説明

工作機械用組立装置

【課題】複数個のパーツ同士を組み合わせて工作機械を得るための工作機械用組立装置を、簡素で、しかも、設置・作業スペースを狭小化し得るものとして構成する。
【解決手段】工作機械用組立装置10は、載置台30と、前記載置台30に対して接近又は離間する方向に揺動可能なアーム部材50を有する第1支持機構24と、第2支持機構142とを具備する。載置台30と第2支持機構142の間に配置された第1支持機構24は、アーム部材50が載置台30又は第2支持機構142のいずれかを臨むように回転動作する。さらに、第1支持機構24は、油圧シリンダ42の昇降ロッド44が上昇することに追従して上昇することも可能である。また、第2支持機構142は、案内レール140に案内されながら第1支持機構24に対して接近又は離間する方向に変位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のパーツ同士を組み合わせて工作機械を得るための工作機械用組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、複数個のパーツが組み合わされて構成されるのが一般的である。例えば、ギャングヘッド(特許文献1参照)には、第1ギアケース、第2ギアケース及びフロントパネルの3パーツを主要パーツとするものがあるが、この場合、第1ステーションにおいて第1ギアケースと第2ギアケースを積層状態に連結し、これら第1ギアケースと第2ギアケースを第2ステーションに搬送した後、フロントパネルを第2ギアケース上に積層状態となるようにさらに連結するようにしている。
【0003】
ここで、第1ステーションでは、第2ギアケースに対して第1ギアケースを載置し、互いの連結を行うようにしている。すなわち、この時点では、第2ギアケースが下方、第1ギアケースが上方である。
【0004】
次に、第2ステーションでは、第2ギアケース上にフロントパネルを載置して互いを連結する。従って、第1ステーションと第2ステーションの間に、第1ギアケースと第2ギアケースの組立物の上下を反転させる作業を行うための反転ステーションが設けられる。
【0005】
また、第1ステーションから反転ステーションを経由して第2ステーションに組立物を搬送する搬送手段としては、ローラコンベア等が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−337633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記から諒解されるように、従来技術に係るギャングヘッドの組立ラインでは、反転ステーションにて反転作業を行うための反転機構や、ステーション同士の間で組立物を搬送するための搬送手段が設けられる。このため、システム構成が複雑となり、しかも、広大な設置スペースが必要となる。さらに、各ステーションにて作業を実施する作業者の人数を低減することが容易ではない。
【0008】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、構成が簡素であり、しかも、設置スペースを狭小化し得、さらには作動コストを低減することも可能な工作機械用組立装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、複数個のパーツ同士を組み合わせて工作機械を構成するための工作機械用組立装置であって、
第1のパーツを載置するための載置台と、
前記第1のパーツを支持するアーム部材を有する第1支持機構と、
前記アーム部材を前記載置台に対して接近又は離間する方向に揺動可能とする揺動機構と、
前記第1支持機構を回転可能とする回転機構と、
第2のパーツを支持する第2支持機構と、
前記第1支持機構と前記第2支持機構を相対的に接近又は離間させるために該第1支持機構と該第2支持機構の少なくともいずれかを案内する案内部材と、
を備え、
前記第1支持機構は、前記載置台と前記第2支持機構の間に位置し、前記回転機構によって回転動作することに伴い、前記アーム部材が前記載置台又は前記第2支持機構のいずれかに臨むことを特徴とする。
【0010】
このように構成することにより、アーム部材を横臥状態として載置台上の第1のパーツをアーム部材に組み付けた後、該アーム部材を揺動動作させて起立状態とし、さらに、第1支持機構を回転させた後、第2支持機構に相対的に接近させることで該第2支持機構に支持された第2のパーツを前記第1のパーツに当接させることが可能となる。その後、全パーツを組み付けることにより、工作機械を構成することができる。
【0011】
すなわち、本発明によれば、従来技術に係る前記組立ラインのように、第1ギアケースと第2ギアケースを組み付けるための第1ステーション、第1ギアケースと第2ギアケースの組立物にフロントパネルを組み付けるための第2ステーション、反転ステーション等、複数箇所の作業ステーションを設ける必要がない。このため、ステーション間で組立物を搬送するための搬送手段を設ける必要もない。以上のような理由から、構成が簡素となるとともに、設置ないし作業スペースを大幅に狭小化することができる。
【0012】
また、上記した組立作業は、多くても数人程度の作業者で実施することが可能である。従って、各ステーションに作業者を配置する場合に比して作業者の人数を低減することを図ることもできる。
【0013】
第1支持機構の回転動作、アーム部材の揺動動作、第1支持機構と第2支持機構の相対的な接近又は離間は、電力を要する駆動源の作用下に行うのではなく、作業者による手作業、すなわち、人為的に実施することが好ましい。このように構成することにより、工作機械用組立装置の諸動作を電源不要で行うことができる。このことは、電源供給が困難な場所であっても工作機械用組立装置を動作させて工作機械の組立作業を実施することが可能であり、このために作動コストを低減することが可能であることを意味する。
【0014】
さらに、第1支持機構を昇降動作可能とする昇降機構を設けることが好ましい。これにより、前記アーム部材に組み付けられた第1のパーツにさらに第3のパーツを組み付ける場合、第3のパーツの厚み寸法に対応する変位量で第1支持機構を上昇動作させることができる。従って、アーム部材を水平に横臥させて第3のパーツの上端面に第1のパーツの下端面が当接するように、第1のパーツを第3のパーツに載置することができるようになる。
【0015】
上記と同様の理由から、この昇降動作も、電力を要する駆動源の作用下に行うのではなく、作業者によって人為的に実施することが好ましい。
【0016】
そして、第2支持機構を回転可能とする、前記回転機構とは別の回転機構を設けることが好ましい。第2支持機構が回転動作し得ない場合には、第2支持機構における第1支持機構に臨む側に第2のパーツを支持する必要があるが、このような作業を行うことは容易ではない。これに対し、第2支持機構を回転動作可能に構成した場合、第2支持機構に第2のパーツを支持した後、該第2のパーツが第1支持機構に臨むように第2支持機構を反転させることが可能となる。従って、第2支持機構に第2のパーツを支持する作業を迅速に行うことが可能となる。
【0017】
勿論、この回転動作も、電力を要する駆動源の作用下に行うのではなく、作業者によって人為的に実施することが好ましい。
【0018】
載置台には、挿入穴を形成することが好ましい。第1のパーツに凹部が存在するときには、前記挿入穴に、前記凹部に進入する位置決めピンを挿入する。これにより、第1のパーツを載置台上で位置決め固定することができる。従って、アーム部材の所定箇所に第1のパーツを組み付けることが容易となる。
【0019】
以上の構成に加え、移動可能な台車を設けることが好ましい。これにより、作業を行おうとする所望の箇所に工作機械用組立装置を容易に移動させることができるので、工作機械の組立作業場が制限されることを回避することができる。また、作業場の配置レイアウトの自由度が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、載置台に載置された第1のパーツを支持して持ち上げる第1支持機構を回転動作可能とし、且つ第2のパーツを支持した第2支持機構を第1支持機構に対して相対的に接近又は離間する方向に変位可能としたので、第1のパーツと第2のパーツを当接させて組み付けることが可能となる。
【0021】
従って、例えば、各パーツを組み付けるためのステーションや、ステーション間で組立物を搬送するための搬送手段を設ける必要がない。このため、装置構成が簡素となるとともに、設置ないし作業スペースを大幅に狭小化することができる。
【0022】
また、この工作機械用組立装置によって全パーツを組み付けることが可能であるので、組立作業を、多くても数人程度の作業者で実施することが可能である。従って、各ステーションに作業者を配置する場合に比して作業者の人数を低減することを図ることも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態に係る工作機械用組立装置の概略全体斜視図である。
【図2】図1の工作機械用組立装置の側面一部断面図である。
【図3】図1の工作機械用組立装置を構成する載置台の要部拡大図である。
【図4】前記工作機械用組立装置を構成する第1支持機構の正面一部断面図である。
【図5】前記第1支持機構を構成する基盤の平面図である。
【図6】前記第1支持機構を構成するギアボックスの平面図である。
【図7】前記工作機械用組立装置を構成する第2支持機構の側面一部断面図である。
【図8】前記第2支持機構を構成する基盤の平面図である。
【図9】前記載置台に第1のパーツとしての第1ギアケースを載置する一方、前記第2支持機構で第2のパーツとしてのフロントパネルを支持した状態を模式的に示す側面説明図である。
【図10】前記第1支持機構を構成するアーム部材を載置台に接近させ、該アーム部材で前記第1ギアケースを支持した状態を模式的に示す側面説明図である。
【図11】図10に続き、前記アーム部材を載置台から離間させ、該アーム部材で前記第1ギアケースを持ち上げる一方、前記載置台に第3のパーツとしての第2ギアケースを載置した状態を模式的に示す側面説明図である。
【図12】図11に続き、第1支持機構を上昇動作させた状態を模式的に示す側面説明図である。
【図13】図12に続き、前記アーム部材を載置台に接近させ、該アーム部材に支持された前記第1ギアケースを前記第2ギアケースに当接させた状態を模式的に示す側面説明図である。
【図14】図13に続き、前記アーム部材を載置台から離間させ、該アーム部材で前記第1ギアケースと前記第2ギアケースの組立物を持ち上げた状態を模式的に示す側面説明図である。
【図15】図14に続き、前記アーム部材及び前記第2支持機構を反転させることで、前記組立物と前記フロントパネルとを対向させた状態を模式的に示す側面説明図である。
【図16】図15に続き、前記第2支持機構を前記第1支持機構側に接近させて前記フロントパネルを前記組立物に当接させた状態を模式的に示す側面説明図である。
【図17】前記組立物と前記フロントパネルとの組立物を得た後、前記フロントパネルを前記第2支持機構から解放し、さらに、第2支持機構を前記第1支持機構から離間する方向に変位させた状態を模式的に示す側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る工作機械用組立装置につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1及び図2は、それぞれ、本実施の形態に係る工作機械用組立装置10の概略全体斜視図、長手方向に沿う側面図である。この工作機械用組立装置10は、工作機械としてのギャングヘッドを台車12上で組み上げるためのものである。
【0026】
フレーム状に構成された台車12には、該台車12を押圧したときに容易に回転する複数個の車輪14(図2参照)が設けられる。このため、工作機械用組立装置10を所望の場所に容易に移動させることができる。また、車輪14の近傍には、螺回によって台車12に対して離間又は接近する方向に変位可能な安定脚16が複数個設けられており、全ての安定脚16が床に着座することにより、工作機械用組立装置10が転倒することが防止される。
【0027】
安定脚16は、台車12の一側部に突出形成された安定用フレーム18にも設けられている。また、台車12の別の一側部には、公知のハンドポンプ20を設けるためのハンドポンプ支持用ブラケット22が設けられている。後述するように、作業者がこのハンドポンプ20を操作することにより、第1支持機構24が昇降動作する。すなわち、ハンドポンプ20は、第1支持機構24を昇降動作させるための昇降機構を構成する。
【0028】
図2から諒解されるように、台車12は長尺物として形成されており、且つその上方は、比較的短尺な第1部26と、比較的長尺な第2部28とに分割されている。なお、参照符号29は、台車12、ひいては工作機械用組立装置10を移動する際に作業者が把持する取っ手を示す。
【0029】
第1部26の上端面には、略平板形状の載置台30が設けられる。図2及び図3に示すように、この載置台30には、例えば、10個の挿入穴32が陥没形成される。挿入穴32の中の所定のものに対し、位置決めピン34が挿入される。
【0030】
図3に拡大して示すように、位置決めピン34は、略棒形状で小径な第1頭部36と、該第1頭部36に比して若干大径な第2頭部38と、これら第1頭部36と第2頭部38の間に介在して第2頭部38よりも大径な円盤形状部40とを有する。挿入穴32には、第1頭部36又は第2頭部38のいずれか一方が挿入され、その逆に、第2頭部38又は第1頭部36のいずれか一方が挿入穴32から突出するように露呈する。なお、挿入穴32には段部41が形成され、この段部41に、円盤形状部40が堰止されることにより、位置決めピン34のそれ以上の挿入が阻止される。
【0031】
頭部として第1頭部36又は第2頭部38のいずれを挿入穴32から突出させるかは、後述するように、パーツの種類に応じて選定される。
【0032】
台車12における第1部26と第2部28は、互いに離間している(図2参照)。第1支持機構24は、この離間した部位に配設される。
【0033】
第1支持機構24の下方には、台車12に支持されるようにして油圧シリンダ42が設けられる。この油圧シリンダ42の油伝達チューブ43は、前記ハンドポンプ20に接続される。すなわち、該油圧シリンダ42の昇降ロッド44は、作業者が前記ハンドポンプ20を操作することに伴い、鉛直上方に向かって前進動作(換言すれば、上昇動作)する。なお、昇降ロッド44は、ハンドポンプ20の作用下に油圧シリンダ42に圧送された作動油が排除されることに伴って、鉛直下方に向かって後退動作(下降動作)する。ハンドポンプ20による昇降ロッド44の昇降動作は周知であり、従って、その詳細な説明を省略する。
【0034】
油圧シリンダ42の近傍には、4本のリニアガイド46が配設される。第1支持機構24は、これらリニアガイド46によって案内されながら、昇降ロッド44の昇降動作に追従して昇降動作する。
【0035】
昇降ロッド44及びリニアガイド46は、蛇腹状カバー47によって保護される。
【0036】
図4及び図5に示すように、第1支持機構24は、昇降ロッド44の先端部が連結された基盤48と、載置台30に対して接近又は離間するように揺動するアーム部材50とを有する。この中、基盤48の下端面にはリニアガイド46を受けるための受部52が設けられている。
【0037】
基盤48の上端面には、4個のローラ54が昇降ロッド44の連結部を中心とする円周上に配設される(図5参照)。すなわち、基盤48の上端面には、互いに略90°離間してローラ固定具56が設けられる。ローラ54は、回転連結軸57を介してローラ固定具56の各々に回転自在に連結される。これらローラ54は、基盤48よりも上方の部材・機構が回転することを支援する。
【0038】
基盤48には、さらに、2個の回転防止用穴58が形成される。回転防止用穴58に回転防止ピン60が挿入されることにより、第1支持機構24が回転することが阻止される。
【0039】
基盤48の上方には、回転機構が設けられた回転盤62(図4参照)が配置される。回転盤62の略中心部には貫通孔64が形成されるとともに、この貫通孔64に、ベアリング支持部材66を介して、回転機構を構成するベアリング68が収容されている。従って、回転盤62は、ベアリング支持部材66を中心として回転動作可能である。
【0040】
回転盤62には、回転防止用孔70が貫通形成される。前記回転防止ピン60は、回転防止用孔70を通り、基盤48の上端面に形成された前記回転防止用穴58に挿入される。この際、回転防止ピン60の略中腹部に形成された幅広なフランジ部72が回転盤62の上端面に当接することにより、回転防止ピン60が堰止される。
【0041】
前記アーム部材50は、この回転盤62に対し、揺動軸74を介して揺動可能に設けられる。具体的には、回転盤62の上端面において、図4の左端部及び右端部には第1支持ブロック76、第2支持ブロック78が設けられ、揺動軸74は、これら第1支持ブロック76、第2支持ブロック78に回転可能に軸支される。勿論、第1支持ブロック76及び第2支持ブロック78には、揺動軸74に臨むようにしてベアリング80、82が収容されている。
【0042】
揺動軸74は、長尺な小径軸部材84と、該小径軸部材84を囲繞する中空カバー部材86とを有し、小径軸部材84の右端部は、中空カバー部材86から突出している。中空カバー部材86の右端部は、第2支持ブロック78に連設された第1ケーシング88で囲繞され、一方、小径軸部材84の突出した右端部は第2ケーシング90で囲繞されている。
【0043】
小径軸部材84の両端部には、揺動用ハンドル92が連結されている。作業者が揺動用ハンドル92の把持バー94を把持して回転させることにより小径軸部材84が回転動作し、この際の回転運動が、ギアボックス96を介して揺動軸74に伝達される。すなわち、これらギアボックス96及び揺動軸74は、アーム部材50を揺動動作させるための揺動機構を構成する。
【0044】
一層詳細には、小径軸部材84における第2ケーシング90に囲繞された部位には、第1ギア歯車98が嵌合されている。この第1ギア歯車98は、第1ケーシング88及び第2ケーシング90に回転自在に軸支された第1回転軸100の大径な第2ギア歯車102に噛合する。なお、第1回転軸100には、小径な第3ギア歯車103も嵌合される。
【0045】
図6に示すように、第1ケーシング88には、前記ギアボックス96を構成する第2回転軸104、第3回転軸106が収容される。この中、第2回転軸104には大径な第4ギア歯車108、小径な第5ギア歯車110が嵌合され、一方、第3回転軸106には、大径な第6ギア歯車112と、第1傘歯車114が嵌合される。
【0046】
さらに、第2ケーシング90には、第4回転軸116が回転自在に収容される。この第4回転軸116には、第2傘歯車118と、円筒ウォーム120とが嵌合される。
【0047】
以上の構成において、第3ギア歯車103は第4ギア歯車108に噛合し、第5ギア歯車110は第6ギア歯車112に噛合する。同様に、第1傘歯車114は第2傘歯車118に噛合し、さらに、円筒ウォーム120は、前記中空カバー部材86の端部の大径フランジ部122の側周壁に形成されたウォームホイール124に噛合する。
【0048】
アーム部材50は、載置台30から離間して起立状態にあるときに側面視略L字形状となる2本のL字ブロック126と、これらL字ブロック126に橋架された第1橋架部材128及び第2橋架部材130からなる。
【0049】
L字ブロック126の基端部には、U字溝132(図1参照)がそれぞれ形成される。これらU字溝132に中空カバー部材86が嵌合され、さらに、基端部が中空カバー部材86の連結フランジ部133にボルト止めされることにより、アーム部材50が揺動軸74に連結される。
【0050】
従って、作業者が揺動用ハンドル92を回転させて小径軸部材84が回転動作すると、その回転運動は、第1ギア歯車98(図4参照)、第2ギア歯車102(図6参照)、第3ギア歯車103、第4ギア歯車108、第5ギア歯車110、第6ギア歯車112、第1傘歯車114、第2傘歯車118、円筒ウォーム120及びウォームホイール124を含むギアボックス96によって順次伝達される。最終的に、中空カバー部材86が回転動作し、これに伴って、アーム部材50が載置台30に対して離間又は接近する方向に揺動する。揺動中心は、中空カバー部材86である。
【0051】
第1橋架部材128及び第2橋架部材130におけるアーム部材50に近接する各端部には、受ブロック部材134と、公知のクランプアーム136とが設けられる。受ブロック部材134には有底凹部138が形成され、この有底凹部138に、載置台30に載置されたパーツに存在する突部が挿入される。さらに、前記クランプアーム136が閉じられることにより、前記パーツがアーム部材50に支持される。
【0052】
なお、図4中の参照符号139は、第1支持機構24を回転動作させる際に作業者が把持する把持部である。
【0053】
台車12の第2部28の上端面には、案内部材としての2本の案内レール140が敷設される(図1及び図2参照)。これら案内レール140には、第2支持機構142が摺動自在に設けられる。すなわち、第2支持機構142は、案内レール140に沿って、第1支持機構24に対して接近又は離間する方向に変位させることが可能である。
【0054】
以上から諒解されるように、第1支持機構24は、載置台30と第2支持機構142との間に配設される。
【0055】
第2支持機構142は、図7及び図8に示すように、下端面にスライダ144が設けられた基盤146と、該基盤146に対して回転動作可能な回転盤148と、該回転盤148に立設された2本の支持用柱状部材150とを有する。
【0056】
スライダ144は、前記案内レール140に摺動自在に係合されている。従って、第2支持機構142は、作業者に押圧又は引張されることによって、案内レール140に沿って滑動する。
【0057】
基盤146には、2個の回転防止用穴152が陥没形成される。この回転防止用穴152には、回転防止ピン154が挿入される。
【0058】
基盤146の上端面には、4個のローラ156が該基盤146の略中心部を中心とする円周上に配設される(図8参照)。すなわち、基盤146の上端面には、互いに略90°離間してローラ固定具158が設けられる。ローラ156は、回転連結軸160を介してローラ固定具158の各々に回転自在に連結される。これらローラ156は、回転盤148、ひいては支持用柱状部材150が回転することを支援する。
【0059】
基盤146の上方に配置された回転盤148(図7参照)の略中心部には貫通孔162が形成され、この貫通孔162に、ベアリング支持部材164を介して、回転機構を構成するベアリング166が収容される。このため、回転盤148は、ベアリング支持部材164を中心として回転動作可能である。
【0060】
回転盤148には、回転防止用孔170が貫通形成される。前記回転防止ピン154をこの回転防止用孔170に挿通し、さらに、基盤146の上端面に形成された回転防止用穴152に挿入することにより、第2支持機構142を構成する回転盤148や支持用柱状部材150が回転することが阻止される。この際、回転防止ピン154の略中腹部に形成された幅広なフランジ部172が回転盤148の上端面に当接し、これにより、回転防止ピン154が堰止される。
【0061】
図1に示すように、支持用柱状部材150には、その長手方向に略直交する方向に延在するようにして、複数個の支持用アングル174が位置変更可能に取り付けられる。すなわち、支持用柱状部材150には、その長手方向に沿って位置決め用溝176が形成されるとともに、該位置決め用溝176は、支持用柱状部材150の一端面で開口する。一方、支持用アングル174には長穴178が貫通形成され、この長穴178を通されて前記位置決め用溝176に到達したボルト180のねじ部にナット(図示せず)が螺合されることによって、支持用アングル174が支持用柱状部材150に位置決め固定される。勿論、位置決め用溝176の開口寸法は、ナットの寸法に比して小さく設定されており、このため、ナットの位置決め用溝176からの抜け止めがなされる。
【0062】
支持用アングル174の位置を適宜変更することにより、様々な大きさのパーツを支持することが可能である。勿論、支持用アングル174には、ボルトやピン等の連結用部材を通すための挿通孔182が複数個貫通形成されている。
【0063】
本実施の形態に係る工作機械用組立装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、該工作機械用組立装置10の動作との関係で説明する。なお、以下においては、第1ギアケース(第1のパーツ)、フロントパネル(第2のパーツ)及び第2ギアケース(第3のパーツ)の3パーツを主要パーツとするギャングヘッドを組み立てる場合を例示する。また、理解の容易のため、図面を簡素化する。
【0064】
ギャングヘッドを組み立てる際には、はじめに、作業者が台車12を押圧することによって、作業を行う場所に工作機械用組立装置10を移動させる。所定の作業場に到着後、安定脚16を突出させ、床に着座させて転倒防止を図る。
【0065】
次に、作業者は、図9に示すように、第1ギアケースGC1を載置台30に載置する。この際には、第1ギアケースGC1の下端面に形成された凹部に前記位置決めピン34の第1頭部36又は第2頭部38のいずれかが挿入される。これにより、第1ギアケースGC1が載置台30上に位置決め固定される。勿論、位置決めピン34を挿入する挿入穴32、及び位置決めピン34の第1頭部36及び第2頭部38は、第1ギアケースGC1の凹部の寸法に応じて適切なものが選定される。
【0066】
なお、この時点では、回転防止ピン60、154が回転防止用孔70、170を通って回転防止用穴58、152に挿入されており、このため、第1支持機構24及び第2支持機構142の回転動作が阻止される。
【0067】
また、第1支持機構24は最下点に位置する。さらに、アーム部材50は、受ブロック部材134及びクランプアーム136が載置台30側を臨むようにして、起立姿勢とされる。第2支持機構142は、案内レール140の後端位置、すなわち、第1支持機構24から最も離間した位置に後退している。
【0068】
その一方で、第2支持機構142を構成する支持用アングル174にフロントパネルFPを組み付ける。勿論、支持用アングル174の位置は、フロントパネルFPの寸法に応じて予め適切に調整された上、前記ボルト180・ナットで緊締されることによって当該位置に固定される。
【0069】
フロントパネルFPを支持用アングル174に組み付けるには、例えば、ボルトやピン等の連結用部材を、支持用アングル174に貫通形成された前記挿通孔182に通し、さらに、フロントパネルFPの端面に存在する凹部に挿入すればよい。勿論、挿通孔182は、複数個の中から、前記凹部の位置に対応する位置のものが選定される。
【0070】
次に、作業者は、把持バー94を把持して揺動用ハンドル92を回転させる。揺動用ハンドル92の回転運動は、ギアボックス96を構成する第1ギア歯車98、第2ギア歯車102、第3ギア歯車103、第4ギア歯車108、第5ギア歯車110、第6ギア歯車112、第1傘歯車114、第2傘歯車118、円筒ウォーム120及びウォームホイール124(図6参照)を介して順次伝達され、その結果、中空カバー部材86が回転動作し、これに伴って、図10に示すように、アーム部材50が載置台30に対して接近する方向に揺動する。
【0071】
その結果、アーム部材50に設けられた受ブロック部材134の有底凹部138に、第1ギアケースGC1の上端面に存在する突部が挿入される。その後、クランプアーム136が閉じられ、これにより、第1ギアケースGC1がクランプアーム136を介してアーム部材50に組み付けられるに至る。
【0072】
次に、作業者は、揺動用ハンドル92を前記とは逆方向に回転させる。これにより揺動軸74が回転動作することに追従して、図11に示すように、アーム部材50が載置台30に対して離間する方向に揺動する。勿論、この際には、第1ギアケースGC1が持ち上げられる。
【0073】
次に、作業者は、載置台30に第2ギアケースGC2を載置する。さらに、ハンドポンプ20を操作することにより油圧シリンダ42の昇降ロッド44を上昇動作させ、図12に示すように、第1支持機構24を上昇動作させる。この際には、リニアガイド46が第1支持機構24を案内する。なお、第1支持機構24の上昇変位量は、概ね、第2ギアケースGC2の厚み方向寸法に対応する。
【0074】
次に、作業者は、揺動用ハンドル92を操作することにより、上記と同様にしてアーム部材50を載置台30に対して接近する方向に揺動する。これにより、図13に示すように、第2ギアケースGC2上に第1ギアケースGC1が載置される。作業者は、例えば、ボルト等によって第1ギアケースGC1と第2ギアケースGC2を互いに連結する。
【0075】
次に、作業者は、揺動用ハンドル92を操作することにより、上記と同様にしてアーム部材50を載置台30に対して離間する方向に揺動する。これにより、図14に示すように、第1ギアケースGC1と第2ギアケースGC2の組立物が持ち上げられる。
【0076】
次に、作業者は、回転防止ピン60、154を回転防止用穴58、152及び回転防止用孔70、170から離脱させた後、第1支持機構24及び第2支持機構142の双方における回転盤62、148よりも上方を約180°回転動作させる。この回転動作は、ベアリング68、166によって営まれるとともに、ローラ54、156によって支援される。
【0077】
これにより、載置台30を臨んでいたアーム部材50が第2支持機構142を臨むように反転するに至る。その結果、図15に示すように、第1ギアケースGC1と第2ギアケースGC2の組立物と、フロントパネルFPとが互いに対向する。この際には、第2ギアケースGC2がフロントパネルFPに臨む。
【0078】
勿論、その後、作業者は、回転防止ピン60、154を、回転防止用孔70、170を通して回転防止用穴58、152に挿入する。これにより、第1支持機構24及び第2支持機構142の回転動作が再び阻止される。
【0079】
さらに、作業者は、第2支持機構142を押圧することで該第2支持機構142を第1支持機構24側に接近するように変位させる。この際には、案内レール140に対してスライダ144が摺動することによって第2支持機構142が案内レール140に案内される。
【0080】
第2支持機構142は、図16に示すように、フロントパネルFPが第2ギアケースGC2に当接する位置まで変位される。この状態で、作業者は、例えば、ボルト等によって第2ギアケースGC2とフロントパネルFPを互いに連結する。これにより、第1ギアケースGC1、第2ギアケースGC2及びフロントパネルFPが積層状態に連結されたギャングヘッドが構成されるに至る。
【0081】
その後、図17に示すように、フロントパネルFPが支持用アングル174から解放されることにより、ギャングヘッドが第1支持機構24にのみ支持される。第1支持機構24を約180°回転動作させた後にアーム部材50を載置台30に接近する方向に揺動させることにより、ギャングヘッドが載置台30に載置される。その後、第1ギアケースGC1をクランプアーム136から解放することにより、ギャングヘッドが工作機械用組立装置10から離脱する。
【0082】
上記の作業を繰り返す場合、油圧シリンダ42に圧送された作動油を排除して昇降ロッド44及び第1支持機構24を下降動作させればよい。
【0083】
以上のように、本実施の形態においては、工作機械用組立装置10の移動、据え付けや、第1支持機構24を構成するアーム部材50の揺動、第1支持機構24の昇降動作及び回転動作、第2支持機構142の変位及び回転動作を、作業者によって人為的に行うようにしている。すなわち、上記した動作等を実施するための駆動機構を備えていない。このため、移動が容易であり、且つ電源供給が困難な作業場でも作業を遂行することが可能である。
【0084】
しかも、電源を必要としないので、電力消費量の低減を図ることができる。従って、作動コストを低減することも可能である。その上、各種の駆動機構を設ける必要がないので、構成が簡素となるとともに、工作機械用組立装置10の軽量化を図ることもできる。
【0085】
さらに、この工作機械用組立装置10によってギャングヘッドを組み上げることが可能であるため、第1ギアケースGC1と第2ギアケースGC2を組み付けるための第1ステーションや、第1ギアケースGC1と第2ギアケースGC2の組立物にフロントパネルFPを組み付けるための第2ステーション、反転ステーション等、複数箇所の作業ステーションを設ける必要がない。必然的に、ステーション間で組立物を搬送するための搬送手段も不要となる。このため、設置ないし作業スペースを大幅に狭小化することができる。
【0086】
また、多くても数人程度の作業者で作業することが可能であるので、各ステーションに作業者を配置する場合に比して作業者の人数を低減することも容易である。
【0087】
加えて、第1ギアケースGC1、第2ギアケースGC2として寸法が相違するものが載置台30に載置される場合であっても、複数個の挿入穴32の中から位置決めピン34を挿入するものとしていずれを選定するかや、位置決めピン34の第1頭部36又は第2頭部38のいずれを選定するか等によって対応することが可能である。
【0088】
同様に、フロントパネルFPとして寸法が相違するものが支持用アングル174に支持される場合であっても、支持用柱状部材150に対する支持用アングル174の位置を設定したり、複数個の挿通孔182の中からボルト等を挿入するものとして適切な位置のものを選定したりすることによって対応することが可能である。
【0089】
すなわち、本実施の形態によれば、様々な寸法の第1ギアケースGC1、第2ギアケースGC2及びフロントパネルFPに対応することができる。
【0090】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0091】
例えば、工作機械用組立装置10を据え置き型とする場合には、第1支持機構24を構成するアーム部材50の揺動、第1支持機構24の昇降動作及び回転動作、第2支持機構142の変位及び回転動作を行うための駆動機構及びシーケンス制御回路を設け、図9〜図17に示す動作を自動的に遂行させるようにしてもよい。
【0092】
また、上記した実施の形態では、第2支持機構142を第1支持機構24に対して接近又は離間する方向に変位可能としているが、第1支持機構24を第2支持機構142に対して接近又は離間する方向に変位可能としてもよいし、第1支持機構24及び第2支持機構142の双方を互いに対して接近又は離間する方向に変位可能としてもよい。
【0093】
さらに、第2支持機構142も、第1支持機構24と同様に、揺動可能なアーム部材50を具備するものとして構成するようにしてもよいし、昇降機構によって昇降動作可能なものとして構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
10…工作機械用組立装置 12…台車
14…車輪 16…安定脚
20…ハンドポンプ 24…第1支持機構
30…載置台 32…挿入穴
34…位置決めピン 42…油圧シリンダ
44…昇降ロッド 50…アーム部材
54、156…ローラ 58、152…回転防止用穴
60、154…回転防止ピン 62、148…回転盤
68、166…ベアリング 70、170…回転防止用孔
74…揺動軸 80、82…ベアリング
92…揺動用ハンドル 96…ギアボックス
134…受ブロック部材 136…クランプアーム
140…案内レール 142…第2支持機構
144…スライダ 150…支持用柱状部材
174…支持用アングル 176…位置決め用溝
FP…フロントパネル GC1…第1ギアケース
GC2…第2ギアケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のパーツ同士を組み合わせて工作機械を構成するための工作機械用組立装置であって、
第1のパーツを載置するための載置台と、
前記第1のパーツを支持するアーム部材を有する第1支持機構と、
前記アーム部材を前記載置台に対して接近又は離間する方向に揺動可能とする揺動機構と、
前記第1支持機構を回転可能とする回転機構と、
第2のパーツを支持する第2支持機構と、
前記第1支持機構と前記第2支持機構を相対的に接近又は離間させるために該第1支持機構と該第2支持機構の少なくともいずれかを案内する案内部材と、
を備え、
前記第1支持機構は、前記載置台と前記第2支持機構の間に位置し、前記回転機構によって回転動作することに伴い、前記アーム部材が前記載置台又は前記第2支持機構のいずれかに臨むことを特徴とする工作機械用組立装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、前記第1支持機構を昇降動作可能とする昇降機構を備えることを特徴とする工作機械用組立装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の装置において、前記第2支持機構を回転可能とする、前記回転機構とは別の回転機構を備えることを特徴とする工作機械用組立装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置において、前記載置台に挿入穴が形成されるとともに、前記第1のパーツに凹部が存在するとき、前記挿入穴には前記凹部に進入して前記第1のパーツを位置決め固定する位置決めピンが挿入されることを特徴とする工作機械用組立装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置において、移動可能な台車を備えることを特徴とする工作機械用組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−101325(P2012−101325A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252525(P2010−252525)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】