説明

工作機械

【課題】工作機械のテーブルに負圧供給管路を設けることなく、テーブル側に設けた圧力検出器によって、テーブルに装着されたワーク取付台にワークを吸着するための負圧を検出できるようにする。
【解決手段】工作機械は、ワーク取付台23に形成され、ワーク取付台23のワーク取付面に開口する吸引管路33と、ワーク取付台23に設けられ、負圧を発生させ発生させた負圧を吸引管路33に供給するエゼクタ27と、テーブル21に設けられた負圧確認管路67と、負圧確認管路67に接続された圧力検出器65とを備え、ワーク取付台23がテーブル21に装着されたときに、吸引管路33から分岐した連通管路45と圧力検出器65から延びる負圧確認管路67とが接続されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク取付台を着脱可能にテーブルに装着する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、チャックなどを用いてテーブルにワークを固定して加工を行う。このとき、薄肉ワークの外周部分のみを固定すると、加工の際にワークの中央部分が浮き上がって振動してしまい、加工精度に悪影響を与えることがあるため、特許文献1に開示されているようにチャック面に複数の吸込孔を設けた真空チャックを用いて、ワークの底面全体を吸着することにより、ワークをテーブルに固定することが多い。この場合、チャックに圧力計を設けて真空圧を監視し、ワークの吸着が正しく行われているかを確認することが一般的である。また、真空チャックには、特許文献2に開示されているように、吸引のための配管をガスの噴出にも使用できるようにし、チャック面に設けられた通気孔からガスを噴出させてチャック面に付着している加工屑などの異物を吹き飛ばした後に配管を切り換え、通気孔を通して吸気してワークをチャック面に吸着、固定するようにしたものもある。
【0003】
さらに、近年、加工の自動化のため、テーパソケットとプルスタッドとを有したパレットにワークを予め取り付けておき、テーブルの表面に設けられたテーパコーンにパレットのテーパソケットを係合させて位置決めを行うと共にテーブルに設けられたコレットによってパレットのプルスタッドを把持してパレットをテーブルに着脱可能に装着することが増えてきている。このような場合、テーパソケット内にプルスタッドを設けると共にテーパコーンの内部にコレットを設けることが多い。また、特許文献3に開示されているように、パレット交換時に、テーパコーンの頂部からテーパソケットの表面とテーパコーンの表面との間の空間へ圧縮空気を噴出させることにより、テーパソケットの表面及びテーパコーンの表面に付着した切屑等を除去し、パレットがテーブルに確実に装着されるようにすることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−287129号公報
【特許文献2】特開平5−285765号公報
【特許文献3】特公平4−42124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パレットなどのワーク取付台を介してテーブルにワークを装着する場合、ワーク取付台上に薄肉ワークの外周部のみが固定されている限り、加工の際にワーク取付台に取り付けられたワークの中央部が浮き上がって振動が生じてしまう問題が発生し得る。したがって、吸引によりワーク取付台のワーク取付面にワークの中央部を吸着することが望ましい。そこで、テーブルに設けた負圧供給管路にロータリジョイントを介して真空ポンプなどの外部負圧発生源を接続し、ワーク取付台をテーブルに装着したときにテーブルの負圧供給管路とワーク取付台の吸引管路とが接続されるようにすることにより、ワーク取付台のワーク取付面上のワークを吸着できるようにしていた。また、テーブルに設けた圧力検出器で負圧供給管路の圧力を検出し、ワーク取付台の吸引管路における負圧の監視を行っていた。
【0006】
しかしながら、テーブル側に負圧発生源を設けると、ワーク取付台に負圧を供給するための負圧供給管路をテーブルに設けなければならないため、パレット交換時に加工屑や加工液が負圧供給管路内に吸引され、負圧供給管路の詰まりを起こしたり、ロータリジョイントに設けられたシール部材を破損させたりする問題を引き起こす。このため問題の発生を防ぐためにテーブルの負圧供給管路の入口等にフィルタを設けると、テーブルはワーク取付台と異なり交換されずに使用され続けるので、フィルタの目詰まりが発生しやすくなり、吸引力の低下を防止するためにはフィルタの頻繁な交換が必要になる。また、真空損失を抑える観点から、ワーク吸着部と負圧発生源とは近い方がよい。したがって、負圧発生源をワーク取付台に設け、テーブルには負圧供給管路を設けないようにすることが望ましい。
【0007】
一方、上述したように、負圧発生源をワーク取付台に設け、テーブルには負圧供給管路を設けないようにすると、圧力検出器はワーク取付台に設けざるを得ず、ワーク交換のたびに制御装置からの信号配線をワーク取付台の圧力検出器に接続しなければならなくなる。しかしながら、ワーク交換を自動化するためにはワーク取付台とテーブルとの間の信号配線はないことが望ましく、圧力検出器はテーブル側に設けられることが好ましい。
【0008】
本発明は前述の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、工作機械のテーブルに負圧供給管路を設けることなく、テーブル側に設けた圧力検出器によって、テーブルに装着されたワーク取付台にワークを吸着するための負圧を検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するため、ワーク取付台を着脱可能にテーブルに装着する工作機械であって、前記ワーク取付台に形成され、前記ワーク取付台のワーク取付面に開口する吸引管路と、前記ワーク取付台に設けられ、負圧を発生させ発生させた負圧を前記吸引管路に供給する負圧発生装置と、前記テーブルに設けられた負圧確認管路と、前記負圧確認管路に接続された圧力検出器とを備え、前記ワーク取付台が前記テーブルに装着されたときに、前記吸引管路から分岐した連通管路と前記負圧確認管路とが接続されるようになっている工作機械が提供される。
【0010】
本発明によれば、ワークを吸着させるための負圧を発生させる負圧発生装置がワーク取付台に設けられているので、テーブルに負圧供給管路を設ける必要がない。また、ワーク取付台がテーブルに装着されたときにワーク取付台に設けられた吸引管路から分岐する連通管路とテーブルに設けられた負圧確認管路とが接続されるので、ワーク取付台に負圧発生装置を設けても、連通管路及び負圧確認管路を通じて、ワーク取付台にワークを吸着させる吸引管路の負圧をテーブル側に設けられた圧力検出器によって検出することができる。
【0011】
上記工作機械では、前記テーブル側に圧縮空気を供給する圧縮空気源を更に備え、前記負圧発生装置が圧縮空気を用いて負圧を発生させるエゼクタであり、前記ワーク取付台が前記テーブルに装着されたときに、前記圧縮空気源から延びる圧縮空気供給管路と前記エゼクタとが接続されるようになっていることが好ましい。
【0012】
また、前記ワーク取付台の底面と前記テーブルの表面には、互いに係合する位置決め部材がそれぞれ設けられており、前記テーブルに前記ワーク取付台を装着するときに、前記位置決め部材が係合して、前記テーブルに対して前記ワーク取付台が位置決めされることが好ましい。
【0013】
前記連通管路が前記ワーク取付台の位置決め部材まで延びていると共に、前記負圧確認管路が前記テーブルの位置決め部材まで延びており、前記ワーク取付台の位置決め部材と前記テーブルの位置決め部材が係合するときに前記連通管路と前記負圧確認管路が接続されることがさらに好ましい。
【0014】
また、前記負圧確認管路を前記圧縮空気源に選択的に接続する開閉弁が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ワーク取付台に負圧発生装置を設けても、連通管路及び負圧確認管路を通じて、ワーク取付台にワークを吸着するための吸引管路の負圧をテーブル側に設けられた圧力検出器によって検出できるので、テーブルに負圧供給管路を設けなくても、ワーク取付台にワークを吸着するための負圧をテーブル側に設けた圧力検出器によって検出することができる。したがって、ワーク取付台をテーブルに装着するときに信号配線の接続が不要でワーク交換の自動化が容易になり、また、頻繁な交換が必要となるフィルタをテーブルに設ける必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態による工作機械のテーブル及びワーク取付台の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示されるワーク取付台の吸着プレートの平面図である。
【図3】本発明による第2の実施形態による工作機械のテーブル及びワーク取付台の構成を示す概略図である。
【図4】図3に示されるテーブルとワーク取付台との係合部の拡大図である。
【図5】本発明による工作機械の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の工作機械の実施形態を説明する。
最初に、図5を参照して、本発明による工作機械の全体構成を説明する。工作機械11は、例えば横形マシニングセンタとすることができ、床面に固定されるベッド13と、ベッド13に対してX軸方向(図5の紙面に対して垂直方向)に移動可能に立設されたコラム15と、コラム15の前面においてY軸方向(図5において上下方向)に移動可能に設けられた主軸頭17とを具備している。主軸頭17は、主軸19を回転可能に支持しており、主軸19の先端には工具ホルダ(図示せず)を介して工具Tが保持されている。ベッド13上には、X軸及びY軸に対して垂直なZ軸方向(図5において左右方向)に移動可能なテーブル21がコラム15と対向して設けられており、テーブル21上には、ワークWが取り付けられたワーク取付台23が着脱自在に装着される。テーブル21は回転テーブルであってもよい。ワーク取付台23は、テーブル21にワークWを固定するためのものであり、パレット、イケール、ロータリテーブル及びこれらの組み合わせなどが含まれる。
【0018】
なお、上記では、工作機械11が横形マシニングセンタとして説明しているが、工作機械を立形マシニングセンタなど他の形態のものとすることもできる。また、コラム15がX軸方向に、主軸頭17がY軸方向に、テーブル21がZ軸方向に移動可能であると説明したが、工作機械11は、工具TとワークWとを少なくともX軸、Y軸及びZ軸の直交3軸方向に相対移動することができるようになっていればよく、上記実施形態に限定されるものではない。
【0019】
ワーク取付台23には、負圧を発生させるための負圧発生装置と、負圧発生装置とワーク取付面とを結ぶ吸引管路と、吸引管路から分岐した連通管路とが設けられており、負圧発生装置によって発生させた負圧を利用して、吸引管路を通じた吸引によりワーク取付台23のワーク取付面にワークWを吸着、固定できるようになっている。負圧発生装置としては、真空ポンプやエゼクタを使用することが可能である。
【0020】
一方、テーブル21には、圧力を検出するための圧力検出器と、圧力検出器から延びる負圧確認管路とが設けられており、ワーク取付台23をテーブル21に装着したときに、ワーク取付台23の連通管路と負圧確認管路とが接続されるようになっている。なお、圧力検出器からの出力は制御装置(図示せず)に接続されており、吸引力(負圧)を監視し、吸引力が予め定められた範囲から外れると、ワーク取付台23にワークWが適正に吸着されていないと判断して、警報などを発するようになっている。例えば、ワークWがワーク取付面に密着していない場合には、吸引力が低下し、予め定められた範囲から外れることになる。圧力検出器は、圧力が予め定められた範囲に入っていることを検出できればよく、圧力を測定できる圧力計であってもよく、圧力が予め定められた範囲に入っているときに信号を発する圧力スイッチであってもよい。また、圧力検出器はテーブル側に設けると記載しているが、テーブルの他、ベッド、スプラッシュガード、制御盤等、機械本体側に設けるという意味である。
【0021】
このように、本発明の工作機械では、ワークの吸着に利用される負圧を発生させるための負圧発生装置がワーク取付台に設けられているので、ワーク取付台を脱着するテーブルの表面に吸引管路を形成する必要がなくなる。したがって、ワーク取付台をテーブルから取り外しているときにテーブルに設けた吸引管路に加工屑や加工液を吸引することがなく、吸引管路の入口に設けるフィルタなども必要がなくなる。また、ワーク取付台をテーブルに装着したときに連通管路と負圧確認管路とが接続され、テーブル側に設けられ制御装置に常時接続された圧力検出器によってワーク取付台におけるワークの吸引力(負圧)を検出することができる。したがって、テーブルに対して着脱されるワーク取付台に圧力検出器を設けなくてもワーク取付台におけるワークの吸引圧力を検出でき、ワーク取付台とテーブルとの間で信号配線を着脱する必要がなくなる。
【実施例1】
【0022】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態による工作機械11のテーブル21及びワーク取付台23の構成を説明する。
ワーク取付台23には、負圧発生装置として、圧縮空気が流れる速度エネルギを圧力エネルギに変換して負圧を発生させるエゼクタ27が設けられており、エゼクタ27は、入口27aから圧縮空気を流入させ出口27bから排気することで、吸引口27cに負圧を発生させる。エゼクタ27の入口27aには、圧縮空気を供給するための圧縮空気供給管路29が接続されており、出口27bには消音のための消音器31が接続されている。また、吸引口27cには吸引管路33が接続されており、吸引管路33は、主軸19と対向するワーク取付台23の側面に取り付けられた吸着プレート47まで延びている。この吸引管路33には吸引によって加工屑や加工液が侵入する可能性があり、これらがエゼクタ27に到達すると故障を引き起こすので、加工液や加工屑によるエゼクタ27の故障を防止するために、吸引管路33の途中にはフィルタ35が設置されており、吸引管路33に侵入した加工液や加工屑をエゼクタの手前で捕捉するようになっている。
【0023】
ワーク取付台23の底面には、位置決め部材として、テーパ内周面37を有した凹部39を備えるテーパソケット41と、クランプ機構(図示せず)とが複数設けられている。また、ワーク取付台23の底面には、エゼクタ27の入口27aから延びる圧縮空気供給管路29と、エゼクタ27の吸引口27cから延びる吸引管路33から分岐した連通管路45とがそれぞれ開口している。
【0024】
吸着プレート47のワーク取付面47aには、図2に示されているように、ワークWを取付可能な領域(ワーク取付領域)47bの内側に格子状の溝49が形成されており、この格子状の溝49にエゼクタ27から延びる吸引管路33が開口している。また、吸着プレート47のワーク取付面47aには、格子状の溝49の外側を取り囲むように吸着領域を規定する環状のシール部51が設けられており、ワーク取付面47aにワークWが吸着されたときに吸着領域を密封して周囲から吸着領域に空気が侵入することを防止し、吸着性を高めるようにしている。なお、ワークWの外周は締め具(図示せず)で吸着プレート47にクランプされている。
【0025】
一方、テーブル21の上面には、ワーク取付台23のテーパソケット41のテーパ内周面37と相補的形状のテーパ外周面53を有したテーパコーン55が設けられており、ワーク取付台23をテーブル21に装着したときに、ワーク取付台23のテーパソケット41の凹部39がテーブル21のテーパコーン55を受容してテーパソケット41のテーパ内周面37がテーパコーン55のテーパ外周面53と係合し、ワーク取付台23をテーブル21上で位置決めするようになっている。位置決めされたワーク取付台23は、クランプ機構(図示せず)によってテーブル21に把持、固定される。クランプ機構としては、公知の適宜のクランプ機構を使用することができるので、ここでは詳しく説明しない。しかしながら、実施例2において後述するようなプルスタッドとコレットとにより構成されるクランプ機構を使用することが好ましい。
【0026】
テーブル21の上面には、付勢ばね61a,61bによって上方に付勢され昇降可能な二つの連結器63a,63bが設けられている。一方の連結器63aは、圧力を検出するための圧力検出器65に連結される負圧確認管路67に接続され、他方の連結器63bは圧縮空気源69から延びる圧縮空気供給管路71に接続されており、圧縮空気供給管路71の途中には圧縮空気供給管路71を開閉するための開閉弁が設けられている。開閉弁としては、ソレノイドバルブ73が使用されている。ワーク取付台23のテーパソケット41とテーブル21のテーパコーン55との係合によりワーク取付台23が位置決めされながらテーブル21に装着されると、二つの連結器63a,63bは付勢ばね61a,61bによって上方に付勢されてワーク取付台23の底面に押し付けられ、連結器63bがワーク取付台23の底面に開口する圧縮空気供給管路29の端部に自動的に係合、連結されると共に、連結器63aがワーク取付台23の底面に開口する連通管路45の端部に自動的に係合、連結される。
【0027】
図1に示されるテーブル21にワーク取付台23を装着するときには、最初に、ワーク取付台23のテーパソケット41とテーブル21のテーパコーン55の位置を大まかに合わせて互いと係合させ、テーパソケット41のテーパ内周面37とテーパコーン55のテーパ外周面53との協働によりワーク取付台23をテーブル21上の所定の位置に配置させた後、クランプ機構(図示せず)によってワーク取付台23がテーブル21に固定される。同時に、テーブル21の二つの連結器63a,63bがそれぞれワーク取付台23の底面に開口する圧縮空気供給管路29及び連通管路45の端部に押し付けられて自動的に係合、連結される。ワーク取付台23の圧縮空気供給管路29と連結器63bとの連結により、テーブル21の圧縮空気供給管路71とワーク取付台23の圧縮空気供給管路29とが連結器63bを通して連通するので、ソレノイドバルブ73を開くと、圧縮空気源69から圧縮空気供給管路71,29を通してエゼクタ27に圧縮空気が供給され、エゼクタ27の吸引口27cに負圧が発生する。発生した負圧は吸引管路33を通して吸着プレート47に供給され、吸着プレート47にワークWを吸着させる。また、吸引管路33から分岐する連通管路45と連結器63aとの連結により、連通管路45とテーブル21の負圧確認管路67とが連結器63aを通して連通し、負圧確認管路67の圧力が吸引管路33の圧力と等しくなるので、テーブル21に設けられた圧力検出器65によって吸引管路33の圧力(負圧)を検出できるようになる。制御装置(図示せず)は吸引管路33の圧力を監視し、圧力検出器65によって検出された圧力が予め定められた範囲から外れると、吸着に異常が生じていると判断して、警報を発する。
【実施例2】
【0028】
次に、図3及び図4を参照して本発明の第2の実施形態による工作機械11のテーブル21及びワーク取付台23の構成を説明する。図3及び図4において、図1と共通する部分には同じ参照番号が付されている。
【0029】
図3に示されている実施形態のテーブル21´及びワーク取付台23´は、主として、連通管路45及び負圧確認管路67について、第1の実施形態による工作機械11のテーブル21及びワーク取付台23と異なっており、その他の構成は第1の実施形態の工作機械のテーブル21及びワーク取付台23と同じであるので、ここでは相違する部分についのみ説明する。
【0030】
図3に示されている第2の実施形態では、ワーク取付台23´の連通管路45がワーク取付台23´の底面ではなくテーパソケット41の凹部39内に開口していると共に、連通管路45の途中にワーク取付台23´の圧縮空気供給管路29の圧力に応じて開閉する開閉弁が設けられている。開閉弁としては、エアオペレートバルブ75が用いられており、エアオペレートバルブ75は、圧縮空気供給管路29の圧力が予め定められた圧力より高くなると開き、予め定められた圧力以下になると閉じるように設定されている。一方、テーブル21´の上面には、ワーク取付台23´の底面に開口する圧縮空気供給路29の端部に対応する位置に、圧縮空気源69から延びる圧縮空気供給管路71に接続され付勢ばね61bによって付勢される連結器63bのみが設けられている。
【0031】
また、第2の実施形態では、テーブル21´の負圧確認管路67がテーパソケット41及びテーパコーン55からなる位置決め係合部にクリーニング用エアを噴出するためにも用いられるようになっている。このために、圧力検出器65に接続される負圧確認管路67は圧縮空気源69にも接続されていると共に、圧力検出器65よりも圧縮空気源69側の負圧確認管路67上には、圧縮空気管路71の圧力に応じて負圧確認管路67を開閉する開閉弁が設けられている。開閉弁としてはエアオペレートバルブ77が使用されており、エアオペレートバルブ77は、開閉弁(ソレノイドバルブ73)よりも下流側の圧縮空気供給路71の圧力が予め定められた圧力よりも大きくなると閉じ、予め定められた圧力以下になると開くように設定されている。
【0032】
ここで、図4を参照して、ワーク取付台23´のテーパソケット41とテーブル21´のテーパコーン55からなる位置決め係合部の詳細な構造について説明する。
ワーク取付台23´の各テーパソケット41は、テーパ内周面37を有した凹部39を備えており、凹部39の中央部からはプルスタッド43が突出している。また、テーパソケット41の凹部39には、吸引管路33から分岐して延びる連通管路45が開口している。一方、テーブル21´のテーパコーン55は、テーパソケット41のテーパ内周面37と相補的形状のテーパ外周面53を有しており、テーパコーン55の中央部に形成された中心縦穴57には、コレット59が上下方向に摺動可能に嵌合されている。また、コレット59の下端には、コレット59の下方に形成されたシリンダ室79に収容されるピストン部分81が形成されており、シリンダ室79の上部に開口した作動流体供給路83aからシリンダ室79へ作動油などの作動流体を供給することにより、ピストン部分81を下方へ移動させてコレット59を下降させる一方、シリンダ室79の下部に開口した作動流体供給路83bからシリンダ室79へ作動流体を供給することにより、ピストン部分81を上方へ移動させてコレット59を押し上げることができるようになっている。
【0033】
コレット59には中心孔85が形成されており、中心孔85は、最上部に形成されプルスタッド43を受容し把持するための把持孔85aと、把持孔85aの下に形成され把持孔85aより小さな直径を有する中間孔85bと、中間孔85bの下に形成され中間孔85bよりさらに小さな直径を有する細孔85cと、細孔85cの下に形成され細孔85cよりも大きな直径を有する下部孔85dとにより構成されている。なお、下部孔85dはピストン部分81を貫通しているので、ねじ止め固定された下部カバー87によってピストン部分81の下端面を封鎖している。コレット59は、上端部に形成されたボール孔内にクランプ用ボール89を収納具備しており、クランプ用ボール89は非クランプ時にはテーパコーン55の中心縦穴57の上部に形成された環状溝91内に退避するようになっている。
【0034】
さらに、コレット59の中心孔85と負圧確認管路67との間は、テーパコーン55に形成された接続路93a、テーパコーン55の中心縦穴57の内周面とコレット59の外周面に形成された環状溝とによって形成された環状路93b、環状路93bとコレット59の中心孔85とを接続する接続路93cを通して連通するようになっている。したがって、ワーク取付台23´がテーブル21´に装着されて、テーパソケット41とテーパコーン55とが係合すれば、テーパソケット41の内側表面とテーパコーン55の外側表面との間の空間95、コレット59の中心孔85、接続路93a、環状路93b、接続路93cを通して、ワーク取付台23´の連通管路45と負圧確認管路67とが連通するようになる。また、ワーク取付台23´をテーブル21´に装着する際にテーパソケット41のテーパ内周面37とテーパコーン55のテーパ外周面53との間に隙間があるときに、負圧確認管路67から圧縮空気を供給すれば、中心孔85からテーパソケット41の内側表面とテーパコーン55の外側表面との間の空間に圧縮空気を噴出させ、テーパソケット41の内側表面及びテーパコーン55の外側表面に付着した切屑等を除去することが可能となる。
【0035】
コレット59の中心孔85には、カバー部材97と、カバー部材97の下方から延びコレット59の細孔85cより僅かに小さい直径を有した支持棒99と、支持棒99に挿通され、コレット59の中間孔85bと細孔85cとの境界部に形成された肩部に下端が着座し且つカバー部材97に上端が係止されたコイルばね101とを配設し、コイルばね101によってカバー部材97を上方に付勢してコレット59の把持孔85aの上部開口をカバー部材97によって閉鎖するようにすることが好ましい。この場合、支持棒99の下端にはコレット59の細孔85cよりも大きい直径の頭部を有したストッパねじ103を取り付け、このストッパねじ103の頭部がコレット59の細孔85cと下部孔85dとの境界部に形成された肩部に当接したときにカバー部材97の上面がテーパコーン55のテーパ外周面と連続した円錐状凸面を形成するようにするとよい。このようにカバー部材97が上方位置にコイルばね101の付勢力で押し上げられているときにコレット59の中心孔85の上部開口を閉鎖するようになっていれば、ワーク取付台23´の交換時に切屑等がコレット59の中心孔85内に落下することが防止される。他方、カバー部材97がプルスタッド43によって押圧されると、コイルばね101が圧縮され、カバー部材97が支持棒99と共に中心孔85内を下降してコレット59の把持孔85aが開口され、把持孔85a内にプルスタッド43を受容できるようになる。
【0036】
カバー部材97を設ける場合、コイルばね101が圧縮されてカバー部材97が把持孔85a内で下降した状態では、カバー部材97の外周面と把持孔85aの内周面との間には空気の流通を許容する僅かな隙間が存在するようにすることで、カバー部材97が下降しているときに、連通管路45と負圧確認管路67との連通及びテーパコーン55の頂部からの圧縮空気の噴射を妨げないようにすることができる。
【0037】
次に、図3に示されている第2の実施形態の工作機械11のテーブル21´及びワーク取付台23´の動作を説明する。
テーブル21´にワーク取付台23´が装着されていないときには、ワーク取付台23´の圧縮空気供給管路29とテーブル21´の圧縮空気供給管路71とは接続されていないので、制御装置からの指令によりソレノイドバルブ73は閉じられ、圧縮空気源69からソレノイドバルブ73より下流側の圧縮空気供給管路71への圧縮空気の供給が停止される。このとき、ソレノイドバルブ73より下流側の圧縮空気供給管路71では圧力が低くなるので、エアオペレートバルブ77が開き、圧縮空気源69から負圧確認管路67へ圧縮空気が供給されるようになる。ワーク取付台23´とテーブル21´とが接近してプルスタッド43がカバー部材97を押圧し、コイルばね101の付勢力に抗してカバー部材97を下降させると、負圧確認管路67へ供給された圧縮空気は、接続路93a、環状路93b、接続路93c及び中心孔85を通してテーパコーン55の頂部からテーパソケット41の凹部39の内側表面とテーパコーン55の外側表面との間の空間へ噴出し、テーパソケット41の凹部39の内側表面とテーパコーン55及びカバー部材97の外側表面に付着した加工屑等を除去するクリーニング効果を提供する。また、この状態では、ワーク取付台23´の圧縮空気供給路29には圧縮空気は供給されておらず、圧縮空気供給管路29の圧力が低くなるので、エアオペレートバルブ75は閉じられ、テーパソケット41の凹部39に開口する連通管路45に圧縮空気が流入しなくなる。これにより、テーパソケット41の凹部39の内側表面とテーパコーン55の外側表面との間に噴出された圧縮空気が連通管路45内に流入してクリーニング効果が低下することを防止している。
【0038】
ワーク取付台23´とテーブル21´とをさらに接近させると、ワーク取付台23´のテーパソケット41とテーブル21´のテーパコーン55とが係合して、ワーク取付台23´をテーブル21´上の所定位置に配置させる。このとき、ワーク取付台23´のプルスタッド43が、カバー部材97を下降させてコレット59の把持孔85aを開放させ、コレット59の把持孔85aに受容される。次に、作動流体供給路83aからテーパコーン55のシリンダ室79へ作動流体を供給することにより、ピストン部分81を下方へ移動させてコレット59を下降させる。すると、コレット59のボール孔内に収容具備されたクランプ用ボール89がテーパコーン55の中心縦穴57の上部に形成された環状溝91内から引き出されてコレット59の把持孔85aに受容されたプルスタッド43に係合して、これを把持、固定する。
【0039】
ワーク取付台23´のプルスタッド43がテーブル21´のコレット59に把持、固定されて、ワーク取付台23´がテーブル21´に装着されると、ワーク取付台23´の底面に開口した圧縮空気供給管路29にテーブル21´の上面から突出する連結器63bが連結され、ワーク取付台23´の圧縮空気供給管路29とテーブル21´の圧縮空気供給管路71が接続される。この状態のときに、制御装置からの指令によりソレノイドバルブ73が開かれて、圧縮空気源69からテーブル21´の圧縮空気供給管路71及びワーク取付台23´の圧縮空気供給管路29を通じてワーク取付台23´のエゼクタ27に圧縮空気が供給されると、エゼクタ27の吸引口27c側に負圧が発生し、吸着プレート47上に固定されたワークWを吸引管路33を通して吸着プレート47に吸着させる。
【0040】
また、テーブル21´の圧縮空気供給管路71に圧縮空気が供給されると、ソレノイドバルブ73より下流側の圧縮空気供給管路71の圧力が高くなるので、エアオペレートバルブ77が閉じられ、負圧確認管路67には圧縮空気が供給されなくなる。さらに、ワーク取付台23´の圧縮空気供給管路29に圧縮空気が供給されると、ワーク取付台23´の圧縮空気供給管路29の圧力が高くなるので、エアオペレートバルブ75が開かれ、ワーク取付台23´の吸引管路33とテーブル21´の負圧確認管路67とが連通して両者の圧力が等しくなる。これにより、テーブル21´の圧力検出器65によってワーク取付台23´の吸引管路33の吸引力(負圧)を検出できるようになる。
【0041】
加工が開始されると、ワークWをワーク取付台23´の吸着プレート47に吸着させる吸引力が圧力検出器65によって常時監視され、エゼクタ27の動作不良や吸着プレート47のシール不良などの異常の発生を検出できる。
【0042】
加工が終了すると、ワークWをワーク取付台23´の吸着プレート47に吸着させる吸引力の監視が停止され、ソレノイドバルブ73を閉じて圧縮空気供給路71,29を通じたエゼクタ27への圧縮空気の供給が停止される。すると、ソレノイドバルブ73より下流側のテーブル21´の圧縮空気供給路71の圧力が低くなって、エアオペレートバルブ77が開かれ、負圧確認管路67に圧縮空気が供給されるようになる一方、ワーク取付台23´の圧縮空気供給路29の圧力が低くなって、エアオペレートバルブ75が閉じられ、連通管路45に圧縮空気が流入しなくなる。これにより、ワーク取付台23´のテーパソケット41とテーブル21´のテーパコーン55との位置決め係合部に圧縮空気が供給されるようになり、位置決め係合部のクリーニングを行いつつ、テーブル21´に対するワーク取付台23´の脱着を行うことが可能になる。
【0043】
以上、図示された実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、図示される実施形態に限定されるものではない。例えば、図示される実施形態では、加工テーブルに本発明の構成を適用しているが、本発明の構成を段取りテーブルに適用することも可能である。この場合も基本的な構成は同じであるが、使用において、ワーク取り外し時には、ソレノイドバルブ73を閉じてエゼクタ27への圧縮空気の供給を停止し、新しいワークWをワーク取付台23、23´に取り付けた後にソレノイドバルブ73を開いてエゼクタ27へ圧縮空気の供給を再開することもできる。これにより、段取りステーションにおいて、圧力検出器65により吸引力を監視し、ワークWが吸着プレート47に正しく設置されているかを確認することができる。
【符号の説明】
【0044】
11 工作機械
21,21´ テーブル
23,23´ ワーク取付台
27 エゼクタ
29 圧縮空気供給管路
41 テーパソケット
45 連通管路
55 テーパコーン
65 圧力検出器
67 負圧確認管路
69 圧縮空気源
71 圧縮空気供給管路
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク取付台を着脱可能にテーブルに装着する工作機械であって、
前記ワーク取付台に形成され、前記ワーク取付台のワーク取付面に開口する吸引管路と、
前記ワーク取付台に設けられ、負圧を発生させ発生させた負圧を前記吸引管路に供給する負圧発生装置と、
前記テーブルに設けられた負圧確認管路と、
前記負圧確認管路に接続された圧力検出器と、
を備え、前記ワーク取付台が前記テーブルに装着されたときに、前記吸引管路から分岐した連通管路と前記負圧確認管路とが接続されるようになっていることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記テーブル側に圧縮空気を供給する圧縮空気源を更に備え、前記負圧発生装置が圧縮空気を用いて負圧を発生させるエゼクタであり、前記ワーク取付台が前記テーブルに装着されたときに、前記圧縮空気源から延びる圧縮空気供給管路と前記エゼクタとが接続されるようになっている請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記ワーク取付台の底面と前記テーブルの表面には、互いに係合する位置決め部材がそれぞれ設けられており、前記テーブルに前記ワーク取付台を装着するときに、前記位置決め部材が係合して、前記テーブルに対して前記ワーク取付台が位置決めされる請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記連通管路が前記ワーク取付台の位置決め部材まで延びていると共に、前記負圧確認管路が前記テーブルの位置決め部材まで延びており、前記ワーク取付台の位置決め部材と前記テーブルの位置決め部材が係合するときに前記連通管路と前記負圧確認管路が接続される請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記負圧確認管路を前記圧縮空気源に選択的に接続する開閉弁が設けられている請求項4に記載の工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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