説明

工具の少なくとも1つの制御変数を制御する方法および工具

【課題】工具の方位を特定。
【解決手段】方位データまたは方位特有データとして、工具1の方位を特定するように構成された、方位特定ユニット10と、方位特定ユニットに動作可能に接続されて、通信に適したインターフェイス12を介して前記工具制御器2にデータを伝送することのできる出力ユニット11とを含む手持ち工具、および工具制御器2であって、方位特定ユニットおよび/または出力ユニット11が、方位データまたは方位特有データを比較変数と比較した後に、少なくとも1つの制御パラメータ、特に複数の制御パラメータを特定するのに適しており、少なくとも1つの制御パラメータを、工具1を制御するために工具制御器2に伝送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の手持ち工具および工具制御器、請求項12に記載の手持ち工具の工具制御と協働するのに適した工具方位ユニット、および請求項13に記載の、工具制御器を含む手持ち工具の少なくとも1つの制御変数を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用および工業用の多くの工具では、工具の操作特性を作業工程の要件に適切に適合させることができるように、工具制御器を用いたフレキシブル開ループ制御が可能になっている。工具をそのように適合させることは、典型的には、工具制御器上で手動で選択することによって実施されて、工具の操作特性を適切に設定することが可能になる。例えば、手動の溶接工程において、溶接者は、溶接源制御手段を介して、例えば、溶接電流、溶接電圧および線材供給に対する必要な値を作業の開始前に設定することにより制御を行う。同様に、接合工具、噴霧工具またはドリル・フライス工具の操作特性を、作業者が、前もって選択することができる。
【0003】
作業工程中に工具の操作特性を適切に適合させる必要がある場合には、通常、作業が中断されて、必要な設定が行われる。望ましくない長い中断を防止するために、多くの工具制御器では、制御変数または制御パラメータを、遠隔制御器または遠隔制御される制御手段によって適合させることができるようにされている。しかしながら、この種の遠隔制御可能な装置は、追加的に、工具または工具制御器と一緒に運ばなくてはならず、したがって、処理および操作はより複雑になる。この欠点を克服するために、いくつかの工具制御器では、一体化遠隔制御も可能にされて、作業者によって手動で適切な設定がなお行われている。この種の態様においては、追加の制御ユニットを運ぶ必要はないが、それでも、作業者が必要な設定を行う間に、少なくとも短い期間は、作業フローの中断がある。
【0004】
作業者によって設定される制御パラメータが影響を受けるのは、典型的には、手動溶接の場合には、溶接しようとする材質、材料厚さ、ギャップ幅、シーム構成、ならびにシーム前処理および溶接姿勢である。この場合に、手動の設定は、それらが手動溶接工程によってサポートされている場合であるが、典型的には、溶接電流、溶接電圧、線材供給速度、ガス流、および電流または電圧の異なるパルス特性の適切な選択に限定されている。これらの制御変数または制御パラメータを適切に設定することを可能にするためには、溶接線材および溶接ガスを適切に選択するために、最初に材質が、作業者に既知でなくてはならない。
【0005】
さらに、作業者は、典型的には、溶接タスクの幾何学的制御パラメータの経験を有している。これに関して、工具、例えば溶接ガンの幾何学的方位が異なると、制御パラメータ選択における要件が変化するので、作業者は、特に、溶接ガンの方位に注意を払わなくてはならない。手動溶接の場合に、作業タスクまたは溶接タスクの間に、異なる幾何学的溶接姿勢間での頻繁な移行が必要であれば、各移行において、異なる制御パラメータを作業者が手動でローディングするか、または設定しなくてはならないので、全体作業速度は、かなり低下する。
【0006】
EP1812200B1は、溶接ヘッドの姿勢または溶接ヘッドの姿勢の変化が、センサ手段によって検出される、溶接装置を開示している。このようにして、検出された姿勢または姿勢の変化によって、その値を基準として溶接工程のパラメータに影響を与えることが可能である。作業ヘッドの姿勢、または作業ヘッドの姿勢の変化を、センサ手段の出力信号に基づいて検出し、姿勢パラメータの関数として工程に影響を与える、制御手段も提供されている。この場合に、制御ユニットの姿勢または回転姿勢の変化は、特別に制御装置に伝送される。制御装置は、伝送された姿勢または回転姿勢の変化から、溶接工程のパラメータを特定する。全体として、EP1812200B1によって溶接工程をより安全かつ簡略にすることができるが、EP1812200B1による装置は、特に構造に関して、なお複雑であることがわかっている。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、異なる幾何学的作業要件に対して、改善された方法で工具制御器を設定するか、または適合させることを可能にする、制御変数の適切な開ループまたは閉ループ制御を提案することである。特に、制御変数または制御パラメータを簡単な方法で設定できなくてはならない。
この目的は、請求項1に記載の手持ち工具および工具制御器によって達成される。
【0008】
特に、その目的は、手持ち工具および工具制御器であって、以下のもの:方位データまたは方位特有データとして、工具の方位を特定するように構成された、方位特定ユニット;および前記方位特定ユニットに動作可能に接続されて、通信に適したインターフェイスを介して工具制御器にデータを伝送することのできる出力ユニット、を含み、方位データまたは方位特有データを比較変数と比較した後に、少なくとも1つの制御パラメータ、特に複数の制御パラメータを特定するのに適しており、前記少なくとも1つの制御パラメータを、工具を制御するために工具制御器に伝送することができる、前記手持ち工具および工具制御器によって達成される。
【0009】
この目的は、さらに、手持ち工具の工具制御器と協働するのに適しており、好ましくは上記の工具および工具制御器に対応する手持ち工具の工具制御器と協働するのに適している、工具方位ユニットによって達成され、この工具方位ユニットは、以下のもの:工具の方位を、方位データまたは方位特有データとして特定することを可能にする、方位特定ユニット;および前記方位特定ユニットに動作可能に接続されて、データを出力することのできる出力ユニットであって、出力が、前記工具制御器のインターフェイスに接続するのに適した出力ユニットのインターフェイス、特に工具制御器の外部装置と通信するためのインターフェイスを介して行われる、前記出力ユニットを含み、前記方位特定ユニットおよび/または前記出力ユニットは、方位データまたは方位特有データを比較変数と比較した後に、少なくとも1つの制御パラメータを特定するのに適しており、前記少なくとも1つの制御パラメータを、工具を制御するために工具制御器に伝送することができる。
【0010】
本発明は、さらに、工具制御器を含む手持ち工具の少なくとも1つの制御変数を特定する方法であって、方位特定ユニットを用いて、空間における前記工具の少なくとも1つの方位を方位データとして特定するステップ;方位特定ユニットを用いて、方位データまたは方位特有データを比較変数と比較した後に、前記工具の少なくとも1つの制御パラメータを特定するステップ;および前記方位特定ユニットに動作可能に接続された、出力ユニットを用いて、通信に適したインターフェイスを介して、前記工具制御器に少なくとも1つの制御パラメータを伝送するステップを含む、前記方法によって達成される。
【0011】
本発明の本質的な観点は、工具が、方位データを特定して伝送するだけでなく、同時に方位データまたは対応する方位特有データを少なくとも1つの制御パラメータに変換することもできる、方位特定ユニットを含むことである。このようにして、それぞれの工程、例えば溶接工程の開ループ制御が全体的に簡略化される。構造の面では、工具制御器を含む工具はまた、少なくとも1つの制御パラメータ(制御変数)が方位特定ユニットにおいてすでに特定されているという点で、比較的簡略に構成されている。したがって、例えば、既存の制御装置のグレードアップは(必ずしも)必要とはしない。このことによって、特に、工具制御器を備える既存の工具に後付けする能力が向上する。
【0012】
したがって、方位特定ユニットは、好ましくは、少なくとも1つの制御パラメータを特定することができる。方位特定ユニットが、複数の制御パラメータ、または複数の制御パラメータを有する(溶接プログラムなどの)プログラムを制御装置に伝送できるように、これらを特定できれば、特に好ましい。したがって、プログラム全体を工具内(例えば溶接機内)で制御することも確かに考えられる。これらのプログラムには、必要であれば、複数の(3つ以上、またはさらに6つ以上)パラメータを含めることができる。可能なパラメータとしては、特に、(溶接)電流、(溶接)電圧、線材供給速度、ガスの流量および/または電流および電圧の異なるパルス特性(例えば、パルス周波数、パルス幅)(但し、これらが本方法によってサポートされている場合)がある。
【0013】
「方位特有データ」とは、特に、(測定された)方位データから導出されるデータ(例えば、2つの測定された方位などから特定される角度変化)を意味するものと理解されるべきである。これに関して、方位の特定は、使用時の工具の空間方位にだけ関係させるか、またはさらに傾斜または回転の設定値と合わせて空間方位に関係させることが可能であり、このことによって空間において工具の姿勢を正確に、あいまいさなく定義することが可能になる。しかしながら、より簡単で、要求の低い作業タスクに対しては、所定の座標系を基準として、または所定の基準ベクトルを基準として、空間姿勢の意味において、工具の方位を特定すればすでに十分である。したがって、時間的にあらかじめ定められた姿勢ベクトル、特に基準ベクトルと比較して、現在の作業姿勢を定義する姿勢ベクトルの偏差を特定する、角度値を単に用いて、工具の方位を定義すれば、すでに十分であることもある。
【0014】
このようにして特定された方位データによって、空間における工具の幾何学的方位を検出することが可能であり、次いでこの方位によって、工具の制御変数または制御パラメータを適切に特定することができる。前記制御パラメータは、工具制御器が直接的に解釈するか、または変換することができる値である。この目的で、比較すると、制御変数には、工具制御器によって変換できる前に、最初にさらなる処理をまだ必要とする値を含めることもできる。
【0015】
本発明によれば、データ(制御パラメータ)は、通信に適した工具制御器のインターフェイスを介して伝送される。出力ユニットはまた、工具制御器のインターフェイスに通信可能に接続するのに適した、適切なインターフェイスを含む。工具制御器のこの種のインターフェイスは、例えば、遠隔制御インターフェイス、またはそれを介してデータを伝送することのできる、その他の任意適切なインターフェイスとすることができる。特に、データは、双方向通信用のインターフェイスを介して伝送される。
【0016】
方位データまたは方位特有データが適切な比較変数と比較されると、開ループ制御における工具操作を適切に設定できるように、工具の適切な制御変数または工具の制御パラメータを、特定することができる。結果的に、工具の適切な開ループ制御に、方位データを用いて方位特定ユニットによって定義される幾何学的要件を考慮に入れることができ、したがって、作業結果の向上に貢献することができる。本発明は、手動の設定を必要とせず、したがって操作についての作業工程のいかなる中断も必要とすることがなく、したがってより効率的な作業フローを確実にする。この点に関しては、工具の少なくとも1つの制御変数、または制御パラメータは、方位特定ユニットおよび/または出力ユニットによって特定することができる。これらの関連する特定が、方位データとして特定された、工具の幾何学的作業姿勢を直接的または間接的に考慮に入れていることが重要である。したがって、制御変数または制御パラメータを完全に独立して設定するか、またはローディングすることが可能である。
【0017】
本発明のさらに明白な重要な点は、データが、通信に適したインターフェイスを介して工具制御器に伝送されることである。結果的に、工具方位ユニットを含む工具制御器は後付けすることが可能であり、それによって、少なくとも1つの制御変数または制御パラメータを、工具の方位の関数として適切に設定または特定することが可能になる。工具制御器は、外部インターフェイスまたは工具制御器の内部インターフェイスで後付けすることができる。したがって、方位特定ユニットを備えていない工具制御器も、それらが幾何学的に要求の厳しい作業操作に適合できるように、モジュール式に拡張することもできる。
【0018】
方位特定ユニットおよび/または出力ユニットは、制御パラメータ、特に、工具を制御するために工具制御器に伝送することのできる、少なくとも1つの制御変数を特定するのに適している。したがって、方位特定ユニットおよび/または出力ユニットは、工具制御器の上位の開ループまたは閉ループ制御と同等に、工具制御器が工具を制御するのに処理することのできる、少なくとも1つの制御変数、または制御パラメータを提供する。したがって、計算量の多い、方位特定ユニットによって特定された方位データの処理を防止することができる。好ましくは、出力ユニットと工具制御器は、所定の通信プロトコルに基づいて、通信する。方位特定ユニットおよび/または出力ユニットが、このプロトコルに適合している場合には、少なくとも1つの制御変数、または制御パラメータは、特に有利な方法で工具制御器に伝送することができる。
【0019】
好ましい一態様においては、方位特定ユニットと出力ユニットは、(制御装置または工具制御器から別個に形成される)共通モジュールを形成するか、またはその構成要素である。このモジュールは、共通ハウジング内に収容することができる(または、この種のハウジングを備えることができる)。さらに、方位特定ユニットおよび出力ユニットによって構成されるモジュールは、工具制御器または手持ち工具に接続することができる。一つの特定の態様においては、このモジュールは、工具制御器に接続されるか、またはそれに取り付けられる。方位特定ユニットおよび/または出力ユニットの(構造的ユニットまたはアセンブリとしての)モジュール式構成によって、工具制御器を含む工具は、構造の観点で、さらに簡略化することができる。改変またはグレードアップのための能力は向上する。全体的に、コストが低減される。
【0020】
さらに別の好ましい一態様においては、方位特定ユニットは、記憶装置を含み、少なくとも1つの制御パラメータと、方位データ、特に、作業姿勢または溶接姿勢との間の依存性の文書記録をとるように構成される。このようにして、方位データ、制御パラメータおよび作業の結果の間の関係を、文書記録にとって評価することができる。これによって、工具の開ループ制御を改善することもできる。
例えば、工具の特定の方位または作業姿勢を有して特定された制御パラメータが、満足できる作業結果に至ったかどうかを確認することができる。不利な予測が得られた場合には、再調整を容易に実行することができる。特に、作業の結果、例えば、2つの物体間の溶接接合、をより確実にすることができる。
【0021】
本発明による工具および工具制御器のさらに別の態様によれば、出力ユニットは、工具制御器に、工具制御器の通信プロトコルに適合されている、パラメータ、特に少なくとも1つの制御変数を伝送するのに適している。この種の通信プロトコルは、方位特定ユニットおよび/または出力ユニットによる工具制御器の拡張を容易にし、通信の問題を防止する。さらには、プラグアンドプレイ式の意味での、簡単な拡張も可能である。
【0022】
本発明による工具および工具制御器のさらに別の態様によれば、上位閉ループ制御としての方位特定ユニットおよび/または出力ユニットは、工具制御器の上流に接続される。前記の閉ループ制御は、所定の制御変数または所定の制御パラメータを基準として行うか、または制御の全体範囲に関係づけることもできる。閉ループ制御を実行するために、データが、出力ユニットを介して工具制御器に伝送されて、工具制御器によって、所定の時間スロット、特に循環式タイムスロットにおいて受け取られて、変換される。前記の少なくとも1つの制御変数、または制御パラメータを伝送することができる。したがって、上位の閉ループ制御は、工具制御器による、工具の適切な連続閉ループ制御を可能にする。代替的に、工具制御器を制御するための上位開ループ制御も考えられる。
【0023】
本発明のさらに別の観点によれば、方位特定ユニットおよび/または出力ユニットは、任意選択でアナログ式またはディジタル式の制御可能なポテンショメータを含み、このポテンショメータは、工具制御器ための少なくとも1つの制御パラメータを設定することを可能にする。
本発明による工具および工具制御器のさらに好ましい一態様によれば、方位データまたは方位特有データは、基準値に対して特定される。特に、特定を実行するには、制御可能なポテンショメータを用いて、基準値に対して行われる。例えば、方位データまたは方位特有データが直接的にあらかじめ定められることによって実行される、基準値の絶対特定から逸脱すると、基準値に対する特定によって、作業工程を開始する前に、基本値を定義して、その基本値を基準として、すべてのその他の方位データまたは方位特有データを特定することが可能となる。例えば、制御変数または制御パラメータが、作業工程の開始前の方位に対する基本値として100%に設定されると、方位データに対してさらに変更が行われる場合に、関係する制御変数または制御パラメータを、この基本値に対して変更することができる。
【0024】
したがって、百分率変化が行われ、これはさらなる計算工程を必要としない。溶接工具の場合には、例えば、オーバヘッド姿勢と比較して、溶接電流または溶接電圧の50%〜60%だけを使用して、水平姿勢で溶接を実行することは、技術的に意味があることがわかる。溶接工具が、例えば、基本姿勢と定義することのできる、すなわち基本値として定義することのできる、オーバヘッド姿勢から変更される場合には、溶接電圧または溶接電流を、基準値としてのこの基本値に対する適切な制御パラメータとして、特定することができる。基準値に対して特定することは、工具制御器を備える工具の、非常に有利な態様である。
【0025】
例えば、便宜な一実現方法においては、基準値として事前設定された制御電圧が、制御可能なポテンショメータを介して、工具方位の関数として電圧を減少または増大させる。この種の事前設定は、例えば、遠隔制御で実行するか、または工具制御器に一体化させておくこともできる。態様によっては、作業者が、1つまたは2つ以上の基本値を基準値としてあらかじめ定めておき、工具の方位が変化した場合に、それらの基本値の間で、適切な内挿を実行することができる。
【0026】
特に、基準値に対して、方位特有データまたは少なくとも1つの制御変数を特定することは、所定の方位領域、好ましくは方位を定義する角度範囲を基準にして行うことができる。例えば、溶接工具の場合には、DIN EN ISO6948に定義されたPA、PB、PC、PDおよびPE溶接姿勢による細分割を実行することができる。すなわち、それぞれの方位領域には、例えば、所定の工具方位に達すると、方位特有データまたは少なくとも1つの制御変数がこれらの値に対して特定されるように、所定の相対値が割り当てられる。
【0027】
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、方位特有データまたは少なくとも1つの制御変数が、相対変数として相対値発生ユニットに出力され、この相対値は、方位特定ユニットおよび/または出力ユニットが、相対値発生ユニットの相対変数を使用して、上位閉ループ制御として工具制御器によってあらかじめ定められた入力設定信号を、ある百分率だけ増大または減少させるように、工具制御器によってあらかじめ定められた設定値をある百分率で増大または減少させて、前記信号を再び工具制御器に配達する。
【0028】
さらに別の態様によれば、基準値は、インターフェイスを介して方位特定ユニットおよび/または出力ユニットへ伝送される。したがって、この基準値は、工具制御器によってあらかじめ定められている。代替的に、基準値を、方位特定ユニットおよび/または出力ユニットによって特定することも考えられる。しかしながら、基準値が工具制御器によって特定される場合には、この基準値は、工具制御器の利用可能なさらに別の機能も有するのが有利であり、それによってさらに適切に処理することができる。したがって、工具を適切に制御するために、前記値を工具制御器に再び供給するためには、方位特定ユニットおよび/または出力ユニットにおいてこの基準値に対する相対値を発生させることだけが必要である。
【0029】
本発明による工具および工具制御器のさらに別の態様によれば、基準値は、方位特定ユニットおよび/または出力ユニットによって、固定的にあらかじめ定められる。この種の態様は、特に、工具制御器のインターフェイスが、基準値を出力ユニットまたは方位特定ユニットに伝送することを可能にできない場合に、有利である。
本発明のさらに別の特に好ましい態様によれば、このインターフェイスは、外部装置と通信するのに適しており、特に、遠隔制御インターフェイスを含む。なお、この文書において「遠隔制御」という用語は、単に、異なる制御変数または制御パラメータを設定する可能性を意味するものであるが、所定の変数の関数として、閉ループ制御された、連続的ローディングの意味での、閉ループ制御を含まないことを述べておく。
【0030】
すなわち遠隔制御は、文字通り開ループ制御を常に意味し、この開ループ制御は、用語慣習によれば、特に溶接工具の分野において遠隔制御と同一視される。にもかかわらず、本態様による遠隔制御インターフェイスは、工具の開ループ制御の閉ループ制御が、外部手段、すなわち上位閉ループ制御によって可能になるように、制御変数および制御パラメータを工具制御器まで転送することを可能にする。本態様によれば、外部装置と通信するためのインターフェイスは、遠隔制御インターフェイスを介してデータを連続的に伝送することを可能にし、このデータはまた、工具制御器によって、連続間隔で、適切な制御パラメータに変換される。
【0031】
工具制御器を含む、本発明による工具のさらに好ましい態様によれば、工具制御器または方位特定ユニットは、工具を位置決めするため、または工具の位置決めをサポートするための方位データまたは方位特有データを処理することを可能にする、位置決めユニットまたは位置決めサポートユニットを含む。位置決めユニットは、作業者が、手持ち工具を用いて、能動的に所望の姿勢を設定することを可能にする。しかしながら、対照的に、位置決めサポートユニットは、手持ち工具の位置決めを、作業者が受動的にサポートすることを可能にするだけである。位置決めユニットおよび位置決めサポートユニットの両方は、工具を位置決めするためのさらに別の手段に伝えることのできる、適切な制御データを発生させるのに適している。
【0032】
位置決めサポートの場合には、作業者に、例えば、適切な視覚表現によって所望の位置決めが行われたか否かを示すことができる。この種の視覚表現は、単純な光信号を用いて、または工具誘導のグラフィック表現を用いても、実行することができる。位置決めユニットは、例えば、手持ち工具の位置決めを容易にする、能動的モータ駆動装置に動作可能に接続することができる。位置決めサポートユニットおよび位置決めユニットの両方において、データは、方位データまたは方位特有データに基づいて発生させられる。
【0033】
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、方位特定ユニットは、工具の少なくとも1つの姿勢および/または方位を特定することを可能にする、少なくとも1つのセンサを含む。この種のセンサは、例えば、傾斜センサまたは加速度センサとすることができる。センサデータに基づいて、方位特定ユニットは、工具の方位を方位データとして特定することができる。ここで、センサは、便宜的に工具に接続される。センサと方位特定ユニットの通信は、例えば、無線方式または有線方式でも行うことができる。特に好ましくは、センサは、2つの空間方向全部において加速度を特定することを可能にする、3次元加速度センサである。ここで、センサは、方位特定ユニットおよび/または出力ユニットと同様にして、工具または工具制御器に後付けするためにも設けられる。
【0034】
本発明のさらに別の態様によれば、本工具は、溶接工具である。代替的に、工具は、接合工具またはドリル工具またはフライス工具または被覆を塗布するための工具、例えばスプレーガン(噴霧工具または噴射工具)とすることもできる。
本発明のさらに別の観点によれば、工具制御器のインターフェイスは、システム制御の統合バスシステムを含む。適切なバスインターフェイスは、例えば、ディジタルデータを交換することを可能にする、CANバスである。
【0035】
本発明による方法の第1の好ましい態様によれば、方位特有データは、少なくとも部分的に第1の方位データと第2の方位データの比較から計算される。この種の比較は、座標系または固定基準点に対して空間における工具の方位を参照することができるが、あるいはさらに別の方位変数を含めることもできる。例えば、第1の方位データと第2の方位データの比較には、空間において特定された姿勢ベクトルに対する傾斜または回転を含めることもできる。この場合には、方位特有データは、ベクトルデータまたは角度データとして計算するか、またはさらに別の特有の変数を含めることもできる。方位特有データには、工具制御器が適切に変換するか、または処理することのできる、制御変数または制御パラメータを含めることもできる。例えば、したがって、角度範囲は、第1の方位データと第2の方位データの比較から特定することができ、その範囲によって、制御変数または制御パラメータに対する相対値を、基準値に対して特定することが可能となる。
【0036】
本発明の方法のさらに別の観点によれば、方位データまたは方位特有データは、空間における工具の少なくとも1つの角度変化から特定される。ここで、角度変化は、通常、以前の姿勢ベクトルと、または所定の基準ベクトルとの比較による姿勢ベクトルの角度ずれを意味する。この場合には、単に、比較中である2つの姿勢ベクトルの角度値を計算することで十分である場合がある。代替的に、極角と方位角の意味での、2つの角度値を、工具制御器に対してより多くの情報を利用可能にするために、特定することができる。さらに、姿勢ベクトルに対する工具の傾斜または回転を特定することができる。1つの角度変数または2つの角度のいずれも、この特定には適している。少なくとも1つの角度変化からの、方位データまたは方位特有データを特定することによって、空間における工具の簡単ではあるが、完全な記述が可能となり、したがって、工具の有効な開ループ制御に十分である。
【0037】
本発明による方法のさらに別の態様によれば、インターフェイスを介する通信が、アナログ方式で行われる。代替案として、インターフェイスを介する通信は、ディジタル方式で行うこともできる。アナログ通信は、例えば、制御変数または制御パラメータを連続的に変化させること、または例えば、前記変数を、ポテンショメータを用いて相対的に適合させることができる。ディジタル通信は、半連続的に行うことのできる、離散型通信を可能にする。離散型通信は、特に、所定の方位領域だけを微分しなくてはならない場合に適しており、この場合には、工具を制御するための異なる制御変数または制御パラメータが使用される。
【0038】
本発明による方法のさらに別の態様によれば、アナログ閉ループ制御において、方位データまたは方位特有データが比較変数と比較される。アナログ閉ループ制御は、適切な制御変数または制御パラメータを連続的に設定することを可能にし、それによって、前記変数を特に効率的に設定することが可能になる。この態様によれば、この種のアナログ閉ループ制御は、閉ループ制御パスポテンショメータを使用して実行することもできる。この場合の比較変数は、それに対して制御変数または制御パラメータを設定することのできる、所定の基準値とすることができる。
【0039】
本発明による方法の別の代替態様によれば、方位データまたは方位特有データが、記憶された比較データとの比較によって、比較変数と比較される。この種の比較データは、例えば、各比較工程中にアクセスすることのできるリストに記憶することができる。比較データは、通常、所定の方位または工具の方位領域を基準とする、制御変数または制御パラメータの値である。別の態様によれば、各比較工程中に、比較データを個別に発生させることも可能である。
【0040】
本発明による方法のさらに別の態様によれば、方位特有データは、所定の基準値に対して特定されて、この基準値は、工具特有および/または材料特有の操作変数の関数として特定される。この場合に、基準値は、工具制御器または方位特定ユニットおよび/または出力ユニットに対して具体的にあらかじめ定めるか、または作業者による入力後に、それらによって発生させることが可能である。工具特有および/または材料特有の操作変数はまた、工具制御器または方位特定ユニットおよび/または出力ユニット上の選択メニューによって選択することもできる。この場合には、操作変数は、関係する構成要素中にすでに事前プログラムされている。
【0041】
本発明による方法のさらに別の態様によれば、少なくとも1つの制御変数は、所定の可能な方位領域の関数として、特に、工具の所定の想定される方位セクタの関数として特定される。方位領域または方位セクタは、所定の角度範囲によって特定することができる。適切な方位データの選択に応じて、方位領域は、所定の値範囲またはデータ範囲に関係する。方位セクタの場合には、前記セクタが、DIN EN ISO6947に記載されている溶接姿勢PA、PB、PC、PDおよびPEによる区別を用いて定義されれば、特に好ましい。
本発明による方法のさらに別の態様によれば、工具の少なくとも1つの方位は、センサを用いて空間において特定される。前記工具の方位は、任意の技術的に適切なセンサを用いて特定することができる。
【0042】
本方法の第1の好ましい代替態様において、開ループ制御をアナログ方式で行うことができる。この目的で、方位データ(または方位領域)および/または作業姿勢(例えば、溶接姿勢)を定義することができる。(任意選択で自動的に制御可能な)ポテンショメータを使用することができる。制御パラメータは、連続的に変化させることができる。インターフェイスの出力信号(特に、遠隔制御入力)は、ポテンショメータの基準信号として作用することができる。(制御可能な)ポテンショメータを適合させることは、(手動で設定された)出力値(例えば、100%基準信号)に基づくことができる。入力信号または制御電圧は、絶対値を使用する必要はなく、工具方位の関数として、自動的に(百分率)制御することができる。工程ドキュメンテーションを行うことができる(例えば、作業姿勢、工程パラメータおよび生成して文書記録すべき作業の結果の間の関係に対して可能である)。
【0043】
本方法のさらに別の好ましい代替案においては、開ループ制御をディジタル方式で行うことができる。この目的で、方位データ(方位領域)および作業姿勢(例えば、溶接姿勢)も定義することができる。さらに、角度範囲を、例えば、作業姿勢(溶接姿勢、例えば、PA〜E)に応じてセクタに分割し、工具が位置しているセクタを出力する(代替的に、例えば、環状溶接(orbital welding)のために四分円を定義することができる。)この場合には、ディジタル型(また、姿勢依存の)制御信号を使用することができる。不連続(離散型)変化も、ディジタル開ループ制御によって可能になる。さらに、パラメータプログラムとして組み合わされた、異なる工程パラメータをプログラミングするのが好ましい。パラメータプログラムは、手持ち装置の方位の関数として選択することができる。選択は、ディジタル制御信号に基づいて行うことができる。
【0044】
本発明が使用される好ましい方法は、例えば、溶接である(例えば、ガスメタルアーク溶接、タングステン不活性ガス溶接またはスタッド溶接)。代替的な方法としては、例えば、機械式接合要素(リベット、ブラインドリベット、ロックボルト、その他)の設定方法またはドリル加工である。
【0045】
(例えば、方位特定ユニットおよび制御装置の間の)データ転送を、有線式または、例えば、電波もしくは赤外線による無線式で行うことができる。位置決めまたは方位決め(例えば、工具が垂直に位置するかどうか検査する)は、(赤・緑)ダイオードなどの表示要素を介して行うことができる。特に好ましい発展は、作業姿勢および/または工程パラメータおよび/または作業結果についての全工程を文書記録することの発展である。本発明のさらに別の態様は、従属請求項から発生する。本発明は、図を参照してより詳細に記述される、実施態様を参照して以下に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】工具制御器を含む、本発明による手持ち工具の第1の態様を示す図である。
【図2】工具制御器を含む、本発明による手持ち工具の第2の態様を示す図である。
【図3】本発明のさらに別の態様による、方位データとして工具の方位を特定することの模式図である。
【図4】工具制御器を含む、本発明による手持ち工具の、図1に示す態様の詳細図である。
【図5】工具制御器を含む、手持ち工具の少なくとも1つの制御変数を特定するための、本発明による方法のさらに別の態様によるフロー図である。
【図6】工具制御器を含む、手持ち工具の少なくとも1つの制御変数を特定するための、本発明による方法のさらに別の態様を表わすフロー図である。
【図7】所定の基準値に対して溶接開ループ制御の制御変数または制御パラメータの開ループ制御を図示する模式図である。
【図8a】工具方位ユニットによるアナログ開ループ制御における異なる方位セクタを図示する模式図である。
【図8b】本発明のさらに別の態様による、2つの可能な方位セクタを示す図である。
【0047】
図1は、工具制御器2を含む本発明による手持ち工具1の第1の態様の模式図である。工具制御器2は、接続部3を介して工具1に接続されている。接続部3は、単に、電気的接続部、またはガス接続部などの追加のその他の接続部を含めることができる。本発明によると、工具1は、異なる操作状態について、溶接ガン制御器2によって適切に制御することのできる、溶接ガンである。操作状態は、所定の制御変数または制御パラメータによって、工具制御器2において設定される。
【0048】
さらに、工具制御器2は、方位特定ユニット10および出力ユニット11を含む、工具方位ユニット5を含む。出力ユニット11はまた、対応する反対側インターフェイス、工具制御器2のインターフェイス12に通信可能に接続された、インターフェイス12’(ここでは図示せず)を含む。さらに、工具方位ユニット5は、工具1に剛直に接続されたセンサ30を含む。本態様によれば、工具1の方位は、適当な方法でセンサ30によって方位データとして検出して、方位特定ユニット10へと伝送することができる。代替的に、センサ30による、その他の適当なデータの検出も提供され、このデータは、方位特定ユニット10へと伝送された後に、適切に方位データに変換することができる。
【0049】
方位特定ユニット10は、方位データ、または方位データからさらなる処理によって計算された方位特有データを特定することができるとともに、そこから特定された制御パラメータを出力ユニット11に転送することができ、次いで、出力ユニットは制御パラメータを工具制御器2に伝送する。工具制御器2は、工具方位ユニット5の制御パラメータに基づいて、適切な方法で工具1を制御する。この目的で、工具1の適切な操作状態に対応する、適切な制御変数または制御パラメータが、方位データまたは方位特有データから特定される。制御変数または制御パラメータは、方位特定ユニット10または出力ユニット11において計算することができる。
【0050】
本態様によれば、工具10の方位は、重力ベクトル(g)の方向に対して特定される。ここで、例えば、工具1の工具ハンドルの縦方向延長Lの相対的角度は、重力加速度ベクトルの方向との比較で特定される。工具1は、全体空間において自由に動くことができる。重力の方向に対する工具1の変化または相対方位に応じて、適切なデータが方位特定ユニット10に伝送される。この態様によれば、伝送は、電波連絡によって無線方式で行われる。
【0051】
本発明によると、工具方位ユニット5は、工具制御器2の外部装置として設けられている。工具方位ユニット5は、工具制御器2のインターフェイス12を介して工具制御器2に接続されている。さらに別の態様によれば、しかしながら、工具方位ユニットは、工具制御器2のハウジング中にすでに一体化されている。工具方位ユニット5と工具制御器2の間の通信は、工具制御器2の適切な内部インターフェイス12を介して行うことができる。さらに、この態様によれば、センサ30は、解除可能に工具1に取り付けられており、原理的に工具1上の任意の点に取り付けることができる。
【0052】
この態様によれば、センサ30は、3次元加速度センサ30として構成されている。代替案として、3つの独立した1次元加速度センサも可能であり、それらは3つの方向において、異なる加速度成分を測定することができる。方位特定ユニット10は、加速度値から適切な方位データを特定することができるとともに、重力加速度(g)の方向と、工具1のハンドルの縦方向延長方向Lの間の相対角度を特定する。
【0053】
図2は、工具制御器を含む、本発明による工具のさらに別の態様を示し、この態様は、図1に示されたものと、センサ30と工具方位ユニット5の間の通信が無線ではなく有線であることにおいてのみ異なっている。センサ30によって検出されたデータは、配線13を介して、方位特定ユニット10に供給される。さらに別の態様によれば、配線13は、工具制御器2と工具1の間の接続部3に一体化することもできる。
【0054】
図3は、空間における方位データとして、工具1の方位の特定の模式図である。ここで、工具1の2つの姿勢が、2つのそれぞれの姿勢ベクトルによって定義される。この2つの姿勢は、角度αだけ異なる。姿勢ベクトルは、(x、y、zの軸を有する3次元座標系によって表わされる)異なる長さと異なる空間方向の両方をとることができる。本態様によれば、工具1の方位は、2つの姿勢ベクトル間の角度変化として、つまり角度αとして特定することができる。
【0055】
代替的に、工具1の方位を、3次元デカルト座標系のy軸に平行な、重力ベクトルの方向に対して特定することもできる。工具1の姿勢が、例えば、重力加速度ベクトルの方向を基準として特定の姿勢に向けることによって作業工程の開始時に初期化されると、作業工程の間に方位特定ユニット10によって、さらなる角度変化を方位データとして特定することができる。方位データは、次いで、工具1の方位依存開ループ制御を有利に達成するために、工具1の開ループ制御のための適切な制御変数または制御パラメータを特定するのにも使用される。
【0056】
図4は、図1の態様による、工具方位ユニット5の詳細図である。方位データまたは方位特有データを工具方位ユニット5によって、つまり方位特定ユニット10および/または出力ユニット11によって伝送するために、工具制御器2のインターフェイス12が工具制御器2上に設けられている。インターフェイス12は、出力ユニット11のさらに別のインターフェイス12’に通信可能に接続されている。本態様によれば、データの交換は双方向であり、つまり、出力ユニット11によって、データの送信と受信の両方を行うことができる。代替態様によれば、インターフェイス12または12’は、単独で一方向通信用に設けることもできる。さらに、出力のための通信は、出力ユニット11のインターフェイス12’を介して行うことが可能であり、受信のための通信は、工具方位ユニット5のさらに別の受信ユニット(図示せず)によって行うことができる。
【0057】
図5は、手持ち工具の少なくとも1つの制御変数を特定するための、本発明による方法の一態様であり、この方法では、工具1の方位が最初に特定される。方位を特定することによって、方位データを計算または特定することが可能になり、この方位データは、第2の方法ステップにおいて、対応する比較変数、すなわち比較データと比較される。この場合に、比較は、個々のデータ値を比較することによって明示的に実行するか、または方位データをさらなる処理に使用し、方位に応じて異なる比較結果が得られることにより暗黙的に実行することができる。例えば、アナログ閉ループ制御は、このようにして方位データを制御電圧として受け取ることができるとともに、特性曲線に対応して、さらに別の値を出力することができる。このようにして、出力値は比較結果に対応する。
【0058】
比較結果または方位データによって、方位特有データを特定することが可能となり、この方位特有データは、本態様によるこの例においては、工具制御器2のインターフェイス12を介して工具制御器2に伝送される。
【0059】
本発明による方法のさらに別の態様によれば、方位データはまた、比較変数と比較する前に、方位特有データを計算するのにも使用することができる。この種の方法は、フロー図で図6に概略的に示されている。方位データから方位特有データを計算または特定した後に、該データは、対応する比較変数と比較される。この比較は、やはり工具方位ユニット5において行うこともできる。正常な比較の後に、方位特有データから特定された制御パラメータは、工具制御器2のインターフェイス12を介して、同一の形態または変更された形態で制御器へと伝送することができる。図5および図6に概略的に示されている本発明による方法の態様においては、次いで、工具1を制御するための少なくとも1つの工具の制御変数が特定される。
【0060】
図7は、絶対特定値(absolute determination)との比較における、少なくとも1つの制御変数または制御パラメータの相対的閉ループ制御または特定の模式図である。相対特定においては、基本値または基準値は、開始姿勢における空間内の工具1の方位に応じてあらかじめ定められる。本例においては、全体基準値は、0度姿勢において100%にあらかじめ定められる。代替的に、この値は、工具1の180度姿勢においてあらかじめ定めることもできる。この角度は、重力加速度ベクトルの方向と比較した、空間における工具1の姿勢を表わす初期化姿勢ベクトルの相対的偏差値を意味する。
【0061】
初期化ベクトルはここでは示されていない。方位を90°姿勢に変更するときには、閉ループにおいて特定または制御しようとする制御変数または制御パラメータの相対値は、元の値の50%まで低減される。ここで、これらの値の間で直線内挿を実行することができる。工具方位を変更する際には、したがって制御変数または制御パラメータの値が百分率で変更され、相対的変化は、図示された極限姿勢(0度角姿勢、90度角姿勢、180度角姿勢)にあらかじめ定められる。代替的に、その他任意の種類の意味のある内挿を、これらの極限姿勢の間で行うこともできる。
【0062】
特定の態様によれば、溶接ガンの制御電圧または制御電流を、ゼロ度姿勢(フラット姿勢、PA)から90度姿勢(垂直姿勢、PF、PG)へと相対値特定または相対閉ループ制御によって、設定目標通りに減少させることができる。
図8aは、連続アナログ閉ループ制御による、工具1の少なくとも1つの制御変数または1つの制御パラメータの連続特定または閉ループ制御の模式図である。ここで、工具1の方位は、開始60°姿勢から145°姿勢へと連続的に取られる。方位における変化は、インターフェイス2を介して方位データとして工具制御器2へと伝送される。少なくとも1つの制御変数または制御パラメータを、工具1の方位の変化に応じて、前記工具制御器において変更することができる。
【0063】
図8bに示されている離散的特定または離散的閉ループ制御は異なっており、あらかじめ定められた方位領域または方位区域を提供する。方位領域または方位セクタに応じて、異なる制御変数またはパラメータが特定され、これらが作業方法の有利な構成を可能にする。図8bの左側に示された態様は、例えば、3つの区域P1、P2およびP3において異なる。図8bの右側に示された態様は、合計で5つの方位領域または方位セクタP1、P2、P3、P4およびP5だけ異なる。工具1の方位が、この種の方位領域または方位セクタ内で変更される場合には、制御変数または制御パラメータは、工具方位ユニット5によっては変更されない。したがって、工具1の連続方位特定は必要ではなく、代わりに離散型閉ループ制御または特定で置換することができる。
【0064】
この点において、それ単独および任意の組合せで考慮される、上述の部分のすべて、特に図面に示される詳細は、本発明に対して必須のものとして特許請求されるものである。それらに対する修正は当業者には決まりきった手順である。
【符号の説明】
【0065】
1 工具
2 工具制御器
3 接続部
5 工具方位ユニット
10 方位特定ユニット
11 出力ユニット
12 インターフェイス
12’ インターフェイス
13 配線
14 位置決めユニット
15 位置決めサポートユニット
20 ポテンショメータ
30 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方位データまたは方位特有データとして、工具(1)の方位を特定するように構成された、方位特定ユニット(10)と、
前記方位特定ユニット(10)に動作可能に接続されて、通信に適したインターフェイス(12)を介して前記工具制御器(2)にデータを伝送することのできる出力ユニット(11)と
を含む、手持ち工具(1)および工具制御器(2)であって、
前記方位特定ユニット(10)および/または前記出力ユニット(11)が、前記方位データまたは前記方位特有データを比較変数と比較した後に、少なくとも1つの制御パラメータ、特に複数の制御パラメータを特定するのに適しており、前記少なくとも1つの制御パラメータを、前記工具(1)を制御するために前記工具制御器(2)に伝送することができることを特徴とする、前記手持ち工具(1)および工具制御器(2)。
【請求項2】
方位特定ユニット(10)および出力ユニット(11)が、共通モジュールを形成し、特に、共通ハウジング内に収容されており、前記方位特定ユニット(10)および前記出力ユニット(11)から形成された前記モジュールは、好ましくは、工具制御器(2)または手持ち工具(1)に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の工具および工具制御器。
【請求項3】
方位特定ユニット(10)が、記憶装置を含み、少なくとも1つの制御パラメータと、方位データ、特に溶接姿勢との間の依存性を記録するように構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の工具および工具制御器。
【請求項4】
出力ユニット(11)が、工具制御器(2)に制御パラメータ、特に前記工具制御器(2)の通信プロトコルに適合された、少なくとも1つの制御変数、を伝送するのに適していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の工具および工具制御器。
【請求項5】
上位閉ループ制御としての方位特定ユニット(10)および/または出力ユニット(11)が、工具制御器(2)の上流に接続されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の工具および工具制御器。
【請求項6】
方位特定ユニット(10)および/または出力ユニット(11)が、任意選択でアナログ式またはディジタル式の制御可能なポテンショメータ(20)を含み、該ポテンショメータは、工具制御器(2)ための少なくとも1つの制御パラメータを設定することを可能にすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の工具および工具制御器。
【請求項7】
方位特有データが、相対変数として相対値発生ユニットに出力され、この相対値は、方位特定ユニット(10)および/または出力ユニット(11)が、前記相対値発生ユニットの相対変数を使用して、上位閉ループ制御として工具制御器(2)によってあらかじめ定められた入力設定信号を、ある百分率だけ増大または減少させるように、工具制御器(2)によってあらかじめ定められた設定値をある百分率で増大または減少させて、前記信号を再び工具制御器に配達し、
前記基準値は、好ましくは前記インターフェイス(12)を介して前記方位特定ユニット(10)および/または前記出力ユニット(11)に伝送されるとともに、前記参照値は、好ましくは、前記方位特定ユニット(10)および/または前記出力ユニット(11)によって、あらかじめ固定的に定められることを特徴とする、請求項1〜6および請求項5のいずれか一項に記載の工具および工具制御器。
【請求項8】
インターフェイス(12)が、外部装置と通信するのに適しており、特に、遠隔制御インターフェイスを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の工具および工具制御器。
【請求項9】
工具制御器(2)または方位特定ユニットが、工具(1)を位置決めするため、または工具(1)の位置決めをサポートするための方位データまたは方位特有データを処理することを可能にする、位置決めユニット(15)または位置決めサポートユニット(16)を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の工具および工具制御器。
【請求項10】
工具(1)が、溶接工具、接合工具、ドリル工具、フライス工具、または被覆を塗布するための工具、例えばスプレーガンであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の工具および工具制御器。
【請求項11】
インターフェイス(12)が、システム制御の統合バスシステムを含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の工具および工具制御器。
【請求項12】
手持ち工具(1)の工具制御器(2)と協働するのに適しており、好ましくは請求項1〜11のいずれかに記載の手持ち工具(1)の工具制御器(2)と協働するのに適しており、
工具(1)の方位を、方位データまたは方位特有データとして特定することを可能にする、方位特定ユニット(10)と、
前記方位特定ユニット(10)に動作可能に接続されて、データを出力することのできる出力ユニット(11)であって、出力が、前記工具制御器(2)のインターフェイス(12)に接続するのに適した出力ユニット(11)のインターフェイス(12’)、特に工具制御器(2)の外部装置と通信するためのインターフェイス(12)を介して行われる、前記出力ユニットとを含む、工具方位ユニットであって、
前記方位特定ユニット(10)および/または前記出力ユニット(11)は、前記方位データまたは前記方位特有データを比較変数と比較した後に、少なくとも1つの制御パラメータを特定するのに適しており、前記少なくとも1つの制御パラメータを、工具(1)を制御するために工具制御器(2)に伝送することができることを特徴とする、前記工具方位ユニット。
【請求項13】
工具制御器(2)を含む手持ち工具(1)の少なくとも1つの制御変数を特定する方法であって、
方位特定ユニット(10)を用いて、空間における前記工具(1)の少なくとも1つの方位を方位データとして特定するステップ;
方位特定ユニットを用いて、方位データまたは方位特有データを比較変数と比較した後に、前記工具(1)の少なくとも1つの制御パラメータを特定するステップ;および
前記方位特定ユニット(10)に動作可能に接続された、出力ユニット(11)を用いて、通信に適したインターフェイス(12)を介して、前記工具制御器(2)に少なくとも1つの制御パラメータを伝送するステップ
を含む、前記方法。
【請求項14】
インターフェイス(12)を介する通信が、アナログ方式またはディジタル方式で行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
連続制御が、アナログ閉ループまたは開ループ制御によって行われることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
方位データまたは方位特有データが、記憶された比較データとの比較によって、比較変数と比較されることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
方位特有データが、所定の基準値に対して特定されて、該基準値は、工具特有および/または材料特有の操作変数の関数として特定されることを特徴とする、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの制御変数は、所定の想定される方位領域の関数として、特に、工具(1)の所定の想定される方位セクタの関数として特定されることを特徴とする、請求項13〜17のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【公開番号】特開2013−67000(P2013−67000A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−205510(P2012−205510)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(510109165)ドリッテ・パテントポートフォリオ・ベタイリグンスゲゼルシャフト・エムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー (8)
【氏名又は名称原語表記】Dritte Patentportfolio Beteiligungsgesellschaft mbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Berliner Str. 1, 12529 Schoenefeld/Waltersdorf, Germany
【Fターム(参考)】