制御される。
【0017】
図1に示されているように、機械本体11は、第1のベッド25及び第2のベッド27と、第1のベッド25上に設けられたコラム29と、コラム29の前面(第2のベッド27側の面)に支持された主軸頭31と、回転軸線Oを中心に回転可能に主軸頭31に支持された主軸33と、主軸33と対向して第2のベッド27上に設けられたテーブル35とを備える。本実施の形態では、第2のベッド27は、第1ベッド25と別部材として、第1のベッド25の前方、すなわち主軸33の先端側に離間して配置されているが、第1のベッド25と第2のベッド27は、一体の部材として形成されていてもよい。
【0018】
第1のベッド25の上面には、主軸33の回転軸線Oと平行に延びる一対のZ軸案内レール37が設けられており、コラム29がZ軸送り手段(図示せず)によって駆動されZ軸案内レール37に沿ってZ軸方向に第1のベッド25上を移動できるようになっている。Z軸送り手段は、例えば、第1のベッド25内に設けられ、Z軸方向に延びるボールねじ軸と、ボールねじ軸の一端に連結され、ボールねじ軸を回転駆動するサーボモータと、コラム29の底面に設けられ、ボールねじ軸に係合するナットとによって構成することができる。
【0019】
主軸33は、主軸頭31の前面からZ軸方向にテーブル35に向かって突出するように主軸頭33に支持されており、主軸33の先端部には、工具Tが装着されている。コラム29には、鉛直方向(Y軸方向)に延びる一対のY軸案内レール(図示せず)が設けられており、主軸頭31がY軸送り手段(図示せず)によって駆動されY軸案内レールに沿ってY軸方向にコラム29上を移動できるようになっている。Y軸送り手段は、例えば、コラム29内に設けられ、Y軸方向に延びるボールねじ軸と、ボールねじ軸の一端に連結され、ボールねじ軸を回転駆動するサーボモータと、主軸頭31に設けられ、ボールねじ軸に係合するナットとによって構成することができる。
【0020】
また、第2のベッド27の上面には、Y軸及びZ軸と垂直に延びる一対のX軸案内レール39が設けられており、テーブル35がX軸送り手段(図示せず)によって駆動されX軸案内レール39に沿ってX軸方向に第2のベッド27上を移動できるようになっている。X軸送り手段は、例えば、第2のベッド27内に設けられ、X軸方向に延びるボールねじ軸と、ボールねじ軸の一端に連結され、ボールねじ軸を回転駆動するサーボモータと、テーブル35の底面に設けられ、ボールねじ軸に係合するナットとによって構成することができる。
【0021】
機械本体11は、X軸送り手段、Y軸送り手段及びZ軸送り手段によって、テーブル35に取り付けられたパレットP1上のワークW1と主軸33に装着された工具Tとを直交3軸方向に相対移動させながらワークW1を加工する。
【0022】
ここで、図2を参照して、テーブル35及びパレットP1及びP2の詳細な構成を説明する。なお、パレットP1とパレットP2とは同じ構成を有しているので、以下の説明では、パレットP1及びパレットP2を総称してパレットPとも記載する。
【0023】
テーブル35は、主軸33の先端に対面し且つ主軸33の回転軸線Oに垂直な鉛直平面からなるパレット取付面35aを有し、パレット取付面35aにパレットPを取り付けることができるようになっている。さらに、パレット取付面35aとこれに対向するパレットPの裏面(すなわち、ワークを装着する面と反対側の面)には、パレット取付面35a上でパレットPをX軸方向に案内するX軸案内手段と、X軸案内手段によって案内されるパレットPをX軸方向の予め定められた複数の異なる位置に位置決めする位置決め手段41と、位置決め手段41によって位置決めされたパレットPをクランプするクランプ手段とがそれぞれ設けられている。
【0024】
X軸案内手段は、パレットガイドレールとこれに係合するガイドローラとの組合せによって構成することができ、また、クランプ手段は、支承部材とこれを挟持するクランプ装置との組合せによって構成することができる。しかしながら、X軸案内手段とクランプ手段は、これらに限定されるものではなく、パレット取付面35a上でパレットPを案内し、所定位置で固定できるものであれば、他の構成とすることもできる。なお、図2では、X軸案内手段とクランプ手段とをガイド・クランプ手段43として簡略化して一体的に示している。
【0025】
位置決め手段41は、テーパ状の嵌合突起41aと、嵌合突起41aと嵌合するテーパ状の嵌合凹部41bとの組合せによって構成される。しかしながら、位置決め手段41は、これらに限定されるものではなく、パレット取付面35a上でパレットPを位置決めすることができれば、他の構成とすることもできる。位置決め手段41として嵌合突起41aと嵌合凹部41bとの組合せを用いる場合、例えば、テーブル35のパレット取付面35aのX軸方向中央に進退可能な一つの係合突起41aを設ける一方、パレットPの裏面の異なるX軸方向位置に複数の嵌合凹部41bを設け、係合突起41aと複数の嵌合凹部41bから選択された一つとを嵌合させることによって、テーブル35のパレット取付面35a上で複数の異なるX軸方向位置にパレットPを位置決めすることができるようになる。本実施の形態では、図2及び図3から分かるように、パレット取付面35a上で三つの異なるX軸方向位置にパレットPを位置決めできるように、テーブル35のパレット取付面35aに進退可能な一つの嵌合突起41aを設ける一方、パレットPの裏面に三つの嵌合凹部41bを設けている。三つの嵌合凹部41bはX軸方向に等間隔で設けられていることが好ましい。
【0026】
また、テーブル35は、パレット取付面35a上でX軸案内手段によって案内しながらパレットPをX軸方向に移動させるパレット移動手段45をさらに備える。本実施の形態では、パレット移動手段45は、テーブル35の頂部に固定されたパレット移動用駆動モータMTと、Z軸と平行に延びるパレット移動用駆動モータMTの回転軸47に取り付けられたピニオン49とによって構成されており、図3に示されているように、パレットPの上縁部に取り付けられX軸方向に延びるラック51にピニオン49を係合させパレット移動用駆動モータMTによってピニオン49を回転させることにより、パレット取付面35a上でパレットPをX軸案内手段によって案内しながらX軸方向に移動させる。しかしながら、パレット移動手段45は、上記の組合せに限定されるものではなく、パレット取付面35a上でパレットPをX軸方向に移動させることができれば他の組合せとすることもできる。例えば、テーブル35の頂部に固定されたパレット移動用駆動モータMTと、Z軸と平行に延びるパレット移動用駆動モータMTの回転軸47に取り付けられたスプロケットとの組合せによってパレット移動手段45を構成し、パレットPの上縁部に設けられX軸方向に延びるチェーンにスプロケットを係合させスプロケットを回転させることによりパレットPを移動させるようにすることもできる。
【0027】
上記テーブル35と同様に、機械本体11の両側に隣接して設けられている第1のパレット段取り台17及び第2のパレット段取り台19の各々は、パレット取付面35aと同様のパレット取付面17a又は19aを有し、パレット取付面17a又は19a上には、ガイド・クランプ手段43と同様の構成のガイド・クランプ手段(図示せず)が設けられている。また、各パレット段取り台17又は19の頂部には、パレット移動手段が設けられており、各パレット段取り台17又は19のパレット取付面17a又は19aに取り付けられたパレットPを機械本体11のテーブル35に給送し、また、機械本体11のテーブル35から排送されるパレットPをパレット段取り台17,19に引き込むことができるようになっている。各パレット段取り台17又は19のパレット移動手段は、テーブル35のパレット移動手段45と同様であり、本実施の形態では、パレット段取り台17又は19の頂部に固定されたパレット移動用駆動モータM1又はM2と、Z軸と平行な方向に延びるパレット移動用駆動モータM1又はM2の回転軸47に取り付けられたピニオン49とによって構成されており、パレットPの上縁部に取り付けられX軸方向に延びるラック51にピニオン49を係合させ、パレット移動用駆動モータM1又はM2によってピニオン49を回転させることにより、パレット取付面17a又は19a上でパレットPをX軸方向に移動させる。なお、図1では、簡単化のために、第1及び第2のパレット段取り台17及び19のパレット移動手段のうちパレット移動用駆動モータM1及びM2のみが示されている。
【0028】
次に、図1を参照して、本実施の形態の工作機械13におけるパレット交換動作を説明する。図1には、機械本体11のテーブル35にワークW1を装着したパレットP1が取り付けられている一方、第1のパレット段取り台17にはパレットが存在せず、第2のパレット段取り台19に新たなワークW2を装着したパレットP2が存在する状態が示されている。第2のパレット段取り台19のパレットP2の段取りが完了してパレットP2を機械本体11のテーブル35に向けて給送する準備が整い、かつ、機械本体11のテーブル35に取り付けられたパレットP1に装着されたワークW1の加工が終了すると、機械制御装置21からパレット移動用駆動モータMT、M1、M2及び開閉扉用駆動モータMD1及びMD2へ駆動電流が供給され、開閉扉23a,23bが開くと共に、パレット移動用駆動モータMT,M1及びM2が同じ方向(この場合、図1において左方向へパレットP1及びP2を移動させる方向)に回転する。このとき、機械制御装置21は、パレット移動用駆動モータMT,M1及びM2を同期制御する。また、パレット移動用駆動モータMT,M1及びM2の回転位置に基づいて、開閉扉用駆動モータMD1及びMD2の回転位置を制御し、パレットP1及びP2と開閉扉23a,23bとが衝突しないように開閉扉23a,23bを開閉する。
【0029】
パレット交換動作の開始時には、第1のパレット段取り台17にはパレットが存在しないので、第1のパレット段取り台17のパレット移動用駆動モータM1によって駆動されるピニオン49は当初ラック51と係合せず、したがって、パレット移動用駆動モータM1及びピニオン49は空転することになる。一方、機械本体11のテーブル35には加工済みワークW1を装着したパレットP1が取り付けられており、また、第2のパレット段取り台19には未加工の新しいワークW2を装着したパレットP2が取り付けられており、パレットP1及びP2のラック51はパレット移動用駆動モータMT及びM2に駆動されるピニオン49と係合している。したがって、パレット移動用駆動モータMT及びM2が回転すると、パレットP1及びP2は、同時に、X軸に沿って図中左方向へ移動する。
【0030】
テーブル35上のパレットP1がパレット移動用駆動モータMTによって移動させられて第1のパレット段取り台17に到達すると、パレットP1に取り付けられたラック51の先端部(図1において左端)が、第1のパレット段取り台17のパレット移動用駆動モータM1に駆動されるピニオン49に係合し、パレットP1がパレット移動用駆動モータMT及びパレット移動用駆動モータM1によって移動させられるようになる。パレットP1がさらに左方向に移動させられると、パレットP1に取り付けられたラック51がパレット移動用駆動モータMTに駆動されるピニオン49から離脱して、パレットP1はパレット移動用駆動モータM1のみによって移動させられるようになる。
【0031】
一方、第2のパレット段取り台19上のパレットP2は、パレット移動用駆動モータM2によって移動させられて、第2のパレット段取り台19から機械本体11のテーブル35に送給される。パレットP1に取り付けられたラック51がテーブル35のパレット移動用駆動モータMTに駆動されるピニオン51から離脱した後に、パレットP2に取り付けられたラック51の先端部(図1において右端)が、テーブル35のパレット移動用駆動モータMTに駆動されるピニオン49に係合し、パレットP2がパレット移動用駆動モータMT及びパレット移動用駆動モータM2によって移動させられるようになる。パレットP2がさらに左方向に移動させられると、パレットP2に取り付けられたラック51がパレット移動用駆動モータM2に駆動されるピニオン49から離脱して、パレットP2はパレット移動用駆動モータMTのみによって移動させられるようになる。
【0032】
その後、パレットP2はテーブル35上で位置決め、クランプされ、機械本体11によるパレットP2上のワークW2の加工が開始される。一方、機械本体11によるパレットP2上のワークW2の加工が行われている間に、第1のパレット段取り台17では、パレットP1からの加工済みワークW1の取外し、パレットP1への新たなワークW1の装着などの段取り作業が行われる。そして、機械本体11によるパレットP2上のワークW2の加工が終了すると、再び、パレット交換が行われ、新たなワークW1を装着したパレットP1が第1のパレット段取り台17から機械本体11のテーブル35へ送給されると共に、加工済みワークW2を装着したパレットP2が機械本体11のテーブル35から第2のパレット段取り台19へ排送される。このときのパレット交換は、第1の段取り台17と第2の段取り台19とを入れ替えてパレット移動用駆動モータMT,M1及びM2が図1において右方向へパレットP1及びP2を移動させる方向に回転されることを除いて、上記と同じ手順で行われるので、ここでは、詳しい説明を省略する。
【0033】
次に、図4を参照して、テーブル35上におけるパレットP1又はP2の位置決め動作について説明する。
テーブル35は、第1のパレット段取り台17又は第2のパレット段取り台19からパレットP1又はP2を供給されると、パレット移動用駆動モータMTに駆動されるピニオン49とパレットP1又はP2に取り付けられたラック51とを係合させることによって、パレット取付面35a上でパレットP1又はP2を移動させる。このとき、テーブル35のパレット取付面35aの嵌合突起41aはテーブル35内に後退させておき、嵌合突起41aがパレットP1又はP2の嵌合凹部41bに干渉するのを防止する。
【0034】
次に、パレットP1又はP2の三つの嵌合凹部41bのうち右又は左の位置にある嵌合凹部41b(例えば図4(a)のように右端位置にある嵌合凹部41b)が嵌合突起41aと対向する位置までパレット取付面35a上でパレットP1又はP2を移動させ、嵌合突起41aをテーブル35内から突出させてパレットP1又はP2の嵌合凹部41bに嵌合させる。パレットP1又はP2は、このように嵌合突起41aを嵌合凹部41bの選択された一つに係合させることにより、パレット取付面35a上の予め定められたX軸方向位置に位置決めされる。そして、パレットP1又はP2はこの位置でクランプ手段によってクランプされ、パレットP1又はP2上のワークW1又はW2が機械本体11によって加工される。
【0035】
図4(a)に示されている位置での加工が終了すると、再び、嵌合突起41aをテーブル35内に後退させて、パレット移動用駆動モータMTによってパレットP1又はP2を移動させ、同様の手順で、図4(b)に示される位置、その後に図4(c)に示される位置にパレットP1又はP2を位置決めし、クランプして、パレットP1又はP2上のワークW1又はW2の加工が行われる。
【0036】
このように、本発明では、テーブル35のパレット取付面35a上でパレットP1又はP2を移動させて複数の異なるX軸方向位置にパレットP1又はP2を位置決めし、クランプすることを繰り返しながら、機械本体11によるワークW1又はW2の加工を行うことができる。したがって、パレット取付面35a上でのパレットP1又はP2及びそれに伴うワークW1又はW2のX軸方向の移動によって、機械本体11の主軸33とテーブル35とのX軸方向の相対移動を補うことができるので、機械本体11の主軸33とテーブル35とのX軸方向の相対移動のストロークを超えるX軸方向長さを有するワークW1又はW2をパレットP1又はP2に装着した状態で加工することが可能となる。この結果、X軸方向に長いワークW1又はW2を加工する場合でも、主軸33とテーブル35とのX軸方向の相対移動のストロークを短くすることができ、工作機械11をコンパクトにできる。
【0037】
以上、図示される実施の形態を参照して、本発明の工作機械13を説明したが、図示される実施の形態は例示であり、本発明は、テーブル35のパレット取付面35a上で複数の異なるX軸方向位置にパレットP1又はP2を位置決めし、クランプできるようになっていれば、図示される実施の形態に限定されるものではない。例えば、図示される実施の形態では、位置決め手段41として、テーブル35のパレット取付面35aに進退可能な嵌合突起41aを設ける一方、パレットP1及びP2の裏面に複数の嵌合凹部41bを設けている。しかしながら、図5に示されている変形形態のように、テーブル35のパレット取付面35aに進退可能な嵌合凹部41bを設ける一方、パレットP1及びP2に複数の係合突起41aを設けてもよい。また、図6に示されているように、パレットP1及びP2の裏面に一つの嵌合凹部41bを設ける一方、テーブル35のパレット取付面35aに複数の嵌合突起41aを設けたり、パレットP1及びP2の裏面に一つの嵌合突起41aを設ける一方、テーブル35のパレット取付面35aに複数の嵌合凹部41bを設けたりするなど、様々な変形が可能である。
【0038】
さらに、上記実施の形態では、テーブル35上で、パレットPのワークWを装着する面と平向な方向にパレットPを移動させることを述べたが、その方向に限らず、ワークWを装着する面に垂直な方向等、他の方向にテーブル35上でパレットPを移動させるように構成することもできる。また、上記の実施の形態では、主軸33の回転軸線Oが水平方向に延び、テーブル35が回転軸線Oに垂直に延びる鉛直平面からなるパレット取付面35aを有していると説明されている。しかしながら、本発明では、主軸33の回転軸線Oに対して垂直なパレット取付面35a上をパレットP1,P2がX軸方向に移動できるようになっていればよく、例えば、主軸33の回転軸線Oが鉛直方向(上下方向)に延び、テーブル35が回転軸線Oに垂直に延びる水平な平面からなるパレット取付面35aを有するように立体の工作機械として構成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
13 工作機械
17 第1の段取り台
19 第2の段取り台
33 主軸
35 テーブル
41 位置決め手段
41a 嵌合突起
41b 嵌合凹部
43 ガイド・クランプ手段
45 パレット移動手段
49 ピニオン
51 ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットを取り付けたテーブルと工具を装着した主軸とを相対移動させることにより、前記パレットに装着されたワークを加工する工作機械であって、
前記テーブル上で前記パレットを移動させるパレット移動手段と、
前記テーブル上で移動される前記パレットを複数の異なる位置に位置決めするための位置決め手段と、
前記複数の異なる位置に位置決めされた前記パレットを前記テーブルにクランプするクランプ手段と、
を備え、前記テーブル上の複数の位置から選択された一つの位置に前記パレットを位置決めし、クランプできることを特徴とした工作機械。
【請求項2】
前記位置決め手段は、嵌合突起と、該嵌合突起と嵌合する嵌合凹部とからなり、前記嵌合突起及び前記嵌合凹部のうちの一方が前記テーブル及び前記パレットのうちの一方の一つの位置に設けられ、前記嵌合突起及び前記嵌合凹部のうちの他方が前記テーブル及び前記パレットのうちの他方の複数の異なる位置に設けられる、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記テーブルに隣接して設けられ、前記テーブルとの間で前記パレットの授受を行うパレット段取り台をさらに備え、前記パレット移動手段によって、前記テーブルと前記パレット段取り台との間で前記パレットを移動させる、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記パレット移動手段は、前記テーブルに設けられ駆動モータによって回転駆動されるスプロケットと前記パレットに設けられ前記スプロケットに係合するチェーンとの組合せ、又は、前記テーブルに設けられ駆動モータによって回転駆動されるピニオンと前記パレットに設けられ前記ピニオンに係合するラックとの組合せによって構成される、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の工作機械。
【請求項5】
概略長方形状を有しワークが装着される、工作機械のためのパレットであって、
前記パレットにおいて前記ワークを装着する面と反対側の面上の前記パレットの長手方向の複数の位置に、工作機械のテーブルに設けられた位置決め部と嵌合する嵌合部を備え、前記位置決め部を複数の前記嵌合部のうちの一つと嵌合させることにより前記工作機械のテーブル上の複数の異なる位置に前記パレットを位置決めできることを特徴とした工作機械のためのパレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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