工作物に対して実施されるべきレーザ加工作業をモニタリングするための方法および装置、ならびにかかる装置を有するレーザ加工ヘッド
本発明は、工作物に対して実施されるべきレーザ加工作業をモニタリングするための方法に関し、前記レーザ加工作業をモニタリングする少なくとも1つのセンサにより、少なくとも2つの現時点における測定値を検出するステップと、前記少なくとも2つの現時点における測定値から少なくとも2つの現時点における特徴を決定するステップであって、前記少なくとも2つの現時点における特徴が一緒になって、特徴空間内の現時点におけるフィンガプリントを表す、ステップと、前記特徴空間内に所定の点集合を与えるステップと、前記特徴空間内の前記所定の点集合に対する前記現時点におけるフィンガプリントの位置を検出することにより前記レーザ加工作業を分類するステップであって、前記少なくとも1つのセンサは、様々に異なる露光時間で複数のカメラ画像を記録し、高ダイナミックレンジ(HDR)方法を利用して前記カメラ画像を相互に処理することにより、現時点における測定値としての高コントラスト比を有する画像を生成する、少なくとも1つのカメラユニットを備える、ステップと、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物に対して実施されるべきレーザ加工作業をモニタリングするための方法および装置に関し、かかる装置を有するレーザ加工ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ材料加工においては、工作物が、集束されたレーザ放射によって切断または接合されるが、レーザ切断作業およびレーザ溶接作業の両方に対して、プロセスモニタリングシステムおよびプロセスモニタリングセンサが使用される。例としては、溶接プロセスまたは切断プロセスをモニタリングするために、作用焦点により決定される作業区域または相互作用区域から発せられる放射線を検出するためのセンサが使用される。このコンテクストにおける標準的なものとしては、相互作用区域中のプラズマ形成を観察するための放射線センサ、およびレーザビームと加工されるべき工作物との間の相互作用区域からのレーザの後方反射放射を検出する後方反射センサが挙げられる。さらに、レーザ加工作業をモニタリングするために、加工の際のエッジ溶融および温度プロファイルのモニタリングに使用することが可能な温度センサまたは赤外線センサが使用される。いずれの場合においてもある特定の波長範囲に対する感度を有するフォトダイオードの使用に加えて、レーザ加工作業は、所定の波長範囲における感度を同様に有し得るカメラを介してさらにモニタリングされる。例えば溶融した工作物区域に関するパラメータなどの、レーザ加工作業をモニタリングするための特性を、これらのカメラにより記録される画像の画像処理に基づいて同様に取得することが可能である。
【0003】
モニタリングシステムの第1の目的は、まずプロセス仕様に従って加工品質を分類することである。第2の目的は、プロセスを制御および閉ループ制御することにより、加工品質を向上させることである。今日の産業用システムにおいては、プロセスモニタリングのために使用されるセンサおよびカメラは、検出されたセンサデータと、画像処理およびデータ解析のための方法との補助によって、加工作業の現状の分類を行うために適用される。この場合に使用される方法は、加工作業に対して個別に設定される。記録されたセンサデータにおいて著しい偏差が認められる場合には、現時点における加工作業は、不十分なものとして分類され、適切な閉ループ制御機構が、この状態を解消するために使用される。しかし、この場合において、記録されたセンサデータに関するプロセスパラメータの制御は、該当するセンサの各測定データにのみ関するものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1415755号明細書
【特許文献2】米国特許第5517420号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10103255号明細書
【特許文献4】国際公開第01/39919号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】FARSON D F 他 "INTELLIGENT LASER WELDING CONTROL", PROCEEDINGS OF LASER MATERIALS PROCESSING, CONFERENCE ICALEO.PROCEEDINGS OF INTERNATIONAL CONGRESS ON THE APPLICATIONS OF LASERS AND ELECTRO-OPTICS, XX, XX, vol. 1722, 1 January 1991 (1991-01-01), pages 104-112, XP000490956
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、レーザ加工状況の分類、したがって工作物に対し実施されるべきレーザ加工作業の加工品質の分類を向上させる、工作物に対して実施されるべきレーザ加工作業をモニタリングするための方法および装置を生み出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の方法により、請求項14に記載の制御装置により、および請求項18に記載のレーザ加工ヘッドにより達成される。本発明の有利な改良および展開が、下位クレームに記載される。
【0008】
本発明によれば、工作物に対して実施されるべきレーザ加工作業をモニタリング、制御、または閉ループ制御するための方法であって、以下のステップ、すなわち、レーザ加工作業をモニタリングする少なくとも1つのセンサにより、少なくとも2つの現時点における測定値を検出するステップと、少なくとも2つの現時点における測定値から少なくとも2つの現時点における特徴または特性を決定するステップであって、これらの少なくとも2つの現時点における特徴が一緒になって、特徴空間または特性空間内の現時点におけるフィンガプリントを表す、ステップと、特徴空間内に所定の点集合を与えるステップと、特徴空間内の所定の点集合に対する現時点におけるフィンガプリントの位置を検出することによりレーザ加工作業を分類するステップであり、少なくとも1つのセンサは、様々な露光時間でカメラ画像を記録し、高ダイナミックレンジ(HDR)方法を利用して前記カメラ画像を相互に処理することにより、現時点における測定値としての高コントラスト比を有する画像を生成する、少なくとも1つのカメラユニットを備える、ステップとを含む方法が、提供される。
【0009】
ここで、HDR方法は、レーザ加工作業を実施する場合に、機械加工されるべき工作物の周辺加工表面およびプロセス放射が1つの画像中に同時に視覚化され得るように、カメラ画像を処理するように設計されると有利である。
【0010】
この場合に、有利には、カメラ画像は、カメラユニットの画像センサの複数回のスキャニングによって、複数のカメラによる同時撮像によって、または様々な露光時間での1つのカメラによる連続撮像によって記録される。
【0011】
本発明によれば、少なくとも1つのカメラユニットにより記録されたカメラ画像を処理するステップは、エントロピー方法の補助による、またはカメラ応答関数の補助による、加重方法(重み付け)によって実施される。
【0012】
また、処理されるべきカメラ画像は、レーザ加工作業の前に先立って作動するカメラ、レーザ加工区域を撮像するカメラ、および/またはレーザ加工作業の後に続いて作動するカメラによって記録されると有利である。
【0013】
ここで、工作物を高い値の品質に加工するためには、本発明の方法により検出される「不良」フィンガプリントが、加工作業の際に直ちに解消されると有利であり、本発明の方法は、現時点におけるフィンガプリントが特徴空間の所定の点集合から離れる場合に、少なくとも1つのアクチュエータが、関連するプロセスパラメータにおける変化がフィンガプリントから特徴空間内の所定の点集合の方向に延在する特徴空間内の勾配に相当するように、作動されるように、関連するアクチュエータの少なくとも1つのプロセスパラメータを閉ループ制御するステップを追加的に含むことが有利である。
【0014】
ここで、少なくとも1つの現時点における測定値から現時点における特徴を決定するステップが、主成分分析、多次元尺度構成法、サポートベクターマシン、またはサポートベクター分類などの、データ削減または次元削減のための方法を含むと有利である。センサデータの次元または次元数の削減により、削減されたデータボリュームに基づいて、コンピュータが分類をはるかにより迅速に行うことが可能となり、つまり、例えば、レーザ加工作業の高速制御を実施することも可能となる。
【0015】
しかし、さらに、少なくとも1つの現時点における測定値から現時点における特徴を決定するステップが、人工ニューラルネットワークの補助により実施されることが考えられ、有利である。
【0016】
加工状況に関する間接的な結論を導き出すことをしばしば可能にする測定データをもたらす複数のセンサが使用される場合には、所定の点集合が、学習プロセスを介して特徴空間内に規定されると有利である。
【0017】
この場合に、加工作業を閉ループ制御するためには、特徴空間の勾配場が、前記特徴空間内の前記点ごとの異なる領域のプロセスパラメータであって前記勾配に関してそれら各領域を表すプロセスパラメータ、に応じて決定されると有利である。この特徴空間の勾配は、特徴空間の所定の点のプロセスパラメータを変更することによって、プロセスパラメータに応じて決定される。
【0018】
複数の有益な測定データを包括的にモニタリングし、決定するためには、少なくとも1つのセンサが、特定の波長用のフィルタを備える少なくとも1つのフォトダイオード、固体伝播音響センサおよび空気伝播音響センサ、ならびに適切な表面照明を有する少なくとも1つのカメラユニットを含む群より選択されると有利である。
【0019】
レーザ加工作業の包括的な閉ループ制御を確保するためには、少なくとも1つのアクチュエータが、レーザ出力の制御装置、工作物に対する加工ヘッドの加工速度制御装置、加工レーザビームの焦点の制御装置、工作物からの加工ヘッドの距離の制御装置、および側方オフセットの制御装置を含む群より選択されると有利である。
【0020】
本発明によれば、本発明の方法を実施するための装置であって、少なくとも2つの現時点における測定値を検出するのに適した、レーザ加工作業をモニタリングするための少なくとも1つのセンサと、特徴空間内に現時点におけるフィンガプリントを作成するために、少なくとも2つの現時点における測定値から少なくとも2つの特徴を決定するためのデータ処理ユニットと、特徴空間内の所定の点集合を記憶するためのメモリユニットと、特徴空間内の所定の点集合に対する現時点におけるフィンガプリントの位置を検出することによりレーザ加工作業を評価するのに適した分類ユニットとを備える装置が、さらに提供される。
【0021】
この場合に、閉ループ制御される加工作業において本発明の装置を使用するためには、装置は、現時点におけるフィンガプリントが特徴スペースの点集合から離れる場合に、少なくとも1つのアクチュエータが、関連するプロセスパラメータにおける変化が、フィンガプリントから特徴空間内の所定の点集合の方向に延在する特徴空間内の勾配に相当するように、作動されるように、関連するアクチュエータの少なくとも1つのプロセスパラメータを閉ループ制御するための制御ユニットをさらに有すると有利である。
【0022】
この場合には、少なくとも1つのセンサが、特定の波長用のフィルタを備える少なくとも1つのフォトダイオード、固体伝播音響センサおよび空気伝播音響センサ、ならびに適切な表面照明を有する少なくとも1つのカメラユニットを含む群より選択されると有利である。
【0023】
さらに、少なくとも1つのアクチュエータが、レーザ出力の制御装置、工作物に対する加工ヘッドの加工速度制御装置、加工レーザビームの焦点の制御装置、工作物からの加工ヘッドの距離の制御装置、および側方オフセットの制御装置を含む群より選択されると有利である。
【0024】
さらに、本発明によれば、本発明の装置を備える、レーザビームにより工作物を加工するためのレーザ加工ヘッドが提供される。
【0025】
以下、図面の補助により、例として本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の方法による、工作物の加工作業の必須構成要素を含む流れ図である。
【図2】レーザ加工作業をモニタリングおよび検出するために、本発明の方法において使用されるセンサの概要図である。
【図3】本発明の加工作業において使用される構成要素の大幅に単純化した概略図である。
【図4A】レーザビーム溶接プロセスの際に本発明の方法において使用されるアクチュエータの一部の大幅に単純化した概略図である。
【図4B】レーザビーム切断プロセスの際に本発明の方法において使用されるアクチュエータの一部の大幅に単純化した概略図である。
【図5A】線形次元削減器および非線形次元削減器が使用される、本発明の方法によるフィンガプリントの作成の流れ図である。
【図5B】人工ニューラルネットワークが使用される、本発明の方法によるフィンガプリントの作成の流れ図である。
【図6A】線形次元削減器および非線形次元削減器が使用される、本発明の方法による分類作業の流れ図である。
【図6B】人工ニューラルネットワークが使用される、本発明の方法による分類作業の流れ図である。
【図7】欠陥検出方法を説明する概略図である。
【図8】フィンガプリントおよび特性または特徴のそれぞれの本発明による学習を説明する流れ図である。
【図9】本発明による次元削減方法の流れ図である。
【図10】現時点における加工作業の本発明による評価の流れ図である。
【図11】本発明による新規の制御パラメータの推定の流れ図である。
【図12】本発明による、HDR方法によって処理されるカメラ画像の概略図である。
【図13】本発明のHDR画像シーケンス処理のブロック図である。
【図14】本発明による、レーザ加工作業の際の強化学習方法の利用による分類手順の流れ図である。
【図15】本発明による、レーザ加工作業の際の判別解析方法の利用による分類手順の流れ図である。
【図16】本発明による、レーザ加工作業の際の、次元削減により求められる所望値による閉ループ制御作業の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
これらの図面の種々の図において、互いに一致する構成要素は、同一の参照記号を付される。
【0028】
本発明によれば、機械学習アルゴリズムおよび自己学習アルゴリズムの利用による認知能力を有する、認知レーザ材料加工システムが提供される。これに関連する本発明の方法は、プロセス観察、プロセス制御、およびプロセス閉ループ制御のために、レーザ材料加工において利用することが可能である。
【0029】
システムが、以下の2つのタイプの認知能力を有することが可能である。第1には、観察されるシステムが、例えば自動的に自己学習および自己改良する能力などの認知能力を有するように、外部のオブザーバには見える。第2には、このシステムが、例えばヒトの脳などの自然の有機的組織と同様の様式の認知能力を実装する。
【0030】
本発明のシステムは、レーザ材料加工において利用される欠陥の学習、自発的検出、および自発的補正などの、認知能力を有する。認知能力の利用は、レーザ材料加工の分野においては特に有利である。工作物の分離または接合などの加工作業は、プロセスごとに互いに非常に大きく異なる。
【0031】
初めに各プロセスを手動により個別に設定することが以前より知られている。この場合、プロセスパラメータの設定後に、このプロセスは、単に観察され、対応する様式で手動により適合化される。次に装填される工作物が、例えば汚染されているか、または前回に装填された工作物とは工作物の厚さにおいて異なる場合には、このプロセスは、手動により頻繁に再調節されなければならない。プロセスの変更に対して自動的に適合化させることは、全く不可能であったか、または非常にわずかな程度だけ可能であった。実際に、車両製造業者の、特に製造ラインにおいて同時に複数の車両を製作することを望む車両製造業者により要求されているものは、処理作業に対して迅速かつ適応的に製造システムを適合化させることが可能であるということである。
【0032】
加工作業の迅速な学習と、加工の際の欠陥の検出、補正、および回避とが、本発明のシステムの認知能力により満たされる要件である。
【0033】
図1は、必須の構成要素を含む本発明の流れ図である。これらの構成要素を、以下において段階的に説明する。
【0034】
本発明によれば、プロセス特徴の取得の際に、加工作業に関する全情報が、少なくとも1つのセンサを含むセンサシステムによって検出される。使用されるこれらのセンサは、プロセスに関する多数の測定値および情報を得ることによって、加工作業をモニタリングするセンサの測定データから、以下においては特徴と呼ぶ、そのプロセスのプロセスマップ、プロセス特性、または明確なフィンガプリントの決定を可能にするために採用される。この決定は、特に、測定値の計算、または別の適切な処理、好ましくは電子的な処理によって、実施される。
【0035】
本発明において使用されるセンサの概要が、図2に図示され、これらの適切なセンサを含む本発明のレーザ処理システムの設計が、図3に図示される。
【0036】
レーザ加工作業をモニタリングするための既に周知のセンサと共に、本発明においては、固体伝播ノイズおよび空気伝播ノイズを検出するために追加のセンサが使用される。ノイズを記録するために固体伝播ノイズおよび空気伝播ノイズのそれぞれのための少なくとも2つのセンサを使用することが適切である。さらに、加工において、固体伝播ノイズおよび空気伝播ノイズに関するセンサ信号が、プロセスに応じてさらにフィルタリングされ、増幅され、および適切にスキャニングされる。種々の方向特徴が、空気伝播ノイズの記録に適する。その後、ノイズ源の位置および伝播方向を、音響センサの巧みな配置によって計算することが可能となる。したがって、該当しない源からの干渉ノイズを削減することも、およびバックグラウンドノイズを削減することも、またはアクティブノイズキャンセレーションなどの方法を適用することも可能である。
【0037】
さらに、レーザ処理ヘッドセンサ中には更なるセンサが取り付けられ、それらセンサは、特定波長の放射を検出する役割を果たすと共に、好ましくは、ある特定の波長範囲に対する感度を有するフォトダイオードである。さらに、この場合に、該当するフォトダイオードの上流に、特定の波長範囲を選択するための光学バンドパスフィルタを配置することもまた可能である。これらのセンサの測定値も同様に、検出およびスキャニングされる。
【0038】
さらに、レーザ加工作業、特にレーザ加工区域を観察するカメラが、測定データを得るために使用される。したがって、観察ビーム経路を、加工ヘッドにおいて作業レーザのビーム経路と同軸結合させることにより、レーザ加工区域を撮像する、工程内(イン・プロセス)カメラを使用することが可能である。代替的には、加工ヘッドの外部にあるカメラにより加工作業を記録させることも可能である。同様に、工程前(プレ・プロセス)カメラと呼ばれる事前に作動するカメラと、工程後(ポスト・プロセス)カメラと呼ばれる事後に作動するカメラとにより、レーザ加工作業を記録することも可能である。加工作業に応じて、様々な工作物照明コンセプトが、カメラによる記録に適する。したがって、本発明によれば、照明のために、費用効果が高く、広い波長範囲における放射が可能な発光ダイオードを使用してもよく、また、工作物表面上のカメラ詳細に集束するように、適切な光学装置による様々な波長のレーザを使用することが可能である。「関心領域」、「クオラス(qualas)」、またはジオメトリデータ評価などのデータ処理方法が、カメラデータの前処理に特に適しており、好ましい。さらに、本発明によれば、記録されたカメラ画像のコントラスト比を有利に高める高ダイナミックレンジ(HDR)方法が使用される。このためには、様々に異なる露光時間により複数の画像が記録され、HDR方法により互いに突き合わされ、それにより非常に高いコントラスト比を有する画像が得られる。
【0039】
プロセス特徴取得の品質は、使用されるセンサの個数と共に上昇するが、システムのコストがそれに応じて上がる。したがって、本発明の方法は、複数のセンサの使用に限定されず、例えば工程内カメラなどの1つのみのセンサを使用することによっても実施が可能であることが、認識されるはずである。
【0040】
次に、本発明の方法による、および特定のアクチュエータを使用するプロセス制御を説明する。
【0041】
レーザ材料加工においては、使用される全てのアクチュエータに関して手動により制御プログラムを設計することが普通である。このプロセスの間に、この制御プログラムは、プロセスモニタリングのみを介してモニタリングされるか、またはレーザ切断の際に容量式距離センサ(または複数の容量式距離センサ)などの特定の制御ループの補助により適合化される。
【0042】
それとは対照的に、本発明の方法においては、継続的なプロセス制御に頼っており、さらなる新規のプロセス制御オプションが組み込まれる。
【0043】
図4Aに図示されるように、レーザビーム溶接の加工方法の際には、レーザビーム電力、加工ヘッドと工作物との間の距離、工作物に対する加工ヘッドの速度、および加工レーザ放射の焦点位置が、制御されるか、または閉ループ制御される。
【0044】
図4Bに図示されるように、レーザ切断の加工方法の際には、プロセスガスの供給が、上述のプロセスパラメータと共に、本発明によってさらに追加的に制御されるか、または閉ループ制御される。さらに、両加工方法において、例えば90〜100%の間のレーザ放射強度の変調など、ある特定の周波数にて制御信号の強度を変調することも可能である。この制御信号が判明しているため、センサデータを介して、例えば様々な測定範囲におけるプロセスパラメータに応じたものとしての特徴スペースの勾配場などのようなこのプロセスに関するシステム応答データから回復することが可能である。これらの制御は、適切な線形軸インターフェース、ロボット制御インターフェース、または他の制御インターフェースを介して実現することが可能である。
【0045】
閉ループ制御オプションは、使用されるアクチュエータの個数の増加と共に増加するが、より多数のプロセスパラメータの制御が可能であるため、それに応じてシステムコストが上昇する。したがって、本発明の方法は、この複数のアクチュエータの使用に限定されず、例えばレーザ溶接に関してはレーザ出力制御装置、またはレーザ切断に関してはプロセスガス制御装置などの、1つのみのアクチュエータを使用するだけでも実施が可能であることに留意すべきである。
【0046】
次に、本発明の方法によるレーザ加工作業を分類するステップをさらに詳細に説明する。
【0047】
本発明のレーザ加工システムによる欠陥の自動検出および自動補正を実現するためには、本発明のシステムがアクチュエータ(または複数のアクチュエータ)の駆動の決定を自動的に行うように、センサデータから技術的知識を引き出さなければならない。
【0048】
さらに、システムがそのユーザから教育され得るものであり、さらにそれ自体において学習能力を有する場合には、有利である。認知レーザ材料加工を実施するためには、本発明によれば、システムが、使用される全てのセンサから重要な特徴を既に自動的に認識しているか、またはそれらの特徴を自動的に検出および学習し、その後プロセス制御に関する決定を行うことが可能となる。次に、本発明の3つのステージ、具体的には、プロセス環境の学習、現時点におけるプロセス結果の分類、およびプロセスの制御または閉ループ制御を説明する。
【0049】
初めに、プロセス環境の学習を説明する。プロセスを認識するためには、リファレンスラン(参照用実行)または訓練加工が初めに必要となる。各加工作業は、所望の結果およびそこからのある偏差を有する。試験加工またはリファレンスランは共に、プロセス制御に対するシステムの結果を、さらに理想的にはプロセス制御に対するシステムの応答及び遷移を含まなければならない。例えば、Xmmの規定の溶接シーム幅およびYcmの規定の溶接シーム長さで、ステンレス鋼重ね継手において溶接シームを実現するためには、少なくとも1度のリファレンスランを実施しなければならない。このリファレンスランにおいては、プロセスパラメータの両方向への規定のオーバーシュートおよび仕様上のオーバーシュートの両方が含まれるように、少なくとも1つのプロセスパラメータが、変更される。
【0050】
この場合には、本発明によれば、人間であるシステムオペレータが、プロセスパラメータに応じてレーザ出力を上昇させつつリファレンスランを実施することが可能となる。このプロセスにおいては、このプロセスパラメータに対して、上方仕様境界および下方仕様境界がもたらされ、オーバーシュートする。下方仕様境界が、例えば底部溶け込みであり、上方仕様境界が、シーム崩壊である場合には、底部溶け込みを生じさせないようなレーザ出力よりリファレンスランを開始することが可能である。リファレンスランの際に、レーザ出力は、シーム崩壊が生じるまで継続的に上昇するように制御される。このプロセスは、既述のプロセスセンサ(または複数のプロセスセンサ)により観察される。このセンサは、適切な測定値を記録し、プロセス環境を学習するために使用される。
【0051】
別の例は、グリス塗布された工作物およびグリス塗布されない工作物の2つの装填物間における製造問題に関する。この場合も、リファレンスランの際の学習のために、画定境界が含まれることがやはり必要となる。オペレータが、認知的レーザ材料加工システムに画定境界の位置を通知することにより、本発明のシステムは、これらの領域を識別することが可能となる。
【0052】
本発明によれば、プロセス環境を学習するために、以下に説明する2つの異なる方法が用意される。
【0053】
図5Aに図示されるように、線形次元削減器および非線形次元削減器、ならびに主成分分析(PCA)、MDS(多次元尺度構成法)、LLE(局所線形埋め込み法)、およびSVM(サポートベクターマシン)などの様々な学習方法を、プロセス環境の学習のために使用することが可能である。これらの方法は、組合せにおいて、およびそれら個々において利用することができる。さらに、以下においてさらに説明するように、プロセス環境の学習のために判別解析を利用することが可能である。
【0054】
図5Bに図示されるように、プロセス環境の学習に対する別のアプローチは、人工ニューラルネットワーク(ANN)を利用するものである。
【0055】
単純化して説明すると、第1のアプローチにおいては、大量のセンサデータが、統合され、削減される。この場合に、可能な限り全ての重要な特徴が保持され、冗長的な情報は無視される。最後には、あらゆる観察される例について、特徴のベクトルおよび/またはマトリクスが、センサの測定値から求められているが、それらのデータボリュームは、大幅に削減されている。これは、プロセスのフィンガプリントまたは特性と呼ぶことも可能なこのマトリクスまたはベクトルを用いてプロセス状況を一意的に分類することを可能にするためである。
【0056】
このプロセスは、人工ニューラルネットワークとは異なる。なぜならば、この場合には、このネットワークは訓練され、学習した情報が、その後このネットワーク内に存在し、次いでその結果を分類することが可能となるからである。したがって、出力ニューロンは、初めに、訓練されたデータの補助による分類を利用する。その後、この分類の補助により、閉ループ制御を実施することが可能となる。
【0057】
加工作業のモニタリングでは、以前に学習した所望の領域と比較される、現時点におけるプロセス結果を取得することが必要である。この現時点におけるプロセス結果は、特徴スペース中の点集合と見なすことが可能であり、該当する場合には、図6Aおよび図6Bに図示されるようにプロセスパラメータに適合化される。プロセスパラメータの適合化は、所望の領域から出現する前に、実施することが可能であり、既に実施されているべきである。この場合に、システムを閉ループ制御するために使用される、所定の点集合は、閉ループ制御の場合には、センサシステムの現時点のフィンガプリントが、所望の領域のエッジ領域に入るときには所定の点集合から既に離れるように、適合化することが可能である。
【0058】
次に、第1の方法を利用した現時点のプロセス結果の分類を説明する(図6A)。この認知的レーザ材料加工システムは、メモリのデータベース内に、ベクトルもしくはマトリクスの形態にて、学習したプロセス環境、学習した特徴、または学習したフィンガプリントを既に記憶している。このプロセスから現時点において得られつつあるセンサの測定値は、初めに、データボリュームにおいて削減されなければならず、比較のために同一のデータ空間、すなわち特徴ベクトルまたはフィンガプリントとしての特徴空間内に入れなければならない。このようにして、現時点におけるフィンガプリントが、特徴空間内の削減されたセンサデータベクトルまたはマトリクスとして得られ、特徴空間内の学習した点集合と比較される。このようにして、現時点において習得されたデータ点が、ある特定の特徴点、特徴スポット、または特徴項目に最も近くなる見込みを得ることが可能となる。このようにして、この特徴点が、依然として所望の領域内にあるか否かが認識され、さらに、プロセスパラメータに対しておそらく必要である補正が認識される。
【0059】
人工ネットワーク(図6B)による現時点におけるプロセス結果の分類は、訓練されたネットワークによって実施される。分類結果は、プロセスが依然として所望の領域内にあるか否かであり、その傾向に関して、プロセスパラメータが適合化されることとなる。
【0060】
本発明の方法によるプロセスの制御または閉ループ制御は、以下のように実施される。分類結果により、制御ユニットは、適切なアクチュエータが作動されるべき方向および強度を既に認識している。様々な閉ループ制御方法を利用することが可能である。したがって、例えば、所望の特徴ベクトルと結果ベクトルとの間の測地的距離の最短化、またはカルマンフィルタおよび平均二乗誤差の最小化を用いた閉ループ制御方法の利用が可能である。さらに、「サポートベクター」分類により多次元特徴空間または特徴空間から調整傾向を決定することが可能である。その場合、閉ループ制御装置は、予め規定された安全領域をオーバーシュートすることが不可能となる。
【0061】
本発明は、複数の方法変種において適用することが可能であるが、それらの中のいくつかをここでは提示する。
【0062】
プロセスモニタリングにおいては、いくつかの欠陥(エラー)を明確に論じることが重要である。また、この場合には、認知的レーザ材料加工の利用により、良好な結果がもたらされる。欠陥検出方法においては(図7に図示されるように)、初めに、オペレータが故意に欠陥を生じさせ、それにより認知システムがこれを学習することが可能となることが必要である。システムは、一度この欠陥を学習すると、この欠陥を正確に検出することが可能となる。これは、以下の例によって説明される。この目的は、レーザ切断プロセスの際の切断エッジ上のドロスまたはバリの形成を、様々なセンサ、とりわけ工程内カメラを含むプロセスセンサシステムの補助によって検出することである。オペレータは、プロセスガスを除いては一定の制御パラメータによりリファレンスランを実施する。このプロセスガスは、ドロスが明確に得られるまで、リファレンスランの際に制御装置を介してオペレータにより減少され得る。リファレンスランが終了すると、認知的レーザ材料加工システムは、センサデータを利用して、PCA、主成分分析、または提示される次元削減の他の方法の組合せを介して、適切な主成分を計算する。次に、オペレータは、ドロスが得られた工作物上の区域をシステムに通知する。切断エッジ上においてドロスが得られた位置に関する情報、およびセンサデータから対応する主成分が計算された点に関する情報を利用することにより、引き続いて認知システムは、もたらされるドロスに対する収集された特徴またはフィンガプリントをそれぞれ含む、対応する成分、ベクトル、またはマトリクスを計算することが可能となる。このマシンが、その作業を継続する場合には、プロセスの際のマトリクス−ベクトル代数によって、現時点におけるセンサデータから、学習した欠陥(エラー)が生じたか否かを計算することが可能となり、これをオペレータに示すことが可能となる。
【0063】
同じ方法を利用して、例えばレーザビーム溶接またはレーザ切断の際に生じる効果を、すなわち、融合不良(フォールスフレンド(false friend))、シーム崩壊(不十分な埋め)、完全溶け込み(ルート融合)、切断幅X、溶け込み深さ状況、切断エッジの凹凸、焼損効果、溶接シーム幅Y、溶接状況、ルート溶け込み状況、接合部断面状況、重ね継手におけるギャップ、突合せ継手におけるギャップ、側方オフセット、イジェクション(ドロップアウト)、孔、穴を検出することが可能である。
【0064】
また、本発明は、レーザ材料加工システムの適合化を、以前は要した装填物交換を簡易化するために使用することも可能である。新規装填物の工作物は、例えば材料厚さまたは汚染度合いなど、若干変化した特性を有する。再度、初めに学習フェーズが、その後に分類フェーズが実施される。閉ループ制御プロセスは、分類フェーズが終わり次第実施することが可能である。しかし、例えば装填物交換などの結果として生じるプロセス変更のために新規の制御パラメータを推定することも可能である。
【0065】
図8によれば、プロセスセンサ(または複数のプロセスセンサ)の測定値が、リファレンスランにより学習フェーズにおいて取得される。変更される1つの制御パラメータを除いては一定であるプロセス制御パラメータが、再度リファレンスランとして設定される。例としては、レーザビーム溶接プロセスの場合には、レーザ出力が、リファレンスランの際に継続的に上昇され得る。取得されたデータは、次元削減器の補助により、認知的レーザ材料加工システムによって処理される(図9を参照)。使用される各センサの出力データは、初めに適切なローパスの補助によりフィルタリングされる。その後、n主成分が、主成分分析を介して出力される。次いで、データは、正規化され、その平均値から解放される。取得される各時間セグメントに関する使用されるセンサについての特徴値データが、この処理ステップの最後に得られる。対応する特徴またはフィンガプリントおよびそれらのマッピングルールが、特徴マッピングルールのためのデータベースに記憶される。次に、このシステムのユーザが、工作物上において、所望の結果に対応する区域を規定する。この規定は、ベクトルに変換され、そのベクトルの補助により、分類装置を訓練することが可能となる。この方法においては、分類の実施が可能となるように、サポートベクターマシンが使用される。サポートベクター分類の方法が、この場合には適用される。これは、ユーザの仕様に基づいて特徴空間の多次元分離を実施する、所望のプロセス結果と望ましくないプロセス結果とを分類するための数学的方法を表す。特徴マッピングルールを含むデータベースは、マッピングルール(または複数のマッピングルール)を表し、分類データベースは、特徴空間の分離を表す。
【0066】
次に、現時点における加工作業の分類および/または評価に対する、学習したプロセス知識の適用(図10)を説明する。学習フェーズの後に、認知レーザ材料加工システムが、以前に学習したユーザ希望に従って加工作業をモニタリングする。センサデータが、特定の特徴マッピングルールの仕様に基づき次元削減される。出力データは、所定の特徴空間または特徴空間内に配置される。サポートベクター分類方法によりオペレータが学習した分類データは、現時点における加工作業を評価するという目的に役立つ。このプロセスを閉ループ制御するために、プロセス制御パラメータの可能性を介して、現時点におけるプロセス結果がユーザにより規定された所望の領域内に位置するか否か、およびいずれの傾向が好ましいものとなるかに関して、評価を実行することが可能である。
【0067】
次に、装填物交換により小さなプロセス変更が生じた場合における、新規の制御パラメータまたはプロセスパラメータの推定を説明する。例えば装填物交換の場合における工作物特定の若干の変化などにより、加工作業が、ある一定の期間にわたって修正される場合には、新規の制御パラメータを推定することが可能である。このためには、前回のリファレンスラン1に加えて新規のリファレンスラン2を実施することが必要となる。同一の制御パラメータが、リファレンスラン1およびリファレンスラン2に対して適用される。
【0068】
図11に図示されるように、リファレンスラン2のセンサのセンサデータまたは測定値が、再度次元削減される。次に、マッピングルールが、リファレンスラン1の削減されたセンサデータに適用される。リファレンスラン2の際のリファレンスラン1からの特徴の発生可能性が、サポートベクター分類の本発明の方法を利用して計算される。したがって、認知レーザ材料加工システムは、工作物上の位置から、またはこの時点で使用される制御パラメータから、および特徴の発生可能性から、新規プロセスにおけるいずれの制御パラメータが、以前の加工作業におけるような非常に類似したまたは実質的に同一の結果をもたらすかを計算することが可能となる。
【0069】
先に概説した方法におけるように、特徴は、特徴ベースの閉ループ制御方法におけるプロセスデータから求められる。これらの特徴は、制御パラメータが適合化されるべきであるか否かに関する対応する評価を用いて、初回のリファレンスランおよび定期的に繰り返されるリファレンスランを介してオペレータによって分類される。これらの対応する特徴および関連する分類は、適合化の提案に関して適切である場合には、データベースに記憶される。したがって、オペレータは、一定の間隔でシステムにアクセスし、それによりシステムを教育する。したがって、システムは、現時点におけるプロセス結果が依然として規定の特徴空間内に位置するか否か、および、システムが制御パラメータの適合化を実施すべきであるか否かを、初めに確認することが可能となる。したがって、学習した特徴および適合化の提案は、時間の経過と共に増加し、システムは、加工において向上し続ける。類似の特徴および適合化提案は、特徴の過多を回避するために、再度突き合わせることが可能である。
【0070】
次に、本発明の高ダイナミックレンジ(HDR)方法をより正確にさらに説明する。この方法においては、画像センサが、異なる時点において、画像ごとに複数回、すなわち少なくとも2回スキャニングされるか、または、複数の画像、すなわち2つ、3つ、またはそれ以上の画像が、様々な露光時間でもしくは複数のカメラで撮像され、その後に、少なくとも1つの画像を形成するように互いに処理される。この処置により、単一画像において周辺の加工表面、プロセス放射、および蒸気毛管またはキーホールを同時に視覚化する、画像、画像シーケンス、または映像の記録が可能となる。レーザ加工作業を撮像する場合には、前記区域の強度値が、1つの画像において前記方法により視覚化することが可能な広範囲にわたって分布される。このように生成される画像または画像シーケンスは、プロセスモニタリングシステムまたは比較的低い強度分解能を有する評価ユニットもしくは制御ユニットとの組合せにおいて、画面または表示装置上に表示するために、グレースケール値またはグレースケールトーンマッピング方法を介して適合化される様式で表示される。
【0071】
図12および図13に図示されるように、本発明によれば、複数の画像または画素アレイが、HDR方法、または加工表面、プロセス放射、および蒸気毛管(キーホール)をさらに良好に視覚化するための方法を実施するために、互いに処理される。
【0072】
種々の画像は、画像センサの複数回のスキャニングにより、または複数のカメラによる同時撮像により、または多重露光技術と呼ばれる、1つのカメラによるものであるが異なる露光時間による連続撮像により得ることが可能である。個々の記録された画像の処理は、様々なタイプの方法により実施することが可能である。これは、簡単な場合には、少なくとも2つの記録された画像から画像シーケンスの中の複数の画像の個々の画像値を合計し平均化することを含む。さらに効果的な撮像を得るためには、少なくとも2つの記録された画像の画像シーケンスからの画像値または画素を、加重平均することが可能である。
【0073】
加重方法としては、エントロピー方法を、情報コンテンツによる加重のために使用することが可能であり、または、カメラ応答関数を考慮して加重平均を実施することが可能である。これは、表面当たりの実際の放射エネルギーまたは実現可能な放射エネルギーに関して推論を導き出すことを要する。これは、以下の関数によって得られる。
【数1】
さらに、個々の放射エネルギーに対する加重は、
【数2】
となる。
ここで、iは、複数の記録された画像の画像シーケンスからの画像インデックスであり、jは、画素位置であり、tiは、記録された画像iの露光時間またはスキャニング時間であり、yijは、位置jにおける記録された画像iの画素の強度値であり、I-1( )は、逆カメラ応答関数であり、xjは、画素位置jにおける表面当たりの推定放射エネルギーであり、wijは、信頼性モデルの加重関数である。本発明は、明示的には、特にレーザ加工ヘッドおよび/またはそれに接続される本発明のプロセスモニタリングシステムの補助による、材料の分離または接合などの加工方法における、これらの説明されたHDR画像処理方法の使用に関する。
【0074】
次に、使用されるセンサおよび分類方法をより正確にさらに説明する。
【0075】
センサデータ出力を可能にする任意のセンサを、特にセンサシステムとして使用することが可能である。特に、これらは、例としては、マイクロフォンまたは固体伝播音響センサ、カメラ、フォトダイオード、プローブ、技術評価信号およびモニタリング信号、ならびに例えばレーザ出力などのアクチュエータパラメータである。
【0076】
特徴抽出および次元削減。この場合、可能な限りデータボリュームを削減し、情報コンテンツを維持するあらゆる方法を利用することが可能である。ここでは、これらは、特に、主成分分析(PCA)、独立成分分析(ICA)、ウェーブレット解析、フーリエ解析、高速フーリエおよびラプラス解析、特徴・対象認識方法、局所線形埋め込み法、人工ニューラルネットワーク、および多次元尺度構成法等々である。
【0077】
削減されたデータボリュームは、より高次元の空間から求められた多次元空間内の点群として解釈することが可能である。これらを削減することにより、有限時間において、これらのデータを以前に記録され分類されたおよび/または学習されたデータボリュームと比較することが可能となる。この分類において、新規のセンサデータが、記録されたセンサデータに既に類似するものであるか否かを確認することが可能となり、この類似性に可能性を割り当てることが可能となる。以前に記録されたデータボリュームの類似可能性についての規定のしきい値をオーバーシュートする場合には、その条件下において以前に記憶された解決アプローチ(手法)または制御アプローチまたは閉ループ制御アプローチに従うことが可能である。以前に学習したデータボリュームに関する類似可能性についてのしきい値をオーバーシュートする場合には、システムは、新たな状況にある。
【0078】
新たな状況に対する挙動は、人間であるオペレータに対する問い合わせによって学習されるか、または、以前のデータおよび解決ストラテジから類似原則を利用して試され得る。この場合には、対象が設定されると、引き続いて自己開発アプローチを試した後に、目的が果たされたか否かを確認し、選択された解決アプローチを評価する自己学習アルゴリズムが使用される。以下の方法、すなわち、サポートベクターマシン、サポートベクター分類、ファジー理論、情報ファジーネットワーク、ファジーK−最近傍分類器、K−最近傍分類器、強化学習、ベイジアンネットワークおよびベイジアン知識データベース、naiveベイジアン分類器、隠れマルコフ連鎖、人工ニューラルネットワークおよび逆伝播法、回帰分析、遺伝子プログラミング、または決定木は、分類のために、経験値および解決ストラテジの節減のために、ならびに自己学習アルゴリズムとして利用することが可能である。
【0079】
分類、または、閉ループ制御装置もしくはアクチュエータの制御の後に得られる解決ストラテジは、単純な設計のものであることが可能であるが、データ取得タイプを制御することも可能である。例えば既知のデータボリュームに対するしきい値に達しない場合などには、データ取得タイプを変更することが可能である。例えば、これは、新たな周波数帯にウェーブレット解析を適合化させることにより、またはPCAからICAに変更することにより、実施することが可能である。
【0080】
(高ダイナミックレンジ方法(HDR方法))
HDR方法は、様々なコントラスト比を有する複数の記録された画像または画像値マトリクスおよびベクトルから比較的高いコントラスト比を計算するために利用することが可能である。このために、シーンの撮像または観察の際に、様々な露光時間で複数の画像を記録することが可能であり、その後、そこから、改善したコントラスト比を有する画像または画像シーケンスを計算することが可能となる。様々なコントラスト比を有する画像シーケンスを生成するためには、いわゆる多重露光方法を利用して、様々な露光時間で複数の画像を記録することが可能である。
【0081】
しかし、露光時間の間に画素値を複数回スキャニングすることも可能である。様々なコントラスト比を有する画像シーケンスが、露光時間の間にこのようにして生成される。さらに、この場合には、画像センサ上に位置し、画素に対応する電荷は、一度回収することが可能であり、その後2度目に回収することは不可能である。しかし、非破壊読出し(NDRO)とも呼ばれる非破壊読取り、またはマルチスロープ読出し、またはシングルスロープ読出し、またはクールドイメジャ(cooled imager)、または電荷注入撮像(CIS)、またはTFC(thin film on CMOS)、または能動画素センサ(APS)、またはシングルスロープサンプリングもしくは相関二重サンプリング(CDS)などの技術が存在し、これらにより、例えばCMOSチップの場合などには、問い合わされる電荷値がスキャニングによって変わることなく、単一の露光期間の間の電荷の複数の問い合わせを行うことが可能になる。本発明によれば、これらの技術は、レーザ加工作業を観察することにより、観察方法または制御方法を実施するために、使用することが可能である。HDR方法を利用して、実施すべきレーザ溶接作業の際の、プロセス放射、蒸気毛管(キーホール)、溶融プール、溶接シームジオメトリ、および溶接シームガイダンスの観察および解消を同時に行うことが可能であり、または、レーザ切断作業の実施中の界面、切断エッジ、プロセス放射、さらにドロス形成、およびドロスジオメトリの観察および解消を同時に行うことが可能である。適切な場合には、これら両方の場合において、(やはり図12に図示されるように)機械加工すべき工作物に対して投射されるレーザ線を観察することが可能である。
【0082】
(強化学習(RL))
強化学習(RL)は、機械学習の分野を示す。これは、報酬を最大化するためにシステムまたはエージェントが環境に対して適用される方法を表す。RLは、この場合には、システムアクションプランもしくはアクションに対する1つ以上のシステム状況または状況に対して、マッピングルールまたはポリシーを探索する。RLのポリシーは、本発明によれば、レーザ加工作業の自己改善制御および観察のために使用することが可能である。
【0083】
図14は、RLをどのようにレーザ加工作業に組み込むことが可能であるかについての1つの可能なポリシーを示す。学習されることとなる値は、マトリクスQによって記号表示される。Qマトリクスは、成分QS1、QSn、QSA、QDR、QR1、QRmから構成され、これらは、1つ以上の値を含むことが可能である。これらの成分は、開始値により初期化され、RL方法に従って最適化される。この最適化は、アクションが実行され、報酬関数により評価されることにより行われ、この評価により、批評家が役者を評価し、役者が自身の演技を適合化させるという、演劇を連想させるような方式で、Qマトリクスの値を修正する。前述のように、適切な分類を含む点群は、リファレンスランにおける人間である専門家によって、または学習フェーズから求めることが可能である。したがって、前記分類は、所望のプロセス結果を構成する、特性、または点群、または特徴、またはフィンガプリント、またはセンサ測定値を記憶する。これは、サポートベクターマシンまたは別の分類によって実現可能である。これは、RL方法がそれに従って行われるところの報酬関数を構成することが可能である。したがって、Qマトリクスは、人間が学習したこの報酬関数に従って最適化される。加重値または調節パラメータは、このようにして学習および最適化することが可能であり、その例は、種々のセンサの加重(QS1、QSn)、制御または観察の目的で使用される特別な特徴の選択(QDA)、種々の閉ループ制御方法に対する所望値の選択(QDR)、または例えば比例方式(P項)、積分方式(I項)、および微分方式(D項)などにおける閉ループ制御装置調節パラメータ(QR1、QRm)である。このようにして、レーザ加工システムの制御特徴、閉ループ制御特徴、または観察特徴が、利用期間の間中にわたって最適化され得る。本発明によれば、レーザ材料加工において強化学習方法または別の機械学習方法の中で適用され得る方法は、以下の通りである:マルコフ決定プロセス(MDP)、Q学習、AHC(adaptive heuristic critic)、SARSA(state action reward state action)アルゴリズム、自己組織化マップ(SOM)、適応共鳴理論(ART)、多変量解析(MVA)、期待値最大化(EM)アルゴリズム、動径基底関数ネットワーク、時系列予測、自動標的認識(ATR)、動径基底関数(RBF)、および同様の方法。
【0084】
(判別解析および閉ループ制御方法)
判別解析(DA)またはFisherの線形判別解析とも呼ばれる線形判別解析(LDA)は、既に説明した主成分解析と同様の機能原則を有する統計学的解析方法である。主成分解析とは対照的に、DAは、分類のクラスメンバーシップをさらに表す。代替的には、DAは、本発明の方法において次元削減のためにも使用することが可能であるが、同時に、次元削減および分類方法の組合せを構成する。
【0085】
したがって、図15に図示されるように、センサデータを記録し、それらを次元削減し、以前に学習したデータの補助により既述の方法を利用してそれらを分類することが可能となる。分類結果は、1つ以上のアクチュエータまたは制御パラメータを制御するために、学習した所望の値の補助による1つ以上の閉ループ制御装置についての実値計算のためのベースとして使用することが可能である。本発明によれば、DAは、レーザ材料加工において他の次元削減方法と組み合わせることが可能であり、それにより、例えば初めに主成分分析を実施し、その後にDAを実施することが可能となる。また、これは、センサデータ入力ベクトルを次元Yから次元Xに削減する(ここで、X<Y)、既述の他の次元削減方法に対しても有効である。また、それらの組合せは、各センサについてそれぞれ異なるものであることが可能である。したがって、統計的独立に従って特徴を抽出する既述の独立成分分析が、音響センサについて特に適している一方で、主成分分析は、画像センサについて特に適している。本発明によれば、他の次元削減方法、すなわち、カーネル主成分分析、局所線形埋め込み法(LLE)、Hessian LLE、Laplacian eigenmaps(ラプラシアン固有マップ)、局所接空間アライメント(LTSA)、SDE(semidefinite embedding)、最大分散展開(MVU)、曲線成分分析(CCA)、DD−HDS(data driven high dimensional scaling)、オートエンコーダ、フィードフォワード人工ニューラルネットワークの特殊な変形、ボルツマンマシン、および同様の原理を利用する全ての方法を、既述のレーザ材料加工システムにおいて使用することが可能である。
【0086】
本発明によれば、特に高速のデータ処理のために、レーザ加工システム内の画像取得ユニットに組み込まれたセルラーニューラルネットワーク(CNN)上において、主成分分析、または他の次元削減方法、または特徴抽出、またはHDR方法を実施することも可能である。CNNは、人工ニューラルネットワークと同様の並列計算ネットワークである。
【0087】
さらに、図16に図示されるように、本発明によれば、高速データ処理のために、次元削減による所望値の補助によりレーザ加工作業を直接的に閉ループ制御することも可能である。その際には、分類は、信号対雑音比の最適化による最良の所望値を決定する役割を果たす。このようにして、学習した分類結果の考慮により、高い適応性と共に、非常に高頻度の制御サイクルを実現することが可能となる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物に対して実施されるべきレーザ加工作業をモニタリングするための方法および装置に関し、かかる装置を有するレーザ加工ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ材料加工においては、工作物が、集束されたレーザ放射によって切断または接合されるが、レーザ切断作業およびレーザ溶接作業の両方に対して、プロセスモニタリングシステムおよびプロセスモニタリングセンサが使用される。例としては、溶接プロセスまたは切断プロセスをモニタリングするために、作用焦点により決定される作業区域または相互作用区域から発せられる放射線を検出するためのセンサが使用される。このコンテクストにおける標準的なものとしては、相互作用区域中のプラズマ形成を観察するための放射線センサ、およびレーザビームと加工されるべき工作物との間の相互作用区域からのレーザの後方反射放射を検出する後方反射センサが挙げられる。さらに、レーザ加工作業をモニタリングするために、加工の際のエッジ溶融および温度プロファイルのモニタリングに使用することが可能な温度センサまたは赤外線センサが使用される。いずれの場合においてもある特定の波長範囲に対する感度を有するフォトダイオードの使用に加えて、レーザ加工作業は、所定の波長範囲における感度を同様に有し得るカメラを介してさらにモニタリングされる。例えば溶融した工作物区域に関するパラメータなどの、レーザ加工作業をモニタリングするための特性を、これらのカメラにより記録される画像の画像処理に基づいて同様に取得することが可能である。
【0003】
モニタリングシステムの第1の目的は、まずプロセス仕様に従って加工品質を分類することである。第2の目的は、プロセスを制御および閉ループ制御することにより、加工品質を向上させることである。今日の産業用システムにおいては、プロセスモニタリングのために使用されるセンサおよびカメラは、検出されたセンサデータと、画像処理およびデータ解析のための方法との補助によって、加工作業の現状の分類を行うために適用される。この場合に使用される方法は、加工作業に対して個別に設定される。記録されたセンサデータにおいて著しい偏差が認められる場合には、現時点における加工作業は、不十分なものとして分類され、適切な閉ループ制御機構が、この状態を解消するために使用される。しかし、この場合において、記録されたセンサデータに関するプロセスパラメータの制御は、該当するセンサの各測定データにのみ関するものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1415755号明細書
【特許文献2】米国特許第5517420号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10103255号明細書
【特許文献4】国際公開第01/39919号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】FARSON D F 他 "INTELLIGENT LASER WELDING CONTROL", PROCEEDINGS OF LASER MATERIALS PROCESSING, CONFERENCE ICALEO.PROCEEDINGS OF INTERNATIONAL CONGRESS ON THE APPLICATIONS OF LASERS AND ELECTRO-OPTICS, XX, XX, vol. 1722, 1 January 1991 (1991-01-01), pages 104-112, XP000490956
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、レーザ加工状況の分類、したがって工作物に対し実施されるべきレーザ加工作業の加工品質の分類を向上させる、工作物に対して実施されるべきレーザ加工作業をモニタリングするための方法および装置を生み出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の方法により、請求項14に記載の制御装置により、および請求項18に記載のレーザ加工ヘッドにより達成される。本発明の有利な改良および展開が、下位クレームに記載される。
【0008】
本発明によれば、工作物に対して実施されるべきレーザ加工作業をモニタリング、制御、または閉ループ制御するための方法であって、以下のステップ、すなわち、レーザ加工作業をモニタリングする少なくとも1つのセンサにより、少なくとも2つの現時点における測定値を検出するステップと、少なくとも2つの現時点における測定値から少なくとも2つの現時点における特徴または特性を決定するステップであって、これらの少なくとも2つの現時点における特徴が一緒になって、特徴空間または特性空間内の現時点におけるフィンガプリントを表す、ステップと、特徴空間内に所定の点集合を与えるステップと、特徴空間内の所定の点集合に対する現時点におけるフィンガプリントの位置を検出することによりレーザ加工作業を分類するステップであり、少なくとも1つのセンサは、様々な露光時間でカメラ画像を記録し、高ダイナミックレンジ(HDR)方法を利用して前記カメラ画像を相互に処理することにより、現時点における測定値としての高コントラスト比を有する画像を生成する、少なくとも1つのカメラユニットを備える、ステップとを含む方法が、提供される。
【0009】
ここで、HDR方法は、レーザ加工作業を実施する場合に、機械加工されるべき工作物の周辺加工表面およびプロセス放射が1つの画像中に同時に視覚化され得るように、カメラ画像を処理するように設計されると有利である。
【0010】
この場合に、有利には、カメラ画像は、カメラユニットの画像センサの複数回のスキャニングによって、複数のカメラによる同時撮像によって、または様々な露光時間での1つのカメラによる連続撮像によって記録される。
【0011】
本発明によれば、少なくとも1つのカメラユニットにより記録されたカメラ画像を処理するステップは、エントロピー方法の補助による、またはカメラ応答関数の補助による、加重方法(重み付け)によって実施される。
【0012】
また、処理されるべきカメラ画像は、レーザ加工作業の前に先立って作動するカメラ、レーザ加工区域を撮像するカメラ、および/またはレーザ加工作業の後に続いて作動するカメラによって記録されると有利である。
【0013】
ここで、工作物を高い値の品質に加工するためには、本発明の方法により検出される「不良」フィンガプリントが、加工作業の際に直ちに解消されると有利であり、本発明の方法は、現時点におけるフィンガプリントが特徴空間の所定の点集合から離れる場合に、少なくとも1つのアクチュエータが、関連するプロセスパラメータにおける変化がフィンガプリントから特徴空間内の所定の点集合の方向に延在する特徴空間内の勾配に相当するように、作動されるように、関連するアクチュエータの少なくとも1つのプロセスパラメータを閉ループ制御するステップを追加的に含むことが有利である。
【0014】
ここで、少なくとも1つの現時点における測定値から現時点における特徴を決定するステップが、主成分分析、多次元尺度構成法、サポートベクターマシン、またはサポートベクター分類などの、データ削減または次元削減のための方法を含むと有利である。センサデータの次元または次元数の削減により、削減されたデータボリュームに基づいて、コンピュータが分類をはるかにより迅速に行うことが可能となり、つまり、例えば、レーザ加工作業の高速制御を実施することも可能となる。
【0015】
しかし、さらに、少なくとも1つの現時点における測定値から現時点における特徴を決定するステップが、人工ニューラルネットワークの補助により実施されることが考えられ、有利である。
【0016】
加工状況に関する間接的な結論を導き出すことをしばしば可能にする測定データをもたらす複数のセンサが使用される場合には、所定の点集合が、学習プロセスを介して特徴空間内に規定されると有利である。
【0017】
この場合に、加工作業を閉ループ制御するためには、特徴空間の勾配場が、前記特徴空間内の前記点ごとの異なる領域のプロセスパラメータであって前記勾配に関してそれら各領域を表すプロセスパラメータ、に応じて決定されると有利である。この特徴空間の勾配は、特徴空間の所定の点のプロセスパラメータを変更することによって、プロセスパラメータに応じて決定される。
【0018】
複数の有益な測定データを包括的にモニタリングし、決定するためには、少なくとも1つのセンサが、特定の波長用のフィルタを備える少なくとも1つのフォトダイオード、固体伝播音響センサおよび空気伝播音響センサ、ならびに適切な表面照明を有する少なくとも1つのカメラユニットを含む群より選択されると有利である。
【0019】
レーザ加工作業の包括的な閉ループ制御を確保するためには、少なくとも1つのアクチュエータが、レーザ出力の制御装置、工作物に対する加工ヘッドの加工速度制御装置、加工レーザビームの焦点の制御装置、工作物からの加工ヘッドの距離の制御装置、および側方オフセットの制御装置を含む群より選択されると有利である。
【0020】
本発明によれば、本発明の方法を実施するための装置であって、少なくとも2つの現時点における測定値を検出するのに適した、レーザ加工作業をモニタリングするための少なくとも1つのセンサと、特徴空間内に現時点におけるフィンガプリントを作成するために、少なくとも2つの現時点における測定値から少なくとも2つの特徴を決定するためのデータ処理ユニットと、特徴空間内の所定の点集合を記憶するためのメモリユニットと、特徴空間内の所定の点集合に対する現時点におけるフィンガプリントの位置を検出することによりレーザ加工作業を評価するのに適した分類ユニットとを備える装置が、さらに提供される。
【0021】
この場合に、閉ループ制御される加工作業において本発明の装置を使用するためには、装置は、現時点におけるフィンガプリントが特徴スペースの点集合から離れる場合に、少なくとも1つのアクチュエータが、関連するプロセスパラメータにおける変化が、フィンガプリントから特徴空間内の所定の点集合の方向に延在する特徴空間内の勾配に相当するように、作動されるように、関連するアクチュエータの少なくとも1つのプロセスパラメータを閉ループ制御するための制御ユニットをさらに有すると有利である。
【0022】
この場合には、少なくとも1つのセンサが、特定の波長用のフィルタを備える少なくとも1つのフォトダイオード、固体伝播音響センサおよび空気伝播音響センサ、ならびに適切な表面照明を有する少なくとも1つのカメラユニットを含む群より選択されると有利である。
【0023】
さらに、少なくとも1つのアクチュエータが、レーザ出力の制御装置、工作物に対する加工ヘッドの加工速度制御装置、加工レーザビームの焦点の制御装置、工作物からの加工ヘッドの距離の制御装置、および側方オフセットの制御装置を含む群より選択されると有利である。
【0024】
さらに、本発明によれば、本発明の装置を備える、レーザビームにより工作物を加工するためのレーザ加工ヘッドが提供される。
【0025】
以下、図面の補助により、例として本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の方法による、工作物の加工作業の必須構成要素を含む流れ図である。
【図2】レーザ加工作業をモニタリングおよび検出するために、本発明の方法において使用されるセンサの概要図である。
【図3】本発明の加工作業において使用される構成要素の大幅に単純化した概略図である。
【図4A】レーザビーム溶接プロセスの際に本発明の方法において使用されるアクチュエータの一部の大幅に単純化した概略図である。
【図4B】レーザビーム切断プロセスの際に本発明の方法において使用されるアクチュエータの一部の大幅に単純化した概略図である。
【図5A】線形次元削減器および非線形次元削減器が使用される、本発明の方法によるフィンガプリントの作成の流れ図である。
【図5B】人工ニューラルネットワークが使用される、本発明の方法によるフィンガプリントの作成の流れ図である。
【図6A】線形次元削減器および非線形次元削減器が使用される、本発明の方法による分類作業の流れ図である。
【図6B】人工ニューラルネットワークが使用される、本発明の方法による分類作業の流れ図である。
【図7】欠陥検出方法を説明する概略図である。
【図8】フィンガプリントおよび特性または特徴のそれぞれの本発明による学習を説明する流れ図である。
【図9】本発明による次元削減方法の流れ図である。
【図10】現時点における加工作業の本発明による評価の流れ図である。
【図11】本発明による新規の制御パラメータの推定の流れ図である。
【図12】本発明による、HDR方法によって処理されるカメラ画像の概略図である。
【図13】本発明のHDR画像シーケンス処理のブロック図である。
【図14】本発明による、レーザ加工作業の際の強化学習方法の利用による分類手順の流れ図である。
【図15】本発明による、レーザ加工作業の際の判別解析方法の利用による分類手順の流れ図である。
【図16】本発明による、レーザ加工作業の際の、次元削減により求められる所望値による閉ループ制御作業の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
これらの図面の種々の図において、互いに一致する構成要素は、同一の参照記号を付される。
【0028】
本発明によれば、機械学習アルゴリズムおよび自己学習アルゴリズムの利用による認知能力を有する、認知レーザ材料加工システムが提供される。これに関連する本発明の方法は、プロセス観察、プロセス制御、およびプロセス閉ループ制御のために、レーザ材料加工において利用することが可能である。
【0029】
システムが、以下の2つのタイプの認知能力を有することが可能である。第1には、観察されるシステムが、例えば自動的に自己学習および自己改良する能力などの認知能力を有するように、外部のオブザーバには見える。第2には、このシステムが、例えばヒトの脳などの自然の有機的組織と同様の様式の認知能力を実装する。
【0030】
本発明のシステムは、レーザ材料加工において利用される欠陥の学習、自発的検出、および自発的補正などの、認知能力を有する。認知能力の利用は、レーザ材料加工の分野においては特に有利である。工作物の分離または接合などの加工作業は、プロセスごとに互いに非常に大きく異なる。
【0031】
初めに各プロセスを手動により個別に設定することが以前より知られている。この場合、プロセスパラメータの設定後に、このプロセスは、単に観察され、対応する様式で手動により適合化される。次に装填される工作物が、例えば汚染されているか、または前回に装填された工作物とは工作物の厚さにおいて異なる場合には、このプロセスは、手動により頻繁に再調節されなければならない。プロセスの変更に対して自動的に適合化させることは、全く不可能であったか、または非常にわずかな程度だけ可能であった。実際に、車両製造業者の、特に製造ラインにおいて同時に複数の車両を製作することを望む車両製造業者により要求されているものは、処理作業に対して迅速かつ適応的に製造システムを適合化させることが可能であるということである。
【0032】
加工作業の迅速な学習と、加工の際の欠陥の検出、補正、および回避とが、本発明のシステムの認知能力により満たされる要件である。
【0033】
図1は、必須の構成要素を含む本発明の流れ図である。これらの構成要素を、以下において段階的に説明する。
【0034】
本発明によれば、プロセス特徴の取得の際に、加工作業に関する全情報が、少なくとも1つのセンサを含むセンサシステムによって検出される。使用されるこれらのセンサは、プロセスに関する多数の測定値および情報を得ることによって、加工作業をモニタリングするセンサの測定データから、以下においては特徴と呼ぶ、そのプロセスのプロセスマップ、プロセス特性、または明確なフィンガプリントの決定を可能にするために採用される。この決定は、特に、測定値の計算、または別の適切な処理、好ましくは電子的な処理によって、実施される。
【0035】
本発明において使用されるセンサの概要が、図2に図示され、これらの適切なセンサを含む本発明のレーザ処理システムの設計が、図3に図示される。
【0036】
レーザ加工作業をモニタリングするための既に周知のセンサと共に、本発明においては、固体伝播ノイズおよび空気伝播ノイズを検出するために追加のセンサが使用される。ノイズを記録するために固体伝播ノイズおよび空気伝播ノイズのそれぞれのための少なくとも2つのセンサを使用することが適切である。さらに、加工において、固体伝播ノイズおよび空気伝播ノイズに関するセンサ信号が、プロセスに応じてさらにフィルタリングされ、増幅され、および適切にスキャニングされる。種々の方向特徴が、空気伝播ノイズの記録に適する。その後、ノイズ源の位置および伝播方向を、音響センサの巧みな配置によって計算することが可能となる。したがって、該当しない源からの干渉ノイズを削減することも、およびバックグラウンドノイズを削減することも、またはアクティブノイズキャンセレーションなどの方法を適用することも可能である。
【0037】
さらに、レーザ処理ヘッドセンサ中には更なるセンサが取り付けられ、それらセンサは、特定波長の放射を検出する役割を果たすと共に、好ましくは、ある特定の波長範囲に対する感度を有するフォトダイオードである。さらに、この場合に、該当するフォトダイオードの上流に、特定の波長範囲を選択するための光学バンドパスフィルタを配置することもまた可能である。これらのセンサの測定値も同様に、検出およびスキャニングされる。
【0038】
さらに、レーザ加工作業、特にレーザ加工区域を観察するカメラが、測定データを得るために使用される。したがって、観察ビーム経路を、加工ヘッドにおいて作業レーザのビーム経路と同軸結合させることにより、レーザ加工区域を撮像する、工程内(イン・プロセス)カメラを使用することが可能である。代替的には、加工ヘッドの外部にあるカメラにより加工作業を記録させることも可能である。同様に、工程前(プレ・プロセス)カメラと呼ばれる事前に作動するカメラと、工程後(ポスト・プロセス)カメラと呼ばれる事後に作動するカメラとにより、レーザ加工作業を記録することも可能である。加工作業に応じて、様々な工作物照明コンセプトが、カメラによる記録に適する。したがって、本発明によれば、照明のために、費用効果が高く、広い波長範囲における放射が可能な発光ダイオードを使用してもよく、また、工作物表面上のカメラ詳細に集束するように、適切な光学装置による様々な波長のレーザを使用することが可能である。「関心領域」、「クオラス(qualas)」、またはジオメトリデータ評価などのデータ処理方法が、カメラデータの前処理に特に適しており、好ましい。さらに、本発明によれば、記録されたカメラ画像のコントラスト比を有利に高める高ダイナミックレンジ(HDR)方法が使用される。このためには、様々に異なる露光時間により複数の画像が記録され、HDR方法により互いに突き合わされ、それにより非常に高いコントラスト比を有する画像が得られる。
【0039】
プロセス特徴取得の品質は、使用されるセンサの個数と共に上昇するが、システムのコストがそれに応じて上がる。したがって、本発明の方法は、複数のセンサの使用に限定されず、例えば工程内カメラなどの1つのみのセンサを使用することによっても実施が可能であることが、認識されるはずである。
【0040】
次に、本発明の方法による、および特定のアクチュエータを使用するプロセス制御を説明する。
【0041】
レーザ材料加工においては、使用される全てのアクチュエータに関して手動により制御プログラムを設計することが普通である。このプロセスの間に、この制御プログラムは、プロセスモニタリングのみを介してモニタリングされるか、またはレーザ切断の際に容量式距離センサ(または複数の容量式距離センサ)などの特定の制御ループの補助により適合化される。
【0042】
それとは対照的に、本発明の方法においては、継続的なプロセス制御に頼っており、さらなる新規のプロセス制御オプションが組み込まれる。
【0043】
図4Aに図示されるように、レーザビーム溶接の加工方法の際には、レーザビーム電力、加工ヘッドと工作物との間の距離、工作物に対する加工ヘッドの速度、および加工レーザ放射の焦点位置が、制御されるか、または閉ループ制御される。
【0044】
図4Bに図示されるように、レーザ切断の加工方法の際には、プロセスガスの供給が、上述のプロセスパラメータと共に、本発明によってさらに追加的に制御されるか、または閉ループ制御される。さらに、両加工方法において、例えば90〜100%の間のレーザ放射強度の変調など、ある特定の周波数にて制御信号の強度を変調することも可能である。この制御信号が判明しているため、センサデータを介して、例えば様々な測定範囲におけるプロセスパラメータに応じたものとしての特徴スペースの勾配場などのようなこのプロセスに関するシステム応答データから回復することが可能である。これらの制御は、適切な線形軸インターフェース、ロボット制御インターフェース、または他の制御インターフェースを介して実現することが可能である。
【0045】
閉ループ制御オプションは、使用されるアクチュエータの個数の増加と共に増加するが、より多数のプロセスパラメータの制御が可能であるため、それに応じてシステムコストが上昇する。したがって、本発明の方法は、この複数のアクチュエータの使用に限定されず、例えばレーザ溶接に関してはレーザ出力制御装置、またはレーザ切断に関してはプロセスガス制御装置などの、1つのみのアクチュエータを使用するだけでも実施が可能であることに留意すべきである。
【0046】
次に、本発明の方法によるレーザ加工作業を分類するステップをさらに詳細に説明する。
【0047】
本発明のレーザ加工システムによる欠陥の自動検出および自動補正を実現するためには、本発明のシステムがアクチュエータ(または複数のアクチュエータ)の駆動の決定を自動的に行うように、センサデータから技術的知識を引き出さなければならない。
【0048】
さらに、システムがそのユーザから教育され得るものであり、さらにそれ自体において学習能力を有する場合には、有利である。認知レーザ材料加工を実施するためには、本発明によれば、システムが、使用される全てのセンサから重要な特徴を既に自動的に認識しているか、またはそれらの特徴を自動的に検出および学習し、その後プロセス制御に関する決定を行うことが可能となる。次に、本発明の3つのステージ、具体的には、プロセス環境の学習、現時点におけるプロセス結果の分類、およびプロセスの制御または閉ループ制御を説明する。
【0049】
初めに、プロセス環境の学習を説明する。プロセスを認識するためには、リファレンスラン(参照用実行)または訓練加工が初めに必要となる。各加工作業は、所望の結果およびそこからのある偏差を有する。試験加工またはリファレンスランは共に、プロセス制御に対するシステムの結果を、さらに理想的にはプロセス制御に対するシステムの応答及び遷移を含まなければならない。例えば、Xmmの規定の溶接シーム幅およびYcmの規定の溶接シーム長さで、ステンレス鋼重ね継手において溶接シームを実現するためには、少なくとも1度のリファレンスランを実施しなければならない。このリファレンスランにおいては、プロセスパラメータの両方向への規定のオーバーシュートおよび仕様上のオーバーシュートの両方が含まれるように、少なくとも1つのプロセスパラメータが、変更される。
【0050】
この場合には、本発明によれば、人間であるシステムオペレータが、プロセスパラメータに応じてレーザ出力を上昇させつつリファレンスランを実施することが可能となる。このプロセスにおいては、このプロセスパラメータに対して、上方仕様境界および下方仕様境界がもたらされ、オーバーシュートする。下方仕様境界が、例えば底部溶け込みであり、上方仕様境界が、シーム崩壊である場合には、底部溶け込みを生じさせないようなレーザ出力よりリファレンスランを開始することが可能である。リファレンスランの際に、レーザ出力は、シーム崩壊が生じるまで継続的に上昇するように制御される。このプロセスは、既述のプロセスセンサ(または複数のプロセスセンサ)により観察される。このセンサは、適切な測定値を記録し、プロセス環境を学習するために使用される。
【0051】
別の例は、グリス塗布された工作物およびグリス塗布されない工作物の2つの装填物間における製造問題に関する。この場合も、リファレンスランの際の学習のために、画定境界が含まれることがやはり必要となる。オペレータが、認知的レーザ材料加工システムに画定境界の位置を通知することにより、本発明のシステムは、これらの領域を識別することが可能となる。
【0052】
本発明によれば、プロセス環境を学習するために、以下に説明する2つの異なる方法が用意される。
【0053】
図5Aに図示されるように、線形次元削減器および非線形次元削減器、ならびに主成分分析(PCA)、MDS(多次元尺度構成法)、LLE(局所線形埋め込み法)、およびSVM(サポートベクターマシン)などの様々な学習方法を、プロセス環境の学習のために使用することが可能である。これらの方法は、組合せにおいて、およびそれら個々において利用することができる。さらに、以下においてさらに説明するように、プロセス環境の学習のために判別解析を利用することが可能である。
【0054】
図5Bに図示されるように、プロセス環境の学習に対する別のアプローチは、人工ニューラルネットワーク(ANN)を利用するものである。
【0055】
単純化して説明すると、第1のアプローチにおいては、大量のセンサデータが、統合され、削減される。この場合に、可能な限り全ての重要な特徴が保持され、冗長的な情報は無視される。最後には、あらゆる観察される例について、特徴のベクトルおよび/またはマトリクスが、センサの測定値から求められているが、それらのデータボリュームは、大幅に削減されている。これは、プロセスのフィンガプリントまたは特性と呼ぶことも可能なこのマトリクスまたはベクトルを用いてプロセス状況を一意的に分類することを可能にするためである。
【0056】
このプロセスは、人工ニューラルネットワークとは異なる。なぜならば、この場合には、このネットワークは訓練され、学習した情報が、その後このネットワーク内に存在し、次いでその結果を分類することが可能となるからである。したがって、出力ニューロンは、初めに、訓練されたデータの補助による分類を利用する。その後、この分類の補助により、閉ループ制御を実施することが可能となる。
【0057】
加工作業のモニタリングでは、以前に学習した所望の領域と比較される、現時点におけるプロセス結果を取得することが必要である。この現時点におけるプロセス結果は、特徴スペース中の点集合と見なすことが可能であり、該当する場合には、図6Aおよび図6Bに図示されるようにプロセスパラメータに適合化される。プロセスパラメータの適合化は、所望の領域から出現する前に、実施することが可能であり、既に実施されているべきである。この場合に、システムを閉ループ制御するために使用される、所定の点集合は、閉ループ制御の場合には、センサシステムの現時点のフィンガプリントが、所望の領域のエッジ領域に入るときには所定の点集合から既に離れるように、適合化することが可能である。
【0058】
次に、第1の方法を利用した現時点のプロセス結果の分類を説明する(図6A)。この認知的レーザ材料加工システムは、メモリのデータベース内に、ベクトルもしくはマトリクスの形態にて、学習したプロセス環境、学習した特徴、または学習したフィンガプリントを既に記憶している。このプロセスから現時点において得られつつあるセンサの測定値は、初めに、データボリュームにおいて削減されなければならず、比較のために同一のデータ空間、すなわち特徴ベクトルまたはフィンガプリントとしての特徴空間内に入れなければならない。このようにして、現時点におけるフィンガプリントが、特徴空間内の削減されたセンサデータベクトルまたはマトリクスとして得られ、特徴空間内の学習した点集合と比較される。このようにして、現時点において習得されたデータ点が、ある特定の特徴点、特徴スポット、または特徴項目に最も近くなる見込みを得ることが可能となる。このようにして、この特徴点が、依然として所望の領域内にあるか否かが認識され、さらに、プロセスパラメータに対しておそらく必要である補正が認識される。
【0059】
人工ネットワーク(図6B)による現時点におけるプロセス結果の分類は、訓練されたネットワークによって実施される。分類結果は、プロセスが依然として所望の領域内にあるか否かであり、その傾向に関して、プロセスパラメータが適合化されることとなる。
【0060】
本発明の方法によるプロセスの制御または閉ループ制御は、以下のように実施される。分類結果により、制御ユニットは、適切なアクチュエータが作動されるべき方向および強度を既に認識している。様々な閉ループ制御方法を利用することが可能である。したがって、例えば、所望の特徴ベクトルと結果ベクトルとの間の測地的距離の最短化、またはカルマンフィルタおよび平均二乗誤差の最小化を用いた閉ループ制御方法の利用が可能である。さらに、「サポートベクター」分類により多次元特徴空間または特徴空間から調整傾向を決定することが可能である。その場合、閉ループ制御装置は、予め規定された安全領域をオーバーシュートすることが不可能となる。
【0061】
本発明は、複数の方法変種において適用することが可能であるが、それらの中のいくつかをここでは提示する。
【0062】
プロセスモニタリングにおいては、いくつかの欠陥(エラー)を明確に論じることが重要である。また、この場合には、認知的レーザ材料加工の利用により、良好な結果がもたらされる。欠陥検出方法においては(図7に図示されるように)、初めに、オペレータが故意に欠陥を生じさせ、それにより認知システムがこれを学習することが可能となることが必要である。システムは、一度この欠陥を学習すると、この欠陥を正確に検出することが可能となる。これは、以下の例によって説明される。この目的は、レーザ切断プロセスの際の切断エッジ上のドロスまたはバリの形成を、様々なセンサ、とりわけ工程内カメラを含むプロセスセンサシステムの補助によって検出することである。オペレータは、プロセスガスを除いては一定の制御パラメータによりリファレンスランを実施する。このプロセスガスは、ドロスが明確に得られるまで、リファレンスランの際に制御装置を介してオペレータにより減少され得る。リファレンスランが終了すると、認知的レーザ材料加工システムは、センサデータを利用して、PCA、主成分分析、または提示される次元削減の他の方法の組合せを介して、適切な主成分を計算する。次に、オペレータは、ドロスが得られた工作物上の区域をシステムに通知する。切断エッジ上においてドロスが得られた位置に関する情報、およびセンサデータから対応する主成分が計算された点に関する情報を利用することにより、引き続いて認知システムは、もたらされるドロスに対する収集された特徴またはフィンガプリントをそれぞれ含む、対応する成分、ベクトル、またはマトリクスを計算することが可能となる。このマシンが、その作業を継続する場合には、プロセスの際のマトリクス−ベクトル代数によって、現時点におけるセンサデータから、学習した欠陥(エラー)が生じたか否かを計算することが可能となり、これをオペレータに示すことが可能となる。
【0063】
同じ方法を利用して、例えばレーザビーム溶接またはレーザ切断の際に生じる効果を、すなわち、融合不良(フォールスフレンド(false friend))、シーム崩壊(不十分な埋め)、完全溶け込み(ルート融合)、切断幅X、溶け込み深さ状況、切断エッジの凹凸、焼損効果、溶接シーム幅Y、溶接状況、ルート溶け込み状況、接合部断面状況、重ね継手におけるギャップ、突合せ継手におけるギャップ、側方オフセット、イジェクション(ドロップアウト)、孔、穴を検出することが可能である。
【0064】
また、本発明は、レーザ材料加工システムの適合化を、以前は要した装填物交換を簡易化するために使用することも可能である。新規装填物の工作物は、例えば材料厚さまたは汚染度合いなど、若干変化した特性を有する。再度、初めに学習フェーズが、その後に分類フェーズが実施される。閉ループ制御プロセスは、分類フェーズが終わり次第実施することが可能である。しかし、例えば装填物交換などの結果として生じるプロセス変更のために新規の制御パラメータを推定することも可能である。
【0065】
図8によれば、プロセスセンサ(または複数のプロセスセンサ)の測定値が、リファレンスランにより学習フェーズにおいて取得される。変更される1つの制御パラメータを除いては一定であるプロセス制御パラメータが、再度リファレンスランとして設定される。例としては、レーザビーム溶接プロセスの場合には、レーザ出力が、リファレンスランの際に継続的に上昇され得る。取得されたデータは、次元削減器の補助により、認知的レーザ材料加工システムによって処理される(図9を参照)。使用される各センサの出力データは、初めに適切なローパスの補助によりフィルタリングされる。その後、n主成分が、主成分分析を介して出力される。次いで、データは、正規化され、その平均値から解放される。取得される各時間セグメントに関する使用されるセンサについての特徴値データが、この処理ステップの最後に得られる。対応する特徴またはフィンガプリントおよびそれらのマッピングルールが、特徴マッピングルールのためのデータベースに記憶される。次に、このシステムのユーザが、工作物上において、所望の結果に対応する区域を規定する。この規定は、ベクトルに変換され、そのベクトルの補助により、分類装置を訓練することが可能となる。この方法においては、分類の実施が可能となるように、サポートベクターマシンが使用される。サポートベクター分類の方法が、この場合には適用される。これは、ユーザの仕様に基づいて特徴空間の多次元分離を実施する、所望のプロセス結果と望ましくないプロセス結果とを分類するための数学的方法を表す。特徴マッピングルールを含むデータベースは、マッピングルール(または複数のマッピングルール)を表し、分類データベースは、特徴空間の分離を表す。
【0066】
次に、現時点における加工作業の分類および/または評価に対する、学習したプロセス知識の適用(図10)を説明する。学習フェーズの後に、認知レーザ材料加工システムが、以前に学習したユーザ希望に従って加工作業をモニタリングする。センサデータが、特定の特徴マッピングルールの仕様に基づき次元削減される。出力データは、所定の特徴空間または特徴空間内に配置される。サポートベクター分類方法によりオペレータが学習した分類データは、現時点における加工作業を評価するという目的に役立つ。このプロセスを閉ループ制御するために、プロセス制御パラメータの可能性を介して、現時点におけるプロセス結果がユーザにより規定された所望の領域内に位置するか否か、およびいずれの傾向が好ましいものとなるかに関して、評価を実行することが可能である。
【0067】
次に、装填物交換により小さなプロセス変更が生じた場合における、新規の制御パラメータまたはプロセスパラメータの推定を説明する。例えば装填物交換の場合における工作物特定の若干の変化などにより、加工作業が、ある一定の期間にわたって修正される場合には、新規の制御パラメータを推定することが可能である。このためには、前回のリファレンスラン1に加えて新規のリファレンスラン2を実施することが必要となる。同一の制御パラメータが、リファレンスラン1およびリファレンスラン2に対して適用される。
【0068】
図11に図示されるように、リファレンスラン2のセンサのセンサデータまたは測定値が、再度次元削減される。次に、マッピングルールが、リファレンスラン1の削減されたセンサデータに適用される。リファレンスラン2の際のリファレンスラン1からの特徴の発生可能性が、サポートベクター分類の本発明の方法を利用して計算される。したがって、認知レーザ材料加工システムは、工作物上の位置から、またはこの時点で使用される制御パラメータから、および特徴の発生可能性から、新規プロセスにおけるいずれの制御パラメータが、以前の加工作業におけるような非常に類似したまたは実質的に同一の結果をもたらすかを計算することが可能となる。
【0069】
先に概説した方法におけるように、特徴は、特徴ベースの閉ループ制御方法におけるプロセスデータから求められる。これらの特徴は、制御パラメータが適合化されるべきであるか否かに関する対応する評価を用いて、初回のリファレンスランおよび定期的に繰り返されるリファレンスランを介してオペレータによって分類される。これらの対応する特徴および関連する分類は、適合化の提案に関して適切である場合には、データベースに記憶される。したがって、オペレータは、一定の間隔でシステムにアクセスし、それによりシステムを教育する。したがって、システムは、現時点におけるプロセス結果が依然として規定の特徴空間内に位置するか否か、および、システムが制御パラメータの適合化を実施すべきであるか否かを、初めに確認することが可能となる。したがって、学習した特徴および適合化の提案は、時間の経過と共に増加し、システムは、加工において向上し続ける。類似の特徴および適合化提案は、特徴の過多を回避するために、再度突き合わせることが可能である。
【0070】
次に、本発明の高ダイナミックレンジ(HDR)方法をより正確にさらに説明する。この方法においては、画像センサが、異なる時点において、画像ごとに複数回、すなわち少なくとも2回スキャニングされるか、または、複数の画像、すなわち2つ、3つ、またはそれ以上の画像が、様々な露光時間でもしくは複数のカメラで撮像され、その後に、少なくとも1つの画像を形成するように互いに処理される。この処置により、単一画像において周辺の加工表面、プロセス放射、および蒸気毛管またはキーホールを同時に視覚化する、画像、画像シーケンス、または映像の記録が可能となる。レーザ加工作業を撮像する場合には、前記区域の強度値が、1つの画像において前記方法により視覚化することが可能な広範囲にわたって分布される。このように生成される画像または画像シーケンスは、プロセスモニタリングシステムまたは比較的低い強度分解能を有する評価ユニットもしくは制御ユニットとの組合せにおいて、画面または表示装置上に表示するために、グレースケール値またはグレースケールトーンマッピング方法を介して適合化される様式で表示される。
【0071】
図12および図13に図示されるように、本発明によれば、複数の画像または画素アレイが、HDR方法、または加工表面、プロセス放射、および蒸気毛管(キーホール)をさらに良好に視覚化するための方法を実施するために、互いに処理される。
【0072】
種々の画像は、画像センサの複数回のスキャニングにより、または複数のカメラによる同時撮像により、または多重露光技術と呼ばれる、1つのカメラによるものであるが異なる露光時間による連続撮像により得ることが可能である。個々の記録された画像の処理は、様々なタイプの方法により実施することが可能である。これは、簡単な場合には、少なくとも2つの記録された画像から画像シーケンスの中の複数の画像の個々の画像値を合計し平均化することを含む。さらに効果的な撮像を得るためには、少なくとも2つの記録された画像の画像シーケンスからの画像値または画素を、加重平均することが可能である。
【0073】
加重方法としては、エントロピー方法を、情報コンテンツによる加重のために使用することが可能であり、または、カメラ応答関数を考慮して加重平均を実施することが可能である。これは、表面当たりの実際の放射エネルギーまたは実現可能な放射エネルギーに関して推論を導き出すことを要する。これは、以下の関数によって得られる。
【数1】
さらに、個々の放射エネルギーに対する加重は、
【数2】
となる。
ここで、iは、複数の記録された画像の画像シーケンスからの画像インデックスであり、jは、画素位置であり、tiは、記録された画像iの露光時間またはスキャニング時間であり、yijは、位置jにおける記録された画像iの画素の強度値であり、I-1( )は、逆カメラ応答関数であり、xjは、画素位置jにおける表面当たりの推定放射エネルギーであり、wijは、信頼性モデルの加重関数である。本発明は、明示的には、特にレーザ加工ヘッドおよび/またはそれに接続される本発明のプロセスモニタリングシステムの補助による、材料の分離または接合などの加工方法における、これらの説明されたHDR画像処理方法の使用に関する。
【0074】
次に、使用されるセンサおよび分類方法をより正確にさらに説明する。
【0075】
センサデータ出力を可能にする任意のセンサを、特にセンサシステムとして使用することが可能である。特に、これらは、例としては、マイクロフォンまたは固体伝播音響センサ、カメラ、フォトダイオード、プローブ、技術評価信号およびモニタリング信号、ならびに例えばレーザ出力などのアクチュエータパラメータである。
【0076】
特徴抽出および次元削減。この場合、可能な限りデータボリュームを削減し、情報コンテンツを維持するあらゆる方法を利用することが可能である。ここでは、これらは、特に、主成分分析(PCA)、独立成分分析(ICA)、ウェーブレット解析、フーリエ解析、高速フーリエおよびラプラス解析、特徴・対象認識方法、局所線形埋め込み法、人工ニューラルネットワーク、および多次元尺度構成法等々である。
【0077】
削減されたデータボリュームは、より高次元の空間から求められた多次元空間内の点群として解釈することが可能である。これらを削減することにより、有限時間において、これらのデータを以前に記録され分類されたおよび/または学習されたデータボリュームと比較することが可能となる。この分類において、新規のセンサデータが、記録されたセンサデータに既に類似するものであるか否かを確認することが可能となり、この類似性に可能性を割り当てることが可能となる。以前に記録されたデータボリュームの類似可能性についての規定のしきい値をオーバーシュートする場合には、その条件下において以前に記憶された解決アプローチ(手法)または制御アプローチまたは閉ループ制御アプローチに従うことが可能である。以前に学習したデータボリュームに関する類似可能性についてのしきい値をオーバーシュートする場合には、システムは、新たな状況にある。
【0078】
新たな状況に対する挙動は、人間であるオペレータに対する問い合わせによって学習されるか、または、以前のデータおよび解決ストラテジから類似原則を利用して試され得る。この場合には、対象が設定されると、引き続いて自己開発アプローチを試した後に、目的が果たされたか否かを確認し、選択された解決アプローチを評価する自己学習アルゴリズムが使用される。以下の方法、すなわち、サポートベクターマシン、サポートベクター分類、ファジー理論、情報ファジーネットワーク、ファジーK−最近傍分類器、K−最近傍分類器、強化学習、ベイジアンネットワークおよびベイジアン知識データベース、naiveベイジアン分類器、隠れマルコフ連鎖、人工ニューラルネットワークおよび逆伝播法、回帰分析、遺伝子プログラミング、または決定木は、分類のために、経験値および解決ストラテジの節減のために、ならびに自己学習アルゴリズムとして利用することが可能である。
【0079】
分類、または、閉ループ制御装置もしくはアクチュエータの制御の後に得られる解決ストラテジは、単純な設計のものであることが可能であるが、データ取得タイプを制御することも可能である。例えば既知のデータボリュームに対するしきい値に達しない場合などには、データ取得タイプを変更することが可能である。例えば、これは、新たな周波数帯にウェーブレット解析を適合化させることにより、またはPCAからICAに変更することにより、実施することが可能である。
【0080】
(高ダイナミックレンジ方法(HDR方法))
HDR方法は、様々なコントラスト比を有する複数の記録された画像または画像値マトリクスおよびベクトルから比較的高いコントラスト比を計算するために利用することが可能である。このために、シーンの撮像または観察の際に、様々な露光時間で複数の画像を記録することが可能であり、その後、そこから、改善したコントラスト比を有する画像または画像シーケンスを計算することが可能となる。様々なコントラスト比を有する画像シーケンスを生成するためには、いわゆる多重露光方法を利用して、様々な露光時間で複数の画像を記録することが可能である。
【0081】
しかし、露光時間の間に画素値を複数回スキャニングすることも可能である。様々なコントラスト比を有する画像シーケンスが、露光時間の間にこのようにして生成される。さらに、この場合には、画像センサ上に位置し、画素に対応する電荷は、一度回収することが可能であり、その後2度目に回収することは不可能である。しかし、非破壊読出し(NDRO)とも呼ばれる非破壊読取り、またはマルチスロープ読出し、またはシングルスロープ読出し、またはクールドイメジャ(cooled imager)、または電荷注入撮像(CIS)、またはTFC(thin film on CMOS)、または能動画素センサ(APS)、またはシングルスロープサンプリングもしくは相関二重サンプリング(CDS)などの技術が存在し、これらにより、例えばCMOSチップの場合などには、問い合わされる電荷値がスキャニングによって変わることなく、単一の露光期間の間の電荷の複数の問い合わせを行うことが可能になる。本発明によれば、これらの技術は、レーザ加工作業を観察することにより、観察方法または制御方法を実施するために、使用することが可能である。HDR方法を利用して、実施すべきレーザ溶接作業の際の、プロセス放射、蒸気毛管(キーホール)、溶融プール、溶接シームジオメトリ、および溶接シームガイダンスの観察および解消を同時に行うことが可能であり、または、レーザ切断作業の実施中の界面、切断エッジ、プロセス放射、さらにドロス形成、およびドロスジオメトリの観察および解消を同時に行うことが可能である。適切な場合には、これら両方の場合において、(やはり図12に図示されるように)機械加工すべき工作物に対して投射されるレーザ線を観察することが可能である。
【0082】
(強化学習(RL))
強化学習(RL)は、機械学習の分野を示す。これは、報酬を最大化するためにシステムまたはエージェントが環境に対して適用される方法を表す。RLは、この場合には、システムアクションプランもしくはアクションに対する1つ以上のシステム状況または状況に対して、マッピングルールまたはポリシーを探索する。RLのポリシーは、本発明によれば、レーザ加工作業の自己改善制御および観察のために使用することが可能である。
【0083】
図14は、RLをどのようにレーザ加工作業に組み込むことが可能であるかについての1つの可能なポリシーを示す。学習されることとなる値は、マトリクスQによって記号表示される。Qマトリクスは、成分QS1、QSn、QSA、QDR、QR1、QRmから構成され、これらは、1つ以上の値を含むことが可能である。これらの成分は、開始値により初期化され、RL方法に従って最適化される。この最適化は、アクションが実行され、報酬関数により評価されることにより行われ、この評価により、批評家が役者を評価し、役者が自身の演技を適合化させるという、演劇を連想させるような方式で、Qマトリクスの値を修正する。前述のように、適切な分類を含む点群は、リファレンスランにおける人間である専門家によって、または学習フェーズから求めることが可能である。したがって、前記分類は、所望のプロセス結果を構成する、特性、または点群、または特徴、またはフィンガプリント、またはセンサ測定値を記憶する。これは、サポートベクターマシンまたは別の分類によって実現可能である。これは、RL方法がそれに従って行われるところの報酬関数を構成することが可能である。したがって、Qマトリクスは、人間が学習したこの報酬関数に従って最適化される。加重値または調節パラメータは、このようにして学習および最適化することが可能であり、その例は、種々のセンサの加重(QS1、QSn)、制御または観察の目的で使用される特別な特徴の選択(QDA)、種々の閉ループ制御方法に対する所望値の選択(QDR)、または例えば比例方式(P項)、積分方式(I項)、および微分方式(D項)などにおける閉ループ制御装置調節パラメータ(QR1、QRm)である。このようにして、レーザ加工システムの制御特徴、閉ループ制御特徴、または観察特徴が、利用期間の間中にわたって最適化され得る。本発明によれば、レーザ材料加工において強化学習方法または別の機械学習方法の中で適用され得る方法は、以下の通りである:マルコフ決定プロセス(MDP)、Q学習、AHC(adaptive heuristic critic)、SARSA(state action reward state action)アルゴリズム、自己組織化マップ(SOM)、適応共鳴理論(ART)、多変量解析(MVA)、期待値最大化(EM)アルゴリズム、動径基底関数ネットワーク、時系列予測、自動標的認識(ATR)、動径基底関数(RBF)、および同様の方法。
【0084】
(判別解析および閉ループ制御方法)
判別解析(DA)またはFisherの線形判別解析とも呼ばれる線形判別解析(LDA)は、既に説明した主成分解析と同様の機能原則を有する統計学的解析方法である。主成分解析とは対照的に、DAは、分類のクラスメンバーシップをさらに表す。代替的には、DAは、本発明の方法において次元削減のためにも使用することが可能であるが、同時に、次元削減および分類方法の組合せを構成する。
【0085】
したがって、図15に図示されるように、センサデータを記録し、それらを次元削減し、以前に学習したデータの補助により既述の方法を利用してそれらを分類することが可能となる。分類結果は、1つ以上のアクチュエータまたは制御パラメータを制御するために、学習した所望の値の補助による1つ以上の閉ループ制御装置についての実値計算のためのベースとして使用することが可能である。本発明によれば、DAは、レーザ材料加工において他の次元削減方法と組み合わせることが可能であり、それにより、例えば初めに主成分分析を実施し、その後にDAを実施することが可能となる。また、これは、センサデータ入力ベクトルを次元Yから次元Xに削減する(ここで、X<Y)、既述の他の次元削減方法に対しても有効である。また、それらの組合せは、各センサについてそれぞれ異なるものであることが可能である。したがって、統計的独立に従って特徴を抽出する既述の独立成分分析が、音響センサについて特に適している一方で、主成分分析は、画像センサについて特に適している。本発明によれば、他の次元削減方法、すなわち、カーネル主成分分析、局所線形埋め込み法(LLE)、Hessian LLE、Laplacian eigenmaps(ラプラシアン固有マップ)、局所接空間アライメント(LTSA)、SDE(semidefinite embedding)、最大分散展開(MVU)、曲線成分分析(CCA)、DD−HDS(data driven high dimensional scaling)、オートエンコーダ、フィードフォワード人工ニューラルネットワークの特殊な変形、ボルツマンマシン、および同様の原理を利用する全ての方法を、既述のレーザ材料加工システムにおいて使用することが可能である。
【0086】
本発明によれば、特に高速のデータ処理のために、レーザ加工システム内の画像取得ユニットに組み込まれたセルラーニューラルネットワーク(CNN)上において、主成分分析、または他の次元削減方法、または特徴抽出、またはHDR方法を実施することも可能である。CNNは、人工ニューラルネットワークと同様の並列計算ネットワークである。
【0087】
さらに、図16に図示されるように、本発明によれば、高速データ処理のために、次元削減による所望値の補助によりレーザ加工作業を直接的に閉ループ制御することも可能である。その際には、分類は、信号対雑音比の最適化による最良の所望値を決定する役割を果たす。このようにして、学習した分類結果の考慮により、高い適応性と共に、非常に高頻度の制御サイクルを実現することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物に対して実施されるべきレーザ加工作業をモニタリングするための方法であって、
前記レーザ加工作業をモニタリングする少なくとも1つのセンサにより、少なくとも2つの現時点における測定値を検出するステップと、
前記少なくとも2つの現時点における測定値から少なくとも2つの現時点における特徴を決定するステップであって、前記少なくとも2つの現時点における特徴が一緒になって、特徴空間内の現時点におけるフィンガプリントを表す、ステップと、
前記特徴空間内に所定の点集合を与えるステップと、
前記特徴空間内の前記所定の点集合に対する前記現時点におけるフィンガプリントの位置を検出することにより前記レーザ加工作業を分類するステップであって、前記少なくとも1つのセンサは、様々に異なる露光時間で複数のカメラ画像を記録し、高ダイナミックレンジ(HDR)方法を利用して前記カメラ画像を相互に処理することにより、現時点における測定値としての高コントラスト比を有する画像を生成する、少なくとも1つのカメラユニットを備える、ステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記HDR方法は、レーザ加工作業を実施する場合に、機械加工されるべき工作物の周辺加工表面およびプロセス放射が1つの画像中に同時に視覚化され得るように、前記カメラ画像を処理するように設計されることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記複数のカメラ画像は、前記カメラユニットの画像センサの複数回のスキャニングによって、複数のカメラによる同時撮像によって、または1つのカメラによる様々な露光時間での連続撮像によって記録されることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのカメラユニットにより前記記録された複数のカメラ画像を処理する前記ステップは、エントロピー方法の補助による、またはカメラ応答関数の補助による加重方法によって実施されることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の方法であって、処理されるべき前記複数のカメラ画像は、前記レーザ加工作業の前に先立って作動するカメラ、前記レーザ加工区域を撮像するカメラ、および/または前記レーザ加工作業の後に続いて作動するカメラによって記録されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記請求項のうちのいずれか一項に記載の方法であって、前記現時点におけるフィンガプリントが、前記特徴空間の前記所定の点集合を離れる場合に、前記少なくとも1つのアクチュエータが、前記関連するプロセスパラメータにおける変化が前記フィンガプリントから前記特徴空間内の前記所定の点集合の方向に延在する前記特徴空間内の勾配に相当するように、作動されるように、関連するアクチュエータの少なくとも1つのプロセスパラメータを閉ループ制御するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記請求項のうちのいずれか一項に記載の方法であって、少なくとも1つの現時点における測定値から現時点における特徴を決定する前記ステップは、主成分分析、多次元尺度構成法、サポートベクターマシン、またはサポートベクター分類などの、データ削減または次元削減のための方法を含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の方法であって、少なくとも1つの現時点における測定値から現時点における特徴を決定する前記ステップは、人工ニューラルネットワークの補助により実施されることを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記請求項のうちのいずれか一項に記載の方法であって、前記所定の点集合は、学習プロセスを介して前記特徴空間内に規定されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記請求項のうちのいずれか一項に記載の方法であって、前記特徴空間の勾配場が、前記特徴空間内の前記点ごとの異なる領域のプロセスパラメータであって前記勾配に関してそれら各領域を表すプロセスパラメータ、に応じて決定されることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記特徴空間の前記勾配は、前記特徴空間の所定の点のプロセスパラメータを変更することによって、前記プロセスパラメータに応じて決定されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記請求項のうちのいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのセンサは、特定の波長用のフィルタを備える少なくとも1つのフォトダイオード、固体伝播音響センサおよび空気伝播音響センサ、ならびに適切な表面照明を有する少なくとも1つのカメラユニットを含む群より選択されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記請求項のうちのいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのアクチュエータは、レーザ出力の制御装置、前記工作物に対する加工ヘッドの加工速度制御装置、加工レーザビームの焦点の制御装置、前記工作物からの前記加工ヘッドの距離の制御装置、および側方オフセットの制御装置を含む群より選択されることを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記各請求項に記載の工作物に対して実施されるべきレーザ加工作業をモニタリングするための方法を実施するための装置であって、
少なくとも2つの現時点における測定値を検出するのに適した、前記レーザ加工作業をモニタリングするための少なくとも1つのセンサと、
特徴空間内に現時点におけるフィンガプリントを作成するために、前記少なくとも2つの現時点における測定値から少なくとも2つの特徴を決定するためのデータ処理ユニットと、
前記特徴空間内の所定の点集合を記憶するためのメモリユニットと、
前記特徴空間内の前記所定の点集合に対する前記現時点におけるフィンガプリントの位置を検出することにより前記レーザ加工作業を評価するための分類ユニットと
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、前記現時点におけるフィンガプリントが、前記特徴スペースの前記点集合から離れる場合に、前記少なくとも1つのアクチュエータが、前記関連するプロセスパラメータにおける変化が前記フィンガプリントから前記所定の点集合の方向に延在する前記特徴空間内の勾配に相当するように、作動されるように、関連するアクチュエータの少なくとも1つのプロセスパラメータを制御するための制御ユニットをさらに有することを特徴とする、装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の装置であって、前記少なくとも1つのセンサは、特定の波長用のフィルタを備える少なくとも1つのフォトダイオード、固体伝播音響センサおよび空気伝播音響センサ、ならびに適切な表面照明を有する少なくとも1つのカメラユニットを含む群より選択されることを特徴とする、装置。
【請求項17】
請求項14、15、または16のいずれか一項に記載の装置であって、前記少なくとも1つのアクチュエータは、レーザ出力の制御装置、前記工作物に対する加工ヘッドの加工速度制御装置、加工レーザビームの焦点の制御装置、前記工作物からの前記加工ヘッドの距離の制御装置、および側方オフセットの制御装置を含む群より選択されることを特徴とする、装置。
【請求項18】
請求項14から17のうちのいずれか一項に記載の装置を有することを特徴とする、レーザビームにより工作物を加工するためのレーザ加工ヘッド。
【請求項1】
工作物に対して実施されるべきレーザ加工作業をモニタリングするための方法であって、
前記レーザ加工作業をモニタリングする少なくとも1つのセンサにより、少なくとも2つの現時点における測定値を検出するステップと、
前記少なくとも2つの現時点における測定値から少なくとも2つの現時点における特徴を決定するステップであって、前記少なくとも2つの現時点における特徴が一緒になって、特徴空間内の現時点におけるフィンガプリントを表す、ステップと、
前記特徴空間内に所定の点集合を与えるステップと、
前記特徴空間内の前記所定の点集合に対する前記現時点におけるフィンガプリントの位置を検出することにより前記レーザ加工作業を分類するステップであって、前記少なくとも1つのセンサは、様々に異なる露光時間で複数のカメラ画像を記録し、高ダイナミックレンジ(HDR)方法を利用して前記カメラ画像を相互に処理することにより、現時点における測定値としての高コントラスト比を有する画像を生成する、少なくとも1つのカメラユニットを備える、ステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記HDR方法は、レーザ加工作業を実施する場合に、機械加工されるべき工作物の周辺加工表面およびプロセス放射が1つの画像中に同時に視覚化され得るように、前記カメラ画像を処理するように設計されることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記複数のカメラ画像は、前記カメラユニットの画像センサの複数回のスキャニングによって、複数のカメラによる同時撮像によって、または1つのカメラによる様々な露光時間での連続撮像によって記録されることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのカメラユニットにより前記記録された複数のカメラ画像を処理する前記ステップは、エントロピー方法の補助による、またはカメラ応答関数の補助による加重方法によって実施されることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の方法であって、処理されるべき前記複数のカメラ画像は、前記レーザ加工作業の前に先立って作動するカメラ、前記レーザ加工区域を撮像するカメラ、および/または前記レーザ加工作業の後に続いて作動するカメラによって記録されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記請求項のうちのいずれか一項に記載の方法であって、前記現時点におけるフィンガプリントが、前記特徴空間の前記所定の点集合を離れる場合に、前記少なくとも1つのアクチュエータが、前記関連するプロセスパラメータにおける変化が前記フィンガプリントから前記特徴空間内の前記所定の点集合の方向に延在する前記特徴空間内の勾配に相当するように、作動されるように、関連するアクチュエータの少なくとも1つのプロセスパラメータを閉ループ制御するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記請求項のうちのいずれか一項に記載の方法であって、少なくとも1つの現時点における測定値から現時点における特徴を決定する前記ステップは、主成分分析、多次元尺度構成法、サポートベクターマシン、またはサポートベクター分類などの、データ削減または次元削減のための方法を含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の方法であって、少なくとも1つの現時点における測定値から現時点における特徴を決定する前記ステップは、人工ニューラルネットワークの補助により実施されることを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記請求項のうちのいずれか一項に記載の方法であって、前記所定の点集合は、学習プロセスを介して前記特徴空間内に規定されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記請求項のうちのいずれか一項に記載の方法であって、前記特徴空間の勾配場が、前記特徴空間内の前記点ごとの異なる領域のプロセスパラメータであって前記勾配に関してそれら各領域を表すプロセスパラメータ、に応じて決定されることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記特徴空間の前記勾配は、前記特徴空間の所定の点のプロセスパラメータを変更することによって、前記プロセスパラメータに応じて決定されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記請求項のうちのいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのセンサは、特定の波長用のフィルタを備える少なくとも1つのフォトダイオード、固体伝播音響センサおよび空気伝播音響センサ、ならびに適切な表面照明を有する少なくとも1つのカメラユニットを含む群より選択されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記請求項のうちのいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのアクチュエータは、レーザ出力の制御装置、前記工作物に対する加工ヘッドの加工速度制御装置、加工レーザビームの焦点の制御装置、前記工作物からの前記加工ヘッドの距離の制御装置、および側方オフセットの制御装置を含む群より選択されることを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記各請求項に記載の工作物に対して実施されるべきレーザ加工作業をモニタリングするための方法を実施するための装置であって、
少なくとも2つの現時点における測定値を検出するのに適した、前記レーザ加工作業をモニタリングするための少なくとも1つのセンサと、
特徴空間内に現時点におけるフィンガプリントを作成するために、前記少なくとも2つの現時点における測定値から少なくとも2つの特徴を決定するためのデータ処理ユニットと、
前記特徴空間内の所定の点集合を記憶するためのメモリユニットと、
前記特徴空間内の前記所定の点集合に対する前記現時点におけるフィンガプリントの位置を検出することにより前記レーザ加工作業を評価するための分類ユニットと
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、前記現時点におけるフィンガプリントが、前記特徴スペースの前記点集合から離れる場合に、前記少なくとも1つのアクチュエータが、前記関連するプロセスパラメータにおける変化が前記フィンガプリントから前記所定の点集合の方向に延在する前記特徴空間内の勾配に相当するように、作動されるように、関連するアクチュエータの少なくとも1つのプロセスパラメータを制御するための制御ユニットをさらに有することを特徴とする、装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の装置であって、前記少なくとも1つのセンサは、特定の波長用のフィルタを備える少なくとも1つのフォトダイオード、固体伝播音響センサおよび空気伝播音響センサ、ならびに適切な表面照明を有する少なくとも1つのカメラユニットを含む群より選択されることを特徴とする、装置。
【請求項17】
請求項14、15、または16のいずれか一項に記載の装置であって、前記少なくとも1つのアクチュエータは、レーザ出力の制御装置、前記工作物に対する加工ヘッドの加工速度制御装置、加工レーザビームの焦点の制御装置、前記工作物からの前記加工ヘッドの距離の制御装置、および側方オフセットの制御装置を含む群より選択されることを特徴とする、装置。
【請求項18】
請求項14から17のうちのいずれか一項に記載の装置を有することを特徴とする、レーザビームにより工作物を加工するためのレーザ加工ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2012−509190(P2012−509190A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536789(P2011−536789)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008294
【国際公開番号】WO2010/057662
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(594127592)
【出願人】(511124932)プレシテック アイテーエム ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008294
【国際公開番号】WO2010/057662
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(594127592)
【出願人】(511124932)プレシテック アイテーエム ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]